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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】波板状建材に対する手動穿孔工具
(51)【国際特許分類】
   B26F 1/32 20060101AFI20250109BHJP
   F16B 7/20 20060101ALI20250109BHJP
   B23B 45/06 20060101ALI20250109BHJP
   B23B 45/14 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B26F1/32 J
F16B7/20 Z
B23B45/06
B23B45/14
B26F1/32 V
B26F1/32 G
B26F1/32 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021102189
(22)【出願日】2021-06-21
(65)【公開番号】P2023001453
(43)【公開日】2023-01-06
【審査請求日】2024-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000181963
【氏名又は名称】若井ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】若井 俊宏
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-114371(JP,A)
【文献】実開昭56-062815(JP,U)
【文献】意匠登録第1271721(JP,S)
【文献】実開昭52-017991(JP,U)
【文献】特開2008-023622(JP,A)
【文献】特開平11-138319(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0170619(US,A1)
【文献】中国実用新案第211806548(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 1/32
F16B 7/20
B23B 45/06
B23B 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波板状建材の凸部頂面に貫通孔を穿設するための手動穿孔工具であって、先端が開放した内部中空の筒状に形成された持ち手部材と、筒状のガイド部材、抜け止め機構、錐部材、コイルスプリングからなり、
前記ガイド部材は、両端が解放された円筒状で、その先端部分に波板状建材の凸部頂面への接合座部が設けられ、前記持ち手部材内に後端側を挿入することで、この持ち手部材の先端から先端側が所定長さ突出するよう同軸心の状態で嵌合保持され、前記持ち手部に対して、軸方向の移動と、軸心を中心とする回転が可能となり、
前記抜け止め機構は、持ち手部材の先端側内部と、ガイド部材の後端側の位置に、持ち手部材の先端からガイド部材の先端側が所定長さだけ突出する状態で互いに係合し、持ち手部材の先端側に対してガイド部材を抜け止め状に保持するように形成され、
前記錐部材は、先端に刃先が設けられ、前記持ち手部材の内部及びガイド部材内に亘って、この持ち手部材及びガイド部材と同軸心状の配置で収まり、前記持ち手部材と一体の動きをするようこの持ち手部材に固定され、その全長が、持ち手部材とガイド部材の関係が伸張状態にあるとき、先端の刃先がガイド部材内に没入し、持ち手部材とガイド部材の関係が収縮状態にあるとき、先端の刃先側がガイド部材の先端から所定長さ突出する長さを有し、
前記コイルスプリングは、前記持ち手部材の内部に収縮状態で収まり、前記ガイド部材の後端を押圧し、このガイド部材に抜け止め機構が係合する前進位置への移動弾性を付勢するようになっている
手動穿孔工具において、
前記持ち手部材の内部で、ガイド部材の後端面とコイルスプリングの端部の間に、切粉の封止部材を介在させたことを特徴とする手動穿孔工具。
【請求項2】
上記持ち手部材は、先端が開放した内部中空の筒状に形成された持ち手本体と、この持ち手本体の先端に延長状となるよう同軸心状に連結され、前記ガイド部材に外嵌する保持筒体の組み合わせからなり、前記抜け止め機構が、この保持筒体の内周で先端側寄りの位置に設けた段部と、前記ガイド部材の後端側外周に設けた突条とで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の手動穿孔工具。
【請求項3】
上記ガイド部材は、透明な硬質材料を用いて形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の手動穿孔工具。
【請求項4】
上記封止部材は、前記持ち手部材の内部に軸方向への移動及び回転が可能に収まり、前記ガイド部材の外径及びコイルスプリングの外径よりも大径で、錐部材に回転可能な状態で適合する内径のリング状円板に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の手動穿孔工具。
【請求項5】
上記錐部材は、先端の刃先から後端に向けて軸方向の途中の位置にまで切粉排出溝が設けられ、この錐部材の切粉排出溝に対する前記封止部材の位置が、前記切粉排出溝の後端よりも錐部材の後端側に位置するように設定されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の手動穿孔工具。
【請求項6】
上記錐部材に設けた切粉排出溝は、持ち手部材に対してガイド部材が抜け止め機構の係合する前進位置にある状態で、その全長が前記ガイド部材内に収まる長さに設定されていることを特徴とする請求項5に記載の手動穿孔工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、波板状建材の凸部頂面に貫通孔を穿設するにあたり、熟練を要する事無く誰もが正確かつ安全に連続して穿孔作業を行える手動穿孔工具に関する。
【背景技術】
【0002】
波板状建材の凸部頂面に貫通孔を穿設するために用いる穿孔工具には、特許文献1に示すような手動穿孔工具と、特許文献2-6のような電動穿孔工具が提案されているが、前者の手動穿孔工具は、軽量で扱いやすく、電源のない条件でも手軽に使用することができるという利便性がある。
【0003】
上記手動穿孔工具と電動穿孔工具の両者は、何れも、回転する錐部材をカバーとなる筒状のガイド部材で覆い、錐部材に対する接触事故を防止する構造になっていると共に、前記錐部材とガイド部材は錐部材の軸方向に沿って相対的に移動可能な関係になり、コイルスプリングでガイド部材に錐部材の先端側への移動弾性が付勢されている。
【0004】
また、穿孔時に錐部材による穿孔位置がずれないように、手動穿孔工具は、特許文献1のように、前記ガイド部材の波板状建材への当接面に、該波板状建材の凸部頂面に沿う形状の接合座部を設け、また、電動穿孔工具の場合は、特許文献2や5のように、ガイド部材の波板状建材への当接面に弾性体が設けられ、これら接合座部や弾性体を波板状建材にあてがった穿孔時、停止するガイド部材に対して錐部がコイルスプリングの弾性力に抗して移動することになる。
【0005】
ところで、特許文献2乃至4のように、ガイド部材に弾性を付勢するコイルスプリングが、外部に露出している構造の場合、熟練の作業員であれば問題なく使用することができるが、日曜大工等で一般消費者が使用するような場合には、コイルスプリングに指を挟み込んで怪我をするような、錐部材への接触以外の別の事故を生じさせる危険があり、このため、一般消費者が使用することの多い手動穿孔工具においては、特許文献1のように、コイルスプリングを持ち手部材内に内包する構造が採用されている。
【0006】
従来の手動穿孔工具の具体的な構造は、特許文献1のように、先端が開放した内部中空の筒状に形成された持ち手部材の先端側内部に、筒状のガイド部材を軸方向に移動可能となるよう同軸心状に挿入し、前記持ち手部材とガイド部材の内部に亘って納まる錐部材は、その後端が持ち手部材の後端部に固定され、ガイド部材が前進位置にあるときその先端がガイド部材の内部に納まる長さに設定され、前記持ち手部材の内部に納まって錐部材に外嵌するコイルスプリングの先端を、ガイド部材の後端に当接することで、このガイド部材に先端側へ向けての移動弾性を付与し、前記持ち手部材の内部で先端側の位置とガイド部材の後端に設けた一対の抜け止め機構で、ガイド部材の前進位置を規制するようになっている。
【0007】
このような手動穿孔工具は、穿孔作業時に、持ち手部材を握ってガイド部材の先端を波板状建材に当接させた状態で、固定となるガイド部材に対して錐部材に、持ち手部材を介して前進と回転を与えることで穿孔を行うことになり、この穿孔時に、固定となるガイド部材に対して錐部材に前進と回転をさせるため、ガイド部材の内周面と錐部材の外周面との間に、供回りを防ぐ筒状空間を確保する必要があり、このような筒状空間は、両端が開放されているため、その後端側開口が、持ち手部材のコイルスプリングが納まる内部空間と連通することになる。
【0008】
上記のような手動穿孔工具を用いて波板状建材の穿孔作業を行うと、錐部材による切削によって波板状建材の切粉が発生し、この切粉は筒状空間内に侵入することで収納されるが、連続した穿孔作業を行っているうちに切粉の量が増大すると、筒状空間内の切粉が該筒状空間と連通する持ち手部材の内部空間に侵入し、この内部空間への切粉の蓄積が進むと、持ち手部材の内部に納まるコイルスプリングの間に切粉が挟まれ、コイルスプリングの伸縮動作に弊害をもたらし、穿孔作業に支障を来すという問題が発生する。
【0009】
ここで、特許文献1のような従来の手動穿孔工具において、コイルスプリングの切粉挟み込みにより起因する問題を防ぐ手段として、ガイド部材の内径を大径化することで筒状空間の幅を広くし、切粉がガイド部材の先端開口から自然と落下するようにすることが考えられるが、このようなガイド部材の内径拡大は、手動穿孔工具全体の大径化と重量増加を招くことになるので好ましくないと共に、ガイド部材の内径を拡大しても、穿孔作業毎に発生する錐部材とガイド部材の相対的な軸方向の移動が原因で、錐部材に設けられている切粉排出溝内の切粉や、ガイド部材の内周面や錐部材の外周面に接触した切粉がせり上がり、これが持ち手部材の内部空間に侵入することになるので、コイルスプリングへの切粉挟み込み発生を完全に防ぐことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】意匠登録第1271721号公報
【文献】特開2011-224722号公報
【文献】実開平3-107184号公報
【文献】実開昭54-112677号公報
【文献】実開昭52-17991号公報
【文献】実開昭52-41085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、この発明は、波板状建材の凸部頂面に穿孔する際、穿孔用の錐部材や伸縮するコイルスプリングから作業者の身体を十分に保護しつつ、穿孔時に発生する切粉が持ち手部材におけるコイルスプリングの内包部に進入して蓄積することで動作不良が発生することを防ぎ、熟練を要する事無く誰もが正確かつ安全に連続して穿孔作業を行える手動穿孔工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような課題を解決するため、この発明は、前記波板状建材の凸部頂面に貫通孔を穿設するための手動穿孔工具であって、先端が開放した内部中空の筒状に形成された持ち手部材と、筒状のガイド部材、抜け止め機構、錐部材、コイルスプリングからなり、
前記ガイド部材は、両端が解放された円筒状で、その先端部分に前記波板状建材の凸部頂面への接合座部が設けられ、前記持ち手部材内に先端から後端側を挿入することで、この前記持ち手部材の先端から先端側が所定長さ突出するよう同軸心の状態で嵌合保持され、前記持ち手部材に対して、軸方向の移動と、軸心を中心とする回転が可能となり、
前記抜け止め機構は、前記持ち手部材の先端側内部と、前記ガイド部材の後端側の位置に、前記持ち手部材の先端から前記ガイド部材の先端側が所定長さだけ突出する状態で互いに係合し、前記持ち手部材の先端側に対して前記ガイド部材を抜け止め状に保持するように形成され、前記錐部材は、先端に刃先が設けられ、前記持ち手部材の内部及び前記ガイド部材内に亘って、この前記持ち手部材及び前記ガイド部材と同軸心状の配置で収まり、前記持ち手部材と一体の動きをするようこの前記持ち手部材に固定され、その全長が、前記持ち手部材と前記ガイド部材の関係が伸張状態にあるとき、先端の刃先が前記ガイド部材内に没入し、前記持ち手部材と前記ガイド部材の関係が収縮状態にあるとき、先端の刃先側が前記ガイド部材の先端から所定長さ突出する長さを有し、
前記コイルスプリングは、前記持ち手部材の内部に収縮状態で収まり、前記ガイド部材の後端を押圧し、この前記ガイド部材に抜け止め機構が係合する前進位置への移動弾性を付勢するようになっている手動穿孔工具において、
前記持ち手部材の内部で、前記ガイド部材の後端面と前記コイルスプリングの端部の間に、切粉の封止部材を介在させた構成としている。
【0013】
また、前記持ち手部材は、先端が開放した内部中空の筒状に形成された前記持ち手部材本体と、この前記持ち手部材本体の先端に延長状となるよう同軸心状に連結され、前記ガイド部材に外嵌する保持筒体の組み合わせからなり、前記抜け止め機構が、この前記保持筒体の内周で先端側寄りの位置に設けた段部と、前記ガイド部材の後端側外周に設けた突条とで連結形成される構成とすることができる。
【0014】
さらに、前記ガイド部材は、透明な硬質材料を用いて形成するように構成することができる。
【0015】
また、前記封止部材は、前記持ち手部材の内部に軸方向への移動及び回転が可能に収まり、前記ガイド部材の外径及び前記コイルスプリングの外径よりも大径で、前記錐部材に回転可能な状態で適合する内径のリング状円板に形成されされている構成とすることができる。
【0016】
そして、前記錐部材は、先端の刃先から後端に向けて軸方向の途中の位置にまで切粉排出溝が設けられ、この前記切粉排出溝に対する前記封止部材の位置が、前記切粉排出溝の後端よりも前記錐部材の後端側に位置するように設定される。
【0017】
なお、前記切粉排出溝は、前記持ち手部材に対して前記ガイド部材が抜け止め機構の係合する前進位置にある状態で、その全長が前記ガイド部材内に収まる長さに設定される構成とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明の手動穿孔工具によると、上記錐部材が未使用時には持ち手部材とガイド部材に包括され、穿孔時以外露出されることがなく、その錐部材に外嵌するコイルスプリングは持ち手部材の内部に収縮状態で収まり、常時露出することがないので、未熟な作業者が誤って前記錐部材に触れたり、穿孔時に伸縮するコイルスプリングに指等を挟んだりすることによって、創傷が起こってしまうことを防ぐことができるという、手動穿孔工具の利点を維持しつつ、ガイド部材とコイルスプリングの間に封止部材を介在させたので、連続して穿孔を行うにあたり、切粉がコイルスプリングの内包される持ち手部材内に侵入・蓄積することを防止することができるため、切粉がコイルスプリングの伸縮を阻害することにより起因する動作不良を生じさせるのを防ぐことができる。
【0019】
また、上記封止部材の外径を、ガイド部材の外径及びコイルスプリングの外径よりも大径で、錐部材に回転可能な状態で適合する内径のリング状円板に形成し、これを、ガイド部材の後端面とコイルスプリングの端部の間に介在させることにより、ガイド部材の筒状空間と持ち手部材の内部の連通部分を遮断でき、穿孔時に発生する切粉のうち、微細な切粉が巻き上げられ、ガイド部材の内部を通り抜け、コイルスプリングの包括される部分に侵入することを防ぐことができる。
【0020】
更に、上記封止部材をガイド部材の後端部とコイルスプリングの端部の間に介在させることにより、ガイド部材とコイルスプリングが直接接することの無いようにすることで、前記ガイド部材の後端部に設けられた抜け止め片に、コイルスプリングが噛み込んで、正常な動作が行えなくなるという現象も合わせて抑止することが可能となる。
【0021】
更にまた、連続して穿孔作業を続けた場合、切粉はその大半がガイド部材の先端側より排出されるが、その一部が錐部材の切粉排出溝に溜り、錐部材の尖り先端部から持ち手部に向かって徐々に蓄積されてせり上がるが、前記切粉排出溝は、持ち手部材に対して前記ガイド部材が抜け止め機構の係合する前進位置にある状態で、その全長をガイド部材内に収まる長さに設定することで、封止部材に対する錐部材の嵌り合い部分は、常に円軸状の部分となって封止機能が維持され、前記切粉排出溝がコイルスプリングの包括される部分と連通することがなく、従って、前記切粉排出溝に溜り蓄積された切粉がコイルスプリングの包括される部分に侵入することを防止することができ、より封止部材の効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(a)は、この発明の実施形態に係る手動穿孔工具を示す正面図、(b)は同左側面図である。
図2図1(a)の矢印a-aでの縦断側面図である。
図3】(a)は封止部材の平面図、(b)は同縦断正面図である。
図4】この発明の実施形態に係る錐部材を示す正面図である。
図5】この発明の実施形態に係るコイルスプリングを示す正面図である。
図6】(a)はこの発明の実施形態に係るガイド部材を示す正面図、(b)は同左側面図である。
図7図6のガイド部材における矢印c-cでの断面図である。
図8】この発明の実施形態に係る抜け止め部材を示す正面図である。
図9図8の抜け止め機構における矢印d-dでの断面図である。
図10】この発明の実施形態に係る持ち手部材とこれに固定した錐部材を示す正面図である。
図11図10の持ち手部材における矢印e-eでの断面図である。
図12】(a)はこの発明の手動穿孔工具を使用した穿孔時の状態を示す正面図、(b)は同縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1図2及び図12のように、この発明の手動穿孔工具1は、波板状建材2の凸部頂面3に貫通孔3aを穿設するためのものであり、持ち手部材4と、筒状のガイド部材5、錐部材6、コイルスプリング7から構成されている。
【0024】
上記持ち手部材4は、先端が開放した内部中空の筒状に形成された持ち手本体4aと、この持ち手本体4aの先端に延長状となるよう同軸心に連結された保持筒体8の組み合わせからなり、上記ガイド部材5は、両端が解放された円筒状で、その先端部分に波板状建材2の凸部頂面3への波型の接合座部9が設けられ、前記保持筒体8内に後端側を挿入することで、この保持筒体8の先端12から所定長さ先端側が突出するよう同軸心の状態で嵌合保持され、保持筒体8に対して軸方向への移動と回転が可能になっている。
【0025】
上記ガイド部材5と保持筒体8の嵌合部分には、ガイド部材5の後端側外周に設けた突条によって形成された段部10aと、保持筒体8の先端側内周に設けた段部10bからなり、保持筒体8の先端からガイド部材5が所定長さ突出する状態で互いに係合し、ガイド部材5を先端側の前進位置で抜け止め状に保持する抜け止め機構10が形成されている。
【0026】
上記錐部材6は、先端に刃先6aが設けられ、上記持ち手部材4の内部及び上記ガイド部材5内に亘って、持ち手部材4及び前記ガイド部材5と同軸心状の配置で収まり、前記持ち手部材4と一体の動きをするよう、後端が持ち手本体4aに固定され、その全長は、図2のように、持ち手部材4とガイド部材5の関係が伸張状態にあるとき、この錐部材7の刃先6aがガイド部材5の先端に近い位置で内部に没入する長さに設定されている。
【0027】
上記コイルスプリング7は、上記錐部材6に外嵌する状態で持ち手部材4の持ち手本体4aの内部及び、保持筒体8の内部に亘って連続的に形成される内部空間4bに収縮状態で収まり、その先端がガイド部材5の後端面との間に介在させた切粉の封止部材11に圧接し、この封止部材11を介してガイド部材5の後端を軸方向の前方へ押圧し、前記ガイド部材5に抜け止め機構10が係合する前進位置への移動弾性を付勢している。
【0028】
上記封止部材11は、図2図3のように、錐部材6の平行軸部に丁度外嵌すると共に、錐部材6との軸方向への相対的な移動が可能になる内径と、ガイド部材5の後端面と同じ程度の外径を有するリング状円板の薄板に形成され、コイルスプリング7での押圧によりガイド部材5の後端面に常時圧接した状態で、ガイド部材5と軸方向に一体移動すると共に、ガイド部材5の内周と錐部材6の間に形成された筒状空間5aの後端側の開口を閉鎖することになり、これにより、持ち手部材4の内部空間4bとガイド部材5の筒状空間5aの連通が遮断されることになる。
【0029】
このように、封止部材11でガイド部材5の後端側の開口を閉鎖すると、錐部材6による穿孔時に発生したガイド部材5内の切粉が、持ち手部材4の内部空間4bに侵入するのを防ぐことができ、この内部空間4bに納まるコイルスプリング7の切粉による伸縮阻害の発生を防ぐことができる。
【0030】
上記錐部材6の平行軸部は、穿孔に用いる部分6bとコイルスプリング7が伸張状態で外嵌する部分6cに分かれており、前記穿孔に用いる部分6bの直径に対し、前記コイルスプリング7が伸張状態で外嵌する部分6cの直径が大径となるように形成され、前記封止部材11の内径11aと、前記錐部材6のコイルスプリング7が外嵌する部分6cの直径ができるだけ同一となるように設定されている。
【0031】
より具体的には、上記封止部材11の内径11aが、前記錐部材6のコイルスプリング7が外嵌する部分6cの直径に対して、直径の差において1mm以内の範囲で大きくなるように設けられることが望ましい。
【0032】
手動穿孔工具1を用いて波板状建材2に穿孔を行うと、電動穿孔工具を用いて穿孔を行った場合に比べ、錐部材6の回転速度が遅いために切粉の大きさは大きくなるので、錐部材6のコイルスプリング7が伸張状態で外嵌する部分6cの直径と封止部材11の内径11aの間に生じる隙間が1mm程度までであれば、切粉が前記封止部材11と錐部材6の隙間を抜けて、コイルスプリング7の包括される部分まで侵入することを十分防ぐことができる。
【0033】
また、上記封止部材11は、鋼製の平板状とすることで、ガイド部材5と擦れて磨耗したり、コイルスプリング7の端部が刺さったりすることを防止することで、動作不良の発生を抑制することがで、このように、封止部材11を鋼製とするときは、使用時にガイド部材5と偏って接触し、一部に集中して力が加わっても変形しないように、その厚みを1mm以上に設定することが望ましい。
【0034】
なお、上記封止部材11を鋼製とすると、そのままで変形に対しては十分な効果を発揮できるが、静電気や油の付着等により、切粉が封止部材11の表面に張り付き、切粉のスムーズな排出を阻害してしまうのを防ぐため、表面にクロメート処理を施すなどして、防汚対策を講じるのが好ましい。
【0035】
上記錐部材6は、持ち手部材4とガイド部材5の関係が収縮状態にあるとき、先端の刃先6a側が前記ガイド部材5の先端から所定長さをもって突出するように構成され、その突出長さは、波板状建材2の形状を考慮して13mm~30mmの範囲にすることが望ましく、この錐部材6の先端の刃先6aを形成するテーパ部の長さは13mm以下の長さに設定される。
【0036】
上記錐部材7の刃先6aの長さを13mm以下に設定することで、波板状建材2が波高さの小さなもので、その下地材12が穿孔不能な鋼製等の場合でも、刃先6aの先端が下地材12に接触する前に、波板状建材2の凸部頂面3に対する穿孔が完了し、錐部材6の先端を傷めることがない。
【0037】
ちなみに、上記錐部材6の上記刃先6aの長さを13mm以上に設定すると、手動穿孔工具1では穿孔不能な鋼製等の下地材12に対して波板状建材2を取り付ける場合、波高さの小さな波板状建材2に穿孔を行うと、凸部頂面3から下地材12に向けて前記錐部材6が穿孔・進入するにあたり、錐部材6の刃先6aが下地材12に当接することで刃先6aの途中部分で穿孔が中断され、前記刃先6aを越えて最適な穿孔径である錐部材6の平行軸部6bに達するまで波板状建材2に対して穿孔を行うことができないという事態が発生する。
【0038】
その場合、波板状建材2を本来設置する予定の下地12に重ねて穿孔作業を行うことができず、下地12と別の位置で穿孔を行うには、正確な罫書き等の専門的な技能が必要となり、日曜大工などで普段から施工に携わることの無い使用者が正確な位置に穿孔を行えないことになる。
【0039】
また、上記錐部材6の長さを上記ガイド部材5の先端部より、30mmを超えて突出するようにした場合、手動穿孔工具1の全長が手動で扱うには長くなり過ぎてしまい、作業性が低下するばかりか、前記ガイド部材5の稼動範囲が大きくなり過ぎ、動作不良の発生頻度が大幅に増大してしまうことになる。
【0040】
なお、上記錐部材6には先端13の刃先6aから後端に向けて軸方向の途中の位置にまで、刃先6aに詰まった切粉を排出するための切粉排出溝6dが設けられ、この切粉排出溝6dは上記持ち手部材4に対して前記ガイド部材5が抜け止め機構10の係合する前進位置にある状態で、その全長が前記ガイド部材5内に収まる長さに設定される。
【0041】
上記切粉排出溝6dは、上記封止部材11の位置を後端側に超えないように設けることで、穿孔時に生じる切粉が前記切粉排出溝6dを通って錐部材6と封止部材11の隙間を抜けて、持ち手部材4のコイルスプリング7が内包される側へ侵入してくることを防止することができる。
【0042】
次に、上記抜け止め機構10は、上記保持筒体8の内周で先端寄りの位置に設けた段部10bと、前記ガイド部材5の後端側外周に設けた突条の段部10aとで形成されるが、前記段部10bや、段部10aを切れ目の無い一連の環状に設けると、生産性の向上を目的として前記保持筒体8を樹脂で成形した場合でも、前記段部10bや段部10aが使い古されて弱り、張りが無くなっても、その効果を十分に維持することができる。
【0043】
上記ガイド部材5は透明な硬質材料を用いて形成されているが、材質はABS樹脂やポリカーボネート樹脂などの樹脂材料を用いれば良く、好適にはポリカーボネート樹脂を用いることで、耐候性と透明性をより適切に得ることが可能となる。
【0044】
また、上記ガイド部材5の材料に上記のような樹脂を用いる場合、十分な強度を持たせるため、周壁の厚みを1.5mm以上設けることが好ましいが、上記抜け止め機構10において、前記保持筒体8の内周先端側に設けた段部10bに対し、前記ガイド部材5の後端側外周に設けた突条の段部10aを組み合せる場合、前記ガイド部材5が硬すぎて組み合せる際に大きな力が必要となり、作業者の負担や効率が悪化するだけでなく、前記保持筒体8や前記ガイド部材5を破損させてしまうという問題の発生をなくすため、図6図7のように、前記ガイド部材5の後端側から先端9に向けて複数の切れ込み13を設けると、組立て作業を効率的に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0045】
1 手動穿孔工具
2 波板状建材
3 凸部頂面
3a 貫通孔
4 持ち手部材
4a 持ち手部材本体
4b 内部空間
5 ガイド部材
5a 筒状空間
6 錐部材
6a 刃先
6b 穿孔に用いる部分
6c コイルスプリングに外嵌する部分
6d 切粉排出溝
7 コイルスプリング
8 保持部材
9 接合座部
10 抜け止め機構
10a 段部
10b 段部
11 封止部材
11a 内径
12 下地材
13 切れ込み



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12