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特許7616265電柱劣化検出システム、電柱劣化検出装置、電柱劣化検出方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】電柱劣化検出システム、電柱劣化検出装置、電柱劣化検出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20250109BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20250109BHJP
   H02G 7/00 20060101ALI20250109BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20250109BHJP
   G01H 9/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H02G1/02
G02B6/42
H02G7/00
G01M99/00 Z
G01H9/00 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023069271
(22)【出願日】2023-04-20
(62)【分割の表示】P 2020540050の分割
【原出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2023099542
(43)【公開日】2023-07-13
【審査請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2018162042
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】依田 幸英
(72)【発明者】
【氏名】青野 義明
(72)【発明者】
【氏名】朝日 光司
【審査官】間宮 嘉誉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-96866(JP,A)
【文献】特開2007-183166(JP,A)
【文献】特開2013-72800(JP,A)
【文献】特表2014-502345(JP,A)
【文献】特開2018-74757(JP,A)
【文献】特開2003-65942(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0278150(US,A1)
【文献】門万寿男,ほか1名,光ファイバセンサによる構造物の長期連続モニタリング,応用力学論文集,日本,公益社団法人土木学会,2003年08月28日,Vol.6,p.1105-1112
【文献】成瀬央,光ファイバによる構造物のモニタリング,日本機械学会誌,日本,一般社団法人日本機械学会,2006年03月05日,Vol.109,No.1048,p.22-23
【文献】呉智深,ほか2名,都市インフラに関する構造ヘルスモニタリングの現状と展望-展望論文-,応用力学論文集,日本,公益社団法人土木学会,2003年08月28日,Vol.6,p.1043-1054
【文献】久保陽太郎,ディープラーニングによるパターン認識,情報処理,日本,一般社団法人情報処理学会,2013年04月15日,Vol.54,No.5,p.500-508
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
G01M 13/00-13/045
G01M 99/00
G02B 6/26- 6/27
G02B 6/30- 6/34
G02B 6/42-6/43
H02G 1/00- 1/10
H02G 7/00- 7/22
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱に敷設された光ファイバを含むケーブルと、
前記ケーブルに含まれる光ファイバにパルス光を入射し、前記光ファイバから、前記パルス光に対する後方散乱光であって、前記電柱の劣化状態に応じたパターンを含む後方散乱光を受信する受信部と、
前記後方散乱光に含まれる前記パターンに基づいて、前記電柱の劣化状態を検出する検出部と、
を備え
前記受信部は、前記後方散乱光の発生位置と、予め取得した電柱の位置を示す情報と、に基づいて、前記後方散乱光を発生した電柱を特定する、
電柱劣化検出システム。
【請求項2】
前記受信部により受信された前記後方散乱光は、複数の電柱を経由した前記光ファイバから受信した後方散乱光である、
請求項1に記載の電柱劣化検出システム。
【請求項3】
記検出部は、前記後方散乱光に含まれる前記パターンと、前記特定された電柱に対応する学習モデルと、に基づいて、前記特定された電柱の劣化状態を検出する、
請求項1に記載の電柱劣化検出システム。
【請求項4】
前記検出部は、定期的に前記電柱の劣化状態を検出することにより、前記電柱の劣化状態の経時的な状態変化を検出する、
請求項1に記載の電柱劣化検出システム。
【請求項5】
前記検出部は、前記電柱の劣化状態の経時的な状態変化に基づいて、前記電柱の劣化又は破損の予兆を検出する、
請求項4に記載の電柱劣化検出システム。
【請求項6】
前記検出部は、前記電柱の劣化状態に応じた前記パターンを学習し、学習結果と前記受信部により受信された前記後方散乱光に含まれる前記パターンとに基づいて、前記電柱の劣化状態を検出する、
請求項1に記載の電柱劣化検出システム。
【請求項7】
電柱に敷設されたケーブルに含まれる光ファイバに入射されたパルス光に対する後方散乱光であって、前記電柱の劣化状態に応じたパターンを含む後方散乱光を前記光ファイバから受信する受信部と、
前記後方散乱光に含まれる前記パターンに基づいて、前記電柱の劣化状態を検出する検出部と、
を備え
前記受信部は、前記後方散乱光の発生位置と、予め取得した電柱の位置を示す情報と、に基づいて、前記後方散乱光を発生した電柱を特定する、
電柱劣化検出装置。
【請求項8】
電柱劣化検出装置による電柱劣化検出方法であって、
電柱に敷設されたケーブルに含まれる光ファイバに入射されたパルス光に対する後方散乱光であって、前記電柱の劣化状態に応じたパターンを含む後方散乱光を前記光ファイバから受信し、
前記後方散乱光の発生位置と、予め取得した電柱の位置を示す情報と、に基づいて、前記後方散乱光を発生した電柱を特定し、
前記後方散乱光に含まれる前記パターンに基づいて、前記電柱の劣化状態を検出する、
電柱劣化検出方法。
【請求項9】
コンピュータに、
電柱に敷設されたケーブルに含まれる光ファイバに入射されたパルス光に対する後方散乱光であって、前記電柱の劣化状態に応じたパターンを含む後方散乱光を前記光ファイバから受信する手順と、
前記後方散乱光の発生位置と、予め取得した電柱の位置を示す情報と、に基づいて、前記後方散乱光を発生した電柱を特定する手順と、
前記後方散乱光に含まれる前記パターンに基づいて、前記電柱の劣化状態を検出する手
順と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電柱劣化検出システム、電柱劣化検出装置、電柱劣化検出方法、及び非一時的なコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電柱の異常検出は、人手によって行われていることが多く、例えば、作業員が目視のみで異常を判断したり、電柱を叩いた音等で異常を判断したりしていた。しかし、人手によって電柱の異常検出を行う場合、コスト・時間が多大にかかり、異常の発見や対処が遅れてしまうことがある。
そのため、最近は、電柱の異常を、光ファイバを用いて監視するシステムが提案されている(例えば、特許文献1,2)。
【0003】
特許文献1に記載の技術においては、電柱の上下方向に直線状又は螺旋状に光ファイバを敷設する。自動車の衝突で電柱が折損すると、光ファイバに強い曲りが生じ、光ファイバの内部を伝搬される光信号に損失が発生する。そのため、この損失による損失量をOTDR(Optical Time-Domain Reflectometry)測定により検出することで複数の電柱のいずれかに折損が発生したことを検出する。
【0004】
また、特許文献2に記載の技術においては、電柱への営巣の検出用の光ファイバである営巣検出用心線を敷設する。電柱への営巣により営巣検出用心線がたわむと、営巣検出用心線に曲げや引っ張り等の歪みが生じ、営巣検出用心線の内部を伝搬される光信号の強度が減衰する。そのため、この減衰による損失量をOTDR測定により検出することで電柱に営巣がなされたことを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-067467号公報
【文献】特開2015-053832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1,2に記載の技術においては、光ファイバに強い応力がかかった場合の光信号の損失量を監視することで電柱の異常検出を行っている。
したがって、電柱への営巣や折損等の極端な状態は検出することができるものの、電柱の劣化のような、光ファイバへの応力にほとんど影響しないような状態の検出は困難であるという課題がある。
【0007】
そこで本開示の目的は、上述した課題を解決し、電柱の劣化状態を高精度に検出することができる電柱劣化検出システム、電柱劣化検出装置、電柱劣化検出方法、及び非一時的なコンピュータ可読媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様による電柱劣化検出システムは、
電柱に敷設された通信用光ファイバを含むケーブルと、
前記ケーブルに含まれる少なくとも1つの通信用光ファイバから、前記電柱の劣化状態に応じたパターンを含む光信号を受信する受信部と、
前記パターンに基づいて、前記電柱の劣化状態を検出する検出部と、
を備える。
【0009】
一態様による電柱劣化検出装置は、
電柱に敷設されたケーブルに含まれる少なくとも1つの通信用光ファイバから、前記電柱の劣化状態に応じたパターンを含む光信号を受信する受信部と、
前記パターンに基づいて、前記電柱の劣化状態を検出する検出部と、
を備える。
【0010】
一態様による電柱劣化検出方法は、
電柱劣化検出装置による電柱劣化検出方法であって、
電柱に敷設されたケーブルに含まれる少なくとも1つの通信用光ファイバから、前記電柱の劣化状態に応じたパターンを含む光信号を受信し、
前記パターンに基づいて、前記電柱の劣化状態を検出する。
【0011】
一態様による非一時的なコンピュータ可読媒体は、
コンピュータに、
電柱に敷設されたケーブルに含まれる少なくとも1つの通信用光ファイバから、前記電柱の劣化状態に応じたパターンを含む光信号を受信する手順と、
前記パターンに基づいて、前記電柱の劣化状態を検出する手順と、
を実行させるためのプログラムを格納した非一時的なコンピュータ可読媒体である。
【発明の効果】
【0012】
上述の態様によれば、電柱の劣化状態を高精度に検出することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係る電柱劣化検出システムの構成の一例を示す図である。
図2】実施の形態に係る電柱情報の一例を示す図である。
図3】実施の形態に係る電柱劣化検出システムにおける第1の方法で用いる、電柱の振動データの周波数特性の一例を示す図である。
図4】実施の形態に係る電柱劣化検出システムにおける第1の方法で用いる、電柱の振動データの周波数特性の他の例を示す図である。
図5】実施の形態に係る電柱劣化検出システムにおける第2の方法で用いる、電柱の振動データの一例を示す図である。
図6】実施の形態に係る電柱劣化検出システムにおける第2の方法で用いる、電柱の振動データの他の例を示す図である。
図7】実施の形態に係る電柱劣化検出システムにおける第3の方法による機械学習の一例を示す図である。
図8】実施の形態に係る劣化レベル情報の一例を示す図である。
図9】実施の形態に係る電柱劣化検出装置を実現するコンピュータのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図10】実施の形態に係る電柱劣化検出システムの動作フローの一例を示すフロー図である。
図11】他の実施の形態に係る電柱劣化検出システムにおける、電柱の劣化又は破損の予兆を検出する方法の一例を示す図である。
図12】他の実施の形態に係る電柱情報の一例を示す図である。
図13】他の実施の形態に係る電柱劣化検出システムの一例を示す図である。
図14】他の実施の形態に係る電柱劣化検出システムにおけるファイバセンシング部の配置の一例を示す図である。
図15】他の実施の形態に係る電柱劣化検出システムにおけるファイバセンシング部の配置の他の例を示す図である。
図16】他の実施の形態に係る電柱劣化検出システムにおけるファイバセンシング部の配置のさらに他の例を示す図である。
図17】他の実施の形態に係る電柱劣化検出システムにおけるファイバセンシング部の配置のさらに別の例を示す図である。
図18図14の電柱劣化検出システムにおける光ファイバケーブルの断線時のファイバセンシング部の動作の一例を示す図である。
図19図15の電柱劣化検出システムにおける光ファイバケーブルの断線時のファイバセンシング部の動作の一例を示す図である。
図20図17の電柱劣化検出システムにおける光ファイバケーブルの断線時のファイバセンシング部の動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。
<実施の形態>
<実施の形態の構成>
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る電柱劣化検出システムの構成について説明する。なお、図1においては、説明の簡略化のため、3本の電柱10のみを示している。また、3本の電柱10は、それぞれ電柱番号がA,B,Cとなっている。
【0015】
図1に示されるように、本実施の形態に係る電柱劣化検出システムは、電柱10の劣化状態を検出するものであり、光ファイバケーブル20及び電柱劣化検出装置33を備えている。
【0016】
光ファイバケーブル20は、電柱10に敷設されている。光ファイバケーブル20は、電柱10に敷設される際には、電柱10の長手方向に対して略垂直に配設される。
光ファイバケーブル20は、1以上の通信用光ファイバを被覆して構成されるケーブルであり、一端は通信キャリア局舎30の内部に引き回され、他端は電柱番号Cの電柱10にて終端している。
【0017】
本実施の形態に係る電柱劣化検出システムは、光ファイバをセンサとして用いる光ファイバセンシング技術を利用して、電柱10の劣化状態を検出する。
具体的には、通信キャリア局舎30の内部では、光ファイバケーブル20に含まれる通信用光ファイバにパルス光を入射する。すると、パルス光が電柱10の方向に通信用光ファイバを伝送されることに伴い、伝送距離毎に後方散乱光が発生する。この後方散乱光は、同じ通信用光ファイバを経由して通信キャリア局舎30の内部に戻ってくる。
【0018】
ここで、電柱10は、周囲の外乱による振動や自然振動をしており、電柱10の振動は通信用光ファイバに伝達される。また、電柱10の振動パターンは、電柱10の劣化状態に応じて異なっている。
【0019】
そのため、通信キャリア局舎30の内部に戻ってくる後方散乱光には、電柱10の劣化状態に応じたパターンが含まれる。図1の例では、3本の電柱10が設けられているため、通信キャリア局舎30の内部に戻ってくる後方散乱光には、3本の電柱10の各々の劣化状態に応じたパターンが含まれることになる。
【0020】
本実施の形態に係る電柱劣化検出システムは、通信キャリア局舎30の内部に戻ってくる後方散乱光に、電柱10の劣化状態に応じたパターンが含まれることを利用して、その電柱10の劣化状態を検出するものである。
【0021】
ここで、通信キャリア局舎30の内部においては、上述した電柱劣化検出装置33が設けられている。電柱劣化検出装置33は、本実施の形態の実現のために新規に設置された設備である。
【0022】
電柱劣化検出装置33は、光ファイバセンシング機器としての機能を備える他、電柱10の劣化状態を検出する機能を備える装置である。具体的には、電柱劣化検出装置33は、ファイバセンシング部331及び検出部332を備えている。ファイバセンシング部331は、受信部の一例である。
【0023】
ファイバセンシング部331は、光ファイバケーブル20に含まれる少なくとも1つの通信用光ファイバにパルス光を入射する。このパルス光は、電柱10の方向に伝送される。また、ファイバセンシング部331は、パルス光を入射した通信用光ファイバと同じ通信用光ファイバから、パルス光に対する後方散乱光を受信する。この後方散乱光は、電柱10の方向から受信される。
【0024】
このとき、上述のように、ファイバセンシング部331により受信された後方散乱光は、電柱10の劣化状態に応じたパターンを含んでいる。
そのため、検出部332は、ファイバセンシング部331により受信された後方散乱光に含まれる、電柱10の劣化状態に応じたパターンに基づいて、その電柱10の劣化状態を検出する。
【0025】
ここで、図1の例では、3本の電柱10が設けられているため、ファイバセンシング部331は、3本の電柱10の各々の劣化状態に応じたパターンを含む後方散乱光を時系列的に受信する。
そのため、ファイバセンシング部331は、電柱10の劣化状態に応じたパターンを含む後方散乱光を受信すると、まず、その後方散乱光が発生した電柱10を特定する。その上で、検出部332は、ファイバセンシング部331により特定された電柱10の劣化状態を検出することになる。
【0026】
そこで以下では、ファイバセンシング部331において、電柱10の劣化状態に応じたパターンを含む後方散乱光を受信した場合に、その後方散乱光が発生した電柱10を特定する方法について説明する。
【0027】
本実施の形態においては、ファイバセンシング部331は、各電柱10の位置を示す位置情報を含む電柱情報を予め保持しておく。図2に電柱情報の例を示す。なお、図2において、zz>yy>xxである。検出部332は、ファイバセンシング部331が、通信用光ファイバにパルス光を入射した時刻と、同じ通信用光ファイバから、電柱10の劣化状態に応じたパターンを含む後方散乱光を受信した時刻と、の時間差に基づいて、その後方散乱光が発生した発生箇所を算出する。このとき、ファイバセンシング部331は、上述の時間差が小さいほど、ファイバセンシング部331から近くなるように、発生箇所を算出する。そして、ファイバセンシング部331は、図2の電柱情報を参照することにより、その後方散乱光が発生した電柱10を特定する。
【0028】
図1の例では、ファイバセンシング部331は、3本の電柱10の各々の劣化状態に応じたパターンを含む後方散乱光を時系列的に受信する。そのため、ファイバセンシング部331は、これら後方散乱光の発生箇所をそれぞれ算出し、図2の電柱情報を参照する。その結果、ファイバセンシング部331は、発生箇所がファイバセンシング部331から電柱番号Aの電柱10までの距離と一致した後方散乱光を、電柱番号Aの電柱10にて発生した後方散乱光と特定する。また、ファイバセンシング部331は、発生箇所がファイバセンシング部331から電柱番号Bの電柱10までの距離と一致した後方散乱光を、電柱番号Bの電柱10にて発生した後方散乱光と特定し、発生箇所がファイバセンシング部331から電柱番号Cの電柱10までの距離と一致した後方散乱光を、電柱番号Cの電柱10にて発生した後方散乱光と特定する。
【0029】
続いて以下では、検出部332において、ファイバセンシング部331により特定された電柱10の劣化状態を検出する方法について説明する。
(1)第1の方法
まず、図3及び図4を参照して、電柱10の劣化状態を検出する第1の方法について説明する。図3及び図4は、電柱10の振動データ(横軸が時間、縦軸が強度(振幅))を、FFT(Fast Fourier Transform)した後の周波数特性(横軸が周波数、縦軸が強度(振幅))を示している。また、図3は、正常な電柱10の周波数特性を示し、図4は、劣化している電柱10の周波数特性を示している。なお、図3及び図4の電柱10の周波数特性は、ファイバセンシング部331が、その電柱10にて発生した後方散乱光を分散型音響センサ(Distributed Acoustic Sensor)及び分散型振動センサ(Distributed Vibration Sensor)にて検出することにより得られたものである。
【0030】
図3及び図4に示されるように、電柱10の周波数特性には強度のピークが発生する。このピークが発生する周波数が、電柱10の劣化状態に応じて異なっている。具体的には、劣化している電柱10の周波数特性(図4)は、正常な電柱10の周波数特性(図3)と比較して、強度のピークが発生する周波数が、高周波側にシフトしている。
【0031】
そのため、検出部332は、電柱10の劣化状態を検出する場合、まず、その電柱10の周波数特性(例えば、図3及び図4)をファイバセンシング部331から取得する。そして、検出部332は、その電柱10の周波数特性において、ピークが発生する周波数に基づいて、その電柱10の劣化状態を検出する。また、検出部332は、正常な電柱10の周波数特性におけるピークが発生する周波数からシフトしたシフト量の大きさに基づいて、劣化レベルを検出しても良い。
【0032】
ただし、本第1の方法は、電柱10の周波数特性を用いて、その他の方法で劣化レベルを検出しても良い。
例えば、特定周波数区間の波形の形の違い、すなわち、特定周波数区間の波形パターンの差分に基づいて、劣化レベルを検出しても良い。
又は、複数の周波数のピークを組み合わせ、組み合わせたピーク間の差分に基づいて、劣化レベルを検出しても良い。
【0033】
(2)第2の方法
続いて、図5及び図6を参照して、電柱10の劣化状態を検出する第2の方法について説明する。図5及び図6は、電柱10の振動データ(横軸が時間、縦軸が強度(振幅))を示している。また、図5は、正常な電柱10の振動データを示し、図6は、劣化している電柱10の振動データを示している。なお、図5及び図6の電柱10の振動データは、ファイバセンシング部331が、その電柱10にて発生した後方散乱光を分散型音響センサ及び分散型振動センサにて検出することにより得られたものである。
【0034】
本第2の方法では、作業員が電柱10をハンマーで叩く等の手段により、電柱10に人工的な振動を発生させ、その人工的な振動を利用する。
【0035】
図5及び図6に示されるように、電柱10に人工的に発生させた振動は、その後に減衰する。この減衰時間が、電柱10の劣化状態に応じて異なっている。具体的には、図5に示されるように、正常な電柱10の場合は、振動の減衰時間は短くなっている。これに対して、図6に示されるように、劣化している電柱10の場合は、振動の減衰時間は長くなっている。
【0036】
そのため、検出部332は、電柱10の劣化状態を検出する場合、まず、その電柱10の振動データ(例えば、図5及び図6)をファイバセンシング部331から取得する。そして、検出部332は、その電柱10の振動データにおいて、その電柱10に人工的に発生させた振動の減衰時間に基づいて、その電柱10の劣化状態を検出する。また、検出部332は、減衰時間の大きさに基づいて、劣化レベルを検出しても良い。
【0037】
(3)第3の方法
続いて、電柱10の劣化状態を検出する第3の方法について説明する。
本第3の方法では、検出部332は、電柱10の劣化状態に応じたパターンを機械学習(例えば、深層学習等)し、機械学習の学習結果(初期学習モデル)を用いて、電柱10の劣化状態を検出する。
【0038】
まず、図7を参照して、本第3の方法における機械学習の方法について説明する。
図7に示されるように、検出部332は、電柱番号A,B,Cの電柱10の劣化度合いを示す劣化レベル情報である教師データと、電柱番号A,B,Cの電柱10の振動データと、を入力する(ステップS1,S2)。図8に、教師データとなる劣化レベル情報の一例を示す。なお、図8において、劣化レベルは、数値が大きいほど、劣化が進行していることを示している。また、劣化レベル情報は、ファイバセンシング部331が保持する。また、電柱10の振動データは、上述した第1の方法で劣化状態を検出する場合には、図3及び図4に示されるような振動データの周波数特性となる。また、電柱10の振動データは、上述した第2の方法で劣化状態を検出する場合には、図5及び図6に示されるような振動データとなる。
【0039】
続いて、検出部332は、両者のマッチング及び分類を行って(ステップS3)、教師あり学習を行う(ステップS4)。これにより、初期学習モデルが得られる(ステップS5)。この初期学習モデルは、電柱10の振動データを入力すると、その電柱10の劣化状態が出力されるモデルとなる。
【0040】
続いて、本第3の方法における電柱10の劣化状態を検出する方法について説明する。
検出部332は、電柱10の劣化状態を検出する場合、その電柱10の振動データ(例えば、図3図6)をファイバセンシング部331から取得し、初期学習モデルに入力する。これにより、検出部332は、初期学習モデルの出力結果として、その電柱10の劣化状態を得る。
【0041】
上述のように、本第3の方法では、電柱10の劣化状態に応じたデータ(パターン)を機械学習し、機械学習の学習結果を用いて、電柱10の劣化状態を検出する。
データから電柱10の劣化状態を検出するための特徴を抽出することが、人間による解析では困難な場合がある。本第3の方法では、大量の振動データから学習モデルを構築することにより、人間での解析では困難であった場合でも、電柱10の劣化状態を高精度に検出することができる。
【0042】
なお、本第3の方法における機械学習においては、初期状態では、2つ以上の教師データに基づいて、学習モデルを生成すれば良い。また、この学習モデルには、ファイバセンシング部331で新たに収集された電柱10の振動データを新たに学習させても良い。その際、新たな学習モデルから、電柱10の劣化状態を検出する詳細条件を調整しても良い。
【0043】
続いて以下では、図9を参照して、電柱劣化検出装置33を実現するコンピュータ40のハードウェア構成について説明する。
図9に示されるように、コンピュータ40は、プロセッサ401、メモリ402、ストレージ403、入出力インタフェース(入出力I/F)404、及び通信インタフェース(通信I/F)405などを備える。プロセッサ401、メモリ402、ストレージ403、入出力インタフェース404、及び通信インタフェース405は、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路で接続されている。
【0044】
プロセッサ401は、例えばCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などの演算処理装置である。メモリ402は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリである。ストレージ403は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、またはメモリカードなどの記憶装置である。また、ストレージ403は、RAMやROM等のメモリであっても良い。
【0045】
ストレージ403は、電柱劣化検出装置33が備えるファイバセンシング部331及び検出部332の機能を実現するプログラムを記憶している。プロセッサ401は、これら各プログラムを実行することで、ファイバセンシング部331及び検出部332の機能をそれぞれ実現する。ここで、プロセッサ401は、上記各プログラムを実行する際、これらのプログラムをメモリ402上に読み出してから実行しても良いし、メモリ402上に読み出さずに実行しても良い。また、メモリ402やストレージ403は、ファイバセンシング部331及び検出部332が保持する情報やデータを記憶する役割も果たす。
【0046】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータ(コンピュータ40を含む)に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、CD-R(CD-Recordable)、CD-R/W(CD-ReWritable)、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0047】
入出力インタフェース404は、表示装置4041や入力装置4042などと接続される。表示装置4041は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイのような、プロセッサ401により処理された描画データに対応する画面を表示する装置である。入力装置4042は、オペレータの操作入力を受け付ける装置であり、例えば、キーボード、マウス、及びタッチセンサなどである。表示装置4041及び入力装置4042は一体化され、タッチパネルとして実現されていても良い。なお、コンピュータ40は、分散型音響センサ及び分散型振動センサを含む不図示のセンサなども備え、このセンサを入出力インタフェース404に接続した構成であっても良い。
【0048】
通信インタフェース405は、外部の装置との間でデータを送受信する。例えば、通信インタフェース405は、有線通信路または無線通信路を介して外部装置と通信する。
【0049】
<実施の形態の動作>
以下、本実施の形態に係る電柱劣化検出システムの動作について説明する。ここでは、図10を参照して、本実施の形態に係る電柱劣化検出システムの動作フローについて説明する。
【0050】
図10に示されるように、まず、ファイバセンシング部331は、光ファイバケーブル20に含まれる少なくとも1つの通信用光ファイバにパルス光を入射する(ステップS11)。
続いて、ファイバセンシング部331は、パルス光を入射した通信用光ファイバと同じ通信用光ファイバから、電柱10の劣化状態に応じたパターンを含む後方散乱光を受信する(ステップS12)。
【0051】
続いて、ファイバセンシング部331は、ステップS12で受信された後方散乱光を発生した電柱10を特定する(ステップS13)。このとき、ファイバセンシング部331は、上述した時間差に基づく方法を用いて、後方散乱光を発生した電柱10を特定すれば良い。
【0052】
その後、検出部332は、ステップS12で受信された後方散乱光に含まれるパターンに基づいて、ステップS13で特定された電柱10の劣化状態を検出する(ステップS14)。このとき、検出部332は、上述した第1~第3の方法のいずれかの方法を用いて、電柱10の劣化状態を検出すれば良い。
【0053】
なお、図10においては、ステップS12において、電柱10の劣化状態に応じたパターンを含む後方散乱光を受信する度に、ステップS13,S14の処理を行っても良い。又は、ステップS12において、電柱10の劣化状態に応じたパターンを含む後方散乱光を複数受信した後、後方散乱光毎に、ステップS13,S14の処理を行っても良い。
【0054】
<実施の形態の効果>
上述したように本実施の形態によれば、光ファイバケーブル20に含まれる少なくとも1つの通信用光ファイバから、電柱10の劣化状態に応じたパターンを含む後方散乱光(光信号)を受信し、そのパターンに基づいて、電柱10の劣化状態を検出する。そのため、電柱10の劣化状態を高精度に検出することができる。
【0055】
また、本実施の形態によれば、電柱10の劣化状態を検出するには、既存の通信用光ファイバがあれば良く、特許文献1のように、電柱の上下方向に直線状又は螺旋状に光ファイバを敷設したり、特許文献2のように、営巣検出用心線を敷設したりする必要はない。したがって、電柱10の劣化状態を検出するための専用構造を必要としないため、電柱劣化検出システムを安価に構築することができる。
【0056】
また、本実施の形態によれば、既存の通信用光ファイバを用いて、一斉かつリモートで複数の電柱10の劣化状態を検出することができるため、電柱10の劣化状態把握が容易となると共に、電柱10の劣化状態把握のためのコストも低減することができる。
【0057】
また、本実施の形態によれば、光ファイバをセンサとして用いる光ファイバセンシング技術を利用する。そのため、電磁ノイズの影響を受けない、センサへの給電が不要になる、環境耐性に優れる、メンテナンスが容易になる等の利点が得られる。
【0058】
<他の実施の形態>
なお、検出部332は、電柱10毎に、上記で検出した電柱10の劣化状態を保持することとし、定期的に(例えば、1年毎)、電柱10の劣化状態を検出することで、電柱10の劣化状態の経時的な状態変化を検出しても良い。
【0059】
また、検出部332は、電柱10の劣化状態の経時的な状態変化に基づいて、電柱10の劣化又は破損の予兆を検出しても良い。
ここで、図11を参照して、検出部332において、電柱10の劣化又は破損の予兆を検出する方法について説明する。図11は、図3及び図4と同様の電柱10の振動データの周波数特性を、時系列で示したものである。
【0060】
図11に示されるように、検出部332は、3年前、2年前、現在の電柱10の振動データの周波数特性の経時的な変化に基づいて、1年後の周波数特性を予測し、予測した1年後の周波数特性に基づいて、1年後の電柱10の劣化又は破損を予測する。ここでは、検出部332は、1年後の周波数特性におけるピークが発生する周波数に基づいて、その電柱10は、1年後には劣化レベル3になると予測している。
【0061】
また、ファイバセンシング部331は、自身で保持する電柱情報に、各電柱10の情報をさらに追加し、検出部332は、電柱情報に追加された追加情報も用いて、電柱10の劣化状態を検出しても良い。図12に、電柱情報の他の例を示す。図12に示される電柱情報は、図2と比較して、各電柱10の材質、高さ、建築年度の情報が追加されている。そのため、検出部332は、後方散乱光に含まれる電柱10の劣化状態に応じたパターンに加えて、その電柱10の材質、高さ、建築年度の情報も加味して、その電柱10の劣化状態を検出しても良い。これにより、検出精度の向上が図れる。
【0062】
また、検出部332により劣化していると検出された電柱10を新品に交換した後、旧品の電柱10を実際に分解して、分析者が実際の劣化レベルを判定しても良い。このとき、検出部332が検出した劣化レベルと、分析者が判定した劣化レベルと、に差分があれば、その差分を検出部332にフィードバックしても良い。この場合、検出部332は、以降、実際の劣化レベルに近づくように、電柱10の劣化状態を検出するため、検出精度の向上が図れる。
【0063】
また、検出部332において、上述の第3の方法により、電柱10の劣化状態に応じたパターンを機械学習する場合、地域によっても電柱10の劣化状態は異なると考えられる。例えば、温暖地と寒冷地とで劣化状態は異なると考えられる。そのため、検出部332は、地域毎に、その地域に応じた教師データを用いて、機械学習しても良い。
【0064】
また、図13に示されるように、電柱劣化検出装置33による検出結果に基づいて、電柱10を監視する監視端末50を設けても良い。監視端末50は、システム管理者等に対し、電柱劣化検出装置33による検出結果として、電柱10の劣化状態、電柱10の劣化状態の経時的な状態変化、電柱10の劣化又は破損の予兆等を提示しても良い。また、監視端末50は、電柱劣化検出装置33による検出結果に基づいて、電柱10の交換時期又は修復時期を算出し、システム管理者等に対し、電柱10の交換時期又は修復時期を提示しても良い。また、監視端末50は、通信キャリア局舎30の外部に設けているが、通信キャリア局舎30の内部に設けても良い。また、監視端末50を通信キャリア局舎30の外部に設ける場合、複数の通信キャリア局舎30の各々に光ファイバケーブル20により接続されている電柱10を、1つの監視端末50で集中的に監視しても良い。
【0065】
また、電柱劣化検出装置33のファイバセンシング部331及び検出部332を互いに分離して設けても良い。例えば、通信キャリア局舎30の内部には、ファイバセンシング部331のみを設け、検出部332を含む電柱劣化検出装置33を、通信キャリア局舎30の外部に設けても良い。
【0066】
また、上述の実施の形態では、ファイバセンシング部331は、1つのみ設けられ、また、光ファイバケーブル20を占有しているが、これには限定されない。ここで、図14図17を参照して、他の実施の形態に係る電柱劣化検出システムにおけるファイバセンシング部331の配置について説明する。なお、図14図17においては、検出部332の図示は省略されている。
【0067】
図14の例では、ファイバセンシング部331は、既存の通信設備31と光ファイバケーブル20を共有している。また、ファイバセンシング部331及び既存の通信設備31で光ファイバケーブル20を共有するため、信号分離のためのフィルタ32が設けられている。
【0068】
図15の例では、複数の通信キャリア局舎30(図15では、2つの通信キャリア局舎30A,30Z)の各々に、ファイバセンシング部331が1つずつ設けられている。具体的には、通信キャリア局舎30A,30Zの内部にファイバセンシング部331A,331Zがそれぞれ設けられている。なお、図15の例では、通信キャリア局舎30Aには、電柱番号A,B,Cの電柱10が光ファイバケーブル20により接続され、通信キャリア局舎30Zには、電柱番号X,Y,Zの電柱10が光ファイバケーブル20により接続され、電柱番号C,Yの電柱10が光ファイバケーブル20により接続されている。通信設備31A,31Zは通信設備31に対応し、フィルタ32A,32Zはフィルタ32に対応する。
図15の例では、ファイバセンシング部331A,331Zが共に、電柱番号A,B,C,X,Y,Zの電柱10をモニタする。
【0069】
図16の例では、図15と比較して、電柱番号Cの電柱10にデータ収集部34が設けられている。ここでは、電柱10が6本であるため、データ収集部34が1個のみ設けられているが、データ収集部34は、所定数の電柱10(例えば、10本の電柱10)に対して1個設けることとし、1個以上設ければ良い。例えば、100本の電柱10に光ファイバケーブル20が敷設されている場合、10本の電柱10毎に1個のデータ収集部34を設け、合計で10個のデータ収集部34を設ければ良い。
【0070】
図16の例では、各データ収集部34は、対応する所定数の電柱10のパターン(音、温度、振動等)のデータを収集し、検出部332は、各データ収集部34が収集したデータを集約する。このとき、各データ収集部34から検出部332へデータの送信は、光ファイバケーブル20を介して行っても良いし、別に設けた無線機を介して行っても良い。検出部332は、データ収集部34がデータを収集した電柱10については、そのデータに基づいて劣化状態を検出する。
【0071】
そのため、1つのファイバセンシング部331のモニタ区間が短くなり、モニタ対象の電柱10の数が減少する。ファイバセンシング部331のモニタ区間が短いことにより、パルス光及び後方散乱光の伝送距離が短くなるため、ファイバ損失が小さくなる。これにより、受信する後方散乱光のS/N比(signal-to-noise ratio)が改善し、モニタ精度の向上を図ることができる。また、ファイバセンシング部331のモニタ対象の電柱10が減少することにより、モニタ周期の向上を図ることができる。
【0072】
図17の例では、1つの通信キャリア局舎30AZに、複数のファイバセンシング部331(図17では、2つのファイバセンシング部331A,331Z)が設けられている。なお、図17の例では、ファイバセンシング部331Aには、電柱番号A,B,Cの電柱10が光ファイバケーブル20により接続され、ファイバセンシング部331Zには、電柱番号X,Y,Zの電柱10が光ファイバケーブル20により接続され、電柱番号C,Yの電柱10が光ファイバケーブル20により接続されている。通信設備31A,31Zは通信設備31に対応し、フィルタ32A,32Zはフィルタ32に対応する。
【0073】
図17の例では、ファイバセンシング部331A,331Zが共に、電柱番号A,B,C,X,Y,Zの電柱10をモニタする。ただし、ファイバセンシング部331Aは、時計回りの方向にパルス光を入射して、電柱10をモニタし、ファイバセンシング部331Zは、反時計回りの方向にパルス光を入射して、電柱10をモニタする。
【0074】
なお、図15図17のように、複数のファイバセンシング部331を設ける場合、複数のファイバセンシング部331に対して、検出部332を含む電柱劣化検出装置33を1つ設けても良い。そして、複数のファイバセンシング部331の各々に光ファイバケーブル20により接続されている電柱10の劣化状態を、1つの電柱劣化検出装置33で集中的に検出しても良い。この場合、電柱劣化検出装置33は、通信キャリア局舎30のいずれかの内部に設けても良いし、通信キャリア局舎30の外部に設けても良い。
【0075】
また、電柱10に敷設されている光ファイバケーブル20は、断線する可能性がある。そこで、図18図20を参照して、他の実施の形態に係る電柱劣化検出システムにおける光ファイバケーブル20の断線時のファイバセンシング部331の動作について説明する。なお、図18図20においては、検出部332の図示は省略されている。
【0076】
図18の例は、図14の構成において、電柱番号B,Cの電柱10の間の光ファイバケーブル20が断線した例である。ファイバセンシング部331は、光ファイバケーブル20が断線した場合でも、パルス光を光ファイバケーブル20に入射し続ける。これにより、通信キャリア局舎30は、断線された箇所までの区間において、継続してモニタをすることが可能である。
【0077】
図19の例は、図15の構成において、電柱番号B,Cの電柱10の間の光ファイバケーブル20が断線した例である。ファイバセンシング部331A,331Zは、光ファイバケーブル20が断線した場合でも、パルス光を光ファイバケーブル20に入射し続ける。このとき、電柱10は必ず2つ以上の通信キャリア局舎30(図19では、2つの通信キャリア局舎30A,30Z)と接続されている。そのため、通信キャリア局舎30A,30Zが双方向からモニタを行うことにより、1重障害においては、全区間を継続してモニタすることができる冗長構成を構築可能である。
【0078】
図20の例は、図17の構成において、電柱番号B,Cの電柱10の間の光ファイバケーブル20が断線した例である。ファイバセンシング部331A,331Zは、光ファイバケーブル20が断線した場合でも、パルス光を光ファイバケーブル20に入射し続ける。このとき、図20の例では、光ファイバケーブル20をリング状に接続したリング構成が構築されている。そのため、1つの通信キャリア局舎30AZからリングの双方向にモニタを行うことにより、1重障害においては、全区間を継続してモニタすることができる冗長構成を構築可能である。
【0079】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0080】
また、上記の実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
電柱に敷設された通信用光ファイバを含むケーブルと、
前記ケーブルに含まれる少なくとも1つの通信用光ファイバから、前記電柱の劣化状態に応じたパターンを含む光信号を受信する受信部と、
前記パターンに基づいて、前記電柱の劣化状態を検出する検出部と、
を備える電柱劣化検出システム。
(付記2)
前記受信部により受信された前記光信号は、複数の電柱を経由した前記通信用光ファイバから受信した光信号である、
付記1に記載の電柱劣化検出システム。
(付記3)
前記受信部は、
前記パターンを含む前記光信号を発生した所定の電柱を特定し、
前記検出部は、
前記パターンに基づいて、前記所定の電柱の劣化状態を検出する、
付記2に記載の電柱劣化検出システム。
(付記4)
前記検出部は、
定期的に、前記電柱の劣化状態を検出することにより、前記電柱の劣化状態の経時的な状態変化を検出する、
付記1から3のいずれか1項に記載の電柱劣化検出システム。
(付記5)
前記検出部は、
前記電柱の劣化状態の経時的な状態変化に基づいて、前記電柱の劣化又は破損の予兆を検出する、
付記4に記載の電柱劣化検出システム。
(付記6)
前記検出部は、
前記電柱の劣化状態に応じた前記パターンを学習し、学習結果と前記受信部により受信された前記光信号に含まれる前記パターンとに基づいて、前記電柱の劣化状態を検出する、
付記1から5のいずれか1項に記載の電柱劣化検出システム。
(付記7)
前記ケーブルは、
前記電柱の長手方向に対して略垂直に配設される、
付記1から6のいずれか1項に記載の電柱劣化検出システム。
(付記8)
電柱に敷設されたケーブルに含まれる少なくとも1つの通信用光ファイバから、前記電柱の劣化状態に応じたパターンを含む光信号を受信する受信部と、
前記パターンに基づいて、前記電柱の劣化状態を検出する検出部と、
を備える電柱劣化検出装置。
(付記9)
前記受信部により受信された前記光信号は、複数の電柱を経由した前記通信用光ファイバから受信した光信号である、
付記8に記載の電柱劣化検出装置。
(付記10)
前記受信部は、
前記パターンを含む前記光信号を発生した所定の電柱を特定し、
前記検出部は、
前記パターンに基づいて、前記所定の電柱の劣化状態を検出する、
付記9に記載の電柱劣化検出装置。
(付記11)
前記検出部は、
定期的に、前記電柱の劣化状態を検出することにより、前記電柱の劣化状態の経時的な状態変化を検出する、
付記8から10のいずれか1項に記載の電柱劣化検出装置。
(付記12)
前記検出部は、
前記電柱の劣化状態の経時的な状態変化に基づいて、前記電柱の劣化又は破損の予兆を検出する、
付記11に記載の電柱劣化検出装置。
(付記13)
前記検出部は、
前記電柱の劣化状態に応じた前記パターンを学習し、学習結果と前記受信部により受信された前記光信号に含まれる前記パターンとに基づいて、前記電柱の劣化状態を検出する、
付記8から12のいずれか1項に記載の電柱劣化検出装置。
(付記14)
前記ケーブルは、
前記電柱の長手方向に対して略垂直に配設される、
付記8から13のいずれか1項に記載の電柱劣化検出装置。
(付記15)
電柱劣化検出装置による電柱劣化検出方法であって、
電柱に敷設されたケーブルに含まれる少なくとも1つの通信用光ファイバから、前記電柱の劣化状態に応じたパターンを含む光信号を受信し、
前記パターンに基づいて、前記電柱の劣化状態を検出する、
電柱劣化検出方法。
(付記16)
コンピュータに、
電柱に敷設されたケーブルに含まれる少なくとも1つの通信用光ファイバから、前記電柱の劣化状態に応じたパターンを含む光信号を受信する手順と、
前記パターンに基づいて、前記電柱の劣化状態を検出する手順と、
を実行させるためのプログラムを格納した非一時的なコンピュータ可読媒体。
【0081】
この出願は、2018年8月30日に出願された日本出願特願2018-162042を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0082】
10 電柱
20 光ファイバケーブル
30,30A,30Z,30AZ 通信キャリア局舎
31,31A,31Z 通信設備
32,32A,32Z フィルタ
33 電柱劣化検出装置
331,331A,331Z ファイバセンシング部
332 検出部
34 データ収集部
40 コンピュータ
401 プロセッサ
402 メモリ
403 ストレージ
404 入出力インタフェース
4041 表示装置
4042 入力装置
405 通信インタフェース
50 監視端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20