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特許7616589核磁気共鳴センシング装置および核磁気共鳴センシング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】核磁気共鳴センシング装置および核磁気共鳴センシング方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 24/00 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G01N24/00 580
G01N24/00 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023562138
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 JP2022030783
(87)【国際公開番号】W WO2023089883
(87)【国際公開日】2023-05-25
【審査請求日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2021188930
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 共創の場形成支援(産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム)、「超スマート社会実現のカギを握る革新的半導体技術を基盤としたエネルギーイノベーションの創出に関する国立大学法人京都大学による研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】大木 出
(72)【発明者】
【氏名】水落 憲和
(72)【発明者】
【氏名】芳井 義治
(72)【発明者】
【氏名】金子 卓樹
(72)【発明者】
【氏名】佐光 暁史
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-017486(JP,A)
【文献】特開2016-024110(JP,A)
【文献】特開2020-146150(JP,A)
【文献】特開平10-099291(JP,A)
【文献】特表平07-502593(JP,A)
【文献】特開2014-138699(JP,A)
【文献】特開2013-106950(JP,A)
【文献】実開平01-130708(JP,U)
【文献】特開2009-273889(JP,A)
【文献】特開平09-266897(JP,A)
【文献】米国特許第04677382(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0225378(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 24/00-G01N 24/14
G01R 33/00-G01R 33/64
A61B 5/055
G01N 22/00-G01N22/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
IEEE Xplore
Wiley Online Library
ACS PUBLICATIONS
APS Jounrnals
Nature
SCIENCE
Scitation
Science Direct
SPIE Digital Library
KAKEN
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RF信号に基づく高周波磁場を対象物体に印加し、前記RF信号の周波数から核磁気共鳴信号の周波数だけシフトした周波数の観測信号を生成する核磁気共鳴センシング部と、
前記観測信号の中間周波復調を実行して、前記核磁気共鳴信号を含む中間周波復調信号を生成するミキサ部と、
前記中間周波復調信号のうち、前記中間周波復調の中間周波数より高い周波数成分を減衰させ、前記核磁気共鳴信号の周波数成分を透過するローパスフィルタと、
前記ローパスフィルタを透過した前記中間周波復調信号をデジタイズするデジタイズ装置とを備え、
前記デジタイズ装置は、前記ローパスフィルタを透過した前記中間周波復調信号に対応する磁場または電場を発生する物理場発生装置と、前記磁場または前記電場に対応する光をセンシング部材で発生し、前記光を光電素子で、センサ信号としての電気信号に変換する光学的量子センサ部と、前記センサ信号をデジタイズするアナログ/デジタル変換器とを備え、
前記光学的量子センサ部は、前記センシング部材に対して量子操作を行って、前記磁場または前記電場に対応する前記光を前記センシング部材に発生させること、
を特徴とする核磁気共鳴センシング装置。
【請求項2】
RFベース信号および中間周波ベース信号を生成するベース信号生成装置と、
前記RFベース信号および前記中間周波ベース信号を混合して前記RF信号を生成する送信系ミキサ部とをさらに備え、
前記ミキサ部は、前記RFベース信号で前記観測信号の中間周波復調を実行して、前記核磁気共鳴信号を含む中間周波復調信号を生成し、
前記光学的量子センサ部は、前記中間周波ベース信号を同期信号として使用して、前記同期信号に従って定期的に繰り返し、前記センシング部材に対して量子操作を行って前記磁場または前記電場に対応する前記光を前記センシング部材に発生させること、
を特徴とする請求項1記載の核磁気共鳴センシング装置。
【請求項3】
前記核磁気共鳴センシング部と前記デジタイズ装置との間に増幅回路およびバッファのいずれも備えていないことを特徴とする請求項1または請求項2記載の核磁気共鳴センシング装置。
【請求項4】
前記光学的量子センサ部は、前記センサ信号のレベルが前記アナログ/デジタル変換器のノイズフロアを超えるように、前記光を前記センシング部材に発生させることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の核磁気共鳴センシング装置。
【請求項5】
前記光電素子と前記アナログ/デジタル変換器との間に、前記センサ信号を増加する増幅回路を備えていないことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の核磁気共鳴センシング装置。
【請求項6】
前記光学的量子センサ部は、光検出磁気共鳴測定法または光ポンピング原子磁力測定法に従って、前記センシング部材に対して量子操作を行って、前記磁場または前記電場に対応する前記光を前記センシング部材に発生させることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の核磁気共鳴センシング装置。
【請求項7】
RF信号に基づく高周波磁場を対象物体に印加し、前記RF信号の周波数から核磁気共鳴信号の周波数だけシフトした周波数の観測信号を生成するステップと、
前記観測信号の中間周波復調を実行して、前記核磁気共鳴信号を含む中間周波復調信号を生成するステップと、
ローパスフィルタで、前記中間周波復調信号のうち、前記中間周波復調の中間周波数より高い周波数成分を減衰させ、前記核磁気共鳴信号の周波数成分を透過するステップと、
デジタイズ装置で、前記ローパスフィルタを透過した前記中間周波復調信号をデジタイズするデジタイズステップとを備え、
前記デジタイズステップでは、(a)前記ローパスフィルタを透過した前記中間周波復調信号に対応する磁場または電場を発生し、(b)前記磁場または前記電場に対応する光をセンシング部材で発生し、(c)前記光を光電素子で、センサ信号としての電気信号に変換し、(d)アナログ/デジタル変換器で前記センサ信号をデジタイズし、
前記デジタイズステップでは、前記センシング部材に対して量子操作を行って、前記磁場または前記電場に対応する前記光を前記センシング部材に発生させること、
を特徴とする核磁気共鳴センシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核磁気共鳴センシング装置および核磁気共鳴センシング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10は、核磁気共鳴を利用した測定装置の一例を示すブロック図である。例えば図10に示すように、核磁気共鳴を利用した測定装置は、一般的に、(a)測定対象301に対して、高周波コイル311で歳差運動の周波数に近い周波数を有するRF(Radio Frequency)信号に基づく高周波磁場を印加することで核磁化を共鳴させ、(b)その共鳴した核磁化を受信コイル312で検出し、核磁気共鳴(NMR)信号を含む観測信号を生成し、(c)その観測信号をローノイズアンプ(LNA)などといったプリアンプ313,314で増幅し、(d)増幅後の観測信号を検波器で検波しNMR信号を抽出している。
【0003】
また、一般的に、そのような観測信号やNMR信号は、アナログ/デジタル変換回路315で、アナログ信号からデジタル信号へ変換され、デジタル信号として、後段の演算処理装置に供給される(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-039641号公報
【文献】特開2011-101776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の装置では、観測信号を増幅するために、プリアンプなどといった増幅回路が設けられているため、増幅回路に固有なノイズが観測信号やNMR信号に重畳してしまう。このため、増幅回路のノイズフロアの同程度もしくはそれより低いレベルのNMR信号はノイズに埋もれてしまい、そのような低いレベルのNMR信号を精度良く検出することは困難である。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、低レベルのNMR信号を精度良く検出し分解能の高い核磁気共鳴センシング装置および核磁気共鳴センシング方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る核磁気共鳴センシング装置は、RF信号を対象物体に印加し、そのRF信号の周波数から核磁気共鳴信号の周波数だけシフトした周波数の観測信号を生成する核磁気共鳴センシング部と、観測信号の中間周波復調を実行して、核磁気共鳴信号を含む中間周波復調信号を生成するミキサ部と、中間周波復調信号のうち、中間周波復調で得られる2つの帯域成分のうちの高周波帯域成分を減衰させ、その2つの帯域成分のうちの低周波帯域成分を透過するローパスフィルタと、ローパスフィルタを透過した中間周波復調信号をデジタイズするデジタイズ装置とを備える。デジタイズ装置は、ローパスフィルタを透過した中間周波復調信号に対応する磁場または電場を発生する物理場発生装置と、その磁場または電場に対応する光をセンシング部材で発生し、その光を光電素子で、センサ信号としての電気信号に変換する光学的量子センサ部と、センサ信号をデジタイズするアナログ/デジタル変換器とを備え、光学的量子センサ部は、上述のセンシング部材に対して量子操作を行って、上述の磁場または電場に対応する光をセンシング部材に発生させる。
【0008】
本発明に係る核磁気共鳴センシング装置は、RF信号に基づく高周波磁場を対象物体に印加し、そのRF信号の周波数から核磁気共鳴信号の周波数だけシフトした周波数の観測信号を生成する核磁気共鳴センシング部と、その観測信号の中間周波復調を実行して、核磁気共鳴信号を含む中間周波復調信号を生成するミキサ部と、その中間周波復調信号のうち、その中間周波復調の中間周波数より高い周波数成分を減衰させ、核磁気共鳴信号の周波数成分を透過するローパスフィルタと、そのローパスフィルタを透過した中間周波復調信号に対して直交位相検波を行い核磁気共鳴信号の復調信号および被復調信号を生成するアナログ直交位相検波回路と、その復調信号および被復調信号をデジタイズするデジタイズ装置とを備える。そして、デジタイズ装置は、上述の復調信号に対応する磁場または電場を発生する第1物理場発生装置と、上述の被復調信号に対応する磁場または電場を発生する第2物理場発生装置と、第1物理場発生装置により発生させた磁場または電場に対応する光を第1センシング部材で発生し、第1センシング部材により発生させた光を第1光電素子で、第1センサ信号としての電気信号に変換する第1光学的量子センサ部と、第2物理場発生装置により発生させた磁場または電場に対応する光を第2センシング部材で発生し、第2センシング部材により発生させた光を第2光電素子で、第2センサ信号としての電気信号に変換する第2光学的量子センサ部と、第1センサ信号をデジタイズする第1アナログ/デジタル変換器と、第2センサ信号をデジタイズする第2アナログ/デジタル変換器とを備える。第1光学的量子センサ部および前記第2光学的量子センサ部は、それぞれ、第1および第2センシング部材に対して量子操作を行って、上述の磁場または電場に対応する光を第1および第2センシング部材に発生させる。
【0009】
本発明に係る核磁気共鳴センシング方法は、RF信号を対象物体に印加し、そのRF信号の周波数から核磁気共鳴信号の周波数だけシフトした周波数の観測信号を生成するステップと、観測信号の中間周波復調を実行して、核磁気共鳴信号を含む中間周波復調信号を生成するステップと、ローパスフィルタで、中間周波復調信号のうち、中間周波復調で得られる2つの帯域成分のうちの高周波帯域成分を減衰させ、その2つの帯域成分のうちの低周波帯域成分を透過するステップと、デジタイズ装置で、ローパスフィルタを透過した中間周波復調信号をデジタイズするデジタイズステップとを備える。デジタイズステップでは、(a)ローパスフィルタを透過した中間周波復調信号に対応する磁場または電場を発生し、(b)その磁場または電場に対応する光をセンシング部材で発生し、(c)その光を光電素子で、センサ信号としての電気信号に変換し、(d)アナログ/デジタル変換器でセンサ信号をデジタイズする。そのデジタイズステップでは、上述のセンシング部材に対して量子操作を行って、上述の磁場または電場に対応する光を前記センシング部材に発生させる。
【0010】
本発明に係る核磁気共鳴センシング方法は、RF信号に基づく高周波磁場を対象物体に印加し、そのRF信号の周波数から核磁気共鳴信号の周波数だけシフトした周波数の観測信号を生成するステップと、その観測信号の中間周波復調を実行して、核磁気共鳴信号を含む中間周波復調信号を生成するステップと、ローパスフィルタで、その中間周波復調信号のうち、その中間周波復調の中間周波数より高い周波数成分を減衰させ、核磁気共鳴信号の周波数成分を透過するステップと、アナログ回路で、ローパスフィルタを透過した中間周波復調信号に対して直交位相検波を行い核磁気共鳴信号の復調信号および被復調信号を生成するステップと、その復調信号および被復調信号をデジタイズするデジタイズステップとを備える。そして、デジタイズステップでは、(a1)上述の復調信号に対応する磁場または電場を発生し、(a2)上述の被復調信号に対応する磁場または電場を発生し、(b1)上述の復調信号に対応する磁場または電場に対応する光を第1センシング部材で発生し、第1センシング部材により発生させた光を光電素子で、第1センサ信号としての電気信号に変換し、(b2)上述の被復調信号に対応する磁場または電場に対応する光を第2センシング部材で発生し、第2センシング部材により発生させた光を光電素子で、第2センサ信号としての電気信号に変換し、(c1)第1センサ信号をデジタイズし、(c2)第2センサ信号をデジタイズする。デジタイズステップでは、第1および第2センシング部材に対して量子操作をそれぞれ行って、上述の復調信号および被復調信号に対応する磁場または電場に対応する光を第1および第2センシング部材にそれぞれ発生させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低レベルのNMR信号を精度良く検出し分解能の高い核磁気共鳴センシング装置および核磁気共鳴センシング方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る核磁気共鳴センシング装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1におけるデジタイズ装置21の構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施の形態1に係るデジタイズ装置におけるセンサ本体51の構成を示す図である。
図4図4は、実施の形態1に係るデジタイズ装置におけるセンサ信号の一例について説明する図である。
図5図5は、実施の形態2に係るデジタイズ装置におけるセンサ本体51の構成を示す図である。
図6図6は、本発明の実施の形態4に係る核磁気共鳴センシング装置の構成を示すブロック図である。
図7図7は、実施の形態4に係る核磁気共鳴センシング装置におけるデジタイズ装置221の構成を示すブロック図である。
図8図8は、実施の形態5に係る核磁気共鳴センシング装置におけるデジタイズ装置221の構成を示すブロック図である。
図9図9は、実施の形態5におけるデジタイズ装置202のセンサ本体251,271の構成を示す図である。
図10図10は、核磁気共鳴を利用した測定装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
実施の形態1.
【0015】
図1は、本発明の実施の形態1に係る核磁気共鳴センシング装置の構成を示すブロック図である。この核磁気共鳴センシング装置は、対象物体の分子構造解析、イメージングなどに使用される。
【0016】
図1に示す核磁気共鳴センシング装置は、核磁気共鳴センシング部1、ベース信号生成装置2、ミキサ部3、スイッチング部4、マッチング・チューニング回路5、ミキサ部6、およびローパスフィルタ7を備える。
【0017】
核磁気共鳴センシング部1は、後述のRF信号を対象物体に印加し、そのRF信号の周波数fRFから核磁気共鳴(NMR)信号の周波数fNMRだけシフトした周波数(fRF+fNMR)の観測信号(アナログ電気信号)を生成する。
【0018】
具体的には、核磁気共鳴センシング部1は、コイル11、および磁石部12を備える。コイル11は、対象物体101に対して、RF信号に基づく高周波磁場を印加し、対象物体101における核磁化の運動に基づく磁場変化を感受して観測信号を出力する。磁石部12は、永久磁石や電磁石であって、対象物体101に対して静磁場や傾斜磁場を印加する。この観測信号は、NMR信号を含み、周波数fNMRとRF信号周波数fRFとの和の周波数(fRF+fNMR)を有する。
【0019】
ベース信号生成装置2は、単一の中間周波数fIFを有する中間周波(IF)ベース信号、およびRF帯域の周波数fRFと中間周波数fIFとの和である単一の周波数を有するRFベース信号を生成し出力する。
【0020】
ミキサ部3は、RFベース信号およびIFベース信号を混合し、周波数fRFを有するRF信号を生成する。なお、ミキサ部3は、SSB(Single Side Band)変調を行っており、混合で得られる2つの周波数成分(fRF+2fIF),fRFのうち、周波数(fRF+2fIF)の成分を出力せずに、周波数fRFのRF信号のみを出力する。
【0021】
例えば、ミキサ部3は、ダイオードと位相分配器とからなるDBM(Double Balanced Mixer)である。
【0022】
スイッチング部4は、核磁気共鳴センシング部1側(マッチング・チューニング回路5を介した核磁気共鳴センシング部)の接続先を、RF信号の送信系(ベース信号生成装置2およびミキサ部3)および観測信号の受信系(ベース信号生成装置2、ミキサ部6、およびローパスフィルタ7)の一方から他方へ切り替える。具体的には、スイッチング部4は、RF信号の送信時には、その送信系を核磁気共鳴センシング部1側に電気的に接続し、観測信号の受信時には、その受信系を核磁気共鳴センシング部1側に電気的に接続する。
【0023】
マッチング・チューニング回路5は、核磁気共鳴センシング部1でのRF信号の反射を抑制するようにインピーダンスマッチングとともに、NMR信号のレベルが良好になるように周波数チューニングを行う回路である。
【0024】
ミキサ部6は、観測信号およびRFベース信号を混合し、中間周波(IF)復調を行い、2つの周波数成分(2fRF+fIF+fNMR),(fIF-fNMR)を有する中間周波(IF)復調信号を生成し出力する。
【0025】
例えば、ミキサ部6は、ダイオードと位相分配器とからなるDBMであり、トランジスタなどの能動素子を含まない。
【0026】
ローパスフィルタ7は、上述のIF復調信号のうち、ミキサ部6のIF復調で得られる2つの帯域成分(2fRF+fIF+fNMR),(fIF-fNMR)のうちの高周波帯域成分(2fRF+fIF+fNMR)を減衰させ、その2つの帯域成分のうちの低周波帯域成分(fIF-fNMR)を透過するフィルタである。なお、ローパスフィルタ7は、コンデンサ、インダクタ、抵抗などの受動素子のみで構成されるアナログフィルタである。
【0027】
さらに、図1に示す核磁気共鳴センシング装置は、デジタイズ装置21および制御装置22を備える。
【0028】
デジタイズ装置21は、ローパスフィルタ7から出力されるIF復調信号(周波数成分(fIF-fNMR))をアナログ信号からデジタル信号へ変換する。
【0029】
制御装置22は、制御プログラムに従って動作するコンピュータを備え、そのコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備え、制御プログラムをRAMにロードしてCPUで実行することで、後述の動作を実行する。具体的には、制御装置22は、核磁気共鳴センシング部1およびスイッチング部4を制御して、核磁気共鳴センシング部1に、上述の高周波磁場を印加させ、上述の観測信号を出力させる。さらに、制御装置22は、デジタル信号としてのIF復調信号(周波数成分(fIF-fNMR))をデジタイズ装置21から入力され、所定の信号処理(周波数成分fNMRの抽出など)を行って、そのIF復調信号(周波数成分(fIF-fNMR))から、周波数fNMRの成分(つまり、NMR信号)を抽出する。
【0030】
例えば、fIFは、fNMRの1000倍以上の周波数であり、fRFは、fIFの10倍以上の周波数である。例えば、fNMR=1kHzの場合、fRF=43MHz、fIF=1MHzとされる。
【0031】
図2は、図1におけるデジタイズ装置21の構成を示すブロック図である。図1に示すデジタイズ装置は、物理場発生装置41と、光学的量子センサ部42と、アナログ/デジタル変換器(A/D変換器,ADC)43とを備える。
【0032】
物理場発生装置41は、物理場発生装置41の入力端子41aを介して入力される入力信号(つまり、アナログのIF復調信号)に対応する磁場を発生する。例えば、物理場発生装置41は、導電性のコイルや配線でその磁場を発生する。
【0033】
光学的量子センサ部42は、センサ本体51と光電素子52とを備え、センサ本体51において、物理場発生装置41で発生した磁場に対応する光(観測光)をセンシング部材で発生し、光電素子52によって、その光をセンサ信号としての電気信号に変換する。光電素子52は、フォトダイオードやフォトトランジスターなどであって、入射する観測光の強度に対応するセンサ信号を生成する。
【0034】
具体的には、光学的量子センサ部42(具体的にはセンサ本体51)は、センシング部材に対して量子操作(ここでは、マイクロ波とレーザ光による量子操作)を行って、物理場発生装置41で発生した磁場に対応する光をセンシング部材に発生させる。
【0035】
実施の形態1では、光学的量子センサ部42(具体的にはセンサ本体51)は、光検出磁気共鳴測定法(ODMR)に従って、センシング部材に対して量子操作を行って、上述の観測光をセンシング部材に発生させる。
【0036】
図3は、実施の形態1に係るデジタイズ装置におけるセンサ本体51の構成を示す図である。実施の形態1では、ODMRのために、例えば図3に示すように、センサ本体51は、センシング部材としての磁気共鳴部材61、高周波磁場発生器62、および磁石63、高周波電源64、発光装置65、およびコントローラ66を備える。
【0037】
磁気共鳴部材61は、結晶構造を有し、物理場発生装置41で発生した磁場に対応して電子スピン量子状態が変化するとともに、結晶格子における欠陥および不純物の配列方向に応じた周波数のマイクロ波で(ラビ振動に基づく)電子スピン量子操作の可能な部材である。つまり、上述の磁場内に、磁気共鳴部材61が配置される。
【0038】
この実施の形態では、磁気共鳴部材61は、複数(つまり、アンサンブル)の特定カラーセンタを有する光検出磁気共鳴部材である。この特定カラーセンタは、ゼーマン分裂可能なエネルギ準位を有し、かつ、ゼーマン分裂時のエネルギ準位のシフト幅が互いに異なる複数の向きを取り得る。
【0039】
ここでは、磁気共鳴部材61は、単一種別の特定カラーセンタとして複数のNV(Nitrogen Vacancy)センタを含むダイヤモンドなどの部材である。NVセンタの場合、基底状態がms=0,+1,-1の三重項状態であり、ms=+1の準位およびms=-1の準位がゼーマン分裂する。NVセンタが、ms=+1およびms=-1の準位の励起状態から基底状態へ遷移する際に、所定の割合で蛍光を伴い、残りの割合のNVセンタは、励起状態(ms=+1またはms=-1)から基底状態(ms=0)へ無輻射で遷移する。
【0040】
なお、磁気共鳴部材61に含まれるカラーセンタは、NVセンタ以外のカラーセンタでもよい。
【0041】
高周波磁場発生器62は、マイクロ波を磁気共鳴部材61に印加して、磁気共鳴部材61の電子スピン量子操作を行う。例えば、高周波磁場発生器62は、板状コイルであって、マイクロ波を放出する略円形状のコイル部と、そのコイル部の両端から延び基板に固定される端子部とを備える。高周波電源64は、そのマイクロ波の電流を生成して高周波磁場発生器62に導通させる。そのコイル部は、その両端面部分において、磁気共鳴部材61を挟むように所定の間隔で互いに平行な2つの電流を導通させ、上述のマイクロ波を放出する。ここでは、コイル部は板状コイルであるが、表皮効果により、コイル部の端面部分をマイクロ波の電流が流れるため、2つの電流が形成される。これにより、磁気共鳴部材61に略均一な強度のマイクロ波が印加される。
【0042】
NVセンタの場合、ダイヤモンド結晶において、欠陥(空孔)(V)および不純物としての窒素(N)によってカラーセンタが形成されており、ダイヤモンド結晶内の欠陥(空孔)(V)に対して、隣接する窒素(N)の取り得る位置(つまり空孔と窒素との対の配列方向)は4種類あり、それらの配列方向のそれぞれに対応するゼーマン分裂後のサブ準位(つまり、基底からのエネルギ準位)が互いに異なる。したがって、マイクロ波の周波数に対する静磁場によるゼーマン分裂後の蛍光強度の特性において、それぞれの向きi(i=1,2,3,4)に対応して、互いに異なる4つのディップ周波数対(fi+,fi-)が現れる。ここでは、この4つのディップ周波数対のうちのいずれかのディップ周波数に対応して、上述のマイクロ波の周波数(波長)が設定される。
【0043】
また、磁石63は、磁気共鳴部材61に静磁場(直流磁場)を印加し、磁気共鳴部材61内の複数の特定カラーセンタ(ここでは、複数のNVセンタ)のエネルギ準位をゼーマン分裂させる。ここでは、磁石63は、リング型の永久磁石であり、例えば、フェライト磁石、アルニコ磁石、サマコバ磁石などである。なお、磁石63は、電磁石でもよい。
【0044】
また、磁気共鳴部材61において、上述の欠陥および不純物の配列方向が、上述の静磁場の向き(および印加磁場の向き)に略一致するように、磁気共鳴部材61の結晶が形成され、磁気共鳴部材61の向きが設定される。
【0045】
さらに、この実施の形態では、励起光を磁気共鳴部材41に照射するために、発光装置65から磁気共鳴部材61までの光学系(図示せず)が設けられており、また、磁気共鳴部材61からの蛍光(観測光)を検出するために、磁気共鳴部材61から光電素子52までの光学系(図示せず)が設けられている。
【0046】
観測光は、例えば複合放物面型集光器(CPC)などの光学系によって光電素子52へ向けて集光される。例えば、CPC上に磁気共鳴部材61が配置され、磁気共鳴部材61内のカラーセンタから全方位に出射する蛍光のうち、この光学系によって広い立体角(例えば、全方位の所定割合以上)に出射する蛍光が集光される。
【0047】
発光装置65は、光源としてのレーザダイオードなどを備え、その光源で、磁気共鳴部材61に照射すべき励起光として、所定波長のレーザ光を出射する。
【0048】
コントローラ66は、所定の測定シーケンスに従って、(a)高周波電源64および発光装置65を制御して、上述のマイクロ波およびレーザ光で量子操作を行って、センサ本体51において観測光を発生させ、光電素子52においてセンサ信号を生成させる。例えば、コントローラ66は、制御プログラムに従って動作するコンピュータを備え、そのコンピュータは、CPU、ROM、RAM(Random Access Memory)などを備え、制御プログラムをRAMにロードしてCPUで実行することで、上述の動作を実行する。なお、コントローラ66は、制御装置22に内蔵されていてもよいし、制御装置22が、コントローラ66として動作するようにしてもよい。
【0049】
図4は、実施の形態1に係るデジタイズ装置におけるセンサ信号の一例について説明する図である。この測定シーケンスは、上述の磁場の周波数などに従って設定される。例えば、入力信号(IF復調信号)が比較的低周波数(例えば数十Hz)の交流信号である場合、図4に示すように、その1周期において、複数回(n回)、ラムゼイパルスシーケンス(つまり、直流磁場の測定シーケンスSQ1~SQn)で、入力信号に対応する上述の磁場の測定が実行され、センサ信号として測定値BM1~BMnが得られる。これにより、各測定シーケンス時点での磁場強度に対応するレベルのセンサ信号が生成される。
【0050】
また、例えば、上述の磁場が比較的高周波数(例えば数十kHz)の交流磁場である場合には、この測定シーケンスには、スピンエコーパルスシーケンス(ハーンエコーシーケンスなど)が適用されるようにしてもよい。ただし、測定シーケンスは、これらに限定されるものではなく、測定対象の磁場の周波数に応じて選択すればよい。例えば、上述の磁場の周期がT2緩和時間以上である場合には、上述のように複数回のラムゼイパルスシーケンスで磁場測定が実行され、上述の磁場の周期がT2緩和時間より短い場合には、スピンエコーパルスシーケンス(ハーンエコーシーケンスなど)が適用されるようにしてもよい。また、上述の磁場の周期がT2緩和時間の1/2より短い場合には、Qdyne法に従って磁場測定を行うようにしてもよい。
【0051】
図2に戻り、A/D変換器43は、(入力信号をデジタイズせずに)上述のセンサ信号をデジタイズし、これにより、入力信号(IF復調信号)に対応する出力信号としてのデジタル信号を生成し、A/D変換器43の出力端子43aを介して出力する。
【0052】
この実施の形態では、特に、光学的量子センサ部42(具体的にはセンサ本体51)は、センサ信号のレベルがA/D変換器43のノイズフロアを超えるように、上述の観測光をセンシング部材に発生させる。
【0053】
ここで、センシング部材の効率(実施の形態1では、磁気共鳴部材61におけるカラーセンタの種類、数など)、観測光の集光効率(実施の形態1では、カラーセンタの発光量に対する光電素子52への入射光量)、光電素子52の変換効率(入射光量に対するセンサ信号のレベル)などの因子に応じて、センサ信号のレベル(振幅)が変わるため、A/D変換器43のノイズフロア(既知)に応じて、センサ信号のレベルがA/D変換器43のノイズフロアを超えるように、これらの因子の値が決定される。これにより、例えば、光学的量子センサ部42の感度は、1.5pT/Hz1/2以上とされる。
【0054】
また、一般的に、A/D変換器のノイズは、量子化ノイズおよび熱ノイズを含んでおり、高分解能のA/D変換器では、量子化ノイズに比べ熱ノイズが支配的となる。当該実施の形態におけるA/D変換器43は、高分解能のA/D変換器とされ、センサ信号のレベルが熱ノイズのノイズレベルを超えるように、上述の因子の値が決定される。
【0055】
また、A/D変換器43の基準電圧は、センサ信号のレンジ(レベル最小値とレベル最大値)に応じて、設定される。なお、A/D変換器の基準電圧を低くすることで、量子化ノイズは小さくなるが、熱ノイズについては小さくならない。
【0056】
なお、入力されるIF復調信号のレベル(またはレンジ)および物理場発生装置41の電磁変換効率は既知である。
【0057】
また、この実施の形態では、特に、当該デジタイズ装置21は、光電素子52とA/D変換器43との間に、センサ信号を電気的に増加する増幅回路を備えていない。さらに、この実施の形態では、入力信号の信号源と物理場発生装置41との間に入力信号を電気的に増加する増幅回路が設けられていない。つまり、この実施の形態では、A/D変換器43より上流側に、ノイズ源となる電気的な増幅回路が設けられていない。そのような増幅回路では、A/D変換器43と同様に熱ノイズが発生し増幅されるため、A/D変換器43に入力される信号にノイズが重畳するため、このように増幅回路が設けられていないことが好ましい。
【0058】
なお、高周波電源64およびコントローラ66とA/D変換器43とは電気的に分離しており、高周波電源64およびコントローラ66で発生する電気的なノイズはA/D変換器43に侵入しないようになっている。
【0059】
さらに、この実施の形態1では、ミキサ部6は、RFベース信号で観測信号の中間周波復調を実行して、NMR信号を含むIF復調信号を生成し、光学的量子センサ部42(コントローラ66)は、IFベース信号を同期信号として使用して、同期信号に従って定期的に繰り返し、センシング部材に対して量子操作を行って磁場に対応する光をセンシング部材に発生させ、これにより、デジタイズ装置21に、IFベース信号に同期して、デジタルのIF復調信号を出力させる。そして、制御装置22は、このデジタルのIF復調信号に基づいて、Qdyne法に従って、精度良く、NMR信号の周波数fNMRを同定する。
【0060】
なお、この実施の形態1では、核磁気共鳴センシング部1とデジタイズ装置21との間に増幅回路およびバッファはいずれも設けられていない。つまり、核磁気共鳴センシング部1からデジタイズ装置21までの回路には受動素子のみが使用されており、熱ノイズの発生が抑制されている。
【0061】
次に、実施の形態1に係る核磁気共鳴センシング装置の動作について説明する。
【0062】
制御装置22は、核磁気共鳴センシング部1を制御するとともに、スイッチング部4を制御して、核磁気共鳴センシング部1において、送信系からのRF信号に基づく高周波磁場を対象物体101に印加し、スイッチング部4を制御して、核磁気共鳴センシング部1からの観測信号を受信系に導通させる。
【0063】
図1に示すように、観測信号は、ミキサ部6によって、IF復調信号に変換され、さらに、ローパスフィルタ7によって、高周波帯域側の成分が除去されたIF復調信号がデジタイズ装置21に入力される。
【0064】
デジタイズ装置21では、IF復調信号が物理場発生装置41に印加されると、物理場発生装置41において、入力信号のレベルに対応する強度の磁場が発生し、光学的量子センサ部42のセンサ本体51に印加される。
【0065】
センサ本体51では、上述のように測定シーケンスが実行され、その磁場の強度に応じた光量の光が発生する。実施の形態1では、ODMRに従って、磁気共鳴部材61に、その磁場の強度に応じた光量の光を発生させる。
【0066】
そして、光電素子52が、その光を受光し、受光光量に応じたレベルのセンサ信号を生成し、A/D変換器43に出力する。
【0067】
A/D変換器43は、そのセンサ信号をデジタイズして、アナログのIF復調信号に対応するデジタルのIF復調信号を生成し、制御装置22に出力する。
【0068】
制御装置22は、継続して繰り返し、デジタルのIF復調信号の値を取得し、上述のように、信号処理によってNMR信号(具体的には、fNMRなど)を導出し、そのNMR信号に基づいて、対象物体101の分子構造解析、イメージングなどを行う。
【0069】
以上のように、上記実施の形態1によれば、核磁気共鳴センシング部1は、RF信号を対象物体101に印加し、そのRF信号の周波数と核磁気共鳴信号の周波数との和の周波数を有する観測信号を生成する。ミキサ部6は、その観測信号のIF復調を実行して、核磁気共鳴信号を含むIF復調信号を生成する。ローパスフィルタ7は、IF復調信号のうち、IF復調で得られる2つの帯域成分のうちの高周波帯域成分を減衰させ、その2つの帯域成分のうちの低周波帯域成分を透過する。デジタイズ装置21は、ローパスフィルタ7を透過したIF復調信号をデジタイズする。デジタイズ装置21では、物理場発生装置41は、ローパスフィルタ7を透過した中間周波復調信号に対応する磁場または電場を発生し、光学的量子センサ部42は、その磁場または電場に対応する光をセンシング部材で発生し、その光を光電素子で、センサ信号としての電気信号に変換し、アナログ/デジタル変換器43は、そのセンサ信号をデジタイズする。この光学的量子センサ部42は、上述のセンシング部材に対して量子操作を行って、上述の磁場または電場に対応する光をセンシング部材に発生させる。
【0070】
これにより、物理場発生装置41および光学的磁気センサ部42を使用して、微弱なIF復調信号に対応する、比較的レベルの大きいセンサ信号が得られデジタイズされるため、NMR信号を含むIF復調信号(デジタル信号)が精度良く得られる。したがって、A/D変換器43のノイズレベルと同様のレベル以下の微小なIF復調信号が精度良くデジタイズされる。ひいては、低レベルのNMR信号を精度良く検出し分解能の高い核磁気共鳴センシングが実行可能となる。
【0071】
実施の形態2.
【0072】
実施の形態2では、光学的量子センサ部42は、ODMRの代わりに、光ポンピング原子磁力測定法(OPAM)に従って、センシング部材に対して量子操作を行って、磁場に対応する光をセンシング部材に発生させる。
【0073】
図5は、実施の形態2に係るデジタイズ装置におけるセンサ本体51の構成を示す図である。実施の形態2では、OPAMのために、センサ本体51は、セル71と、磁石72と、発光装置73,74とを備える。
【0074】
セル71は、透過性のあるガラスセルなどであって、センシング部材71aとしてのアルカリ金属原子(K,Rb,Csなど)がバッファガスとともにセル71に封入されている。磁石72は、センシング部材に静磁気を印加する磁石であって、上述のような永久磁石でもよいし電磁石でもよい。
【0075】
発光装置73は、ポンプ光を生成し、センシング部材71aに照射する。発光装置74は、プローブ光を生成し、センシング部材71aに照射する。OPAMの測定シーケンスでは、ポンプ光による光ポンピングによってセンシング部材にスピン偏極が生じ、磁場に応じたスピン偏極の回転がプローブ光の磁気光学回転で測定される。具体的には、観測光(つまり、磁気光学回転後のプローブ光)の偏向回転角が検出される。観測光の偏向回転角は、4ディテクタ法などで、複数の光電素子52で検出される。複数の光電素子52で検出される場合には、それらのセンサ信号は、複数のA/D変換器43でそれぞれデジタイズされ、複数のデジタル信号とされた後に演算処理(差分演算など)されるようにしてもよい。
【0076】
なお、実施の形態2に係る核磁気共鳴センシング装置のその他の構成および動作については、実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0077】
実施の形態3.
【0078】
実施の形態3では、物理場発生装置41は、物理場発生装置41の入力端子41aを介して入力される入力信号(つまり、アナログのIF復調信号)に対応する電場を発生し、光学的量子センサ部42は、センサ本体51において、物理場発生装置41で発生した電場に対応する光(観測光)をセンシング部材で発生し、光電素子52によって、その光をセンサ信号としての電気信号に変換する。
【0079】
例えば、物理場発生装置41は、対となる電極板でその電場を発生する。なお、この入力信号は、単一周波数の交流信号でもよいし、複数の周波数成分を有する所定周期の交流信号でもよいし、直流信号でもよい。つまり、上述の電場は、入力信号に応じた、単一周波数の交流電場、複数の周波数成分を有する所定周期の交流電場、直流電場などとなる。
【0080】
なお、実施の形態3に係る核磁気共鳴センシング装置のその他の構成および動作については、実施の形態1または2と同様であるので、その説明を省略する。ただし、ODMRやOPAMで使用されるセンシング部材には、電場によって量子状態が変化し同様の測定シーケンスでその電場を測定可能なものが使用される。
【0081】
実施の形態4.
【0082】
図6は、本発明の実施の形態4に係る核磁気共鳴センシング装置の構成を示すブロック図である。
【0083】
実施の形態4に係る核磁気共鳴センシング装置は、図6に示すように、実施の形態1と同様の、核磁気共鳴センシング部1、ベース信号生成装置2、ミキサ部3、スイッチング部4、マッチング・チューニング回路5、ミキサ部6、およびローパスフィルタ7を備える他、アナログ直交位相検波回路201、デジタイズ装置202、および制御装置203を備える。
【0084】
アナログ直交位相検波回路201は、ローパスフィルタ7を透過した中間周波復調信号に対して直交位相検波を行い核磁気共鳴信号の復調信号Iおよび被復調信号Qを生成する。
【0085】
具体的には、アナログ直交位相検波回路201は、90度移相器211、ミキサ部212,213、およびローパスフィルタ214,215を備える。90度移相器211は、IFベース信号の位相を90度ずらす。なお、90度移相器211は、アナログ回路であって、能動素子を含まないようにしてもよい。ミキサ部212は、IF復調信号およびIFベース信号を混合して復調を行い、2つの周波数成分(2fIF-fNMR),fNMRを有する復調信号を生成し出力する。ローパスフィルタ214は、上述の復調信号のうち、ミキサ部212の復調で得られる2つの帯域成分(2fIF-fNMR),fNMRのうちの高周波帯域成分(2fIF-fNMR)を減衰させ、その2つの帯域成分のうちの低周波帯域成分(fNMR)を透過するフィルタである。ミキサ部213は、IF復調信号および90度移相後のIFベース信号を混合して復調を行い、2つの周波数成分(2fIF-fNMR),fNMRを有する復調信号を生成し出力する。ローパスフィルタ215は、上述の復調信号のうち、ミキサ部213の復調で得られる2つの帯域成分(2fIF-fNMR),fNMRのうちの高周波帯域成分(2fIF-fNMR)を減衰させ、その2つの帯域成分のうちの低周波帯域成分(fNMR)を透過するフィルタである。なお、ローパスフィルタ214,215は、コンデンサ、インダクタ、抵抗などの受動素子のみで構成されるアナログフィルタである。例えば、ミキサ部212,213は、ダイオードと位相分配器とからなるDBMである。
【0086】
デジタイズ装置202は、上述の復調信号Iおよび被復調信号Q(周波数成分fNMR)をそれぞれデジタイズし、アナログ信号からデジタル信号へ変換する。
【0087】
制御装置203は、制御プログラムに従って動作するコンピュータを備え、そのコンピュータは、CPU、ROM、RAMなどを備え、制御プログラムをRAMにロードしてCPUで実行することで、後述の動作を実行する。具体的には、制御装置203は、制御装置22と同様に、核磁気共鳴センシング部1およびスイッチング部4を制御して、核磁気共鳴センシング部1に、上述の高周波磁場を印加させ、上述の観測信号を出力させる。さらに、制御装置203は、デジタル信号としての復調信号Iおよび被復調信号Q(周波数成分fNMR)をデジタイズ装置202から入力され、所定の信号処理を行って、NMR信号(周波数成分fNMR)を抽出する。ここで、この所定の信号処理では、復調信号Iおよび被復調信号Qのそれぞれに対してFFT(Fast Fourier Transform)などフーリエ変換を行い、復調信号Iおよび被復調信号Qのそれぞれの周波数成分を特定し、これにより、NMR信号(周波数成分fNMR)を抽出したり、化学シフトの検出などをする。
【0088】
図7は、実施の形態4に係る核磁気共鳴センシング装置におけるデジタイズ装置221の構成を示すブロック図である。図7に示すデジタイズ装置202は、復調信号Iのデジタイズを行うデジタイズ部202aと、被復調信号Qのデジタイズを行うデジタイズ部202bとを備える。
【0089】
デジタイズ部202aは、物理場発生装置41と同様の物理場発生装置241と、光学的量子センサ部42と同様の光学的量子センサ部242と、A/D変換器43と同様のA/D変換器243とを備える。また、デジタイズ部202bは、物理場発生装置41と同様の物理場発生装置261と、光学的量子センサ部42と同様の光学的量子センサ部262と、A/D変換器43と同様のA/D変換器263とを備える。
【0090】
物理場発生装置241,261は、物理場発生装置241,261の入力端子241a,261aを介して入力される入力信号(つまり、アナログのIF復調信号)に対応する磁場をそれぞれ発生する。例えば、物理場発生装置241,261は、導電性のコイルや配線でその磁場を発生する。
【0091】
光学的量子センサ部242,262は、センサ本体51と同様のセンサ本体251,271および光電素子52と同様の光電素子252,272をそれぞれ備え、センサ本体251,271において、それぞれ、物理場発生装置241,261で発生した磁場に対応する光(観測光)をセンシング部材で発生し、光電素子252,272によって、その光をセンサ信号としての電気信号に変換する。光電素子252,272は、フォトダイオードやフォトトランジスターなどであって、入射する観測光の強度に対応するセンサ信号を生成する。
【0092】
実施の形態4では、光学的量子センサ部242,262(具体的にはセンサ本体251,271)は、光検出磁気共鳴測定法(ODMR)に従って、センシング部材に対して量子操作をそれぞれ行って、上述の観測光をセンシング部材に発生させる。
【0093】
なお、この実施の形態においても実施の形態1と同様に、光学的量子センサ部242,262において、励起光を磁気共鳴部材に照射するために、発光装置から磁気共鳴部材までの光学系が設けられており、また、磁気共鳴部材からの蛍光(観測光)を検出するために、磁気共鳴部材から光電素子までの光学系が設けられている。
【0094】
また、光学的量子センサ部242,262は、光学的量子センサ部42と同様に、それぞれ、所定の測定シーケンスに従って、(a)高周波電源および発光装置を制御して、マイクロ波およびレーザ光で量子操作を行って、センサ本体251,271において観測光を発生させ、光電素子252,272においてセンサ信号を生成させる。この測定シーケンスは、実施の形態1と同様に、上述の磁場の周波数などに従って設定される。
【0095】
A/D変換器243,263は、(アナログの復調信号Iおよび被復調信号Qを直接的にデジタイズせずに)光学的磁気センサ部242から出力されるセンサ信号をデジタイズし、これにより、復調信号Iおよび被復調信号Qに対応する出力信号としてのデジタル信号を生成し、A/D変換器243,263の出力端子243a,263aを介して出力する。
【0096】
この実施の形態では、特に、光学的量子センサ部242,262(具体的にはセンサ本体251,271)は、センサ信号のレベルがA/D変換器243,263のノイズフロアを超えるように、上述の観測光をセンシング部材に発生させる。
【0097】
ここで、実施の形態1と同様に、センシング部材の効率、観測光の集光効率、光電素子252,272の変換効率などの因子は、センサ信号のレベルがA/D変換器43のノイズフロア(既知)に応じて、A/D変換器43のノイズフロアを超えるように決定される。これにより、例えば、光学的量子センサ部242,262の感度は、1.5pT/Hz1/2以上とされる。また、当該実施の形態におけるA/D変換器243,263は、高分解能のA/D変換器とされ、センサ信号のレベルが熱ノイズのノイズレベルを超えるように、上述の因子の値が決定される。また、A/D変換器243,263の基準電圧は、センサ信号のレンジ(レベル最小値とレベル最大値)に応じて、設定される。なお、入力される復調信号および被復調信号のレベル(またはレンジ)および物理場発生装置241,261の電磁変換効率は既知である。
【0098】
また、この実施の形態では、特に、当該デジタイズ装置202は、光電素子252,272とA/D変換器243,263との間に、センサ信号を電気的に増加する増幅回路を備えていない。さらに、この実施の形態では、入力信号の信号源と物理場発生装置241,261との間に入力信号を電気的に増加する増幅回路が設けられていない。つまり、この実施の形態では、A/D変換器243,263より上流側に、ノイズ源となる電気的な増幅回路が設けられていない。
【0099】
なお、光学的量子センサ部242,262とA/D変換器243,263とは電気的に分離しており、光学的量子センサ部242,262で発生する電気的なノイズはA/D変換器243,263に侵入しないようになっている。
【0100】
なお、実施の形態4において、核磁気共鳴センシング部1とデジタイズ装置202との間に増幅回路およびバッファはいずれも設けられていない。つまり、核磁気共鳴センシング部1からデジタイズ装置202までの回路には受動素子のみが使用されており、熱ノイズの発生が抑制されている。
【0101】
次に、実施の形態4に係る核磁気共鳴センシング装置の動作について説明する。
【0102】
制御装置203は、核磁気共鳴センシング部1を制御するとともに、スイッチング部4を制御して、核磁気共鳴センシング部1において、送信系からのRF信号に基づく高周波磁場を対象物体101に印加し、スイッチング部4を制御して、核磁気共鳴センシング部1からの観測信号を受信系に導通させる。図6に示すように、観測信号は、ミキサ部6によって、IF復調信号に変換され、さらに、ローパスフィルタ7によって、高周波帯域側の成分が除去されたIF復調信号がアナログ直交位相検波回路201に入力される。
【0103】
直交位相検波回路201は、IFベース信号でIF復調信号に対して直交位相検波を実行して、周波数成分fNMRの復調信号Iおよび被復調信号Qを生成してデジタイズ装置202に入力する。
【0104】
デジタイズ装置202では、復調信号Iが物理場発生装置241に印加されると、物理場発生装置241において、入力信号のレベルに対応する強度の磁場が発生し、光学的量子センサ部242のセンサ本体251に印加される。センサ本体251では、上述のように測定シーケンスが実行され、その磁場の強度に応じた光量の光が発生する。実施の形態4では、ODMRに従って、磁気共鳴部材に、その磁場の強度に応じた光量の光を発生させる。そして、光電素子252が、その光を受光し、受光光量に応じたレベルのセンサ信号を生成し、A/D変換器243に出力する。A/D変換器243は、そのセンサ信号をデジタイズして、アナログの復調信号Iに対応するデジタルの復調信号Iを生成し、制御装置203に出力する。
【0105】
また、それに並行して、デジタイズ装置202では、被復調信号Qが物理場発生装置261に印加されると、物理場発生装置261において、入力信号のレベルに対応する強度の磁場が発生し、光学的量子センサ部262のセンサ本体271に印加される。センサ本体271では、上述のように測定シーケンスが実行され、その磁場の強度に応じた光量の光が発生する。実施の形態4では、ODMRに従って、磁気共鳴部材に、その磁場の強度に応じた光量の光を発生させる。そして、光電素子272が、その光を受光し、受光光量に応じたレベルのセンサ信号を生成し、A/D変換器263に出力する。A/D変換器263は、そのセンサ信号をデジタイズして、アナログの被復調信号Qに対応するデジタルの被復調信号Qを生成し、制御装置203に出力する。
【0106】
制御装置203は、継続して繰り返し、各時点におけるデジタルの復調信号Iおよび被復調信号Qの値を取得し、上述のように、信号処理によってNMR信号(具体的には、fNMRなど)や化学シフトを導出し、そのNMR信号や化学シフトに基づいて、対象物体101の分子構造解析、イメージングなどを行う。
【0107】
なお、実施の形態4に係る核磁気共鳴センシング装置のその他の構成および動作については、実施の形態1~3のいずれかと同様であるので、その説明を省略する。
【0108】
以上のように、上記実施の形態4によれば、アナログ直交位相検波回路201は、ローパスフィルタ7を透過した中間周波復調信号に対して直交位相検波を行い核磁気共鳴信号の復調信号Iおよび被復調信号Qを生成する。デジタイズ装置202は、復調信号Iおよび被復調信号Qをデジタイズする。デジタイズ装置202では、物理場発生装置241,261が、上述の復調信号および上述の被復調信号に対応する磁場または電場をそれぞれ発生し、光学的量子センサ部242,262が、物理場発生装置241,261により発生させた磁場または電場に対応する光をそれぞれセンシング部材で発生し、それらのセンシング部材により発生させた光を光電素子252,272で、第1および第2センサ信号としての電気信号に変換し、A/D変換器243,263が、第1および第2センサ信号をそれぞれデジタイズする。ここで、光学的量子センサ部242,262は、それぞれ、センシング部材に対して量子操作を行って、上述の磁場または電場に対応する光をセンシング部材に発生させる。
【0109】
これにより、制御装置203における解析によって、復調信号Iおよび被復調信号Qに基づいて、目的の核磁気共鳴信号と化学シフトとが互いに区別されて検出される。ひいては、低レベルの核磁気共鳴信号を精度良く検出し分解能の高い核磁気共鳴センシングが実行可能となる。
【0110】
実施の形態5.
【0111】
図8は、実施の形態5に係る核磁気共鳴センシング装置におけるデジタイズ装置221の構成を示すブロック図である。
【0112】
実施の形態5では、図8に示すように、光学的量子センサ部242,262は、それぞれのセンシング部材に対して共通のレーザ光(上述の励起光)を照射して上述の量子操作を行って、物理場発生装置241,261により発生させた磁場または電場に対応する光をそれぞれのセンシング部材に発生させる。
【0113】
図9は、実施の形態5におけるデジタイズ装置202のセンサ本体251,271の構成を示す図である。
【0114】
具体的には、図9に示すように、実施の形態5では、ODMRのために、例えば図9に示すように、センサ本体251,271は、それぞれ、センシング部材としての磁気共鳴部材291a,291b、高周波磁場発生器292a,292b、および磁石293a,293bを備え、センサ本体251は、さらに、高周波電源294、発光装置295、およびコントローラ296を備える。高周波電源294、発光装置295、およびコントローラ296は、2系統の磁気共鳴部材291a,291bおよび高周波磁場発生器292a,292bに対して共通な単一の高周波電源、発光装置、およびコントローラである。そして、発光装置295から出射するレーザ光は、図示せぬ光学系によって、磁気共鳴部材291aに入射するレーザ光、磁気共鳴部材291bに入射するレーザ光、および後述の参照光として使用されるレーザ光へ分岐されている。
【0115】
なお、磁気共鳴部材291a,291b、高周波磁場発生器292a,292b、および磁石293a,293b、高周波電源294、発光装置295、およびコントローラ296は、磁気共鳴部材61、高周波磁場発生器62、および磁石63、高周波電源64、発光装置65、およびコントローラ66と同様のものである。
【0116】
また、ここでは、センサ本体251が、高周波電源294、発光装置295、およびコントローラ296を備えているが、その代わりに、センサ本体271が、高周波電源294、発光装置295、およびコントローラ296を備えていてもよい。
【0117】
さらに、実施の形態5では、図8および図9に示すように、デジタイズ装置202は、光電素子281、およびアナログ回路としての差分回路282,283を備える。
【0118】
光電素子281は、共通のレーザ光から分岐された参照光を第3センサ信号としての電気信号に変換する。光電素子281は、フォトダイオードやフォトトランジスターなどである。
【0119】
差分回路282は、第3センサ信号に基づいて光学的量子センサ部242のセンサ信号(第1センサ信号)に対してそれぞれコモンモードリジェクションを行う。具体的には、差分回路282は、第1センサ信号から第3センサ信号を減算し、減算後の第1センサ信号をA/D変換器243に入力する。また、差分回路283は、第3センサ信号に基づいて光学的量子センサ部262のセンサ信号(第2センサ信号)に対してそれぞれコモンモードリジェクションを行う。具体的には、差分回路283は、第2センサ信号から第3センサ信号を減算し、減算後の第2センサ信号をA/D変換器263に入力する。
【0120】
なお、光電素子281および差分回路282,283は、必要に応じて設けられ、設けられていなくてもよい。
【0121】
次に、実施の形態5に係る核磁気共鳴センシング装置の動作について説明する。
【0122】
実施の形態5のデジタイズ装置202では、光学的量子センサ部242,262が、単一の発光装置295を使用してセンサ本体251,271の磁気共鳴部材291a,291bに共通な励起光を照射して、復調信号Iに対応する第1センサ信号および被復調信号Qに対応する第2センサ信号を生成して出力するとともに、参照光に対応する第3センサ信号を生成し出力する。
【0123】
差分回路282,283は、第1センサ信号および第2センサ信号からそれぞれ第3センサ信号を減算し、減算後の第1センサ信号および第2センサ信号をA/D変換器243,263にそれぞれ入力する。
【0124】
なお、実施の形態5に係る核磁気共鳴センシング装置のその他の構成および動作については、実施の形態4と同様であるので、その説明を省略する。
【0125】
以上のように、上記実施の形態5によれば、単一のレーザ光が、磁気共鳴部材291a,291bに共通な励起光として使用されるため、光学的量子センサ部242,262間の出力特性のずれが抑制される。また、発光装置295により生成されるレーザ光に含まれるノイズ成分に起因して第1センサ信号および第2センサ信号に含まれるノイズ成分が抑制される。
【0126】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0127】
例えば、実施の形態1~5において、センサ本体51,251,271における測定方法は、上述のODMRおよびOPAMに限定されず、物理場に応じたセンシング部材を使用しセンシング部材に対する量子操作を行って物理場強度に応じた観測光を検出可能な測定方法であれば、他の方法でもよい。
【0128】
また、実施の形態1~5において、デジタイズ装置21,202の出力信号の値(デジタル値)がアナログのIF復調信号のレベルに一致するように、制御装置22において、その出力信号に対して所定の演算処理を行うようにしてもよい。
【0129】
また、実施の形態1~5において、ノイズレベルの要求を満たすローノイズのバッファ(電圧増幅度=1)を、必要に応じて、ローパスフィルタ7とデジタイズ装置21,202との間に設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、例えば、核磁気共鳴を利用した各種測定やイメージングに適用可能である。
【符号の説明】
【0131】
1 核磁気共鳴センシング部
2 ベース信号生成装置
3 ミキサ部(送信系ミキサ部の一例)
6 ミキサ部
7 ローパスフィルタ
21,202 デジタイズ装置
41 物理場発生装置
42 光学的量子センサ部
43 アナログ/デジタル変換器
52,252,272 光電素子
101 対象物体
201 直交位相検波回路
241 物理場発生装置(第1物理場発生装置の一例)
242 光学的量子センサ部(第1光学的量子センサ部の一例)
243 アナログ/デジタル変換器(第1アナログ/デジタル変換器の一例)
261 物理場発生装置(第2物理場発生装置の一例)
262 光学的量子センサ部(第2光学的量子センサ部の一例)
263 アナログ/デジタル変換器(第2アナログ/デジタル変換器の一例)
281 光電素子(第3光電素子の一例)
282 差分回路(第1差分回路の一例)
283 差分回路(第2差分回路の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10