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7616004エピタキシャル成長装置の基板載置位置の偏心量を評価する方法及び当該評価方法を用いたエピタキシャルウェーハの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】エピタキシャル成長装置の基板載置位置の偏心量を評価する方法及び当該評価方法を用いたエピタキシャルウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20250109BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20250109BHJP
   C30B 25/12 20060101ALI20250109BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/68 N
C30B25/12
C23C16/458
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021170465
(22)【出願日】2021-10-18
(65)【公開番号】P2023060720
(43)【公開日】2023-04-28
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩司
(72)【発明者】
【氏名】高梨 啓一
(72)【発明者】
【氏名】大森 康弘
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-037075(JP,A)
【文献】特開2019-114711(JP,A)
【文献】特開2015-201599(JP,A)
【文献】特開2012-227471(JP,A)
【文献】特開2009-267159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/683
C30B 25/12
C23C 16/458
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピタキシャル成長装置の基板載置位置の偏心量を評価する方法であって、
エピタキシャル成長させる前のウェーハ表面の平坦度を評価するエピタキシャル成長前平坦度評価工程と、
前記平坦度評価を実施したウェーハを前記エピタキシャル成長装置のサセプタ上に載置するウェーハ載置工程と、
前記ウェーハ載置工程でサセプタ上に載置した前記ウェーハにエピタキシャル成長処理を実施するエピタキシャル成長工程と、
前記エピタキシャル成長工程を経て作製されたエピタキシャルウェーハ表面の平坦度を評価するエピタキシャル成長後平坦度評価工程と、
前記エピタキシャル成長後平坦度評価工程により得られる前記エピタキシャルウェーハの平坦度から、前記エピタキシャル成長前平坦度評価工程により得られる前記ウェーハ表面の平坦度を差し引いて、前記エピタキシャルウェーハの径方向のエピタキシャル膜厚形状分布を取得する形状プロファイル取得工程と、
前記エピタキシャル膜厚形状分布に基づいて、前記エピタキシャル成長装置の基板載置位置の偏心量を算出する偏心量算出工程と、
を含み、
前記偏心量算出工程は、
前記エピタキシャル膜厚形状分布を、ウェーハ中心位置に対して対称な方向に径方向で重ね合わせる重ね合わせ工程と、
前記重ね合わせ工程で重ね合わせた、2つのエピタキシャル膜厚形状分布において、前記エピタキシャルウェーハの最外周から径方向へ一定の等距離の位置での高さ成分が低い側を基準高さとし、この位置と、重ね合わせたもう一方のエピタキシャル膜厚形状分布が基準高さとなる位置との径方向距離を算出する基準高さ間距離算出工程と、
をさらに含み、
前記偏心量算出工程において前記径方向距離に基づき前記偏心量を算出する基板載置位置の偏心量評価方法。
【請求項2】
前記形状プロファイル取得工程において、前記エピタキシャル膜厚形状分布を、複数の軸方向から取得する、請求項に記載の基板載置位置の偏心量評価方法。
【請求項3】
前記形状プロファイル取得工程において、前記エピタキシャル膜厚形状分布を、扇形の面プロファイルの平均値から取得する、請求項1又は2に記載の基板載置位置の偏心量評価方法。
【請求項4】
前記基準高さ間距離算出工程において、前記一定の等距離の位置を、前記エピタキシャルウェーハの最外周から1mm~4mmの範囲内で定める、請求項1~3のいずれか1項に記載の、基板載置位置の偏心量評価方法。
【請求項5】
エピタキシャルウェーハの製造方法であって、
請求項1~のいずれか1項に記載の基板載置位置の偏心量評価方法を用いて評価した偏心量に基づき、成膜対象ウェーハの載置位置を補正してから前記サセプタ上に載置する補正載置工程と、
前記補正載置した成膜対象ウェーハにエピタキシャル成長処理を実施する補正後成長処理工程と、
を含む、エピタキシャルウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャル成長装置の基板載置位置の偏心量を評価する方法及び当該評価方法を用いたエピタキシャルウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハは、チョクラルスキー法(CZ法)等により単結晶を育成し、該単結晶をブロックに切断した後、薄くスライスし、平面研削(ラッピング)工程、エッチング工程および鏡面研磨(ポリッシング)工程を経て最終洗浄することにより得られる。その後、各種品質検査を行って異常が確認されなければ製品として出荷される。
【0003】
ここで、結晶の完全性がより要求される場合や、抵抗率の異なる多層構造を必要とする場合などには、ウェーハの表面に単結晶シリコン薄膜などからなるエピタキシャル層を気相成長(エピタキシャル成長)させてエピタキシャルウェーハを製造する。エピタキシャル成長はSi、SiC及びGaAsなどの半導体ウェーハに対して広く行われている。
【0004】
エピタキシャル成長装置は、外気と遮断した状態で、反応ガス供給手段から反応ガスをチャンバー内へと供給し、チャンバー内に配置されるサポートシャフトにより支持されているサセプタ上の基板を処理することにより、基板の表面にエピタキシャル層を成長させるものである。エピタキシャル層の成長時には、サセプタを支持するサポートシャフトが回転することにより、基板が回転するようになっている。
【0005】
このサセプタの縁部の内側には基板径よりも数ミリ程度大きい凹形状のポケット部が形成されていることが通常である。このサセプタのポケット部に基板が収まることにより、サセプタを回転させても基板が特定の位置に留まることができるようになっており、均質な反応が行われる。このときウェーハの中心とサセプタの中心とに偏心が生じることがあり、偏心量が大きくなると、形成したエピタキシャル層の膜厚分布に偏りが生じてしまうことは知られている。しかしながら、実際にサセプタにウェーハを載置する際には、搬送用ロボット等が用いられたり、ウェーハを載置する際にはリフトピンによる昇降が行われるなどの理由により、ウェーハの中心と、サセプタの中心とを完全に一致させることは困難である。
【0006】
このような問題に対し、従来、基板の載置位置の偏心量の評価方法として、カメラまたは目視により偏心量を見積もる方法などが試みられてきた。例えば、特許文献1では、複数の貫通孔を有するサセプタ上に基板を載置させ、エピタキシャル成長温度と同じ温度でエッチングガスを導入し、前記基板の裏面にサセプタ貫通孔パターンを転写させ、サセプタ貫通孔パターンの位置を測定して、基板の載置位置の偏心量を評価する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-227471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来使用されているカメラによる評価は正確に偏心量を見積もることができるものの、エピタキシャル装置毎にカメラを導入する必要があり、製造コストが大きくなってしまう問題がある。また特許文献1では、基板のエピタキシャル成長以外に、エッチングガスを導入し、基板の裏面にサセプタ貫通孔パターンを転写させ、サセプタ貫通孔パターンの位置を測定して偏心量を求める工程が必要となり、簡便に基板の載置位置の補正ができないという問題があった。また、特許文献1のような特殊な貫通孔の無いサセプタを用いた場合には、貫通孔パターンの転写ができない為、基板の載置位置の評価ができず、載置位置の補正ができないという問題があった。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、追加の設備や装置の改造を必要とせず、一般的なサセプタを用いた場合でも、エピタキシャル成長時の高温状態での基板の載置位置の偏心を簡便に評価できる方法を提供することを目的とする。また、基板載置位置の偏心量を評価して、その偏心量を修正することにより、基板上に均一な膜厚のエピタキシャル層を形成できるエピタキシャルウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく検討したところ、エピタキシャル成長前後のウェーハ表面の平坦度を評価し、そのエピタキシャル膜の厚み分布の径方向のプロファイルを用いて、エピタキシャル成長装置の基板載置位置の偏心量を評価することを見出した。本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、その要旨構成は以下のとおりである。
【0011】
<1>エピタキシャル成長装置の基板載置位置の偏心量を評価する方法であって、
エピタキシャル成長させる前のウェーハ表面の平坦度を評価するエピタキシャル成長前平坦度評価工程と、
前記平坦度評価を実施したウェーハを前記エピタキシャル成長装置のサセプタ上に載置するウェーハ載置工程と、
前記ウェーハ載置工程でサセプタ上に載置した前記ウェーハにエピタキシャル成長処理を実施するエピタキシャル成長工程と、
前記エピタキシャル成長工程を経て作製されたエピタキシャルウェーハ表面の平坦度を評価するエピタキシャル成長後平坦度評価工程と、
前記エピタキシャル成長後平坦度評価工程により得られる前記エピタキシャルウェーハの平坦度から、前記エピタキシャル成長前平坦度評価工程により得られる前記ウェーハ表面の平坦度を差し引いて、前記エピタキシャルウェーハの径方向のエピタキシャル膜厚形状分布を取得する形状プロファイル取得工程と、
前記エピタキシャル膜厚形状分布に基づいて、前記エピタキシャル成長装置の基板載置位置の偏心量を算出する偏心量算出工程と、
を含む、基板載置位置の偏心量評価方法。
【0012】
<2>前記偏心量算出工程は、
前記エピタキシャル膜厚形状分布を、ウェーハ中心位置に対して対称な方向に径方向で重ね合わせる重ね合わせ工程と、
前記重ね合わせ工程で重ね合わせた、2つのエピタキシャル膜厚形状分布において、前記エピタキシャルウェーハの最外周から径方向へ一定の等距離の位置での高さ成分が低い側を基準高さとし、この位置と、重ね合わせたもう一方のエピタキシャル膜厚形状分布が基準高さとなる位置との径方向距離を算出する基準高さ間距離算出工程と、
をさらに含み、
前記偏心量算出工程において前記径方向距離に基づき前記偏心量を算出する、<1>に記載の基板載置位置の偏心量評価方法。
【0013】
<3>前記形状プロファイル取得工程において、前記エピタキシャル膜厚形状分布を、複数の軸方向から取得する、<1>又は<2>に記載の基板載置位置の偏心量評価方法。
【0014】
<4>前記形状プロファイル取得工程において、前記エピタキシャル膜厚形状分布を、扇形の面プロファイルの平均値から取得する、<1>~<3>のいずれかに記載の基板載置位置の偏心量評価方法。
【0015】
<5>前記基準高さ間距離算出工程において、前記一定の等距離の位置を、前記エピタキシャルウェーハの最外周から1mm~4mmの範囲内で定める、前記エピタキシャルウェーハの同心円の円周上の位置である、<2>~<4>のいずれかに記載の、基板載置位置の偏心量評価方法。
【0016】
<6>エピタキシャルウェーハの製造方法であって、
<1>~<5>のいずれか1項に記載の基板載置位置の偏心量評価方法を用いて評価した偏心量に基づき、成膜対象ウェーハの載置位置を補正してから前記サセプタ上に載置する補正載置工程と、
前記補正載置した成膜対象ウェーハにエピタキシャル成長処理を実施する補正後成長処理工程と、
を含む、エピタキシャルウェーハの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、追加の設備や装置の改造を必要とせず、一般的なサセプタを用いた場合でも、エピタキシャル成長時の基板の載置位置の偏心を簡便に評価できる方法を提供することができる。また、載置位置の偏心量を評価して、その偏心量を修正することにより、基板上に均一な膜厚のエピタキシャル層を形成できるエピタキシャルウェーハの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来公知の一般的なエピタキシャル成長装置の模式断面図である。
図2】従来公知の一般的なサセプタの模式平面図である。
図3】ウェーハの中心とサセプタの中心との位置のずれを示す模式平面図である。
図4】実施例において測定された、膜厚形状分布をウェーハ中心位置に対して対称な方向に径方向で重ね合わせたグラフである。
図5】カメラによる偏心量測定結果と、実施例で評価された偏心量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、模式図における構成は実際の各構成の大きさの割合と異なり誇張して示す。
【0020】
本発明に従うエピタキシャル成長装置の基板載置位置の偏心量評価方法について説明する。この方法は、エピタキシャル成長させる前のウェーハ表面の平坦度を評価するエピタキシャル成長前平坦度評価工程と、平坦度評価を実施したウェーハをエピタキシャル成長装置のサセプタ上に載置するウェーハ載置工程と、ウェーハ載置工程でサセプタ上に載置したウェーハにエピタキシャル成長処理を実施するエピタキシャル成長工程と、エピタキシャル成長工程を経て作製されたエピタキシャルウェーハ表面の平坦度を評価するエピタキシャル成長後平坦度評価工程と、エピタキシャル成長後平坦度評価工程により得られるエピタキシャルウェーハの平坦度から、エピタキシャル成長前平坦度評価工程により得られるウェーハ表面の平坦度を差し引いて、エピタキシャルウェーハの径方向のエピタキシャル膜厚形状分布を取得する形状プロファイル取得工程と、エピタキシャル膜厚形状分布に基づいて、エピタキシャル成長装置の基板載置位置の偏心量を算出する偏心量算出工程と、を含む。以下、各構成及び各工程の詳細を順次説明する。
【0021】
(エピタキシャル成長装置)
図1に、一例として、ウェーハWにエピタキシャル層を形成するために用いる一般的なエピタキシャル成長装置150を示す。このエピタキシャル成長装置150は、気密性を保持するためのアッパーライナー151およびローワーライナー152を備え、アッパードーム153、ローワードーム154によってエピタキシャル成長炉が区画される。そして、このエピタキシャル成長炉の内部にウェーハWを水平に載置するためのサセプタ1が設けられている。
【0022】
図2を用いて、従来公知の一般的なサセプタ1を説明する。エピタキシャル成長を行う際、ウェーハWをサセプタ1の座ぐり部11に載置し、該サセプタ1を回転させながら成長ガス(ソースガス)をウェーハWの表面に吹き付ける。ここで、サセプタ1には、円形凹状の座ぐり部11が設けられ、この座ぐり部11の中心にウェーハWの中心が位置するよう、ウェーハWが載置される。ウェーハWとサセプタ1とは、レッジ部11Lで接触している。
【0023】
<エピタキシャル成長前平坦度評価工程>
エピタキシャル成長前平坦度評価工程では、まず、エピタキシャル成長前のウェーハW表面の平坦度を測定する。測定方法は特に限定されないが、例えばROA(Roll Off Amount)、ESFQR(Edge Site Frontsurface referenced least sQuares/Range)の指標を用いて評価することができる。ROAはウェーハ外周部の平坦度指標であり、例えばウェーハ中心から120~148mmの区間を5°間隔で周方向に区切ることにより得られる矩形面積の最小二乗平面を基準面としたときの、ウェーハ中心から149mm(最外周から内側に1mm)の位置のロールオフ量として定義される。このロールオフ量の測定条件を任意に変更して、ロールオフ形状全体を評価することができる。また、同様にESFQRは、例えばウェーハ外周部の周方向に取り囲んだ周方向5°、半径方向30mmの領域(ほぼ矩形領域)のSFQR値(領域内最小二乗面からの最大変位量)として定義される。
【0024】
<ウェーハ載置工程>
ウェーハ載置工程では、サセプタ1にウェーハWを載置する。ウェーハWを載置する際には、搬送用ロボット等を用いることもでき、ウェーハWを載置する際にはリフトピン(図示せず)により昇降を行ってもよい。
【0025】
<エピタキシャル成長工程>
エピタキシャル成長工程では、ウェーハWの片面に、エピタキシャル層を形成する。エピタキシャル層の形成には、公知または任意の方法を好適に用いることができ、例えば前述した枚葉式エピタキシャル成長装置150を用いることができる。一例として、シリコンエピタキシャル層の形成であれば、水素(H)をキャリアガスとして、ジクロロシラン(SiHCl)、トリクロロシラン(SiHCl)等のソースガスをチャンバ内に導入し、使用するソースガスによっても成長温度は異なるが、概ね1000~1200℃の温度範囲の温度でCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、エピタキシャル層をエピタキシャル成長させればよい。成膜するエピタキシャル層は用途に応じて適宜選択可能であり、SiC又はGaAsのエピタキシャル層であってもよい。
【0026】
<エピタキシャル成長後平坦度評価工程>
エピタキシャル成長後平坦度評価工程では、エピタキシャル成長後のウェーハW表面の平坦度を測定する。本工程では、エピタキシャル成長前の平坦度評価工程で用いられた指標及び測定方法と同一のものを用いる。この限りであれば、測定方法は特に特に限定されないが、上述のとおり例えばROA(Roll Off Amount)、ESFQR(Edge Site Frontsurface referenced least sQuares/Range)の指標を用いて評価すればよい。後述するように、エピタキシャル成長の前後で平坦度を評価することで、エピタキシャル層の膜厚分布を評価することができる。
【0027】
<形状プロファイル取得工程>
形状プロファイル評価工程では、エピタキシャル成長後平坦度評価工程により得られるエピタキシャルウェーハの平坦度から、エピタキシャル成長前平坦度評価工程により得られる前記ウェーハW表面の平坦度を差し引いて、エピタキシャルウェーハの径方向のエピタキシャル膜厚形状分布を取得する。このとき、複数の軸方向から得られる径方向の線プロファイルとしてのエピタキシャル膜厚形状分布を取得してもよく、扇形の面プロファイルの周方向平均値としてのエピタキシャル膜厚形状分布を取得してもよい。取得すべき扇形は、ウェーハWを4分割してもよいし、8分割してもよいし、16分割してもよい。
【0028】
<偏心量算出工程>
偏心量算出工程では、エピタキシャル膜厚形状分布に基づいて、エピタキシャル成長装置150の基板載置位置の偏心量を算出する。ここでいう偏心量とは、図3で示すように、ウェーハWの中心位置Cwとサセプタ1の中心位置Csとの水平方向のずれを表す。表現方法は特に限定されないが、図3に示すようにウェーハW面内方向に対して任意にXY平面を設定し、ウェーハ中心位置Cwとサセプタ中心位置Csとの各XY座標間のベクトルや距離として表現することができる。偏心量算出工程では、後述するように、重ね合わせ工程と、続く基準高さ間距離算出工程と、をさらに設けることが好ましい。
【0029】
<<重ね合わせ工程>>
重ね合わせ工程とは、エピタキシャル膜厚形状分布を、ウェーハ中心位置Cwに対して対称な方向に径方向で重ね合わせる工程である。ウェーハ中心位置Cwに対して径方向で重ね合わせることで、ウェーハ中心位置Cwから同じ距離の位置におけるエピタキシャル膜厚分布形状を比較することができる。
【0030】
<<基準高さ間距離算出工程>>
重ね合わせ工程に続く基準高さ間距離算出工程では、上記重ね合わせ工程で重ね合わせた、2つのエピタキシャル膜厚形状分布において、エピタキシャルウェーハの最外周から径方向へ一定の等距離の位置での高さ成分が低い側を基準高さとし、この位置と、重ね合わせたもう一方のエピタキシャル膜厚形状分布が基準高さとなる位置との径方向距離を算出する。ここで、ウェーハを均等に8分割したときのウェーハ中心位置Cwに対して対称な方向である領域0と領域4について、最外周から一定の等距離の位置を2mmとした場合の基準高さ間距離算出工程の一例を、図4を用いて具体的に説明する。まず、ウェーハWの最外周から2mmの位置での高さ成分が低い側の高さを基準高さとして決める。そして、もう一方の領域において基準高さと同じ高さになる、ウェーハ中心位置Cwからの位置を確定し、最外周から一定の等距離の位置からこの位置までの距離を「基準高さ間距離」と定める。なお、この距離は、領域0と領域4それぞれの偏心量を合わせた結果であるため、この算出結果に基づいて補正する距離は、領域4から領域0の方向に基準高さ間距離の1/2の距離とすればよい。このとき、一定の等距離の位置は、エピタキシャルウェーハの最外周から1mm~4mmの範囲内で定めることができ、エピタキシャルウェーハの同心円の円周上とすることが好ましい。最外周から1mm未満の位置では、現在の測定器が対応できないため評価することができず、4mmより大きい範囲では、サセプタ中心位置Csからの距離に比例した膜厚の差が正確に評価できないからである。また、最外周からの距離が小さいほど外乱の要因が大きくなるため、より好ましくはエピタキシャルウェーハの最外周から2mm~4mmの範囲内で定めることができる。
【0031】
以上述べた各工程を経ることにより、基板載置位置の偏心量を評価することができる。この評価方法により、追加の設備や装置の改造を必要とせず、一般的なサセプタを用いた場合でも、エピタキシャル成長時の高温状態での基板の載置位置の偏心を簡便に評価することができる。
【0032】
(エピタキシャルウェーハの製造方法)
また、本発明に従うエピタキシャルウェーハの製造方法は、前述した実施形態による基板載置位置の偏心量評価方法を用いて評価した偏心量に基づき、成膜対象ウェーハWの載置位置を補正してからサセプタ上に載置する補正載置工程と、補正載置した成膜対象ウェーハWにエピタキシャル成長処理を実施する補正後成長処理工程と、を含む。
【0033】
なお、補正載置工程においては、搬送ロボットの搬送位置を調整するなどすればよい。また、成膜対象ウェ-ハの表面にエピタキシャル層を形成する際の成長条件は、上述のとおり公知または任意の方法を好適に用いることができ、例えば枚葉式エピタキシャル成長装置150を用いることができる。一例として、シリコンエピタキシャル層の形成であれば、評価方法の実施形態において述べたのと同様に、水素(H)をキャリアガスとして、ジクロロシラン(SiHCl)、トリクロロシラン(SiHCl)等のソースガスをチャンバ内に導入し、使用するソースガスによっても成長温度は異なるが、概ね1000~1200℃の温度範囲の温度でCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、エピタキシャル層をエピタキシャル成長させればよい。エピタキシャル層はSiC又はGaAsのエピタキシャル層であってもよい。
【0034】
なお、偏心量を求める工程を1枚の成膜対象ウェーハWに対して行い、次の成膜対象ウェーハWをエピタキシャル成長装置150内に搬送するごとに、載置位置を調整してもよい。あるいは、位置ずれ量を求める工程を複数枚の成膜対象ウェーハW(例えば1バッチあたり25枚)に対して行い、1バッチ終了後に載置位置を調整してもよい。
【0035】
このエピタキシャルウェーハの製造方法により、エピタキシャル成長前のウェーハW載置位置の偏心量を従来よりも小さくできるため、ウェーハW外周部におけるエピタキシャル膜厚のばらつきを低減することができる。
【実施例
【0036】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0037】
<確認試験>
直径300mmのシリコンウェーハを用意し、中心角を45°として、8等分した扇形それぞれについて、平坦度測定装置(KLA社製,WaferSight2)を用いて予めROA法によりエピタキシャル成長前の平坦度評価を行い、周方向の成分を平均化した、8つの面プロファイルの平均値を得た。
【0038】
つぎに搬送ロボットを用いてシリコンウェーハをエピタキシャル成長装置150内に搬送し、リフトピンを用いてサセプタ上に載置した。このとき、本発明に係る評価方法の評価精度を確認するため、エピタキシャル成長装置150内で、CCDカメラを用いて基板載置位置の正確な偏心量を測定した。CCDカメラは、温度の影響を遮蔽するためのシースを施してエピタキシャル成長装置150の測定部155(図1参照)へ載置した。CCDカメラによる評価では、サセプタの最外周とウェーハの最外周との距離を解析することにより、偏心量を評価した。
【0039】
続いて、1130℃にて、水素ガスを供給し、エピタキシャル膜厚制御のため所定のサセプタ回転数及び成長時間で、シリコンのエピタキシャル膜を成長させた。また、原料ソースガスとしてはトリクロロシランガスを用い、また、ドーパントガスとしてジボランガス、キャリアガスとして水素ガスを用いた。
【0040】
得られたエピタキシャルシリコンウェーハに対して、はじめにシリコンウェーハに対して行った評価と同じ方法を用いて再度平坦度評価を実施し、エピタキシャル成長後の平坦度を評価した。得られたエピタキシャル成長後の平坦度から、エピタキシャル成長前の平坦度を差し引き、エピタキシャル膜厚形状分布を取得した。
【0041】
そして、8等分したそれぞれの領域において、周方向で平均化したエピタキシャル膜厚形状分布を、ウェーハ中心位置に対して対称な方向に径方向で重ね合わせて評価した。そして、重ね合わせた2つのエピタキシャル膜厚形状分布において、最外周から2mmの位置において、高さ成分が低い方の高さを基準高さとし、重ね合わせたもう一方のエピタキシャル膜厚形状分布において、この基準高さと同じ高さとなる位置を検出し、偏心量を算出した。同様の実験をシリコンウェーハ40枚に対して実施し、CCDカメラを用いて評価した基板載置位置の偏心量を評価した結果と併せて比較した。XY平面におけるY方向の偏心量について比較した結果を図5に示す。得られた結果からは、相関係数R0.9194の関係が確認された。したがって、本発明に係る評価方法により、CCDカメラを用いた評価方法と比較しても十分に高精度にウェーハ載置位置の偏心量を簡便に評価できることを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、追加の設備や装置の改造を必要とせず、一般的なサセプタを用いた場合でも、エピタキシャル成長時の基板の載置位置の偏心を簡便に評価できる方法を提供することができる。また、載置位置の偏心量を評価して、その偏心量を修正することにより、基板上に均一な膜厚のエピタキシャル層を形成できるエピタキシャルウェーハの製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 サセプタ
11 座ぐり部
11L レッジ部
150 エピタキシャル成長装置
151 アッパーライナー
152 ローワーライナー
153 アッパードーム
154 ローワードーム
155 測定部
Cs サセプタの中心
Cw ウェーハの中心
W ウェーハ
図1
図2
図3
図4
図5