(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】熱動形過負荷継電器
(51)【国際特許分類】
H01H 61/00 20060101AFI20250109BHJP
H01H 61/01 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01H61/00 E
H01H61/01 E
(21)【出願番号】P 2021110647
(22)【出願日】2021-07-02
【審査請求日】2024-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】三浦 颯斗
(72)【発明者】
【氏名】鴨崎 武雄
(72)【発明者】
【氏名】小野木 悠真
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-076355(JP,A)
【文献】特開2011-165492(JP,A)
【文献】特開2011-124158(JP,A)
【文献】特開2004-172122(JP,A)
【文献】特開2009-105072(JP,A)
【文献】特開平10-003840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 61/00 - 61/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過負荷から保護する二素子構造の熱動形過負荷継電器において、
ケースと、
前記ケースの内部に備えられ、加熱されたときに湾曲するバイメタルと、
前記ケースの内部に備えられ、前記バイメタルが湾曲したときに、前記バイメタルに押されて変位するシフタと、
前記ケースの内部に備えられ、前記ケースの凹溝に嵌まり合う支軸によって回動可能に支持され、前記シフタが変位したときに、前記シフタに押されて回動するレバーと、
前記ケースの内部に備えられ、前記レバーが回動したときに、前記レバーのうち前記シフタに押される位置よりも径方向外側の位置から押されることで、接点を反転させる反転機構と、を備えることを特徴とする熱動形過負荷継電器。
【請求項2】
前記レバーは、回動中心となる前記支軸の位置、前記シフタによって押される位置、及び前記反転機構を押す位置が調整されることによって、前記シフタにおける変位量の増幅倍率が調整されることを特徴とする請求項1に記載の熱動形過負荷継電器。
【請求項3】
前記レバーは、前記バイメタルが湾曲していないときに、前記支軸の軸方向から見て、回動中心となる前記支軸の位置、及び前記反転機構を押す位置が、前記反転機構を押す方向の直交方向に並んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱動形過負荷継電器。
【請求項4】
前記シフタは、前記バイメタルに押される位置と、前記レバーを押す位置とが、変位方向に沿った一直線上に配置されていることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の熱動形過負荷継電器。
【請求項5】
前記シフタは、平板状であり、
前記レバーは、前記支軸が前記シフタの面直角方向に延び、前記シフタの面方向に回動することを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の熱動形過負荷継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱動形過負荷継電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱動形過負荷継電器(サーマルリレー)は、過電流が流れ続けるときに、熱によってバイメタルが湾曲することでトリップ動作し、電磁接触器や配線用遮断器を遮断させることで主回路を過負荷から保護する。熱動形過負荷継電器は、特許文献1に示されるように、バイメタルが加熱されて湾曲すると、シフタを押すことで反転機構を作動させ、トリップ状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱動形過負荷継電器には、過負荷から保護する1E(一要素)形式と、過負荷及び欠相から保護する2E(二要素)形式とがある。1E形式は一般にU・Wの二相にバイメタルを持つ二素子構造となり、2E形式はU・V・Wの三相にバイメタルを持つ三素子構造となる。すなわち、二素子構造は三素子構造に比べて素子数が少ないため、それだけシフタの変位量が小さくなってしまう。
本発明の目的は、過負荷から保護する二素子構造の熱動形過負荷継電器において、シフタの変位量を増幅させて反転機構に伝達することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る熱動形過負荷継電器は、過負荷から保護する二素子構造の熱動形過負荷継電器において、加熱されたときに湾曲するバイメタルと、バイメタルが湾曲したときに、バイメタルに押されて変位するシフタと、支軸によって回動可能に支持され、シフタが変位したときに、シフタに押されて回動するレバーと、レバーが回動したときに、レバーのうちシフタに押される位置よりも径方向外側の位置から押されることで、接点を反転させる反転機構と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、バイメタルが湾曲したときに、レバーのうちシフタに押される位置よりも径方向外側の位置から反転機構を押すので、シフタの変位量を増幅させて反転機構に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図7】シフタ及びレバーの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
《一実施形態》
《構成》
以下の説明では、互いに直交する三方向を、便宜的に、縦方向、幅方向、及び奥行方向とする。
図1は、熱動形過負荷継電器を示す図である。
熱動形過負荷継電器11は、サーマルリレーとも呼ばれ、過電流が流れ続けるときにトリップ動作し、図示しない電磁接触器を遮断させることで主回路を過負荷から保護する。熱動形過負荷継電器11には、過負荷から保護する1E(一要素)形式と、過負荷及び欠相から保護する2E(二要素)形式とがあり、ここでは1E形式とする。図は、熱動形過負荷継電器11におけるケース12の内部を、図示しないカバーを外して縦方向の他方側から見た状態を示す。
【0010】
ケース12の内部には、バイメタル21と、シフタ22と、レバー23と、反転機構24と、リセット棒25と、を備えている。熱動形過負荷継電器11は、U・Wの二相にバイメタル21を持つ二素子構造となる。
バイメタル21は、奥行方向に延び、縦方向及び奥行方向に沿った板状に形成されており、奥行方向の手前側が固定端となり、奥側が自由端である。バイメタル21は、奥行方向の手前側が主端子に接続され、奥行方向の奥側がヒータ26の一端に接合されている。ヒータ26は、バイメタル21に巻き付けられ、他端が奥行方向の手前側で接続端子27に接合されている。接続端子27は、図示しない電磁接触器に接続される。バイメタル21は、通常時には直線状であるが、過負荷状態になると自由端側が幅方向の他方側へ湾曲し、シフタ22を押す。
【0011】
シフタ22は、絶縁体であり、幅方向及び縦方向に沿った平板状に形成され、幅方向に進退可能な状態でケース12に支持されている。シフタ22は、バイメタル21の自由端に係合しており、通常時には幅方向の一方側に位置しているが、過負荷状態になると、バイメタル21が湾曲することで幅方向の他方側へと変位する。シフタ22は、表面の摩擦係数を小さくするために、基材の表面を固体潤滑剤によってコーティング処理して形成されている。
レバー23は、電気絶縁性を有する樹脂によって一体成形されており、縦方向に延び、過負荷状態を検出したときにシフタ22の変位量を増幅させて反転機構24に伝達する。
【0012】
反転機構24は、過負荷を検出したときに接点を反転させる、つまりa接点を閉じ、b接点を開く機構であり、補償バイメタル31と、釈放レバー32と、引張りばね33と、可動板34と、板ばね35と、連動板36と、を備える。反転機構24は、実施形態の主要な構成ではないため概略を説明する。
補償バイメタル31は、奥行方向に延び、奥行方向及び縦方向に沿った平板状に形成され、奥行方向の手前側が釈放レバー32に固定され、奥行方向の奥側が自由端となり、レバー23に係合している。
釈放レバー32は、奥行方向に延び、奥行方向及び縦方向に沿った板状に形成され、縦方向に沿った支軸によって回動可能に支持されており、奥行方向の奥側が引張りばね33に接触している。
引張りばね33は、可動板34を奥行方向の奥側へと引張っている。
【0013】
可動板34は、奥行方向及び縦方向に沿った平板状であり、奥行方向の奥側を支点にして奥行方向の手前側が幅方向に変位可能である。可動板34は、直立している位置が死点となり、幅方向の一方側又は他方側への力が作用するときに、引張りばね33の引張力によって幅方向の一方側又は他方側へ傾く。そして、通常時には、幅方向の一方側に傾いているが、過負荷状態になると、補償バイメタル31を介して釈放レバー32によって押されることで、幅方向の他方側に傾く。可動板34は、奥行方向の奥側が補助端子の一方に接続されており、奥行方向の手前側に可動接点が形成されている。
【0014】
板ばね35は、奥行方向に延び、奥行方向及び縦方向に沿った平板状であり、奥行方向の奥側が補助端子の他方に接続され、可動板34に対向した奥行方向の手前側には固定接点が形成されている。通常時には、板ばね35の固定接点に対して可動板34の可動接点が離間しているが、過負荷状態になると、可動板34が幅方向の他方側に傾くことで、板ばね35の固定接点に可動板34の可動接点が接触する。これら固定接点及び可動接点がa接点を構成し、a接点が閉じるときにトリップ状態となる。
連動板36は、幅方向及び奥行方向に沿った板状に形成され、縦方向に沿った支軸によって回動可能に支持されており、奥行方向の奥側が可動板34に係合している。連動板36は、可動板34に連動して回動することで、図には表れない連動板36の裏側で、接点の開閉を行なう。すなわち、通常時には固定接点に可動接点が接触しているが、過負荷状態になると、連動板36が回動することで、固定接点に対して可動接点が離間する。これら固定接点及び可動接点がb接点を構成し、b接点が開くときにトリップ状態となる。
【0015】
リセット棒25は、トリップ状態から復旧させるための操作子であり、奥行方向を軸方向とする略円柱状に形成され、ケース12のうち、縦方向の他方側で、幅方向の他方側に配置されている。リセット棒25は、奥行方向に変位可能で、且つ軸周りに回動可能な状態で、ケース12に支持され、さらに縦方向に延びる板ばね47によって奥行方向の手前側に付勢されている。リセット棒25には、初期位置と、手動リセット位置と、自動リセット位置と、がある。初期位置は、奥行方向の手前側がケース12よりも突出した位置である。手動リセット位置は、初期位置から奥行方向の奥側に押されただけの位置である。自動リセット位置は、初期位置から奥行方向の奥側に押され、且つ奥行方向の手前側から見て時計回りに約90度だけ回されることで奥行方向の位置が保持される位置である。
【0016】
トリップしている状態でリセット棒25が奥行方向の奥側に押されると、奥行方向における奥側の端部によって板ばね35及び可動板34が幅方向の一方側へ押されるので、過負荷状態が解消されていれば、再びa接点を開き、b接点を閉じる。一方、トリップしている状態でリセット棒25が奥行方向の奥側に押され、且つ奥行方向の手前側から見て時計回りに約90度だけ回されると、リセット棒25は奥行方向の位置が保持される。そして、奥行方向における奥側の端部によって板ばね35及び可動板34が幅方向の一方側へ押されるので、過負荷状態が解消されたとき、自動的に再びa接点を開き、b接点を閉じる。
【0017】
次に、シフタ22及びレバー23の構造について説明する。
図2は、シフタ及びレバーを示す図である。
ここでは、ケース12を、縦方向の他方側、幅方向の一方側、及び奥行方向の奥側から見た状態を示す。
図3は、ケースを示す図である。
ここでは、ケース12を、縦方向の他方側、幅方向の一方側、及び奥行方向の奥側から見た状態を示す。ケース12の内側には、隔壁41~43と、桁板44と、が形成されている。
【0018】
隔壁41~43は、幅方向の一方側から他方側に向かって順に配置され、奥行方向に延び、奥行方向及び縦方向に沿った板状に形成されている。隔壁41における幅方向の一方側には、U相のバイメタル21及び接続端子27が配置されている。隔壁41と隔壁42との間には、V相の接続端子27が配置されている。隔壁42と隔壁43との間には、W相のバイメタル21及び接続端子27が配置されている。隔壁43における幅方向の他方側には、反転機構24が配置されている。隔壁41~43には、奥行方向における奥側の端面のうち、縦方向の他方側に、奥行方向の奥側に向かって凸となる略円柱状の突起部45が形成されており、三つの突起部45は、幅方向に沿って一直線上に並んでいる。隔壁42の突起部45だけは、奥行方向の奥側となる頭部が幅方向の他方側に隆起している。
【0019】
隔壁41~43には、奥行方向における奥側の端面のうち、縦方向の一方側にも、奥行方向の奥側に向かって凸となる略円柱状の突起部45が形成されている。やはり隔壁42の突起部45だけは、奥行方向の奥側となる頭部が幅方向の他方側に隆起している。縦方向の一方側に設けられた突起部45は、V相にもバイメタルを持つ三素子構造の1E形式や2E形式を採用したときに、シフタが嵌め合わされる。したがって、ケース12は三素子構造の1E形式や2E形式と共通化されている。
桁板44は、奥行方向の奥側に配置され、幅方向に延び、幅方向及び縦方向に沿った板状に形成されている。桁板44には、隔壁43よりも幅方向の他方側で、縦方向における他方側の縁部には、縦方向の一方側に向かって凹となり奥行方向から見て略U字状となる凹溝46が形成されている。
【0020】
図4は、シフタを示す図である。
シフタ22は、幅方向が長辺となり、縦方向が短辺となる略方形の平板である。シフタ22には、幅方向の一方側に、幅方向に延び、隔壁41の突起部45が嵌り合う長穴51が形成されている。シフタ22には、幅方向の他方側に、幅方向に延び、隔壁42の突起部45、及び隔壁43の突起部45が嵌り合う長穴52が形成されている。長穴52は、幅方向の一方側と他方側とで縦方向の大きさが異なり、幅方向の一方側は、隔壁42における突起部45の頭部よりも大きく、幅方向の他方側は、隔壁42における突起部45の頭部よりも小さい。シフタ22は、長穴51が隔壁41の突起部45に嵌め合わされ、長穴52が隔壁42の突起部45、及び隔壁43の突起部45に嵌め合わされることで、幅方向に沿って変位可能となる。長穴52における幅方向の一方側に、隔壁42の突起部45があるときには、シフタ22の取外しが可能となる。長穴52における幅方向の他方側に、隔壁42の突起部45があるときには、突起部45の頭部が抜け止めとなり、シフタ22の取外しが不可となる。
【0021】
シフタ22には、縦方向の一方側に、係合片53~55が形成されている。係合片53は、隔壁41よりも幅方向の一方側に配置され、縦方向の一方側に向かってから幅方向の一方側に向かって突出している。係合片53のうち、幅方向の一方側に向かう先端にU相におけるバイメタル21の自由端が係合する。係合片54は、隔壁41と隔壁42との間に配置され、縦方向の一方側に向かってから幅方向の一方側に向かって突出している。係合片55は、隔壁43よりも幅方向の他方側に配置され、縦方向の一方側に向かってから幅方向の一方側及び他方側の双方に向かって突出している。係合片53のうち、幅方向の一方側に向かう先端にW相におけるバイメタル21の自由端が係合し、幅方向の他方側に向かう先端56にレバー23が係合する。
三素子構造の1E形式を採用した場合は、係合片54のうち、幅方向の一方側に向かう先端にV相におけるバイメタルの自由端が係合する。したがって、シフタ22は、三素子構造の1E形式と共通化されている。
【0022】
図5は、レバーを示す斜視図である。
図中の(a)は、レバー23を、縦方向の他方側、幅方向の一方側、及び奥行方向の奥側から見た状態を示し、図中の(b)は、レバー23を、縦方向の一方側、幅方向の他方側、及び奥行方向の手前側から見た状態を示す。
図6は、レバーを示す投影図である。
図中の(a)は、レバー23を奥行方向の奥側から見て隠れ線を表示した状態を示し、図中の(b)は、レバー23を幅方向の他方側から見た状態を示し、図中の(c)は、(b)のA-A断面を示す。
【0023】
レバー23には、縦方向の一方側に、一対の対向板61及び62が形成されている。対向板61及び62は、縦方向及び幅方向に沿った平板状に形成され、奥行方向に離間した状態で互いに対向し、奥行方向に延びる円柱状の支軸63によって連結されている。対向板61及び62の離隔距離は、桁板44の厚さよりも僅かに大きく、支軸63の直径は凹溝46よりも僅かに小さい。レバー23は、対向板61及び62が桁板44を挟んだ状態で、支軸63が凹溝46に嵌り合うことで、ケース12に対して支軸63によって回動可能に支持される。レバー23には、縦方向における他方側の略半分にわたって、幅方向の一方側を向いた端面64が形成されている。端面64は、縦方向及び奥行方向に沿った平面であり、シフタ22における係合片53の先端56に係合する。レバー23には、縦方向の他方側に、幅方向の他方側を向いた端面65が形成されている。端面65は、幅方向の他方側に向かって凸となる奥行方向に沿った曲面であり、反転機構24における補償バイメタル31の自由端に係合する。
図6に示すように、奥行方向から見て、支軸63の中心と、端面65のうち最も幅方向の他方側に膨らんだ位置と、を結ぶ点線で示した直線L1は、縦方向に沿って延びている。
【0024】
《動作》
次に、一実施形態の主要な動作について説明する。
図7は、シフタ及びレバーの動作を説明する図である。
ここでは、ケース12を奥行方向の奥側から見た状態を示す。通常時には、シフタ22は、幅方向の一方側に位置し、レバー23は、端面65が補償バイメタル31に押されることで、縦方向の他方側が幅方向の一方側に位置している。
そして、過負荷状態になると、シフタ22は、バイメタル21が湾曲することで、係合片53及び係合片55の少なくとも一方が押されて幅方向の他方側へと変位する。これにより、レバー23は、シフタ22が幅方向の他方側へ変位することで、端面64が係合片55の先端56に押され、奥行方向の奥側から見て反時計回りに回動し、縦方向の他方側が幅方向の他方側へと変位する。これにより、反転機構24は、補償バイメタル31の自由端側が幅方向の他方側へ変位することで、a接点を閉じ、b接点を開いたトリップ状態となる。
【0025】
そして、過負荷状態が解消されると、バイメタル21が直線状に戻り、自由端側が幅方向の一方側へ復帰する。さらに、リセット棒25が手動リセット位置又は自動リセット位置にあると、反転機構24は、a接点を開き、b接点を閉じた通常時の状態に復旧し、補償バイメタル31は、自由端側が幅方向の一方側へ変位する。これにより、レバー23は、端面65が補償バイメタル31に押されることで、奥行方向の奥側から見て時計回りに回動し、縦方向の他方側が幅方向の一方側に変位する。これにより、シフタ22は、係合片55がレバー23の端面64に押されることで、奥行方向の一方側へ復帰する。
【0026】
《作用》
次に、一実施形態の主要な作用について説明する。
過負荷から保護する二素子構造の熱動形過負荷継電器11は、バイメタル21と、シフタ22と、レバー23と、反転機構24と、を備える。バイメタル21は、加熱されたときに湾曲する。シフタ22は、バイメタル21が湾曲したときに、バイメタル21に押されて変位する。レバー23は、支軸63によって回動可能に支持され、シフタ22が変位したときに、シフタ22に押されて回動する。反転機構24は、レバー23が回動したときに、レバー23のうちシフタ22に押される位置よりも径方向外側の位置から押されることで、接点を反転させる。
【0027】
これにより、レバー23は、シフタ22の変位量を増幅させて反転機構24に伝達することができる。すなわち、二素子構造は三素子構造に比べて素子数が少ないため、それだけシフタ22の変位量が小さくなってしまうが、シフタ22の変位量をレバー23の増幅作用によって補うことができる。したがって、二素子構造で三素子構造と同等の変位量を得るために、ヒータ26の設計を見直す必要はない。また、二素子構造と三素子構造とで個別にヒータ26を設計する必要がなく共通化することができる。そのため、製造コストの増大を抑制でき、また組立工程における各部品の管理も容易となる。レバー23は、支軸63が一体成形されているため、部品点数の増大を抑制し、組付け作業の容易性も向上する。
【0028】
レバー23は、回動中心となる支軸63の位置、シフタ22によって押される位置、及び反転機構24を押す位置が調整されることによって、シフタ22における変位量の増幅倍率が調整される。例えば、奥行方向から見て、支軸63の位置とシフタ22によって押される位置とを近づけるほど、またシフタ22によって押される位置と反転機構24を押す位置とを遠ざけるほど、増幅倍率が大きくなる。このように、増幅倍率を任意に調整して反転機構24に伝達することができる。増幅倍率によっては三素子構造よりも補償バイメタル31の変位量を大きくすることができるため、反転機構24の動作不良を抑制し、信頼性を向上させることができる。
【0029】
レバー23は、バイメタル21が湾曲していないとき、つまり通常時に、支軸63の軸方向から見て、回動中心となる支軸63の位置、及び反転機構24を押す位置が、反転機構24を押す方向の直交方向に並んでいる。すなわち、奥行方向から見て、支軸63の中心と、端面65のうち最も幅方向の他方側に膨らんだ位置と、を結ぶ直線L1が縦方向に対してなす角度θを可及的に小さくしている。レバー23が回動するときに、端面65のうち最も幅方向の他方側に膨らんだ位置の軌道は、直線L1が縦方向に対してなす角度θが小さいほど、幅方向に大きく変位するためである。したがって、反転機構24を押す位置の軌道が幅方向に最も変位しやすくなり、シフタ22における変位量の増幅倍率を高めることができる。
【0030】
シフタ22は、バイメタル21に押される位置と、レバー23を押す位置とが、変位方向に沿った一直線上に配置されている。このように、力点と作用点とが一直線上に配置されているので、シフタ22は、バイメタル21に押されるときに、奥行方向の奥側から見て、時計回りのモーメントが作用することを防止できる。したがって、シフタ22の形状を、奥行方向から見て、バイメタル21に押される位置よりも縦方向の一方側に大きく拡大させる等、重量バランスによってモーメントの抑制を図る必要がなくなり、軽量化や省スペース化を実現できる。
シフタ22は、平板状であり、レバー23は、支軸63がシフタ22の面直角方向に延び、シフタ22の面方向に回動する。これにより、熱動形過負荷継電器11が奥行方向に大型化することを抑制できる。
【0031】
次に、比較例について説明する。
図8は、比較例を示す図である。
ここでは、ケース12を奥行方向の奥側から見た状態を示す。熱動形過負荷継電器71は、シフタ72を備えており、一実施形態のシフタ22とは形状が異なっている。比較例となる熱動形過負荷継電器71では、バイメタル21によって押されたシフタ72が反転機構24を直接的に押すことで、トリップ状態となる。二素子構造は三素子構造に比べて素子数が少ないため、それだけシフタ72の変位量が小さくなってしまう。二素子構造で三素子構造と同等の変位量を得るには、ヒータ26の設計を見直す必要があるが、逆に三素子構造では発熱量が大きくなり、各端子の上昇温度が規格範囲を超える可能性がある。すなわち、二素子構造と三素子構造とで個別にヒータ26を設計しなければならず共通化できなかった。
【0032】
また、シフタ72は、補償バイメタル31を押す位置が、バイメタル21に押される位置よりも縦方向の他方側にあり、力点と作用点とが幅方向に沿った一直線上に配置されていなかった。そのため、シフタ72は、バイメタル21に押されるときに、奥行方向の奥側から見て、時計回りのモーメントが作用し、突起部45に対する摺動抵抗となる。そこで、シフタ72の形状を、奥行方向から見て、バイメタル21に押される位置よりも縦方向の一方側に大きく拡大させることで、重量バランスによってモーメントの抑制を図っていた。したがって、軽量化や省スペース化の妨げになっていた。
【0033】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0034】
11…熱動形過負荷継電器、12…ケース、21…バイメタル、22…シフタ、23…レバー、24…反転機構、25…リセット棒、26…ヒータ、27…接続端子、31…補償バイメタル、32…釈放レバー、33…引張りばね、34…可動板、35…板ばね、36…連動板、41…隔壁、42…隔壁、43…隔壁、44…桁板、45…突起部、46…凹溝、47…板ばね、51…長穴、52…長穴、53…係合片、54…係合片、55…係合片、56…先端、61…対向板、62…対向板、63…支軸、64…端面、65…端面、71…熱動形過負荷継電器、72…シフタ