(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】窒化ガリウムパワートランジスタ
(51)【国際特許分類】
H10D 30/87 20250101AFI20250109BHJP
H10D 30/83 20250101ALI20250109BHJP
H10D 30/47 20250101ALI20250109BHJP
【FI】
H01L29/80 B
H01L29/80 C
H01L29/80 H
(21)【出願番号】P 2023535810
(86)(22)【出願日】2020-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2020087350
(87)【国際公開番号】W WO2022128140
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】キュラトーラ,ジルベルト
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-017071(JP,A)
【文献】特開2020-088344(JP,A)
【文献】特開2014-212317(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0235218(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0380091(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106298907(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0001612(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0176595(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0306181(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0124273(KR,A)
【文献】特開2011-066464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/337
H01L 21/338
H01L 29/778
H01L 29/808
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ガリウム(GaN)パワートランジスタであって、
バッファ層と、
前記バッファ層上に堆積されたバリア層であり、当該バリア層上にゲート領域が形成されるバリア層と、
前記ゲート領域において前記バリア層上に堆積されたp型ドープ窒化ガリウム(GaN)層と、
前記p型ドープGaN層の上に堆積されたメタルゲート層であり、前記p型ドープGaN層と接触してショットキー障壁を形成しているメタルゲート層と、
を有し、
前記p型ドープGaN層の厚さ、前記メタルゲート層のメタルタイプ、及び前記p型ドープGaN層のp型ドーピング濃度が、p型ドーピング濃度及びゲートメタルタイプに対するpGaNショットキーゲート空乏領域厚さの既知の関係に基づいて
おり、
前記p型ドープGaN層の前記厚さは65ナノメートルより小さく、
前記メタルゲート層は、以下のメタル:Al、Ti、TiN、Au、Pd、Ni、Wのうちの1つ、又は積層してのこれらの任意の組み合わせからなり、
前記p型ドープGaN層の前記p型ドーピング濃度は、1e18cm
-3
-1e19cm
-3
の範囲内であり、且つ
前記p型ドープGaN層は、当該GaNパワートランジスタの動作時に完全に空乏化される、
GaNパワートランジスタ。
【請求項2】
前記p型ドーピング濃度及び前記ゲートメタルタイプに対する前記pGaNショットキーゲート空乏領域厚さの前記既知の関係は、当該GaNパワートランジスタの安定した動作を可能にする所定のデータセットに基づく、
請求項
1に記載のGaNパワートランジスタ。
【請求項3】
前記所定のデータセットは、静的性能、動的性能、及びゲート信頼性に関する当該GaNパワートランジスタの最適動作を可能にする、
請求項
2に記載のGaNパワートランジスタ。
【請求項4】
当該GaNパワートランジスタは、ノーマリオフ動作を可能にするように構成されている、
請求項1乃至
3のいずれか一項に記載のGaNパワートランジスタ。
【請求項5】
前記p型ドープGaN層及び前記メタルゲート層は、前記バリア層の前記ゲート領域内のみにリソグラフィ定義されている、
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載のGaNパワートランジスタ。
【請求項6】
前記バッファ層はGaN層又は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層を有する、
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のGaNパワートランジスタ。
【請求項7】
前記バリア層はAlGaN層を有する、
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載のGaNパワートランジスタ。
【請求項8】
前記バッファ層は、シリコン基板上に形成された少なくとも1つの遷移層上に形成されている、
請求項1乃至
7のいずれか一項に記載のGaNパワートランジスタ。
【請求項9】
窒化ガリウム(GaN)パワートランジスタのメタル-半導体接合であって、当該メタル-半導体接合は、
p型ドープGaN層と、
前記p型ドープGaN層の上に堆積されたメタルゲート層と、
を有し、
前記メタルゲート層が前記p型ドープGaN層と接触してショットキー障壁を形成しており、
前記p型ドープGaN層のp型ドーピング濃度が、1e18cm
-3-1e19cm
-3の範囲内であ
り、
前記p型ドープGaN層の厚さは65ナノメートルより小さく、
前記メタルゲート層は、以下のメタル:Al、Ti、TiN、Au、Pd、Ni、Wのうちの1つ、又は積層してのこれらの任意の組み合わせからなり、且つ
前記p型ドープGaN層は、前記GaNパワートランジスタの動作時に完全に空乏化される、
メタル-半導体接合。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パワーデバイス応用での窒化ガリウム(GaN)技術の分野に関する。特に、本開示は、GaNパワートランジスタに関し、特には、安定したpGaNショットキー動作を有するGaNパワー電界効果トランジスタ(FET)及びそのようなGaNパワートランジスタのメタル-半導体接合に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からのSi系電界効果トランジスタの可能な置き換えとしての窒化ガリウム技術の開発のために、半導体産業において過去15~20年間に集中的な努力が払われてきた。ワイドバンドギャップ材料の使用は、デバイスレベル及びシステムレベルの両方において、前例のない性能向上の可能性を提供する。今日、エンハンスメントモードGaNパワーFETが現実になりつつあり、幾つかの主要な半導体製造業者が既に市場に製品を有している。大多数のプレーヤによって利用されている最も成熟したGaNデバイスコンセプトは、pGaNノーマリオフコンセプトである。ノーマリオフpGaNパワーFETの製造のために、現在、2つの一般的なアプローチに従っている。主な違いは、メタル/pGaN界面の製造戦略にある。それら2つの取り得るアプローチは、i)オーミック界面と、ii)ショットキー界面である。ショットキーアプローチでは、DCゲート電流の大幅な低減を達成することができるが、その犠牲に、閾値電圧の不安定性及び乏しいゲート信頼性という2つの主な欠点がある。
【発明の概要】
【0003】
この開示の目的は、閾値電圧の不安定性及び乏しいゲート信頼性という上述の欠点のないGaNパワートランジスタ、又は少なくとも閾値電圧の不安定性及び乏しいゲート信頼性の問題が有意に低減されたGaNパワートランジスタのためのソリューションを提供することである。
【0004】
この目的は、独立請求項の特徴によって達成される。更なる実装形態が、従属請求項、明細書、及び図面から明らかになる。
【0005】
本開示の実施形態は、GaNパワートランジスタのpゲートのショットキーゲートモジュールに関する指針最適化の特定のセットを提供する。
【0006】
特に、pGaNゲートモジュールの異なる寸法とドーピング濃度との間の正確な関係のセットがこの開示において提供されることになり、それは、全体的な性能を最適化し、最先端のpGaNショットキーゲートの主要な問題、すなわち、閾値電圧の不安定性及びゲート信頼性を解決することを可能にする。
【0007】
この開示では、特定のp型ドーピング濃度との関係でpGaNゲートジオメトリを適切に寸法決めすることによって達成されことができる完全空乏型pGaNショットキーゲートソリューションが提示され、例えば、マグネシウムドーピングによって達成されるが、他のドーピングも同様に使用することができる。
【0008】
異なるパラメータを用いた試験中に見出されたことには、pGaNショットキーゲートモジュールのための好適な指針最適化戦略は以下のように要約することができる:
(1)pGaN厚さ<65nm
(2)p型ドーピング濃度:[1e18cm-3-1e19cm-3]
(3)メタルゲートのメタルタイプ:Al、Ti、TiN、Au、Pd、Ni、W、又は積層してのこれらの任意の組み合わせ。
【0009】
本開示は、エンハンスメントモードGaN系パワートランジスタに適した新しいpGaNショットキーゲートモジュールコンセプトを提示し、これは、以下の利点を持つことを可能にする:ノーマリオフ動作;安定した閾値電圧と、従来のpGaNショットキーゲートアプローチを特徴付ける動的不安定性の抑制;並びにメタル/pGaN界面における及びpGaNバルク内のピーク電界の大幅な低減による改善されたゲート信頼性。
【0010】
本発明を詳細に説明するために、以下の用語、略語、及び表記を使用する。
【0011】
GaN 窒化ガリウム
FET 電界効果トランジスタ
pGaN pドープGaN
AlGaN 窒化アルミニウムガリウム
2DEG 2次元電子ガス
HV 高電圧(動作)、例えば>600V
MV 中電圧(動作)、例えば200-600V
VTH 閾値電圧
TDDB 時間依存絶縁破壊。
【0012】
この開示では、メタル/pGaN界面を製造する際の2つのアプローチであるオーミック界面アプローチ及びショットキー界面アプローチを説明する。
【0013】
オーミック界面アプローチでは、メタルゲートとpGaN表面との間の界面がほぼ理想的である。これは、オン状態条件中にデバイス動作を維持する大きいDC電流につながるが、駆動戦略を複雑にし、駆動損失を大幅に増加させもする。
【0014】
オーミック界面アプローチは、以下の利点を提供する:(i)pGaNノードがゲートメタル端子にきちんと接続され、それ故に、デバイスがVTH不安定になりにくい;(ii)信頼性が良好であり、ゲート破壊は、大きいDC電流がゲートを流れるときの熱暴走に起因する;(iii)ゲートから注入される大量の正孔が動的効果を改善する。
【0015】
しかしながら、オーミック界面アプローチによって以下の欠点がもたらされる:(i)バッファに注入される大量の正孔が負のオフ段階ゲート電圧を必要とする;(ii)正孔蓄積がテール電流を引き起こし得る;(iii)電流駆動ゲートドライバ、外部R-Cネットワークという、専用の駆動方式が必要である;(iv)大きいDCゲート電流が駆動損失をもたらし、コンセプトのスケーラビリティを高電圧(400-600V)及び大きいRDSON(>30mOhm)に制限する。
【0016】
ショットキー界面アプローチでは、pn-pGaN/AlGaNダイオードと直列に、逆バイアスされるショットキーダイオードが挿入される。これは、大幅なDCゲート電流減少を可能にする。
【0017】
ショットキー界面アプローチは、以下の利点を提供する:(i)逆バイアスされるショットキーダイオードによってpGaNノードがゲート端子から分離される;(ii)VTH不安定性を犠牲にして、低いDCゲート電流が得られる;(iii)低いDC電流が、バッファに注入される正孔の量がより少ないことに起因した、より困難な動的効果最適化を暗示する;(iv)(Si-MOSデバイスにおける酸化物のように)TDDBメカニズムを介してゲートモジュールが破壊する;(v)動的効果、ゲート信頼性、及びVTH安定性の間の難しい相互作用。
【0018】
しかしながら、ショットキー界面アプローチによって以下の欠点がもたらされる:(i)当該アプローチは、最良のFOM(性能指数)(低いCGS及びCGD)をもたらすセルフアラインゲートコンセプトを可能にする;(ii)基本的にDCゲート電流がない;(iii)当該アプローチは、電圧駆動アプローチ、外部RCネットワークなし、のような標準的な駆動方式を許容する;(iv)HV及びMVの両方の動作で当該コンセプトを使用することができる;(v)当該コンセプトは、非常に低いRDSONへのデバイススケーリングを可能にする。
【0019】
この開示は、上述の欠点を克服するために、ショットキー界面アプローチに関する最適化された指針を提供することに焦点を置く。
【0020】
第1の態様によれば、本開示は、窒化ガリウム(GaN)パワートランジスタに関し、当該GaNパワートランジスタは、バッファ層と、該バッファ層上に堆積されたバリア層であり、当該バリア層上にゲート領域が形成されるバリア層と、ゲート領域においてバリア層上に堆積されたp型ドープ窒化ガリウム(GaN)層と、該p型ドープGaN層の上に堆積されたメタルゲート層であり、p型ドープGaN層と接触してショットキー障壁を形成しているメタルゲート層と、を有し、p型ドープGaN層の厚さ、メタルゲート層のメタルタイプ、及びp型ドープGaN層のp型ドーピング濃度が、p型ドーピング濃度及びゲートメタルタイプに対するpGaNショットキーゲート空乏領域厚さの既知の関係に基づいている。
【0021】
このようなGaNパワートランジスタは、エンハンスメントモードGaN系パワートランジスタに適した新しいpGaNショットキーゲートモジュールコンセプトを提供し、これは、以下の利点を持つことを可能にする:ノーマリオフ動作;安定した閾値電圧と、従来のpGaNショットキーゲートアプローチを特徴付ける動的不安定性の抑制;並びにメタル/pGaN界面における及びpGaNバルク内のピーク電界の大幅な低減による改善されたゲート信頼性。
【0022】
当該GaNパワートランジスタの例示的な一実装において、p型ドープGaN層の厚さは65ナノメートルより小さい。
【0023】
これは以下の利点を提供する:p型ドープGaN層の厚さは、ゲート領域を画成するためのエッチングプロセスの選択性に影響を及ぼす。p型ドープGaNの薄い層は、より良好な、リソグラフィによるゲート領域の画成をもたらす。更なる利点は、pGaN層を最小化することがデバイス相互コンダクタンス(gm)の上昇をもたらすことである。さらに、デバイス閾値電圧は、pGaN厚さの増加とともに上昇する。従って、65ナノメートルよりも小さいp型ドープGaN層の厚さは、トランジスタの安定した閾値電圧をもたらす。
【0024】
当該GaNパワートランジスタの例示的な一実装において、メタルゲート層は、以下のメタル:Al、Ti、TiN、Au、Pd、Ni、Wのうちの1つ、又は積層してのこれらの任意の組み合わせからなる。
【0025】
これは、例えば導電性、電流容量、堅牢性、耐久性、耐酸性、電気特性などといった、これらのメタルの異なる特性を有利に利用することができるという利点を提供する。
【0026】
当該GaNパワートランジスタの例示的な一実装において、p型ドープGaN層のp型ドーピング濃度は、1e18cm-3-1e19cm-3の範囲内である。
【0027】
p型ドープGaN層のp型ドーピング濃度がこのような範囲内にある場合、メタル層からpGaN層への正孔注入のトンネリングイベントが強く減衰される。このような範囲内のp型ドーピング濃度を用いることは、ゲート電極への正電圧の印加の下で、静的ゲート電流の大幅な低減を可能にする。
【0028】
当該GaNパワートランジスタの例示的な一実装において、p型ドープGaN層は、当該GaNパワートランジスタの動作時に完全に空乏化される。
【0029】
p型ドープGaN層が完全に空乏化される場合、当該トランジスタは、高いゲート信頼性で、閾値電圧不安定性を示すことなく、最適化された性能で動作することができる。
【0030】
当該GaNパワートランジスタの例示的な一実装において、p型ドーピング濃度及びゲートメタルタイプに対するpGaNショットキーゲート空乏領域厚さの既知の関係は、当該GaNパワートランジスタの安定した動作を可能にする所定のデータセットに基づく。
【0031】
例えば
図4で説明されるような、そのような所定のデータセットを使用することによって、当該GaNパワートランジスタの全体的な性能を最適化することができる。
【0032】
当該GaNパワートランジスタの例示的な一実装において、所定のデータセットは、静的性能、動的性能、及びゲート信頼性に関する当該GaNパワートランジスタの最適な(又は改善された)動作を可能にする。
【0033】
このようなGaNパワートランジスタは、メタル/pGaN界面におけるピーク電界の大幅な低減のおかげで、安定した閾値電圧、動的不安定性の抑制、及び改善されたゲート信頼性を伴って、ノーマリオフ動作における最適な(又は改善された)動作を可能にする。
【0034】
当該GaNパワートランジスタの例示的な一実装において、当該GaNパワートランジスタは、ノーマリオフ動作を可能にするように構成される。
【0035】
これは、例えばパワーエレクトロニクスシステムにおいて、ノーマリオフトランジスタが安全な動作を保証することができるという利点を提供する。
【0036】
当該GaNパワートランジスタの例示的な一実装において、p型ドープGaN層及びメタルゲート層は、バリア層のゲート領域内のみにリソグラフィ定義される。
【0037】
これは、製造プロセスを正確に実施することができ、高いゲート信頼性を有するGaNパワートランジスタの製造を可能にするという利点を提供する。
【0038】
当該GaNパワートランジスタの例示的な一実装において、バッファ層はGaN層又は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層を有する。
【0039】
GaN又はAlGaNを有するバッファ層は、トランジスタの電子移動度を改善する。該バッファ層は更に、トランジスタ内の逆方向リーク電流を低減させ、トランジスタのオンオフ比を改善する。
【0040】
当該GaNパワートランジスタの例示的な一実装において、バリア層はAlGaN層を有する。
【0041】
このようなバリア層を有するトランジスタは、改善されたRF特性及びDC性能を示す。
【0042】
当該GaNパワートランジスタの例示的な一実装において、バッファ層は、シリコン基板上に形成された少なくとも1つの遷移層上に形成されている。
【0043】
このようなパワートランジスタは、改善されたゲートリーク電流減少を提供する。
【0044】
第2の態様によれば、本開示は、窒化ガリウム(GaN)パワートランジスタのメタル-半導体接合であって、当該メタル-半導体接合は、p型ドープGaN層と、該p型ドープGaN層の上に堆積されたメタルゲート層と、を有し、メタルゲート層がp型ドープGaN層と接触してショットキー障壁を形成しており、p型ドープGaN層のp型ドーピング濃度が、1e18cm-3-1e19cm-3の範囲内である。
【0045】
このようなGaNパワートランジスタのメタル-半導体接合は、以下の利点を提供する:ノーマリオフ動作;安定した閾値電圧と、従来のpGaNショットキーゲートアプローチを特徴付ける動的不安定性の抑制;並びにメタル/pGaN界面における及びpGaNバルク内のピーク電界の大幅な低減による改善されたゲート信頼性。
【0046】
p型ドープGaN層のp型ドーピング濃度が上の範囲内にある場合、メタル層からpGaN層への正孔注入のトンネリングイベントが強く減衰される。このような範囲内のp型ドーピング濃度を用いることは、ゲート電極への正電圧の印加の下で、静的ゲート電流の大幅な低減を可能にする。
【0047】
当該メタル-半導体接合の例示的な一実装において、p型ドープGaN層の厚さは65ナノメートルより小さい。
【0048】
これは以下の利点を提供する:p型ドープGaN層の厚さは、ゲート領域を画成するためのエッチングプロセスの選択性に影響を及ぼす。p型ドープGaNの薄い層は、より良好な、リソグラフィによるゲート領域の画成をもたらす。更なる利点は、pGaN層を最小化することがデバイス相互コンダクタンス(gm)の上昇をもたらすことである。さらに、デバイス閾値電圧は、pGaN厚さの増加とともに上昇する。従って、65ナノメートルよりも小さいp型ドープGaN層の厚さは、トランジスタの安定した閾値電圧をもたらす。
【0049】
当該メタル-半導体接合の例示的な一実装において、メタルゲート層は、以下のメタル:Al、Ti、TiN、Au、Pd、Ni、Wのうちの1つ、又は積層してのこれらの任意の組み合わせからなる。
【0050】
これは、例えば導電性、電流容量、堅牢性、耐久性、耐酸性、電気特性などといった、これらのメタルの異なる特性を有利に利用することができるという利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
本発明の更なる実施形態が、以下の図に関して説明される。
【
図1】第1の例に従ったショットキー障壁を有するGaNパワートランジスタ100の設計を示している。
【
図2】第2の例に従ったショットキー障壁を有するGaNパワートランジスタ200の設計を示している。
【
図3】本開示に従ったショットキー障壁を有するGaNパワートランジスタのゲートモジュールの等価回路設計300を示している。
【
図4】ドーピング濃度に対する空乏領域に関して、ショットキー界面についての本開示に従った設計指針400の一例を示している。
【
図5】ストレス時間の関数としてのpGaNショットキーゲートの閾値電圧安定性の例示的な性能シミュレーション500を示している。
【
図6】一例に従ったGaNパワートランジスタのメタル-半導体接合600の設計を示している。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下の詳細な説明では、詳細な説明の一部を形成するものである添付の図面を参照し、図面には、本開示が実施され得る特定の態様が例示として示される。理解されることには、本開示の範囲から逸脱することなく、他の態様が使用されてもよく、また、構造的又は論理的な変更が為され得る。従って、以下の詳細な説明は限定的な意味で解釈されるべきではなく、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。
【0053】
理解されることには、説明される方法に関連して為される解説は、その方法を実行するように構成された対応するデバイス又はシステムにも当てはまり、その逆もまた然りであるとし得る。例えば、特定の方法ステップが説明される場合、対応するデバイスは、説明された方法ステップを実行するためのユニットを、例えそのようなユニットが明示的に説明されたり図示されたりしていなくても含み得る。また、理解されることには、ここで説明される様々な例示的な態様の特徴は、特に別段の断りがない限り互いに組み合わされ得る。
【0054】
ここで説明される半導体デバイス及びシステムは、無線通信スキーム、特に5Gに従った通信スキームにて実装され得る。説明される半導体デバイスは、集積回路及び/又はパワー半導体を生産するために使用されることができ、また、様々な技術に従って製造されることができる。例えば、これらの半導体デバイスは、ロジック集積回路、アナログ集積回路、ミックスドシグナル(mixed signal)集積回路、光回路、メモリ回路、及び/又は集積受動部品において利用され得る。
【0055】
この開示にて説明されるショットキー障壁は、メタル-半導体接合位置に形成される電子に対するポテンシャルエネルギー障壁である。ショットキー障壁は、ダイオードとしての使用に適した整流特性を持つ。ショットキー障壁の主要な特性の1つはショットキー障壁高さである。ショットキー障壁高さは、メタルと半導体との組み合わせに依存する。全てのメタル-半導体接合が整流性のショットキー障壁を形成するわけではなく、恐らくはそのショットキー障壁が低すぎるために、整流を行わずに双方向に電流を伝えるメタル-半導体接合はオーミックコンタクトと呼ばれる。
【0056】
図1は、第1の例に従ったショットキー障壁を有するGaNパワートランジスタ100の設計を示している。
【0057】
GaNパワートランジスタ100は、バッファ層110と、バッファ層110上に堆積されたバリア層111であり、当該バリア層111上にゲート領域112が形成されるバリア層と、ゲート領域112においてバリア層111上に堆積されたp型ドープGaN層113と、p型ドープGaN層113の上に堆積されたメタルゲート層114であり、p型ドープGaN層113と接触してショットキー障壁115を形成しているメタルゲート層と、を有している。p型ドープGaN層113の厚さ、メタルゲート層114のメタルタイプ、及びp型ドープGaN層113のp型ドーピング濃度が、例えば
図4に示すような関係400といった、p型ドーピング濃度402及びゲートメタルタイプに対するpGaNショットキーゲート空乏領域厚さ401の既知の関係に基づく。
【0058】
バリア層111に対して横方向にソース(S)メタル層120及びドレイン(D)メタル層121が形成され得る。ソースメタル層120及びドレインメタル層121は、バリア層111によってpGaN層113及びメタルゲート層114から離隔され得る。ソースメタル層120及びドレインメタル層121は、バリア層111と同じ高さまで、従って、メタルゲート層114より低いレベルまで延在し得る。
【0059】
バッファ層110はGaN層又は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層を有し得る。バリア層111はAlGaN層を有し得る。
【0060】
トランジスタ100の一例において、p型ドープGaN層113の厚さは65ナノメートルより小さいとし得る。
【0061】
トランジスタ100の一例において、メタルゲート層114は、以下のメタル:Al、Ti、TiN、Au、Pd、Ni、Wのうちの1つ、又は積層してのこれらの任意の組み合わせからなり得る。
【0062】
トランジスタ100の一例において、p型ドープGaN層113のp型ドーピング濃度は、1e18cm-3-1e19cm-3の範囲内とし得る。
【0063】
トランジスタ100の一例において、p型ドープGaN層113は、GaNパワートランジスタ100の動作時に完全に空乏化され得る。
【0064】
トランジスタ100の一例において、p型ドーピング濃度402及びゲートメタルタイプに対するpGaNショットキーゲート空乏領域厚さ401の既知の関係(例えば、
図4に示される関係400)は、GaNパワートランジスタ100の安定した動作を可能にする所定のデータセットに基づき得る。
【0065】
トランジスタ100の一例において、所定のデータセットは、静的性能、動的性能、及びゲート信頼性に関するGaNパワートランジスタ100の最適な(又は改善された)動作を可能にする。
【0066】
異なるパラメータを用いた試験中に見出されたことには、pGaNショットキーゲートモジュールのための好適なデータセットは以下のように要約することができる:
(1)pGaN厚さ<65nm
(2)p型ドーピング濃度:[1e18cm-3-1e19cm-3]
(3)メタルゲートのメタルタイプ:Al、Ti、TiN、Au、Pd、Ni、W、又は積層してのこれらの任意の組み合わせ。
【0067】
トランジスタ100の一例において、トランジスタ100は、ノーマリオフ動作を可能にするように構成され得る。
【0068】
トランジスタ100の一例において、p型ドープGaN層113及びメタルゲート層114は、バリア層111のゲート領域内のみにリソグラフィ定義され得る。
【0069】
トランジスタ100の一例において、バッファ層110は、シリコン基板(例えば、
図2の例に示されるような基板201)上に形成された少なくとも1つの遷移層(例えば、
図2の例に示されるような層202、203)上に形成され得る。
【0070】
図2は、第2の例に従ったショットキー障壁を有するGaNパワートランジスタ200の設計を示している。
【0071】
GaNパワートランジスタ200は、
図1に関して上述したトランジスタ100と同様に設計され得る。
【0072】
GaNパワートランジスタ200は、バッファ層110と、バッファ層110上に堆積されたバリア層111であり、当該バリア層111上にゲート領域112が形成されるバリア層と、ゲート領域112においてバリア層111上に堆積されたp型ドープGaN層113と、p型ドープGaN層113の上に堆積されたメタルゲート層114であり、p型ドープGaN層113と接触してショットキー障壁115を形成しているメタルゲート層と、を有している。バッファ層110は、核形成層202上に形成された遷移層203上に形成されている。核形成層202は、シリコン基板201上に形成されている。
【0073】
p型ドープGaN層113の厚さ、メタルゲート層114のメタルタイプ、及びp型ドープGaN層113のp型ドーピング濃度が、例えば
図4に示すような関係400といった、p型ドーピング濃度402及びゲートメタルタイプに対するpGaNショットキーゲート空乏領域厚さ401の既知の関係に基づく。
【0074】
バリア層111に対して横方向にソース(S)メタル層120及びドレイン(D)メタル層121が形成され得る。ソースメタル層120及びドレインメタル層121は、パッシベーション層204によってpGaN層113及びメタルゲート層114から離隔され得る。ソースメタル層120及びドレインメタル層121は、メタルゲート層114と同じ高さまで延在し得る。代わりに、ソースメタル層120及びドレインメタル層121は、例えば
図1に示した設計に従って、メタルゲート層114よりも低いレベルまで延在してもよい。
【0075】
バッファ層110はGaN層又は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層を有し得る。バリア層111はAlGaN層を有し得る。
【0076】
トランジスタ200の一例において、p型ドープGaN層113の厚さは65ナノメートルより小さいとし得る。
【0077】
トランジスタ200の一例において、メタルゲート層114は、以下のメタル:Al、Ti、TiN、Au、Pd、Ni、Wのうちの1つ、又は積層してのこれらの任意の組み合わせからなり得る。
【0078】
トランジスタ200の一例において、p型ドープGaN層113のp型ドーピング濃度は、1e18cm-3-1e19cm-3の範囲内とし得る。
【0079】
トランジスタ100の一例において、p型ドープGaN層113は、GaNパワートランジスタ200の動作時に完全に空乏化され得る。
【0080】
トランジスタ200の一例において、p型ドーピング濃度402及びゲートメタルタイプに対するpGaNショットキーゲート空乏領域厚さ401の既知の関係(例えば、
図4に示される関係400)は、GaNパワートランジスタ200の安定した動作を可能にする所定のデータセットに基づき得る。
【0081】
トランジスタ200の一例において、所定のデータセットは、静的性能、動的性能、及びゲート信頼性に関するGaNパワートランジスタ200の最適な(又は改善された)動作を可能にする。
【0082】
異なるパラメータを用いた試験中に見出されたことには、pGaNショットキーゲートモジュールのための好適なデータセットは以下のように要約することができる:
(1)pGaN厚さ<65nm
(2)p型ドーピング濃度:[1e18cm-3-1e19cm-3]
(3)メタルゲートのメタルタイプ:Al、Ti、TiN、Au、Pd、Ni、W、又は積層してのこれらの任意の組み合わせ。
【0083】
トランジスタ200の一例において、トランジスタ200は、ノーマリオフ動作を可能にするように構成され得る。
【0084】
トランジスタ200の一例において、p型ドープGaN層113及びメタルゲート層114は、バリア層111のゲート領域内のみにリソグラフィ定義され得る。
【0085】
図3は、本開示に従ったショットキー障壁を有するGaNパワートランジスタのゲートモジュールの等価回路設計300を示している。
【0086】
図3に示すようなショットキーアプローチでは、駆動スキーム300bに示すように、pn-pGaN/AlGaNダイオード301と直列に、逆バイアスされるショットキーダイオード302が挿入される。これは、
図3の例に示されるように、大幅なDCゲート電流減少を可能にする。それに並列接続されたキャパシタンスC
Wを有する逆バイアスショットキーダイオード302と、それに並列接続されたキャパシタンスCpを有するpn-pGaN/AlGaNダイオード301との直列接続が、等価回路300aに示されている。
【0087】
ショットキーアプローチでは閾値電圧不安定性(正及び負)が観察され、それが、デバイスを、(負のVTHシフトの場合に)スプリアスターンオン効果をいっそう陥りやすいものにしたり、(正のVTHシフトの場合に)デバイスのオン状態抵抗を劣化させたりしてしまい得る。例えば、正のストレス電圧がゲート電極に印加される場合、pGaNショットキーゲートに関して閾値電圧の動的挙動が観察され得る。
【0088】
ショットキーアプローチでは、弱いゲート堅牢性も観察される。従来のSi系パワーデバイスにおけるゲート誘電体の破壊と同様に、時間依存絶縁破壊(TDDB)挙動が観察される。ゲート故障メカニズムを説明するために幾つかの理論が提案されており、1つの考え得る根本原因が、AlGaNバリアからpGaN層に注入された電子によって引き起こされる、逆バイアスショットキーダイオードの空乏領域内でのインパクトイオン化効果として特定されている。ゲート電極に正電圧を印加した下でのpGaN層内の電界分布を用いた試験が示していることには、最大の電界が位置するのはメタル/pGaN界面である。
【0089】
今日の殆どのショットキーゲートpGaNアプローチは、pGaN層における非常に高いドーピング(>5e19cm-3)に頼っている。pGaN層の典型的な厚さは、概して、80nmと250nmとの間である。p型ドーピング濃度は、従来のSIMSプロファイル測定を介して抽出され得る。
【0090】
正孔の空乏化及び蓄積(時間依存且つジオメトリ依存)が閾値電圧の不安定性を引き起こすことが例証されている。また、pGaN層に使用される非常に高いドーピング濃度は、メタル/pGaN界面に非常に狭い空乏領域を誘起する。このアプローチの主な欠点は、狭い空乏領域内の電界が非常に高い値(約5-10MV/cm)に達し、全体的なゲート信頼性を強く損ねることである。空乏領域内の高い電界は、2DEGからpGaN層に注入される電子の強い加速を引き起こすと考えられる。これらの加速された電子は、インパクトイオン化効果及び多数の高エネルギーキャリアの存在を介してキャリア増倍を促進させてしまうことができ、メタル/pGaN界面にダメージ(パーコレーション経路)を生じさせ、最終的に、全体的なゲート信頼性を損ねると考えられる。
【0091】
pGaNゲートモジュールのゲート信頼性を改善するため、及びpGaNショットキーゲートの閾値電圧不安定性を軽減するために、幾つかの試みが過去数年に調べられてきた。例えば、静的DCゲート電流と全体的なゲート信頼性との間の直接的な相関が観察されている。静的ゲート電流の減少は、残念ながら、メタルゲート電極によって補充されることなく、AlGaNバリアに注入されることが可能な及び/又は2DEGからpGaN層に注入された電子と再結合することが可能なpGaN層内の大量の浮遊正孔の存在に起因して、より高い閾値電圧不安定性につながる。
【0092】
上述の理由により、本開示は、大きい正及び負の閾値電圧不安定性と乏しいゲート信頼性とであるpGaNショットキーゲートモジュールの上述の欠点を、どのように克服するかというソリューションを提示する。
【0093】
本開示に従ったソリューションは、GaNパワートランジスタのpゲートのショットキーゲートモジュールに関する指針最適化の特定のセットを提供する。pGaNゲートモジュールの異なる寸法とドーピング濃度との間の正確な関係のセットがこの開示において提供され、それは、全体的な性能を最適化し、最先端のpGaNショットキーゲートの主要な問題、すなわち、閾値電圧の不安定性及びゲート信頼性を解決することを可能にする。特定のp型ドーピング濃度との関係でpGaNゲートジオメトリを適切に寸法決めすることによって、完全空乏型pGaNショットキーゲートソリューションを達成することができ、例えば、マグネシウムドーピングによって達成されるが、他のドーピングも同様に使用することができる。
【0094】
図1及び
図2に関して上述したように、pGaNショットキーゲートモジュールのためのそのような好適な指針最適化戦略は、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる:
(1)pGaN厚さ<65nm
(2)p型ドーピング濃度:[1e18cm
-3-1e19cm
-3]
(3)メタルゲートのメタルタイプ:Al、Ti、TiN、Au、Pd、Ni、W、又は積層してのこれらの任意の組み合わせ。
【0095】
図4は、ドーピング濃度に対する空乏領域に関して、ショットキー界面についての本開示に従った設計指針400の一例を示している。
【0096】
図4の例には、例えば
図1、
図2及び
図6に示される層114と113との間といった、メタル/pGaN界面における空乏領域の厚さが、ドーパント元素として使用される例えばMgについてのp型ドーピング濃度の関数として示されている。しかしながら、他のドーパント元素も同様に使用することができる。記号付きの太線410は、メタルゲート114のある特定のメタルタイプについて、pGaN層113に使用されるp型ドーピング濃度の関数として、メタルゲート114とその下のp型ドープGaN層113との間の界面に形成される空乏領域の広がりを画成している。
図4はまた、下のpGaN層113と共にショットキー界面115を作り出すのに使用されるメタルゲート114のメタルタイプに対する空乏領域の依存性を示す。
【0097】
図4はまた、1本の水平線B及び1本の垂直線Aも示している。これらの2本の線は、空乏領域線と共に、ショットキーpGaNゲートモジュールの安全動作領域の境界を表す。特に、線Aは、閾値p型ドーピング濃度を表し、閾値p型ドーピング濃度より下では、メタル層からpGaN層への正孔注入のトンネリングイベントが強く減衰される。p型ドーピング濃度をこの閾値未満に下げることはまた、ゲート電極に正電圧を印加した下で静的ゲート電流の大幅な減少を可能にする。
【0098】
一方、線Bは、pGaNショットキーゲートモジュールの最適化された動作を有するために提案されるpGaN層113の最大厚さを表す。この最大厚さは、以下の主要な3つの指針基準に従って選定される。
【0099】
1)pGaNエッチングプロセス最適化:メタルゲート114及びp型ドープ層113は、ゲート領域112内のみにリソグラフィ定義されなければければならない。メタルゲート114及びp型ドープ層113は、一般に、幾つかのマスキングステップと、それに続くエッチングステップとを受ける。エッチングは、pGaN/AlGaNバリア界面113、111で選択的に停止させるために注意深く制御されなければならない。このエッチング工程が適切に制御されない場合、結果としてデバイス性能の劣化を伴うAlGaNバリア111の望ましくないエッチングが起こり得る。p型GaNの厚さも、エッチングプロセスの選択性に影響を及ぼし得る。
【0100】
2)相互コンダクタンス最適化:pGaN層113は、デバイス相互コンダクタンス(gm)を上昇させるために最小化されなければならない。
【0101】
3)閾値電圧:デバイス閾値電圧は、pGaN厚さの増加とともに上昇する。
【0102】
この開示では、ゲートモジュール最適化のための以下の指針に基づき、pGaNショットキーゲートモジュールの最適な(又は改善された)動作を持つことを可能にするデバイス寸法及びドーピング濃度の以下の範囲が提示される。最適な(又は改善された)動作は、静的性能(閾値電圧、ゲート電流)、動的性能(動的な閾値電圧)に関して、及び最後に述べるが重要なことには、改善されたゲート信頼性に関して定義される。
【0103】
特に、
図4は、pGaN層113に使用されるp型ドーピング濃度の異なる値について、pGaNショットキーゲートのシミュレーションした性能を、ゲート電極に印加される電圧の関数として示す。以下に与えられる指針に従った、p型濃度の低減が、どのようにして、動的閾値電圧不安定性を抑制し、そして同時に、メタル/pGaN界面114、113におけるピーク電界の劇的な低減を達成するかを観察することができる。ピーク電界の低減は、全体的なゲートモジュール信頼性の直接的な改善につながる。実際、ショットキーpGaNゲート破壊の主な理由は、ショットキー空乏領域内の高い電界によって促進及び維持されるインパクトイオン化事象によって引き起こされると考えられる。
【0104】
空乏領域はメタルゲートのメタルタイプにも依存する。
【0105】
示されていることには、pGaN層113におけるp型濃度の漸進的な低減は、ゲートモジュールのジオメトリ最適化と共に、閾値電圧不安定性及びpGaN層内のピーク電界の低減の両方に関して顕著な利点をもたらすことができる。
【0106】
pGaNショットキーゲートモジュールのための好適な指針最適化戦略は以下のように要約することができる:
1. pGaN厚さ<65nm
2. p型ドーピング濃度:[1e18cm-3-1e19cm-3]
3. メタルゲートのメタルタイプ:Al、Ti、TiN、Au、Pd、Ni、W、又は積層してのこれらの任意の組み合わせ。
【0107】
図4は、これらの指針に従う例示的なデータセット403を示している。
【0108】
図5は、ストレス時間502の関数としてのpGaNショットキーゲートの閾値電圧安定性501の例示的な性能シミュレーション500を示している。
【0109】
第1のグラフ510は、この開示で説明される指針、すなわち、pGaN厚さ<65nm、[1e18cm-3-1e19cm-3]の間のp型ドーピング濃度、及びメタルゲートタイプAl、Ti、TiN、Au、Pd、Ni、W、若しくは積層してのこれらの任意の組み合わせ、に従って設計されたpGaNショットキーゲートの性能を示している。その閾値電圧は非常に安定しており、また、長いストレス時間502にわたって安定している。
【0110】
第2のグラフ511は、上述の指針に近く設計された別のpGaNショットキーゲートの性能を示している。グラフ511の閾値電圧もかなり安定しており、長いストレス時間502の後にのみ小さい不安定性が生じている。
【0111】
第3のグラフ512及び第4のグラフ513は、この開示の指針に従って設計されていない。代わりに、pGaN層における非常に高いドーピング(>5e19cm-3)と、80nmと250nmとの間のpGaN層厚さを持つこととに頼った一般的な設計が用いられている。グラフ512及び513のどちらの閾値電圧も、初めから不安定な挙動を示している。
【0112】
図6は、一例に従ったGaNパワートランジスタのメタル-半導体接合600の設計を示している。メタル-半導体接合600は、例えば、
図1に示したようなGaNパワートランジスタ100又は
図2に示したようなGaNパワートランジスタ200内で実装され得る。
【0113】
メタル-半導体接合600は、p型ドープGaN層113と、p型ドープGaN層113の上に堆積されたメタルゲート層114とを有する。メタルゲート層114は、p型ドープGaN層113と接触して、ショットキー障壁115を形成している。p型ドープGaN層113のp型ドーピング濃度は、1e18cm-3から1e19cm-3の範囲内である。
【0114】
p型ドープGaN層113の厚さは65ナノメートルより小さいとし得る。
【0115】
メタルゲート層114は、以下のメタル:Al、Ti、TiN、Au、Pd、Ni、Wのうちの1つ、又は積層してのこれらの任意の組み合わせからなるとすることができる。
【0116】
p型ドープGaN層113の厚さ、メタルゲート層114のメタルタイプ、及びp型ドープGaN層113のp型ドーピング濃度は、
図4に示して、
図1及び
図2に関して上述したような、p型ドーピング濃度402及びゲートメタルタイプに対するpGaNショットキーゲート空乏領域厚さ401の既知の関係400に基づくことができる。
【0117】
本開示の特定の特徴又は態様が、幾つかの実装のうちの1つのみに関して開示されているかもしれないが、そのような特徴又は態様は、任意の所与の又は特定の適用にとって望ましくて有利であり得るように、他の実装の1つ以上の他の特徴又は態様と組み合わされ得る。また、用語“含む”、“持つ”、“備える”、又はこれらの他の変形が詳細な説明又は特許請求の範囲のいずれかにおいて使用される限りにおいて、そのような用語は、用語“有する”と同様に包括的であることが意図される。また、用語“例示的な”、“例えば”、及び“例として”は、最良又は最適ではなく、単に一例としての意味である。派生語とともに、用語“結合された”及び“接続された”が使用されることがある。理解されるべきことには、これらの用語は、2つの要素が直接的に物理的又は電気的に接触しているのか、互いに直接的には接触していないのかにかかわらず、それらの要素が互いに協働又は相互作用することを示すために使用されていることがある。
【0118】
ここでは特定の態様を図示及び説明してきたが、当業者によって理解されることには、本開示の範囲から逸脱することなく、図示及び説明した特定の態様の代わりに様々な代替的及び/又は等価な実装が用いられ得る。この出願は、ここで説明された特定の態様の任意の適応又は変形をカバーすることが意図される。
【0119】
以下の請求項における要素は、対応するラベル付けとともに特定の順序で記載されているが、請求項の記載が、それらの要素の一部又は全てを実装するための特定の順序を別段に示していない限り、それらの要素は必ずしも、その特定の順序で実装されることに限定されるように意図されていない。
【0120】
以上の教示に照らして、数多くの代替、変更、及び変形が当業者に明らかになる。当然ながら、ここに記載されたもの以外に多くの本発明の用途があることを当業者は容易に認識する。本発明の実施形態を1つ以上の特定の実施形態を参照して説明してきたが、当業者が認識することには、本発明の実施形態の範囲から逸脱することなく、それらに対して数多くの変形が為され得る。従って、理解されるべきことには、添付の請求項及びそれらに均等なものの範囲内で、本発明は、ここに具体的に記載されたもの以外で実施され得る。