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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】給電システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/58 20200101AFI20250109BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20250109BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20250109BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20250109BHJP
【FI】
G01R31/58
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022017175
(22)【出願日】2022-02-07
(65)【公開番号】P2023114710
(43)【公開日】2023-08-18
【審査請求日】2024-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山本 正明
【審査官】越川 康弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-337156(JP,A)
【文献】特開平10-201006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/58
B60M 7/00
B60L 5/00
B60L 53/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の移動経路に沿って配置されて前記移動体に電力を供給する給電線と、前記給電線に電力を供給する第1電源と、前記給電線に沿って配置される感熱線と、を備えた給電システムであって、
前記感熱線は、予め設定された温度で軟化する絶縁体で覆われた一対の導線を備え、
前記一対の導線は、前記絶縁体が軟化すると互いに接触して短絡するように構成され、
前記一対の導線に電力を供給する第2電源と、
前記一対の導線が短絡したことを検出する短絡検出部と、
前記一対の導線が断線したことを検出する断線検出部と、
制御装置と、を備え、
前記一対の導線のそれぞれの一端部が接続される第1端子対と、
前記一対の導線のそれぞれの他端部が接続される第2端子対と、
前記第1端子対と前記第2電源とを接続する一対の第1接続配線と、
前記第2端子対の間を接続する第2接続配線と、を備え、
前記断線検出部は、前記一対の第1接続配線を流れる電流を監視するためのメイク接点の第1素子を備え、
前記第1素子は、前記一対の第1接続配線の一方に接続され、
前記短絡検出部は、前記一対の第1接続配線を流れる電流を監視するためのブレイク接点の第2素子と、前記第2接続配線を流れる電流を監視するためのメイク接点の第3素子と、を備え、
前記第2素子は、前記一対の第1接続配線の一方に、前記第1素子と直列に接続され、
前記第3素子は、前記第2接続配線に接続され、
前記第1素子は、前記一対の導線が正常な場合及び短絡した場合にオン状態、断線した場合にオフ状態となり、
前記第2素子は、前記一対の導線が正常な場合及び短絡した場合にオフ状態、断線した場合にオン状態となり、
前記第3素子は、前記一対の導線が正常な場合にオン状態、短絡した場合及び断線した場合にオフ状態となり、
前記制御装置は、
前記第1素子がオン状態、且つ前記第2素子がオフ状態、且つ前記第3素子がオン状態の場合に正常と判定し、
前記第1素子がオン状態、且つ前記第2素子がオフ状態、且つ前記第3素子がオフ状態の場合に前記一対の導線が短絡したことを検出したと判定し、
前記第1素子がオフ状態、且つ前記第2素子がオン状態、且つ前記第3素子がオフ状態の場合に前記一対の導線が断線したことを検出したと判定し、
前記制御装置は、前記一対の導線が短絡したことを検出した場合の短絡異常時制御と、前記一対の導線が断線したことを検出した場合の断線異常時制御とで、前記給電線への電力供給に関して異なる異常時制御を実行する給電システム。
【請求項2】
ユーザからの情報の入力の受け付けと、前記ユーザへの情報の出力とを行うユーザインタフェース部と、を備え、
前記制御装置は、
前記短絡検出部により前記一対の導線が短絡したことを検出した場合には、前記短絡異常時制御として、前記第1電源による前記給電線への電力供給を直ちに停止すると共に、前記ユーザインタフェース部により前記給電線の異常を示す給電異常情報を出力し、前記ユーザインタフェース部において前記給電線が正常であることを確認した旨の入力が行われるまで前記給電線への電力供給の停止を継続する、請求項1に記載の給電システム。
【請求項3】
ユーザからの情報の入力の受け付けと、前記ユーザへの情報の出力とを行うユーザインタフェース部と、を備え、
前記制御装置は、前記断線検出部により前記一対の導線が断線したことを検出した場合には、前記断線異常時制御として、
前記第1電源による前記給電線への電力供給を継続すると共に、前記ユーザインタフェース部により前記感熱線の状態確認を求める確認要求情報を出力する、又は、
前記第1電源による前記給電線への電力供給を一時停止した後、前記ユーザインタフェース部において前記給電線への電力供給の継続を許可する入力が行われたことに応じて前記第1電源による前記給電線への電力供給を再開する、請求項に記載の給電システム。
【請求項4】
移動体の移動経路に沿って配置されて前記移動体に電力を供給する給電線と、前記給電線に電力を供給する第1電源と、前記給電線に沿って配置される感熱線と、を備えた給電システムであって、
前記感熱線は、予め設定された温度で軟化する絶縁体で覆われた一対の導線を備え、
前記一対の導線は、前記絶縁体が軟化すると互いに接触して短絡するように構成され、
前記一対の導線に電力を供給する第2電源と、
前記一対の導線が短絡したことを検出する短絡検出部と、
前記一対の導線が断線したことを検出する断線検出部と、
制御装置と、を備え、
前記一対の導線のそれぞれの一端部が接続される第1端子対と、
前記一対の導線のそれぞれの他端部が接続される第2端子対と、
前記第1端子対と前記第2電源とを接続する一対の第1接続配線と、
前記第2端子対の間を接続する第2接続配線と、を備え、
前記断線検出部は、前記一対の第1接続配線を流れる電流を監視するためのメイク接点の第1素子を備え、
前記第1素子は、前記一対の第1接続配線の一方に接続され、
前記短絡検出部は、前記第2接続配線を流れる電流を監視するためのメイク接点の第2素子と、を備え、
前記第2素子は、前記第2接続配線に接続され、
前記第1素子は、前記一対の導線が正常な場合及び短絡した場合にオン状態、断線した場合にオフ状態となり、
前記第2素子は、前記一対の導線が正常な場合にオン状態、短絡した場合及び断線した場合にオフ状態となり、
前記制御装置は、
前記第1素子及び前記第2素子がオン状態の場合に正常と判定し、
前記第1素子がオン状態、且つ前記第2素子がオフ状態の場合に前記一対の導線が短絡したことを検出したと判定し、
前記第1素子及び前記第2素子がオフ状態の場合に前記一対の導線が断線したことを検出したと判定し、
前記制御装置は、前記一対の導線が短絡したことを検出した場合の短絡異常時制御と、前記一対の導線が断線したことを検出した場合の断線異常時制御とで、前記給電線への電力供給に関して異なる異常時制御を実行する給電システム。
【請求項5】
ユーザからの情報の入力の受け付けと、前記ユーザへの情報の出力とを行うユーザインタフェース部と、を備え、
前記制御装置は、
前記短絡検出部により前記一対の導線が短絡したことを検出した場合には、前記短絡異常時制御として、前記第1電源による前記給電線への電力供給を直ちに停止すると共に、前記ユーザインタフェース部により前記給電線の異常を示す給電異常情報を出力し、前記ユーザインタフェース部において前記給電線が正常であることを確認した旨の入力が行われるまで前記給電線への電力供給の停止を継続する、請求項に記載の給電システム。
【請求項6】
ユーザからの情報の入力の受け付けと、前記ユーザへの情報の出力とを行うユーザインタフェース部と、を備え、
前記制御装置は、前記断線検出部により前記一対の導線が断線したことを検出した場合には、前記断線異常時制御として、
前記第1電源による前記給電線への電力供給を継続すると共に、前記ユーザインタフェース部により前記感熱線の状態確認を求める確認要求情報を出力する、又は、
前記第1電源による前記給電線への電力供給を一時停止した後、前記ユーザインタフェース部において前記給電線への電力供給の継続を許可する入力が行われたことに応じて前記第1電源による前記給電線への電力供給を再開する、請求項に記載の給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の移動経路に沿って配置されて移動体に電力を供給する給電線と、この給電線に沿って配置される感熱線とを備えた給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2006-337156号公報には、移動体の移動経路に沿って配置されて移動体に電力を供給する給電線と、給電線に沿って配置される感熱線とを備えた給電システムが開示されている(以下、背景技術において括弧内の符号は参照する文献のもの。)。感熱線(20)は、それぞれが所定の温度以上で軟化する被覆材に覆われた一対の導体(20a,20b)を撚り合わせて構成されている。過電流が流れるなどにより、給電線(3)の温度が上昇した場合、被覆材が軟化して一対の導体(20a,20b)が短絡する。温度検出回路(1)は、このような短絡が発生したことを検出する。給電装置(4)は温度検出回路(1)の検出結果に基づいて、給電線(3)への電力供給を停止させる。また、温度検出回路(1)は、感熱線(20)の断線などによるオープン故障も検出可能に構成されている。感熱線(20)にオープン故障が生じると給電線(3)の温度の監視ができなくなるが、オープン故障の検出により、温度の監視ができなくなる状況が継続することが抑制される。
【0003】
この給電システムでは、感熱線(20)に対して直列にリレーが備えられている。感熱線(20)に通電されると、リレーのコイル(41)に電流が流れ、リレーの接点(42a,42b)が閉じる。一方、感熱線(20)に断線や短絡が生じると、リレーのコイル(41)を励磁させるために十分な電流が流れなくなり、リレーの接点(42a,42b)が開く。リレーの接点(42a,42b)は、それぞれ給電線(3)への電力供給を遮断する非常スイッチ、感熱線(20)を用いた温度検出回路(1)が正常に動作していることを報知する緑色のLEDに接続されている。非常スイッチにつながる接点(42b)が開くことで非常スイッチが作動し、給電線(3)への電力供給が遮断される。また、LEDにつながる接点(42a)が開くことで緑色のLEDが消灯し、温度検出経路(1)の動作状態が正常ではないことが報知される。即ち、この給電システムでは、感熱線(20)の短絡及び断線を検出して適切にこのようなフェールセーフ制御が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-337156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の給電システムでは、感熱線の短絡と断線とを区別することなく、感熱線における異常として検出している。異常が検出されて給電線への電力供給が遮断されると、移動体を用いた設備自体の稼働も停止することになる。例えば、感熱線に短絡が生じる場合には、給電装置の過負荷に起因する過電流や短絡等による給電線の温度上昇などが考えられ、給電設備に何らかの異常が生じている可能性が高い。従って、短絡が検出された場合には、速やかに電力供給を遮断することが好ましい。しかし、感熱線に断線(オープン故障)が生じる場合は、感熱線が断線している他、感熱線と温度検出回路とを接続するコネクタなどが外れているような場合もある。このような場合には、作業者による確認によってコネクタを嵌め直せば迅速に給電線の温度を監視できる状況に復帰させることができる。従って、断線が検出された場合には、給電線への電力供給を直ちに遮断しなくてもよいケースも少なくはない。
【0006】
そこで、移動体に電力を供給する給電線と、この給電線に沿って配置される感熱線とを備えた給電システムにおいて、給電線に沿って配置される感熱線の短絡と断線とを区別して検出し、その検出結果に応じたフェールセーフ制御を実行することができる技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた給電システムは、移動体の移動経路に沿って配置されて前記移動体に電力を供給する給電線と、前記給電線に電力を供給する第1電源と、前記給電線に沿って配置される感熱線と、を備えた給電システムであって、前記感熱線は、予め設定された温度で軟化する絶縁体で覆われた一対の導線を備え、前記一対の導線は、前記絶縁体が軟化すると互いに接触して短絡するように構成され、前記一対の導線に電力を供給する第2電源と、
前記一対の導線が短絡したことを検出する短絡検出部と、前記一対の導線が断線したことを検出する断線検出部と、制御装置と、を備え、
前記一対の導線のそれぞれの一端部が接続される第1端子対と、
前記一対の導線のそれぞれの他端部が接続される第2端子対と、
前記第1端子対と前記第2電源とを接続する一対の第1接続配線と、
前記第2端子対の間を接続する第2接続配線と、を備え、
前記断線検出部は、前記一対の第1接続配線を流れる電流を監視するためのメイク接点の第1素子を備え、
前記第1素子は、前記一対の第1接続配線の一方に接続され、
前記短絡検出部は、前記一対の第1接続配線を流れる電流を監視するためのブレイク接点の第2素子と、前記第2接続配線を流れる電流を監視するためのブレイク接点の第3素子と、を備え、
前記第2素子は、前記一対の第1接続配線の一方に、前記第1素子と直列に接続され、
前記第3素子は、前記第2接続配線に接続され、
前記第1素子は、前記一対の導線が正常な場合及び短絡した場合にオン状態、断線した場合にオフ状態となり、
前記第2素子は、前記一対の導線が正常な場合及び短絡した場合にオフ状態、断線した場合にオン状態となり、
前記第3素子は、前記一対の導線が正常な場合にオン状態、短絡した場合及び断線した場合にオフ状態となり、
前記制御装置は、
前記第1素子がオン状態、且つ前記第2素子がオフ状態、且つ前記第3素子がオン状態の場合に正常と判定し、
前記第1素子がオン状態、且つ前記第2素子がオフ状態、且つ前記第3素子がオフ状態の場合に前記一対の導線が短絡したことを検出したと判定し、
前記第1素子がオフ状態、且つ前記第2素子がオン状態、且つ前記第3素子がオフ状態の場合に前記一対の導線が断線したことを検出したと判定し、
前記制御装置は、前記一対の導線が短絡したことを検出した場合の短絡異常時制御、前記一対の導線が断線したことを検出した場合の断線異常時制御とで、前記給電線への電力供給に関して異なる異常時制御を実行する。
また、上記に鑑みた給電システムは、移動体の移動経路に沿って配置されて前記移動体に電力を供給する給電線と、前記給電線に電力を供給する第1電源と、前記給電線に沿って配置される感熱線と、を備えた給電システムであって、前記感熱線は、予め設定された温度で軟化する絶縁体で覆われた一対の導線を備え、前記一対の導線は、前記絶縁体が軟化すると互いに接触して短絡するように構成され、前記一対の導線に電力を供給する第2電源と、前記一対の導線が短絡したことを検出する短絡検出部と、前記一対の導線が断線したことを検出する断線検出部と、制御装置と、を備え、
前記一対の導線のそれぞれの一端部が接続される第1端子対と、
前記一対の導線のそれぞれの他端部が接続される第2端子対と、
前記第1端子対と前記第2電源とを接続する一対の第1接続配線と、
前記第2端子対の間を接続する第2接続配線と、を備え、
前記断線検出部は、前記一対の第1接続配線を流れる電流を監視するためのメイク接点の第1素子を備え、
前記第1素子は、前記一対の第1接続配線の一方に接続され、
前記短絡検出部は、前記第2接続配線を流れる電流を監視するためのメイク接点の第2素子と、を備え、
前記第2素子は、前記第2接続配線に接続され、
前記第1素子は、前記一対の導線が正常な場合及び短絡した場合にオン状態、断線した場合にオフ状態となり、
前記第2素子は、前記一対の導線が正常な場合にオン状態、短絡した場合及び断線した場合にオフ状態となり、
前記制御装置は、
前記第1素子及び前記第2素子がオン状態の場合に正常と判定し、
前記第1素子がオン状態、且つ前記第2素子がオフ状態の場合に前記一対の導線が短絡したことを検出したと判定し、
前記第1素子及び前記第2素子がオフ状態の場合に前記一対の導線が断線したことを検出したと判定し、
前記制御装置は、前記一対の導線が短絡したことを検出した場合の短絡異常時制御と、前記一対の導線が断線したことを検出した場合の断線異常時制御とで、前記給電線への電力供給に関して異なる異常時制御を実行する。
【0008】
本構成によれば、給電線が異常に発熱したために一対の導線が短絡したことと、一対の導線が断線したこととを区別して検出することができる。そして、その検出結果に基づいて、短絡か断線かに応じて異なる異常時制御を実行することができる。従って、本構成によれば、給電線に沿って配置される感熱線の短絡と断線とを区別して検出し、その検出結果に応じたフェールセーフ制御を実行することができる。
【0009】
給電システムのさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】給電システムを備えた物品搬送設備の構成を模式的に示す図
図2】移動体の正面図
図3】給電システムの第1の例を示す模式的な回路ブロック図
図4】給電システムの第2の例を示す模式的な回路ブロック図
図5】給電システムの第3の例を示す模式的な回路ブロック図
図6】給電システムの第4の例を示す模式的な回路ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、物品搬送設備において物品搬送車に電力を供給する形態を例として、給電システムの実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2に示すように、物品搬送設備200における物品搬送車である移動体50は、走行経路である移動経路51に沿って配置された走行レール52上を走行する。図1に示すように、給電システム100は、移動体50の移動経路51に沿って配置されて移動体50に電力を供給する給電線8と、給電線8に電力を供給する第1電源80と、給電線8に沿って配置される感熱線3とを備えている。
【0012】
図2に示すように、例えば移動体50は、天井から吊り下げ支持されて配置された一対の走行レール52に案内されて移動経路51に沿って走行する走行部59と、走行レール52の下方に位置して走行部59に吊り下げ支持された搬送車本体53と、移動経路51に沿って配設された給電線8から非接触で駆動用電力を受電する受電装置40とを備えている。搬送車本体53には、搬送車本体53に昇降自在に備えられて物品を吊り下げ状態で支持する物品支持部(不図示)が備えられている。移動体50による搬送対象の物品は、例えば、半導体基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)や、ディスプレイの材料となるガラス基板等である。
【0013】
走行部59には、図2に示すように、電動式の駆動モータ54にて回転駆動される一対の走行輪55が備えられている。走行輪55は、走行レール52のそれぞれの上面にて形成される走行面を転動する。また、走行部59には、上下方向に沿う軸心周り(上下軸心周り)で自由回転する一対の案内輪56が、一対の走行レール52における内側面に当接する状態で備えられている。また、走行部59は、走行用の駆動モータ54やその駆動回路等を備えて構成されており、移動体50を走行レール52に沿って走行させる。搬送車本体53には、物品支持部を昇降させるアクチュエータ、物品を把持する把持部を駆動するアクチュエータ等、及び、それらの駆動回路等が備えられている。
【0014】
これらの駆動モータ54や、種々のアクチュエータ、これらを駆動する駆動回路等への電力は、給電線8から非接触で受電装置40に供給される。受電装置40を介して移動体50に駆動用電力を供給する給電線8は、本実施形態では、受電装置40に対して水平面に沿うと共に移動経路51に直交する経路幅方向の両側に配置されている。
【0015】
受電装置40は、本実施形態では、HID(High Efficiency Inductive Power Distribution Technology)と称されるワイヤレス給電技術を用いて、移動体50に駆動用電力を供給する。具体的には、誘導線である給電線8に高周波電流を流し、給電線8の周囲に磁界を発生させる。受電装置40は、ピックアップコイル41や磁性体コアを備えて構成されており、ピックアップコイル41は磁界からの電磁誘導によって誘起される。誘起された交流の電力は、全波整流回路などの整流回路や、平滑コンデンサ等を備えた受電回路(不図示)により直流に変換され、アクチュエータや駆動回路に供給される。
【0016】
尚、本明細書では、移動体50としていわゆる天井搬送車である物品搬送車を例示したが、当然ながら移動体50は地上を走行する物品搬送車であってもよい。移動体50は、移動経路51に沿って配置された給電線8から電力を供給されて動作するものであれば、どのような形態であってもよい。勿論、移動体50は物品搬送車に限るものではない。
【0017】
図1及び図2に示すように、感熱線3は、予め設定された温度で軟化する絶縁体2で覆われた一対の導線1を備えている。1本の導線1は、導体により形成された芯線1cが絶縁体2で被覆された被覆導体線として構成されている。そして、第1導線1aと第2導線1bとの2本の導線1を捻っていわゆるツイストペアとした撚り線をさらに被覆材3dによって被覆することによって一対の導線1を備えた感熱線3が形成されている。図3から図5に示すように、給電システム100は、第2電源10を備えており、感熱線3の一端側における第1導線1aの一方の端部及び第2導線1bの一方の端部は、この第2電源10のそれぞれ正極端子P及び負極端子Nに接続されている。また、感熱線3の他端側における第1導線1aの他方の端部及び第2導線1bの他方の端部は互いに接続されている。
【0018】
尚、物品搬送設備200の規模が大きい場合などでは、当然ながら給電システム100の規模も大きくなり、給電線8の長さも長くなる。このため、給電線8に沿って配置される感熱線3の長さも長くなる。従って、第1導線1a及び第2導線1bは、それぞれ一本の導線1によって形成されるとは限らず、不図示の中継器を介して連結されて電気的に接続された複数の導線1によって形成される場合がある。中継器と導線1とは例えば不図示のコネクタを介して接続されている。このように、第1導線1a及び第2導線1bがそれぞれ複数の導線1によって形成される場合であっても、接続された後は、一本の第1導線1a及び一本の第2導線1bとみなす。
【0019】
撚り線として構成された一対の導線1は、絶縁体2が軟化すると導体により形成された芯線1c同士が互いに接触して短絡するように構成されている。尚、絶縁体2が軟化しても一対の導線1を備えた感熱線3は被覆材3dによって被覆されているため、芯線1cが外部に露出することは抑制されている。給電線8も、導体により形成された給電線本体8c(芯線)と、絶縁体により形成されて給電線本体8cを覆う被覆8dとを備えている。感熱線3は、給電線8に近傍、好ましくは給電線8に密着する状態で、給電線8に沿って配置されている。給電線8の温度が上昇すると、上述したように絶縁体2が軟化し、芯線1c同士が絶縁されていない状態で接触し、いわゆる短絡した状態となる。給電システム100は、短絡検出部4を備えており、第2電源10が感熱線3に通電している状態で、この短絡が発生したことを検出することによって、給電線8の異常(温度上昇)を検出することができる。
【0020】
また、給電システム100は、断線検出部5も備えている。給電線8は、第2電源10が感熱線3に通電している状態で、感熱線3に電流が流れていないことを検出することによって、感熱線3がオープン状態であること、即ち断線が生じていることを検出することができる。尚、断線とは、第1導線1a及び第2導線1bの何れかの芯線1cが切れていること(完全に切れている場合に限らず、切れかかっていてインピーダンスが非常に高くなっている状態も含む)、第1導線1aと第2導線1bとの接続が切れていること、感熱線3と第2電源10とを接続するコネクタ(図3から図5を参照して後述する第1端子対11、第2端子対12)における電気的接続が切れていること、第1導線1a及び第2導線1bを延長するために導線1同士を連結するコネクタにおける電気的接続が切れていること、などを含む。
【0021】
第2電源10と、短絡検出部4と、断線検出部5とは、本実施形態では、感熱制御基板30上に実装されている。また、本実施形態では、感熱制御基板30に、第2電源10の電圧が予め設定された判定電圧以下となったことを検出する電源異常検出部6を備えている形態を例示している。電源異常検出部6を備えることにより、給電システム100は、感熱線3に短絡や断線などが生じていなくても、感熱線3に適切に通電ができなくなっている状態を検出することができる。尚、給電システム100は、電源異常検出部6を備えることなく、短絡検出部4と断線検出部5とのみを備えて構成されていてもよい。
【0022】
給電システム100は、制御装置7を備えており、制御装置7は、短絡検出部4、断線検出部5、電源異常検出部6による検出結果に基づいて、給電線8への電力供給に関して異常時制御を実行する。また、本実施形態では、給電システム100は、さらに作業者(ユーザ)からの情報の入力の受け付けと、作業者への情報の出力とを行うユーザインタフェース部9を備えている。制御装置7は、異常時制御として、当該異常時制御のきっかけとなった短絡検出部4、断線検出部5、電源異常検出部6による検出結果に基づいて、作業者へ情報を報知する。尚、給電システム100が、ユーザインタフェース部9を備えていない構成を妨げるものではない。
【0023】
本実施形態の給電システム100は、少なくとも短絡検出部4及び断線検出部5の検出結果に基づいて、異なる異常時制御を実行する。即ち、制御装置7は、短絡検出部4により一対の導線1が短絡したことを検出した場合と、断線検出部5により一対の導線1が断線したことを検出した場合とで、給電線8への電力供給に関して異なる異常時制御を実行する。
【0024】
例えば、感熱線3の短絡と断線とを区別することなく、感熱線3における異常として検出される場合には、感熱線3の異常が検出されると、給電線8への電力供給が遮断されることになる。感熱線3に短絡が生じている場合には、第1電源80の過負荷に起因する過電流や給電線8を含む給電回路系統に短絡等が生じて給電線8の温度が上昇していることなどが考えられるため、速やかに給電線8への電力供給を遮断することが好ましい。しかし、感熱線3に断線(オープン故障)が生じる場合は、導線1が断線している他、導線1と感熱制御基板30とを接続するコネクタにおける接続不良や、導線1同士を連結するコネクタにおける接続不良が生じている場合もある。このような場合には、作業者(ユーザ)による確認によってコネクタ等を嵌め直せば、接続不良が改善され、迅速に給電線8の温度を監視できる状況に復帰させることができる。従って、断線が検出された場合には、給電線8への電力供給を直ちに遮断しなくてもよいケースも少なくはない。本実施形態の給電システム100では、短絡が検出された場合と、断線が検出された場合とで、異なる異常時制御が実行可能であるため、感熱線3における異常が検出された場合に一律に給電線8への電力供給を遮断して、移動体50を用いた設備自体の稼働を停止させてしまうことを抑制することができる。
【0025】
例えば、制御装置7は、短絡検出部4により一対の導線1が短絡したことを検出した場合と、断線検出部5により一対の導線1が断線したことを検出した場合とで、下記のように異なる異常時制御を実行する。制御装置7は、短絡検出部4により一対の導線1が短絡したことを検出した場合には、異常時制御(短絡異常時制御)として、第1電源80による給電線8への電力供給を直ちに停止すると共に、ユーザインタフェース部9により給電線8の異常を示す給電異常情報を出力し、ユーザインタフェース部9において給電線8が正常であることを確認した旨の入力が行われるまで給電線8への電力供給の停止を継続する。また、制御装置7は、断線検出部5により一対の導線1が断線したことを検出した場合には、異常時制御(断線異常時制御)として、第1電源80による給電線8への電力供給を継続すると共に、ユーザインタフェース部9により感熱線3の状態確認を求める確認要求情報を出力する。
【0026】
尚、第1電源80による給電線8への電力供給の継続には、第1電源80による給電線8への電力供給を一時停止した後、ユーザインタフェース部9において給電線8への電力供給の継続を許可する入力が行われたことに応じて第1電源80による給電線8への電力供給を再開することを含む。当然ながら、第1電源80による給電線8への電力供給の継続は、第1電源80による給電線8への電力供給を一時停止することなく電力供給を継続することに限られていてもよい。
【0027】
尚、ユーザインタフェース部9を備えていない場合には、例えば、制御装置7は、異常時制御(短絡異常時制御)として、第1電源80による給電線8への電力供給を直ちに停止し、異常時制御(断線異常時制御)として、第1電源80による給電線8への電力供給を継続する形態であってもよい。この場合も、第1電源80による給電線8への電力供給の停止によって移動体50が停止するため、作業者は給電線8の状況を確認することになる。そして、給電線8が正常である場合には、作業者によるマニュアル操作等によって、給電線8への電力供給を再開させることができる。また、物品搬送設備200や給電システム100の稼働状態が記録され、当該記録が定期的に作業者により確認されている場合も多い。この場合には、記録に基づき、断線が検出されていることを作業者が発見して感熱線3の確認を行うことができる。
【0028】
また、給電システム100が電源異常検出部6を備えている場合には、制御装置7は、さらに、上述した短絡異常時制御及び断線異常時制御とは異なる異常時制御(電源異常時制御)を実行すると好適である。即ち、制御装置7は、電源異常検出部6により第2電源10の電圧が判定電圧以下となったことを検出した場合には、給電線8への電力供給に関して、短絡検出部4により一対の導線1が短絡したことを検出した場合、及び、断線検出部5により一対の導線1が断線したことを検出した場合とは異なる異常時制御を実行すると好適である。
【0029】
例えば、制御装置7は、電源異常検出部6により第2電源10の電圧が判定電圧以下となったことを検出した場合には、第1電源80による給電線8への電力供給を直ちに停止すると共に、ユーザインタフェース部9により第2電源10の異常を示す第2電源異常情報を出力し、ユーザインタフェース部9において第2電源10が正常であることを確認した旨の入力が行われるまで給電線8への電力供給の停止を継続する。
【0030】
尚、ユーザインタフェース部9を備えていない場合には、例えば、制御装置7は、異常時制御(電源異常時制御)として、短絡異常時制御と同様に、第1電源80による給電線8への電力供給を直ちに停止する形態であってもよい。つまり、制御装置7は、短絡異常時制御及び断線異常時制御とは異なる異常時制御ではなく、短絡異常時制御と同じ異常時制御を電源異常時制御として実行してもよい。この場合も、第1電源80による給電線8への電力供給の停止によって移動体50が停止するため、作業者は給電線8及び第2電源10の状況を確認することになる。そして、給電線8及び第2電源10が正常である場合には、作業者によるマニュアル操作等によって、給電線8への電力供給を再開させることができる。尚、この場合には、短絡と、電源異常とを区別して検出する必要はないので、電源異常検出部6と短絡検出部4とが独立して設けられておらず、共通して設けられていてもよい(例えば図4参照)。
【0031】
以下、具体的な回路構成を例示して説明する。図3の回路ブロック図は、給電システム100の第1の例(第1給電システム100A)を示している。図3に示すように、第1給電システム100Aは、断線検出部5に含まれて断線検出部5の中核となる第1素子S1と、短絡検出部4に含まれて短絡検出部4の中核となる第2素子S2及び第3素子S3と、電源異常検出部6に含まれて電源異常検出部6の中核となる第4素子S4と、間接的に断線検出部5に含まれて断線検出部5を補助する第5素子S5と、を備えている。本実施形態では、第1素子S1、第2素子S2、第3素子S3、第4素子S4、第5素子S5は、コイルと接点とを備えたメカニカルリレーによって構成されている。しかし、これらはソリッドステートリレー(SSR)やセレクタ、スイッチ等によって構成されていてもよい。本実施形態のように、メカニカルリレーを用いると、感熱線3に通電するための第2電源10以外の電源を備える必要がなく、回路規模の増大を抑制することができる。
【0032】
図3に示すように、第1素子S1、第2素子S2、第3素子S3、第4素子S4、第5素子S5は、感熱制御基板30に実装されている。感熱制御基板30には、第2電源10を構成する回路、例えばDC/DCコンバータ(直流コンバータ)も実装されており、さらに、第1端子対11、第2端子対12、第3端子対13、第4端子対14、第5端子対15、第6端子対16も備えられている。また、感熱制御基板30には、一対の第1接続配線21(正極側第1接続配線21a、負極側第1接続配線21b)、1本の第2接続配線22、1本の分岐線23、1本の電源監視配線24が形成されている。
【0033】
第1端子対11及び第2端子対12は、感熱線3を構成する一対の導線1が接続される端子対である。第1端子対11のそれぞれの端子には、一対の導線1のそれぞれが接続されると共に、一対の第1接続配線21のそれぞれが接続されている。また、第2端子対12のそれぞれの端子の間は、感熱制御基板30上において第2接続配線22によって接続されている。具体的には、第2電源10の正極端子Pと第1端子対11の正極側第1端子11aとが一対の第1接続配線21の正極側第1接続配線21aと接続され、第2電源10の負極端子Nと第1端子対11の負極側第1端子11bとが一対の第1接続配線21の負極側第1接続配線21bと接続されている。第1端子対11の正極側第1端子11a及び第2端子対12の正極側第2端子12aには、感熱線3の第1導線1aが接続され、第1端子対11の負極側第1端子11b及び第2端子対12の負極側第2端子12bには、感熱線3の第2導線1bが接続されている。
【0034】
即ち、給電システム100は、感熱線3の一方の端部である感熱線第1端部3aにおいて一対の導線1のそれぞれの一端部が接続される第1端子対11と、感熱線3の他方の端部である感熱線第2端部3bにおいて一対の導線1のそれぞれの他端部が接続される第2端子対12と、第1端子対11と第2電源10とを接続する一対の第1接続配線21と、第2端子対12の間を接続する第2接続配線22とを備えている。感熱線3と第2電源10とは、第2電源10の正極端子P、正極側第1接続配線21a、正極側第1端子11a、第1導線1a、正極側第2端子12a、第2接続配線22、負極側第2端子12b、第2導線1b、負極側第1端子11b、負極側第1接続配線21b、負極端子Nの順に接続されて閉回路を形成している。
【0035】
第3端子対13は、第2電源10へ電力を供給する端子対である。第2電源10は、例えば100~200[V]の商用電源から直流電源を生成する不図示のAC/DCコンバータ(交流直流コンバータ)から、第3端子対13を介して電力を供給される。そして、第2電源10は、このAC/DCコンバータから供給される電圧(例えば24~48[V])を例えば12~15[V]に降圧して感熱線3に供給している。第3端子対13は、AC/DCコンバータと第2電源10とを接続する端子対である。
【0036】
第4端子対14は、短絡信号(SHORT)を制御装置7に出力する端子対である。制御装置7は、マイクロコンピュータなどのプロセッサを中核として構成されており、当該マイクロコンピュータの少なくとも1つのポート(入力ポート)に第4端子対14の一方の端子が接続されている。第4端子対14の他方の端子には、制御装置7における正極電圧(例えば5[V]や3.3[V])ライン、或いは当該正極電圧を出力するマイクロコンピュータの別のポート(出力ポート)が接続されている。第4端子対14が導通しているとき、上述した入力ポートには、制御装置7における正極電圧が入力され、マイクロコンピュータは、短絡信号がON状態であると判定し、短絡に関して感熱線3が正常であると判定する。即ち、第4端子対14が導通しているとき、短絡信号はON状態となり、感熱線3が正常であることを示している。一方、第4端子対14が導通していないとき、短絡信号はOFF状態となり、感熱線3に異常が生じている(一対の導線1が短絡している)ことを示している。
【0037】
尚、「端子対が導通しているとき」とは、端子対を構成する2つの端子同士が電気的に接続されて導通していることをいう。同様に、「端子対が導通していないとき」は、端子対を構成する2つの端子同士が電気的に接続されておらず導通してしないことをいう。以下、第2端子対12、第5端子対15、第6端子対16等において「端子対が導通しているとき」、「端子対が導通していないとき」と称する場合も同様である。また、断線信号、電源異常信号についても、制御装置7と協働した信号の生成方法は短絡信号と同様であるから以下において詳細な説明は省略する。
【0038】
第5端子対15は、断線信号(OPEN)を制御装置7に出力する端子対である。第5端子対15が導通しているとき、断線信号はON状態となり、感熱線3が正常であることを示している。第5端子対15が導通していないとき、断線信号はOFF状態となり、感熱線3に異常が生じている(一対の導線1の少なくとも一方が断線している)ことを示している。
【0039】
第6端子対16は、電源異常信号(READY)を制御装置7に出力する端子対である。第6端子対16が導通しているとき、電源異常信号はON状態となり、第2電源10が感熱線3に電力を供給可能な状態(READY状態)であって正常に動作していることを示している。第6端子対16が導通していないとき、電源異常信号はOFF状態となり第2電源10に異常が生じて感熱線3に電力を十分に供給できない状態であることを示している。
【0040】
断線検出部5の中核となる第1素子S1は、一対の第1接続配線21を流れる電流を監視している。第1給電システム100Aでは、第1素子S1は、一対の第1接続配線21に並列接続された分岐線23に接続されている。メカニカルリレーで構成された本実施形態の第1素子S1は、分岐線23に対して直列にコイルが接続される形態で分岐線23に接続されている。第1素子S1の接点は、第5端子対15のそれぞれの端子間に直列に接続されている。第1素子S1の接点が閉じているとき、断線信号がON状態となり、第1素子S1の接点が開いているとき、断線信号がOFF状態となる。本実施形態では、第1素子S1は、a接点(メイク接点)を有するメカニカルリレーである。第1素子S1は、一対の第1接続配線21(分岐線23)に電流が流れ、接点を閉じるために十分な電流がコイルに流れている場合に接点が閉じ、感熱線3に断線等が生じて一対の第1接続配線21(分岐線23)に接点を閉じるために十分な電流が流れていない場合に接点が開く素子である。
【0041】
尚、以下の説明においては、単に「コイルに電流が流れている場合」と記載する場合があるが、接点の開閉条件について説明する場合は、特に断らない限り「接点を閉じるために十分な電流がコイルに流れている場合」を意味する。同様に、単に「コイルに電流が流れていない場合」と記載する場合があるが、接点の開閉条件について説明する場合は、特に断らない限り「接点を閉じるために十分な電流がコイルに流れていない場合」を意味する。
【0042】
尚、感熱線3を構成する一対の導線1の少なくとも一方に断線が生じた場合、第2電源10と感熱線3との間で閉回路を形成している第1接続配線21には電流が流れなくなるが、感熱制御基板30において第1接続配線21に並列接続されている分岐線23には電流が流れ続ける場合がある。第5素子S5は、感熱線3において断線が生じて第1接続配線21に電流が流れなくなった場合に、分岐線23に流れる電流を遮断するために備えられている。本実施形態においてa接点(メイク接点)を有するメカニカルリレーで構成された第5素子S5は、第1接続配線21(ここでは正極側第1接続配線21a)に対して直列にコイルが接続され、接点が分岐線23に対して直列に接続されている。第5素子S5は、一対の第1接続配線21に電流が流れている場合には接点が閉じるため、感熱線3において断線が生じていないときには第1接続配線21に並列接続された分岐線23に電流が流れる。一方、第5素子S5は一対の第1接続配線21に電流が流れていない場合には接点が開くため、感熱線3において断線が生じると、分岐線23は切断されて電流が流れなくなる。即ち、第5素子S5によって分岐線23に流れる電流が遮断される。分岐線23に電流が流れなくなることで、第1素子S1の接点が開くため、第5素子S5は断線検出部5を補助する素子であり、断線検出部5に含まれるということもできる。
【0043】
短絡検出部4の中核となる第2素子S2は一対の第1接続配線21を流れる電流を監視する素子であり、第3素子S3は第2接続配線22を流れる電流を監視する素子である。第1素子S1と同様に、第2素子S2も、一対の第1接続配線21に並列接続された分岐線23に接続されている。第3素子S3は、第2接続配線22に接続されている。a接点(メイク接点)を有するメカニカルリレーで構成された第3素子S3は、第2接続配線22に対して直列にコイルが接続され、接点が第4端子対14のそれぞれの端子間に直列に接続されている。後述する第2素子S2の挙動を無視すれば、第3素子S3の接点が閉じているとき、短絡信号がON状態となり、第3素子S3の接点が開いているとき、短絡信号がOFF状態となる。
【0044】
感熱線3において短絡が生じると、当該短絡した箇所において感熱線3を構成する一対の導線1が電気的に接続されるため、当該短絡した箇所よりも第2電源10から遠い側(即ち感熱線第2端部3bの側)の導線1、及び、感熱線第2端部3bの側で一対の導線1の間を電気的に接続する第2接続配線22には電流が流れなくなる。その結果、第3素子S3のコイルに電流が流れなくなり、接点が開き、短絡信号がOFF状態となる。但し、感熱線3に断線が生じた場合も、第2接続配線22には電流が流れなくなるため、第3素子S3だけで短絡信号のONとOFFとを切り替えることは好ましくない。第2素子S2は、短絡と断線とを判別可能な状態で短絡信号を出力可能とするために、第1接続配線21(ここでは分岐線23)に配置されている。
【0045】
第2素子S2は、本実施形態ではb接点(ブレイク接点)を有するメカニカルリレーであり、コイルに電流が流れている場合に接点が開き、コイルに電流が流れていない場合に接点が閉じる素子である。第2素子S2のコイルは、分岐線23に直列に接続され、第2素子S2の接点は、第4端子対14のそれぞれの端子間に直列に接続されている。上述したように、第3素子S3の接点も、第4端子対14のそれぞれの端子間に直列に接続されている。即ち、第4端子対14の2つの端子間には、第2素子S2の接点を介した経路と、第3素子S3の接点を介した経路との2つの経路が並列に形成されている。これらの2つの経路の内の少なくとも一方が閉回路を形成している場合、短絡信号はON状態となり、これらの2つの経路の双方が閉回路を形成していな場合、短絡信号はOFF状態となる。即ち、第2素子S2と第3素子S3とは第4端子対14に対してワイヤードオア接続されている。
【0046】
感熱線3が短絡しているとき、当該短絡箇所よりも第2電源10の側には電流が流れている。つまり、第1接続配線21、及び第1接続配線21に並列接続されている分岐線23には電流が流れている。このため、短絡の発生時には、b接点である第2素子S2の接点は開いている。ここで、第3素子S3の接点が開くと、第4端子対14のそれぞれの端子間を接続する2つの経路は双方とも開放状態となるので、短絡信号がOFF状態となる。一方、感熱線3が断線しているときは、上述したように、第1接続配線21にも、分岐線23にも電流は流れない。従って、b接点である第2素子S2の接点は閉じる。このとき、第2接続配線22にも電流が流れないため、第3素子S3の接点は開くが、第4端子対14は、第3素子S3の接点を介して接続されているため、短絡信号はON状態を維持できる。従って、短絡信号は、短絡と断線とを判別可能な状態で出力され、制御装置7は、短絡と断線とを切り分けて判別することができる。
【0047】
電源異常検出部6の中核となる第4素子S4は、第2電源10の正極端子Pと負極端子Nとを接続する電源監視配線24を流れる電流を監視する素子である。電源監視配線24は、感熱線3と並列に、感熱制御基板30上において第2電源10に接続されている。従って、電源監視配線24は、感熱線3の状態(短絡や断線)に拘わらず、第2電源10から電圧が出力されていれば電流が流れる配線である。本実施形態において第4素子S4は、a接点(メイク接点)を有するメカニカルリレーで構成されており、コイルは電源監視配線24に対して直列に接続されている。第4素子S4の接点は、第6端子対16のそれぞれの端子間に直列に接続されている。第4素子S4の接点が閉じているとき、電源異常信号がON状態となり、第4素子S4の接点が開いているとき、電源異常信号がOFF状態となる。
【0048】
第2電源10から出力される電圧が、判定電圧を超えている場合、電源監視配線24には接点を閉じるために十分な電流が流れる。一方、第2電源10から出力される電圧が、判定電圧以下の場合には、電源監視配線24に接点を閉じるために十分な電流が流れず、接点が開く。即ち、第2電源10から出力される電圧が判定電圧以下となると、第4素子S4の接点が開き、電源異常信号がOFF状態となる。
【0049】
以下に示す表1は、感熱線3が正常な場合、感熱線3が短絡している場合、感熱線3が断線している場合、第2電源10に異常がある場合(出力電圧が判定電圧以下の場合)における、第1素子S1、第2素子S2、第3素子S3、第4素子S4、第5素子S5の接点の開閉状態(開:OFF、閉:ONと表記する)と、短絡信号(SHORT)、断線信号(OPEN)、電源異常信号(READY)の状態とを示している。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示すように、一対の導線1が短絡した場合には、短絡信号のみがOFF状態となる。従って、制御装置7は、一対の導線1の少なくとも一方が断線した場合や第2電源10に異常が生じた場合と明確に区別して、一対の導線1が短絡したと判別を行うことができ、当該異常に応じた異常時制御(短絡異常時制御)を実行することができる。また、一対の導線1の少なくとも一方に断線が生じた場合には、断線信号のみがOFF状態となる。従って、制御装置7は、一対の導線1が短絡した場合や第2電源10に異常が生じた場合と明確に区別して、一対の導線1の少なくとも一方に断線が生じたと判別を行うことができ、当該異常に応じた異常時制御(断線異常時制御)を実行することができる。第2電源10に異常が生じた場合には、電源異常信号と断線信号とがOFF状態となる。この場合、少なくとも一対の導線1が短絡した状態でないことは明らかである。また、一対の導線1の少なくとも一方に断線が生じた場合には、断線信号のみがOFF状態となる。従って、制御装置7は、この場合には、一対の導線1が短絡した場合や一対の導線1の少なくとも一方に断線が生じた場合と明確に区別して、第2電源10に異常が生じたと判別することができ、当該異常に応じた異常時制御(電源異常時制御)を実行することができる。
【0052】
図4の回路ブロック図は、給電システム100の第2の例(第2給電システム100B)を示している。第1給電システム100Aと共通する事項については同一の符号を付しており、以下においては適宜説明を省略する。以下では、主に第1給電システム100Aと第2給電システム100Bとが相違する点について説明する。
【0053】
図3を参照して上述した第1給電システム100Aと第2給電システム100Bとは、第1給電システム100Aが第6端子対16を備えているのに対して、第2給電システム100Bが第6端子対16を備えていない点において異なっている。このため、第1給電システム100Aが異常信号として、短絡信号、断線信号、電源異常信号の3つを出力可能に構成されていたのに対して、第2給電システム100Bでは、電源異常信号(READY)は制御装置7に出力されていない。但し、第2給電システム100Bにおいても、第4素子S4は備えられており、電源異常信号に相当する信号は生成される。しかし、第2給電システム100Bでは、電源異常信号がOFF状態となる条件が成立した場合には短絡信号(SHORT)がOFF状態となるように構成されている。
【0054】
下記に示す表2は、第2給電システム100Bにおいて、感熱線3が正常な場合、感熱線3が短絡している場合、感熱線3が断線している場合、第2電源10に異常がある場合(出力電圧が判定電圧以下の場合)における、第1素子S1、第2素子S2、第3素子S3、第4素子S4、第5素子S5の接点の開閉状態(開:OFF、閉:ONと表記する)と、短絡信号(SHORT)、断線信号(OPEN)の状態とを示している。
【0055】
【表2】
【0056】
上述したように、制御装置7は、短絡検出部4により一対の導線1が短絡したことを検出した場合には、異常時制御(短絡異常時制御)として、第1電源80による給電線8への電力供給を直ちに停止すると共に、ユーザインタフェース部9により給電線8の異常を示す給電異常情報を出力し、ユーザインタフェース部9において給電線8が正常であることを確認した旨の入力が行われるまで給電線8への電力供給の停止を継続する。また、制御装置7は、電源異常検出部6により第2電源10の電圧が判定電圧以下となったことを検出した場合には、第1電源80による給電線8への電力供給を直ちに停止すると共に、ユーザインタフェース部9により第2電源10の異常を示す第2電源異常情報を出力し、ユーザインタフェース部9において第2電源10が正常であることを確認した旨の入力が行われるまで給電線8への電力供給の停止を継続する。
【0057】
つまり、感熱線3に短絡が生じた場合と第2電源10に異常が生じた場合とにおいて、実行される異常時制御は、ユーザインタフェース部9から出力される異常情報が、「給電異常情報」であるか「第2電源異常情報」であるかの違い、給電線8への電力供給の停止の継続が解除される条件が、「給電線8が正常であることの確認」であるか「第2電源10が正常であることの確認」であるかの違いがあるが、第1電源80による給電線8への電力供給を停止することについては共通している。ユーザインタフェース部9から出力される異常情報は、給電線8への給電ができない状態であるから、広義の「給電異常情報」であるということができる。また、確認については、給電線8が正常であり、第2電源10が正常であることの確認であるから、例えば「給電が正常に実施可能であることの確認」とすることができる。つまり、第2給電システム100Bにおいて短絡信号と電源異常信号とが共通化されていても、第1給電システム100Aと同様の異常時制御が実行可能である。
【0058】
例えば、既存の給電システム100において、短絡信号及び断線信号のみを受け付けるように制御装置7が構成されている場合(例えばプロセッサにおいて使用可能なポートの数や制御装置7のコネクタ等に制限がある場合)に、第2給電システム100Bを用いると、既存の感熱制御基板30を、第2給電システム100Bの感熱制御基板30に代えることができる。即ち、給電システム100に大きな変更を加える必要なく、第2電源10の異常も検出できる給電システム100を構築することができる。
【0059】
図5の回路ブロック図は、給電システム100の第3の例(第3給電システム100C)を示している。第1給電システム100Aと共通する事項については同一の符号を付しており、以下においては適宜説明を省略する。以下では、主に第1給電システム100Aと第3給電システム100Cとが相違する点について説明する。
【0060】
図3を参照して上述したように、第1給電システム100Aでは、一対の第1接続配線21に並列接続された分岐線23を備えており、第1素子S1及び第2素子S2が、分岐線23に対して直列に接続されている形態を示した。また、第1給電システム100Aでは、一対の第1接続配線21の一方(本実施形態では正極側第1接続配線21a)に、接点が分岐線23に直列に正続された第5素子S5のコイルが直列に接続されている形態を示した。これに対して第3給電システム100Cでは、そのような分岐線23は備えられておらず、第1素子S1及び第2素子S2が、一対の第1接続配線21の一方(ここでは正極側第1接続配線21a)に備えられている。また、第3給電システム100Cは、分岐線23がないため、第5素子S5も備えられていない。
【0061】
第1給電システム100A(第2給電システム100Bも同様)における分岐線23は、第2電源10と感熱線3とで構成される閉回路に多くの素子(ここではメカニカルリレー)が直列に接続されることによる負荷の増大(インピーダンスの増加)を抑制するために設けられている。負荷の増大は、感熱線3における電圧降下を伴い、断線検出等において誤検出を招き易くなるおそれもある。しかし、給電線8の延在距離が比較的短く、給電線8に沿って配置される感熱線3の延在距離も比較的短い場合などでは、感熱線3のインピーダンスも低くなるため、複数のメカニカルリレーを感熱線3に対して直列接続してもインピーダンスの増加が許容できる場合もある。第3給電システム100Cは、そのような場合に好適な構成である。
【0062】
下記に示す表3は、第3給電システム100Cにおいて、感熱線3が正常な場合、感熱線3が短絡している場合、感熱線3が断線している場合、第2電源10に異常がある場合(出力電圧が判定電圧以下の場合)における、第1素子S1、第2素子S2、第3素子S3、第4素子S4の接点の開閉状態(開:OFF、閉:ONと表記する)と、短絡信号(SHORT)、断線信号(OPEN)、電源異常信号(READY)の状態とを示している。
【0063】
【表3】
【0064】
表1と表3との比較により明らかなように、第5素子S5を備えていない場合も、第1給電システム100Aと同様に、制御装置7は、短絡信号と、断線信号と、電源異常信号とを明確に判別することができ、短絡、断線、電源異常のそれぞれの異常に応じた異常時制御を実行することができる。尚、図示等は省略するが、第2給電システム100Bにおいても、分岐線23及び第5素子S5を備えることなく給電システム100を構築することができることは自明である。
【0065】
以上、第1給電システム100A、第2給電システム100B、第3給電システム100Cについて説明したが、給電システム100は、電源異常信号(READY)による第2電源10の検出を行わない簡易型の感熱制御基板30を備えて構成されていてもよい。図6は、そのような簡易型の感熱制御基板30を備えた第4給電システム100Dを示している。第1給電システム100A、第2給電システム100B、第3給電システム100Cと共通する事項については同一の符号を付しており、以下においては適宜説明を省略する。
【0066】
第4給電システム100Dでは、短絡検出部4に含まれて短絡検出部4の中核となる第1素子S1と、断線検出部5に含まれて断線検出部5の中核となる第3素子S3とを備えている。ここでも、第1素子S1及び第3素子S3は、a接点(メイク接点)を有するメカニカルリレーである。第1給電システム100A、第2給電システム100B、第3給電システム100Cでは、第1素子S1は断線検出部5に含まれ、第3素子S3は短絡検出部4に含まれていたが、第4給電システム100Dでは、第1素子S1が短絡検出部4に含まれ、第3素子S3が断線検出部5に含まれている。
【0067】
下記に示す表4は、第4給電システム100Dにおいて、感熱線3が正常な場合、感熱線3が短絡している場合、感熱線3が断線している場合における、第1素子S1、第3素子S3の接点の開閉状態(開:OFF、閉:ONと表記する)と、短絡信号(SHORT)、断線信号(OPEN)の状態とを示している。
【0068】
【表4】
【0069】
表4に示すように、一対の導線1が短絡した場合には、断線信号のみがOFF状態となる。従って、制御装置7は、一対の導線1の少なくとも一方が断線した場合と明確に区別して、一対の導線1が短絡したと判別を行うことができ、当該異常に応じた異常時制御(短絡異常時制御)を実行することができる。また、一対の導線1の少なくとも一方に断線が生じた場合には、断線信号及び短絡信号がOFF状態となる。従って、制御装置7は、一対の導線1が短絡した場合と明確に区別して、一対の導線1の少なくとも一方に断線が生じたと判別を行うことができ、当該異常に応じた異常時制御(断線異常時制御)を実行することができる。
【0070】
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明した給電システムの概要について簡単に説明する。
【0071】
1つの好適な態様として、移動体の移動経路に沿って配置されて前記移動体に電力を供給する給電線と、前記給電線に電力を供給する第1電源と、前記給電線に沿って配置される感熱線と、を備えた給電システムは、前記感熱線は、予め設定された温度で軟化する絶縁体で覆われた一対の導線を備え、前記一対の導線は、前記絶縁体が軟化すると互いに接触して短絡するように構成され、前記一対の導線に電力を供給する第2電源と、前記一対の導線が短絡したことを検出する短絡検出部と、前記一対の導線が断線したことを検出する断線検出部と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記短絡検出部により前記一対の導線が短絡したことを検出した場合と、前記断線検出部により前記一対の導線が断線したことを検出した場合とで、前記給電線への電力供給に関して異なる異常時制御を実行する。
【0072】
本構成によれば、給電線が異常に発熱したために一対の導線が短絡したことと、一対の導線が断線したこととを区別して検出することができる。そして、その検出結果に基づいて、短絡か断線かに応じて異なる異常時制御を実行することができる。従って、本構成によれば、給電線に沿って配置される感熱線の短絡と断線とを区別して検出し、その検出結果に応じたフェールセーフ制御を実行することができる。
【0073】
また、給電システムは、ユーザからの情報の入力の受け付けと、前記ユーザへの情報の出力とを行うユーザインタフェース部と、をさらに備え、前記制御装置は、前記短絡検出部により前記一対の導線が短絡したことを検出した場合には、前記異常時制御として、前記第1電源による前記給電線への電力供給を直ちに停止すると共に、前記ユーザインタフェース部により前記給電線の異常を示す給電異常情報を出力し、前記ユーザインタフェース部において前記給電線が正常であることを確認した旨の入力が行われるまで前記給電線への電力供給の停止を継続し、前記断線検出部により前記一対の導線が断線したことを検出した場合には、前記異常時制御として、前記第1電源による前記給電線への電力供給を継続すると共に、前記ユーザインタフェース部により前記感熱線の状態確認を求める確認要求情報を出力すると好適である。
【0074】
この構成によれば、給電線が異常に発熱していることを一対の導線の短絡により検出した場合には、給電線への電力供給を直ちに停止し、給電線の正常が確認されるまで給電線への電力供給の停止を継続する。従って、給電線が発熱を続けることが抑制され、安全を確保することができる。一方、一対の導線における断線が検出された場合には、給電線には異常がない場合が多い。従って、給電線への電力供給を継続することにより、移動体の稼働を継続させることができる。その上で、感熱線の状態確認を求める確認要求情報を出力することにより、感熱線の状態確認や交換をユーザに行わせ、感熱線を正常な状態に復帰させることができる。従って、給電線の温度を監視できない状況が長時間に亘って継続することが抑制される。
【0075】
ここで、前記第1電源による前記給電線への電力供給の継続には、前記第1電源による前記給電線への電力供給を一時停止した後、前記ユーザインタフェース部において前記給電線への電力供給の継続を許可する入力が行われたことに応じて前記第1電源による前記給電線への電力供給を再開することを含むと好適である。
【0076】
この構成によれば、給電線への電力供給を一旦停止した後、ユーザの確認を条件として給電線への電力供給を再開するため、安全性をより高めることができる。また、給電線への電力供給を再開した後は、移動体の移動を継続することができると共に、一対の導線の状態確認や交換をユーザに行わせ、感熱線を正常な状態に速やかに復帰させることができる。
【0077】
また、給電システムは、前記第2電源の電圧が予め設定された判定電圧以下となったことを検出する電源異常検出部をさらに備え、前記制御装置は、前記電源異常検出部により前記第2電源の電圧が前記判定電圧以下となったことを検出した場合には、前記給電線への電力供給に関して、前記短絡検出部により前記一対の導線が短絡したことを検出した場合、及び、前記断線検出部により前記一対の導線が断線したことを検出した場合とは異なる異常時制御を実行すると好適である。
【0078】
本構成によれば、第2電源の電圧が低下したことを、一対の導線が短絡したこと、及び、一対の導線が断線したことを区別して検出することができる。従って、第2電源の電圧が低下したのか、一対の導線が短絡したのか、一対の導線が断線したのかに応じた異常時制御を実行することができる。
【0079】
また、給電システムは、ユーザからの情報の入力の受け付けと、前記ユーザへの情報の出力とを行うユーザインタフェース部と、をさらに備え、前記制御装置は、前記電源異常検出部により前記第2電源の電圧が前記判定電圧以下となったことを検出した場合には、前記第1電源による前記給電線への電力供給を直ちに停止すると共に、前記ユーザインタフェース部により前記第2電源の異常を示す第2電源異常情報を出力し、前記ユーザインタフェース部において前記第2電源が正常であることを確認した旨の入力が行われるまで前記給電線への電力供給の停止を継続すると好適である。
【0080】
第2電源の電圧が低下した場合には、一対の導線による給電線の異常発熱の検出ができない状態となる。本構成によれば、第2電源の電圧が低下したことを検出した場合には、給電線への電力供給を直ちに停止し、第2電源の正常が確認されるまで給電線への電力供給の停止を継続するため、安全を確保することができる。
【0081】
また、給電システムは、前記一対の導線のそれぞれの一端部が接続される第1端子対と、前記第1端子対と前記第2電源とを接続する一対の第1接続配線と、を備え、前記断線検出部は、前記一対の第1接続配線を流れる電流を監視するための第1素子を備え、前記第1素子は、前記一対の第1接続配線に並列接続された分岐線に接続されていると好適である。
【0082】
この構成によれば、第2電源から一対の第1接続配線を介して一対の導線に供給される電流を監視することで、一対の導線が断線して電流が流れなくなったことを適切に検出することができる。また、第1素子は、第1接続配線に並列接続された分岐線に接続されているため、第2電源から見た一対の導線に対する出力インピーダンスが第1素子により影響を受けることを回避できる。
【0083】
また、給電システムは、前記一対の導線のそれぞれの一端部が接続される第1端子対と、前記一対の導線のそれぞれの他端部が接続される第2端子対と、前記第1端子対と前記第2電源とを接続する一対の第1接続配線と、前記第2端子対の間を接続する第2接続配線と、を備え、前記短絡検出部は、前記一対の第1接続配線を流れる電流を監視するための第2素子と、前記第2接続配線を流れる電流を監視するための第3素子と、を備え、前記第2素子は、前記一対の第1接続配線に並列接続された分岐線に接続されていると好適である。
【0084】
この構成によれば、第2電源から一対の導線に供給される電流を第2素子により監視すると共に、一対の導線における第2電源が接続されている側とは反対側の端部における電流を第3素子により監視することにより、一対の導線が断線しているのではなく、短絡していることを適切に検出することができる。また、第2素子が第1接続配線に並列接続された分岐線に接続されているため、第2電源から見た一対の導線に対する出力インピーダンスが第2素子により影響を受けることを回避できる。
【符号の説明】
【0085】
1 :導線
2 :絶縁体
3 :感熱線
4 :短絡検出部
5 :断線検出部
6 :電源異常検出部
7 :制御装置
8 :給電線
9 :ユーザインタフェース部
10 :第2電源
11 :第1端子対
12 :第2端子対
21 :第1接続配線
22 :第2接続配線
23 :分岐線
50 :移動体
51 :移動経路
80 :第1電源
100 :給電システム
100A :第1給電システム(給電システム)
100B :第2給電システム(給電システム)
100C :第3給電システム(給電システム)
S1 :第1素子
S2 :第2素子
S3 :第3素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6