(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】質量分析装置
(51)【国際特許分類】
H01J 49/02 20060101AFI20250109BHJP
H01J 49/24 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01J49/02 500
H01J49/24
(21)【出願番号】P 2023552677
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2021037483
(87)【国際公開番号】W WO2023058248
(87)【国際公開日】2023-04-13
【審査請求日】2024-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】坂越 祐介
【審査官】藤田 健
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/168220(WO,A1)
【文献】特開2001-344954(JP,A)
【文献】特開平8-077962(JP,A)
【文献】特開2012-003946(JP,A)
【文献】特開2005-124326(JP,A)
【文献】特開2004-022134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の質量分析に用いられる真空容器と、
分析対象の試料を検出する検出器と、
前記検出器を保持する緩衝材と、
前記緩衝材を前記真空容器に押圧する押圧部材と、
前記押圧部材による前記緩衝材の押し潰し量を規制する潰し量規制機構とを備え
、
前記真空容器は、互いに対向する第1の側壁と第2の側壁とを含み、
前記真空容器の内部を真空にするための真空ポンプが前記第1の側壁の外面に取り付けられ、
前記押圧部材は、前記第2の側壁の内面に取り付けられることにより前記緩衝材を押圧する、質量分析装置。
【請求項2】
前記潰し量規制機構は、筒状部材を含み、
前記押圧部材は、ねじを含み、前記筒状部材と前記緩衝材とが挿通された状態で前記真空容器に螺合されることにより、前記緩衝材を前記真空容器に押圧する、請求項1記載の質量分析装置。
【請求項3】
試料の質量分析に用いられる真空容器と、
分析対象の試料を検出する検出器と、
前記検出器を保持する緩衝材と、
前記緩衝材を前記真空容器に押圧する押圧部材と、
前記押圧部材による前記緩衝材の押し潰し量を規制する潰し量規制機構とを備え、
前記緩衝材は、第1の緩衝材と第2の緩衝材とを含み、
前記押圧部材は、前記第1の緩衝材を前記真空容器に押圧する第1の押圧部材と、前記第2の緩衝材を前記真空容器に押圧する第2の押圧部材とを含み、
前記潰し量規制機構は、前記第1の押圧部材による前記第1の緩衝材の押し潰し量を規制する第1の潰し量規制機構と、前記第2の押圧部材による前記第2の緩衝材の押し潰し量を規制する第2の潰し量規制機構とをさらに含み、
前記検出器は、前記第1の緩衝材と前記第2の緩衝材とにより狭持され
、前記第1の緩衝材および前記第2の緩衝材にそれぞれ当接する第1の切欠部および第2の切欠部が形成された基部を含む、質量分析装置。
【請求項4】
前記第1の緩衝材と前記第2の緩衝材とは、上下方向に並ぶように配置される、請求項
3記載の質量分析装置。
【請求項5】
前記第1の緩衝材には、前記第1の切欠部と当接する第1の溝部が形成され、
前記第2の緩衝材には、前記第2の切欠部と当接する第2の溝部が形成される、請求項
3または4記載の質量分析装置。
【請求項6】
前記真空容器は、前記押圧部材が取り付けられる取付具を含み、
前記押圧部材は、前記取付具に取り付けられることにより前記緩衝材を押圧する、請求項1
~4のいずれか一項に記載の質量分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料に含まれる成分の質量を分析する分析装置として質量分析装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された質量分析装置においては、真空チャンバ内にイオン源、イオン分離装置および検出部が配置される。真空チャンバ内は真空ポンプにより真空化される。
【0003】
イオン源により分析対象の試料から生成されたイオンは、イオン分離装置により質量ごとに分離される。イオン分離装置により分離されたイオンは、質量に対応する時間差で検出部により順次検出され、検出強度を示す検出信号が出力される。検出信号に基づいて、イオンの質量と検出強度との関係を示すマスプロファイルデータが生成される。
【文献】特開2020-087573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、真空チャンバ内を真空化するための真空ポンプは、真空チャンバに取り付けられる。また、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプは、1分間に数万回程度の振動数で振動する。したがって、真空ポンプの振動は、真空チャンバを通して検出部、または検出部に接続されたケーブルに伝達する。検出部等に伝達する振動が大きい場合、振動に起因する電気ノイズが検出信号に混入することにより、検出信号のS/N(信号/ノイズ)比が低下する。
【0005】
また、検出部等に伝達する振動の大きさは、真空ポンプの取り付け作業者により異なるため、マスプロファイルデータを高い再現性で得ることは容易ではない。そのため、真空ポンプの振動の影響を低減させることが求められる。
【0006】
本発明の目的は、真空ポンプの振動の影響が低減された質量分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、試料の質量分析に用いられる真空容器と、分析対象の試料を検出する検出器と、前記検出器を保持する緩衝材と、前記緩衝材を前記真空容器に押圧する押圧部材と、前記押圧部材による前記緩衝材の押し潰し量を規制する潰し量規制機構とを備え、前記真空容器は、互いに対向する第1の側壁と第2の側壁とを含み、前記真空容器の内部を真空にするための真空ポンプが前記第1の側壁の外面に取り付けられ、前記押圧部材は、前記第2の側壁の内面に取り付けられることにより前記緩衝材を押圧する、質量分析装置に関する。
本発明の他の態様は、試料の質量分析に用いられる真空容器と、分析対象の試料を検出する検出器と、前記検出器を保持する緩衝材と、前記緩衝材を前記真空容器に押圧する押圧部材と、前記押圧部材による前記緩衝材の押し潰し量を規制する潰し量規制機構とを備え、前記緩衝材は、第1の緩衝材と第2の緩衝材とを含み、前記押圧部材は、前記第1の緩衝材を前記真空容器に押圧する第1の押圧部材と、前記第2の緩衝材を前記真空容器に押圧する第2の押圧部材とを含み、前記潰し量規制機構は、前記第1の押圧部材による前記第1の緩衝材の押し潰し量を規制する第1の潰し量規制機構と、前記第2の押圧部材による前記第2の緩衝材の押し潰し量を規制する第2の潰し量規制機構とをさらに含み、前記検出器は、前記第1の緩衝材と前記第2の緩衝材とにより狭持され、前記第1の緩衝材および前記第2の緩衝材にそれぞれ当接する第1の切欠部および第2の切欠部が形成された基部を含む、質量分析装置に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、真空ポンプの振動の影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は一実施の形態に係る質量分析装置の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は検出器の構成を示す模式的斜視図である。
【
図3】
図3は真空容器の下流端部における内部の構造を示す部分拡大図である。
【
図5】
図5は検出器の固定方法を説明するための図である。
【
図6】
図6は第1の変形例における検出器の固定方法を説明するための図である。
【
図7】
図7は第2の変形例における検出器の固定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)質量分析装置の構成
以下、実施の形態に係る質量分析装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、一実施の形態に係る質量分析装置の構成を示す模式図である。
図1に示すように、質量分析装置100は、真空容器110、真空ポンプ120、イオンレンズ130、四重極マスフィルタ140、検出器150、電源回路160および処理部170を備える。
【0011】
真空容器110は、例えば金属により形成され、グラウンド電位に維持される。また、真空容器110は、イオンが飛行する方向に延びる略直方体形状を有する。以下の説明では、幅方向に対抗する真空容器110の一対の側壁をそれぞれ側壁111,112と呼ぶ。真空ポンプ120は、例えばターボ分子ポンプであり、真空容器110の側壁111の外面に取り付けられる。また、真空容器110においてイオンが飛行する方向を下流と定義し、その反対方向を上流と定義する。
【0012】
真空容器110は、上流に位置するイオン化室101と、下流に位置する分析室102とを含む。イオン化室101には、例えば図示しない液体クロマトグラフが接続され、液体クロマトグラフから測定対象の液体試料が供給される。イオン化室101においては、例えば図示しないESIプローブ(エレクトロスプレイイオン化用プローブ)により、液体試料に電荷が付与されつつ液体試料が噴霧される。これにより、液体試料中の成分がイオン化室101内でイオン化する。通常は、各成分の1価のイオンが生成される。
【0013】
分析室102は、真空ポンプ120により例えば真空度(10-2~10-3Pa)の真空状態に維持される。分析室102には、イオンレンズ130、四重極マスフィルタ140および検出器150が上流から下流に向かってこの順で配置される。イオン化室101内で生成されたイオンは、分析室102のイオンレンズ130に導かれる。イオンレンズ130に導かれたイオンは、軸Axに平行に飛行するように収束されるとともにイオンレンズ130を通過する。
【0014】
四重極マスフィルタ140は、4本のロッド電極141~144を含む。ロッド電極141とロッド電極142とが軸Axに関して対称に配置され、ロッド電極143とロッド電極144とが軸Axに関して対称に配置される。ロッド電極141~144は、軸Axから距離r離れた位置に等角度間隔で設けられる。これにより、ロッド電極141~144で囲まれる円筒状の空間SPが形成される。空間SPは、軸Axの方向に延びる。
【0015】
電源回路160は、直流電圧+Uと高周波交流電圧+Vcosωtとの加算電圧+(U+Vcosωt)をロッド電極141,142に印加する。また、電源回路160は、直流電圧-Uと高周波交流電圧-Vcosωtとの加算電圧-(U+Vcosωt)をロッド電極143,144に印加する。これにより、空間SP内に四重極電場が形成される。ここで、Uは直流電圧の値であり、Vは高周波交流電圧の振幅(最大値)であり、ωは角周波数であり、tは時間である。加算電圧+(U+Vcosωt)と加算電圧-(U+Vcosωt)とは、互いに180°ずれた位相を有する。
【0016】
イオンレンズ130を通過したイオンは、空間SPに導かれ、空間SP内の四重極電場によりMathieuの方程式に従って空間SP内で振動する。空間SP内のイオンが不安定に振動する場合、空間SP内のイオンは四重極マスフィルタ140の空間SPを通過することができない。特定の質量電荷比を有するイオンは、空間SP内で安定的に振動し、空間SPを通過することができる。
【0017】
検出器150は、例えば電子増倍管である。検出器150は、四重極マスフィルタ140の空間SPを通過したイオンを検出し、検出強度を示す検出信号を出力する。なお、検出器150におけるグラウンド電極は、1本の接続線によりグラウンド電位に維持された真空容器110に接続される。処理部170は、例えばCPU(中央演算処理装置)を含み、検出器150により出力された検出信号を処理することにより、イオンの質量電荷比と検出強度との関係を示すマススペクトルを作成する。
【0018】
(2)検出器の固定方法
以下、検出器150の固定方法について説明する。
図2は、検出器150の構成を示す模式的斜視図である。
図2に示すように、検出器150は、真空容器110に固定されるための基部151を含む。基部151は、平板形状を有し、垂直な姿勢で配置される。基部151の上端には、略半円形状を有する2つの切欠部152が所定の間隔で形成される。基部151の下端には、略半円形状を有する2つの切欠部152が所定の間隔で形成される。
【0019】
図3は、真空容器110の下流端部における内部の構造を示す部分拡大図である。
図3に示すように、検出器150は、基部151が軸Axに沿うように真空容器110(分析室102)の下流端部に配置される。基部151が真空容器110に取り付けられることにより、検出器150が真空容器110に固定される。本例では、検出器150は、真空容器110の一部である取付具10を介して、真空容器110に固定される。
【0020】
図4は、取付具10の構成を示す図である。
図4に示すように、取付具10は、上下方向に延びる平板状の基部11を有する。基部11の上端部および下端部の各々には、略水平に屈曲された屈曲部12が設けられる。上側の屈曲部12の端部には、下方に突出する2つの取付片13が所定の間隔で設けられる。下側の屈曲部12の端部には、上方に突出する2つの取付片13が所定の間隔で設けられる。各取付片13には、ねじ孔14が形成される。4つのねじ孔14は、検出器150の基部151に形成された4つの切欠部152(
図2)にそれぞれ対応する。
【0021】
基部11は、複数(
図4の例では4個)のねじ15により真空容器110に取り付けられる。これにより、取付具10が真空容器110に固定される。また、検出器150が取付具10に取り付けられることにより、検出器150が真空容器110に固定される。本例では、検出器150は、真空ポンプ120(
図1)が取り付けられる真空容器110の側壁111と対向する側壁112の内面に固定される。
【0022】
図5は、検出器150の固定方法を説明するための図である。
図5に示すように、本例では、取付具10の各ねじ孔14に対応する緩衝材20、スペーサ30および押圧部材40を用いて検出器150が取付具10に取り付けられる。すなわち、本例では、検出器150は、4個の緩衝材20、4個のスペーサ30および4個の押圧部材40により取付具10に取り付けられる。
【0023】
緩衝材20は、例えばゴム部材により形成される。緩衝材20は、弾性を有しかつ真空環境での使用に耐える材料であれば、他の材料により形成されてもよい。緩衝材20は、筒状を有する。緩衝材20の外径r1は、検出器150の切欠部152の半径r2よりも大きい。緩衝材20の外周面の軸方向における略中央部には、溝部21が形成される。溝部21における緩衝材20の外径は、検出器150の切欠部152の半径よりもわずかに大きい。
【0024】
スペーサ30は、例えばステンレスまたはアルミニウムにより形成される。スペーサ30は、剛性を有しかつ真空環境での使用に耐える材料であれば、他の材料により形成されてもよい。スペーサ30は、筒状部材の例であり、筒状部31およびフランジ部32を含む。筒状部31は、円筒形状を有する。筒状部31の外径は、緩衝材20の内径よりもわずかに小さい。軸方向において、筒状部31の長さは、緩衝材20の長さよりもわずかに小さい。フランジ部32は、筒状部31の基端から外方に突出する。フランジ部32の外径は、緩衝材20の内径よりも大きい。
【0025】
押圧部材40は、例えば雄ねじであり、ねじ部41および頭部42を含む。ねじ部41の外径は、スペーサ30の内径よりもわずかに小さい。軸方向において、ねじ部41の長さは、スペーサ30の長さよりも大きい。頭部42は、略円板形状のねじ頭であり、ねじ部41の基端に設けられる。頭部42の外径は、スペーサ30の内径よりも大きい。
【0026】
スペーサ30の筒状部31は、緩衝材20に挿入される。また、押圧部材40のねじ部41は、スペーサ30の基端側からスペーサ30に挿入される。この場合、押圧部材40のねじ部41の先端が、スペーサ30の先端から突出する。この状態で、押圧部材40のねじ部41の先端が、取付具10の対応するねじ孔14に螺合される。
【0027】
この固定方法においては、押圧部材40が締め付けられることにより、頭部42がスペーサ30のフランジ部32を押圧部材40の進行方向に押圧する。そのため、緩衝材20は、取付具10の取付片13とフランジ部32とにより圧し潰された状態で狭持される。また、スペーサ30の筒状部31の先端が取付片13に当接することにより、緩衝材20の押し潰し量が一定値に規制される。このように、スペーサ30は、押圧部材40による緩衝材20の押し潰し量を規制する潰し量規制機構として機能する。
【0028】
緩衝材20およびスペーサ30が挿通された各押圧部材40が、取付具10の対応するねじ孔14に螺合される。これにより、取付具10の上側の2個の取付片13に2個の緩衝材20がそれぞれ取り付けられる。また、取付具10の下側の2個の取付片13に2個の緩衝材20がそれぞれ取り付けられる。
【0029】
検出器150の基部151に形成された上側の2個の切欠部152は、上側の2個の緩衝材20の溝部21にそれぞれ嵌め込まれる。検出器150の基部151に形成された下側の2個の切欠部152は、下側の2個の緩衝材20の溝部21にそれぞれ嵌め込まれる。この場合、基部151が上側の2個の緩衝材20と下側の2個の緩衝材20とにより狭持される。これにより、検出器150が真空容器110に固定される。
【0030】
(3)効果
本実施の形態に係る質量分析装置100においては、複数の緩衝材20が、複数の押圧部材40により試料の質量分析に用いられる真空容器110にそれぞれ押圧される。分析対象の試料を検出する検出器150が複数の緩衝材20により保持される。そのため、真空ポンプ120による振動が真空容器110に伝達される場合でも、その振動は各緩衝材20により減衰される。これにより、検出器150または検出器150に接続された図示しないケーブルに大きい振動が伝達されることが防止される。
【0031】
また、各押圧部材40による緩衝材20の押し潰し量は、対応するスペーサ30により規制される。この場合、検出器150または検出器150に接続されたケーブルに伝達される振動の大きさは、真空ポンプ120の取り付け作業者により異なることなく一様となる。その結果、質量分析における真空ポンプ120の振動の影響を低減することができる。
【0032】
押圧部材40は、筒状を有するスペーサ30と筒状を有する緩衝材20とが挿通された状態で、真空容器110の取付具10のねじ孔14に螺合される。そのため、簡単な構成で押圧部材40による緩衝材20の押し潰し量を規制することができる。また、押圧部材40は、真空ポンプ120が取り付けられる側壁111と対向する側壁112の内面に取り付けられるので、真空ポンプ120から検出器150に伝達される振動をより小さくすることができる。
【0033】
検出器150は、上側の2つの緩衝材20と、下側の2つの緩衝材20とにより狭持される。したがって、検出器150をより確実に保持することができる。ここで、検出器150の基部151の各切欠部152と、対応する緩衝材20の溝部21とが当接する。この場合、検出器150をより安定的に保持することができる。また、検出器150は、取付具10を介して真空容器110の側壁112の内面に取り付けられるので、真空容器110の内部における検出器150の配置の自由度が向上する。
【0034】
(4)変形例
本実施の形態において、スペーサ30が押圧部材40による緩衝材20の押し潰し量を規制する潰し量規制機構として設けられるが、実施の形態はこれに限定されない。他の潰し量規制機構が設けられる場合、スペーサ30は設けられなくてもよい。
【0035】
図6は、第1の変形例における検出器150の固定方法を説明するための図である。
図6に示すように、第1の変形例においては、各押圧部材40に対応するねじ孔14は、貫通孔ではなく底部14aを有する有底孔である。また、スペーサ30が設けられない。
【0036】
本例においては、押圧部材40が締め付けられることにより、押圧部材40の頭部42が緩衝材20を押圧部材40の進行方向に押圧する。そのため、緩衝材20は、取付具10の取付片13と頭部42とにより圧し潰された状態で狭持される。また、押圧部材40のねじ部41の先端がねじ孔14の底部14aに当接することにより、緩衝材20の押し潰し量が一定値に規制される。したがって、ねじ孔14の底部14aが潰し量規制機構として機能する。
【0037】
図7は、第2の変形例における検出器150の固定方法を説明するための図である。
図7に示すように、押圧部材40は、段付ねじであり、ねじ部41と頭部42との間に円柱形状を有する段差部43を含む。また、スペーサ30が設けられない。段差部43の外径は、ねじ部41の外径よりも大きく、緩衝材20の内径よりもわずかに小さい。軸方向において、段差部43の長さは、緩衝材20の長さよりもわずかに小さい。
【0038】
ねじ部41は、段差部43の先端から突出する。頭部42は、段差部43の基端に設けられる。ねじ部41の突出長さは、軸方向における段差部43の長さよりも小さい。その他のねじ部41および段差部43の寸法的特徴は、
図5におけるねじ部41および段差部43の寸法的特徴とそれぞれ同様である。
【0039】
本例においては、押圧部材40が締め付けられることにより、押圧部材40の頭部42が緩衝材20を押圧部材40の進行方向に押圧する。そのため、緩衝材20は、取付具10の取付片13と頭部42とにより圧し潰された状態で狭持される。また、押圧部材40の段差部43の先端が取付片13に当接することにより、緩衝材20の押し潰し量が一定値に規制される。したがって、押圧部材40の段差部43が潰し量規制機構として機能する。
【0040】
(5)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、検出器150は取付具10を介して真空容器110の側壁に固定されるが、実施の形態はこれに限定されない。取付具10のねじ孔14と同様のねじ孔が真空容器110の側壁に設けられる場合には、検出器150は、取付具10を介さずに真空容器110の側壁に直接固定されてもよい。
【0041】
(b)上記実施の形態において、検出器150は真空ポンプ120が取り付けられる側壁111と対向する側壁112に固定されるが、実施の形態はこれに限定されない。検出器150は、側壁112とは異なる側壁に固定されてもよいし、真空ポンプ120が取り付けられる側壁111に固定されてもよい。
【0042】
(c)上記実施の形態において、検出器150は上側の2つの緩衝材20と下側の2つの緩衝材20とにより狭持されるが、実施の形態はこれに限定されない。検出器150は、2つの緩衝材20により狭持されてもよい。検出器150を教示する2つの緩衝材20は、上下方向に並ぶように配置されてもよいし、水平方向に並ぶように配置されてもよい。また、検出器150は、1つの緩衝材20により保持されてもよい。
【0043】
(d)上記実施の形態において、検出器150の基部151に緩衝材20と当接するための切欠部152が形成されるが、実施の形態はこれに限定されない。基部151に切欠部152が形成されなくてもよい。
【0044】
(e)上記実施の形態において、緩衝材20に検出器150の基部151と当接するための溝部21が形成されるが、実施の形態はこれに限定されない。緩衝材20に溝部21が形成されなくてもよい。
【0045】
(6)態様
上記の複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0046】
(第1項)一態様に係る質量分析装置は、
試料の質量分析に用いられる真空容器と、
分析対象の試料を検出する検出器と、
前記検出器を保持する緩衝材と、
前記緩衝材を前記真空容器に押圧する押圧部材と、
前記押圧部材による前記緩衝材の押し潰し量を規制する潰し量規制機構とを備えてもよい。
【0047】
この質量分析装置においては、緩衝材が押圧部材により試料の質量分析に用いられる真空容器に押圧され、分析対象の試料を検出する検出器が緩衝材により保持される。そのため、真空ポンプによる振動が真空容器に伝達される場合でも、その振動は緩衝材により減衰される。これにより、検出器または検出器に接続されたケーブルに大きい振動が伝達されることが防止される。
【0048】
また、押圧部材による緩衝材の押し潰し量は潰し量規制機構により規制されるので、検出器または検出器に接続されたケーブルに伝達される振動の大きさは、真空ポンプの取り付け作業者により異なることなく一様となる。その結果、質量分析における真空ポンプの振動の影響を低減することができる。
【0049】
(第2項)第1項に記載の質量分析装置において、
前記潰し量規制機構は、筒状部材を含み、
前記押圧部材は、ねじを含み、前記筒状部材と前記緩衝材とが挿通された状態で前記真空容器に螺合されることにより、前記緩衝材を前記真空容器に押圧してもよい。
【0050】
この場合、簡単な構成で押圧部材による緩衝材の押し潰し量を規制することができる。
【0051】
(第3項)第1項または第2項に記載の質量分析装置において、
前記真空容器は、互いに対向する第1の側壁と第2の側壁とを含み、
前記真空容器の内部を真空にするための真空ポンプが前記第1の側壁の外面に取り付けられ、
前記押圧部材は、前記第2の側壁の内面に取り付けられることにより前記緩衝材を押圧してもよい。
【0052】
この場合、真空ポンプから検出器に伝達される振動をより小さくすることができる。
【0053】
(第4項)第1項~第3項のいずれか一項に記載の質量分析装置において、
前記緩衝材は、第1の緩衝材と第2の緩衝材とを含み、
前記押圧部材は、前記第1の緩衝材を前記真空容器に押圧する第1の押圧部材と、前記第2の緩衝材を前記真空容器に押圧する第2の押圧部材とを含み、
前記潰し量規制機構は、前記第1の押圧部材による前記第1の緩衝材の押し潰し量を規制する第1の潰し量規制機構と、前記第2の押圧部材による前記第2の緩衝材の押し潰し量を規制する第2の潰し量規制機構とをさらに含み、
前記検出器は、前記第1の緩衝材と前記第2の緩衝材とにより狭持されてもよい。
【0054】
この場合、第1の緩衝材および第2の緩衝材により検出器をより確実に保持することができる。
【0055】
(第5項)第4項に記載の質量分析装置において、
前記第1の緩衝材と前記第2の緩衝材とは、上下方向に並ぶように配置されてもよい
この場合、検出器をさらに確実に保持することができる。
【0056】
(第6項)第4項または第5項に記載の質量分析装置において、
前記検出器は、前記第1の緩衝材および前記第2の緩衝材にそれぞれ当接する第1の切欠部および第2の切欠部が形成された基部を含んでもよい。
【0057】
この場合、検出器をより安定的に保持することができる。
【0058】
(第7項)第6項に記載の質量分析装置において、
前記第1の緩衝材には、前記第1の切欠部と当接する第1の溝部が形成され、
前記第2の緩衝材には、前記第2の切欠部と当接する第2の溝部が形成されてもよい。
【0059】
この場合、検出器をさらに安定的に保持することができる。
【0060】
(第8項)第1項~第7項のいずれか一項に記載の質量分析装置において、
前記真空容器は、前記押圧部材が取り付けられる取付具を含み、
前記押圧部材は、前記取付具に取り付けられることにより前記緩衝材を押圧してもよい。
【0061】
この場合、検出器の配置の自由度が向上する。