(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】鍵盤装置
(51)【国際特許分類】
G10H 1/34 20060101AFI20250109BHJP
G10B 3/12 20060101ALI20250109BHJP
G10C 3/12 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G10H1/34
G10B3/12 111
G10C3/12 150
(21)【出願番号】P 2022565005
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2020044525
(87)【国際公開番号】W WO2022113350
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大庭 聡斗
(72)【発明者】
【氏名】市来 俊介
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-222277(JP,A)
【文献】特開平11-073178(JP,A)
【文献】特開昭57-171393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/32-1/34
G10B 3/12
G10C 3/12,9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に長手を有する第1鍵と、
フレームに対して固定された取付部と、
前記第1鍵の回動支点側で前記第1鍵を前記フレームに固定
し、前記第1鍵の回動平面と直交する第2方向に長手を有する第1接続部と、
を有し、
前記取付部及び前記第1接続部の一方は、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向に突出した第1凸部及び第2凸部を備え、
前記第1凸部と前記第2凸部とは、前記第2方向において異なる位置に設けられ、
前記取付部及び前記第1接続部の他方は、前記第1方向
と前記第2方向
とを含む平面
内で前記第1凸部を挟む第1壁部及び前記第2凸部を挟む第2壁部を備え、
前記第1接続部
は、前記平面内で、前記第2方向と異なる方向に曲げられるように
、前記第1凸部及び第2凸部の側面が、前記
第1壁部及び前記第2壁部に押しつけられた状態で
、前記取付部に取り付けられ
ている鍵盤装置。
【請求項2】
前記第1方向に長手を有し、前記第2方向において前記第1鍵と並ぶ第2鍵をさらに有し、
前記第1接続部は、前記第1鍵及び前記第2鍵を連結して前記フレームに固定し、
前記第1接続部が前記取付部に取り付けられた状態と取り外された状態とで、前記第1鍵の先端と前記第2鍵の先端との距離が
異なる、請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項3】
前記第1接続部は、前記第1鍵に対して設けられた第1鍵位置矯正部を含み、
前記第1鍵位置矯正部が前記取付部によって押しつけられる方向は、前記第1接続部を前記取付部に取り付けることによって前記第1鍵の先端が移動する方向と異なる、請求項1又は2に記載の鍵盤装置。
【請求項4】
前記第1方向に長手を有し、前記第2方向において前記第1鍵と並ぶ第2鍵を有し、
前記第1接続部は、前記第2鍵に対して設けられた第2鍵位置矯正部をさらに含み、
前記第2鍵位置矯正部が前記取付部によって押しつけられる方向は、前記第1接続部を前記取付部に取り付けることによって前記第2鍵の先端が移動する方向と異なる、請求項3に記載の鍵盤装置。
【請求項5】
前記取付部の剛性は、前記
第1接続部の剛性よりも高い、請求項1乃至4のいずれか一に記載の鍵盤装置。
【請求項6】
前記取付部は、前記フレームに一体形成されている又は前記フレームと前記第1接続部との間に設けられた他の部材に一体形成されており、
前記第1接続部は、曲げ応力が生じた状態で前記取付部に取り付けられ
ている、請求項1乃至5のいずれか一に記載の鍵盤装置。
【請求項7】
前記第1方向に長手を有し、前記第2方向に並ぶ第3鍵及び第4鍵と、
前記第3鍵及び前記第4鍵の回動支点側で前記第3鍵及び前記第4鍵を連結して前記フレームに固定する第2接続部と、
をさらに有し、
前記第1接続部は前記第2接続部の上方に配置され、
前記取付部は前記第2接続部の上部に設けられ、
前記第1接続部は、曲げ応力が生じた状態で前記取付部に取り付けられ
ている、請求項1乃至5のいずれか一に記載の鍵盤装置。
【請求項8】
前記第1接続部が前記取付部に対して前記第1方向及び前記第2方向の少なくともいずれか一方に力を加えることで前記曲げ応力が生じる、請求項6又は7に記載の鍵盤装置。
【請求項9】
前記取付部及び前記第1接続部の他方は、第1凹部及び第2凹部を備え、
前記
第1凸部と前記
第1凹部とが嵌め合わせられ
、前記第2凸部と前記第2凹部とが嵌め合わせられることで、前記第1接続部が前記取付部に取り付けられ
ている、請求項1乃至8のいずれか一に記載の鍵盤装置。
【請求項10】
前記第1凸部と前記第2凸部とは連続している、請求項1乃至9のいずれか一に記載の鍵盤装置。
【請求項11】
前記第1凸部と前記第2凸部とは離隔している、請求項1乃至9のいずれか一に記載の鍵盤装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は鍵盤装置に関する。特に、本発明の一実施形態は鍵の取付部に鍵のスケール方向の位置を矯正する機構を備えた鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鍵盤装置は、並べて配置された複数の鍵を備えている。複数の鍵の配列精度は、楽器の美観に与える影響が大きい。そのため、設計からの製造誤差により鍵の形状が変形すると、楽器の美観が悪化する。そこで、鍵の形状に製造誤差が生じた場合であっても、鍵の位置を調整するための技術が開発されている(例えば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5206966号公報
【文献】特許第5489071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に示すような鍵盤装置の場合、鍵の製造誤差に応じて鍵盤装置毎に鍵の位置の調整をする必要がある。したがって、鍵の製造誤差のばらつきが小さく、全ての鍵が同じ方向に同じ量変形するような場合(つまり、鍵の形状が設計とは異なるが、毎回同じ形状である場合)であっても、全ての鍵盤装置について毎回同じ調整をする必要がある。
【0005】
本発明の一実施形態の目的の一つは、製造誤差によって鍵が設計の形から変形しても、楽器の美観への影響を低減する鍵盤装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態による鍵盤装置は、第1方向に長手を有する第1鍵と、フレームに対して固定された取付部と、前記第1鍵の回動支点側で前記第1鍵を前記フレームに固定する第1接続部と、を有し、前記第1方向及び前記第1鍵の回動平面と交差する第2方向を含む平面上における方向から、前記第1接続部が前記取付部によって曲げられるように押しつけられた状態で前記第1接続部が前記取付部に取り付けられることで、前記第2方向における前記第1鍵の先端の位置が決定する。
【0007】
前記第1方向に長手を有し、前記第2方向において前記第1鍵と並ぶ第2鍵をさらに有し、前記第1接続部は、前記第1鍵及び前記第2鍵を連結して前記フレームに固定し、前記平面上における方向から前記第1接続部が前記取付部によって曲げられるように押しつけられた状態で前記第1接続部が前記取付部に取り付けられることで、前記第1鍵の先端と前記第2鍵の先端との距離が変化してもよい。
【0008】
前記第1接続部は、前記第1鍵に対して設けられた第1鍵位置矯正部を含み、
前記第1鍵位置矯正部が前記取付部によって押しつけられる方向は、前記第1接続部を前記取付部に取り付けることによって前記第1鍵の先端が移動する方向と異なってもよい。
【0009】
前記第1方向に長手を有し、前記第2方向において前記第1鍵と並ぶ第2鍵を有し、前記第1接続部は、前記第2鍵に対して設けられた第2鍵位置矯正部をさらに含み、前記第2鍵位置矯正部が前記取付部によって押しつけられる方向は、前記第1接続部を前記取付部に取り付けることによって前記第2鍵の先端が移動する方向と異なってもよい。
【0010】
前記取付部の剛性は、前記接続部の剛性よりも高くてもよい。
【0011】
前記取付部は、前記フレームに一体形成されている又は前記フレームと前記第1接続部との間に設けられた他の部材に一体形成されており、前記第1接続部は、曲げ応力が生じた状態で前記取付部に取り付けられてもよい。
【0012】
前記第1方向に長手を有し、前記第2方向に並ぶ第3鍵及び第4鍵と、前記第3鍵及び前記第4鍵の回動支点側で前記第3鍵及び前記第4鍵を連結して前記フレームに固定する第2接続部と、をさらに有し、前記第1接続部は前記第2接続部の上方に配置され、前記取付部は前記第2接続部の上部に設けられ、前記第1接続部は、曲げ応力が生じた状態で前記取付部に取り付けられてもよい。
【0013】
前記第1接続部が前記取付部に対して前記第1方向及び前記第2方向の少なくともいずれか一方に力を加えることで前記曲げ応力が生じてもよい。
【0014】
前記第1接続部は凸部を有し前記取付部は凹部を有し、又は、前記第1接続部は凹部を有し前記取付部は凸部を有し、前記凸部と前記凹部とが嵌め合わせられることで、前記第1接続部が前記取付部に取り付けられてもよい。
【0015】
本発明の一実施形態による鍵盤装置は、第1方向に長手を有し、前記第1方向と交差する第2方向に並ぶ第1鍵及び第2鍵と、フレームに対して固定され、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向の段差を有する取付部と、前記第1方向及び前記第2方向を含む平面上における方向から前記段差に接して前記取付部に取り付けられ、前記第1鍵及び前記第2鍵の回動支点側で前記第1鍵及び前記第2鍵を連結して前記フレームに固定する第1接続部と、を有し、前記第1接続部を前記取付部から取り外した状態における前記第1鍵の長手方向は前記第2鍵の長手方向と非平行である。
【0016】
前記第1接続部は、前記第1鍵に対して設けられた第1鍵位置矯正部と、前記第2鍵に対して設けられた第2鍵位置矯正部とを含み、前記第1接続部を前記取付部から取り外した状態と前記第1接続部を前記取付部に取り付けた状態との間において、前記第2鍵の先端に対して記第1鍵の先端が変化する方向は、前記第2鍵位置矯正部に対して前記第1鍵位置矯正部が変化する方向と異なってもよい。
【0017】
前記取付部の剛性は、前記第1接続部の剛性よりも高くてもよい。
【0018】
前記取付部は、前記フレームに一体形成されている又は前記フレームと前記第1接続部との間に設けられた他の部材に一体形成されており、前記第1接続部を前記取付部から取り外した状態において、前記平面上の前記第1接続部の形状は前記平面上の前記取付部の形状と異なってもよい。
【0019】
前記第1方向に長手を有し、前記第2方向に並ぶ第3鍵及び第4鍵と、前記第3鍵及び前記第4鍵の回動支点側で前記第3鍵及び前記第4鍵を連結して前記フレームに固定する第2接続部と、をさらに有し、前記第1接続部は前記第2接続部の上方に配置され、前記取付部は前記第2接続部の上部に設けられ、前記第1接続部を前記取付部から取り外した状態において、前記平面上の前記第1接続部の形状は前記平面上の前記取付部の形状と異なってもよい。
【0020】
前記第1接続部は凸部を有し前記取付部は凹部を有し、又は、前記第1接続部は凹部を有し前記取付部は凸部を有し、前記凸部と前記凹部とが前記第1方向及び前記第2方向の少なくともいずれか一方に接するように嵌め合わせられることで、前記第1接続部が前記取付部に取り付けられてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、製造誤差によって鍵が設計の形から変形しても、楽器の美観への影響を低減する鍵盤装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態における鍵盤装置の構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態における音源装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態における筐体内部の構成を側面から見た場合の説明図である。
【
図4】本発明の一実施形態における黒鍵を下方から見た図、及び黒鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
【
図5】本発明の一実施形態における白鍵を下方から見た図、及び黒鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
【
図6】本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図である。
【
図7】本発明の一実施形態において、取付部に取り付けた状態の黒鍵を下方から見た図である。
【
図8】本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図である。
【
図9】本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の白鍵を下方から見た図である。
【
図10】本発明の一実施形態において、取付部に取り外した状態の黒鍵を下方から見た図、及び黒鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
【
図11】本発明の一実施形態において、取付部に取り付けた状態の黒鍵を下方から見た図である。
【
図12】本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の白鍵を下方から見た図である。
【
図13】本発明の一実施形態において、取付部に取り付けた状態の白鍵を下方から見た図である。
【
図14】本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図である。
【
図15】本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図、及び黒鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
【
図16】本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図、及び黒鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
【
図17】本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図、及び黒鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
【
図18】本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図、及び黒鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
【
図19】本発明の一実施形態において、取付部に取り付けた状態の黒鍵を下方から見た図である。
【
図20】本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図、及び黒鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
【
図21】本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図、及び黒鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
【
図22】本発明の一実施形態における白鍵及び白鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
【
図23】本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図、及び黒鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
【
図24】本発明の一実施形態において、取付部に取り付けた状態の黒鍵を下方から見た図である。
【
図25】本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図、及び黒鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態における鍵盤装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施する形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されない。本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号(数字の後にA、B等を付しただけの符号)が付されており、それらの繰り返しの説明は省略する場合がある。図面の寸法比率(各構成間の比率、縦横高さ方向の比率等)は説明の都合上実際の比率とは異なる場合、及び、構成の一部が図面から省略される場合がある。以下の説明において、各図面における上下方向に基づいて、「上」、「上方」、「上端」、「下」、「下方」、「下端」と表現する場合があるが、これらの上下方向は相対的な方向の関係を説明しているに過ぎず、上下方向が逆転してもよい。
【0024】
<第1実施形態>
[鍵盤装置の構成]
図1は、第1実施形態における鍵盤装置の構成を示す図である。鍵盤装置1は、ユーザ(演奏者)の押鍵に応じて発音する、例えば電子ピアノなどの電子鍵盤楽器である。鍵盤装置1は、外部の音源装置を制御するための制御データ(例えば、MIDI)を、押鍵に応じて出力する鍵盤型のコントローラであってもよい。この場合には、鍵盤装置1は、音源装置を有していなくてもよい。
【0025】
鍵盤装置1は、鍵盤アセンブリ10を備える。鍵盤アセンブリ10は、白鍵100w及び黒鍵100bを含む。白鍵100w及び黒鍵100bを区別する必要がない場合は、単に鍵100という。複数の白鍵100w及び黒鍵100bは並んで配列されている。鍵100の数は、N個であり、この例では88個である。これらの鍵100が配列された方向をスケール方向という。以下の説明において、符号(数字)の後に「w」が付された構成は、白鍵に対応する構成であることを意味している。符号(数字)の後に「b」が付された構成は、黒鍵に対応する構成であることを意味している。
【0026】
鍵盤アセンブリ10の一部は、筐体90の内部に存在している。鍵盤装置1を上方から見た場合において、鍵盤アセンブリ10のうち筐体90に覆われている部分を非外観部NVといい、筐体90から露出してユーザから視認できる部分を外観部PVという。すなわち、外観部PVは、鍵100の一部であって、ユーザによって演奏操作が可能な領域を示す。以下、鍵100のうち外観部PVによって露出されている部分を鍵本体部という場合がある。
【0027】
筐体90内部には、音源装置70及びスピーカ80が配置されている。音源装置70は、鍵100の押下に伴って音波形信号を生成する。スピーカ80は、音源装置70において生成された音波形信号を外部の空間に出力する。鍵盤装置1は、音量をコントロールするためのスライダ、音色を切り替えるためのスイッチ、様々な情報を表示するディスプレイなどを備えていてもよい。
【0028】
本明細書における説明において、上、下、左、右、手前及び奥などの方向は、演奏するときの演奏者から鍵盤装置1を見た場合の方向を示している。例えば、非外観部NVは、外観部PVよりも奥側に位置している、と表現することができる。鍵前端側(鍵前方側)、鍵後端側(鍵後方側)のように、鍵100を基準として方向を示す場合もある。この場合、鍵前端側は鍵100に対して演奏者から見た手前側を示す。鍵後端側は鍵100に対して演奏者から見た奥側を示す。この定義によれば、黒鍵100bのうち、黒鍵100bの鍵本体部の前端から後端までが、白鍵100wよりも上方に突出した部分である、と表現することができる。
【0029】
図2は、第1実施形態における音源装置の構成を示すブロック図である。音源装置70は、信号変換部710、音源部730及び出力部750を備える。センサ300は、各鍵100に対応して設けられ、鍵の操作を検出し、検出した内容に応じた信号を出力する。この例では、センサ300は、3段階の押鍵量に応じて信号を出力する。この信号の間隔に応じて押鍵速度が検出可能である。
【0030】
信号変換部710は、センサ300(88個の鍵100に対応したセンサ300-1、300-2、・・・、300-88)の出力信号を取得し、各鍵100における操作状態に応じた操作信号を生成して出力する。この例では、操作信号はMIDI形式の信号である。押鍵操作に応じて、信号変換部710はノートオンを出力する。このとき、88個の鍵100のいずれが操作されたかを示すキーナンバ及び押鍵速度に対応するベロシティが、ノートオンに対応付けて出力される。一方、離鍵操作に応じて、信号変換部710はキーナンバとノートオフとを対応付けて出力する。信号変換部710には、ペダル等の他の操作に応じた信号が入力され、操作信号に反映されてもよい。
【0031】
音源部730は、信号変換部710から出力された操作信号に基づいて、音波形信号を生成する。出力部750は、音源部730によって生成された音波形信号を出力する。この音波形信号は、例えば、スピーカ80又は音波形信号出力端子などに出力される。
【0032】
[鍵盤アセンブリの構成]
図3は、第1実施形態における筐体内部の構成を側面から見た場合の説明図である。
図3に示すように、筐体90の内部において、鍵盤アセンブリ10及びスピーカ80が配置されている。スピーカ80は、鍵盤アセンブリ10の奥側に配置されている。このスピーカ80は、押鍵に応じた音を筐体90の上方及び下方に向けて出力するように配置されている。下方に出力される音は、筐体90の下面側から外部に進む。一方、上方に出力される音は筐体90の内部から鍵盤アセンブリ10の内部の空間を通過して、外観部PVにおける鍵100の隣接間の隙間又は鍵100と筐体90との隙間から外部に進む。
【0033】
鍵盤アセンブリ10の構成について、
図3を用いて説明する。鍵盤アセンブリ10は、上述した鍵100及びセンサ300の他にも、ハンマアセンブリ200、フレーム500、接続部800、及び取付部900を含む。鍵盤アセンブリ10は、ほとんどの構成が射出成形などによって製造された樹脂製の構造体である。フレーム500は筐体90に固定されている。取付部900はフレーム500に固定されている。接続部800は、取付部900に取り付けられ、鍵100をフレーム500に対して回動可能に接続する。接続部800及び取付部900の詳細な構成は後述する。鍵100は鍵本体部110及び鍵支持部120を含む。鍵本体部110は鍵支持部120を介して接続部800に接続されている。鍵支持部120は板状の部材である。鍵支持部120の一部は、板厚方向に相対的に薄く、可撓性を有している。当該可撓性によって鍵支持部120が曲がることで、鍵100がフレーム500に対して回動する。
【0034】
白鍵100wは、前端鍵ガイド150wを備える。前端鍵ガイド150wは、フレーム500の前端フレームガイド510を覆った状態で摺動可能に接触している。前端鍵ガイド150wは、その上部と下部のスケール方向の両側において、前端フレームガイド510と接触している。一方、黒鍵100bには、前端鍵ガイド150wに相当する部材は設けられていない。
【0035】
ハンマアセンブリ200は、フレーム500に対して回動可能に取り付けられている。ハンマアセンブリ200の前端部210は、鍵100におけるハンマ支持部130の内部空間において、概ね前後方向に摺動可能にハンマ支持部130と接触する。この摺動部分、すなわち前端部210とハンマ支持部130とが接触する部分は、外観部PV(鍵本体部110の後端よりも前方)における鍵100の下方に位置する。
【0036】
ハンマアセンブリ200は、ハンマアセンブリ200の回動軸よりも奥側に金属製の錘部230を備えている。通常時(押鍵していないとき)には、錘部230が下側ストッパ410に載置された状態であり、ハンマアセンブリ200の前端部210が、鍵100を上方に押し挙げている。押鍵されると、錘部230が上方に移動し、上側ストッパ430に衝突する。この錘部230によって、ハンマアセンブリ200は押鍵に対する加重を与える。下側ストッパ410及び上側ストッパ430は、緩衝材等(不織布、弾性体等)で形成されている。
【0037】
鍵本体部110の下方には、フレーム500にセンサ300が取り付けられている。押鍵により鍵本体部110の下面側でセンサ300が押しつぶされると、センサ300は検出信号を出力する。センサ300は、上述したように、各鍵100に対応して設けられている。
【0038】
[鍵100及び取付部900の構成]
図4及び
図5を用いて、鍵100、接続部800、及び取付部900の基本的な構成を説明し、
図6以降で本発明の一実施形態を説明する。つまり、
図4及び
図5の例には本発明に係る構成は反映されていない。鍵100、接続部800、及び取付部900はいずれも樹脂である
【0039】
図4は、本発明の一実施形態における黒鍵100bを下方から見た図、及び黒鍵を取り付ける取付部900bを上方から見た図である。
図4は、黒鍵100bが取付部900bから取り外された状態を示す。黒鍵100bは、D1方向に長手を有しており、D2方向に並んでいる。なお、D2方向は、黒鍵100bの回動平面と交差する方向ということができる。黒鍵100bは、鍵本体部110b及び鍵支持部120bを有する。黒鍵100bは、接続部800bに接続されている。具体的には、鍵本体部110bは鍵支持部120bを介して接続部800bに接続されている。鍵本体部110b、鍵支持部120b、及び接続部800bは一体形成されている。鍵本体部110bはD1方向に延びており、演奏者から見える黒鍵100bの主要部分を含む。鍵支持部120bの内部に空隙部121bが設けられている。換言すると、鍵支持部120bは、D2方向に複数の箇所で鍵本体部110bを接続部800bに接続する。
図4の例では、鍵支持部120bは、D2方向において鍵本体部110bの外側で接続部800bに接続されている。
【0040】
鍵本体部110b、鍵支持部120b、及び接続部800bが一体形成されていなくてもよい。例えば、鍵支持部120bと接続部800bとが別個に形成され、接続部材等によって接続されていてもよい。鍵本体部110b、鍵支持部120b、及び接続部800bが樹脂でなくてもよい。例えば、これらの少なくとも一部が木製、金属製、又はセラミックス製であってもよい。
【0041】
接続部800bには複数の黒鍵100bが連結されている。
図4の例では、1オクターブ中の5個の黒鍵100b(100b-1~100b-5)が接続部800に連結されている。つまり、接続部800bは、複数の黒鍵100bを連結してフレーム500に固定する。接続部800bの下面には凹部810bが設けられている。つまり、接続部800bは、D1方向及びD2方向に直交するD3方向に段差を有している。凹部810bはD2方向に延びている。
【0042】
取付部900bは、フレーム500に対して固定されている。取付部900bの上面には凸部910bが設けられている。つまり、取付部900bはD3方向に段差を有している。凸部910bはD2方向に延びている。
【0043】
取付部900bはフレーム500の一部であってもよく、フレーム500に取り付けられた他の部材であってもよい。取付部900bは、フレーム500と一体形成されていてもよく、フレーム500と接続部800bとの間に設けられた他の部材(例えば、後述する白鍵100wの接続部800w)に一体形成されていてもよい。詳細は後述するが、取付部900bは、フレーム500に設けられたレールに対して取り付けられた白鍵100wの接続部800wの上面側に設けられていてもよい。
【0044】
接続部800bの凹部810bと取付部900bの凸部910bとが対面した状態で凹部810bと凸部910bとを嵌め合わせる(嵌合する)ことで、接続部800bが取付部900bに取り付けられる。換言すると、接続部800bのD3方向の段差が、D1方向及びD2方向を含む平面上における方向から取付部900bのD3方向の段差に接することで、接続部800bが取付部900bに取り付けられる。取付部900bはフレーム500に対して固定され上方を向いている。したがって、接続部800bは取付部900bの上方から取付部900bに取り付けられる。接続部800bは、黒鍵100bの回動支点側で黒鍵100bをフレーム500に固定する。
【0045】
図5は、本発明の一実施形態における白鍵100wを下方から見た図、及び白鍵を取り付ける取付部900wを上方から見た図である。
図5は、白鍵100wが取付部900wから取り外された状態を示す。白鍵100wの構成は黒鍵100bの構成と類似しているが、以下の点で黒鍵100bと相違する。白鍵100wの接続部800wの上部に凸部820wが設けられている。白鍵100wの鍵本体部110wの形状は黒鍵100bの鍵本体部110bの形状と異なる。1オクターブ中の7個の白鍵100wのうち奇数番目の4個の白鍵100w(100w-1、100w-3、100w-5、100w-7)だけが接続部800wに連結されている。上記以外の点について、白鍵100wは黒鍵100bと同じ構成を有する。
【0046】
詳細な説明は省略するが、1オクターブ中の7個の白鍵100wのうち偶数番目の3個の白鍵100w(100w-2、100w-4、100w-6)は、
図5に示した白鍵100wとは別に準備され、
図5に示す白鍵100wの接続部800wに設けられた凹部810w又は凸部820wに嵌合する。
【0047】
図4では、黒鍵100bは取付部900bに取り付けられる構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、
図5に示す白鍵100wの接続部800wに設けられた凸部820wの上方から、
図4に示す黒鍵100bの接続部800bに設けられた凹部810bが嵌合することで、黒鍵100bが白鍵100wの上に取り付けられてもよい。この場合、白鍵100wの凸部820wを含む接続部800wが取付部900bとして機能する。
【0048】
図6は、本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図である。
図6には、接続部800bの部分拡大図が示されている。
図6に示すように、D2方向の端部において、接続部800bの凹部810bは第1嵌合領域811b、第2嵌合領域813b、第1凹領域815b、及び第2凹領域817bに区分される。
【0049】
第1嵌合領域811bと第2嵌合領域813bとは、D1方向に異なる位置に設けられている。具体的には、D1方向において、第2嵌合領域813bの中央(中心線814b)の位置は、第1嵌合領域811bの中央(中心線812b)の位置よりも鍵本体部110bに近い(D1方向の反対側である)。換言すると、第1嵌合領域811bの下側(D1方向の反対側)の側壁と第2嵌合領域813bの上側(D1方向側)の側壁とのD1方向における距離は、凸部910bのD1方向の幅より小さい。第1嵌合領域811b及び第2嵌合領域813bの凹部810bは、いずれも取付部900b(
図4参照)の凸部910bに嵌合する。
【0050】
第1凹領域815b及び第2凹領域817bは、第1嵌合領域811bと第2嵌合領域813bとの間に設けられている。第1凹領域815b及び第2凹領域817bの凹部810bは、平面視において互いに逆方向に凹んだ形状を有している。第1凹領域815b及び第2凹領域817bにおける凹部810bのD1方向の幅W2は、第1嵌合領域811bにおける凹部810bのD1方向の幅W1及び第2嵌合領域813bにおける凹部810bのD1方向の幅W3の各々より大きい。第1凹領域815b及び第2凹領域817bにおける凹部810bのD2方向の長さL2は、鍵支持部120b-1の内部に設けられた空隙部121b-1のD2方向の長さL1よりも大きい。
【0051】
図6に示すように、接続部800bが取付部900bから取り外された状態で、鍵本体部110b-1は鍵本体部110b-2に近づくように歪んで(傾斜して)いる。同様に、鍵本体部110b-5は鍵本体部110b-4に近づくように歪んで(傾斜して)いる。鍵本体部110b-1の先端と鍵本体部110b-2の先端とのD2方向における距離はh1である。鍵本体部110b-4の先端と鍵本体部110b-5の先端とのD2方向における距離はh2である。一方で、鍵本体部110b-2~110b-4は互いに略平行である。上記のように、設計上では、
図4に示すように鍵本体部110b-1~110b-5が平行であっても、樹脂の製造上の問題で
図6に示すように一部が歪んで(傾斜して)しまう場合がある。このような歪みは再現性良く出現する。したがって、同じ形状の鍵では同じ歪みが生じる傾向がある。
【0052】
図7は、本発明の一実施形態において、取付部に取り付けた状態の黒鍵を下方から見た図である。説明の便宜上、
図7において取付部900bは省略されている。
図7において、接続部800bが取り付けられた取付部900bのうち凸部910bが点線で示されている。本実施形態では、D1方向における取付部900bの剛性は接続部800bの剛性よりも十分に高い。したがって、接続部800bを取付部900bに取り付けた場合に、取付部900bは変形せずに接続部800bが変形する。その結果、
図7に示すように、第1凹領域815b及び第2凹領域817bにおいて接続部800bはD1方向に湾曲し、第2嵌合領域813bの位置がD1方向に移動する。D1方向において、第2嵌合領域813bの中央の位置が、第1嵌合領域811bの中央の位置と一致することで、接続部800bが取付部900bに嵌合する。
【0053】
第2嵌合領域813bがD1方向に移動するように接続部800bが湾曲することで、鍵本体部110bはD2方向に移動する。鍵本体部110bのD2方向の移動によって、鍵本体部110b-1の先端と鍵本体部110b-2の先端とのD2方向における距離はh1からh3に変化する。その結果、鍵本体部110b-1と鍵本体部110b-2とが略平行になる。上記と同様に、鍵本体部110b-4の先端と鍵本体部110b-5の先端とのD2方向における距離は、h2からh4に変化する。その結果、鍵本体部110b-4と鍵本体部110b-5とが略平行になる。なお、黒鍵100b-2~100b-4に対応する領域の接続部800bでは、直線状の第1嵌合領域811bが連続している。したがって、鍵本体部110b-2~110b-4の各々の先端の位置は、接続部800bを取付部900bに取り付ける前後で変化しない。
【0054】
図7の状態を換言すると、D1方向及びD2方向を含む平面上における方向から接続部800bが取付部900bによって押しつけられた状態で接続部800bが取付部900bに取り付けられる。接続部800bは取付部900bから押しつけられることで曲がる。その結果、D2方向における黒鍵100bの先端の位置が決定する。本実施形態では、上記のように接続部800bが取付部900bによって押しつけられることで、黒鍵100bの歪みが矯正され、その結果、歪みが発生していた黒鍵100b(100b-1)の先端と当該黒鍵100bに隣接する他の黒鍵100b(100b-2)の先端との距離が変化する。
図7の状態において、接続部800bは曲げ応力が生じた状態で取付部900bに取り付けられている。当該曲げ応力は、
図7に示すように、接続部800bが取付部900bからD1方向の力を受けることで生じる。
【0055】
上記のように、第1嵌合領域811b及び第2嵌合領域813bが設けられていることで、接続部800bを取付部900bに取り付けたときに黒鍵100bの位置が矯正されるので、第1嵌合領域811b及び第2嵌合領域813bを「位置矯正部」という場合がある。当該位置矯正部が取付部900bによって押しつけられる方向がD1方向である。一方、接続部800bが取付部900bに取り付けられることによって黒鍵100bの先端が移動する方向はD2方向である。つまり、上記の位置矯正部が取付部900bによって押しつけられる方向は、黒鍵100bの先端が移動する方向と異なる。位置矯正部は、歪みが発生する鍵に対応して設けられる。つまり、位置矯正部は、
図6に示すように複数であってもよく、1つであってもよい。
【0056】
上記の構成を換言すると、接続部800bを取付部900bから取り外した状態(
図6に示す状態)における黒鍵100b-1の先端と黒鍵100b-2の先端との距離は、接続部800bを取付部900bに取り付けた状態(
図7に示す状態)における黒鍵100b-1の先端と黒鍵100b-2の先端との距離と異なる。さらに換言すると、
図6に示す状態における接続部800bの平面視における形状は、
図7に示す状態における接続部800bの平面視における形状と異なる。
【0057】
凹部810bに第1凹領域815b及び第2凹領域817bが設けられていることで、これらの領域における接続部800bが湾曲したときに、凹部810bの内壁と凸部910bとが干渉することを回避することができる。さらに、第1凹領域815b及び第2凹領域817bが設けられていることで、これらの領域において接続部800bが湾曲しやすくなるため、鍵本体部110bのD2方向の位置の矯正が容易になり、接続部800bを取付部900bに取り付ける際の作業性も向上する。
【0058】
本実施形態では、D1方向における取付部900bの剛性が接続部800bの剛性よりも高い構成を例示したが、この構成に限定されない。取付部900bの剛性は、接続部800bの剛性と同じであってもよく、よりも低くてもよい。ただし、取付部900bは、接続部800bを取付部900bに取り付けたときに接続部800bの形状が変化する程度の剛性を有している。
【0059】
以上のように、本実施形態に係る鍵盤装置によると、製造誤差によって鍵が設計の形から変形しても、変形の傾向を考慮して位置矯正部を設けることで、鍵をフレームに取り付けるだけで、鍵先端部のスケール方向の位置を正しい位置に矯正することができる。その結果、鍵をフレームに取り付けた後の調整等の手間を要することなく楽器の美観を維持することができる。さらに、接続部800bは曲げ応力が生じた状態で取付部900bに取り付けられているため、接続部800bと取付部900bとの間に隙間等がなく、安定した状態で取り付けられる。本実施形態では、接続部800b以外の部材(鍵本体部110b及び鍵支持部120b)が製造誤差によって設計の形から変形した場合、例えば、鍵本体部110bが鍵支持部120bから延びる向きが設計の形から変形した場合に、その変化による鍵先端部のスケール方向の位置における正規の位置からのずれを矯正することができる。
【0060】
<第2実施形態>
図8は、本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図である。第2実施形態の接続部800bAは、平面視における凹部810bAの形状が第1実施形態の凹部810bの形状と相違する。以下の説明において、
図6の接続部800bと同様の特徴については説明を省略し、主に凹部810bと相違する点について説明する。
【0061】
図8に示すように、黒鍵100bA(100bA-1~100bA-5)の各々の鍵本体部110bA(110bA-1~110bA-5)は全て非平行である。鍵本体部110bA-3に対して、鍵本体部110bA-2はR1方向に傾いている。鍵本体部110bA-3に対して、鍵本体部110bA-1は鍵本体部110bA-2よりも大きくR1方向に傾いている。鍵本体部110bA-3に対して、鍵本体部110bA-4はR2方向に傾いている。鍵本体部110bA-3に対して、鍵本体部110bA-5は鍵本体部110bA-4よりも大きくR2方向に傾いている。接続部800bAに設けられた凹部810bAは、D2方向における接続部800bAの第1端801bAから第2端802bAにかけてD1方向に湾曲している。
【0062】
図8に示す接続部800bAを
図4に示す取付部900b(本実施形態では取付部900bAという)に取り付けると、黒鍵100bA-1、100bA-2、100bA-4、100bA-5に対応する位置に設けられた接続部800bAは取付部900bAによってD1方向に押しつけられるため、上記の黒鍵100bAはそれぞれ図中の矢印に示すようにD2方向又はD2方向の反対方向に移動する。その結果、
図8に示すような黒鍵100bAの歪みが矯正され、各々の鍵本体部110bA-1~110bA-5が略平行になる。
【0063】
凹部810bAの形状は、各黒鍵100bAの歪み方に応じて適宜矯正することができる。例えば、鍵本体部110bA-2~110bA-4が略平行であれば、これらの鍵に対応する領域の凹部810bAは、平面視においてD2方向に略直線状であってもよい。
【0064】
以上のように、本実施形態に係る鍵盤装置によると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
<第3実施形態>
図9は、本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の白鍵を下方から見た図である。
図9に示すように、白鍵100wB(100wB-1、100wB-3、100wB-5、100wB-7)の各々の鍵本体部110wBは全て非平行である。鍵本体部110wB-3に対して、鍵本体部110wB-1はR1方向に傾いている。鍵本体部110wB-3に対して、鍵本体部110wB-5はR2方向に傾いている。鍵本体部110wB-3に対して、鍵本体部110wB-7は鍵本体部110wB-5よりも大きくR2方向に傾いている。接続部800wBに設けられた凹部810wB及び凸部820wBは、平面視において、D2方向における接続部800wBの第1端801wBから第2端802wBにかけてD1方向に湾曲している。
【0066】
図9に示す接続部800wBを
図5に示す取付部900w(本実施形態では取付部900wBという)に取り付けると、白鍵100wB-1、100wB-5、100wB-7に対応する位置に設けられた接続部800wBは、取付部900wBによってD1方向に押しつけられるため、上記の白鍵100wBはそれぞれ図中の矢印に示すようにD2方向又はD2方向の反対方向に移動する。その結果、
図9に示すような白鍵100wBの歪みが矯正され、各々の鍵本体部110wB-1、110wB-3、110wB-5、110wB-7が略平行になる。
【0067】
平面視において、凸部820wBは凹部810wBと同じ形状であるので、接続部800wBを取付部900wBに取り付けることで、凹部810wBとともに凸部820wBも直線状になる。このように、接続部800wBを取付部900wBに取り付けることで直線状になった凸部820wBに対して、
図8に示す黒鍵100bAの接続部800bAを取り付けることができる。この場合、凸部820wBが取付部900bAの代わりとして機能する。上記の構造を換言すると、接続部800bAは接続部800wBの上方に配置され、取付部900bAの代わりとして機能する凸部820wBは接続部800wBの上部に設けられ、接続部800bAは曲げ応力が生じた状態で凸部820wBに取り付けられている。接続部800bAを凸部820wBから取り外した状態において、D1方向及びD2方向を含む平面上の接続部800bA(湾曲状)の形状は当該平面上の凸部820wB(直線状)の形状と異なる。
【0068】
以上のように、本実施形態に係る鍵盤装置によると、白鍵についても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。白鍵の場合、鍵前端にガイドが付いている場合があるが、そのような場合であっても鍵の回動中心側で鍵の向きを適正に矯正することができるため、当該ガイドと鍵前端とが摺動する際の摩擦力を小さくすることができる。その結果、鍵のスムーズな動作を実現することができる。
【0069】
<第4実施形態>
図10は、本発明の一実施形態において、取付部に取り外した状態の黒鍵を下方から見た図、及び黒鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
図11は、本発明の一実施形態において、取付部に取り付けた状態の黒鍵を下方から見た図である。説明の便宜上、
図11において取付部900bCは省略されている。
図10及び
図11に示す接続部800bC及び取付部900bCは、
図8に示す接続部800bA及び
図4に示す取付部900bと類似する。以下の説明において、接続部800bA及び取付部900bAと同様の特徴については説明を省略し、主にこれらと相違する点について説明する。
【0070】
図10に示すように、平面視における接続部800bCの凹部810bCの形状は直線状である。一方で、平面視における取付部900bCの凸部910bCの形状は、D2方向における取付部900bCの第1端901bCから第2端902bCにかけてD1方向に湾曲している。
【0071】
図11に示すように、接続部800bCを取付部900bCに取り付けると、黒鍵100bC-1、100bC-2、100bC-4、100bC-5に対応する位置に設けられた接続部800bCは取付部900bCによってD1方向に押しつけられるため、上記の黒鍵100bCはそれぞれ
図11の矢印に示すようにD2方向又はD2方向の反対方向に移動する。その結果、
図11に示すような黒鍵100bCの歪みが矯正され、各々の鍵本体部110bC-1~110bC-5が略平行になる。
【0072】
以上のように、本実施形態に係る鍵盤装置によると、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0073】
<第5実施形態>
図12は、本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の白鍵を下方から見た図である。
図13は、本発明の一実施形態において、取付部に取り付けた状態の白鍵を下方から見た図である。説明の便宜上、
図12及び
図13において取付部900bDは省略されている。
【0074】
図12に示すように、接続部800wDに設けられた凹部810wDは、
図9に示す凹部810wBと同様に、平面視において、D2方向における接続部800wDの第1端801wDから第2端802wDにかけてD1方向に湾曲している。一方、接続部800wDに設けられた凸部820wDは、凹部810wDとは異なり平面視において直線状である。
【0075】
図13に示すように、接続部800wDを
図5に示す取付部900w(本実施形態では取付部900wDという)に取り付けると、白鍵100wD-1、100wD-5、100wD-7に対応する位置に設けられた接続部800wDは、取付部900wDによってD1方向に押しつけられる。その結果、湾曲状(
図12)だった凹部810wDは直線状(
図13)に変化し、直線状(
図12)だった凸部820wDは湾曲状(
図13)に変化する。そして、上記の白鍵100wDはそれぞれ図中の矢印に示すようにD2方向又はD2方向の反対方向に移動する。その結果、
図12に示すような白鍵100wBの歪みが矯正され、
図13に示すように各々の鍵本体部110wD-1、110wD-3、110wD-5、110wD-7が略平行になる。
【0076】
以上のように、本実施形態に係る鍵盤装置によると、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0077】
<第6実施形態>
図14は、本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図である。
図14に示す接続部800bEは
図8に示す接続部800bAに類似している。以下の説明において、
図8の接続部800bAと同様の特徴については説明を省略し、主に接続部800bAと相違する点について説明する。
【0078】
図14に示すように、接続部800bEに設けられた凹部810bEには、平面視において、凹部810bEの側壁から内部に向かってD1方向又はD1方向の反対方向に突出する第1突出部830bE及び第2突出部840bEが設けられている。第1突出部830bE及び第2突出部840bEは対面する位置、つまりD2方向において同じ位置に設けられている。第1突出部830bE及び第2突出部840bEは、隣接する黒鍵100bEの間に設けられている。具体的には、第1突出部830bE及び第2突出部840bEは、隣接する鍵支持部120bEの間に設けられている。第1突出部830bEの先端及び第2突出部840bEの先端は、
図8に示す凹部810bAの平面視における形状(湾曲状)に沿った位置に存在している。したがって、接続部800bEを
図4に示す取付部900b(本実施形態では取付部900bEという)に取り付けると、接続部800bEは
図8に示す接続部800bAと同様の変化をする。
【0079】
D2方向において黒鍵100bE-1を挟んで隣接する第1突出部830bE(830bE-1、830bE-2)及び第2突出部840E(840bE-1、840bE-2)によって黒鍵100bE-1の向きが制御される。つまり、黒鍵100bEを挟むように隣接して設けられた第1突出部830bE及び第2突出部840bEの突出量によって、当該黒鍵100bEの向きを矯正することができる。
【0080】
第1突出部830bEと第2突出部840bEとは、必ずしも対で存在している必要はなく、一方の突出部が十分に長い場合は、他方の突出部が存在しなくてもよい。第1突出部830bE及び第2突出部840bEは対面する位置に設けられていなくてもよい。つまり、第1突出部830bE及び第2突出部840bEはD2方向において異なる位置に設けられていてよい。
【0081】
以上のように、本実施形態に係る鍵盤装置によると、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0082】
<第7実施形態>
図15は、本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図、及び黒鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
図15に示す接続部800bFは
図14に示す接続部800bEに類似している。以下の説明において、
図14の接続部800bEと同様の特徴については説明を省略し、主に接続部800bEと相違する点について説明する。
【0083】
図15に示すように、接続部800bFには嵌合部850bFを残すように凹部810bFが設けられている。換言すると、嵌合部850bFの周囲の凹部810bFを基準とすると、嵌合部850bFは凸部である。取付部900bFには、嵌合部850bFを嵌め込むための凹部920bFが設けられている。凹部920bFは直線状である。嵌合部850bFは、柱部851bF、第1突出部853bF、及び第2突出部855bFを有している。第1突出部853bF及び第2突出部855bFは、それぞれD2方向に同じ位置において柱部851bFから反対方向に突出している。第1突出部853bF及び第2突出部855bFは、各黒鍵100bFの間に設けられている。具体的には、第1突出部853bF及び第2突出部855bFは、隣接する鍵支持部120bFの間に設けられている。第1突出部853bFの先端及び第2突出部855bFの先端は、
図8に示す凹部810bAの平面視における形状(湾曲状)に沿った位置に存在している。したがって、接続部800bFを取付部900bFに取り付けると、接続部800bFは
図8に示す接続部800bA及び
図14に示す接続部800bEと同様の変化をする。
【0084】
図14に示す第1突出部830bE及び第2突出部840bEと同様に、D2方向において黒鍵100bF-1を挟んで隣接する第1突出部853bF及び第2突出部855bFによって黒鍵100bF-1の向きが制御される。つまり、黒鍵100bFを挟むように隣接して設けられた第1突出部853bF及び第2突出部855bFの突出量によって、当該黒鍵100bFの向きを矯正することができる。
【0085】
必ずしも第1突出部853bF及び第2突出部855bFの両方が設けられている必要はない。例えば、D1方向における柱部851bFの幅及び第1突出部853bFの長さの合計が、D1方向における凹部920bFの幅に達している場合は、第2突出部855bFは設けられていなくてもよい。また、凹部810bFが設けられておらず、接続部800bFの下面から嵌合部850bFが下方に突出していてもよい。第1突出部853bF及び第2突出部855bFは、それぞれD2方向に異なる位置において柱部851bFから突出していてもよい。
【0086】
以上のように、本実施形態に係る鍵盤装置によると、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0087】
<第8実施形態>
図16は、本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図、及び黒鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
図16に示す接続部800bGは
図15に示す接続部800bFに類似している。以下の説明において、
図15の接続部800bFと同様の特徴については説明を省略し、主に接続部800bFと相違する点について説明する。
【0088】
図15と同様に、
図16に示す接続部800bGには複数の嵌合部850bGを残すように凹部810bGが設けられている。ただし、複数の嵌合部850bGは、
図15の第1突出部853bF及び第2突出部855bFに対応する位置に離散的に設けられている。つまり、複数の嵌合部850bGの各々は、隣接する鍵支持部120bGの間に設けられている。複数の嵌合部850bGは、
図8に示す凹部810bAの平面視における形状(湾曲状)に沿った位置に存在している。したがって、接続部800bGを取付部900bGに取り付けると、接続部800bGは
図8に示す接続部800bA及び
図15に示す接続部800bGと同様の変化をする。
【0089】
図15に示す第1突出部853bF及び第2突出部855bFと同様に、黒鍵100bG-1の向きは、D2方向において黒鍵100bG-1を挟んで隣接する嵌合部850bGによって制御される。つまり、黒鍵100bGを挟むように隣接して設けられた嵌合部850bGの位置によって、当該黒鍵100bGの向きを矯正することができる。
【0090】
本実施形態では、嵌合部850bGの平面視における形状が円形である構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、嵌合部850bGは三角形又は四角形などの多角形であってもよく、楕円形又は任意の湾曲形状であってもよい。
【0091】
以上のように、本実施形態に係る鍵盤装置によると、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0092】
<第9実施形態>
図17は、本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図、及び黒鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
図17に示す接続部800bHは
図16に示す接続部800bGと同じである。
図17に示す取付部900bHは
図16に示す取付部900bGに類似している。以下の説明において、
図16の取付部900bGと同様の特徴については説明を省略し、主に取付部900bGと相違する点について説明する。
【0093】
図16と同様に、
図17に示す取付部900bHには複数の凹部920bHが設けられている。平面視において、凹部920bHの形状は嵌合部850bHの形状に対応している。つまり、凹部920bHの形状は、嵌合部850bHを凹部920bHに嵌め込むことが可能な形状である。複数の凹部920bHは、離散的に設けられており、D2方向に直線状に並んでいる。複数の凹部920bhの形状は
図16の凹部920bGの形状とは異なるが、両者は同様の機能を有する。
【0094】
本実施形態では、平面視において、凹部920bHの形状が嵌合部850bHの形状と同じである構成が例示されているが、この構成に限定されない。平面視において、凹部920bHの形状は嵌合部850bHの形状を包含していればよく、両者の形状が異なっていてもよい。
【0095】
以上のように、本実施形態に係る鍵盤装置によると、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0096】
<第10実施形態>
図18は、本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図、及び黒鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
図19は、本発明の一実施形態において、取付部に取り付けた状態の黒鍵を下方から見た図である。説明の便宜上、
図19において取付部900bJは省略されている。
図18に示す取付部900bJは
図17に示す取付部900bHと同じである。
図18に示す接続部800bJは
図17に示す接続部800bHに類似している。以下の説明において、
図17の接続部800bHと同様の特徴については説明を省略し、主に接続部800bHと相違する点について説明する。
【0097】
図18に示すように、複数の鍵本体部110bJはそれぞれランダムに異なる方向に傾斜している。
図18の例では、鍵本体部110bJ-3を基準として、鍵本体部110bJ-1はR2方向に傾いており、鍵本体部110bJ-2はR1方向に傾いており、鍵本体部110bJ-4はR2方向に傾いており、鍵本体部110bJ-5はR1方向に傾いている。複数の嵌合部850bJは、複数の鍵本体部110bJの各々の傾きに応じて設けられている。
【0098】
具体的には、基準に対してR2方向に傾いている鍵本体部110bJ-1の場合、鍵本体部110bJ-1のD2方向側に設けられた嵌合部850bJ-1は鍵本体部110bJ-1のD2方向の反対方向側に設けられた嵌合部850bJ-2よりD1方向側(奥側)に設けられている。一方、基準に対してR1方向に傾いている鍵本体部110bJ-5の場合、鍵本体部110bJ-5のD2方向の反対方向側に設けられた嵌合部850bJ-6は鍵本体部110bJ-5のD2方向側に設けられた嵌合部850bJ-5よりD1方向側(奥側)に設けられている。
【0099】
図19に示すように、接続部800bJを取付部900bJに取り付けると、各嵌合部850bJは
図19の矢印の向きに移動する。具体的には、嵌合部850bJ-1、850bJ-6はD1方向の反対方向に移動し、嵌合部850bJ-2、850bJ-5はD1方向に移動する。その結果、鍵本体部110bJ-1、110bJ-4はD2方向の反対方向に移動し、鍵本体部110bJ-2、110bJ-5はD2方向に移動する。その結果、各々の鍵本体部110bJ-1~110bJ-5が略平行になる。
【0100】
以上のように、本実施形態に係る鍵盤装置によると、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、上記のように、複数の嵌合部850bJの各々の位置によって、鍵本体部110bJを個別に矯正することができる。
【0101】
<第11実施形態>
図20は、本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図、及び黒鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
図20に示す接続部800bK及び取付部900bKは
図17に示す接続部800bH及び取付部900bHに類似している。以下の説明において、
図17の接続部800bH及び取付部900bHと同様の特徴については説明を省略し、主に接続部800bHと相違する点について説明する。
【0102】
図17と同様に、
図20に示す接続部800bKには複数の嵌合部850bKを残すように凹部810bKが設けられている。同様に、取付部900bKには複数の凹部920bK設けられている。
【0103】
平面視において、凹部920bKの形状は嵌合部850bKの形状に対応している。つまり、凹部920bKの形状は、嵌合部850bKを凹部920bKに嵌め込むことが可能な形状である。複数の凹部920bKはD2方向に並んで設けられており、複数の凹部920bKの各々はD1方向に長手を有している。また、複数の凹部920bKは互いに平行である。
【0104】
平面視において、嵌合部850bKは凹部920bKと同様に長手を有している。ただし、接続部800bKを取付部900bKから取り外した状態において、複数の嵌合部850bKの長手方向はそれぞれ異なる。具体的には、嵌合部850bK-3を基準として、嵌合部850bK-1、850bK-2はそれぞれR1’方向に傾いており、嵌合部850bK-4、850bK-5はそれぞれR2’方向に傾いている。R1’方向はR1方向と同じ回転方向である。R2’方向はR2方向と同じ回転方向である。
【0105】
接続部800bKを取付部900bKに取り付けると、嵌合部850bK-1、850bK-2はそれぞれD2方向の反対方向の力を受けて嵌合部850bK-3と平行になる。その結果、鍵本体部110bK-1、110bK-2の各々の先端はD2方向に移動し、鍵本体部110bK-3と平行になる。上記と同様に、嵌合部850bK-4、850bK-5はそれぞれD2方向の力を受けて嵌合部850bK-3と平行になる。その結果、鍵本体部110bK-4、110bK-5の各々の先端はD2方向の反対方向に移動し、鍵本体部110bK-3と平行になる。
【0106】
第1実施形態~第10実施形態(本実施形態よりも前の実施形態)では、接続部800bが取付部900bからD1方向の力を受けることで、鍵本体部110bのD2方向の位置が矯正されるが、本実施形態では、接続部800bKが取付部900bKからD2方向の力を受けることで鍵本体部110bKの先端のD2方向の位置が矯正される。ただし、本実施形態において、接続部800bKが取付部900bKから力を受ける方向は、鍵本体部110bKの先端が移動する方向とは異なる。つまり、接続部800bKは曲げ応力が生じた状態で取付部900bKに取り付けられているが、当該曲げ応力は、
図20に示すように、D2方向の力を受けることで生じる。
【0107】
以上のように、本実施形態に係る鍵盤装置によると、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0108】
<第12実施形態>
図21は、本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図、及び黒鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
図21に示す取付部900bLは
図20に示す取付部900bKと同じである。
図21に示す接続部800bLは
図20に示す接続部800bKに類似している。以下の説明において、
図20の接続部800bKと同様の特徴については説明を省略し、主に接続部800bKと相違する点について説明する。
【0109】
図20と同様に、
図21に示す接続部800bLには複数の嵌合部850bLが設けられている。
図21に示すように、1つの凹部920bLに対して複数の嵌合部850bLが設けられている。当該複数の嵌合部850bLは、
図20の嵌合部850bKの傾きと同じ向きに並んでいる。当該複数の嵌合部850bLの形状は
図20の嵌合部850bKの形状とは異なるが、両者は同様の機能を有する。
【0110】
以上のように、本実施形態に係る鍵盤装置によると、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0111】
<第13実施形態>
図22は、本発明の一実施形態における白鍵及び白鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
図22に示すように、複数の白鍵100wMは接続部140wMによって連結されている。接続部140wMはD2方向に直線状に延びている。複数の鍵本体部110wMはそれぞれ非平行である。具体的には、鍵本体部110wM-1、110wM-3はR1方向に傾いており、鍵本体部110wM-5、110wM-7はR2方向に傾いている。
【0112】
取付部900wMには凹部930wMが設けられている。凹部930wMには、平面視において、凹部930wMの側壁から内部に向かってD1方向又はD1方向の反対方向に突出する第1突出部940wM及び第2突出部950wMが設けられている。第1突出部940wM及び第2突出部950wMは対面する位置、つまりD2方向において同じ位置に設けられている。第1突出部940wM及び第2突出部950wMは、隣接する白鍵100wMの間に設けられている。第1突出部940wMの先端及び第2突出部950wMの先端は、
図10に示す凸部910bCの平面視における形状に沿った位置に存在している。したがって、接続部140wMを取付部900wMに取り付けると、接続部140wMは
図10に示す接続部800bCと同様の変化をする。その結果、各々の鍵本体部110bM-1~110bM-4が略平行になる。
【0113】
以上のように、本実施形態に係る鍵盤装置によると、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0114】
<第14実施形態>
図23は、本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図、及び黒鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
図23に示すように、黒鍵100bN-1には接続部800bN-1が設けられており、黒鍵100bN-2には接続部800bN-2が設けられている。
図24は、本発明の一実施形態において、取付部に取り付けた状態の黒鍵を下方から見た図である。説明の便宜上、
図24において取付部900bNは省略され、凸部910bNのみが点線で表示されている。
図23及び
図24に示された接続部800bN-1の構成は、
図6及び
図7に示された接続部800bのうち、黒鍵100b-1に対応する領域の接続部800bの部分の構成と同じ形状である。
図23及び
図24に示された接続部800bN-2の構成は、
図6及び
図7に示された接続部800bのうち、例えば黒鍵100b-2に対応する領域の接続部800bの部分の構成と同じ形状である。
図23及び
図24の構成において、
図6及び
図7の構成と同じ部分については、説明を省略する場合がある。
【0115】
図23に示すように、黒鍵100bN-2の鍵本体部110bN-2の長手方向は、凹部810bN-2の長手方向に対して直交している。一方、黒鍵100bN-1の鍵本体部110bN-1の長手方向は、凹部810bN-1の長手方向と直交する方向に対してR1方向に傾いている。鍵本体部110bN-2は、D2方向において、鍵支持部120bN-2のほぼ中央に接続されている。一方、鍵本体部110bN-1は、D2方向において、鍵支持部120bN-1の左側(D2方向の反対方向側)に接続されている。黒鍵100bN-2に接続された接続部800bN-2には凹部810bN-2が設けられている。黒鍵100bN-1に接続された接続部800bN-1には凹部810bN-1が設けられている。平面視において、凹部810bN-2の形状は、取付部900bNに設けられた凸部910bNの形状とほぼ同じである。一方、平面視において凹部810bN-1の形状は、凸部910bNの形状とは異なる。
【0116】
図23に示すように、D2方向において、接続部800bN-1の凹部810bN-1は第1嵌合領域811bN、第2嵌合領域813bN、第1凹領域815bN、及び第2凹領域817bNに区分される。D2方向において、第1嵌合領域811bNの長さは第2嵌合領域813bNの長さより大きい。ただし、D2方向において、第2嵌合領域813bNの長さが第1嵌合領域811bNの長さより大きくてもよい。
【0117】
第1嵌合領域811bNと第2嵌合領域813bNとは、D1方向に異なる位置に設けられている。具体的には、D1方向において、第2嵌合領域813bNの中央(中心線814bN)の位置は、第1嵌合領域811bNの中央(中心線812bN)の位置よりも鍵本体部110bN-1に近い。換言すると、鍵本体部110bN-1が傾いている側に設けられた第1嵌合領域811bNの中心線812bNは、その反対側に設けられた第2嵌合領域813bNの中心線814bNより鍵本体部110bN-1から離れている。
【0118】
図24に示すように、凹部810bN-1、810bN-2と凸部910bNとが嵌合することで、黒鍵100bN-1、100bN-2が取付部900bNに取り付けられる。凹部810bN-2の形状は凸部910bNの形状とほぼ同じなので、鍵本体部110bN-2の長手方向は凸部910bNの長手方向に対して直交する。一方、凹部810bN-1では、第2嵌合領域813bNの中心線814bNの位置が、第1嵌合領域811bNの中心線812bNの位置よりも鍵本体部110bN-1に近いため、黒鍵100bN-1はR2方向に傾いた状態で取付部900bNに取り付けられる。その結果、上記の鍵本体部110bN-1の傾きが矯正されて、
図24に示すように、鍵本体部110bN-1の長手方向は凸部910bNの長手方向に対して直交する方向に近づく。つまり、突出部860bNは、鍵本体部110bNの先端のD2方向における位置を矯正する機能を有する。
【0119】
<第15実施形態>
図25は、本発明の一実施形態において、取付部から取り外した状態の黒鍵を下方から見た図、及び黒鍵を取り付ける取付部を上方から見た図である。
図25に示すように、黒鍵100bP-1に設けられた接続部800bP-1の形状と黒鍵100bP-2に設けられた接続部800bP-2の形状は同じである。一方、
図23と同様に、黒鍵100bP-1の鍵本体部110bP-1の長手方向は、凹部810bP-1の長手方向と直交する方向に対してR1方向に傾いている。
【0120】
取付部900bPに設けられた凸部910bPは
図23の凸部910bNのような直線状ではなく、黒鍵100bP-1が取り付けられる矯正領域911bPでは凸部910bPがD2方向に対してR2’方向に傾いており、当該矯正領域911bP以外ではD2方向に延びている。この矯正領域911bPに黒鍵100bP-1を取り付けることで、鍵本体部110bP-1の傾きが矯正され、鍵本体部110bP-1の長手方向は凸部910bPの長手方向に対して直交する方向に近づく。つまり、矯正領域911bPの凸部910bPは、鍵本体部110bPの先端のD2方向における位置を矯正する機能を有する。
【0121】
以上のように、これらの実施形態に示すように、本発明に一実施形態は鍵単体に適用することもできる。
【0122】
上述した実施形態では、ハンマアセンブリを適用した鍵盤装置の例として電子ピアノを示した。一方、上記実施形態のハンマアセンブリは、アコースティックピアノ(グランドピアノやアップライトピアノなど)の回動機構に適用することもできる。例えば、アップライトピアノにおいて、回動部品と当該回動部品を回動自在に軸支する支持部とを有する回動機構に上記実施形態の開口機構を適用することができる。この場合、発音機構は、ハンマ、弦に対応する。上記実施形態の回動機構はピアノ以外の回動部品に適用することもできる。
【0123】
なお、本発明は上記の実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0124】
1:鍵盤装置、 10:鍵盤アセンブリ、 70:音源装置、 80:スピーカ、 90:筐体、 100:鍵、 100b:黒鍵、 100w:白鍵、 110:鍵本体部、 120:鍵支持部、 121b:空隙部、 130:ハンマ支持部、 140wM:接続部、 150w:前端鍵ガイド、 200:ハンマアセンブリ、 210:前端部、 230:錘部、 300:センサ、 410:下側ストッパ、 430:上側ストッパ、 500:フレーム、 510:前端フレームガイド、 710:信号変換部、 730:音源部、 750:出力部、 800:接続部、 801bA:第1端、 802bA:第2端、 810b:凹部、 811b:第1嵌合領域、 813b:第2嵌合領域、 815b:第1凹領域、 817b:第凹領域、 820w:凸部、 830bE:第1突出部、 840bE:第2突出部、 850bF:嵌合部、 851bF:柱部、 853bF:第1突出部、 855bF:第2突出部、 860bN:突出部、 900:取付部、 901bC:第1端、 902bC:第2端、 910b:凸部、 911bN:矯正領域、 920bF:凹部、 930wM:凹部、 940wM:第1突出部、 950wM:第2突出部