(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】秘密計算システム、方法、プログラム、及び、情報処理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/00 20230101AFI20250109BHJP
【FI】
G06Q40/00
(21)【出願番号】P 2023532971
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 JP2021025728
(87)【国際公開番号】W WO2023281685
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】松田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 了
(72)【発明者】
【氏名】古川 諒
(72)【発明者】
【氏名】糸永 航
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0156416(US,A1)
【文献】特開2020-115311(JP,A)
【文献】特開2019-101495(JP,A)
【文献】特開2016-099915(JP,A)
【文献】特開2020-042676(JP,A)
【文献】レ チュウ フォン,暗号技術とAIの融合による秘密計算技術 [online],日本,国立研究開発法人情報通信研究機構,2019年07月18日,p.1-30,インターネット,<URL:https://shingi.jst.go.jp/pdf/2019/2019_nict_5.pdf>,[検索日 2024.09.02]
【文献】鹿島 久嗣,連合学習 [online],日本,2021年05月06日,p.1-24,インターネット,<URL:https://hkashima.github.io/introductionFederatedLearning.pdf>,[検索日 2024.09.02]
【文献】竹之内 隆夫,「秘密計算」大解説 個人情報を保護しながら機械学習に活用できる、「秘密計算」の巧みな仕組み,日経クロステック [online],日本,2019年12月12日,インターネット,<URL:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01130/120900004/>,[検索日 2024.09.02]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金融機関の各々が保有する顧客の金融取引情報に基づいて各々の金融機関に関して生成された複数のモデルと、分析対象の顧客の金融取引情報と
をそれぞれ秘匿化して取得し、それぞれの前記モデル
に該分析対象の顧客の金融取引
を入力して実行する秘密計算により
前記複数のモデルそれぞれによる複数の分析結果を得る秘密計算手段と、
前記秘密計算手段によって分析された前記複数のモデルによる分析結果を出力する出力手段と
を備える、秘密計算システム。
【請求項2】
前記出力手段は、いずれのモデルが分析した結果であるか特定不可能な形式で各モデルの分析結果を出力する
請求項1に記載の秘密計算システム。
【請求項3】
前記出力手段は、
前記分析対象の顧客の金融取引情報を取得した金融機関に関して生成されたモデルの分析結果と前記複数のモデルによって分析された各々の分析結果を
集約した結果とを対比可能に出力する
請求項1または2に記載の秘密計算システム。
【請求項4】
前記出力手段は、分析結果から導かれる判断が同じ前記モデルの数に基づいて分析結果を集約して分析結果を出力する
請求項3に記載の秘密計算システム。
【請求項5】
前記出力手段は、前記複数のモデルによる多数決に基づいて分析結果を出力する
請求項4に記載の秘密計算システム。
【請求項6】
前記出力手段は、さらに、出力する分析結果を分析した前記モデルの数又は割合を出力する
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の秘密計算システム。
【請求項7】
前記秘密計算手段は、秘密計算を、秘密分散により秘匿化された前記モデルと、秘密分散により秘匿化された前記金融取引情報とを用いて分析することで実行する
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の秘密計算システム。
【請求項8】
前記各モデルは、前記顧客が金融商品を購入する可能性を分析するモデルである
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の秘密計算システム。
【請求項9】
前記各モデルは、前記顧客が購入する可能性のある金融商品を予測するモデルである
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の秘密計算システム。
【請求項10】
前記各モデルは、金融商品を購入すると予測される顧客を予測するモデルである
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の秘密計算システム。
【請求項11】
前記各モデルは、M&Aの希望相手先の買収の可否又は買収予想額を分析するモデルである、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の秘密計算システム。
【請求項12】
前記各モデルは、前記顧客の与信情報を出力するモデルである
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の秘密計算システム。
【請求項13】
コンピュータが、
複数の金融機関の各々が保有する顧客の金融取引情報に基づいて各々の金融機関に関して生成された複数のモデルと、分析対象の顧客の金融取引情報と
をそれぞれ秘匿化して取得し、それぞれの前記モデル
に該分析対象の顧客の金融取引
を入力して実行する秘密計算により
前記複数のモデルそれぞれによる複数の分析結果を得、
分析された各モデルの分析結果を出力する、方法。
【請求項14】
複数の金融機関の各々が保有する顧客の金融取引情報に基づいて各々の金融機関に関して生成された複数のモデルと、分析対象の顧客の金融取引情報と
をそれぞれ秘匿化して取得し、それぞれの前記モデル
に該分析対象の顧客の金融取引
を入力して実行する秘密計算により
前記複数のモデルそれぞれによる複数の分析結果を得、
計算された各モデルの分析結果を出力する、ことをコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項15】
複数の第1のシステムと、入出力装置と、第2のシステムとを有する情報処理システムであって、
前記複数の第1のシステムは、それぞれ、
各々の金融機関が保有する顧客の金融取引情報に基づいて生成された、顧客の金融取引に関する分析を行うモデルを記憶するモデル記憶部と、
前記モデルを秘匿化した形式で第2のシステムへ送信するモデル出力手段と、を備え、
前記入出力装置は、
分析対象の顧客の金融取引情報を秘匿化した形式で第2のシステムへ送信し、
前記第2のシステムは、
前記複数の第1のシステムから取得した複数の前記モデル
と、前記入出力装置から取得した前記分析対象の顧客の金融取引情報と
をそれぞれ秘匿化して取得し、それぞれの前記モデル
に該分析対象の顧客の金融取引
を入力して実行する秘密計算により
前記複数のモデルそれぞれによる複数の分析結果を得る秘密計算手段と、
前記秘密計算手段によって分析された各モデルの分析結果を前記入出力装置へ出力する出力手段と、を備える
情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、秘密計算システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、個人情報などの機微データを機械学習させ、生成された学習モデルに基づいたデータ分析が行われている。機密性の保持が求められるデータは、秘匿化された形で分析されることが望ましい。特許文献1は、データを暗号化したまま計算できる秘密計算システムを開示している。
【0003】
特許文献2は、各社が保有するデータの詳細を他社に開示することなく、データを活用するシステムを開示している。特許文献3は、予測モデルを変換し、変換された予測モデルを秘密分散法により分散する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6795863号
【文献】特許第6803598号
【文献】特開2019-215512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金融機関は学習モデルを用いた分析を活用できる組織の一つである。金融機関ごとに保持する顧客の情報は異なるため、一の機関が保有する情報に基づく学習モデルと、他の機関が保持する情報に基づく学習モデルでは得られる結果が異なる可能性がある。しかし、他の学習モデルの分析結果も確認するために一の機関の学習モデルを他の機関に渡すことはためらわれる。特許文献1-3は、複数の学習モデルの分析結果を利用することは特に言及していない。
【0006】
本開示は、各金融機関のモデルを漏洩させずに、各モデルの分析結果の利用を可能にする秘密計算システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る秘密計算システムは、複数の金融機関の各々が保有する顧客の金融取引情報に基づいて各々の金融機関に関して生成された複数のモデルと、分析対象の顧客の金融取引情報とに基づいて、それぞれの前記モデルによる該分析対象の顧客の金融取引に関する分析を秘密計算により実行する秘密計算手段と、前記秘密計算手段によって分析された前記複数のモデルによる分析結果を出力する出力手段とを備える。
【0008】
本開示に係る方法は、複数の金融機関の各々が保有する顧客の金融取引情報に基づいて各々の金融機関に関して生成された複数のモデルと、分析対象の顧客の金融取引情報とに基づいて、それぞれの前記モデルによる該分析対象の顧客の金融取引に関する分析を秘密計算により実行し、分析された各モデルの分析結果を出力する、方法。
【0009】
本開示に係るプログラムは、複数の金融機関の各々が保有する顧客の金融取引情報に基づいて各々の金融機関に関して生成された複数のモデルと、分析対象の顧客の金融取引情報とに基づいて、それぞれの前記モデルによる該分析対象の顧客の金融取引に関する分析を秘密計算により実行し、計算された各モデルの分析結果を出力する、ことをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、各金融機関のモデルを漏洩させずに、各モデルの分析結果の利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第一の実施形態における情報処理システム10の構成を示すブロック図である。
【
図6】分析結果に基づく出力の他の例を示す図である。
【
図7】分析結果と集約結果を対比の例を示す図である。
【
図8】秘密計算システム100の動作例を示すフローチャートである。
【
図9】第二の実施形態における情報処理システム11の構成を示すブロック図である。
【
図10】情報処理システム11の動作例を示すフローチャートである。
【
図11】コンピュータ500のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第一の実施形態]
図1は、第一の実施形態における情報処理システム10の構成を示すブロック図である。第一の実施形態における情報処理システム10は、各金融機関が保有するモデルにより、金融取引情報に基づいた金融取引に関する分析を行うためのシステムである。金融取引に関する分析とは、例えば、金融機関と顧客との間の金融取引を支援するための分析である。さらに、金融取引に関する分析とは、金融機関による法人に対する助言を支援するための分析も含まれる。
【0013】
金融機関とは、例えば、銀行(都市銀行、ゆうちょ銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合を含む)、証券会社又は保険会社等の金融商品を扱っている業者の他、クレジットカード会社やキャッシュレス決済を扱う決済事業者を含む。また、第一の実施形態における金融機関として、自動車や家電製品のリース業やレンタル業を行っている物品賃貸業者も含まれる。金融商品としては、例えば、預金、債券、投資信託、外貨、保険、株式、先物取引、FX又は仮想通貨等が含まれる。
【0014】
顧客とは、個人の顧客と法人の顧客とを含む。金融取引情報は、例えば、過去の口座の入出金情報、過去に購入した金融商品の情報など、過去の取引の状況を含む。金融取引情報は、さらに、顧客属性を含んでもよい。顧客属性とは、個人の顧客の場合、例えば、顧客の職業、性別、年齢、居住地、家族構成などの属性を含む。
【0015】
なお、金融取引情報には、上述の情報の少なくとも一部が含まれなくてもよく、上述の情報以外の情報が含まれてもよい。
【0016】
金融機関は、例えば、顧客に対するおすすめの金融商品、または、金融商品の購入を提案すべき顧客の分析に基づいて、個人の顧客に金融商品の購入を助言する。また、金融機関は、法人の顧客に対する金融面での経営戦略や金融商品取引に関する助言を行い得る。金融機関は、分析に基づいて例えばM&A支援又は金融商品・サービスのレコメンド等を行う。
【0017】
図1を参照すると、情報処理システム10は、秘密計算システム100及び複数の金融機関システム200(200a、200b)を含む。
図1において、金融機関システム200の数は2つであるが、これに限られない。複数の金融機関システム200は、情報処理システム10による分析に参加する金融機関の数だけ含まれてもよい。
【0018】
秘密計算システム100は、例えば、金融分析サービスツール等を金融機関の各々に向け提供するサービス提供者によって運用される。サービス提供者は、各金融機関システム200から取得したモデルについて、各モデルによる分析結果を集約する金融分析サービス等を提供する。
【0019】
<金融機関システム200>
金融機関システム200は、第1のシステムの一例である。金融機関システム200のそれぞれは、モデル記憶部201(201a、201b)、モデル秘匿化部202(202a、202b)、及び、モデル出力部203(203a、203b)を備える。金融機関システム200は、個々の金融機関が保有し、運用する。
【0020】
モデル記憶部201は、各々の金融機関に関して生成されたモデルである、金融取引情報を分析するための学習済みモデルを格納する。モデル秘匿化部202は、モデル記憶部201が記憶するモデルを秘匿化する。モデル出力部203は、通信ネットワークを介して秘密計算システム100に秘匿化されたモデルを出力する。
【0021】
金融機関システム200は、さらに、モデル生成部204(204a、204b)、顧客情報記憶部205(205a、205b)、及び、入出力部206(206a、206b)を備えてもよい。
【0022】
顧客情報記憶部205は、各金融機関が保有する金融取引情報を記憶する。
【0023】
モデル生成部204は、顧客情報記憶部205に記憶された情報に基づいて、モデルを生成する。モデル生成部204は、金融機関の各々が保有する顧客の金融取引情報に基づいて、各々の金融機関に関してモデルを生成する。すなわち、第一の実施形態に係るモデル生成部204aは、顧客情報記憶部205aの情報に基づいてモデルを生成し、モデル生成部204bは、顧客情報記憶部205bの情報に基づいてモデルを生成する。
例えば、モデル生成部204は、顧客がある金融商品を購入するか否かと、別の金融商品を購入するか否かの関係の学習によりモデルを生成する。モデル生成部204は、顧客属性を含む金融取引情報に基づいてモデルを生成してもよい。例えば、モデル生成部204は、顧客属性と入出金情報又は金融商品の購入履歴の関係の学習によりモデルを生成する。あるいは、モデル生成部204は、顧客属性を含まない金融取引情報に基づいてモデルを生成してもよい。モデル生成部204は、生成したモデルをモデル記憶部201に記憶させる。
【0024】
入出力部206は、分析対象の顧客の金融取引情報を、通信ネットワークを介して秘密計算システム100に送信する。用いられるモデルが、各金融機関が保有する顧客属性に基づいて生成されていない場合、入出力部206は、分析対象の顧客の顧客属性を送信しなくてもよい。用いられるモデルが、顧客属性に基づいて生成されている場合、入出力部206は、分析対象の顧客の顧客属性を送信してもよいし、送信しなくてもよい。
【0025】
また、入出力部206は、秘密計算システム100によって実行された分析結果を受信する。受信した分析結果は、例えば任意のディスプレイに表示される。
【0026】
入出力部206は、顧客の金融取引情報を顧客情報記憶部205から取得し、秘密計算システム100に送信してもよい。入出力部206は、金融取引情報を秘匿化して、秘密計算システム100に送信してもよい。入出力部206は、入出力装置の一例である。
【0027】
(モデルの例)
モデルは、各金融機関にて、例えば、顧客の金融取引情報を用いて、特定の分析結果を出力するために、機械学習により予め学習されたモデルである。
【0028】
このようなモデルの例として、購買予測のモデルが挙げられる。購買予測のモデルは、顧客属性又は過去の取引の状況が入力されると、金融機関の金融商品を推薦するか否かの予測又はどの金融商品を推薦するかの予測を出力するものである。
【0029】
購買予測のモデルには、例えば、顧客属性、又は、過去一定期間の取引の状況を入力値として、顧客が金融商品を購入する可能性を出力するようなモデルが含まれる。顧客が金融商品を購入する可能性の分析結果は、顧客が買うか、買わないかの2択により表されてもよい。あるいは、購入の可能性などの分析結果は、割合など確率により表されてもよい。分析結果は、顧客が金融商品を買うか、買わないかのように2値ではなく、3種類以上の選択肢により表されてもよい。分析結果は、ランク、又は、スコアにより表されてもよい。
【0030】
モデルは、複数の顧客についての情報の入力に基づいて、複数の顧客のうち、金融商品を購入する顧客を予測して出力してもよい。モデルは、金融商品を購入すると予測される、複数の顧客を出力してもよい。
【0031】
モデルは、金融商品を購入する顧客の属性を学習し、予測するものであってもよい。このようなモデルは、金融商品を購入する顧客群を予測して出力してもよい。出力される顧客群は、例えば、1以上の共通の属性を有する。
【0032】
モデルは、顧客の情報の入力に基づいて、顧客が購入する可能性のある金融商品を予測して出力してもよい。モデルは、顧客が購入する可能性のある金融商品として、複数の金融商品を出力してもよい。
【0033】
機械学習するモデルは、決定木モデル、線形回帰モデル、ロジスティック回帰(Logistic regression)モデル、ニューラルネットワーク(Neural Networks)モデル等を含むが、これらに限らない。
【0034】
<秘密計算システム100>
次に、本実施形態の基本構成である秘密計算システム100について詳しく説明する。秘密計算システム100は、第2のシステムの一例である。秘密計算システム100は、秘密計算部101、及び、出力部102を備える。
【0035】
(秘密計算による分析)
秘密計算部101は、複数の金融機関の各々に関して生成された複数のモデルと、分析対象の顧客の金融取引情報とに基づいて、金融取引に関する分析を秘密計算により実行する。秘密計算とは、データを秘匿化したまま行われる計算である。ここでの秘密計算は、具体的には、複数のモデルの各々と分析対象の顧客の金融取引情報を秘匿化したまま分析を実行することである。
【0036】
秘密計算方法としては、準同型暗号等の特定の処理に対応した特殊な暗号化、ハードウェア上で隔離された状態で処理する高信頼実行環境(Trusted Execution Environment)、又は複数のサーバで秘密分散したまま計算処理(秘密分散計算)するマルチパーティ計算等を用いることができる。
【0037】
マルチパーティ計算の秘密計算の具体的方法としては、次の例が挙げられる。例えば、秘匿化データaが分散値x,y,…に秘密分散され、x,y,…はそれぞれサーバに送信される。次いで秘匿化データaが秘密分散されたままの状態で各サーバが互いに通信を行いつつ計算を進める。最後に各サーバの計算結果である出力の分散値u,v,…を集め、復元処理を行うことで、計算結果のF(a)が得られる。この計算結果が顧客の金融取引に関する分析結果となる。このため、秘密計算方法としてマルチパーティ計算を用いる場合、秘密計算部101は、複数のサーバにより実現される。マルチパーティ計算によれば、暗号鍵の管理や隔離された環境が不要であり、一般に計算処理がより速い。
【0038】
秘密計算部101は、例えば、秘密分散により秘匿化されたモデルと、秘密分散により秘匿化された金融取引情報とを用いて、分析を秘密計算により実行してもよい。
【0039】
秘密計算部101は、複数の金融機関の各々に関して生成された複数のモデルのそれぞれに、分析対象の顧客の金融取引情報を入力し、複数の分析結果を得る。
図2は、各モデルによる分析結果の例を示す図である。
図2において、例えば、Xは顧客がある金融商品を購入すると分析されたことを示し、Yは顧客が金融商品を購入しないと分析されたことを示す。「分析対象」は、各モデルにいずれの顧客の金融取引情報を入力したかを示す。
図2は、金融機関Aが保有する情報に基づいて生成されたモデルに、顧客C1の資産に関する情報を入力したときに、顧客C1は金融商品を購入すると分析されたことを示す。
【0040】
各モデルは、分析結果として、複数の顧客又は複数の金融商品を含む複数の値を出力する場合がある。
図3は、各モデルによる分析結果の他の例を示す図である。
図3において、ある金融商品を購入する可能性のある見込み顧客として、金融機関Aのモデルによれば、顧客C1、C2、C4、・・・が出力される。
【0041】
金融機関ごとにターゲット顧客層又は商圏が異なると、各金融機関が保持する顧客の情報が示す傾向は異なる場合がある。したがって、一の機関が保有する情報に基づく学習モデルと、他の機関が保持する情報に基づく学習モデルでは得られる分析結果が異なる可能性がある。
【0042】
(分析結果の出力)
秘密計算部101は、各モデルの分析結果を出力部102に送信する。出力部102は、秘密計算部101によって計算された各モデルの分析結果を出力する。出力部102は、例えば、金融機関システム200の入出力部206に分析結果を出力する。
【0043】
分析結果の出力の方法は特に限られない。出力部102は、いずれのモデルがどのような分析をしたかを示して分析結果を出力してもよい。
図4は、
図3の分析結果に基づく出力の例を示す図である。
図4は、金融機関A、Cのモデルによれば、顧客C1は金融商品を購入すると分析され、金融機関Bのモデルによれば、顧客C1は金融商品を購入しないと分析されたことを表す。
【0044】
出力部102は、同じ分析結果を計算したモデルの数などに基づいて、分析結果を任意の順番に並び替えて出力してもよい。同じ分析結果とは、分析結果が完全に同一である場合に限られず、分析結果の差が小さく、同一視して扱える場合を含みうる。例えば、同じ分析結果とは、分析結果から導かれる判断が同じであることを含む。出力部102は、例えば、同じ分析結果を計算したモデルが多い順番に分析結果を表示する集約結果を出力する。
図4において、例えば、見込み顧客は金融商品を購入すると分析したモデルが多い順番に表示される。
【0045】
出力部102は、いずれのモデルがどのような分析をしたかとともに、同じ分析結果を計算したモデルの数又は割合を出力してもよい。
【0046】
出力部102は、いずれのモデルが分析した結果であるか特定不可能な形式で、各モデルの分析結果を出力してもよい。特定不可能な形式で出力部102が分析結果を出力し、いずれのモデルが分析した結果であるかを示さない場合、各モデルの分析の傾向が漏洩するリスクを低減しうる。
【0047】
いずれのモデルが分析した結果であるか特定不可能な形式の例として、例えば、出力部102は、それぞれの分析結果ごとに、各分析結果を出力したモデルの数を出力してもよい。また、出力部102は、各分析結果を出力したモデルの割合を出力してもよい。
図5は、
図2の分析結果に基づく出力の例を示す図である。
図5において、2つのモデルからXの分析結果が得られ、1つのモデルからYの分析結果が得られたことが示されている。
【0048】
出力部102が、各分析結果を出力したモデルの数又はモデルの割合を出力することで、分析結果の傾向や分析の確からしさを示せる。
【0049】
出力部102は、複数のモデルによって分析された各々の分析結果を集約して出力してもいい。分析結果を集約することは、複数の分析結果をより少ない数の分析結果または値に代表させることを含む。分析結果が集約された出力は集約結果とも呼ばれる。出力部102は、集約結果を、いずれのモデルがどのような分析をしたかとともに出力してもよいし、いずれのモデルが分析した結果であるか示さずに出力してもよい。
【0050】
集約の例として、出力部102は、分析結果から導かれる判断が同じであるモデルの数に基づいて、分析結果を出力してもよい。例えば、出力部102は、複数のモデルによる多数決に基づいて分析結果を出力してもよい。具体的には、出力部102は、同じ分析結果を算出したモデルの数が最も多い分析結果を出力してもよい。
図6は、分析結果の出力の他の例を示す図である。
図2の分析結果において、Xと分析したモデルが最も多いから、
図6に示すように、出力部102は、Xを顧客C1についての分析結果として出力してもよい。
【0051】
出力部102が1つの分析結果を出力することで、ユーザにとって単純で分かりやすい結果が得られる。また、いずれのモデルがどのような分析結果を出力したか示さなくても、複数のモデルに基づいた分析結果を示せる。
【0052】
出力部102が出力する集約結果は、1つであってもよいが、1つには限られない。出力部102は、2つ以上のモデルをそれぞれ含む複数のグループごとに、分析結果を集約して出力してもよい。
【0053】
例えば、出力部102は、同じ分析結果を算出したモデルの数が2番目以降に多い分析結果を出力に含めてもよい。出力部102は、出力する分析結果が1つの場合も、2以上の場合も、該分析結果を出力したモデルの数又は割合を出力してもよい。
【0054】
集約の他の例として、出力部102は、各モデルが出力した分析結果のスコアの平均を分析結果として出力してもよい。あるいは、出力部102は、モデルごとに分析結果のスコアの重み付けを行って得られたスコアを出力してもよい。モデルごとの重みは任意の方法で決定される。出力部102が、複数の分析結果のスコアに基づくスコアを出力することで、各モデルの具体的なスコアを示さなくても、各モデルの分析を考慮した分析結果を出力できる。
【0055】
出力部102は、一のモデルによる分析結果と、複数のモデルによる分析結果を集約した結果とを対比可能に出力してもよい。一のモデルの分析結果は、対比される集約結果に含むよう集約されてもよいし、集約の際に含まれなくてもよい。対比を行う一のモデルは、任意に定められるが、例えば、分析対象の顧客の金融取引情報を取得した金融機関システム200から取得されたモデルであってもよい。
【0056】
図7は、出力部102が出力する分析結果と集約結果を対比の例を示す図である。例えば、入出力部206が金融機関Aの顧客の情報を送信するよう、金融機関Aの担当者は金融機関システム200を操作する。出力部102は、
図7に示すように、金融機関Aのモデルの分析結果と、複数のモデルの分析結果を集約した結果と、を横に並べて出力する。
図7において、集約結果は、例えば、複数のモデルの各々によって分析されたスコアの平均である。これにより担当者は、自社のモデルの分析結果が、他のモデルによる分析結果と異なっているか容易に対比できる。
【0057】
図7において、出力される分析結果の数及び順番は任意の方法で定められる。数及び順番は、例えば、一のモデルの分析結果と他の複数のモデルの集約結果の類似度に基づいて定められてもよい。出力部102は、例えば、分析結果と集約結果が一致している分析結果を出力する。あるいは、出力部102は、分析結果が集約結果と類似している順番に分析結果が出力する。
【0058】
(動作例)
以上のように構成された秘密計算システム100の動作について説明する。
図8は、秘密計算システム100の動作例を示すフローチャートである。
【0059】
秘密計算部101は、複数の金融機関システム200のそれぞれから、秘匿化されたモデルを取得する(ステップS101)。例えば、秘密計算部101は、モデル出力部203a、203bからモデルを取得する。秘密計算部101は、分析を行うごとに金融機関システム200からモデルを取得してもよい。あるいは、秘密計算部101は、予め金融機関システム200から受信され、秘匿化されたモデルを、図示しない記憶部から取得してもよい。
【0060】
秘密計算部101は、金融機関システム200から秘匿化された顧客の金融取引情報を取得する(ステップS102)。例えば、秘密計算部101は、金融機関システム200aの入出力部206aから分析対象の顧客の金融取引情報を取得する。このとき、秘密計算部101は、複数の顧客の金融取引情報を取得してもよい。
【0061】
秘密計算部101は、秘密計算を実行し、複数のモデルのそれぞれによる分析結果を得る(ステップS103)。具体的には、秘密計算部101は、秘匿化されたモデルのそれぞれに、秘匿化された顧客の金融取引情報を入力し、複数の分析結果を得る。なお、秘密計算部101は、金融機関システム200aから取得した情報に基づいて分析を行うとき、金融機関システム200aのモデル出力部203aから取得されるモデルによる分析を省略してもよい。該モデルによる分析は省略されてもよく、あるいは、金融機関システム200aにおいて行われてもよいためである。秘密計算システム100は、金融機関システム200aからモデルによる分析結果を取得してもよい。
【0062】
出力部102は、秘密計算部101から複数の分析結果を取得し、出力する(ステップS104)。具体的には、例えば、分析対象の顧客の金融取引情報を送信した金融機関システム200aの入出力部206aに集約結果を出力する。
【0063】
一実施形態によれば、秘密計算部101は、複数のモデルと、顧客の金融取引情報とに基づいて、それぞれのモデルによる分析を秘密計算により実行する。出力部102は、秘密計算部101によって計算された各モデルの分析結果を出力する。したがって、各金融機関のモデルを漏洩させずに、各モデルの分析結果の利用が可能となる。
【0064】
[第二の実施形態]
次に、第二の実施形態に係る情報処理システム11について説明する。第二の実施形態における情報処理システム11は、第一の実施形態と同様に、各金融機関が保有するモデルにより、金融取引情報に基づいた金融取引に関する分析を行うためのシステムである。以下、本実施形態の説明が不明確にならない範囲で、前述の説明と重複する内容については説明を省略する。
【0065】
図9は、第二の実施形態における情報処理システム11の構成を示すブロック図である。情報処理システム11は、秘密計算システム100、複数の金融機関システム210(210a、210b)、及び、入出力装置300を含む。
図9において、金融機関システム210の数は2つであるが、これに限られない。複数の金融機関システム200は、情報処理システムによる分析に参加する金融機関の数だけ備えられてもよい。また、入出力装置300の数は1つに限られず、複数含まれてもよい。
【0066】
秘密計算システム100の構成は第一の実施形態に係る秘密計算システム100と基本的に同様である。秘密計算システム100は第2のシステムの一例である。
【0067】
金融機関システム210のそれぞれは、第一の実施形態の金融機関システム200と同様に、モデル記憶部201、モデル秘匿化部202、及び、モデル出力部203を備える。金融機関システム210は、第1のシステムの一例である。
【0068】
モデル記憶部201は、各々の金融機関に関して生成されたモデルである、金融取引情報を分析するための学習済みモデルを予め格納してもよい。複数の金融機関の各々が保有する顧客の金融取引情報は異なるから、各々の金融機関に関して生成されるモデルは異なる。各モデル記憶部201a、201bは異なるモデルを格納する。
【0069】
モデル秘匿化部202が秘匿化したモデルを、モデル出力部203が秘密計算システム100に送信する。モデル秘匿化部202は、モデル出力部203が備えていてもよい。
【0070】
第二の実施形態において、金融機関システム210は、第一の実施形態の金融機関システム200のモデル生成部204、顧客情報記憶部205、及び、入出力部206を備えない場合について説明する。ただし、金融機関システム210は、モデル生成部204、顧客情報記憶部205、及び、入出力部206のいずれかを備えてもよい。
【0071】
入出力装置300は、分析対象の顧客について、顧客の情報を秘密計算システム100に入力するために用いられる。入出力装置300は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォンを含む任意の端末により実現されてもよい。
【0072】
まず入出力装置300は、分析対象の顧客の金融取引情報を取得する。具体的には、金融取引情報は、例えば、金融機関の担当者、又は、顧客によって、入出力装置300に入力される。あるいは、金融取引情報は、入出力装置300を介して、図示しない他の記憶部から取得される。
【0073】
入出力装置300は、第一の実施形態に係る入出力部206の代わりに用いられうる。すなわち、分析される顧客の情報は、顧客情報記憶部205に記憶されていなくてもよい。なお、第一の実施形態において、入出力部206に加えて、入出力装置300がさらに設けられてもよい。
【0074】
入出力装置300は、取得した金融取引情報を秘匿化して秘密計算システム100に送信する。入出力装置300は、図示しない秘匿化部に情報を送信し、情報を秘匿化してから秘密計算システム100に送信するよう秘匿化部に指示してもよい。
【0075】
第二の実施形態において、秘密計算システム100は、第一の実施形態と同様に、各金融機関システム210から秘匿化されたモデルを取得する。さらに、秘密計算システム100は入出力装置300から分析される顧客の情報を取得する。
【0076】
以上のように構成された情報処理システム11の動作について、
図10のフローチャートを参照して説明する。
【0077】
まず金融機関システム210のモデル秘匿化部202はモデル記憶部201に記憶されたモデルを秘匿化する。モデル出力部203は、秘密計算システム100に秘匿化されたモデルを送信する(ステップS201)。
【0078】
秘密計算システム100の秘密計算部101は、秘匿化されたモデルを取得する(ステップS202)。
【0079】
次に、入出力装置300は、金融取引情報を秘密計算システム100に送信する(ステップS203)。秘密計算システム100は、入出力装置300から秘匿化された金融取引情報を取得する(ステップS204)。
【0080】
秘密計算システム100の秘密計算部101は、取得したモデルに金融取引情報を入力して得られるそれぞれのモデルによる分析を、秘密計算により実行する(ステップS205)。
【0081】
秘密計算システム100の出力部102は、各モデルの分析結果を出力し(ステップS206)、入出力装置300に送信する。入出力装置300は、秘密計算システム100から分析結果を受信する(ステップS207)。
【0082】
一実施形態によれば、金融機関システム200のモデル記憶部201は、各々の金融機関が保有する金融取引情報に基づいて生成された、顧客の金融取引に関する分析を行うモデルを記憶する。金融機関システム200のモデル出力部203は、モデルを秘匿した形式で秘密計算システム100へ送信する。入出力装置300は、金融取引情報を秘匿化した形式で秘密計算システム100へ送信する。秘密計算システム100の秘密計算部101は、秘匿化された複数のモデルと、金融取引情報とに基づいて、それぞれのモデルによる分析を秘密計算により実行する。秘密計算システム100の出力部102は、秘密計算部101によって計算された各モデルの分析結果を出力する。したがって、各金融機関のモデルを漏洩させずに、各モデルの分析結果の利用が可能となる。
【0083】
[変形例]
<モデルの他の例>
第一及び第二の実施形態に係るモデルとして、例えば、ローン審査、又は解約予測等に用いるモデルがさらに挙げられる。ローン審査のモデルは、顧客属性や返済状況等の金融取引情報を入力値として貸し出す金額を出力するものである。解約予測のモデルは、各金融機関の過去一定期間の取引の状況を入力値としてローンの繰り上げ返済の可能性や定期預金解約・口座解約の可能性を金融機関の顧客毎にスコア化した結果を出力するものである。
【0084】
ここで、法人向けの金融分析ツールで利用される各モデルの詳細について説明する。各金融機関は過去に法人の顧客に対する助言を行った金融取引の成功例に基づくM&A支援のモデルを保有する。M&A支援のモデルは、買収側が利用するモデルと売り手(被買収側)側が利用するモデルとがある。買収側モデルは、例えば、過去の成功例を基に業種、売上又は地域等の金融取引情報を教師データとして学習したモデルである。このモデルは、買収を希望する企業名等が入力されると、買収の可否や買収額を出力する。売り手側モデルは、例えば、過去の成功例を基に業種、売上又は地域等の金融取引情報を教師データとして学習したモデルである。このモデルは、希望する買収先企業の企業名等が入力されると、その企業が買収を希望するかの可能性や希望買収予想額を出力する。これらのモデルによれば、買い手と売り手のマッチングの正確性が図れ、融資機会を増やすことができる。
【0085】
モデルは、顧客の金融取引情報の入力に基づいて、顧客の与信情報(与信枠)を出力してもよい。このようなモデルは、顧客の与信枠を設定する融資審査の支援に用いられる。融資審査のモデルは、例えば、既存顧客の返済状況を入力値して融資額(増額・借り換え・期間延長)を出力するものである。
【0086】
情報処理システム10、11は、金融機関の人事(評価/適正/異動)に関するモデルも利用できる。人事に関するモデルは、従業員の過去一定期間の人事情報からその従業員の離職確率・昇進確率・異動の必要性と異動先等を予測するものである。
【0087】
<金融機関の組み合わせ>
また、第一、第二の実施形態において、複数の金融機関は、同じ業種体の金融機関に限られず、銀行、証券会社又は保険会社といった、銀行と銀行以外の金融機関とで構成されていても構わない。複数の金融機関が銀行同士で構成されている場合であっても、都市銀行と地方銀行等の規模の異なる銀行の同士で構成されていても構わない。
【0088】
[ハードウェア構成]
上述した各実施形態において、秘密計算システム100、及び、金融機関システム200、210を含む各装置の各構成要素は、機能単位のブロックを示している。各装置の各構成要素の一部又は全部は、コンピュータ500とプログラムとの任意の組み合わせにより実現されてもよい。
【0089】
図11は、コンピュータ500のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
図11を参照すると、コンピュータ500は、例えば、CPU(Central Processing Unit)501、ROM(Read Only Memory)502、RAM(Random Access Memory)503、プログラム504、記憶装置505、ドライブ装置507、通信インタフェース508、入力装置509、入出力インタフェース511、及び、バス512を含む。
【0090】
プログラム504は、各装置の各機能を実現するための命令(instruction)を含む。プログラム504は、予め、ROM502やRAM503、記憶装置505に格納される。CPU501は、プログラム504に含まれる命令を実行することにより、各装置の各機能を実現する。例えば、秘密計算システム100のCPU501がプログラム504に含まれる命令を実行することにより、秘密計算システム100の機能を実現する。また、RAM503は、各装置の各機能において処理されるデータを記憶してもよい。
【0091】
ドライブ装置507は、記録媒体506の読み書きを行う。通信インタフェース508は、通信ネットワークとのインタフェースを提供する。入力装置509は、例えば、マウスやキーボード、内蔵のキーボタン、タッチパネル等であり、金融機関の担当者又は顧客等からの情報の入力を受け付ける。出力装置510は、例えば、ディスプレイであり、金融機関の担当者又は顧客等へ情報を出力(表示)する。入出力インタフェース511は、周辺機器とのインタフェースを提供する。バス512は、これらハードウェアの各構成要素を接続する。なお、プログラム504は、通信ネットワークを介してCPU501に供給されてもよいし、予め、記録媒体506に格納され、ドライブ装置507により読み出され、CPU501に供給されてもよい。
【0092】
なお、
図11に示されているハードウェア構成は例示であり、これら以外の構成要素が追加されていてもよく、一部の構成要素を含まなくてもよい。
【0093】
各装置の実現方法には、様々な変形例がある。例えば、各装置は、構成要素毎にそれぞれ異なるコンピュータとプログラムとの任意の組み合わせにより実現されてもよい。また、各装置が備える複数の構成要素が、一つのコンピュータとプログラムとの任意の組み合わせにより実現されてもよい。
【0094】
また、各装置の各構成要素の一部又は全部は、プロセッサ等を含む汎用又は専用の回路(circuitry)や、これらの組み合わせによって実現されてもよい。これらの回路は、単一のチップによって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。各装置の各構成要素の一部又は全部は、上述した回路等とプログラムとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0095】
また、各装置の各構成要素の一部又は全部が複数のコンピュータや回路等により実現される場合、複数のコンピュータや回路等は、集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。
【0096】
以上、実施形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、各実施形態における構成は、本開示のスコープを逸脱しない限りにおいて、互いに組み合わせることが可能である。
【0097】
例えば、複数の動作をフローチャートの形式で順番に記載してあるが、その記載の順番は複数の動作を実行する順番を限定するものではない。このため、各実施形態を実施するときには、その複数の動作の順番は内容的に支障しない範囲で変更することができる。
【0098】
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のように記載され得るが、以下には限られない。
【0099】
[付記1]
複数の金融機関の各々が保有する顧客の金融取引情報に基づいて各々の金融機関に関して生成された複数のモデルと、分析対象の顧客の金融取引情報とに基づいて、それぞれの前記モデルによる該分析対象の顧客の金融取引に関する分析を秘密計算により実行する秘密計算手段と、
前記秘密計算手段によって分析された前記複数のモデルによる分析結果を出力する出力手段と
を備える、秘密計算システム。
【0100】
[付記2]
前記出力手段は、いずれのモデルが分析した結果であるか特定不可能な形式で各モデルの分析結果を出力する
付記1に記載の秘密計算システム。
【0101】
[付記3]
前記出力手段は、前記複数のモデルによって分析された各々の分析結果を集約して出力する
付記1または2に記載の秘密計算システム。
【0102】
[付記4]
前記出力手段は、分析結果から導かれる判断が同じ前記モデルの数に基づいて分析結果を集約して分析結果を出力する
付記3に記載の秘密計算システム。
【0103】
[付記5]
前記出力手段は、前記複数のモデルによる多数決に基づいて分析結果を出力する
付記4に記載の秘密計算システム。
【0104】
[付記6]
前記出力手段は、さらに、出力する分析結果を分析した前記モデルの数又は割合を出力する
付記1乃至5のいずれか1つに記載の秘密計算システム。
【0105】
[付記7]
前記秘密計算手段は、秘密計算を、秘密分散により秘匿化された前記モデルと、秘密分散により秘匿化された前記金融取引情報とを用いて分析することで実行する
付記1乃至6のいずれか1つに記載の秘密計算システム。
【0106】
[付記8]
前記各モデルは、前記顧客が金融商品を購入する可能性を分析するモデルである
付記1乃至7のいずれか1つに記載の秘密計算システム。
【0107】
[付記9]
前記各モデルは、前記顧客が購入する可能性のある金融商品を予測するモデルである
付記1乃至7のいずれか1つに記載の秘密計算システム。
【0108】
[付記10]
前記各モデルは、金融商品を購入すると予測される顧客を予測するモデルである
付記1乃至7のいずれか1つに記載の秘密計算システム。
【0109】
[付記11]
前記各モデルは、M&Aの希望相手先の買収の可否又は買収予想額を分析するモデルである、
付記1乃至7のいずれか1つに記載の秘密計算システム。
【0110】
[付記12]
前記各モデルは、前記顧客の与信情報を出力するモデルである
付記1乃至7のいずれか1つに記載の秘密計算システム。
【0111】
[付記13]
複数の金融機関の各々が保有する顧客の金融取引情報に基づいて各々の金融機関に関して生成された複数のモデルと、分析対象の顧客の金融取引情報とに基づいて、それぞれの前記モデルによる該分析対象の顧客の金融取引に関する分析を秘密計算により実行し、
分析された各モデルの分析結果を出力する、方法。
【0112】
[付記14]
複数の金融機関の各々が保有する顧客の金融取引情報に基づいて各々の金融機関に関して生成された複数のモデルと、分析対象の顧客の金融取引情報とに基づいて、それぞれの前記モデルによる該分析対象の顧客の金融取引に関する分析を秘密計算により実行し、
計算された各モデルの分析結果を出力する、ことをコンピュータに実行させるプログラムを非一時に記録する記録媒体。
【0113】
[付記15]
複数の第1のシステムと、入出力装置と、第2のシステムとを有する情報処理システムであって、
前記複数の第1のシステムは、それぞれ、
各々の金融機関が保有する顧客の金融取引情報に基づいて生成された、顧客の金融取引に関する分析を行うモデルを記憶するモデル記憶部と、
前記モデルを秘匿化した形式で第2のシステムへ送信するモデル出力手段と、を備え、
前記入出力装置は、
分析対象の顧客の金融取引情報を秘匿化した形式で第2のシステムへ送信し、
前記第2のシステムは、
前記複数の第1のシステムから取得した複数の前記モデルのそれぞれと、前記入出力装置から取得した前記分析対象の顧客の金融取引情報とに基づいて、それぞれの前記モデルによる該分析対象の顧客の金融取引に関する分析を秘密計算により実行する秘密計算手段と、
前記秘密計算手段によって分析された各モデルの分析結果を前記入出力装置へ出力する出力手段と、を備える
情報処理システム。
【符号の説明】
【0114】
100 秘密計算システム
101 秘密計算部
102 出力部
200、210 金融機関システム
201 モデル記憶部
202 モデル秘匿化部
203 モデル出力部
204 モデル生成部
205 顧客情報記憶部
206 入出力部
300 入出力装置
500 コンピュータ