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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】折倒部材
(51)【国際特許分類】
   B65B 49/04 20060101AFI20250109BHJP
   B65B 49/08 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B65B49/04
B65B49/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021141768
(22)【出願日】2021-08-31
(65)【公開番号】P2023035140
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆
(72)【発明者】
【氏名】梅野 裕勝
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104890947(CN,A)
【文献】特開2007-238170(JP,A)
【文献】特開昭57-086412(JP,A)
【文献】実公昭40-018950(JP,Y1)
【文献】特開昭62-028312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 49/04
B65B 49/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物の周囲に巻き付けられた包装シートの一部が前記内容物に巻き付けられた方向に対して交差するCD方向に前記内容物から延出したフラップを有する半製品の前記フラップが折り倒されて合わせ包み型に包装される包装体の製造ラインに付設され、前記フラップにおいて前記半製品の搬送されるMD方向の上流側および下流側に位置する内フラップが折り倒された後、搬送されている前記半製品の前記フラップにおいて前記MD方向および前記CD方向に交差するTD方向の一側および他側のそれぞれに位置する外フラップを折り倒すため折倒部材であって、
前記折倒部材は、前記MD方向および前記TD方向の双方に沿う板状に設けられており、前記他側の前記外フラップを折り倒すためのスリットが前記CD方向に貫設されるとともに前記MD方向に沿って延設された折板と、前記スリットに挿通された前記他側の前記外フラップが反り返りうる領域と交差する領域において前記折板に取り付けられており、前記折板に対して前記CD方向の外側に延出した庇状の押さえ部材と、を有し、
前記折板において、前記スリットを前記TD方向の前記一側から画成する第一縁部と、
前記折板において、前記スリットを前記TD方向の前記他側から画成する第二縁部と、を備え、
前記第一縁部と前記第二縁部とが前記MD方向の下流側へ向かうほど互いに近接して配置された先細りのテーパー形状をなし、
前記押さえ部材は、前記MD方向および前記CD方向に沿う面が前記CD方向の前記外側へ庇状に延出した庇部をなし、
前記庇部が、前記TD方向の位置が前記MD方向の下流側へ向かうほど前記一側に位置する傾斜勾配をなす形状である
ことを特徴とする折倒部材
【請求項2】
前記第一縁部および前記第二縁部の何れか一方が、下流側へ向かうほど前記第一縁部および前記第二縁部の他方に近接して配置された傾斜勾配をなし、前記第一縁部および前記第二縁部の何れか他方は前記MD方向の延在領域で前記TD方向の位置が一定である
ことを特徴とする請求項1に記載の折倒部材
【請求項3】
前記第一縁部が、下流側へ向かうほど前記第二縁部に近接して配置された傾斜勾配をなし、前記第二縁部は前記MD方向の延在領域で前記TD方向の位置が一定に配置された
ことを特徴とする請求項1または2に記載の折倒部材
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物に巻き付けられた包装シートの延出したフラップを折り倒すための折倒部材に関する。
【背景技術】
【0002】
包装形態の一つとして、内容物に巻き付けられた包装シートの延出した部分が折り倒された合わせ包み(いわゆる「キャラメル折り」)が知られている。さらに、包装シートが延出した状態で内容物に巻き付けられた半製品の搬送中に包装シートの延出した部分を自動的に折り倒す技術も知られている。
たとえば、上記の半製品において包装シートの延出した部分が折板に貫設されたスリットに挿通された状態で半製品が搬送されることにより、包装シートの延出した部分が自動的に折り倒される技術が提案されている。この技術では、包装シートの延出した部分のうち、搬送方向の上流側および下流側の部位が内フラップ状に折り倒された後に、上下の部位が外フラップ状に折り倒される。詳しくは、上下の部位のうち下側に位置する「下フラップ」が上方へ折り倒された後、上側に位置する「上フラップ」が下方へ折り倒される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭57-86412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7(b)は上述の技術で上フラップを折り曲げる様子を側面から視た説明図であって、折板の一部を省略している。図7(b)に示すように、上述の技術において折板90には、搬送方向に沿って直線状にスリット92が延設されている。上フラップ54Bは、図7(b)で符号CB1に示すように折り曲げられた状態で、スリット92に挿通される。そして、上フラップ54Bは、下フラップ54Aが上方へ折り倒されている間、図7(b)で符号CB2に示すように、当初の折り曲げられた状態から変化せずにスリット92を搬送される。そして、下フラップ54Aが折り倒された後、上フラップ54Bが下方へ折り倒されるようになっている。
しかし、上記の特許文献1では、当初の折り曲げられた状態〔図7(b)の符号CB1,CB2で示す状態〕から急に上フラップ54Bが折り倒されるため、上フラップ54Bが理想的な折目とは異なる箇所の不良な折目で折り曲げられて、包装不良を招くおそれがある。
【0005】
よって、包装体の包装不良を抑制するうえで改善の余地がある。
本件は、上記の課題に鑑みて創案されたものであり、包装体の包装不良の抑制を目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件は、内容物の周囲に巻き付けられた包装シートの一部が前記内容物に巻き付けられた方向に対して交差するCD方向に前記内容物から延出したフラップを有する半製品の前記フラップが折り倒されて合わせ包み型に包装される包装体の製造ラインに付設される折倒構造である。本折倒構造は、前記フラップにおいて前記半製品の搬送されるMD方向の上流側および下流側に位置する内フラップが折り倒された後、搬送されている前記半製品の前記フラップにおいて前記MD方向および前記CD方向に交差するTD方向の一側および他側のそれぞれに位置する外フラップを折り倒すために前記MD方向および前記TD方向の双方に沿う板状に設けられた折板の折倒構造である。本折倒構造は、前記外フラップを折り倒すためのスリットが前記CD方向に貫設されるとともに前記MD方向に沿って延設された前記折板において、前記スリットを前記TD方向の一側から画成する第一縁部と、前記折板において、前記スリットを前記TD方向の他側から画成する第二縁部と、を備え、前記第一縁部と前記第二縁部とが前記MD方向の下流側へ向かうほど互いに近接して配置された先細りのテーパー形状をなす。
【発明の効果】
【0007】
本件によれば、包装体の包装不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】半製品とともに折倒部材を示す斜視図である。
図2】製造ラインの構成を説明するブロック図である。
図3】(a)~(d)はフラップを折り倒す手順を説明する説明図である。
図4】折倒部材の側面図である。
図5】折倒部材において半製品の内フラップが折り倒された状態を説明する斜視図である。
図6】(a)は上フラップの姿勢の説明図であって、(b)は上フラップの折目の説明図である。
図7】(a)は本件の折板で上フラップを折り曲げる様子の説明図であって、(b)は従来の折板で上フラップを折り曲げる様子の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、折倒部材を実施するための形態を説明する。
本実施形態の折倒部材は、包装体の製造ラインに付設されている。包装体は、合わせ包み(いわゆる「キャラメル折り」)型に包装される。包装体の具体例としては、トイレットロールやキッチンペーパなどのさまざまな内容物が紙製あるいはフィルム製といった任意の包装資材で包装されたものが挙げられる。本実施形態では、四個(複数個)のトイレットロールを一塊として一枚の包装紙(紙製の包装シート)で包装される包装体を例に挙げる。
【0010】
本実施形態の説明で用いる方向については、以下のように定義する。
MD方向:製造ラインで製造工程の進捗する方向
CD方向:包装シートが内容物に巻き付けられた方向に対して交差する方向
TD方向:MD方向およびCD方向に交差する方向
下記の一実施形態では、TD方向の一側が下方(重力の作用する方向,図において「D」で示す)に対応し、TD方向の他側は上方(図において「U」で示す)に対応する例を挙げ、CD方向がMD方向およびTD方向に直交する前提とする。
【0011】
[I.一実施形態]
以下の説明では、製造ラインについて項目[1]で概説し、製造ラインに付設された折倒部材を項目[2]で詳説する。そして、項目[1],[2]の構成による作用効果を項目[3]で述べる。
【0012】
[1.全体構成]
図2に示すように、製造ライン100の上流側には、内容物を搬送して送給する給送部110と包装シートを搬送して送給する給紙部120とが設けられている。
給送部110は、四つのトイレットロール群を所定の配置で一塊にまとめて供給するパートである。給紙部120では、帯状に連続する包装紙(原紙)巻回したロールから繰り出された帯状の原紙を枚葉シート状の包装シートに順次切り分けて、切り分けられた包装シートを供給するパートである。
【0013】
給送部110および給紙部120に対して下流側には準備部130が設けられている。準備部130は、給送部110から搬送されたトイレットロール群に給紙部120から搬送された包装シートを巻き付けて、折畳部140へ供給するパートである。
折畳部140は、図1に示す折倒部材20の設けられたパートであり、内容物の周囲に巻き付けられた包装シートの延出した部分を折り倒して合わせ包みされる包装体〔図3(d)の符号50〕を製造するパートである。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の折倒部材20は、内容物50Aの周囲に巻き付けられた包装シート50Bの一部で内容物50AからCD方向の両側へ延出した部分を折り倒すために設けられている。
本実施形態では、包装体の製造途中の状態であって折倒部材20によってフラップ52が折り倒される前の状態を「半製品51」と称する。半製品51には、包装シート50Bの一部が内容物50AからCD方向の両側へ延出しており、この延出部を「フラップ52」と称する。
本折倒部材20は、搬送されている半製品51のフラップ52を自動的に折り倒す部材である。
【0015】
フラップ52のうち、MD方向の上流側に位置する部分を「前フラップ53A」と称し、MD方向の下流側に位置する部分を「後フラップ53B」と称し、これらを「内フラップ53」と総称する。
フラップ52において下方(TD方向の一側)に位置する部分を「下フラップ54A」と称し、上方(TD方向の他側)に位置する部分を「上フラップ54B」と称し、これらを「外フラップ54」と総称する。
【0016】
フラップ52は、下記の手順A1~A4で折り倒される。
手順A1:図3(a)の折倒前状態に示すように、内容物50Aから延出したフラップ52を有する半製品51が供給される。
手順A2:図3(b)の第一折倒状態に示すように、フラップ52のうち前フラップ53Aおよび後フラップ53Bが折り倒される。前フラップ53Aおよび後フラップ53Bの折り倒しに伴い、下フラップ54Aおよび上フラップ54BでMD方向の上流側および下流側の部分では包装シートが二枚重ね状態に折り重ねられる。
手順A3:図3(c)の第二折倒状態に示すように、フラップ52のうち下フラップ54Aが折り倒される。
手順A4:図3(d)の第三折倒状態に示すように、フラップ52のうち上フラップ54Bが折り倒される。これにより包装体50が製造される。
【0017】
半製品51が上記の手順A1~A4によってフラップ52が合わせ包み型に折り倒されて包装体が製造される。すなわち、折倒部材20では、内フラップ53が折り倒された後、外フラップ54が折り倒される。
図2に示す折畳部140は、半製品51のフラップ52を上記の手順A1~A4に従って自動的に折り倒すパートと言える。折畳部140の上流側の準備部130は、半製品51を準備して、折畳部140に送給するパート(すなわち、上記の手順A1を実施するパート)と言える。
【0018】
ここで、図1に示す折倒部材20は、上記の手順A2~A4に従って、フラップ52のうち後フラップ53B,下フラップ54Aおよび上フラップ54Bを折り倒すものである。
図1に示すように、折倒部材20の上流側には、前フラップ53Aを折り倒すためのタッカー27が設けられている。タッカー27は、折板22の上流側で前フラップ53Aに対応する位置に配置されている。タッカー27は、前フラップ53AをMD方向の上流側から下流側へ折り倒す折板部材である。本実施形態でタッカー27は、半製品51が折板22どうしの間へ搬送される前に、図示しない駆動機構によってMD方向へ移動されて、前フラップ53AをMD方向の上流側から下流側へ折り倒す。
【0019】
折畳部140よりも下流側には、シール部150、反転機構160および後段部170がこの順で設けられている。
シール部150には、折畳部140から搬送された包装体〔図3(d)の符号50〕をシールして搬送するパートである。シール部150には、包装体〔図3(d)の符号50〕の包装紙に封をするシール機構と、シールされた包装体〔図3(d)の符号50〕を下流側へ搬送する搬送路とが含まれている。シール機構の一例として、ヒーターを用いた熱溶着機構を挙げることができる。シール態様の一例としては、包装シートに塗工またはラミネート加工により設けられたヒートシール層を熱溶着させる態様を挙げることができる。
【0020】
反転機構160は、シール部150から送給された包装体を裏返して、後段部170へ送給するパートである。後段部170は、包装体を下流側へ搬送しつつ、包装体の検査や、複数個の包装体の梱包などの様々な後工程を実施するパートである。後段部170で包装体を検査する検査パートの例として、包装体の包装状態の良否を、作業者の目視やカメラなど視覚的な検査手段で検査するパートが挙げられる。
【0021】
[2.詳細構成]
次に、折倒部材20の構成を詳述する。
図1に示すように、折倒部材20には、折板22や押さえ部材30が設けられている。
折板22は、MD方向およびTD方向の双方に沿う板状の部材である。この折板22は、CD方向の一側と他側とのそれぞれに一対が配置され、折倒部材20の台座をなすベース21上に設置されている。
本明細書では、一対の折板22に対してCD方向で半製品51とは反対側を「CD方向の外側」と称し、「外側」の反対側(一対の折板22に対してCD方向で半製品51の位置する側)を「CD方向の内側」と称する。
【0022】
折板22のCD方向の外側には、折板22を支持するための支持枠24が配置されている。折板22は、支持枠24からCD方向の内側へ突出したブラケットによって支持枠24に取り付けられている。
折板22と支持枠24との間には押さえ部材30が設けられている。押さえ部材30は、詳しくは後述するように、上フラップ54Bが上方へ反り返ることを抑制するために設けられている。
【0023】
ベース21上で一対の折板22どうしの間には、半製品51をMD方向へ搬送するための搬送構造23が設けられている。搬送構造23に載置された半製品51は、一対の折板22どうしの間をMD方向へ搬送される。搬送構造23の例として、爪状の治具(フィンガー)で半製品51を挟持して搬送する構造や、周回するベルトの設けられたベルトコンベアを挙げることができる。搬送構造23には、フィンガーやベルトコンベアに限らず、周知の搬送機構を適用しうる。
【0024】
<折板>
折板22には、後フラップ53Bを折り倒すための要素としてバウ部26が設けられ、外フラップ54を所定の折目で折り倒すための要素としてスリット25が設けられている。タッカー27によって前フラップ53Aが折り倒された半製品51が折板22に送給され、バウ部26によって後フラップ53Bが折り倒されてから、スリット25によって外フラップ54が折り倒される。
【0025】
バウ26部は、一対の折板22のそれぞれにおいてMD方向上流側の端部に設けられている。ここでいう「MD方向上流側の端部」とは、スリット25よりも上流側であって、半製品51が送給されたときに、折板22において最初に後フラップ53Bに接触する部分である。
【0026】
バウ部26は、半製品51が折板22どうしの間へ搬送されるときに、後フラップ53Bの下流側に突き当たる位置に配置されており、半製品51がMD方向へ移動するにつれて後フラップ53BをMD方向の下流側から上流側へ折り倒す船首状の部位である。本実施形態で例示するバウ部26は、側面視でTD方向両側の角が丸められた形状をなし、後フラップ53Bがバウ部26に突き当たる際の接触面積を小さくしている。
【0027】
一対の折板22のそれぞれには、外フラップ54を所定の折目で折り倒すためのスリット25(折倒構造)が貫設されている。スリット25は、MD方向に沿って延在し、下方の第一縁部と上方の第二縁部とにより画成された隙間として形成されている。
スリット25には、CD方向の内側から外側へ向かって外フラップ54が挿通される。詳細に言えば、CD方向の一側に配置された折板22のスリット25には、半製品51からCD方向の一側へ延出した外フラップ54が挿通される。CD方向の他側に配置された折板22のスリット25には、半製品51からCD方向の他側へ延出した外フラップ54が挿通される。
上記のように挿通された外フラップ54は、スリット25からCD方向の外側へ延出した姿勢をなす。
【0028】
図4に示すように、折板22に設けられたスリット25には、下記の三つのスリット25A,25B,25Cが含まれている。なお、図4の側面図では、支持枠24を省略している。
・第一スリット25A:下フラップ54Aを折り倒すためのスリット
・第二スリット25B:上フラップ54Bを折り倒さずに案内するためのスリット
・第三スリット25C:上フラップ54Bを折り倒すためのスリット
【0029】
第一スリット25Aは、スリット25のうち上流側で下フラップ54Aに対応する下側にMD方向に沿って延在しており、MD方向の下流側へ向かうほど上方に位置するのぼり勾配をなす。
第一スリット25Aでは、下フラップ54AはMD方向へ搬送される過程でのぼり勾配に沿って徐々に上方へ折り倒される。
【0030】
第二スリット25Bは、MD方向における延在領域が第一スリット25Aと重複して設けられており、第一スリット25Aよりも上方側で上フラップ54Bに対応する位置に延在している。
第二スリット25Bでは、上フラップ54Bは下方(折り方向)へ折り倒されずに搬送される。上フラップ54Bは第二スリット25Bから延出した所定の姿勢を維持したまま搬送される。所定の姿勢とは、第二スリット25Bから延出した上フラップ54Bが上方(折り方向とは反対側)へ反り返らずに、水平方向へ延出した姿勢である。
このようにして第二スリット25Bは、第一スリット25Aで下フラップ54Aが折り倒されている間に並行して、上フラップ54Bを折り倒さずに案内する。
【0031】
図4に示すように、第二スリット25Bは、下方(TD方向の一側)から第一縁部25BXで画成されており、上方(TD方向の他側)から第二縁部25BYで画成されている。
この第二スリット25Bは、第一縁部25BXと第二縁部25BYとがMD方向の下流側へ向かうほど互いに近接して配置された先細りのテーパー形状をなす。
【0032】
具体的には、第二スリット25Bのうち第一縁部25BXはMD方向の下流側へ向かうほど第二縁部25BYに近接して配置されたのぼり勾配をなし、第二縁部25BYは第二スリット25BのMD方向の延在領域全体にわたりTD方向の位置が一定である。すなわち、第二縁部25BYは、MD方向に沿って勾配が変化しない直線状をなす。
言い換えれば、第二スリット25Bは、MD方向の下流側へ向かうほど溝幅が狭まる形状をなすものである。溝幅は、第一縁部25BXと第二縁部25BYとがTD方向に離間する寸法に対応する。溝幅は、バウ部26で後フラップ53Bが折り倒されることに伴い二枚重ね状態をなす上フラップ54Bの上流側部分が意図しない形に変形することなく挿入され得る寸法に設定される。
【0033】
これに対して第一スリット25Aと第三スリット25Cとの溝幅は、MD方向における延在領域の全体にわたり一定に設定されている。
第二スリット25Bの溝幅は、少なくとも最も狭い部分で第一スリット25Aおよび/または第三スリット25Cの溝幅よりも狭いことが好ましい。
【0034】
上記の第一スリット25Aは、バウ部26が後フラップ53Bを折り倒す領域の直後から外フラップ54の折り倒しを開始するように設けられている。すなわち、第一スリット25Aおよび第二スリット25Bは、バウ部26が後フラップ53Bを折り倒す領域に重複していない。下フラップ54Aおよび上フラップ54Bのそれぞれは、バウ部26によって後フラップ53Bが折り倒された後に、第一スリット25Aおよび第二スリット25Bのそれぞれに挿通される。
【0035】
第三スリット25Cは、第二スリット25Bの下流側に連設されており、MD方向の下流側へ向かうほど下方に位置するくだり勾配をなす。
第三スリット25Cでは、第二スリット25Bで案内された上フラップ54BがMD方向へ搬送される過程でくだり勾配に沿って徐々に下方へ折り倒される。第三スリット25Cによる上フラップ54Bの折り倒しは、第一スリット25Aで下フラップ54Aが折り倒された後に実施される。
【0036】
図5は、半製品51において前フラップ53Aがタッカー27により折り倒されるとともに、後フラップ53Bがバウ部26により折り倒された状態〔図3(b)の第一折倒状態〕を示す。
前フラップ53Aと後フラップ53Bとのそれぞれが折り倒された後に、下フラップ54Aが第一スリット25Aに挿通され、上フラップ54Bが第二スリット25Bに挿通される。
【0037】
<押さえ部材>
押さえ部材30は、折板22に対してCD方向の外側へ延出した庇状の部材である。
図1および図5に示すように、押さえ部材30は、MD方向に延在しており、MD方向から視てL字型の断面形状をなす部材で形成されている。
この押さえ部材30では、MD方向およびCD方向に沿う面がCD方向の外側へ庇状に延出した庇部30Aをなし、MD方向およびTD方向に沿う面が、押さえ部材30を折板22に取り付ける取付面30Bをなす。
【0038】
庇部30Aは、上フラップ54Bが上方へ反り返り可能な領域と交差する領域に張り出した陸庇(ろくひさし)状の部位をなす。庇部30Aは、平面視で上フラップ54Bに重複する面状領域をなす部位と言える。
「フラップ54Bの反り返り可能な領域」とは、適切な姿勢で延出した上フラップ54Bが上方へ揺動しうる範囲である。本実施形態で例示する「適切な姿勢」とは、上フラップ54Bが略水平方向へ延出した姿勢である〔図6(a)の符号PAを参照〕。
【0039】
庇部30Aは、上フラップ54Bの上方で、適切な姿勢の上フラップ54Bに対して上方に隙間をあけて配置される。ここでいう「隙間」とは、適切な姿勢の上フラップ54Bは庇部30Aに接触せず、上方に反り返った不適切な姿勢の上フラップ54Bが庇部30Aに接触するように離間した空間である。この場合、庇部30Aは、上フラップ54Bが適切な姿勢よりも上方へ反り返った際に上フラップ54Bに接触し、庇部30Aよりも上方へ上フラップ54が反り返ることを規制する機能を有する。
別の例として、庇部30Aは、適切な姿勢をなす上フラップ54Bに対して接触する位置に設けられていてもよい。この場合、庇部30Aは、上フラップ54Bに接触することで上フラップ54Bの反り返りを規制するとともに適切な姿勢を維持する機能を有する。
【0040】
この押さえ部材30には、図4に示すように、以下の三パートが含まれている。
・押さえ部31:第二スリット25Bの延在領域に重複するパート
・プレ押さえ部32:押さえ部31の上流側であってバウ部26によって後フラップ53Bを折り倒す領域に延在するパート
・上流側押さえ部33:折板22に対してMD方向の上流側の領域に延在するパート
【0041】
押さえ部31では、第二スリット25Bに挿通された上フラップ54Bが上方へ反り返り可能な領域と交差する領域に庇部30Aが延在している。
押さえ部31は、第一スリット25Aで下フラップ54Aを折り倒すのに並行して、第二スリット25Bで上フラップ54Bを適切な姿勢を維持したまま搬送する領域に設けられているものとも言える。
【0042】
プレ押さえ部32では、バウ部26における後フラップ53Bの折り倒しに伴って上フラップ54Bが上方へ反り返りうる領域と交差する領域に庇部30Aが延在している。
プレ押さえ部32は、第二スリット25Bの直前で、上フラップ54Bが適切な姿勢で第二スリット25Bに挿通されるように案内する部材とも言える。
【0043】
上流側押さえ部33では、折板22に対してMD方向の上流側の領域で上フラップ54Bが上方へ反り返りうる領域と交差する領域に庇部30Aが延在している。折板22に対してMD方向の上流側の領域で上フラップ54Bが上方へ反り返る要因としては、例えばタッカー27における前フラップ53Aの折り倒しに伴って上フラップ54Bが上方へ反り返えることが挙げられる。
「折板22に対してMD方向の上流側の領域」とは、詳しく、折板22の先端部をなすバウ部26よりもMD方向の上流側の領域である。上流側押さえ部33は、折板22の先端部よりも上流側で、上フラップ54Bが適切な姿勢で第二スリット25Bに挿通されるように案内する部材とも言える。
【0044】
本実施形態で押さえ部材30は、庇部30AのTD方向の位置がMD方向の下流側へ向かって変化しない(すなわち傾斜勾配をなさず直線状に延在する)形状をなす。この押さえ部材30は、MD方向の延在領域全体にわたり、一定のTD方向の位置で上フラップ54Bの反り返りを規制するものである。
別の例として、押さえ部材30の庇部30Aは、TD方向の位置がMD方向の下流側へ向かうほど下方に位置する傾斜勾配をなす形状であってもよい。この場合、押さえ部材30は、反り返りを規制する機能のほか、MD方向の下流側へ向かって徐々に上フラップ54Bで上方を向いた面に接触し上フラップ54Bを徐々に折り曲げる機能を果たす。
【0045】
[3.作用および効果]
本実施形態の折板22は、上述の構成を備えるため、下記のような作用および効果を得ることができる。
(1)図7(a),(b)は折板で上フラップを折り曲げる様子をCD方向に沿って視た説明図であって、折板の一部を省略している。図7(b)に示す従来の折板90に設けられた直線状のスリット92では、上述のように、上フラップ54Bは当初の折り曲げ状態〔図7(b)で符号CB1を参照〕のままMD方向の下流側へ搬送されて、折り曲げ状態が変化しない〔図7(b)で符号CB2を参照〕。上フラップ54Bが当初の折り曲げ状態から急に折り倒されるため、上フラップ54Bが理想的な折目とは異なる箇所の不良な折目で折り倒されて、包装不良を招くおそれがある。
【0046】
これに対して、テーパー形状をなす本件の第二スリット25Bによれば、上フラップ54Bは当初の折り曲げ状態〔図7(a)で符号CA1を参照〕からMD方向の下流側へ向かうほど徐々に折り曲げられてゆく〔図7(a)で符号CA2を参照〕。
このため、徐々に折り曲げずに急に上フラップ54Bを折り倒す従来の技術に比べて、上フラップ54Bが理想的な折目で折り倒されやすくなる。よって、包装体の包装不良を抑制することができる。
【0047】
(2)第一縁部25BXがのぼり勾配をなし、第二縁部25BYがTD方向の位置が一定であるため、上フラップ54Bは、TD方向の上方では第二縁部25BYの一定位置に規制されつつ、TD方向の下方から徐々に折り曲げられる。一定位置に規制されたTD方向の上方部分は、MD方向で下流側の第三スリット25Cで上フラップ54Bを折り倒す際の揺動支点に対応する部分である。そのため、第三スリット25Cでは、一定位置(所定の位置)で規制された揺動支点にて上フラップ54BをTD方向の下方へ折り倒すことができる。そのため、上フラップ54Bが理想的な折目で折り倒されやすくなり、包装体の包装不良を一層抑制することができる。
【0048】
(3)包装シートが紙製の包装紙である場合には、例えばフィルム製の包装シートに比べて、折目の適否が包装品質の良否に影響を与えやすい傾向がある。そのため、テーパー形状をなす本件の第二スリット25Bで上フラップ54Bを徐々に折り曲げることによる包装体の包装不良の抑制効果は、包装シートに包装紙を用いる場合のほうがフィルム製の包装シートを用いる場合よりも大きい。
【0049】
さらに、本実施形態の折倒部材20によれば、第二スリット25Bに挿通された上フラップ54Bが適切な姿勢よりも上方へ反り返ろうとしても、この反り返りが押さえ部材30(押さえ部31)の庇部30Aによって構造的に規制される。そのため、反り返りが抑制された適切な姿勢PA〔図6(a)において実線で示す〕に上フラップ54Bを維持することができし、理想的な折目FA〔図6(b)において実線で示す折目〕で上フラップ54Bを折り倒すことができる。よって、包装体の包装不良を抑制することができる。
一方、押さえ部材の設けられていない従来の折板では、スリットに挿通された上フラップが上方へ反り返ることが構造的に規制されず、上フラップが反り返った不良な姿勢PB〔図6(a)において破線で示す〕のまま折り倒されてしまうおそれがある。これにより、上フラップが不良な折目FB〔図6(b)において破線で示す折目〕で折り倒され、包装体の包装不良を招くおそれがある。
【0050】
[II.変形例]
上述の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
【0051】
押さえ部材としては、下記の変形例を挙げることができる。
(1)押さえ部材は、プレ押さえ部および上流側押さえ部を含まない。この場合、第二スリット25Bに挿通された上フラップ54Bの反り返りを簡素な構成で抑制することができる。
(2)押さえ部材は、第一スリット25Aよりも下方(TD方向の一側)に設けられ、第一スリット25Aに挿通された下フラップ54Aが上方(TD方向の一側)へ反り返りうる領域と交差する領域でCD方向の外側に延出した庇状の部材で形成される。
【0052】
第二スリット25Bのテーパー形状に関して、下記の変形例を挙げることができる。
第二スリット25のうち、第二縁部25BYがMD方向の下流側へ向かうほど第一縁部25BXに近接して配置された傾斜勾配をなし、第一縁部25BXが第二スリット25BのMD方向の延在領域全体にわたりTD方向の位置が一定である。
すなわち、第二スリット25Bは、第一縁部25BXおよび第二縁部25BYの一方がMD方向の下流側へ向かうほど第一縁部25BXおよび第二縁部25BYの他方に接近して配置された傾斜勾配をなし、第一縁部25BXおよび第二縁部25BYの他方は第二スリット25BのMD方向の延在領域全体にわたりTD方向の位置が一定であってよい。
また、テーパー形状は第一スリット25Aや第三スリット25Cにも適用可能である。
【0053】
[III.付記]
以上の実施形態に関し、付記を開示する。
〔付記1〕
内容物の周囲に巻き付けられた包装シートの一部が前記内容物に巻き付けられた方向に対して交差するCD方向に前記内容物から延出したフラップを有する半製品の前記フラップが折り倒されて合わせ包み型に包装される包装体の製造ラインに付設され、前記フラップにおいて前記半製品の搬送されるMD方向の上流側および下流側に位置する内フラップが折り倒された後、搬送されている前記半製品の前記フラップにおいて前記MD方向および前記CD方向に交差するTD方向の一側および他側のそれぞれに位置する外フラップを折り倒すために前記MD方向および前記TD方向の双方に沿う板状に設けられた折板の折倒構造であって、
前記外フラップを折り倒すためのスリットが前記CD方向に貫設されるとともに前記MD方向に沿って延設された前記折板において、前記スリットを前記TD方向の一側から画成する第一縁部と、
前記折板において、前記スリットを前記TD方向の他側から画成する第二縁部と、を備え、
前記第一縁部と前記第二縁部とが前記MD方向の下流側へ向かうほど互いに近接して配置された先細りのテーパー形状をなす
ことを特徴とする折倒構造。
〔付記2〕
前記第一縁部および前記第二縁部の何れか一方が、下流側へ向かうほど前記第一縁部および前記第二縁部の他方に近接して配置された傾斜勾配をなし、前記第一縁部および前記第二縁部の何れか他方は前記MD方向の延在領域で前記TD方向の位置が一定である
ことを特徴とする付記1に記載の折倒構造。
〔付記3〕
前記第一縁部が、下流側へ向かうほど前記第二縁部に近接して配置された傾斜勾配をなし、前記第二縁部は前記MD方向の延在領域で前記TD方向の位置が一定に配置された
ことを特徴とする付記1または2に記載の折倒構造。
〔付記4〕
内容物の周囲に巻き付けられた包装シートの一部が前記内容物に巻き付けられた方向に対して交差するCD方向に前記内容物から延出したフラップを有する半製品の前記フラップが折り倒されて合わせ包み型に包装される包装体の製造ラインに付設され、前記フラップにおいて前記半製品の搬送されるMD方向の上流側および下流側に位置する内フラップが折り倒された後、搬送されている前記半製品の前記フラップにおいて前記MD方向および前記CD方向に交差するTD方向の一側および他側のそれぞれに位置する外フラップを折り倒すための折倒部材であって、
前記外フラップを折り倒すためのスリットが前記MD方向に沿って延設され、前記MD方向および前記TD方向の双方に沿う板状の折板と、
前記スリットに挿通された前記外フラップが反り返りうる領域と交差する領域で前記CD方向の外側に延出した庇状の押さえ部材と、
を備えたことを特徴とする折倒部材。
〔付記5〕
前記折板は、前記MD方向の上流側端部に前記内フラップのうち前記MD方向の下流側に位置する後内フラップを前記MD方向の上流側へ向けて折り倒すバウ部を有し、
前記押さえ部材には、前記バウ部での前記後内フラップの折り倒しにともなって前記外フラップが反り返りうる領域と交差する領域で前記CD方向の外側に延出した庇状のプレ押さえ部が含まれる
ことを特徴とする付記4に記載の折倒部材。
〔付記6〕
前記押さえ部材には、前記折板に対して前記MD方向の上流側で前記外フラップが反り返りうる領域と交差する領域で前記CD方向の外側に延出した庇状の上流側押さえ部が含まれる
ことを特徴とする付記4または5に記載の折倒部材。
【符号の説明】
【0054】
20 折倒部材
21 ベース
22 折板
23 搬送構造
24 支持枠
25 スリット
25A 第一スリット
25B 第二スリット(折倒構造)
25C 第三スリット
25BX 下縁部
25BY 上縁部
26 バウ部
27 タッカー
30 押さえ部材
30A 庇部
30B 取付面
31 押さえ部
32 プレ押さえ部
33 上流側押さえ部
50 包装体
50A 内容物
50B 包装シート
51 半製品
52 フラップ
53 内フラップ
53A 前フラップ
53B 後フラップ
54 外フラップ
54A 下フラップ
54B 上フラップ
100 製造ライン
110 給送部
120 給紙部
130 準備部
140 折畳部
150 シール部
160 反転機構
170 後段部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7