IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧

特許7616377光伝送装置、光伝送システム及び光伝送方法
<>
  • 特許-光伝送装置、光伝送システム及び光伝送方法 図1
  • 特許-光伝送装置、光伝送システム及び光伝送方法 図2
  • 特許-光伝送装置、光伝送システム及び光伝送方法 図3
  • 特許-光伝送装置、光伝送システム及び光伝送方法 図4
  • 特許-光伝送装置、光伝送システム及び光伝送方法 図5
  • 特許-光伝送装置、光伝送システム及び光伝送方法 図6
  • 特許-光伝送装置、光伝送システム及び光伝送方法 図7
  • 特許-光伝送装置、光伝送システム及び光伝送方法 図8
  • 特許-光伝送装置、光伝送システム及び光伝送方法 図9
  • 特許-光伝送装置、光伝送システム及び光伝送方法 図10
  • 特許-光伝送装置、光伝送システム及び光伝送方法 図11
  • 特許-光伝送装置、光伝送システム及び光伝送方法 図12
  • 特許-光伝送装置、光伝送システム及び光伝送方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】光伝送装置、光伝送システム及び光伝送方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/077 20130101AFI20250109BHJP
   H04B 10/293 20130101ALI20250109BHJP
【FI】
H04B10/077
H04B10/293
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023529167
(86)(22)【出願日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2021022518
(87)【国際公開番号】W WO2022264208
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 吉朗
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-093746(JP,A)
【文献】特開2011-019140(JP,A)
【文献】国際公開第2012/111403(WO,A1)
【文献】特開2020-088547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/077
H04B 10/293
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の信号光を増幅する光増幅手段と、
第1の監視光を生成する監視光生成手段と、
前記光増幅手段の出力と前記監視光生成手段の出力とを結合して第1の光伝送路へ出力する光合波手段と、
第2の信号光と第2の監視光とを含み、第2の光伝送路から入力された光を、前記第2の信号光と前記第2の監視光とに分離する光分波手段と、
前記第2の信号光の受信状態、及び、前記第2の監視光の発光及び減光の継続時間に基づいて、前記光増幅手段及び前記監視光生成手段を制御する制御手段と、を備え、
前記監視光生成手段は、
光変調手段を備え、連続光、又は、光出力が時間的に変化するパルス光を前記第1の監視光として生成し、
前記制御手段は前記第2の信号光の受信の有無を判定する第1の監視手段と、前記第2の監視光の受信の有無、並びに、前記第2の監視光の発光及び減光の継続時間を取得する第2の監視手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1の監視手段の判定結果及び前記第2の監視手段の取得結果に基づいて、
前記光増幅手段を動作させ又は停止させ、
前記光変調手段を制御して前記第1の監視光を前記連続光又は前記パルス光として生成し、
前記制御手段は、
前記光増幅手段が停止しており、かつ、
前記第1の監視光が前記パルス光であり、かつ、
前記第2の監視光が所定の時間を超えて受信された場合に、
前記光増幅手段を動作させるとともに前記第1の監視光を前記連続光に変更する、
光伝送装置
【請求項2】
前記制御手段は、
前記第2の信号光及び前記第2の監視光がいずれも受信されておらず、かつ、
前記第1の監視光が前記連続光である場合に、前記第1の監視光を前記パルス光に変更する、
請求項1に記載された光伝送装置。
【請求項3】
第1の信号光を増幅する光増幅手段と、
第1の監視光を生成する監視光生成手段と、
前記光増幅手段の出力と前記監視光生成手段の出力とを結合して第1の光伝送路へ出力する光合波手段と、
第2の信号光と第2の監視光とを含み、第2の光伝送路から入力された光を、前記第2の信号光と前記第2の監視光とに分離する光分波手段と、
前記第2の信号光の受信状態、及び、前記第2の監視光の発光及び減光の継続時間に基づいて、前記光増幅手段及び前記監視光生成手段を制御する制御手段と、を備え、
前記監視光生成手段は、
光変調手段を備え、連続光、又は、光出力が時間的に変化するパルス光を前記第1の監視光として生成し、
前記制御手段は前記第2の信号光の受信の有無を判定する第1の監視手段と、前記第2の監視光の受信の有無、並びに、前記第2の監視光の発光及び減光の継続時間を取得する第2の監視手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1の監視手段の判定結果及び前記第2の監視手段の取得結果に基づいて、
前記光増幅手段を動作させ又は停止させ、
前記光変調手段を制御して前記第1の監視光を前記連続光又は前記パルス光として生成し、
前記第2の信号光及び前記第2の監視光がいずれも受信されておらず、かつ、
前記第1の監視光が前記連続光である場合に、前記第1の監視光を前記パルス光に変更する、
光伝送装置
【請求項4】
前記制御手段は、前記第2の監視手段が前記第2の監視光の発光及び減光の継続時間に基づいて前記第2の監視光の最初のパルスを検出した場合に前記第1の監視光を前記連続光とする、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載された光伝送装置。
【請求項5】
第1の信号光を増幅する光増幅手段と、
第1の監視光を生成する監視光生成手段と、
前記光増幅手段の出力と前記監視光生成手段の出力とを結合して第1の光伝送路へ出力する光合波手段と、
第2の信号光と第2の監視光とを含み、第2の光伝送路から入力された光を、前記第2の信号光と前記第2の監視光とに分離する光分波手段と、
前記第2の信号光の受信状態、及び、前記第2の監視光の発光及び減光の継続時間に基づいて、前記光増幅手段及び前記監視光生成手段を制御する制御手段と、を備え、
前記監視光生成手段は、
光変調手段を備え、連続光、又は、光出力が時間的に変化するパルス光を前記第1の監視光として生成し、
前記制御手段は前記第2の信号光の受信の有無を判定する第1の監視手段と、前記第2の監視光の受信の有無、並びに、前記第2の監視光の発光及び減光の継続時間を取得する第2の監視手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1の監視手段の判定結果及び前記第2の監視手段の取得結果に基づいて、
前記光増幅手段を動作させ又は停止させ、
前記光変調手段を制御して前記第1の監視光を前記連続光又は前記パルス光として生成し、
前記第2の監視手段が前記第2の監視光の発光及び減光の継続時間に基づいて前記第2の監視光の最初のパルスを検出した場合に前記第1の監視光を前記連続光とする、
光伝送装置
【請求項6】
第1の光伝送装置と第2の光伝送装置とが前記第1の光伝送路及び前記第2の光伝送路を介して通信可能に接続された光伝送システムであって、
前記第1及び第2の光伝送装置は、いずれも、請求項1乃至5のいずれか1項に記載された光伝送装置である、光伝送システム。
【請求項7】
第1の信号光を光増幅手段によって増幅し、
第1の監視光を生成し、
増幅された前記第1の信号光と、前記第1の監視光とを結合して第1の光伝送路へ出力し、
第2の信号光と第2の監視光とを含み、第2の光伝送路から入力された光を、前記第2の信号光と前記第2の監視光とに分離し、
前記第2の信号光の受信状態、及び、前記第2の監視光の発光及び減光の継続時間に基づいて、前記第1の信号光の増幅及び前記第1の監視光の生成を制御する、光伝送方法であって、
前記第1の監視光は連続光、又は、光出力が時間的に変化するパルス光であり、
前記第2の信号光の受信の有無を第1の監視手段によって判定し、
前記第2の監視光の受信の有無、前記第2の監視光の発光及び減光の継続時間を第2の監視手段によって取得し、
前記第1の監視手段の判定結果及び前記第2の監視手段の取得結果に基づいて、
前記光増幅手段における前記第1の信号光の増幅を実行させ又は停止させ、
前記第1の監視光を前記連続光又は前記パルス光として生成し、
前記光増幅手段が停止しており、かつ、前記第1の監視光が前記パルス光であり、かつ、前記第2の監視光が所定の時間を超えて受信された場合に、前記光増幅手段を動作させるとともに前記第1の監視光を前記連続光に変更する、
光伝送方法。
【請求項8】
第1の信号光を光増幅手段によって増幅し、
第1の監視光を生成し、
増幅された前記第1の信号光と、前記第1の監視光とを結合して第1の光伝送路へ出力し、
第2の信号光と第2の監視光とを含み、第2の光伝送路から入力された光を、前記第2の信号光と前記第2の監視光とに分離し、
前記第2の信号光の受信状態、及び、前記第2の監視光の発光及び減光の継続時間に基づいて、前記第1の信号光の増幅及び前記第1の監視光の生成を制御する、光伝送方法であって、
前記第1の監視光は、連続光、又は、光出力が時間的に変化するパルス光であり、
前記第2の信号光の受信の有無を第1の監視手段によって判定し、
前記第2の監視光の受信の有無、前記第2の監視光の発光及び減光の継続時間を第2の監視手段によって取得し、
前記第1の監視手段の判定結果及び前記第2の監視手段の取得結果に基づいて、
前記光増幅手段における前記第1の信号光の増幅を実行させ又は停止させ、
前記第1の監視光を前記連続光又は前記パルス光として生成し、
前記第2の信号光及び前記第2の監視光がいずれも受信されておらず、かつ、前記第1の監視光が前記連続光である場合に、前記第1の監視光を前記パルス光に変更する、
光伝送方法。
【請求項9】
第1の信号光を光増幅手段によって増幅し、
第1の監視光を生成し、
増幅された前記第1の信号光と、前記第1の監視光とを結合して第1の光伝送路へ出力し、
第2の信号光と第2の監視光とを含み、第2の光伝送路から入力された光を、前記第2の信号光と前記第2の監視光とに分離し、
前記第2の信号光の受信状態、及び、前記第2の監視光の発光及び減光の継続時間に基づいて、前記第1の信号光の増幅及び前記第1の監視光の生成を制御する、光伝送方法であって、
前記第1の監視光は、連続光、又は、光出力が時間的に変化するパルス光であり、
前記第2の信号光の受信の有無を第1の監視手段によって判定し、
前記第2の監視光の受信の有無、前記第2の監視光の発光及び減光の継続時間を第2の監視手段によって取得し、
前記第1の監視手段の判定結果及び前記第2の監視手段の取得結果に基づいて、
前記第1の信号光の増幅を実行させ又は停止させ、
前記第1の監視光を前記連続光又は前記パルス光として生成し、
前記第2の監視手段が前記第2の監視光の発光及び減光の継続時間に基づいて前記第2の監視光の最初のパルスを検出した場合に前記第1の監視光を前記連続光とする、
光伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送装置、光伝送方法及び記録媒体に関する。本発明は、特に、光伝送装置に接続された光伝送路の障害時に、光伝送装置が備える光増幅器の出力を自動的に低下させるAPR(Automatic Power Reduction)制御に関する。
【背景技術】
【0002】
双方向通信を行う2台の光伝送装置の間を接続する光伝送路の光ファイバが断線した場合に、断線箇所の保守作業者の安全を確保するために、光伝送装置がAPR制御機能を備える場合がある。APR制御は、断線した光ファイバへ送出される信号光の出力パワーを自動的に低下させ、あるいは信号光の出力を停止させる。一般的な陸上光伝送システムでは、1.544Mb/s(メガビット毎秒)などの監視信号のフレームをエンコードして、APR制御のための情報を光伝送装置間で伝送している。監視信号は、OSC(Optical Supervisory Channel、光監視チャネル)信号とも呼ばれる。一般的な陸上光伝送システムでは、監視信号にはAPR制御以外で用いられる多くの情報が含まれている。このため、監視信号を受信した光伝送装置は、監視信号のフレームをデコードし、APR制御に必要な情報が監視信号からデコードされた場合にAPR制御を実行していた。
【0003】
本発明に関して、特許文献1及び2は、主信号の断あるいは監視信号の断を検出すると対向装置にそれを通知して光増幅器の出力を低下させるという一般的なAPR制御について記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-332695号公報
【文献】特開2002-077056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な陸上光伝送システムの監視制御回路には、多くの種類の監視制御信号を伝送するために、エンコード回路及びデコード回路が含まれる。そして、APR制御のための信号は他の監視制御信号とともにこのため、監視制御信号としてAPR制御のための信号のみが求められる光伝送システムに一般的な陸上光伝送システムで用いられる監視制御回路を適用すると監視制御回路の機能が必要以上に複雑になり、コスト増の要因となる課題がある。
【0006】
(発明の目的)
本発明は、光伝送システムのAPR制御機能を簡単な構成で実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光伝送装置は、
第1の信号光を増幅する光増幅手段と、
第1の監視光を生成する監視光生成手段と、
前記光増幅手段の出力と前記監視光生成手段の出力とを結合して第1の光伝送路へ出力する光合波手段と、
第2の信号光と第2の監視光とを含み、第2の光伝送路から入力された光を、前記第2の信号光と前記第2の監視光とに分離する光分波手段と、
前記第2の信号光の受信状態、及び、前記第2の監視光の発光及び減光の継続時間に基づいて、前記光増幅手段及び前記監視光生成手段を制御する制御手段と、
を備える。
【0008】
本発明の光伝送方法は、
第1の信号光を増幅し、
第1の監視光を生成し、
増幅された前記第1の信号光と、前記第1の監視光とを結合して第1の光伝送路へ出力し、
第2の信号光と第2の監視光とを含み、第2の光伝送路から入力された光を、前記第2の信号光と前記第2の監視光とに分離し、
前記第2の信号光の受信状態、及び、前記第2の監視光の発光及び減光の継続時間に基づいて、前記第1の信号光の増幅及び前記第1の監視光の生成を制御する、
ことを特徴とする。
【0009】
本発明の記録媒体は、
第1の信号光を増幅する光増幅手段と、
第1の監視光を生成する監視光生成手段と、
前記光増幅手段の出力と前記監視光生成手段の出力とを結合して第1の光伝送路へ出力する光合波手段と、
第2の信号光と第2の監視光とを含み、第2の光伝送路から入力された光を、前記第2の信号光と前記第2の監視光とに分離する光分波手段と、
を備える光伝送装置のコンピュータに、
前記第2の信号光の受信状態、及び、前記第2の監視光の発光及び減光の継続時間に基づいて、前記光増幅手段及び前記監視光生成手段を制御する手順を実行させるプログラム、を記録した記録媒体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、簡単な構成で光伝送システムのAPR制御機能を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】光伝送システム1の構成例を示すブロック図である。
図2】光伝送システム1における両方向障害の例を示す図である。
図3】光伝送装置100及び200の詳細構成の例を示すブロック図である。
図4】両方向障害発生時のAPR制御の例を説明するタイミングチャートである。
図5】両方向障害復旧時のAPR制御の例を説明するタイミングチャートである。
図6】光伝送システム1の片方向障害の例を示す図である。
図7】片方向障害発生時のAPR制御の例を説明するタイミングチャートである。
図8】片方向障害発生時のAPR制御の例を説明するタイミングチャートである。
図9】片方向障害復旧時のAPR制御の例を説明するタイミングチャートである。
図10】片方向障害復旧時のAPR制御の例を説明するタイミングチャートである。
図11】APR制御における動作及びその動作が実行される条件の例を示す図である。
図12】監視光の出力形態とその際の光スイッチの動作例を示す図である。
図13】受信された監視光が連続光であるかパルス光であるかの判定条件の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。図中に示された矢印の方向は例示であり、方向の限定を意図しない。各実施形態及び図面では既出の要素には同一の参照符号を付して、重複する説明は省略する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における光伝送システム1の構成例を示すブロック図である。光伝送システム1は、光伝送装置100及び光伝送装置200を備える。光伝送装置100と光伝送装置200との間は、2本の光伝送路20及び30で接続されている。
【0014】
光伝送装置100は、光信号を光伝送路20へ送信する。光伝送装置200は、光伝送装置100が送信した光信号を光伝送路20から受信する。光伝送装置200は、光信号を光伝送路30へ送信する。光伝送装置100は、光伝送装置200が送信した光信号を光伝送路30から受信する。以下では、光伝送装置100から光伝送装置200の方向を「下り」、光伝送装置200から光伝送装置100の方向を「上り」と記載する場合がある。このように、光伝送装置100と光伝送装置200とは光伝送路20及び30を介して対向して通信する。
【0015】
光伝送装置100は、光増幅器111、光源112、光スイッチ113、光合波器114、光分波器122、信号光モニタ123、監視光モニタ125、制御部180を備える。光伝送装置200は、光増幅器211、光源212、光スイッチ213、光合波器214、光分波器222、信号光モニタ223、監視光モニタ225、制御部280を備える。信号光モニタ123及び監視光モニタ125は、制御部180に含まれていてもよい。信号光モニタ223及び監視光モニタ225は、制御部280に含まれていてもよい。
【0016】
光伝送装置100の各部の機能について説明する。光増幅器111は、光伝送装置100から光伝送装置200へ送信される信号光(以下、「下り信号光」という。)を増幅する。下り信号光は、ユーザデータを含む光信号である。1550nm帯の光搬送波が波長多重された光信号が信号光として用いられてもよい。光源112は、光伝送装置100から光伝送装置200へ送信される監視光(以下、「下り監視光」という。)の光源である。中心波長が1490nm又は1510nmである半導体レーザが光源112として用いられてもよい。光源112の波長は下り信号光の波長とは重複しない。光源112は、光伝送装置100の外部に備えられていてもよい。光スイッチ113は、光源112で生成された光を透過させ又は阻止する。光スイッチ113に代えて、光変調器が用いられてもよい。光スイッチ113を透過した光は下り監視光として光合波器114に入力される。光スイッチ113は、制御部180の制御に基づいて、下り監視光を連続光として出力し、又は、所定の発光時間及び減光時間を持つパルス光として出力できる。なお、「減光」は、「発光」よりもパルス光のパワーが低い状態をいう。すなわち、「減光」は、パルス光が消光している状態を含む。いいかえれば、下り監視光は、連続光、又は、光出力が時間的に変化するパルス光でもよい。
【0017】
光合波器114は、光増幅器111から出力される下り信号光と光スイッチ113から出力される下り監視光とを合波して光伝送路20へ送出する。下り信号光の波長と下り監視光の波長とは異なるため、光合波器114としてWDM(Wavelength Division Multiplexing、波長分割多重)フィルタを用いることができる。
【0018】
光分波器122は、光伝送装置200が送信した信号光(以下、「上り信号光」という。)と監視光(以下、「上り監視光」という。)と、を波長分離する。上り信号光の波長と上り監視光の波長とは異なるため、光分波器122としてWDMフィルタを用いることができる。光分波器122で分離された上り信号光は信号光モニタ123へ入力され、分離された監視光は監視光モニタ125へ入力される。
【0019】
信号光モニタ123は、光伝送装置100における上り信号光の受信状態を制御部180へ出力する。監視光モニタ125は、光伝送装置100における上り監視光の受信状態を制御部180へ出力する。信号光モニタ123及び監視光モニタ125はそれぞれPD(Photo Diode、フォトダイオード)を含む。信号光モニタ123は光伝送装置100が受信した上り信号光を光信号のまま出力するとともに、上り信号光の強度に比例する振幅の電気信号を制御部180へ出力する。光伝送装置100は、信号光モニタ123が出力した上り信号光を増幅する光増幅器121を備えてもよい。光増幅器121は入力された上り光信号を増幅して他の光伝送装置へ出力してもよい。ただし、光伝送装置100には光増幅器121は必須ではない。また、監視光モニタ125は、光伝送装置100が受信した上り監視光の強度に比例する振幅の電気信号を制御部180へ出力する。
【0020】
制御部180は、信号光モニタ123及び監視光モニタ125から入力された電気信号の振幅に基づいて上り信号光及び上り監視光の受信状態を判断し、さらに、これら判断結果に基づいて光増幅器111及び光スイッチ113を制御する。
【0021】
光伝送装置100のそれぞれの構成要素は以下のように記載できる。すなわち、光増幅器111は、第1の信号光(下り信号光)を増幅する光増幅手段を担う。光スイッチ113は、第1の監視光(下り監視光)を生成する監視光生成手段を担う。光合波器114は、光増幅器111の出力と光スイッチ113の出力とを結合して第1の光伝送路(光伝送路20)へ出力する光合波手段を担う。
【0022】
また、光分波器122は、第2の光伝送路(光伝送路30)から入力された、第2の信号光(上り信号光)と第2の監視光(上り監視光)とを含む光を、第2の信号光と第2の監視光とに分離する光分波手段を担う。そして、制御部180は、第2の信号光(上り信号光)の受信状態、及び、第2の監視光(上り監視光)の発光及び減光の継続時間に基づいて、光増幅手段(光増幅器111)及び監視光生成手段(光スイッチ113)を制御する制御手段を担う。
【0023】
光伝送装置200は光伝送装置100と同様の構成を備える。すなわち、光増幅器211は、光伝送装置200から光伝送装置100へ送信される信号光(以下、「上り信号光」という。)を増幅する。上り信号光は、ユーザデータを含む光信号である。光源212は、光伝送装置200から光伝送装置100へ送信される監視光(以下、「上り監視光」という。)の光源である。光源212の波長は上り信号光の波長とは重複しない。光源212は、光伝送装置200の外部に備えられていてもよい。光スイッチ213は、光源212で生成された光を所定の期間透過させあるいは所定の期間阻止する。光スイッチ213に代えて、光変調器が用いられてもよい。光スイッチ213を透過した光は上り監視光として光合波器214に入力される。光スイッチ213は、制御部280の制御に基づいて、上り監視光を連続光又はパルス光として生成できる。
【0024】
光合波器214は、光増幅器211から出力される上り信号光と光スイッチ213から出力される上り監視光とを合波して光伝送路30へ送出する。上り信号光の波長と上り監視光の波長とは異なるため、光合波器214としてWDMフィルタを用いることができる。
【0025】
光分波器222は、光伝送装置100が送信した下り信号光と下り監視光とを波長分離する。下り信号光の波長と下り監視光の波長とは異なるため、光分波器222としてWDMフィルタを用いることができる。光分波器222で分離された下り信号光は信号光モニタ223へ入力され、分離された監視光は監視光モニタ225へ入力される。
【0026】
信号光モニタ223は、光伝送装置200における下り信号光の受信状態を制御部280へ出力する。監視光モニタ225は、光伝送装置200における下り監視光の受信状態を制御部280へ出力する。信号光モニタ223及び監視光モニタ225はそれぞれPDを含む。信号光モニタ223は光伝送装置200が受信した下り信号光を出力するとともに、下り信号光の強度に比例する振幅の電気信号を制御部280へ出力する。光伝送装置200は、信号光モニタ223が出力した下り信号光を増幅する光増幅器221を備えてもよい。光増幅器221は入力された下り光信号を増幅して他の光伝送装置へ出力してもよい。ただし、光伝送装置200には光増幅器221は必須ではない。また、監視光モニタ225は、光伝送装置200が受信した下り監視光の強度に比例する振幅の電気信号を制御部280へ出力する。
【0027】
制御部280は、信号光モニタ223及び監視光モニタ225から入力された電気信号の振幅に基づいて下り信号光及び下り監視光の受信状態を判断し、さらに、その判断結果に基づいて光増幅器211及び光スイッチ213を制御する。
【0028】
図2は、光伝送システム1における両方向障害の例を示す図である。図2を参照して、光伝送路20の障害点21及び光伝送路30の障害点31の両方で光ファイバに障害が発生した場合のAPR制御の例について説明する。
【0029】
(1-1)光伝送装置100の制御部180及び光伝送装置200の制御部280は、障害の発生前の通常状態では、下り監視光及び上り監視光のいずれもが連続光となるように、それぞれ光スイッチ113及び213を制御する。そして、監視光を受信する光伝送装置では、受信された監視光が連続光である場合には光伝送路は正常と判断し、受信された監視光が入力断又はパルス光である場合には光伝送路に障害があると判断する。下り監視光は光増幅器111を介さないため、光増幅器111の光出力を停止しても光伝送路20へ出力される。
【0030】
(1-2)光伝送装置100において、障害点31における障害により上り信号光と上り監視光の入力断が検出されると、制御部180は光増幅器111の光出力を停止(シャットダウン)するとともに、下り監視光を連続光からパルス光に変更する。下り監視光は光増幅器111を介さないため光増幅器111をシャットダウンしても光伝送路20へ出力される。しかし、障害点21の障害のため、下り信号光も下り監視光も光伝送装置200において受信されない。
【0031】
(1-3)同様に、光伝送装置200において、障害点21における障害により下り信号光と下り監視光の入力断が検出されると、制御部280は光増幅器211をシャットダウンするとともに、上り監視光を連続光からパルス光に変更する。上り監視光は光増幅器211をシャットダウンしても光伝送路30へ出力される。しかし、光伝送路30の障害のため、上り信号光も上り監視光も光伝送装置100において受信されない。
【0032】
このように、光伝送路20及び30の両方で障害が発生した場合には、両端の光伝送装置100及び200からの信号光の出力を自動的に停止することにより、APR制御が実行される。
【0033】
次に、光伝送路20及び30の障害が復旧した場合について説明する。
【0034】
(1-4)光伝送路20及び30の障害が復旧した直後には、光伝送装置100の信号光モニタ123は上り信号光が断のままである一方、監視光モニタ125にはパルス光の上り監視光が入力される。制御部180は、上り監視光のオフからオン(減光から発光)までの時間及びオンからオフ(発光から減光)までの時間を判定し、上り監視光の最初のパルスの受信を確認すると下り監視光をパルス光から連続光に変更する。光伝送装置200は、監視光モニタ225において下り監視光がパルス光から連続光に変わったことを確認すると、光伝送路30が正常になったと判断して光増幅器211のシャットダウンを自動的に解除する。なお、光伝送装置200の出力における上り監視光の発光時のパワー及び減光時のパワーは、光伝送装置100において上り監視光が受信された際に「発光」と「減光」とが弁別可能なパワーとして定められてもよい。同様に、光伝送装置100の出力における下り監視光の発光時のパワー及び減光時のパワーは、光伝送装置200において下り監視光が受信された際に「発光」と「減光」とが弁別可能なパワーとして定められてもよい。
【0035】
(1-5)同様に、光伝送路20及び30の障害が復旧した直後には、光伝送装置200の信号光モニタ223は下り信号光が断のままである一方、監視光モニタ225にはパルス光の下り監視光が入力される。制御部280は、下り監視光のオフからオンまでの時間及びオンからオフまでの時間を判定し、下り監視光の最初のパルスの受信を確認すると上り監視光をパルス光から連続光に変更する。光伝送装置100は、監視光モニタ125において上り監視光がパルス光から連続光に変わったことを確認すると、光伝送路20が正常になったと判断して光増幅器111のシャットダウンを自動的に解除する。
【0036】
このように、光伝送路20及び30の障害が復旧すると、両端の光伝送装置100及び200は光増幅器111及び211のシャットダウンを自動的に解除できる。
【0037】
すなわち、以上の手順によって、光伝送装置100及び200は、監視制御信号のエンコード回路やデコード回路を必要とすることなく、簡単な構成でAPR制御の実行及び解除を行うことができる。
【0038】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、両方向障害が発生した場合のAPR制御及びその復旧の例を詳細に説明する。図3は、図1及び図2で説明した光伝送装置100及び200の詳細構成の例を示すブロック図である。図1で説明した光伝送装置100の制御部180は、信号光検出回路124、監視光検出回路126、監視光判定回路127、監視光出力判定回路131、信号光出力判定回路132、光スイッチ制御回路133、光増幅器制御回路134を備える。制御部180に含まれるこれらの回路は電気回路で実現されてもよい。
【0039】
信号光検出回路124は、信号光モニタ123で検出された上り信号光の強度に基づいて、信号光が光伝送路30から受信されているかどうかを判断する。監視光検出回路126は、監視光モニタ125で検出された上り監視光の強度に基づいて監視光が光伝送路30から受信されているかどうかを判断する。信号光検出回路124及び監視光検出回路126における判断結果は、監視光出力判定回路131及び信号光出力判定回路132の両方に出力される。また、監視光検出回路126は、上り監視光の強度の時間的な変化に基づいて、上り監視光の発光時間及び減光時間を取得する。上り監視光の発光時間及び減光時間の取得結果は監視光判定回路127へ出力される。
【0040】
監視光判定回路127は、上り監視光の発光時間及び減光時間に基づいて、上り監視光が連続光であるかパルス光であるかを判定し、その結果を監視光出力判定回路131へ出力する。
【0041】
監視光出力判定回路131は、信号光検出回路124、監視光検出回路126及び監視光判定回路127からの入力に基づいて、光伝送装置100が光伝送路20へ送出する監視光を、連続光とするかパルス光とするかを判定する。信号光出力判定回路132は、信号光検出回路124及び監視光検出回路126からの入力に基づいて、光増幅器111を通常通り動作させるか、停止させるか(シャットダウンするか)を判定する。
【0042】
光スイッチ制御回路133は、監視光出力判定回路131の判定結果に基づいて、光スイッチ113を制御する。光増幅器制御回路134は、信号光出力判定回路132の判定結果に基づいて、光増幅器111を動作させ、又はシャットダウンさせる。
【0043】
光伝送装置200の制御部280は、信号光検出回路224、監視光検出回路226、監視光判定回路227、監視光出力判定回路231、信号光出力判定回路232、光スイッチ制御回路233、光増幅器制御回路234を備える。制御部280の構成は制御部180と同様である。光伝送装置200において、光伝送装置100と同一の名称のブロックは、光伝送装置200においても対応する機能を備えるため、制御部280の詳細な説明は省略する。
【0044】
図3において、光伝送路20の障害箇所は障害点21で示され、光伝送路30の障害箇所は障害点31で示される。光伝送路20及び30を伝搬する光信号は、それぞれ、障害点21及び31において切断される。以下では、伝送路障害が発生した場合のAPR制御についてタイミングチャートを参照して説明する。
【0045】
図4及び図5は、両方向障害の発生時の光伝送装置100及び200における各部のAPR制御の例を説明するタイミングチャートである。これらのタイミングチャートにおいて横軸は時間であり、縦軸は光伝送装置100及び200各部の状態を示す。縦の破線は障害の発生又は復旧の時刻を示す。すなわち、これらのタイミングチャートは、障害点21及び31の障害の発生後又は復旧後の光伝送装置100及び200における各部の状態の時間変化を示す。
【0046】
光伝送装置100を例にすると、図4及び図5において、「[1]信号光の光入力」は、図3の信号光モニタ123への入力光のパワーを示す。「[2]信号光の入力判定」は、信号光検出回路124における、信号光の入力の有無の判定結果(正常又は断)を示す。「[3]信号光の光出力」は、光増幅器111の出力光のパワーを示す。「[4]監視光の光出力」は、光スイッチ113の出力光のパワーを示す。「[5]監視光の光入力」は、監視光モニタ125の入力光のパワーを示す。「[6]監視光の入力判定」は、監視光検出回路126における、監視光の入力の有無の判定結果(正常又は断)を示す。「[7]パルス光の検出」は、監視光判定回路127におけるパルス光の検出結果(パルス光あり又はなし)を示す。「[8]監視光の出力形態」は、監視光出力判定回路131において、連続光とパルス信号のどちらを出力するかの判定結果を示す。
【0047】
なお、後述する図7図10の[1]-[8]で示される各項も、同様の内容を示す。また、光伝送装置100の各部の機能は光伝送装置200も同様であるため、以降では光伝送装置200の動作を説明する際にもこれらのタイミングチャートが使用される。
【0048】
また、図11はAPR制御における動作及びその動作が実行される条件の例を示す。図12は監視光の出力形態とその際の光スイッチ113及び213の動作例を示す。図13は、監視光判定回路127における、受信された監視光が連続光であるかパルス光であるかの判定条件の例を示す。制御部180及び280は記憶部を備え、図11図13の動作及び条件はデータとして記憶部に記憶されてもよい。記憶部のデータは、光伝送装置100及び200の各部の回路から参照される。
【0049】
(2-1)両方向障害発生時の動作
光伝送路20及び30に障害がない場合には、光増幅器111及び211は通常通り動作し、下り監視光及び上り監視光のいずれもが連続光である。この状態で障害点31において障害が発生すると、光伝送装置100では、信号光モニタ123に入力される上り信号光の入力パワーが低下する(図4の4-a1)。その結果、信号光検出回路124が上り信号光の入力断を検出する(4-b1)。また、監視光モニタ125に入力される上り監視光の入力パワーも低下するため(4-a2)、監視光検出回路126は上り監視光の入力断を検出する(4-b2)。これらの検出結果は、監視光出力判定回路131及び信号光出力判定回路132へ通知される。
【0050】
上り信号光と上り監視光との入力断の検出が通知されると、図11の条件501により、信号光出力判定回路132は光増幅器111をシャットダウンするよう判定する。そして、信号光出力判定回路132は、光増幅器111をシャットダウンする指示を光増幅器制御回路134へ出力する。光増幅器制御回路134は、この指示に基づいて光増幅器111をシャットダウンする(4-c1)。光増幅器制御回路134は、光増幅器111への励起光の供給を停止することで光増幅器111をシャットダウンしてもよい。
【0051】
また、図11の条件503により、監視光出力判定回路131は、下り監視光をパルス光とするよう判定する。監視光出力判定回路131は、下り監視光をパルス光とする指示を光スイッチ制御回路133へ出力する(4-c2)。光スイッチ制御回路133は、この指示に応じて、下り監視光がパルス光となるように光スイッチ113を制御する(4-c3)。パルス光は、所定の発光時間と減光時間とを持つ、光パルス列である。本実施形態では、パルス光は当初10秒間減光し、その後3秒間の発光と10秒間の減光とを繰り返す(図12の条件602)。
【0052】
光スイッチ113から出力されたパルス光(下り監視光)は光合波器114に入力される。下り監視光は光増幅器111を通過しないため、下り監視光は光増幅器111がシャットダウンしていても光合波器114を介して光伝送路20へ送出される。しかし、光伝送路20は障害によって切断されているため、下り監視光は光伝送装置200へは到達しない。
【0053】
一方、障害点21における障害に起因して、光伝送装置200も光伝送装置100と同様に動作する。すなわち、光伝送装置200においては、監視光出力判定回路231及び信号光出力判定回路232には、下り信号光の入力断と下り監視光の入力断とが検出されたことが通知される。信号光出力判定回路232は、光増幅器211をシャットダウンする指示を光増幅器制御回路234へ出力する。光増幅器制御回路234は、この指示に応じて、光増幅器211をシャットダウンする。
【0054】
また、監視光出力判定回路231は、下り監視光をパルス光とする指示を光スイッチ制御回路233へ出力する。光スイッチ制御回路233は、この指示に応じて、上り監視光が図12の条件602に適合するパルス光となるように光スイッチ213を制御する。
【0055】
以上の動作により、光伝送装置100及び200は、光伝送路20及び30に障害が発生すると、光増幅器111及び211をシャットダウンする。すなわち、光伝送システム1においてAPR制御が実行される。
【0056】
(2-2)両方向障害復旧時の動作
光伝送路20及び30の障害が復旧した後の光伝送装置100のAPR制御の復旧(APR復旧)動作について説明する。光伝送路20及び30の障害が復旧した直後は、光増幅器111及び211はシャットダウンしている。このため、光伝送装置100の信号光モニタ123では上り信号光は検出されない。しかし、監視光モニタ125では、上り監視光は、パルス状に強度が変化する光として検出される(図5の5-a1、5-b1、5-c1)。監視光判定回路127は監視光モニタ125で受信されたパルス光の発光時間及び減光時間を検出し、その検出結果を監視光出力判定回路131に出力する。監視光出力判定回路131は、入力された情報及び図11図12の条件に基づいて光スイッチ113を制御する。具体的には、監視光判定回路127は、パルス光を受信していなかった状態において、パルス光の最初のパルスの受信を検出する(5-d1)。この検出結果は監視光出力判定回路131へ通知される。監視光出力判定回路131は、当該最初のパルスの受信が通知されると、図11の条件504により、下り監視光をパルス光から連続光に変更する指示を光スイッチ制御回路133へ出力する(5-d2)。その結果、下り監視光はパルス光から連続光に変化する(5-d3)。
【0057】
次に、光伝送装置200のAPR復旧動作について説明する。光伝送装置200の説明にも図5が用いられる。上述の光伝送装置100のAPR復旧動作により、光伝送装置200において受信される下り監視光がパルス光から連続光に変化する。このため、光伝送装置200の監視光モニタ225へ入力される監視光がパルス光から連続光に変化する(図5の5-e1、5-f1)。パルス光の発光時間は3秒であるため、監視光判定回路227は、連続光が6秒以上継続したことを検出する。これにより図13の条件701が満たされるため、監視光判定回路227は、監視光がパルス光から連続光に変化したことを信号光出力判定回路232に通知する(5-g1)。信号光出力判定回路232は、図11の条件502により、光増幅器211の停止を解除する指示を光増幅器制御回路234へ出力する。その結果、上り信号光が光伝送路30を介して光伝送装置200から光伝送装置100へ送信される。
【0058】
一方、光伝送路20及び30の障害が復旧した直後には、光伝送装置200では下り信号光は受信されずパルス光である下り監視光のみの受信が開始される。このため、光伝送装置100と同様に、光伝送装置200は上り監視光をパルス光から連続光に変更する。その結果、光伝送装置100の監視光モニタ125へ入力される監視光もパルス光から連続光に変化する。そして、光伝送装置100においても、連続光が6秒以上継続したことを検出すると、図11の条件502により、光増幅器111の停止を解除する。
【0059】
以上の動作により、光伝送装置100及び200では、光伝送路20及び30の障害が復旧すると、光増幅器111及び211のシャットダウンが自動的に解除される。これによって、光伝送システム1のAPR制御が復旧し、光伝送システム1の通信が再開する。
【0060】
以上説明したように、本実施形態の光伝送システム1は、両方向障害が発生した場合に、簡単な構成で光伝送システムのAPR制御機能を実現できる。
【0061】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、片方向障害が発生した場合のAPR制御の例を詳細に説明する。図6は、光伝送システム1の片方向障害の例を示す図である。図6は、光伝送路20の障害点21において障害が発生し、光伝送路30には障害が発生していないことを示す。すなわち、光伝送路20を伝搬する下り監視光及び下り信号光は障害点21において阻止されるが、上り監視光及び上り信号光は光伝送路30を伝搬して光伝送装置100へ到達する。以下では、このような片方向障害におけるAPR制御について説明する。
【0062】
図7図10は、片方向障害の発生時の光伝送装置100又は200のAPR制御の例を説明するためのタイミングチャートである。図7は障害点21における片方向障害の発生時の、光伝送装置200におけるAPR制御を説明する図である。図8は障害点21における片方向障害の発生時の、光伝送装置100におけるAPR制御を説明する図である。図9は片方向障害の復旧時の、光伝送装置200におけるAPR制御を説明する図である。図10は、片方向障害の復旧時の、光伝送装置100におけるAPR制御を説明する図である。図7図10の[1]-[8]の示す内容は図4図5に準ずる。
【0063】
(3-1)片方向障害発生時の動作
障害点21において障害が発生すると、光伝送装置200では下り信号光のパワーが低下し(図7の7-a1)、下り監視光のパワーも低下する(7-a2)。従って、監視光検出回路226及び信号光検出回路224はそれぞれ下り信号光の入力断と下り監視光の入力断とを検出する(7-b1、7-b2)。これらの検出結果は、監視光出力判定回路231及び信号光出力判定回路232へ通知される。
【0064】
下り信号光と下り監視光との入力断の検出が通知されると、信号光出力判定回路232は、図11の条件501により、光増幅器211をシャットダウンするように判断する。また、監視光出力判定回路231は、図11の条件503により、上り監視光をパルス光とするよう判断する。本実施形態においても、パルス光は当初10秒間減光し、その後3秒間の発光と10秒間の減光とを繰り返す。図11図13の動作及び条件は、あらかじめ制御部280が備える記憶部にデータとして設定されている。
【0065】
信号光出力判定回路232は、光増幅器211をシャットダウンする指示を光増幅器制御回路234へ出力する。光増幅器制御回路234は、この指示に応じて、光増幅器211をシャットダウンするする(7-c1)。
【0066】
また、監視光出力判定回路231は、下り監視光をパルス光とする指示を光スイッチ制御回路233へ出力する(7-c2)。光スイッチ制御回路233は、この指示に応じて、上り監視光がパルス光となるように光スイッチ213を制御する(7-c3)。
【0067】
光スイッチ213から出力されたパルス光(上り監視光)は光合波器214に入力される。上り監視光は光増幅器211を通過しないため、上り監視光は光増幅器211が停止していても光合波器214を介して光伝送路30へ送出される。光伝送路30では障害が発生していないため、光伝送装置100は上り信号光を受信せず、パルス光である上り監視光を受信する。
【0068】
図8を参照すると、光伝送装置100では上り信号光のパワーが低下し(図8の8-a1)、パルス光である上り監視光を受信する(8-a2)。従って、信号光検出回路124は上り監視光の入力断を検出する(8-b1)。これらの検出結果は、監視光出力判定回路231及び信号光出力判定回路232へ通知される。
【0069】
パルス光が減光している間は上り監視光のパワーが低下するため、監視光は断であると判断される(8-b2)。このため、信号光出力判定回路132及び光増幅器制御回路134は、上り信号光と上り監視光との入力断の検出が通知されると、図11の条件501により光増幅器111をシャットダウンする(8-c1)。また、監視光出力判定回路131及び光スイッチ制御回路133は、図11の条件503により、下り監視光をパルス光とする(8-c2)。
【0070】
一方、光伝送路30は正常であるため、光伝送装置200から最初の上り監視光のパルスが到着する(8-d1)。上り監視光がパルス光である場合、監視光の発光時間は3秒間であるため(8-e1から8-f1)、監視光判定回路127は、図13の条件702により、上り監視光はパルス光であると判断する(8-g1)。そして、図11の条件504により、光伝送装置100が送出する下り監視光がパルス光から連続光に変更される(8-g2から8-g3)。
【0071】
なお、最初の上り監視光のパルスの減光により上り監視光は一旦入力断となる(8-f1)。しかし、図13の条件702により図8の8-g1におけるパルス光の受信の判定は維持される。このため、図11の条件503は適用されず、下り監視光を連続光とする判定が維持される。また、パルス光の2回目のパルスが受信されると(8-h1)、監視光が正常である状態が再び3秒間継続する(8-i1から8-j1)。しかし、このパルスは続く2回目であるために図11の条件504には適合しない。
【0072】
以上の動作により、光伝送装置100及び200は、光伝送路20及び30の一方にのみに障害が発生した場合でも、光増幅器111及び211をシャットダウンする。すなわち、光伝送システム1においてAPR制御が実行される。
【0073】
(3-2)片方向障害復旧時の動作
片方向障害によるAPR制御の復旧手順(APR復旧手順)について説明する。まず、光伝送装置200のAPR復旧手順を説明する。上述したように、障害点21における障害の発生後、下り監視光は連続光となる(図8の8-g3)。従って、障害点21における障害が復旧すると、光伝送装置200の監視光モニタ225は、連続光である下り監視光を受信する(図9の9-a1)。そして、監視光検出回路226は、監視光は正常に受信されていると判断する(9-b1)。連続光が6秒間受信されると、図11の条件502により、光増幅器211のシャットダウンが解除される(8-c1)とともに、上り監視光がパルス光から連続光に変更される(9-c2、9-c3)。後述するように、これにより光伝送装置100の光増幅器111のシャットダウンが解除されるため、信号光モニタ223において下り信号光が受信され(9-d1)、下り信号光が正常に受信されたと判断される(9-e1)。
【0074】
次に、図10を参照して光伝送装置100のAPR復旧動作を説明する。障害点21の障害が復旧した直後には、光伝送装置200の光増幅器211はシャットダウンしているため、上り信号光は入力断と判定される。一方、上り監視光としてパルス光が受信されている(図10の10-a1)。この状態は図11の条件501-504のいずれも満たさないため、光伝送装置100は現状の状態を維持する。
【0075】
その後、図9で説明した光伝送装置200のAPR復旧動作により、光伝送装置200から上り信号光が受信され(10-b1)るため、上り信号光が正常と判断される(10-c1)。また、上述のように、光伝送装置200では上り監視光が連続光に変更される(図9の9-c3)。このため、光伝送装置100が受信する上り監視光はパルス光から連続光に変化し(図10の10-b2)、従って、上り監視光の正常受信が6秒以上継続する(10-c2以降)。その結果、図13の条件701及び図11の条件502により、上り監視光がパルス光でないと判定されるとともに(10-d2)、光増幅器111のシャットダウンが解除される(10-d1)。
【0076】
以上の動作により、光伝送装置100及び200では、光伝送路20及び30の一方のみに発生した障害が復旧した場合にも、光増幅器111及び211のシャットダウンが自動的に解除される。これによって、光伝送システム1のAPR制御が復旧し、光伝送装置100と光伝送装置200との間の通信が再開される。
【0077】
以上説明したように、本実施形態の光伝送システム1は、片方向障害が発生した場合に、簡単な構成で光伝送システムのAPR制御機能を実現できる。
【0078】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0079】
各実施形態において、制御部180及び280は、中央処理装置(central processing unit、CPU)を備えてもよい。光伝送装置100及び200の機能の一部又は全部は、それぞれが備えるCPUが、プログラムを実行することにより実現されてもよい。プログラムは、一時的でない有形の(tangible and non-transitory)記録媒体に記録されてもよい。記録媒体は、例えば不揮発性半導体メモリ、光ディスク又は磁気ディスクである。
【0080】
また、それぞれの実施形態に記載された構成は、必ずしも互いに排他的なものではない。本発明の作用及び効果は、上述の実施形態の全部又は一部を組み合わせた構成によって実現されてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 光伝送システム
20、30 光伝送路
21、31 障害点
100、200 光伝送装置
111、121、211、221 光増幅器
112、212 光源
113、213 光スイッチ
114、214 光合波器
122、222 光分波器
123、223 信号光モニタ
124、224 信号光検出回路
125、225 監視光モニタ
126、226 監視光検出回路
127、227 監視光判定回路
131、231 監視光出力判定回路
132、232 信号光出力判定回路
133、233 光スイッチ制御回路
134、234 光増幅器制御回路
180、280 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13