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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】物体量検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/263 20220101AFI20250109BHJP
   G01N 27/22 20060101ALI20250109BHJP
   B60S 1/62 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G01F23/263
G01N27/22 B
G01N27/22 C
B60S1/62 120B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024502855
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2022046257
(87)【国際公開番号】W WO2023162420
(87)【国際公開日】2023-08-31
【審査請求日】2024-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2022028511
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】正木 毅
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0376830(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/263
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝固可能な液状の物体が入れられる容器と、
前記容器内で上下方向にわたって設けられ、前記物体の液面又は凝固した前記物体の表面の上下方向における位置の変化に伴う容量値の変化を検出可能な電極と、
前記電極の容量値に基づいて前記容器内における前記物体の液面又は表面の位置を連続的又は間欠的に検出して前記電極の容量値から前記物体の誘電率を求め、当該求めた誘電率に基づいて前記物体の状態を判定する判定部と
を含
前記電極は、前記容器の側面に対して配置される表面の形状が四角形を対角線で分割して得る三角形の部分を有する電極対を複数有する板状電極であり、
前記判定部は、前記複数の電極対の容量値と位置の加重平均に基づいて前記物体の液面又は表面の位置を検出するとともに、検出した前記物体の液面又は表面の位置と、前記物体の液体状態又は固体状態における比誘電率とに基づいて前記物体の状態を判定する、物体量検出装置。
【請求項2】
前記複数の電極対は、上下方向に配置される、請求項に記載の物体量検出装置。
【請求項3】
前記電極に対して、シールド電極を介して前記容器とは反対側に配置される参照電極をさらに含み、
前記判定部は、前記参照電極の容量値に基づいて前記電極対の容量値を補正する、請求項に記載の物体量検出装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記複数の電極対の容量値の1つが所定値を超えた場合、当該電極対より上方に位置する電極の容量値をゼロとする、請求項に記載の物体量検出装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記物体の液面又は表面の位置が所定高さ以下のときの前記電極対の容量値を補正する、請求項に記載の物体量検出装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記複数の電極対の下側に仮想的に設けた電極対の容量値を、計算値に含めて水位高さを計算する、請求項に記載の物体量検出装置。
【請求項7】
前記判定部は、時間経過とともに複数回にわたって前記物体の液面又は表面の位置を検出し、複数回にわたって検出した前記物体の液面又は表面の位置の平均値を前記物体の液面又は表面の位置とする、請求項1に記載の物体量検出装置。
【請求項8】
前記判定部によって前記物体の状態が凍結状態であると判定されると、前記凍結状態であることを表す情報を外部装置に通知する通知部をさらに含む、請求項に記載の物体量検出装置。
【請求項9】
前記物体は、車両のウォッシャー液である、請求項に記載の物体量検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝固可能な液体などの物体量検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水等の量を検出する物体量検出装置が知られており、該物体量検出装置は製氷装置などに設けられて使用されている。該従来の製氷装置においては、絶縁体で形成された製氷皿と、この製氷皿に水を供給する給水手段と、前記製氷皿に取り付けられる各々絶縁された二以上の電極を有する静電容量センサと、前記給水手段から供給された前記製氷皿内の水量を前記静電容量センサの電極間における静電容量の変化により検出する水量検出部と、前記製氷皿内の水が凍ったことを検出した後、前記製氷皿の開口が下方に向いた状態まで前記製氷皿を回転させることで前記製氷皿を弾性変形させる製氷皿駆動手段と、を備え、前記静電容量センサの電極は、前記製氷皿に密着した状態かつ前記製氷皿に接合されていない状態で、弾性変形可能な変位吸収部材を介して前記製氷皿の外側に取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-207824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、製氷装置に用いられていた従来の物体量検出装置では、水量の検出と、水が凍ったことの検出とを行っているが、どの程度凍った状態で、どの程度の量があるのかを判定することはできない。
【0005】
そこで、凝固可能な液状の物体の容器内における量と状態とを判定可能な物体量検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の物体量検出装置は、凝固可能な液状の物体が入れられる容器と、前記容器内で上下方向にわたって設けられ、前記物体の液面又は凝固した前記物体の表面の上下方向における位置の変化に伴う容量値の変化を検出可能な電極と、前記電極の容量値に基づいて前記容器内における前記物体の液面又は表面の位置を連続的又は間欠的に検出して前記電極の容量値から前記物体の誘電率を求め、当該求めた誘電率に基づいて前記物体の状態を判定する判定部とを含む。
【発明の効果】
【0007】
凝固可能な液状の物体の容器内における量と状態とを判定可能な物体量検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の物体量検出装置100の構成を示す図である。
図2】静電センサ110を示す図である。
図3】水面高さの計算結果の一例を示す図である。
図4】ウォッシャー液20Aの表面の高さの違いによる静電センサ110の容量値の違いを説明する図である。
図5A】第3の補正方法に用いる静電センサ110を示す図である。
図5B】第3の補正方法によって実際に測定した結果を示す図である。
図6】第6の補正方法を説明する図である。
図7】ウォッシャー液20Aの表面の高さHと凍結状態を検出するための処理を表すフローチャートを示す図である。
図8】傾斜による容量値の変化を補正する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の物体量検出装置を適用した実施形態について説明する。
【0010】
<実施形態>
図1は、実施形態の物体量検出装置100の構成を示す図である。図1には物体量検出装置100に加えて車両システム10を示す。車両システム10は、ECU(Electronic Control Unit)11と電源12とを含む。車両システム10は、一例として車両の電子機器の制御を行うシステムであり、電子機器はどのようなものであってもよい。例えば、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)であってもよい。ECU11は、車両システム10の制御を行う。電源12は、車両のバッテリ等の電力供給源から12Vの直流電力を供給する電源である。
【0011】
物体量検出装置100は、車両のウォッシャー液用のタンク20に貯容されるウォッシャー液20Aの量を検出する装置である。ADASのような車両システム10を搭載する自律走行車又は自動運転機能付きの車両に搭載されるカメラや光学式センサ等に泥、埃、虫等が付着すると、適切な画像や光学情報等を取得できなくなるため、カメラや光学式センサ等をウォッシャー液で洗浄するシステムが開発されている。
【0012】
車両システム10は、安全に走行できる状態であるかどうかを判断するために、タンク20におけるウォッシャー液20Aの液量を検出する。ところで、冬のように外気温が低いとウォッシャー液が凍結し得る。ウォッシャー液20Aが凍結すると、液体として噴射することができなくなる可能性がある。
【0013】
そこで、物体量検出装置100は、ウォッシャー液20Aの液面、又は、少なくとも一部が凍結している状態におけるウォッシャー液20Aの表面の高さ位置を検出するとともに、ウォッシャー液20Aが凍結しているかどうかを判定する。
【0014】
ここでは、ウォッシャー液20Aの状態とは、凍結していない液体の状態、又は、凍結している状態のいずれかであることをいう。凍結している状態とは、完全に凍結している状態であってもよいが、ウォッシャー液20Aをタンク20から噴射するのが困難になる程度であってもよい。ここでは、凍結している状態とは、ウォッシャー液20Aをタンク20から噴射するのが困難な状態であることとする。
【0015】
また、ウォッシャー液20Aは、凝固(凍結)可能な液状の物体の一例である。以下では、ウォッシャー液20Aと記載した場合に、液体の状態に限らず、固体の状態、又は、液体と固体が混じっている状態が有り得ることとする。また、ウォッシャー液20Aの表面の高さとは、液体の状態におけるウォッシャー液20Aの液面の高さ位置、又は、凍結している状態におけるウォッシャー液20Aの表面の高さ位置のことをいう。
【0016】
物体量検出装置100は、制御ボード101、静電センサ110、IC(Integrated Circuit)チップ120、及びLDO(Low Dropout)130を含む。一例として、静電センサ110、ICチップ120、及びLDO130は、1つの制御ボード101に実装されているが、別々の制御ボード等に実装されていてもよい。制御ボード101は、配線基板である。なお、静電センサ110については、図1に加えて図2を用いて説明する。図2は、静電センサ110を示す図であり、静電センサ110を正面方向から見た図を示す。
【0017】
静電センサ110は、絶縁性の基板(図示省略)上に、図2に示すように電極S0、S1、S2、S3、SS1、SS2を有して構成され、プラスチック製のタンク20の外側面にテープや接着剤等で取り付けられる。図1では電極SS1及びSS2を省いた形で簡易化して示す。静電センサ110は、図1に示すようにタンク20の側壁において、上下方向にわたって延在するように設けられている。上下に変化する液面を検出可能にするためである。図2に示す電極S0、S1、S2、S3、SS1、SS2の形状は、タンク20の側面に対して配置される表面の形状である。電極S0、S1、S2、S3、SS1、SS2は、板状電極である。
【0018】
電極S0、S1、S2、S3、SS1、SS2は、車両システム10及び物体量検出装置100が搭載される車両のボディ等のグランド電位の金属部(グランド部)と容量結合している。以下では、電極S0、S1、S2、S3、SS1、SS2の容量値とは、電極S0、S1、S2、S3、SS1、SS2と、車両のグランド部との間の静電容量の値である。
【0019】
電極S0、S1、S2、S3、SS1、SS2は、ICチップ120に接続されている。電極S0、S1、S2、S3は、ウォッシャー液20Aの液面の上下方向における位置を検出するとともに、ウォッシャー液20Aの状態を検出するために設けられている。電極SS1及びSS2は、電極S0、S1、S2、S3の容量値の補正に用いるために設けられている。
【0020】
電極S0、S1、S2、S3は、下側から上側にかけて、この順で設けられている。電極S0、S1、S2、S3は、タンク20の側面に対して配置される表面の形状が上下に長い長方形に対して、3本の平行な斜めの直線で分割した形状を有する。3本のうちの最も下と最も上の直線は、長方形の上下の頂点を通り、真ん中の1本の直線の長さの中心は、長方形の中心を通っている。
【0021】
電極S0及びS3は、タンク20の側面に対して配置される表面の形状が三角形であり、互いに等しい形状を有する。電極S0及びS3の三角形は、四角形を対角線で分割して得る三角形である。
【0022】
電極S1及びS2は、タンク20の側面に対して配置される表面の形状が互いに等しく、電極S0及びS3を2つ合わせて得られる平行四辺形の形状を有する。このため、電極S1及びS2は、四角形を対角線で分割して得る三角形を2つ含む形状である。
【0023】
電極S0の下端と電極S1の下端の高さは等しく、タンク20の下端よりも上側に位置する。電極S3の上端と電極S2の上端の高さは等しく、タンク20の上端よりも下側に位置する。電極S0の下端と電極S1の下端の高さはX0であり、電極S3の上端と電極S2の上端の高さはX3である。タンク20内のウォッシャー液20Aの表面が高さX0以上、X3以下のときに、ウォッシャー液20Aの表面は、常に電極S0~S3のうちの2つと重なる。このため、上下方向において隣り合う電極S0及びS1は電極対の一例であり、電極S1及びS2は電極対の一例であり、電極S2及びS3は電極対の一例である。なお、高さX0~X3の詳細については後述する。また、電極S0及び電極S1の間と、電極S1及び電極S2の間と、電極S2及び電極S3の間との隙間は、絶縁性を確保し実際の測定において無視できるほど、十分に小さく形成されている。
【0024】
ICチップ120は、AFE(Analog Front End)120Aと、MCU(Micro Computer Unit)120Bを有するチップ部品である。ICチップ120は、一例としてLIN(Local Interconnect Network)用の通信ケーブル40を介して車両システム10のECU11に接続されている。
【0025】
AFE120Aは、静電センサ110の電極S0、S1、S2、S3、SS1、SS2に接続されており、電極S0、S1、S2、S3、SS1、SS2の容量値をデジタル変換してMCU120Bに出力する。なお、静電センサ110の電極S0、S1、S2、S3、SS1、SS2の電圧の印加は、図示を省略した電源、あるいは図示を省略したシールド電極に交流電圧を印加し、該シールド電極に容量結合させる事で行われる。
【0026】
MCU120Bは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入出力インターフェース、及び内部バス等を含むコンピュータによって実現される。
【0027】
MCU120Bは、判定部121、通知部122、及びメモリ123を有する。判定部121及び通知部122は、MCU120Bが実行するプログラムの機能(ファンクション)を機能ブロックとして示したものである。また、メモリ123は、MCU120Bのメモリを機能的に表したものである。なお、MCU120Bの判定部121及び通知部122以外の処理部については、ここでは省略する。
【0028】
判定部121は、ウォッシャー液20Aの液面、又は、少なくとも一部が凍結している状態におけるウォッシャー液20Aの表面の高さを連続的又は間欠的な高さの値として検出する。また、判定部121は、検出した表面の高さと、ウォッシャー液20Aの凍結状態における比誘電率と、静電センサ110の容量値とに基づいて、ウォッシャー液20Aが凍結しているかどうかを判定する。ウォッシャー液20Aが凍結しているかどうかを判定する際には、ウォッシャー液20Aの液体状態における比誘電率(80.4)と、凍結状態における比誘電率(4.2)との差を利用する。
【0029】
判定部121は、ウォッシャー液20Aの高さを求める際に、ウォッシャー液20Aの重心の高さを求め、重心の高さを2倍することによってウォッシャー液20Aの表面の高さを求める。判定部121は、ウォッシャー液20Aの重心の高さを求める際に、図2に示す高さX0~X3を用いる。
【0030】
X0は、電極S0の下端の高さである。X1は、電極S1の上下方向における中心の高さである。X2は、電極S2の上下方向における中心の高さである。X3は、電極S3の上端の高さである。一例として、電極S0~S3の下端から上端までの高さが300mmの場合には、X0=0mm、X1=100mm、X2=200mm、X3=300mmであり、X0~X3の値は固定値である。
【0031】
判定部121は、次式(1)でウォッシャー液20Aの表面の高さHを求める。
【0032】
【数1】
【0033】
式(1)において、Xnは、上述のX0~X3である。Anは、電極S0、S1、S2、及びS3の静電容量である。
【0034】
次に、式(1)の意味について説明する。まず、各電極の静電容量の値は各電極が接する液体或いは固体の高さ方向の面積に比例する。そして高さ方向の面積は各電極の高さ方向の範囲の液体或いは固体の質量に比例する。すなわち、各電極の静電容量の値は、各電極に対応する液体或いは固体の範囲の質量に対応する。ところで、一般的に質量の重心位置は、要素ごとの質量と距離の加重平均で求める事が出来る。これらのことから、液体或いは固体の重心位置は、各電極の容量値(質量に対応)と距離の加重平均(Σ(Xn×An)/ΣAn)で求める事が出来る。そして、液体或いは固体の表面の高さは、重心位置(Σ(Xn×An)/ΣAn)の2倍となるので、(1)式によって、表面高さを求める事が可能となる。
【0035】
次に、(1)式を使って、実際にウォッシャー液が液状である場合の水面高さの計算した結果を例示し、該(1)式で実際に水面高さが求められることを説明する。図3は、水面高さの計算結果の一例を示す図である。表1は、水面高さの計算結果の例を示す図である。
【0036】
仮に、図3に示すように250mmの高さに水面があることを想定して表1に例1を示す。表1には、例1以外の4つの計算結果を示す。
【0037】
【表1】
【0038】
ウォッシャー液の比誘電率は水と同等であり空気の誘電率に比べて十分に大きいので、各電極で測定される容量値は、液体中に浸漬している電極面積に比例する。電極S0の全てが液体に浸漬している際の容量値を仮に50pFが測定されるとすると、例1において電極S0,S1は全て液体中に浸漬していて、電極S1は電極S0の面積の2倍なので、S0=50pF,S1=100pFが測定される。また、電極S2では、100mm-200mmの範囲の電極に対応する50pFと、200mm-250mmの範囲に対応して、200-300mmの範囲の面積に対応した容量値、すなわち50pF×(1-1/2×1/2)=37.5pFとなり、電極S2の容量値は50+37.5=87.5Pfとなる。電極S3の容量値は200mm-250mmの範囲に対応した面積となるので50pF×(1/2×1/2)=12.5pFとなる。
【0039】
そして、測定される各電極の測定値から(1)式を用いて水面高さを計算するとH=2×(0×50+100×100+200×87.5+300×12.5)/(50+100+87.5+12.5)=250mmが求められ、想定した例1の水面高さと一致する。このように各電極の容量値から液面高さを求める事が出来る。
【0040】
同様に、想定する水面高さを変えて各電極の容量値を求め結果と、この各電極の容量値から求めた水面の計算結果の例を表1に示す。表1からも明らかなように想定した水面の高さと、容量値から計算した水面高さは一致し、(1)式から水面高さが求める事が可能であることが確認できる。なお、誘電率が変わっても容量値は誘電率に比例するので、式(1)より明らかなように、Hの計算値自体は変わらない。なお、(1)式で電極S1,S2,S3の容量値が共に0の時は分母が0となってしまうが、その際は水位高さを0とする。
【0041】
更に、また、判定部121は、次式(2)に基づいて、検出した表面の高さと、静電センサ110の容量値と、ウォッシャー液20Aの凍結状態における比誘電率、或いは液体状態での比誘電率とに基づいて、ウォッシャー液20Aが凍結しているかどうか或いは液体であるかどうかを判定する。係数Cは、ウォッシャー液20Aが液体状態の比誘電率と凍結した状態の比誘電率とを考慮して設定される。タンク20の形状や容量等に応じて、どの程度凍結した時点でウォッシャー液20Aの噴射が困難になるのかを決めることによって、係数Cの値を設定すればよい。すなわち、容量値は誘電率に比例するので、表面高さに応じて測定されるべき容量値が少なく、式(2)が成立すれば、誘電率が低いものと見なして、判定部121は、ウォッシャー液20Aは凍結していると判定することになる。
【0042】
なお、水の比誘電率は80.4、氷の比誘電率4.2であり、ウォッシャー液20Aの液体状態の比誘電率と凍結した状態の比誘電率もこれと同等である。このように、比誘電率は液体状態と凍結した状態で値が大きく異なるので、係数Cを適切に設定する事で、容易にウォッシャー液20Aが凍結しているかの判定が可能となる。
【0043】
【数2】
【0044】
なお、同様にして表面高さに応じて測定されるべき容量値が、凍結した場合に比べて大きいかを確認して液体状態であるか判定するようにしても良い。また、閾値を適切に判定する事によって、液体から固体になるまでのシャーベット状などの状態の途中経過を判定する事もできる。
【0045】
通知部122は、判定部121が算出したウォッシャー液20Aの表面の高さHを表すデータを車両システム10のECU11に通知する。また、通知部122は、判定部121がウォッシャー液20Aが凍結したと判定した場合に、凍結したことを表すデータを車両システム10のECU11に通知する。
【0046】
メモリ123は、電極S0、S1、S2、S3、SS1、SS2の容量値、X0~X3、及び、ウォッシャー液20Aの表面の高さH等のデータを格納する。高さHの移動平均を求めたり、凍結判定の際には過去5秒間の判定結果が連続的に凍結していることを参照するため、メモリ123には過去に求めた高さHのデータや、過去の判定結果等のデータが格納される。
【0047】
LDO130は、電力ケーブル30を介して車両システム10の電源12に接続されている。LDO130は、入力電圧より低い一定の電圧を出力することができるレギュレータであり、電源ICである。LDO130は、車両システム10の電源12から供給される直流電力の電圧を12Vから5Vに低下させてMCU120Bに供給する。
【0048】
次に、補正について説明する。なお、補正は必ずしも必要としない。
【0049】
<第1の補正方法>
まず、第1の補正方法について説明する。前述のように水位の高さは基本的には(1)式で求める事が可能であるが、(1)式では分母を各電極の測定値としている為、特に各電極の全ての測定値が小さい範囲、すなわち水位が低い場合においては、表面高さの計算値と、実際の水面高さの誤差が大きくなってしまうという問題があり、水位が低い場合にも高精度に検知が必要な場合に課題となる。その原因の1つは、センサが設けられている測定範囲以下に存在する水に起因する容量値C2が挙げられる。すなわち、センサが設けられている測定範囲以下では本来各電極の容量値はゼロであるべきだが、実際には、測定範囲以下の水に起因する容量値C2が測定される。これらのことから、実際に水位を求める際に用いる容量値の値は、測定される測定値からC2を引いた値とする必要がある。なお、前述のように水位が少ない範囲においての補正の為、電極S0に補正を行う場合を説明するが、同様の補正を電極S1に行っても良い。以下、図4を用いて説明する。
【0050】
図4は、ウォッシャー液20Aの表面の高さの違いによる静電センサ110の電極S0の容量値の違いを説明する図である。なお、電極S1、S2、S3、SS1、SS2の図示は省略する。図4(A)に示す例では、グランド部であるGNDからタンクまでの上下方向の距離は20mm、タンク20の底から電極S0の下端までの上下方向の距離は20mm、電極S0の下端から上端までの上下方向の距離は100mmであることとする。これは、図4(B)、図4(C)においても同様である。
【0051】
図4(A)では、タンク20にウォッシャー液20Aは入っていない。この場合に、電極S0とグランド部GNDとの間の容量値C1は、タンク20の厚さを無視して考えると、電極S0とグランド部GNDとの間に空気が存在している場合の容量値Ca0に等しいと考えることができ、Ca0=1×ε0×S/140で近似できる。ε0に乗じた1は、空気の比誘電率である。Sは静電センサ110の電極S0~S3の表面積である。140はGNDから電極S0までの距離を示す。
【0052】
図4(B)では、タンク20に入っているウォッシャー液20A(液体状態)の表面の高さは、電極S0の下端と同じ高さである。この場合に、電極S0とグランド部GNDとの間の容量値C2は、ウォッシャー液20Aよりも上側の部分の容量値Ca1と、ウォッシャー液20Aの内部の部分の容量値Cwと、タンク20とグランド部GNDとの間の部分の容量値Ca2との合計になる。Ca1=1×ε0×S/100、Cw=80.4×ε0×S/20、Ca2=1×ε0×S/20で近似できる。Cwについてε0に乗じた80.4は、液体状態のウォッシャー液20Aの比誘電率である。
【0053】
図4(C)では、タンク20に入っているウォッシャー液20A(液体状態)の表面の高さは、電極S0の上端と等しい状態である。この場合に、電極S0とグランド部GNDとの間の容量値C3は、ウォッシャー液20Aの内部の部分の容量値Cwと、タンク20とグランド部GNDとの間の部分の容量値Ca2との合計になる。Cw=80.4×ε0×S/120、Ca2=1×ε0×S/20で近似できる。
【0054】
以上より、図4(A)に示す状態における電極S0とグランド部GNDとの間の容量値C1と、図4(B)に示す状態における電極S0とグランド部GNDとの間の容量値C2と、図4(C)に示す状態における電極S0とグランド部GNDとの間の容量値C3との比は、100:116:651となる。
【0055】
ウォッシャー液20Aの表面が電極S0の下端よりも高い場合は、ウォッシャー液20Aの水位に応じた容量値の変化を適切に検出できると考えられるが、ウォッシャー液20Aの表面が電極S0の下端よりも低い場合は、ウォッシャー液20Aと電極S0とが高さ方向において重なっていないため、電極S0で測定される値は誤差が大きくなると考えられ、(1)式で求める水位も誤差が大きくなると考える。このため、ここでは、電極S0で測定される容量値が、水がタンク20に入っていない状態の容量値以上となった場合に補正を行う。
【0056】
具体的には、C1の容量値をk×100(kは定数)Fとすると、C2はk×116F,C3はk×651Fとなる。なお、ここでC3は、電極S0で測定される容量値の最大値の為、500pFである。よって本実施例の場合、k=0.77であり、C1=77pF,C2=89pF,C3=500pFである。そして、電極S0の容量値がC1以上C2以下の場合、すなわちウォッシャー液20Aが入っていない状態から電極S0の下端と同じ高さの場合は、測定値は引かれ、電極S0の容量値はゼロに補正される。また、電極S0の値がC2を超えC3以下の場合、すなわち、ウォッシャー液20Aが電極S0の下端と同じ高さとなった状態から電極S0の上端以上の高さとなった場合は、電極S0の測定値はC2を引いて補正される。
【0057】
なお、電極S0の測定値がC2以下の場合は値をゼロとする補正を行い、C2を超えた場合はC2を引く補正を行うようにしても良い。また、電極S1についても同様の補正を行っても良い。また、電極S0の値がC2を超えC3以下の場合、単純にC2を引いた補正だけだと、容量値の最大値が、C3-C2となってしまう為、電極S0の値がC2を超えた場合にはC2を引いた後に、C3/(C3-C2)をかけるような補正を行っても良い。そして、このように測定した容量値を補正した値を用いて(1)式で水位を求め、(2)式を用いてウォッシャー液の凍結状態を判断する。
【0058】
<第2の補正方法>
次に、水位が少ない場合の第2の補正方法について説明する。本補正方法においては、水位の測定領域の下側に電極を延長するものである。すなわち、図4(A)~図4(C)で示す例では、タンク20の底から電極S0の下端までの上下方向の距離は20mmであり、その間に電極は存在しないが、この範囲にも電極S0を延長して設ける。このようにすれば、図4(B)に示すようにウォッシャー液20Aの表面がタンク20の底から20mmの位置にあっても電極S0の容量値を大きくできる。そして、タンク20の底からのウォッシャー液の表面を求めて、求めた表面高さから20mmを引いて、実際のX0からの水面高さとすれば良い。このようにすれば水位の測定領域における測定精度を高めることができる。
【0059】
<第3の補正方法>
次に、水位が少ない場合の第3の補正方法について説明する。該第3の補正方法は、第2の補正方法が実際に電極を設けたものであるが、実際には電極を設けず、計算によって、第2の補正と同様の事を行うものである。図5Aは、第3の補正方法に用いる静電センサ110を示す図である。
【0060】
具体的には、図5Aで示すような高さX0-X1における電極S1,S0と同等形状の電極S01,SXを仮想的に設け、高さXAから高さX0のウォッシャー液に対応して計算で求めた電極S01の容量値を電極S0の実測値に加え、また、高さXAから高さX0のウォッシャー液に対応する電極SXの容量値を求める。そして(1)式を用いて、高さXAからの表面高さを求める。そして、求めた表面高さから、高さXAから高さX0までの高さを引いて、実際の高さX0からの表面の高さとする。そして、このようにすれば水位の測定領域においては(1)式の分母を大きくできるので測定精度を高めることができる。
【0061】
図5Bは、第3の補正方法によって実際に測定した結果を示す図である。図5Bにおいて、横軸は実際の水位、縦軸は、実測した各電極データから計算によって求められる水位の計算値を示す。細い実践は計算値が実際の水位と一致する理想値を示し、点線は補正を行わない水位の計算値を示し、太い実線は該第3の補正方法によって水位を計算した結果を示す。水位が低い部分で実際の水位の値と計算値とがほぼ一致する結果となった。
【0062】
<第4の補正方法>
第4の補正方法として、2など1より大きい指数で、容量値にγ補正を行って、小さい容量値の場合は、大きな容量値に比べて、より小さな値として扱われるように補正して、水位を求めるようにしても良い。このようにすれば、ウォッシャー液がある範囲の電極の影響が大きくなる。なお、その際には、全ての測定範囲の表面高さの測定に適用するのではなく、水位が低い範囲にのみ該γ補正を適用する等しても良い。
【0063】
<第5の補正方法>
次に、各電極は浮遊容量などの影響でウォッシャー液が入っていない状態でも、所定の値を示し、これが計算した際の誤差となる為、この補正方法として、第5の補正方法を説明する。
【0064】
該第5の補正方法においては、Snの電極の値が所定値以下の場合、S(n+1),S(n+2),S(n+3)の電極の値を全て、ゼロに補正する方法である。すなわち、電極Snの値が所定値以下は、該電極Snの下端付近に、表面が位置するので、電極Snより上方に位置する電極S(n+1),S(n+2),S(n+3)がウォッシャー液で浸漬されていないと判断できるので容量値をゼロに補正することで、ウォッシャー液が無い状態で測定される容量値の影響を低減できる。
【0065】
<第6の補正方法>
次に、第5の補正方法と同様の目的の第6の補正方法を示す。該第6の補正方法においては図6で示す静電センサ210を用いる。図6は、第6の補正方法を説明する図であり静電センサ210の断面図である。
【0066】
なお、静電センサ110と同等の部材については同じ符号を付して説明する。また、実際には、電極S0~S3,SS1,SS2は別の部材であり、参照電極SRも複数の部分からなるが、図6においては、1つの部材として図示する。参照電極SRは参照電極の一例である。静電センサ210は、静電センサ110に対して、参照電極SRとシールド電極SSを設けた点が異なり、以下、その点も含めて説明する。
【0067】
電極S0~S3、SS1、SS2は静電センサ110と同様、基板Bの同じ面に形成されていてタンク20に向けて配置される。参照電極SRは、電極S0~S3,SS1,SS2と同じ形状であり、電極S0~S3,SS1,SS2が設けられている面と反対の面に設けられている。シールド電極SSは、基板Bの板厚方向で、電極S0~S3,SS1,SS2と参照電極SRの間に設けられている。シールド電極SSはグランドに接続される、或いは交流駆動されて、電極S0~S3,SS1,SS2、参照電極SRと容量結合されている。この為、電極S0~S3、SS1、SS2の容量値は、タンク20内のウォッシャー液20Aの影響を受けるが、電極SRはウォッシャー液20Aの影響を受けない。
【0068】
そして、電極S0~S3、SS1、SS2の容量値から、それぞれの電極と同じ形状の参照電極部分の容量値を差し引く補正を行う。これによって、ウォッシャー液20Aが存在することによる容量値を求める事が出来る。すなわち、ウォッシャー液が無い状態でも、所定の容量値が測定され、又温度変化等に伴ってその値は変化するが、その影響を削減できる。そして、補正した値を(1)式に適用して水位を求め、又(2)式によって、凍結しているかを判定する。
【0069】
なお、本実施例においては、参照電極は電極S0~S3,SS1,SS2と同じ形状としたが、それには限定されず、例えば面積が違う1つの電極としても良い。その場合には、電極S0~S3の面積に換算して測定値から引く。
【0070】
また、本実施例においては、シールド電極SSは、基板Bの絶縁層を介して、参照電極SRと電極S0~S3,SS1,SS2の間に配置したが、更に、シールド電極を、基板Bの絶縁層を介して参照電極SRの電極S0~S3,SS1,SS2と反対の面にも配置しても良い。すなわち、2つのシールド電極で参照電極SRを基板の絶縁層を介して挟みこむようにしても良い。
【0071】
また、静電センサ210を用いて、該補正を行った後に図4で示す電極の下端以下のウォッシャー液20Aの補正を行うようにしても良い。
【0072】
なお、第1~4の補正の一つと、第5~6の補正の一つを組み合わせて行う事が可能であり、その場合には、各電極の容量値に対して第5~6のいずれかの補正を行った後に、第1~4のいずれかの補正を行う。その他、組み合わせる事が可能な場合は適宜組み合わせて、補正しても良い。
【0073】
図7は、静電センサ110、或いは静電センサ210において、ウォッシャー液20Aの表面の高さHと凍結状態を検出するための処理を表すフローチャートを示す図である。この処理は、判定部121が行う。なお静電センサ110、或いは静電センサ210における判定部121の処理内容は異なるものであるが、同様の処理については同じ符号で示す。
【0074】
判定部121は、処理をスタートさせると、パワーオンリセットの処理を行う(ステップS1)。具体的にはROMやRAMの値をリセットする等の処理を行う。
【0075】
判定部121は、高さHの検出回数を表すカウント値iを0(i=0)に設定する(ステップS2)。
【0076】
判定部121は、電極S0~S3の容量値を検出する(ステップS3)。
【0077】
判定部121は、静電センサ110の場合は、前述した第5の補正を行い、さらに前述した第1の補正、すなわちS0の容量値が77pF~89pFの場合は値をゼロとし、それを超える場合は89pFを減算する補正を行う(ステップS4)。この際、前述したように、第1の補正においては、電極S1についても同様の補正を行っても良い。
【0078】
また、静電センサ210の場合は、前述した第6の補正を行い、前述した第1の補正を行う(ステップS4)。
【0079】
なお、前述のように補正自体は、要求される精度によって、必ずしも必要ではなく、また、補正については前述した補正の方法の1つ或いは複数を組み合わせても良い。
【0080】
判定部121は、式(1)に従って高さHを計算する(ステップS5)。式(1)に従って高さHを計算することは、高さHを検出することと同義である。
【0081】
判定部121は、ステップS5で計算した高さHと、過去19回にわたって計算した高さHとの移動平均を算出する(ステップS6)。移動平均は、次式(3)で求めることができる。ただしjは今回のステップS5から19回前のステップS5までの20回分の高さHをそれぞれ示す1~20の整数である。また、Nは高さHの値の数を表し、N=20である。
【0082】
【数3】
【0083】
ステップS6において、判定部121は、時間経過とともに複数回にわたってウォッシャー液20Aの表面の高さHを検出し、複数回にわたって検出した高さHの平均値をウォッシャー液20Aの表面の高さHとする。
【0084】
判定部121は、カウント値iをインクリメント(i=i+1)する(ステップS7)。
【0085】
判定部121は、250ms待機する(ステップS8)。
【0086】
判定部121は、i≧20であるかどうかを判定する(ステップS9)。すなわち、高さHを20回以上検出したかどうかを判定する。
【0087】
判定部121は、i≧20ではない(S9:NO)と判定すると、フローをステップS3にリターンする。高さHの検出を繰り返し行うためである。なお、iが20未満の場合は、判定部121は、ステップS6の処理をスキップする。移動平均を求めるのに必要が高さHのデータが集まっていないからである。
【0088】
判定部121は、ステップS9においてi≧20である(S9:YES)と判定すると、式(2)に従って凍結しているかどうか判定する(ステップS10)。
【0089】
判定部121は、凍結していない(S10:NO)と判定すると、凍結判定を行ったカウンタ値fを0に設定する(ステップS11)。すなわち、f=0にする。
【0090】
判定部121は、通知部122に、ステップS6で求めた高さHの移動平均値を車両システム10のECU11に通知させる(ステップS12)。高さHのみを通知する場合は、凍結が生じていないことを表すが、高さHとともに凍結が生じていないことを表すデータ(非凍結情報)を通知してもよい。判定部121は、ステップS12の処理を終えるとフローをステップS3にリターンする。
【0091】
判定部121は、ステップS10において凍結している(S10:YES)と判定すると、カウンタ値fをインクリメントする(ステップS13)。すなわち、f=f+1となる。
【0092】
判定部121は、今回のステップS10よりも19回前のステップS10から連続して20回にわたって凍結している(S10:YES)と判定したかどうかを判定する(ステップS14)。250ms毎に判定を繰り返し行っているため、ステップS14の処理は、過去5秒間にわたって凍結している(S10:YES)と判定し続けたかどうかを判定する処理である。
【0093】
判定部121は、連続して20回にわたって凍結している(S10:YES)と判定していない(S14:NO)と判定すると、フローをステップS12に進行させる。
【0094】
判定部121は、ステップS14において、連続して20回にわたって凍結している(S10:YES)と判定した(S14:YES)と判定すると、タンク20内のウォッシャー液20Aが凍結したと判定し、通知部122に、ステップS6で求めた高さHの移動平均値と、凍結が生じたことを表すデータ(凍結情報)とを車両システム10のECU11に通知させる(ステップS15)。以上で一連の処理が終了する。
【0095】
以上のように、判定部121は、式(1)でウォッシャー液20Aの重心の高さに基づいてウォッシャー液20Aの表面の高さHを求める。また、判定部121は、式(2)に基づいて、検出した表面の高さと、ウォッシャー液20Aの凍結状態における比誘電率と、静電センサ110の容量値とに基づいて、ウォッシャー液20Aが凍結しているかどうかを判定する。
【0096】
したがって、凝固可能な液状の物体(ウォッシャー液20A)の容器(タンク20)内における量と状態とを判定可能な物体量検出装置100を提供することができる。
【0097】
また、電極S0~S3は、タンク20の側面に対して配置される表面の形状が四角形を対角線で分割して得る三角形の部分を有する電極対を有する板状電極であるので、ウォッシャー液20Aの表面がどのような高さにあっても、常に電極S0~S3のうちの上下方向において隣り合う2つ(電極対)が表面と重なることになる。このため、仮に表面が電極に重ならない範囲があると検出値が殆ど変わらない部分が生じてしまうが、常に表面が電極と重なるようにしているので、水位の検出値に無変化部分が生じず、水位の減少に伴って水位の検出値を減少させることが可能となり水位を精度よく測定できる。
【0098】
また、判定部121は、複数の電極S0~S3の容量値の加重平均に基づいてウォッシャー液20Aの表面を検出するとともに、検出したウォッシャー液20Aの表面の高さHと、静電センサ110の容量値と、ウォッシャー液20Aの液体状態又は固体状態における比誘電率に基づく係数Cとに基づいてウォッシャー液20Aの状態を判定する。複数の電極の容量値と高さの加重平均によって表面位置を判定しているので、固体と液体など誘電率が異なっていたとしても表面の高さを測定できる。また、求めた高さと静電容量の値から誘電率が特定でき、水の比誘電率(80.4)と氷の比誘電率(4.2)は大きく異なるため、比誘電率の差を利用して、ウォッシャー液20Aの状態を高精度に検出することができる。
【0099】
また、電極S0~S3は、電極対を複数有し、複数の電極対は、上下方向に配置されるため、上下方向のある程度広い範囲にわたってウォッシャー液20Aの表面の高さが連続的に変化しても、高さHとウォッシャー液20Aの状態を求めることができる。
【0100】
また、静電センサの下端に対応するウォッシャー液の容量値を減じて、表面高さを算出した。このため、ウォッシャー液20Aの量が少ない場合であっても高精度にウォッシャー液20Aの表面の高さHを検出することができる。
【0101】
また、電極S0~S3をタンク20に向けて配置し、シールド電極を介して反対側に参照電極SRを設け、電極S0~S3の容量値から参照電極SRの容量値を減じゼロ補正して、表面高さを算出した。このため、高精度にウォッシャー液20Aの表面の高さHを検出することができる。
【0102】
また、判定部121は、時間経過とともに複数回にわたってウォッシャー液20Aの表面の高さHを検出し、複数回にわたって検出した高さHの平均値をウォッシャー液20Aの表面の高さHとするので、容量値に含まれ得るノイズ等の影響を抑制して、高精度に高さHを検出することができる。
【0103】
また、判定部121によってウォッシャー液20Aの状態が凍結状態であると判定されると、凍結状態であることを表す凍結情報を車両システム10のECU11に通知する通知部122を含むので、車両システム10のECU11にウォッシャー液20Aを利用可能かどうかを通知することができる。特に、ADASのような車両システム10を搭載する自律走行車又は自動運転機能付きの車両に搭載されるカメラや光学式センサ等に付着した泥、埃、虫等をウォッシャー液20Aで洗浄する場合には、ウォッシャー液20Aが凍結すると洗浄できない状態になるため、車両の安全な運行に貢献可能な物体量検出装置100を提供することができる。
【0104】
また、本実施例において表面位置の測定の処理のスタートは、所定の時間間隔で行うが、ウォッシャー液を噴射させるポンプが稼働した直後に行うようにしても良い。或いは、長周期で測定しウォッシャー液を噴射させるポンプが稼働すると短周期で行うようにしても良い。このようにした場合は、表面が変化するタイミングで測定を行うので、精度よく測定でき、また消費電力を抑えることができる。
【0105】
また、車両を一時的に停止させアイドリングを停止させた際に、水位の測定の周期を少なくする或いは行わないようにしても良い。このようにした場合は、発電量が少ない時に消費電力を低減できる。
【0106】
また、センサで測定するノイズの量が少ない場合に、車両の停止と判断して水位の測定の周期を少なくする或いは行わないようにしても良い。
【0107】
なお、車両が走行している際には、水平面に対して車両が傾斜する場合があり、このような場合にはタンク20も傾斜し、ウォッシャー液20Aの表面が静電センサ110に対して傾斜することがある。このような傾斜による容量値の変化を電極SS1、SS2を用いて補正してもよい。
【0108】
図8は、傾斜による容量値の変化を補正する方法を説明する図である。図8には、タンク20が傾斜し、電極SS1及びSS2がウォッシャー液20Aに浸かる部分の位置が異なっている状態を示す。電極SS1、SS2は、傾斜検出用電極の一例である。
【0109】
この場合に、タンク20の傾斜による勾配D(%)は次式(4)で求めることができる。
【0110】
【数4】
【0111】
このような勾配Dを用いて、電極S0~S3の容量値を補正し、補正後の容量値に基づいてウォッシャー液20Aの表面の高さHを求めてもよい。また、さらに、補正後の容量値に基づいてウォッシャー液20Aの表面の高さHを用いて、ウォッシャー液20Aの状態を判定してもよい。
【0112】
具体的には、式(4)に基づいて勾配Dを求め、電極SS1、SS2の間に位置する電極S0~S3のどの区間にウォッシャー液20Aの表面があるかを勾配Dに基づいて補正し、補正後の容量値に基づいてウォッシャー液20Aの表面の高さHを求めればよい。そして、補正後の容量値に基づいてウォッシャー液20Aの表面の高さHを用いて、ウォッシャー液20Aの状態を判定すればよい。
【0113】
なお、前述の説明においては、複数の電極を上下方向に配置し、上下方向のある程度広い範囲にわたってウォッシャー液20Aの表面の高さを連続的にもとめたが、例えば、10mm間隔毎に検出電極が設け、10mm毎の高さ、すなわち間欠的な高さを求めるようにしても良い。
【0114】
以上、本発明の例示的な実施形態の物体量検出装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0115】
なお、本国際出願は、2022年2月25日に出願した日本国特許出願2022-028511に基づく優先権を主張するものであり、その全内容は本国際出願にここでの参照により援用されるものとする。
【符号の説明】
【0116】
10 車両システム
20 タンク
20A ウォッシャー液
100 物体量検出装置
110 静電センサ
S0、S1、S2、S3、SS1、SS2 電極
120 ICチップ
120B MCU
121 判定部
122 通知部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8