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特許7616562高濃度のイツリン系リポペプチドを含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】高濃度のイツリン系リポペプチドを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 63/22 20200101AFI20250109BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20250109BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20250109BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20250109BHJP
   A01P 3/00 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
A01N63/22
A23L29/10
A61K8/64
A61K38/12
A61K47/36
A61K47/42
A61P31/04
A61P31/10
A01P3/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020502168
(86)(22)【出願日】2018-07-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 FR2018051883
(87)【国際公開番号】W WO2019016492
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-06-07
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】17/56909
(32)【優先日】2017-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519237797
【氏名又は名称】リポファブリック
【氏名又は名称原語表記】LIPOFABRIK
【住所又は居所原語表記】Universite Lille 1,Batiment Polytech Lille,Avenue Paul Langegin,59655 Villeneuve D’Ascq,France
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(72)【発明者】
【氏名】クーテ,フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ドラクロワ,アルノー
(72)【発明者】
【氏名】エル ガズワニ,アヴドゥルナーセル
(72)【発明者】
【氏名】ジャック,フィリップ
【合議体】
【審判長】植前 充司
【審判官】宮久保 博幸
【審判官】淺野 美奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-053867(JP,A)
【文献】特開昭59-212416(JP,A)
【文献】特開2003-113040(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101948682(CN,A)
【文献】特開平06-135811(JP,A)
【文献】国際公開第2015/184170(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0302494(US,A1)
【文献】特開昭59-212416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A23L
A23B
A01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物保護における抗真菌性、抗菌性または生物農薬用のための安定かつ均質な水性組成物であって、20g/Lを超える濃度のイツリン系リポペプチドと、一種または複数の界面活性剤とを含み、該イツリン系リポペプチドは、ミコサブチリンであり、該界面活性剤は、サーファクチン、フェンギシンおよびアルキルエトキシグリコシドからなる群より選択され、ここで前記サーファクチンの濃度が、1~40g/Lであり、前記フェンギシンの濃度が、1~100g/Lであることを特徴とする前記組成物。
【請求項2】
前記ミコサブチリンの濃度が20~150g/Lである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ミコサブチリンの濃度が20~50g/Lであり、前記界面活性剤はサーファクチンであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ミコサブチリンの濃度が20~50g/Lであり、前記界面活性剤はフェンギシンであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ミコサブチリンの濃度が20~100g/Lであり、前記界面活性剤はサーファクチンおよびフェンギシンであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載された組成物の調製方法であって、高含有量のイツリン系リポペプチドを含む水溶液を調製するステップと、界面活性剤を調製した溶液に添加するステップとを含む調製方法。
【請求項7】
脱水ステップを更に有する、請求項に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度のイツリン系リポペプチド(iturinic lipopeptides)を含む組成物
に関する。特に、本発明による組成物は、イツリン系リポペプチドの濃度が5~200g/Lであり、界面活性剤および/またはハイドロトロピック分子(hydrotropic molecules)の存在により安定かつ均質である。
【背景技術】
【0002】
イツリン系リポペプチドは、バチルス種の種々の菌株によって産生される分子であり、より詳細には、イツリン系リポペプチドは、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・
アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・サーモアミロボランス(Bacillus thermoamylovorans
)、バチルス・サーモクロアカ(Bacillus thermocloacae)、バチルス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・モハベンシス(Bacillus mojavensins)、バチルス・ベレ
ンツェンシス(Bacillus velenzensis)、バチルス・ヴァリスモルティス(Bacillus valissmortis)の菌株から産生される分子である。例示的な例としては、枯草菌ATCC6
633、W23、ATCC19659、DSM23117、QST713またはAQ713、FMBJ、3-10、RB14、BH072およびそれらの誘導体、バチルス・アミロリケファシエンス菌FZB42、KB3、SYBC H47、GA1およびそれらの誘導体を含む。
【0003】
これら分子の系は、イツリンA、ALおよびC、モハベンシン(mojavensin)、ミコサ
ブチリン(mycosubtillin)、およびバシロマイシン(bacillomycins)A、B、C、D、F、LおよびLCを含む。これらの成分は主に抗真菌性特性で知られているが、抗菌性特
性も有している。これらの特性は、異なる膜成分と相互作用できる両親媒性性質から来ている。
【0004】
イツリン系分子は、前述の種々の菌株によって発酵ブロス内の溶液中で生成でき、その後、イツリン系分子を当業者に知られている方法に従って培養上清から抽出、濃縮および精製することにより回収することができる。それにもかかわらず、それらの溶液中での挙動は、イツリン系分子の濃度に依存している。事実、臨界ミセル濃度(10~20mg/L)を超えると、イツリン系化合物は、他のリポペプチド分子のように多かれ少なかれ複雑なミセルを形成することが知られている。さらに、これらのミセルのサイズは、イツリン系分子の濃度が10nmの平均サイズから500mg/L未満の濃度に増加するにつれてますます複雑な構造を形成するように発展し(Jauregiら2013)、1g/Lを超え
ると平均直径が150nmの小胞性構造へ(Grauら2001)、その後、10g/Lの濃度で二層構造へと発展する(Hamley ら2013)。それらのミコサブチリンに関する研
究(Hamley ら2013)や、イツリンAに関する研究(Grauら2001)に記載されて
いるように、これらの超構造は、例えばサーファクチン系の他のリポペプチド分子には発見されていない。さらに、イツリン系化合物の濃度の増加によって、培地中に含有しているたんぱく質との相互作用が増加する傾向があり、したがって、構造の大きさを増加して非溶解性が増すことになる(Jauregiら2013)。
【0005】
イツリン系化合物のこれらの物理化学的性質は、したがって、溶解性の問題を引き起こし、化合物内におけるイツリン系リポペプチドの濃度が増加する際に、沈殿またはゲル化しやすい不安定な組成物が生じる。
【0006】
本発明に対して選択した先行技術。
【0007】
5g/Lを超える濃度をもつイツリン系リポペプチドを有する組成物に言及している先行技術は少ない。20g/Lを超える濃度を有する組成物に言及しているものはなおさら少ない。この理由は主に、イツリン系リポペプチドは高濃度ミセルを形成しやすく、イツリンミセルは良好な溶解性を妨げて組成物を不安定にすることを当業者は知っているからである。
【0008】
しかしながら、先行技術における日本特許公開2003-128512号(昭和電工)によれば、抗菌性のためにイツリンとサーファクチンが添加された界面活性剤を含む化粧用組成物を含むものは公知である。しかしながら、それらの組成物中におけるイツリンの安定性と均質性には言及していない。この理由は、イツリンは種々の組成物の主化合物ではないためである。
【0009】
また、植物成長または植物保護を改善するためにイツリン、サーファクチン、フェンギシンを含むバチルス・アミロリケファシエンス由来の組成物を記載している米国特許公開第2016/183537号も知られている。この文献は、この組成物中に含まれる分子の濃度については言及していない。高いイツリン濃度への言及はない。
【0010】
発酵中の酸素移動におけるリポペプチド抽出物の影響について記載しているChoukri HBIDらの出版物もまた知られている。これらの抽出物は、4g/Lまでの濃度のイツリン/サーファクチンの混合物に相当する。より高いイツリン濃度の可能性については、この文献には記載されていない。
【0011】
このように、いずれの先行技術文献も、高濃度のイツリン系リポペプチドを有する組成物を作ることを当業者に奨励してはいない。なぜならば、それらが不安定かつ不均質なために用途が乏しいことを当業者は知っているからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、界面活性剤特性を有する分子を添加することにより、イツリン系リポペプチドの濃度が5g/Lを超える安定かつ均質な組成物を調製することが可能であることを示した。事実、本発明者らは、界面活性剤が、5g/Lを超えるイツリン系リポペプチドの溶解性を改善することを示した。特に、10g/Lおよび20g/L、および50、100、さらには200g/Lまで、沈殿またはゲルの出現なしにイツリン系リポペプチドの溶解性を改善することを示した。
【0013】
本発明は、植物保護産業用の抗真菌性、抗菌性または生物界面活性剤生物農薬分子の濃縮溶液の製造の用途を有するが、また、食物、化粧品、医薬品および石油の分野にも適用される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の詳細な説明
本発明の一般的な概念は、イツリン系リポペプチドの濃度が5g/Lを超えるリポペプチドの混合物を含む安定で均質な液体組成物に関する。
【0015】
このような組成物においては、リポペプチドは界面活性剤特性を有する分子と組み合わせられているので濃縮されたイツリン系リポペプチド組成物は安定で均質のままである。
【0016】
本発明の第1の対象は、20g/Lを超える濃度のイツリン系リポペプチドと、陰イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤または油の群から選択される1または複数の界面
活性剤とを含む安定かつ均質な組成物に関する。
【0017】
「安定かつ均質な」組成物とは、沈殿を含まず、4℃から40℃の間で均質のままである組成物を意味する。固化がないこと、すなわち、溶液が液体でありゲル状ではないこともまた重要な基準である。
【0018】
用語「液体」は、本発明の観点からは流体組成物、すなわち、低い粘度(せん断応力に対するせん断速度比)を有する組成物として理解されなければならない。
【0019】
用語「均質」は、異なる成分が攪拌後に肉眼で区別できない混合物を意味すると理解されなければならない。均質は、混合物中のどの点においても濃度が一様であり、肉眼で観察できる構造または微細構造(固化または沈殿)がないことにより評価できる。
【0020】
混合物のそのような均質性は、それがその後、水溶液で希釈可能なイツリン系リポペプチドの一様な濃度を可能にするので好ましい。
【0021】
用語「安定」は、組成物が経時的に均質が維持される事実として理解されなければならない。従って、安定かつ均質な混合物とは、経時的に一定である一様な濃度を有する混合物である。
【0022】
好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、20~200g/Lのイツリン系リポペプチドを含む。それは、例えば、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100または200g/Lのイツリン系リポペプチドを含んでもよい。好ましくは、組成物中のイツリン系リポペプチドの濃度は、20~150g/L、または、20~100g/Lである。より好ましくは、イツリン系リポペプチドの濃度は、50g/Lを超え、すなわち、50~150g/L、または50~100g/L、または50~80g/Lである。
【0023】
「イツリン系の分子」とは、イツリンA、ALおよびC、モハベンシン、ミコサブチリ
ン、およびバシロマイシンA、B、C、D、F、LおよびLCを意味する。
【0024】
本発明の組成物は、界面活性剤特性を有する分子を含む。
【0025】
「界面活性剤特性を有する分子」は、また、「界面活性剤(surface-active agents)
」または単に「界面活性剤(surfactants)」としても知られており、両親媒性分子、界
面活性剤、サーファクチン、フェンギシン(またはプリパスタチン(plipastatin))な
どのリポペプチド、化学的界面活性剤、およびラムノリピド(rhamnolipids)、多糖類(polysaccharides)などの生物学的界面活性剤を含む。これらの分子は本発明の組成物中
に単独でまたは組み合わせて使用可能である。
【0026】
界面活性剤には、ヘパリン(heparin)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、デキストラン(dextran)、アミロース(amylose)、キトサン(chitosan)、アミノ酸由来の陰イオン系界面活性剤、ポリグリコシド由来の非イオン系界面活性剤、ヒドロトロープ(hydrotropes)界面活性剤、界面活性剤異性体および/またはフェンギシン(またはプリパス
タチン)異性体などのリポペプチド、ラムノリピド(rhamnolipids)および植物油を含む。
【0027】
より詳細には、本発明は陰イオン系、非イオン系および油の界面活性剤に関する。
【0028】
陰イオン系界面活性剤群の界面活性剤は、サーファクチン、フェンギシンまたはアミノ
酸誘導体から選択される。
【0029】
「サーファクチン系の分子」とは、サーファクチンA、B、C、リケニシン(ichenysin)およびプミラシジン(pumilacidin)を意味する。
【0030】
「フェンギシン系の分子」とは、フェンギシンAおよびB、プリパスタチンAおよびBおよびアグラスタチン(agrastatin)を意味する。
【0031】
非イオン系界面活性剤群の界面活性剤は、以下のものから選択される。
脂肪族アルコールオキシアルキレート、ペンチレングリコール(pentylene glycol)およびその誘導体、アルキルポリグリコシド(alkylpolyglycoside)タイプのハイドロトロピック分子(アルキルポリグリコシドおよびアルキルエトキシポリグリコシド(alkylethoxypolyglycoside))、ポリグリコシドテクスチャーエージェントタイプの分子(キサンタンガム、アラビアゴム、トラガカントゴム、グアーガム、ローカストビーンガム、タリマンドガム、ペクチン、ジェルガム、カラギーナン(carrageenates)、寒天、アルギン
酸塩)。
【0032】
油群の界面活性剤は以下のものから選択される。
油、変性油(酸性化油、メチル化油、エステル化油)の抽出物から選択され、特に、アーモンド、ピーナッツ、アルガン、アボガド、ナタネ、ロレンツォ、ニーム、ヘーゼルナッツ、カシューナッツ、マカダミアナッツ、オリーブ、ピスタチオ、イネ、オレイックヒマワリ、アマナズナ属、アマ、ルリジサ、ベニバナ、アサ、綿、コムギ胚芽、トウモロコシ、クルミ、ケシ、月見草、大麦、かぼちゃ種子、ブドウ種子、エンドウ豆、ゴマ、大豆、ヒマワリ、の油および変性油抽出物から選択される。
【0033】
イツリン系リポペプチドは、変性油および抽出油から界面活性剤効果を得るためにこれらの油性組成物または脂内でマイクロエマルション化される。
【0034】
本発明の組成物は、また、脂質源、塩および溶媒などの添加物を含んでもよい。これらの添加物は、界面活性剤にならずに可溶化に関係することができる。溶媒の例としては、エタノール、メタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ブタノール、ペンタノール、アセトンを含む。
【0035】
第1の観点によれば、本発明は、5~50g/Lのイツリン系リポペプチドおよび1~40g/Lの界面活性剤を含む組成物に関する。
【0036】
特定の組成物においては、イツリン系リポペプチドはミコサブチリンである。別の特定の組成物においては、イツリン系リポペプチドの量は好ましくは、10g/L~50g/Lであり、好ましくは20~50g/L、より好ましくは30~50g/Lである。
【0037】
第2の観点によれば、本発明は、5~100g/Lのイツリン系リポペプチド、1~40g/Lの界面活性剤および1~100g/Lのフェンギシン(またはプリパスタチン)を含む組成物に関する。
【0038】
特定の組成物においては、イツリン系リポペプチドの量は好ましくは、10~80g/Lであり、好ましくは20~80g/L、最も好ましくは30~80g/Lである。
【0039】
第3の観点によれば、本発明は、5~100g/Lのイツリン系リポペプチド、1~40g/Lのサーファクチンおよび1~30g/Lの化学界面活性剤を含む組成物に関する。
【0040】
特定の組成物においては、イツリン系リポペプチドの量は、好ましくは10~80g/Lであり、好ましくは20~80g/L、好ましくは30~80g/Lである。
【0041】
特定の実施形態においては、化学界面活性剤は、ポリグリコシド系の非イオン界面活性剤またはアミノ酸由来の陰イオン界面活性剤であってもよい。好ましくは、化学界面活性剤は、陰イオン界面活性剤および非イオン界面活性剤の混合物から構成される。
【0042】
第4の観点によれば、本発明は、5~100g/Lのイツリン系リポペプチド、1~40g/Lの界面活性剤、1~100g/Lのフェンギシン(またはプリパスタチン)、および1~30g/Lの化学界面活性剤を含む組成物に関する。
【0043】
特定の組成物においては、イツリン系リポペプチドの量は、好ましくは10~80g/Lであり、好ましくは20~80g/L、好ましくは30~80g/Lである。
【0044】
第5の観点によれば、本発明は、植物油などの油性または脂肪化合物中に5~100g/Lのマイクロエマルション化されたイツリン系リポペプチドを含む組成物に関する。そのような組成物においては、油の濃度は1~100%、好ましくは50~100%、特に好ましくは80~100%である。使用可能な植物油としては、コーン油のみならず、アーモンド、ピーナッツ、アルガン、アボガド、ナタネ、ロレンツォ、ニーム、ヘーゼルナッツ、カシューナッツ、マカダミアナッツ、オリーブ、ピスタチオ、イネ、オレイックヒマワリ、アマナズナ属、アマ、ルリジサ、ベニバナ、アサ、綿、コムギ胚芽、トウモロコシ、クルミ、ケシ、月見草、大麦、かぼちゃ種子、ブドウ種子、エンドウ豆、ゴマ、大豆、ヒマワリ、の油および変性油抽出物がある。
【0045】
好ましくは使用される油は、ピーナッツ、オリーブ、オレイックヒマワリ、アマ、トウモロコシ、クルミ、大豆およびヒマワリからの油である。このような油は、大量にかつ低コストで入手できるという長所がある。さらにより好ましくは、使用される油はトウモロコシまたはヒマワリの種子からの油である。
【0046】
好ましい実施形態においては、そのような組成物は、10~80g/L、好ましくは20~80g/Lのミコサブチリン、好ましくは30~80g/L、大変好ましくは50~80g/Lのミコサブチリンを含む。
【0047】
従って、本発明による特定の組成物は、以下を含む。
-2~8%のイツリン系リポペプチド
-非イオン系および陰イオン系の界面活性剤のそれぞれ1.5%から構成された3%の化学界面活性剤
-2~4%の界面活性剤
-0~10%のフェンギシンまたはプリパスタチン
【0048】
特定の実施形態においては、組成物は、約3%のリポペプチド(1.25%のミコサブチリンおよび1.85%のサーファクチン)、ポリグリコシド由来の1.5%の非イオン系界面活性剤およびアミノ酸由来の1.5%の陰イオン系界面活性剤を含む。
【0049】
別の特定の実施形態においては、組成物は、約5%のリポペプチド(2.45%のミコサブチリンおよび2.65%のサーファクチン)、および3~8%のフェンギシン(またはプリパスタチン)を含む。
【0050】
別の特定の実施形態においては、組成物は、30~80g/Lのミコサブチリン、およ
び30~80g/Lのフェンギシン(またはプリパスタチン)を含む。
【0051】
特定の実施形態においては、組成物は、20~100g/Lの濃度のイツリン系リポペプチドを含み、界面活性剤は、植物抽出油、ポリグリコシド誘導体およびサーファクチンである。
【0052】
別の特定の実施形態においては、組成物は20~100g/Lの濃度のイツリン系リポペプチドを含み、界面活性剤はメチル化植物種子抽出油、およびポリグリセリンココナツオイルエステル(Synergen OS(登録商標))である。
【0053】
別の特定の実施形態においては、組成物は20~100g/Lの濃度のイツリン系リポペプチドを含み、界面活性剤はアルキルポリグリコシド(Simulsol(登録商標))、アミノ酸誘導体(Proteol(登録商標))およびサーファクチンの混合物である。
【0054】
別の特定の実施形態においては、組成物は20~100g/Lの濃度のイツリン系リポペプチドを含み、界面活性剤は脂肪族アルコールオキシアルキレート(Emulsogensol(登録商標))およびサーファクチンの混合物である。
【0055】
別の特定の実施形態においては、組成物は20~100g/Lの濃度のイツリン系リポペプチドを含み、界面活性剤は植物油、キサンタンガムおよびサーファクチンの混合物である。
【0056】
本発明による組成物は、使用準備状態あるいは濃縮状態で準備でき、濃縮された溶液は使用前に希釈可能である。
【0057】
本発明の第2の目的は、イツリン系リポペプチドの濃度が0.5%を超えるリポペプチドの混合物を含む乾燥組成物に関する。好ましい実施形態においては、イツリン系リポペプチドの濃度は2%を超える。
【0058】
そのような乾燥組成物は、粉末または凍結乾燥形態であり、使用準備状態であり、事実、100mLの溶液でそれを再水和することで、少なくとも5g/Lの濃度のイツリン系リポペプチドの組成物を得るのに十分である。好ましい実施形態においては、そのような組成物は、少なくとも20g/Lの濃度のイツリン系リポペプチドを有する。
【0059】
これらの個体組成物中の成分および成分の相対量は、液体組成物に対して前述したものと同じである。事実、これらの脱水溶液の種々の成分の乾燥重量による濃度は、本発明による安定で均質なイツリン系リポペプチド濃度が5g/Lの液体組成物を得ることを可能にする。好ましい実施形態によれば、イツリン系リポペプチドの濃度は20g/Lを超える。
【0060】
本発明の第3の目的は、イツリン系リポペプチドの濃度が5g/Lを超えるリポペプチドの混合物を含む組成物を調製する方法に関する。好ましい実施形態においては、イツリン系リポペプチドの濃度は20g/Lを超える。
【0061】
組成物のイツリン系リポペプチドは、バチルス種の菌株の発酵により得ることができて、培養上清から収穫して濃縮可能である。
【0062】
本発明の組成物は、粉末形態の市販のリポペプチド調整物を使用して調整可能である。これらの市販粉末は、例えば、15%または75%など、10~80%以上の範囲の種々の量のイツリン系リポペプチドを含む。ミコサブチリンおよびサーファクチンの混合物を
30/70~70/30、または、95/5、例えば、35/65、40/60、45/55、または50/50の比で含む。
【0063】
本発明による組成物を調製するためには、少なくとも1つの界面活性剤が高含有量のイツリン系リポペプチドを含む溶液に添加されなければならない。
【0064】
そのような組成物を調製する方法は、粉末形態の「使用準備状態」組成物を提供するために、追加的脱水ステップを含んでもよく、その特性は再水和されると本発明の組成物に一致する。
【0065】
従って、本方法は、液体または(粉末または凍結乾燥物の形態での)固溶体を調整することを可能にする。このような濃縮溶液は、保存および流通に特に適している。これらは、使用前に希釈されなければならない。
【0066】
従って、本発明による組成物は、上述の液体組成物の再構成を可能にする粉末を溶解することによっても得ることができる。
【0067】
本発明による組成物は、食品、植物保護、および化粧品の分野と共に、医薬および薬学の分野で用途がある。
【0068】
本発明を以下の実施例を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】イツリン系リポペプチド(ここではミコサブリチン)単独の水溶液中における溶解度をその濃度と関係付けて示す説明図である。
図2】種々の組成物中におけるイツリン系リポペプチドの最大溶解濃度を示す説明図である。
図3】21℃または54℃で保存後の、界面活性剤およびその他の添加物Aを添加した場合と添加しない場合の、異なる濃縮イツリン系組成物の最小粘度の解析を示す説明図である。
図4】21℃または54℃で保存後の、界面活性剤およびその他の添加物Aを添加した場合と添加しない場合の、異なる濃縮リポペプチド組成物の最大粘度の解析を示す説明図である。
【0070】
実施例
A.バチルス菌株培養の上清からのリポペプチドを含む溶液の調製
【0071】
1-培養上清の取得
リポペプチドは、イツリン系リポペプチド産生のための枯草菌ATCC6633由来のバチルス菌株の好気性発酵プロセス、およびサーファクチンおよび/またはフェンギシン(またはプリパスタチン)の産生のための枯草菌168由来の菌株の好気性発酵プロセスから得られる。培養は、炭素源(グルコース、スクロースなど)、窒素源(硫酸アンモニウム、ペプトンなど)および微量元素を含む攪拌培地内で30℃で行われる。PH値は7に維持される。培養物は48~72時間後に収穫される。次に、細菌を除去するために、遠心分離または濾過される。培養上清はその後、濃縮される。
【0072】
2-培養上清からの高含有量のイツリン系リポペプチドを含む組成物の調製
高含有量のイツリン系リポペプチドを含む組成物を得るために、培養上清を濃縮することができる。培養上清の濃度は、当業者に知られている任意の方法、特に以下の方法で得ることができる。
-カットオフ閾値が1KDaから300KDaの膜を使用する接線限外濾過による方法。
例えば、前述のようにして得られた1000Lの培養上清を、膜を通過させることにより濃縮して10~100Lの容積の残余分を得る。小分子は、その後、1または複数の透析濾過ステップで除去される。こうして得られた溶液は、凍結乾燥、噴霧化により乾燥することができるか、そのまま使用することができる。
-酸性pHでの沈殿による方法。
リポペプチドを選択的に沈殿させるためにpH値を低下させる。追加の濃硫酸を得られた上清に加える。約1の最終pH値が得られたら、溶液を2~12時間攪拌する。遠心分離により、リポペプチドを含む物質のペレットを取り出すことができる。このペレットは、その後、水およびナトリウム化合物を加えて、pH値7~8.5を得るように溶解される。こうして得られた溶液は、凍結乾燥、噴霧化により乾燥することができるか、そのまま使用することができる
-蒸発による方法
上清を真空蒸発によって濃縮する。例えば、20Lをロータリーエバポレーターに入れて1~2Lに濃縮する。
【0073】
調製のこれら2実施例のうちの1つの実施例の終わりのリポペプチドの割合は、0.5~20%(重量/容量)である。
【0074】
B.イツリン系リポペプチド濃縮溶液の調製
1-種々の界面活性剤がイツリン系リポペプチドの溶解度および高濃度組成物に及ぼす影響の研究
(乾物上の)純度が45~80%のイツリン系リポペプチド(ここではミコサブリチン)を、水中に単独で種々の濃度で溶解して、この対照組成物を、用途において述べた種々の界面活性剤が加えられた種々の組成物と比較した。
21℃で15日間保存した後で、流体型および(流動を妨げる固化および/または位相シフトおよび/または沈殿がない)均質な外観を有する流体学的挙動を有する組成物のみが選択されて、攪拌混合された。その後、これらの組成物を10,000Gで10分遠心分離し、上清をRP-HPLC比較方法を用いて解析した。
この方法により、遠心分離後の上清中に見いだされるイツリン系化合物の溶解性を検査することが可能である。
【0075】
イツリン系リポペプチド(ここではミコサブリチン)単独の水溶液中における溶解度をその濃度と関係付けて図1に示す。
【0076】
種々の組成物中におけるイツリン系リポペプチドの最大溶解濃度を図2に示す。
【0077】
組成物1は、イツリン系リポペプチドのみを含み、界面活性剤は加えられていない。
【0078】
組成物2から13には、以下のように界面活性剤が添加されている。
-10%のフェンギシン(組成物2)
-それぞれ10%の割合のアルキルポリグリコシド(alkylpolyglucosides)およびア
ミノ酸誘導体(Simulsol(登録商標))/Proteol(登録商標))(組成物3)
-大豆レチシン(4%)およびポリグリコシド誘導体(0.1%)(Elvis(登録商標
)/キサンタンガム)(組成物4)
-メチル化植物種子抽出油と、ココナツオイルからのポリグリセリンエステル(0.2%)(Synergen OS(登録商標))(組成物5)
-脂肪族アルコールオキシアルキレート(fatty alcohol oxalkylate)タイプの非イオン系界面活性剤(0.2%)(Emulsogensol(登録商標))(組成物6)
-ペンチレングリコールタイプの非イオン系界面活性剤(50%)(組成物7)
-0.4%のポリグリコシド誘導体(アルキルエトキシグリコシド=AEG)(組成物8)
-4%のサーファクチン(組成物9)
-4%のサーファクチンおよび10%のフェンギシン(組成物10)
-植物抽出油(30%)およびポリグリコシド誘導体(0.1%)およびサーファクチン(4%)(コーン油/キサンタンガム/サーファクチン)(組成物11)
-それぞれ10%の割合のアルキルポリグルコシドおよびアミノ酸誘導体(Simulsol(登録商標)/Proteol(登録商標))および4%のサーファクチン(組成物12)
-0.2%の脂肪族アルコールオキサアルキル化タイプの非イオン系界面活性剤(Emulsogen(登録商標)および4%のサーファクチン(組成物13)
【0079】
結果の解析
図1に室温での水溶液中におけるイツリン系リポペプチド(ここではミコサブリチン)の溶解度をそれらの濃度と関連付けて示す。
【0080】
図1においては、ミコサブリチン単独では最大濃度が2g/Lでは水溶液中で非常によく可溶化することが観察できる、しかし、この濃度を超えると(例えば5g/L~25g/Lの間では)沈殿する沈殿物が観察できて、一部のみが可溶となる。
【0081】
図2は、室温で15日保存した後で、高可溶性濃度のイツリン系リポペプチドを得るために、イツリン系リポペプチド(ここではミコサブリチン)および種々の化合物を含む種々の組成物の溶解度分析(可溶性分析)を示す。測定は、不溶解性物質を除くための遠心分離ステップの後の上清で行われる。
【0082】
図2においては、種々の界面活性剤の添加、特に陰イオン系化合物単独または非イオン系界面活性剤との組み合わせがミコサブリチンの溶解度を有意に増加させることを観察できる。フェンギシンまたはサーファクチンの存在は、ミコサブリチンの溶解度を30g/L近くまで得ることを可能にする。驚くべき独創的な方法として、これら2つの陰イオン系リポペプチド化合物の組み合わせは、イツリン系化合物のより高い溶解度を得ることを可能にする。
また、均質で安定した組成物にもかかわらず、ある種の界面活性剤は、20g/Lを超える溶解度が得られていないことにも注意しなければならない。これは、キサンタンガムと結合した大豆レチシンの場合(最大1.5g/L)、非イオン系界面活性剤(Emulsogensol(登録商標))(クラリアント社)の場合(最大11.6g/L)であるが、非イオン系化合物(Simulsol(登録商標)および陰イオン系(Proteol(登録商標))(Seppic社)の場合(最大15.3g/L)でもある。これらの組成物に対しては、有意な沈殿が遠心分離ステップの後で認められた。他方、これらの組成物が、サーファクチンなどの別の陰イオン系リポペプチド化合物によって補われている場合には、ミコサブリチンの溶解度は、55~120g/Lの間の値に増大する。
ペンチレングリコールおよびアルキルエトキシグリコシドなどの別の非イオン系化合物はまた、30g/Lを超える溶解度をもたらす。イツリン系化合物の最大溶解度(112g/L)を可能にする組成物は、陰イオン系リポペプチド(サーファクチン)および非イオン系界面活性剤(Emulsogen(登録商標))を含む組成物である。
【0083】
2-リポペプチド粉末からの高含有量のイツリン系リポペプチドを含む組成物の調製
高含有量のイツリン系リポペプチドを含む組成物は、次の2つの組成物の例で示すようにリポペプチド粉末から調製可能である。
組成物1:約3.1%(m/v)のリポペプチド(1.25%のミコサブリチンおよび1.85%のサーファクチン)を含む組成物は、ミコサブリチンとサーファクチンとの混合物を40対60の比で含み(pH値7.5~8.5の)水相中で約15%の純度のリポ
ペプチド粉末を再懸濁化することで得られた。
組成物2:約5.1%(m/v)のリポペプチド(2.45%のミコサブリチンおよび2.65%のサーファクチン)を含む組成物は、ミコサブリチンとサーファクチンとの混合物を45対55の比で含み(pH値7.5~8.5の)水相中で約75%の純度のリポペプチド粉末を再懸濁化することで得られた。
【0084】
3-界面活性剤を含み高含有量のイツリン系リポペプチドを含む組成物の調製
前述の組成物1および2に界面活性剤を添加して、組成物の特性に対する界面活性剤分子の効果を評価した。
組成物1A:2つの界面活性剤、すなわち、ポリグリコシド由来の非イオン系ハイドロトロピック界面活性剤(商標名はSimulsol、Seppicから市販の商品名SL 7C)およびアミノ酸由来の陰イオン系界面活性剤(商標名はProteol、Seppicから市販の商品名AP
L)を、組成物1にそれぞれ10%(v/v)の割合で添加した。
組成物2A:3~8%(m/v)のフェンギシン(またはプリパスタチン)を組成物2に添加した。
【0085】
4-得られた組成物の特徴づけ:経時的な均質性および安定性
a.室温での安定性試験
界面活性剤を含むおよび含まない組成物の外観を室温、ここでは約21℃で調査した。
組成物1:前述の2つの界面活性剤の添加により、均質な組成物(組成物1A)を得ることが可能になり、沈殿物や沈降現象を回避することが可能になった。界面活性剤を含む組成物1Aは、濁っているが均質な外観を有する。
組成物2:フェンギシン(またはプリパスタチン)の添加により、均質な組成物を得ることが可能になり、(フェンギシン(またはプリパスタチン)の不存在により生じる)固化現象を回避することが可能になった。フェンギシン(またはプリパスタチン)を有する組成物2Aは、透明で均質な外観を有する。
【0086】
b.低温での安定性試験
濃縮リポペプチド溶液(組成物1、2および1A、2A)を、4℃で1~30日間、置いた。界面活性剤またはフェンギシン(またはプリパスタチン)を添加した溶液(すなわち1Aおよび2A)のみが、均質さを保ち、沈着物が観察されなかった。これらの添加のない場合には、濃縮リポペプチド溶液は固まるか、またはかなりの不溶解性沈着物を生じる可能性が高い。
【0087】
5-得られた組成物のレオロジーの特徴付け:室温保存および加速エージングの影響
a.解析方法
上述の1および2の2つの組成物および添加剤1Aおよび2Aを含む組成物を21℃で15日間、および(加速エージングのシミュレーションを行うために)54℃で15日間保存した。高温(54℃)での組成物の保存は、当業者には知られている方法であり、ブラウン運動を増大させて、組成物の不安定化を加速することにより、組成物の加速エージングを擬態することが可能である。
【0088】
これらの期間の終了時に、組成物のレオロジーをアントンパール(Anton PAAR)社のモジュラーコンパクトレオメータMCR102を用いて調査した。この方法は、せん断応力が1~100Paの間で徐々に増加する際(試験期間500s)のせん断速度をモニターすることから構成される。粘度(せん断応力/せん断速度比)は、また、せん断応力の関数としても表される。これにより、試験期間中の粘度の進展を可視化することが可能になる。これらの試験は、それぞれ3つの試料で行った。
【0089】
これらの組成物を21℃または54℃で保存した後に、2つのレオロジーパラメータ、
すなわち、最小粘度(Pa・s)および最大粘度でのせん断応力(Pa)を調査した。
【0090】
b.結果
全ての試料は、非ニュートン流体挙動を示した。(試験期間中の粘度が一定でなかった)を示した。せん断応力が増加するにつれて、粘度は減少して最小粘度に近づく。攪拌下における粘度の減少は、流れの方向における構造単位(または分子)の徐々の整列によって説明することができ、従ってせん断速度が増加するにつれて、異なる液体層の流れを促進する。流体は、その時、せん断減粘剤(shear-thinners)と呼ばれ、最小粘度(適用されたテストの場合はテスト終了時の粘度)および最大粘度(Pa)でのせん断応力によって特徴付けられる。
【0091】
-最小粘度の調査
図3は、21℃または54℃で保存後の、界面活性剤およびその他の添加物Aを添加した場合と添加しない場合の、異なる濃縮イツリン系組成物の最小粘度の解析を示す。
【0092】
図3に示す結果は、21℃で保存後の組成物1Aの最小粘度が、処方されていない組成物1の最小粘度よりも有意に異なり、低いことを示す。21℃で保存後の組成物2と2Aには、有意な違いは観察されなかった。それにも関わらず、54℃でのエージング試験においては、組成物2の最小粘度は、組成物2Aの最小粘度が0に近いのを維持しているのに対して、非常に有意に増加している。これは、フェンギシン(プリパスタチン)を後者に添加してイツリン系リポペプチドの溶解度を促進する非常に重要な効果を示している。同様な効果が、54℃保存後の組成物1と1Aとの間でも観察できて、組成物1Aの処方の利益を示している。
【0093】
-最大粘度でのせん断応力の調査
図4は、21℃または54℃で保存後の、界面活性剤およびその他の添加物Aを添加した場合と添加しない場合の、異なる濃縮リポペプチド組成物の最大粘度の解析を示す。
【0094】
図4に示す結果は、組成物1Aの21℃で15日間保存後の最大粘度が、処方されていない組成物1の最大粘度よりも低いことを示す。組成物2と2Aには、有意な違いは観察されなかった。それにも関わらず、このパラメータにおける54℃での加速エージングの影響を調査した場合、図4における結果は、処方されていない組成物1および2でせん断応力が非常に有意に増加しているが、処方された組成物1Aおよび2Aは、21℃で得られた結果とほとんど一致して維持されていることを示す。これらの結果は、高濃度のイツリン系化合物の経時的な溶解性を促進することに対する本発明による製剤の非常に好ましい影響を示す。
【0095】
これらの研究の結論として、以下を確立することができた。
-組成物1Aは、沈殿および/またはゲル形成を避けながらイツリン系化合物を可溶化することを可能にし、このことは、21℃またはそれらのエージングの際の最小粘度における、および最大粘度でのせん断応力における、有意な減少によって特徴づけられる。組成物1および1Aは、非ニュートン・カッションタイプの流体に関する。
-組成物2Aは、沈殿および/またはゲル形成を避けながらイツリン系化合物を長期に亘って保存した後で可溶化することを可能にする。このことは、54℃で保存後の、最小粘度および最大粘度におけるせん断応力の有意な減少によって特徴付けられる。組成物2および2Aは、最初は、せん断減粘性タイプの非ニュートン流体に関するが、処方していない組成物2は、そのエージング後の際に非常に濃くなる。
図1
図2
図3
図4