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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】樋装置及び樋装置の設置方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/072 20060101AFI20250109BHJP
   E04D 13/064 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E04D13/072 501A
E04D13/072 501K
E04D13/064 502A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021098572
(22)【出願日】2021-06-14
(65)【公開番号】P2022190307
(43)【公開日】2022-12-26
【審査請求日】2024-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】593045237
【氏名又は名称】株式会社善衛門産業
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】高木 博行
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-109126(JP,U)
【文献】実公昭57-027863(JP,Y2)
【文献】実開平06-049625(JP,U)
【文献】特開2015-068079(JP,A)
【文献】特開2002-167914(JP,A)
【文献】実開昭62-004532(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/072
E04D 13/064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口から流入した雨水を横方向に移送する長尺な樋本体と、前記樋本体の前記上部開口を閉鎖する長尺な樋カバーと、前記樋カバーの複数箇所を屋根の軒先近傍の位置に各々固定する固定具とを備え、
前記樋本体の左右側縁には、当該樋本体の長さ方向に延びる一対の第一係合部が設けられ、
前記樋カバーは、長さ方向と直角な断面の形状が一様になるように板状に形成された金属製の部材であり、雨水を前記樋本体内に流入させるための複数の通水孔が形成され、下面側に、当該樋カバーの長さ方向に延びる一対の第一係合受け部が設けられ、前記通水孔がない位置に、複数の取り付け部が設けられ、
前記固定具は、前記樋カバーが取り付けられる被取り付け部と屋根部材に固定される固定部とを有し、
一対の前記第一係合受け部は、一対の前記第一係合部をスライド挿入可能な形状で、前記第一係合部と係合することによって前記樋本体を吊り下げるように支持し、
前記固定具の前記被取り付け部は、前記樋カバーの前記取り付け部が接続され、前記樋カバー及び前記樋本体を吊り下げるように支持することを特徴とする樋装置。
【請求項2】
前記樋カバーは、板状に形成された押出型材であり、前記樋カバーの前記取り付け部は、上面側に設けられた、当該樋カバーの長さ方向に延びる一対の第二係合部で成り、
前記固定具の前記被取り付け部は、下面側に、一対の前記第二係合部をスライド挿入可能な形状の一対の第二係合受け部を有し、前記第二係合受け部が前記第二係合部と係合することによって、前記樋カバー及び前記樋本体を吊り下げるように支持する請求項1記載の樋装置。
【請求項3】
前記樋カバーの前記取り付け部は、前記第一係合受け部で兼用され、
前記固定具の前記被取り付け部は、下面側に、前記第一係合受け部をスライド挿入可能な形状の一対の第三係合受け部を有し、前記第三係合受け部が前記第一係合受け部と係合することによって、前記樋カバー及び前記樋本体を吊り下げるように支持する請求項1記載の樋装置。
【請求項4】
前記樋カバーの前記取り付け部は、厚み方向に貫通するネジ孔を有し、
前記固定具の前記被取り付け部は、厚み方向に貫通するネジ孔を有し、
前記被取り付け部及び前記取り付け部は、互いに連通させた2つの前記ネジ孔に挿通したネジ部材によって相互に接続され、前記被取り付け部が、前記樋カバー及び前記樋本体を吊り下げるように支持する請求項1記載の樋装置。
【請求項5】
前記樋カバーは、折り曲げ加工された金属板で、前記固定具は、前記樋カバーの下面側に配置される補助板部材を有し、前記補助板部材には、厚み方向に貫通するネジ孔が形成され、
前記固定具の前記被取り付け部、前記樋カバーの前記取り付け部及び前記補助板部材が順に重ねられ、互いに連通させた3つの前記ネジ孔に前記ネジ部材が挿通され、
前記被取り付け部及び前記補助板部材は、前記ネジ部材によって相互に接続され、前記取り付け部は、前記被取り付け部と前記補助板部材との間に挟持される形で前記被取り付け部に接続され、前記取り付け部の前記ネジ孔の周縁部が、前記補助板部材により一定以上の面積で支持されることによって補強される請求項4記載の樋装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか記載の樋装置の設置方法であって、
上板、側板及び下板を有した略コの字形断面の短尺な取り付け補助具を準備する取り付け補助具準備工程と、
前記固定具を前記屋根部材に取り付けるとともに、前記固定具に前記樋カバーを取り付ける樋カバー設置工程と、
前記固定具に取り付けられた前記樋カバーを前記取り付け補助具のコの字の内側に案内し、前記取り付け補助具の前記上板の下面側を前記樋カバーで支持させることによって、前記取り付け補助具を前記樋カバーに吊り下げた状態にする取り付け補助具装着工程と、
前記樋カバーに吊り下げられた前記取り付け補助具のコの字の内側に前記樋本体を差し込み、前記樋本体を前記下板で支持させることによって、前記樋本体を前記樋カバーの下側近傍に配置する樋本体差し込み工程と、
前記樋本体の片方の前記第一係合部を前記樋カバーの片方の前記第一係合受け部に係合させるとともに、前記樋本体の他方の第一係合部を前記樋カバーの他方の前記第一係合受け部に係合させて、前記樋本体を前記樋カバーに取り付ける樋本体取り付け工程とを備えることを特徴とする樋装置の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、屋根の雨水を集めて排水するための樋装置及び樋装置の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本願出願人による特許文献1(図15図16)に開示されているように、屋根から流下した雨水を集めて横方向に移送する樋本体を備え、樋本体の上部開口を板状の樋カバーで閉鎖し、樋本体の中に落ち葉や雪が入るのを防止した樋装置があった。
【0003】
樋カバーは、樋本体の上部開口を閉鎖するカバー本体部と屋根部材固定される固定部とが一体に形成された板状の部材である。カバー本体部は、雨水を樋本体内に流入させるための複数の通水孔が厚み方向に形成され、下面側に、カバー本体の長さ方向に延びる一対の係合受け部(一対の係止部)が設けられている。樋本体は、長さ方向の左右側縁に、当該樋本体の長さ方向に延びる一対の係合部(一対の側縁部)が設けられている。
【0004】
屋根の軒先に設置された状態で、樋カバーの固定部が屋根部材に固定され、カバー本体部の一対の係合受け部の中に樋本体の一対の係合部が係合し、一対の係合受け部が樋本体を吊り下げるように支持する。
【0005】
この樋装置は、樋本体が樋カバーによって長さ方向にスライド可能に支持される構造なので、樋本体と樋カバーの線膨張率に差があった場合でも、互いに拘束されずに温度伸縮でき、変形したり破損したりしにくいという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-100953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の樋装置の場合、樋カバーは、カバー本体部(樋本体の上部を閉鎖する部分)と固定部(屋根部材に固定される部分)とが一体に形成され、樋カバーが屋根部材に直接固定される構造になっているため、次のような課題があった。
【0008】
樋装置が設置される屋根部材の形態は様々であり、樋カバーを鼻隠し等に固定しなければならないケースや、垂木の端面や側面に固定しなければならないケースがある。したがって、屋根部材の形態に合わせて、固定部の形状が異なる複数種類の樋カバーを用意しなければならない。
【0009】
また、樋カバーは、押出型材を加工して製作することもできるが、固定部を押し出し成形すると、固定部のサイズが必要以上に大きくなって樋カバー全体の重量が大きくなるので、屋根の軒下のような高所に設置する時に非常に手間が掛かる。また、固定部の形状が複数種類あると、多品種少量生産となってしまうので、樋カバーのコストアップが問題になる。
【0010】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、様々な形態の屋根に設置でき、構造がシンプルで安価に製作できる部材により構成され、容易起設置できる樋装置、及び樋装置の設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上部開口から流入した雨水を横方向に移送する長尺な樋本体と、前記樋本体の前記上部開口を閉鎖する長尺な樋カバーと、前記樋カバーの複数箇所を屋根の軒先近傍の位置に各々固定する固定具とを備え、
前記樋本体の左右側縁には、当該樋本体の長さ方向に延びる一対の第一係合部が設けられ、前記樋カバーは、長さ方向と直角な断面の形状が一様になるように板状に形成された金属製の部材であり、雨水を前記樋本体内に流入させるための複数の通水孔が形成され、下面側に、当該樋カバーの長さ方向に延びる一対の第一係合受け部が設けられ、前記通水孔がない位置に、複数の取り付け部が設けられており、前記固定具は、前記樋カバーが取り付けられる被取り付け部と屋根部材に固定される固定部とを有し、
一対の前記第一係合受け部は、一対の前記第一係合部をスライド挿入可能な形状で、前記第一係合部と係合することによって前記樋本体を吊り下げるように支持し、前記固定具の前記被取り付け部は、前記樋カバーの前記取り付け部が接続され、前記樋カバー及び前記樋本体を吊り下げるように支持する樋装置である。
【0012】
前記樋カバーは、板状に形成された押出型材であり、前記樋カバーの前記取り付け部は、上面側に設けられた、当該樋カバーの長さ方向に延びる一対の第二係合部で成り、前記固定具の前記被取り付け部は、下面側に、一対の前記第二係合部をスライド挿入可能な形状の一対の第二係合受け部を有し、前記第二係合受け部が前記第二係合部と係合することによって、前記樋カバー及び前記樋本体を吊り下げるように支持する構成にすることができる。
【0013】
あるいは、前記樋カバーの前記取り付け部は、前記第一係合受け部で兼用され、前記固定具の前記被取り付け部は、下面側に、前記第一係合受け部をスライド挿入可能な形状の一対の第三係合受け部を有し、前記第三係合受け部が前記第一係合受け部と係合することによって、前記樋カバー及び前記樋本体を吊り下げるように支持する構成にすることができる。
【0014】
また、前記樋カバーの前記取り付け部は、厚み方向に貫通するネジ孔を有し、前記固定具の前記被取り付け部は、厚み方向に貫通するネジ孔を有し、前記被取り付け部及び前記取り付け部は、互いに連通させた2つの前記ネジ孔に挿通したネジ部材によって相互に接続され、前記被取り付け部が、前記樋カバー及び前記樋本体を吊り下げるように支持する構成にしてもよい。この場合、前記樋カバーは板状に形成された押出型材を使用することができる。あるいは、前記樋カバーは、折り曲げ加工された金属板で、前記固定具は、前記樋カバーの下面側に配置される補助板部材を有し、前記補助板部材には、厚み方向に貫通するネジ孔が形成され、前記固定具の前記被取り付け部、前記樋カバーの前記取り付け部及び前記補助板部材が順に重ねられ、互いに連通させた3つの前記ネジ孔に前記ネジ部材が挿通され、前記被取り付け部及び前記補助板部材は、前記ネジ部材によって相互に接続され、前記取り付け部は、前記被取り付け部と前記補助板部材との間に挟持される形で前記被取り付け部に接続され、前記取り付け部の前記ネジ孔の周縁部が、前記補助板部材により一定以上の面積で支持される構成にすることができる。
【0015】
また、前記樋部材は、筒状に形成された押出型材であり、上面に、雨水を前記樋部材の中に流入させるための複数の通水孔が形成され、上面の、前記通水孔がない位置に、当該樋カバーの長さ方向に延びる一対の第二係合部が設けられ、前記固定具は、前記樋部材が取り付けられる被取り付け部と屋根部材に固定される固定部とを有し、前記被取り付け部は、下面側に、一対の前記第二係合部をスライド挿入可能な形状の一対の第二係合受け部を有し、前記第二係合受け部が前記第二係合部と係合することによって、前記樋部材を吊り下げるように支持する樋装置でもよい
【0016】
さらに、この発明は、上記のいずれか記載の樋装置の設置方法であって、上板、側板及び下板を有した略コの字形断面の短尺な取り付け補助具を準備する取り付け補助具準備工程と、記固定具を前記屋根部材に取り付けるとともに、前記固定具に前記樋カバーを取り付ける樋カバー設置工程と、前記固定具に取り付けられた前記樋カバーを前記取り付け補助具のコの字の内側に案内し、前記取り付け補助具の前記上板の下面側を前記樋カバーで支持させることによって、前記取り付け補助具を前記樋カバーに吊り下げた状態にする取り付け補助具装着工程と、前記樋カバーに吊り下げられた前記取り付け補助具のコの字の内側に前記樋本体を差し込み、前記樋本体を前記下板で支持させることによって、前記樋本体を前記樋カバーの下側近傍に配置する樋本体差し込み工程と、前記樋本体の片方の前記第一係合部を前記樋カバーの片方の前記第一係合受け部に係合させるとともに、前記樋本体の他方の第一係合部を前記樋カバーの他方の前記第一係合受け部に係合させて、前記樋本体を前記樋カバーに取り付ける樋本体取り付け工程とを備える樋装置の設置方法である。
【発明の効果】
【0017】
この発明の樋装置は、樋本体の上部開口を閉鎖する樋カバーと、樋カバーを屋根部材に固定する固定具とが別体なので、固定具を複数種類の用意することによって、様々な形態の屋根に設置することが可能になる。そして、比較的コストが掛かる樋カバーを共通化できるので、樋カバーのコストを安価に抑えることができる。
【0018】
また、この発明の樋装置の設置方法によれば、上記の樋装置を容易且つ効率よく組み立てることができるので、作業者の負担が大幅に軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の樋装置の第一の実施形態を示す図であって、屋根の軒先に設置された状態を側方から見た縦断面図(a)、各部材を分解した縦断面図(b)である。
図2図1の中の樋本体の構造を示す斜視図(a)、樋カバーの構造を示す斜視図(b)である。
図3図1の中の固定具の構造を示す斜視図である。
図4】第一の実施形態の樋装置の設置方法(本発明の設置方法の一実施形態)を示すフローチャート(a)、取り付け補助具準備工程で準備する取り付け補助具を示す斜視図(b)である。
図5図4(a)の中の樋カバー設置工程の作業内容を示す図であって、屋根の軒下付近を正面から見た図(a)、側方から見た縦断面図(b)である。
図6図4(a)の中の取り付け補助具装着工程の作業内容を示す図であって、屋根の軒下付近を正面から見た図(a)、側方から見た縦断面図(b)である。
図7図4(a)の中の樋本体差し込み工程の作業内容を示す図であって、屋根の軒下付近を正面から見た図(a)、側方から見た縦断面図(b)である。
図8図4(a)の中の樋本体取り付け工程の作業内容を順に示す、屋根の軒下付近を正面から見た縦断面図(a)、(b)である。
図9図1(a)の中の固定具の変形例を示す図であって、屋根の軒先に設置された状態を側方から見た縦断面図(a)~(c)である。
図10】第一の実施形態の樋装置の第一の変形例を示す図であって、屋根の軒先に設置された状態を側方から見た縦断面図(a)、各部材を分解した縦断面図(b)である。
図11図10に示す樋装置を設置する時の、樋本体取り付け工程の作業内容を順に示す、屋根の軒下付近を正面から見た縦断面図(a)、(b)である。
図12】第一の実施形態の樋装置の第二の変形例を示す図であって、屋根の軒先に設置された状態を側方から見た縦断面図(a)、各部材を分解した縦断面図(b)である。
図13】第一の実施形態の樋装置の第三の変形例を示す図であって、屋根の軒先に設置された状態を側方から見た縦断面図(a)、各部材を分解した縦断面図(b)である。
図14】第一の実施形態の樋装置の第四の変形例を示す図であって、屋根の軒先に設置された状態を側方から見た縦断面図(a)、各部材を分解した縦断面図(b)である。
図15図14に示す樋装置を設置する時の、樋本体取り付け工程の作業内容を順に示す、屋根の軒下付近を正面から見た縦断面図(a)、(b)である。
図16】第一の実施形態の樋装置の第五の変形例を示す図であって、屋根の軒先に設置された状態を側方から見た縦断面図(a)、各部材を分解した縦断面図(b)である。
図17図14に示す樋装置を設置する時の、樋本体取り付け工程の作業内容を順に示す、屋根の軒下付近を正面から見た縦断面図(a)、(b)である。
図18】第一の実施形態の樋装置の第六の変形例を示す図であって、屋根の軒先に設置された状態を側方から見た縦断面図(a)、各部材を分解した縦断面図(b)である。
図19】本発明の樋装置の第二の実施形態を示す図であって、屋根の軒先に設置された状態を側方から見た縦断面図(a)、各部材を分解した縦断面図(b)である。
図20】第二の実施形態の樋装置の第一の変形例を示す図であって、屋根の軒先に設置された状態を側方から見た縦断面図(a)、正面から見た図(b)である。
図21】第二の実施形態の樋装置の第二の変形例を示す図であって、屋根の軒先に設置された状態を側方から見た縦断面図(a)、各部材を分解した縦断面図(b)である。
図22図21の中の樋カバーの構造を示す斜視図(a)、補助板部材の構造を示す斜視図(b)である。
図23】第二の実施形態の樋装置の第三の変形例を示す図であって、屋根の軒先に設置された状態を側方から見た縦断面図(a)、正面から見た図(b)である。
図24樋装置の他の実施形態を示す図であって、屋根の軒先に設置された状態を側方から見た縦断面図(a)、各部材を分解した縦断面図(b)である。
図25】本発明の樋装置の第三の実施形態を示す図であって、屋根の軒先に設置された状態を側方から見た縦断面図(a)、正面から見た図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の樋装置の第一の実施形態、及び本発明の樋装置の設置方法の一実施形態について、図1図18に基づいて説明する。この実施形態の樋装置10は、図1(a)、(b)に示すように、樋本体16、樋カバー18及び固定具20で構成され、屋根12の軒先12a近傍の屋根部材(鼻隠し14a)の正面に設置される。
【0021】
樋本体16は、図1(b)、図2(a)に示すように、上部開口16aから流入した雨水を横方向に移送する長尺な部材で、例えば、薄手の金属板を曲げ加工することによって形成される。樋本体16は、断面が略U字形に形成され、左右側縁に、樋本体16の長さ方向に延びる一対の第一係合部16bが設けられている。樋本体16の1つ当たりの長さは2~4m程の扱いやすい長さに設定されており、複数の樋本体16を長さ方向に連結することによって、軒先12aの長さに対応した流路を形成する。
【0022】
樋カバー18は、図1(b)、図2(b)に示すように、樋本体16の上部開口16aを閉鎖するための長尺な部材で、板状に形成された押出型材に若干の加工を加えることによって製作される。樋カバー18は、上面側に複数の竪壁を立設することによって、樋カバー18の長さ方向に延びる集水溝22が設けられ、その底部に、雨水を樋本体16内に流入させるための複数の通水孔24が形成されている。さらに、下面側に、樋カバー18の長さ方向に延びる一対の第一係合受け部18aが設けられ、上面側に、樋カバー18の長さ方向に延びる一対の第二係合部18bが設けられている。一対の第二係合部18bは、固定具20の取り付けるための取り付け部となる。樋カバー18の1つ当たりの長さは、樋本体16とほぼ同じ長さ(2~4m程の扱いやすい長さ)に設定されており、複数の樋本体16の上部開口16aを、樋本体16とほぼ同数の樋カバー18で閉鎖する。
【0023】
固定具20は、図1(b)、図3に示すように、樋カバー18の複数箇所を屋根12の軒先12a近傍の位置に各々固定するための短尺な金属製の部材である。固定具20は、樋カバー18が取り付けられる被取り付け部20aと鼻隠し14aに固定される固定部20bとを有し、被取り付け部20aは、下面側に一対の第二係合受け部20cを有し、固定部20bには複数のネジ孔20dが設けられている。
【0024】
樋カバー18が有する一対の第一係合受け部18aは、樋本体16が有する一対の第一係合部16bをスライド挿入可能な形状で、第一係合部16bと係合することによって樋本体16を吊り下げるように支持することができる。また、固定具20が有する一対の第二係合受け部20cは、樋カバー18が有する一対の第二係合部18bをスライド挿入可能な形状で、第二係合部18bと係合することによって樋カバー18及び樋本体16を吊り下げるように支持することができる。
【0025】
次に、樋装置10の設置方法の一例(本発明の樋装置の設置方法の一実施形態)を説明する。樋装置10を設置する時は、図4(a)に示す5つの工程S11~S15を順に行う。
【0026】
取り付け補助具準備工程S11では、図4(b)に示す取り付け補助具26を準備する。取り付け補助具26は、上板26a、側板26b及び下板26cを有した略コの字形断面の短尺な部材で、コの字の開放部分26dは、樋本体16及び樋カバー16を側方から差し込み可能な程度に広く、上板26a、側板26b及び下板26cで囲まれた内側に、樋本体16及び樋カバー16がゆとりをもって収納することができる。
【0027】
次に、樋装置10を設置する現場に各部材を搬入し、樋カバー設置工程S12を行う。この工程S12では、まず、複数の固定具20を鼻隠し14aに取り付ける作業を行う。具体的には、図5(a)、(b)に示すように、各固定具20の固定部20bを鼻隠し14aの表面に当接させ、ネジ部材28をネジ孔20dに差し込んで締め付け固定する。複数の固定具20の配置は、互いにほぼ同じ高さとし、2つの固定具20で1つの樋カバー18の長さ方向の両端部を支持できるように所定の間隔を空けて配置する。
【0028】
その後、複数の樋カバー18を対応する固定具20に順番に取り付ける作業を行う。具体的には、固定具20が有する一対の第二係合受け部20cに対し、樋カバー18の一対の第二係合部18bを長さ方向にスライドさせて挿入し、2つの固定具20の第二係合受け部20cに、第二の係合部18bの特定部分(樋カバー18の長さ方向の両端部に位置する部分)を係合させ、樋カバー18を吊り下げるように支持させる。この作業を繰り返し、複数の樋カバー18を、各樋カバー18の長さ方向に連続するように設置する。
【0029】
なお、樋カバー設置工程S12は、樋カバー18に固定具20をスライド挿入して取り付けた後、鼻隠し14aに固定具20をネジ固定するという順番にしてもよい。どちらの順番にするかは、現場の状況や作業者の人数に合わせて適した方を選択すればよい。
【0030】
樋カバー設置工程S12の後、取り付け補助具装着工程S13を行う。この工程S13は、複数の取り付け補助具26を樋カバー18に装着する工程で、図6(a)、(b)に示すように、固定具20に取り付けられた樋カバー18を取り付け補助部金具26のコの字の内側に案内し、上板26aの下面側を樋カバー18で支持させることによって、取り付け補助具26を樋カバー18に吊り下げた状態にする。複数の取り付け補助具26の配置は、2つの取り付け補助具26で1つの樋本体16の長さ方向の両端部を支持できるように所定の間隔を空けて配置する。
【0031】
なお、図6(b)では、取り付け補助具26の上板26aが固定部20により支持されているように見えるが、これは複数の部材が重なって図が見にくくなるのを避けたものであり、実際は、上述したように、取り付け補助具26の上板26aは樋カバー18により支持されることになる。この点については、後の図7(b)、図8(a)、(b)、図11(a)、(b)、図15(a)、(b)及び図17(a)、(b)も同様である。
【0032】
取り付け補助具装着工程S13の後は、樋本体差し込み工程S14を行う。この工程S14は、複数の樋本体16を対応する取り付け補助具26に順番にセットする工程で、図7(a)、(b)に示すように、樋本体16を、樋カバー18に吊り下げられた取り付け補助具26のコの字の内側に差し込み、樋本体16の底面を下板26cで支持させることによって、樋本体16を樋カバー18の下側近傍に配置する。この作業を繰り返し、複数の樋本体16を、各樋本体16の長さ方向に連続するように配置する。そして、隣り合う樋本体16同士を、水漏れ防止用の継手30で連結し、水密に一体化する作業を行う。この時、各樋本体16が地面から浮き上がった状態に支持されているので、連結する作業は非常に容易に行うことができる。
【0033】
なお、樋カバー18は樋本体16のように水密である必要がないので、上記の樋カバー設置工程S12の中で、複数の樋カバー18を水密に連結する必要はない。ただし、樋カバー18が位置ずれするのを防止したり、隣接する樋カバー18同士の間に落ち葉等が入り込む隙間ができるのを防止したりする必要があれば、適宜の連結手段で連結してもよい。
【0034】
樋本体差し込み工程S14の後は、樋本体取り付け工程S15を行う。この工程S14は、樋本体16を樋カバー18に取り付ける工程で、まずは図8(a)に示すように、樋本体16を斜めに持ち上げて、樋本体16の左側の第一係合部16bを樋カバー18の左側の第一係合受け部18aに係合させる作業を行う。
【0035】
その後、樋本体16の右側の第一係合部16bを樋カバー18の右側の第一係合受け部18aに係合させる作業を行う。後の作業は、図8(b)に示すように、細長い板状治具32を用意して、樋本体16の側壁を内向きに撓み変形させながら右側の第一係合部16bを右側の第一係合受け部18aに向けて案内すると、容易に行うことができる。これで、樋本体16が樋カバー18に取り付けが終了し、取り付け補助具26をすべて取り外すと、図1(a)に示す組み立て状態になる。
【0036】
ここで、固定具20の固定部20bの形態の変形例を説明する。上述した固定具20の場合、固定部20bが鼻隠し14aの正面のほぼ垂直な面に固定されることを想定し、固定部20bを被取り付け部20aに対してほぼ直角に設けている。これに対して、図9(a)に示す固定具20xの場合、固定部20bが鼻隠し14aの正面の傾斜面に固定されることを想定し、固定部20bを被取り付け部20aに対して斜めの角度に設けている。また、図9(b)に示す固定具20yの場合、固定部20bが垂木14bの傾斜した端面に固定されることを想定し、固定部20bを被取り付け部20aに対して斜めの角度に設けるとともに、固定部20bサイズを、垂木14bの端面の内側に収まるように小さくしている。さらに、図9(c)に示す固定具20zの場合、固定部20bが垂木14bの側面に固定されることを想定し、固定部20bがL字形に折れ曲がった形状になっている。このように、固定具20の固定部20bの形態は、取り付ける屋根部材の形態に合わせて適宜変更されるものである。
【0037】
以上説明したように、樋装置10は、通水孔24が形成された樋カバ18ーを備えているので、雨水を効果的に集水しつつ、樋本体16の中に落ち葉や雪が入るのを効果的に防止することができる。また、樋本体16が樋カバー18によって長さ方向にスライド可能に支持される構造であり、樋本体16と樋カバー18の線膨張率に差があったとしても、互いに拘束されずに温度伸縮できるので、変形したり破損したりしにくい。
【0038】
さらに、樋装置10は、樋本体16の上部開口16aを閉鎖する樋カバー18と、樋カバー18を屋根部材に固定するための固定具20とが別体なので、複数種類の固定具20,20x,20y,20zを用意することによって、鼻隠し14aや垂木14b等の様々な形態の屋根12に設置することが可能になる。そして、比較的コストが掛かる樋カバー18を共通化できるので、樋カバー18のコストを安価に抑えることができる。
【0039】
また、この実施形態の樋装置の設置方法によれば、樋装置10を容易且つ効率よく組み立てることができるので、作業者の負担が大幅に軽減される。
【0040】
次に、樋装置10の第一の変形例について説明する。樋装置10は、図1(a)、(b)に示すように、樋本体16の一対の第一係合部16bが外向き(先端部が互いに離れる方向)に設けられ、樋カバー18一対の第一係合受け部18bが内向き(先端部が互いに近づく方向)に設けられ、組み立て状態で、第一の係合受け部18aの内側に第一係合部16bが入り込んで係合する構造になっている。
【0041】
これに対して、第一の変形例の樋装置10(1)は、図10(a)、(b)に示すように、樋本体16の一対の第一係合部16bが内向き(先端部が互いに近づく方向)に設けられ、樋カバー18一対の第一係合受け部18bが外向き(先端部が互いに離れる方向)に設けられ、組み立て状態で、第一の係合部16aの内側に第一係合受け部16bが入り込んで係合するという違いがある。樋装置10(1)のその他の構成は樋装置10と同様であり、樋装置10(1)においても、樋装置10と同様の効果が得られる。
【0042】
また、樋装置10(1)は、樋装置10とほぼ同じ手順で設置することができ、樋本体取り付け工程S15では、図11(a)、(b)に示すように、先端に引っ掛け部34aを設けた細長い板状治具34を使用することによって、樋本体16を樋カバー18に容易に取り付けることができる。
【0043】
次に、樋装置10の第二の変形例について説明する。樋装置10は、図1(a)、(b)に示すように、樋カバー18の第一係合受け部18aは、略J字形に折れ曲がった1つの板で構成され、樋本体16の第一係合部16bが内側に入り込むことによって係合する構造になっている。
【0044】
これに対して、第二の変形例の樋装置10(2)は、図12(a)、(b)に示すように、樋カバー18の第一係合受け部18aは、略L字形に折れ曲がった板36aと、板36aの内側面に対向するように配置された板36bとで構成され、樋本体16の第一係合部16bが板36a,36bに囲まれた空間に入り込むことによって係合するという違いがある。樋装置10(2)のその他の構成は樋装置10と同様であり、樋装置10(2)においても樋装置10と同様の効果が得られる。
【0045】
次に、樋装置10の第三の変形例について説明する。第二の変形例の樋装置10(2)は、樋カバー18の第一係合受け部18a(板36aと36b)の構造が少し複雑になる。しかし、樋カバー18を押し出し成形で製作する場合、所望の寸法精度を確保しつつ効率よく製造するためには、構造ができるだけ単純であることが好ましい。そこで、第三の変形例の樋装置10(3)では、樋カバー18の構造を、樋装置10(2)の樋カバー18よりもシンプルにしている。
【0046】
樋装置10(3)は、図13(a)、(b)に示すように、樋カバー18の第一係合受け部18aを、略L字形に折れ曲がった板36aだけにして、新たに、樋本体16の左右側縁を相互に連結して上部開口16aの幅を固定する幅固定具38を設けている。樋装置10(3)のその他の構成は樋装置10(2)と同様である。
【0047】
幅固定具38が無い場合、樋カバー18の第一係合受け部18a(板36a)に樋本体16の第一係合部16bを係合させて設置した後、使用中に樋本体16が強風を受けたり、樋本体16が幅方向に温度伸縮したりすると、樋本体16が樋カバー18から脱落してしまうおそれがある。しかしながら、幅固定具36を用いて樋本体16の上部開口16aを適切な幅に固定しておくことによって、第一の係合受け部18a(板36a)と第一係合部16bとの係合が解除しにくくなり、樋カバー18から樋本体16が脱落するのを防止できる。
【0048】
次に、樋装置10の第四の変形例について説明する。第四の変形例の樋装置10(4)は、第一の変形例の樋装置10(1)を改良したもので、図14(a)、(b)に示すように、樋カバー18に脱落防止具39(1)を取り付けた点に特徴がある。
【0049】
脱落防止具39(1)は、バネ性を有した金属又は樹脂等を用いて断面略L字形に形成された短尺な板材で、図14(a)に示す組み立て状態で、基端部が樋カバー18の上面に固定され、先端部39aが左側の第一係合受け部18a及び第一係合部16bの係合部分の外面に当接し、一定の力で付勢している。また、左側の第一係合受け部18aは、右側の第一係合受け部よりも、先端の起立している部分が少し短くしてある。
【0050】
樋装置10(4)は、あらかじめ樋カバー18の複数個の脱落防止具39(1)を取り付けておけば、樋装置10とほぼ同じ手順で設置することができ、樋本体取り付け工程S15では、図15(a)に示すように、まず、樋本体16を斜めに持ち上げて、樋本体16の右側の第一係合部16bを樋カバー18の右側の第一係合受け部18aに係合させる。その後、図15(b)に示すように、樋本体16の底部を持ち上げ、左側の第一係合部16bを脱落防止具39(1)の先端部39aの内面に摺動させて、先端部39aを外向きに押圧する。これによって脱落防止具39(1)の先端部39aが外向きに撓み、隙間が広くなって左側の第一係合部16bを第一係合受け部18bに係合させることができる。そして、先端部39aが外向きに押されなくなって内向きに撓み、図14(a)に示す状態になる。
【0051】
左側の第一係合受け部18aは、先端の起立している部分が少し短いので、左側の第一係合部16bを容易に係合させることができる。また、係合した後、係合部分は、脱落防止具39(1)の先端部39aが当接し、一定の力で付勢されるので、左側の第一の係合部16bと第一係合受け部18bとの係合が解除しにくくなるので、樋カバー18から樋本体16が脱落するのを防止できる。
【0052】
次に、樋装置10の第五の変形例について説明する。第五の変形例の樋装置10(5)は、第四の変形例の樋装置10(4)の一部を変更したもので、図16(a)、(b)に示すように、樋カバー18の左側の第一係合受け部18aを略L字形に折れ曲がった板(上記の板36aと同じ)とし、樋本体16の左側の第一係合部16bが第一係合受け部18の内側の空間に入って係合する構造にした点と、樋カバー18に脱落防止具39(2)を取り付けた点に特徴がある。
【0053】
脱落防止具39(2)は、バネ性を有した金属又は樹脂等を用いて断面略L字形に形成された短尺な板材で、図16(a)に示す組み立て状態で、基端部が樋カバー18の下面に固定され、先端部39aが樋本体16の左側の第一係合部16bに近接配置される。
【0054】
樋装置10(5)は、あらかじめ樋カバー18の複数個の脱落防止具39(2)を取り付けておけば、樋装置10とほぼ同じ手順で設置することができ、樋本体取り付け工程S15では、図17(a)に示すように、まず、樋本体16を斜めに持ち上げて、樋本体16の右側の第一係合部16bを樋カバー18の右側の第一係合受け部18aに係合させる。その後、図17(b)に示すように、樋本体16の底部を持ち上げ、左側の第一係合部16bを脱落防止具39(2)の先端部39aの先端縁の下面に当接させて、先端部39aを上向きに押圧する。これによって脱落防止具39(2)の先端部39aが上向きに撓み、隙間が広くなって左側の第一係合部16bを第一係合受け部18bの内側に係合させることができる。そして、先端部39aが上向きに押されなくなって元の位置に戻り、図16(a)に示す状態になる。
【0055】
左側の第一係合受け部18aは、略L字形に折れ曲がった板36aなので、左側の第一係合部16bを容易に係合させることができる。また、係合した後、左側の第一係合部16bは、バネ性を有した脱落防止具39(2)の先端部39aがあるため、左側の第一係合受け部18aから抜け出しにくくなるので、樋カバー18から樋本体16が脱落するのを防止できる。
【0056】
次に、樋装置10の第六の変形例について説明する。第六の変形例の樋装置10(6)は、第二の変形例の樋装置10(2)の一部を変更したもので、図18(a)、(b)に示すように、樋本体16の上部開口16aの幅を固定する幅固定具38に代えて、樋カバー18に脱落防止具39(3)を取り付けた点に特徴がある。
【0057】
脱落防止具39(3)は、一対の上記脱落防止具39(2)を左右対称に配置して一体にしたような構造の短尺な板材で、図18(a)に示す組み立て状態で、中央部が樋カバー18の下面に固定され、一対の先端部39aが樋本体16の左右の第一係合部16bに近接配置される。
【0058】
樋装置10(6)は、あらかじめ樋カバー18の複数個の脱落防止具39(3)を取り付けておけば、樋装置10とほぼ同じ手順で設置することができ、樋本体取り付け工程S15では、第一係合部16bを脱落防止具39(3)の先端部39aの先端縁の下面に当接させて、先端部39aを上向きに押圧する。これによって脱落防止具39(3)の先端部39aが上向きに撓み、隙間が広くなって第一係合部16bを第一係合受け部18bの内側に係合させることができる。そして、先端部39aが上向きに押されなくなって元の位置に戻り、図18(a)に示す状態になる。なお、第一係合部16bを第一係合受け部18bに係合させる操作は、左右同時に行っても良いし、片側ずつ順番に行ってもよい。
【0059】
2つの第一係合受け部18aは、どちらも略L字形に折れ曲がった板36aなので、2つの第一係合部16bを容易に係合させることができる。また、係合した後、第一係合部16bは、バネ性を有した脱落防止具39(3)の先端部39aがあるため、第一係合受け部18aから抜け出しにくくなるので、樋カバー18から樋本体16が脱落するのを防止できる。
【0060】
次に、本発明の樋装置の第二の実施形態について、図19図23に基づいて説明する。この実施形態の樋装置40は、図19(a)、(b)に示すように、樋本体16、樋カバー42及び固定具44で構成され、屋根12の軒先12a近傍の屋根部材(鼻隠し14a)の正面に設置される。樋本体16は、図2(a)に示す樋本体16と同じものである。
【0061】
樋カバー42は、図2(b)に示す樋カバー18の構成から一対の第二係合受け部18bが削除され、長さ方向の両端部の、通水孔24がない位置に、取り付け部を構成するネジ孔46が付設されたものであり、その他の構成は樋カバー18と同様である。この樋カバー42も、板状に形成された押出型材に若干の加工を加えることによって製作される。
【0062】
固定具44は、図3に示す固定具20の構成から一対の第二係合受け部18bが削除され、被取り付け部20aの、樋カバー42のネジ孔46に対応する位置に、ネジ孔48が付設されたものであり、その他の構成は固定具20と同様である。
【0063】
樋装置40の設置方法と樋装置10の設置方法とを比較すると、図4(a)のフローチャートの中の、樋カバー設置工程S12の作業内容が少し違ってくる。樋装置40の場合は、複数の固定具44を鼻隠し14aに取り付けた後、樋カバー42を固定具44の下方に配し、互いに連通させたネジ孔46,48にネジ部材50を挿通して締め付け固定する。その他の工程S11,S13~S15の内容は同様である。
【0064】
樋装置40は、樋カバー42を固定具44に固定する部分の構造が上記の樋装置10と異なっているものの、樋装置10とほぼ同様の効果が得られる。
【0065】
次に、樋装置40の第一の変形例について説明する。樋装置40は、鼻隠し14aを有した屋根12に設置するため、固定具44の構造が、鼻隠し14aに取り付けやすい構造になっている。これに対して、第一の変形例の樋装置40(1)は、断面が波形の折板屋根14cで成る屋根12に設置するため、固定具44に代えて固定具52を使用している。
【0066】
固定具52は、ボルト52aとナット52bで構成される。そして、図20(a)、(b)に示す組み立て状態で、ボルト52aのネジ部が樋カバー42のネジ孔46を通じて上向きに突出し、ネジ孔46の周縁部がネジ頭によって係止される。そして、ネジ部の先端部が折板屋根14cに設けたネジ孔54を通じて上向きに突出し、この突出した部分にナット52bを締め込み、ナット52bがネジ孔54の周縁部に係止される。このように、固定具52の場合は、樋カバー42が取り付けられるボルト52aのネジ頭が被取り付け部となり、折板屋根14cに固定されるボルト52aのネジ部及びナット52bが固定部となる。
【0067】
樋装置40(1)の設置方法と樋装置10,40の設置方法とを比較すると、図4(a)のフローチャートの中の、樋カバー設置工程S12の作業内容が少し違ってくるが、その他の工程S11,S13~S15の内容は同様である。樋装置40(1)においても、樋装置40と同様の効果が得られる。
【0068】
次に、樋装置40の第二の変形例について説明する。樋装置40は、板状に形成された押出型材に若干の加工を加えることによって製作された樋カバー42を使用している。これに対して、第二の変形例の樋装置40(2)では、図21(a)、(b)に示すように、薄手の金属板を曲げ加工して、長さ方向と直角な断面の形状が一様になるように板状に形成された樋カバー56を使用し、さらに、固定具44の一部として働く補助板部材58を新たに設けている。
【0069】
樋カバー56は、図21(b)、図22(a)に示すように、断面を矩形波状に形成することによって、樋カバー56の長さ方向に延びる複数の集水溝22が設けられ、その底部に、雨水を樋本体16内に流入させるための複数の通水孔24が形成されている。そして、左右側端部の下面に、樋カバー56の長さ方向に延びる一対の第一係合受け部18aが設けられ、長さ方向の両端部の、通水孔24がない位置に、取り付け部を構成するネジ孔46が付設されている。したがって、樋カバー56は、全体として樋カバー42と同様の構成と言える。しかしながら、安価な薄手の金属板を使用している分、樋カバー42よりも強度が少し劣る。そこで、樋カバー56を補強するために補助板部材58が設けられている。
【0070】
補助板部材58は、図21(b)、図22(b)に示すように、階段状に形成された板状の金具で、樋カバー56のネジ孔46に対応する位置に、ネジ孔58aが設けられている。
【0071】
樋装置40(2)の設置方法は樋装置40の設置方法とほぼ同じであるが、樋装置40(2)の場合、複数の固定具44を鼻隠し14aに取り付けた後、固定具44の下方に樋カバー56を配し、樋カバー56の下方に補助板部材58を配し、互いに連通させたネジ孔58a,46,48にネジ部材50を挿通して締め付け固定する。その他の工程S11,S13~S15の内容は同様である。
【0072】
樋装置40(2)は、樋カバー56の強度が樋カバー42よりも少し劣るので、補助板部材58が無いと、樋カバー56のネジ孔46の周縁部が変形してしまうおそれがある。しかし、補助板部材58を設けることで、樋カバー56が被取り付け部20aと補助板部材58との間に挟持される形になり、樋カバー56のネジ孔46の周縁部が、補助板部材58により一定以上の面積で支持されることによって補強される。この樋装置40(2)においても、樋装置40とほぼ同様の効果が得られる。
【0073】
次に、樋装置40の第三の変形例について説明する。第二の変形例の樋装置40(2)は、鼻隠し14aを有した屋根12に設置するため、固定具44の構造が、鼻隠し14aに取り付けやすい構造になっている。これに対して、第三の変形例の樋装置40(3)は、図23(a)、(b)に示すように、断面が波形の折板屋根14cで成る屋根12に設置するため、固定具44に代えて固定具52を使用している。樋装置40(2)から樋装置40(3)への変更点は、樋装置40から樋装置40(1)への変更点と同様である。樋装置40(3)においても、樋装置40(2)と同様の効果が得られる。
【0074】
ここで樋装置の他の実施形態について、図24に基づいて説明する。この実施形態の樋装60は、樋部材62及び固定具20で構成され、屋根12の軒先12a近傍の屋根部材(鼻隠し14a)の正面に設置される。固定具20は、図1等に示す固定具20と同様のものである。
【0075】
樋部材62は、内側に流入した雨水を横方向に移送する長尺な部材で、筒状に形成された押出型材に若干の加工を加えることによって製作される。樋部材62は、図1に示す樋カバー18と樋本体16を一体に押し出し形成したような部材であり、上面側に複数の竪壁を立設することによって、樋カバー18の長さ方向に延びる集水溝22が設けられ、その底部に、雨水を樋本体16内に流入させるための複数の通水孔24が形成されている。そして、上面側に、樋部材62の長さ方向に延びる一対の第二係合部18b(固定具20の第二係合受け部20cに係合して支持される部分)が設けられている。なお、樋部材60では、第一係合部16b及び第一係合受け部18aに相当する部分は不要なので省略されている。
【0076】
樋装置60を設置する時は、まず、上述した樋カバー設置工程S12の作業を行う(樋カバー18を樋部材62と読み替えて行う)。その後、隣り合う樋本体16同士を、水漏れ防止用の継手(図示せず)で相互に連結して水密に一体化する作業を行う。その他の工程S11,S13~S15は行うことなく、設置作業を終了することができる。
【0077】
樋装置60は、樋部材62と固定具20とが別体なので、複数種類の固定具20,20x,20y,20zを用意することによって、様々な形態の屋根12に設置することが可能になる。そして、比較的コストが掛かる樋部材62を共通化できるので、樋部材62コストを安価に抑えることができる。また、設置する時の作業も大幅に簡略化されるので、効率よく設置することができる。
【0078】
次に、本発明の樋装置の第三の実施形態について、図25に基づいて説明する。この実施形態の樋装置64は、樋本体16,樋カバー42及び固定具66で構成され、断面が波形の折板屋根14cで成る屋根12に設置される装置である。樋装置64は、図20に示す樋装置40(1)と構成が類似しているが、樋装置40(1)と異なるのは、新規な固定具66が使用されている点である。
【0079】
固定具66は、金具68とネジ部材70(ボルト72a、ナット72b)とで構成される。金具68は、中央部が凸形に屈曲した板状の本体部を有し、本体部の左右の両端部の下面側に、第一係合受け部18aをスライド挿入可能な形状の一対の第三係合受け部68aが設けられ、本体部の上向きに突出している面に、厚み方向に貫通するネジ孔68bが設けられている。
【0080】
ネジ部材70は、図25(a)、(b)に示す組み立て状態で、ボルト70aのネジ部が金具68のネジ孔86bを通じて上向きに突出し、ネジ孔68bの周縁部がネジ頭によって係止される。そして、ネジ部の先端部が折板屋根14cに設けたネジ孔54を通じて上向きに突出し、この突出した部分にナット70bを締め込み、ナット70bがネジ孔54の周縁部に係止される。
【0081】
樋カバー42は、取り付け部が第一係合受け部18aで兼用され、金具68の第三係合受け部68aに第一係合受け部18aを係合させることによって取り付けられる。したがって、この固定具66の場合、第三係合受け部18aを有する金具68が被取り付け部となり、金具を折板屋根14cに固定するネジ部材70が固定部となる。
【0082】
樋装置64の設置方法と樋装置40(1)の設置方法とを比較すると、図4(a)のフローチャートの中の、樋カバー設置工程S12の作業内容が少し違ってくるが、その他の工程S11,S13~S15の内容は同様である。樋装置64においても、樋装置40(1)と同様の効果が得られる。
【0083】
なお、本発明の樋装置は上記実施形態に限定されるものではなく、各部材の材料や形状等は、上記以外の適した構造を適宜選択し使用することができる。
【符号の説明】
【0084】
10,40,40(1),40(2),40(3),60,64 樋装置
12 屋根
12a 軒先
14a 鼻隠し(屋根部材)
14b 垂木(屋根部材)
14c 折板屋根(屋根部材)
16 樋本体
16a 上部開口
16b 第一係合部
18,42,56 樋カバー
18a 第一係合受け部
18b 第二係合部
20,44 固定具
20a 被取り付け部
20b 固定部
20c 第二係合受け部
20d,48,54,58a,58b ネジ孔
22 集水溝
24 通水孔
26 取り付け補助具
26a 上板
26c 側板
26c 下板
26d 開放部分
28,50 ネジ部材
30 継手
32,34 板状治具
34a 引っ掛け部
36a,36b 板(第一係合受け部)
38 幅固定具
39(1),39(2),39(3) 脱落防止具
46 ネジ孔(樋カバーの取り付け部)
52 固定具
52a ボルト
52b ナット
58 補助板部材
62 樋部材
66 固定具
68 金具(固定具の被取り付け部)
68a 第三係合受け部
68b ネジ孔
70 ネジ部材(固定具の固定部)
70a ボルト
70b ナット


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25