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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】加熱調理システム
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
F24C3/12 K
F24C3/12 X
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024558409
(86)(22)【出願日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 JP2024020055
【審査請求日】2024-10-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 匡史
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-002585(JP,A)
【文献】特開2010-014342(JP,A)
【文献】特開2019-078515(JP,A)
【文献】特開2000-193248(JP,A)
【文献】特開2021-034223(JP,A)
【文献】特許第6719019(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎により被加熱物を加熱する加熱装置と、
前記被加熱物と前記炎から放射される赤外線を前記被加熱物と前記炎の側方または斜め下方から検出し熱画像を生成する赤外線撮像装置と、
前記熱画像を受け付ける制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記熱画像に基づき前記炎が前記被加熱物の底部から上方にはみ出しているか否か、および前記炎が前記被加熱物より手前または奥にはみ出しているか否かを判定する処理と、
前記炎が前記底部からはみ出していると認められる場合、および前記炎が前記被加熱物より手前または奥にはみ出していると認められる場合に、前記炎の出力を減少させる指令信号を前記加熱装置へ送信する処理と、
を実行するように構成され、
前記加熱装置は前記指令信号に基づき前記出力を減少させる処理を実行するように構成される、加熱調理システム。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記熱画像において前記被加熱物の領域に前記炎の領域が重なっている場合に、前記炎が前記被加熱物の手前にはみ出していると判定し、
前記炎の領域が前記被加熱物の領域に重なっていないとともに前記炎の領域が前記被加熱物の領域の外側にある場合に、前記炎が前記被加熱物の奥にはみ出していると判定する、請求項に記載の加熱調理システム。
【請求項3】
前記加熱装置は、天板と前記天板の下に設けられた収納部を有し、
前記赤外線撮像装置は前記収納部に収納された状態で前記天板に設けられた開口から前記炎と前記被加熱物を撮像し、
前記開口は前記赤外線を透過する蓋で閉じられている、請求項1または2に記載の加熱調理システム。
【請求項4】
前記赤外線撮像装置は第1と第2の赤外線撮像装置を含み、
前記第1と第2の赤外線撮像装置は互いに直交する方向から前記炎および前記被加熱物を撮像する、請求項1または2に記載の加熱調理システム。
【請求項5】
前記制御回路は、
前記炎が前記底部からはみ出していると認められる場合に、前記炎の前記出力が最小であるか否かを判定する処理と、
前記出力が最小であると認められる場合にユーザに警告を報知する処理と、
をさらに実行する請求項1または2に記載の加熱調理システム。
【請求項6】
炎により被加熱物を加熱する加熱装置と、
前記被加熱物と前記炎から放射される赤外線を前記被加熱物と前記炎の側方または斜め下方から検出し熱画像を生成する赤外線撮像装置と、
前記熱画像を受け付ける制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記熱画像に基づき前記炎が前記被加熱物の底部から上方にはみ出しているか否かを判定する処理と、
前記炎が前記底部からはみ出していると認められる場合に、前記炎の出力を減少させる指令信号を前記加熱装置へ送信する処理と、
前記炎が水平面に対して傾いているか否かを判定する処理と、
傾きが認められる場合にユーザに警告を報知する処理と、
を実行するように構成され、
前記加熱装置は前記指令信号に基づき前記出力を減少させる処理を実行するように構成される、加熱調理システム。
【請求項7】
前記被加熱物と前記炎の上方から前記赤外線を検出し平面熱画像を生成する上方赤外線撮像装置をさらに備え、
前記制御回路は、
前記平面熱画像に基づき前記被加熱物の温度分布を検出する処理と、
前記温度分布に基づき前記炎の前記出力を維持または変化させる指令信号を前記加熱装置に送信する処理と、
をさらに実行し、
前記加熱装置は該指令信号に基づき前記炎の出力を制御する、請求項1または2に記載の加熱調理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱調理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被加熱物を加熱する加熱装置と、被加熱物の輪郭及び炎を検出する検出器とを備える加熱調理システムが開示されている。加熱調理器は炎が被加熱物の輪郭より外側にはみ出していることを検出した場合に炎の出力を減少させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-16354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の技術では被加熱物の上部の輪郭と炎のサイズを比較しており、炎によって直接的に熱せられる被加熱物の底部と炎のサイズを比較することができない。したがって、上部と底部とで幅が異なるお椀型の被加熱物等に対しては、被加熱物の底部から炎がはみ出して被加熱物が過熱状態にあったとしても、被加熱物の上部からも炎がはみ出していない限りはこれを検知できない。
【0005】
本開示は上述の課題を解決するため、被加熱物の底部と炎のサイズを比較して被加熱物の異常を検知できる加熱調理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様は
炎により被加熱物を加熱する加熱装置と、
前記被加熱物と前記炎から放射される赤外線を前記被加熱物と前記炎の側方または斜め下方から検出し熱画像を生成する赤外線撮像装置と、
前記熱画像を受け付ける制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記熱画像に基づき前記炎が前記被加熱物の底部から上方にはみ出しているか否か、および前記炎が前記被加熱物より手前または奥にはみ出しているか否かを判定する処理と、
前記炎が前記底部からはみ出していると認められる場合、および前記炎が前記被加熱物より手前または奥にはみ出していると認められる場合に、前記炎の出力を減少させる指令信号を前記加熱装置へ送信する処理と、
を実行するように構成され、
前記加熱装置は前記指令信号に基づき前記出力を減少させる処理を実行するように構成される、加熱調理システムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本開示では、赤外線撮像装置が被加熱物と炎の側方または斜め下方から被加熱物および炎を撮像し、熱画像を生成する。制御回路は熱画像に基づき炎が被加熱物の底部から上方にはみ出しているか否かを判定する。炎が被加熱物の底部からはみ出していると認められる場合、制御回路は炎の出力を減少させる指令信号を加熱装置へと送信する。これにより、被加熱物の底部と炎のサイズを比較して被加熱物の異常を検知できる加熱調理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る加熱調理システムの構成例である。
図2】実施の形態1に係る判定処理を説明する図である。
図3】実施の形態1の効果を説明する図である。
図4】実施の形態1に係る赤外線撮像装置を被加熱物と炎の側方に設置した場合を示す図である。
図5図4の赤外線撮像装置を収納した様子を示す図である。
図6】実施の形態1に係る赤外線撮像装置を被加熱物と炎の斜め下方に設置した場合を示す図である。
図7A】実施の形態1に係る制御回路の機能をハードウエアで実現する場合の構成例である。
図7B】実施の形態1に係る制御回路の機能をソフトウエアで実現する場合の構成例である。
図8】実施の形態1に係る赤外線撮像装置の構成例である。
図9】実施の形態1に係る判定処理の変形例を説明する図である。
図10】実施の形態1の変形例1の効果を説明する図である。
図11】実施の形態2に係る判定処理を説明する図である。
図12】実施の形態2に係る判定処理を説明する図である。
図13】実施の形態3に係る加熱調理システムの構成例である。
図14】実施の形態3に係る判定処理を説明する図である。
図15】実施の形態3に係る判定処理の変形例を説明する図である。
図16】実施の形態4に係る加熱調理システムの構成例である。
図17】実施の形態4に係る2個の赤外線撮像装置の上面視におけるレイアウト図である。
図18】本開示の実施の形態4に係る2個の赤外線撮像装置のレイアウト図の変形例である。
図19】本開示の実施の形態4に係る2個の赤外線撮像装置のレイアウト図の変形例である。
図20】実施の形態5に係る加熱調理システムの構成例である。
図21】実施の形態5に係る判定処理を説明する図である。
図22】実施の形態5に係る調理補助機能を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0010】
実施の形態1
図1は実施の形態1に係る加熱調理システム100の構成例である。加熱調理システム100は、加熱装置150と、赤外線撮像装置110と、制御回路120とを備える。
【0011】
赤外線撮像装置110は被加熱物200と炎50の側方または斜め下方から被加熱物200および炎50を撮像し、熱画像を生成する。
【0012】
制御回路120は入力部と、検出回路121と判定回路122と、出力部とを備える。入力部は赤外線撮像装置110が生成した熱画像を受け付ける。検出回路121は熱画像から被加熱物200の底部の領域と炎50の領域とをそれぞれ検出する(検出処理)。具体的には、制御回路120は熱画像から1000℃付近又はそれ以上の温度を示す画素群を抜き出して炎50の領域とする。また制御回路120は熱画像上で炎50の領域の上方に位置し被加熱物の温度を示す画素群を抜き出して被加熱物200の領域とし、該領域の底部を被加熱物200の底部の領域とする。被加熱物の温度とは、例えば100℃から500℃の範囲であるが、数値は一例であってこれに限定されない。
【0013】
判定回路122は検出回路121が抜き出した炎50の領域と被加熱物200の底部の領域に基づき、炎50が被加熱物200の底部から上方にはみ出しているか否かを判定する(判定処理)。
【0014】
炎50が被加熱物200の底部からはみ出していると認められる場合、判定回路122は被加熱物200が過熱状態であると判断する。この場合、判定回路122は炎50の出力を減少させる指令信号を出力部から加熱装置150へと送信する。
【0015】
加熱装置150はガスの燃焼排ガスを熱源として食材または調理容器などの被加熱物200を加熱するガスコンロである。加熱装置150は天板153(不図示)と、五徳151と、バーナ152と、バーナ152を点火させる点火装置(不図示)と、バーナ152を点火または消火させるためにユーザによって操作される操作器(不図示)と、バーナ152へのガス供給量を制御する制御装置(不図示)を備える。
【0016】
炎50の出力を減少させる指令信号を制御回路120から受け付けた場合、加熱装置150はバーナ152へのガス供給量を減少させて炎50のサイズを小さくする、もしくはガス供給を停止してバーナ152を消火する。
【0017】
制御回路120は指令信号の送信後も被加熱物200と炎50の熱画像の監視を継続し、炎50が被加熱物200の底部からはみ出していると認められなくなるまで加熱装置150に制御信号を送信する。これにより炎50が被加熱物200の底部からはみ出ることを確実に防止することができる。
【0018】
図2は、実施の形態1に係る判定処理を説明する図である。ここでは炎50と被加熱物200を側面から視た図を示している。判定処理においては、判定回路122は炎50の幅W1と被加熱物200の底部の幅W2を比較して、炎50の幅W1が被加熱物200の底部の幅W2よりも大きい場合に、炎50が被加熱物200の底部からはみ出していると判定する。炎50の幅W1は、熱画像上で炎50の領域の両端を検出し、片端から他端までの画素数を水平方向にカウントすることにより測定される。同様に被加熱物200の底部の幅W2は、被加熱物200の底部の領域の両端を検出し、片端から他端までの画素数を水平方向にカウントすることにより測定される。
【0019】
図3は実施の形態1の効果を説明する図である。本実施形態では上部と底部とで幅が異なるお椀型の被加熱物200に対しても炎50によって直接的に熱せられる底部の過熱異常を確実に検知できる。一方、被加熱物200の上部の輪郭と炎のサイズを比較する従来技術の方法では、本図のように、被加熱物200の底部から炎50がはみ出していたとしても、上部から炎50がはみ出していない限りはこれを検知できない。
【0020】
図4は実施の形態1に係る赤外線撮像装置110を被加熱物200と炎50の側方に設置した場合を示す図である。赤外線撮像装置110は加熱装置150の天板153の下に設けられた収納部113に昇降機112とともに収納可能になっている。天板153には収納部113の上面から赤外線撮像装置110を取りだすための開口が設けられている。開口には収納部113の上面を覆う蓋が取り付けられており、加熱装置150の使用時には蓋が開けられて赤外線撮像装置110が取り出される。赤外線撮像装置110は昇降機112によって被加熱物200の側方へと持ち上げられる。
【0021】
図5図4の赤外線撮像装置110を収納した様子を示す図である。加熱装置150の非使用時においては、赤外線撮像装置110は収納部113に収納される。収納部113の蓋の上面は、蓋が閉じられた状態では天板153の上面に対してフラットになっている。これにより天板153の手入れが容易になる。
【0022】
しかしながら赤外線撮像装置110は必ずしも加熱装置150に収納可能でなくともよい。赤外線撮像装置110は例えばキッチンカウンタに設置されてもよく、壁に取り付けられてもよい。
【0023】
図6は実施の形態1に係る赤外線撮像装置110を被加熱物200と炎50の斜め下方に設置した場合を示す図である。赤外線撮像装置110は収納部113に収納された状態で天板153に設けられた開口から炎50と被加熱物200を撮像する。収納部113の上面は開放されており、開口は収納部113の上面を覆い赤外線を透過する蓋で閉じられている。なお天板153の手入れを容易にするため蓋の上面は天板153の上面に対して平坦であることが望ましい。
【0024】
図7Aは実施の形態1に係る制御回路120の機能をハードウエアで実現する場合の構成例である。また、図7Bは実施の形態1に係る制御回路120の機能をソフトウエアで実現する場合の構成例である。制御回路120の入力部は受信機145であり、出力部は送信機147である。さらに、制御回路120の検出回路121および判定回路122の機能は、処理回路によって実現される。すなわち、制御回路120は検出回路121が実行する検出処理、判定回路122が実行する判定処理を含む処理を実現するための処理回路を備える。処理回路は、図7Aのように専用のハードウエアを用いて実施してもよい。もしくは、図7Bのようにメモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、プロセッサともいう)を用いてソフトウエアにより実施してもよい。
【0025】
処理回路が専用のハードウエアである場合は、処理回路146は、例えば単一回路、復号回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものが該当する。検出回路121および判定回路122の機能のそれぞれを処理回路146で実施してもよく、各部の機能をまとめて処理回路146で実施してもよい。
【0026】
処理回路がCPUである場合は、検出回路121および判定回路122の機能は、ソフトウエア、ファームウエア、またはこれらの組み合わせにより実現される。ソフトウエアまたはファームウエアはプログラムとして記述され、メモリ149に格納される。処理回路は、メモリ149に記録したプログラムを読みだして実行することにより各部の機能を実現する。すなわち、制御回路120は処理回路によって実行するときに、検出処理、判定処理を含む処理が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリを備える。これらのプログラムは、検出回路121および判定回路122の手順または方法をコンピュータに実行させるためのものであるともいえる。ここで、メモリ149とは、例えばRAM、ROM、フラッシュメモリーなどの揮発性または不揮発性の半導体メモリ、または磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、DVD等が該当する。
【0027】
図8は実施の形態1に係る赤外線撮像装置110の構成例である。
【0028】
シャッタ11は被写体を臨む視野上でレンズ12を露出させたり覆ったりするように動作することで赤外線撮像素子13への赤外線の入射経路を開閉する。シャッタ11は例えば黒色の赤外線遮蔽部材である。シャッタ11は通常の撮像時には開けられているが、温度補正に必要な基準画像の撮像時には閉じて使用される。
【0029】
レンズ12は被写体からの赤外線の焦点を赤外線撮像素子13に合わせる。
【0030】
赤外線撮像素子13は、赤外線センサ要素が2次元アレイの画素として多数配置された構造を有する。赤外線センサ要素は赤外線に応答して電気的特性または温度特性を変化させ赤外線量に応じた電気信号を発生する。赤外線センサ要素は例えば8~14μmの波長領域に受光感度を有するサーモパイル、ボロメータ、サーマルダイオード等である。しかしながら波長は一例であって限定されない。
【0031】
ADC14は赤外線撮像素子13から出力された電気信号をデジタル変換して熱画像生成回路15に出力する。
【0032】
熱画像生成回路15はデジタル化された赤外線撮像素子13の電気信号から、赤外線放射を表す2次元熱画像を生成する。熱画像生成回路15は、対象の熱画像を基準温度検出回路16から提供された基準画像と比較し、基準画像の温度分布との差分から対象の熱画像の温度分布を算出する。
【0033】
基準温度検出回路16は、シャッタ11が閉じられた状態で撮像された熱画像である基準画像に対して温度分布を検出する。基準温度検出回路16は基準画像とその温度分布を熱画像生成回路15に提供する。
【0034】
このように、本実施形態では赤外線撮像装置110が被加熱物200と炎50の側方または斜め下方から被加熱物200および炎50を撮像し、熱画像を生成する。制御回路120は熱画像に基づき炎50が被加熱物200の底部から上方にはみ出しているか否かを判定する。炎50が被加熱物200の底部からはみ出していると認められる場合、制御回路120は炎50の出力を減少させる指令信号を加熱装置150へと送信する。これにより、被加熱物の底部と炎のサイズを比較して被加熱物の異常を検知できる加熱調理システムを提供することができる。
【0035】
なお、判定処理を実現するため方法は上述の方法に限られない。以下に変形例を示す。
【0036】
〈実施の形態1の変形例〉
図9は実施の形態1に係る判定処理の変形例を説明する図である。ここでは被加熱物200の中心Cが炎50の中心Aから紙面左方向にずれ量Sだけずれている場合を示している。判定処理においては、被加熱物200の底部に対する炎50のはみ出し量を被加熱物200の左右それぞれについて測定し、左右の少なくとも一方においてはみ出し量が0を超えている場合に、炎50が被加熱物200の底部からはみ出していると判定してもよい。左右のはみ出し量D1,D2は、熱画像上で被加熱物200の底部よりも外側にある炎50の領域について両端を検出し、被加熱物200の左右それぞれについて水平方向の画素数をカウントすることで測定される。
【0037】
図10は実施の形態1の変形例1の効果を説明する図である。本変形例では、制御回路120は左右のはみ出し量D1,D2がともに0以下になるまで炎50の出力を減少させる。これにより被加熱物200の中心Cが炎50の中心Aからずれている場合においても、炎50が被加熱物200の底部に対して左右どちら側にもはみ出さないように制御できる。ここで、実施の形態1の図2で説明した方法では、炎50の幅W1が被加熱物200の底部の幅W2以下となるまで炎50の出力を減少させる。しかしながら、被加熱物200の中心Cが炎50の中心Aからずれている場合には、炎50の幅W1が被加熱物200の底部の幅W2以下であったとしても被加熱物200の左右どちらかからは炎50がはみ出した状態になり得ることに留意されたい。
【0038】
なお、左右どちらかにおいて炎50のはみ出し量が0を超えている場合に、はみ出し量が0を超えている方の炎50の出力のみを減少させるように制御してもよい。例えばバーナ152内にガスを供給する供給口を複数個設けておき、各々の供給口におけるガス量を個別に調整することでこのような制御が可能となる。
【0039】
実施の形態2
ここでは実施の形態1からの変更点を説明する。
【0040】
図11、12は実施の形態2に係る判定処理を説明する図である。図11、12では炎50が被加熱物200の底部に対してそれぞれ手前および奥にずれている場合を示している。本実施形態の判定回路122は、熱画像に基づき炎50が被加熱物200より手前または奥にはみ出しているか否かを判定する。
【0041】
被加熱物200の領域に炎50の領域が重なっていることである第1の条件が達成されている場合に、判定回路122は炎50が被加熱物200より手前にはみ出していると判定する。もしくは、第1の条件が達成されていることに加え、被加熱物200の底部の温度が被加熱物200全体の温度に比べて高いことが認められる場合に、判定回路122は炎50が被加熱物200より手前にはみ出していると判定する。
【0042】
一方、炎50の領域が被加熱物200の領域に重なっていないとともに炎50の領域が被加熱物200の領域の外側にあることである第2の条件が達成されている場合に、判定回路122は炎50が被加熱物200より奥にはみ出していると判定する。もしくは、第2の条件が達成されていることに加え、被加熱物200の底部の側面の温度が被加熱物200全体の温度に比べて高い場合に炎50が被加熱物200より奥にはみ出していると判定する。
【0043】
炎50が被加熱物200の底部より手前または奥にはみ出していると認められる場合、判定回路122は被加熱物200が過熱状態であると判断する。この場合実施の形態1と同様に、判定回路122は炎50の出力を減少させる指令信号を加熱装置150へと送信する。
【0044】
このように本実施形態では炎50が被加熱物200より手前または奥にはみ出しているか否かを判定する。これにより、被加熱物200の手前と奥についても過熱異常を検知できる。
【0045】
実施の形態3
ここでは実施の形態1からの変更点を説明する。
【0046】
図13は実施の形態3に係る加熱調理システム100の構成例である。本実施形態の加熱調理システム100では、実施の形態1の構成例に報知機160が追加されている。
【0047】
図14は実施の形態3に係る判定処理を説明する図である。ここでは被加熱物200の中心Cが炎50の中心Aから紙面左方向にずれている場合を示している。判定回路122は、判定処理において炎50が被加熱物200の底部からはみ出していると認められる場合に、炎50の出力が最小であるかをさらに判定する。炎50の出力が最小である場合は、図のように被加熱物200の中心Cが炎50の中心Aからずれているため、炎50の出力が最小であるにもかかわらず、炎50が被加熱物200の底部からはみ出してしまっていることを示す。この場合、判定回路122は被加熱物200が異常載置状態であると判断し、警告を報知するための指令信号を報知機160に送信する。
【0048】
指令信号を制御回路120から受け付けた場合、報知機160はユーザに警告を報知する。
【0049】
さらに、制御回路120は、炎50が被加熱物200の底部からはみ出している状態が所定時間継続しているか否かを判定する。継続が認められる場合、判定回路122は炎50の出力を停止させる指令信号を加熱装置150へと送信する。これに伴い加熱装置150はガス供給を停止してバーナ152を消火する。
【0050】
このように本実施形態では出力が最小の状態で炎50が被加熱物200の底部からはみ出している場合にユーザに警告を報知する。これにより被加熱物200の載置異常をユーザに報知できる。
【0051】
〈実施の形態3の変形例〉
図15は実施の形態3に係る判定処理の変形例を説明する図である。判定処理においては、炎50または被加熱物200が水平面に対して傾いているか否かを判定し、傾きが認められる場合に、警告を報知するための指令信号を報知機160に送信してもよい。この場合、判定回路122は、炎50および被加熱物200の傾きが正常である状態の熱画像を記憶している。判定回路122は撮像された熱画像を正常状態の熱画像と比較することで炎50および被加熱物200の傾きの有無を判定する。もしくは判定回路122は撮像された熱画像から炎50および被加熱物200傾斜角度を検出して傾きの有無を判定する。
【0052】
実施の形態4
ここでは実施の形態1からの変更点を説明する。
【0053】
図16は実施の形態4に係る加熱調理システム100の構成例である。本実施形態の加熱調理システム100は実施の形態1の赤外線撮像装置110を2個備える。赤外線撮像装置(第1の赤外線撮像装置)110-1と赤外線撮像装置(第2の赤外線撮像装置)110-2はともに被加熱物200と炎50の側方または斜め下方から被加熱物200および炎50を撮像する。
【0054】
図17は実施の形態4に係る2個の赤外線撮像装置110の上面視におけるレイアウト図である。炎50の中心Aを原点とする仮想的なXY座標軸が表示されている。またここでは被加熱物200の中心Cが炎50の中心Aから紙面右方向にずれ量Sだけずれている場合を示している。赤外線撮像装置110-1と赤外線撮像装置110-2は互いに直交する方向から被加熱物200および炎50を撮像する。これにより、死角を作ることなく炎50および被加熱物200を撮像することができる。
【0055】
なお赤外線撮像装置110の数は2個に限定されず、被加熱物200に対して左右、手前、奥等にそれぞれ配置されてもよい。
【0056】
なお、2個の赤外線撮像装置110のレイアウト方法は図17の例に限られない。以下に変形例を示す。
【0057】
〈実施の形態4の変形例〉
図18、19は本開示の実施の形態4に係る2個の赤外線撮像装置110のレイアウト図の変形例である。バーナ152が複数である場合、2個の赤外線撮像装置110はそれぞれが複数のバーナ152を同時に撮像できるように配置されてもよい。2個の赤外線撮像装置110の熱画像を組み合わせることで死角を減らすことができる。
【0058】
実施の形態5
ここでは実施の形態4からの変更点を説明する。
【0059】
図20は実施の形態5に係る加熱調理システム100の構成例である。本実施形態の加熱調理システム100は実施の形態4の構成例に加えて、上方から被加熱物200および炎50を撮像し、平面熱画像を生成する上方赤外線撮像装置130を備える。制御回路120には調理補助機能を実行するためボタン180と、調理補助の結果を表示する表示器170が設けられている。
【0060】
図21は実施の形態5に係る判定処理を説明する図である。炎50の中心Aを原点とする仮想的なXY座標軸が表示されている。またここでは被加熱物200の中心Cが炎50の中心Aから紙面右方向にずれ量Sだけずれている場合を示している。本実施形態の検出回路121は上方赤外線撮像装置130からの平面熱画像に基づき、炎50が被加熱物200の輪郭からはみ出しているか否かを判定する。これにより、被加熱物200の上面についても過熱異常を検知できる。
【0061】
図22は実施の形態5に係る調理補助機能を説明する図である。ユーザによりボタン180が押下されるに伴い、検出回路121は上方赤外線撮像装置130の熱画像から調理物210の温度分布を検出する。制御回路120は調理物210の温度分布に基づき炎50の出力を維持または変化させる指令信号を加熱装置150へと送信する。例えば調理物210の温度分布が均一でなく高温エリアE1と低温エリアE2があると認められる場合には、制御回路120は温度分布が均一になるように炎50の出力を変化させる指令信号を送信する。具体的には、高温エリアE1の炎50を減少させ低温エリアE2の炎50の出力を増加するように炎50の出力を変化させる。
【0062】
加熱装置150は指令信号の内容に基づき炎50の出力を制御する。これによりユーザの利便性を向上できる。
【0063】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態および変形例は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。
【符号の説明】
【0064】
11 シャッタ、12 レンズ、13 赤外線撮像素子、15 熱画像生成回路、16 基準温度検出回路、50 炎、100 加熱調理システム、110 赤外線撮像装置、112 昇降機、113 収納部、120 制御回路、121 検出回路、122 判定回路、130 上方赤外線撮像装置、145 受信機、146 処理回路、147 送信機、149 メモリ、150 加熱装置、151 五徳、152 バーナ、153 天板、160 報知機、170 表示器、180 ボタン、200 被加熱物、210 調理物
【要約】
本開示は被加熱物の底部と炎のサイズを比較して被加熱物の異常を検知できる加熱調理システムを提供することを目的とする。本開示の加熱調理システムは、炎により被加熱物を加熱する加熱装置と、被加熱物と炎から放射される赤外線を被加熱物と炎の側方または斜め下方から検出し熱画像を生成する赤外線撮像装置と、熱画像を受け付ける制御回路とを備える。制御回路は、熱画像に基づき炎が被加熱物の底部から上方にはみ出しているか否かを判定する。炎が底部からはみ出していると認められる場合に、制御回路は炎の出力を減少させる指令信号を加熱装置へ送信する。加熱装置は指令信号に基づき出力を減少させる。
図1
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図7A
図7B
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図22