(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】樹脂シート
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20250109BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20250109BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20250109BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20250109BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B32B15/08 E
C08L101/00
C08K3/013
H05K1/03 610H
H05K1/03 610R
H05K1/03 630H
H05K3/46 T
H05K3/46 B
(21)【出願番号】P 2021092421
(22)【出願日】2021-06-01
【審査請求日】2024-05-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴井 一彦
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-024801(JP,A)
【文献】特開2019-044180(JP,A)
【文献】特開2018-012776(JP,A)
【文献】特開2018-131619(JP,A)
【文献】特開2016-196548(JP,A)
【文献】特開2015-211086(JP,A)
【文献】特開2020-026529(JP,A)
【文献】特開2018-107157(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003590(WO,A1)
【文献】特開2015-089622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
H05K 1/03
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空プレス処理を用いた絶縁層形成用の
熱硬化性樹脂シートであって、
支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを含み、
支持体が、樹脂組成物層と接合している側の表面の算術平均粗さ(Ra)が300nmを超える金属箔を有し、
樹脂組成物層が、(A)比表面積が10m
2/g以上の無機充填材を含有し、
(B)エポキシ樹脂、及び/又は、(D)ラジカル重合性化合物を含有し、
樹脂組成物層
を60℃から200℃
まで昇温速度5℃/分にて昇温し、振動数1Hz、ひずみ1degの測定条件による動的粘弾性測定において、100℃以上でのtanδの最大値が、1.0以上2.0以下である、
熱硬化性樹脂シート。
【請求項2】
樹脂組成物層の厚みが、30μm以下である、請求項1に記載の
熱硬化性樹脂シート。
【請求項3】
樹脂組成物層が、活性エステル樹脂、マレイミド樹脂、及びビニル樹脂のいずれかを含有する、請求項1又は2に記載の
熱硬化性樹脂シート。
【請求項4】
(A)成分の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%としたとき、73質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の
熱硬化性樹脂シート。
【請求項5】
(A)成分の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%としたとき、50質量%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂シート。
【請求項6】
金属箔が、銅箔を含む、請求項1
~5のいずれか1項に記載の
熱硬化性樹脂シート。
【請求項7】
支持体の厚みが、9μm以上である、請求項1
~6のいずれか1項に記載の
熱硬化性樹脂シート。
【請求項8】
請求項1
~7のいずれか1項に記載の
熱硬化性樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物からなる絶縁層を含む、プリント配線板。
【請求項9】
請求
項8に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【請求項10】
(I)内層基板上に、請求項1
~7のいずれか1項に記載の
熱硬化性樹脂シートを、真空プレス処理にて積層させる工程、及び
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程、
を含む、プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートに関する。さらには、当該樹脂シートを用いて得られる、プリント配線板、半導体装置、及びプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造において、絶縁層は、例えば特許文献1に記載されているように、真空プレス処理法を用いて回路基板上にプリプレグを積層し硬化させることにより形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今のプリント配線板等の小型化に伴い、絶縁層を薄膜化する観点からプリプレグに代わり樹脂シートの樹脂組成物層を用いることが求められている。樹脂シートの樹脂組成物層にて絶縁層を形成するにあたり、真空ラミネート法により回路基板上に樹脂組成物層を積層・硬化させる方法、及び真空プレス処理により回路基板上に樹脂組成物層を積層・硬化させる方法がある。
【0005】
樹脂シートの樹脂組成物層を用いて真空プレス処理にて絶縁層を形成するにあたり、真空プレス処理は、真空ラミネート法に比し、積層時に樹脂シートの樹脂組成物層に付与される圧力が高く、樹脂組成物層中の樹脂フロー(樹脂の染み出し)に起因して絶縁層の厚みの均一性が悪化し、その結果絶縁信頼性が悪化する場合がある。一方で樹脂フローを抑制するために樹脂の粘度を高くすると、絶縁層が回路基板の配線を埋め込むことができず、埋め込み性が低くなり絶縁性が不良になる場合がある。また、樹脂シートの支持体が粗度の大きい金属箔を有する場合、粗度の大きい箇所の絶縁層の厚みは薄くなりやすいため、その結果絶縁信頼性の悪化が顕著になる場合がある。
【0006】
本発明の課題は、絶縁層の厚みの均一性、埋め込み性及び絶縁信頼性に優れる硬化物を得ることができる樹脂シート;当該樹脂シートを用いて形成されたプリント配線板、半導体装置;及びプリント配線板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題につき鋭意検討した結果、樹脂組成物層と接合している側の表面の算術平均粗さ(Ra)が300nmを超える金属箔を含む支持体と、該支持体上に設けられた、(A)比表面積が10m2/g以上の無機充填材を含有する樹脂組成物層とを含み、樹脂組成物層の60℃から200℃における動的粘弾性測定において、100℃以上でのtanδの最大値が、1.0以上2.0以下である樹脂シートを用いて、真空プレス処理により絶縁層を形成することで上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] 真空プレス処理を用いた絶縁層形成用の樹脂シートであって、
支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを含み、
支持体が、樹脂組成物層と接合している側の表面の算術平均粗さ(Ra)が300nmを超える金属箔を有し、
樹脂組成物層が、(A)比表面積が10m2/g以上の無機充填材を含有し、
樹脂組成物層の60℃から200℃における動的粘弾性測定において、100℃以上でのtanδの最大値が、1.0以上2.0以下である、樹脂シート。
[2] 樹脂組成物層の厚みが、30μm以下である、[1]に記載の樹脂シート。
[3] 樹脂組成物層が、活性エステル樹脂、マレイミド樹脂、及びビニル樹脂のいずれかを含有する、[1]又は[2]に記載の樹脂シート。
[4] (A)成分の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%としたとき、73質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂シート。
[5] 金属箔が、銅箔を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂シート。
[6] 支持体の厚みが、9μm以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂シート。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物からなる絶縁層を含む、プリント配線板。
[8] [7]に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
[9] (I)内層基板上に、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂シートを、真空プレス処理にて積層させる工程、及び
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程、
を含む、プリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、絶縁層の厚みの均一性、埋め込み性及び絶縁信頼性に優れる硬化物を得ることができる樹脂シート;当該樹脂シートを用いて形成されたプリント配線板、半導体装置;及びプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0011】
[樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、真空プレス処理を用いた絶縁層形成用の樹脂シートである。該樹脂シートは、樹脂組成物層と接合している側の表面の算術平均粗さ(Ra)が300nmを超える金属箔を含む支持体と、該支持体上に設けられた、(A)比表面積が10m2/g以上の無機充填材を含有する樹脂組成物層とを含み、樹脂組成物層の60℃から200℃における動的粘弾性測定において、100℃以上でのtanδの最大値が、1.0以上2.0以下であることを特徴とする。
【0012】
先述のとおり、樹脂シート(の樹脂組成物層)を用いて絶縁層を形成するにあたり、従来用いられる真空ラミネート法に比し、真空プレス処理では、積層時に樹脂シート(の樹脂組成物層)に付与される圧力が高く、樹脂フローに起因して絶縁層の厚みを均一にできない場合がある。一方、樹脂の染み出しを抑制するために樹脂組成物層の粘度を高くすると、埋め込み性が低くなり、絶縁性が不良となる場合がある。本発明者は、絶縁層の厚みの均一性、埋め込み性、及び絶縁信頼性に関し、樹脂組成物層の動的粘弾性における特定温度域でのtanδの最大値(tanδは、貯蔵弾性率E’(GPa)と損失弾性率E’’(Pa)の比E’’/E’である。)が関係することを見出した。また、本発明者は、樹脂組成物層中の無機充填材の比表面積に加えて樹脂組成物層中の残留溶剤量を調整することでtanδの最大値を調整でき、その結果、絶縁層の厚みの均一性、埋め込み性及び絶縁信頼性に優れる硬化物を得ることが可能となることを知見した。
【0013】
以下、樹脂シートを構成する各層について詳述する。
【0014】
<支持体>
本発明の樹脂シートにおいて、支持体は、樹脂組成物層が設けられる支持体表面の算術平均粗さ(Ra)が300nmを超える金属箔を有する。通常、前記の算術平均粗さ(Ra)を有する支持体表面は金属箔の表面であり、この金属箔の表面が樹脂組成物層に接する。これにより、支持体から後述する導体層を形成することができる。
【0015】
樹脂組成物層が設けられる支持体表面の算術平均粗さ(Ra)としては、樹脂組成物層との密着性を向上させる観点から、300nmを超え、好ましくは350nm以上、より好ましくは400nm以上、さらに好ましくは500nm以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは1000nm以下、より好ましくは900nm以下、さらに好ましくは800nm以下である。算術平均粗さ(Ra)は、ISO 25178に準拠して測定された値であり、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0016】
樹脂組成物層が設けられる支持体表面の十点平均粗さ(Rz)としては、樹脂組成物層との密着性を向上させる観点から、好ましくは7000nmを超え、より好ましくは8000nm以上、さらに好ましくは9000nm以上である。上限については特に限定されないが、好ましくは30000nm以下、より好ましくは20000nm以下、さらに好ましくは10000nm以下である。十点平均粗さ(Rz)は、ISO 25178に準拠して測定された値であり、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0017】
支持体表面は、例えば支持体表面のエッチング処理、研磨を行うことで算術平均粗さ(Ra)及び十点平均粗さ(Rz)を前記範囲に調整することができる。
【0018】
支持体は金属箔を有し、金属箔であることが好ましい。支持体の厚みは、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは9μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは11μm以上である。上限については特に限定されないが、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。なお、金属箔は単層構造であってもよく、複層構造であってもよい。金属箔が複層構造の場合、金属箔全体の厚さが斯かる範囲であることが好ましく、そのうち極薄金属箔の厚さは、例えば、0.1μm以上10μm以下の範囲であってよい。
【0019】
金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0020】
金属箔は、単層構造であっても、異なる種類の金属もしくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。複層構造の金属箔としては、例えば、キャリア金属箔と、該キャリア金属箔と接合する極薄金属箔とを含む金属箔が挙げられる。斯かる複層構造の金属箔は、キャリア金属箔と極薄金属箔との間に、キャリア金属箔から極薄金属箔を剥離可能とする剥離層を含んでもよい。剥離層は、キャリア金属箔から極薄金属箔を剥離できれば特に限定されず、例えば、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、Pからなる群から選択される元素の合金層;有機被膜等が挙げられる。なお、支持体として複層構造の金属箔を用いる場合、樹脂組成物層は、極薄金属箔上に設けられる。
【0021】
金属箔の製造方法は特に限定されないが、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。
【0022】
支持体は、金属箔と組み合わせて、金属箔以外の任意の層を備えていてもよい。この場合、金属箔と樹脂組成物層とが直接に接することができるようにする観点から、任意の層は、金属箔の樹脂組成物層とは反対側に設けられていることが好ましい。ここで、金属箔と樹脂組成物層とが「直接に」接するとは、金属箔と樹脂組成物層との間に他の層が無いことを表す。中でも、任意の層は無いことが好ましく、よって、支持体は金属箔のみを備えることが好ましい。
【0023】
支持体は市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、JX日鉱日石金属社製の「HLP箔」、「JXUT-III箔」、三井金属鉱山社製の「マイクロシンMT-Ex銅箔」、「TP-III箔」、三井金属鉱業社製の「MW-G」等が挙げられる。
【0024】
<樹脂組成物層>
本発明の樹脂シートにおいて、支持体上に設けられた樹脂組成物層は、(A)比表面積が10m2/g以上である無機充填材を含有する。
【0025】
樹脂組成物層は、(A)成分に組み合わせて、さらに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、(B)エポキシ樹脂、(C)硬化剤、(D)ラジカル重合性化合物、(E)熱可塑性樹脂、(F)硬化促進剤、(G)重合開始剤、及び(H)その他の添加剤等が挙げられる。以下、樹脂組成物層に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0026】
-(A)比表面積が10m2/g以上である無機充填材-
樹脂組成物層は、(A)成分として、(A)比表面積が10m2/g以上である無機充填材を含有する。(A)成分を含有する樹脂組成物層を用いることにより、埋め込み性、及び絶縁層の厚みの均一性を向上させることが可能となる。
【0027】
(A)成分の比表面積としては、埋め込み性を向上させる観点、及び樹脂の染み出しに起因した厚みのバラツキを抑制して絶縁層の厚みの均一性を向上させる観点から、10m2/g以上であり、好ましくは15m2/g以上、より好ましくは20m2/g以上、さらに好ましくは25m2/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m2/g以下、50m2/g以下又は40m2/g以下である。比表面積は、BET法に従って、BET全自動比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0028】
(A)成分の平均粒径は、埋め込み性を向上させる観点、及び樹脂フローに起因した厚みのバラツキを抑制して絶縁層の厚みの均一性を向上させる観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。
【0029】
(A)成分の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で(A)成分の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出できる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0030】
(A)成分の材料としては、無機化合物を用いる。(A)成分の材料の例としては、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも炭酸カルシウム、シリカが好適であり、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。(A)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
(A)成分の市販品としては、例えば、デンカ社製の「UFP-30」、「ASFP-20」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」、「SPH516-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;などが挙げられる。
【0032】
(A)成分は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、ビニルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、アミノシラン系カップリング剤が好ましい。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0033】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM1003」(ビニルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM503」(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0034】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0035】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
【0036】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0037】
(A)成分の含有量は、tanδの最大値を適切な範囲に調整する観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは73質量%以下、より好ましくは72質量%以下、さらに好ましくは71質量%以下、70質量%以下、69質量%以下、68質量%以下であり、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。なお、本発明において、樹脂組成物層中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0038】
-(B)エポキシ樹脂-
樹脂組成物層は、(B)成分として、(B)エポキシ樹脂を含有していてもよい。(B)エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
(B)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
樹脂組成物層は、(B)成分として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、熱硬化性樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0041】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物層は、熱硬化性樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよいが、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含むことが好ましい。
【0042】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0043】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂が好ましく、グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0044】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0046】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0047】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」、「HP6000L」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」、三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR-991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
(B)成分として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:0.1~1:20、より好ましくは1:0.3~1:10、特に好ましくは1:0.5~1:5である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が斯かる範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。
【0049】
(B)成分のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、樹脂組成物層の硬化物の架橋密度が十分な硬化体をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0050】
(B)成分の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0051】
(B)成分の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す硬化体を得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。
【0052】
-(C)硬化剤-
樹脂組成物層は、(C)成分として、(C)硬化剤を含有していてもよい。(C)硬化剤は、通常、(B)成分と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有する。(C)硬化剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0053】
(C)硬化剤としては、低極性の硬化剤が好ましい。(C)硬化剤としては、例えば、活性エステル系樹脂、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、アミン系樹脂、酸無水物系樹脂などが挙げられ、中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、活性エステル系樹脂を含むことが好ましい。
【0054】
活性エステル系樹脂としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する樹脂を用いることができる。中でも、活性エステル系樹脂としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する樹脂が好ましい。当該活性エステル系樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系樹脂がより好ましい。
【0055】
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0056】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0057】
活性エステル系樹脂の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0058】
活性エステル系樹脂の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂として「EXB9416-70BK」、「EXB-8150-65T」、「HP-B-8151-62T」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
【0059】
フェノール系樹脂及びナフトール系樹脂としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系樹脂がより好ましい。
【0060】
フェノール系樹脂及びナフトール系樹脂の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN-495V」「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」等が挙げられる。
【0061】
ベンゾオキサジン系樹脂の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OD100」(ベンゾオキサジン環当量218)、「JBZ-OP100D」(ベンゾオキサジン環当量218)、「ODA-BOZ」(ベンゾオキサジン環当量218);四国化成工業社製の「P-d」(ベンゾオキサジン環当量217)、「F-a」(ベンゾオキサジン環当量217);昭和高分子社製の「HFB2006M」(ベンゾオキサジン環当量432)等が挙げられる。
【0062】
シアネートエステル系樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系樹脂の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」、「PT30S」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)、「BADCy」(ビスフェノールAジシアネート)等が挙げられる。
【0063】
カルボジイミド系樹脂の具体例としては、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V-03(カルボジイミド基当量:216、V-05(カルボジイミド基当量:216)、V-07(カルボジイミド基当量:200);V-09(カルボジイミド基当量:200);ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P(カルボジイミド基当量:302)が挙げられる。
【0064】
アミン系樹脂としては、1分子内中に1個以上のアミノ基を有する樹脂が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系樹脂は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系樹脂は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0065】
酸無水物系樹脂としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する樹脂が挙げられる。酸無水物系樹脂の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。
【0066】
樹脂組成物層がエポキシ樹脂及び硬化剤を含有する場合、エポキシ樹脂とすべての硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01~1:5の範囲が好ましく、1:0.05~1:3がより好ましく、1:0.1~1:2がさらに好ましい。ここで、「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、第1の樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「硬化剤の活性基数」とは、第1の樹脂組成物中に存在する硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂と硬化剤との量比をかかる範囲内とすることにより、柔軟性に優れる硬化体を得ることができる。
【0067】
(C)硬化剤の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
【0068】
-(D)ラジカル重合性化合物-
樹脂組成物層は、(D)成分として、ラジカル重合性化合物を含んでいてもよい。(D)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
(D)ラジカル重合性化合物は、一実施形態において、エチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物である。(D)ラジカル重合性化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、アリル基、3-シクロヘキセニル基、3-シクロペンテニル基、p-ビニルフェニル基、m-ビニルフェニル基、o-ビニルフェニル基等の不飽和炭化水素基;アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)等のα,β-不飽和カルボニル基等のラジカル重合性基を有し得る。(D)ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を2個以上有することが好ましい。
【0070】
(D)ラジカル重合性化合物としては、例えば、マレイミド系樹脂、ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、アリル系樹脂等であり得る。中でも、(D)成分としては、マレイミド系樹脂、及びビニル系樹脂のいずれかを含むことが好ましく、マレイミド系樹脂及びビニル系樹脂の両方を含むことがより好ましい。
【0071】
マレイミド系樹脂(マレイミド系ラジカル重合性化合物)は、例えば、1個以上、好ましくは2個以上のマレイミド基を有する化合物である。マレイミド系樹脂は、脂肪族アミン骨格を含む脂肪族マレイミド化合物であっても、芳香族アミン骨格を含む芳香族マレイミド化合物であってもよく、市販品としては、例えば、信越化学工業社製の「SLK-2600」、デザイナーモレキュールズ社製の「BMI-1500」、「BMI-1700」、「BMI-3000J」、「BMI-689」、「BMI-2500」(ダイマージアミン構造含有マレイミド化合物)、デザイナーモレキュールズ社製の「BMI-6100」(芳香族マレイミド化合物)、日本化薬社製の「MIR-5000-60T」、「MIR-3000-70MT」(ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物)、ケイ・アイ化成社製の「BMI-70」、「BMI-80」、大和化成工業社製「BMI-2300」、「BMI-TMH」等が挙げられる。また、マレイミド系樹脂として、発明協会公開技報公技番号2020-500211号に開示されているマレイミド系樹脂(インダン環骨格含有マレイミド化合物)を用いてもよい。
【0072】
ビニル系樹脂(ビニル系ラジカル重合性化合物(スチレン系ラジカル重合性化合物ともいう))は、例えば、芳香族炭素原子に直接結合した1個以上、好ましくは2個以上のビニル基を有する化合物である。ビニル系樹脂としては、例えば、ジビニルベンゼン、2,4-ジビニルトルエン、2,6-ジビニルナフタレン、1,4-ジビニルナフタレン、4,4’-ジビニルビフェニル、1,2-ビス(4-ビニルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ビニルフェニル)プロパン、ビス(4-ビニルフェニル)エーテル等の低分子量(分子量1000未満)のスチレン系化合物;ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル樹脂、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体等の高分子量(分子量1000以上)のスチレン系化合物等が挙げられる。スチレン系ラジカル重合性化合物の市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ODV-XET(X03)」、「ODV-XET(X04)」、「ODV-XET(X05)」(スチレン-ジビニルベンゼン共重合体)、三菱ガス化学社製の「OPE-2St 1200」、「OPE-2St 2200」(ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル樹脂)が挙げられる。
【0073】
(メタ)アクリル系樹脂((メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物)は、例えば、1個以上、好ましくは2個以上のアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する化合物である。(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン-1,3-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の低分子量(分子量1000未満)の脂肪族(メタ)アクリル酸エステル化合物;ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等の低分子量(分子量1000未満)のエーテル含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリス(3-ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等の低分子量(分子量1000未満)のイソシアヌレート含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂等の高分子量(分子量1000以上)のアクリル酸エステル化合物等が挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂の市販品としては、例えば、新中村化学工業社製の「A-DOG」(ジオキサングリコールジアクリレート)、共栄社化学社製の「DCP-A」(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、「DCP」(トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート)、日本化薬株式会社の「KAYARAD R-684」(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、「KAYARAD R-604」(ジオキサングリコールジアクリレート)、SABICイノベーティブプラスチックス社製の「SA9000」、「SA9000-111」(メタクリル変性ポリフェニレンエーテル)等が挙げられる。
【0074】
アリル系樹脂(アリル系ラジカル重合性化合物)は、例えば、1個以上、好ましくは2個以上のアリル基を有する化合物である。アリル系樹脂としては、例えば、ジフェン酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリル、2,3-ナフタレンカルボン酸ジアリル等の芳香族カルボン酸アリルエステル化合物;1,3,5-トリアリルイソシアヌレート、1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレート等のイソシアヌル酸アリルエステル化合物;2,2-ビス[3-アリル-4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン等のエポキシ含有芳香族アリル化合物;ビス[3-アリル-4-(3,4-ジヒドロ-2H‐1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェニル]メタン等のベンゾオキサジン含有芳香族アリル化合物;1,3,5-トリアリルエーテルベンゼン等のエーテル含有芳香族アリル化合物;ジアリルジフェニルシラン等のアリルシラン化合物等が挙げられる。アリル系樹脂の市販品としては、日本化成社製の「TAIC」(1,3,5-トリアリルイソシアヌレート)、日触テクノファインケミカル社製の「DAD」(ジフェン酸ジアリル)、和光純薬工業社製の「TRIAM-705」(トリメリット酸トリアリル)、日本蒸留工業社製の商品名「DAND」(2,3-ナフタレンカルボン酸ジアリル)、四国化成工業社製「ALP-d」(ビス[3-アリル-4-(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェニル]メタン)、日本化薬社製の「RE-810NM」(2,2-ビス[3-アリル-4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン)、四国化成社製の「DA-MGIC」(1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレート)等が挙げられる。
【0075】
(D)成分のエチレン性不飽和結合当量は、好ましくは20g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~2500g/eq.、さらに好ましくは70g/eq.~2000g/eq.、特に好ましくは90g/eq.~1500g/eq.である。エチレン性不飽和結合当量は、エチレン性不飽和結合1当量あたりのラジカル重合性化合物の質量である。
【0076】
(D)成分の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは40000以下、より好ましくは10000以下、さらに好ましくは5000以下、特に好ましくは3000以下である。下限は、特に限定されるものではないが、例えば、150以上等とし得る。
【0077】
(D)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上である。(D)成分の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。
【0078】
樹脂組成物層に含有させる成分としては、樹脂フロー及び絶縁信頼性を改善する観点から、極性の低い材料を用いることが好ましい。このような極性の低い材料としては、活性エステル系樹脂、マレイミド系樹脂、ビニル系樹脂等が挙げられる。よって、樹脂シートの好適な実施形態としては、(A)成分に組み合わせて、(B)エポキシ樹脂、(C)硬化剤及び(D)ラジカル重合性化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましく、(A)成分に組み合わせて、活性エステル系樹脂、マレイミド系樹脂、及びビニル系樹脂のいずれかを含有することがより好ましい。
【0079】
-(E)熱可塑性樹脂-
樹脂組成物層は、(E)成分として、(E)熱可塑性樹脂を含有していてもよい。(E)成分を樹脂組成物層に含有させることで、良好な機械強度を呈する硬化物を得ることが可能となる。(E)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
(E)成分の重量平均分子量(Mn)は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは5000以上、より好ましくは8000以上、特に好ましくは10000以上であり、好ましくは100000以下、より好ましくは80000以下、特に好ましくは50000以下である。(E)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0081】
(E)成分としては、重量平均分子量が上記範囲内である高分子量であるものを使用することができる。このような成分としては、例えばポリイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;エラストマーが挙げられる。中でも、(E)成分としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、ポリイミド樹脂、エラストマー及びフェノキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0082】
ポリイミド樹脂としては、下記式(e1)で表される構造単位(以下、「構造単位(e1)」ともいう)を含むものが挙げられる(以下、「第1のポリイミド樹脂」ということがある。)。第1のポリイミド樹脂中において、構造単位(e1)の数は、1以上であり、特に限定されるものではないが、100以下、50以下、30以下とし得る。構造単位(e1)が複数である場合、構造単位(e1)を繰り返し単位として互いに連結されていてもよいし、互いに連結されていなくてもよい。互いに連結されていない場合、複数の構造単位(e1)は、それらの間に、他の構造単位(例えば、後述する式(e2)で表される構造単位)が介在することが好ましい。
【0083】
構造単位(e1)は、下記式(e1)で表される。
【化1】
[式(e1)中、
R
1は、下記式(e1-1)で表される4価の基であり、
R
2は、下記式(e1-2)で表される2価の基である。
【0084】
【化2】
(式(e1-1)中、
Ar
11、Ar
12、Ar
13及びAr
14は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族環を表し、
L
11、L
12及びL
13は、それぞれ独立に、2価の連結基を表し、
nc1は、0以上の整数を表す。)
【0085】
【化3】
(式(e1-2)中、
Ar
21、Ar
22、Ar
23及びAr
24は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族環を表し、
L
21、L
22及びL
23は、それぞれ独立に、2価の連結基を表し、
nc2は、1以上の整数を表す。)]
【0086】
式(e1-1)中、Ar11、Ar12、Ar13及びAr14が表す芳香族環(以下、「芳香族環C」ともいう)は、好ましくは炭素原子数6~100、より好ましくは6~50の芳香族環であり、さらに好ましくは炭素原子数6~100、さらにより好ましくは6~50の芳香族炭素環である。したがって、好適な一実施形態において、式(e1-1)中、Ar11、Ar12、Ar13及びAr14が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数6~14の芳香族炭素環である。ここで、「芳香族環」という用語は、本明細書において、環上のπ電子系に含まれる電子数が4n+2個(nは自然数)であるヒュッケル則に従う環を意味し、単環式の芳香族環、及び2個以上の単環式の芳香族環が縮合した縮合芳香族環を含む。芳香族環は、炭素環又は複素環であり得る。芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等の単環式の芳香族環;ナフタレン環、アントラセン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾイミダゾール環、インダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、アクリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、フタラジン環等の2個以上の単環式の芳香族環が縮合した縮合環;インダン環、フルオレン環、テトラリン環等の1個以上の単環式の芳香環に1個以上の単環式の非芳香族環が縮合した縮合環等が挙げられる。このうち、炭素原子数6~14の芳香族炭素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
【0087】
式(e1-1)中、Ar11、Ar12、Ar13及びAr14が置換基を有する芳香族環を表す場合、該置換基の数は限定されない。そのような置換基(以下、「置換基S」ともいう)としては、互いに独立して、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、1価の複素環基、アルキリデン基、アミノ基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基及びオキソ基が挙げられる。
【0088】
式(e1-1)中、L11、L12及びL13が表す2価の連結基は、好ましくは、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及び珪素原子から選ばれる1個以上(例えば1~3000個、1~1000個、1~100個、1~50個)の骨格原子からなる2価の基である。2価の連結基の例としては、-SO2-、-CO-、-COO-、-O-、-S-、-O-C6H4-O-(ここで、-C6H4-は、フェニレン基を表す。)、-O-C6H4-C(CH3)2-C6H4-O-、-COO-(CH2)q-OCO-(ここで、qは、1~20の整数を表す。)、-COO-H2C-HC(-O-C(=O)-CH3)-CH2-OCO-、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-NR0-(ここで、R0は、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基を表す。)及び-C(=O)-NR0-が挙げられる。アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基、又は炭素原子数1~4のアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ジメチルメチレン基等が挙げられ、ジメチルメチレン基が好ましい。アルケニレン基としては、炭素原子数2~10のアルケニレン基が好ましく、炭素原子数2~6のアルケニレン基がより好ましく、炭素原子数2~5のアルケニレン基がさらに好ましい。アリーレン基、ヘテロアリーレン基としては、炭素原子数6~20のアリーレン基又はヘテロアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基又はヘテロアリーレン基がより好ましい。上述のアルキル基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基は、さらに置換基を有していてもよい。当該置換基の例は、置換基Sの例と同じである。L11、L12及びL13が表す2価の連結基は、芳香族環を含まないことが好ましい。一実施形態において、L11が表す2価の連結基とL13が表す2価の連結基とが互いに同じであり、L11が表す2価の連結基とL12が表す2価の連結基とが互いに異なる。好適な一実施形態において、式(e1-1)中、L11及びL13が-O-であり、L12が置換基を有していてもよいアルキレン基であり、より好適な一実施形態において、式(e1-1)中、Ar11、Ar12、Ar13及びAr14が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数6~14の芳香族炭素環であり、かつ、式(e1-1)中、L11及びL13が-O-であり、L12が置換基を有していてもよいアルキレン基である。さらに好適な一実施形態において、式(e1-1)中、L11及びL13が-O-であり、L12がジメチルメチレン基である。
【0089】
式(e1-2)中、Ar21、Ar22、Ar23及びAr24が表す芳香族環及び当該芳香族環が有していてもよい置換基の例は、それぞれ、芳香族環C及び置換基Sの例と同じである。したがって、好適な一実施形態において、式(e1-2)中、Ar21、Ar22、Ar23及びAr24が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数6~14の芳香族炭素環である。また、好適な一実施形態において、式(e1-2)中、L21及びL23が-O-であり、L22が置換基を有していてもよいアルキレン基であり、より好適な一実施形態において、式(e1-2)中、Ar21、Ar22、Ar23及びAr24が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数6~14の芳香族炭素環であり、かつ、式(e1-2)中、L21及びL23が-O-であり、L22が置換基を有していてもよいアルキレン基である。さらに好適な一実施形態において、式(e1-2)中、L21及びL23が-O-であり、L22がジメチルメチレン基である。特に好適な一実施形態において、式(e1-1)中、Ar11、Ar12、Ar13及びAr14が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数6~14の芳香族炭素環であり、かつ、式(e1-2)中、Ar21、Ar22、Ar23及びAr24が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数6~14の芳香族炭素環である。また、別の特に好適な一実施形態において、式(e1-1)中、L11及びL13が-O-であり、L12が置換基を有していてもよいアルキレン基であり、かつ、式(e1-2)中、L21及びL23が-O-であり、L22が置換基を有していてもよいアルキレン基である。より特に好適な一実施形態において、式(e1-1)中、Ar11、Ar12、Ar13及びAr14が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数6~14の芳香族炭素環であり、式(e1-2)中、Ar21、Ar22、Ar23及びAr24が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数6~14の芳香族炭素環であり、式(e1-1)中、L11及びL13が-O-であり、L12が置換基を有していてもよいアルキレン基であり、かつ、式(e1-2)中、L21及びL23が-O-であり、L22が置換基を有していてもよいアルキレン基である。
【0090】
式(e1-1)中、nc1は、好ましくは1以上の整数を表す。nc1が表す整数の上限は、特に制限されるものではないが、例えば50、40、30又は20とし得る。
【0091】
式(e1-2)中、nc2は、好ましくは2以上の整数を表す。nc2が表す整数の上限は、特に制限されるものではないが、例えば60、50、40又は30とし得る。ある実施形態において、式(e1-1)中、nc2が示す整数は、nc1が示す整数よりも大きく、かつ、nc1+5よりも小さい。特定の実施形態において、式(e1-1)中、nc1が1であり、かつ、nc2が2である。
【0092】
上述した構造単位(e1)は、例えば公知のポリイミド樹脂の製造方法、典型的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを含むモノマー組成物を重合させてイミド化する方法又はテトラカルボン酸二無水物とジイソシアネート化合物とを含むモノマー組成物を重合させてイミド化する方法にしたがって得ることが可能である。なお、第1のポリイミド樹脂は、イミド化の進行過程において生じ得るポリアミド酸構造を一部含むことは許容される。
【0093】
上記特定の実施形態における構造単位(e1)は、例えば、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(下記式(eI)で表される化合物;以下、「BPADA」ともいう)と、4,4’-[1,4-フェニレンビス[(1-メチルエチリデン)-4,1-フェニレンオキシ]]ビスベンゼンアミン(下記式(eII)で表される化合物;以下、「BPPAN」ともいう)と、を反応させることによって得ることが可能である。すなわち、斯かる構造単位(e1)におけるR1は、BPADAに由来する骨格であり、かつ、R2は、BPPANに由来する骨格である。
【0094】
【0095】
【0096】
また、第1のポリイミド樹脂は、さらに下記式(e2)で表される構造単位(以下、「構造単位(e2)」ともいう)を含む樹脂であってもよい。したがって、ある実施形態において、第1のポリイミド樹脂が、さらに下記式(e2)で表される構造単位を含む樹脂である。第1のポリイミド樹脂中において、構造単位(e2)の数は、0以上であり、特に限定されるものではないが、100以下、50以下、30以下とし得る。構造単位(e2)は、そのイミド基の窒素原子を介して、構造単位(e1)の基R2と連結されていてもよいし、構造単位(e1)と連結されていなくてもよい。構造単位(e2)が複数である場合、構造単位(e2)を繰り返し単位として互いに連結されていてもよいし、互いに連結されていなくてもよい。互いに連結されていない場合、複数の構造単位(e2)は、それらの間に、他の構造単位(例えば、構造単位(e1))が介在することが好ましい。
【0097】
構造単位(e2)は、下記式(e2)で表される。
【化6】
(式(e2)中、
R
3は、置換基を有していてもよい4価の脂肪族基又は置換基を有していてもよい4価の芳香族基を表し、
R
4は、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。但し、R
3がR
1と同じ場合、R
4はR
2とは異なり、R
4がR
2と同じ場合、R
3はR
1とは異なる。)
【0098】
式(e2)中、R3が表す4価の脂肪族基は、少なくとも炭素原子を含み、好ましくは、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及び珪素原子から選ばれる1個以上(例えば1~3000個、1~1000個、1~100個、1~50個)の骨格原子からなる4価の基である。式(e2)中、R3が表す4価の脂肪族基は、より好ましくは炭素原子数1~100、さらに好ましくは1~50の4価の脂肪族基である。式(e2)中、R3が置換基を有する4価の脂肪族基を表す場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じである。
【0099】
式(e2)中、R3が表す4価の芳香族基は、好ましくは炭素原子数6~100、より好ましくは6~50の4価の芳香族基であり、さらに好ましくは炭素原子数6~100、さらにより好ましくは6~50の4価の芳香族炭化水素基である。芳香族基は、少なくとも芳香族環を含む。芳香族基に含まれる芳香族環の例は、式(e1-1)中、Ar11、Ar12、Ar13及びAr14が表す芳香族環の例と同じである。式(e2)中、R3が置換基を有する4価の芳香族基を表す場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じである。
【0100】
R3が表す4価の芳香族基としては、置換基を有していてもよい芳香族基を有するテトラカルボン酸二無水物から2つの酸無水物基を除いた基が挙げられる。芳香族基は、少なくとも芳香族環を含む。芳香族基に含まれる芳香族環の例は、芳香族環Cの例と同じである。当該芳香族基が置換基を有する場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じである。置換基を有していてもよい芳香族基を有するテトラカルボン酸二無水物の具体例を挙げると、BPADA、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及び3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0101】
式(e2)中、R4が表す2価の脂肪族基は、少なくとも炭素原子を含み、好ましくは、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及び珪素原子から選ばれる1個以上(例えば1~3000個、1~1000個、1~100個、1~50個)の骨格原子からなる2価の基である。式(e2)中、R4が表す2価の脂肪族基は、より好ましくは炭素原子数1~100、さらに好ましくは1~50の2価の脂肪族基である。式(e2)中、R4が置換基を有する2価の脂肪族基を表す場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じであり、例えば、炭素数1~6のアルキル基である。したがって、ある実施形態において、R4が、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基であり、当該置換基の1つが、炭素数1~6のアルキル基である。また、特定の実施形態において、R4が、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基であり、かつ、イソホロンジアミンから2つのアミノ基を除いた2価の基である。
【0102】
R4が置換基を有していてもよい2価の脂肪族基を表す場合、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミンから選択される、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物から2つのアミノ基を除いた基であってもよい。これらジアミン化合物は、その脂肪族基が直鎖型であることに特徴がある。
【0103】
R4が置換基を有していてもよい2価の脂肪族基を表す場合、1,2-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、1,3-ジアミノ-2-メチルプロパン、1,3-ジアミノ-2,2-ジメチルプロパン、1,3-ジアミノペンタン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタンから選択される、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物から2つのアミノ基を除いた基であってもよい。これらジアミン化合物は、その脂肪族基が分岐型であることに特徴がある。
【0104】
R4が置換基を有していてもよい2価の脂肪族基を表す場合、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(イソホロンジアミン)、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2,5(6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3-ジアミノアダマンタン、3,3’-ジアミノ-1,1’-ビアダマンチル及び1,6-ジアミノアダマンタンから選択される、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物から2つのアミノ基を除いた基であってもよい。これらジアミン化合物は、その脂肪族基が脂環式炭素環を含むことに特徴がある。
【0105】
式(e2)中、R4が表す2価の芳香族基は、好ましくは炭素原子数6~100、より好ましくは6~50の2価の芳香族基であり、さらに好ましくは炭素原子数6~100、さらにより好ましくは6~50の2価の芳香族炭化水素基である。芳香族基は、少なくとも芳香族環を含む。芳香族基に含まれる芳香族環の例は、芳香族環Cの例と同じである。式(e2)中、R4が置換基を有する2価の芳香族基を表す場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じである。
【0106】
R4が、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す場合、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-フェニレンジアミン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンから選択される、置換基を有していてもよい芳香族基を有するジアミン化合物から2つのアミノ基を除いた基であってもよい。
【0107】
但し、R3がR1と同じ場合、R4はR2とは異なり、R4がR2と同じ場合、R3はR1とは異なる。ある実施形態において、R3がR1と同じである。すなわち、構造単位(e2)は、構造単位(e1)とは異なる。
【0108】
上述した構造単位(e2)は、例えば、公知のポリイミド樹脂の製造方法にしたがって得ることが可能である。上記特定な実施形態における構造単位(e2)は、例えば、BPADAと、イソホロンジアミンとを反応させることによって得ることが可能である。すなわち、斯かる構造単位(e2)におけるR3は、BPADAに由来する骨格であり、かつ、R4は、イソホロンジアミンに由来する骨格である。R3がR1と同じである場合、R3及びR1は、BPADAに由来する骨格である。なお、第1のポリイミド樹脂は、イミド化の進行過程において生じ得るポリアミド酸構造を一部含むことは許容される。
【0109】
第1のポリイミド樹脂は、構造単位(e1)を有する限り、その末端構造は特に限定されない。例えば、ポリイミド樹脂の末端構造は、ポリイミド樹脂の原料化合物(例えばBPADA等の酸、BPPAN等のアミン化合物)由来の酸無水物基又はカルボキシル基やアミノ基であってもよい。原料化合物にマレイン酸無水物がさらに含まれる場合、ポリイミド樹脂の末端構造はマレイミド基であってもよい。
【0110】
ポリイミド樹脂のガラス転移温度Tg(c)(℃)は、好ましくは140℃以上、より好ましくは145℃以上、さらに好ましくは150℃以上、さらにより好ましくは160℃以上、特に好ましくは170℃以上である。上限は特に限定されないが、300℃以下等とし得る。ガラス転移温度Tg(c)(℃)の測定は、リガク社製TMA装置を用い25℃から250℃まで5℃/分の昇温速度で測定することができる。
【0111】
ポリイミド樹脂における構造単位(e1)の含有割合(百分率)は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらにより好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上である。ポリイミド樹脂の構造単位(e1)の含有割合(百分率)は、例えば、98質量%以下、95質量%以下、90質量%以下又は85質量%以下とし得る。ここで、構造単位(e1)の含有割合(百分率)は、ポリイミド樹脂を合成するために用いた各材料の仕込み量(質量部)の割合から算出することができ、これに代えて、ポリイミド樹脂の分子量と、構造単位(e1)の式量とを特定し、構造単位(e1)の式量の分子量に対する割合として算出してもよい。ポリイミド樹脂が重合体である場合には、重合度から推定される構造単位(e1)の含有割合(百分率)が前記の範囲内となることが好ましい。
【0112】
ポリイミド樹脂がさらに構造単位(e2)を含む樹脂である場合、当該構造単位(e2)の含有割合(百分率)は、0質量%(すなわち構造単位(e2)不含)を許容し、本発明の効果を過度に損なわない限りその上限は限定されない。そこで、ポリイミド樹脂における構造単位(e2)の含有割合(百分率)は、例えば、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上又は30質量%以上、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下又は60質量%以下とし得る。ここで、構造単位(e2)の含有割合(百分率)は、構造単位(e1)の含有割合(百分率)と同様に算出される。ポリイミド樹脂が重合体である場合には、重合度から推定される構造単位(e2)の含有割合(百分率)が前記の範囲内となることが好ましい。
【0113】
ポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、通常1,000以上であり、好ましくは1,00~10,000、より好ましくは1,000~5,000、さらに好ましくは1,000~3,000である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0114】
ポリイミド樹脂の他の実施形態として、BPADAに由来する第1の骨格と、BPPANに由来する第2の骨格とを含む樹脂がある(以下、「第2のポリイミド樹脂」ということがある。)。第1の骨格は、BPADAに由来する骨格と同一の骨格であれば、その材料は、BPADAに限られない。第2の骨格は、BPPANに由来する骨格と同一の骨格であれば、その材料は、BPPANに限られない。第2のポリイミド樹脂中において、第1の骨格の数は、1以上であり、特に限定されるものではないが、100以下、50以下、30以下とし得る。第2のポリイミド樹脂中において、第2の骨格の数は、1以上であり、特に限定されるものではないが、100以下、50以下、30以下とし得る。
【0115】
上述した第1の骨格及び第2の骨格は、例えば公知のポリイミド樹脂の製造方法、典型的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを含むモノマー組成物を重合させてイミド化する方法に由来して生じ得る。なお、第1の骨格及び第2の骨格は、テトラカルボン酸二無水物とジイソシアネート化合物とを含むモノマー組成物を重合させてイミド化する方法に由来しても生じ得る。したがって、第2のポリイミド樹脂は、第1のポリイミド樹脂が含む構造単位(e1)を含み得る。なお、第2のポリイミド樹脂は、イミド化の進行過程において生じ得るポリアミド酸構造を一部含むことは許容される。
【0116】
また、第2のポリイミド樹脂は、第2の骨格とは異なる第3の骨格をさらに含む樹脂であってもよい。この第3の骨格は、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物及び置換基を有していてもよい芳香族基を有するジアミン化合物からなる群から選択される1種以上のジアミン化合物に由来する骨格である。したがって、ある実施形態において、第2のポリイミド樹脂が、第2の骨格とは異なる第3の骨格をさらに含む樹脂であり、当該第3の骨格が、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物及び置換基を有していてもよい芳香族基を有するジアミン化合物からなる群から選択される1種以上のジアミン化合物に由来する骨格である。第2の特定ポリイミド樹脂中において、第3の骨格の数は、0以上であり、特に限定されるものではないが、100以下、50以下、30以下とし得る。
【0117】
ジアミン化合物が、脂肪族基を有するジアミン化合物である場合、当該脂肪族基は、少なくとも炭素原子を含み、好ましくは、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及び珪素原子から選ばれる1個以上(例えば1~3000個、1~1000個、1~100個、1~50個)の骨格原子からなる基であり、より好ましくは炭素原子数1~100、さらに好ましくは1~50の脂肪族基である。当該脂肪族基が置換基を有する場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じである。
【0118】
ジアミン化合物が、芳香族基を有するジアミン化合物である場合、当該芳香族基は、好ましくは炭素原子数6~100、より好ましくは6~50の4価の芳香族基であり、さらに好ましくは炭素原子数6~100、さらにより好ましくは6~50の4価の芳香族炭化水素基である。芳香族基は、少なくとも芳香族環を含む。芳香族基に含まれる芳香族環の例は、芳香族環Cの例と同じである。当該芳香族基が置換基を有する場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じである。
【0119】
第3の骨格は、炭素数1~6のアルキル基を置換基として有する脂肪族基を有するジアミン化合物に由来する骨格であってもよい。また、第3の骨格は、イソホロンジアミンに由来する骨格であってもよい。したがって、ある実施形態において、第2のポリイミド樹脂は、炭素数1~6のアルキル基を置換基として有する脂肪族基を有するジアミン化合物に由来する骨格をさらに含む樹脂である。その具体例を挙げると、第3の骨格が、イソホロンジアミンに由来する骨格である。イソホロンジアミン(5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン)に由来する骨格は、5-イソシアナト-1-(イソシアナトメチル)-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンに由来する骨格であってもよい。
【0120】
第3の骨格は、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-フェニレンジアミン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等の置換基を有していてもよい芳香族基を有するジアミン化合物から選択される1種以上に由来する骨格であってもよい。このような第3の骨格は、芳香族基を有することに特徴がある。
【0121】
第3の骨格は、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン等の置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物から選択される1種以上に由来する骨格であってもよい。このような第3の骨格は、脂肪族基が直鎖型であることに特徴がある。
【0122】
第3の骨格は、1,2-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、1,3-ジアミノ-2-メチルプロパン、1,3-ジアミノ-2,2-ジメチルプロパン、1,3-ジアミノペンタン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン等の置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物から選択される1種以上に由来する骨格であってもよい。このような第3の骨格は、脂肪族基が分岐型であることに特徴がある。
【0123】
第3の骨格は、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(イソホロンジアミン)、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2,5(6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3-ジアミノアダマンタン、3,3’-ジアミノ-1,1’-ビアダマンチル及び1,6-ジアミノアダマンタン等の置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物から選択される1種以上に由来する骨格であってもよい。このような第3の骨格は、脂肪族基が脂環式炭素環を含むことに特徴がある。
【0124】
上述した第3の骨格は、例えば、第1の骨格の材料となり得るテトラカルボン酸二無水物と、第2の骨格の材料となり得るジアミン化合物とを含むモノマー組成物を重合させてイミド化する方法において、モノマー組成物に、第3の骨格の材料となり得るジアミン化合物又はジイソシアネート化合物を含ませるか又は重合時に順次混合することに由来して第2のポリイミド樹脂中に生じ得る。したがって、第2のポリイミド樹脂は、第1のポリイミド樹脂が含み得る構造単位(e2)を含み得る。なお、第2のポリイミド樹脂は、イミド化の進行過程において生じ得るポリアミド酸構造を一部含むことは許容される。
【0125】
また、第2のポリイミド樹脂は、第1の骨格とは異なる第4の骨格をさらに含む樹脂であってもよい。この第4の骨格は、BPADA以外の酸からなる群から選択される1種以上の酸に由来する骨格である。第2のポリイミド樹脂中において、第4の骨格の数は、0以上であり、特に限定されるものではないが、100以下、50以下、30以下とし得る。
【0126】
BPADA以外の酸としては、置換基を有していてもよい芳香族基を有するテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。当該芳香族基は、好ましくは炭素原子数6~100、より好ましくは6~50の芳香族基であり、さらに好ましくは炭素原子数6~100、さらにより好ましくは6~50の芳香族炭化水素基である。芳香族基は、少なくとも芳香族環を含む。芳香族基に含まれる芳香族環の例は、芳香族環Cの例と同じである。当該芳香族基が置換基を有する場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じである。置換基を有していてもよい芳香族基を有するテトラカルボン酸二無水物の具体例を挙げると、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及び3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0127】
第2のポリイミド樹脂のガラス転移温度Tg(c’)(℃)は、好ましくは140℃以上、より好ましくは145℃以上、さらに好ましくは150℃以上、さらにより好ましくは160℃以上、特に好ましくは170℃以上である。上限は特に限定されないが、300℃以下等とし得る。ガラス転移温度Tg(c’)(℃)の測定は、第1のポリイミド樹脂と同様の方法に従って測定することができる。
【0128】
第2のポリイミド樹脂における第1の骨格及び第2の骨格の含有割合(百分率)の合計は、本発明の所期の効果を高める観点から、好ましくは4質量%以上、より好ましくは9質量%以上、さらに好ましくは19質量%以上、さらにより好ましくは29質量%以上、特に好ましくは39質量%以上である。第1の骨格及び第2の骨格の含有割合(百分率)の合計は、例えば、97質量%以下、94質量%以下、89質量%以下又は84質量%以下とし得る。ここで、第1の骨格及び第2の骨格の含有割合(百分率)の合計は、第2のポリイミド樹脂を合成するために用いた各材料の反応に寄与する仕込み量(質量部)の割合から算出することができ、これに代えて、第2のポリイミド樹脂の分子量と、樹脂に組み込まれた第1の骨格及び第2の骨格の式量とを特定し、第1の骨格及び第2の骨格の式量の合計の分子量に対する割合として算出してもよい。第2のポリイミド樹脂が重合体である場合には、重合度から推定される第1の骨格及び第2の骨格の含有割合(百分率)の合計が前記の範囲内となることが好ましい。
【0129】
第2のポリイミド樹脂がさらに第3の骨格を含む樹脂である場合、当該第3の骨格の含有割合(百分率)は、0質量%(すなわち第3の骨格不含)を許容し、本発明の効果を過度に損なわない限りその上限は限定されない。そこで、第2のポリイミド樹脂における第3の骨格の含有割合(百分率)は、例えば、0質量%超、4質量%以上、9質量%以上、19質量%以上又は29質量%以上、94質量%以下、89質量%以下、79質量%以下、69質量%以下又は59質量%以下とし得る。ここで、第3の骨格の含有割合(百分率)は、第1の骨格の含有割合(百分率)や第2の骨格の含有割合(百分率)と同様に算出される。第2のポリイミド樹脂が重合体である場合には、重合度から推定される第3の骨格の含有割合(百分率)が前記の範囲内となることが好ましい。第2のポリイミド樹脂がさらに第4の骨格を含む樹脂である場合、当該第4の骨格の含有割合(百分率)は、当該第3の骨格の含有割合(百分率)と同様である。
【0130】
第2のポリイミド樹脂は、BPADAに由来する第1の骨格と、BPPANに由来する第2の骨格とを含む樹脂である限り、その末端構造は特に限定されない。例えば、第2のポリイミド樹脂の末端構造は、第2のポリイミド樹脂の原料化合物(例えばBPADA等の酸、BPPAN等のアミン化合物)由来の酸無水物基又はカルボキシル基やアミノ基であってもよい。原料化合物にマレイン酸無水物がさらに含まれる場合、第2のポリイミド樹脂の末端構造はマレイミド基であってもよい。
【0131】
第2のポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、通常1,000以上であり、好ましくは1,00~10,000、より好ましくは1,000~5,000、さらに好ましくは1,000~3,000である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0132】
ポリイミド樹脂の他の実施形態として、BPADAと、BPPANとを少なくとも含有するモノマー組成物を重合させてイミド化することによって得られる樹脂がある(以下、「第3のポリイミド樹脂」ということがある。)。重合及びイミド化は、特に限定されるものではないが、通常、溶媒中で実施される。重合に際し、BPADAとBPPANの配合比は、各成分が有する官能基の数の合計に応じて定められることが好ましく、一実施形態において、モノマー組成物中におけるBPPANが有するアミノ基の数の合計:BPADAが有する酸無水物基の数の合計の比は、0.1:1~10:1の範囲内、好ましくは0.5:1~10:1の範囲内、より好ましくは0.8:1~10:1の範囲内、さらに好ましくは0.9:1~10:1の範囲内にある。イミド化は、特に限定されるものではないが、通常、溶媒中で実施され、触媒不存在下での加熱により、触媒存在下での加熱により、又は、常温での触媒存在下で実施される。本発明の所期の効果を高める観点からは、イミド化は、触媒不存在下での加熱により行われることが好ましい。第3のポリイミド樹脂は、ランダム共重合体、交互共重体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。第3のポリイミド樹脂は、斯かる重合及びイミド化の製法に限定されない。第3のポリイミド樹脂は、イミド化の進行過程において生じ得るポリアミド酸構造を一部含むことは許容される。このようにして得られる第3のポリイミド樹脂は、第1のポリイミド樹脂が含む先述の構造単位(e1)を含む。また、このようにして得られる第3のポリイミド樹脂は、第2のポリイミド樹脂が含む先述の第1の骨格及び第2の骨格を含む。
【0133】
上記モノマー組成物は、他のモノマーとして、BPADA以外の酸及び/又はBPPAN以外のジアミン化合物を含んでいてもよいし、他のモノマーを反応途中に添加してもよい。
【0134】
BPADA以外の酸としては、置換基を有していてもよい芳香族基を有するテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。当該芳香族基は、好ましくは炭素原子数6~100、より好ましくは6~50の4価の芳香族基であり、さらに好ましくは炭素原子数6~100、さらにより好ましくは6~50の4価の芳香族炭化水素基である。芳香族基は、少なくとも芳香族環を含む。芳香族基に含まれる芳香族環の例は、芳香族環Cの例と同じである。当該芳香族基が置換基を有する場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じである。置換基を有していてもよい芳香族基を有するテトラカルボン酸二無水物の具体例を挙げると、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及び3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。モノマー組成物における、BPADAの含有量に対するBPADA以外の酸の含有量のモル比は、特に限定されるものではないが、例えば、0.5以下、0.4以下、0.3以下とし得る。
【0135】
ある実施形態において、前記モノマー組成物は、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物及び置換基を有していてもよい芳香族基を有するジアミン化合物からなる群から選択される1種以上のジアミン化合物をさらに含有する。モノマー組成物における、BPPANの含有量に対するBPPAN以外のジアミン化合物の含有量のモル比は、特に限定されるものではないが、例えば、0.5以下、0.4以下、0.3以下とし得る。
【0136】
ジアミン化合物が、脂肪族基を有するジアミン化合物である場合、当該脂肪族基は、少なくとも炭素原子を含み、好ましくは、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及び珪素原子から選ばれる1個以上(例えば1~3000個、1~1000個、1~100個、1~50個)の骨格原子からなる基であり、より好ましくは炭素原子数1~100、さらに好ましくは1~50の脂肪族基である。当該脂肪族基が置換基を有する場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じである。
【0137】
ジアミン化合物が、芳香族基を有するジアミン化合物である場合、当該芳香族基は、好ましくは炭素原子数6~100、より好ましくは6~50の4価の芳香族基であり、さらに好ましくは炭素原子数6~100、さらにより好ましくは6~50の4価の芳香族炭化水素基である。芳香族基は、少なくとも芳香族環を含む。芳香族基に含まれる芳香族環の例は、芳香族環Cの例と同じである。当該芳香族基が置換基を有する場合、当該置換基の例は、置換基Sの例と同じである。ジアミン化合物が、置換基を有していてもよい芳香族基を有するジアミン化合物である場合、その例としては、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-フェニレンジアミン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等の芳香族基を有するジアミン化合物から選択される1種以上が挙げられる。
【0138】
ジアミン化合物が、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物である場合、その第1の例としては、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン等の置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物から選択される1種以上に由来する骨格であってもよい。この第1の例に係るジアミン化合物は、脂肪族基が直鎖型であることに特徴がある。
【0139】
ジアミン化合物が、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物である場合、その第2の例としては、1,2-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、1,3-ジアミノ-2-メチルプロパン、1,3-ジアミノ-2,2-ジメチルプロパン、1,3-ジアミノペンタン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン等の置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物から選択される1種以上に由来する骨格であってもよい。この第2の例に係るジアミン化合物は、脂肪族基が分岐型であることに特徴がある。
【0140】
ジアミン化合物が、置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物である場合、その第3の例としては、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(イソホロンジアミン)、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2,5(6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3-ジアミノアダマンタン、3,3’-ジアミノ-1,1’-ビアダマンチル及び1,6-ジアミノアダマンタン等の置換基を有していてもよい脂肪族基を有するジアミン化合物から選択される1種以上に由来する骨格であってもよい。この第3の例に係るジアミン化合物は、脂肪族基が脂環式炭素環を含むことに特徴がある。
【0141】
以上によれば、ある実施形態において、前記モノマー組成物が、炭素数1~6のアルキル基を置換基として有する脂肪族基を有するジアミン化合物をさらに含有する。また、特定の実施形態において、前記モノマー組成物が、イソホロンジアミンをさらに含有する。
【0142】
第3のポリイミド樹脂は、前記モノマー組成物を重合させてイミド化することによって得られる樹脂である限り、その末端構造は特に限定されない。例えば、第3のポリイミド樹脂の末端構造は、第3のポリイミド樹脂のモノマー組成物に含まれる原料化合物(例えばBPADA等の酸、BPPAN等のアミン化合物)由来の酸無水物基又はカルボキシル基やアミノ基であってもよい。原料化合物にマレイン酸無水物がさらに含まれる場合、第3のポリイミド樹脂の末端構造はマレイミド基であってもよい。
【0143】
第3のポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上であり、好ましくは1,00~10,000、より好ましくは1,000~5,000、さらに好ましくは1,000~3,000である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0144】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は、重量平均分子量が30,000以上のフェノキシ樹脂が好ましい。
【0145】
フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」;等が挙げられる。
【0146】
ポリアミドイミド樹脂は、アミドイミド構造を有する樹脂である。ポリアミドイミド樹脂は、樹脂組成物層中の他の成分との相溶性の観点から、分子構造中に脂環式構造を有するポリアミドイミド樹脂、特開平05-112760号公報に記載のシロキサン構造を有するポリアミドイミド樹脂、嵩高い分岐鎖構造を有するポリアミドイミド樹脂、非対称モノマーを原料とするポリアミドイミド樹脂、多分岐構造を有するポリアミドイミド樹脂等を用いることが好ましい。
【0147】
中でも、ポリアミドイミド樹脂は、イソシアヌル環構造を有することで、樹脂ワニスの相溶性、及び分散性が向上する観点から、(i)分子構造中にイソシアヌル環構造を有するポリアミドイミド樹脂(すなわち、イソシアヌル環構造とイミド骨格又はアミド骨格とを有するポリアミドイミド樹脂)(ii)分子構造中にイソシアヌル環構造と脂環式構造とを有するポリアミドイミド樹脂(すなわち、イソシアヌル環構造と脂環式構造とイミド骨格又はアミド骨格とを有するポリアミドイミド樹脂)、(iii)イソシアヌル環構造と脂環式構造とを含む繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂(すなわち、イソシアヌル環構造と脂環式構造とイミド骨格又はアミド骨格とを含む繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂)がより好ましい。
【0148】
前記(i)~(iii)のポリアミドイミド樹脂の好適な一実施形態としては、(1)脂環式構造ジイソシアネートから誘導されるイソシアヌル環含有ポリイソシアネート化合物と3個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸の酸無水物とを反応させて得られる化合物であるカルボン酸基含有分岐型ポリアミドイミド(以下、当該化合物を「(化合物E-e1)」ということがある。)、(2)化合物(E-e1)に1個のエポキシ基と1個以上のラジカル重合性不飽和基を有する化合物を反応させて得られる化合物であるカルボン酸基含有分岐型重合性ポリアミドイミド(以下、「化合物(E-e2)」ということがある。)、或いは、(3)化合物(E-e1)の合成過程で残イソシアネート基に1個の水酸基と1個以上のラジカル重合性不飽和基を有する化合物を反応させて得られる化合物であるカルボン酸基含有分岐型重合性ポリアミドイミド(以下、「化合物(E-e3)」ということがある。)等が挙げられる。
【0149】
化合物(E-e1)としては、具体的に下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。なお、一般式(I)で表される化合物中の繰り返し単位を繰り返し単位(I-1)とする。
【化7】
(式中、wは0~15を表す。)
【0150】
化合物(E-e2)としては、一般式(I)中の繰り返し単位(I-1)の任意の一部のカルボキシル基及び/又は末端カルボキシル基にGMA(グリシジルメタクリレート)が付加した構造(I-2)を有する化合物(II)が挙げられる。
【化8】
(式中、R
40は式(I)中の残基を表す。)
【0151】
カルボキシル基のGMA変性の割合は化合物(E-e1)のカルボキシル基のモル数に対して、GMAを付加する範囲が好ましくは0.3mol%以上、より好ましくは0.5mol%以上、さらに好ましくは0.7mol%以上、又は0.9mol%以上である。上限は、好ましくは50mol%以下、より好ましくは40mol%以下、さらに好ましくは30mol%以下、又は20mol%以下である。
【0152】
化合物(E-e3)としては、上記式(I)において繰り返し単位(I-1)の任意の一部及び/又は末端イミド基がイソシアネート残基であり、これらにペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基が付加した構造(I-3)を有する化合物(III)が挙げられる。
【化9】
(式中、R’は式(I)中の残基を表す。)
【0153】
ペンタエリスリトールトリアクリレートの付加量は、仕込み時のポリイソシアネートのイソシアネート基のmol数に対して、好ましくは40mol%以下、より好ましくは38mol%以下、さらに好ましくは35mol%以下である。一方、ペンタエリスリトールトリアクリレートの付加量は、付加することによる効果を十分に得るという観点から、仕込み時のポリイソシアネートのイソシアネート基のmol数に対して、好ましくは0.3mol%以上、より好ましくは3mol%以上、さらに好ましくは5mol%以上である。
【0154】
ポリアミドイミド樹脂は、公知の種々の方法で合成することができる。ポリアミドイミド樹脂の合成方法としては、例えば国際公開第2010/074197号の段落0020~0030の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0155】
ポリアミドイミド樹脂は市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、DIC社製の「ユニディックV-8000」、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0156】
ポリエステル樹脂は、樹脂組成物層中の他の成分との相溶性の観点から、分子構造中にフルオレン構造を有することが好ましく、フルオレン構造に加えて、ジオール由来の構造単位と、ジカルボン酸由来の構造単位とを有することが好ましい。
【0157】
ポリエステル樹脂の具体例としては、大阪ガスケミカル社製の「OKP4HT」等が挙げられる。
【0158】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0159】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
【0160】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0161】
(E)成分におけるエラストマーとは、柔軟性を有する樹脂であり、好ましくは、ゴム弾性を有する樹脂または他の成分と重合してゴム弾性を示す樹脂である。ゴム弾性としては、例えば、日本工業規格(JIS K7161)に準拠し、温度25℃、湿度40%RHにて、引っ張り試験を行った場合に、1GPa以下の弾性率を示す樹脂が挙げられる。エラストマーは、通常、有機溶剤に溶解しうる不定形の樹脂成分である。このエラストマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0162】
一実施形態において、エラストマーは、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、ポリカーボネート構造、ポリスチレン構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂であることが好ましい。「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及びアクリレートを指す。
【0163】
また、別の一実施形態において、エラストマーは、ガラス転移温度(Tg)が25℃以下の樹脂及び25℃以下で液状である樹脂から選択される1種以上であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)が25℃以下である樹脂のガラス転移温度は、好ましくは20℃以下、より好ましくは15℃以下である。ガラス転移温度の下限は特に限定されないが、通常-15℃以上とし得る。また、25℃で液状である樹脂としては、好ましくは20℃以下で液状である樹脂、より好ましくは15℃以下で液状である樹脂である。ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定)により測定しうる。
【0164】
エラストマーとしては、例えば、ポリブタジエン構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリブタジエン構造は、主鎖に含まれていてもよく、側鎖に含まれていてもよい。また、ポリブタジエン構造は、一部又は全てが、水素添加されていてもよい。ポリブタジエン構造を含有する樹脂を「ポリブタジエン樹脂」ということがある。ポリブタジエン樹脂の具体例としては、クレイバレー社製の「Ricon 130MA8」、「Ricon 130MA13」、「Ricon 130MA20」、「Ricon 131MA5」、「Ricon 131MA10」、「Ricon 131MA17」、「Ricon 131MA20」、「Ricon 184MA6」(酸無水物基含有ポリブタジエン)、日本曹達社製の「GQ-1000」(水酸基、カルボキシル基導入ポリブタジエン)、「G-1000」、「G-2000」、「G-3000」(両末端水酸基ポリブタジエン)、「GI-1000」、「GI-2000」、「GI-3000」(両末端水酸基水素化ポリブタジエン)、ナガセケムテックス社製の「FCA-061L」(水素化ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂)、等が挙げられる。また、ポリブタジエン樹脂の具体例としては、ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号に記載のポリイミド)、フェノール性水酸基含有ブタジエン等が挙げられる。該ポリイミド樹脂のブタジエン構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0165】
エラストマーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリ(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂を「ポリ(メタ)アクリル樹脂」ということがある。ポリ(メタ)アクリル樹脂の具体例としては、ナガセケムテックス社製のテイサンレジン、根上工業社製の「ME-2000」、「W-116.3」、「W-197C」、「KG-25」、「KG-3000」等が挙げられる。
【0166】
エラストマーとしては、例えば、ポリカーボネート構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリカーボネート構造を含有する樹脂を「ポリカーボネート樹脂」ということがある。このような樹脂としては、反応基を持たないカーボネート樹脂、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂、エポキシ基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ここで反応基とは、ヒドロキシ基、フェノール性水酸基、カルボキシ基、酸無水物基、イソシアネート基、ウレタン基、及びエポキシ基等他の成分と反応し得る官能基のことをいう。
ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、「FPC2136」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。またヒドロキシル基末端ポリカーボネート、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミドを使用することもできる。該ポリイミド樹脂のカーボネート構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、国際公開第2016/129541号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0167】
エラストマーとしては、例えば、ポリシロキサン構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリシロキサン構造を含有する樹脂を「シロキサン樹脂」ということがある。シロキサン樹脂の具体例としては、信越シリコーン社製の「SMP-2006」、「SMP-2003PGMEA」、「SMP-5005PGMEA」、アミン基末端ポリシロキサンおよび四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(国際公開第2010/053185号、特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等)等が挙げられる。
【0168】
エラストマーとしては、例えば、ポリアルキレン構造又はポリアルキレンオキシ構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリアルキレン構造を含有する樹脂を「アルキレン樹脂」ということがある。また、ポリアルキレンオキシ構造を含有する樹脂を「アルキレンオキシ樹脂」ということがある。ポリアルキレンオキシ構造は、炭素原子数2~15のポリアルキレンオキシ構造が好ましく、炭素原子数3~10のポリアルキレンオキシ構造がより好ましく、炭素原子数5~6のポリアルキレンオキシ構造が特に好ましい。アルキレン樹脂及びアルキレンオキシ樹脂の具体例としては、旭化成せんい社製の「PTXG-1000」、「PTXG-1800」等が挙げられる。
【0169】
エラストマーとしては、例えば、ポリイソプレン構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリイソプレン構造を含有する樹脂を「イソプレン樹脂」ということがある。イソプレン樹脂の具体例としては、クラレ社製の「KL-610」、「KL613」等が挙げられる。
【0170】
エラストマーとしては、例えば、ポリイソブチレン構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリイソブチレン構造を含有する樹脂を「イソブチレン樹脂」ということがある。イソブチレン樹脂の具体例としては、カネカ社製の「SIBSTAR-073T」(スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体)、「SIBSTAR-042D」(スチレン-イソブチレンジブロック共重合体)等が挙げられる。
【0171】
エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン構造を含有する樹脂が挙げられる。ポリスチレン構造を含有する樹脂を「スチレン樹脂」ということがある。スチレン樹脂は、ポリスチレン樹脂は、スチレン単位に組み合わせて、前記のスチレン単位とは異なる任意の繰り返し単位を含む共重合体であってもよく、水添ポリスチレン樹脂であってもよい。
【0172】
任意の繰り返し単位としては、例えば、共役ジエンを重合して得られる構造を有する繰り返し単位(共役ジエン単位)、それを水素化して得られる構造を有する繰り返し単位(水添共役ジエン単位)等が挙げられる。共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等の脂肪族共役ジエン;クロロプレン等のハロゲン化脂肪族共役ジエン等が挙げられる。共役ジエンとしては、本発明の効果を顕著に得る観点から脂肪族共役ジエンが好ましく、ブタジエンがより好ましい。共役ジエンは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、ポリスチレン樹脂は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0173】
スチレン樹脂としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン-ブタジエンジブロック共重合体、水素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン-イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン-ブタジエンランダム共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。スチレン樹脂の具体例としては、水添スチレン系熱可塑性エラストマー「H1041」、「タフテックH1043」、「タフテックP2000」、「タフテックMP10」(旭化成社製);エポキシ化スチレン-ブタジエン熱可塑性エラストマー「エポフレンドAT501」、「CT310」(ダイセル社製);ヒドロキシル基を有する変成スチレン系エラストマー「セプトンHG252」(クラレ社製);カルボキシル基を有する変性スチレン系エラストマー「タフテックN503M」、アミノ基を有する変性スチレン系エラストマー「タフテックN501」、酸無水物基を有する変性スチレン系エラストマー「タフテックM1913」(旭化成ケミカルズ社製);未変性スチレン系エラストマー「セプトンS8104」(クラレ社製);スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体「FG1924」(Kraton社製)、「EF-40」(CRAY VALLEY社製)が挙げられる。
【0174】
エラストマーの数平均分子量(Mn)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは1500以上、さらに好ましくは3000以上、特に好ましくは5000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは900,000以下である。数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を使用して、ポリスチレン換算で測定できる。
【0175】
(E)成分の含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0176】
-(F)硬化促進剤-
樹脂組成物は、(F)成分として、(F)硬化促進剤を含有していてもよい。(F)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられ、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0177】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0178】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0179】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0180】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0181】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0182】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0183】
(F)硬化促進剤の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、特に好ましくは0.03質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。
【0184】
-(G)重合開始剤-
樹脂組成物層は、(G)成分として、(G)重合開始剤を含有していてもよい。(G)重合開始剤を含有させることにより、特に(D)成分の硬化を行うことができる。
【0185】
重合開始剤の種類は、特に限定されないが、シクロヘキサノンパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキシド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンなどのラジカル発生剤が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0186】
(G)重合開始剤は、市販品を用いてもよい。市販品としては、日油社製の「パーヘキシン25B」等が挙げられる。
【0187】
(G)重合開始剤の含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0188】
-(H)その他の添加剤-
樹脂組成物層は、上述した成分以外に、任意の成分として、更にその他の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤等の樹脂添加剤などが挙げられる。これらの添加剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。それぞれの含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0189】
樹脂組成物層は、揮発性成分として、さらに任意の溶剤を含有していてもよい。樹脂組成物層の形成に用いる樹脂組成物に溶剤を含有させることによりワニス粘度を調整できる。溶剤としては、例えば、有機溶剤が挙げられる。但し、トルエンは含まないことが好ましく、樹脂組成物層の全体を100質量としたとき、トルエンの含有量は0.1質量%以下0.01質量%以下、0.001質量%以下又は0.0001質量%以下であることが好ましい。
【0190】
有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン等のケトン類、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルジグリコールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0191】
樹脂組成物層は、埋め込み性及び絶縁層の厚みの均一性を向上させる観点から、無機充填材の比表面積の調整に加えて樹脂組成物層中の溶剤の量を調整することで溶融粘度が調整され、その結果tanδの最大値が1.0以上2.0以下となる。樹脂組成物層中の溶剤の量(残留溶剤量)は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、さらにより好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。下限は特に制限はないが、0.0001質量%以上等とし得る。
【0192】
樹脂組成物層の60℃から200℃における動的粘弾性測定において、100℃以上でのtanδの最大値は、埋め込み性を向上させる観点から、1.0以上であり、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.3以上である。また、該tanδの最大値は、絶縁層の厚みの均一性を向上させる観点から、2.0以下であり、好ましくは1.9以下、より好ましくは1.8以下である。tanδの最大値は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0193】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化、及び当該樹脂組成物の硬化物が薄膜であっても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、絶縁信頼性を高める観点から、通常、5μm以上、10μm以上等とし得る。
【0194】
<その他の層>
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、その他の層を含んでいてもよい。斯かるその他の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0195】
<樹脂シートの製造方法>
樹脂シートは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。有機溶剤については上述したものを用いることができる。
【0196】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0197】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0198】
<樹脂シートの物性、用途>
本発明の樹脂シートは、真空プレス処理を用いた絶縁層形成用の樹脂シートであり、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを含み、支持体が、樹脂組成物層と接合している側の表面の算術平均粗さ(Ra)が300nmを超える金属箔を有し、樹脂組成物層が、(A)比表面積が10m2/g以上の無機充填材を含有し、樹脂組成物層の60℃から200℃における動的粘弾性測定において、100℃以上でのtanδの最大値が、1.0以上2.0以下である。このような樹脂シートを用いて真空プレス処理にて絶縁層を形成することで、埋め込み性及び絶縁層の厚みの均一性に優れると共に、絶縁性にも優れる絶縁層を実現することができる。
【0199】
真空プレス処理にて樹脂シートの樹脂組成物層と回路基板とを積層させ、樹脂組成物層を100℃で30分、次いで200℃で120分間熱硬化させた樹脂組成物層の硬化物は、埋め込み性に優れるという特性を示す。よって、前記硬化物は、埋め込み性に優れる絶縁層をもたらす。具体的には、樹脂シートの樹脂組成物層を、1mm角格子の配線パターン(残銅率が59%)にて形成された回路導体(銅)を両面に有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(以下、「銅張積層板」という)にラミネートする。樹脂組成物層を銅張積層板にラミネートした後、上記熱硬化条件で樹脂組成物層を真空プレス処理にて熱硬化させて絶縁層を得る。支持体をエッチングした後、FIB-SEM複合装置を用いて、1mm角格子の配線パターンにおける樹脂組成物層の埋め込み性を観察すると、格子パターンが樹脂組成物層で埋め込まれている。埋め込み性の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0200】
真空プレス処理にて樹脂シートの樹脂組成物層と回路基板とを積層させ、樹脂組成物層を100℃で30分、次いで200℃で120分間熱硬化させた樹脂組成物層の硬化物は、絶縁信頼性に優れるという特性を示す。よって、前記硬化物は、絶縁信頼性に優れる絶縁層をもたらす。具体的には、樹脂シートの樹脂組成物層を、1mm角格子の配線パターン(残銅率が59%)にて形成された回路導体(銅)を両面に有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(以下、「銅張積層板」という)にラミネートする。樹脂組成物層を銅張積層板にラミネートした後、上記熱硬化条件で樹脂組成物層を真空プレス処理にて熱硬化させて絶縁層を得る。支持体を剥離した後電解メッキ処理を行い絶縁層上に導体層を得る。導体層側を+電極俊、銅張積層板側を-電極として、高度加速寿命試験装置を使用し、110℃、85%相対湿度、20V直流電圧印加の条件で100時間経過させた際の絶縁抵抗値を、エレクトロケミカルマイグレーションテスターにて6回測定する。このとき、少なくとも1つの試験ピースの絶縁抵抗値が好ましくは1.00×108Ω以上、より好ましくは1.00×109Ω以上である。また、6点の試験ピースの絶縁抵抗値の平均値は、好ましくは1.00×108Ω以上、より好ましくは1.00×109Ω以上である。絶縁信頼性の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0201】
本発明の樹脂シートを用いて、真空プレス処理にて絶縁層を形成することで、良好な埋め込み性、絶縁抵抗値を呈する絶縁層をもたらすことができる。したがって、本発明の樹脂シートは、真空プレス処理を用いて絶縁層を形成するための樹脂シート(真空プレス処理を用いた絶縁層形成用)として好適に使用することができる。本発明の樹脂シートは、金属箔を含む支持体を備えており、該金属箔を利用して導体層を形成することができる。したがって、本発明の樹脂シートは、プリント配線板の製造において、真空プレス処理を用いて絶縁層と導体層の両層を形成するための樹脂シート(真空プレス処理を用いた絶縁層及び導体層形成用)として好適に使用することができる。本発明の樹脂シートは、プリント配線板の絶縁層(と導体層)、好適にはプリント配線板の層間絶縁層(と導体層)を形成するために好適に使用することができる。本発明において、用語「プリント配線板」には、半導体パッケージの再配線基板も包含される。
【0202】
[プリント配線板、プリント配線板の製造方法]
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物からなる絶縁層を含む。
【0203】
プリント配線板は、例えば、上述の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートを真空プレス処理にて積層させる工程
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
【0204】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用し得る。
【0205】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空プレス処理により、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する。真空プレス処理にて内層基板と樹脂組成物層とを積層させることで、誘電特性、機械強度、及び電気特性を向上させることが可能となる。
【0206】
はじめに樹脂シートの樹脂組成物層と内層基板とが接合するように、内層基板及び樹脂シートを真空プレス装置にセットする。次いで、減圧条件下で内層基板と樹脂組成物層とを加熱圧着する真空プレス処理を行う。真空プレス処理は熱をかける真空熱プレス処理(真空ホットプレス処理)が好ましい。
【0207】
内層基板及び樹脂シートは、クッション紙、ステンレス板(SUS板)等の金属板、離型フィルムなどを介して真空プレス装置にセットすることが好ましい。
【0208】
真空プレス処理は、加熱されたSUS板等の金属板によって、内層基板及び樹脂シートをその両面側から押圧する従来公知の真空プレス装置を用いて実施することができる。市販の真空プレス装置としては、例えば、北川精機社製の「VH1-1603」等が挙げられる。
【0209】
真空プレス処理は、1回のみ実施してもよく、2回以上繰り返して実施してもよい。2回以上繰り返して実施する場合、圧着圧力、加熱温度、プレス時間等は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0210】
真空プレス処理において、圧着圧力(押圧力)は、好ましくは0.49MPa以上、より好ましくは0.98MPa以上であり、好ましくは7.9MPa以下、より好ましくは5.9MPa以下である。
【0211】
真空プレス処理において、雰囲気の圧力、すなわち、処理対象の積層構造が格納されるチャンバ内の減圧時の圧力(減圧度)は、好ましくは3×10-2MPa以下、より好ましくは1×10-2MPa以下である。下限は特に制限はないが、1×10-10MPa以上等とし得る。
【0212】
真空プレス処理において、加熱温度は、樹脂組成物層の組成によっても異なるが、通常150℃以上であり、好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上、又は180℃以上である。加熱温度の上限は特に限定されないが、通常、240℃以下などとし得る。なお、真空プレス処理は、本発明の効果を顕著に得る観点から、温度を段階的に若しくは連続的に上昇させながら、及び/又は温度を段階的に若しくは連続的に下降させながら、実施してもよい。また、後述するように、真空プレス処理における加熱により、樹脂組成物層を熱硬化させて絶縁層を形成してもよい。
【0213】
真空プレス処理において、プレス時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは300分以下、より好ましくは200分以下、さらに好ましくは150分以下である。
【0214】
内層基板上に、樹脂シートを真空プレス処理にて積層させた後、工程(II)において、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。樹脂組成物層を熱硬化する方法としては、例えば、真空熱プレス処理にてプレス処理を行う場合、プレス時の熱を用いて樹脂組成物層を熱硬化させて絶縁層を形成する方法が挙げられる。
【0215】
樹脂組成物層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0216】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間とすることができる。
【0217】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間)予備加熱してもよい。
【0218】
真空プレス処理では、真空ラミネート法に比し、樹脂シートの積層時の樹脂フローに起因して絶縁層の厚みの均一性が悪化する場合があることを本発明者らは確認している。この点、樹脂組成物層中の無機充填材の比表面積に加えて残留溶剤量を調整し、tanδの最大値を1.0以上2.0以下に設定することにより、真空プレス処理後の絶縁層の厚みの均一性の向上を実現できる。具体的には、絶縁層の厚みの基準に対して、熱プレス処理後の絶縁層の厚みのばらつきは、好ましくは±20%未満、より好ましくは±15%未満、さらに好ましくは±10%以下である。すなわち、絶縁層は、厚みのバラツキが前記の範囲に収まる当該厚みの基準を有することが好ましい。厚みの基準は、通常は、絶縁層の設計厚みでありうる。下限は0%、±0.1%以上等とし得る。真空プレス処理後の絶縁層の厚みの評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0219】
本発明で用いる樹脂シートは、支持体が金属箔を含むので、工程(III)として、サブトラクティブ法又はモディファイドセミアディティブ法により回路を形成する工程を含んでいてもよい。
【0220】
工程(III)においては、支持体(金属箔)を利用して、サブトラクティブ法又はモディファイドセミアディティブ法により回路を形成することができる。
【0221】
サブトラクティブ法においては、金属箔の不要部分(非回路形成部)をエッチング等によって選択的に除去して、回路を形成する。サブトラクティブ法による回路形成は公知の手順に従って実施してよい。例えば、サブトラクティブ法による回路形成は、i)金属箔の表面(すなわち、樹脂組成物層と接合している面とは反対側の面)にエッチングレジストを設けること、ii)エッチングレジストを露光、現像して配線パターンを形成すること、iii)露出した金属箔部分をエッチングして除去すること、iv)エッチングレジストを除去すること、を含む方法により実施することができる。
【0222】
モディファイドセミアディティブ法においては、金属箔の非回路形成部をめっきレジストにより保護し、電解めっきにより回路形成部に銅等の金属を厚付けした後、めっきレジストを除去し、回路形成部以外の金属箔をエッチングで除去して、回路を形成する。モディファイドセミアディティブ法による回路形成は公知の手順に従って実施してよい。例えば、モディファイドセミアディティブ法による回路形成は、i)金属箔の表面(すなわち、樹脂組成物層と接合している面とは反対側の面)にめっきレジストを設けること、ii)めっきレジストを露光、現像して配線パターンを形成すること、iii)めっきレジストを介して電解めっきすること、iv)めっきレジストを除去すること、v)回路形成部以外の金属箔をエッチングして除去すること、を含む方法により実施することができる。なお、金属箔が厚い場合には、上記i)の前に、金属箔が所望の厚さ(通常5μm以下、4μm以下、又は3μm以下)となるようにエッチング等により金属箔全面を薄化してもよい。
【0223】
プリント配線板を製造するに際しては、(IV)穴あけする工程、(V)絶縁層を粗化処理する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(IV)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。また、必要に応じて、工程(I)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
【0224】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。
【0225】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0226】
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0227】
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例】
【0228】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、別途明示のない限り、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
【0229】
<使用した無機充填材>
無機充填材1:球状シリカ(電気化学工業社製「UFP-30」、平均粒径0.30μm、比表面積30.7m2/g)100部に対して、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM573)2部で表面処理したもの。
無機充填材2:球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C1」、平均粒径0.25μm、比表面積11.2m2/g)100部に対して、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM573)1部で表面処理したもの。
無機充填材3:球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.50μm、比表面積5.8m2/g)100部に対して、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM573)1部で表面処理したもの。
【0230】
<合成例1:ポリイミド樹脂1の合成>
溶媒としてのN,N-ジメチルアセトアミド(以下、「DMAc」ともいう)400g中に、BPADA49.6gと、BPPAN50.4gと、溶媒としてのトルエン40gとを混合することで得られるモノマー組成物を、常温、大気圧中で3時間撹拌、反応させた。これにより、ポリアミド酸の溶液を得た。
【0231】
引き続き、ポリアミド酸の溶液を昇温した後、約160℃に保持しながら、窒素気流下で縮合水をトルエンとともに共沸除去した。水分定量受器に所定量の水がたまっていること、及び、水の流出が見られなくなっていることを確認した。確認後、反応溶液を更に昇温し、200℃で1時間攪拌した。その後、冷却した。これにより、ポリイミド樹脂1を不揮発成分として20質量%含むワニスを得た。
【0232】
ポリイミド樹脂1は、上記反応経路から、下記式(e1a)で表される構造単位を含むことが推定された。また、ポリイミド樹脂1は、上記反応経路から、BPADAに由来する第1の骨格と、BPPANに由来する第2の骨格とを含むことが推定された。
【0233】
【0234】
<合成例2:エラストマー1の合成>
反応容器にG-3000(2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、数平均分子量=5047(GPC法)、ヒドロキシル基当量=1798g/eq.、固形分100質量%:日本曹達社製)50gと、イプゾール150(芳香族炭化水素系混合溶媒:出光石油化学社製)23.5g、ジブチル錫ラウレート0.005gを混合し均一に溶解させた。均一になったところで50℃に昇温し、更に撹拌しながら、トルエン-2,4-ジイソシアネート(イソシアネート基当量=87.08g/eq.)4.8gを添加し約3時間反応を行った。次いで、この反応物を室温まで冷却してから、これにベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(酸無水物当量=161.1g/eq.)8.96gと、トリエチレンジアミン0.07gと、エチルジグリコールアセテート(ダイセル社製)40.4gを添加し、攪拌しながら130℃まで昇温し、約4時間反応を行った。FTIRより2250cm-1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピーク消失の確認をもって反応の終点とみなし、反応物を室温まで降温してから100メッシュの濾布で濾過して、イミド骨格、ウレタン骨格、ブタジエン骨格を有するエラストマー1を得た。
粘度:7.5Pa・s(25℃、E型粘度計)
酸価:16.9mgKOH/g
固形分:50質量%
数平均分子量:13723
ガラス転移温度:-10℃
ポリブタジエン構造部分の含有率:50/(50+4.8+8.96)×100=78.4質量%
【0235】
<実施例1:樹脂組成物1の調製>
ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)5部、ナフタレン型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ESN475V」、エポキシ当量約332)5部、シクロヘキサン型エポキシ樹脂(三菱化学社製「ZX1658GS」、エポキシ当量約135)2部、フェノキシ樹脂(三菱化学社製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液、Mw=35000)10部、及びシクロヘキサノン10部の混合溶剤に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000L―65TM」、活性基当量約220、不揮発成分65質量%のトルエン:MEKの1:1溶液)4.5部、無機充填材1を35部、アミン系硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP))0.1部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP020」)で濾過して、樹脂組成物1を調製した。
【0236】
<実施例2:樹脂組成物2の調製>
実施例1において、活性エステル系硬化剤(DIC社製「EXB-8000L―65TM」、活性基当量約220、不揮発成分65質量%のトルエン:MEKの1:1溶液)4.5部を、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HP-B-8151-62T」、活性基当量238、固形分62%のトルエン溶液)4.7部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物2を調製した。
【0237】
<実施例3:樹脂組成物3の調製>
実施例3において、無機充填材1 35部を、無機充填材2 50部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物3を調製した。
【0238】
<実施例4:樹脂組成物4の調製>
実施例1において、活性エステル系硬化剤(DIC社製「EXB-8000L―65TM」、活性基当量約220、不揮発成分65質量%のトルエン:MEKの1:1溶液)4.5部を、マレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ社製「BMI-689」)10部に変え、
アミン系硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP))の量を、0.1部から0.05部に変え、
さらに重合開始剤(日油社製「パーヘキシン25B」)0.1部を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物4を調製した。
【0239】
<実施例5:樹脂組成物5の調製>
実施例4において、マレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ社製「BMI-689」)10部を、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE-2St 1200」、Mn=1200、固形分65質量%のトルエン溶液)10部に変えた。以上の事項以外は実施例4と同様にして樹脂組成物5を調製した。
【0240】
<実施例6:樹脂組成物6の調製>
実施例4において、さらに活性エステル系硬化剤(DIC社製「EXB-8000L―65TM」、活性基当量約220、不揮発成分65質量%のトルエン:MEKの1:1溶液)4.5部を用いた。以上の事項以外は実施例4と同様にして樹脂組成物6を調製した。
【0241】
<実施例7:樹脂組成物7の調製>
実施例6において、フェノキシ樹脂(三菱化学社製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液、Mw=35000)10部を、合成例1で得たポリイミド樹脂1(不揮発成分20質量%)15部を使用した。以上の事項以外は実施例6と同様にして樹脂組成物7を調製した。
【0242】
<実施例8:樹脂組成物8の調製>
実施例6において、フェノキシ樹脂(三菱化学社製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液、Mw=35000)10部を、合成例2で得たエラストマー(不揮発成分50質量%)6部を使用した。以上の事項以外は実施例6と同様にして樹脂組成物8を調製した。
【0243】
<実施例9:樹脂組成物9の調製>
マレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ社製「BMI-689」)10部、ビフェニル骨格含有マレイミド樹脂(日本化薬社製「MIR-3000」、不揮発分70質量%のトルエン:MEKの1:1溶液)10部、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE-2St 1200」、Mn=1200、固形分65質量%のトルエン溶液)10部、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成社製「H1043」スチレン/エチレン・ブチレン・ブタジエン比=67/33)6部を、ソルベントナフサ20部及びシクロヘキサノン10部の混合溶剤に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、無機充填材1を50部、重合開始剤(日油社製「パーヘキシン25B」)0.1部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP020」)で濾過して、樹脂組成物9を調製した。
【0244】
<実施例10:樹脂組成物10の調製>
実施例9において、無機充填材1 50部を、無機充填材2 65部に変えた。以上の事項以外は実施例9と同様にして樹脂組成物10を調製した。
【0245】
<実施例11:樹脂組成物11の調製>
実施例9の調製において、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE-2St 1200」、Mn=1200、固形分65質量%のトルエン溶液)10部を、ビニル基含有樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ODV-XET-X04」、重量平均分子量3110、65質量%溶液)10部に変えた。以上の事項以外は実施例9と同様にして樹脂組成物11を調製した。
【0246】
<実施例12:樹脂組成物12の調製>
実施例1において、活性エステル系硬化剤(DIC社製「EXB-8000L―65TM」、活性基当量約220、不揮発成分65質量%のトルエン:MEKの1:1溶液)4.5部を、トリアジン骨格含有フェノール系樹脂(DIC社製「LA7054」、水酸基当量約125の固形分60%のMEK溶液)5部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物12を調製した。
【0247】
<比較例1:樹脂組成物13の調製>
実施例1において、無機充填材1 35部を、無機充填材3 35部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物13を調製した。
【0248】
<比較例2:樹脂組成物14の調製>
実施例1において、無機充填材1の量を35部から50部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂組成物14を調製した。
【0249】
<比較例3:樹脂組成物15の調製>
実施例9において、無機充填材1 50部を、無機充填材3 50部に変えた。以上の事項以外は実施例9と同様にして樹脂組成物15を調製した。
【0250】
<樹脂組成物層等の厚みの測定>
樹脂組成物層等の厚みは、接触式膜厚計(ミツトヨ社製、MCD-25MJ)を用いて、測定した。
【0251】
<樹脂シートAの作製>
支持体として、極薄銅箔(三井金属鉱業社製MW-G(厚さ12μmの単層銅箔、算術平均粗さ(Ra)は900nm、十点平均粗さ(Rz)は8000nm))を用意した。樹脂組成物1~15を支持体の極薄銅箔上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが15μmとなるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、70℃から120℃で7分間乾燥することにより、支持体上に樹脂組成物層を得た。次いで、樹脂組成物層の支持体と接合していない面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA-411」、厚み15μm)の粗面を、樹脂組成物層と接合するように積層した。これにより、極薄銅箔(支持体)、樹脂組成物層、及び保護フィルムの順からなる樹脂シートAを得た。なお、極薄銅箔の算術平均粗さ(Ra)及び十点平均粗さ(Rz)は非接触型表面粗さ計を用いて測定した。
【0252】
<動的粘弾性におけるtanδの測定>
樹脂シートAの樹脂組成物層について、動的粘弾性測定装置(ユー・ビー・エム社製「Rheosol-G3000」)を使用して動的粘弾性を測定した。樹脂組成物層から採取した試料樹脂組成物1gについて、直径18mmのパラレルプレートを使用して、開始温度60℃から200℃まで昇温速度5℃/分にて昇温し、測定温度間隔2.5℃、振動数1Hz、ひずみ1degの測定条件にて動的粘弾性率を測定し、得られたE’とE’’の値を採用し、下記式を用いてtanδを算出した。そして100℃以上でのtanδの最大値を求めた。
tanδ=E’’/E’
【0253】
<真空プレス処理後の絶縁層の厚み(樹脂フロー)、絶縁信頼性、及び埋め込み性の評価>
1)真空プレスを用いた銅張積層板への積層シートの積層
銅張積層板として、1mm角格子の配線パターン(残銅率が59%)にて形成された回路導体(銅)を両面に有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ12μm、基板厚み0.15mm、三菱ガス化学社製「HL832NSF LCA」、255×340mmサイズ)を用意した。該内層回路基板の両面を、メック社製「CZ8201」にて銅表面の粗化処理(銅エッチング量0.5μm)を行った。樹脂シートAから、保護フィルムを剥離して、樹脂組成物層を露出させた。次いで、真空ホットプレス機(北川精機社製、VH1-1603)を用いて、露出した樹脂組成物層が銅張積層板と接するように、銅張積層板の両面にラミネートした。プレス条件は、減圧度1×10-3MPa以下の減圧下とし、圧力条件が20kgf/cm2の条件下で、加熱条件として1段階目のプレスは、温度が100℃、時間30分、2段階目のプレスは、温度が190℃、時間は120分で行った。プレスによる加熱により樹脂組成物層が硬化された後、支持体を剥離することで、硬化基板Aを得た。
【0254】
2)電気メッキ
アトテックジャパン社製の薬液を使用して、ビアホール内に銅が充填される条件で電解銅めっき工程を行った。その後に、エッチングによるパターニングのためのレジストパターンとして、下層導体に導通された直径1mmのランドパターン、及び下層導体とは接続されていない直径10mmの円形導体パターンを用いて絶縁層の表面に10μmの厚さでランド及び導体パターンを有する導体層を形成した。次に、アニール処理を200℃にて90分間行った。この基板を「絶縁評価用基板A」とした。
【0255】
3)絶縁層の絶縁信頼性の評価
絶縁評価用基板Aの直径10mmの円形導体側を+電極とし、直径1mmのランドと接続された内層回路基板の格子回路導体(銅)側を-電極として、高度加速寿命試験装置(ETAC社製「PM422」)を使用し、110℃、85%相対湿度、20V直流電圧印加の条件で100時間経過させた際の絶縁抵抗値を、エレクトロケミカルマイグレーションテスター(J-RAS社製「ECM-100」)にて測定した。この測定を6回行い、以下の評価基準と絶縁抵抗値とを下記表に示した。なお、下記表に記載の絶縁抵抗値は、6点の試験ピースの絶縁抵抗値の平均値である。
〇:6点の試験ピースの絶縁抵抗値の平均値が1.00×109Ω以上。
△:6点の試験ピースの絶縁抵抗値の平均値が1.00×108Ω以上1.00×109Ω未満。
×:6点の試験ピースの絶縁抵抗値の平均値が1.00×108Ω未満。
【0256】
4)真空プレス処理後の絶縁層の厚み(樹脂フロー)の評価
硬化基板Aの極薄銅箔をエッチングした後、FIB-SEM複合装置(SIIナノテクノロジー社製「SMI3050SE」)を用いて断面観察を行い、以下の基準で真空プレス処理後の絶縁層の厚みを評価した。
〇:絶縁層の厚みの基準を10μmとしたとき、絶縁層の厚みが10μm±20%未満。
×:絶縁層の厚みの基準を10μmとしたとき、絶縁層の厚みが10μm±20%以上。
【0257】
5)真空プレス処理後の絶縁層の埋め込み性の評価
硬化基板Aの極薄銅箔をエッチングした後、FIB-SEM複合装置(SIIナノテクノロジー社製「SMI3050SE」)を用いて、1mm角格子の配線パターンにおける樹脂組成物層の埋め込み性を観察し、以下の基準で評価した。
〇:配線パターンが絶縁層で埋め込まれている。
×:埋め込み不良によるボイドを発生している。
【0258】
【表1】
*(A)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の含有量を表す。