(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】光アダプタ保持構造、及び光コネクタの挿抜方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/36 20060101AFI20250109BHJP
G02B 6/46 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G02B6/36
G02B6/46
(21)【出願番号】P 2024051599
(22)【出願日】2024-03-27
【審査請求日】2024-10-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591199590
【氏名又は名称】株式会社正電成和
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】坂口 元一
(72)【発明者】
【氏名】石井 龍矢
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-097841(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2023/0367080(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2591007(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00, 6/02, 6/24-6/255, 6/36-6/40, 6/46-6/54
H01B 11/00-11/22
H01R 9/00, 9/15-9/28
H02B 1/00-1/38, 1/46-7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の装着孔が併設された取付け具と、
前記装着孔に装着される光アダプタと、
前記取付け具に対して、前記光アダプタを揺動させることが可能な揺動機構と、
を具備し、
前記光アダプタの併設方向である前記光アダプタの幅方向の両端部近傍に硬磁性体が固定され、
前記光アダプタに設けられた前記硬磁性体と対向する前記取付け具の部位は、前記硬磁性体と吸着可能な軟磁性体で構成され、
前記光アダプタのそれぞれの前記硬磁性体は、前記光アダプタの併設方向に対して閉磁されており、
前記揺動機構は、任意の前記光アダプタに対して、当該光アダプタに隣接する前記光アダプタに前記硬磁性体による吸着力以上の力が加わると、当該光アダプタに隣接する前記光アダプタの、当該光アダプタから見て前記隣接する光アダプタが併設された方向への揺動を許容し、力が除荷されると、前記硬磁性体の吸着力によって、前記取付け具に対して略垂直な方向に前記光アダプタを保持することが可能であることを特徴とする光アダプタ保持構造。
【請求項2】
前記硬磁性体は、保持手段によって前記光アダプタの本体に固定され、
前記保持手段は軟磁性体で形成されることを特徴とする請求項1記載の光アダプタ保持構造。
【請求項3】
前記保持手段は、前記光アダプタの本体と一体で形成されることを特徴とする請求項2記載の光アダプタ保持構造。
【請求項4】
前記保持手段は凹部を有し、前記硬磁性体は前記凹部に嵌め込まれていることを特徴とする請求項2記載の光アダプタ保持構造。
【請求項5】
前記硬磁性体と前記取付け具の間には隙間が形成されることを特徴とする請求項2記載の光アダプタ保持構造。
【請求項6】
前記硬磁性体は、前記光アダプタの併設方向に垂直な上下方向のそれぞれの面において、前記光アダプタの幅方向の端部近傍に配置されることを特徴とする請求項1記載の光アダプタ保持構造。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の光アダプタ保持構造に対する光コネクタの挿抜方法であって、
任意の前記光アダプタに対して、光コネクタを挿抜する際に、当該光アダプタに隣り合う他の光アダプタを、前記揺動機構によって前記光アダプタの併設方向に揺動させることで、当該光アダプタの周囲にスペースを形成し、挿抜作業を行った後には、前記揺動機構によって前記他の光アダプタを元の位置に戻すことを特徴とする光コネクタの挿抜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルや光コード等の通信ケーブルの接続に用いられる光アダプタの保持構造等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光通信におけるトラフィックの急増により、敷設される光ファイバ心線数の増大が続いており、光ファイバケーブルや光コードの接続点に使用される光アダプタにおいても高密度実装をする必要が生じている。しかし、光アダプタを高密度に実装すると、隣り合う光アダプタ同士の間隔が狭くなるため、接続される光コネクタ同士の間隔も狭くなる。このため、光コネクタを光アダプタに対して挿抜する際において、隣り合う光コネクタとの間に指が入る空間が確保できなくなる。
【0003】
そこで、光アダプタを高密度に実装しながらも、光コネクタの挿抜操作空間を確保するため、挿抜作業時に、まず、挿抜したい光コネクタが装着されるアダプタ又はアダプタ装着具を回動させ、挿抜操作空間を作り出す機構を有したアダプタ高密度実装方法が知られている(例えば特許文献1、2)。
【0004】
しかし、特許文献1、2の方法は、光コネクタの挿抜作業の際に光アダプタを回動させ、その状態を指等で押さえ、回動状態を保持しながら光コネクタの挿抜作業を行う必要があった。このため、作業を行うことが困難であった。
【0005】
これに対し、光アダプタの挿抜作業時に、隣り合う他の光アダプタを容易に揺動させることができるとともに、作業後はそれらの光アダプタを取付け具に対して垂直に維持することが可能な光アダプタの保持構造が提案されている(特許文献3)。特許文献3では、光アダプタの保持に硬磁性体の吸着力を用いて、揺動と姿勢保持を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平02-098314号公報
【文献】特開2003-86967号公報
【文献】特開2022-97841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図10は、従来の光アダプタ100を取付け具107の装着孔109に併設した状態を示す正面図である。なお、図中のNとSは、硬磁性体の極性を示す。光アダプタ100の幅方向の両側のそれぞれにおいて、硬磁性体103が、互いに極性が逆の向きで配置される。また、併設された光アダプタ100のそれぞれの硬磁性体103の極性は、光アダプタ100の併設方向に対して交互に配置される。すなわち、隣り合う光アダプタ100同士の互いに近接する硬磁性体103同士の極性が逆となる。
【0008】
このように隣り合う光アダプタ100の硬磁性体103同士が逆極性となると、両者は互いに引き付け合う。すなわち、光アダプタ100が取付け具107に吸着した状態において、硬磁性体103同士も引き付け合った状態で安定する。
【0009】
例えば、仮に、光アダプタ100の両側の硬磁性体103がすべて同じ極性であると、隣り合う光アダプタ100の硬磁性体103同士は同極性となる。
図11(a)は、光アダプタ100の両側の硬磁性体103が同じ極性で配置される場合の平面図である。この場合、隣り合う硬磁性体103同士が反発しあう。すなわち、光アダプタ100が取付け具107に吸着した状態において、硬磁性体103同士が反発すると、光アダプタ100が取付け具107から離れる方向へ力がかかり、不安定な状態となるおそれがある。例えば、
図11(b)に示すように、一方の光アダプタ100が揺動すると、隣り合う硬磁性体103のN極とS極の距離が近くなるため吸着しあい、この状態から元の状態へ戻らなくなる。しかし、この影響を小さくするために、光アダプタ100同士(隣り合う硬磁性体103同士)の距離を大きくとることで、実装密度が低下する場合もある。
【0010】
これに対し、光アダプタ100の幅方向の両側の硬磁性体103を互いに逆極性とし、併設された光アダプタ100のそれぞれの硬磁性体103の極性を、光アダプタ100の併設方向に対して交互に配置することで、隣り合う光アダプタ100同士を近づけることができ、実装密度を上げることができる。
【0011】
図12(a)は、光アダプタ100の両側の硬磁性体103の極性が異なるように配置した場合の平面図である。前述したように、通常時において、隣り合う光アダプタ100同士は引き付けあうため、一方の光アダプタ100がわずかに揺動しても、硬磁性体103と取付け具107との吸着力で、もとの状態に戻ろうとする力が働く。
【0012】
しかしながら、
図12(b)に示すように、光アダプタ100同士の距離が近くなり、かつ、揺動角度がある程度以上大きくなると、隣り合う硬磁性体103の同極同士が近接するようになり、反発力が働くようになる。この状態となると、反発力によって、光アダプタ100が元の状態に戻らなくなる場合が生じうる。
【0013】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、高密度実装が可能であり、安定して動作可能な光アダプタ保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、複数の装着孔が併設された取付け具と、前記装着孔に装着される光アダプタと、前記取付け具に対して、前記光アダプタを揺動させることが可能な揺動機構と、を具備し、前記光アダプタの併設方向である前記光アダプタの幅方向の両端部近傍に硬磁性体が固定され、前記光アダプタに設けられた前記硬磁性体と対向する前記取付け具の部位は、前記硬磁性体と吸着可能な軟磁性体で構成され、前記光アダプタのそれぞれの前記硬磁性体は、前記光アダプタの併設方向に対して閉磁されており、前記揺動機構は、任意の前記光アダプタに対して、当該光アダプタに隣接する前記光アダプタに前記硬磁性体による吸着力以上の力が加わると、当該光アダプタに隣接する前記光アダプタの、当該光アダプタから見て前記隣接する光アダプタが併設された方向への揺動を許容し、力が除荷されると、前記硬磁性体の吸着力によって、前記取付け具に対して略垂直な方向に前記光アダプタを保持することが可能であることを特徴とする光アダプタ保持構造である。
【0015】
前記硬磁性体は、保持手段によって前記光アダプタの本体に固定され、前記保持手段は軟磁性体で形成されてもよい。
【0016】
前記保持手段は、前記光アダプタの本体と一体で形成されてもよい。
【0017】
前記保持手段は凹部を有し、前記硬磁性体は前記凹部に嵌め込まれていてもよい。
【0018】
前記硬磁性体と前記取付け具の間には隙間が形成されてもよい。
【0019】
前記硬磁性体は、前記光アダプタの併設方向に垂直な上下方向のそれぞれの面において、前記光アダプタの幅方向の端部近傍に配置されてもよい。
【0020】
第1の発明によれば、任意の光コネクタの挿抜を行う際に、隣り合う光アダプタとの隙間に指を挿入すると、光アダプタが高密度に配列されているため、隣り合う光アダプタや光コネクタにも指が触れ、隣り合う光コネクタは、コネクタの挿抜方向に対して横方向の力を受けることになる。この際、光アダプタに硬磁性体が固定され、光アダプタの硬磁性体と対向する取付け具を、硬磁性体と吸着可能な軟磁性体で構成することで、隣り合う光接続部材に硬磁性体の吸着力以上の力が加わることで、当該光接続部材が揺動し、指の操作空間を作り出すことができる。また、力がなくなると光アダプタが元の位置に戻り、硬磁性体の吸着力によって光アダプタを保持することができる。
【0021】
また、光アダプタのそれぞれの硬磁性体が、光アダプタの併設方向に対して閉磁されているため、隣り合う硬磁性体同士の干渉を抑制し、光アダプタに対する力が除荷された際に、確実に光アダプタを元の位置に戻すことができる。
【0022】
特に、硬磁性体を、軟磁性体からなる保持手段によって光アダプタの本体に固定することで、硬磁性体を確実に保持することができるとともに、隣り合う硬磁性体同士の干渉を抑制することができる。
【0023】
このような保持手段が光アダプタの本体と一体で形成されれば、部品点数が少なくて済む。
【0024】
また、保持手段に設けられた凹部に硬磁性体を嵌め込むことで、硬磁性体を確実に保持することができる。また、取付け具と硬磁性体との間に隙間を形成することで、取付け具と硬磁性体との吸着力を調整することができる。
【0025】
また、硬磁性体を、光アダプタの併設方向に垂直な上下方向のそれぞれの面に配置することで、光アダプタ同士の間隔をより狭くして、高密度に光アダプタを配置することができる。
【0026】
第2の発明は、第1の発明にかかる光アダプタ保持構造に対する光コネクタの挿抜方法であって、任意の前記光アダプタに対して、光コネクタを挿抜する際に、当該光アダプタに隣り合う他の光アダプタを、前記揺動機構によって前記光アダプタの併設方向に揺動させることで、当該光アダプタの周囲にスペースを形成し、挿抜作業を行った後には、前記揺動機構によって前記他の光アダプタを元の位置に戻すことを特徴とする光コネクタの挿抜方法である。
【0027】
第2の発明によれば、作業性が良好であり、容易にコネクタの挿抜作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、高密度実装が可能であり、安定して動作可能な光アダプタ保持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図3】取付け具7に光アダプタ10等が取り付けられた状態を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図。
【
図6】仕切り板46を用いた光アダプタ10の併設状態を示す平面図。
【
図7】ホルダ47を用いた光アダプタ10の併設状態を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図。
【
図8】(a)は、他のホルダ47を用いた光アダプタ10の平面図、(b)は、ホルダが一体化した光アダプタ10の平面図。
【
図9】(a)は、ホルダ47を用いた光アダプタ10aの併設状態を示す平面図、(b)は、ホルダ47を用いた光アダプタ10aの正面図。
【
図10】光アダプタ100を併設した際の硬磁性体の極性を示す図。
【
図11】同じ極性で併設した光アダプタ100の平面図。
【
図12】異なる極性で併設した光アダプタ100の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1の実施形態)
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である光パッチパネル3を示す図であり、
図2は、ラック1を示す図である。ラック1は、例えば19インチラックであり、光パッチパネル3は、ラック1へ実装され、光パッチパネル3のマウント部4が、ラック1のフレーム2にねじ等によって固定される。
【0031】
光パッチパネル3の背面側より、外線ケーブル20が導入され、光パッチパネル3の後方に設けられた外線ケーブル固定部5において、外線ケーブル20が光パッチパネル3へ固定される。外線ケーブル20は光パッチパネル3内においてケーブルシース21が除去され、内部の光ファイバ心線22が、光ファイバ接続トレイ6まで配線される。光ファイバ心線22と、SC、LC又はMPO等(以下、単に「SC等」とする)の光コネクタ付き変換コード24とが融着等で接続される。光ファイバ接続トレイ6内において、それらの接続部は、光ファイバ心線22とSC等の光コネクタ付き変換コード24の余長と共に収納される。
【0032】
光パッチパネル3の前方には、LC等の光アダプタ10を装着可能な、板状の取付け具7が設けられる。取付け具7のさらに前方には、コード受けトレイ8が設けられる。コード受けトレイ8は、光コネクタ付き局内コード25を下側より受けることが可能である。
【0033】
取付け具7には、複数の光アダプタ10が装着され、光アダプタ10には、後方からは外線側光コネクタ27が挿入され、前方からは光コネクタ付き局内コード25の局内側光コネクタ28が挿入される。局内側光コネクタ28を挿入する光アダプタ10を任意に変えることにより、接続対象となる外線ケーブル20を切り替えすることが可能である。
【0034】
なお、光パッチパネル3の構造は、図示した例には限られない。例えば、光パッチパネル3の背面側から導入されるケーブルとして、光コネクタが付いていない外線ケーブル20を示したが、これは一例であって、光コネクタ付きコードまたは光コネクタ付きケーブルを導入しても良い。その場合には光ファイバ接続トレイ6を不要とした光パッチパネルの構造となる。
【0035】
次に、本発明にかかる光アダプタに共通する、光アダプタ等の動作について説明する。
図3は、取付け具7に光アダプタ10等が取り付けられた状態を示す図で、
図3(a)は正面図、
図3(b)は側面図(
図3(a)のA矢視図)、
図3(c)は平面図(
図3(a)のB矢視図)である。
【0036】
取付け具7には、略矩形の複数の装着孔9が併設される。それぞれの装着孔9には、光アダプタ10が装着される。なお、簡単のため、3つの光アダプタ10のみが装着孔9に装着された状態を図示する。前述したように、それぞれの隣り合う光アダプタ10同士は、極めて近接して配置される。また、本実施形態では、取付け具7に対して、光アダプタ10を揺動させることが可能な揺動機構を有するが、揺動機構については詳細を後述し、
図3においては図示を省略する。
【0037】
光アダプタ10は、光軸方向に垂直な断面が略矩形であり、光アダプタ10の上下面(光アダプタ10の併設方向に直交する両外面であって、
図3(a)の上下方向)には、それぞれ凸部12が突出する。凸部12を含めた光アダプタ10の全高は、装着孔9の高さよりも高いため、装着孔9に光アダプタ10を挿入すると、凸部12付近まで光アダプタ10は挿入される。一方、光アダプタ10の幅(光アダプタ10の併設方向を幅方向とする)に対して、装着孔9の幅は十分に大きい。このため、光アダプタ10と装着孔9の両縁部との間にはそれぞれ所定のクリアランスが形成される。なお、クリアランスは、後述する光アダプタ10の揺動可能範囲に応じて設定される。
【0038】
次に、光アダプタ保持構造に対する光コネクタの挿抜方法について説明する。
図4は、光アダプタ10の動作を示す図である。まず、
図4(a)に示すように、図中中央の光アダプタ10へ、局内側光コネクタ28を接続する際には、局内側光コネクタ28を、対象となる光アダプタ10の方向へまっすぐに移動させる(図中矢印C方向)。この際、隣り合う局内側光コネクタ28や光アダプタ10との間隔が狭いため、指が隣り合う局内側光コネクタ28や光アダプタ10と接触する。
【0039】
この際、光アダプタ10と取付け具7との取付け部には、後述する揺動機構が設けられるため、指が触れた局内側光コネクタ28や光アダプタ10は、光アダプタ10の併設方向に対して揺動する(図中矢印D方向)。すなわち、任意の光アダプタ10に対して、光コネクタを挿抜する際に、当該光アダプタ10に隣り合う他の光アダプタ10を、後述する揺動機構によって、光アダプタ10の併設方向に揺動させることで、当該光アダプタ10の周囲にスペースを形成することができる。このように、対象となる光アダプタ10の周囲に作業スペースが確保され、
図4(b)に示すように、局内側光コネクタ28を光アダプタ10に挿入することができる。
【0040】
この後、局内側光コネクタ28同士の隙間から指を抜き取ると、元の状態(
図3(c))に戻る。すなわち、挿抜作業を行った後には、揺動機構によって隣り合う他の光アダプタ10を元の位置に戻すことができる。このように、揺動機構は、任意の光アダプタ10に対して、当該光アダプタ10に隣接する光アダプタ10に所定以上の力が加わると、当該光アダプタ10に隣接する光アダプタ10の、当該光アダプタ10から見て隣接する光アダプタ10の併設方向への揺動を許容し、力が除荷されると、揺動機構における力の釣り合いにより取付け具7に対して略垂直な方向に光アダプタ10を保持することを可能とするものである。
【0041】
なお、局内側光コネクタ28を光アダプタ10から抜き取る際にも同様である。また、局内側光コネクタ28の挿抜作業の際には、他方の外線側光コネクタ27同士が近づく方向に揺動するが、外線側光コネクタ27の挿抜作業時には、外線側光コネクタ27同士の間隔が広がり、局内側光コネクタ28同士の間隔が狭くなるように光アダプタ10が揺動する。
【0042】
このように、本発明の揺動機構は、挿抜対象となる光アダプタ10を揺動させるのではなく、その隣り合う光アダプタ10を揺動させるものであり、光コネクタの挿抜作業の際には、揺動状態を手で保持しておく必要がない。すなわち、作業の際に触れる指によって、光アダプタ10は必要量だけ揺動し、作業を終えると、光アダプタ10は自然に元の状態に戻る。
【0043】
ここで、光アダプタ10の揺動角度としては、±20度程度以下とすることが望ましい。これより大きな揺動角度とした場合には、光アダプタ10の揺動時に、隣接する光コネクタ付き変換コード24又は光コネクタ付き局内コード25同士が干渉し、光学的影響を及ぼす可能性がある。このため、装着孔9の幅は、光アダプタ10の揺動角度が上記範囲となるように設定される。すなわち、光アダプタ10の幅に対して、装着孔9の幅を所定以上大きくすることで、光アダプタ10の揺動を許容し、装着孔9の幅を所定以上小さくすることで、光アダプタ10の揺動角度を±20度以下に規制することができる。
【0044】
なお、一般的に、LC等の光アダプタ10は、光軸方向に対し長方形断面を有しており、短辺と長辺とが存在する。この際、揺動方向と短辺が平行となるように(すなわち、長辺側に揺動可能となるように)光アダプタ10を取付け具7に配置した方が、光アダプタ10の揺動時の移動量を少なくすることができるため望ましい。この時、光アダプタ10は、単芯型、複数芯型のいずれであっても良い。
【0045】
なお、取付け具7は、例えばEIA/ECA-310-Eに準拠する19inchラックまたはJIS C 6010-2に準拠するキャビネット及びラックが適用可能である。この場合、最大25個の光アダプタを取付け具7に併設することができる。また、取付け具7は、全体が一体ではなく、複数の挿入孔が組となった複数の小取付け具を、光アダプタの併設方向に対して連結して併設したものであってもよい。
【0046】
次に、揺動機構について詳細に説明する。
図5は、光アダプタ10を示す斜視図である。前述したように、光アダプタ10の揺動方向に直交する向きに突出する凸部12が設けられる。すなわち、揺動機構は、前述した凸部12の近傍を基準として光アダプタ10を揺動可能である。また、光アダプタ10の併設方向(取付け具7の装着孔9の併設方向)である光アダプタ10の幅方向の両側には、硬磁性体43が固定される。すなわち、硬磁性体43が、光アダプタ10の幅方向の両側方に突出するように配置される。
【0047】
硬磁性体43は、例えば、フェライトやネオジムなどからなる板状の部材であり、接着剤等で光アダプタ10の本体に固定される。すなわち、硬磁性体43が、光アダプタ10の幅方向に突出するように配置される。なお、硬磁性体43の固定方法は特に限定されない。
【0048】
また、光アダプタ10の上下面には、凸部12の方向に向けて、凸部12から離間した位置に係止片42が形成される。係止片42が取り付けられた光アダプタ10を装着孔9に挿入するだけで、凸部12と係止片42との間に装着孔9の縁部が配置されて、光アダプタ10が取付け具7に取り付けられた光アダプタ保持構造を得ることができる。
【0049】
また、一般的に、光アダプタが取り付けられる取付け具7は、板厚が1.0mm~2.0mm程度の鋼板製である。すなわち、取付け具7は、硬磁性体43が強固に吸着可能な軟磁性体で構成される。なお、取付け具7が樹脂等で構成される場合には、取付け具7の硬磁性体43との対向面に、硬磁性体43と吸着可能なように、軟磁性体や他の硬磁性体からなる板材を張り付けてもよい。すなわち、光アダプタ10に設けられた硬磁性体43と対向する取付け具7の部位は、硬磁性体43と吸着可能な他の硬磁性体又は軟磁性体で構成される。
【0050】
ここで、光アダプタ10の両側のそれぞれの硬磁性体43は、光アダプタ10の幅方向に対称となるように配置される。すなわち、硬磁性体43と取付け具7との吸着力は、光アダプタ10の幅方向に対して略均等となるように硬磁性体43等のサイズ及び位置が設定される。光アダプタ10を装着孔9に挿入すると、それぞれの硬磁性体43が取付け具7の表面(装着孔9の両側の表面)に吸着する。すなわち、硬磁性体43の配置される部位の幅は、装着孔9の幅よりも広い。この際、硬磁性体43は、光アダプタ10の幅方向に対称に(幅方向の左右に均等となるように)配置される。このため、硬磁性体43の平坦面と取付け具7の平坦面とが吸着し光アダプタ10が取付け具7に取り付けられる。
【0051】
このように、光アダプタ10が装着孔9に挿入された状態において、光アダプタ10の幅方向の両側のそれぞれの硬磁性体43の吸着力によって、光アダプタ10が取付け具7に取り付けられる。このため、通常時には、光アダプタ10は、磁力による吸着力によって取付け具7に対して略垂直に取付けられ、その姿勢を保持することができる。
【0052】
このような光アダプタ10の併設方向に対して、任意の光アダプタ10が硬磁性体43による吸着力以上の力を受けると、幅方向の一方の硬磁性体43が取付け具7から浮き上がり、光アダプタ10が揺動可能である。より詳細には、光アダプタ10が揺動する方向に外力を受けた場合には、一方の硬磁性体43の端部を中心に傾斜し、他方の硬磁性体43が取付け具7の対向面から離れる。この状態から、外力を取り除くと、硬磁性体43と軟磁性を有する取付け具7との間には常に吸着磁力が作用しているため、光アダプタ10を、通常状態(光アダプタ10の垂直姿勢)へ戻すことができる。すなわち、光アダプタ10にかかる当該力が除荷されると、硬磁性体43の吸着力によって、取付け具7に対して略垂直な方向に光アダプタ10を揺動させて保持することができる。
【0053】
なお、凸部12と係止片42の先端部との間隔は、取付け具7の厚み以上である。すなわち、凸部12又は係止片42と、取付け具7との間にはクリアランスが確保される。このようにすることで、光アダプタ10が揺動する際に、係止片42が揺動の妨げとなることがない。なお、光アダプタ10を揺動可能に取付け具7に取り付け可能であれば、凸部12等は必ずしも必要ではない。また、硬磁性体43の吸着力が十分であれば、係止片42は必ずしも必要ではない。
【0054】
次に、光アダプタ10を取付け具7に取り付けた光アダプタ保持構造についてより詳細に説明する。
図6は、光アダプタ10が取付け具7に併設された状態を示す平面図である。なお、簡単のため二つの光アダプタ10のみを図示する。前述したように、光アダプタ10の幅方向の両側の前面(取付け具7との対向面側)には、硬磁性体43が固定される。
【0055】
この際、光アダプタ10は、幅方向に均等に付与される硬磁性体43と取付け具7の吸着力によって保持される。すなわち、光アダプタ10が取付け具7に対して略垂直な姿勢を維持することが可能である。
【0056】
また、
図6に示すように、隣り合う光アダプタ10同士の間において、仕切り板46が配置される。仕切り板46は、隣り合う光アダプタ10の硬磁性体43同士を仕切り、光アダプタ10の揺動時に干渉しない位置に配置される。仕切り板46は軟磁性体で構成され、取付け具7に固定される。このように、硬磁性体43の近傍に軟磁性体である仕切り板46を配置することで、仕切り板46が遮蔽板として機能する。すなわち、隣り合う硬磁性体43同士の間を仕切り板46によって仕切ることで、光アダプタ10の硬磁性体43からの磁束が外部に漏れずに、隣り合うそれぞれの硬磁性体43は、光アダプタ10の併設方向に対して閉磁される。このため、隣り合う硬磁性体43同士の磁束の干渉を防ぐことができる。
【0057】
このように、隣り合う光アダプタ10に設けられた硬磁性体43が閉磁されているため、互いの干渉を抑制することができる。このため、図示した例では、光アダプタ10の幅方向の両側の硬磁性体43の磁極が逆であり、併設された光アダプタ10のそれぞれの硬磁性体43の極性が、光アダプタ10の併設方向に対して交互に配置される例を示すが、硬磁性体43はすべて同一の方向に向けて配置してもよい。このように、通常状態において、光アダプタ10同士を近づけても光アダプタ10を安定して配置することができるため、光アダプタ10の実装密度を上げることができる。また、光アダプタ10が所定以上の角度で揺動しても、確実に元の状態に戻すことができる。
【0058】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図7(a)は、第2の実施形態にかかる光アダプタ10の併設状態を示す平面図であり、
図7(b)は、光アダプタ10の正面図である。なお、以下の実施形態において、第1の実施形態と同様の機能を発揮する構成については、
図1~
図6と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0059】
本実施形態では、光アダプタ10に対して、硬磁性体43が、保持手段であるホルダ47によって光アダプタ10の本体に固定される。ホルダ47は軟磁性体で形成されるため、前述したように、硬磁性体43に対するヨークとして機能する。このように、硬磁性体43を固定するためのホルダ47を軟磁性体で構成し、硬磁性体43の両側面(隣り合う硬磁性体43との対向面)を覆うことで、硬磁性体43が光アダプタ10の併設方向に対して閉磁されて、隣り合う光アダプタ10の硬磁性体43同士の干渉を抑制することができる。この際、取付け具7と硬磁性体43との間に隙間を形成して、取付け具7と硬磁性体43との吸着力を調整してもよい。
【0060】
なお、ホルダ47の形状は特に限定されない。例えば、
図8(a)に示すように、ホルダ47に凹部48を設けて、硬磁性体43を凹部48に嵌め込んで固定してもよい。
【0061】
また、
図8(b)に示すように、硬磁性体43の保持手段を、光アダプタ10の本体と一体で形成してもよい。すなわち、光アダプタ10が、硬磁性体43を保持する保持部47aを有していてもよい。この場合には、光アダプタ10自体が軟磁性体で形成される。
【0062】
また、硬磁性体43は、光アダプタの幅方向の両側に配置されなくてもよい。
図9(a)は、光アダプタ10aの併設状態を示す平面図であり、
図9(b)は、光アダプタ10aの正面図である。光アダプタ10aは、光アダプタ10と略同様であるが、硬磁性体43は、光アダプタ10aの併設方向に垂直な上下方向のそれぞれの面において、光アダプタ10aの幅方向の端部近傍に配置される。すなわち、硬磁性体43は、光アダプタ10aの上面と下面のそれぞれにおいて、光アダプタ10aの幅方向の両側部近傍にそれぞれ配置される。
【0063】
この場合でも、各硬磁性体43は、ホルダ47によって覆われて固定されることで、隣り合う硬磁性体43同士の干渉を抑制することができる。また、硬磁性体43を光アダプタ10aの上下に配置することで、光アダプタ10a同士をより近づけて配置することができる。このように、硬磁性体43は、光アダプタの側面又は上下面において、光アダプタの幅方向の両端部近傍に配置されればよい。
【0064】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、硬磁性体43を保持する保持手段を軟磁性体で構成し、硬磁性体43の側方を軟磁性体で覆うことで、光アダプタ同士を近づけた場合において、光アダプタが所定以上の角度で揺動しても、確実に元の状態に戻すことができる。
【0065】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0066】
1: ラック
2: フレーム
3: 光パッチパネル
4: マウント部
5: 外線ケーブル固定部
6: 光ファイバ接続トレイ
7: 取付け具
8: コード受けトレイ
9: 装着孔
10、10a:光アダプタ
12:凸部
20:外線ケーブル
21:ケーブルシース
22:光ファイバ心線
24:光コネクタ付き変換コード
25:光コネクタ付き局内コード
27:外線側光コネクタ
28:局内側光コネクタ
42:係止片
43:硬磁性体
46:仕切り板
47:ホルダ
47a:保持部
48:凹部
100:光アダプタ
103:硬磁性体
107: 取付け具
109: 装着孔
【要約】
【課題】 高密度実装が可能であり、安定して動作可能な光アダプタ保持構造を提供する。
【解決手段】 光アダプタ10の併設方向ある光アダプタ10の幅方向の両側には、硬磁性体43が固定される。光アダプタ10に設けられた硬磁性体43と対向する取付け具7の部位は、硬磁性体43と吸着可能な他の硬磁性体又は軟磁性体で構成される。光アダプタ10同士の間において、仕切り板46が配置される。仕切り板46は軟磁性体で構成され、取付け具7に固定される。このように、硬磁性体43の近傍に軟磁性体である仕切り板46を配置することで、仕切り板46が遮蔽板として機能する。すなわち、仕切り板46によって、光アダプタ10の硬磁性体43からの磁束が外部に漏れずに、それぞれの硬磁性体43は、光アダプタ10の併設方向に対して閉磁される。
【選択図】
図6