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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】シート裁断具およびシート施工治具
(51)【国際特許分類】
   B26D 1/02 20060101AFI20250109BHJP
   B26D 7/01 20060101ALI20250109BHJP
   E04B 1/72 20060101ALI20250109BHJP
   E04B 1/66 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B26D1/02 A
B26D7/01 C
E04B1/72
E04B1/66 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021060371
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156597
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521136448
【氏名又は名称】有限会社伊藤住建
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 恵介
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 芳康
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-186765(JP,A)
【文献】特開2016-023403(JP,A)
【文献】特開2007-291831(JP,A)
【文献】実開昭59-080342(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0046616(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/02
B26D 7/01
E04B 1/72
E04B 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートがロール状に巻かれたシートロール部材の両端部が一対のシート支持台によって一定幅の建物構成部上に支持された状態で、前記シートロール部材からシートを前方に引き出して裁断するための裁断具であって、
前記建物構成部上の前記一対のシート支持台に挟まれた領域の範囲内に載置される土台部と、
前記土台部の前後方向両側から下方に延び、前記建物構成部の両側面に当接または近接する一対の当接部材と、
前記土台部の前端部上方から突出して設けられ、前後方向に延びる刃を有する裁断部材とを備える、シート裁断具。
【請求項2】
前記裁断部材は、それぞれが前後方向に延びて前端部が連結された下側片および上側片を有するようにフック状に形成され、
前記上側片の下縁に沿って前記刃が形成されている、請求項1に記載のシート裁断具。
【請求項3】
前記裁断部材の前記下側片は、前記上側片との連結部に向かって斜め上方に延び、前記上側片は、前記連結部に向かって斜め下方に延びている、請求項2に記載のシート裁断具。
【請求項4】
取り付け状態における前記裁断部材の前記刃の高さは、前記一対のシート支持台に支持された前記シートロール部材の最下端高さと略等しい、請求項1~3のいずれかに記載のシート裁断具。
【請求項5】
前記建物構成部は、上方に突出する複数のアンカーボルトが設けられた基礎立上り部であり、
取り付け状態における前記裁断部材の前記刃の高さは、前記アンカーボルトの上端高さよりも高い、請求項1~4のいずれかに記載のシート裁断具。
【請求項6】
前記一対の当接部材のうちの少なくとも一方の前後方向位置を調整するための位置調整部材をさらに備える、請求項1~5のいずれかに記載のシート裁断具。
【請求項7】
前記位置調整部材は、後方側の前記当接部材の位置を調整するために、前記土台部から後方に突出し、前記当接部材に設けられた貫通孔に通されるボルトと、前記ボルトに螺合して前記当接部材の位置を固定するナットとを含み、
前記ボルトの中心軸線は、前端側よりも後端側が若干下方となるように水平ラインに対して傾斜して配置されている、請求項6に記載のシート裁断具。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のシート裁断具と、
前記一対のシート支持台とを備え、
前記シート支持台には、前記建物構成部の長手方向に移動可能なキャスターが設けられている、シート施工治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート裁断具およびシート施工治具に関し、特に、基礎の土間部など、一定幅の建物構成部に隣接する箇所に敷設するシートを、長手方向に裁断するためのシート裁断具およびシート施工治具に関する。
【背景技術】
【0002】
特開昭63-83346号公報(特許文献1)に示されるように、基礎の土間部には、防蟻または防湿を目的としたシートが複数枚、敷設される。この際、各シートの端部は、基礎立上り部の側面に沿って50mm程度立ち上げた状態で粘着テープなどによって貼り付け固定されることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-83346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなシートは、ロール状に巻かれた状態で(つまり、シートロール部材として)現場に搬入され、現場において、シートロール部材の運搬およびシートの敷き込み作業が繰り返し行われる。規定のシート幅は通常、建物の建築基準寸法である1モジュール(たとえば900~1000mm)よりも大きく、その2倍程度あるため、シートロール部材の持ち運びが大変である。
【0005】
また、従来は、シートロール部材を土間部上に転がすことでシートを敷き込む作業を行っていたため、その際、砕石等でシートに傷がついてしまう可能性があった。さらに、シートロール部材を転がした後のシートの(長さ方向における)切断作業は、基礎立上り部の天端にシートを載せた状態で行われていたため、基礎立上り部から突出するアンカーボルトでシートに傷がついてしまう可能性があった。また、基礎立上り部の側面に沿わせた状態でシートを真っ直ぐに切断することは困難であった。
【0006】
また、上述のように、シートロール部材に巻かれたシート幅は2モジュール程度あるため、現場においてシート幅を調整するためにシートを長手方向に沿って裁断する作業も必要となる。従来は、シートを土間部に敷いてから作業員がハサミ等で裁断していたため、裁断作業が手間であるだけでなく、時間が掛かってしまう。また、強風時には一人での裁断作業が困難であった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、土間部などに敷設するシートを容易かつ精度良く裁断することのできるシート裁断具およびシート施工治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に従うシート裁断具は、シートがロール状に巻かれたシートロール部材の両端部が一対のシート支持台によって一定幅の建物構成部上に支持された状態で、シートロール部材からシートを前方に引き出して裁断するための裁断具であって、建物構成部上の一対のシート支持台に挟まれた領域の範囲内に載置される土台部と、土台部の前後方向両側から下方に延び、建物構成部の両側面に当接または近接する一対の当接部材と、土台部の前端部上方から突出して設けられ、前後方向に延びる刃を有する裁断部材とを備える。
【0009】
好ましくは、裁断部材は、それぞれが前後方向に延びて前端部が連結された下側片および上側片を有するようにフック状に形成され、上側片の下縁に沿って刃が形成されている。
【0010】
より好ましくは、裁断部材の下側片は、上側片との連結部に向かって斜め上方に延び、上側片は、連結部に向かって斜め下方に延びている。
【0011】
また、取り付け状態における裁断部材の刃の高さは、一対のシート支持台に支持されたシートロール部材の最下端高さと略等しいことが望ましい。
【0012】
また、建物構成部が、上方に突出する複数のアンカーボルトが設けられた基礎立上り部である場合には、取り付け状態における裁断部材の刃の高さは、アンカーボルトの上端高さよりも高いことが望ましい。
【0013】
好ましくは、シート裁断具は、一対の当接部材のうちの少なくとも一方の前後方向位置を調整するための位置調整部材をさらに備える。
【0014】
より好ましくは、位置調整部材は、後方側の当接部材の位置を調整するために、土台部から後方に突出し、当接部材に設けられた貫通孔に通されるボルトと、ボルトに螺合して当接部材の位置を固定するナットとを含み、ボルトの中心軸線は、前端側よりも後端側が若干下方となるように水平ラインに対して傾斜して配置されている。
【0015】
この発明の他の局面に従うシート施工治具は、上記シート裁断具と、一対のシート支持台とを備え、シート支持台には、建物構成部の長手方向に移動可能なキャスターが設けられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一対のシート支持台によって支持されたシートロール部材から引き出したシートをフック状の裁断部材に挿入して前方に引っ張ることにより、シートを真っすぐに裁断することができる。したがって、本発明によれば、シートを容易かつ精度良く裁断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係るシート施工治具の概略構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係るシート支持具の一部の構成を示す図であり、(A)は、シート支持具の一方の支持台を図1のIIAで示す方向から(内側から)見た図であり、(B)は、この支持台を図2(A)のIIBで示す方向から(前方から)見た図である。
図3】(A),(B)は、本発明の実施の形態に係るシート支持具の機能を模式的に示す図である。
図4】本発明の実施の形態に係るシート裁断具の側面図であり、図1のIV方向から見た図である。
図5】本発明の実施の形態におけるシート施工方法を示すフローチャートである。
図6】(A),(B)は、図5の工程P3およびP4の作業をそれぞれ示す模式図である。
図7】(A),(B)は、図5の工程P5およびP6の作業をそれぞれ示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0019】
<シート施工治具の概略構成>
図1は、シート施工治具1の概略構成を模式的に示す図である。図1を参照して、シート施工治具1は、基礎立上り部91に囲まれた土間部92にシートを施工するための治具であり、シート支持具2と、シート裁断具5とを備えている。基礎立上り部91は、一定幅で水平方向に延在する建物構成部である。図1の矢印A2は、基礎立上り部91の長手方向(以下「基礎長手方向」という)を示している。
【0020】
シート支持具2およびシート裁断具5は、基礎立上り部91の上面91cに載置される。基礎立上り部91の上面91cには、複数のアンカーボルト80が上方に突出して配置されている。アンカーボルト80の突出高さは、建物のシリーズに応じて異なる場合があるものの、60~70mm程度である。
【0021】
シート支持具2は、シートがロール状に巻かれたシートロール部材10を、基礎立上り部91上で支持する治具である。本実施の形態において、シート支持具2は、シートロール部材10の両端部をそれぞれ支持する2つの支持台(シート支持台)3,4に分割されている。つまり、2つの支持台3,4が対となってシート支持具2を構成している。
【0022】
シート裁断具5は、シートロール部材10の両端部が一対の支持台3,4によって基礎立上り部91上に支持された状態で、シートロール部材10からシートを土間部92側に引き出して裁断するための治具である。シートロール部材10からシートが引き出される方向、すなわち土間部92側が、図1において矢印A1で示されており、この方向を前方という。また、矢印A1の反対側を後方という。前方および後方は、それぞれ、基礎立上り部91の幅方向(以下「基礎幅方向」という)一方側および他方側に相当する。
【0023】
以下に、シート支持具2およびシート裁断具5の具体的な構成例について説明する。
【0024】
<シート支持具の構成例>
図1および図2を参照して、シート支持具2の構成例について説明する。図2(A)は、シート支持具2のうちの一方(第1)の支持台3を図1のIIAで示す方向から(内側から)見た図であり、(B)は、この支持台3を図1のIIBで示す方向から(前方から)見た図である。
【0025】
図1を参照して、シート支持具2は、基礎長手方向において互いに対面して配置された一対の対面部21と、対面部21の下端両側部に連結された一対の脚部23と、各脚部23に固定され、基礎長手方向に移動可能なキャスター24とを備えている。なお、対面部21および脚部23は、典型的には木質材料により形成される。後述の垂下部材25,26も同様である。
【0026】
各対面部21に、シートロール部材10の芯材11の端部を受け入れる受け入れ部22が対向するように設けられている。一対の脚部23は、基礎幅方向において互いに離れて配置されており、脚部23ごとにキャスター24が設けられている。これにより、シート支持具2に支持されたシートロール部材10を基礎長手方向に沿って移動させることができる。
【0027】
本実施の形態では、シート支持具2は、一対の対面部21の一方(図1の紙面右側)を有する支持台3と、一対の対面部の他方(図1の紙面左側)を有する支持台4とに分割されており、これらの支持台3,4の各々に、一対の脚部23および複数のキャスター24が設けられている。そのため、シート支持具2の持ち運びが容易である。支持台3,4は、左右対称となるように構成されている。
【0028】
図2(A),(B)に示されるように、対面部21は、たとえば略矩形形状の板状部材により構成されている。受け入れ部22は、略U字状に形成されており、芯材11の端部を上方から嵌め入れ可能である。芯材11は、シートロール部材10からのシートの引き出し時に、シートロール部材10と一体となって、受け入れ部22内で回転する。脚部23は、対面部21の下端両側部に交差して配置され、たとえば基礎長手方向に長さを有する角柱部材により構成されている。支持台3(または4)を前方から見た場合、対面部21と脚部23とが逆T字状に連結固定されている。なお、対面部21および脚部23は、それぞれが別部材でなくてもよく、一つの部材で一体成型されたものであってもよい。つまり、本明細書において「連結」とは、別体のものを繋げる形態に限定されない。
【0029】
図2(B)に示されるように、一つの脚部23に対し、複数(たとえば2つ)のキャスター24が基礎長手方向に整列して設けられている。これにより、各支持台3,4は自立可能である。
【0030】
図2(A)に示されるように、基礎立上り部91の上面91cを基準とした各対面部21の下端中央部の高さH1は、基礎立上り部91の上面91cから突出するアンカーボルト80の最大高さ(上端高さ)H2よりも高い。図2(A)では、最大高さH2を有するアンカーボルト81と、それよりも高さが低いアンカーボルト82とが、想像線で示されている。高さH2は、たとえば70mmである。これにより、アンカーボルト80の位置を考慮することなく、シート支持具2を基礎長手方向に沿って自由に移動させることができる。
【0031】
脚部23の上端高さは、アンカーボルト80の最大高さH2よりも低くてもよい。この場合、図示されるように、対面部21の下端中央部が、アンカーボルト80に干渉しないように切り欠かれていればよい。なお、基礎立上り部91の全幅(W1)に対してアンカーボルト80(81,82)が配置され得る範囲91rは決まっており、一対の脚部23間の間隔W2は、この範囲91rの幅よりも大きい。
【0032】
シート支持具2は、一対の脚部23の両外側から下方に延び、基礎立上り部91の両側面91a,91bに当接または近接する一対の垂下部材25,26をさらに備えている。垂下部材25,26は、たとえば略矩形状の板状部材により形成されている。垂下部材25は、前方側の側面91aに当接または近接し、垂下部材26は、後方側の側面91bに当接または近接する。これにより、シート支持具2の移動時における蛇行や脱落を防止できるので、シート支持具2の移動を安定的に行うことができる。
【0033】
垂下部材25,26の内側面には球状または半球状の転動体27が設けられており、垂下部材25,26は、転動体27において(のみ)基礎立上り部91の側面91a,91bに接するように構成されていることが望ましい。これにより、シート支持具2の移動時に、転動体27が基礎立上り部91の側面91a,91bに摺接するので、シート支持具2をスムーズに移動させることができる。また、基礎立上り部91の側面91a,91bにおける凹凸の影響を吸収することができる。
【0034】
後方側の垂下部材26は、ビス等の固定部材(図示せず)により脚部23に確りと固定されている。つまり、垂下部材26の上端部は脚部23の外側面に面接触した状態で固定されている。これに対し、前方側の垂下部材25は、基礎幅方向における位置が調整可能となるように設けられていることが望ましい。つまり、シート支持具2は、垂下部材25の基礎幅方向における位置(前後方向位置)を調整するための位置調整部材30をさらに備えていることが望ましい。
【0035】
位置調整部材30は、脚部23から外側に(前方に)突出するボルト31と、ボルト31に螺合するナット32,33とを含む。ボルト31は、いわゆる高さ調整ボルトであり、脚部23に固定されている。垂下部材25には板厚方向に貫通する貫通孔(図示せず)が設けられており、この貫通孔にボルト31が通されている。垂下部材25は、ナット32,33により挟持されて位置固定されている。図2(A)および図3(A)に示されるように、基礎立上り部91の幅W1に応じて、ボルト31の長さ方向におけるナット32,33の位置を調整することにより、垂下部材25の位置を調整することができる。したがって、本実施の形態のシート支持具2を、様々なシリーズの建物の基礎に用いることができる。基礎立上り部91の幅W1は、建物のシリーズに応じてたとえば170mm~220mmの範囲で定められている。
【0036】
ここで、基礎立上り部91の前方側には通常、間仕切り基礎が交差して配置される。そのため、前方側の垂下部材25は、ボルト31を軸として回転可能に設けられていることが、より望ましい。本実施の形態では、垂下部材25の位置を調整するためのボルト31が、垂下部材25の回転軸を兼ねている。この場合、図示されるように、垂下部材25を支えるボルト31は1本である。
【0037】
図2(B)に示されるように、垂下部材25は縦長形状に形成されており、垂下部材25の横幅(基礎長手方向の長さ)は、後方側の垂下部材26の横幅よりも十分小さい。また、ボルト31の軸心から垂下部材25の上側の角までの最短距離L1が、ボルト31の軸心と基礎立上り部91の上面91cとの間の最短距離L2未満である。これにより、シート支持具2の移動時に、図3(B)に示すような間仕切り基礎93に垂下部材25がぶつかると、その反動で垂下部材25がボルト31を中心に回転して、間仕切り基礎93に乗り上げることができる。
【0038】
間仕切り基礎93に垂下部材25が乗り上げた後もそのままシート支持具2をさらに移動させると、垂下部材25は、間仕切り基礎93上を通過した時点で、再び自重で垂れ下がり、上述のように基礎立上り部91の側面91aに接触する。したがって、本実施の形態によれば、間仕切り基礎93の有無に関わらず、シート支持具2を所望の位置(シート施工位置)まで確実に移動させることができる。なお、垂下部材25の回転をより円滑に行うようにするために、垂下部材25の貫通孔の周りに転がり軸受40が設けられていてもよい。
【0039】
<シート裁断具の構成例>
図1および図4を参照して、シート裁断具5の構成例について説明する。図4は、シート裁断具5の側面図であり、図1のIV方向から見た図である。
【0040】
図1に示されるように、シート裁断具5は、シートロール部材10の下方位置に配置される。シート裁断具5は、基礎立上り部91上の一対の支持台3,4に挟まれた領域の範囲内に載置される土台部51と、土台部51の前後方向両側から下方に延び、基礎立上り部91の両側面91aに当接または近接する一対の当接部材52,53と、土台部51の前端部上方から突出して設けられた裁断部材54とを備えている。土台部51および当接部材52,53は、典型的には木質材料により形成され、裁断部材54は、典型的には金属により形成される。
【0041】
土台部51は、略直方体形状であり、土台部51の長手方向が基礎幅方向に一致するように配置される。つまり、土台部51は、基礎長手方向に交差して配置される。土台部51の長手方向の長さは、基礎立上り部91の最小幅寸法よりも若干短い。なお、図示されるように、土台部51の後方上端の角部は斜めに切り欠かれていてもよい。これにより、シート裁断具5の軽量化を図ることができる。
【0042】
裁断部材54は、前後方向に延びる刃56aを有している。裁断部材54は、フック状に形成されており、後方側に開口が位置するように固定されていることが望ましい。つまり、後方側が開放されたフック状の裁断部材54が、土台部51の前端部上方から突出して配置されていることが望ましい。これにより、シートロール部材10から引き出したシートをフック状の裁断部材54に挿入して前方に引っ張ることにより、シートを真っすぐに裁断することができる。したがって、シートを容易かつ精度良く裁断することができる。
【0043】
より具体的には、裁断部材54は、前端部が連結された下側片55と上側片56とを有し、上側片56の下縁に沿って刃56aが形成されている。下側片55と上側片56とがなす角度は30°未満である。使用状態において、裁断部材54の下側片55は、上側片56との連結部57に向かって斜め上方に延び、上側片56は、連結部57に向かって斜め下方に延びている。つまり、刃56aは、後方側を向いて配置されている。これにより、下側片55と上側片56との間にシートを挿入して前方へ真っすぐ引っ張るだけで、上側片56の刃56aにより容易にシートを裁断することができる。
【0044】
裁断部材54の刃56aの少なくとも一部は、取り付け状態において、基礎立上り部91よりも前方に張り出すように配置される。フック状の裁断部材54は、市販の紐用カッターの先端部分により構成されていてもよい。この場合、図4において破線で示されるように、その持ち手部分70が土台部51に内蔵されていてもよい。
【0045】
なお、刃56aは、下向きで水平に配置されてもよいし、後方を向くように垂直に配置されてもよい。また、裁断部材54の形状はフック状でなくてもよく、その場合、刃56aは上向きで配置されてもよい。
【0046】
ここで、裁断部材54の刃56aの高さH3(下端部の高さ)は、アンカーボルト80の最大高さH2(図2(A))よりも高い位置である。これにより、シートの裁断時にシートがアンカーボルト80に干渉して傷つくことを防止できる。
【0047】
また、裁断部材54の刃56aの高さH3(前端部の高さ)は、シート支持具2に支持されたシートロール部材10の最下端高さH4と略等しいことが望ましい。シートロール部材10の最下端高さH4は、シート引っ張り時の作用点高さに相当する。裁断部材54の刃56aの高さH3は、具体的には、シートロール部材10の最下端高さH4と同じか、異なるとしても、その差が5mm以内となるように定められている。なお、最下端高さH4は、基礎立上り部91の上面91cを基準としたシートロール部材10の芯材11の中心高さ(たとえば約190mm)からシートロール部材10の(使用前の)半径(たとえば約70mm)を引いた高さであり、たとえば120mm程度である。このように、裁断部材54の刃56aの高さH3をシート引っ張り時の作用点高さと略等しくすることにより、シートを容易かつ精度良く裁断することができる。
【0048】
当接部材52,53は、たとえば略矩形状の板状部材により構成されている。前方側の当接部材52は、ビス等の固定部材71により脚部23に確りと固定されている。つまり、当接部材52の上端部は土台部51の外側面に面接触した状態で固定されている。これに対し、後方側の当接部材53は、基礎幅方向における位置が調整可能となるように設けられていることが望ましい。つまり、シート裁断具5は、後方側の当接部材53の前後方向位置を調整するための位置調整部材60をさらに備えていることが望ましい。なお、前方側の当接部材53の位置を固定とすることにより、基礎立上り部91の幅W1の大小に関わらず、基礎立上り部91の側面91aの位置(前端位置)からの裁断部材54の突出度合を一定にすることができる。
【0049】
位置調整部材60は、土台部51から外側に(後方に)突出するボルト61と、ボルト61に螺合するナット62とを含む。ボルト61は、いわゆる高さ調整ボルトであり、土台部51に固定されている。当接部材53には板厚方向に貫通する貫通孔(図示せず)が設けられており、この貫通孔にボルト61が通されている。ナット62は当接部材53の外側にのみ位置し、取り付け状態において、当接部材53は、基礎立上り部91の側面91bとナット62とに接触することにより、基礎幅方向における位置ずれが規制される。
【0050】
図4に示されるように、基礎立上り部91の幅W1に応じて、ボルト61の長さ方向におけるナット62の位置を調整することにより、後方側の当接部材53の位置を調整することができる。したがって、本実施の形態のシート裁断具5を、様々なシリーズの建物の基礎に用いることができる。
【0051】
ここで、図4に示されるように、ボルト61の中心軸線B1は、前端(基端)側よりも後端(先端)側が若干下方となるように水平ラインB2に対して傾斜して配置されている。中心軸線B1の傾斜角度は10°未満であり、5°未満であることが望ましい。ボルト61の傾斜角度を所定の角度にするために、土台部51内に所定の角度で傾斜させた長ナット(図示せず)を埋め込み、長ナットにボルト61の基端部を係合させるようにしてもよい。
【0052】
この場合、後方側の当接部材53は、上端側よりも下端側が若干前方となるように傾斜するため、当接部材53は下縁部53aにおいてのみ基礎立上り部91の側面91bに接触する。なお、前方側の当接部材52は、傾斜することなく上下方向に真っ直ぐ延びているため、土台部51よりも下方部分52aの全体が基礎立上り部91の側面91aに面接触する。これにより、シートロール部材10からシートを前方に引っ張りながら裁断部材54にて裁断する際に、シート裁断具5が基礎立上り部91から前方側へ外れてしまうことを防止または抑制できる。
【0053】
<シート施工方法>
図5をさらに参照して、シート支持具2およびシート裁断具5を含むシート施工治具1を用いたシート施工方法について説明する。図5は、本実施の形態におけるシート施工方法(工程)を示すフローチャートである。
【0054】
図5を参照して、はじめに、シート支持具2を基礎立上り部91上に取り付ける(工程P1)。具体的には、シート支持具2を構成する一対の支持台3,4を、受け入れ部22が対向するように基礎立上り部91上に載置した後、各支持台3,4の前方側の垂下部材25の位置調整を行って、一対の垂下部材25,26によって基礎立上り部91を挟み込む。これにより、垂下部材25,26の内側面に設けられた転動体27と基礎立上り部91の側面91a,91bとが接触するので、支持台3,4は、基礎長手方向の円滑な移動が可能な状態で取り付けられる。
【0055】
次に、シートロール部材10の芯材11の端部を、シート支持具2に嵌める(工程P2)。具体的には、支持台3,4それぞれの受け入れ部22に、芯材11の両端部を嵌め入れる。図2に示されるように、受け入れ部22がU字状に形成されている場合、芯材11の端部を上方から嵌め込む。これにより、シートロール部材10の両端部が、一対の支持台3,4によって基礎立上り部91上に回転可能な状態で支持される。なお、芯材11の離脱を防止するために、受け入れ部22の上端に、離脱防止部材22aが設けられていてもよい。
【0056】
このようにしてシートロール部材10のシート支持具2への取り付けが完了すると、その状態のまま、シート施工位置にシートロール部材10を移動させる(工程P3)。具体的には、シートロール部材10を把持し、基礎長手方向に沿ってシート施工位置まで移動させる。
【0057】
図6(A)に示されるように、基礎立上り部91の上面91cには、基礎長手方向に沿って複数のアンカーボルト80が位置しており、また、基礎立上り部91に交差するように間仕切り基礎93が配置されているが、本実施の形態によれば、これらの影響を受けることなく、シートロール部材10を安全かつスムーズに移動させることができる。
【0058】
シートロール部材10をシート施工位置に移動させた後、シートの幅調整が不要である場合には、図6(B)に示されるように、そのままの状態で、シートロール部材10からシートを前方に引っ張り、土間部92にシートを敷き込む(工程P4)。なお、シートは、たとえばシートロール部材10の下方側から引き出される。シートは、基礎立上り部91に対面する基礎立上り部(図示せず)に達するまで引き出された後、シートの後端がハサミ等により切断される。
【0059】
このように、シートロール部材10を土間部92上に転がす必要がないので、本実施の形態によれば、シートの損傷を防止することができる。また、シートを土間部92の長さ分引き出した後も、シートの後端部は引き続き、基礎立上り部91上に支持されているため、基礎立上り部91の側面91aに沿わせた状態でのシートの長さ方向の切断作業を容易に行うことができる。また、切断作業の際に、アンカーボルト80でシートが傷つくことを防止できる。
【0060】
シートの敷き込み作業が終わると、再度、シートロール部材10をシート施工位置に移動させる(工程P3)。つまり、次のシート施工位置に移動させる。間仕切り基礎93際など、土間部92の端にシートを敷き込む際に、シートの幅調整が必要な場合がある。このような場合には、上述のシート裁断具5を基礎立上り部91に取り付ける(工程P5)。
【0061】
具体的には、図7(A)に示されるように、シートロール部材10の下方、すなわち一対の支持台3,4の間に、シート裁断具5の土台部51を載置し、後方側の当接部材53の位置調整を行って、一対の当接部材52,53によって基礎立上り部91を挟み込む。これにより、当接部材52,53の内側面と基礎立上り部91の側面91a,91bとがそれぞれ接触する。その後、図7(A)に示されるように、スケール84を用いてシートロール部材10の長手方向端部からシート裁断具5の裁断部材54までの長さが所望の幅(たとえば1m幅)となるように、シート支持具2の位置を調整する。
【0062】
このようにして、シート支持具2およびシート裁断具5の位置が定まると、シートロール部材10から引き出したシートをフック状の裁断部材54に引っ掛け、その状態で、図7(B)に示されるようにシートを前方へ引っ張る。これにより、シートが引き出し方向に沿って裁断される(工程P6)。この工程においても、シートは、基礎立上り部91に対面する基礎立上り部(図示せず)に達するまで引き出された後、シートの後端がハサミ等により切断されるので、所望の幅に裁断されたシートを、そのまま土間部92へ敷き込むことができる。
【0063】
このように、本実施の形態によれば、シートロール部材10が基礎立上り部91上で支持された状態で、シートを引っ張りながら裁断することができるので、作業者の技量に左右されることなくシートを精度良く裁断することができる。また、土間部92にシートを広げた状態で裁断する必要がないので、砕石等によるシートの損傷を防止することができる。また、強風時であっても、一人で簡単に裁断作業を行うことができる。
【0064】
シートの裁断が完了すると、シート裁断具5を基礎立上り部91から取り外し(工程P7)、上記工程P3以降の作業を繰り返す。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態によれば、シート施工治具1がシート支持具2とシート裁断具5とを備えているため、土間部92にシートを敷設する際の施工性を向上させることができる。なお、シート支持具2およびシート裁断具5をそれぞれ単体で提供することも可能である。
【0066】
<変形例>
本実施の形態では、シート裁断具5の後方側の当接部材53の位置を調整可能としたが、このような例に限定されない。たとえば、後方側の当接部材53の位置は固定とし、前方側の当接部材52の位置を調整可能としてもよい。あるいは、当接部材52,53の双方を、位置調整可能としてもよい。このように、シート裁断具5は、一対の当接部材52,53のうちの少なくとも一方の位置を調整するための位置調整部材を備えていればよい。
【0067】
あるいは、シート裁断具5は、様々なシリーズの建物の基礎に対応できるようにするために、位置調整部材60を備えていることが望ましいものの、特定の幅寸法の基礎に用いる場合には、位置調整部材60は必須ではない。
【0068】
また、本実施の形態に係るシート裁断具5は、一定幅の建物構成部に隣接する部分(水平面部分)であれば、土間部92以外の箇所に敷設するシートを裁断する際にも適用することができる。「建物構成部」とは、基礎立上り部91などの建物の躯体部に限定されず、建物の構成要素を支持する支持部材(たとえば天井の野縁など)であってもよい。具体的には、天井部に防湿を目的としたシートを敷設する際には、たとえば野縁の天端に一対のシート支持台を取り付け、取り付けた一対のシート支持台に挟まれた領域の範囲内にシート裁断具5を載置すれば、上記と同様の手順で、天井部側にシートを引っ張りながら裁断部材54により裁断することができる。つまり、シート裁断具5は、シートロール部材10の両端部が一対のシート支持台によって一定幅の建物構成部上に支持された状態で、シートロール部材10からシートを前方に引き出して裁断する場合に、有効に用いることができる。
【0069】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
1 シート施工治具、2 シート支持具、3,4 支持台、5 シート裁断具、10 シートロール部材、21 対面部、22 受け入れ部、23 脚部、24 キャスター、25,26 垂下部材、27 転動体、30,60 位置調整部材、51 土台部、52,53 当接部材、54 裁断部材、55 下側片、56 上側片、56a 刃、81,82 アンカーボルト、91 基礎立上り部、92 土間部、93 間仕切り基礎。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7