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特許7616613ファン装置とファン装置用ウェアの組合せ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ファン装置とファン装置用ウェアの組合せ
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/002 20060101AFI20250109BHJP
   A41D 13/005 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D13/005 103
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023082560
(22)【出願日】2023-05-18
(65)【公開番号】P2024166502
(43)【公開日】2024-11-29
【審査請求日】2024-10-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和4年10月12日~14日に、TOLL JAPAN 2022(幕張メッセ)に出品、令和4年10月12日に、宣伝用チラシ 株式会社クロス「新製品 7.4V ペルチェファン」に掲載、令和4年10月21日に、株式会社ツカモトコーポレーション(東京都中央区日本橋本町1-6-5)に提示、令和4年10月21日に、日東商事株式会社(神奈川県川崎市川崎区渡田新町3-2-8)に提示、令和4年11月2日に、アルファ・クリエイト株式会社(栃木県河内郡上三川町西汗1780)に提示、令和4年11月18日に、室谷株式会社(大阪府大阪市中央区内村淡路町1-4-1)に提示、令和4年11月21日に、宣伝用チラシ 株株式会社クロス「Cross-fan X」に掲載、令和4年12月7日に、星光商事株式会社(東京都千代田区神田鍛冶町3-3-9)に提示、令和4年12月7日に、タキゲン製造株式会社(東京都品川区西五反田1-24-4)に提示、令和5年3月3日に、株式会社シュライバー(東京都品川区大崎1-11-2)に提示、令和5年3月7日に、株式会社昭和商会(東京都品川区西五反田1-16-5)に提示、令和5年3月8日に、ファクトリーギア株式会社(東京都品川区東品川2-3-10)に提示、令和5年3月9日に、トラスコ中山株式会社(群馬県伊勢崎市三和町2739-1)に提示、令和5年3月23日に、江信特殊硝子株式会社(東京都江東区住吉2-25-5)に販売、令和5年3月23日に、大塚刷毛製造株式会社(東京都新宿区四谷4-1)に提示、令和5年3月27日に、株式会社持田(東京都台東区浅草橋4-19-8)に提示、令和5年3月27日に、株式会社クロスが、下記会社に提示した。令和5年3月27日に、アイトス株式会社(東京都台東区浅草橋4-19-7)に提示、令和5年4月5日に、原田産業株式会社(東京都千代田区丸の内2-7-2)に提示、令和5年4月14日に、ヤマタカ株式会社(東京都中央区日本橋蛎殻町2-7-6)に提示、令和5年4月17日に、取扱説明書 ファンユニット「クロスファンX CS30P」に掲載、令和5年4月27日に、ウェブサイト https://www.makuake.com/project/cross-fan/ に掲載、
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年4月28日に、NDK総合サービス株式会社(東京都台東区池之端1-2-23)に提示、令和5年4月28日に、日本電設工業株式会社(東京都台東区池之端1-2-11)に提示、令和5年5月9日に、株式会社小泉(茨城県ひたちなか市高場1608-83)に提示、令和5年5月16日に、株式会社フジワーク(東京都大田区西六郷4-31-12)に提示、令和5年5月17日に、株式会社アパレルシステムサイエンス(東京都新宿区岩戸町4-87)に提示、令和5年5月18日に、株式会社NEMコーポレーション(神奈川県川崎市川崎区駅前本町11-2)に提示。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521022163
【氏名又は名称】株式会社クロス
(74)【代理人】
【識別番号】100163706
【弁理士】
【氏名又は名称】釜谷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】辻 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】辻 宏恵
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-56164(JP,A)
【文献】特開2022-63478(JP,A)
【文献】登録実用新案第3180367(JP,U)
【文献】特開2023-92711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00-13/12、27/00-27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を取り込むことで使用者の身体から出た汗を蒸発させて気化熱による冷却効果を得るとともに、ペルチェ素子により前記身体を冷却させるファン装置とファン装置用ウェアの組合せであって、
前記ファン装置用ウェアのウェア本体には、前記ファン装置を取り付けるための取り付け穴を有し、
前記ファン装置には、前記取り付け穴に前記ファン装置を取り付けるための取り付け部を備えた筐体部と、前記筐体部に保持されたファン冷却部とペルチェ冷却部を有し、
前記ファン冷却部のファンにより、前記筐体部の吸気穴から外気を取り込み、前記筐体部の排気穴から前記身体に外気を放出させるように構成され、
前記ペルチェ冷却部は、前記ペルチェ素子と、前記ペルチェ素子を挟んで身体側の面に冷却プレート、吸気側の面に放熱板を有していて、前記ファンにより取り込まれた外気により前記放熱板の熱を放熱させ、前記ペルチェ素子により前記冷却プレートを冷却させるように構成され、
前記冷却プレートは、身体側に向かって前記筐体部から膨出するように構成され、
前記ウェア本体は、前記ファン装置を取り付けた状態で、前記ファン装置が少なくとも軸心方向に移動可能となるたわみ分を有し、
前記使用者が前記身体を動かさないときには、前記ファンにより取り込まれた外気を前記身体に放出する力により、前記たわみ分のあることから前記ファン装置が移動して、前記冷却プレートを前記身体から離間させた状態で前記冷却プレートは冷却され、前記身体を間接的に冷却させるように構成されているとともに、
前記使用者が腕を上げたり前記身体をひねったりして前記身体を動かしたときには、前記たわみ分が前記身体の動きに引っ張られて減少することにより、前記身体に外気を放出する力に抗して前記ファン装置が前記身体の方に移動して、前記冷却プレートが前記身体に直接接触して前記身体を冷却させるように構成されている
ことを特徴とするファン装置とファン装置用ウェアの組合せ。
【請求項2】
前記ファン装置用ウェアは、前記使用者の上半身を覆うものであって、下端部が前記使用者の腰回りに密着するように構成され、
前記取り付け穴は、前記使用者の左右の脇腹近傍であって、前記ファン装置用ウェアの下端部近傍にそれぞれ1つずつ設けられている
ことを特徴とする請求項1記載のファン装置とファン装置用ウェアの組合せ。
【請求項3】
前記排気穴には、前記ファン装置の内部に指等が入らないようにする排気ガードが設けられており、
前記排気ガードは、前記ファン装置の排気側に膨出するよう構成され、
前記冷却プレートは前記排気ガードの頂部に固定され、排気側の面が前記排気ガードよりも更に排気側に膨出するように構成されている
ことを特徴とする請求項2記載のファン装置とファン装置用ウェアの組合せ。
【請求項4】
前記排気ガードは、前記頂部から外周部向かって略放射状に形成された複数の排気ガード腕部を有し、
前記放熱板は外周部に略放射状に形成された複数の放熱腕部を有し、
前記放熱腕部は前記排気ガード腕部の軸心方向から見たときの投影形状と略重なるように構成されている
ことを特徴とする請求項3記載のファン装置とファン装置用ウェアの組合せ。
【請求項5】
前記取り付け穴は、前記使用者の左右の腕の略真下の位置にそれぞれ1つずつ設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3記載のファン装置とファン装置用ウェアの組合せ。
【請求項6】
前記ファン装置は、接続ケーブルで結ばれ、前記ファン装置に電源を供給するコントローラを有し、
前記コントローラは、バッテリーと前記ファン冷却部と前記ペルチェ冷却部の能力を制御するため複数の電圧を切り換える制御部を有し、
前記コントローラからは、前記ファン冷却部と前記ペルチェ冷却部に対して、同一の電圧の電源が供給されるように構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3記載のファン装置とファン装置用ウェアの組合せ。
【請求項7】
前記ファン装置は温度センサーを有し、前記冷却プレートまたは前記外気が所定の温度以下になると、前記ペルチェ冷却部の冷却を停止させるように構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3記載のファン装置とファン装置用ウェアの組合せ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はファン装置とファン装置用ウェアの組合せに関する。より詳細には、ファン装置をウェアに取り付けて身体を冷却するファン装置とファン装置用ウェアの組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ファン装置をウェアに取り付けて身体を冷却するためのファン装置やファン装置用ウェアが求められている。
【0003】
このような装置として、特許文献1にて開示されたファン装置、ファン付きウェアおよびファン本体取り付け具がある。これは、空調服(登録商標)として知られるものであって、ウェア本体の少し背面側の左右の脇腹の部分であって、腕とウェア本体の略中間の位置に設けられた2つの平面状のファン取り付け孔にそれぞれファン装置を取り付け、ファン装置が取り込んだ大量の外気を身体又は下着の表面と略平行に流通させることにより、身体から出た汗を蒸発させて、身体を冷却するというものである。
【0004】
そして、ウェア本体に設けられた取り付け孔に挿通される筒状部と、筒状部の軸方向の一端から筒状部の軸方向に直交する方向に突出するフランジ部と、を有するファン本体と、筒状部の外側からフランジ部との間でウェア本体の取り付け孔の縁部を挟み込んだ状態でファン本体に装着されるファン取り付け手段と、を備え、ファン取り付け手段は、筒状部の外周に全周を覆うように取り付けられるとともに、周方向に2つに分割された分割体により構成されるリング部材と、2つの分割体の周方向端部同士を固定する固定部材と、を備え、取り付け孔に挿通された筒状部の外周に取り付けた2つの分割体を、固定部材により固定することで、ファン本体をウェア本体に固定するように構成されている。
【0005】
また、このような装置として、特許文献2にて開示された熱交換ユニット及びそれを備えたウェアがある。これは、ペルチェ素子を利用しつつ、着衣者の身体を快適に冷房又は暖房できるようにするウェアであって、熱交換ユニットは、ウェアの生地に取り付けられ、ウェア内部とウェア外部とを仕切る仕切板と、仕切板に装着されるペルチェ素子と、仕切板のウェア内部側に設けられ、ペルチェ素子の一方の面の熱を伝導させる第1熱伝導部材と、第1熱伝導部材で熱交換された空気をウェア内部側に拡散させる第1のファンと、仕切板のウェア外部側に設けられ、ペルチェ素子の他方の面の熱を伝導させる第2熱伝導部材と、第2熱伝導部材で熱交換された空気をウェア外部側に放出させる第2のファンと、を備えるものである。
【0006】
また、このような装置として、特許文献3にて開示された空気調和ユニット及びそれを備えたウェアがある。これは、ペルチェ素子を利用しつつ、着衣者の身体を快適に冷房又は暖房できるようにしたものであって、熱交換プレートをユーザーの肩胛骨の間から腰に至る部分に直接的または間接的に接触させて、その部分を効率的に冷却または加熱ができるようにしたものである。
【0007】
そして、この空気調和ユニット及びそれを備えたウェアは、ペルチェ素子を利用してユーザーの身体を効率的に冷房又は暖房できるようにしたものであって、ユーザーの身体を冷房又は暖房するための空気調和ユニットは、ペルチェ素子と、ペルチェ素子の一方の面に接合する金属板と、金属板よりも面積が大きく、金属板に接合した状態で身体側に配置される金属製の熱交換プレートと、ペルチェ素子の他方の面に配置されるヒートシンクと、ヒートシンクに対向して配置され、ヒートシンクの熱を外部に放出させるファンと、ヒートシンク及びファンを覆う状態に装着されるファンカバーと、を備えるものである。
【0008】
特に、夏場に冷房目的で空気調和ユニットをウェアに装着すると、身体の皮膚温度は約33℃であるのに対し、金属製の熱交換プレートは皮膚温度よりも低い温度であることが多い。そのため、着衣時には、身体が熱交換プレートに触れることにより、一定の涼感をユーザーに与えることができる。ただし、着衣時に得られる涼感は一時的なものであり、ペルチェ素子が駆動されていない場合には、熱交換プレートは、身体の皮膚温度と同じ温度まで次第に上昇していくことになる。一方、着衣後に直ぐにペルチェ素子を駆動すると、熱交換プレートが温度上昇し始める前にペルチェ素子は、熱交換プレートを冷却し始める。そのため、熱交換プレートの温度上昇を抑えることができる。つまり、夏の冷房目的で使用するときには、熱交換プレートの温度上昇を抑えるようにペルチェ素が熱交換プレートの熱を吸熱すれば良い。したがって、上述した空気調和ユニットは、ペルチェ素子の消費電力量を増加させることなく、着衣時からユーザーに涼感を与えることが可能であり、しかもその涼感を長時間継続させることができるという利点があるというものである。
【0009】
また、このような装置として、非特許文献1にて開示されたペルチェベストがある。この装置は、ベストの背面に設けられたファン取り付け孔に大型のファンを取り付け、外気を取り込むことで気化熱による冷却効果を得るとともに、ペルチェ素子の技術で冷える大型の平面状のプレートを使用者の背中に密着させて、外気温からマイナス15度の温度で、背中を継続して冷やすというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2023-21758号公報
【文献】特開2020-97799号公報
【文献】特開2022-63478号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】ペルチェベスト「冷蔵服」[令和5年4月11日検索]、インターネット〈https://www.thanko.co.jp/shopdetail/000000001214/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ファン装置が取り込んだ大量の外気を流通させることにより、身体から出た汗を蒸発させて、身体を冷却することはできるが、それ以上の冷却はできないという不都合があった。
【0013】
また、特許文献2に記載の技術では、熱交換された空気をファンによりウェア内部側に拡散させることはできるが、外気を取り込むことはできず、身体から出た汗が蒸発しても、その湿気を含んだ空気を外部に放出できないため、汗が蒸発することにより身体を冷却する効果は望めないという不都合があった。
【0014】
また、特許文献3に記載の技術では、夏場に冷房目的で空気調和ユニットをウェアに装着した場合、ファンはヒートシンクの熱を外部に放出させる構成となっているが、外気を取り込む構成にはなっていないため、ユーザーの身体を冷房するときに、ファンによって身体から出た汗を蒸発させて、ユーザーの身体を気化熱で冷却させることができないという不都合があった。
【0015】
また、非特許文献1に記載の技術では、非特許文献1に記載があるように平面状のプレートを使用者の背中に密着させて、背中を継続して冷やしている。そうすると、ペルチェ素子を作動させた当初は、プレートは外気温に対して大きな温度差があっても、身体は大きな発熱体であり、背中に密着させて継続して使用した場合、ペルチェ素子で冷却しても熱交換プレートと身体の温度との温度差は小さくなっていき、当初得られたひんやり感は徐々に失われてしまうという不都合があった。また、非特許文献1の「よくある質問」に記載があるように、服を着た上から使用しても、外気温が低い場所等冷却プレート温度がマイナスになる状況下で使用すると、凍傷になる危険性があるという不都合があった。
【0016】
本発明の目的は、ファン装置をウェアに取り付けて身体を冷却するのに、外気を取り込むことで気化熱による冷却効果を得るとともに、ペルチェ素子により身体を冷却するファン装置とファン装置用ウェアの組合せであって、継続して使用しても、涼感やひんやり感を維持できるファン装置とファン装置用ウェアの組合せを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。
【0018】
本発明は、外気を取り込むことで使用者の身体から出た汗を蒸発させて気化熱による冷却効果を得るとともに、ペルチェ素子により身体を冷却させるファン装置とファン装置用ウェアの組合せに関する。
そして、ファン装置用ウェアのウェア本体には、ファン装置を取り付けるための取り付け穴を有し、ファン装置には、取り付け穴にファン装置を取り付けるための取り付け部を備えた筐体部と、筐体部に保持されたファン冷却部とペルチェ冷却部を有し、ファン冷却部のファンにより、筐体部の吸気穴から外気を取り込み、筐体部の排気穴から身体に外気を放出させるように構成され、ペルチェ冷却部は、ペルチェ素子と、ペルチェ素子を挟んで身体側の面に冷却プレート、吸気側の面に放熱板を有していて、ファンにより取り込まれた外気により放熱板の熱を放熱させ、ペルチェ素子により冷却プレートを冷却させるように構成され、冷却プレートは、身体側に向かって筐体部から膨出するように構成され、ウェア本体は、ファン装置を取り付けた状態で、ファン装置が少なくとも軸心方向に移動可能となるたわみ分を有し、使用者が身体を動かさないときには、ファンにより取り込まれた外気を身体に放出する力により、たわみ分のあることからファン装置が移動して、冷却プレートを身体から離間させた状態で冷却プレートは冷却され、身体を間接的に冷却させるように構成されているとともに、使用者が腕を上げたり身体をひねったりして身体を動かしたときには、たわみ分が身体の動きに引っ張られて減少することにより、身体に外気を放出する力に抗してファン装置が身体の方に移動して、冷却プレートが身体に直接接触して身体を冷却させるように構成されていることを特徴とする。
【0019】
また、ファン装置用ウェアは、使用者の上半身を覆うものであって、下端部が使用者の腰回りに密着するように構成され、取り付け穴は、使用者の左右の脇腹近傍であって、ファン装置用ウェアの下端部近傍にそれぞれ1つずつ設けられていることを特徴とする。
【0020】
また、排気穴には、ファン装置の内部に指等が入らないようにする排気ガードが設けられており、排気ガードは、ファン装置の排気側に膨出するよう構成され、冷却プレートは排気ガードの頂部に固定され、排気側の面が排気ガードよりも更に排気側に膨出するように構成されていることを特徴とする。
【0021】
また、排気ガードは、頂部から外周部向かって略放射状に形成された複数の排気ガード腕部を有し、放熱板は外周部に略放射状に形成された複数の放熱腕部を有し、放熱腕部は排気ガード腕部の軸心方向から見たときの投影形状と略重なるように構成されていることを特徴とする。
【0022】
また、取り付け穴は、使用者の左右の腕の略真下の位置にそれぞれ1つずつ設けられていることを特徴とする。
【0023】
また、ファン装置は、接続ケーブルで結ばれ、ファン装置に電源を供給するコントローラを有し、コントローラは、バッテリーとファン冷却部とペルチェ冷却部の能力を制御するため複数の電圧を切り換える制御部を有し、コントローラからは、ファン冷却部とペルチェ冷却部に対して、同一の電圧の電源が供給されるように構成されていることを特徴とする。
【0024】
そして、ファン装置は温度センサーを有し、冷却プレートまたは外気が所定の温度以下になると、ペルチェ冷却部の冷却を停止させるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、上述の特徴を有することから、下記に示すことが可能となる。
【0026】
外気を取り込むことで使用者の身体から出た汗を蒸発させて気化熱による冷却効果を得るとともに、ペルチェ素子により身体を冷却させるファン装置とファン装置用ウェアの組合せであって、ファン装置用ウェアのウェア本体には、ファン装置を取り付けるための取り付け穴を有し、ファン装置には、取り付け穴にファン装置を取り付けるための取り付け部を備えた筐体部と、筐体部に保持されたファン冷却部とペルチェ冷却部を有し、ファン冷却部のファンにより、筐体部の吸気穴から外気を取り込み、筐体部の排気穴から身体に外気を放出させるように構成され、ペルチェ冷却部は、ペルチェ素子と、ペルチェ素子を挟んで身体側の面に冷却プレート、吸気側の面に放熱板を有していて、ファンにより取り込まれた外気により放熱板の熱を放熱させ、ペルチェ素子により冷却プレートを冷却させるように構成され、冷却プレートは、身体側に向かって筐体部から膨出するように構成され、ウェア本体は、ファン装置を取り付けた状態で、ファン装置が少なくとも軸心方向に移動可能となるたわみ分を有し、使用者が身体を動かさないときには、ファンにより取り込まれた外気を身体に放出する力により、たわみ分のあることからファン装置が移動して、冷却プレートを身体から離間させた状態で冷却プレートは冷却され、身体を間接的に冷却させるように構成されているとともに、使用者が腕を上げたり身体をひねったりして身体を動かしたときには、たわみ分が身体の動きに引っ張られて減少することにより、身体に外気を放出する力に抗してファン装置が身体の方に移動して、冷却プレートが身体に直接接触して身体を冷却させるように構成されているので、使用者が身体を動かさないときには、ウェアに取り付けられたファン装置が、ファンの空気を押し出す力により、身体から浮き上がるようにして離間させることができる。ファン装置が身体と離間すれば、冷却プレートは身体と接触しているときのように身体で直接温められることはなく、ペルチェ素子本来の冷却力により冷却される。そして、十分に冷却された冷却プレートにより、ウェア内部の空気を冷却することが可能となる。また、身体を動かしたときには、十分に冷却された冷却プレートが身体に直接接触し、涼感やひんやり感を得られる。なお、使用者が身体を動かすのをやめれば、ファン装置は身体から浮き上がるようにして離間するので、冷却プレートは本来の温度に冷却される。それゆえ、継続して使用しても、涼感やひんやり感を維持できるものとなった。
【0027】
また、ファン装置用ウェアは、使用者の上半身を覆うものであって、下端部が使用者の腰回りに密着するように構成され、取り付け穴は、使用者の左右の脇腹近傍であって、ファン装置用ウェアの下端部近傍にそれぞれ1つずつ設けられているので、例えば、ファン装置が腕とファン装置用ウェアの下端部の略中間位置にあると、たわみ分が大きく、ファン装置は大きく身体から離れるため、腕を上げたりして体を動かしても、冷却プレートは身体に接触しにくくなるが、一方、ファン装置用ウェアの下端部近傍にあれば、下端部が使用者の腰回りに密着するように構成されているのでたわみ分が少なく、ファンは身体の近くにあり、身体を動かしたとき、冷却プレートが身体に接触しやすいものとなった。
【0028】
また、排気穴には、ファン装置の内部に指等が入らないようにする排気ガードが設けられており、排気ガードは、ファン装置の排気側に膨出するよう構成され、冷却プレートは排気ガードの頂部に固定され、排気側の面が排気ガードよりも更に排気側に膨出するように構成されているので、使用者が体を動かさないときには、ファン装置を身体から浮き上がるようにして離間させやすく、また、身体を動かしたときには、冷却プレートが身体に接触させやすいものとなった。
【0029】
また、排気ガードは、頂部から外周部向かって略放射状に形成された複数の排気ガード腕部を有し、放熱板は外周部に略放射状に形成された複数の放熱腕部を有し、放熱腕部は排気ガード腕部の軸心方向から見たときの投影形状と略重なるように構成されているので、ファンによって取り込んだ外気により効率よく放熱し、冷却プレートを冷却するとともに、ウェア内に排気することが可能となる。
【0030】
また、取り付け穴は、使用者の左右の腕の略真下の位置にそれぞれ1つずつ設けられているので、フォークリフトやトラクターの運転のように、運転席に座って作業をするような場合でも、ファン装置がフォークリフト等の運転席に当たったりせず、便利に使用できるものとなった。
【0031】
ファン装置は、接続ケーブルで結ばれ、ファン装置に電源を供給するコントローラを有し、コントローラは、バッテリーとファン冷却部とペルチェ冷却部の能力を制御するため複数の電圧を切り換える制御部を有し、コントローラからは、ファン冷却部とペルチェ冷却部に対して、同一の電圧の電源が供給されるように構成されているので、ファン冷却部による冷却とペルチェ冷却部による冷却を同期させてその能力の制御が可能となるとともに、電源部からの結線を簡単にすることができた。
【0032】
そして、ファン装置は温度センサーを有し、冷却プレートまたは外気が所定の温度以下になると、ペルチェ冷却部の冷却を停止させるように構成されているので、更に、凍傷になりにくいファン装置を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明のファン装置とファン装置用ウェアの組合せの使用例を示す模式図である。
図2】本発明のファン装置とファン装置用ウェアの組合せを示す模式図である。
図3】本発明のファン装置を示す斜視図である。
図4】本発明のファン装置を示す断面図である。
図5】本発明のファン装置の要部の分解斜視図である。
図6】本発明のファン装置とファン装置用ウェアの組合せの使用例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、ファン装置とファン装置用ウェアの組合せを使用して使用者が身体を冷却している状態で、使用者の身体の方向を排気側または身体側、その反対の方向を吸気側と呼ぶこととする。
【0035】
ここで、本発明のファン装置とファン装置用ウェアの組合せでは、ファン装置はファン装置用ウェアに設けられた取り付け孔を塞ぐように取り付けられ、ファン装置によってファン装置用ウェア内に外気を吸気して取り込み、使用者の身体から出た汗を蒸発させて身体を冷却するとともに、ペルチェ素子により身体を冷却するように構成されている。
以下、図面を参照して、本発明のファン装置とファン装置用ウェアの組合せについて詳細を説明する。
【0036】
(第1の実施形態)
図1乃至図5を用いて、本発明のファン装置とファン装置用ウェアの組合せの第1の実施形態について、説明する。
図1はファン装置とファン装置用ウェアの組合せを着用している使用者(使用者)Uを模式的に背面方向から見た図であり、図2は本発明のファン装置とファン装置用ウェアの組合せの構成を模式的に示す図である。図1及び図2に示すように、本実施形態のファン装置とファン装置用ウェアの組合せは、ウェア(ファン装置用ウェア)1と2つのファン装置(ファン装置)2、2を備えている。
【0037】
図1に示すように、ウェア1は使用者Uの上半身を覆う概略長袖の作業服の形状をしており、ウェア1の下端部はゴム等により使用者Uの腰回りに密着するように構成されている。ウェア1の下端部近傍で、使用者Uの少し背面側の左右の脇腹近傍には、図視されない取り付け穴(取り付け穴)が設けられ、この取り付け穴を塞ぐようにファン装置2、2が取り付けられている。ファン装置2、2により吸気され取り込まれた外気は、ウェア1を膨らませて、外気をウェア1の内部に行き渡るようにして、使用者Uの身体(身体)から出た汗を蒸発させて身体を冷却させ、首元や袖口から排出される。
【0038】
図2に示すように、ファン装置2、2には電源を内蔵するコントローラ(コントローラ)Cからの接続ケーブル(接続ケーブル)が接続され、接続ケーブルを介してファン装置2、2に電源等が供給される。コントローラCには、図示されない制御部(制御部)を有し、ファン装置2、2に供給する電源の電圧を変えて、ファン装置2、2の冷却能力を調整できるように構成されている。
なおここで、ファン装置2、2のそれぞれにバッテリー等の電源を搭載させて、コントローラCなしでそれぞれ単独で作動するようにしてもよいし、または、コントロール部と電源部を分けて、それぞれ別々に構成にするようにしてもよい。
【0039】
次に図3乃至図5を参照して、ファン装置2の構成について説明する。
図3は、ファン装置2をウェア1に取り付ける前の状態を示す斜視図である。
図3に示すように、ファン装置2は吸気ガード部(取り付け部)(筐体部)3とファン装置本体(筐体部)4とを有している。
吸気ガード部3は、吸気側に少し膨出する略網状の吸気ガード31で覆われた吸気穴(吸気穴)32が形成され、吸気穴32の外周部には吸気フランジ部33が形成されている。また、吸気ガード部3の排気側には吸気筒状部34が設けられ、吸気筒状部34の外周部には雄ネジ部35が形成されている。
【0040】
図3に示すように、ファン装置本体4は本体筒状部5と排気ガード部6と本体筒状部5から横方向に膨出した本体制御部7を有している。
排気ガード部6は、排気側に膨出するような形状に形成され、頂部にペルチェ冷却部(ペルチェ冷却部)8の冷却プレート(冷却プレート)81の排気側の面が、排気側に更に膨出するように固定されている。
本体制御部7は小さな略箱形形状をして、コントローラCからの接続ケーブルを接続するための接続プラグ71と、ペルチェ冷却部8の作動を切り換えるペルチェスイッチ72と、ペルチェ冷却部8の作動を表示するペルチェ作動表示73を有している。
【0041】
図4はウェア1に取り付けられた状態のファン装置2を、図3の断面AAで切断したときの断面図であり、図5はファン装置本体4の分解斜視図である。すなわち、図4は、ファン装置2の螺合や係合状態を示すようにファン装置2を切断したときの断面図である。
図4および図5を用いて、ファン装置2とファン装置本体4の内部の構成等を、以下、詳しく説明する。
【0042】
図4および図5に示すように、本体筒状部5は略円筒形に形成された筒状部本体51を有しており、筒状部本体51の外面部は、吸気ガード部3と螺合するとき指がかかり易いように、凹凸が形成されている。また、筒状部本体51の外面部には、コントローラCからの接続ケーブルを止めるための、断面が略L字形をしたケーブル止め52が複数形成されている。筒状部本体51の吸気側の外周部には本体フランジ部53、内周部には、吸気ガード部3の雄ネジ部35と螺合するための雌ネジ部54が形成されている。
【0043】
また、本体筒状部5の排気側内面部には、4本のファン保持アーム55に保持された有底の浅い円筒状をしたファン保持部56が形成され、ファン保持部56にはモーター付きファン(ファン冷却部)(ファン)9が固定されている。
本体筒状部5の排気側内面部には、後述する排気ガード部6と組み立てる際のストッパーとなるストッパー部57と、排気ガード部6と係合するための係合爪58とがそれぞれ複数形成されている。また、本体筒状部5の外面には横方向に膨出し、本体制御部7の基板等を収納するための排気側が開口した小さな箱状の本体制御部収納部59が形成されている。
【0044】
図4および図5に示すように、排気ガード部6は、排気側に膨出する排気ガード61(排気ガード)で覆われた排気穴(排気穴)62が形成され、排気ガード61の頂部には、中央部に四角いペルチェ保持穴63を有する円板状のペルチェ保持部64が形成されている。排気ガード部6の吸気側には排気筒状部65が設けられ、排気筒状部65の排気側の端部とペルチェ保持部64とは、放射状に形成され湾曲した複数の排気ガード腕状部(排気ガード腕部)66で連結され、排気ガード61を形成している。
【0045】
また、排気筒状部65は円筒状に形成され、排気筒状部65の吸気側には係合爪56と係合する複数の被係合部67が排気筒状部65から吸気側に突出して形成されている。また、排気筒状部65の排気側の端部には、横方向に膨出し、本体制御部収納部59の排気側の蓋をするための、本体制御部収納部蓋部68が形成されている。
【0046】
図4および図5に示すように、ペルチェ冷却部8は、冷却プレート81とペルチェ素子(ペルチェ素子)82、放熱板(放熱板)83を有している。冷却プレート81の排気側の面は、排気側に膨出するような形に形成され、排気側に膨出する排気ガード61の頂部から、排気側に更に膨出するように構成されている。ここで、冷却プレート81と放熱板83は、アルミ等の熱伝導率の高い金属から構成される。
【0047】
図4に示すように、冷却プレート81の吸気側の面はネジ穴を有する2つのボス84、84が形成されている。ペルチェ保持穴63にペルチェ素子82を収納し、ペルチェ素子82の排気側の面に伝熱シート85を介して冷却プレート81を、吸気側の面に放熱板83を当接する。そして、吸気面側から2本のビスをボス84、84と螺合すると、ペルチェ冷却部8は一体となって、ペルチェ保持部64にしっかりと固定される。
ここで、放熱板83と伝熱シート85、ペルチェ素子82、冷却プレート81のそれぞれの当接面には伝熱グリースが塗布され、良好に伝熱されるよう構成されている。
【0048】
図5に示すように、放熱板83の外周部には、放射状に形成され湾曲した複数の放熱腕状部(放熱腕部)86が形成されている。ここで、複数の放熱腕状部86は、排気ガード部6の排気ガード腕状部66を軸心方向から見たときの投影形状と略重なるように形成されているので、ファンによって取り込んだ外気により効率よく放熱板83から放熱し、ペルチェ素子82により冷却プレート81を冷却するとともに、ウェア内に排気することが可能となった。
【0049】
図4に示すように、排気ガード部6の排気筒状部65の外径は、本体筒状部5の筒状部本体51の内径に嵌合可能な大きさになっている。そこで、図4および図5に示すように、排気ガード部6の吸気側を本体筒状部5の排気側に挿入していくと、排気筒状部65の吸気側の端面がストッパー部57に当接し、吸気側の端面から突出した被係合部67が、係合爪58と係合する。このようにして、本体筒状部5と排気ガード部6が一体となり、ファン装置本体4が組み立てられる。
【0050】
ここで、図4を用いて、ファン装置2がどのようにウェア1に取り付けられるかについて、説明する。
図4において、まず、ウェア1の取り付け穴に吸気ガード部3の吸気筒状部34を挿入する。次に、ファン装置本体4を吸気ガード部3に当接し、互いに回転させると、雄ネジ部35がファン装置本体4の雌ネジ部52と螺合していく。このようにして、ウェア1の取り付け穴の周囲の部分が吸気フランジ部33と本体フランジ部51にしっかりと挟まれ、ファン装置2がウェア1に固定される。
【0051】
それでは次に、ウェア1にファン装置2を取り付けて使用者Uが使用したとき、ファン装置2とファン装置用のウェア1の組合せとして、どのように作用するかを説明する。
【0052】
前述したように、本実施形態のウェア1は概略長袖の作業服の形状をしており、下端部が使用者Uの腰回りに密着するように構成されている。ウェア1の下端部近傍で、使用者Uの少し背面側の左右の脇腹近傍には、ファン装置2、2が取り付けられ、ファン装置2、2により吸気され取り込まれた外気は、ウェア1を膨らませて、外気をウェア1の内部に行き渡るようにして、使用者Uの身体から出た汗を蒸発させて身体を冷却させ、首元や袖口から排出される。そして同時に、吸気され取り込まれた外気により、ペルチェ素子82により暖められた放熱板83の熱は放熱され、冷却プレート81が冷却される。
【0053】
ここで、非特許文献1に記載の技術のように、冷却プレート81を使用者Uの身体に直接接触させることにより使用者Uが冷感を得る構成の場合は、使用した当初は、冷却プレート81は十分に冷却されており、使用者Uは十分な涼感が得られる。しかし、身体は大きな発熱体であり、継続して使用した場合、身体との接触により、ペルチェ素子82で冷却しても熱交換プレートは継続して身体により暖められる。そして、熱交換プレートと身体または外気温との温度差は小さくなっていき、当初得られた涼感は徐々に失われてしまうという不都合があった。
【0054】
本実施形態のウェア1は、ファン装置2を取り付けた状態で、ファン装置2が少なくとも軸心方向に移動可能となるたわみ分を有している。そのため、使用者Uが体を動かさないときには、モーター付きファン9により取り込まれた外気が身体に外気を放出される力により、たわみ分のあることからファン装置2が浮き上がるように移動する。そうすると、冷却プレート81は身体から離間するので、大きな発熱体である身体により、冷却プレート81は継続して暖められることなく、ペルチェ素子82により十分に冷却される。十分に冷却された冷却された冷却プレート81は、ウェア1内部の空気を冷却するとともに、冷却プレート81近傍の身体の部分を、冷気を放射し冷却する。またここで、冷却プレート81上には、外気が冷やされて結露が付着する。
【0055】
また、使用者Uが腕を上げたり体をひねったりして身体を動かしたときには、たわみ分が身体の動きに引っ張られて減少することにより、身体に外気を放出される力に抗してファン装置2が身体の方に移動する。すると、十分に冷却された冷却プレート81が身体に接触することになり、使用者Uは大きな涼感を得ることができる。なお、ここで使用者Uはウェア1を通常、服を着た上から使用するが、使用者Uが身体を動かしたとき、冷却プレート81上の結露が使用者Uの着ている服に付着し、この結露が取り込まれた外気により蒸発し、使用者Uはより大きな涼感が得られる。
【0056】
そして、使用者Uが体を動かすのをやめれば、ウェア1に取り付けられたファン装置2が空気を押し出す力により、ファン装置2は再び身体から浮き上がるようにして離間する。そうすると、冷却プレート81も身体と離間し、冷却プレート81は身体と接触しているときのように身体で直接温められることはなく、ペルチェ素子本来の冷却力により冷却される。すると、冷却プレート81は十分に冷却され、ウェア内部の空気を冷却すること等が可能となる。そしてまた、身体を動かしたときには、十分に冷却された冷却プレート81が身体に接触し、涼感やひんやり感を得られる。なお、使用者Uが体を動かすのをやめれば、ファン装置2は身体から浮き上がるようにして離間するので、冷却プレート81は本来の温度に冷却される。それゆえ、継続して使用しても、涼感やひんやり感を維持できるものとなった。
【0057】
このように本実施形態のファン装置2とファン装置用のウェア1の組合せは、使用者Uが作業等をおこなうときに使用し、身体を動かしたときにより多くの涼感が得られるようにしたものである。そうすると、使用者に身体を動かしたときのインセンティブを与えるものとなり、酷暑の時などにおいても、使用者Uが作業等をおこなって身体を動かすことに楽しさを感じるように、サポートできるものとなった。
【0058】
また、ウェア1は、使用者の上半身を覆うものであって、下端部が使用者Uの腰回りに密着するように構成され、取り付け穴は、使用者Uの左右の脇腹近傍であって、ウェア1の下端部近傍にそれぞれ1つずつ設けられている。ここで例えば、ファン装置2が腕とウェア1の下端部の略中間位置にあると、たわみ分が大きく、ファン装置2は大きく身体から離れるため、腕を上げたりして体を動かしても、冷却プレート81は体に接触しにくくなる。ここで、本実施形態のファン装置2はウェア1の下端部近傍にあり、下端部Uが使用者の腰回りに密着するように構成されているのでたわみ分が少なく、ファン装置2は身体の近くにあり、体を動かしたとき、冷却プレート81が身体に接触しやすいものとなった。
【0059】
また、排気穴62には、ファン装置2の内部に指等が入らないようにする排気ガード61が設けられており、排気ガード61は、ファン装置2の排気側に膨出するよう構成されている。そして、冷却プレート81は排気ガード61の頂部に固定され、排気側の面がファン装置2の排気側よりも更に膨出するように構成されている。そのため、使用者Uが身体を動かさないときには、ファン装置2を身体から浮き上がるようにして離間させやすく、また、身体を動かしたときには、冷却プレート81が身体に接触させやすいものとなった。
【0060】
また、ファン装置2、2には供給する電源の電圧を変えてコントローラCから電源等が供給されるが、モーター付きファン9とペルチェ素子82に対して、同一の電圧の電源が供給されるように構成されている。そのため、モーター付きファン9よる冷却とペルチェ素子82による冷却を同期させてその能力の制御が可能となるとともに、電源部からの結線を簡単にすることができた。なおここで、モーター付きファン9とペルチェ素子82に対して、結線は複雑になるが、別々の電圧を加えてもよいことは勿論である。
【0061】
なお、本実施形態では、ファン装置2のウェア1への取り付けについて、ファン装置2を吸気ガード部3とファン装置本体4に分け、組み合わせることでウェア1の取り付け穴に取り付けるように構成したが、これに限定されない。例えば、特許文献1にて示されているように、筒状のファン装置2を取り付け穴に挿入し、これにリング部材嵌めることにより、ファン装置2をウェア1に取り付けるようにしてもよいことは、勿論である。
【0062】
またなお、本実施形態では、ウェア1の形状を使用者Uの上半身を覆う概略長袖の作業服の形状のものとしたが、これに限定されない。例えば、現在、市販されている様々な形のファン付きウェアの形のものに、本実施形態の取り付け穴を設けたものでもよいことは、勿論である。
【0063】
またなお、ファン装置2にサーミスタ等の温度センサー(温度センサー)を設け、冷却プレート81または外気が所定の温度以下になったときには、ペルチェ冷却部8の冷却を停止させるように構成されるようにしてもよいことは、勿論である。もともと、身体を動かさないときには冷却プレート81は身体から離れ、凍傷にはなりにくいが、低温時にペルチェ冷却部8の冷却を停止させることにより、更に凍傷になりにくいものとなる。
【0064】
(第2の実施形態)
図6を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。
この第2の実施形態では、ファン装置2は第1の実施形態と同様な構成を有しているが、ウェア1を別の構成にしたものである。以下、第1の実施形態と同じ部分は同一符号を付し、説明を省略し、異なっている部分のみを説明する
【0065】
図6に示すように、ウェア1は第1の実施形態と同様に使用者Uの上半身を覆い、下端部はゴム等により使用者Uの腰回りに密着するように構成されていて、ウェア1の下端部近傍に取り付け穴が設けられているが、その位置が異なる。第1の実施形態では、取り付け穴は使用者Uの少し背面側の左右の脇腹近傍に設けてあったが、本実施形態では左右の腕の略真下の位置の脇腹近傍に設けられている。また、第1の実施形態ではウェア1は長袖であったが、本実施形態では袖のない、ベスト状のものとなっている。
【0066】
取り付け穴の位置、すなわちファン装置2の取り付け位置を、ウェア1の下端部近傍で、使用者Uの左右の腕の略真下の位置の脇腹近傍としたのは、フォークリフト等を運転する作業等の運転席に座って作業をするような場合でも、使いやすくするためである。フォークリフトを運転する作業において、ファン装置2が少し背面側に設けられていると、ファン装置2がフォークリフトの運転席に当たり、作業者の体が圧迫されたり、運転席により外気の吸気が妨げられたりすることがある。このようなことを軽減するために、左右の腕の略真下の位置にファン装置2を設けたものである。
【0067】
この場合、ファン装置2の取り付け位置が、腕とウェア本体の略中間の位置にあると、腕を動かしたとき、肘がファン装置2に当たってしまうことになる。本実施形態では、ウェア1の下端部近傍となっているので、腕を動かしても、肘が当たることを軽減できる。
この取り付け位置にすることは、農作業等でトラクターを運転する作業等でも、背もたれのある椅子等に座って作業するときも、便利に使用できるものである。
【0068】
そして、ファン装置2の取り付け位置が使用者Uの左右の腕の略真下の位置にあることは、フォークリフト等を運転するときだけでなくて、自動二輪を2人乗りで運転するときも、便利に使えるものとなる。すなわち、ファン装置2が少し背面側に設けられていると、後ろの人により、ファン装置2の吸気が妨げられてしまうことがあるからである。
【0069】
また、ウェア1を袖のない、ベスト状のものとしたは、袖のない方が腕が動かしやすい作業をするときの場合に、対応するためのものである。ところで一般に、脇の下は汗をかきやすい場所であるが、実際にベスト状のウェア1を着て暑い環境下で作業を行って腕を上げたとき、ファン装置2、2により吸気され取り込まれた外気は脇の下から大量に排出される。そうすると、排出される外気が、使用者Uの脇の下から出た汗を蒸発させて冷却させ、使用者Uに大きな涼感をもたらすこととなる。
【0070】
いずれにせよ、本実施形態のファン装置2とウェア1との組み合わせにおいても、継続して使用しても、涼感やひんやり感を維持できるものとなった。
そして、使用者Uが作業等をおこなうときに使用し、身体を動かしたときにより多くの涼感が得られるようにしたので、酷暑の時などにおいても、使用者Uが身体を動かして作業することに楽しさを感じるように、サポートできるものとなった。
【0071】
なお、前述してきた実施形態のファン装置2とウェア1との組み合わせは、以下のような表現とすることもできる。
外気を取り込むことで気化熱による冷却効果を得るとともに、取り込んだ外気でペルチェ素子の放熱板を放熱させて冷却プレートを冷却させるファン装置とファン装置用ウェアの組合せであって、使用者が身体を動かさないときには、取り込まれた外気が身体に放出される力によりファン装置用ウェアのたわみ分をファン装置が移動して、冷却プレートは身体から離間して冷たい状態となって間接的に身体を冷却し、身体を動かしたときにはたわみ分が減少し、身体に外気が放出される力に抗してファン装置が身体の方に移動して、冷却プレートが身体に直接接触して身体を冷却し、また、身体を動かさないと、冷却プレートは身体から離間して冷たい状態になるように構成されたファン装置とファン装置用ウェアの組合せ。
【0072】
本発明のファン装置とファン装置用ウェアの組合せは、前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
例えば、上述した実施の形態においては、使用者Uが作業を行う場合について説明したが、これに限定されない。例えば、サイクリングや釣り等のレジャーやスポーツ等を行う場合等でも、便利に使用できるものである。
【符号の説明】
【0073】
U 使用者
C コントローラ
1 ウェア
2 ファン装置
3 吸気ガード部
31 吸気ガード
32 吸気穴
33 吸気フランジ部
34 吸気筒状部
35 雄ネジ部
4 ファン装置本体
5 本体筒状部
51 筒状部本体
52 ケーブル止め
53 本体フランジ部
54 雌ネジ部
55 ファン保持アーム
56 ファン保持部
57 ストッパー部
58 係合爪
59 本体制御部収納部
6 排気ガード部
61 排気ガード
62 排気穴
63 ペルチェ保持穴
64 ペルチェ保持部
65 排気筒状部
66 排気ガード腕状部
67 被係合部
68本体制御部収納部蓋部
7 本体制御部
71 接続プラグ
72 ペルチェスイッチ
73 ペルチェ作動表示
8 ペルチェ冷却部
81 冷却プレート
82 ペルチェ素子
83 放熱板
84 ボス
85 伝熱シート
86 放熱腕状部
9 モーター付きファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6