(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】発光装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
H01S 5/18 20210101AFI20250109BHJP
H01S 5/34 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01S5/18
H01S5/34
(21)【出願番号】P 2021030043
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】吉本 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】岸野 克巳
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-024982(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0254611(US,A1)
【文献】特表2013-521665(JP,A)
【文献】特開2007-073571(JP,A)
【文献】特開2008-181928(JP,A)
【文献】特開2020-057640(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110808532(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の基板面に設けられ、複数の柱状部を有する積層体と、
を有し、
前記柱状部は、発光層を有し、
前記発光層は、前記基板側の第1端と、前記基板とは反対側の第2端と、を有し、
前記柱状部の前記積層体の積層方向と直交する方向における第1断面は、前記第1端を含み、
前記柱状部の前記積層方向と直交する方向における第2断面は、前記積層方向において前記第1断面より前記基板と反対側の位置での、前記発光層を含む断面であり、
前記積層方向からみた平面視において、
前記第1断面の中心は、前記第2断面の中心と位置が異なる、発光装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2断面は、前記第2端を含む、発光装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記積層方向からみた平面視において、
前記第1断面の一部は、前記第2断面と重ならず、
前記第2断面の一部は、前記第1断面と重ならない、発光装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記柱状部は、
第1半導体層と、
前記第1半導体層と導電型の異なる第2半導体層と、
を有し、
前記発光層は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられ、
前記第1半導体層は、前記基板と前記発光層との間に設けられている、発光装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記積層体の前記基板とは反対側に設けられた電極を有し、
前記第2半導体層は、前記基板側の第3端と、前記電極側の第4端と、を有し、
前記第3端を含む前記柱状部の前記直交する方向おける第3断面の中心と、前記第4端を含む前記柱状部の前記直交する方向おける第4断面の中心と、を通る直線の前記基板面の垂線に対する傾斜角は、前記第1断面の中心と前記第2断面の中心とを通る直線の前記基板面の垂線に対する傾斜角よりも小さい、発光装置。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記第1半導体層は、c面を有し、
前記積層方向からみた平面視において、前記c面の中心は、前記c面の中心を含む前記柱状部の前記直交する方向おける第5断面の中心とずれている、発光装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記c面の中心を含む前記柱状部の前記積層方向おける第6断面において、
前記第1半導体層は、
第1ファセット面と、
前記第1ファセット面と前記c面に対する傾斜角が異なる第2ファセット面と、
を有する、発光装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、
前記発光層は、ウェル層と、バリア層と、を有し、
前記ウェル層は、前記基板側の第5端と、前記基板とは反対側の第6端と、を有し、
前記第5端を含む前記柱状部の前記直交する方向おける第7断面
における前記第5端の中心と、前記第6端を含む前記柱状部の前記直交する方向おける第8断面
における前記第6端の中心と、を通る直線の前記基板面の垂線に対する傾斜角は、前記第1断面の中心と前記第2断面の中心とを通る直線の前記基板面の垂線に対する傾斜角よりも小さい、発光装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の発光装置を有する、プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザーは、高輝度の次世代光源として期待されている。中でも、ナノコラムを適用した半導体レーザーは、ナノコラムによるフォトニック結晶の効果によって、狭放射角で高出力の発光が実現できると期待されている。
【0003】
例えば特許文献1には、活性層を備えたIII-V族半導体からなる柱状結晶を複数含む光デバイスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような光デバイスでは、出射される光の強度を大きくすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光装置の一態様は、
基板と、
前記基板の基板面に設けられ、複数の柱状部を有する積層体と、
を有し、
前記柱状部は、発光層を有し、
前記発光層は、前記基板側の第1端と、前記基板とは反対側の第2端と、を有し、
前記柱状部の前記積層体の積層方向と直交する方向における第1断面は、前記第1端を含み、
前記柱状部の前記積層方向と直交する方向における第2断面は、前記積層方向において前記第1断面より前記基板と反対側の位置での、前記発光層を含む断面であり、
前記積層方向からみた平面視において、
前記第1断面の中心は、前記第2断面の中心と位置が異なる。
【0007】
本発明に係るプロジェクターの一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
【
図2】本実施形態に係る発光装置の柱状部を模式的に示す断面図。
【
図3】本実施形態に係る発光装置の柱状部の断面を模式的に示す図。
【
図4】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
【
図5】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
【
図6】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す斜視図。
【
図7】本実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
【
図8】本実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1. 発光装置
1.1. 全体の構成
まず、本実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る発光装置100を模式的に示す断面図である。
【0011】
発光装置100は、
図1に示すように、例えば、基板10と、積層体20と、第1電極40と、第2電極42と、を有している。発光装置100は、半導体レーザーである。
【0012】
基板10は、例えば、Si基板、GaN基板、サファイア基板、SiC基板などである。基板10は、基板面12を有している。図示の例では、基板面12は、基板10の上面である。基板面12は、垂線Pを有している。
【0013】
積層体20は、基板10の基板面12に設けられている。図示の例では、積層体20は、基板10上に設けられている。積層体20は、例えば、バッファー層22と、柱状部30と、を有している。
【0014】
本明細書では、積層体20の積層方向(以下、単に「積層方向」ともいう)において、発光層34を基準とした場合、発光層34から第2半導体層36に向かう方向を「上」とし、発光層34から第1半導体層32に向かう方向を「下」として説明する。また、積層方向と直交する方向を「面内方向」ともいう。また、「積層体20の積層方向」とは、柱状部30の第1半導体層32と発光層34との積層方向のことである。垂線Pの方向は、積層方向である。
【0015】
バッファー層22は、基板10上に設けられている。バッファー層22は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。バッファー層22上には、柱状部30を形成するためのマスク層24が設けられている。マスク層24は、例えば、酸化シリコン層、チタン層、酸化チタン層、酸化アルミニウム層などである。
【0016】
柱状部30は、バッファー層22上に設けられている。柱状部30は、バッファー層22から上方に突出した柱状の形状を有している。言い換えれば、柱状部30は、バッファー層22を介して基板10から上方に突出している。柱状部30は、例えば、ナノコラム、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノピラーとも呼ばれる。柱状部30の平面形状は、例えば、多角形、円である。
【0017】
柱状部30の径は、例えば、50nm以上500nm以下である。柱状部30の径を500nm以下とすることによって、高品質な結晶の発光層34を得ることができ、かつ、発光層34に内在する歪を低減することができる。これにより、発光層34で発生する光を高い効率で増幅することができる。
【0018】
なお、「柱状部の径」とは、柱状部30の平面形状が円の場合は、直径であり、柱状部30の平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の直径である。例えば、柱状部30の径は、柱状部30の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の直径であり、柱状部30の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の直径である。
【0019】
柱状部30は、複数設けられている。隣り合う柱状部30の間隔は、例えば、1nm以上500nm以下である。複数の柱状部30は、積層方向からみた平面視において、所定の方向に所定のピッチで配列されている。複数の柱状部30は、例えば、三角格子状、正方格子状に配置されている。複数の柱状部30は、フォトニック結晶の効果を発現することができる。
【0020】
なお、「柱状部のピッチ」とは、所定の方向に沿って隣り合う柱状部30の中心間の距離である。「柱状部の中心」とは、柱状部30の平面形状が円の場合は、該円の中心であり、柱状部30の平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の中心である。例えば、柱状部30の中心は、柱状部30の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の中心であり、柱状部30の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の中心である。
【0021】
また、「断面の中心」とは、積層方向からみた平面視において、柱状部30の断面の形状が円の場合は、該円の中心であり、柱状部30の断面の形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の中心である。例えば、柱状部30の断面の中心は、柱状部30の断面の形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の中心であり、柱状部30の断面の形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の中心である。
【0022】
柱状部30は、第1半導体層32と、発光層34と、第2半導体層36と、を有している。なお、柱状部30の詳細な形状等については、後述する。
【0023】
第1半導体層32は、バッファー層22上に設けられている。第1半導体層32は、基板10と発光層34との間に設けられている。第1半導体層32は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。
【0024】
発光層34は、第1半導体層32上に設けられている。発光層34は、第1半導体層32と第2半導体層36との間に設けられている。発光層34は、電流が注入されることで光を発生させる。発光層34は、例えば、ウェル層33と、バリア層35と、を有している。ウェル層33およびバリア層35は、不純物が意図的にドープされていないi型の半導体層である。ウェル層33は、例えば、InGaN層である。バリア層35は、例えば、GaN層である。発光層34は、ウェル層33とバリア層35とから構成されたMQW(Multiple Quantum Well)構造を有している。
【0025】
なお、発光層34を構成するウェル層33およびバリア層35の数は、特に限定されない。例えば、ウェル層33は、1層だけ設けられていてもよく、この場合、発光層34は、SQW(Single Quantum Well)構造を有している。
【0026】
第2半導体層36は、発光層34上に設けられている。第2半導体層36は、第1半導体層32と導電型の異なる層である。第2半導体層36は、例えば、Mgがドープされたp型のGaN層である。第1半導体層32および第2半導体層36は、発光層34に光を閉じ込める機能を有するクラッド層である。
【0027】
なお、図示はしないが、第1半導体層32と発光層34との間に、i型のInGaN層からなるOCL(Optical Confinement Layer)が設けられていてもよい。また、第2半導体層36は、p型のAlGaN層からなるEBL(Electron Blocking Layer)を有してもよい。
【0028】
発光装置100では、p型の第2半導体層36、不純物がドープされていないi型の発
光層34、およびn型の第1半導体層32により、pinダイオードが構成される。発光装置100では、第1電極40と第2電極42との間に、pinダイオードの順バイアス電圧を印加すると、発光層34に電流が注入されて発光層34において電子と正孔との再結合が起こる。この再結合により発光が生じる。発光層34で発生した光は、面内方向に伝搬し、複数の柱状部30によるフォトニック結晶の効果により定在波を形成して、発光層34で利得を受けてレーザー発振する。そして、発光装置100は、+1次回折光および-1次回折光をレーザー光として、積層方向に出射する。
【0029】
なお、図示はしないが、基板10とバッファー層22との間、または基板10の下に反射層が設けられていてもよい。該反射層は、例えば、DBR(Distributed Bragg Reflector)層である。該反射層によって、発光層34において発生した光を反射させることができ、発光装置100は、第2電極42側からのみ光を出射することができる。
【0030】
第1電極40は、バッファー層22上に設けられている。バッファー層22は、第1電極40とオーミックコンタクトしていてもよい。第1電極40は、第1半導体層32と電気的に接続されている。図示の例では、第1電極40は、バッファー層22を介して、第1半導体層32と電気的に接続されている。第1電極40は、発光層34に電流を注入するための一方の電極である。第1電極40としては、例えば、バッファー層22側から、Cr層、Ni層、Au層の順序で積層したものなどを用いる。
【0031】
第2電極42は、第2半導体層36上に設けられている。第2電極42は、積層体20の基板10とは反対側に設けられている。第2電極42は、第2半導体層36と電気的に接続されている。第2半導体層36は、第2電極42とオーミックコンタクトしていてもよい。第2電極42は、発光層34に電流を注入するための他方の電極である。第2電極42としては、例えば、ITO(indium tin oxide)などを用いる。
【0032】
1.2. 柱状部の詳細な形状等
図2は、柱状部30を模式的に示す断面図である。第1半導体層32は、
図2に示すように、c面2を有している。c面2は、基板面12と平行である。c面2は、基板面12の垂線Pと直交している。第1半導体層32、発光層34、および第2半導体層36は、例えば、III族窒化物半導体であり、ウルツ鉱型結晶構造を有している。
【0033】
発光層34は、基板10側の第1端34aと、基板10とは反対側の第2端34bと、を有している。第2端34bは、第2電極42側の端である。第1断面30aおよび第2断面30bは、柱状部30を面内方向に切断した場合の断面である。すなわち、第1断面30aおよび第2断面30bは、柱状部30の面内方向の断面である。第1断面30aは、第1端34aを含む。第2断面30bは、第2端34bを含む。第2断面30bは、積層方向において第1断面30aより基板10と反対側の位置での、発光層34を含む断面である。
【0034】
ここで、
図3は、第1断面30aおよび第2断面30bを模式的に示す図である。
図3に示すように、積層方向からみた平面視において、第1断面30aの一部は、第2断面30bと重ならない。積層方向からみた平面視において、第2断面30bの一部は、第1断面30aと重ならない。また、積層方向からみた平面視において、第1断面30aの中心C1と、第2断面30bの中心C2と、は位置が異なる。中心C1は、中心C2と離間している。
図2に示すように、第1断面30aの中心C1と第2断面30bの中心C2とを通る直線L1は、基板面12の垂線Pに対して傾斜角αで傾斜している。柱状部30は、発光層34の第1端34aにおいて屈曲している。
【0035】
本実施形態では、積層方向からみた平面視における第1断面30aの形状と、積層方向
からみた平面視における第2断面30bの形状は、同じであるが、これに限らず、第1断面30aの形状と第2断面30bの形状とは、異なっていてもよい。例えば、積層方向からみた平面視において、第1断面30aの面積と、第2断面30bの面積とが異なっていてもよい。例えば、第1断面30aの面積は、第2断面30bの面積より小さくてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、第2断面30bは第2端34bを含んでいるが、これに限らず、第2断面30bは、積層方向において第1断面30aより基板10と反対側の位置での、発光層34を含む断面であり、中心C2が、第1断面30aの中心C1と、積層方向からみ平面視において位置が異なっていればよい。すなわち、第2断面30bは、第1端34aと第2端34bとの間における柱状部30の断面であり、その中心C2の平面視における位置が、第1断面30aの中心C1と異なっているような断面である。
【0037】
第2半導体層36は、基板10側の第3端36aと、基板10とは反対側の第4端36bと、を有している。第4端36bは、第2電極42側の端である。第3断面30cおよび第4断面30dは、柱状部30を面内方向に切断した場合の断面である。すなわち、第3断面30cおよび第4断面30dは、柱状部30の面内方向の断面である。第3断面30cは、第3端36aを含む。第4断面30dは、第4端36bを含む。第3断面30cの中心C3と第4断面30dの中心C4とを通る直線L2の垂線Pに対する傾斜角は、直線L1の垂線Pに対する傾斜角αよりも小さい。図示の例では、直線L2は、垂線Pと平行であり、直線L2の垂線Pに対する傾斜角は、0°である。図示の例では、第3断面30cは、第2断面30bと重なっている。中心C3は、中心C2と重なっている。柱状部30は、発光層34の第2端34bにおいて屈曲している。柱状部30の発光層34は、垂線Pに対して傾斜している。
【0038】
第5断面30eは、柱状部30を面内方向に切断した場合の断面である。すなわち、第5断面30eは、柱状部30の面内方向の断面である。第5断面30eは、c面2の中心C5を含む。積層方向からみた平面視において、c面2の中心C5は、柱状部30の第5断面30eの中心C6とずれている。言い換えると、中心C1は、中心C2と離間している。中心C5は、中心C6と位置が異なる。
【0039】
第6断面30fは、柱状部30を積層方向に切断した場合の断面である。すなわち、第6断面30fは、柱状部30の積層方向の断面である。第6断面30fは、c面2の中心C5を含む。第6断面30fは、
図2に示す柱状部30の断面である。第6断面30fにおいて、第1半導体層32は、第1ファセット面4と、第2ファセット面6と、を有している。ファセット面4,6は、c面2に接続されている。ファセット面4,6は、c面2に対して傾斜している。第2ファセット面6は、c面2に対する傾斜角が第1ファセット面4と異なる。図示の例では、第1ファセット面4のc面2に対する傾斜角βは、第2ファセット面6のc面2に対する傾斜角γよりも小さい。なお、第1ファセット面4および第2ファセット面6は、積層方向からみた平面視において、互いに連続している。
【0040】
発光層34のウェル層33は、基板10側の第5端33aと、基板10とは反対側の第6端33bと、を有している。第6端33bは、第2電極42側の端である。第7断面30gおよび第8断面30hは、柱状部30を面内方向に切断した場合の断面である。すなわち、第7断面30gおよび第8断面30hは、柱状部30の面内方向の断面である。第7断面30gは、第5端33aを含む。第8断面30hは、第6端33bを含む。第7断面30gの中心C7と第8断面30hの中心C8とを通る直線L3の垂線Pに対する傾斜角は、直線L1の垂線Pに対する傾斜角αよりも小さい。図示の例では、直線L3は、垂線Pと平行であり、直線L3の垂線Pに対する傾斜角は、0°である。
【0041】
1.3. 作用効果
発光装置100では、発光層34は、基板10側の第1端34aと、基板10とは反対側の第2端34bと、を有し、柱状部30の面内方向における第1断面30aは、第1端34aを含み、柱状部30の面内方向における第2断面30bは、積層方向において第1断面30aより基板10と反対側の位置での、発光層34を含む断面である。積層方向からみた平面視において、第1断面30aの中心C1は、第2断面30bの中心C2と位置が異なる。そのため、発光装置100では、例えば第1断面30aの中心の位置と、第2断面30bの中心の位置とが一致する場合に比べて、光閉じ込め係数を小さくし、放射係数を大きくすることができる。これにより、出射される光の強度を大きくすることができる。
【0042】
発光装置100では、第2断面30bは、第2端34bを含み、積層方向からみた平面視において、第1断面30aの一部は、第2断面30bと重ならず、第2断面30bの一部は、第1断面30aと重ならない。そのため、発光装置100では、例えば第1断面30aの全面が第2断面30bと重なっている場合に比べて、光閉じ込め係数を小さくし、放射係数を大きくすることができる。これにより、出射される光の強度を大きくすることができる。
【0043】
発光装置100では、柱状部30は、第1半導体層32と、第1半導体層32と導電型の異なる第2半導体層36と、を有し、発光層34は、第1半導体層32と第2半導体層36との間に設けられ、第1半導体層32は、基板10と発光層34との間に設けられている。そのため、発光装置100では、第1半導体層32および第2半導体層36を介して、発光層34に電流を注入することができる。
【0044】
発光装置100では、積層体20の基板10とは反対側に設けられた第2電極42を有し、第2半導体層36は、基板10側の第3端36aと、第2電極42側の第4端36bと、を有する。第3端36aを含む柱状部30の面内方向の第3断面30cの中心C3と、第4端36bを含む柱状部30の面内方向の第4断面30dの中心C4と、を通る直線L2の基板面12の垂線Pに対する傾斜角は、第1断面30aの中心C1と第2断面30bの中心C2とを通る直線L1の基板面12の垂線Pに対する傾斜角αよりも小さい。そのため、発光装置100では、直線L2の垂線Pに対する傾斜角が傾斜角αよりも大きい場合に比べて、第2電極42の平坦性を高くすることができる。これにより、発光層34に均一性よく電流を注入することができる。
【0045】
発光装置100では、第1半導体層32は、c面2を有し、積層方向からみた平面視において、c面2の中心C5は、c面2の中心C5を含む柱状部30の面内方向の第5断面30eの中心C6とずれている。そのため、発光装置100では、発光層34の第1端34aで柱状部30を屈曲させることできる。
【0046】
発光装置100では、c面2の中心C5を含む柱状部30の積層方向の第6断面30fにおいて、第1半導体層32は、第1ファセット面4と、第1ファセット面4とc面2に対する傾斜角が異なる第2ファセット面6と、を有する。そのため、発光装置100では、発光層34の第1端34aで柱状部30を屈曲させることできる。
【0047】
発光装置100では、発光層34は、ウェル層33と、バリア層35と、を有し、ウェル層33は、基板10側の第5端33aと、基板10とは反対側の第6端33bと、を有する。第5端33aを含む面内方向の第7断面30gの中心C7と、第6端33bを含む柱状部30の面内方向の第8断面30hの中心C8と、を通る直線L3の基板面12の垂線Pに対する傾斜角は、第1断面30aの中心C1と第2断面30bの中心C2とを通る直線L1の基板面12の垂線Pに対する傾斜角αよりも小さい。そのため、発光装置10
0では、直線L3の垂線Pに対する傾斜角が傾斜角αよりも大きい場合に比べて、ウェル層33に加わる歪の均一性を高くすることができる。これにより、発光波長のばらつきを抑えることができる。
【0048】
2. 発光装置の製造方法
次に、本実施形態に係る発光装置100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図4および
図5は、本実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す断面図である。
図6は、本実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す斜視図である。
図7は、本実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0049】
図4に示すように、基板10上に、バッファー層22をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法などの物理堆積法が挙げられる。
【0050】
次に、バッファー層22上に、マスク層24を形成する。マスク層24は、例えば、電子ビーム蒸着法やスパッタ法などによる成膜、およびパターニングによって形成される。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィーおよびエッチングによって行われる。
【0051】
図5に示すように、マスク層24をマスクとしてバッファー層22上に、第1半導体層32をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、MBE法などの物理堆積法が挙げられる。
【0052】
第1半導体層32の成長は、
図6に示すように、バッファー層22およびマスク層24が形成された基板10を、回転軸Qを中心として回転させつつ、回転軸Qと、分子線の強度のピーク位置Tと、をずらして行われる。MBE法は、超高真空中でターゲットに分子線を照射するため、分子線を照射する位置および強度の分布をコントロールすることができる。これは、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法などの気相成長法では得られない効果である。
【0053】
以上により、
図5に示すように、c面2と、互いに傾斜角β,γが異なるファセット面4,6と、を有する第1半導体層32を成長させることができる。
【0054】
図7に示すように、第1半導体層32上に発光層34をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、MBE法などの物理堆積法が挙げられる。発光層34がInGaNを含む場合、InGaNは歪の少ないc面2の中心C5付近に集中する。そのため、発光層34は、基板面12に対して傾いて成長する。発光層34の成長は、例えば、回転軸Qと、分子線の強度のピーク位置Tと、を合わせて行われる。
【0055】
図1に示すように、発光層34上に第2半導体層36をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、MBE法などの物理堆積法が挙げられる。第2半導体層36の成長は、例えば、回転軸Qと、分子線の強度のピーク位置Tと、を合わせて行われる。例えば、第2半導体層36は、InGaN層を含まないため、基板面12に対して傾斜し難い。本工程により、柱状部30を有する積層体20を形成することができる。
【0056】
次に、バッファー層22上に第1電極40を形成し、第2半導体層36上に第2電極42を形成する。第1電極40および第2電極42は、例えば、真空蒸着法などにより形成される。なお、第1電極40および第2電極42の形成順序は、特に限定されない。その後、基板10を所定の形状に切断する。
【0057】
以上の工程により、発光装置100を製造することができる。
【0058】
3. プロジェクター
次に、本実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照しながら説明する。
図8は、本実施形態に係るプロジェクター900を模式的に示す図である。
【0059】
プロジェクター900は、例えば、光源として、発光装置100を有している。
【0060】
プロジェクター900は、図示しない筐体と、筐体内に備えられている赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ出射する赤色光源100R、緑色光源100G、青色光源100Bと、を有している。なお、便宜上、
図8では、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bを簡略化している。
【0061】
プロジェクター900は、さらに、筐体内に備えられている、第1光学素子902Rと、第2光学素子902Gと、第3光学素子902Bと、第1光変調装置904Rと、第2光変調装置904Gと、第3光変調装置904Bと、投射装置908と、を有している。第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bは、例えば、透過型の液晶ライトバルブである。投射装置908は、例えば、投射レンズである。
【0062】
赤色光源100Rから出射された光は、第1光学素子902Rに入射する。赤色光源100Rから出射された光は、第1光学素子902Rによって集光される。なお、第1光学素子902Rは、集光以外の機能を有していてもよい。後述する第2光学素子902Gおよび第3光学素子902Bについても同様である。
【0063】
第1光学素子902Rによって集光された光は、第1光変調装置904Rに入射する。第1光変調装置904Rは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第1光変調装置904Rによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0064】
緑色光源100Gから出射された光は、第2光学素子902Gに入射する。緑色光源100Gから出射された光は、第2光学素子902Gによって集光される。
【0065】
第2光学素子902Gによって集光された光は、第2光変調装置904Gに入射する。第2光変調装置904Gは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第2光変調装置904Gによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0066】
青色光源100Bから出射された光は、第3光学素子902Bに入射する。青色光源100Bから出射された光は、第3光学素子902Bによって集光される。
【0067】
第3光学素子902Bによって集光された光は、第3光変調装置904Bに入射する。第3光変調装置904Bは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第3光変調装置904Bによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0068】
また、プロジェクター900は、第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bから出射された光を合成して投射装置908に導くクロスダイクロイックプリズム906を有することができる。
【0069】
第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム906に入射する。クロスダイクロイックプリズム906は、4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。そして、合成された光は、投射装置908によりスクリーン910上に投射され、拡大された画像が表示される。
【0070】
なお、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bは、発光装置100を映像の画素として画像情報に応じて制御することで、第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bを用いずに、直接的に映像を形成してもよい。そして、投射装置908は、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bによって形成された映像を、拡大してスクリーン910に投射してもよい。
【0071】
また、上記の例では、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いてもよいし、反射型のライトバルブを用いてもよい。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型の液晶ライトバルブや、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micro Mirror Device)が挙げられる。また、投射装置の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更される。
【0072】
また、光源を、光源からの光をスクリーン上で走査させることにより、表示面に所望の大きさの画像を表示させる画像形成装置である走査手段を有するような走査型の画像表示装置の光源装置にも適用することが可能である。
【0073】
上述した実施形態に係る発光装置は、プロジェクター以外にも用いることが可能である。プロジェクター以外の用途には、例えば、屋内外の照明、ディスプレイ、レーザープリンター、スキャナー、車載用ライト、光を用いるセンシング機器、通信機器等の光源がある。
【0074】
4. 実験例
基板上に、n型のGaN層と、i型のInGaN層およびi型のGaN層とを有する発光層と、型のGaN層と、を有する柱状部を、MBE法によりエピタキシャル成長させた。n型のGaN層の成長は、基板の回転軸と、分子線の強度のピーク位置と、をずらして行った。
【0075】
図9は、上記ようにして形成された柱状部の断面TEM(Transmission Electron Microscope)像である。
図9に示すように、発光層は、基板面に対して傾いて成長したことがわかった。
【0076】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0077】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0078】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0079】
発光装置の一態様は、
基板と、
前記基板の基板面に設けられ、複数の柱状部を有する積層体と、
を有し、
前記柱状部は、発光層を有し、
前記発光層は、前記基板側の第1端と、前記基板とは反対側の第2端と、を有し、
前記柱状部の前記積層体の積層方向と直交する方向における第1断面は、前記第1端を含み、
前記柱状部の前記積層方向と直交する方向における第2断面は、前記積層方向において前記第1断面より前記基板と反対側の位置での、前記発光層を含む断面であり、
前記積層方向からみた平面視において、
前記第1断面の中心は、前記第2断面の中心と位置が異なる。
【0080】
この発光装置によれば、出射される光の強度を大きくすることができる。
【0081】
発光装置の一態様において、
前記第2断面は、前記第2端を含んでもよい。
【0082】
発光装置の一態様において、
前記積層方向からみた平面視において、
前記第1断面の一部は、前記第2断面と重ならず、
前記第2断面の一部は、前記第1断面と重ならなくてもよい。
【0083】
この発光装置によれば、出射される光の強度を大きくすることができる。
【0084】
発光装置の一態様において、
前記柱状部は、
第1半導体層と、
前記第1半導体層と導電型の異なる第2半導体層と、
を有し、
前記発光層は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられ、
前記第1半導体層は、前記基板と前記発光層との間に設けられていてもよい。
【0085】
この発光装置によれば、第1半導体層および第2半導体層を介して、発光層に電流を注入することができる。
【0086】
発光装置の一態様において、
前記積層体の前記基板とは反対側に設けられた電極を有し、
前記第2半導体層は、前記基板側の第3端と、前記電極側の第4端と、を有し、
前記第3端を含む前記柱状部の前記直交する方向おける第3断面の中心と、前記第4端を含む前記柱状部の前記直交する方向おける第4断面の中心と、を通る直線の前記基板面の垂線に対する傾斜角は、前記第1断面の中心と前記第2断面の中心とを通る直線の前記基板面の垂線に対する傾斜角よりも小さくてもよい。
【0087】
この発光装置によれば、電極の平坦性を高くすることができる。
【0088】
発光装置の一態様において、
前記第1半導体層は、c面を有し、
前記積層方向からみた平面視において、前記c面の中心は、前記c面の中心を含む前記柱状部の前記直交する方向おける第5断面の中心とずれていてもよい。
【0089】
この発光装置によれば、発光層の第1端で柱状部を屈曲させることできる。
【0090】
発光装置の一態様において、
前記c面の中心を含む前記柱状部の前記積層方向おける第6断面において、
前記第1半導体層は、
第1ファセット面と、
前記第1ファセット面と前記c面に対する傾斜角が異なる第2ファセット面と、
を有してもよい。
【0091】
この発光装置によれば、発光層の第1端で柱状部を屈曲させることできる。
【0092】
発光装置の一態様において、
前記発光層は、ウェル層と、バリア層と、を有し、
前記ウェル層は、前記基板側の第5端と、前記基板とは反対側の第6端と、を有し、
前記第5端を含む前記柱状部の前記直交する方向おける第7断面の中心と、前記第6端を含む前記柱状部の前記直交する方向おける第8断面の中心と、を通る直線の前記基板面の垂線に対する傾斜角は、前記第1断面の中心と前記第2断面の中心とを通る直線の前記基板面の垂線に対する傾斜角よりも小さくてもよい。
【0093】
この発光装置によれば、ウェル層に加わる歪の均一性を高くすることができる。
【0094】
プロジェクターの一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【符号の説明】
【0095】
2…c面、4…第1ファセット面、6…第2ファセット面、10…基板、12…基板面、20…積層体、22…バッファー層、24…マスク層、30…柱状部、30a…第1断面、30b…第2断面、30c…第3断面、30d…第4断面、30e…第5断面、30f…第6断面、30g…第7断面、30h…第8断面、32…第1半導体層、33…ウェル層、33a…第5端、33b…第6端、34…発光層、34a…第1端、34b…第2端、35…バリア層、36…第2半導体層、36a…第3端、36b…第4端、40…第1電極、42…第2電極、100…発光装置、100R…赤色光源、100G…緑色光源、100B…青色光源、900…プロジェクター、902R…第1光学素子、902G…第2光学素子、902B…第3光学素子、904R…第1光変調装置、904G…第2光変調装置、904B…第3光変調装置、906…クロスダイクロイックプリズム、908…投射装置、910…スクリーン