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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】粘性皮膚化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20250109BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20250109BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/19
A61K8/34
A61K8/39
A61K8/60
A61K8/73
A61Q19/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023165957
(22)【出願日】2023-09-27
【審査請求日】2024-05-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 大
(72)【発明者】
【氏名】三田地 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】三原 祐理子
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-128267(JP,A)
【文献】特開平08-231369(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069385(WO,A1)
【文献】特開2019-094294(JP,A)
【文献】特開2014-227364(JP,A)
【文献】特開2017-218441(JP,A)
【文献】特開2008-266283(JP,A)
【文献】特開2002-212047(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105997608(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)を10質量%~98質量%、成分(B)を0.05質量%~1.5質量%、成分(C)を0.5質量%~25質量%ならびに成分(D)を0.001質量%~1.6質量%含有する粘性皮膚化粧料:
(A)硬度が10mg/L~200mg/Lの天然水、
(B)アルキル変性カルボキシビニルポリマーおよびデンプン・アクリル酸ナトリウムグラフト重合体からなる群から選択される少なくとも1種
(C)炭素数が3~6の2価アルコール、ならびに
(D)ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル、セテアリルグルコシドおよびアラキジルグルコシドからなる群から選択される少なくとも1種
【請求項2】
さらに(E)増粘性多糖類を0.01質量%~1質量%含有する、請求項1に記載の粘性皮膚化粧料。
【請求項3】
さらに(F)酸性ムコ多糖類を0.0001質量%~0.05質量%含有する、請求項1または2に記載の粘性皮膚化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔や身体等の皮膚の保湿に好適に用いられる粘性皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
肌の乾燥を防ぐために、保湿剤や油剤を配合した皮膚化粧料が用いられる。皮膚化粧料を皮膚に塗布する際、粘性があると垂れにくいため好ましい。皮膚化粧料に粘性を付与する目的でアクリル酸系増粘性高分子が用いられる。アクリル酸系増粘性高分子を用いた粘性皮膚化粧料は塗布時に垂れにくいことに加え、塗布中に粘性が徐々に低下することで崩れるような感触、つまり崩れ感があり、みずみずしい使用感で好ましい。
しかし、アクリル酸系増粘性高分子は化粧料中の塩濃度が高いと十分な増粘効果を発揮することができない場合がある。特許文献1では、アクリル酸系増粘性高分子に加え、セルロース繊維を配合することで耐塩性を向上できることが開示されている。しかしながら、塗布時の崩れ感が不十分な場合があった。
また、アクリル酸系増粘性高分子を含む化粧料は高温で粘度が低下して保存安定性が悪化する場合もある。特許文献2では、寒天、キサンタンガム、アクリル酸系増粘性高分子を配合することにより、高温での保存安定性に優れた水系化粧料が開示されている。しかしながら、化粧料中の塩濃度が高いと十分な増粘効果を発揮できない場合があった。
【0003】
皮膚化粧料に一般的に使用されている水は、主に河川等から採取して浄化処理した水道水を原水とし、イオン交換樹脂で金属イオン等の不純物を取り除いたイオン交換水である。イオン交換樹脂によって取り除かれる成分の中には、カルシウムイオンやマグネシウムイオン等、アミノ酸や有機酸等とともに天然保湿因子(NMF:natural moisturizing factor)を構成するミネラル塩が含まれる場合がある。NMFは健康な皮膚を保つために重要な役割を果たしており、角層に含まれるNMFの量が減少すると、保湿機能が低下して乾燥肌になりやすいことが知られている。カルシウムイオンやマグネシウムイオン等、NMFの構成成分であるミネラル塩が皮膚の保湿に有効であることは、一般にも広く認知されている。
しかし、水性皮膚化粧料に、ミネラル塩(特に二価以上のミネラル塩)を配合すると、そのキレート作用により、水に溶解していた物質同士を結合させ、水に不溶性の物質を生じさせる場合がある。そのため、ミネラル塩を豊富に含む天然水をアクリル酸系増粘性高分子配合の粘性皮膚化粧料に使用した場合、天然水に含まれるミネラル塩が水不溶性物質発生の原因になるおそれがある。皮膚化粧料中で発生した水不溶性物質は、沈殿等により外観を悪化させるだけでなく、粘度を低下させることで塗布時の垂れにくさをも低下させる場合がある。特に高温保管における粘度低下が顕著であり、高温で保管した粘性皮膚化粧料は室温に戻しても塗布時の垂れにくさが低下する場合がある。
【0004】
一方で、化粧料は寒冷地域や熱帯地域における室内温度調整の有無などにより低温から高温に至るまで様々な温度下で保管される場合があり、一定の品質の化粧料を提供するという観点から、保管温度に依らず使用感の差異が小さいことが好ましい。
しかしながら、天然水を含有しながら、塗布時の垂れにくさと崩れ感を有し、高温での保存安定性に優れ、温度変化による使用感の差異が小さい粘性皮膚化粧料は、未だ開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-75471号公報
【文献】国際公開第2016/143663号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、天然水を含有しながら、塗布時の垂れにくさと崩れ感を有し、高温での保存安定性に優れ、温度変化による使用感(化粧料を使った時の感じ、使い心地)の差異が小さい粘性皮膚化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の硬度を有する天然水、ならびに、アクリル酸系増粘性高分子を含有する皮膚化粧料において、炭素数が3~6の二価アルコールとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルまたはアルキルポリグルコシドとを添加するだけで、意外にも塗布時の垂れにくさと崩れ感を有し、高温での保存安定性が向上し、温度変化による使用感の差異が小さくなることを見出し、さらに検討して、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]下記の成分(A)を10質量%~98質量%、成分(B)を0.05質量%~1.5質量%、成分(C)を0.5質量%~25質量%ならびに成分(D)を0.001質量%~1.6質量%含有する粘性皮膚化粧料:
(A)硬度が10mg/L~200mg/Lの天然水、
(B)アクリル酸系増粘性高分子、
(C)炭素数が3~6の2価アルコール、ならびに
(D)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルまたはアルキルポリグルコシド。
[2]さらに(E)増粘性多糖類を0.01質量%~1質量%含有する、[1]に記載の粘性皮膚化粧料。
[3]さらに(F)酸性ムコ多糖類を0.0001質量%~0.05質量%含有する、[1]または[2]に記載の粘性皮膚化粧料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、天然水を含有しながら、塗布時の垂れにくさと崩れ感を有し、高温での保存安定性に優れ、温度変化による使用感の差異が小さい粘性皮膚化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明は、(A)硬度が10mg/L~200mg/Lである天然水、(B)アクリル酸系増粘性高分子、(C)炭素数が3~6の二価アルコール、ならびに(D)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルまたはアルキルポリグルコシドを特定の含有量にて含有する粘性皮膚化粧料に関する(以下本発明の粘性皮膚化粧料ともいう)。
【0011】
本発明において、「粘性皮膚化粧料」とは、皮膚に直接または間接的に塗布または散布等して適用される粘性のある化粧料、いわゆるとろみのある化粧料を指す。具体的な粘性皮膚化粧料としては、美容液、ジェル、乳液、クリーム等の基礎化粧料、下地ジェル、下地クリーム等の下地化粧料、ファンデーション等の仕上げ(メイクアップ)化粧料、香水等の芳香化粧料、しわ防止化粧料、美白化粧料等の薬用化粧料(医薬部外品)等が挙げられる。なかでも皮膚を清潔にかつ健やかに保つための基礎化粧料や薬用化粧料が好ましい粘性皮膚化粧料として挙げられる。
なお、本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~5」は2以上、5以下を表す。
【0012】
<成分(A):硬度が10mg/L~200mg/Lの天然水>
本発明の粘性皮膚化粧料において、成分(A)として含有される天然水は、カルシウム塩およびマグネシウム塩の含有濃度から算出される硬度が10mg/L~200mg/Lである天然水である。
【0013】
天然水は、上記範囲の硬度を有するものであれば特に限定されず、たとえば、平成2年3月30日付け食品流通局長通達 2食流第1071号の「主な原水の種類」に記載されている、浅井戸水、深井戸水、湧水、鉱泉水、温泉水、伏流水、鉱水等が挙げられる。これらの天然水は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を選択し、組み合わせて用いてもよい。また、これらの天然水は、採水したものをそのまま使用しても良く、採水後にろ過殺菌、加熱殺菌、オゾン殺菌、紫外線殺菌等を行ったものを使用しても良い。
【0014】
本発明において、天然水の硬度は、カルシウムとマグネシウムの含有量を炭酸カルシウム(CaCO)量に換算したものであり、[mg/L]で表記され、下記の簡便式(1)を用いて算出することができる(原子量はCa=40、Mg=24.3、分子量はCaCO=100)。
【0015】
【数1】
【0016】
本発明の粘性皮膚化粧料に成分(A)として含有される天然水において、上記の式(1)を用いて算出される硬度は、10mg/L~200mg/Lであり、好ましくは15mg/L~150mg/Lであり、より好ましくは20mg/L~100mg/Lである。
上記硬度が10mg/L未満であると、塗布時の崩れ感が不十分である場合や、温度変化による使用感の差異が大きい場合がある。一方、上記硬度が200mg/Lを超えると、塗布時の垂れにくさが不十分である場合や、高温保管による保存安定性が低下する場合がある。
【0017】
本発明においては、成分(A)として、上記した硬度を有する天然水を採水し、そのまま、または採水後にろ過殺菌、加熱殺菌、オゾン殺菌、紫外線殺菌等を行って用いてもよく、上記した硬度を有する天然水であって、化粧料用として各社より提供されている市販の製品を利用することもできる。
【0018】
本発明の粘性皮膚化粧料の全量に対する成分(A)の含有量は、10質量%~98質量%であり、好ましくは20質量%~95質量%であり、より好ましくは30質量%~90質量%である。
成分(A)の含有量が10質量%より少ないと、塗布時の崩れ感が不十分である場合や、温度変化による使用感の差異が大きい場合がある。一方、成分(A)の含有量が98質量%を超えると、塗布時の垂れにくさが不十分である場合がある。
【0019】
<成分(B):アクリル酸系増粘性高分子>
本発明の粘性皮膚化粧料には、成分(B)として、アクリル酸系増粘性高分子が含有される。ここで、「アクリル酸系増粘性高分子」とは、アクリル酸に由来する構成単位および/またはアクリル酸アルキルに由来する構成単位を有し、且つ増粘性を有する高分子である。
【0020】
アクリル酸系増粘性高分子としては、例えばカルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、デンプン・アクリル酸ナトリウムグラフト重合体等が挙げられる。ここで「カルボキシビニルポリマー」とは、ショ糖アリルエーテル、ペンタエリスリトールのアリルエーテルまたはプロピレンアリルエーテルで架橋された、アクリル酸を主鎖とする重合体である。「アルキル変性カルボキシビニルポリマー」とは、ショ糖アリルエーテル、ペンタエリスリトールのアリルエーテルまたはプロピレンアリルエーテルで架橋された、アクリル酸またはメタクリル酸と、アクリル酸アルキルとの共重合体である。また、「デンプン・アクリル酸ナトリウムグラフト重合体」とは、デンプンにアクリル酸および微量のメチレンビスアクリルアミドをグラフト重合した後、水酸化ナトリウムで部分中和したものである。成分(B)は、好ましくはアルキル変性カルボキシビニルポリマーおよび/またはデンプン・アクリル酸ナトリウムグラフト重合体である。
【0021】
アルキル変性カルボキシビニルポリマーを構成するアクリル酸アルキルのアルキル基(即ち、-CO-Oに結合したアルキル基)としては、例えば、炭素数10~30の直鎖状または分岐鎖状アルキル基が挙げられる。
【0022】
アクリル酸系増粘性高分子(特に、カルボキシビニルポリマーまたはアルキル変性カルボキシビニルポリマー)の大きさの指標として、その濃度が0.5質量%であり、且つそのpHを塩基(例えば水酸化カリウムやアルギニン等)で中和して5.5に調整した水分散液の粘度を使用することができる。アクリル酸系増粘性高分子(特に、カルボキシビニルポリマーまたはアルキル変性カルボキシビニルポリマー)の水分散液(濃度:0.5質量%、pH:5.5)の粘度は、使用状況による使用感の差異を小さくする観点から、好ましくは5~200Pa・s、より好ましくは10~150Pa・s、特に好ましくは15~100Pa・sである。この粘度は、ブルックフィールドB型粘度計によって測定することができる。
【0023】
カルボキシビニルポリマーの市販品としては、例えば、住友精化株式会社製の「AQUPEC HV-505E」、日本ルーブリゾール株式会社製の「カーボポールUltrez10」、「カーボポール940」、「カーボポール941」、3Vシグマ社製の「シンタレンK」、「シンタレンL」等が挙げられる。アルキル変性カルボキシビニルポリマーの市販品としては、例えば、住友精化株式会社製の「AQUPEC HV-501ER」、日本ルーブリゾール株式会社製の「カーボポール1342」、「カーボポールETD2020」等が挙げられる。デンプン・アクリル酸ナトリウムグラフト重合体の市販品としては、例えば、三洋化成工業株式会社製の「サランジュールST-100SP」、「サランジュールST-100МC」、「サランジュール300」等が挙げられる。
成分(B)として、上記のアクリル酸系増粘性高分子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、成分(B)として、上記アクリル酸系増粘性高分子であって、化粧料用として各社より提供されている市販の製品を利用することができる。
【0024】
本発明の粘性皮膚化粧料の全量に対する成分(B)の含有量は、0.05質量%~1.5質量%であり、好ましくは0.08質量%~1.2質量%であり、より好ましくは0.1質量%~1質量%である。
成分(B)の含有量が0.05質量%より少ないと、塗布時の垂れにくさや崩れ感が不十分である場合や、高温での保存安定性が低下する場合や、温度変化による使用感の差異が大きい場合がある。一方、成分(B)の含有量が2質量%を超えると、塗布時の崩れ感が不十分である場合や、高温での保存安定性が低下する場合がある。
【0025】
<成分(C):炭素数が3~6の二価アルコール>
本発明の粘性皮膚化粧料に成分(C)として含有される炭素数が3~6の二価アルコールとしては、分子内に2個の水酸基を有する炭素数が3~6のアルコールであって、化粧料成分として皮膚に使用され得るものであれば、特に限定されないが、例えば、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール(1,3-ブチレングリコール)、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール(ペンチレングリコール)、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。本発明の目的には、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオールおよび1,2-ペンタンジオールが好ましく用いられ、1,3-プロパンジオールおよび1,3-ブタンジオールがより好ましく用いられる。
成分(C)として、炭素数が3~6の二価アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、成分(C)として、化粧料用の上記二価アルコールとして各社より提供されている市販の製品を利用することができる。
【0026】
本発明の粘性皮膚化粧料の全量に対する成分(C)の含有量は、0.5質量%~25質量%であり、好ましくは1質量%~22質量%であり、より好ましくは2質量%~20質量%である。
成分(C)の含有量が0.5質量%より少ないと、塗布時の崩れ感が不十分である場合や、高温での保存安定性が低下する場合や、温度変化による使用感の差異が大きい場合がある。一方、成分(C)の含有量が25質量%を超えると、塗布時の崩れ感が不十分である場合や、高温での保存安定性が低下する場合がある。
【0027】
<成分(D):ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルまたはアルキルポリグルコシド>
本発明に用いられる成分(D)は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルまたはアルキルポリグルコシドである。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを形成する脂肪酸は、炭素数が12~18であることが好ましく、飽和または不飽和のいずれでも良い。このエステルにおけるエチレンオキシド付加モル数は10~40が好ましく、15~30がより好ましい。脂肪酸のエステルは、モノエステルであることが好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとは、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル(ポリソルベート80)などが挙げられ、好ましくはポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステルおよびポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステルである。
【0028】
アルキルポリグルコシドはアルコールとグルコースの縮合によって得られたものであり、アルコールの炭素数は12~22であることが好ましく、飽和であることが好ましい。例えば、ヤシ油アルキルグルコシド、ラウリルグルコシド、ミリスチルグルコシド、セテアリルグルコシド、アラキジルグルコシドなどが挙げられ、好ましくはセテアリルグルコシドおよびアラキジルグルコシドである。
成分(D)として、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
本発明の粘性皮膚化粧料の全量に対する成分(D)の含有量は、0.001質量%~1.6質量%であり、好ましくは0.005質量%~1.4質量%であり、より好ましくは0.01質量%~1.2質量%である。
成分(D)の含有量が0.001質量%より少ないと、塗布時の垂れにくさが不十分である場合、高温での保存安定性が低下する場合や、温度変化による使用感の差異が大きい場合がある。一方、成分(D)の含有量が1.6質量%を超えると、塗布時の崩れ感が不十分である場合がある。
【0030】
<成分(A)、(C)の含有量比>
本発明の粘性皮膚化粧料において、塗布時の崩れ感を向上させ、温度変化による使用感の差異を小さくする観点から、成分(C)の含有量に対する成分(A)の含有量の比[(A)/(C)]は、質量比にて4~18であることが好ましく、5~15であることがより好ましく、6~12であることがさらに好ましい。
【0031】
<成分(E):増粘性多糖類>
本発明の粘性皮膚化粧料は、上記成分(A)~成分(D)に加えて、さらに(E)増粘性多糖類を含有し得る。増粘多糖類としては、具体的にはキサンタンガム、ジェランガム、タマリンドシードガム等が挙げられ、好ましくはキサンタンガムおよびジェランガムである。
本発明の粘性皮膚化粧料には、増粘性多糖類は、1種を選択して単独で用いてもよく、2種以上を選択して混合して用いてもよい。
【0032】
本発明の粘性皮膚化粧料の全量に対する成分(E)の含有量は、好ましくは0.01質量%~1質量%であり、より好ましくは0.05質量%~0.8質量%であり、さらに好ましくは0.1質量%~0.6質量%である。
成分(E)の含有量が上記範囲内であると、塗布時の垂れにくさが向上し、温度変化による使用感の差異が小さくなる。
【0033】
<成分(F):酸性ムコ多糖類>
本発明の粘性皮膚化粧料は、上記成分(A)~成分(D)、または上記成分(A)~成分(E)に加えて、さらに(F)酸性ムコ多糖類を含有し得る。
本発明の粘性皮膚化粧料において成分(F)として含有される酸性ムコ多糖類は、アミノ糖を含む多糖類であって、カルボキシル基、硫酸基等の酸性基を有する多糖類であり、化粧料用として、皮膚に使用され得るものであれば、特に制限されることなく用いることができるが、例えば、ヒアルロン酸、コンドロイチン-4-硫酸、コンドロイチン-6-硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン等が挙げられ、それらの塩やアセチル化物等を用いることもできる。本発明の目的には、ヒアルロン酸、コンドロイチン-4-硫酸、コンドロイチン-6-硫酸ならびにそれらの塩およびアセチル化物が好ましく、ヒアルロン酸ならびにその塩およびアセチル化物がより好ましく、ヒアルロン酸の塩が最も好ましく用いられる。
【0034】
本発明においては、上記酸性ムコ多糖類は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量が5,000~2,000,000であるものが好ましく用いられ、8,000~1,800,000であるものがより好ましく用いられる。
【0035】
酸性ムコ多糖類の塩としては、化粧料に安定的に用いることができ、皮膚に使用可能な塩であれば特に限定されないが、無機塩を用いることができ、無機塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。酸性ムコ多糖類の塩としては、好ましくは、ナトリウム塩およびカリウム塩である。
本発明の粘性皮膚化粧料には、成分(F)として、酸性ムコ多糖類、その塩およびそのアセチル化物からなる群より、1種を選択して単独で用いてもよく、2種以上を選択して、組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明においては、成分(F)として、化粧料用の酸性ムコ多糖類として各社より提供されている市販の製品を利用することができる。
かかる市販の製品としては、例えば、ヒアルロン酸ナトリウムであれば、キューピー株式会社製の「ヒアルロンサン液 HA-LQH1P」、キッコーマンバイオケミファ株式会社製の「ヒアルロン酸FCH-200」、マルハニチロ株式会社製の「外原規ヒアルロン酸Na「マルハ」」、低分子量(重量平均分子量=10,000以下)のヒアルロン酸であれば、キューピー株式会社製の「ヒアロオリゴ」等が挙げられる。また、コンドロイチン硫酸ナトリウムであれば、マルハニチロ株式会社製の「外原規コンドロイチン硫酸ナトリウム」等が挙げられる。
【0037】
本発明の粘性皮膚化粧料の全量に対する成分(F)の含有量は、固形分量に換算した量にて、好ましくは0.0001質量%~0.05質量%であり、より好ましくは0.0005質量%~0.04質量%であり、さらに好ましくは0.001質量%~0.03質量%である。
成分(F)の含有量が上記範囲内であると、高温での保存安定性が向上し、温度変化による使用感の差異が小さくなる。
【0038】
<成分(A)以外の水>
本発明の粘性皮膚化粧料は、成分(A)以外に、通常の水を含有してもよい。「通常の水」とは、皮膚化粧料に通常用いられるイオン交換水や蒸留水であり、これらは実質的にミネラル分を含んでおらず、硬度は0mg/Lもしくは1mg/L未満である。
また、成分(F)として、酸性ムコ多糖類の水溶液もしくは水分散液、または水溶液もしくは水分散液の形態の市販の製品を使用する場合、あるいは、後述する他の成分として、水溶液もしくは水分散液の形態の成分を使用する場合、本発明の粘性皮膚化粧料は、これらに由来する水を含有する。かかる水は、イオン交換水や蒸留水等、上記「通常の水」であり、実質的にミネラル分を含んでおらず、硬度は0mg/Lもしくは1mg/L未満である。
【0039】
本発明の粘性皮膚化粧料における通常の水の含有量は、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0040】
<その他の添加成分>
本発明の粘性皮膚化粧料は、本発明の特徴を損なわない範囲で、上記の成分(A)~成分(D)、さらには成分(E)および成分(F)に加えて、化粧料において使用される一般的な添加成分をさらに含有することができる。
かかる添加成分としては、例えば、保湿剤(グリセリン、ジグリセリン、アミノ酸等);エモリエント剤(オリーブ果実油、セラミド等);抗炎症剤(グリチルリチン酸ジカリウム等);抗しわ剤(ナイアシンアミド等);美白剤(アスコルビルグルコシド等);細胞賦活剤;収斂剤;油剤;界面活性剤;防腐剤;pH調整剤;酸化防止剤;金属封鎖剤;紫外線吸収剤;紫外線散乱剤;防腐剤;香料;色素;顔料等が挙げられる。その他の添加成分の含有量は、粘性皮膚化粧料全量に対して、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0041】
本発明の粘性皮膚化粧料は、美容液、乳液、クリーム等の皮膚化粧料;下地ジェル、下地クリーム等の下地化粧料;乳液状ファンデーション、クリーム状ファンデーション等のメイクアップ化粧料;ボディジェル、ボディクリーム等の身体用化粧料;しわ防止用、美白用等の美容液、乳液、クリーム等の薬用化粧料等として、粘性液状、ジェル状、乳液状、クリーム状等の形態で提供することができる。
【0042】
本発明の粘性皮膚化粧料は、その形態に応じて採用される通常の製剤化手段に準じて製造することができる。例えば、粘性液状またはジェル状の皮膚化粧料であれば、成分(A):硬度が10mg/L~200mg/Lの天然水、成分(B):アクリル酸系増粘性高分子、成分(C):炭素数が3~6の2価アルコール、ならびに成分(D):ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルまたはアルキルポリグルコシドを混合し、また、さらに成分(E):増粘多糖類、成分(F):酸性ムコ多糖類を添加、混合し、必要に応じて他の添加成分を添加、混合し、均一として、製造することができる。
【0043】
本発明の粘性皮膚化粧料は、天然水を含有しながら、塗布時の垂れにくさと崩れ感を有し、高温での保存安定性に優れ、温度変化による使用感の差異が小さい。
【実施例
【0044】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0045】
[実施例1~21、比較例1~5]粘性皮膚化粧料(美容液)
表1に示す処方に従い、成分(A)、(D)およびイオン交換水を混合して加熱し、成分(B)および(C)の予備分散液を添加して混合した後、攪拌しながら冷却することにより、均一として、実施例1~10の粘性皮膚化粧料(美容液)を調製し、表2に示す処方に従い、成分(A)、(D)、(F)およびイオン交換水を混合して加熱し、成分(B)、(C)および(E)の予備分散液を添加して混合した後、攪拌しながら冷却することにより、均一として、実施例11~21の粘性皮膚化粧料(美容液)を調製した。
また、表3に示す処方に従い、成分(A)、(D)およびイオン交換水を混合して加熱し、成分(B)、(C)および(E)の予備分散液を添加して混合した後、攪拌しながら冷却することにより、均一として、比較例1~5の粘性皮膚化粧料(美容液)を調製した。
なお、表1~表3において、各成分に対応する欄の数値は、粘性皮膚化粧料(美容液)の全量に対する当該成分の含有量(質量%)を示し、空欄は、当該成分を含有しないことを示す。また、「(A)/(C)」は、成分(C)の含有量に対する成分(A)の含有量の比(質量比)を示す。表3中、(A)/(C)に対応する欄の「-」は、成分(C)を含有しないため、当該比を算出できないことを示す。
【0046】
表1~3中の成分(*1~*5)としては、下記の原料を用いた。その他の成分としては、化粧料用として提供されている市販の製品を用いた。
*1 天然水1;硬度が150mg/Lである鉱泉水を用いた。
*2 天然水2;硬度が50mg/Lである鉱泉水を用いた。
*3 天然水3;硬度が25mg/Lである鉱泉水を用いた。
*4 酸性ムコ多糖類1;「ヒアルロンサン液 HA-LQH1P」(ヒアルロン酸ナトリウム(平均分子量=1,200,000~2,200,000)を1質量%、およびフェノキシエタノールを0.8質量%含有する水溶液、キューピー株式会社製)を用いた。表中の含有量は、ヒアルロン酸ナトリウム正味の含有量である。
*5 酸性ムコ多糖類2;「ヒアロオリゴ」(加水分解ヒアルロン酸(平均分子量=10,000以下)、キューピー株式会社製)を用いた。
【0047】
実施例および比較例の粘性皮膚化粧料について、下記の通り、塗布時の垂れにくさ、塗布時の崩れ感、高温での保存安定性、および温度変化による使用感の差異の評価を行った。
【0048】
(1)塗布時の垂れにくさの評価
25歳から55歳の女性20名をパネリストとし、各パネリストが実施例および比較例の各粘性皮膚化粧料1gをそれぞれ掌にとり、顔面に塗布した時の垂れにくさについて、下記官能評価基準に従って点数化した。20名の評価点の合計を求め、下記評価基準に従って塗布時の垂れにくさを評価した。評価結果は、表1~3に併せて示した。評価結果の下段のかっこ内の数値は、評価点の合計を示す。なお、「◎」および「○」と評価された場合を合格と判定した。
【0049】
<官能評価基準>
2点:塗布時に垂れが全くなく、非常に垂れにくいと感じた場合。
1点:塗布時に垂れがほとんどなく、垂れにくいと感じた場合。
0点:塗布時に垂れがあり、垂れやすいと感じた場合。
【0050】
<評価基準>
◎:評価点の合計が35点以上;塗布時の垂れにくさに非常に優れる粘性皮膚化粧料である。
○:合計点が30点以上、34点以下;塗布時の垂れにくさに優れる粘性皮膚化粧料である。
△:合計点が20点以上、29点以下;塗布時の垂れにくさにやや劣る粘性皮膚化粧料である。
×:合計点が19点以下;塗布時の垂れにくさに劣る粘性皮膚化粧料である。
【0051】
(2)塗布時の崩れ感の評価
25歳から55歳の女性20名をパネリストとし、各パネリストが実施例および比較例の各粘性皮膚化粧料1gをそれぞれ掌にとり、顔面に塗布した時の崩れ感について、下記官能評価基準に従って点数化した。20名の評価点の合計を求め、下記評価基準に従って塗布時の崩れ感を評価した。評価結果は、表1~3に併せて示した。評価結果の下段のかっこ内の数値は、評価点の合計を示す。なお、「◎」および「○」と評価された場合を合格と判定した。
【0052】
<官能評価基準>
2点:塗布時に非常に崩れ感があると感じた場合。
1点:塗布時に崩れ感があると感じた場合。
0点:塗布時に崩れ感がないと感じた場合。
【0053】
<評価基準>
◎:評価点の合計が35点以上;塗布時の崩れ感に非常に優れる粘性皮膚化粧料である。
○:合計点が30点以上、34点以下;塗布時の崩れ感に優れる粘性皮膚化粧料である。
△:合計点が20点以上、29点以下;塗布時の崩れ感にやや劣る粘性皮膚化粧料である。
×:合計点が19点以下;塗布時の崩れ感に劣る粘性皮膚化粧料である。
【0054】
(3)高温での保存安定性の評価
実施例および比較例の各粘性皮膚化粧料を50℃で1週間静置保存し、保存時および室温に戻した後の状態を観察し、下記評価基準により、安定性を評価した。評価結果は、表1~3に併せて示した。なお、「◎」および「○」と評価された場合を合格と判定した。
【0055】
<評価基準>
◎:50℃の状態においても外観の変化がなく、室温に戻しても分離や析出物が見られなかった。
○:50℃の状態において濁り等の外観の変化が見られたが、室温に戻した状態では分離や析出物が見られなかった。
×:50℃で保存した後、室温に戻した状態で分離や析出物が見られた。
【0056】
(4)温度変化による使用感の差異の評価
実施例および比較例の各粘性皮膚化粧料を0℃および50℃で1週間静置保存した後、室温に戻した。25歳から55歳の女性20名をパネリストとし、各パネリストが0℃で保管後に室温に戻した各粘性皮膚化粧料0.2gを左手の指先にとり、右手の甲に塗布した。さらに、各パネリストが50℃で保管後に室温に戻した各粘性皮膚化粧料0.2gを右手の指先にとり、左手の甲に塗布した。0℃保管品の使用感と50℃保管品の使用感の差異について、各パネリストが下記官能評価基準に従い点数化した。20名の評価点の合計を求め、下記評価基準に従って、温度変化による使用感の差異について評価した。評価結果は、表1~3に併せて示した。評価結果の下段のかっこ内の数値は、評価点の合計を示す。なお、「◎」および「○」と評価された場合を合格と判定した。
【0057】
<官能評価基準>
2点:保管温度による使用感の差異がほとんどないと感じた場合。
1点:保管温度による使用感の差異があまりないと感じた場合。
0点:保管温度による使用感の差異があると感じた場合。
【0058】
<評価基準>
◎:合計点が35点以上;保管温度による使用感の差異が非常に小さい粘性皮膚化粧料である。
○:合計点が30点以上、34点以下;保管温度による使用感の差異が小さい粘性皮膚化粧料である。
△:合計点が20点以上、29点以下;保管温度による使用感の差異がやや大きい粘性皮膚化粧料である。
×:合計点が19点以下;保管温度による使用感の差異が大きい粘性皮膚化粧料である。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
表1、2に示されるように、実施例1~21の粘性皮膚化粧料は、いずれも、塗布時の垂れにくさと崩れ感が優れるまたは非常に優れる粘性皮膚化粧料であり、高温での保存安定性が良好で、温度変化による使用感の差異が小さいまたは非常に小さい粘性皮膚化粧料であると評価された。
特に、成分(A)~成分(D)をそれぞれ上述するより好ましい含有量にて含有し、(A)/(C)値が上述するさらに好ましい範囲内である実施例5、7および10の粘性皮膚化粧料、成分(A)~(D)に加えて、成分(E)としてジェランガム、成分(F)として酸性ムコ多糖類2をそれぞれ含有する実施例21の粘性皮膚化粧料は、塗布時の垂れにくさと崩れ感、高温での保存安定性、および温度変化による使用感の差異のすべてにおいて「◎」と評価された。
【0063】
これに対して、表3に示されるように、比較例1~5の粘性皮膚化粧料では、いずれにおいても、すべての評価項目において合格の判定は得られなかった。
すなわち、成分(A)を含有しない比較例1の粘性皮膚化粧料は、塗布時の崩れ感にやや劣り、温度変化による使用感の差異がやや大きいと評価された。
成分(B)の代わりに成分(E)としてジェランガムを含有する比較例2の粘性皮膚化粧料は、塗布時の垂れにくさおよび崩れ感にやや劣ると評価された。
成分(C)を含有しない比較例3の粘性皮膚化粧料は、塗布時の崩れ感にやや劣り、高温での保存安定性が悪く、温度変化による使用感の差異がやや大きいと評価された。
成分(D)を含有しない比較例4および5の粘性皮膚化粧料は、塗布時の垂れにくさにやや劣り、高温での保存安定性が悪く、温度変化による使用感の差異がやや大きいと評価された。
【0064】
続いて、本発明の粘性皮膚化粧料の他の実施例を示す。
【0065】
[実施例22]ジェル状皮膚化粧料
表4に示す処方に基づき、下記の通り、ジェル状皮膚化粧料を製造した。なお、表4中の天然水3および酸性ムコ多糖類1としては、上記実施例1~21の製造に用いたものと同じ原料を用い、その他の原料としては、化粧品用として市販されている製品を用いた。また、表4中の酸性ムコ多糖類1の含有量は、ヒアルロン酸ナトリウム正味の含有量を示す。
【0066】
<製造方法>
成分(A)に、成分(D)、(F)、他の添加成分の(1)~(12)を加えて混合、攪拌しながら加熱して均一とし、次いで成分(B)、(C)および(E)の予備分散液を添加して混合し、攪拌しながら冷却した後、イオン交換水の残部を加えて全量を100質量%とした。
【0067】
【表4】
【0068】
[実施例23]乳液状皮膚化粧料
表5に示す処方に基づき、下記の通り、乳液状皮膚化粧料を製造した。なお、表5中の天然水3および酸性ムコ多糖類1としては、上記実施例1~21の製造に用いたものと同じ原料を用いた。また、表5中の酸性ムコ多糖類1の含有量は、ヒアルロン酸ナトリウム正味の含有量を示す。
【0069】
<製造方法>
成分(A)、(F)、他の添加成分の(1)、(2)、(11)~(17)およびイオン交換水の残部を混合、溶解し、75℃~80℃に加熱して水相とした。一方、成分(D)、他の添加成分の(3)~(9)を混合して75℃~80℃に加熱し、均一として油相とした。前記水相に油相を撹拌しながら添加して乳化し、成分(B)、(C)および(E)の予備分散液を添加して混合し、攪拌しながら40℃まで冷却して、他の添加成分の(10)、(18)を順次添加して混合した。
【0070】
【表5】
【0071】
実施例22のジェル状皮膚化粧料および実施例23の乳液状皮膚化粧料は、いずれも塗布時の垂れにくさと崩れ感を有し、高温での保存安定性に優れ、温度変化による使用感の差異が小さいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明により、天然水を含有しながら、塗布時の垂れにくさと崩れ感を有し、高温での保存安定性に優れ、温度変化による使用感の差異が小さい粘性皮膚化粧料を提供することができる。
【要約】
【課題】天然水を含有しながら、塗布時のたれにくさと崩れ感を有し、保存安定性に優れ、温度変化による使用感の差異が小さい粘性皮膚化粧料を提供する。
【解決手段】(A)硬度が10mg/L~200mg/Lの天然水を10質量%~98質量%、(B)アクリル酸系増粘性高分子を0.05質量%~1.5質量%、(C)炭素数が3~6の2価アルコールを0.5質量%~25質量%、ならびに(D)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルまたはアルキルポリグルコシドを0.001質量%~1.6質量%含有する粘性皮膚化粧料とする。
【選択図】なし