(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/13 20060101AFI20250109BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20250109BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G02B6/13
C08L101/00
C08L79/08 Z
(21)【出願番号】P 2024541754
(86)(22)【出願日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2024012248
【審査請求日】2024-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2023057399
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健太
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/105471(WO,A1)
【文献】特開2015-114390(JP,A)
【文献】特開2017-125956(JP,A)
【文献】特開2005-331779(JP,A)
【文献】特開2014-066751(JP,A)
【文献】特開2006-003622(JP,A)
【文献】特開2014-041181(JP,A)
【文献】特開2017-211414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12- 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する基板と、光導波路の第1のクラッド層とを備える積層体の製造方法であって、
前記基板上に、前記第1のクラッド層を形成するための樹脂組成物からなる樹脂層(a)を備える樹脂フィルムが載置されたワークを準備する工程(A)と、
真空ラミネート装置を用いて、減圧下で、前記ワークを加熱してプレスすることにより、前記基板に前記第1のクラッド層をラミネートする工程(B)と、を少なくとも備え、
前記樹脂層(a)は、測定周波数:10rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温
速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*が1.0×10
3Pa・s以上1.0×10
7Pa・s以下であ
り、
前記積層体は、前記第1のクラッド層上に、コア層と、第2のクラッド層とをこの順にさらに備える光電気複合基板である、積層体の製造方法。
【請求項2】
前記基板の厚みをT[μm]、前記貫通孔の穴径をR[μm]としたとき、T/Rが0.10以上である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記貫通孔の穴径が10μm以上1000μm以下である、請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記基板の厚みは10μm以上1000μm以下である、請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂層(a)の厚みは、10μm以上300μm以下である、請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂層(a)の厚みは、前記基板の厚みよりも小さい、請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂層(a)は、ポリイミド樹脂、環状エーテル構造を有する化合物、およびスチレン系モノマーとジエン系モノマーとの共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
前記工程(B)において、前記ワークを80℃以上190℃以下に加熱してプレスする、請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
前記工程(B)において、前記ワークを2枚のプレス板で挟み込み、前記ワークを加熱してプレスする、請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
前記工程(B)において、前記2枚のプレス板の少なくとも1枚はラバーを含む、請求項9に記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
前記工程(B)において、真空度が500Pa以下である、請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
【請求項12】
前記工程(B)において、前記ワークをプレスするときの圧力が0.3MPa以上10.0MPa以下である、請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
【請求項13】
前記工程(B)の後に、前記ワークを2枚のプレス板で挟み込み、前記ワークを加熱してプレスする工程(C)をさらに備える、請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
【請求項14】
前記積層体は、前記貫通孔の体積を100体積%としたとき、貫通孔の70体積%以上に前記第1のクラッド層を形成するための樹脂組成物が充填されている、請求項1または2に記載の積層体の製造方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信機器において、情報の大容量化、情報通信速度の高速化等の、より高度な情報通信を実現できる部材が求められており、そのような部材の一つとして光電気複合基板が検討されている。
【0003】
光電気複合基板は、例えば、基板上に光導波路が設けられたものが挙げられる。
光導波路の製造方法に関する技術としては、例えば、特許文献1~3に記載の技術が挙げられる。
【0004】
特許文献1には、任意の基板とリッジ型導波路との間を上部クラッドとして基板と同程度の耐熱性を有し、コアよりも低屈折率な接着剤を用いて貼り合わせて作製することを特徴とする埋め込み型ポリイミド光導波路の製造方法が記載されている。
特許文献1に記載のポリイミド光導波路の製造方法によれば、任意の基板上にポリイミド光導波路を作製できると記載されている。
【0005】
特許文献2には、絶縁層の表面に実装用パッドを有する電気配線が形成されているフレキシブル回路基板と、上記実装用パッドに実装された素子と、上記絶縁層の裏面側に積層された光導波路とを備えた光電気混載基板であって、上記フレキシブル回路基板が、絶縁層の裏面にも電気配線が形成されたフレキシブル両面回路基板であり、その裏面側の電気配線のうち、少なくとも上記実装用パッドに対応する部分に、金属製補強層がめっき形成され、その金属製補強層に、上記光導波路が当接した状態になっていることを特徴とする光電気混載基板が記載されている。
特許文献2に記載の光電気混載基板によれば、フレキシブル回路基板の絶縁層に、接着剤層を介することなく、金属製補強層が密着され、その金属製補強層により、素子実装時の押圧荷重による変形を抑制した状態で素子が適正に実装されている光電気混載基板が提供できることが記載されている。
【0006】
特許文献2には、ポリイミド等の樹脂からなる絶縁層1の表裏面に銅箔21が形成された基材を準備し、その基材に、光路用の貫通孔1aおよびビアホール1bを形成する点が記載されている(特許文献2の段落0023参照)。そして、金属製補強層Mを形成したフレキシブル両面回路基板Eが記載されている(特許文献2の段落0028参照)。フレキシブル両面回路基板Eには、上記基材が含まれる。
さらに、特許文献2には、フレキシブル両面回路基板Eの裏面側に、裏面側の電気配線2Bを被覆する金属製補強層Mに当接した状態で、アンダークラッド層6を形成することが記載されており、アンダークラッド層6の成形材料としては、例えば、感光性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる点が記載されている(特許文献2の段落0029参照)。特許文献2の
図4~
図6によれば、アンダークラッド層6の成形材料が、金属製補強層Mを形成したフレキシブル両面回路基板Eに形成されている凹部に充填されていることが理解できる。
【0007】
特許文献3には、基板の両面に導体回路と絶縁層とが積層形成されたリジッド部と、1つまたは複数の屈曲可能なフレックス部とが一体化してなる光電気配線板であって、前記リジッド部には、光学素子および/または光学素子を実装したパッケージ基板を搭載するための外部接続端子が形成されており、前記フレックス部の少なくとも1つには、光配線が形成されていることを特徴とする光電気配線板が記載されている。
特許文献3の光電気配線板によれば、配線板のサイズを大きくすることなく、大容量情報の処理や情報の高速処理を好適に行うことができると記載されている。
【0008】
特許文献3に記載のリジッド部は、光信号通過領域が形成されており、前記光信号通過領域は、その内部に樹脂組成物が充填されていることが記載されている(特許文献3の請求項4および請求項5参照)。さらに、光信号通過領域は、リジッド部を構成する全ての基板および絶縁層を貫通するように形成されていることが記載されている(特許文献3の請求項6参照)。
【0009】
さらに、特許文献3には、光導波路フィルム250と、その周囲の樹脂層(絶縁層)221aとからなる基板221が記載されており、樹脂層221aは光信号通過領域242a、242bの一部を構成する点が記載されている(特許文献3の段落0033参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2000-321455号公報
【文献】特開2014-238455号公報
【文献】特開2006-140233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の光電気複合基板に関する技術において、基板に形成された凹部、基板に形成された貫通孔に対して、樹脂組成物を充填した光電気複合基板が知られている(特に、特許文献2、特許文献3を参照)。
【0012】
光電気複合基板の製造工程として、例えば、貫通孔を有する基板と、光導波路クラッド用のフィルムとを一体化する工程が挙げられる。この工程において、基板に形成された貫通孔を、光導波路クラッドによって埋め込む必要がある(以下、「埋込性」とは貫通孔に光導波路クラッドをどの程度埋め込むことができるのかの特性を意味する)。
【0013】
本発明は上記事情を鑑みなされたものであり、埋込性が向上した光電気複合基板を得ることが可能な積層体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、以下に示す積層体の製造方法が提供される。
【0015】
[1]
貫通孔を有する基板と、光導波路の第1のクラッド層とを備える積層体の製造方法であって、
前記基板上に、前記第1のクラッド層を形成するための樹脂組成物からなる樹脂層(a)を備える樹脂フィルムが載置されたワークを準備する工程(A)と、
真空ラミネート装置を用いて、減圧下で、前記ワークを加熱してプレスすることにより、前記基板に前記第1のクラッド層をラミネートする工程(B)と、を少なくとも備える積層体の製造方法。
[2]
前記基板の厚みをT[μm]、前記貫通孔の穴径をR[μm]としたとき、T/Rが0.10以上である、前記[1]に記載の積層体の製造方法。
[3]
前記貫通孔の穴径が10μm以上1000μm以下である、前記[1]または[2]に記載の積層体の製造方法。
[4]
前記基板の厚みは10μm以上1000μm以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
[5]
前記樹脂層(a)の厚みは、10μm以上300μm以下である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
[6]
前記樹脂層(a)の厚みは、前記基板の厚みよりも小さい、前記[1]~[5]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
[7]
前記樹脂層(a)は、測定周波数:10rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温温度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*が1.0×103Pa・s以上1.0×107Pa・s以下である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
[8]
前記樹脂層(a)は、ポリイミド樹脂、環状エーテル構造を有する化合物、およびスチレン系モノマーとジエン系モノマーとの共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を含む、前記[1]~[7]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
[9]
前記工程(B)において、前記ワークを80℃以上190℃以下に加熱してプレスする、前記[1]~[8]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
[10]
前記工程(B)において、前記ワークを2枚のプレス板で挟み込み、前記ワークを加熱してプレスする、前記[1]~[9]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
[11]
前記工程(B)において、前記2枚のプレス板の少なくとも1枚はラバーを含む、前記[10]に記載の積層体の製造方法。
[12]
前記工程(B)において、真空度が500Pa以下である、前記[1]~[11]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
[13]
前記工程(B)において、前記ワークをプレスするときの圧力が0.3MPa以上10.0MPa以下である、前記[1]~[12]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
[14]
前記工程(B)の後に、前記ワークを2枚のプレス板で挟み込み、前記ワークを加熱してプレスする工程(C)をさらに備える、前記[1]~[13]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
[15]
前記積層体は、前記貫通孔の体積を100体積%としたとき、貫通孔の70体積%以上に前記第1のクラッド層を形成するための樹脂組成物が充填されている、前記[1]~[14]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
[16]
前記積層体は、前記第1のクラッド層上に、コア層と、第2のクラッド層とをこの順にさらに備える光電気複合基板である、前記[1]~[15]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、埋込性が向上した光電気複合基板を得ることが可能な積層体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態の光電気複合基板の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【
図2】工程(A)におけるワークの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。また、数値範囲の「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0019】
図1は、本実施形態の光電気複合基板の構造の一例を模式的に示した断面図である。なお、図は簡略図で、実際の寸法比率とは一致していない。
図1に示すように、光電気複合基板200は、基板110上に光導波路100が設けられる。光導波路100は、第1のクラッド層20と、コア層30と、第2のクラッド層40とが、この順で積層されている。光導波路100には、発光素子側のミラー50と、受光素子側のミラー60とが形成されている。基板110には、貫通孔140(140a、140b)を有する(なお、
図1に示す貫通孔140は、第1のクラッド層20により埋め込まれている状態である)。基板110の光導波路100側とは反対側に、発光素子120と、受光素子130が設けられている。
【0020】
図1を用いて、光電気複合基板200における光の伝搬経路について具体的に説明する。発光素子120の発光部から出射した光は、基板110に形成された貫通孔140a内を通過し、発光素子側のミラー50に入射することによって、コア層30内を伝送した後、受光素子側のミラー60に入射し、基板110に形成された貫通孔140b内を通過し、受光素子130へと入射する。なお、
図1中の矢印は光の伝搬を模式的に記載したものである。
【0021】
本発明者らの検討によれば、従来の光電気複合基板の製造方法では、基板に形成された貫通孔に、第1のクラッド層を十分に埋め込むことができず、光導波路クラッドの基板側とは反対側の面(すなわち、第1のクラッド層のコア層側)に凹みが生じたり、貫通孔内にボイドが発生したりする場合があることを見出した。貫通孔は光の伝搬経路であり、光電気複合基板に上述した凹みやボイドが発生すると、凹みやボイドの界面において光損失が発生することを見出した。
本発明は、上記事情を鑑みなされたものであり、埋込性が向上した光電気複合基板を得ることが可能な積層体の製造方法を提供するものである。
【0022】
本実施形態の積層体の製造方法は、貫通孔を有する基板と、光導波路の第1のクラッド層とを備える積層体の製造方法であって、基板上に、第1のクラッド層を形成するための樹脂組成物からなる樹脂層(a)を備える樹脂フィルムが載置されたワークを準備する工程(A)と、真空ラミネート装置を用いて、減圧下で、ワークを加熱してプレスすることにより、基板に第1のクラッド層をラミネートする工程(B)と、を少なくとも備える。
【0023】
以下、本実施形態の積層体の製造方法の各工程について具体的に説明する。
【0024】
[ワークを準備する工程(A)]
本実施形態の積層体の製造方法は、基板上に、第1のクラッド層を形成するための樹脂組成物からなる樹脂層(a)を備える樹脂フィルムが載置されたワークを準備する工程(A)を備える。
【0025】
図2は、工程(A)におけるワークの構造の一例を模式的に示した断面図である。なお、図は簡略図で、実際の寸法比率とは一致していない。
ワーク400は、基板110上に、第1のクラッド層を形成するための樹脂組成物からなる樹脂層(a)310を備える樹脂フィルム300が載置されている。ここで、基板110には貫通孔140が形成されている。
【0026】
樹脂フィルム300は、樹脂層(a)310のみから構成される単層フィルムであってもよいし、
図2のような複数層のフィルムであってもよいが、好ましくは樹脂層(a)310と基材フィルム320とが積層されたフィルムである。
樹脂フィルム300が基材フィルム320を備えると、樹脂フィルム300の取り扱い性が向上し、真空ラミネート装置の汚染を防止できる。
樹脂フィルム300が複数層のフィルムである場合、ワーク400は、樹脂層(a)310が基板110側となるように、基板110上に樹脂フィルム300が載置される。
【0027】
基板110は貫通孔を有する基板であれば特に限定されない。
基板110は、例えば、プリント基板、フレキシブル基板等が挙げられ、好ましくはフレキシブル基板であり、より好ましくはフレキシブル両面銅張積層板である。
【0028】
基板110の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは40μm以上、さらに好ましくは45μm以上であり、そして、光電気複合基板を小型化する観点から、好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下、さらに好ましくは500μm以下、さらに好ましくは300μm以下、さらに好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。
【0029】
基板110は、少なくとも1つの貫通孔140を有し、1つの貫通孔140を有していてもよいし、2つ以上の貫通孔140を有していてもよい。
具体的には、例えば、
図1および
図2に記載の基板110では、貫通孔140が光の伝搬経路となるため、基板110が発光素子側の貫通孔140aと受光素子側の貫通孔140bを有する。
【0030】
貫通孔140の穴径は、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上、さらに好ましくは70μm以上、さらに好ましくは90μm以上であり、そして、好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下、さらに好ましくは500μm以下、さらに好ましくは400μm以下、さらに好ましくは350μm以下、さらに好ましくは140μm以下である。
ここで、基板110が複数の貫通孔140を有する場合は、少なくとも1つの貫通孔140の穴径が上記範囲内であればよい。
【0031】
基板110の厚みをT[μm]、貫通孔140の穴径をR[μm]としたとき、T/Rは、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.13以上、さらに好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.25以上、さらに好ましくは0.27以上、さらに好ましくは0.30以上、さらに好ましくは0.35以上、さらに好ましくは0.40以上、さらに好ましくは0.45以上、さらに好ましくは0.60以上であり、そして、上限値は特に限定されないが、例えば、2.00以下であってもよいし、1.50以下であってもよいし、1.00以下であってもよい。
ここで、基板110が複数の貫通孔140を有する場合は、少なくとも1つの貫通孔140のT/Rが上記範囲内であればよい。
一般的に、T/Rが大きいほど、貫通孔に第1のクラッド層を十分に埋め込むことが難しい。一方、本実施形態の積層体の製造方法によれば、T/Rが大きい場合であっても、貫通孔に第1のクラッド層を十分に埋め込むことが可能となる。
【0032】
樹脂フィルム300の好ましい態様については後述する。
【0033】
[ラミネートする工程(B)]
本実施形態の積層体の製造方法は、真空ラミネート装置を用いて、減圧下で、ワークを加熱してプレスすることにより、基板に第1のクラッド層をラミネートする工程(B)を備える。
減圧下で、ワークを加熱してプレスすることにより、基板と樹脂層(a)をラミネートできる。樹脂層(a)は第1のクラッド層を形成するための樹脂組成物からなるため、言い換えると、減圧下で、ワークを加熱してプレスすることにより、基板と第1のクラッド層をラミネートできる。
【0034】
工程(B)では、減圧下で、ワークを加熱してプレスする。
ここで、減圧下とは、真空度が常圧(1013hPa)よりも小さいことを意味する。
工程(B)において真空度は、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは500Pa以下、より好ましくは400Pa以下、さらに好ましくは350Pa以下、さらに好ましくは320Pa以下であり、そして、下限値は特に限定されないが、例えば10Pa以上であってもよいし、50Pa以上であってもよい。
【0035】
工程(B)において、ワークをプレスするときの圧力は、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは0.3MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上、さらに好ましくは1.0MPa以上、さらに好ましくは1.3MPa以上、さらに好ましくは2.0MPa以上、さらに好ましくは3.0MPa以上、さらに好ましくは4.0MPa以上であり、そして、基板の損傷を防ぐ観点から、好ましくは10.0MPa以下、より好ましくは8.0MPa以下、さらに好ましくは6.0MPa以下である。
【0036】
工程(B)において、ワークを加熱してプレスするときのワークの温度は、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは95℃以上であり、そして、好ましくは190℃以下、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは150℃以下、さらに好ましくは145℃以下である。
ここで、ワークの温度は、真空ラミネート装置の設定プレス温度と同じ温度であるとみなしてよい。ワークの温度は、ワークの厚みが薄いため、真空ラミネート装置に投入して数秒以内に設定プレス温度と同じ温度まで到達すると考えられるためである。
【0037】
工程(B)において、ワークをプレスする時間は、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは30秒以上、より好ましくは60秒以上、さらに好ましくは80秒以上、さらに好ましくは100秒以上であり、そして、生産性をより向上させる観点から、好ましくは210秒以下、より好ましくは180秒以下、さらに好ましくは150秒以下、さらに好ましくは130秒以下である。
【0038】
工程(B)において、ワークを加熱してプレスする方式は特に限定されず、平板プレスであってもよいし、ロールプレスであってもよい。
工程(B)において、ワークを加熱してプレスする方式は好ましくは平板プレス方式であり、言い換えると、好ましくは工程(B)において、ワークを2枚のプレス板で挟み込み、ワークを加熱してプレスする。
【0039】
工程(B)において、ワークを2枚のプレス板で挟み込み、ワークを加熱してプレスする場合、2枚のプレス板の少なくとも1枚はラバーを含むことが好ましく、2枚のプレス板のどちらもラバーを含むことが好ましい。
ラバーは特に限定されないが、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム等が挙げられる。
プレス板が二層以上の構造である場合、プレス板のワークと接する面にラバーを含むことが好ましい。
【0040】
工程(B)において、真空ラミネート装置は特に限定されないが、例えば、ラバープレス式ラミネータ機、ダイヤフラム式ラミネータ機等を用いることができ、好ましくはラバープレス式ラミネータ機を用いる。
具体的には、ラバープレス式ラミネータ機としては、例えば、CVP-600(ニッコー・マテリアルズ(株)製)、CVP-700(ニッコー・マテリアルズ(株)製)等が挙げられる。ダイヤフラム式ラミネータ機としては、例えば、CVP-300(ニッコー・マテリアルズ(株)製)、MVLP-500/600-IIA(名機製作所製)等が挙げられる。
【0041】
[プレスする工程(C)]
本実施形態の積層体の製造方法は、工程(B)の後に、ワークを2枚のプレス板で挟み込み、ワークを加熱してプレスする工程(C)をさらに備えることが好ましい。工程(C)をさらに備えると、埋込性をより向上させることが可能となり、より具体的には、第1のクラッド層の基板側とは反対側の面の凹みの発生を抑制することができる。
【0042】
工程(C)における真空度は特に限定されず、常圧でワークを加熱してプレスしてもよいし、減圧下でワークを加熱してプレスしてもよい。
工程(C)において減圧下でワークを加熱してプレスする場合、好ましい真空度は、工程(B)における好ましい真空度と同じである。
【0043】
工程(C)において、ワークをプレスするときの圧力は、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは0.3MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上、さらに好ましくは1.0MPa以上、さらに好ましくは1.3MPa以上、さらに好ましくは2.0MPa以上、さらに好ましくは3.0MPa以上、さらに好ましくは4.0MPa以上であり、そして、基板の損傷を防ぐ観点から、好ましくは10.0MPa以下、より好ましくは8.0MPa以下、さらに好ましくは6.0MPa以下である。
【0044】
工程(C)において、ワークを加熱してプレスするときのワークの温度は、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは95℃以上であり、そして、好ましくは190℃以下、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは150℃以下、さらに好ましくは145℃以下である。
ここで、ワークの温度は、プレス装置の設定プレス温度と同じ温度であるとみなしてよい。ワークの温度は、ワークの厚みが薄いため、プレス装置に投入して数秒以内に設定プレス温度と同じ温度まで到達すると考えられるためである。
【0045】
工程(C)において、ワークをプレスする時間は、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上、さらに好ましくは20秒以上であり、そして、生産性をより向上させる観点から、好ましくは100秒以下、より好ましくは80秒以下、より好ましくは60秒以下、さらに好ましくは40秒以下である。
【0046】
工程(C)において、ワークを加熱してプレスする方式は特に限定されず、平板プレスであってもよいし、ロールプレスであってもよい。
工程(C)において、ワークを加熱してプレスする方式は好ましくは平板プレス方式であり、言い換えると、好ましくは工程(C)において、ワークを2枚のプレス板で挟み込み、ワークを加熱してプレスする。
【0047】
工程(C)において、プレス装置は特に限定されないが、生産性をより向上させる観点から、工程(B)において使用する真空ラミネート装置が2ステージ型であり、2nd Stageにあたる平坦化ステージを使用することが好ましい。すなわち、真空ラミネート装置が2ステージ型である場合、1st Stageにあたるラミネータで工程(B)を行い、2nd Stageにあたる平坦化ステージで工程(C)を行うことができる。
工程(B)の後、工程(B)において使用した真空ラミネート装置からワークを取り出して、工程(B)とは異なるプレス装置によって、工程(C)を実施してもよい。
【0048】
[その他の工程]
本実施形態の積層体の製造方法は、工程(A)、工程(B)および工程(C)以外の工程を備えていてもよい。その他の工程としては、例えば、工程(C)の後に、さらに他の層をラミネートする工程等が挙げられる。
【0049】
[積層体]
本実施形態の積層体の製造方法により得られる積層体は、貫通孔を有する基板と、光導波路の第1のクラッド層とを備える。
ここで、本実施形態の積層体において、光導波路の第1のクラッド層は、樹脂層(a)を含む概念とする。
本実施形態の積層体は、他の層をさらに備えていてもよく、例えば、基板と、第1のクラッド層と、基材フィルムをこの順に備える積層体であってもよい。
【0050】
本実施形態の積層体は、好ましくは第1のクラッド層上に、コア層と、第2のクラッド層とをこの順にさらに備える光電気複合基板である。すなわち、光電気複合基板は、基板と、第1のクラッド層と、コア層と、第2のクラッド層とをこの順に備える。
本実施形態の光電気複合基板は、第2のクラッド層のコア層とは反対側の面に、ポリイミド基材をさらに備えていてもよい。
【0051】
本実施形態の光電気複合基板は、例えば、以下のように作製できる。
まず、本実施形態の工程(A)および工程(B)を行い、基板と、第1のクラッド層と、基材フィルムとをこの順に備える積層体を得る。基板と、第1のクラッド層と、基材フィルムとをこの順に備える積層体を得るときに、工程(C)をさらに備えていてもよい。
その後、基板と、第1のクラッド層と、基材フィルムとをこの順に備える積層体から基材フィルムを剥離して、コア層を形成するためのフィルムをラミネートしてコア層を形成し、次いで、第2のクラッド層を形成するためのフィルムをラミネートして第2のクラッド層を形成する。
また、コア層に導波路パターンを形成する工程、光導波路にミラーを形成する工程等を適宜備えていてもよい。
【0052】
本実施形態の積層体は、基板に形成された貫通孔の体積を100体積%としたとき、光導波路の伝搬損失をより抑制する観点から、貫通孔の70体積%以上に第1のクラッド層を形成するための樹脂組成物が充填されていることが好ましい。
貫通孔に充填された第1のクラッド層を形成するための樹脂組成物の割合は、貫通孔の体積を100体積%としたとき、光導波路の伝搬損失をより抑制する観点から、より好ましくは75体積%以上、さらに好ましくは80体積%以上、さらに好ましくは85体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上、さらに好ましくは95体積%以上、さらに好ましくは98体積%以上、さらに好ましくは99体積%以上であり、そして、例えば、100体積%以下である。
なお、第1のクラッド層を形成するための樹脂組成物は、樹脂フィルムの樹脂層(a)由来の樹脂組成物である。
【0053】
[樹脂フィルム]
本実施形態の第1のクラッド層を形成するための樹脂組成物からなる樹脂層(a)を備える樹脂フィルムについて具体的に説明する。
【0054】
樹脂層(a)の厚みは、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、そして、光導波路の光伝搬効率をより向上させる観点から、好ましくは300μm以下、さらに好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下、さらに好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、さらに好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
【0055】
樹脂層(a)の厚みは、好ましくは基板の厚みよりも小さい。
樹脂層(a)の厚みは、基板の厚みを100%としたとき、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは65%以下、さらに好ましくは60%以下、さらに好ましくは55%以下であり、そして、例えば、10%以上であってもよいし、15%以上であってもよい。
【0056】
ここで、本明細書における樹脂層(a)の厚みは、工程(A)における樹脂層(a)の厚みを意味する。つまり、本実施形態の積層体の製造方法では、工程(B)においてワークをプレスするが、本明細書における樹脂層(a)の厚みはプレス後の厚みではない。
【0057】
樹脂層(a)に含まれる樹脂は特に限定されず、光導波路のクラッド層を形成するために使用することが可能な樹脂であればよい。
その中でも、樹脂層(a)は、好ましくは、ポリイミド樹脂、環状エーテル構造を有する化合物、およびスチレン系モノマーとジエン系モノマーとの共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を含む。
【0058】
樹脂層(a)は、より好ましくはポリイミド樹脂および環状エーテル構造を有する化合物を含む。
【0059】
樹脂層(a)中のポリイミド樹脂は、好ましくは分子内にイミド環構造を含む。
また、樹脂層(a)中のポリイミド樹脂は、好ましくはフッ化ポリイミドを含む。フッ化ポリイミドとは、フッ素原子を含むポリイミドを意味する。
【0060】
樹脂層(a)中のポリイミド樹脂は、一種のポリイミド樹脂であってもよいし、二種以上のポリイミド樹脂を含んでいてもよい。
【0061】
樹脂層(a)中の環状エーテル構造を有する化合物は、好ましくはエポキシ樹脂、およびオキセタン化合物からなる群から選択される少なくとも一種または二種以上を含み、より好ましくはエポキシ樹脂を一種または二種以上含む。
【0062】
樹脂層(a)中の環状エーテル構造を有する化合物は、分子内に脂環構造を含むことが好ましい。ここで、環状エーテル構造を有する化合物が、分子内に脂環構造を含むとは、環状エーテル構造以外に脂環構造を含むことを意味する。ただし、本実施形態の脂環構造は、環状エーテルと脂肪族環とが縮合した縮合環構造、および環状エーテルと脂肪族環とがスピロ結合原子により結合したスピロ環構造を含むものとする。
脂環構造における、環の員数は特に限定されないが、4員環以上10員環以下が好ましく、4員環以上8員環以下がより好ましく、5員環または6員環がさらに好ましく、6員環がさらに好ましい。
【0063】
樹脂層(a)中の環状エーテル構造を有する化合物は、分子内に2個以上の環状エーテル構造を含むことが好ましく、分子内に2個または3個の環状エーテル構造を含むことがより好ましい。
【0064】
樹脂層(a)中の環状エーテル構造を有する化合物は、一種の環状エーテル構造を有する化合物であってもよいし、二種以上の環状エーテル構造を有する化合物を含んでいてもよい。
【0065】
樹脂層(a)中に含まれるポリイミド樹脂の含有量は、樹脂層(a)中の樹脂成分の合計含有量を100質量部としたとき、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは20質量部以上、より好ましくは23質量部以上、さらに好ましくは25質量部以上、さらに好ましくは28質量部以上であり、そして、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは80質量部以下、より好ましくは75質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは65質量部以下である。
【0066】
樹脂層(a)中に含まれる環状エーテル構造を有する化合物の含有量は、樹脂層(a)中の樹脂成分の合計含有量を100質量部としたとき、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは20質量部以上、より好ましくは25質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは35質量部以上であり、そして、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは80質量部以下、より好ましくは75質量部以下である。
【0067】
樹脂層(a)中に含まれるポリイミド樹脂および環状エーテル構造を有する化合物の合計含有量は、樹脂層(a)中の全成分の合計含有量を100質量%としたとき、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上であり、そして、例えば、99.5質量%以下であってもよいし、99.0質量%以下であってもよい。
【0068】
また、樹脂層(a)は、より好ましくはスチレン系モノマーとジエン系モノマーとの共重合体および環状エーテル構造を有する化合物を含む。
ここで、本実施形態のスチレン系モノマーとジエン系モノマーとの共重合体は、スチレン系モノマーとジエン系モノマーとの共重合体に水素添加した共重合体も含むものとする。
環状エーテル構造を有する化合物は、上述したとおりである。
【0069】
スチレン系モノマーとジエン系モノマーとの共重合体において、スチレン系モノマーとは、スチレン、およびスチレンの水素原子の一部がアルキル基に置換されたモノマーを意味する。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
【0070】
スチレン系モノマーとジエン系モノマーとの共重合体において、ジエン系モノマーは、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。
【0071】
スチレン系モノマーとジエン系モノマーとの共重合体の具体例としては、例えば、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエン・スチレン(SBS)ブロック共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン(SEBS)ブロック共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン(SEP)ブロック共重合体、スチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン(SEEPS)ブロック共重合体等が挙げられる。
市販のスチレン系モノマーとジエン系モノマーとの共重合体としては、例えば、SEPTON(登録商標、(株)クラレ製)、タフテック(登録商標、旭化成(株)製)を用いることができる。
【0072】
樹脂層(a)中のスチレン系モノマーとジエン系モノマーとの共重合体は、一種の共重合体であってもよいし、二種以上の共重合体を含んでいてもよい。
【0073】
樹脂層(a)中に含まれるスチレン系モノマーとジエン系モノマーとの共重合体および環状エーテル構造を有する化合物の合計含有量は、樹脂層(a)中の全成分の合計含有量を100質量%としたとき、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、そして、例えば、99質量%以下であってもよいし、98質量%以下であってもよい。
【0074】
樹脂層(a)は、樹脂成分以外に、硬化剤、界面活性剤等の成分を適宜含んでいてもよい。
【0075】
樹脂層(a)に含まれる(メタ)アクリル樹脂の含有量は、樹脂層(a)中の全成分の合計含有量を100質量%としたとき、樹脂層(a)の耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは50質量%未満、より好ましくは30質量%未満、さらに好ましくは10質量%未満、さらに好ましくは5質量%未満、さらに好ましくは1質量%未満、さらに好ましくは0.1質量%未満、さらに好ましくは0質量%である。
ここで、(メタ)アクリル樹脂とは、メタクリル樹脂およびアクリル樹脂の両方を含む概念とする。
【0076】
樹脂層(a)の、測定周波数:10rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温温度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したときの、100℃における複素粘度η*は、好ましくは1.0×103Pa・s以上、より好ましくは2.0×103Pa・s以上、さらに好ましくは3.0×103Pa・s以上、さらに好ましくは4.0×103Pa・s以上、さらに好ましくは5.0×103Pa・s以上であり、そして、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは1.0×107Pa・s以下、より好ましくは1.0×106Pa・s以下、さらに好ましくは5.0×105Pa・s以下、さらに好ましくは1.0×105Pa・s以下、さらに好ましくは9.5×104Pa・s以下、さらに好ましくは9.3×104Pa・s以下、さらに好ましくは9.0×104Pa・s以下、さらに好ましくは8.8×104Pa・s以下である。
【0077】
樹脂層(a)の、測定周波数:10rad/sec、温度範囲:23℃から200℃、昇温速度:3℃/分の条件による溶融粘弾性試験によって複素粘度を測定したとき、複素粘度η*が最小となる温度は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上であり、そして、埋込性をより向上させる観点から、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは160℃以下、さらに好ましくは140℃以下である。
【0078】
樹脂層(a)の複素粘度η*は、例えば、樹脂層(a)を構成する樹脂の種類、重量平均分子量(Mw)およびガラス転移温度、樹脂層(a)の構成成分の含有割合等を調整することにより、所望の数値範囲に調整することができる。より具体的には、樹脂層(a)にポリイミド樹脂および環状エーテル構造を有する化合物を含むこと等により、所望の数値範囲に調整することができる。
【0079】
本実施形態の樹脂フィルムは、好ましくは基材フィルムをさらに備え、より好ましくは基材フィルム上に樹脂層(a)が設けられている。
基材フィルムとしては、例えば、樹脂フィルムを用いることができる。
基材フィルムを構成する樹脂は特に限定されないが、ポリイミド、およびポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される少なくとも一種または二種以上を含むことが好ましく、ポリエチレンテレフタレートを含むことがより好ましい。
【0080】
本実施形態の基材フィルムの厚みは、フィルムの取り扱い性をより向上させる観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上、好ましくは30μm以上であり、そして、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。
【0081】
本実施形態の基材フィルムは、帯電防止処理、離型処理等の表面処理がされていてもよい。
【0082】
本実施形態の樹脂フィルムは、例えば、第1のクラッド層を形成するための樹脂組成物を、基材フィルム上に塗布、乾燥し、樹脂層(a)を形成することにより得られる。なお、第1のクラッド層を形成するための樹脂組成物を基材フィルム上に塗布するとき、樹脂組成物は有機溶剤を含むワニス状の樹脂組成物であることが好ましい。樹脂組成物中の有機溶剤は、乾燥工程において除去される。
塗布する方法としては、例えば、ピンコーター、ダイコーター、コンマコーター、カーテンコーター等の各種コーター装置を用いて直接塗布する方法、スクリーン印刷などの印刷方法が挙げられる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、前記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0084】
以下、本実施形態を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0085】
[樹脂フィルムの作成]
第1のクラッド層を形成するための樹脂組成物からなる樹脂層(a)を備える樹脂フィルムの作成について説明する。
まず、第1のクラッド層を形成するための樹脂組成物を構成する各原料について説明する。
【0086】
(ポリイミド樹脂(A-1)の合成)
攪拌装置と撹拌翼を備えたガラス製の3Lのセパラブルフラスコに2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル67.3g(0.210モル)および4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物97.7g(0.220モル)およびジメチルアセトアミド495gを仕込んで撹拌し溶解させた。さらに窒素気流下において12時間室温で撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液を得た。
【0087】
得られたポリアミド酸溶液にピリジン16gを添加した後、室温で無水酢酸82gを滴下しながら投入した。その後、さらに液温を20~100℃に保って24時間撹拌を続けてイミド化反応を行い、ポリイミド溶液を得た。
【0088】
得られたポリイミド溶液を、5Lの容積の容器中で撹拌しながら、1,000gのメタノール中に投入してポリイミド樹脂を析出させた。その後、吸引濾過装置を用いて固体のポリイミド樹脂を濾別し、さらに1,000gのメタノールを用いて洗浄を行った。そして、真空乾燥機を用いて100℃で24時間乾燥を行い、さらに200℃で3時間乾燥させ、粉末状のポリイミド樹脂(A-1)を得た。
ポリイミド樹脂(A-1)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は51,000であった。ポリイミド樹脂(A-1)を1H-NMR測定し、ポリイミドの芳香環のピークに対するアミドピークの定量値からイミド化率を計算した結果、イミド化率は99%以上であった。
また、ポリイミド樹脂(A-1)を固形分濃度が25%になるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解した後、膜厚が30μmとなるようにアプリケーターを使用して塗工し、さらにオーブンにて100℃で10分乾燥しポリイミド塗膜を得た。得られた塗膜についてアッベ屈折率計((株)アタゴ製、製品名:NAR-1T SOLID)を使用して23℃、589nmの条件下で屈折率を測定した結果、ポリイミドの屈折率は1.54であった。
【0089】
表1における原料の詳細は以下のとおりである。
【0090】
<ポリマー(A)>
(A-1)上記で合成したポリイミド樹脂(Mw=51,000、イミド化率99%以上、屈折率n=1.54)
(A-2)ゴム系エラストマー(クラレ(株)製、製品名:セプトンQ1250、スチレン系モノマーとジエン系モノマーとの共重合体、Mw=100,000、屈折率n=1.50)
【0091】
【0092】
<環状エーテル構造を有する化合物(B)>
(B-1)セロキサイド2021P((株)ダイセル製、脂環構造を有するエポキシ樹脂、23℃で液状、屈折率1.51)
【0093】
<硬化剤(C)>
(C-1)サンエイド SI-110(三新化学工業(株)製、熱カチオン重合開始剤)
(C-2)サンエイド SI-150(三新化学工業(株)製、熱カチオン重合開始剤)
(C-3)サンエイド SI-B3(三新化学工業(株)製、熱カチオン重合開始剤)
【0094】
<界面活性剤(D)>
(D-1)BYK-333(ビックケミージャパン(株)製、シリコーン系界面活性剤)
(D-2)BYK-361(ビックケミージャパン(株)製、アクリルポリマー系界面活性剤)
【0095】
<有機溶剤(E)>
(E-1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(E-2)プロピレングリコールモノメチルエーテル
(E-3)トルエン
【0096】
<樹脂組成物の作成>
表1に従い配合された各原料を、室温下で原料が完全に溶解するまで撹拌し、溶液を得た。その後、その溶液を孔径0.2μmのPTFEフィルターで濾過することで、クラッドAおよびクラッドBのワニス状の樹脂組成物をそれぞれ得た。
【0097】
<樹脂フィルムの作成>
上記樹脂組成物の作成で得られたクラッドAおよびクラッドBのワニス状の樹脂組成物を、厚み38μmの帯電防止処理をしたポリエチレンテレフタレート基材(ニッパ(株)製、製品名:PET38×1-TR1-ASQ、以下、PET基材とする)上に、乾燥後の厚みが25μmとなるように、アプリケーターを用いてワニス塗布した後、100℃で10分間乾燥を行い、最後にOPPカバーフィルム(王子エフテックス(株)製、製品名:E201F-50μm)を樹脂組成物により形成された樹脂層側の表面に貼り付けて樹脂フィルムを得た。
なお、表2中の樹脂層(a)の厚みが25μmの樹脂フィルムは、上記方法で得られた樹脂フィルムをそのまま用いた。
表2中の樹脂層(a)の厚みが25μmよりも大きい樹脂フィルムは、所定の樹脂層(a)の厚みとなるまで、樹脂層(a)の厚みが25μmの樹脂フィルムを、ラミネート機にて温度:30℃、圧力:1.0MPa、時間:120秒の条件で積層することにより作成した。
【0098】
[実施例1~10および比較例1~3]
<ワークを準備する工程(A)>
樹脂フィルムからOPPカバーフィルムを剥離し、貫通孔を有する両面銅張積層板(CCL)と、樹脂フィルムの樹脂層(a)とが接するようにして、両面銅張積層板上に樹脂フィルムが載置されたワークを準備した。ワークの層構成は、「両面銅張積層板/樹脂層(a)/PET基材」である。
樹脂フィルムのクラッド材の種類および樹脂層(a)の厚みを表2にそれぞれ示す。両面銅張積層板の厚みT、貫通孔の穴径R、およびT/Rを表2にそれぞれ示す。
【0099】
<ラミネートする工程(B)>
表2の工程(B)に記載の条件に基づいて、ワークをプレスすることにより、両面銅張積層板に樹脂層(a)をラミネートした。
表2のラミネート装置に記載の「ラバー」は、ラバープレス式ラミネータ機(ニッコー・マテリアルズ(株)製、製品名:CVP-600)の1st Stageにより、ワークをプレスしたことを意味する。
表2のラミネート装置に記載の「ダイヤフラム」は、ダイヤフラム式ラミネータ機(ニッコー・マテリアルズ(株)製、製品名:CVP-300)の1st Stageにより、ワークをプレスしたことを意味する。
【0100】
<プレスする工程(C)>
工程(B)の後に、表2の工程(C)に記載の条件に基づいて、常圧条件で、ワークをさらにプレスして、実施例1~10および比較例1~3の積層体をそれぞれ得た。
表2に記載の工程(B)のラミネート装置が「ラバー」の実施例および比較例は、ラバープレス式ラミネータ機(ニッコー・マテリアルズ(株)製、製品名:CVP-600)の2nd Stageにより、ワークをプレスした。
表2に記載の工程(B)のラミネート装置が「ダイヤフラム」の実施例は、ダイヤフラム式ラミネータ機(ニッコー・マテリアルズ(株)製、製品名:CVP-300)の2nd Stageにより、ワークをプレスした。
【0101】
[測定・評価]
<樹脂層(a)の複素粘度η*の測定>
樹脂層(a)の厚みが25μmの樹脂フィルムに対して、樹脂層(a)の厚みが100μmとなるように、ラミネート機にて温度:30℃、圧力:1.0MPa、時間:120秒の条件で積層して複素粘度測定用のサンプルを得た。より具体的には、2枚のフィルムをラミネート処理して、樹脂層の厚みが50μmであるフィルムを2枚作成した後に、2枚の樹脂層の厚みが50μmであるフィルムをラミネート処理して、樹脂層の厚みが100μmであるサンプルを得た。複素粘度測定用のサンプルを得る際、PET基材およびOPPカバーフィルムは適宜排除した。
複素粘度測定用のサンプルを、粘弾性測定装置((株)アントンパール・ジャパン社製、製品名:MCH302)を用いて、周波数:10rad/secの周波数条件にて、23℃から200℃まで昇温速度3℃/minの条件で温度を変えながら溶融粘弾性を測定した。得られた結果より10rad/secにおける100℃での複素粘度η*[Pa・s]および周波数10rad/secにおける複素粘度η*が最小となる温度[℃]を算出した。
複素粘度η*の測定結果を表1にそれぞれ示す。
【0102】
<埋込性評価>
実施例1~10および比較例1~3の積層体に対して、基板の貫通孔を顕微鏡にて観察し、以下の基準で評価した。
A(とても良好):ボイドなく埋め込みできている。
B(良好):一部ボイドはあるが埋め込みできている。
C(不良):埋め込みができていない。
埋込性評価の結果を表2にそれぞれ示す。
【0103】
【0104】
【0105】
表2より、実施例の製造方法で得られた積層体はいずれも埋込性評価が良好であることが理解できる。すなわち、本実施形態の積層体の製造方法によれば、埋込性が向上した光電気複合基板を得ることが可能な積層体が得られる。
【0106】
この出願は、2023年3月31日に出願された日本出願特願2023-057399号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0107】
20 第1のクラッド層
30 コア層
40 第2のクラッド層
50 発光素子側のミラー
60 受光素子側のミラー
100 光導波路
110 基板
120 発光素子
130 受光素子
140a、140b 貫通孔
200 光電気複合基板
300 樹脂フィルム
310 樹脂層(a)
320 基材フィルム
400 ワーク
【要約】
貫通孔(140)を有する基板(110)と、光導波路(100)の第1のクラッド層(20)とを備える積層体の製造方法であって、基板(110)上に、第1のクラッド層(20)を形成するための樹脂組成物からなる樹脂層(a)(310)を備える樹脂フィルム(300)が載置されたワーク(400)を準備する工程(A)と、真空ラミネート装置を用いて、減圧下で、ワーク(400)を加熱してプレスすることにより、基板(110)に第1のクラッド層(20)をラミネートする工程(B)と、を少なくとも備える積層体の製造方法。