(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/34 20060101AFI20250109BHJP
H02K 3/12 20060101ALI20250109BHJP
H02P 25/18 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H02K3/34 C
H02K3/12
H02P25/18
(21)【出願番号】P 2023569265
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(86)【国際出願番号】 JP2022044814
(87)【国際公開番号】W WO2023120148
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2021210409
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 幹三
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-93097(JP,A)
【文献】国際公開第2021/137544(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015218110(DE,A1)
【文献】特開2020-120428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/34
H02K 3/12
H02P 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと、コイルと、を備え、前記コイルの接続状態が切り替わるステータであって、
前記ステータコアは、複数のスロット及び複数のティース部が交互に環状に並び、
前記コイルは、前記ティース部に巻き回される第1巻線及び第2巻線を少なくとも有する相巻線を複数相有し、前記第1巻線及び前記第2巻線の接続状態が切り替わるものであり、
前記第1巻線は、前記スロット内を通る第1挿通部を有し、
前記第2巻線は、前記第1挿通部が通る前記スロット内を通る第2挿通部を有し、
同一の前記スロット内に前記第1挿通部及び前記第2挿通部がいずれも配置され、
前記第1挿通部は、第1芯線と、前記第1芯線を覆う第1被覆部と、を有し、
前記第2挿通部は、第2芯線と、前記第2芯線を覆う第2被覆部と、を有し、
前記第2被覆部の厚さは、前記第1被覆部の厚さよりも小さい
ステータ。
【請求項2】
前記第1巻線は、前記スロット内を通る複数の前記第1挿通部を有し、
前記第2巻線は、複数の前記第1挿通部が通る前記スロット内を通る複数の前記第2挿通部を有し、
同一の前記スロット内に前記第1挿通部及び前記第2挿通部が径方向に交互に並んで配置されている請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記第2芯線の延び方向と直交する平面方向に前記第2芯線を切断した場合の切断面の第2断面積は、前記第1芯線の延び方向と直交する平面方向に前記第1芯線を切断した場合の切断面の第1断面積よりも大きい請求項1又は請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記コイルは、前記第1巻線及び前記第2巻線がいずれも通電される第1通電状態と、前記第2巻線のみが通電される第2通電状態とに切り替わる請求項1又は請求項2に記載のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のスロットを有するステータコアと、ステータコアに巻装されているステータ巻線とが開示されている。ステータ巻線は、第1巻線と第2巻線とを有する相巻線を複数相有している。第1巻線及び第2巻線は、同一のスロット内に配置されている。ステータ巻線は、第1巻線及び第2巻線の接続状態が切り替わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、接続状態が切り替わる第1巻線及び第2巻線の発熱量については考慮されていない。
【0005】
本開示は、接続状態が切り替わる第1巻線及び第2巻線のうち第2巻線の発熱量の低減を図りやすい技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のステータは、
ステータコアと、コイルと、を備え、前記コイルの接続状態が切り替わるステータであって、
前記ステータコアは、複数のスロット及び複数のティース部が交互に環状に並び、
前記コイルは、前記ティース部に巻き回される第1巻線及び第2巻線を少なくとも有する相巻線を複数相有し、前記第1巻線及び前記第2巻線の接続状態が切り替わるものであり、
前記第1巻線は、前記スロット内を通る第1挿通部を有し、
前記第2巻線は、前記第1挿通部が通る前記スロット内を通る第2挿通部を有し、
同一の前記スロット内に前記第1挿通部及び前記第2挿通部がいずれも配置され、
前記第1挿通部は、第1芯線と、前記第1芯線を覆う第1被覆部と、を有し、
前記第2挿通部は、第2芯線と、前記第2芯線を覆う第2被覆部と、を有し、
前記第2被覆部の厚さは、前記第1被覆部の厚さよりも小さい。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、接続状態が切り替わる第1巻線及び第2巻線のうち第2巻線の発熱量の低減を図りやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態のステータコアの斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のステータを含む車載システムを概略的に例示する回路図である。
【
図3】
図3は、交流電動機の切替装置における各切替部の状態と通電対象巻線との対応関係等を説明する説明図である。
【
図4】
図4は、
図2に示される交流電動機の切替装置の第1切替状態を説明する説明図である。
【
図5】
図5は、
図2に示される交流電動機の切替装置の第2切替状態を説明する説明図である。
【
図6】
図6は、同一のスロット内に第1挿通部及び第2挿通部が配置された状態をあらわすステータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。
【0010】
〔1〕ステータコアと、コイルと、を備え、前記コイルの接続状態が切り替わるステータであって、
前記ステータコアは、複数のスロット及び複数のティース部が交互に環状に並び、
前記コイルは、前記ティース部に巻き回される第1巻線及び第2巻線を少なくとも有する相巻線を複数相有し、前記第1巻線及び前記第2巻線の接続状態が切り替わるものであり、
前記第1巻線は、前記スロット内を通る第1挿通部を有し、
前記第2巻線は、前記第1挿通部が通る前記スロット内を通る第2挿通部を有し、
同一の前記スロット内に前記第1挿通部及び前記第2挿通部がいずれも配置され、
前記第1挿通部は、第1芯線と、前記第1芯線を覆う第1被覆部と、を有し、
前記第2挿通部は、第2芯線と、前記第2芯線を覆う第2被覆部と、を有し、
前記第2被覆部の厚さは、前記第1被覆部の厚さよりも小さい
ステータ。
【0011】
上記ステータによれば、第2被覆部の厚さが第1被覆部の厚さよりも小さいため、第2巻線の発熱量の低減を図りやすい。
【0012】
〔2〕前記第1巻線は、前記スロット内を通る複数の前記第1挿通部を有し、
前記第2巻線は、複数の前記第1挿通部が通る前記スロット内を通る複数の前記第2挿通部を有し、
同一の前記スロット内に前記第1挿通部及び前記第2挿通部が径方向に交互に並んで配置されている〔1〕に記載のステータ。
【0013】
上記ステータによれば、第2被覆部の厚さが小さくても、第2被覆部に隣接する第1被覆部の厚さが大きいため、第2被覆部の厚さを抑えつつも第1芯線と第2芯線との間の絶縁性を確保しやすい。
【0014】
〔3〕前記第2芯線の延び方向と直交する平面方向に前記第2芯線を切断した場合の切断面の第2断面積は、前記第1芯線の延び方向と直交する平面方向に前記第1芯線を切断した場合の切断面の第1断面積よりも大きい〔1〕又は〔2〕に記載のステータ。
【0015】
上記ステータは、第2芯線の第2断面積が第1芯線の第1断面積よりも大きい。このため、第2芯線の電気抵抗値の低下を図りやすく、第2芯線での電力損失(いわゆる銅損)及び発熱の低下を図りやすい。しかも、上記ステータは、第2被覆部の厚さが第1被覆部の厚さよりも小さいため、第2芯線の第2断面積を大きくしつつも、第2挿通部の断面積の増大を抑えることができる。
【0016】
〔4〕前記コイルは、前記第1巻線及び前記第2巻線がいずれも通電される第1通電状態と、前記第2巻線のみが通電される第2通電状態とに切り替わる〔1〕から〔3〕のいずれか1つに記載のステータ。
【0017】
上記ステータによれば、コイルの第2通電状態での発熱量の低減を図りやすいため、コイルの第1通電状態と第2通電状態の合算での発熱量の低減を図りやすい。
【0018】
<第1実施形態>
1.ステータの概要
第1実施形態のステータ40は、車両用の交流電動機4(
図2参照)の部品である。交流電動機4は、三相交流電動機である。交流電動機4は、例えば、車両に設けられた車輪を回転駆動するための駆動力を発生させる駆動用三相モータである。
【0019】
ステータ40は、環状(具体的には円環状)をなしている。以下では、ステータ40の径方向を径方向と称し、ステータ40の軸方向を軸方向と称し、ステータ40の周方向を周方向と称する。ステータ40の内周面よりも径方向内側には、図示しないロータが配置される。ステータ40は、
図6に示されるように、ステータコア41と、コイル42と、絶縁部材43と、を備える。
【0020】
ステータコア41は、
図1に示されるように、ヨーク部51と、ティース部52と、を有している。ヨーク部51は、環状(具体的には円環状)をなしている。ティース部52は、複数設けられている。ティース部52は、ヨーク部51の内周面に沿って環状に並んで配置されている。各々のティース部52は、周方向に互いに間隔をあけて配置されている。各々のティース部52は、ヨーク部51の内周面から径方向内側(径方向のロータが配置される側)に突出している。各々のティース部52は、径方向及び軸方向に沿った壁状をなしている。
【0021】
図1に示すように、隣り合う2つのティース部52によってスロット55が構成されている。スロット55は、ステータコア41を軸方向に貫通している。スロット55は、ステータコア41の軸方向の両面及び径方向の内周面に開口している。スロット55は、複数設けられている。スロット55は、環状に並んで配置されている。
【0022】
コイル42は、スロット55内を通り、ティース部52に巻き回される。
【0023】
絶縁部材43は、例えば絶縁紙である。絶縁部材43は、
図6に示されるように、スロット55内に配置され、スロット55内を通るコイル42の外周を囲む。絶縁部材43は、コイル42をステータコア41から絶縁させる。
【0024】
コイル42は、
図2に示すように、複数相(具体的には三相)の巻線71,72,73を有している。巻線71,72,73は、ティース部52(
図1参照)に巻き回される。巻線71は、U相の巻線71とも称される。巻線72は、V相の巻線72とも称される。巻線73は、W相の巻線73とも称される。コイル42は、いわゆるY結線された三相コイルである。U相(第一相)の巻線71、V相(第二相)の巻線72及びW相(第三相)の巻線73は、中性点となり得る短絡部90にて結線され得る。
【0025】
複数相の巻線71,72,73は、各相の巻線がそれぞれ第1巻線71A及び第2巻線71Bを有し、各相において第1巻線71Aと第2巻線71Bとが直列に接続される。U相(第一相)の巻線71は、第1巻線71Aと第2巻線71Bとを有し、第1巻線71Aと第2巻線71Bとが直列に接続される。V相(第二相)の巻線72は、第1巻線72Aと第2巻線72Bとを有し、第1巻線72Aと第2巻線72Bとが直列に接続される。W相(第三相)の巻線73は、第1巻線73Aと第2巻線73Bとを有し、第1巻線73Aと第2巻線73Bとが直列に接続される。
【0026】
このように、コイル42は、ティース部52に巻き回される第1巻線71A及び第2巻線71Bを有する相巻線を複数相(具体的には三相)有している。コイル42は、第1巻線71A及び第2巻線71Bの接続状態が切り替わる。以下の説明は、コイル42が、
図2に示される車載システム1に適用された場合において接続状態が切り替わる例に関する。
【0027】
2.車載システムの概要
車載システム1は、車両に搭載されるシステムである。車載システム1は、上述した交流電動機4と、電動機駆動装置2と、を有している。
【0028】
電動機駆動装置2は、一対の電力路81,82から供給される電力に基づいて交流電動機4を駆動する装置である。一対の電力路81,82は、図示しないバッテリ(例えば、高圧バッテリ)からの電力に基づく直流電力が伝送される導電路である。電力路81は、高電位側の電力路である。電力路82は、低電位側の電力路である。例えば、一対の電力路81,82の間には、一定電圧の直流電圧が印加され得る。
【0029】
電動機駆動装置2は、交流電動機4の動作を制御する装置でもある。電動機駆動装置2は、インバータ6と、3つの導電路(U相の導電路61、V相の導電路62、W相の導電路63)と、切替装置10とを有する。
【0030】
インバータ6は、U相、V相、W相の三相交流電力を出力するインバータ回路である。インバータ6から出力される三相交流電力は、3つの導電路(U相の導電路61、V相の導電路62、W相の導電路63)を介して交流電動機4に供給され、交流電動機4の回転駆動に用いられる。インバータ6は、上アーム素子として機能するスイッチング素子6A,6C,6Eと下アーム素子として機能するスイッチング素子6B,6D,6Fとを有する。スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fの各々は、例えば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)及び還流ダイオードにより構成されている。
【0031】
インバータ6では、例えば、スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fがオンオフ信号(例えば、PWM(パルス幅変調)信号)を受けることによってオン動作及びオフ動作を繰り返し、三相交流電力を発生させる。スイッチング素子6A,6B,6C,6D,6E,6Fのオンオフ制御は、例えば、図示されていない電子制御装置(例えば、車載ECU(Electronic Control Unit)等)によって行われる。電子制御装置がインバータ6を制御する方式は、例えば、PWM信号を用いた三相変調方式である。なお、上記電子制御装置がインバータ6を制御する方式は、交流電動機4を駆動可能な方式であればよく、例えば、公知のV/f制御や公知のベクトル制御などの様々な方式が採用され得る。
【0032】
インバータ6において、U相のスイッチ対は、上アーム素子であるスイッチング素子6Aと下アーム素子であるスイッチング素子6Bとによって構成される。V相のスイッチ対は、上アーム素子であるスイッチング素子6Cと下アーム素子であるスイッチング素子6Dとによって構成される。W相のスイッチ対は、上アーム素子であるスイッチング素子6Eと下アーム素子であるスイッチング素子6Fとによって構成される。
【0033】
U相の導電路61は、スイッチング素子6A,6BとU相の巻線71との間の導電路である。U相の導電路61は、導電路61Aと導電路61Bとを有する。導電路61Aは、スイッチング素子6A,6Bとスイッチ21Aとの間の導電路である。導電路61Aの一端は、スイッチング素子6A,6Bの両素子間の導電路に電気的に接続される。導電路61Aの他端は、スイッチ21Aの一端に電気的に接続される。導電路61Bは、スイッチ21Aの他端とU相の巻線71の一端である端部81Aとに電気的に接続される。スイッチ21Aがオン状態のときにスイッチング素子6A,6Bの両素子間とU相の巻線71とが短絡して導通し得る。
【0034】
V相の導電路62は、スイッチング素子6C,6DとV相の巻線72との間の導電路である。V相の導電路62は、導電路62Aと導電路62Bとを有する。導電路62Aは、スイッチング素子6C,6Dとスイッチ21Bとの間の導電路である。導電路62Aの一端は、スイッチング素子6C,6Dの両素子間の導電路に電気的に接続される。導電路62Aの他端は、スイッチ21Bの一端に電気的に接続される。導電路62Bは、スイッチ21Bの他端とV相の巻線72の一端である端部82Aとに電気的に接続される。スイッチ21Bがオン状態のときにスイッチング素子6C,6Dの両素子間とV相の巻線72とが短絡して導通し得る。
【0035】
W相の導電路63は、スイッチング素子6E,6FとW相の巻線73との間の導電路である。W相の導電路63は、導電路63Aと導電路63Bとを有する。導電路63Aは、スイッチング素子6E,6Fとスイッチ21Cとの間の導電路である。導電路63Aの一端は、スイッチング素子6E,6Fの両素子間の導電路に電気的に接続される。導電路63Aの他端は、スイッチ21Cの一端に電気的に接続される。導電路63Bは、スイッチ21Cの他端とW相の巻線73の一端である端部83Aとに電気的に接続される。スイッチ21Cがオン状態のときにスイッチング素子6E,6Fの両素子間とW相の巻線73とが短絡して導通し得る。
【0036】
コイル42において、端部81Bは、第1巻線71Aの他端である。端部81Bは、第2巻線71Bの一端である端部81Cに電気的に接続され、端部81Cに短絡している。端部82Bは、第1巻線72Aの他端である。端部82Bは、第2巻線72Bの一端である端部82Cに電気的に接続され、端部82Cに短絡している。端部83Bは、第1巻線73Aの他端である。端部83Bは、第2巻線73Bの一端である端部83Cに電気的に接続され、端部83Cに短絡している。端部81Dは、第2巻線71Bの他端である。端部82Dは、第2巻線72Bの他端である。端部83Dは、第2巻線73Bの他端である。端部81Dと端部82Dと端部83Dは短絡部90に電気的に接続され、短絡部90を介して互いに短絡している。
【0037】
3.切替装置の構成
切替装置10は、コイル42の接続状態を切り替える装置である。切替装置10は、切替部20と制御部30とを有する。
【0038】
制御部30は、切替部20を制御する装置である。制御部30は、例えば、車載ECUなどの電子制御装置であってもよく、MPU(Micro-Processing Unit)などを有する情報処理装置であってもよい。制御部30は、切替部20を構成する各スイッチのオンオフを制御する。具体的には、制御部30は、スイッチ21A,21B,21C,22A,22B,22Cの各々に対してオン信号及びオフ信号を出力し得る。
【0039】
切替部20は、複数相の巻線71,72,73の接続状態を切り替える装置である。切替部20は、第1切替部21と第2切替部22とを有する。第1切替部21は、第1短絡状態と第1解除状態とに切り替わる。第2切替部22は、第2短絡状態と第2解除状態とに切り替わる。
【0040】
第1切替部21は、スイッチ21A,21B,21Cを有する。スイッチ21A,21B,21Cの各々は、1以上の半導体スイッチ素子(例えば、FET(Field Effect Transistor)やIGBTなど)によって構成されていてもよく、1以上の機械式リレーによって構成されていてもよい。
【0041】
第1短絡状態は、スイッチ21A,21B,21Cをいずれもオンにした状態である。スイッチ21Aがオン状態のときには、スイッチ21Aを通って双方向に電流が流れ得る。スイッチ21Bがオン状態のときには、スイッチ21Bを通って双方向に電流が流れ得る。スイッチ21Cがオン状態のときには、スイッチ21Cを通って双方向に電流が流れ得る。つまり、第1短絡状態は、U相の第1巻線71Aの一端である端部81Aと導電路61A(第1導電路)とを短絡させ、V相の第1巻線72Aの一端である端部82Aと導電路62A(第2導電路)とを短絡させ、W相の第1巻線73Aの一端である端部83Aと導電路63A(第3導電路)とを短絡させる状態である。
【0042】
第1解除状態は、スイッチ21A,21B,21Cをいずれもオフにした状態である。スイッチ21Aがオフ状態のときには、スイッチ21Aにおいて双方向の通電が遮断される。スイッチ21Bがオフ状態のときには、スイッチ21Bにおいて双方向の通電が遮断される。スイッチ21Cがオフ状態のときには、スイッチ21Cにおいて双方向の通電が遮断される。つまり、第1解除状態は、端部81Aと導電路61Aの短絡を解除し、端部82Aと導電路62Aの短絡を解除し、端部83Aと導電路63Aの短絡を解除した状態である。第1解除状態のときには、導電路61Aと導電路61Bの間で電流が流れず、導電路62Aと導電路62Bの間で電流が流れず、導電路63Aと導電路63Bの間で電流が流れない。第1解除状態では、第1巻線71A,72A,73Aに駆動のための電流が供給されない。
【0043】
第2切替部22は、スイッチ22A,22B,22Cを有する。スイッチ22A,22B,22Cの各々は、1以上の半導体スイッチ素子(例えば、FETやIGBTなど)によって構成されていてもよく、1以上の機械式リレーによって構成されていてもよい。
【0044】
第2短絡状態は、スイッチ22A,22B,22Cをいずれもオンにした状態である。スイッチ22Aがオン状態のときには、スイッチ22Aを通って双方向に電流が流れ得る。スイッチ22Bがオン状態のときには、スイッチ22Bを通って双方向に電流が流れ得る。スイッチ22Cがオン状態のときには、スイッチ22Cを通って双方向に電流が流れ得る。つまり、第2短絡状態は、端部81Cと導電路61Aとを短絡させ、端部82Cと導電路62Aとを短絡させ、端部83Cと導電路63Aとを短絡させる状態である。
【0045】
第2解除状態は、スイッチ22A,22B,22Cをいずれもオフにした状態である。スイッチ22Aがオフ状態のときには、スイッチ22Aにおいて双方向の通電が遮断される。スイッチ22Bがオフ状態のときには、スイッチ22Bにおいて双方向の通電が遮断される。スイッチ22Cがオフ状態のときには、スイッチ22Cにおいて双方向の通電が遮断される。つまり、第2解除状態は、端部81Cと導電路61Aの短絡を解除し、端部82Cと導電路62Aの短絡を解除し、端部83Cと導電路63Aの短絡を解除した状態である。
【0046】
4.切替装置の動作
切替部20は、コイル42を第1通電状態と第2通電状態と非通電状態とに切り替える。第1通電状態は、コイル42の第1巻線71A,72A,73A及び第2巻線71B,72B,73Bがいずれも通電される状態である。第2通電状態は、第1巻線71A,72A,73A及び第2巻線71B,72B,73Bのうち第1巻線71A,72A,73Aのみが通電される状態である。非通電状態は、第1巻線71A,72A,73A及び第2巻線71B,72B,73Bのいずれも通電されない状態である。
【0047】
切替部20は、第1切替状態と第2切替状態と第3切替状態とに切り替わる。切替部20が第1切替状態に切り替わると、コイル42が第1通電状態に切り替わる。切替部20が第2切替状態に切り替わると、コイル42が第2通電状態に切り替わる。切替部20が第3切替状態に切り替わると、コイル42が非通電状態に切り替わる。
【0048】
制御部30は、切替部20を第1切替状態、第2切替状態、第3切替状態のいずれかに切り替えるように切替部20を制御する。
【0049】
図3に示されるように、第1切替状態は、第1切替部21を短絡状態(第1短絡状態)とし第2切替部22を解除状態(第2解除状態)とする状態である。第1切替状態では、通電対象の巻線は第1巻線71A,72A,73A及び第2巻線71B,72B,73Bである。つまり、第1切替状態は、複数相の巻線71,72,73において第1巻線71A,72A,73A及び第2巻線71B,72B,73Bのいずれに対しても通電制御を許容する状態である。
図4に示されるように、第1切替状態では、スイッチ21A,21B,21Cの各々がオン状態となり、スイッチ22A,22B,22Cの各々がオフ状態となり、短絡部90が中性点となる。従って、直列に接続された第1巻線71A及び第2巻線71Bの全体がU相の巻線として機能しこれら全体に駆動用の電流が流れ、直列に接続された第1巻線72A及び第2巻線72Bの全体がV相の巻線として機能しこれら全体に駆動用の電流が流れ、直列に接続された第1巻線73A及び第2巻線73Bの全体がW相の巻線として機能しこれら全体に駆動用の電流が流れる。
【0050】
図3に示されるように、第2切替状態は、第1切替部21を解除状態(第1解除状態)とし第2切替部22を短絡状態(第2短絡状態)とする状態である。第2切替状態では、通電対象の巻線は第2巻線71B,72B,73Bである。つまり、第2切替状態は、複数相の巻線71,72,73のうちの第2巻線71B,72B,73Bに対する通電制御を許容し第1巻線71A,72A,73Aに対する通電制御を遮断する状態である。
図5に示されるように、第2切替状態では、スイッチ22A,22B,22Cの各々がオン状態となり、スイッチ21A,21B,21Cの各々がオフ状態となり、短絡部90が中性点となる。従って、第2巻線71B,72B,73Bの各々には駆動用の電流が流れ、第1巻線71A,72A,73Aの各々には駆動用の電流が流れない。
【0051】
図3に示されるように、第3切替状態は、第1切替部21を解除状態(第1解除状態)とし第2切替部22を解除状態(第2解除状態)とする状態である。第3切替状態のときには、第1巻線71A,72A,73A及び第2巻線71B,72B,73Bのいずれにも駆動用の電流は流れない。
【0052】
制御部30は、切替部20を上記いずれかの状態に切り替えるように制御する。制御部30は、第1条件の成立時に、第1切替部21を第1短絡状態とし第2切替部22を第2解除状態とすることで切替部20を第1切替状態とする。この場合、車載システム1は、各相において第1巻線71A,72A,73A及び第2巻線71B,72B,73Bの両方に電力を供給して使用することができる。制御部30は、第1条件と異なる第2条件の成立時に、第1切替部21を第1解除状態とし第2切替部22を第2短絡状態とすることで切替部20を第2切替状態とする。この場合、車載システム1は、各相において第2巻線71B,72B,73Bのみに選択的に電力を供給するように使用することができる。また、制御部30は、第1条件、第2条件とは異なる第3条件の成立時に第1切替部21を第1解除状態とし第2切替部22を第2解除状態とすることで切替部20を第3切替状態とする。この場合、車載システム1は、各相において第1巻線71A,72A,73A及び第2巻線71B,72B,73Bへの電力供給を停止することができる。第1条件、第2条件、第3条件は、互いに異なる条件であればよい。
【0053】
5.第1巻線及び第2巻線の構成
このように、ステータ40のコイル42は、第1巻線71A,72A,73A及び第2巻線71B,72B,73Bの接続状態が切り替わる。第1巻線71A,72A,73A及び第2巻線71B,72B,73Bの構成について、
図6を参照して説明する。なお、
図6及び以下の説明では、第1巻線71A,72A,73Aを第1巻線74Aとも称し、第2巻線71B,72B,73Bを第2巻線74Bとも称する。
【0054】
第1巻線74Aは、スロット55内を通る第1挿通部75Aを有する。第2巻線74Bは、第1挿通部75Aが通るスロット55内を通る第2挿通部75Bを有する。第1挿通部75A及び第2挿通部75Bは、スロット55内に軸方向に挿通されている。第1挿通部75A及び第2挿通部75Bは、平角線であり、第1挿通部75A及び第2挿通部75Bの延び方向(軸方向)と直交する平面方向に切断した切断面の形状が矩形状をなしている。同一のスロット55内には、第1挿通部75A及び第2挿通部75Bがいずれも配置されている。同一のスロット55内には、複数の第1挿通部75A及び複数の第2挿通部75Bが配置されている。第1挿通部75A及び第2挿通部75Bは、径方向に沿って並んで配置されている。第1挿通部75A及び第2挿通部75Bは、交互に並んで配置されている。同一のスロット55内に配置される第1挿通部75A及び第2挿通部75Bの外周は、絶縁部材43によって囲まれており、ステータコア41から絶縁されている。
【0055】
第1挿通部75Aは、第1芯線76Aと、第1芯線76Aを覆う第1被覆部77Aと、を有する。第1芯線76Aは、導電性を有する。第1芯線76Aは、例えば銅又は銅合金からなる。第1芯線76Aの延び方向と直交する方向に第1芯線76Aを切断した切断面の形状は矩形状をなす。第1被覆部77Aは、絶縁性を有する。
【0056】
第2挿通部75Bは、第2芯線76Bと、第2芯線76Bを覆う第2被覆部77Bと、を有する。第2芯線76Bは、導電性を有する。第2芯線76Bは、例えば銅又は銅合金からなる。第2芯線76Bの延び方向と直交する方向に第2芯線76Bを切断した切断面の形状は矩形状をなす。第2被覆部77Bは、絶縁性を有する。
【0057】
第1芯線76Aの電気抵抗率は、第2芯線76Bの電気抵抗率と同じである。第1芯線76Aは、第2芯線76Bと同じ原料からなる。第2芯線76Bの延び方向と直交する平面方向に第2芯線76Bを切断した場合の切断面の第2断面積は、第1芯線76Aの延び方向と直交する平面方向に第1芯線76Aを切断した場合の切断面の第1断面積よりも大きい。
【0058】
第1挿通部75A及び第2挿通部75Bの並び方向における第1芯線76Aの幅をWA1とし、第2芯線76Bの幅をWB1とする。第1挿通部75A及び第2挿通部75Bの並び方向と直交し、且つ第1挿通部75A及び第2挿通部75Bの延び方向と直交する方向における第1芯線76Aの幅をWA2とし、第2芯線76Bの幅をWB2とする。この場合、WA2はWA1よりも大きい。また、WB2はWB1よりも大きい。WB1は、WA1よりも大きい。WB2は、WA2よりも大きい。
【0059】
第1被覆部77Aの熱伝導率は、第2被覆部77Bの熱伝導率と同じである。第1被覆部77Aの誘電率は、第2被覆部77Bの誘電率と同じである。第1被覆部77Aは、第2被覆部77Bと同じ原料からなる。第1被覆部77A及び第2被覆部77Bは、例えば樹脂マトリックスと、樹脂マトリックス中に分散する気泡と、を有する。樹脂マトリックスは、例えばポリイミド及びポリエーテルスルホンを含有する。第2被覆部77Bの厚さD2は、第1被覆部77Aの厚さD1よりも小さい。
【0060】
6.効果の例
以上のように、ステータ40は、第2被覆部77Bの厚さD2が第1被覆部77Aの厚さD1よりも小さいため、第2被覆部77Bでの電力損失及び発熱量を抑えやすく、第2巻線74Bでの電力損失の低減及び発熱量の低減を図りやすい。例えば、本実施形態のように、第1被覆部77Aと第2被覆部77Bで熱伝導率及び原料のうち少なくとも一方を同じにするだけで、第1芯線76Aと第2芯線76Bに同じ電力が供給されたときの第2被覆部77Bでの電力損失及び発熱量を、第1被覆部77Aでの電力損失及び発熱量よりも低くすることができる。
【0061】
更に、ステータ40は、同一のスロット55内に第1挿通部75A及び第2挿通部75Bが交互に並んで配置されている。したがって、ステータ40によれば、第2被覆部77Bの厚さD2が小さくても、第2被覆部77Bに隣接する第1被覆部77Aの厚さD1が大きいため、第2被覆部77Bの厚さD2を抑えつつも第1芯線76Aと第2芯線76Bとの絶縁性を確保しやすい。
【0062】
更に、ステータ40は、第2芯線76Bの第2断面積が第1芯線76Aの第1断面積よりも大きい。このため、第2芯線76Bの電気抵抗値の低下を図りやすく、第2芯線76Bでの電力損失(いわゆる銅損)及び発熱の低下を図りやすい。例えば、本実施形態のように、第1芯線76Aと第2芯線76Bで電気抵抗値及び原料のうち少なくとも一方を同じにするだけで、第2芯線76Bの電気抵抗値の方が低くなり、第2芯線76Bでの電力損失(いわゆる銅損)及び発熱の方が低くなる。しかも、ステータ40は、第2被覆部77Bの厚さD2が第1被覆部77Aの厚さD1よりも小さいため、第2芯線76Bを太くしつつも、第2挿通部75Bの太さの増大を抑えることができる。
【0063】
更に、コイル42は、第1巻線74A及び第2巻線74Bがいずれも通電される第1通電状態と、第2巻線74Bのみが通電される第2通電状態とに切り替わる。したがって、ステータ40によれば、コイル42の第2通電状態での電力損失の低減及び発熱量の低減を図りやすいため、コイル42の第1通電状態と第2通電状態の合算での電力損失の低減及び発熱量の低減を図りやすい。例えば、本実施形態のように、第1被覆部77Aと第2被覆部77Bの熱伝導率及び原料のうち少なくとも一方を同じにするだけで、第1巻線74Aと第2巻線74Bの被覆部の厚さが同じである構成と比較して、コイル42の第1通電状態での電力損失及び発熱量を増加させることなく、第2通電状態での電力損失及び発熱量を低減させることができる。このため、コイル42の第1通電状態と第2通電状態の合算での電力損失及び発熱量を低減させることができる。
【0064】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0065】
上述の実施形態では、切替装置10が制御部30を有していたが、切替装置が制御部30を有していなくてもよい。例えば、切替装置が、上述の切替部20のみによって構成され、この切替装置(具体的には切替部20)が外部装置(例えば、上述の制御部30と同様の機能を有する装置)から指示を受けて切替動作を行うような構成であってもよい。
【0066】
上述された実施形態では、各相の巻線がそれぞれ2つに分けられたが、各相の巻線がそれぞれ3つ以上に分けられてもよい。
【0067】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、請求の範囲によって示された範囲内又は請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
1…車載システム
2…電動機駆動装置
4…交流電動機
6…インバータ
6A…スイッチング素子
6B…スイッチング素子
6C…スイッチング素子
6D…スイッチング素子
6E…スイッチング素子
6F…スイッチング素子
10…切替装置
20…切替部
21…第1切替部
21A…スイッチ
21B…スイッチ
21C…スイッチ
22…第2切替部
22A…スイッチ
22B…スイッチ
22C…スイッチ
30…制御部
40…ステータ
41…ステータコア
42…コイル
43…絶縁部材
51…ヨーク部
52…ティース部
55…スロット
61…導電路
61A…導電路
61B…導電路
62…導電路
62A…導電路
62B…導電路
63…導電路
63A…導電路
63B…導電路
71…巻線
71A…第1巻線
71B…第2巻線
72…巻線
72A…第1巻線
72B…第2巻線
73…巻線
73A…第1巻線
73B…第2巻線
74A…第1巻線
74B…第2巻線
75A…第1挿通部
75B…第2挿通部
76A…第1芯線
76B…第2芯線
77A…第1被覆部
77B…第2被覆部
81…電力路
81A…端部
81B…端部
81C…端部
81D…端部
82…電力路
82A…端部
82B…端部
82C…端部
82D…端部
83A…端部
83B…端部
83C…端部
83D…端部
90…短絡部
D1…第1被覆部の厚さ
D2…第2被覆部の厚さ