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特許7616466ロープ外れ止め装置およびロープ外れ止め装置の隙間調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ロープ外れ止め装置およびロープ外れ止め装置の隙間調整方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/06 20060101AFI20250109BHJP
   B66B 11/08 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B66B7/06 H
B66B11/08 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024095698
(22)【出願日】2024-06-13
【審査請求日】2024-06-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 理貴
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-159920(JP,A)
【文献】特開2008-303049(JP,A)
【文献】特開2007-131379(JP,A)
【文献】特開2011-201626(JP,A)
【文献】特許第7455264(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/06-7/10
B66B 11/08
B66D 1/00-5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻上機のハウジングに固定され、綱車の軸方向において、前記綱車に近づくにつれて前記綱車の径方向の厚み寸法が変化するように傾斜した、前記ハウジングに固定された面が対向する面である第1傾斜面が形成された固定部材と、
ロープが対向する面を有し、前記第1傾斜面と接触可能な傾斜面である第2傾斜面が形成され、前記第2傾斜面は前記第1傾斜面に沿ってスライドして移動可能である調整部材と、
前記ハウジングに対向して設けられ、前記固定部材に対して前記軸方向において移動可能に設けられた調整ボルトと、
前記調整部材と前記調整ボルトとの間に介在する締結部材と、
を備え、
前記第2傾斜面が前記第1傾斜面と接触した状態において、前記調整ボルトが移動することによって、前記締結部材を介して前記第2傾斜面が前記第1傾斜面に沿ってスライドして移動する
ロープ外れ止め装置。
【請求項2】
前記固定部材と前記調整部材の間に設けられた弾性部材を備える
請求項1に記載のロープ外れ止め装置。
【請求項3】
前記固定部材は、前記第2傾斜面が前記第1傾斜面に沿ってスライドして移動する場合に、前記調整部材と接触する接触面を有し、
前記接触面には、突起が設けられ、
前記調整部材には、前記突起を係合する長空孔が設けられ、
前記調整部材とロープが対向する面に対する前記長空孔の傾斜角度は、前記調整部材とロープが対向する面に対する前記第2傾斜面の傾斜角度と同じ角度である
請求項1又は2に記載のロープ外れ止め装置。
【請求項4】
前記突起の、前記長空孔内の前記径方向における位置が、前記径方向において前記綱車から一番近づいた位置に配置される場合に、前記調整部材と前記ロープとの間の隙間が予め定められた寸法となるように設けられる
請求項3に記載のロープ外れ止め装置。
【請求項5】
前記固定部材には、前記軸方向に沿った方向の線分である固定部材目盛が形成され、
前記調整部材には、前記軸方向に沿った方向の線分である調整部材目盛が形成され、
前記調整部材と前記ロープとの間の隙間が予め定められた寸法となる場合に、前記固定部材目盛と前記調整部材目盛の前記径方向における位置が一致するように設けられる
請求項1又は2に記載のロープ外れ止め装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のロープ外れ止め装置を用いて、前記ロープと前記調整部材との間との間の隙間を調整するロープ外れ止め装置との間の隙間調整方法であって、
前記調整ボルトを移動させることによって、前記調整部材を移動させて、前記調整部材を前記ロープに接触させる第1ステップと、
前記調整部材が前記ロープに接触した状態から前記調整ボルトを移動させることによって、前記調整部材を移動させて、前記隙間を調整する第2ステップと、
を備えるロープ外れ止め装置の隙間調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はロープ外れ止め装置およびロープ外れ止め装置の隙間調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のロープ外れ止め装置は、固定部材と、第1調整部材と、第2調整部材と、第1調整ボルトと、第2調整ボルトと、ロープガードと、を備える。
【0003】
固定部材は、綱車に掛けられたロープに対向して設けられ、巻上機のハウジングに固定されている。第1調整部材は、固定部材に支持され、固定部材に対して綱車の軸方向に移動可能である。第1調整ボルトは、固定部材に対して移動可能に設けられ、移動することによって第1調整部材が軸方向に移動する。第2調整部材は、固定部材に支持され、第1調整部材に対して軸方向に離れて設けられ、固定部材に対して軸方向に移動可能である。第2調整ボルトは、固定部材に対して移動可能に設けられ、移動することによって第2調整部材が軸方向に移動する。ロープガードは、ロープと固定部材との間に設けられ、第1調整部材および第2調整部材を介して固定部材に支持されている。また、ロープガードは、第1調整部材が接触している第1傾斜面と、第2調整部材が接触している第2傾斜面と、が形成されている。
【0004】
ロープガードとロープとの間の隙間を調整し、ロープガードをロープに対して平行にする場合、作業者は第1調整ボルトおよび第2調整ボルトのそれぞれを綱車の軸方向に移動させる。これによって、ロープガードの第1傾斜面は第1調整部材を介して綱車の径方向に移動し、ロープガードの第2傾斜面は第2調整部材を介して綱車の径方向に移動する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第7195472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のロープ外れ止め装置では、第1調整ボルト又は第2調整ボルトのいずれかは、綱車の軸方向において、巻上機のハウジングと対向して設けられる。そのため、作業者が当該調整ボルトを綱車の軸方向に移動させる場合、巻上機のハウジングと接触する可能性があり、作業性が悪かった。
【0007】
また、従来のロープ外れ止め装置では、作業者が第1調整ボルトおよび第2調整ボルトのそれぞれを回転する必要があり、作業性が悪かった。
【0008】
本開示は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、ロープガードとして機能する調整部材とロープとの間の隙間を調整し、調整部材をロープに対して平行にする場合において、作業性の向上を図ることができるロープ外れ止め装置およびロープ外れ止め装置の隙間調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るロープ外れ止め装置は、巻上機のハウジングに固定され、綱車の軸方向において、綱車に近づくにつれて綱車の径方向の厚み寸法が変化するように傾斜した、ハウジングに固定された面が対向する面である第1傾斜面が形成された固定部材と、ロープが対向する面を有し、第1傾斜面と接触可能な傾斜面である第2傾斜面が形成され、第2傾斜面は第1傾斜面に沿ってスライドして移動可能である調整部材と、ハウジングに対向して設けられ、固定部材に対して軸方向において移動可能に設けられた調整ボルトと、調整部材と調整ボルトとの間に介在する締結部材と、を備え、第2傾斜面が第1傾斜面と接触した状態において、調整ボルトが移動することによって、締結部材を介して第2傾斜面が第1傾斜面に沿ってスライドして移動する。
【0010】
本開示に係るロープ外れ止め装置の隙間調整方法は、調整ボルトを移動させることによって、調整部材を移動させて、調整部材をロープに接触させる第1ステップと、調整部材がロープに接触した状態から調整ボルトを移動させることによって、調整部材を移動させて、隙間を調整する第2ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、ロープガードとして機能する調整部材とロープとの間の隙間を調整し、調整部材をロープに対して平行にする場合において、作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係るエレベータの巻上機の断面図である。
図2】実施の形態1に係るロープ外れ止め装置を示す側面図である。
図3】実施の形態1に係るロープ外れ止め装置を示す断面図である。
図4】実施の形態1に係る固定部材およびハウジングを一体化した図である。
図5】実施の形態1に係る調整部材、固定部材、およびハウジングを一体化した図である。
図6】実施の形態1に係るロープ外れ止め装置の隙間調整方法を示すフローチャートである。
図7】実施の形態1に係る調整部材をロープに接触させた図である。
図8】実施の形態1に係る調整部材とロープとの間の隙間を調整した後の図である。
図9】実施の形態1の変形例に係るロープ外れ止め装置を示す側面図である。
図10】実施の形態1の変形例に係るロープ外れ止め装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るエレベータの巻上機1の断面図である。ここで、図1におけるシャフト5の長手方向であり、綱車3の軸線にそった方向を綱車3の軸方向D1とする。また、図1におけるシャフト5の短手方向であり、綱車3の軸方向D1を通る軸線に直交する線に沿った方向を、綱車3の径方向D2とする。
【0014】
図1において、巻上機1は、軸方向D1に並んだロープ2を巻き付ける綱車3と、綱車3を回転させるための駆動力を発生するモータ4と、モータ4を収容するハウジング11と、モータ4が発生する駆動力を綱車3に伝達するシャフト5と、シャフト5を回転可能に支持する一対の軸受6と、一対の軸受6を支持する一対の軸受台7と、綱車3、ハウジング11、および軸受台7を支持する土台部材8と、を備える。
【0015】
モータ4は、ステータ9と、ロータ10を備える。ステータ9は、ハウジング11に固定される。ロータ10は、ステータ9との間に間隙を設けて軸方向D1におけるシャフト5のロータ10側の端部が圧入され固定される。モータ4は、ステータ9が通電することでロータ10を回転させ、駆動力をシャフト5に伝達する。
【0016】
ハウジング11は、軸方向D1においてモータ4と綱車3の間に設けられた一方の軸受6、および一方の軸受6を支持する軸受台7と一体となって形成される。また、ハウジング11は、軸方向D1においてハウジング11と綱車3が対向する面に、雌ネジ穴17が2つ設けられる。ここで、この2つの雌ネジ穴17を、それぞれ一方の雌ネジ穴17および他方の雌ネジ穴17と称する。一方の雌ネジ穴17は調整ボルト15と対応して締結し、ロープ外れ止め装置12が固定される。また、他方の雌ネジ穴17は固定ボルト16と対応して締結し、ロープ外れ止め装置12が固定される。調整ボルト15および固定ボルト16を含むロープ外れ止め装置12の詳細は後述する。
【0017】
図2は、実施の形態1に係るロープ外れ止め装置12を示す側面図である。図3は、実施の形態1に係るロープ外れ止め装置12を示す断面図である。図3(a)は、図2のA-A断面を軸方向D1において綱車3側から見た図であり、図3(b)は、図2のB-B断面を軸方向D1において綱車3側から見た図であり、図3(c)は、図2のC-C断面を軸方向D1において綱車3側から見た図である。ここで、軸方向D1において綱車3からハウジング11を見た場合の平面における、径方向D2を通る線と直交する線に沿った方向を奥行方向D3とする。また、奥行方向D3において、固定部材基部19を中心として固定部材傾斜部20側を手前側、固定部材取付部21を奥側とする。
【0018】
ロープ外れ止め装置12は、綱車3に掛けられたロープ2に対向して設けられ、ハウジング11に固定された固定部材13と、固定部材13に対して移動可能である調整部材14と、固定部材13に対して軸方向D1において移動可能に設けられ、移動することによって調整部材14を移動する調整ボルト15と、ハウジング11に固定部材13を固定するための固定ボルト16と、固定部材13と調整部材14の間に設けられた弾性部材であるばね18と、調整部材14と調整ボルト15の間に介在する締結部材であるワッシャー27と、を備える。
【0019】
固定部材13は、固定部材基部19と、固定部材傾斜部20と、固定部材取付部21と、を備える。図3(c)に示すように、奥行方向D3における固定部材基部19の2つの面には、それぞれ固定部材傾斜部20と固定部材取付部21が接合されている。言い換えると、固定部材傾斜部20および固定部材取付部21は、奥行方向D3において、固定部材基部19を中心として固定部材基部19を離れる方向にそれぞれ延びている。
【0020】
図2に示すように、固定部材基部19は、ハウジング11に固定され、軸方向D1においてハウジング11から離れる方向に延びている。また、図3に示すように、固定部材基部19の断面は、例えばT字状である。
【0021】
また、図2に示すように、固定部材基部19には、突起100が設けられる。突起100は、奥行方向D3において調整部材14と接触する面である接触面26に設けられる。突起100は、例えば2つ設けられる。
【0022】
図2に示すように、固定部材傾斜部20は、軸方向D1においてハウジング11から離れる方向に、ハウジング11から延びている。また、軸方向D1において調整ボルト15を挿入可能である、第1調整ボルト挿入孔200を有する。第1調整ボルト挿入孔200は、空洞であり、軸方向D1において調整ボルト15の移動が可能である。
【0023】
また、軸方向D1において、ハウジング11に固定された面が対向する面は、軸方向D1において、綱車3に近づくにつれて径方向D2の厚み寸法が小さくなるように傾斜している。この傾斜した面を、以後第1傾斜面24と称する。
【0024】
図3に示すように、固定部材取付部21は、軸方向D1においてハウジング11から離れる方向に、ハウジング11から延びている。また、図3(b)および図3(c)に示すように、軸方向D1において、固定ボルト16を挿入可能である固定ボルト挿入孔201を有する。固定ボルト挿入孔201は、空洞であり、軸方向D1において固定ボルト16の移動が可能である。
【0025】
調整部材14は、ロープガード部22と、調整部材傾斜部23と、を備える。図3(b)に示すように、奥行方向D3においてロープガード部22と調整部材傾斜部23は接合されている。また、図3(a)および図3(b)に示すように、調整部材14は、奥行方向D3において、手前側に設けられる。
【0026】
図2に示すように、ロープガード部22は、ロープ2が対向する面を有する。また、ロープガード部22は、ロープ2と固定部材基部19の間に、ばね18を介して設けられ、固定部材13に対して移動可能である。
【0027】
また、図2に示すように、ロープガード部22は、奥行方向D3の2つの面を貫通する長空孔101を有する。1つの長空孔101は、固定部材基部19に設けられた1つの突起100を係合する。また、長空孔101は、ロープガード部22のロープ2が対向する面に対して傾斜するように設けられる。長空孔101は、突起100と対応するように、個数および設けられる位置が決定される。例えば、突起100が2つ設けられるとき、長空孔101は2つ設けられ、それぞれの長空孔101が1つの突起100を挿入できるようにそれぞれ配置される。
【0028】
図2に示すように、調整部材傾斜部23は、軸方向D1において、調整ボルト15を挿入可能である第2調整ボルト挿入孔202を有する。第2調整ボルト挿入孔202は、空洞であり、軸方向D1において調整ボルト15の移動が可能である。また、第2調整ボルト挿入孔202の径方向D2における長さは、調整ボルト15の直径と比較して大きい。これは、調整ボルト15を第2調整ボルト挿入孔202に挿入した状態で、径方向D2において調整部材14を移動できるようにするためである。例えば、直径が24mmである調整ボルト15を用いる場合、径方向D2における長さが36mmである第2調整ボルト挿入孔202を用いる。
【0029】
また、図2に示すように、軸方向D1において調整部材傾斜部23とハウジング11が対向する面は、軸方向D1において、綱車3に近づくにつれて径方向D2の厚み寸法が大きくなるように傾斜している。この傾斜した面を、以後第2傾斜面25と称する。第2傾斜面25は、第1傾斜面24と接触可能となるように、傾斜角度が決定される。また、第2傾斜面25は、第1傾斜面24に沿ってスライドして移動可能である。
【0030】
なお、調整部材14とロープ2が対向する面に対する長空孔101の傾斜角度は、ロープガード部22とロープ2が対向する面に対する第2傾斜面25の傾斜角度と、同じ角度となるように設けられる。これによって、調整部材14を径方向D2においてスライドする場合に、長空孔101は内部に突起100を係合した状態でスライドして移動することができる。ここで、長空孔101がスライドして移動する場合、突起100は移動しないため、突起100の長空孔101内における位置が変化する。
【0031】
調整ボルト15および固定ボルト16は、雄ネジが切られたボルトである。図3(a)に示すように、調整ボルト15および固定ボルト16における、雄ネジが切られていない側の端部である頭部は、例えば六角形の形状である。作業者は、この頭部を持ち、調整ボルト15および固定ボルト16を移動させることができる。なお、調整ボルト15の雄ネジは、一方の雌ネジ穴17の軸方向D1におけるいずれの位置でも締結できる。なお、固定ボルト16の雄ネジは、他方の雌ネジ穴17の軸方向D1におけるいずれの位置でも締結できる。
【0032】
また、調整ボルト15は、ハウジング11に固定部材13および調整部材14を固定する。また、調整ボルト15を、第2傾斜面25が第1傾斜面24と接触した状態において、軸方向D1において移動すると、第2傾斜面25が前記第1傾斜面24に沿ってスライドして移動する。
【0033】
ばね18は、調整部材14が径方向D2において移動する場合に、径方向D2において伸縮するように設けられる。
【0034】
ワッシャー27は、第2傾斜面25が第1傾斜面24と接触した状態において、調整ボルト15が移動する場合、調整ボルト15の頭部に押されて、第2傾斜面25が第1傾斜面24に沿ってスライドして移動することによって、調整部材14を移動させる。
【0035】
次に、ロープ外れ止め装置12のハウジング11への取り付け方法を説明する。図4は、実施の形態1に係る固定部材13およびハウジング11を一体化した図である。図5は、実施の形態1に係る調整部材14、固定部材13およびハウジング11を一体化した図である。なお、図4は、奥行方向D3において奥側から見たロープ外れ止め装置12の側面図であり、図5は、奥行方向D3において手前側から見たロープ外れ止め装置12の側面図である。
【0036】
最初に、固定ボルト16を締結する。具体的には、固定部材取付部21とハウジング11が対向する面を、ハウジング11と綱車3が対向する面に接触させる。この状態で、軸方向D1において綱車3側からハウジング11側に向かって、固定部材取付部21の固定ボルト挿入孔201、ハウジング11の他方の雌ネジ穴17の順に、固定ボルト16を挿入する。そして、固定ボルト16を、軸方向D1において綱車3側からハウジング11側に向かって移動すると、固定ボルト16に切られた雄ネジは、ハウジング11に切られた雌ネジ穴17と締結する。このように固定ボルト16を締結すると、図4に示すように、固定部材13およびハウジング11を一体化することができる。
【0037】
なお、作業者は一方の手で固定部材13を支え、他方の手で固定ボルト16を持ち、固定ボルト16を挿入、移動および締結する。
【0038】
次に、調整部材14を固定部材13に接触させる。具体的には、図4に示すように、固定ボルト16によって固定部材13およびハウジング11が一体化された状態において、調整部材傾斜部23の傾斜面を固定部材傾斜部20の傾斜面に接触させる。このとき、ロープガード部22に設けられたそれぞれの長空孔101には、固定部材基部19に設けられた1つの突起100が係合される。
【0039】
次に、ロープ外れ止め装置12との間の隙間調整方法を説明する。図6は、ロープ外れ止め装置12との間の隙間調整方法を示すフローチャートである。ロープ外れ止め装置12との間の隙間調整方法とは、調整部材14をロープ2に対して平行にするために、調整部材14とロープ2との間の隙間Sを調整する方法である。図7は、実施の形態1に係る調整部材14をロープ2に接触させた図である。図8は、実施の形態1に係る調整部材14とロープ2との間の隙間Sを調整した後の図である。なお、図7および図8は、奥行方向D3において手前側から見たロープ外れ止め装置12の側面図である。
【0040】
最初に、調整ボルト15を締結する。具体的には、調整部材14を固定部材13に接触させた状態で、軸方向D1において綱車3側からハウジング11側に向かって、調整部材傾斜部23の第2調整ボルト挿入孔202、固定部材傾斜部20の第1調整ボルト挿入孔200、ハウジング11の一方の雌ネジ穴17の順に、調整ボルト15を挿入する。そして、調整ボルト15を、軸方向D1において綱車3側からハウジング11側に向かって移動すると、調整ボルト15に切られた雄ネジは、ハウジング11に切られた一方の雌ネジ穴17と締結する。このように調整ボルト15を締結すると、図5に示すように、調整部材14、固定部材13、ハウジング11を一体化することができる。次に、図5に示す状態において、軸方向D1においてハウジング11から綱車3に向かう方向に、調整ボルト15を移動させ、一方の雌ネジ穴17と締結させる。調整ボルト15が移動することにより、調整部材14及びワッシャー27、および、ワッシャー27および調整ボルト15の間に隙間が生じる。そして、調整部材14の自重によって、調整部材傾斜部23の傾斜面は、固定部材傾斜部20の傾斜面に沿ってスライドして移動し、ばね18が径方向D2において伸び、調整部材14は、径方向D2において綱車3に近づく方向に移動する。その結果、図7に示すように、調整部材14がロープ2に接触する。具体的には、調整部材14のロープガード部22とロープ2が対向する面が、ロープ2と接触する(S1)。
【0041】
次に、軸方向D1において綱車3からハウジング11に向かう方向に、調整ボルト15を移動させる。これによって、雌ネジ穴17のD1方向においてロープ外れ止め装置12に近づいた位置で調整ボルト15が締結される。そして、調整ボルト15の移動により、調整部材14及びワッシャー27、および、ワッシャー27および調整ボルト15が接触する。そして、調整ボルト15の移動によって、ワッシャー27を介して、調整部材傾斜部23は、D1方向においてハウジング11に近づく方向に押される。そして、調整部材傾斜部23は固定部材傾斜部20の傾斜面に沿ってスライドして移動し、ばね18が径方向D2において縮み、調整部材14は、径方向D2において綱車3から離れる方向に移動する。その結果、調整部材14とロープ2の間に、隙間Sが生じる。具体的には、調整部材14のロープガード部22とロープ2が対向する面とロープ2の間に、隙間Sが生じる(S2)。
【0042】
その後、調整部材14とロープ2との間の隙間Sが、予め定めた隙間Sの寸法Lになるまで、軸方向D1において綱車3からハウジング11に向かう方向に調整ボルト15を移動させる。その結果、図7に示すように、隙間Sが寸法Lとなるように調整される(S3)。
【0043】
ここで、ロープ外れ止め装置12との間の隙間調整を行う過程において、固定部材基部19に設けられた突起100の、ロープガード部22に設けられた長空孔101内の径方向D2における位置について説明する。ロープ外れ止め装置12との間の隙間調整を行う過程において、突起100の長空孔101内の径方向D2における位置は、径方向D2において綱車3に近づくように配置される。具体的には、S1において、突起100の長空孔101内の径方向D2における位置は、径方向D2において綱車3から一番離れた位置に配置される。S2において、突起100の長空孔101内の径方向D2における位置は、S1と比較して、径方向D2において綱車3から近づいた位置に配置される。S3において、突起100の長空孔101内の径方向D2における位置は、径方向D2において綱車3から一番近づいた位置に配置される。
【0044】
突起100の長空孔101内の径方向D2における位置が、径方向D2において綱車3から一番近づいた位置に配置される場合、長空孔101は径方向D2において、綱車3に近づく方向に移動できなくなる。すなわち、調整部材14は、径方向D2において綱車3から遠ざかる方向に移動できなくなる。この場合、作業者は、軸方向D1において綱車3からハウジング11に向かう方向に調整ボルト15を移動できなくなる。したがって、作業者は、隙間Sの寸法Lを計測しながら調整せずとも、調整ボルト15が軸方向D1において綱車3からハウジング11に向かう方向に移動できなくなった場合に、隙間Sを寸法Lに調整することができる。
【0045】
なお、作業者は、一方の手で調整ボルト15を軸方向D1において移動させる。
【0046】
ここで、調整ボルト15の頭部は、軸方向D1において、巻上機1が有する部材や機器と対面しない。そのため、作業者は巻上機1に接触することを意識せず、調整ボルト15の頭部を容易に軸方向D1において移動することができ、作業性が向上する。
【0047】
また、作業者が調整ボルト15を軸方向D1において移動する場合、調整部材14は、調整ボルト15の移動によって径方向D2に移動するため、作業者は、調整ボルト15を持っていない他方の手で調整部材14を支える必要がなく、一方の手のみを用いてロープ外れ止め装置12との間の隙間調整を行える。よって、作業性が向上する。
【0048】
以上より、実施の形態1に係るロープ外れ止め装置は、巻上機1のハウジング11に固定され、綱車3の軸方向D1において、綱車3に近づくにつれて綱車3の径方向D2の厚み寸法が変化するように傾斜した、ハウジング11に固定された面が対向する面である第1傾斜面24が形成された固定部材13と、ロープ2が対向する面を有し、第1傾斜面24と接触可能な傾斜面である第2傾斜面25が形成され、第2傾斜面25は第1傾斜面24に沿ってスライドして移動可能である調整部材14と、ハウジングに11対向して設けられ、固定部材13に対して軸方向D1において移動可能に設けられた調整ボルト15と、調整部材14と調整ボルト15との間に介在する締結部材であるワッシャー27と、を備え、第2傾斜面25が第1傾斜面24と接触した状態において、調整ボルト15が移動することによって、締結部材であるワッシャー27を介して第2傾斜面25が第1傾斜面24に沿ってスライドして移動することで、ロープガード部22を含む調整部材14とロープ2との間の隙間Sを調整し、調整部材14をロープ2に対して平行にする場合において、作業性の向上を図ることができる。
【0049】
また、実施の形態1に係るロープ外れ止め装置は、固定部材13と調整部材14の間に設けられた弾性部材であるばね18を備えることで、ロープ2と調整部材14との間の隙間を調整する場合に、調整部材14が固定部材13から離れることを防止できる。
【0050】
また、実施の形態1に係るロープ外れ止め装置は、固定部材13は、第2傾斜面25が第1傾斜面24に沿ってスライドして移動する場合に、調整部材14と接触する接触面26を有し、接触面26には、突起100が設けられ、調整部材14には、突起100を係合する長空孔101が設けられ、調整部材14とロープ2が対向する面に対する長空孔101の傾斜角度は、調整部材14とロープ2が対向する面に対する第2傾斜面25の傾斜角度と同じ角度であることで、ロープ2と調整部材14との間の隙間を調整する場合に、調整部材14が固定部材13の接触面26から離れることを防止できる。
【0051】
さらに、実施の形態1に係るロープ外れ止め装置は、突起100の、長空孔101内の径方向D2における位置が、径方向D2において綱車3から一番近づいた位置に配置される場合に、調整部材14とロープ2との間の隙間が予め定められた寸法Lとなるように設けられることで、作業者は、隙間Sの寸法Lを計測しながら調整せずとも、調整ボルト15が軸方向D1において綱車3からハウジング11に向かう方向に移動できなくなった場合に、隙間Sを寸法Lに調整することができ、作業性の向上を図ることができる。
【0052】
なお、ロープ外れ止め装置12との間の隙間調整を行う過程において、固定部材基部19に設けられた突起100の、ロープガード部22に設けられた長空孔101内の径方向D2における位置は、限定されない。隙間Sを計測しながら調整する必要がある場合には、例えば、作業者が、軸方向D1において綱車3からハウジング11に向かう方向に調整ボルト15を移動する場合に、調整ボルト15を持っていない他方の手で定規を持ち、隙間Sの寸法を計測することで、隙間Sを調整してもよい。
【0053】
また、図9は、実施の形態1の変形例に係るロープ外れ止め装置12を示す側面図である。図9に示すように、この変形例では、固定部材傾斜部20の奥行方向D3における手前側の側面には、軸方向D1に沿った方向の線分である固定部材目盛30が設けられ、調整部材傾斜部23の奥行方向D3における手前側の側面には、軸方向D1に沿った方向の線分である調整部材目盛31が設けられる。隙間Sが予め定めた寸法Lとなる場合に、固定部材目盛30と調整部材目盛31の径方向D2における位置が一致するように設けられる。この構成を備えることで、隙間Sを計測しながら調整する必要がある場合においても、作業者は、定規を使用せず、調整ボルト15を回転させ、目視によって隙間Sの調整を行うことができ、作業性が向上する。
【0054】
なお、固定部材傾斜部20および調整部材傾斜部23の傾斜面の傾斜形状は限定されない。図10は、実施の形態1の変形例に係るロープ外れ止め装置12を示す側面図である。図10に示すように、この変形例では、固定部材傾斜部20と綱車3が対向する面は、軸方向D1において、綱車3に近づくにつれて径方向D2の厚み寸法が大きくなるように傾斜している。また、調整部材傾斜部23とハウジング11が対向する面は、軸方向D1において、綱車3に近づくにつれて径方向D2の厚み寸法が小さくなるように傾斜している。また、ロープガード部22とロープ2が対向する面に対する長空孔101の傾斜角度は調整部材14とロープ2が対向する面に対する第2傾斜面25の傾斜角度と同じ角度である。よって、固定部材傾斜部20の傾斜面および調整部材傾斜部23の傾斜面が接触した状態で調整部材14を径方向D2においてスライドして移動をする場合、長空孔101を連動して径方向D2においてスライドして移動することができる。したがって、この場合においても、調整部材14を綱車3に対して平行になるように、隙間Sを調整することが可能である。
【0055】
また、実施の形態1に係るロープ外れ止め装置12との間の隙間調整方法は、(請求項6)を備えることで、調整部材14をロープ2に対して平行にすることができる。
【0056】
なお、調整ボルト15は、第2傾斜面25が第1傾斜面24と接触した状態において、軸方向D1において移動すると、第2傾斜面25が前記第1傾斜面24に沿ってスライドして移動できればよい。例えば、調整ボルト15は、調整部材14を固定部材13に固定するものとしてもよい。
【0057】
なお、弾性部材は、ばね18に限定されず、例えばジャッキボルトであってもよい。
【0058】
なお、固定部材基部19の断面形状は限定されない。ばね18を介してロープガード部22を取り付けられ、かつ、固定部材基部19の奥行方向D3における2つの面に、それぞれ固定部材傾斜部20と固定部材取付部21が接合できればよい。
【0059】
なお、以上の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能である。また本開示の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0060】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
巻上機のハウジングに固定され、綱車の軸方向において、前記綱車に近づくにつれて前記綱車の径方向の厚み寸法が変化するように傾斜した、前記ハウジングに固定された面が対向する面である第1傾斜面が形成された固定部材と、
ロープが対向する面を有し、前記第1傾斜面と接触可能な傾斜面である第2傾斜面が形成され、前記第2傾斜面は前記第1傾斜面に沿ってスライドして移動可能である調整部材と、
前記ハウジングに対向して設けられ、前記固定部材に対して前記軸方向において移動可能に設けられた調整ボルトと、
前記調整部材と前記調整ボルトとの間に介在する締結部材と、
を備え、
前記第2傾斜面が前記第1傾斜面と接触した状態において、前記調整ボルトが移動することによって、前記締結部材を介して前記第2傾斜面が前記第1傾斜面に沿ってスライドして移動する
ロープ外れ止め装置。
(付記2)
前記固定部材と前記調整部材の間に設けられた弾性部材を備える
付記1に記載のロープ外れ止め装置。
(付記3)
前記固定部材は、前記第2傾斜面が前記第1傾斜面に沿ってスライドして移動する場合に、前記調整部材と接触する接触面を有し、
前記接触面には、突起が設けられ、
前記調整部材には、前記突起を係合する長空孔が設けられ、
前記調整部材とロープが対向する面に対する前記長空孔の傾斜角度は、前記調整部材とロープが対向する面に対する前記第2傾斜面の傾斜角度と同じ角度である
付記1又は2に記載のロープ外れ止め装置。
(付記4)
前記突起の、前記長空孔内の前記径方向における位置が、前記径方向において前記綱車から一番近づいた位置に配置される場合に、前記調整部材と前記ロープとの間の隙間が予め定められた寸法となるように設けられる
付記3に記載のロープ外れ止め装置。
(付記5)
前記固定部材には、前記軸方向に沿った方向の線分である固定部材目盛が形成され、
前記調整部材には、前記軸方向に沿った方向の線分である調整部材目盛が形成され、
前記調整部材と前記ロープとの間の隙間が予め定められた寸法となる場合に、前記固定部材目盛と前記調整部材目盛の前記径方向における位置が一致するように設けられる
付記1から3のいずれか一項に記載のロープ外れ止め装置。
(付記6)
付記1から5のいずれか一項に記載のロープ外れ止め装置を用いて、前記ロープと前記調整部材との間との間の隙間を調整するロープ外れ止め装置との間の隙間調整方法であって、
前記調整ボルトを移動させることによって、前記調整部材を移動させて、前記調整部材を前記ロープに接触させる第1ステップと、
前記調整部材が前記ロープに接触した状態から前記調整ボルトを移動させることによって、前記調整部材を移動させて、前記隙間を調整する第2ステップと、
を備えるロープ外れ止め装置の隙間調整方法。
【符号の説明】
【0061】
1 巻上機、2 ロープ、3 綱車、4 モータ、5 シャフト、6 軸受、7 軸受台、8 土台部材、9 ステータ、10 ロータ、11 ハウジング、12 ロープ外れ止め装置、13 固定部材、14 調整部材、15 調整ボルト、16 固定ボルト、17 雌ネジ穴、18 ばね、19 固定部材基部、20 固定部材傾斜部、21 固定部材取付部、22 ロープガード部、23 調整部材傾斜部、24 第1傾斜面、25 第2傾斜面、26 接触面、27 ワッシャー、30 固定部材目盛、31 調整部材目盛、100 突起、101 長空孔、200 第1調整ボルト挿入孔、201 固定ボルト挿入孔、202 第2調整ボルト挿入孔
【要約】
【課題】ロープガードとして機能する調整部材とロープとの間の隙間を調整し、調整部材をロープに対して平行にする場合において、作業性の向上を図ることができるロープ外れ止め装置およびロープ外れ止め装置の隙間調整方法を提供することを目的とする。
【解決手段】固定部材13と、調整部材14と、調整ボルト15と、を備える。固定部材13には、第1傾斜面24が形成され、調整部材14には、第2傾斜面25が形成される。調整ボルト15は、固定部材13に対して軸方向D1において移動可能に設けられ、移動することによって、第2傾斜面25が第1傾斜面24と接触した状態において、第2傾斜面25が第1傾斜面24に沿ってスライドして移動する。
【選択図】図2
図1
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図10