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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/42 20060101AFI20250109BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20250109BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250109BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20250109BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C08G59/42
C08L63/00 Z
C08K3/013
H05K1/03 610L
H05K3/46 G
H05K3/46 T
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021114526
(22)【出願日】2021-07-09
(65)【公開番号】P2023010409
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2024-06-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川合 賢司
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-172519(JP,A)
【文献】特開2019-206638(JP,A)
【文献】米国特許第05072021(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0092468(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第110511360(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00- 59/72
C08L 63/00- 63/10
C08K 3/00- 13/08
H05K 1/00- 3/46
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A-1)液状エポキシ樹脂、
(A-2)固状エポキシ樹脂、
(B)無機充填材、及び
(C)ナフタレン骨格及びビフェニル骨格がメチレン鎖で結合された骨格を有する活性エステル化合物、を含む樹脂組成物であって、
(C)成分が、下記式(C-1)で表される構造を有し、
(B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、70質量%以上である、樹脂組成物
【化1】
(式(C-1)中、R 11 、R 13 、及びR 14 は、それぞれ独立に脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、又はアラルキル基を表し、R 12 は、芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物に由来する基を表す。m1、m2、及びm3は、それぞれ独立に0又は1~4の整数を表す。)
【請求項2】
(A-1)成分と、(A-2)成分との量比が、質量比で1:0.1~1:10である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、20質量%以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、(D)熱硬化性樹脂を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、(E)硬化剤を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
絶縁層形成用である、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
導体層を形成するための絶縁層形成用である、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
支持体と、該支持体上に設けられた、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
【請求項10】
請求項に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらには、本発明は、当該樹脂組成物を用いて得られる樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造技術として、絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。ビルドアップ方式による製造方法において、一般に、絶縁層は、樹脂組成物を硬化させて形成される。このような樹脂組成物としては、例えば、特許文献1に開示される樹脂組成物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-66792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂組成物を硬化することによって形成される硬化物は、半導体装置のプリント配線板の絶縁層として用いられ得る。そのため、当該硬化物の誘電正接を低くすることが求められる。また、この硬化物で形成された絶縁層は、導体層との間のピール強度に優れ、また、銅箔との密着性も優れることが望ましい。
【0005】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、誘電特性が低く、導体層との間のピール強度、銅箔密着性及びHAST試験後の銅箔密着性に優れる硬化物を得ることができる樹脂組成物;前記樹脂組成物を含む樹脂組成物層を備える樹脂シート;前記樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を含むプリント配線板;並びに、前記プリント配線板を含む半導体装置;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、(A-1)液状エポキシ樹脂、(A-2)固状エポキシ樹脂、(B)無機充填材、及び(C)ナフタレン骨格及びビフェニル骨格がメチレン鎖で結合された骨格を有する活性エステル化合物を用いることで前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、以下のものを含む。
[1] (A-1)液状エポキシ樹脂、
(A-2)固状エポキシ樹脂、
(B)無機充填材、及び
(C)ナフタレン骨格及びビフェニル骨格がメチレン鎖で結合された骨格を有する活性エステル化合物、を含む樹脂組成物。
[2] (B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、70質量%以上である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] (A-1)成分と、(A-2)成分との量比が、質量比で1:0.1~1:10である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] (C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、20質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] さらに、(D)熱硬化性樹脂を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] さらに、(E)硬化剤を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] 絶縁層形成用である、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] 導体層を形成するための絶縁層形成用である、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9] 支持体と、該支持体上に設けられた、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを含む、樹脂シート。
[10] [1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
[11] [10]に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、誘電特性が低く、ピール強度、銅箔密着性及びHAST試験後の銅箔密着性に優れる硬化物を得ることができる樹脂組成物;前記樹脂組成物を含む樹脂組成物層を備える樹脂シート;前記樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を含むプリント配線板;並びに、前記プリント配線板を含む半導体装置;を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して説明する。ただし、本発明は、下記に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施されうる。
【0010】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A-1)液状エポキシ樹脂、(A-2)固状エポキシ樹脂、(B)無機充填材、及び(C)ナフタレン骨格及びビフェニル骨格がメチレン鎖で結合された骨格を有する活性エステル化合物を含む。このような樹脂組成物によれば、誘電正接が低く、ピール強度、銅箔密着性及びHAST試験後の銅箔密着性に優れる硬化物を得ることが可能となる。また、樹脂組成物は、通常、破断点伸度が大きく、算術平均粗さRaが低く、ラミネートムラが抑制された硬化物を得ることも可能である。
【0011】
樹脂組成物は、更に必要に応じて、(D)熱可塑性樹脂、(E)硬化剤、(F)硬化促進剤、及び(G)その他の添加剤などの任意の成分を含んでいてもよい。以下、樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。なお、(A-1)成分及び(A-2)成分をまとめて、(A)成分として(A)エポキシ樹脂ということがある。
【0012】
<(A-1)液状エポキシ樹脂>
樹脂組成物は、(A-1)成分として、(A-1)液状エポキシ樹脂を含有する。(A-1)液状エポキシ樹脂は、温度20℃で液状のエポキシ樹脂である。
【0013】
(A-1)成分は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂であることが好ましく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する芳香族系の液状エポキシ樹脂がより好ましい。(A-1)成分は、本発明の効果を顕著に得る観点から、(A-1)成分の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂の割合は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上である。
【0014】
(A-1)成分としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂;シクロヘキサン型エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0015】
(A-1)成分の具体例としては、DIC社製の「HP-4032」、「HP-4032-D」、「HP-4032-SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
(A-1)成分のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、樹脂組成物層の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0017】
(A-1)成分の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは200~3000、さらに好ましくは250~1500である。
【0018】
(A-1)成分の含有量は、良好な機械強度、及び絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。(A-1)成分の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
【0019】
<(A-2)固体状エポキシ樹脂>
樹脂組成物は、(A-2)成分として、(A-2)固体状エポキシ樹脂を含有する。固体状エポキシ樹脂は、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂である。
【0020】
(A-2)固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。本発明の効果を顕著に得る観点から、(A-2)成分は、(A-2)成分の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂の割合は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上である。
【0021】
(A-2)成分としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル骨格エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル骨格エポキシ樹脂が好ましい。
【0022】
(A-2)成分の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC-3000L」、「NC3100」(ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフトールアラルキル骨格エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
(A-2)成分のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、樹脂組成物層の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0024】
(A-2)成分の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは200~3000、さらに好ましくは250~1500である。
【0025】
(A-2)成分の含有量は、良好な機械強度、及び絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。(A-2)成分の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
【0026】
(A-1)液状エポキシ樹脂と(A-2)固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:0.1~1:10、より好ましくは1:0.5~1:5、特に好ましくは1:1~1:3である。(A-1)成分と(A-2)成分との量比が斯かる範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。
【0027】
<(B)無機充填材>
樹脂組成物は、(B)成分として、(B)無機充填材を含有する。(B)無機充填材を樹脂組成物に含有させることで、誘電特性に優れる硬化物を得ることが可能となる。
【0028】
無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。(B)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
(B)成分の市販品としては、例えば、電化化学工業社製の「UFP-30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」、「SC2050-SXF」;などが挙げられる。
【0030】
(B)成分の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0031】
(B)成分の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出する。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」、島津製作所社製「SALD-2200」等が挙げられる。
【0032】
(B)成分の比表面積は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1m/g以上、より好ましくは2m/g以上、特に好ましくは3m/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m/g以下、50m/g以下又は40m/g以下である。比表面積は、BET全自動比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで無機充填材の比表面積を測定することで得られる。
【0033】
(B)成分は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフッ素含有シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-8-アミノオクチル-トリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤;シラン系カップリング剤;フェニルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン;ヘキサメチルジシラザン等のオルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0034】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0035】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0036】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下が更に好ましい。
【0037】
(B)成分の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0038】
(B)成分の含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは70質量%以上、より好ましくは71質量%以上、さらに好ましくは72質量%以上であり、好ましくは90質量%以下であり、好ましくは85質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0039】
<(C)ナフタレン骨格及びビフェニル骨格がメチレン鎖で結合された骨格を有する活性エステル化合物>
樹脂組成物は、(C)成分として、(C)ナフタレン骨格及びビフェニル骨格がメチレン鎖で結合された骨格を有する活性エステル化合物を含有する。(C)成分は、剛直な構造であるナフタレン骨格を有するので、樹脂組成物の硬化物の剛性を高めることができる。また、(C)成分が有するビフェニル骨格は、ビフェニル分子の単結合が回転するので、樹脂組成物の硬化物の靱性を高めることができる。したがって、(C)成分によれば、めっきピール強度及び銅箔密着性を向上させることが可能になり、更に通常は、破断点伸度を向上させることが可能となる。
【0040】
(C)成分としては、例えば、フェノール骨格を含有する化合物、及びメチレン鎖を有するビフェニル骨格を含有する化合物を反応させ反応物を得た後、該反応物に芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物を反応させることで得られる化合物を用いることができる。
【0041】
フェノール骨格を含有する化合物としては、芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物と反応させる観点から、フェノール性水酸基を有することが好ましい。フェノール骨格を含有する化合物としては、例えば、1-ナフトール、2-ナフトール等のナフトール化合物;これらの芳香核上に1つ乃至複数の置換基を有する化合物等が挙げられる。芳香核上の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等の脂肪族炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換したアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換したアラルキル基等が挙げられる。これらの中でも、フェノール骨格を含有する化合物としては、誘電正接を向上させる観点からナフトール化合物が好ましく、1-ナフトール又は2-ナフトールがより好ましい。
【0042】
メチレン鎖を有するビフェニル骨格を含有する化合物としては、ビフェニル骨格を有するとともに、フェノール骨格を含有する化合物、芳香族ポリカルボン酸、及びその酸ハロゲン化物のいずれかと反応し得る、メチレン鎖を有する反応基を有する化合物を用いることができる。メチレン鎖を有する反応基としては、フェノール骨格を含有する化合物等と反応してメチレン鎖(-CH-)を形成することができる反応基を用いることができる。このような化合物としては、例えば下記式(1)で表される化合物を用いることができる。
【化1】
(式(1)中、Z及びZは、それぞれ独立にハロメチル基、ヒドロキシメチル基、又はアルキルオキシメチル基を表す。Rc11及びRc12は、それぞれ独立に脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基又はアラルキル基を表す。i及びjはそれぞれ独立に0又は1~4の整数を表す。)
【0043】
及びZは、それぞれ独立にハロメチル基、ヒドロキシアルキル基、又はアルキルオキシメチル基を表す。ハロメチル基は、例えばクロロメチル基等が挙げられる。アルキルオキシメチル基は、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基等が挙げられる。ヒドロキシアルキル基は、例えば、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基等が挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、ヒドロキシアルキル基が好ましく、ヒドロキシメチル基がより好ましい。
【0044】
c11及びRc12は、それぞれ独立に脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基又はアラルキル基を表す。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
【0045】
i及びjはそれぞれ独立に0又は1~4の整数を表し、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0046】
芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物としては、フェノール骨格を含有する化合物及びメチレン鎖を有するビフェニル骨格を含有する化合物の反応物中のフェノール性水酸基と反応してエステル結合を形成し得る芳香族化合物を用いることができる。芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物の具体例としては、イソフタル酸、テレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸、トリメリット酸等のベンゼントリカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-2,3-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、これらの酸ハロゲン化物、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した化合物等が挙げられる。酸ハロゲン化物は、例えば、酸塩化物、酸臭化物、酸フッ化物、酸ヨウ化物等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、イソフタル酸、テレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物が好ましく、イソフタル酸がより好ましい。
【0047】
(C)成分としては、下記式(C-1)で表される構造を有することが好ましい。
【化2】
(式(C-1)中、R11、R13、及びR14は、それぞれ独立に脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、又はアラルキル基を表し、R12は、芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物に由来する基を表す。m1、m2、及びm3は、それぞれ独立に0又は1~4の整数を表す。)
【0048】
11、R13、及びR14は、それぞれ独立に脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、又はアラルキル基を表す。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
【0049】
12は、芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物に由来する基を表し、芳香族ポリカルボン酸に由来する基が好ましい。
【0050】
m1、m2、及びm3は、それぞれ独立に0又は1~4の整数を表し、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0051】
(C)成分は、上記したように、フェノール骨格を含有する化合物、及びメチレン鎖を有するビフェニル骨格を含有する化合物を反応させ反応物を得た後、該反応物に芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物を反応させることで得られる化合物を用いることができる。
【0052】
フェノール骨格を含有する化合物、及びメチレン鎖を有するビフェニル骨格を含有する化合物の反応は、例えば、酸触媒条件下、80~180℃程度の温度条件下で加熱撹拌する方法により行うことができる。反応は必要に応じて有機溶媒中で行ってもよい。反応終了後、必要に応じて、過剰量のフェノール骨格を含有する化合物を留去してもよく、未反応のフェノール骨格を含有する化合物と、反応物との混合物を次の反応にそのまま用いてもよい。
【0053】
酸触媒は、例えば、パラトルエンスルホン酸、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、硫酸、塩酸、シュウ酸等が挙げられる。酸触媒は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶媒、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。有機溶媒は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
反応物と、芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物との反応は、例えば、アルカリ触媒の存在下、40~65℃程度の温度条件下で加熱撹拌する方法により行うことができる。反応は必要に応じて、有機溶媒中で行ってもよい。また、反応終了後は必要に応じて、水洗や再沈殿等により反応生成物を精製してもよい。
【0056】
アルカリ触媒は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。アルカリ触媒は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、アルカリ触媒は、3~30%程度の水溶液として用いてもよい。有機溶媒は上記した有機溶媒を用いることができる。
【0057】
反応物と、芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物との反応は、必要に応じてテトラブチルアンモニウムブロマイド等の重合触媒を存在させてもよい。
【0058】
(C)成分は、フェノール骨格を含有する化合物、及びメチレン鎖を有するビフェニル骨格を含有する化合物を反応させ反応物を得た後、該反応物に芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物を反応させることで得られる化合物に加えて、フェノール骨格を含有する化合物と、芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物とのエステル化合物を含む混合物であってもよい。前記エステル化合物は、例えば、フェノール骨格を含有する化合物、メチレン鎖を有するビフェニル骨格を含有する化合物、及び芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物の反応割合を調整することにより、(C)成分の一成分として製造することができる。
【0059】
(C)成分の重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果を顕著に得る観点から、600~5,000が好ましく、800~3,000がより好ましい。樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0060】
(C)成分の軟化点は、本発明の効果を顕著に得る観点から、100~180℃が好ましく、120~170℃がより好ましい。軟化点は、JIS K7234に基づいて測定される値である。
【0061】
(C)成分の官能基当量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、210~360g/eq.が好ましく、220~300g/eq.がより好ましい。なお、官能基とは、(C)成分中のエステル結合部位とフェノール性水酸基とのことを言う。また、官能基当量は、反応原料の仕込み量から算出される値である。
【0062】
(C)成分の活性エステル基当量は、誘電正接を低い硬化物を得る観点から、好ましくは200g/eq.以上、より好ましくは210g/eq.以上、さらに好ましくは220g/eq.以上であり、好ましくは400g/eq.以下、より好ましくは360g/eq.以下、さらに好ましくは300g/eq.以下である。活性エステル基とは、(C)成分中のエステル結合部位を言う。また、活性エステル基当量は、反応原料の仕込み量から算出される値である。
【0063】
(A)成分と(C)成分との量比は、[(C)成分の活性エステル基の合計数]/[(A)成分のエポキシ基の合計数]の比率で、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下である。ここで、「(A)成分のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する(A)成分の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「(C)成分の活性エステル基数」とは、樹脂組成物中に存在する(C)成分の不揮発成分の質量を活性エステル基当量で除した値を全て合計した値である。(A)成分と(C)成分との量比をかかる範囲内とすることにより、本発明の効果を顕著に得ることが可能になる。
【0064】
(C)成分の含有量としては、ピール強度、銅箔密着性、及び破断点伸度が向上した硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。また、上限は好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0065】
<(D)熱硬化性樹脂>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として(D)熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。(D)成分を樹脂組成物に含有させることで、誘電特性が低く且つピール強度に優れる硬化物を得ることができる。(D)成分は、(A)成分~(C)成分、及び(E)成分に該当するものは除かれる。(D)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0066】
(D)成分は、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する化合物(以下、「ラジカル重合性化合物」という)を含むことが好ましい。ラジカル重合性不飽和基は、ラジカル重合性を示す不飽和結合を含む基を表す。このラジカル重合性不飽和基としては、例えば、エチレン性二重結合を含む基が挙げられる。このようなラジカル重合性不飽和基を含む(D)成分は、熱又は活性エネルギー線によってラジカル重合を生じ、樹脂組成物を硬化させることができる。
【0067】
ラジカル重合性不飽和基としては、例えば、マレイミド基、ビニル基、ビニルフェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、フマロイル基、マレオイル基、ベンゾシクロブテン基、アリル基等が挙げられる。中でも、(D)成分としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、マレイミド基が好ましい。(D)成分が含むラジカル重合性不飽和基の数は、通常1以上、好ましくは2以上である。(D)成分が2以上のラジカル重合性不飽和基を含む場合、それら2以上のラジカル重合性不飽和基は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0068】
(D)成分は、マレイミド樹脂、スチリル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、及びアリル樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びスチリル樹脂から選ばれる1種以上であることがより好ましい。
【0069】
(D)成分は、分子中にラジカル重合性不飽和基を2個以上有する化合物を含むことがより好ましい。上限については特に制限はないが、10個以下等とし得る。
【0070】
(マレイミド樹脂)
マレイミド樹脂としては、
(D-1)マレイミド基の窒素原子と直接結合している炭素原子数5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物、
(D-2―1)マレイミド基の窒素原子と直接結合している芳香族環を有するマレイミド化合物、及び
(D-2-2)マレイミド基の窒素原子と直接結合している芳香族環を有し、かつトリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物、
から選択される1種以上であることが好ましい。
【0071】
ここで、用語「直接」とは、(D-1)成分にあっては、マレイミド基の窒素原子と炭素原子数5以上の脂肪族基との間に他の基がないことをいい、(D-2-1)成分及び(D-2-2)成分にあっては、マレイミド基の窒素原子と芳香族環との間に他の基がないことをいう。なお、(D-2-1)成分及び(D-2-2)成分をまとめて(D-2)成分ということがある。
【0072】
(D-1)成分は、マレイミド基の窒素原子と直接結合している炭素原子数5以上の脂肪族基を含むマレイミド化合物である。(D-1)成分は、例えば、脂肪族アミン化合物(ダイマー酸骨格を有するジアミン化合物など)と、マレイン酸無水物と、必要に応じてテトラカルボン酸二無水物とを含む成分をイミド化反応させることにより得ることができる。
【0073】
炭素原子数5以上の脂肪族基としては、例えば、アルキル基、アルキレン基、アルケニレン基等が挙げられる。
【0074】
炭素原子数が5以上のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。炭素原子数が5以上のアルキル基は、炭素原子数が5以上のアルキレン基の置換基として有していてもよい。
【0075】
炭素原子数が5以上のアルキレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状のアルキレン基とは、環状のアルキレン基のみからなる場合と、直鎖状のアルキレン基と環状のアルキレン基との両方を含む場合も含める概念である。このようなアルキレン基としては、例えば、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、ヘプタデシレン基、ヘキサトリアコンチレン基、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0076】
炭素原子数が5以上のアルケニレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルケニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状のアルケニレン基とは、環状のアルケニレン基のみからなる場合と、直鎖状のアルケニレン基と環状のアルケニレン基との両方を含む場合も含める概念である。このようなアルケニレン基としては、例えば、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、ヘプチレニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基、トリデシニレン基、ヘプタデシニレン基、ヘキサトリアコンチニレン基、オクチニレン-シクロヘキシニレン構造を有する基、オクチニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基、プロピニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基等が挙げられる。
【0077】
(D-1)成分としては、下記式(D-1-1)で表される化合物が好ましい。
【化3】
一般式(D-1-1)中、Mは置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表す。
【0078】
Mは、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表す。炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。この脂肪族基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状の脂肪族基とは、環状の脂肪族基のみからなる場合と、直鎖状の脂肪族基と環状の脂肪族基との両方を含む場合も含める概念である。2価の脂肪族基としては、アルキレン基、アルケニレン基等が挙げられる。アルキレン基、及びアルケニレン基については上述したとおりである。
【0079】
Mの置換基としては、例えば、ハロゲン原子、-OH、-O-C1-10アルキル基、-N(C1-10アルキル基)、C1-10アルキル基、C2-30アルケニル基、C2-30アルキニル基、C6-10アリール基、-NH、-CN、-C(O)O-C1-10アルキル基、-COOH、-C(O)H、-NO等が挙げられる。ここで、「Cx-y」(x及びyは正の整数であり、x<yを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がx~yであることを表す。例えば、「C1-10アルキル基」という表現は、炭素原子数1~10のアルキル基を示す。これら置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。置換基は、好ましくは炭素原子数が5以上のアルキル基である。
【0080】
Lは単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-NR-(Rは水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基)、酸素原子、硫黄原子、C(=O)NR-、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、及びこれら2種以上の2価の基の組み合わせからなる基等が挙げられる。アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、及び2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、炭素原子数が5以上のアルキル基を置換基として有していてもよい。フタルイミド由来の2価の基とは、フタルイミドから誘導される2価の基を表し、具体的には一般式(D-1-2)で表される基である。ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基とは、ピロメリット酸ジイミドから誘導される2価の基を表し、具体的には一般式(D-1-3)で表される基である。式中、「*」は結合手を表す。
【化4】
【0081】
Lにおける2価の連結基としてのアルキレン基は、炭素原子数1~50のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~45のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~40のアルキレン基が特に好ましい。このアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチルエチレン基、シクロヘキシレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、ヘプタデシレン基、ヘキサトリアコンチレン基、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0082】
Lにおける2価の連結基としてのアルケニレン基は、炭素原子数2~50のアルケニレン基が好ましく、炭素原子数2~45のアルケニレン基がより好ましく、炭素原子数2~40のアルケニレン基が特に好ましい。このアルケニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニレン基としては、例えば、メチルエチレニレン基、シクロヘキセニレン基、ペンテニレン基、へキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等が挙げられる。
【0083】
Lにおける2価の連結基としてのアルキニレン基は、炭素原子数2~50のアルキニレン基が好ましく、炭素原子数2~45のアルキニレン基がより好ましく、炭素原子数2~40のアルキニレン基が特に好ましい。このアルキニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキニレン基としては、例えば、メチルエチニレン基、シクロヘキシニレン基、ペンチニレン基、へキシニレン基、ヘプチニレン基、オクチニレン基等が挙げられる。
【0084】
Lにおける2価の連結基としてのアリーレン基は、炭素原子数6~24のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~18のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~14のアリーレン基がさらに好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらにより好ましい。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等が挙げられる。
【0085】
Lにおける2価の連結基であるアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、及びアリーレン基は置換基を有していてもよい。置換基としては、一般式(B2-1-1)中のMの置換基と同様であり、好ましくは炭素原子数が5以上のアルキル基である。
【0086】
Lにおける2種以上の2価の基の組み合わせからなる基としては、例えば、アルキレン基、フタルイミド由来の2価の基及び酸素原子との組み合わせからなる2価の基;フタルイミド由来の2価の基、酸素原子、アリーレン基及びアルキレン基の組み合わせからなる2価の基;アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる2価の基;等が挙げられる。2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、それぞれの基の組み合わせにより縮合環等の環を形成してもよい。また、2種以上の2価の基の組み合わせからなる基は、繰り返し単位数が1~10の繰り返し単位であってもよい。
【0087】
中でも、一般式(D-1-1)中のLとしては、酸素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数6~24のアリーレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数が1~50のアルキレン基、炭素原子数が5以上のアルキル基、フタルイミド由来の2価の基、ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基、又はこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基であることが好ましい。中でも、Lとしては、アルキレン基;アルキレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-アリーレン基-アルキレン基-アリーレン基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキレン-ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキニレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキニレン基-フタルイミド由来の2価の基-酸素原子-アリーレン基-アルキニレン基-アリーレン基-酸素原子-フタルイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基;アルキニレン-ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の構造を有する2価の基がより好ましい。
【0088】
一般式(D-1-1)で表されるマレイミド樹脂は、一般式(D-1-4)で表されるマレイミド樹脂であることが好ましい。
【化5】
一般式(D-1-4)中、Mはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表し、Zはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。tは1~10の整数を表す。
【0089】
はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表す。Mは、一般式(D-1-1)中のMと同様である。
【0090】
Zはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。Zにおける2価の脂肪族基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基等が挙げられる。2価の脂肪族基は鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも環状、即ち置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の環状の2価の脂肪族基が好ましい。
【0091】
アルキレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このようなアルキレン基としては、例えば、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等が挙げられる。
【0092】
炭素原子数が5以上のアルケニレン基の炭素原子数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。このアルケニレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、中でも直鎖状が好ましい。ここで、環状のアルケニレン基とは、環状のアルケニレン基のみからなる場合と、直鎖状のアルケニレン基と環状のアルケニレン基との両方を含む場合も含める概念である。このようなアルケニレン基としては、例えば、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、ヘプチレニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基、トリデシニレン基、ヘプタデシニレン基、ヘキサトリアコンチニレン基、オクチニレン-シクロヘキシニレン構造を有する基、オクチニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基、プロピニレン-シクロヘキシニレン-オクチニレン構造を有する基等が挙げられる。
【0093】
Zが表す芳香環を有する2価の基における芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フタルイミド環、ピロメリット酸ジイミド環、芳香族複素環等が挙げられ、ベンゼン環、フタルイミド環、ピロメリット酸ジイミド環が好ましい。即ち、芳香環を有する2価の基としては、置換基を有していてもよいベンゼン環を有する2価の基、置換基を有していてもよいフタルイミド環を有する2価の基、置換基を有していてもよいピロメリット酸ジイミド環を有する2価の基が好ましい。芳香環を有する2価の基としては、例えば、フタルイミド由来の2価の基及び酸素原子との組み合わせからなる基;フタルイミド由来の2価の基、酸素原子、アリーレン基及びアルキレン基の組み合わせからなる基;アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基;ピロメリット酸ジイミド由来の2価の基;フタルイミド由来の2価の基及びアルキレン基の組み合わせからなる基;等が挙げられる。上記アリーレン基は、一般式(D-1-1)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基と同様である。
【0094】
Zが表す、アルキレン基及び芳香環を有する2価の基は置換基を有していてもよい。置換基としては、一般式(D-1-1)中のMが有していてもよい置換基と同様である。
【0095】
Zが表す基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化6】
【化7】
【0096】
一般式(D-1-1)で表される化合物は、一般式(D-1-5)で表される化合物、及び一般式(D-1-6)で表される化合物のいずれかであることが好ましい。
【化8】
一般式(D-1-5)中、M及びMはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表し、R40はそれぞれ独立に、酸素原子、アリーレン基、アルキレン基、又はこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基を表す。t1は1~10の整数を表す。
一般式(D-1-6)中、M、M及びMはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を表し、Mはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表し、R41及びR42はそれぞれ独立に炭素原子数が5以上のアルキル基を表す。t2は0~10の整数を表し、u1及びu2はそれぞれ独立に0~4の整数を表す。
【0097】
及びMはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基を表す。M及びMは、一般式(D-1-1)中のMが表す炭素原子数が5以上の2価の脂肪族基と同様であり、ヘキサトリアコンチニレン基、ヘキサトリアコンチレン基が好ましい。
【0098】
40はそれぞれ独立に、酸素原子、アリーレン基、アルキレン基、又はこれら2種以上の2価の基の組み合わせからなる基を表す。アリーレン基、アルキレン基は、一般式(D-1-1)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基及びアルキレン基と同様である。R40としては、2種以上の2価の基の組み合わせからなる基又は酸素原子であることが好ましい。
【0099】
40における2種以上の2価の基の組み合わせからなる基としては、酸素原子、アリーレン基、及びアルキレン基の組み合わせが挙げられる。2種以上の2価の基の組み合わせからなる基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化9】
【0100】
、M及びMはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基を表す。M、M及びMは、一般式(D-1-1)中のMが表す置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上の脂肪族基と同様であり、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基が好ましく、オクチレン基がより好ましい。
【0101】
はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基を表す。Mは、一般式(D-1-4)中のZが表す置換基を有していてもよい芳香環を有する2価の基と同様であり、アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基;フタルイミド由来の2価の基及びアルキレン基の組み合わせからなる基が好ましく、アルキレン基及びピロメリット酸ジイミド由来の2価の基の組み合わせからなる基がより好ましい。上記アリーレン基及びアルキレン基は、一般式(D-1-1)中のLが表す2価の連結基におけるアリーレン基及びアルキレン基と同様である。
【0102】
が表す基の具体例としては、例えば以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【化10】
【0103】
41及びR42はそれぞれ独立に炭素原子数が5以上のアルキル基を表す。R41及びR42は、上記した炭素原子数が5以上のアルキル基と同様であり、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が好ましく、ヘキシル基、オクチル基がより好ましい。
【0104】
u1及びu2はそれぞれ独立に1~15の整数を表し、1~10の整数が好ましい。
【0105】
(D-1)成分の具体例としては、以下の(D-i)~(D-iii)の化合物を挙げることができ、これら具体例に限定されるものではない。式中、vは1~10の整数を表す。
【化11】
【化12】
【0106】
(D-1)成分の具体例としては、デジグナーモレキュールズ社製の「BMI1500」(式(D-i)の化合物)、「BMI1700」(式(D-ii)の化合物)、「BMI689」、信越化学工業社製の「SLK-6895」(式(D-iii)の化合物)、等が挙げられる。
【0107】
(D-1)成分の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは150~5000、より好ましくは300~2500である。
【0108】
(D-1)成分のマレイミド基当量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは50g/eq.~2000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは150g/eq.~500g/eq.である。マレイミド基当量は、1当量のマレイミド基を含む(D-1)成分の質量である。
【0109】
(D-2-1)成分は、マレイミド基の窒素原子と直接結合している芳香族環を有するマレイミド化合物である。(D-2-1)成分は、例えば、芳香族アミン化合物(芳香族ジアミン化合物など)と、マレイン酸無水物とを含む成分をイミド化反応させることにより得ることができる。
【0110】
芳香族環は、炭素環又は複素環であり得る。芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等の単環式の芳香族環;ナフタレン環、アントラセン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾイミダゾール環、インダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、アクリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、フタラジン環等の2個以上の単環式の芳香族環が縮合した縮合環;インダン環、フルオレン環、テトラリン環等の1個以上の単環式の芳香族環に1個以上の単環式の非芳香族環が縮合した縮合環等が挙げられる。中でも、芳香族環としては、単環式の芳香族環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
【0111】
(D-2-1)成分としては、下記式(D-2-1)で表される化合物が好ましい。
【化13】
【0112】
式中、Rは、それぞれ独立して、置換基を示し;Xは、それぞれ独立して、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、又は-OCO-(好ましくは単結合又はアルキレン基)を示し;Zは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい非芳香環、又は置換基を有していてもよい芳香環(好ましくは置換基を有していてもよい芳香環、特に好ましくは置換基を有していてもよいベンゼン環)を示し;sは、1以上の整数(好ましくは1~100の整数、より好ましくは1~50の整数、さらに好ましくは1~20の整数)を示し;t1は、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を示し;uは、それぞれ独立して、0~2の整数(好ましくは0)を示す。]で表されるマレイミド化合物であり、特に好ましくは、式(D-2-2)~(D-2-5):
【0113】
【化14】
式中、Rc1、Rc2及びRc3は、それぞれ独立して、アルキル基を示し;Xc1及びXc2は、それぞれ独立して、単結合又はアルキレン基を示し;sは、1以上の整数(好ましくは1~100の整数、より好ましくは1~50の整数、さらに好ましくは1~20の整数)を示し;t’は、1~5の整数を示し;v1、v2及びv3は、それぞれ独立して、0~2の整数(好ましくは0)を示す。なお、s単位、t単位、t’単位、v単位、v1単位、v2単位及びv3単位は、それぞれ、単位毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0114】
また、他の実施形態として、(D-2-1)成分は、例えば下記式(D-2-6)により表される構造であることが好ましい。
【化15】
式中、R31及びR36はマレイミド基を表し、R32、R33、R34及びR35は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Dはそれぞれ独立に2価の芳香族基を表す。m1及びm2はそれぞれ独立に1~10の整数を表し、aは1~100の整数を表す。
【0115】
式(D-2-6)中のR32、R33、R34及びR35は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、水素原子が好ましい。
【0116】
アルキル基としては、炭素原子数1~10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がさらに好ましい。アルキル基は、直鎖状、分枝状又は環状であってもよい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0117】
アリール基は、炭素原子数6~20のアリール基が好ましく、炭素原子数6~15のアリール基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリール基がさらに好ましい。アリール基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0118】
アルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子、-OH、-O-C1-6アルキル基、-N(C1-10アルキル基)、C1-10アルキル基、C6-10アリール基、-NH、-CN、-C(O)O-C1-10アルキル基、-COOH、-C(O)H、-NO等が挙げられる。ここで、「Cp-q」(p及びqは正の整数であり、p<qを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がp~qであることを表す。例えば、「C1-10アルキル基」という表現は、炭素原子数1~10のアルキル基を示す。これら置換基は、互いに結合して環を形成していてもよく、環構造は、スピロ環や縮合環も含む。
【0119】
上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。二次置換基としては、特に記載のない限り、上述の置換基と同じものを用いてよい。
【0120】
式(D-2-6)中のDは2価の芳香族基を表す。2価の芳香族基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、アラルキル基、ビフェニレン基、ビフェニルアラルキル基等が挙げられ、中でも、ビフェニレン基、ビフェニルアラルキル基が好ましく、ビフェニレン基がより好ましい。2価の芳香族基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、式(D-2-6)中のR32が表すアルキル基が有していてもよい置換基と同様である。
【0121】
m1及びm2はそれぞれ独立に1~10の整数を表し、好ましくは1~6、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2であり、1がよりさらに好ましい。
【0122】
aは1~100の整数を表し、好ましくは1~50、より好ましくは1~20、さらに好ましくは1~5である。
【0123】
(D-2-1)成分としては、式(D-2-7)で表される樹脂が好ましい。
【化16】
式中、R37及びR38はマレイミド基を表す。a1は1~100の整数を表す。
【0124】
a1は、式(D-2-6)中のaと同じであり、好ましい範囲も同様である。
【0125】
(D-2-1)成分の市販品としては、例えば、日本化薬社製の「MIR-3000-70MT」;ケイアイ化成社製「BMI-50P」;大和化成工業社製の「BMI-1000」、「BMI-1000H」、「BMI-1100」、「BMI-1100H」、「BMI-4000」、「BMI-5100」;ケイアイ化成社製「BMI-4,4’-BPE」、「BMI-70」、ケイアイ化成社製「BMI-80」等が挙げられる。
【0126】
(D-2-1)成分の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは150~5000、より好ましくは300~2500である。
【0127】
(D-2-1)成分のマレイミド基の官能基当量は、好ましくは50g/eq.~2000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.さらに好ましくは150g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは200g/eq.~300g/eq.である。
【0128】
(D-2-2)成分は、マレイミド基の窒素原子と直接結合している芳香環を有し、かつトリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物である。トリメチルインダン骨格とは、下記式(D-3-1)に示す骨格を表す。
【0129】
【化17】
【0130】
トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環には、置換基が結合していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、及び、メルカプト基が挙げられる。
アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~10である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、等が挙げられる。
アルキルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは1~10である。アルキルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
アルキルチオ基の炭素原子数は、好ましくは1~10である。アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等が挙げられる。
アリール基の炭素原子数は、好ましくは6~10である。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
アリールオキシ基の炭素原子数は、好ましくは6~10である。アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
アリールチオ基の炭素原子数は、好ましくは6~10である。アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
シクロアルキル基の炭素原子数は、好ましくは3~10である。シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0131】
前記の置換基のうち、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及び、シクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0132】
トリメチルインダン骨格が含む1つのベンゼン環に結合する置換基の数は、1でもよく、2以上でもよい。トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合する置換基の数は、通常、0以上3以下である。置換基の数が2以上である場合、それら2以上の置換基は、同じでもよく、異なっていてもよい。中でも、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環には、置換基が結合していないことが好ましい。
【0133】
(D-2-2)成分の1分子中に含まれるトリメチルインダン骨格の数は、1でもよく、2以上でもよい。上限は、例えば、10以下、8以下、7以下、又は6以下でありうる。
【0134】
(D-2-2)成分は、上述したトリメチルインダン骨格に加えて、更に芳香環骨格を含む。当該芳香環骨格の環構成炭素の数は、好ましくは6~10である。芳香環骨格としては、例えば、ベンゼン環骨格、ナフタレン環骨格、等が挙げられる。(D-2-2)成分の1分子中に含まれる前記の芳香環骨格の数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは6以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。(D-2-2)成分が2以上の芳香環骨格をトリメチルインダン骨格に加えて含む場合、それら芳香環骨格は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0135】
前記の芳香環骨格が含む芳香環には、置換基が結合していてもよい。置換基としては、例えば、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合しうる置換基として上述した置換基、及び、ニトロ基が挙げられる。1つの芳香環に結合する置換基の数は、1でもよく、2以上でもよい。芳香環に結合する置換基の数は、通常、0以上4以下である。置換基の数が2以上である場合、それら2以上の置換基は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0136】
(D-2-2)成分は、上述したトリメチルインダン骨格に加えて、更に2価の脂肪族炭化水素基を含むことが好ましい。特に、(D-2-2)成分が、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環以外の芳香環骨格を含む場合に、(D-2-2)成分が2価の脂肪族炭化水素基を含むことが好ましい。この場合、2価の脂肪族炭化水素基は、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環と芳香環骨格との間を連結することが好ましい。また、2価の脂肪族炭化水素基は、芳香環骨格同士の間を連結することが好ましい。
【0137】
2価の脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1以上であり、好ましくは12以下、より好ましくは8以下、特に好ましくは5以下である。2価の脂肪族炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基としてのアルキレン基がより好ましい。2価の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の直鎖アルキレン基;エチリデン基(-CH(CH)-)、プロピリデン基(-CH(CHCH)-)、イソプロピリデン基(-C(CH-)、エチルメチルメチレン基(-C(CH)(CHCH)-)、ジエチルメチレン基(-C(CHCH-)等の分岐鎖アルキレン基;等が挙げられる。(D-2-2)成分が2以上の2価の脂肪族炭化水素基をトリメチルインダン骨格に加えて含む場合、それら2価の脂肪族炭化水素基は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0138】
(D-2-2)成分は、下記式(D-3-2)で示す構造を含むことが好ましい。(D-2-2)成分の全体が式(D-3-2)で示す構造を有していてもよく、(D-2-2)成分の部分が式(D-3-2)で示す構造を有していてもよい。
【化18】
【0139】
(式中、Ara1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表し;Ra1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表し;Ra2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表し;Ra3は、それぞれ独立に、2価の脂肪族炭化水素基を表し;na1は、正の整数を表し;na2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し;na3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。Ra1のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。Ra2のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。na2が2~4の場合、Ra1は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。na3が2~3の場合、Ra2は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。)
【0140】
式(D-3-2)において、Ara1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。この2価の芳香族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは6以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは16以下である。2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基が挙げられる。2価の芳香族炭化水素基が有しうる置換基としては、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、及び、メルカプト基が挙げられる。各置換基の水素原子は、さらにハロゲン原子で置換されていてもよい。また、これらの置換基の具体例としては、例えば、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合しうる置換基と同じ例が挙げられる。2価の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基の数は、好ましくは1~4である。2価の芳香族炭化水素基が有する置換基の数が2以上である場合、それら2以上の置換基は、同じでもよく、異なっていてもよい。中でも、Ara1は、置換基を有さない2価の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0141】
式(D-3-2)において、Ra1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表す。アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。これらの基の具体例としては、例えば、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合しうる置換基と同じ例が挙げられる。中でも、Ra1は、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数3~6のシクロアルキル基、及び、炭素原子数6~10のアリール基からなる群より選ばれる1種類以上の基であることがより好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基が特に好ましい。
【0142】
式(D-3-2)において、Ra2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表す。アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。これら基の具体例としては、例えば、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合しうる置換基と同じ例が挙げられる。中でも、Ra2は、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数3~6のシクロアルキル基、及び、炭素原子数6~10のアリール基からなる群より選択される1種類以上の基であることがより好ましい。
【0143】
式(D-3-2)において、Ra3は、それぞれ独立に、2価の脂肪族炭化水素基を表す。好ましい2価の脂肪族炭化水素基の範囲は、上述した通りである。
【0144】
式(D-3-2)において、na1は、正の整数を表す。na1は、好ましくは1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。
【0145】
式(D-3-2)において、na2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。na2は、好ましくは2又は3であり、より好ましくは2である。複数のna2は、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。na2が2以上の場合、複数のRa1は、同一環内で、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0146】
式(D-3-2)において、na3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。複数のna3は、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。na3は、好ましくは0である。
【0147】
(D-2-2)成分は、下記式(D-3-3)で示す構造を含むことが特に好ましい。(D-2-2)成分の全体が式(D-3-3)で示す構造を有していてもよく、(D-2-2)成分の部分が式(D-3-3)で示す構造を有していてもよい。
【化19】
(式中、Rb1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表し;Rb2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表し;nb1は、正の整数を表し;nb2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し;nb3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。Rb1のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。Rb2のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。nb2が2~4の場合、Rb1は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。nb3が2~3の場合、Rb2は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。)
【0148】
式(D-3-3)において、Rb1、Rb2、nb1、nb2及びnb3は、それぞれ、式(D-3-2)におけるRa1、Ra2、na1、na2及びna3と同じである。
【0149】
(D-2-2)成分は、更に、下記式(D-3-4)で示す構造を含んでいてもよい。
【化20】
式(D-3-4)において、Rc1、Rc2、nc2及びnc3は、それぞれ、式(A4)におけるRa1、Ra2、na2及びna3と同じである。また、式(D-3-4)において、nc1は、繰り返し単位数であり、1~20の整数を表す。さらに、式(E2-3-4)において、*は、結合手を表す。例えば、(D-2-2)成分は、式(D-3-2)において、na2が3以下であり、且つ、マレイミド基が結合するベンゼン環のマレイミド基に対するオルト位及びパラ位のうち、2つ以上に、Ra1が結合していない場合に、式(D-3-2)で表される構造に組み合わせて前記の式(D-3-4)で表される構造を含みうる。また、例えば、(D-2-2)成分は、式(D-3-3)において、nb2が3以下であり、且つ、マレイミド基が結合するベンゼン環のマレイミド基に対するオルト位及びパラ位のうち、2つ以上に、Rb1が結合していない場合に、式(D-3-3)で表される構造に組み合わせて前記の式(D-3-4)で表される構造を含みうる。
【0150】
(D-2-2)成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0151】
(D-2-2)成分のマレイミド基当量は、好ましくは50g/eq.以上、より好ましくは100g/eq.以上、特に好ましくは200g/eq.以上であり、好ましくは2000g/eq.以下、より好ましくは1000g/eq.以下、特に好ましくは800g/eq.以下である。マレイミド基当量は、マレイミド基1当量あたりのマレイミド化合物の質量を表す。(D-2-2)成分のマレイミド基当量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0152】
(D-2-2)成分の製造方法は、特に制限は無い。(D-2-2)成分は、例えば、発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の方法によって製造できる。この発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の製造方法によれば、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数に分布があるマレイミド化合物を得ることができる。この方法で得られるマレイミド化合物は、下記式(D-3-5)で表される構造を含む。よって、(D-2-2)成分は、式(D-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物を含んでいてもよい。
【0153】
【化21】
【0154】
(式中、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表し;Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表し;nは、0.95~10.0の平均繰り返し単位数を表し;nは、それぞれ独立に、0~4の整数を表し;nは、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。Rのアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。Rのアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。nが2~4の場合、Rは、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。nが2~3の場合、Rは、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。)
【0155】
式(D-3-5)において、R、R、n及びnは、それぞれ、式(D-3-2)におけるRa1、Ra2、na2及びna3と同じである。
【0156】
式(D-3-5)において、nは、平均繰り返し単位数を表し、その範囲は0.95~10.0である。発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の製造方法によれば、式(D-3-5)で表される構造を含む一群のマレイミド化合物が得られる。式(D-3-5)中の平均繰り返し単位数nが1.00より小さくなりうることから分かるように、こうして得られる式(D-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物には、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物が含まれうる。そこで、式(D-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物から、精製により、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物を除いて(D-2-2)成分を得て、その得られた(D-2-2)成分のみを樹脂組成物が含んでいてもよい。しかし、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物が樹脂組成物に含まれている場合でも、本発明の効果を得ることができる。また、精製を省略した場合、コストの抑制が可能である。そこで、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物を除くことなく、式(D-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物を樹脂組成物が含むことが好ましい。
【0157】
式(D-3-5)において、平均繰り返し単位数nは、好ましくは0.95以上、より好ましくは0.98以上、更に好ましくは1.0以上、特に好ましくは1.1以上であり、好ましくは10.0以下、より好ましくは8.0以下、更に好ましくは7.0以下、特に好ましくは6.0以下である。平均繰り返し単位数nが前記の範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。特に、樹脂組成物のガラス転移温度を効果的に高めることができる。
【0158】
式(D-3-5)で表される構造の例としては、下記のものが挙げられる。
【化22】
【0159】
式(D-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物は、更に、前記の式(D-3-4)で示す構造を含んでいてもよい。例えば、式(D-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物は、式(D-3-5)において、nが3以下であり、且つ、マレイミド基が結合するベンゼン環のマレイミド基に対するオルト位及びパラ位のうち、2つ以上に、Rが結合していない場合に、式(D-3-5)で表される構造に組み合わせて式(E2-3-4)で表される構造を含みうる。
【0160】
式(D-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定から算出される分子量分布Mw/Mnが、特定の範囲にあることが好ましい。分子量分布は、重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで割り算して求められる値であり、「Mw/Mn」で表される。具体的には、式(D-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物の分子量分布Mw/Mnは、好ましくは1.0~4.0、より好ましくは1.1~3.8、更に好ましくは1.2~3.6、特に好ましくは1.3~3.4である。式(D-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物の分子量分布Mw/Mnが前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0161】
式(D-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物のうち、平均繰り返し単位数nが0のマレイミド化合物の量は、特定の範囲にあることが好ましい。式(D-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物の前記GPC測定を行った場合、平均繰り返し単位数nが0のマレイミド化合物の量は、そのGPC測定の結果に基づいて面積%で表すことができる。詳細には、前記のGPC測定で得られるクロマトグラムにおいて、式(D-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物のピークの総面積に対する、平均繰り返し単位数nが0のマレイミド化合物のピークの面積の割合(面積%)により、平均繰り返し単位数nが0のマレイミド化合物の量を表すことができる。具体的には、式(D-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物の全量100面積%に対して、平均繰り返し単位数nが0のマレイミド化合物の量は、好ましくは32面積%以下、より好ましくは30面積%以下、更に好ましくは28面積%以下である。平均繰り返し単位数nが0のマレイミド化合物の量が前記の範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0162】
式(D-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物のマレイミド基当量は、上述した(D-2-2)成分のマレイミド基当量と同じ範囲にあることが好ましい。式(D-3-5)で表される構造を含むマレイミド化合物のマレイミド基当量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0163】
(スチリル樹脂)
スチリル樹脂は、分子中にスチリル基及びビニルフェニル基から選択される1種以上の基を有し、ビニルフェニル基を有することが好ましい。ビニルフェニル基とは、以下に示す構造を有する基である。
【化23】
(*は結合手を表す。)
【0164】
スチリル樹脂は、誘電正接が低い硬化物を得る観点から、2個以上のビニルフェニル基を有することがより好ましい。
【0165】
スチリル樹脂は、誘電正接が低い硬化物を得る観点から、環状構造を有することが好ましい。環状構造としては、2価の環状基が好ましい。2価の環状基としては、非芳香族環、例えば脂環式構造を含む環状基及び芳香環構造を含む環状基のいずれであってもよい。また、2価の環状基は、複数有していてもよい。
【0166】
2価の環状基は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、好ましくは3員環以上、より好ましくは4員環以上、さらに好ましくは5員環以上であり、好ましくは20員環以下、より好ましくは15員環以下、さらに好ましくは10員環以下である。また、2価の環状基としては、単環構造であってもよく、多環構造であってもよい。
【0167】
2価の環状基における環は、炭素原子以外にヘテロ原子により環の骨格が構成されていてもよい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられ、酸素原子が好ましい。ヘテロ原子は前記の環に1つ有していてもよく、2つ以上を有していてもよい。
【0168】
2価の環状基の具体例としては、下記の2価の基(a)又は(b)が挙げられる。
【化24】
(2価の基(a)、(b)中、R510、R520、R550、R560、R570、R610、及びR620は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数が6以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、R530、R540、R580、R590、及びR600は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。)
【0169】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。炭素原子数が6以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基であることが好ましい。R510、R520、R550、R560、R570、R610、及びR620としては、メチル基を表すことが好ましい。R530、R540、R580、R590、及びR600は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0170】
また、2価の環状基は、複数の2価の環状基を組み合わせてもよい。2価の環状基を組み合わせた場合の具体例としては、下記の式(D-20)で表される2価の環状基が挙げられる。
【化25】
(式中、R71、R72、R75、R76、R77、R81、R82、R85及びR86は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数が6以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、R73、R74、R78、R79、R80、R83及びR84は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。d1及びd2は、0~300の整数を表す。但し、d1及びd2の一方は0である場合を除く。)
【0171】
71、R72、R85及びR86は、2価の基(a)中のR510と同じである。R73、R74、R83及びR84は、2価の基(a)中のR530と同じである。R75、R76、R77、R81、及びR82は、2価の基(b)中のR550と同じである。R78、R79、及びR80は、2価の基(b)中のR580と同じである。
【0172】
d1及びd2は0~300の整数を表す。但し、d1及びd2の一方は0である場合を除く。d1及びd2としては、1~100の整数を表すことが好ましく、1~50の整数を表すことがより好ましく、1~10の整数を表すことがさらに好ましい。d1及びd2は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0173】
2価の環状基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、オキソ基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。
【0174】
ビニルフェニル基は、2価の環状基に直接結合していてもよく、2価の連結基を介して結合していてもよい。2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-C(=O)O-、-O-、-NHC(=O)-、-NC(=O)N-、-NHC(=O)O-、-C(=O)-、-S-、-SO-、-NH-等が挙げられ、これらを複数組み合わせた基であってもよい。アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基、又は炭素原子数1~4のアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、1,1-ジメチルエチレン基等が挙げられ、メチレン基、エチレン基、1,1-ジメチルエチレン基が好ましい。アルケニレン基としては、炭素原子数2~10のアルケニレン基が好ましく、炭素原子数2~6のアルケニレン基がより好ましく、炭素原子数2~5のアルケニレン基がさらに好ましい。アリーレン基、ヘテロアリーレン基としては、炭素原子数6~20のアリーレン基又はヘテロアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基又はヘテロアリーレン基がより好ましい。2価の連結基としては、アルキレン基が好ましく、中でもメチレン基が好ましい。
【0175】
スチリル樹脂は、下記式(D-21)で表されることが好ましい。
【化26】
(式中、R91及びR92はそれぞれ独立に2価の連結基を表す。環D1は、2価の環状基を表す。)
【0176】
91及びR92はそれぞれ独立に2価の連結基を表す。2価の連結基としては、上記の2価の連結基と同様である。
【0177】
環D1は、2価の環状基を表す。環D1としては、上記の2価の環状基と同様である。
【0178】
環D1は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記の2価の環状基が有していてもよい置換基と同様である。
【0179】
以下、スチリル樹脂の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化27】
(q1は、式(D-20)中のd1と同じであり、q2は、式(D-20)中のd2と同じである。)
【0180】
スチリル樹脂は、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ガス化学社製の「OPE-2St」等が挙げられる。スチリル樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0181】
スチリル樹脂の数平均分子量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは3000以下、より好ましくは2500以下、さらに好ましくは2000以下、1500以下である。下限は、好ましくは100以上、より好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上、1000以上である。数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0182】
((メタ)アクリル樹脂)
(メタ)アクリル樹脂は、分子中にアクリロイル基、メタクリロイル基を有する化合物を含む。(メタ)アクリル樹脂としては、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、1分子あたり1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含むことが好ましく、1分子あたり2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含むことがより好ましい。用語「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基の総称である。
【0183】
(メタ)アクリル樹脂は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、環状構造を有することが好ましい。環状構造としては、1価以上の環状基が好ましく、2価の環状基がより好ましい。環状基としては、非芳香族環、例えば脂環式構造を含む環状基及び芳香環構造を含む環状基のいずれであってもよい。中でも、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、脂環式構造を含む環状基であることが好ましい。
【0184】
1価以上の環状基は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、好ましくは3員環以上、より好ましくは4員環以上、さらに好ましくは5員環以上であり、好ましくは20員環以下、より好ましくは15員環以下、さらに好ましくは10員環以下である。また、2価の環状基としては、単環構造であってもよく、多環構造であってもよい。
【0185】
1価以上の環状基における環は、炭素原子以外にヘテロ原子により環の骨格が構成されていてもよい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられ、酸素原子が好ましい。ヘテロ原子は前記の環に1つ有していてもよく、2つ以上を有していてもよい。
【0186】
1価以上の環状基の具体例としては、下記の基(i)~(xii)が挙げられる。中でも、1価以上の環状基としては、(x)又は(xi)が好ましい。下記式中、*は結合手を表す。
【化28】
【0187】
1価以上の環状基は、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、オキソ基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。
【0188】
(メタ)アクリロイル基は、1価以上の環状基に直接結合していてもよく、2価の連結基を介して結合していてもよい。2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-C(=O)O-、-O-、-NHC(=O)-、-NC(=O)N-、-NHC(=O)O-、-C(=O)-、-S-、-SO-、-NH-等が挙げられ、これらを複数組み合わせた基であってもよい。アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基、又は炭素原子数1~4のアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、1,1-ジメチルエチレン基等が挙げられ、メチレン基、エチレン基、1,1-ジメチルエチレン基が好ましい。アルケニレン基としては、炭素原子数2~10のアルケニレン基が好ましく、炭素原子数2~6のアルケニレン基がより好ましく、炭素原子数2~5のアルケニレン基がさらに好ましい。アリーレン基、ヘテロアリーレン基としては、炭素原子数6~20のアリーレン基又はヘテロアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基又はヘテロアリーレン基がより好ましい。これらを複数組み合わせた基としてはオキシアルキレン基、酸素原子とアルキレン基とが交互に繰り返し結合した基等が挙げられる。2価の連結基としては、アルキレン基が好ましく、中でもメチレン基、1,1-ジメチルエチレン基が好ましい。
【0189】
(メタ)アクリル樹脂は、下記式(D-22)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化29】
(式中、R101及びR104はそれぞれ独立にアクリロイル基又はメタクリロイル基を表し、R102及びR103はそれぞれ独立に2価の連結基を表す。環D2は、2価の環状基を表す。)
【0190】
101及びR104はそれぞれ独立にアクリロイル基又はメタクリロイル基を表し、アクリロイル基が好ましい。
【0191】
102及びR103はそれぞれ独立に2価の連結基を表す。2価の連結基としては、(メタ)アクリロイル基が結合していてもよい2価の連結基と同様である。
【0192】
環D2は、2価の環状基を表す。環D2としては、上記の2価の環状基と同様である。環D2は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記の2価の環状基が有していてもよい置換基と同様である。
【0193】
(メタ)アクリル樹脂の具体例としては、以下のものが挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。式中、nは1~100の整数を表す。
【化30】
【0194】
(メタ)アクリル樹脂は、市販品を用いてもよく、例えば、新中村化学工業社製の「A-DOG」、共栄社化学社製の「DCP-A」、日本化薬社製「NPDGA」、「FM-400」、「R-687」、「THE-330」、「PET-30」、「DPHA」、新中村化学工業社製の「NKエステルDCP」、「A-LEN」等が挙げられる。
【0195】
(メタ)アクリル樹脂の(メタ)アクリロイル基当量は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、好ましくは30g/eq.~400g/eq.、より好ましくは50g/eq.~300g/eq.、さらに好ましくは75g/eq.~200g/eq.である。(メタ)アクリロイル基当量は、1当量の(メタ)アクリロイル基を含む化合物の質量である。
【0196】
(アリル樹脂)
アリル樹脂は、分子中にアリル基を少なくとも1つ有する。アリル樹脂は、1分子中に2個以上のアリル基を有することがより好ましい。上限は特に制限されないが、好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下とし得る。
【0197】
また、アリル樹脂は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、アリル基に加えて、ベンゾオキサジン環、フェノール環、イソシアヌル環、及び環状構造を有するカルボン酸誘導体のいずれかを有することが好ましい。
【0198】
ベンゾオキサジン環を有するアリル樹脂は、ベンゾオキサジン環の窒素原子及びベンゼン環のいずれかと結合していることが好ましく、窒素原子と結合していることがより好ましい。
【0199】
フェノール環を有するアリル樹脂としては、例えば、アリル基を含むクレゾール樹脂、アリル基を含むノボラック型フェノール樹脂、アリル基を含むクレゾールノボラック樹脂等が挙げられる。
【0200】
イソシアヌル構造を有するアリル樹脂は、イソシアヌル構造の窒素原子とアリル基とが直接結合していることが好ましい。イソシアヌル構造を有するアリル樹脂としては、イソシアヌル酸アリル、イソシアヌル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル等が挙げられる。
【0201】
環状構造を有するカルボン酸誘導体を有するアリル樹脂としては、環状構造を有するカルボン酸アリルが好ましい。環状構造としては、非芳香族環、例えば脂環式構造を含む環状基及び芳香環構造を含む環状基のいずれであってもよい。また、環状基は、炭素原子以外にヘテロ原子により環の骨格が構成されていてもよい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられ、窒素原子が好ましい。ヘテロ原子は前記の環に1つ有していてもよく、2つ以上を有していてもよい。
【0202】
環状構造を有するカルボン酸としては、例えば、イソシアヌル酸、ジフェン酸、フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。環状構造を有するカルボン酸誘導体を有するアリル樹脂としては、例えば、イソシアヌル酸アリル、イソシアヌル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ジフェン酸ジアリル、ジフェン酸アリル、オルトジアリルフタレート、メタジアリルフタレート、パラジアリルフタレート、シクロヘキサンジカルボン酸アリル、シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル等が挙げられる。
【0203】
アリル樹脂は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、明和化成社製「MEH-8000H」、「MEH-8005」(フェノール環を有するアリル樹脂);四国化成工業社製「ALP-d」(ベンゾオキサジン環を有するアリル樹脂);四国化成工業社製「L-DAIC」(イソシアヌル環を有するアリル樹脂);日本化成社製「TAIC」(イソシアヌル環を有するアリル樹脂(トリアリルイソシアヌレート));大阪ソーダ社製「MDAC」(シクロヘキサンジカルボン酸誘導体を有するアリル樹脂);日触テクノファインケミカル社製「DAD」(ジフェン酸ジアリル);大阪ソーダ社製「ダイソーダップモノマー」(オルトジアリルフタレート)等が挙げられる。
【0204】
アリル樹脂のアリル基当量は、本発明の所期の効果を顕著に得る観点から、好ましくは20g/eq.~1000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~500g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。アリル基当量は、1当量のアリル基を含む化合物の質量である。
【0205】
(D)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0206】
<(E)硬化剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(E)硬化剤を含んでいてもよい。但し、(E)成分は、(A)成分~(D)成分に該当するものは除かれる。(E)硬化剤としては、(A)成分と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有する化合物を用いることができ、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、活性エステル系硬化剤などが挙げられる。中でも、絶縁信頼性を向上させる観点から、(E)硬化剤は、カルボジイミド系硬化剤、フェノール系硬化剤、及びナフトール系硬化剤のいずれか1種以上であることが好ましい。(E)硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0207】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。
【0208】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN-495V」、「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA3018-50P」、「EXB-9500」等が挙げられる。
【0209】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」が挙げられる。
【0210】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0211】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V-03」、「V-07」等が挙げられる。
【0212】
活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0213】
具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0214】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB―9451」、「EXB―9460」、「EXB―9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「HPC-8000L-65TM」(DIC社製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として、「EXB―9416-70BK」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-65T」、「EXB-8150L-65T」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」、「HP-B-8151-62T」(DIC社製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製)、スチリル基を含む活性エステル化合物として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0215】
樹脂組成物が(E)成分を含有する場合、エポキシ樹脂と(C)成分及び(E)成分との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[(C)成分及び(E)成分の活性基の合計数]の比率で、1:0.01~1:5の範囲が好ましく、1:0.3~1:3がより好ましく、1:0.5~1:2がさらに好ましい。ここで、「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「(C)成分及び(E)成分の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する(C)成分及び(E)成分の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。(C)成分及び(E)成分として、エポキシ樹脂との量比をかかる範囲内とすることにより、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0216】
エポキシ樹脂とすべての(E)成分との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[(E)成分の活性基の合計数]の比率で、1:0.01~1:1の範囲が好ましく、1:0.03~1:0.5がより好ましく、1:0.05~1:0.3がさらに好ましい。ここで、「(E)成分の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する(E)成分の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。(E)成分として、エポキシ樹脂と硬化剤との量比をかかる範囲内とすることにより、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0217】
(E)成分の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。上限は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
【0218】
<(F)硬化促進剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(F)成分として硬化促進剤を含有していてもよい。
【0219】
(F)成分としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。(F)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0220】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0221】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0222】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0223】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0224】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0225】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0226】
(F)成分の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0227】
<(G)その他の添加剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更にその他の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、熱可塑性樹脂、エラストマー、有機充填材、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、難燃剤等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0228】
樹脂組成物は、例えば、上述した成分を、任意の順で混合することによって、製造することができる。また、各成分を混合する過程で、温度を適切に調整することにより、加熱及び/又は冷却を行ってもよい。また、各成分の混合中又は混合後に、ミキサー等の撹拌装置を用いて撹拌を行って、各成分を均一に分散させてもよい。さらに、必要に応じて、樹脂組成物に脱泡処理を行ってもよい。
【0229】
<樹脂組成物の物性、用途>
樹脂組成物は、(A)成分(B)成分、及び(C)成分を組み合わせて含むので、誘電正接が低く、ピール強度、銅箔密着性及びHAST試験後の銅箔密着性に優れる硬化物を得ることが可能となる。また、樹脂組成物は、通常、算術平均粗さRaが低く、ラミネートムラが抑制された硬化物を得ることも可能である。
【0230】
樹脂組成物を190℃で90分間熱硬化させて得られた硬化物は、低い誘電正接を有する。よって、この硬化物で絶縁層を形成した場合に、誘電正接の低い絶縁層を得ることができる。例えば、後述する実施例に記載の条件で樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の誘電正接Dfは、好ましくは0.010以下、より好ましくは0.005以下、更に好ましくは0.003以下である。前記の硬化物の誘電正接の下限値は、特に限定されないが、0.0001以上でありうる。硬化物の誘電正接は、実施例において説明する方法によって測定できる。
【0231】
樹脂組成物を130℃で30分間加熱し、さらに170℃で30分間熱硬化させて得られた硬化物は、めっきとの間のめっきピール強度を高くすることができる。よって、この硬化物で絶縁層を形成した場合に、導体層との間のピール強度が高い絶縁層を得ることができる。例えば、後述する実施例に記載の方法で絶縁層及びめっき導体層の形成を行った場合、絶縁層及び導体層との間のピール強度は、好ましくは0.3kgf/cm以上、より好ましくは0.4kgf/cm以上、特に好ましくは0.5kgf/cm以上でありうる。めっきピール強度の上限値は、特に限定されないが、例えば、10.0kgf/cm以下でありうる。ピール強度は、実施例において説明する方法によって測定できる。
【0232】
樹脂組成物を100℃で30分間加熱し、さらに170℃で30分間熱硬化させて得られた硬化物は、銅箔との間の銅箔密着性を高くすることができる。よって、この硬化物で絶縁層を形成した場合に、銅箔との間のピール強度が高い絶縁層を得ることができる。例えば、後述する実施例に記載の方法で絶縁層及び銅箔の形成を行った場合、銅箔との間の銅箔密着性は、好ましくは0.3kgf/cm以上、より好ましくは0.4kgf/cm以上、特に好ましくは0.5kgf/cm以上でありうる。銅箔密着性の上限値は、特に限定されないが、例えば、10.0kgf/cm以下でありうる。銅箔密着性は、実施例において説明する方法によって測定できる。
【0233】
樹脂組成物を100℃で30分間加熱し、さらに170℃で30分間熱硬化させて得られた硬化物は、HAST試験後の銅箔との間の銅箔密着性を高くすることができる。よって、この硬化物で絶縁層を形成した場合に、HAST試験後の銅箔との間のピール強度が高い絶縁層を得ることができる。例えば、後述する実施例に記載の方法で絶縁層及び銅箔の形成を行い、130℃、湿度85%RHの条件で100時間放置するHAST試験を行った後の銅箔との間の銅箔密着性は、好ましくは0.1kgf/cm以上、より好ましくは0.2kgf/cm以上、特に好ましくは0.3kgf/cm以上でありうる。HAST試験後の銅箔密着性の上限値は、特に限定されないが、例えば、10.0kgf/cm以下でありうる。HAST試験後の銅箔密着性は、実施例において説明する方法によって測定できる。
【0234】
樹脂組成物を190℃で90分間熱硬化させた硬化物は、破断点伸度が大きいという特性を示す。よって、この硬化物で絶縁層を形成した場合に、破断点伸度が大きい絶縁層をもたらす。破断点伸度としては、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは2%以上である。破断点伸度の上限値は特に限定されないが、10%以下等とし得る。破断点伸度は、実施例において説明する方法によって測定できる。
【0235】
樹脂組成物を100℃で30分間加熱し、さらに170℃で30分間熱硬化させて得られた硬化物表面を粗化処理した後の粗化面は、通常、算術平均粗さRaが低いという特性を示す。よって、この硬化物は、算術平均粗さが低い絶縁層をもたらす。算術平均粗さRaとしては、好ましくは100nm以下、より好ましくは60nm以下、さらに好ましくは55nm以下である。算術平均粗さの下限値は、10nm以上等とし得る。算術平均粗さ(Ra)は、実施例において説明する方法によって測定できる。
【0236】
樹脂組成物を100℃で30分間加熱し、さらに170℃で30分間熱硬化させて得られた硬化物は、通常、ラミネートムラの発生が抑制されるという特性を示す。内層基板に後述する樹脂シートを積層し、樹脂組成物層を熱硬化させても、熱硬化した樹脂組成物層表面に凹凸の発生が抑制され、熱硬化した樹脂組成物層表面が均一化され得る。ラミネートムラの評価は、例えば、実施例において説明する方法によって測定できる。
【0237】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、絶縁用途の樹脂組成物として好適であり、中でも、絶縁層形成用の樹脂組成物として特に好適である。よって、例えば、樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層形成用の樹脂組成物)として好適である。樹脂組成物は、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の層間絶縁層形成用の樹脂組成物)として好適である。また、樹脂組成物は、絶縁層上に形成される導体層(再配線層を含む)を形成するための当該絶縁層を形成するための樹脂組成物(導体層を形成するための絶縁層形成用の樹脂組成物)として好適である。樹脂組成物はまた、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂、マルチチップパッケージ、パッケージオンパッケージ、ウェハレベルパッケージ、パネルレベルパッケージ、システムインパッケージ等、樹脂組成物が使用されうる用途で広範囲に使用できる。
【0238】
また、例えば、以下の(1)~(6)工程を経て半導体チップパッケージが製造される場合、本実施形態に係る樹脂組成物は、再配線層を形成するための絶縁層としての再配線形成層を形成するための樹脂組成物(再配線形成層形成用の樹脂組成物)、及び半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップ封止用の樹脂組成物)としても好適である。半導体チップパッケージが製造される際、封止層上に、更に再配線層が形成されてもよい。
(1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(2)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(3)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(4)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(5)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、及び
(6)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程
【0239】
上述した樹脂組成物は、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも、使用することができる。
【0240】
[樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた、本発明の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層を含む。
【0241】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化、及び当該樹脂組成物の硬化物が薄膜であっても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、5μm以上等とし得る。
【0242】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0243】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0244】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0245】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0246】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0247】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0248】
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、その他の層を含んでいてもよい。斯かるその他の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0249】
樹脂シートは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0250】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0251】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0252】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0253】
[プリント配線板]
本発明の一実施形態に係るプリント配線板は、上述した樹脂組成物を硬化して得られる硬化物で形成された絶縁層を含む。
【0254】
プリント配線板は、例えば、上述の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートを、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成する工程
【0255】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も、「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0256】
内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0257】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施され得る。
【0258】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0259】
積層の後に、大気圧下、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0260】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0261】
工程(II)において、樹脂組成物層を硬化して、樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を形成する。樹脂組成物層の硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して採用される条件を使用してよい。樹脂組成物層は、紫外線等の活性エネルギー線の照射によって硬化させてもよいが、通常は、加熱により熱硬化させる。
【0262】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なるが、一実施形態において、硬化温度は好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間とすることができる。
【0263】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃~120℃、好ましくは60℃~115℃、より好ましくは70℃~110℃の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。
【0264】
プリント配線板を製造する方法は、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程を、さらに含んでいてもよい。支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(I)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
【0265】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0266】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されない。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。
【0267】
粗化処理に用いる膨潤液としては、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0268】
粗化処理に用いる酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0269】
粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0270】
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さRaは、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上、2nm以上等でありうる。また、粗化処理後の絶縁層表面の二乗平均平方根粗さ(Rq)は、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上、2nm以上等とし得る。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)及び二乗平均平方根粗さ(Rq)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0271】
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0272】
導体層は、単層構造であってもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0273】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0274】
導体層は、メッキによって形成することが好ましい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の方法により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0275】
絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0276】
[半導体装置]
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、上述したプリント配線板を含む。この半導体装置は、上述したプリント配線板を用いて製造することができる。
【0277】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例
【0278】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無い。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示の無い限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧の環境で行った。
【0279】
[合成例1:活性エステル化合物Aの合成]
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、1-ナフトール404質量部、トルエン560質量部、ビスヒドロキシメチルビフェニル150質量部、パラトルエンスルホン酸1水和物6質量部を仕込んだ。フラスコの内容物を撹拌しながら120℃まで昇温し、120℃で1時間撹拌して反応させた。反応終了後、49%水酸化ナトリウム水溶液4質量部を添加して中和した後、トルエン400質量部加え、水200質量部で3回洗浄した。加熱減圧条件下でトルエン等を留去し、未反応の1-ナフトールとポリナフトール樹脂とを含む混合物(A)を510質量部得た。得られた混合物(A)の水酸基当量は189g/当量であった。
【0280】
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、イソフタル酸クロリド141質量部とトルエン1000質量部を仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。次いで、先で得た混合物(A)を264質量部仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。テトラブチルアンモニウムブロマイド0.4gを加え、窒素ガスパージを施しながら、反応系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液280質量部を3時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま1時間撹拌を続けて反応させた。反応終了後、反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水を加えて約15分間撹拌混合した後、混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、加熱減圧条件下でトルエン等を留去し、活性エステル化合物A 340質量部を得た。活性エステル化合物Aの官能基当量は253g/当量、JIS K7234に基づいて測定した軟化点は144℃であった。
【0281】
[合成例2:マレイミド化合物Aの合成]
発明協会公開技報公技番号2020-500211号の合成例1に記載の方法で合成された下記式(1)で表されるマレイミド化合物A(Mw/Mn=1.81、t’’=1.47(主に1、2又は3))のMEK溶液(不揮発成分62質量%)を準備した。
【0282】
【化31】
【0283】
[実施例1]
ビスフェノール型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX1059」、エポキシ当量160~170g/eq.)3部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032-SS」、エポキシ当量144g/eq.)3部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3000L」、エポキシ当量271g/eq.)3部、ナフトールアラルキル骨格エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN-475V」、エポキシ当量330g/eq.)3部をMEK10部、シクロヘキサノン10部に溶解させた。そこへ活性エステル化合物A(不揮発分65質量%のトルエン溶液に調製したもの)30部、無機充填材(アミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製、「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)92部、硬化促進剤(四国化成工業社製、「1B2PZ」)0.2部を混合し、高速回転ミキサーを用いて均一に分散して、樹脂ワニスを得た。
【0284】
[実施例2]
実施例1において、
1)活性エステル化合物A(不揮発分65質量%のトルエン溶液に調製したもの)の量を30部から26部に代え、
2)無機充填材(アミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製、「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)の量を92部から90部に代え、
3)硬化促進剤(四国化成工業社製、「1B2PZ」)の量を0.2部から0.02部に代え、
4)トリアジン含有クレゾールノボラック型硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、不揮発分50質量%の2-メトキシ-1-プロパノール溶液)3部用い、
5)カルボジイミド樹脂(日清紡ケミカル社製「V-03」、不揮発分50質量%のトルエン溶液)1部を用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
【0285】
[実施例3]
実施例2において、
1)活性エステル化合物A(不揮発分65質量%のトルエン溶液に調製したもの)の量を26部から18部に代え、
2)ナフタレン骨格含有活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8150-62T」、不揮発分61.5質量%のトルエン溶液)8部を用いた。
以上の事項以外は実施例2と同様にして樹脂ワニスを得た。
【0286】
[実施例4]
実施例2において、
1)無機充填材(アミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製、「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)の量を90部から100部に代え、
2)熱硬化性樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE-2St-1200」、不揮発分65質量%のトルエン溶液)5部を用いた。
以上の事項以外は実施例2と同様にして樹脂ワニスを得た。
【0287】
[実施例5]
実施例2において、
1)無機充填材(アミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製、「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)の量を90部から100部に代え、
2)合成例2にて合成したマレイミド化合物A(MEK溶液、不揮発成分62質量%)6部を用いた。
以上の事項以外は実施例2と同様にして樹脂ワニスを得た。
【0288】
[実施例6]
実施例2において、
1)無機充填材(アミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製、「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)の量を90部から100部に代え、
2)熱硬化性樹脂(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、不揮発分70質量%のトルエン・MEK溶液)5部を用いた。
以上の事項以外は実施例2と同様にして樹脂ワニスを得た。
【0289】
[実施例7]
実施例2において、
1)無機充填材(アミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製、「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)の量を90部から100部に代え、
2)熱硬化性樹脂(信越化学工業社製「SLK-6895」)4部を用いた。
以上の事項以外は実施例2と同様にして樹脂ワニスを得た。
【0290】
[実施例8]
実施例2において、
1)無機充填材(アミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製、「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)の量を90部から100部に代え、
2)熱硬化性樹脂(新中村化学社製「A-DOG」)4部を用いた。
以上の事項以外は実施例2と同様にして樹脂ワニスを得た。
【0291】
[実施例9]
実施例2において、
1)無機充填材(アミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製、「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)の量を90部から100部に代え、
2)熱硬化性樹脂(新中村化学社製「DCP-A」)4部を用いた。
以上の事項以外は実施例2と同様にして樹脂ワニスを得た。
【0292】
[実施例10]
実施例2において、
1)無機充填材(アミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製、「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)の量を90部から100部に代え、
2)熱硬化性樹脂(新中村化学社製「A-LEN」)4部を用いた。
以上の事項以外は実施例2と同様にして樹脂ワニスを得た。
【0293】
[比較例1]
実施例1において、
1)活性エステル化合物A(不揮発分65質量%のトルエン溶液に調製したもの)30部を、ナフタレン骨格含有活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8150-62T」、不揮発分61.5質量%のトルエン溶液)29部に代え、
2)無機充填材(アミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製、「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)の量を92部から90部に代えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
【0294】
[比較例2]
実施例1において、
1)活性エステル化合物A(不揮発分65質量%のトルエン溶液に調製したもの)30部を、ジシクロペンタジエン骨格含有活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8000-65T」、不揮発分65質量%のトルエン溶液)26部に代え、
2)無機充填材(アミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製、「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)の量を92部から87部に代えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
【0295】
[比較例3]
実施例2において、
1)活性エステル化合物A(不揮発分65質量%のトルエン溶液に調製したもの)26部を、ナフタレン骨格含有活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8150-62T」、不揮発分61.5質量%のトルエン溶液)25部に代え、
2)無機充填材(アミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製、「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)の量を90部から88部に代えた。
以上の事項以外は実施例2と同様にして樹脂ワニスを得た。
【0296】
[比較例4]
実施例2において、
1)活性エステル化合物A(不揮発分65質量%のトルエン溶液に調製したもの)26部を、ジシクロペンタジエン骨格含有活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8000-65T」、不揮発分65質量%のトルエン溶液)23部に代え、
2)無機充填材(アミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製、「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)の量を90部から87部に代えた。
以上の事項以外は実施例2と同様にして樹脂ワニスを得た。
【0297】
<ラミネート後のムラの評価、算術平均粗さ、めっきピール強度の測定>
(1)樹脂組成物層の厚さが40μmの樹脂シートAの作製
支持体として、離型層を備えたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この支持体の離型層上に、実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるように均一に塗布した。その後、樹脂組成物を80℃~100℃(平均90℃)で4分間乾燥させて、支持体及び樹脂組成物層を含む樹脂シートAを得た。
【0298】
(2)内層基板の用意
内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.4mm、パナソニック社製「R1515A」)の両面をマイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行った。
【0299】
(3)樹脂シートAのラミネート
バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が内層基板と接するように、内層基板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下に調整した後、120℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスを行った。
【0300】
(4)樹脂組成物層の熱硬化
その後、樹脂シートAがラミネートされた内層基板を、130℃のオーブンに投入して30分間加熱し、次いで170℃のオーブンに移し替えて30分間加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させて、絶縁層を形成した。その後、支持体を剥離して、絶縁層、内層基板及び絶縁層をこの順に有する硬化基板Aを得た。
【0301】
(5)ラミネート後のムラの評価
硬化基板Aの両面について、樹脂シートAがラミネートされた部分(積層板とは反対側の表面)の表面均一性の観察を目視にて行い、下記のように評価した。
〇:ムラが全く観察されず、完全に均一な表面である。
×:樹脂シートがラミネートされた部分に、不均一な部分が観察される。
【0302】
(6)粗化処理
硬化基板Aに、粗化処理としてのデスミア処理を行った。デスミア処理としては、下記の湿式デスミア処理を実施した。
【0303】
(湿式デスミア処理)
硬化基板Aを、膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリング・ディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で5分間浸漬し、次いで、酸化剤溶液(アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトCP」、過マンガン酸カリウム濃度約6%、水酸化ナトリウム濃度約4%の水溶液)に80℃で20分間浸漬した。次いで、中和液(アトテックジャパン社製「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸水溶液)に40℃で5分間浸漬した後、80℃で15分間乾燥した。
【0304】
(7)粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)の測定
粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)を、非接触型表面粗さ計(ブルカー社製WYKO NT3300)を用いて、VSIモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値により求めた。それぞれ10点の平均値を求めることにより測定した。
【0305】
(8)導体層の形成
セミアディティブ法に従って、絶縁層の粗化面に導体層を形成した。すなわち、粗化処理後の基板を、PdClを含む無電解めっき液に40℃で5分間浸漬した後、無電解銅めっき液に25℃で20分間浸漬した。次いで、150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによりパターン形成した。その後、硫酸銅電解めっきを行い、厚さ25μmの導体層を形成し、アニール処理を190℃にて60分間行った。得られた基板を「評価基板B」と称する。
【0306】
(9)めっき導体層との間のピール強度(めっきピール強度)の測定
絶縁層と導体層のピール強度の測定は、日本工業規格(JIS C6481)に準拠して行った。具体的には、評価基板Bの導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定し、剥離強度を求めた。測定には、引っ張り試験機(TSE社製「AC-50C-SL」)を使用した。
【0307】
<誘電特性の評価>
誘電特性の評価は、誘電正接(Df)の値を測定することにより行った。具体的には、以下のようにして、評価用硬化物Aを作製し、誘電正接(Df)を測定した。
【0308】
実施例及び比較例で得られた樹脂シートAを190℃のオーブンで90分硬化した。オーブンから取り出した樹脂シートAから支持体を剥がすことにより、樹脂組成物層の硬化物を得た。その硬化物を長さ80mm、幅2mmに切り出し評価用硬化物Aとした。
【0309】
各評価用硬化物Aについて、アジレントテクノロジーズ(AgilentTechnologies)社製「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて、誘電正接の値(Df値)を測定した。2本の試験片にて測定を実施し、その平均を算出した。
【0310】
<破断点伸度の評価>
破断点伸度の評価は、評価用硬化物Aをダンベル形状に切り出し、島津製作所社製「オートグラフ」を用いて、速度5mm/minで引張試験を行うことにより評価した。
【0311】
<銅箔密着性(ピール強度)の測定>
(1)評価基板Cの作製
内層基板として、表面に銅箔を有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm、パナソニック社製「R1515A」)の両面をマイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行った。
【0312】
上述した実施例及び比較例で得た樹脂シートAを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が前記の内層基板と接合するように、内層基板の両面にラミネートした。このラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、温度100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより、実施した。
【0313】
次いで、ラミネートされた樹脂シートAを、大気圧下、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間、熱プレスして平滑化した。その後、支持体を剥離して、樹脂組成物層、内層基板及び樹脂組成物層をこの順で含む「中間複層体I」を得た。
【0314】
他方、光沢面を有する銅箔(厚み35μm、三井金属社製「3EC-III」)を用意した。この銅箔の光沢面を、マイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)を用いて、銅エッチング量1μmにてエッチングして、粗化処理を行った。こうして得られた銅箔を「粗化銅箔」という。
【0315】
この粗化銅箔を、当該粗化銅箔の粗化処理を施された面が中間複層体Iの樹脂組成物層に接合するように、中間複層体Iの両面にラミネートした。このラミネートは、前述した内層基板への樹脂シートのラミネートと同じ条件で行った。これにより、粗化銅箔、樹脂組成物層、内層基板、樹脂組成物層及び粗化銅箔をこの順で含む「中間複層体II」を得た。
【0316】
この中間複層体IIを、100℃のオーブンに投入して30分間加熱し、次いで170℃のオーブンに移し替えて30分間加熱した。次いで、中間複層体IIを、オーブンから室温雰囲気下に取り出した後、更に200℃のオーブンに投入して90分間追加で加熱した。これにより、樹脂組成物層の熱硬化が行われて、粗化銅箔、樹脂組成物層の硬化物としての絶縁層、内層基板、樹脂組成物層の硬化物としての絶縁層、及び粗化銅箔をこの順で含む「評価基板C」を得た。この評価基板Cにおいて、粗化銅箔が、導体層に相当する。
【0317】
(2)銅箔密着性(ピール強度)の測定
前記の評価基板Cを用いて、粗化銅箔と絶縁層との間のピール強度の測定を行った。このピール強度の測定は、JIS C6481に準拠して行った。具体的には、下記の操作によって、ピール強度の測定を行った。
【0318】
評価基板Cの粗化銅箔に、幅10mm、長さ100mmの矩形部分を囲む切込みをいれた。この矩形部分の一端を剥がして、つかみ具(ティー・エス・イー社製、オートコム型試験機「AC-50C-SL」)で掴んだ。前記矩形部分の長さ35mmの範囲を垂直方向に引き剥がし、この引き剥がし時の荷重(kgf/cm)を、ピール強度として測定した。前記の引き剥がしは、室温中にて、50mm/分の速度で行った。さらに、HAST試験(130℃、湿度85%RH、100時間)後に再度銅箔密着性(ピール強度)を測定した。
【0319】
【表1】
*表中、(B)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の含有量を表す。
【0320】
実施例1~10において、(F)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。