(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】運転制御方法及び運転制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/12 20200101AFI20250109BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20250109BHJP
B60W 50/02 20120101ALI20250109BHJP
B60W 50/04 20060101ALI20250109BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20250109BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20250109BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20250109BHJP
B60T 8/17 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
B60W30/12
B60W50/14
B60W50/02
B60W50/04
B60W60/00
B62D6/00
B60T7/12 D
B60T8/17 D
(21)【出願番号】P 2023559373
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(86)【国際出願番号】 JP2021041876
(87)【国際公開番号】W WO2023084767
(87)【国際公開日】2023-05-19
【審査請求日】2024-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 武司
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-022365(JP,A)
【文献】特開2018-090043(JP,A)
【文献】特開2019-051894(JP,A)
【文献】特開2018-131081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 60/00
B60T 7/12 - 8/1769
8/32 - 8/96
B62D 6/00 - 6/10
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車線内において自車両の横方向位置を所定の位置に維持する車線維持制御を実行する第1制御部と、前記走行車線からの前記自車両の逸脱を防止する逸脱防止制御を実行する第2制御部とを有するプロセッサを用いて前記自車両の運転支援制御を実行する運転制御方法であって、
前記プロセッサは、
前記第1制御部による前記車線維持制御の実行中に前記第2制御部が前記逸脱防止制御を開始するか否かを判定し、
前記車線維持制御の実行中に前記第2制御部が前記逸脱防止制御を開始すると判定した場合は、
実行中の前記車線維持制御を終了し、
前記自車両の減速制御を開始し、
前記減速制御により前記自車両が停止するまで前記逸脱防止制御を継続し、
前記減速制御により前記自車両が停止したときに実行中の前記逸脱防止制御を終了する、運転制御方法。
【請求項2】
前記プロセッサは、
ハンズオフモードにより前記自車両の運転を制御しているときに、前記車線維持制御の実行中に前記第2制御部が前記逸脱防止制御を開始すると判定した場合は、ドライバに前記自車両のステアリングホイールを把持するように要求するハンズオン要求情報を出力する、請求項1に記載の運転制御方法。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記車線維持制御の実行中に前記第2制御部が前記逸脱防止制御を開始すると判定した場合は、前記第1制御部に異常が発生していると判定する、請求項1又は2に記載の運転制御方法。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記第2制御部が前記逸脱防止制御を開始する前に、前記第2制御部に異常が発生しているか否かを判定し、
前記第2制御部に異常が発生している場合は、前記運転支援制御を終了する、請求項1~3のいずれか一項に記載の運転制御方法。
【請求項5】
自車両の運転支援制御を実行する運転制御装置であって、
走行車線内において自車両の横方向位置を所定の位置に維持する車線維持制御を実行する第1制御部と、前記走行車線からの前記自車両の逸脱を防止する逸脱防止制御を実行する第2制御部とを有する車両制御部と、
前記第1制御部による前記車線維持制御の実行中に前記第2制御部が前記逸脱防止制御を開始するか否かを判定する異常判定部とを備え、
前記異常判定部が、前記車線維持制御の実行中に前記第2制御部が前記逸脱防止制御を開始すると判定した場合は、
前記車両制御部は、
実行中の前記車線維持制御を終了し、
前記自車両の減速制御を開始し、
前記減速制御により前記自車両が停止するまで前記逸脱防止制御を継続し、
前記減速制御により前記自車両が停止したときに実行中の前記逸脱防止制御を終了する、運転制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転制御方法及び運転制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の運転制御装置は、自車両が走行する走行車線の車線幅及び自車両の車速に応じて、車線維持制御又は逸脱防止制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の運転制御装置は、車線維持制御を実行する機能に異常が発生したか否かを判定して判定結果に応じて制御を行うものではない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、車線維持制御及び逸脱防止制御により自車両を制御する場合に、車線維持制御の実行機能に異常が発生した可能性がある状況を判定し、判定結果に応じて自車両の運転を制御できる運転制御方法及び運転制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1制御部による車線維持制御の実行中に第2制御部が逸脱防止制御を開始するか否かを判定し、車線維持制御の実行中に第2制御部が前記逸脱防止制御を開始すると判定した場合は、実行中の車線維持制御を終了し、自車両の減速制御を開始し、減速制御により自車両が停止するまで逸脱防止制御を継続し、減速制御により自車両が停止したときに実行中の逸脱防止制御を終了することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、運転制御装置は、第1制御部による車線維持制御の実行中に第2制御部が逸脱防止制御を開始するか否かを判定するので、車線維持制御及び逸脱防止制御により自車両を制御する場合に、車線維持制御の実行機能に異常が発生した可能性がある状況を判定し、判定結果に応じて自車両の運転を制御できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る運転制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】自車両が車線を逸脱すると判定される場合の自車両と車線境界線との位置関係の一例を示す図である。
【
図3】
図1に示す運転制御装置が実行する運転制御方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、自車両1及び自車両1の自律運転を制御する運転制御装置100の構成を示すブロック図である。自車両1は、運転制御装置100、検出装置101、自車両位置取得部102、地図データベース103、車載機器104、出力装置105、操舵装置106a、制動装置106b及び駆動装置106cを備える。運転制御装置100は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することで、自車両1の操舵装置106a、制動装置106b及び駆動装置106cを制御して、運転支援制御を実行する。
【0010】
検出装置101は、例えば、自車両1の周囲を撮像する車載カメラである。検出装置101は、自車両1が走行する走行車線Lの車線境界線B1,B2を検出する(
図2参照)。検出装置101の検出結果は、所定時間間隔で運転制御装置100に出力される。
【0011】
自車両位置取得部102は、GPSユニット、ジャイロセンサ、および車速センサなどから構成されている。自車両位置取得部102は、GPSユニットにより複数の衛星通信から送信される電波を検出し、自車両1の位置情報を周期的に取得するとともに、取得した自車両1の位置情報と、ジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサから取得した車速とに基づいて、自車両1の現在位置を検出する。自車両位置取得部102により検出された自車両1の位置情報は、所定時間間隔で運転制御装置100に出力される。
【0012】
地図データベース103は、道路が有する複数のレーンの識別情報を含む高精度のデジタル地図情報(高精度地図、ダイナミックマップ)を格納し、運転制御装置100からアクセス可能なように構成されたメモリである。地図データベース103の地図情報には、道路及び/又はレーンカーブ路及びそのカーブの大きさ(たとえば曲率又は曲率半径)等についての情報も含まれる。
【0013】
車載機器104は、車両に搭載された各種機器であり、ドライバにより操作されることで動作する。車載機器104は、ステアリングホイール104aを含む。また、その他の車載機器104としては、アクセルペダル、ブレーキペダル、ナビゲーション装置、方向指示器、ワイパー、ライト、クラクション、その他の特定のスイッチなどが挙げられる。車載機器104がドライバにより操作された場合に、その情報が運転制御装置100に出力される。
【0014】
出力装置105は、例えば、文字情報及び/又は画像情報を出力するディスプレイ又は音声情報を出力するスピーカである。
【0015】
操舵装置106aは、ステアリングアクチュエータを有する。また、ステアリングアクチュエータは、ステアリングのコラムシャフトに取り付けられるモータ等を含む。操舵装置106aは、ステアリングホイール104aの操舵角、又は、運転制御装置100から入力される制御信号に基づいて自車両1の操舵制御を実行する。制動装置106bは、制動アクチュエータを含む。制動装置106bは、ブレーキペダル(図示せず)のストローク量等、又は、運転制御装置100から入力される制御信号に基づいて自車両1のブレーキ動作を制御する。また、駆動装置106cは、アクセルペダル(図示せず)のストローク量等、又は、運転制御装置100から入力される制御信号に基づいて、駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては走行用モータの動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と走行用モータとのトルク配分も含む)を制御する。
【0016】
次に、運転制御装置100の構成について、
図1及び2を用いて、詳細に説明する。
なお、以下の説明において、運転制御装置100は、ハンズオフモードで自車両1の運転を制御しているものとする。ハンズオフモードとは、ドライバが自車両1のステアリングから手を放した状態において運転制御装置100が自車両1の走行を許可するモードである。
【0017】
図1に示すように、運転制御装置100は、プロセッサ10を備える。プロセッサ10は、自車両1の運転を制御するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とから構成される。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。プロセッサ10は、異常判定部14及び車両制御部15を備える。異常判定部14は、第1異常判定部14a及び第2異常判定部14bを有する。車両制御部15は、第1制御部11、第2制御部12及び車速制御部13を有する。第1制御部11、第2制御部12、車速制御部13、第1異常判定部14a及び第2異常判定部14bは、プロセッサ10の各機能を実現するためのプログラムを実行する。
なお、
図1において、運転制御装置100は自車両1に搭載されているが、これに限定されず、運転制御装置100は、自車両1を遠隔で操作する装置であってもよい。
【0018】
第1制御部11は、走行車線L内において自車両1の横方向位置Pを所定の位置に維持する車線維持制御を実行する(
図2参照)。なお、第1制御部11が車線維持制御を実行しているときの自車両1の横方向位置Pは走行車線Lの中央付近に維持される。すなわち、第1制御部11は、検出装置101が検出した車線境界線B1,B2又は地図データベース
103の走行車線情報に基づいて、自車両1の横方向位置Pを所定の位置である走行車線Lの中央付近の位置に維持する。より具体的には、第1制御部11は、走行車線Lの情報の取得手段を検出装置101と地図データベース103との間で切り替えるときの影響、道路環境(カント、走行車線Lの曲率の変化、道路幅の変化)の影響及び/又は横風の影響等に応じて、ドライバに違和感を感じさせずに自車両1の横方向位置Pを所定の位置(走行車線Lの中央付近の位置)に維持するように、操舵装置106aを制御する。なお、第1制御部11は、制動装置106bを制御することにより、自車両1のヨー角を調整して車線維持制御を実行してもよい。
【0019】
第2制御部12は、検出装置101が検出した車線境界線B1,B2の位置に基づいて、走行車線Lからの自車両1の逸脱を防止する逸脱防止制御を実行する。第2制御部12は、走行車線Lの車線境界線B1,B2から自車両1の車体の少なくとも一部が逸脱した場合に、逸脱防止制御を開始し、操舵装置106aを制御して、自車両1が走行車線Lの内側に戻るように自車両1の向きを調整する。なお、第2制御部12は、制動装置106bを制御することにより、自車両1のヨー角を調整して逸脱防止制御を実行してもよい。
なお、第1制御部11が正常に機能している間も、第2制御部12の逸脱防止制御の機能はONの状態である。「第2制御部12が逸脱防止制御を開始する」とは、逸脱防止制御の機能に基づいて第2制御部12が車両制御部15への制御信号の出力を開始することをいう。「第2制御部12が逸脱防止制御を開始する」とは、逸脱防止制御の機能に基づいて第2制御部12が車両制御部15に継続して制御信号を出力することをいう。
【0020】
また、第2制御部12は、走行車線Lの車線境界線B1,B2から自車両1の車体の少なくとも一部が逸脱することを予測した場合に、操舵装置106aを制御して、自車両1が走行車線Lの内側に留まるように自車両1の走行方向を調整してもよい。具体的には、第2制御部12は、
図2のように自車両1の向きが走行車線Lの延長方向に平行でない場合に、自車両1の向きが走行車線Lの延長方向に平行になるまでに要する最短時間T1を算出する。そして、第2制御部12は、最短時間T1経過後に自車両1の向きが走行車線Lの延長方向に平行になったと仮定した場合の自車両1の横移動量Xを算出する。第2制御部12は、横移動量Xが、車両の現在の横方向位置Pと車線境界線B1との距離Dよりも大きい(X>D)とき、走行車線Lの車線境界線B1から自車両1の車体の少なくとも一部が逸脱することを予測し、逸脱防止制御を開始する。一方、横移動量Xが、車両の現在の横方向位置Pと車線境界線B1との距離D以下である(X≦D)とき、第2制御部12は、自車両1は走行車線Lから逸脱しないと判定し、逸脱防止制御を開始しない。
【0021】
最短時間T1及び横移動量Xの算出方法をさらに具体的に説明する。
まず、第2制御部12は、自車両1の操舵速度限界値δ’を取得する。
次に、第2制御部12は、現在の初期舵角δ(0)に、操舵速度限界値δ’を時間tで積分した舵角変化量δ(t)を加算して、時間t経過後の舵角δを示す以下の式(1)を作成する。
δ=δ(0)+δ(t) …(1)
【0022】
そしてさらに、第2制御部12は、自車両1の車両モデルに応じて、上記の式(1)を、車体角変化率θ’(ヨーレート)を示す式に変換する。そして、第2制御部12は、車体角変化率θ’(ヨーレート)を時間tで積分して車体角変化量θ(t)を算出する。さらに、第2制御部12は、現在の初期車体角θ(0)に車体角変化量θ(t)を加算して、時間t経過後の車体角θを示す以下の式(2)を作成する。なお、式(2)の作成にあたり時間(t)での積分が2回行われているため、式(2)は、時間tの二次関数式である。
θ=θ(0)+θ(t) …(2)
【0023】
第2制御部12は、上記の式(2)に基づいて、θ=0となるときの時間tを算出する。θ=0となるときの時間tは、「自車両1の向きが走行車線Lの延長方向に平行になるまでに要する最短時間T1」である。
【0024】
さらに、第2制御部12は、自車両1の車速V及び車体角変化量θ(t)に基づいて、自車両1の横移動速度Vy(t)を示す以下の式(3)を生成する。
Vy(t)=V×sinθ(t) …(3)
そして、第2制御部12は、上記の式(3)で表されるVy(t)を最短時間T1で積分し、横移動量Xを算出する。第2制御部12は、この横移動量Xを、自車両1の現在の横方向位置Pから車線境界線B1までの距離Dと比較することにより、自車両1が走行車線Lを逸脱するか否かを判定する。
【0025】
なお、運転制御装置100がハンズオフモードにより自車両1の運転を制御しているときに第2制御部12が逸脱防止制御を開始する場合は、出力装置105は、ドライバに自車両1のステアリングホイール104aを把持するように要求するハンズオン要求情報を出力してもよい。また、制御権がドライバに復帰した後は、運転制御装置100は、車線維持制御及び逸脱防止制御を含む運転支援制御を停止してもよい。
【0026】
また、
図1に示す車速制御部13は、制動装置106b及び駆動装置106cを制御することにより、自車両1の車速V及び加減速を制御する。
【0027】
また、第1異常判定部14aは、第1制御部11に異常が発生しているか否か(第1制御部11が故障しているか否か)を判定する。具体的には、第1異常判定部14aは、第1制御部11による車線維持制御の実行中に第2制御部12が逸脱防止制御を開始するか否かを判定する。車線維持制御の実行中に第2制御部12が逸脱防止制御を開始する場合は、車線維持制御が正常に機能していない可能性が高いため、第1異常判定部14aは、第1制御部11が異常が発生したと判定する。
なお、本実施形態において、「異常が発生する」とは、制御を実行する機能が故障することをいう。
【0028】
第1異常判定部14aが、第1制御部11に異常が発生している(第1制御部11が故障した)と判定した場合、すなわち、車線維持制御の実行中に第2制御部12が逸脱防止制御を開始する場合は、第1制御部11は、車線維持制御を終了する。また、第1異常判定部14aが、第1制御部11に異常が発生していると判定した場合は、プロセッサ10は出力装置105にハンズオン要求情報を含むアラームを出力する。さらに、車速制御部13は、制動装置106b及び駆動装置106cに制御信号を出力し、自車両1の減速制御を開始する。また、第2制御部12は、減速制御により減速した自車両1が停止するまで逸脱防止制御を継続し、自車両1が停止したときに逸脱防止制御を終了する。なお、自車両1の減速中にドライバによる手動運転が開始された場合は、車速制御部13は、自車両1が停止する前に減速制御を終了する。
【0029】
一方、第2異常判定部14bは、逸脱防止制御が実行されていない間でも、常時、第2制御部12に異常が発生しているか否か(第2制御部が故障しているか否か)を判定している。すなわち、第2異常判定部14bは、第2制御部12が逸脱防止制御を開始する前に、第2制御部12に異常が発生しているか否かを判定する。また、第2異常判定部14bが、第2制御部12に異常が発生していると判定した場合は、運転制御装置100のプロセッサ10は、車線維持制御及び逸脱防止制御を含む運転支援制御を終了する。なお、第2異常判定部14bは、第2制御部12のシステムエラーを検出した場合に、第2制御部12に異常が発生していると判定する。なお、第2異常判定部14bは、周期的に演算される内部演算結果が基準値に対して所定値以上乖離していないかを判断している。この所定値は、用いるシステムに応じて、実験結果等に基づいて適宜設定される。第2制御部12は自車両1が走行車線Lを逸脱しないように制御するのに対して、第1制御部11は自車両1の運転支援制御の実行中に自車両1が車線中央の経路を走行するように演算するので、第1制御部11による内部演算は多くなる。そのため、第1制御部11の内部演算は、第2制御部12の内部演算よりも多くなり、それらの演算結果を統合して出力値を出すので、第1異常判定部14aが第1制御部11の内部演算結果の乖離を判定するのは難しい。また、多くの演算結果を統合した出力値が一定である場合でも、各内部演算が異なることがあり、第1異常判定部14aが第1制御部11の内部演算結果の乖離を正確に判定するのは難しい。
【0030】
また、運転制御装置100がハンズオンモードで自車両1の運転支援制御を実行してるときに、異常判定部14が、第1制御部11又は第2制御部12に異常が発生していると判定した場合は、運転制御装置100は、運転支援モードがハンズオフモードに遷移することを許可しないように、自車両1を制御してもよい。
【0031】
次に、運転制御装置100が実行する運転制御方法の手順について、
図3を参照して説明する。
まず、ステップS1において、第2異常判定部14bは、第2制御部12に異常が発生しているか否かを判定する。第2制御部12に異常が発生している場合は、ステップS8において、運転制御装置100は運転支援制御を終了する。
【0032】
次に、ステップS2において、第1異常判定部14aは、第1制御部11による車線維持制御の実行中に第2制御部12が逸脱防止制御を開始するか否かを判定する。第1制御部11による車線維持制御の実行中に第2制御部12が逸脱防止制御を開始しない場合は、処理は終了する。
【0033】
ステップS2において、第1異常判定部14aが、第1制御部11による車線維持制御の実行中に第2制御部12が逸脱防止制御を開始すると判定した場合は、ステップS3において、第1異常判定部14aは、第1制御部11に異常が発生していると判定する。なお、この判定において、外部情報などにより所定以上の強い横風が吹いていることや、地図情報から路面に所定以上の大きなカントがあることなどが判断され、運転制御装置100が事前に車線維持制御による自車両1の車線内走行が難しいと判断される地点の情報を入手している場合には、その地点における第1制御部11の異常の発生の有無の判定は、保留としてもよい。
【0034】
次に、ステップS4において、第1制御部11は車線維持制御を終了する。
さらに次に、ステップS5において、車速制御部13は減速制御を開始する。
なお、ステップS4の処理とステップS5の処理とは、同時に行われてもよく、ステップS5の処理の後にステップS4の処理が行われてもよい。
【0035】
次に、ステップS6において、運転制御装置100は、減速後の自車両1が停止したか否かを判定する。運転制御装置100が、自車両1が停止していないと判定した場合は、運転制御装置100は、逸脱防止制御を継続した状態で、ステップS6の判定を続行する。一方、運転制御装置100が、自車両1が停止したと判定した場合は、ステップS7において、第2制御部12は逸脱防止制御を終了する。
【0036】
以上より、本実施形態に係る運転制御装置100のプロセッサ10は、第1制御部11による車線維持制御の実行中に第2制御部12が逸脱防止制御を開始すると判定した場合は、実行中の車線維持制御を終了し、自車両1の減速制御を開始し、減速制御により自車両1が停止するまで逸脱防止制御を継続し、減速制御により自車両が停止したときに実行中の逸脱防止制御を終了する。ここで、第1制御部11による車線維持制御の実行中に第2制御部12が逸脱防止制御を開始することは、第1制御部11の車線維持制御の機能が十分に発揮されていないため、自車両1が走行車線Lから逸脱する、又は、逸脱する可能性があるということを示している。すなわち、第1制御部11による車線維持制御の実行中に第2制御部12が逸脱防止制御を開始する場合は、第1制御部11に異常が発生している(第1制御部11が故障している)可能性がある。そのため、運転制御装置100は、第1制御部11による車線維持制御の実行中に第2制御部12が逸脱防止制御を開始するか否かを判定することにより、車線維持制御の実行機能に異常が発生している可能性がある状況を判定し、判定結果に応じて自車両の運転を制御できる。また、第2制御部12は、車線維持制御の実行中に逸脱防止制御を開始する場合、すなわち、車線維持制御の実行機能に異常が発生している可能性がある場合であっても、自車両1が停止するまで逸脱防止制御を継続し、自車両1が停止したときに逸脱防止制御を終了する。これにより、運転制御装置100は、車線維持制御を実行する機能に異常が発生している場合は、自車両1の走行車線Lからの逸脱を防止しつつ、自車両1を停止させて、運転支援制御を終了することができる。
【0037】
また、運転制御装置100のプロセッサ10は、ハンズオフモードにより自車両1の運転を制御しているときに、車線維持制御の実行中に第2制御部12が逸脱防止制御を開始すると判定した場合は、ドライバに自車両1のステアリングホイール104aを把持するように要求するハンズオン要求情報を出力する。これにより、車線維持制御を実行する機能に異常が発生している場合は、ドライバは、運転制御装置100が逸脱防止制御を継続している間にステアリングホイール104aを把持して手動運転を開始することができる。
【0038】
また、運転制御装置100のプロセッサ10は、車線維持制御の実行中に第2制御部12が逸脱防止制御を開始すると判定した場合は、第1制御部11に異常が発生した(第1制御部11が故障した)と判定する。これにより、運転制御装置100は、複雑な構成の異常判定装置を用いずに、第1制御部11の異常(故障)の有無を効率よく判定できる。
【0039】
また、運転制御装置100のプロセッサ10は、第2制御部12が逸脱防止制御を開始する前に、第2制御部12に異常が発生しているか否か(第2制御部12が故障しているか否か)を判定し、第2制御部12に異常が発生している場合は、運転支援制御を終了する。これにより、運転制御装置100は、第2制御部12に発生した異常が原因で第1制御部11の異常の有無が正確に判定できなくなってしまうことを予め防止することができる。
【符号の説明】
【0040】
100…運転制御装置
1…自車両
10…プロセッサ
11…第1制御部
12…第2制御部
14…異常判定部
15…車両制御部
104a…ステアリングホイール
L…走行車線