(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】層状複水酸化物、硝酸イオンの除去方法、及び、硝酸イオンの回収方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/08 20060101AFI20250109BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20250109BHJP
C01G 25/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B01J20/08 C
B01D15/00 P
C01G25/00
(21)【出願番号】P 2024055297
(22)【出願日】2024-03-29
【審査請求日】2024-03-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000208662
【氏名又は名称】第一稀元素化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 雄二郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 靖
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-036804(JP,A)
【文献】特開2007-038203(JP,A)
【文献】特開2009-178682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/08
B01D 15/00
C01G 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式[1]で表され、
下記測定方法にて測定される硝酸イオンの吸着分配係数Kdが70以上
80.93以下であることを特徴とする層状複水酸化物。
[Mg
3(Al
1-xZr
x)(OH)
8]・[A
n-・mH
2O] [1]
ただし、式[1]において、xは、0.2≦x≦0.4を満たす数であり、mは、0以上4以下の数であり、nは、1以上4以下の自然数であり、A
n-はn価のイオン交換性アニオンの少なくとも1種である。
<測定方法>
1.層状複水酸化物1gを、硝酸イオン390ppm、塩化物イオン2300ppm、及び、硫酸イオン5800ppmを含む混合水溶液30mlに加え、27℃で1時間、攪拌する。
2.次に、上澄み液中の硝酸イオン濃度をイオンクロマトグラフで分析する。
3.次に、下記式により、硝酸イオンの吸着分配係数Kdを求める。
(硝酸イオンの吸着分配係数Kd(mL/g))=[層状複水酸化物1g中の硝酸イオン吸着量(mol/g)]/[吸着後溶液1mL中の硝酸イオン量(mol/mL)]。
【請求項2】
前記xは、0.2≦x≦0.3を満たす数であることを特徴とする請求項1に記載の層状複水酸化物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の層状複水酸化物を、硝酸イオンを含む陰イオン水溶液に接触させる工程を含むことを特徴とする硝酸イオンの除去方法。
【請求項4】
硝酸イオンを含む陰イオン水溶液を、請求項1又は2に記載の層状複水酸化物を充填したカラムに通水する工程を含む硝酸イオンの除去方法。
【請求項5】
硝酸イオンが吸着された請求項1又は2に記載の層状複水酸化物に、脱離液を接触させて硝酸イオンを回収する工程を含むことを特徴とする硝酸イオンの回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状複水酸化物、硝酸イオンの除去方法、及び、硝酸イオンの回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排水中に含まれる硝酸態窒素などの窒素化合物が環境中へ流出すると、湖沼や河川、海洋の富栄養化、地下水の汚染など、自然環境に深刻な影響を与える。そのため、生活排水に含まれる窒素成分は、下水処理場において、数千種以上の微生物が混在する活性汚泥と呼ばれる水処理微生物群によって除去されている。
【0003】
製造業では、製品の製造過程において硝酸による製品の洗浄により、有機物に乏しい高濃度の硝酸態窒素を含んだ排水が発生するため、その処理が不可欠である。しかし、一般的な活性汚泥法では、除去可能な硝酸態窒素は低濃度(通常は100mg/L未満)に限られている。この方法を産業排水に直接適用することは困難であった。活性汚泥法では、高濃度排水を処理可能な濃度まで希釈し、栄養となる有機物を添加する必要がある。この排水処理の難しさが、製造工場では円滑な製品の製造を阻む要因になっていた。また、微生物処理以外の硝酸態窒素の除去法としては、エネルギーコストの高い電気透析などの物理・化学的手法しか選択肢がないため、より効率的な排水処理方法が求められていた。
【0004】
従来、硝酸イオン等の陰イオンを除去するその他の材料として、層状複水酸化物が検討されている。例えば、水溶液から硝酸イオンを吸着できる吸着剤として、特許文献1には、Ni-Fe系吸着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、吸着した硝酸イオンの脱離方法として、アルカリ性の溶液、炭酸アルカリ溶液を用いる方法、加熱してNO3を除去する方法、1~2Mのアルカリ溶液を用いる方法が記載されている。
しかしながら、このような脱離方法は、簡便とは言い難い。
【0007】
本発明の目的は、硝酸イオン選択性が高く、且つ、吸着させた硝酸イオンを簡便に高効率で回収することが可能な層状複水酸化物を提供することにある。また、当該層状複水酸化物を用いた硝酸イオンの除去方法を提供することにある。また、当該層状複水酸化物を用いた硝酸イオンの回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討を行った。その結果、下記構成を採用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下を提供する。
<1> 下記式[1]で表され、
下記測定方法にて測定される硝酸イオンの吸着分配係数Kdが70以上であることを特徴とする層状複水酸化物。
[Mg3(Al1-xZrx)(OH)8]・[An-・mH2O] [1]
ただし、式[1]において、xは、0.2≦x≦0.4を満たす数であり、mは、0以上4以下の数であり、nは、1以上4以下の自然数であり、An-はn価のイオン交換性アニオンの少なくとも1種である。
<測定方法>
1.層状複水酸化物1gを、硝酸イオン390ppm、塩化物イオン2300ppm、及び、硫酸イオン5800ppmを含む混合水溶液30mlに加え、27℃で1時間、攪拌する。
2.次に、上澄み液中の硝酸イオン濃度をイオンクロマトグラフで分析する。
3.次に、下記式により、硝酸イオンの吸着分配係数Kdを求める。
(硝酸イオンの吸着分配係数Kd(mL/g))=[層状複水酸化物1g中の硝酸イオン吸着量(mol/g)]/[吸着後溶液1mL中の硝酸イオン量(mol/mL)]。
【0010】
前記層状複水酸化物は、2価の金属イオンとしてMg2+を有し、3価の金属イオンとしてAl3+を有する層状複水酸化物であり、層状複水酸化物のAlサイトの一部がZrに置換されている。具体的に、式[1]において、xが、0.2≦x≦0.4を満たす範囲でAlがZrに置換されている。xが0.2≦x≦0.4を満たす範囲で、AlがZrに置換されているため、層状複水酸化物の層間距離が、硝酸イオンを選択的に吸着するのに適した距離(具体的には、8.1Å以上8.2Å以下)となっている。すなわち、式[1]において、xが0.2≦x≦0.4を満たす前記層状複水酸化物は、硝酸イオンを選択的に吸着させることができる。また、塩基性の高いAl、Mgに対して、Alを、両性元素のZrで置換することで、塩基性を調整することができ、吸着させた硝酸イオンを容易に脱離させることができる。すなわち、吸着させた硝酸イオンを高効率で回収することができる。
以上、前記構成によれば、硝酸イオンを選択的に吸着することができ、且つ、吸着させた硝酸イオンを高効率で回収することができる。
【0011】
なお、従来、一般的に、無機化合物で陰イオンを吸着できるものは、層状複水酸化物しか知られていない。また、層状複水酸化物では、陰イオンを吸着することはできるが、吸着した陰イオンを脱離することは困難であった。すなわち、上述した特許文献1のように、アルカリ性の溶液等を用いて脱離させる方法や、加熱して脱離させる方法しか存在せず、簡便とは言えなかった。本発明は、吸着させた硝酸イオンを簡便に好適に脱離させることができ、高効率で回収することができる点で特に優れる。
【0012】
さらに、本発明は、以下を提供する。
<2> 前記xは、0.2≦x≦0.3を満たす数であることを特徴とする前記<1>に記載の層状複水酸化物。
【0013】
前記xが0.2≦x≦0.3を満たす数であると、硝酸イオンをより選択的に吸着することができ、且つ、吸着させた硝酸イオンをより高効率で回収することができる。
【0014】
さらに、本発明は、以下を提供する。
<3> 前記<1>又は前記<2>に記載の層状複水酸化物を、硝酸イオンを含む陰イオン水溶液に接触させる工程を含むことを特徴とする硝酸イオンの除去方法。
【0015】
前記構成によれば、前記層状複水酸化物を用いるため、硝酸イオンを選択的に吸着することができる。
【0016】
さらに、本発明は、以下を提供する。
<4> 硝酸イオンを含む陰イオン水溶液を、前記<1>又は前記<2>に記載の層状複水酸化物を充填したカラムに通水する工程を含む硝酸イオンの除去方法。
【0017】
前記構成によれば、前記層状複水酸化物を用いるため、硝酸イオンを選択的に吸着することができる。
【0018】
さらに、本発明は、以下を提供する。
<5> 硝酸イオンが吸着された前記<1>又は前記<2>に記載の層状複水酸化物に、脱離液を接触させて硝酸イオンを回収する工程を含むことを特徴とする硝酸イオンの回収方法。
【0019】
前記構成によれば、前記層状複水酸化物を用いるため、吸着させた硝酸イオンを高効率で回収することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、硝酸イオン選択性が高く、且つ、吸着させた硝酸イオンを高効率で回収することが可能な層状複水酸化物を提供することができる。また、当該層状複水酸化物を用いた硝酸イオンの除去方法を提供することができる。また、当該層状複水酸化物を用いた硝酸イオンの回収方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例、比較例の層状複水酸化物のX線回折スペクトルである。
【
図2】実施例、比較例の層状複水酸化物のX線回折スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。なお、本明細書において、ジルコニウムとは一般的なものであり、ハフニウムを含めた酸化物換算で10質量%以下の不純物を含むものである。また、本明細書において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0023】
以下で示される各成分の含有量の最大値、最小値は、他の成分の含有量に関係なく、それぞれ独立して本発明の好ましい最小値、好ましい最大値である。
また、以下で示される各種パラメータ(測定値等)の最大値、最小値は、各成分の含有量(組成)に関係なく、それぞれ独立して本発明の好ましい最小値、最大値である。
【0024】
[層状複水酸化物]
本実施形態に係る層状複水酸化物は、
下記式[1]で表され、
下記測定方法にて測定される硝酸イオンの吸着分配係数Kdが70以上である。
[Mg3(Al1-xZrx)(OH)8]・[An-・mH2O] [1]
ただし、式[1]において、xは、0.2≦x≦0.4を満たす数であり、mは、0以上4以下の数であり、nは、1以上4以下の自然数であり、An-はn価のイオン交換性アニオンの少なくとも1種である。
<測定方法>
1.層状複水酸化物1gを、硝酸イオン390ppm、塩化物イオン2300ppm、及び、硫酸イオン5800ppmを含む混合水溶液30mlに加え、27℃で1時間、攪拌する。
2.次に、上澄み液中の硝酸イオン濃度をイオンクロマトグラフで分析する。
3.次に、下記式により、硝酸イオンの吸着分配係数Kdを求める。
(硝酸イオンの吸着分配係数Kd(mL/g))=[層状複水酸化物1g中の硝酸イオン吸着量(mol/g)]/[吸着後溶液1mL中の硝酸イオン量(mol/mL)]。
ここで、上記式の右辺の分母の[吸着後溶液1mL中の硝酸イオン量(mol/mL)]は、上記測定方法の2.において測定される上澄み液(吸収後溶液)の硝酸イオン濃度(μg/mL)の単位をmol/mLに換算して得られる。
また、上記式の右辺の分子に関して、まず、[層状複水酸化物1g中の硝酸イオン吸着量(μg/g)]は、以下の式で求められる。
[層状複水酸化物1g中の硝酸イオン吸着量(μg/g)]=[[390(μg/mL)]-[吸着後溶液の硝酸イオン濃度(μg/mL)]]×30(mL)]/1(g)
なお、上記式において、「390(μg/mL)」は初期の硝酸イオン濃度390ppm、「30(mL)」は混合水溶液の量、「1(g)」は層状複水酸化物の量である。
[層状複水酸化物1g中の硝酸イオン吸着量(μg/g)]を求めた後、単位を(mol)に変換することにより、上記式の右辺の分子[層状複水酸化物1g中の硝酸イオン吸着量(mol/g)]を得ることができる。
【0025】
上述の通り、本実施形態に係る層状複水酸化物は、下記式[1]で表される。
[Mg3(Al1-xZrx)(OH)8]・[An-・mH2O] [1]
ただし、式[1]において、xは、0.2≦x≦0.4を満たす数であり、mは、0以上4以下の数であり、nは、1以上4以下の自然数であり、An-はn価のイオン交換性アニオンの少なくとも1種である。
【0026】
前記層状複水酸化物は、2価の金属イオンとしてMg2+を有し、3価の金属イオンとしてAl3+を有する層状複水酸化物であり、層状複水酸化物のAlサイトの一部がZrに置換されている。具体的に、式[1]において、xが0.2≦x≦0.4を満たす範囲でAlがZrに置換されている。xが0.2≦x≦0.4を満たす範囲でAlがZrに置換されているため、層状複水酸化物の層間距離が、硝酸イオンを選択的に吸着するのに適した距離(具体的には、8.1Å以上8.2Å以下)となっている。すなわち、式[1]において、xが0.2≦x≦0.4を満たす前記層状複水酸化物は、硝酸イオンを選択的に吸着させることができる。また、塩基性の高いAl、Mgに対して、Alを両性元素のZrで置換することで、塩基性を調整することができ、吸着させた硝酸イオンを容易に脱離させることができる。すなわち、吸着させた硝酸イオンを高効率で回収することができる。
以上より、前記層状複水酸化物は、硝酸イオンを選択的に吸着することができ、且つ、吸着させた硝酸イオンを高効率で回収することができる。
【0027】
前記xは、好ましくは0.2≦x≦0.3を満たす数である。
前記xが0.2≦x≦0.3であると、層間距離がより硝酸イオンを吸着するのに適した距離となり、また、吸着させた硝酸イオンをより容易に脱離させるのに適した塩基性の調整ができる点でより好ましい。
【0028】
前記An-としては、n価のイオン交換性アニオンであれば、特に限定されないが、例えば、OH-、Cl-、F-、Br-、HCO3
―、NO3
-、NO2
-、CO3
2-、SO4
2-、PO4
3-、AsO3
3-、Fe(CN)6
4-、酒石酸イオンが挙げられる。
【0029】
前記mは、層状複水酸化物の水和水量が相対湿度に依存し変化するため、0以上4以下の数であれば特に限定されない。
例えば、前記mは、温度20℃、湿度65%で240時間静置した後、2時間以内の条件下でTG-DTA(示差熱-熱重量同時分析)を用いて分析した際に、0以上4以下の数であれば特に限定されない。
【0030】
上述の通り、本実施形態に係る層状複水酸化物は、下記測定方法にて測定される硝酸イオンの吸着分配係数Kdが70以上である。前記硝酸イオンの吸着分配係数Kdが70以上であるため、硝酸イオンを選択的に吸着することができるといえる。
<測定方法>
1.層状複水酸化物1gを、硝酸イオン390ppm、塩化物イオン2300ppm、及び、硫酸イオン5800ppmを含む混合水溶液30mlに加え、27℃で1時間、攪拌する。
2.次に、上澄み液中の硝酸イオン濃度をイオンクロマトグラフで分析する。
3.次に、下記式により、硝酸イオンの吸着分配係数Kdを求める。
(硝酸イオンの吸着分配係数Kd(mL/g))=[層状複水酸化物1g中の硝酸イオン吸着量(mol/g)]/[吸着後溶液1mL中の硝酸イオン量(mol/mL)]。
【0031】
前記硝酸イオンの吸着分配係数Kdは、好ましくは70以上、より好ましくは75以上である。
【0032】
前記層状複水酸化物の層間距離は、好ましくは8.1Å以上8.2Å以下、より好ましくは8.1Å以上8.18Å以下である。前記層間距離が8.1Å以上8.2Å以下であると、硝酸イオンをより好適に吸着することができる。
【0033】
前記層状複水酸化物の粒径は、特に限定されない。硝酸イオンを好適に吸着できる観点からはある程度、粒径が小さいことが好ましいが、0.1mm以下の粒子をカラムに充填すると、例えばHPLC(高速液体クロマトグラフ法)のように、通水するために加圧が必要になる場合がある。そのため、0.5mm以上2mm以下の範囲内に調製することが好ましい。ただし、加圧なしで通水できる粒子径であればこの範囲に限定されない。
【0034】
前記層状複水酸化物は、単独で硝酸イオンを吸着する硝酸イオン吸着剤として使用することができる。
また、前記層状複水酸化物は、他の粒子と混合して使用してもよい。
【0035】
[層状複水酸化物の製造方法]
以下、層状複水酸化物の製造方法の一例について説明する。ただし、本発明の層状複水酸化物の製造方法は、以下の例示に限定されない。
【0036】
本実施形態に係る層状複水酸化物の製造方法は、
pHを9以上10以下に保ちながら、塩化マグネシウムと塩化アルミニウムとオキシ塩化ジルコニウム八水和物との混合水溶液を作製する工程Aと、
前記混合水溶液を熟成する工程Bとを含む。
【0037】
前記工程Aにおいては、塩化マグネシウムと塩化アルミニウムとオキシ塩化ジルコニウム八水和物との混合水溶液が得られれば、混合する順番は特に限定されない。
例えば、塩化マグネシウムと塩化アルミニウムとの混合水溶液に、オキシ塩化ジルコニウムの水溶液を加え、その混合溶液を、水酸化ナトリウム水溶液等でアルカリ状態(pH9以上10以下)に保ちながら純水中に滴下して混合水溶液を得る方法が挙げられる。
また、他の方法として、塩化マグネシウムと塩化アルミニウムとの混合水溶液を、水酸化ナトリウム水溶液等でアルカリ状態(pH9以上10以下)に保ちながら純水中に滴下し、その後、さらに、アルカリ状態(pH9以上10以下)に保ちながらオキシ塩化ジルコニウムの水溶液を滴下して混合水溶液を得る方法が挙げられる。
なお、上記の混合の間は、層状複水酸化物の層間に炭酸イオンの混入を最小限にするため、窒素ガス等のバブリングを行ってもよい。
【0038】
前記工程Aの後、得られた混合水溶液を熟成する(工程B)。熟成の温度は特に限定されないが、20℃以上100℃以下の範囲内で行えばよく、例えば、常温(25℃)で行ってもよい。熟成の時間としては、特に限定されないが、30分以上240分以下が好ましい。
【0039】
前記工程Bの後、必要に応じて、蒸留水でろ過洗浄、乾燥等を行ってもよい。乾燥方法は、特に限定されず、乾燥器による乾燥、スプレードライ法、真空乾燥法などが挙げられる。
【0040】
以上、本実施形態に係る層状複水酸化物の製造方法について説明した。
【0041】
[硝酸イオンの除去方法]
以下、硝酸イオンの除去方法の一例について説明する。ただし、本発明の硝酸イオンの除去方法は、以下の例示に限定されない。
【0042】
第1実施形態に係る硝酸イオンの除去方法は、
前記層状複水酸化物を、硝酸イオンを含む陰イオン水溶液に接触させる工程を含む。
【0043】
層状複水酸化物を、硝酸イオンを含む陰イオン水溶液に接触させる方法としては、前記陰イオン水溶液に前記層状複水酸化物を投入する方法が挙げられる。
【0044】
第2実施形態に係る硝酸イオンの除去方法は、
硝酸イオンを含む陰イオン水溶液を、前記層状複水酸化物を充填したカラムに通水する工程を含む。
【0045】
第1実施形態に係る層状複水酸化物の製造方法、及び、第2実施形態に係る層状複水酸化物の製造方法において、硝酸イオンを含む陰イオン水溶液としては、硝酸イオンを含んでいれば特に限定されない。前記硝酸イオンを含む陰イオン水溶液は、硝酸イオンのみを含んでいるものであってもよく、硝酸イオンと他の陰イオンを含んでいるものであっても構わない。前記硝酸イオンを含む陰イオン水溶液としては、一般的な工業排水が挙げられ、硝酸イオンの他、硫酸イオンや塩化物イオン等が含まれていてもよい。前記硝酸イオンを含む陰イオン水溶液中の硝酸イオンの濃度は特に限定されない。
【0046】
第1実施形態に係る層状複水酸化物の製造方法、及び、第2実施形態に係る層状複水酸化物の製造方法によれば、前記層状複水酸化物を用いるため、硝酸イオンを選択的に吸着することができ、前記陰イオン水溶液から硝酸イオンを好適に取り除くことができる。
【0047】
なお、第1実施形態に係る層状複水酸化物の製造方法、及び、第2実施形態に係る層状複水酸化物の製造方法において、前記硝酸イオンを含む陰イオン水溶液のpHは特に限定されない。第1実施形態に係る層状複水酸化物の製造方法、及び、第2実施形態に係る層状複水酸化物の製造方法では、前記層状複水酸化物を用いるため、pHの値に関わらず(少なくともpH2~9の範囲では)、硝酸イオンを選択的に吸着することができる。このことは、実施例からも明らかである。
【0048】
[硝酸イオンの回収方法]
以下、硝酸イオンの回収方法の一例について説明する。ただし、本発明の硝酸イオンの回収方法は、以下の例示に限定されない。
【0049】
本実施形態に係る硝酸イオンの回収方法は、
硝酸イオンが吸着された前記層状複水酸化物に、脱離液を接触させて硝酸イオンを回収する工程を含む。
【0050】
前記脱離液としては、硝酸イオンが吸着された前記層状複水酸化物から硝酸イオンを脱離させることができるものであれば、特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸等を用いることができる。前記脱離液には、リン酸塩、酢酸塩、トリス塩酸等の緩衝液、NaCl、KCl、Na2SO4等の中性塩等を混合してもよい。
【0051】
硝酸イオンが吸着された前記層状複水酸化物に、脱離液を接触させて硝酸イオンを回収する方法としては、硝酸イオンが吸着された層状複水酸化物が充填されたカラムに、前記脱離液を通水させる方法が挙げられる。これにより、前記層状複水酸化物からは硝酸イオンが脱離するため、硝酸イオン吸着剤として再利用することができる。また、回収された脱離液には、前記層状複水酸化物から脱離した硝酸イオンが含まれることとなるため、硝酸イオンを高効率で回収することができる。
特に、前記層状複水酸化物は、塩基性の高いAl、Mgに対して、Alを両性元素のZrで置換することで、塩基性を調整している。そのため、吸着させた硝酸イオンを前記脱離液により、容易に脱離させることができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明に関し、実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における層状複水酸化物には、不可避不純物としてハフニウムをジルコニウムに対して酸化物換算で1.3~2.5質量%含有(下記式(X)にて算出)している。
<式(X)>
([酸化ハフニウムの質量]/([酸化ジルコニウムの質量]+[酸化ハフニウムの質量]))×100(%)
【0053】
[層状複水酸化物の作製]
(実施例1)
まず、塩化マグネシウム(MgCl2)と塩化アルミニウム(AlCl3)との混合水溶液(モル比で、Mg:Al=3:0.6)(MgCl2の濃度:1.5mol/L、AlCl3の濃度:0.3mol/L)を準備した。
次に、純水(200mL)の入ったビーカーに、準備した混合水溶液を500mL滴下した。このとき、ビーカーの溶液のpHが10となるように、3mol/LのNaOH水溶液を滴下し、層状複水酸化物の前駆体を得た。その後、30分間攪拌した。
次に、層状複水酸化物の前駆体が分散している前記の混合溶液に、オキシ塩化ジルコニウム水溶液(濃度:0.2mol/L)を、(モル比で、Mg:Al:Zr=3:0.6:0.4)となるように滴下し、層状複水酸化物を得た。滴下の間は、pHが10を保つように、3mol/LのNaOH水溶液を適宜、滴下した。
上記の混合の間は、層状複水酸化物の層間に炭酸イオンの混入を最小限にするため、窒素ガスのバブリングを行った。
その後、この混合水溶液を常温(25℃)で30分熟成し、蒸留水で十分ろ過洗浄した後、凍結乾燥器を用いて乾燥し、実施例1に係る層状複水酸化物を得た。
【0054】
(実施例2-3、比較例1-5)
Mg、Al、Zrの比率が表1に記載の通りとなるように、塩化マグネシウム、塩化アルミニウムの混合比率を変更し、且つ、オキシ塩化ジルコニウム水溶液の滴下量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2-3、比較例1-5に係る層状複水酸化物を得た。
【0055】
[X線回折スペクトル]
実施例、比較例の層状複水酸化物について、X線回折装置(「RINT2500」、リガク製)を用い、X線回折スペクトルを得た。測定条件は下記の通りとした。結果を
図1、
図2に示す。
図1中、(a)は比較例1、(b)は比較例2、(c)は実施例1、(d)は実施例2のX線回折スペクトルである。
図2中、(e)は実施例3、(f)は比較例3、(g)は比較例4、(h)は比較例5のX線回折スペクトルである。
<測定条件>
測定装置:X線回折装置(リガク製、RINT2500)
線源:CuKα線源
管電圧:40kV
管電流:30mA
走査速度:2θ=5~60°:2°/分
【0056】
比較例5(h)を除いて、
図1、
図2のいずれのパターンにおいても層状複水酸化物(LDH)のピーク(●)が観察され、層状複水酸化物が生成されていることがわかる。
【0057】
また、X線回折スペクトルの(003)のピークより層間距離を求めたところ、(a)比較例1は、8.02Å、(b)比較例2は8.05Å、(c)実施例1は8.10Å、(d)実施例2は8.12Å、(e)実施例3は8.18Å、(f)比較例3は8.27Å、(g)比較例4は8.21Åであった。なお、(h)比較例5は、(003)のピークが存在しなかった。
【0058】
[層状複水酸化物の組成の分析]
実施例、比較例で作製した層状複水酸化物の組成を、ICP-AES(「ULTIMA-2」HORIBA製)、エネルギー分散型X線分光法(EDX―7200、島津製作所製)を用いて分析した。H2O量は、層状複水酸化物の保管条件(気温、相対湿度)に応じて変動するため、温度25度、湿度40%で240時間静置した後、2時間以内の条件下でTG-DTA(「Thermo plus TG8120」株式会社リガク製)を用いて分析した。
【0059】
X線回折スペクトル、及び、組成分析の結果から、実施例、比較例で作製した層状複水酸化物の組成は、以下の通りであることが分かった。
実施例1:[Mg3(Al0.8Zr0.2)(OH)8]・[Cl-・2.8H2O]
実施例2:[Mg3(Al0.7Zr0.3)(OH)8]・[Cl-・2.6H2O]
実施例3:[Mg3(Al0.6Zr0.4)(OH)8]・[Cl-・3.0H2O]
比較例1:[Mg3Al(OH)8]・[Cl-・2.5H2O]
比較例2:[Mg3(Al0.9Zr0.1)(OH)8]・[Cl-・2.4H2O]
比較例3:[Mg3(Al0.5Zr0.5)(OH)8]・[Cl-・2.9H2O]
比較例4:[Mg3(Al0.3Zr0.7)(OH)8]・[Cl-・2.6H2O]
比較例5:[Mg3Zr(OH)8]・[Cl-・1.7H2O]
【0060】
[分配係数の測定]
実施例、比較例の層状複水酸化物1gを、硝酸イオン390ppm、塩化物イオン2300ppm、及び、硫酸イオン5800ppmを含む混合水溶液30mlに加え、27℃で1時間、攪拌した。次に、上澄み液中の硝酸イオン濃度をイオンクロマトグラフ(「HIC-SP」島津製作所製)で分析した。その後、分配係数Kdを求めた。分配係数Kdは以下により求めた。
(硝酸イオンの吸着分配係数Kd(mL/g))=[層状複水酸化物1g中の硝酸イオン吸着量(mol/g)]/[吸着後溶液1mL中の硝酸イオン量(mol/mL)]。
(硫酸イオンの吸着分配係数Kd(mL/g))=[層状複水酸化物1g中の硫酸イオン吸着量(mol/g)]/[吸着後溶液1mL中の硫酸イオン量(mol/mL)]。
(塩化物イオンの吸着分配係数Kd(mL/g))=[層状複水酸化物1g中の塩化物イオン吸着量(mol/g)]/[吸着後溶液1mL中の塩化物イオン量(mol/mL)]。
<イオンクロマトグラフの機器・条件>
メーカ:島津製作所
機器名:HIC-SP
SPD-40V SPD-20A (吸光度検出器)は硝酸イオンの検出に使用
CTO-40C カラムオーブン
CDD-10 電気伝導度は硝酸イオン以外に使用
カラム IC-SA2,250L×4.0(陰イオン分析用カラム)
溶離液 (NaHCO3 12mmol/L、Na2CO3 0.6mmol/L)
流速:1mL/min
【0061】
【0062】
[硝酸イオン水溶液を用いた場合のバッチ式での硝酸イオン吸着率]
実施例、比較例の層状複水酸化物1gを、硝酸イオン濃度を500ppmに調製した水溶液30mLに加え、27℃で1時間、攪拌した。前記水溶液は、硝酸ナトリウムを用いて作製した。次に、吸引ろ過により固液分離し、得られた溶液中(ろ液中)の硝酸イオン濃度をイオンクロマトグラフで分析した。その後、下記式により、硝酸イオン吸着率を求めた。結果を表2に示す。
(硝酸イオン吸着率(%))=[1-[(ろ液の硝酸イオン濃度)/(水溶液中の硝酸イオン濃度(500ppm))]]×100
【0063】
【0064】
[模擬排水を用いた場合のバッチ式での各種陰イオン吸着率]
実施例、比較例の層状複水酸化物1gを、硝酸イオン500ppm、塩化物イオン2500ppm、及び、硫酸イオン6000ppmを含む混合水溶液(模擬排水)30mlに加え、27℃で1時間、攪拌した。前記水溶液は、硝酸ナトリウム0.6855g、塩化ナトリウム4.116g、硫酸ナトリウム8.878gをはかり取り、脱イオン水に溶解し、メスフラスコを用い全容を1Lに調製して作製した。次に、吸引ろ過により固液分離し、得られた溶液中(ろ液中)の各陰イオン濃度をイオンクロマトグラフで分析した。その後、下記式により、各陰イオンの吸着率を求めた。結果を表3に示す。
(硝酸イオン吸着率(%))=[1-[(ろ液の硝酸イオン濃度)/(模擬排水中の硝酸イオン濃度(500ppm))]]×100
(塩化物イオン吸着率(%))=[1-[(ろ液の塩化物イオン濃度)/(模擬排水中の塩化物イオン濃度(2500ppm))]]×100
(硫酸イオン吸着率(%))=[1-[(ろ液の硫酸イオン濃度)/(模擬排水中の硫酸イオン濃度(6000ppm))]]×100
【0065】
【0066】
[硝酸イオン水溶液を用いた場合のカラム吸着試験(連続式)での硝酸イオン吸着率]
粒径0.5~2.0mmに分級した実施例、比較例の層状複水酸化物10gをカラム(長さ:80mm、内径:18mm)に詰め、硝酸イオン濃度1000ppmに調製した水溶液1.0L(具体的には、硝酸ナトリウム1.371gをはかり取り、脱イオン水に溶解し、メスフラスコを用い全容を1Lにした)を、流速7.0mL/minで流した。カラム通水後の水溶液1.0L全量を回収し、硝酸イオン濃度をイオンクロマトグラフで分析した。その後、下記式により、硝酸イオン吸着率を求めた。結果を表4に示す。なお、比較例1は、粉化したため、カラム試験は実施できなかった。
(硝酸イオン吸着率(%))=[1-[(ろ液の硝酸イオン濃度)/(水溶液中の硝酸イオン濃度]]×100。
【0067】
【0068】
[硝酸イオン水溶液を用いた場合のカラム吸着試験(連続式)での硝酸イオン脱離率]
上記の「硝酸イオン水溶液を用いた場合のカラム吸着試験(連続式)での硝酸イオン吸着率」で使用したカラム(1.0Lの水溶液を通水させ、層状複水酸化物に硝酸イオンを吸着させた後のカラム)に、脱離液として0.005mol/LのHClと13質量%のNaClとの混合水溶液200mLを流速1.5mL/minで流した。カラム通水後の水溶液200mL全量を回収し、シリンジフィルターでろ過した後、硝酸イオン濃度をイオンクロマトグラフで分析した。その後、下記式により、硝酸イオン脱離率を求めた。結果を表5に示す。なお、比較例1は、粉化したため、カラム試験は実施できなかった。
(硝酸イオン脱離率(%))=([硝酸イオン脱着量(mol)]/[硝酸イオン吸着量(mol)])×100。
【0069】
【0070】
[模擬排水を用いた場合のカラム吸着試験(連続式)での各種陰イオン吸着率]
粒径0.5~2.0mmに分級した実施例、比較例の層状複水酸化物10gをカラム(長さ:80mm、内径:18mm)に詰め、模擬排水(硝酸イオン500ppm、塩化物イオン2500ppm、及び、硫酸イオン6000ppmを含む混合水溶液)1.0Lを、流速7.0mL/minで流した。カラム通水後の水溶液1.0L全量を回収し、シリンジフィルターでろ過した後、硝酸イオン濃度をイオンクロマトグラフで分析した。その後、下記式により、硝酸イオンの吸着率を求めた。結果を表6に示す。なお、比較例1は、粉化したため、カラム試験は実施できなかった。
(硝酸イオン吸着率(%))=[1-[(ろ液の硝酸イオン濃度)/(水溶液中の硝酸イオン濃度]]×100
【0071】
【0072】
[模擬排水を用いた場合のカラム吸着試験(連続式)での硝酸イオン脱離率]
上記の「模擬排水を用いた場合のカラム吸着試験(連続式)での硝酸イオン吸着率」で使用したカラム(1.0Lの模擬排水を通水させ、層状複水酸化物に各種陰イオンを吸着させた後のカラム)に、脱離液として0.005mol/LのHClと13質量%のNaClとの混合水溶液200mLを流速1.5mL/minで流した。カラム通水後の水溶液200mL全量を回収し、シリンジフィルターでろ過した後、硝酸イオン濃度をイオンクロマトグラフで分析した。その後、下記式により、硝酸イオン脱離率を求めた。結果を表6に示す。なお、比較例1は、粉化したため、カラム試験は実施できなかった。
(硝酸イオン脱離率(%))=([硝酸イオン脱着量(mol)]/[硝酸イオン吸着量(mol)])×100。
【0073】
【0074】
[pH依存性の確認]
硝酸イオン濃度を500ppm、且つ、pHをそれぞれ2~10に調整した水溶液30mLを準備した。pHの調整には、1mol/LのHCl、又は、1mol/LのNaOHを用いた。
実施例1の層状複水酸化物0.1gを、上記各水溶液に加え、27℃で1時間、攪拌した。次に、吸引ろ過により固液分離し、得られた溶液中(ろ液中)の硝酸イオン濃度をイオンクロマトグラフで分析した。その後、下記式により、硝酸イオン吸着率を求めた。結果を表8に示す。
(硝酸イオン吸着率(%))=[1-[(ろ液の硝酸イオン濃度)/(水溶液中の硝酸イオン濃度(500ppm))]]×100
【0075】
【0076】
上記試験結果より、実施例1の層状複水酸化物は、pHが2~10の範囲内で変動しても、硝酸イオン吸着率は大きく変動せず、高い値を示すことが確認された。
【0077】
[河川水を用いた場合のカラム吸着試験(連続式)での硝酸イオン吸着率]
粒径0.5~2.0mmに分級した実施例3の層状複水酸化物10gをカラム(長さ:80mm、内径:18mm)に詰め、多摩川流域の採水地点2地点(多摩川緑地公園(東京都調布市染地2丁目43-43-1),矢口の渡し跡(東京都大田区矢口三丁目17番3号付近))の採水試料1.0Lを、流速7.0mL/minで流し、全量を回収し、シリンジフィルターでろ過した後、硝酸イオン濃度をイオンクロマトグラフで分析した。
その後、下記式により、硝酸イオンの吸着率を求めた。結果を表9に示す。
(硝酸イオン吸着率(%))= [1-[(ろ液の硝酸イオン濃度)/(水溶液中の硝酸イオン濃度]]×100
なお、採取時の多摩川緑公園の硝酸イオン濃度は12.8ppmであり、矢口の渡し跡の硝酸イオン濃度は12.5ppmであった。
【0078】
【0079】
[海水を用いた場合のカラム吸着試験(連続式)での硝酸イオン吸着率と硝酸イオン脱離率]
粒径0.5~2.0mmに分級した実施例3の層状複水酸化物10gをカラム(長さ:80mm、内径:18mm)に詰め、横浜港で採水した海水1.0Lを7.0mL/minで流した。カラム通水後の水溶液1.0L全量を回収し、シリンジフィルターでろ過した後、硝酸イオン濃度をイオンクロマトグラフで分析した。その後、下記式により、硝酸イオンの吸着率を求めた。
(硝酸イオン吸着率(%))= [1-[(ろ液の硝酸イオン濃度)/(水溶液中の硝酸イオン濃度]]×100
ついで脱離液として0.005mol/LのHClと13質量%のNaClとの混合水溶液200mLを流速1.5mL/minで流した。カラム通水後の水溶液200mL全量を回収し、シリンジフィルターでろ過した後、硝酸イオン濃度をイオンクロマトグラフで分析した。その後、下記式により、硝酸イオン脱離率を求めた。結果を表10に示す。
(硝酸イオン脱離率(%))=([硝酸イオン脱着量(mol)]/[硝酸イオン吸着量(mol)])×100。
【0080】
【要約】
【課題】 硝酸イオン選択性が高く、且つ、吸着させた硝酸イオンを高効率で回収することが可能な層状複水酸化物を提供すること。
【解決手段】 下記式[1]で表され、硝酸イオンの吸着分配係数Kdが70以上である層状複水酸化物。
[Mg
3(Al
1-xZr
x)(OH)
8]・[A
n-・mH
2O] [1]
ただし、式[1]において、xは、0.2≦x≦0.4を満たす数であり、mは、0以上4以下の数であり、nは、1以上4以下の自然数であり、A
n-はn価のイオン交換性アニオンの少なくとも1種である。
【選択図】
図1