(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20250109BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20250109BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20250109BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20250109BHJP
H01B 3/40 20060101ALI20250109BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20250109BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20250109BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20250109BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20250109BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/013
C08K3/36
C08L101/12
H01B3/40 C
B32B27/20 Z
B32B27/38
H05K1/03 610L
H05K1/03 610R
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2024516125
(86)(22)【出願日】2023-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2023008794
(87)【国際公開番号】W WO2023203906
(87)【国際公開日】2023-10-26
【審査請求日】2024-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2022068288
(32)【優先日】2022-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真俊
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋介
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-070748(JP,A)
【文献】特開2016-191031(JP,A)
【文献】特開2002-284962(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181737(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0184092(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L63
C08K3
C08G59
B32B27
H01L23
H05K1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂及び(B)無機充填材を含む樹脂組成物であって、
(A)エポキシ樹脂が、(A-1)液状エポキシ樹脂を含み、
(B)無機充填材が、(B-1
)炭素含有無機充填材を含み、
(B-1)炭素含有無機充填材が、炭素含有量0.1質量%以上5質量%以下のシリカ粒子であり、
(A-1)液状エポキシ樹脂の量が、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0.5質量%以上であり、
(B-1)炭素含有無機充填材の量が、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、10質量%以上である、樹脂組成物。
【請求項2】
(C)硬化剤を更に含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(B-1)炭素含有無機充填材の量が、(B)無機充填材の全量100質量%に対して、20質量%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(B-1)炭素含有無機充填材
の炭素含有量
が、0.2質量%以
上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(A-1)液状エポキシ樹脂が、1,000以下の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(A-1)液状エポキシ樹脂が、非芳香族性のエポキシ樹脂である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(A-1)液状エポキシ樹脂が、25℃において、15,000mPa・s以下の粘度を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(D)硬化促進剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(E)熱可塑性樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
4,000poise未満の最低溶融粘度を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
樹脂組成物を190℃で90分の条件で熱硬化させて硬化物を得、当該硬化物に130℃、85%RHの環境で3.3Vの電圧を100時間印加した場合に、ライン/スペースが15μm/15μmの櫛歯型電極によって測定される当該硬化物の絶縁抵抗値が、1.0×10
8Ω以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
絶縁層形成用である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~
12の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項14】
請求項1~
12の何れか1項に記載の樹脂組成物を含む、シート状積層材料。
【請求項15】
支持体と、当該支持体上に形成された樹脂組成物層と、を備え、
樹脂組成物層が、請求項1~
12の何れか1項に記載の樹脂組成物を含む、樹脂シート。
【請求項16】
請求項1~
12の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、回路基板。
【請求項17】
請求項1~
12の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、半導体チップパッケージ。
【請求項18】
請求項
16に記載の回路基板を備える、半導体装置。
【請求項19】
請求項
17に記載の半導体チップパッケージを備える、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。また、本発明は、前記の樹脂組成物を用いた硬化物、シート状積層材料、樹脂シート、回路基板、半導体チップパッケージ及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板及び半導体チップパッケージには、一般に、絶縁層が設けられる。例えば、回路基板の一種としてのプリント配線板には、絶縁層として層間絶縁層が設けられることがある。また、例えば、半導体チップパッケージには、絶縁層として再配線形成層が設けられることがある。これらの絶縁層は、樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物によって形成されうる(特許文献1~2)。
また、特許文献3の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3644761号公報
【文献】国際公開第2019/216388号
【文献】特開2020-37643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、回路基板及び半導体チップパッケージの大型化、配線の高密度化、及び通信の高速化が進行している。高密度で形成された微細な配線を樹脂組成物で適切に埋め込む観点から、樹脂組成物には高い流動性が求められる。高い流動性を達成するためには、樹脂組成物の粘度を低くすることが考えられる。しかし、樹脂組成物の粘度を低くした場合には、配線を樹脂組成物で埋め込む際に樹脂組成物が流動し、当該樹脂組成物を硬化して得られる絶縁層の厚みの安定性が低くなることがあった。例えば、基板上の面に形成された配線を樹脂組成物によって埋め込んだ場合、配線上の部分と配線間の間隙部分とで樹脂組成物の厚みに差が生じて、絶縁層の厚みが不均一になることがあった。特に、大型の回路基板及び半導体チップパッケージでは、絶縁層の面積が大きくなるので、当該絶縁層の全体で厚みを安定して均一にすることの困難性は高かった。
【0005】
また、前記のような回路基板及び半導体チップパッケージの大型化、配線の高密度化、及び通信の高速化の進行により、近年では、絶縁層に対する絶縁信頼性の要求水準が高くなっている。しかし、樹脂組成物の粘度を低くするために低粘度のエポキシ樹脂を採用した場合には、低粘度のエポキシ樹脂が一般に多くの塩素を含むので、絶縁信頼性は低くなる傾向があった。
【0006】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、絶縁信頼性に優れる硬化物を得ることができ、且つ、流動性に優れる樹脂組成物;前記樹脂組成物の硬化物;前記樹脂組成物を含むシート状積層材料及び樹脂シート;前記硬化物を含む回路基板、半導体チップパッケージ及び半導体装置;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、特定範囲の量の(A-1)液状エポキシ樹脂を含む(A)エポキシ樹脂、及び、特定範囲の量の(B-1)炭素含有無機充填材を含む(B)無機充填材を組み合わせて含む樹脂組成物が、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0008】
[1] (A)エポキシ樹脂及び(B)無機充填材を含む樹脂組成物であって、
(A)エポキシ樹脂が、(A-1)液状エポキシ樹脂を含み、
(B)無機充填材が、(B-1)炭素含有量0.1質量%以上の炭素含有無機充填材を含み、
(A-1)液状エポキシ樹脂の量が、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0.5質量%以上であり、
(B-1)炭素含有無機充填材の量が、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、10質量%以上である、樹脂組成物。
[2] (C)硬化剤を更に含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] (B-1)炭素含有無機充填材の量が、(B)無機充填材の全量100質量%に対して、20質量%以上である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] (B-1)炭素含有無機充填材が、炭素含有量0.2質量%以上のシリカ粒子である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[5] (B-1)炭素含有無機充填材の炭素含有量が、5質量%以下である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[6] (A-1)液状エポキシ樹脂が、1,000以下の重量平均分子量を有する、[1]~[5]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[7] (A-1)液状エポキシ樹脂が、非芳香族性のエポキシ樹脂である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[8] (A-1)液状エポキシ樹脂が、25℃において、15,000mPa・s以下の粘度を有する、[1]~[7]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[9] (D)硬化促進剤を含む、[1]~[8]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[10] (E)熱可塑性樹脂を含む、[1]~[9]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[11] 4,000poise未満の最低溶融粘度を有する、[1]~[10]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[12] 樹脂組成物を190℃で90分の条件で熱硬化させて硬化物を得、当該硬化物に130℃、85%RHの環境で3.3Vの電圧を100時間印加した場合に、ライン/スペースが15μm/15μmの櫛歯型電極によって測定される当該硬化物の絶縁抵抗値が、1.0×108Ω以上である、[1]~[11]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[13] 絶縁層形成用である、[1]~[12]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[14] [1]~[13]の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
[15] [1]~[13]の何れか1項に記載の樹脂組成物を含む、シート状積層材料。
[16] 支持体と、当該支持体上に形成された樹脂組成物層と、を備え、
樹脂組成物層が、[1]~[13]の何れか1項に記載の樹脂組成物を含む、樹脂シート。
[17] [1]~[13]の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、回路基板。
[18] [1]~[13]の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、半導体チップパッケージ。
[19] [17]に記載の回路基板を備える、半導体装置。
[20] [18]に記載の半導体チップパッケージを備える、半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、絶縁信頼性に優れる硬化物を得ることができ、且つ、流動性に優れる樹脂組成物;前記樹脂組成物の硬化物;前記樹脂組成物を含むシート状積層材料及び樹脂シート;前記硬化物を含む回路基板、半導体チップパッケージ及び半導体装置;を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体チップパッケージの一例としてのFan-out型WLPを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して説明する。ただし、本発明は、下記に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施されうる。
【0012】
以下の説明において、用語「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸、メタクリル酸及びその組み合わせを包含する。また、用語「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、メタクリレート及びその組み合わせを包含する。
【0013】
以下の説明において、用語「誘電率」は、別に断らない限り比誘電率を表す。
【0014】
[樹脂組成物の概要]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂及び(B)無機充填材を含む。(A)エポキシ樹脂は、特定範囲の量の(A-1)液状エポキシ樹脂を含む。また、(B)無機充填材は、特定範囲の量の(B-1)炭素含有無機充填材を含む。ここで、(B-1)炭素含有無機充填材とは、特定範囲の量の炭素を含有する無機充填材を表す。
【0015】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、優れた流動性を有することができる。また、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物によれば、絶縁信頼性に優れる硬化物を得ることができる。したがって、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物によれば、流動性及び絶縁信頼性の両方を改善することができる。さらに、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、通常は、低い最低溶融粘度を有することができる。また、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物によれば、通常は耐熱性に優れる硬化物を得ることができる。
【0016】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物によって前記のように優れた効果が得られる仕組みを、本発明者は、下記のように推察する。ただし、本発明の範囲は、下記に説明する仕組みに制限されるものではない。
【0017】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、特定範囲の量の(A-1)液状エポキシ樹脂を含むので、低い粘度を有することができる。よって、優れた流動性を達成することができる。しかし、一般に、低粘度の(A-1)液状エポキシ樹脂は、その製造方法に起因して多くの塩素を含む傾向があった。このように塩素を多く含む組成物は、通常、絶縁信頼性に劣っていた。
【0018】
これに対し、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、特定範囲の量の(A-1)液状エポキシ樹脂に組み合わせて、更に特定範囲の量の(B-1)炭素含有無機充填材を含む。このような樹脂組成物において、(B-1)炭素含有無機充填材が含む炭素は塩素を捕捉できるので、塩素に起因した絶縁信頼性の低下を抑制できる。したがって、流動性及び絶縁信頼性の両方の向上を達成することができる。
【0019】
塩素による絶縁信頼性の低下を抑制する別の方法としては、イオンキャッチャーを樹脂組成物に導入する方法がありうる。しかし、イオンキャッチャーは、一般に、樹脂組成物中の樹脂成分との親和性に劣るので、当該イオンキャッチャーを含む樹脂組成物は、微小なレベルでの組成の均一性に劣っていた。また、イオンキャッチャーは、一般に、耐熱性に劣る傾向があった。したがって、従来のイオンキャッチャーを含む樹脂組成物は、組成物全体として粘度が高くなったり、局所的に流動性及び耐熱性に劣る部分が発生したりして、結局、樹脂組成物全体としては流動性及び耐熱性に劣っていた。
これに対し、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物において、塩素を捕捉する炭素は、無機充填材と樹脂成分との親和性および耐熱性を低下させない。よって、塩素を捕捉して絶縁信頼性を高めると共に、耐熱性を維持しつつ(A-1)液状エポキシ樹脂による流動性の改善効果を十分に発揮できるので、流動性及び絶縁信頼性の両方の向上を達成できる。
【0020】
さらに、(A-1)液状エポキシ樹脂は、通常は分子量が小さく、よってエポキシ当量が小さい傾向がある。よって、特定範囲の量の(A-1)液状エポキシ樹脂を含む樹脂組成物は、硬化の際に、エポキシ基が反応して形成される架橋点を多く形成できる。したがって、架橋構造のネットワークを密に形成できるから、高い耐熱性を得ることができる。よって、例えば、高いガラス転移温度を有する硬化物を得ることができる。
【0021】
また、前記のように、イオンキャッチャーを含む樹脂組成物とは異なり、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は高い組成の均一性を有することができる。よって、その硬化物も高い組成の均一性を有することができるから、応力による破壊の起点となる組成の不均一点の発生を抑制できる。したがって、樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層上に導体層を形成し、当該絶縁層が加熱されて絶縁層内に応力が生じた場合に、当該応力による絶縁層の破壊を抑制できる。そのため、絶縁層の破壊を伴う導体層の剥離を抑制できるから、優れたリフロー耐性を得ることができる。
【0022】
[(A)エポキシ樹脂]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、(A)成分としての(A)エポキシ樹脂を含む。(A)エポキシ樹脂は、エポキシ基を有する硬化性樹脂でありうる。(A)エポキシ樹脂としては、例えば、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、ネオペンチルグリコール型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌラート型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂等が挙げられる。(A)エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
(A)エポキシ樹脂は、特定範囲の量の(A-1)液状エポキシ樹脂を含む。(A-1)液状エポキシ樹脂は、温度20℃で液状のエポキシ樹脂を表す。(A-1)液状エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有することが好ましい。
【0024】
(A-1)液状エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型液状エポキシ樹脂、ナフタレン型液状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型液状エポキシ樹脂、グリシジルアミン型液状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型液状エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型液状エポキシ樹脂、ネオペンチルグリコール型液状エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式液状エポキシ樹脂、シクロヘキサン型液状エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型液状エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有する液状エポキシ樹脂が挙げられる。(A-1)液状エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
(A-1)液状エポキシ樹脂は、非芳香族性のエポキシ樹脂を含むことが好ましく、非芳香族性のエポキシ樹脂のみを含むことが好ましい。非芳香族性のエポキシ樹脂とは、その分子中に芳香環を含有しないエポキシ樹脂を表す。また、「芳香環」は、環上のπ電子系に含まれる電子数が4p+2個(pは0以上の整数)であるヒュッケル則に従う環を表し、単環式芳香環、及び2個以上の単環式芳香環が縮合した縮合多環式芳香環を包含する。また、芳香環には、芳香族炭素環及び芳香族複素環が包含される。よって、非芳香族性のエポキシ樹脂は、脂肪族エポキシ樹脂が好ましい。非芳香族性のエポキシ樹脂は、脂環式構造を含有していてもよい。非芳香族性のエポキシ樹脂を含む(A-1)液状エポキシ樹脂を用いる場合、流動性及び絶縁信頼性を効果的に高めることができ、更に通常は、最低溶融粘度及び耐熱性を特に良好にできる。(A-1)液状エポキシ樹脂のうち、非芳香族性のエポキシ樹脂の例としては、トリメチロールプロパン型液状エポキシ樹脂、ネオペンチルグリコール型液状エポキシ樹脂、ヘキサンジオール型液状エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型液状エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式液状エポキシ樹脂、シクロヘキサン型液状エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型液状エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有する液状エポキシ樹脂が挙げられる。
【0026】
(A-1)液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型液状エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型液状エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型液状エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型液状エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型液状エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型液状エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂とビスフェノールF型液状エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型液状エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式液状エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(ブタジエン構造を有する液状エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型液状エポキシ樹脂);アデカ社製「ED-503」、「ED-503G」(ヘキサンジオール型液状エポキシ樹脂);アデカ社製「ED-505」(トリメチロールプロパン型液状エポキシ樹脂);アデカ社製「ED-506」(ポリプロピレングリコール型液状エポキシ樹脂);アデカ社製「ED-523T」(ネオペンチルグリコール型液状エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0027】
(A-1)液状エポキシ樹脂が、特定範囲の小さい重量平均分子量を有することが好ましい。(A-1)液状エポキシ樹脂の重量平均分子量は、具体的には、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、更に好ましくは300以下である。この範囲の重量平均分子量を有する(A-1)液状エポキシ樹脂を用いる場合、流動性及び絶縁信頼性を効果的に高めることができ、更に通常は、最低溶融粘度及び耐熱性を特に良好にできる。下限値は、特に制限はなく、例えば、50以上、80以上、100以上などでありうる。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0028】
(A-1)液状エポキシ樹脂は、特定範囲の小さい粘度を有することが好ましい。(A-1)液状エポキシ樹脂の前記粘度の範囲は、好ましくは15,000mPa・s以下、より好ましくは3,000mPa・s以下、更に好ましくは1,000mPa以下、特に好ましくは500mPa・s以下である。この範囲の粘度を有する(A-1)液状エポキシ樹脂を用いる場合、流動性及び絶縁信頼性を効果的に高めることができ、更に通常は、最低溶融粘度及び耐熱性を特に良好にできる。下限値は、特に制限はなく、例えば、5mPa・s以上、10mPa・s以上などでありうる。液状エポキシ樹脂の粘度は、E型粘度計を用いて、25℃、20rpmの条件で測定しうる。具体的な粘度の測定方法は、後述する実施例の<エポキシ樹脂の粘度の測定>に記載の方法を採用しうる。
【0029】
上述したように小さい粘度を有する(A-1)液状エポキシ樹脂は、一般に、塩素を含みうる。(A-1)液状エポキシ樹脂が含む塩素の量は、(A-1)液状エポキシ樹脂100質量%に対し、0.03質量%以上、0.1質量%以上、0.3質量%以上などでありうる。このように塩素を含む(A-1)液状エポキシ樹脂を採用した場合でも、特定範囲の量の(B-1)炭素含有無機充填材を含む樹脂組成物は、高い絶縁性を達成することができる。(A-1)液状エポキシ樹脂が含む塩素の量の上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0030】
上述した観点から、特に好ましい(A-1)液状エポキシ樹脂の具体例としては、下記式(a-1)で表されるヘキサンジオール型液状エポキシ樹脂、下記式(a-2)で表されるトリメチロールプロパン型液状エポキシ樹脂、下記式(a-3)で表されるポリプロピレングリコール型液状エポキシ樹脂、下記式(a-4)で表されるネオペンチルグリコール型液状エポキシ樹脂が挙げられる。式(a-3)において、nは、0以上の数を表す。ヘキサンジオール型液状エポキシ樹脂の市販品の例としては、アデカ社製の「ED-503」(粘度25mPa・s、塩素量6.5質量%)、「ED-503G」(粘度15mPa・s、塩素量0.3質量%)が挙げられる。トリメチロールプロパン型液状エポキシ樹脂の市販品の例としては、アデカ社製「ED-505」(粘度150mPa・s、塩素量8.0質量%)が挙げられる。ポリプロピレングリコール型液状エポキシ樹脂の市販品の例としては、アデカ社製「ED-506」(粘度60mPa・s、塩素量6.0質量%)が挙げられる。ネオペンチルグリコール型液状エポキシ樹脂の市販品の例としては、アデカ社製「ED-523T」(粘度15mPa・s、塩素量5.0質量%)が挙げられる。
【0031】
【0032】
(A-1)液状エポキシ樹脂のエポキシ当量の範囲は、好ましくは50g/eq.~5,000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~3,000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2,000g/eq.、特に好ましくは110g/eq.~1,000g/eq.である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量を表す。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0033】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、(A-1)液状エポキシ樹脂を、特定範囲の量で含む。(A-1)液状エポキシ樹脂の量の範囲は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、通常0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。(A-1)液状エポキシ樹脂の量が前記の範囲にある場合、流動性及び絶縁信頼性の両方を高めることができ、更に通常は、最低溶融粘度及び耐熱性を良好にできる。
【0034】
(A-1)液状エポキシ樹脂の量の範囲は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは2質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。樹脂組成物の樹脂成分とは、樹脂組成物の不揮発成分のうち、(B)無機充填材を除く成分を表す。(A-1)液状エポキシ樹脂の量が前記の範囲にある場合、流動性及び絶縁信頼性を効果的に高めることができ、更に通常は、最低溶融粘度及び耐熱性を特に良好にできる。
【0035】
(A-1)液状エポキシ樹脂は、25℃において前記特定範囲(例えば、1,000mPa・s以下)の粘度を有する液状エポキシ樹脂を、多く含むことが好ましい。25℃において前記特定範囲の粘度を有するの液状エポキシ樹脂の量の範囲は、(A-1)液状エポキシ樹脂の全量100質量%に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、通常100質量%以下である。中でも、(A-1)液状エポキシ樹脂の全てが、25℃における粘度が1,000mPa・s以下の液状エポキシ樹脂であることが好ましい。25℃において前記特定範囲の粘度を有する液状エポキシ樹脂の量が前記の範囲にある場合、流動性及び絶縁信頼性を効果的に高めることができ、更に通常は、最低溶融粘度及び耐熱性を特に良好にできる。
【0036】
(A)エポキシ樹脂は、(A-1)液状エポキシ樹脂に組み合わせて、(A-2)固体状エポキシ樹脂を含んでいてもよい。(A-2)固体状エポキシ樹脂は、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂を表す。(A-2)固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0037】
(A-2)固体状エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型固体状エポキシ樹脂、ナフタレン型固体状エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能固体状エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型固体状エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型固体状エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型固体状エポキシ樹脂、トリスフェノール型固体状エポキシ樹脂、ナフトール型固体状エポキシ樹脂、ビフェニル型固体状エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型固体状エポキシ樹脂、アントラセン型固体状エポキシ樹脂、ビスフェノールA型固体状エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型固体状エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型固体状エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型固体状エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型固体状エポキシ樹脂が挙げられる。(A-2)固体状エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
(A-2)固体状エポキシ樹脂は、耐熱性に優れる硬化物を得る観点から、芳香環を含有する固体状エポキシ樹脂を含むことが好ましく、芳香環を含有する固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよい。芳香環を含有する固体状エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型固体状エポキシ樹脂、ナフタレン型固体状エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能固体状エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型固体状エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型固体状エポキシ樹脂、トリスフェノール型固体状エポキシ樹脂、ナフトール型固体状エポキシ樹脂、ビフェニル型固体状エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型固体状エポキシ樹脂、アントラセン型固体状エポキシ樹脂、ビスフェノールA型固体状エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型固体状エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型固体状エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型固体状エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型固体状エポキシ樹脂が挙げられる。
【0039】
(A-2)固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型固体状エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能固体状エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型固体状エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型固体状エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型固体状エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型固体状エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型固体状エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型固体状エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3000FH」、「NC3100」(ビフェニル型固体状エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフトール型固体状エポキシ樹脂)、「ESN4100V」(ナフタレン型固体状エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトール型固体状エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN375」(ジヒドロキシナフタレン型固体状エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」、「YL7890」(ビキシレノール型固体状エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型固体状エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型固体状エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(フェノールアラルキル型固体状エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型固体状エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型固体状エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型固体状エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型固体状エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR991S」(フェノールフタルイミジン型固体状エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0040】
(A-2)固体状エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。
【0041】
(A-2)固体状エポキシ樹脂のエポキシ当量の範囲は、(A-1)液状エポキシ樹脂のエポキシ当量の範囲と同じでありうる。
【0042】
(A)エポキシ樹脂として、(A-1)液状エポキシ樹脂と(A-2)固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの質量比((A-1)液状エポキシ樹脂:(A-2)固体状エポキシ樹脂)は、好ましくは50:1~1:50、より好ましくは30:1~1:30、特に好ましくは10:1~1:10である。
【0043】
(A-1)液状エポキシ樹脂及び(A-2)固体状エポキシ樹脂を含めた(A)エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。(A)エポキシ樹脂の全量100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する(A)エポキシ樹脂の量の範囲は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、通常100質量%以下である。
【0044】
樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。(A)エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、流動性及び絶縁信頼性を効果的に高めることができ、更に通常は、最低溶融粘度及び耐熱性を特に良好にできる。
【0045】
樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。(A)エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、流動性及び絶縁信頼性を効果的に高めることができ、更に通常は、最低溶融粘度及び耐熱性を特に良好にできる。
【0046】
[(B)無機充填材]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、(B)成分としての(B)無機充填材を含む。(B)無機充填材は、通常、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。
【0047】
(B)無機充填材は、無機化合物の粒子でありうる。(B)無機充填材に含まれる材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカ、アルミナが好適であり、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(B)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
(B)無機充填材は、特定範囲の量の(B-1)炭素含有無機充填材を含む。(B-1)炭素含有無機充填材とは、特定範囲の量の炭素を含有する無機充填材を表す。よって、(B-1)は、特定範囲の量の炭素を含有する無機化合物の粒子でありうる。(B-1)炭素含有無機充填材の炭素含有量の範囲は、通常0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.4質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。(B-1)炭素含有無機充填材の炭素含有量には、表面処理剤が含有しうる炭素原子の量は含めない。したがって、例えば、炭素原子を含有する表面処理剤によって表面処理を施された(B-1)炭素含有無機充填材の「炭素含有量」には、前記の表面処理剤の炭素原子の量は含めない。
【0049】
無機充填材の炭素含有量は、蛍光X線分析法及び固体NMR法によって測定できる。蛍光X線分析法については、例えば、九州大学中央分析センター「Center News」 vol.40 No.1,2021(2021年7月5日発行)を参照しうる。ただし、前記の通り、(B-1)炭素含有無機充填材の炭素含有量には、表面処理剤が含有しうる炭素原子の量は含めない。よって、(B-1)炭素含有無機充填材の炭素含有量は、表面処理の前に測定することが望ましい。表面処理された無機充填材については、例えば強酸及び強塩基などの化学的処理を行い、無機充填材粒子の最外層と共に表面処理剤を溶解させた後に測定を行うことで、炭素原子の量を測定することが可能である。
【0050】
(B-1)炭素含有無機充填材は、通常、上述した無機化合物を主成分として含む粒子である。よって、(B-1)炭素含有無機充填材は、炭素に組み合わせて、上述した無機化合物を含みうる。前記の無機化合物の中でも、本発明の効果を顕著に発揮する観点から、シリカが好ましい。よって、(B-1)炭素含有無機充填材としては、特定範囲の量の炭素を含有するシリカ粒子が好ましい。当該シリカ粒子が含むシリカの量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。シリカの量は、蛍光X線分析法によって測定できる。
【0051】
上述した(B-1)炭素含有無機充填材の製造方法は、特に制限はない。省エネルギー、省コスト、及び環境保全の観点から、(B-1)炭素含有無機充填材は、植物原料から製造することが好ましい。例えば、トクサ科及びイネ科の植物は、地中からケイ素成分を吸収及び蓄積する性質を有しうる。よって、これらの植物を燃焼することにより、燃焼灰としてシリカを製造することができる(特許第6389349号公報)。以下、このように植物原料から製造されるシリカを「バイオマスシリカ」ということがある。バイオマスシリカは、通常は炭素を含有するので、(B-1)炭素含有無機充填材として使用しうる。また、(B-1)炭素含有無機充填材は市販品を用いてもよい。(B-1)炭素含有無機充填材の市販品の例としては、イネのもみ殻から製造されたバイオマスシリカとしてM.I.T社製の「エシカルシリカ」が挙げられる。
【0052】
(B-1)炭素含有無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
(B-1)炭素含有無機充填材の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは5μm以下である。
【0054】
(B-1)炭素含有無機充填材等の無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出しうる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0055】
(B-1)炭素含有無機充填材の比表面積は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.1m2/g以上、より好ましくは0.5m2/g以上、さらに好ましくは1m2/g以上、特に好ましくは3m2/g以上であり、好ましくは100m2/g以下、より好ましくは70m2/g以下、さらに好ましくは50m2/g以下、特に好ましくは40m2/g以下である。無機充填材の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで測定できる。
【0056】
(B-1)炭素含有無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0057】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0058】
表面処理剤による表面処理の程度は、(B-1)炭素含有無機充填材の分散性向上の観点から、特定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、(B-1)炭素含有無機充填材100質量%は、0.2質量%~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量%~3質量%の表面処理剤で表面処理されていることがより好ましく、0.3質量%~2質量%の表面処理剤で表面処理されていることがさらに好ましい。
【0059】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、(B-1)炭素含有無機充填材を、特定範囲の量で含む。(B-1)炭素含有無機充填材の量の範囲は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、通常10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。(B-1)炭素含有無機充填材の量が前記範囲にある場合、流動性及び絶縁信頼性の両方を高めることができ、更に通常は、最低溶融粘度及び耐熱性を良好にできる。
【0060】
(B-1)炭素含有無機充填材の量の範囲は、(B)無機充填材の全量100質量%に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%、更に好ましくは30質量%以上であり、通常100質量%以下である。(B-1)炭素含有無機充填材の量が前記の範囲にある場合、流動性及び絶縁信頼性を効果的に高めることができ、更に通常は、最低溶融粘度及び耐熱性を特に良好にできる。
【0061】
(B-1)炭素含有無機充填材と(A)エポキシ樹脂との質量比((B-1)炭素含有無機充填材/(A)エポキシ樹脂)の範囲は、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは1.2以上、特に好ましくは1.5以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。質量比((B-1)炭素含有無機充填材/(A)エポキシ樹脂)が前記範囲にある場合、流動性及び絶縁信頼性を効果的に高めることができ、更に通常は、最低溶融粘度及び耐熱性を特に良好にできる。
【0062】
(B-1)炭素含有無機充填材と(A-1)液状エポキシ樹脂との質量比((B-1)炭素含有無機充填材/(A-1)液状エポキシ樹脂)の範囲は、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上であり、好ましくは200以下、より好ましくは150以下、更に好ましくは100以下である。質量比((B-1)炭素含有無機充填材/(A-1)液状エポキシ樹脂)が前記範囲にある場合、流動性及び絶縁信頼性を効果的に高めることができ、更に通常は、最低溶融粘度及び耐熱性を特に良好にできる。
【0063】
(B-1)炭素含有無機充填材と「25℃における粘度が1,000mPa・s以下の液状エポキシ樹脂」との質量比((B-1)炭素含有無機充填材/「25℃における粘度が1,000mPa・s以下の液状エポキシ樹脂」)の範囲は、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、特に好ましくは20以上であり、好ましくは200以下、より好ましくは150以下、更に好ましくは100以下、特に好ましくは70以下である。質量比((B-1)炭素含有無機充填材/「25℃における粘度が1,000mPa・s以下の液状エポキシ樹脂」)が前記範囲にある場合、流動性及び絶縁信頼性を効果的に高めることができ、更に通常は、最低溶融粘度及び耐熱性を特に良好にできる。
【0064】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、(B-1)炭素含有無機充填材に組み合わせて、(B-2)任意の無機充填材を含んでいてもよい。(B-2)任意の無機充填材は、(B-1)炭素含有無機充填材以外の無機充填材を表し、よって、炭素含有量の範囲が上述した範囲にない無機充填材を表しうる。
【0065】
(B-2)任意の無機充填材は、上述した無機化合物の粒子でありうる。無機化合物の中でも、シリカ、アルミナが好適であり、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(B-2)任意の無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
(B-2)任意の無機充填材の市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」、「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「UFP-30」、「DAW-03」、「FB-105FD」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;太平洋セメント社製「MG-005」などが挙げられる。
【0067】
(B-2)任意の無機充填材の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.2μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。
【0068】
(B-2)任意の無機充填材の比表面積は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.1m2/g以上、より好ましくは0.5m2/g以上、さらに好ましくは1m2/g以上、特に好ましくは3m2/g以上であり、好ましくは100m2/g以下、より好ましくは70m2/g以下、さらに好ましくは50m2/g以下、特に好ましくは40m2/g以下である。
【0069】
(B-2)任意の無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。(B-2)任意の無機充填材の表面処理剤の例としては、(B-1)炭素含有無機充填材の表面処理剤の例と同じものが挙げられる。表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。また、(B-2)任意の無機充填材の表面処理剤による表面処理の程度の範囲は、(B-1)炭素含有無機充填材の表面処理剤による表面処理の程度の範囲と同じでありうる。
【0070】
樹脂組成物中の(B)無機充填材の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、特に好ましくは80質量%以下である。(B)無機充填材の量が前記範囲にある場合、流動性及び絶縁信頼性を効果的に高めることができ、更に通常は、最低溶融粘度及び耐熱性を特に良好にできる。
【0071】
[(C)硬化剤]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、(A)~(B)成分に組み合わせて、任意の成分として(C)硬化剤を更に含んでいてもよい。(C)成分としての(C)硬化剤には、別に断らない限り、上述した(A)~(B)成分に該当するものは含めない。(C)硬化剤は、(A)エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有しうる。(C)硬化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
好ましい(C)硬化剤としては、例えば、活性エステル系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、チオール系硬化剤などが挙げられる。
【0073】
活性エステル系硬化剤としては、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0074】
具体的には、活性エステル系硬化剤としては、ジシクロペンタジエン型活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系硬化剤が好ましく、中でもジシクロペンタジエン型活性エステル系硬化剤、及びナフタレン型活性エステル系硬化剤から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。ジシクロペンタジエン型活性エステル系硬化剤としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤が好ましい。
【0075】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65M」、「EXB-8000L-65TM」、「HPC-8000L-65TM」、「HPC-8000」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H」、「HPC-8000H-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤として「HP-B-8151-62T」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-60T」、「EXB-8150-62T」、「EXB-9416-70BK」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」、「EXB9416-70BK」、「EXB-8」(DIC社製);りん含有活性エステル系硬化剤として、「EXB9401」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0076】
シアネートエステル系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のシアネート基を有する化合物を用いうる。シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネートエステル系硬化剤、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネートエステル系硬化剤、これらシアネートエステル系硬化剤が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル系硬化剤)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0077】
フェノール系硬化剤としては、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環に結合した水酸基を1分子中に1個以上、好ましくは2個以上有する化合物を用いうる。耐熱性及び耐水性の観点からは、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤が好ましい。また、密着性の観点からは、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤が好ましい。フェノール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-375」、「SN-395」、DIC社製の「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「LA-1356」、「TD2090」、「TD-2090-60M」等が挙げられる。
【0078】
カルボジイミド系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のカルボジイミド基を有する化合物を用いうる。カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサンビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等の脂肪族ビスカルボジイミド;フェニレン-ビス(キシリルカルボジイミド)等の芳香族ビスカルボジイミド等のビスカルボジイミド;ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリトリメチルヘキサメチレンカルボジイミド、ポリシクロヘキシレンカルボジイミド、ポリ(メチレンビスシクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(イソホロンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド;ポリ(フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(トリレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(キシリレンカルボジイミド)、ポリ(テトラメチルキシリレンカルボジイミド)、ポリ(メチレンジフェニレンカルボジイミド)、ポリ[メチレンビス(メチルフェニレン)カルボジイミド]等の芳香族ポリカルボジイミド等のポリカルボジイミドが挙げられる。カルボジイミド系硬化剤の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製の「カルボジライトV-02B」、「カルボジライトV-03」、「カルボジライトV-04K」、「カルボジライトV-07」及び「カルボジライトV-09」;ラインケミー社製の「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、「ハイカジル510」等が挙げられる。
【0079】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上の酸無水物基を有する化合物を用いうる。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、例えば、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「OSA」;三菱ケミカル社製の「YH-306」、「YH-307」;日立化成社製の「HN-2200」、「HN-5500」;クレイバレイ社製「EF-30」、「EF-40」「EF-60」、「EF-80」等が挙げられる。
【0080】
アミン系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のアミノ基を有する化合物を用いうる。アミン系硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系硬化剤の市販品としては、例えば、セイカ社製「SEIKACURE-S」;日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」;三菱ケミカル社製の「エピキュアW」;住友精化社製「DTDA」等が挙げられる。
【0081】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」などが挙げられる。
【0082】
チオール系硬化剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0083】
(C)硬化剤の活性基当量は、好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは100g/eq.~350g/eq.である。活性基当量は、活性基1当量あたりの樹脂の質量を表す。
【0084】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、(C)硬化剤の活性基数は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは1以下である。「(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する(A)エポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で割り算した値を全て合計した値を表す。また、「(C)硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する(C)硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で割り算した値を全て合計した値を表す。
【0085】
樹脂組成物中の(C)硬化剤の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%であってもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0086】
樹脂組成物中の(C)硬化剤の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、0質量%であってもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
【0087】
[(D)硬化促進剤]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(D)硬化促進剤を更に含んでいてもよい。(D)成分としての(D)硬化促進剤には、別に断らない限り、上述した(A)~(C)成分に該当するものは含めない。(D)硬化促進剤は、(A)エポキシ樹脂の硬化を促進させる硬化触媒としての機能を有する。
【0088】
(D)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。(D)硬化促進剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
リン系硬化促進剤としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムラウレート、ビス(テトラブチルホスホニウム)ピロメリテート、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、テトラブチルホスホニウム2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート、ジ-tert-ブチルジメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の脂肪族ホスホニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラp-トリルボレート、トリフェニルエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(3-メチルフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(2-メトキシフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等の芳香族ホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等の芳香族ホスフィン・ボラン複合体;トリフェニルホスフィン・p-ベンゾキノン付加反応物等の芳香族ホスフィン・キノン付加反応物;トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;ジブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ホスフィン等が挙げられる。
【0090】
ウレア系硬化促進剤としては、例えば、1,1-ジメチル尿素;1,1,3-トリメチル尿素、3-エチル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロヘキシル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロオクチル-1,1-ジメチル尿素等の脂肪族ジメチルウレア;3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(2-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジメチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-イソプロピルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-ニトロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-メトキシフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、N,N-(1,4-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)、N,N-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)〔トルエンビスジメチルウレア〕等の芳香族ジメチルウレア等が挙げられる。
【0091】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0092】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。イミダゾール系硬化促進剤の市販品としては、例えば、四国化成工業社製の「1B2PZ」、「2E4MZ」、「2MZA-PW」、「2MZ-OK」、「2MA-OK」、「2MA-OK-PW」、「2PHZ」、「2PHZ-PW」、「Cl1Z」、「Cl1Z-CN」、「Cl1Z-CNS」、「C11Z-A」;三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0093】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0094】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。アミン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社製の「MY-25」等が挙げられる。
【0095】
樹脂組成物中の(D)硬化促進剤の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%であってもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、更に好ましくは0.03質量%以上であり、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0096】
樹脂組成物中の(D)硬化促進剤の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、0質量%であってもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0097】
[(E)熱可塑性樹脂]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(E)熱可塑性樹脂を更に含んでいてもよい。(E)成分としての(E)熱可塑性樹脂には、別に断らない限り、上述した(A)~(D)成分に該当するものは含めない。
【0098】
(E)熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。(E)熱可塑性樹脂は、1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」、「YL7482」及び「YL7891BH30」;等が挙げられる。
【0100】
ポリイミド樹脂の具体例としては、信越化学工業社製「SLK-6100」、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」等が挙げられる。
【0101】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」;積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
【0102】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系重合体等が挙げられる。
【0103】
ポリブタジエン樹脂としては、例えば、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ポリブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ポリブタジエン樹脂、酸無水物基含有ポリブタジエン樹脂、エポキシ基含有ポリブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ポリブタジエン樹脂、ウレタン基含有ポリブタジエン樹脂、ポリフェニレンエーテル-ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
【0104】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0105】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0106】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0107】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、SABIC製「NORYL SA90」等が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
【0108】
ポリカーボネート樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。
【0109】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0110】
(E)熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000より大きく、より好ましくは8,000以上、さらに好ましくは10,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下、さらに好ましくは60,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0111】
樹脂組成物中の(E)熱可塑性樹脂の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%であってもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0112】
樹脂組成物中の(E)熱可塑性樹脂の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、0質量%であってもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0113】
[(F)ラジカル重合性化合物]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(F)ラジカル重合性化合物を更に含んでいてもよい。(F)成分としての(F)ラジカル重合性化合物には、別に断らない限り、上述した(A)~(E)成分に該当するものは含めない。(F)ラジカル重合性化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0114】
(F)ラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を含有しうる。よって、(F)ラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を含むラジカル重合性基を有しうる。ラジカル重合性基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、3-シクロヘキセニル基、3-シクロペンテニル基、2-ビニルフェニル基、3-ビニルフェニル基、4-ビニルフェニル基等の不飽和炭化水素基;アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)等のα,β-不飽和カルボニル基等が挙げられる。(F)ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を2個以上有することが好ましい。
【0115】
(F)ラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物、スチレン系ラジカル重合性化合物、アリル系ラジカル重合性化合物、マレイミド系ラジカル重合性化合物などが挙げられる。
【0116】
(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物は、例えば、1個以上、好ましくは2個以上のアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する化合物である。(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物としては、例えば、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン-1,3-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの低分子量(分子量1000未満)の脂肪族(メタ)アクリル酸エステル化合物;ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなどの低分子量(分子量1000未満)のエーテル含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリス(3-ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートなどの低分子量(分子量1000未満)のイソシアヌレート含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂などの高分子量(分子量1000以上)のアクリル酸エステル化合物などが挙げられる。(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物の市販品としては、例えば、新中村化学工業社製の「A-DOG」(ジオキサングリコールジアクリレート)、共栄社化学社製の「DCP-A」(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、「DCP」(トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート)、日本化薬株式会社の「KAYARAD R-684」(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、「KAYARAD R-604」(ジオキサングリコールジアクリレート)、SABICイノベーティブプラスチックス社製の「SA9000」、「SA9000-111」(メタクリル変性ポリフェニレンエーテル)などが挙げられる。
【0117】
スチレン系ラジカル重合性化合物は、例えば、芳香族炭素原子に直接結合した1個以上、好ましくは2個以上のビニル基を有する化合物である。スチレン系ラジカル重合性化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、2,4-ジビニルトルエン、2,6-ジビニルナフタレン、1,4-ジビニルナフタレン、4,4’-ジビニルビフェニル、1,2-ビス(4-ビニルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ビニルフェニル)プロパン、ビス(4-ビニルフェニル)エーテルなどの低分子量(分子量1000未満)のスチレン系化合物;ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル樹脂、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体などの高分子量(分子量1000以上)のスチレン系化合物などが挙げられる。スチレン系ラジカル重合性化合物の市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ODV-XET(X03)」、「ODV-XET(X04)」、「ODV-XET(X05)」(スチレン-ジビニルベンゼン共重合体)、三菱ガス化学社製の「OPE-2St 1200」、「OPE-2St 2200」(ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル樹脂)が挙げられる。
【0118】
アリル系ラジカル重合性化合物は、例えば、1個以上、好ましくは2個以上のアリル基を有する化合物である。アリル系ラジカル重合性化合物としては、例えば、ジフェン酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリル、2,3-ナフタレンカルボン酸ジアリルなどの芳香族カルボン酸アリルエステル化合物;1,3,5-トリアリルイソシアヌレート、1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレートなどのイソシアヌル酸アリルエステル化合物;2,2-ビス[3-アリル-4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパンなどのエポキシ含有芳香族アリル化合物;ビス[3-アリル-4-(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェニル]メタンなどのベンゾオキサジン含有芳香族アリル化合物;1,3,5-トリアリルエーテルベンゼンなどのエーテル含有芳香族アリル化合物;ジアリルジフェニルシランなどのアリルシラン化合物などが挙げられる。アリル系ラジカル重合性化合物の市販品としては、例えば、日本化成社製の「TAIC」(1,3,5-トリアリルイソシアヌレート)、日触テクノファインケミカル社製の「DAD」(ジフェン酸ジアリル)、和光純薬工業社製の「TRIAM-705」(トリメリット酸トリアリル)、日本蒸留工業社製の商品名「DAND」(2,3-ナフタレンカルボン酸ジアリル)、四国化成工業社製「ALP-d」(ビス[3-アリル-4-(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェニル]メタン)、日本化薬社製の「RE-810NM」(2,2-ビス[3-アリル-4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン)、四国化成社製の「DA-MGIC」(1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレート)などが挙げられる。
【0119】
マレイミド系ラジカル重合性化合物は、例えば、1個以上、好ましくは2個以上のマレイミド基を有する化合物である。マレイミド系ラジカル重合性化合物は、脂肪族アミン骨格を含む脂肪族マレイミド化合物であっても、芳香族アミン骨格を含む芳香族マレイミド化合物であってもよい。マレイミド系ラジカル重合性化合物の市販品としては、例えば、信越化学工業社製の「SLK-2600」、デジクナーモレキュールズ社製の「BMI-1500」、「BMI-1700」、「BMI-3000J」、「BMI-689」、「BMI-2500」(ダイマージアミン構造含有マレイミド化合物)、デジクナーモレキュールズ社製の「BMI-6100」(芳香族マレイミド化合物)、日本化薬社製の「MIR-5000-60T」、「MIR-3000-70MT」(ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物)、ケイ・アイ化成社製の「BMI-70」、「BMI-80」、大和化成工業社製「BMI-2300」、「BMI-TMH」などが挙げられる。また、マレイミド系ラジカル重合性化合物として、発明協会公開技報公技番号2020-500211号に開示されているマレイミド樹脂(インダン環骨格含有マレイミド化合物)を用いてもよい。
【0120】
(F)ラジカル重合性化合物のエチレン性不飽和結合当量は、好ましくは20g/eq.~3,000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~2,500g/eq.、さらに好ましくは70g/eq.~2,000g/eq.、特に好ましくは90g/eq.~1,500g/eq.である。エチレン性不飽和結合当量は、エチレン性不飽和結合1当量あたりのラジカル重合性化合物の質量を表す。
【0121】
(F)ラジカル重合性化合物の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは40,000以下、より好ましくは10,000以下、さらに好ましくは5,000以下、特に好ましくは3,000以下である。下限は、特に限定されるものではないが、例えば、150以上などとしうる。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0122】
樹脂組成物中の(F)ラジカル重合性化合物の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、0質量%であってもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
【0123】
樹脂組成物中の(F)ラジカル重合性化合物の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、0質量%であってもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0124】
[(G)任意の添加剤]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として(G)任意の添加剤を更に含んでいてもよい。(G)任意の添加剤としては、例えば、ゴム粒子等の有機充填材;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤、が挙げられる。(G)任意の添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0125】
[(H)溶剤]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、上述した(A)~(G)成分といった不揮発成分に組み合わせて、任意の揮発性成分として(H)溶剤を更に含んでいてもよい。(H)溶剤としては、通常、有機溶剤を用いる。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。(H)溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0126】
(H)溶剤の量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物の全成分100質量%に対して、例えば、60質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下等でありえ、0質量%であってもよい。
【0127】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、上述した成分を混合することによって、製造することができる。上述した成分は、一部又は全部を同時に混合してもよく、順に混合してもよい。各成分を混合する過程で、温度を適宜設定してもよく、よって、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。また、各成分を混合する過程において、撹拌又は振盪を行ってもよい。
【0128】
[樹脂組成物の特性]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、高い流動性を有することができる。樹脂組成物の流動性は、アンジュレーションによって評価できる。アンジュレーションとは、樹脂組成物の層を形成した場合の、その層の表面の高さの最大値と最小値との差を表す。一般に、このアンジュレーションが小さいほど、樹脂組成物の流動性が高いことを表す。
【0129】
一例において、ある平面に櫛歯状のパターンで導体層を形成する。前記の導体層の「パターン」とは、導体層の厚み方向から見た形状を表す。この際、導体層は、厚み35μm、L/S=160μm/160μmで形成する。L/Sは、導体層のラインL(配線幅)とスペースS(間隔幅)との比(ライン/スペース)を表す。この導体層が形成された平面上に、樹脂組成物によって層を形成する。その後、樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する。この絶縁層の表面(導体層とは反対側の表面)の高さを測定し、最も高い高さと最も低い高さとの差を、アンジュレーションとして測定する。通常は、導体層上の部分において絶縁層の表面は最も高くなり、導体層上の部分以外の部分において絶縁層の表面は最も低くなる。この例のようにアンジュレーションを測定した場合、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物のアンジュレーションは、好ましくは3.0μm以下、より好ましくは2.0μm以下である。アンジュレーションの具体的な測定方法は、後述する実施例の<試験例3:アンジュレーションの測定>で説明する方法を採用しうる。
【0130】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、通常は、低い最低溶融粘度を有することができる。例えば、後述する実施例の<試験例2:樹脂組成物の最低溶融粘度の測定>で説明する方法で最低溶融粘度を測定した場合、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の最低溶融粘度は、好ましくは4,000poise未満、より好ましくは3,500poise以下、更に好ましくは2,900poise以下である。下限は、厚い絶縁層の形成を円滑に行う観点から、例えば、500poise以上、700poise以上などでありうる。
【0131】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を硬化することにより、硬化物が得られる。前記の硬化の際、通常は、樹脂組成物には熱が加えられる。よって、通常、樹脂組成物に含まれる成分のうち、(H)溶剤等の揮発性成分は硬化時の熱によって揮発しうるが、(A)~(G)成分といった不揮発成分は、硬化時の熱によっては揮発しない。よって、樹脂組成物の硬化物は、樹脂組成物の不揮発成分又はその反応生成物を含みうる。
【0132】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物によれば、絶縁信頼性の高い硬化物を得ることができる。硬化物の絶縁信頼性は、高温高湿度環境において電圧を印加する耐久性試験を行った後の硬化物の絶縁抵抗値によって評価できる。一例において、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を190℃で90分の条件で熱硬化させて硬化物を得、当該硬化物に130℃、85%RHの環境で3.3Vの電圧を100時間印加する耐久性試験を行う。このように耐久性試験を行った場合に、ライン/スペースが15μm/15μmの櫛歯型電極によって測定される当該硬化物の絶縁抵抗値は、好ましくは1.0×108Ω以上、より好ましくは1.0×109Ω以上である。上限は、大きいほど好ましく、例えば1.0×1014Ω以下でありうる。絶縁信頼性の具体的な評価方法は、後述する実施例の<試験例4:絶縁信頼性の評価>で説明する方法を採用しうる。
【0133】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物によれば、通常、耐熱性に優れる硬化物を得ることができる。硬化物の耐熱性は、例えば、ガラス転移温度によって表すことができる。一例において、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を190℃、90分間の硬化条件で熱硬化して得られる硬化物のガラス転移温度は、好ましくは130℃以上、より好ましくは140℃以上、更に好ましくは150℃以上でありうる。ガラス転移温度の上限は、高いほど好ましく、例えば、200℃以下、190℃以下、180℃以下などでありうる。ガラス転移温度は、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件で引張加重法によって熱機械分析を行うことにより測定しうる。ガラス転移温度の具体的な測定方法は、後述する実施例の<試験例1:硬化物のガラス転移温度及び線熱膨張係数の測定>で説明する方法を採用しうる。
【0134】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物によれば、通常、リフロー耐性に優れる硬化物を得ることができる。リフロー耐性は、樹脂組成物を硬化して形成した絶縁層上に導体層を形成し、加熱を含む耐リフロー試験を行うことによって評価できる。一例において、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を130℃及び30分間の加熱、並びに、170℃及び30分間の加熱によって熱硬化させて形成された絶縁層上にメッキによって導体層を形成し、100mm×50mmの2つのサンプルを得る。そして、それらサンプルを、ピーク温度260℃の半田リフロー温度を再現するリフロー装置に10回通す耐リフロー試験を行う(リフロー温度プロファイルはIPC/JEDEC J-STD-020Cに準拠)。この場合、ふくれ等の異常の発生個所の数は、好ましくは4個以下であり、更に好ましくは0個である。リフロー耐性の具体的な評価方法は、後述する実施例の<試験例5:リフロー耐性の評価>で説明する方法を採用しうる。
【0135】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物によれば、通常、線熱膨張係数が小さい硬化物を得ることができる。一例において、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を190℃、90分間の硬化条件で熱硬化して得られる硬化物の25℃から150℃までの範囲における平均線熱膨張係数は、好ましくは30ppm以下、より好ましくは25ppm以下、更に好ましくは23ppm以下である。線熱膨張係数は、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件で引張加重法によって熱機械分析を行うことにより測定しうる。線熱膨張係数の具体的な測定方法は、後述する実施例の<試験例1:硬化物のガラス転移温度及び線熱膨張係数の測定>で説明する方法を採用しうる。
【0136】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、通常、優れた誘電特性を有することができる。例えば、硬化物の比誘電率は、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.5以下である。比誘電率の下限は、特段の制限は無く、例えば、1.5以上、2.0以上などでありうる。また、例えば、硬化物の誘電正接は、好ましくは0.0200以下、より好ましくは0.0100以下、更に好ましくは0.0050以下、特に好ましくは0.0030以下である。誘電正接の下限は、特に制限は無く、例えば、0.0005以上でありうる。硬化物の比誘電率及び誘電正接は、樹脂組成物を190℃、90分間の硬化条件で熱硬化して得られる硬化物を用いて、空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃の条件で測定しうる。測定装置としては、例えば、アジレントテクノロジーズ社製「HP8362B」を用いうる。
【0137】
[樹脂組成物の用途]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、絶縁用途の樹脂組成物として使用でき、特に、絶縁層を形成するための樹脂組成物(絶縁層形成用の樹脂組成物)として好適に使用することができる。例えば、本実施形態に係る樹脂組成物は、半導体チップパッケージの絶縁層を形成するための樹脂組成物(半導体チップパッケージの絶縁層用の樹脂組成物)、及び、回路基板(プリント配線板を含む。)の絶縁層を形成するための樹脂組成物(回路基板の絶縁層用の樹脂組成物)として、好適に使用することができる。特に、樹脂組成物は、導体層と導体層との間に設けられる層間絶縁層を形成するために好適である。
【0138】
半導体チップパッケージとしては、例えば、FC-CSP、MIS-BGAパッケージ、ETS-BGAパッケージ、Fan-out型WLP(Wafer Level Package)、Fan-in型WLP、Fan-out型PLP(Panel Level Package)、Fan-in型PLPが挙げられる。
【0139】
また、前記の樹脂組成物は、アンダーフィル材として用いてもよく、例えば、半導体チップを基板に接続した後に用いるMUF(Molding Under Filling)の材料として用いてもよい。
【0140】
さらに、前記の樹脂組成物は、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が用いられる広範な用途に使用できる。
【0141】
[シート状積層材料]
樹脂組成物は、ワニス状態で塗布して使用してもよいが、工業的には、該樹脂組成物を含むシート状積層材料の形態で用いることが好適である。
【0142】
シート状積層材料としては、以下に示す樹脂シート、プリプレグが好ましい。
【0143】
一実施形態において、樹脂シートは、支持体と、該支持体上に形成された樹脂組成物層と、を備える。樹脂組成物層は、上述した樹脂組成物で形成されている。よって、樹脂組成物層は、通常は樹脂組成物を含み、好ましくは樹脂組成物のみを含む。
【0144】
樹脂組成物層の厚さは、薄型化の観点、及び、樹脂組成物によって薄くても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、5μm以上、10μm以上等でありうる。
【0145】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0146】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0147】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0148】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0149】
支持体として、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0150】
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0151】
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、任意の層を含んでいてもよい。斯かる任意の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミの付着及びキズを抑制することができる。
【0152】
樹脂シートは、例えば、液状(ワニス状)の樹脂組成物をそのまま、或いは溶剤に樹脂組成物を溶解して液状(ワニス状)の樹脂組成物を調製し、これを、ダイコーター等の塗布装置を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0153】
溶剤としては、樹脂組成物の成分として説明した(H)溶剤と同様のものが挙げられる。溶剤は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0154】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の乾燥方法により実施してよい。乾燥条件は、特に限定されないが、樹脂組成物層中の溶剤の含有量が通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物中の溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の溶剤を含む樹脂組成物を用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0155】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、通常は、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0156】
一実施形態において、プリプレグは、シート状繊維基材に上述した樹脂組成物を含浸させて形成される。
【0157】
プリプレグに用いるシート状繊維基材は、例えば、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。シート状繊維基材の厚さの下限は特に限定されず、通常10μm以上である。
【0158】
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の方法により製造することができる。
【0159】
プリプレグの厚さは、上述した樹脂シートにおける樹脂組成物層と同様の範囲でありうる。
【0160】
シート状積層材料は、例えば、半導体チップパッケージの製造において絶縁層を形成するため(半導体チップパッケージの絶縁用樹脂シート)に好適に使用できる。適用可能な半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan-out型WLP、Fan-in型WLP、Fan-out型PLP、Fan-in型PLP等が挙げられる。また、シート状積層材料は、例えば、回路基板の絶縁層を形成するため(回路基板の絶縁層用樹脂シート)に使用できる。さらに、シート状積層材料は、半導体チップを基板に接続した後に用いるMUFの材料に用いてもよい。特に、シート状積層材料は、層間絶縁層を形成するために好適である。
【0161】
[回路基板]
本発明の一実施形態に係る回路基板は、樹脂組成物の硬化物を含む。通常、回路基板は、樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を備える。絶縁層は、上述した樹脂組成物の硬化物を含み、好ましくは上述した樹脂組成物の硬化物のみを含む。この回路基板は、例えば、下記の工程(I)及び工程(II)を含む製造方法によって、製造できる。
(I)内層基板上に、樹脂組成物層を形成する工程。
(II)樹脂組成物層を硬化して、絶縁層を形成する工程。
【0162】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、回路基板の基材となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。また回路基板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も、前記の「内層基板」に含まれる。回路基板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0163】
内層基板が備える導体層がパターン加工されている場合、クラック耐性に優れるという利点を活用する観点から、その導体層の最小ライン/スペース比は、小さいことが好ましい。「ライン」とは、導体層の配線幅を表し、「スペース」とは配線間の間隔幅を表す。最小ライン/スペース比の範囲は、好ましくは100/100μm以下(即ち、ピッチが200μm以下)、より好ましくは50/50μm以下、更に好ましくは30/30μm以下、更に好ましくは20/20μm以下、更に好ましくは10/10μm以下である。下限は、例えば、0.5/0.5μm以上でありうる。ピッチは、導体層の全体にわたって均一でもよく、不均一でもよい。導体層の最小ピッチは、例えば、100μm以下、60μm以下、40μm以下、36μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0164】
内層基板上への樹脂組成物層の形成は、例えば、内層基板と樹脂シートとを積層することによって行いうる。内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0165】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施される。
【0166】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0167】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0168】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0169】
工程(II)において、樹脂組成物層を硬化して、樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を形成する。樹脂組成物層の硬化は、通常、熱硬化によって行う。樹脂組成物層の具体的な硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なりうる。一例において、硬化温度は、好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は、好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間でありうる。
【0170】
回路基板の製造方法は、樹脂組成物層の熱硬化の前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱することを含むことが好ましい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、通常50℃~150℃、好ましくは60℃~140℃、より好ましくは70℃~130℃の温度にて、樹脂組成物層を通常5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。
【0171】
回路基板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、回路基板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(I)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層プリント配線板等の多層構造を有する回路基板を製造してもよい。
【0172】
他の実施形態において、回路基板は、上述のプリプレグを用いて製造することができる。製造方法は基本的に樹脂シートを用いる場合と同様でありうる。
【0173】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法及び形状は、回路基板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0174】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去も行われる。よって、前記の粗化処理は「デスミア処理」と呼ばれることがある。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、回路基板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。
【0175】
粗化処理に用いる膨潤液としては、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0176】
粗化処理に用いる酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は、5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0177】
粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0178】
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0179】
導体層は、単層構造であってもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0180】
導体層の厚さは、所望の回路基板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0181】
一実施形態において、導体層は、メッキにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法が好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0182】
まず、絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0183】
他の実施形態において、導体層は、金属箔を使用して形成してよい。金属箔を使用して導体層を形成する場合、工程(V)は、工程(I)と工程(II)の間に実施することが好適である。例えば、工程(I)の後、支持体を除去し、露出した樹脂組成物層の表面に金属箔を積層する。樹脂組成物層と金属箔との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。積層の条件は、工程(I)について説明した条件と同様としてよい。次いで、工程(II)を実施して絶縁層を形成する。その後、絶縁層上の金属箔を利用して、サブトラクティブ法、モディファイドセミアディティブ法等の従来の公知の技術により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0184】
金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。金属箔の市販品としては、例えば、JX日鉱日石金属社製のHLP箔、JXUT-III箔、三井金属鉱山社製の3EC-III箔、TP-III箔等が挙げられる。
【0185】
[半導体チップパッケージ]
本発明の一実施形態に係る半導体チップパッケージは、樹脂組成物の硬化物を含む。通常、半導体チップパッケージは、樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を含む。絶縁層は、上述した樹脂組成物の硬化物を含み、好ましくは上述した樹脂組成物の硬化物のみを含む。この半導体チップパッケージとしては、例えば、下記のものが挙げられる。
【0186】
第一の例に係る半導体チップパッケージは、上述した回路基板と、この回路基板に搭載された半導体チップとを含む。この半導体チップパッケージは、回路基板に半導体チップを接合することにより、製造することができる。
【0187】
回路基板と半導体チップとの接合条件は、半導体チップの端子電極と回路基板の回路配線とが導体接続できる任意の条件を採用できる。例えば、半導体チップのフリップチップ実装において使用される条件を採用できる。また、例えば、半導体チップと回路基板との間に、絶縁性の接着剤を介して接合してもよい。
【0188】
接合方法の例としては、半導体チップを回路基板に圧着する方法が挙げられる。圧着条件としては、圧着温度は通常120℃~240℃の範囲(好ましくは130℃~200℃の範囲、より好ましくは140℃~180℃の範囲)、圧着時間は通常1秒間~60秒間の範囲(好ましくは5秒間~30秒間の範囲)である。
【0189】
また、接合方法の他の例としては、半導体チップを回路基板にリフローして接合する方法が挙げられる。リフロー条件は、120℃~300℃の範囲としてもよい。
【0190】
半導体チップを回路基板に接合した後、半導体チップをモールドアンダーフィル材で充填してもよい。このモールドアンダーフィル材として、上述した樹脂組成物を用いてもよい。
【0191】
第二の例に係る半導体チップパッケージは、半導体チップと、樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層とを含む。第二の例に係る半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan-out型WLP、Fan-out型PLP等が挙げられる。
【0192】
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体チップパッケージの一例としてのFan-out型WLPを模式的に示す断面図である。Fan-out型WLPとしての半導体チップパッケージ100は、例えば、
図1に示すように、半導体チップ110;半導体チップ110の周囲を覆うように形成された封止層120;半導体チップ110の封止層120とは反対側の面に設けられた、絶縁層としての再配線形成層130;導体層としての再配線層140;ソルダーレジスト層150;及び、バンプ160を備える。
【0193】
このような半導体チップパッケージの製造方法は、
(i)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(ii)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(iii)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(iv)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(v)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に再配線形成層を形成する工程、
(vi)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程、並びに、
(vii)再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程、
を含む。また、前記の半導体チップパッケージの製造方法は、
(viii)複数の半導体チップパッケージを、個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程
を含んでいてもよい。
【0194】
(工程(i))
工程(i)は、基材に仮固定フィルムを積層する工程である。基材と仮固定フィルムとの積層条件は、回路基板の製造方法における内層基板と樹脂シートとの積層条件と同様でありうる。
【0195】
基材としては、例えば、シリコンウエハ;ガラスウエハ;ガラス基板;銅、チタン、ステンレス、冷間圧延鋼板(SPCC)等の金属基板;FR-4基板等の、ガラス繊維にエポキシ樹脂等をしみこませ熱硬化処理した基板;BT樹脂等のビスマレイミドトリアジン樹脂からなる基板;などが挙げられる。
【0196】
仮固定フィルムは、半導体チップから剥離でき、且つ、半導体チップを仮固定することができる任意の材料を用いうる。市販品としては、日東電工社製「リヴァアルファ」等が挙げられる。
【0197】
(工程(ii))
工程(ii)は、半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程である。半導体チップの仮固定は、例えば、フリップチップボンダー、ダイボンダー等の装置を用いて行うことができる。半導体チップの配置のレイアウト及び配置数は、仮固定フィルムの形状、大きさ、目的とする半導体チップパッケージの生産数等に応じて適切に設定できる。例えば、複数行で、かつ複数列のマトリックス状に半導体チップを整列させて、仮固定してもよい。
【0198】
(工程(iii))
工程(iii)は、半導体チップ上に封止層を形成する工程である。封止層は、例えば、感光性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物によって形成しうる。この封止層を、上述した実施形態に係る樹脂組成物の硬化物によって形成してもよい。封止層は、通常、半導体チップ上に樹脂組成物層を形成する工程と、この樹脂組成物層を硬化させて封止層を形成する工程とを含む方法で形成できる。
【0199】
(工程(iv))
工程(iv)は、基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程である。剥離方法は、仮固定フィルムの材質に応じた適切な方法を採用することが望ましい。剥離方法としては、例えば、仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法が挙げられる。また、剥離方法としては、例えば、基材を通して仮固定フィルムに紫外線を照射して、仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法が挙げられる。
【0200】
前記のように基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離すると、封止層の面が露出する。半導体チップパッケージの製造方法は、この露出した封止層の面を研磨することを含んでいてもよい。研磨により、封止層の表面の平滑性を向上させることができる。
【0201】
(工程(v))
工程(v)は、半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程である。通常、この再配線形成層は、半導体チップ及び封止層上に形成される。再配線形成層は、上述した実施形態に係る樹脂組成物の硬化物によって形成しうる。再配線形成層は、通常、半導体チップ上に樹脂組成物層を形成する工程と、この樹脂組成物層を硬化させて再配線形成層を形成する工程とを含む方法で形成できる。半導体チップ上への樹脂組成物層の形成は、例えば、内層基板の代わりに半導体チップを用いること以外は、前記の回路基板の製造方法で説明した内層基板上への樹脂組成物層の形成方法と同じ方法で行いうる。
【0202】
半導体チップ上に樹脂組成物層を形成した後で、この樹脂組成物層を硬化させて、樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層としての再配線形成層を得る。樹脂組成物層の硬化条件は、回路基板の製造方法における樹脂組成物層の硬化条件と同じ条件を採用してもよい。樹脂組成物層を熱硬化させる場合には、その熱硬化の前に、樹脂組成物層に対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。この予備加熱処理の処理条件は、回路基板の製造方法における予備加熱処理と同じ条件を採用してもよい。通常、再配線形成層を形成した後、半導体チップと再配線層とを接続するために、再配線形成層にホールを形成する。
【0203】
(工程(vi))
工程(vi)は、再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程である。再配線形成層上に再配線層を形成する方法は、回路基板の製造方法における絶縁層上への導体層の形成方法と同様でありうる。また、工程(v)及び工程(vi)を繰り返し行い、再配線層及び再配線形成層を交互に積み上げて(ビルドアップ)もよい。
【0204】
(工程(vii))
工程(vii)は、再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程である。ソルダーレジスト層の材料は、絶縁性を有する任意の材料を用いることができる。中でも、半導体チップパッケージの製造のしやすさの観点から、感光性樹脂組成物及び熱硬化性樹脂組成物が好ましい。ソルダーレジスト層は、上述した実施形態に係る樹脂組成物の硬化物によって形成してもよい。
【0205】
また、工程(vii)では、必要に応じて、バンプを形成するバンピング加工を行ってもよい。バンピング加工は、半田ボール、半田めっきなどの方法で行うことができる。また、バンピング加工におけるビアホールの形成は、工程(v)と同様に行ってもよい。
【0206】
(工程(viii))
半導体チップパッケージの製造方法は、工程(i)~(vii)以外に、工程(viii)を含んでいてもよい。工程(viii)は、複数の半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程である。半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングする方法は特に限定されない。
【0207】
[半導体装置]
半導体装置は、上述した回路基板又は半導体チップパッケージを備える。半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例】
【0208】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。特に温度及び圧力の指定が無い場合の温度条件及び圧力条件は、室温(25℃)及び大気圧(1atm)であった。以下の説明において「L/S」とは、別に断らない限り、導体パターンのライン(配線幅)/スペース(間隔幅)比を表す。
【0209】
<実施例1>
ビフェニル型固体状エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269g/eq.)25部、ナフタレン型固体状エポキシ樹脂(日本化薬社製「ESN475V」、エポキシ当量約332g/eq.)15部、トリメチロールプロパン型液状エポキシ樹脂(アデカ社製「ED-505」、エポキシ当量約150g/eq.、150mPa・s)5部にメチルエチルケトン(MEK)70部を加え、攪拌しながら加熱溶解させて、溶液を得た。この溶液を室温にまで冷却し、エポキシ樹脂の溶解組成物を調製した。
【0210】
この溶解組成物に、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、不揮発成分率50%の2-メトキシプロパノール溶液)5部、活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性エステル基当量約223g/eq.、不揮発成分率65%のトルエン溶液)26部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)8部、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理されたバイオマスシリカ(M.I.T社製「エシカルシリカ」、平均粒径3.7μm、炭素含有量0.6質量%)180部、アミン系硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、不揮発成分5質量%のMEK溶液)4部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを調製した。
【0211】
支持体として、離型処理を施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この支持体の離型面(離型処理を施された面)上に、樹脂組成物層の厚みが40μmとなるように樹脂ワニスを均一に塗布し、80℃~120℃(平均100℃)で5分間乾燥させて、支持体及び樹脂組成物層を備える樹脂シートを製造した。
【0212】
<実施例2>
実施例1において、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、不揮発成分率50%の2-メトキシプロパノール溶液)の量を5部から12部に変更した。また、活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性エステル基当量約223g/eq.、不揮発成分率65%のトルエン溶液)26部を、ナフトール型硬化剤(日鉄ケミカル&マテリアル社製「SN-485」、水酸基当量約205g/eq.)12部に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様の方法により、樹脂ワニス及び樹脂シートを製造した。
【0213】
<実施例3>
実施例1において、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216g/eq.、不揮発成分率50%のトルエン溶液)5部を樹脂組成物に追加したこと以外は実施例1と同様の方法により、樹脂ワニス及び樹脂シートを製造した。
【0214】
<実施例4>
実施例1において、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、不揮発成分率50%の2-メトキシプロパノール溶液)5部を使用しなかった。また、活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性エステル基当量約223g/eq.、不揮発成分率65%のトルエン溶液)の量を26部から20部に変更した。さらに、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA230S75」、シアネート当量約232g/eq.、不揮発分75質量%のMEK溶液)15部、コバルト(III)アセチルアセトナート(東京化成社製)の1質量%のMEK溶液1部を樹脂組成物に追加した。また、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理されたバイオマスシリカ(M.I.T社製「エシカルシリカ」、平均粒径3.7μm、炭素含有量0.6質量%)の量を180部から150部に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様の方法により、樹脂ワニス及び樹脂シートを製造した。
【0215】
<実施例5>
実施例1において、トリメチロールプロパン型液状エポキシ樹脂(アデカ社製「ED-505」、エポキシ当量約150g/eq.、150mPa・s)5部を、ネオペンチルグリコール型液状エポキシ樹脂(アデカ社製「ED-523T」、エポキシ当量約140g/eq.、15mPa・s)5部に変更した。また、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理されたバイオマスシリカ(M.I.T社製「エシカルシリカ」、平均粒径3.7μm、炭素含有量0.6質量%)の量を180部から60部に変更した。さらに、ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル(三菱瓦斯化学社製「OPE-2St 2200」、不揮発成分率65%のトルエン溶液)5部、及び、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、炭素含有量0%、バイオマス比率0%)120部を樹脂組成物に追加した。以上の事項以外は実施例1と同様の方法により、樹脂ワニス及び樹脂シートを製造した。
【0216】
<実施例6>
ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269g/eq.)10部、ビスフェノール型液状エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量約169g/eq.、2600mPa・s)5部、ナフチレンエーテル型固体状エポキシ樹脂(DIC社製「HP-6000」、エポキシ当量約250g/eq.)20部、ジシクロペンタジエン型固体状エポキシ樹脂(DIC社製「HP7200HH」、エポキシ当量約283g/eq.)5部、及び、トリメチロールプロパン型液状エポキシ樹脂(アデカ社製「ED-505」、エポキシ当量約150g/eq.、150mPa・s)5部にメチルエチルケトン70部を加え、攪拌しながら加熱溶解させて、溶液を得た。この溶液を室温にまで冷却し、エポキシ樹脂の溶解組成物を調製した。
【0217】
この溶解組成物に、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、不揮発成分率50%の2-メトキシプロパノール溶液)5部、活性エステル化合物(DIC社製「EXB9416-70BK」、活性エステル基当量約330g/eq.、不揮発成分率70%のメチルイソブチルケトン溶液)24部、ビフェニルアラルキルノボラック型マレイミド(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、不揮発成分率70%のMEK/トルエン混合溶液)3部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)8部、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理されたバイオマスシリカ(M.I.T社製「エシカルシリカ」、平均粒径3.7μm、炭素含有量0.6質量%)180部、及び、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成社製「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、不揮発成分10質量%のMEK溶液)4部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを調製した。
【0218】
支持体として、離型処理を施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この支持体の離型面(離型処理を施された面)上に、樹脂組成物層の厚みが40μmとなるように樹脂ワニスを均一に塗布し、80℃~120℃(平均100℃)で5分間乾燥させて、支持体及び樹脂組成物層を備える樹脂シートを製造した。
【0219】
<実施例7>
実施例1において、トリメチロールプロパン型液状エポキシ樹脂(アデカ社製「ED-505」、エポキシ当量約150g/eq.、150mPa・s)5部をビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量約180g/eq.、13,000mPa・s)5部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、樹脂ワニス及び樹脂シートを製造した。
【0220】
<実施例8>
実施例1において、トリメチロールプロパン型液状エポキシ樹脂(アデカ社製「ED-505」、エポキシ当量約150g/eq.、150mPa・s)の量を5部から2部に変更した。また、ビキシレノール型固体状エポキシ樹脂(エポキシ当量190g/eq.、三菱ケミカル社製「YX4000HK」)を樹脂組成物に3部追加した。以上の事項以外は実施例1と同様の方法により、樹脂ワニス及び樹脂シートを製造した。
【0221】
<比較例1>
実施例1において、トリメチロールプロパン型液状エポキシ樹脂(アデカ社製「ED-505」、エポキシ当量約150g/eq.、150mPa・s)5部を用いなかった。また、ナフタレン型固体状エポキシ樹脂(日本化薬社製「ESN475V」、エポキシ当量約332g/eq.)の量を15部から20部に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様の方法により、樹脂ワニス及び樹脂シートを製造した。
【0222】
<比較例2>
実施例1において、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理されたバイオマスシリカ(M.I.T社製「エシカルシリカ」、平均粒径3.7μm、炭素含有量0.6質量%)180部を、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、バイオマス比率0%)180部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、樹脂ワニス及び樹脂シートを製造した。
【0223】
<比較例3>
比較例2において、イオン補足剤(東亜合成社製、「IXEPLAS-A3」、ハイドロタルサイトとリン酸ジルコニウムの混合物)5部を樹脂組成物に追加したこと以外は比較例2と同様の方法により、樹脂ワニス及び樹脂シートを製造した。
【0224】
<比較例4>
比較例2において、ビフェニル型固体状エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269g/eq.)の量を25部から20部に変更した。また、黒色顔料分散体(日本ピグメント社製、「NV―7―201」、カーボンブラックを含む液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂、カーボンブラック量25%)5部を樹脂組成物に追加した。以上の事項以外は比較例2と同様の方法により、樹脂ワニス及び樹脂シートを製造した。
【0225】
<エポキシ樹脂の粘度の測定>
液状のエポキシ樹脂の粘度は、E型粘度計(東機産業製「RE-25U」、1° 34’×R24のコーンロータを使用)を用いて、25℃、20rpmの条件で測定した。
【0226】
<試験例1:硬化物のガラス転移温度及び線熱膨張係数の測定>
(1)評価用硬化物の作製:
離型処理を施された処理面と離型処理を施されていない未処理面とを有するPETフィルム(リンテック社製「501010」、厚み50μm、240mm角)を用意した。このPETフィルムの未処理面に、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(パナソニック社製「R5715ES」、厚み0.7mm、255mm角)を重ね、四辺をポリイミド接着テープ(幅10mm)で固定した。
【0227】
実施例及び比較例で製造した樹脂ワニスを、前記PETフィルムの処理面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80℃~120℃(平均100℃)で10分間乾燥して、樹脂シートを得た。次いで、190℃のオーブンに投入後、90分間の硬化条件で樹脂組成物層を熱硬化させた。熱硬化後、ポリイミド接着テープを剥離し、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板を取り外し、更にPETフィルムを剥離して、シート状の硬化物を得た。得られた硬化物を「評価用硬化物」と称する。
【0228】
(2)ガラス転移温度及び線熱膨張係数の測定:
評価用硬化物を切断して、幅約5mm、長さ約15mmの試験片を得た。この試験片について、熱機械分析装置(リガク社製「Thermo Plus TMA8310」)を使用して、引張加重法にて熱機械分析を行った。詳細には、試験片を前記熱機械分析装置に装着した後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて、連続して2回、測定を行った。そして、2回目の測定において、ガラス転移温度Tg(℃)と、25℃から150℃までの範囲における平均線熱膨張係数CTE(ppm/℃)を算出した。
【0229】
<試験例2:樹脂組成物の最低溶融粘度の測定>
実施例及び比較例で製造した樹脂シートの樹脂組成物層に含まれる樹脂組成物の溶融粘度を、動的粘弾性測定装置(ユー・ビー・エム社製「Rheosol-G3000」)を使用して測定した。この測定は、樹脂組成物層から採取した1gの試料について、直径18mmのパラレルプレートを使用して、行った。測定条件は、開始温度60℃から200℃まで、昇温速度5℃/分、測定温度間隔2.5℃、振動1Hz/degとした。得られた溶融粘度の測定値から、最低溶融粘度を求めた。
【0230】
<試験例3:アンジュレーションの測定>
実施例及び比較例で製造した樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機社製「MVLP-500」)を用いて、櫛歯状のパターンで形成された導体層(厚み35μm、L/S=160μm/160μm)上にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後、30秒間、100℃、圧力0.74MPaでプレスすることにより行った。ラミネート後に支持体としてのPETフィルムを剥離し、100℃、30分、さらに180℃、30分の硬化条件で樹脂組成物を硬化して、絶縁層を形成した。
【0231】
絶縁層の導体層上の部分の表面高さと絶縁層の当該部分以外の部分の表面高さとの差を、絶縁層のアンジュレーションRtとして求めた。絶縁層のアンジュレーションRtは、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製「WYKO NT3300」)を用いて、VSIモード、10倍レンズにより、測定範囲を1.2mm×0.91mmとして、最大のpeak-to-valleyの値として測定した。アンジュレーションRtが2.0μm以下の場合を「〇」、アンジュレーションRtが2.0μm~3.0μmの場合を「△」、アンジュレーションRtが3.0μmより大きい場合を「×」と評価した。
【0232】
<試験例4:絶縁信頼性の評価>
表面に銅回路によって櫛歯型電極(L/S=15μm/15μm)を形成されたポリイミドフィルムを用意した。実施例及び比較例で製造した樹脂シートを、ポリイミドフィルムに、樹脂シートの樹脂組成物層が銅回路表面と接するように、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機社製「MVLP-500」)を用いてラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後、30秒間、100℃、圧力0.74MPaでプレスすることにより行った。支持体としてのPETフィルムを剥離した後、190℃、90分の条件で樹脂組成物層を熱硬化させて、絶縁信頼性評価用の試料積層体を得た。
【0233】
この試料積層体を、高度加速寿命試験装置(楠本化成社製「PM422」)に入れ、130℃、85%RHの条件で3.3Vの電圧を印加した状態で100時間経過させた。その後、試料積層体の絶縁抵抗値を測定した。絶縁抵抗値が1.0×109Ω以上の場合を「○」、1.0×108Ω以上1.0×109Ω未満の場合を「△」、1.0×108Ω未満の場合を「×」と評価した。
【0234】
<試験例5:リフロー耐性の評価>
(1)下地処理内層基板の作製:
表面に銅箔を有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm、パナソニック社製「R1515A」)を用意した。この内層基板の表面の銅箔を、マイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)を用いて、銅エッチング量1μmにてエッチングして、粗化処理を行った。その後、190℃にて30分乾燥を行い、下地処理内層基板を作製した。
【0235】
(2)樹脂シートの積層および硬化:
実施例及び比較例で製造した樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が前記の下地処理内層基板と接合するように、下地処理内層基板の両面にラミネートした。このラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、温度100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより、実施した。次いで、ラミネートされた樹脂シートを、大気圧下、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間、熱プレスして平滑化した。さらにこれを、130℃のオーブンに投入して30分間加熱し、次いで170℃のオーブンに移し替えて30分間加熱して樹脂組成物層を熱硬化させて、支持体/絶縁層/下地処理内層基板/絶縁層/支持体の層構成を有する中間基板を得た。
【0236】
(3)めっきによる導体形成:
中間基板から支持体を剥離した。その後、中間基板を、膨潤液(アトテックジャパン社製のスエリングディップ・セキュリガントP)に60℃で10分間浸漬した。次に、中間基板を、粗化液(アトテックジャパン社製のコンセントレート・コンパクトP;KMnO4を60g/L、NaOHを40g/Lで含む水溶液)に80℃で20分間浸漬した。さらに、中間基板を、中和液(アトテックジャパン社製のリダクションソリューション・セキュリガントP)に40℃で5分間浸漬した。
【0237】
続いて、中間基板を、PdCl2を含む無電解めっき用溶液に40℃で5分間浸漬し、次に無電解銅めっき液に25℃で20分間浸漬した。150℃にて30分間加熱するアニール処理を行った後に、中間基板に更に硫酸銅電解めっきを行い、30μmの厚さの導体層を形成した。次に、アニール処理を190℃にて60分間行って、リフロー耐性評価用基板を得た。
【0238】
(4)リフロー耐性の評価:
リフロー耐性評価用基板を100mm×50mmの小片に切断し、ピーク温度260℃の半田リフロー温度を再現するリフロー装置(日本アントム社製「HAS-6116」)に10回通した(リフロー温度プロファイルはIPC/JEDEC J-STD-020Cに準拠)。評価は2つの小片で行い、目視観察により5個以上のふくれ等の異常があるものを「×」と判定し、1~4個の異常があるものを「△」と判定し、全ての小片で全く異常の無いもの「○」と評価した。
【0239】
[結果]
上述した実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。
【0240】
【0241】
【符号の説明】
【0242】
100 半導体チップパッケージ
110 半導体チップ
120 封止層
130 再配線形成層
140 再配線層
150 ソルダーレジスト層
160 バンプ