(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】改善された安定性を有するTNFR2アゴニスト
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20250109BHJP
C07K 14/525 20060101ALI20250109BHJP
C07K 14/78 20060101ALI20250109BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250109BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250109BHJP
C07K 14/82 20060101ALI20250109BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250109BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20250109BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20250109BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20250109BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20250109BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20250109BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20250109BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20250109BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20250109BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K14/525
C07K14/78
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C07K14/82
A61P35/00
A61P37/06
A61P25/00
A61P9/00
A61P3/00
A61K38/19
A61K48/00
A61K47/65
A61K47/64
(21)【出願番号】P 2021576619
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2020067656
(87)【国際公開番号】W WO2020260368
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-06-22
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507054917
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート シュトゥットガルト
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ロマン
(72)【発明者】
【氏名】ジーゲムント,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】フィッツェンマイアー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】コンテルマン,ローラント
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/226750(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/146818(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/00
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TNFR2の細胞外部分に特異的に結合するTNFリガンドファミリーメンバータンパク質の3つのペプチドTNFホモロジードメイン(THD)からなる結合ドメインを含むポリペプチド
であって、ここで、第1および第2のTHDのC末端(これは、それぞれの場合において
C末端配列V-Y-F-G-I-I(配列番号3)によって規定される)は、第2および第3のTHDのN末端(これは、それぞれの場合において
N末端配列P-V-A-H-V(配列番号4)によって規定される)に、ペプチドX
a(これは、それぞれの場合において独立して選択され、
9~10アミノ酸の長さを有する)を介してそれぞれ連結しており、
ここでペプチドX
a
がX
C
-X
L
-X
N
からなり、ここで
Xcは、A-Lであり;
X
L
は存在しないか、またはG、G-G、G-G-G、およびG-G-G-G(配列番号16)からなる群から選択され;
X
N
は、P-S-D-K(配列番号6)、T-P-S-D-K(配列番号7)、R-T-P-S-D-K(配列番号8)およびS-R-T-P-S-D-K(配列番号9)からなる群から選択され、
ここで、前記THDが配列番号5のアミノ酸88~231からなる連続したアミノ酸配列を含み、且つ変異D143NおよびA145Rを含む、ポリペプチド。
【請求項2】
3つのTHDが同一である、請求項
1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
(i)
X
Lが存在せず、X
NがS-R-T-P-S-D-K(配列番号9)
である;
(ii)
X
LがG-G-G-G(配列番号16)であり、X
Nが
P-S-D-K(配列番号6)
である;
(iii)X
L
がGであり、X
N
がR-T-P-S-D-K(配列番号8)およびS-R-T-P-S-D-K(配列番号9)から選択される;
(iv)X
L
がG-Gであり、X
N
がT-P-S-D-K(配列番号7)およびR-T-P-S-D-K(配列番号8)から選択される;または
(v)X
L
がG-G-Gである、X
N
がP-S-D-K(配列番号6)およびT-P-S-D-K(配列番号7)から選択される、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
動的光散乱法によって決定される62℃よりも高い凝集開始温度(T
m)を有する、請求項1~
3のいずれかに記載のポリペプチド
【請求項5】
変異D143NおよびA145Rが、それぞれ配列番号5に対してD219NおよびA221Rである、請求項1~4のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の少なくとも2つのポリペプチドを含むポリペプチド多量体
であって、以下である:
(a)ともに連結されて
いる;または
(b)
多量体化ドメイン、血清タンパク質、サイトカイン、ターゲティング部分および毒素からなる群から選択されるタンパク質に連結されて
いる、ポリペプチド多量体。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、
(a)1~30アミノ酸、または7~15アミノ酸の長さを有するアミノ酸リンカーによってともに連結されている;または
(b)1~30アミノ酸の長さを有するアミノ酸リンカーによって前記タンパク質に連結されている、請求項6に記載のポリペプチド多量体。
【請求項8】
A.ポリペプチド多量体が以下の特性のうち少なくとも1つを有する:
少なくとも72℃
の凝集開始温度(T
m);
37℃のヒト血漿中での8日間のインキュベーション後において、15%、12%
または10%
よりも大きく減少していないHeLa-TNF-R2細胞中のTNFR2への結合のEC
50;
100pM未満
のMEF上に発現したTNFR2への結合のEC
50;
200pM未満
のKym-1細胞上のTNFR2への結合のEC
50;
30pM未満
のHeLa-TNF-R2細胞におけるNF-κBの活性化のEC
50
;
および/または
B.ポリペプチド多量体が臓器、組織または細胞型に特異的なリガンド
をさらに含む、
請求項
6または7に記載のポリペプチド多量体。
【請求項9】
多量体化ドメインが、二量体化ドメイン、三量体化ドメインまたは四量体化ドメインである、請求項6または7に記載のポリペプチド多量体。
【請求項10】
二量体化ドメインが、抗体、抗体重鎖、免疫グロブリンFc領域、IgMの重鎖ドメイン2(CH2)(MHD2)、IgEの重鎖ドメイン2(CH2)(EHD2)、IgGの重鎖ドメイン3(CH3)、IgAの重鎖ドメイン3(CH3)、IgDの重鎖ドメイン3(CH3)、IgMの重鎖ドメイン4(CH4)、IgEの重鎖ドメイン4(CH4)、Fab、Fab
2
、ロイシンジッパーモチーフ、barnase-barstar二量体、ミニ抗体およびZIPミニ抗体からなる群から選択される、請求項9に記載のポリペプチド多量体。
【請求項11】
(i)三量体化ドメインが、テネイシンC(TNC)、コラーゲンXVIIIのC末端非コラーゲン性ドメイン(NC1)の三量体化領域、Fab3様分子、およびTriBiミニボディからなる群から選択される;または
(ii)四量体化ドメインが、p53の四量体化ドメイン、general control protein 4(GCN4)の四量体化ドメイン、VASP(血管拡張因子刺激リン酸化タンパク質)の四量体化ドメイン、タンデム二重特異性抗体、およびジダイアボディ(di-diabody)からなる群から選択される、
請求項9に記載のポリペプチド多量体。
【請求項12】
二量体化ドメインが、FcΔab、LALA、LALA-GP、IgG2、IgG2σ、アグリコシル化IgG1、IgG1(L234F/L235E/LP331S)、IgG2m4、およびIgG4 ProAlaAlaからなる群から選択される、請求項10に記載のポリペプチド多量体。
【請求項13】
請求項1~
5のいずれかに記載のポリペプチドまたは請求項
6~12のいずれかに記載のポリペプチド多量体をコードする核酸分子。
【請求項14】
請求項
13に記載の核酸分子を
含むベクター。
【請求項15】
医薬としての使用のための、請求項1~
5のいずれかに記載のポリペプチド、請求項
6~12のいずれかに記載のポリペプチド多量体、請求項
13に記載の核酸
分子、または請求項
14に記載のベクター。
【請求項16】
請求項1~
5のいずれかに記載のポリペプチド、請求項
6~12のいずれかに記載のポリペプチド多量体、請求項
13に記載の核酸
分子、または請求項
14に記載のベクターを活性物質として含む医薬組成物。
【請求項17】
過剰増殖性障害、炎症性障害、神経変性疾患または代謝性障害
、自己免疫障害、メタボリックシンドローム、循環器疾患、神経障害性疾患、および神経傷害の診断、予防または処置における使用のための、請求項1~
5のいずれかに記載のポリペプチド、請求項
6~12のいずれかに記載のポリペプチド多量体、請求項
13に記載の核酸
分子、請求項
14に記載のベクター、または請求項
16に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TNFR2の細胞外部分に特異的に結合するTNFリガンドファミリーメンバータンパク質の3つのTNFホモロジードメイン(THD)からなるポリペプチドに関し、ここでC末端およびN末端の基準点はコンセンサス配列によって規定されている。THDは、THDまたはそのバリアントの短い区間のさらなるC末端および/またはN末端アミノ酸ならびにペプチドリンカーによって連結されている。これらのポリペプチドは改善された安定性を有する。さらに、本発明は、いくつかの本発明のポリペプチドを含むポリペプチド多量体に関する。さらに、本発明は、前記ポリペプチドまたはポリペプチド多量体をコードする核酸分子、前記核酸分子を含むベクター、および前記ポリペプチド、ポリペプチド多量体、核酸分子またはベクターを含む医薬組成物に関する。さらに、本発明は、医薬としての使用のための、または過剰増殖性障害、炎症性障害もしくは代謝性障害の予防もしくは処置における使用のための、前記ポリペプチド、ポリペプチド多量体、核酸分子またはベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーは、様々な機能を有する構造的に関連したサイトカインのファミリーである。TNFリガンドファミリーを規定する構造的な特徴はカルボキシ末端のTNFホモロジードメイン(THD)であり、これは保存されたゼリーロール様の折り畳み三次構造をとる2つのスタックされたβプリーツシートで構成されている(Bodmer et al., 2000, Trends Biochem. Sci. 27, 19-26; Fesik, 2000, Cell 103, 273-282; Locksley et al., 2001, Cell 104, 487-501)。この構造組成はTHD単量体の三量体への自己会合をもたらし、受容体の結合に必要である。THDのカルボキシ末端への局在化のために、膜貫通型および可溶性の両方のTNFリガンドが三量体を構築する。
【0003】
腫瘍壊死因子(TNF)自体は、多面的な機能を有する多機能性サイトカインである。TNFは免疫系の主要制御因子であり、炎症および免疫の開始および調整に重要な役割を果たしている。スーパーファミリーのほとんどのリガンドと同様に、TNFは三量体の2型膜貫通タンパク質(tmTNF)として合成され、これは可溶性の循環性TNFホモ三量体(sTNF)にタンパク質分解され得る。興味深いことに、sTNFおよびtmTNFは、2つの異なるTNF受容体(TNFR)であるTNFR1およびTNFR2を活性化する能力が異なっている。TNFR1はsTNFおよびtmTNFの両方で活性化されるが、TNFR2はtmTNFに依存して頑強に活性化される(Muhlenbeck et al., 2000, J. Biol., Chem. 275, 32208-32213; Wajant et al., 2001, Oncogene 20, 4101-4106)。
【0004】
TNFの発現およびシグナル伝達の調節解除は慢性炎症を引き起こし得、自己免疫疾患の発症および組織損傷をもたらし得る(Fischer et al., 2015, Antibodies 4, 48-70; Kalliolias & Ivashkiv, 2016, Nat. Rev. Rheumatol. 12, 49-62)。実際に、TNFレベルの上昇はいくつかの炎症性疾患(関節リウマチ(RA)、乾癬および炎症性腸疾患など)に関連している:TNFを中和する治療物質は、これらの疾患の処置に使用され成功している(Monaco et al., 2015, Int. Immunol. 27, 55-62)。しかし、驚くべきことに、多発性硬化症患者におけるsTNFおよびtmTNFの両方を遮断する抗TNF薬を用いた臨床試験は疾患の増悪をもたらし、中止せざるを得なかった。さらに、承認されたTNF阻害剤は、日和見感染症、結核の再活性化、自己免疫疾患の発症、リンパ腫の発症に対する感受性の上昇、および脱髄性疾患を含む重篤な副作用を引き起こし得る(Fischer et al., 2015, Antibodies 4, 48-70; Monaco et al., 2015, Int. Immunol. 27, 55-62)。これらの望ましくない臨床反応は、2つの受容体を媒介したTNFの種々の生物学的作用に依存している可能性が高い。
【0005】
近年の研究は、TNF受容体が反対の生物学的反応を誘導することを明らかにした。TNFR1シグナル伝達は炎症および組織変性を促進するが、TNFR2は免疫抑制ならびに組織の恒常性および再生に寄与する(Probert et al., 2015, Neuroscience 302, 2-22)。したがって、TNFシステムを標的とした次世代の治療手段が開発され、これはsTNF-TNFR1の相互作用またはシグナル伝達の遮断、およびTNFR2の選択的な活性化を含む(Shibata et al., 2009, Biomaterials 30, 6638-6647; Steed et al., 2003, Science 301, 1895-1898; Dong et al., 2016, PNAS 113, 12304-12309)。TNFR2を媒介した免疫抑制活性は、自己免疫疾患における潜在的な治療応用のために特に関心の対象となっている。TNFR2の免疫抑制性は、免疫応答を抑制するように機能する高度に特殊化されたT細胞の亜集団であるTreg細胞の増殖および安定化における顕著な役割に起因する(Chen et al., 2007, J. Immunol. 179, 154-161; Chen et al., 2013, J. Immunol. 190, 1076-1084)。一般的な見解によると、Treg細胞は免疫系の自己寛容を制御し、自己免疫疾患の発症の予防を助ける。CD4+ Treg細胞に加えて、制御性活性を有するさらなるT細胞亜集団(すなわち、CD8+ Treg細胞)が存在する。CD4+ Treg細胞と同様に、最も強力なCD8+サプレッサーはTNFR2の発現によって特徴付けられる(Ablamunits et al., 2010, Eur. J. Immunol. 40, 2891-2901)。
【0006】
Treg細胞の増殖および機能に対するTNFR2の選択的な活性化の影響を精査するために、本発明者らは最近、tmTNFの活性を模倣した可溶性の多価TNFR2選択的TNF誘導体を開発した。これらの分子は、TNFR2に対する選択性をもたらすTNFのTHDにおける変異を組み合わせたTNFの一本鎖誘導体(scTNF)(Krippner-Heidenreich et al., 2008, J. Immunol. 180, 8176-8183)、およびscTNFの二量体化または多量体化モジュールへの融合に基づく。これらのモジュールには、九価の分子(最大で9個のTNFR2の結合)をもたらす三量体化するテネイシンドメイン(Fischer et al., 2011, PLoS ONE 6:e27621; Fischer et al., 2014, Glia 62, 272-283)、IgEの二量体化する重鎖ドメイン2(EHD2)(Dong et al., 2016, PNAS 113, 12304-12309)、p53のホモ四量体化ドメイン、GCN4(Fischer et al., 2017, Sci. Rep. 7, 6607)、VASP、およびscTNFの免疫グロブリンFc領域のN末端およびC末端との融合物が含まれる(PCT/EP2018/058786)。
【0007】
これらすべての研究において、本発明者らは、TNFホモロジードメイン(THD)を含むアミノ酸80~233で構成されるTNFサブユニット(ドメイン)を適用し、3つのサブユニットを12または16残基の柔軟なリンカーで連結した(L1:(GGGS)3(配列番号53);L2:(GGGS)4(配列番号54);Krippner-Heidenreich et al., 2008, J. Immunol. 180, 8176-8183)。その後の研究では、リンカーを、第1および第2のTHDのC末端を第2および第3のTHDのN末端にそれぞれ連結させるGGGGS(配列番号26)配列に縮小させた(すべてのTHDは、ヒトTNFのaa80~233で構成される)(Fischer et al., 2011, PLoS ONE 6:e27621)。
【0008】
さらに、ヒトTNFR2(TNFR2選択的scTNF D143N/A145R)(Loetscher et al., 1993, J. Biol. Chem. 268, 26350-26357)、または3つのサブユニットすべてに対応する置換を有する(Krippner-Heidenreich et al., 2008, J. Immunol. 180, 8176-8183)ヒトTNFR1(TNFR1選択的scTNF R32W/S86T)(van Ostade et al., 1993, Nature 361, 266-269)に対する受容体選択性を与える変異を導入した。また、TNFR2への選択的な結合のために、機能的に対応する変異(D221N/A223R)をマウスTNFに導入した(Fischer et al., 2014, Glia 62, 272-283)。変異は、3つのTHDサブユニットのうち1つまたは2つのみに導入され得る(Boschert et al., 2010, Cell Signal. 22, 1088-1096)。
【0009】
TNFR2選択的なTNF変異タンパク質を、TNF変異体のライブラリーからファージディスプレイによって選択した(Abe et al., 2011, Biomaterials 32, 5498-5504; Ando et al., 2016, Biochem. Biophys. Reports 7, 309-315)。さらに、THD界面の2つの残基をシステイン(S95C/G148C)に変異させて内部共有結合架橋を導入することによって、改善されたTNFR2シグナル伝達を有するTNF分子を生成した(Ban et al., 2015, Mol. Cell. Ther. 3:7)。
【0010】
以前に、本発明者らは、オリゴマー化し、共有結合により安定化したTNFR2選択的なscTNFがtmTNFを模倣しており、TNFR2を効率的に活性化することを実証した。これらのTNFR2選択的なTNF変異タンパク質は、抗炎症反応を誘導し、実験的関節炎の症状を軽減すること、神経細胞およびオリゴデンドロサイトを酸化ストレスから救助すること、ならびにNMDA誘発性急性神経変性のマウスモデルにおいて保護的であることが示された(Fischer et al., 2011, PLoS One 6, e27621; Maier et al., 2013, Biochem. Biophys. Res. Commun. 440, 336-341; Fischer et al., 2018, Arthritis Reumatol. 70, 722-735; Dong et al., 2016, PNAS 113, 12304-12309)。
【0011】
最近、本発明者らは、TNFスーパーファミリーの一本鎖メンバーの安定性が、3つのサブユニット間のリンカーを短縮し、サブユニット配列を最小のTHDドメインに縮小することによって改善され得ることを実証した(WO 2016/146818)。
【0012】
本発明者らは、scTNFにこの戦略(すなわち、第1/第2ドメインのC末端と第2/第3ドメインのN末端との直接的な連結)を適用することにより、安定性はTHDドメインを位置(84-233)に短縮することによって向上するが、さらなる縮小(86-233)は安定性を低下させたことを見出した。互いに直接連結されたaa84-233によって形成されるTHDを有するscTNF誘導体は、動的光散乱法によって決定された熱安定性の10℃の上昇を示したが、約6倍の生理活性の低下を示した。本発明によって、驚くべきことに、リンカーを伴わずに直接連結された3つのTHD(aa80-233)または4アミノ酸リンカー(GGGG;配列番号16)で連結された3つの短縮されたTHD(aa85-233)のいずれかで構成された分子について、GGGGS(配列番号26)リンカーで連結された3つのTHD(aa80-233)で構成された参照scTNF分子と比較して、生理活性の完全な保持下で熱安定性の上昇(67℃対62℃)が観察されたことが示された。
【発明の概要】
【0013】
第1の態様において、本発明は、TNFR2の細胞外部分に特異的に結合するTNFリガンドファミリーメンバータンパク質の3つのペプチドTNFホモロジードメイン(THD)からなる結合ドメインを含むポリペプチドを提供し、ここで、第1および第2のTHDのC末端(これは、それぞれの場合においてC末端コンセンサス配列V-F/Y-F-G-A/I-X1(配列番号1)によって規定される)は、第2および第3のTHDのN末端(これは、それぞれの場合においてN末端コンセンサス配列P-V/A-A-H-V/L(配列番号2)によって規定される)にペプチドXa(これは、それぞれの場合において独立して選択され、9~12アミノ酸、好ましくは9~11、より好ましくは9~10の長さを有する)を介してそれぞれ連結しており、好ましくはXaはアミノ酸配列S-S-R-T-P-S-D-K(配列番号10)を含まず;X1は非極性/疎水性または極性/中性アミノ酸であり、好ましくはFおよびIからなる群から選択される。
【0014】
第2の態様において、本発明は、以下である本発明の第1の態様に記載の少なくとも2つのポリペプチドを含むポリペプチド多量体を提供する、
(a)ともに連結されており、1~30アミノ酸、好ましくは7~15アミノ酸の長さを有するアミノ酸リンカーによって好ましくはともに連結されているか;または
(b)(好ましくは、多量体化ドメイン、血清タンパク質、サイトカイン、ターゲティング部分または毒素からなる群から選択される)タンパク質、好ましくは多量体化ドメインに連結されている;
ここで任意で、前記ポリペプチドは、1~30アミノ酸、好ましくは7~15アミノ酸の長さを有するアミノ酸リンカーによって前記タンパク質に連結されている。
【0015】
第3の態様において、本発明は、本発明の第1の態様に記載のポリペプチドまたは本発明の第2の態様に記載のポリペプチド多量体をコードする核酸分子を提供する。
【0016】
第4の態様において、本発明は、本発明の第3の態様に記載の核酸分子をコードするベクターを提供する。
【0017】
第5の態様において、本発明は、医薬としての使用のための、本発明の第1の態様に記載のポリペプチド、本発明の第2の態様に記載のポリペプチド多量体、本発明の第3の態様に記載の核酸、または本発明の第4の態様に記載のベクターを提供する。
【0018】
第6の態様において、本発明は、本発明の第1の態様に記載のポリペプチド、本発明の第2の態様に記載のポリペプチド多量体、本発明の第3の態様に記載の核酸、または本発明の第4の態様に記載のベクターを活性物質として含む医薬組成物を提供する。
【0019】
第7の態様において、本発明は、過剰増殖性障害または炎症性障害(好ましくは、がんまたは血液系の悪性腫瘍)、自己免疫障害および代謝性疾患、循環器疾患、神経障害性疾患、ならびに神経傷害の診断、予防または処置における使用のための、本発明の第1の態様に記載のポリペプチド、本発明の第2の態様に記載のポリペプチド多量体、本発明の第3の態様に記載の核酸、本発明の第4の態様に記載のベクター、または本発明の第5の態様に記載の医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下において本明細書に含まれる図面の内容を記載する。この文脈では、上記および/または下記の発明の詳細な説明も参照のこと。
【0021】
【
図1】本発明のscTNF
R2変異体タンパク質およびその二量体化した複合体の模式的な表現。(A)scTNF
R2およびその二量体複合体scTNF
R2-Fcの模式的なポリペプチド鎖。TNF
R2サブユニットをペプチドリンカーL1を伴って、またはペプチドリンカーを伴わずに遺伝的に融合させ、scTNF
R2を得た。二量体化ドメインFcを、ペプチドリンカーL2を用いてscTNF
R2のC末端に遺伝的に融合させた。(B)scTNF
R2およびscTNF
R2-Fcの三次/四次構造の模式図。(C)(1)ポリペプチドおよび(3)~(6)ポリペプチド多量体の例の実施態様の模式図。任意で、ポリペプチドはさらなるモジュール2を含み(6)、これは例えば臓器もしくは組織特異的な送達および/または組織関門(血液脳関門など)を介した輸送を可能にする。(2)はリンカーポリペプチドX
aの模式図を示す。(D)上段のパネル:本発明による例示的なポリペプチド(127、139および138)および参照ポリペプチド。下段のパネル:本発明の例示的なポリペプチド多量体(742、744)および参照ポリペプチド多量体。
【0022】
【
図2】本発明のscTNF
R2変異体タンパク質およびその二量体化した複合体の比較SDS-PAGE分析。融合タンパク質をHEK293-6E細胞において産生させ、アフィニティークロマトグラフィーによって精製した。(A)scTNF
R2変異体を非還元条件下および還元条件下において12%SDS-PAGEで分離し、クーマシーで染色した。1、scTNF
R2(118);2、scTNF
R2(127);3、scTNF
R2(129);4、scTNF
R2(130);5、scTNF
R2(131);6、scTNF
R2(138);7、scTNF
R2(139)、M、分子量マーカー。(B)ScTNF
R2-Fc(Δab)複合体を非還元条件下および還元条件下において10%SDS-PAGEで分離し、クーマシーで染色した。1、scTNF
R2(127)-Fc(Δab)742;2、scTNF
R2(129)-Fc(Δab)743;3、scTNF
R2(139)-Fc(Δab)744;4、scTNF
R2(118)-Fc(Δab)745;M、分子量マーカー。
【0023】
【
図3】本発明のscTNF
R2変異体およびその二量体化した複合体の天然構造。タンパク質を、SuperSW mAb HR、7.8×300mmカラム(Tosoh Bioscience)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。使用した標準タンパク質の位置を図に示す。
【0024】
【
図4】本発明のscTNF
R2変異体およびその二量体化した複合体の熱安定性。タンパク質を、動的光散乱法によってその変性温度について分析した。検出された融点(凝集点)を点線で示す。
【0025】
【
図5】Kym-1細胞に対するscTNF
R2変異体のインビトロでの生理活性。ScTNF
R2変異体を、Kym-1細胞に対する生理活性について細胞死誘導に関して分析した。機構的には、scTNF
R2変異体によるTNFR2の活性化(これは抗体80M2によるTNFR2の架橋を必要とする)は三量体TNFの発現をもたらし、これは次にTNFR1の活性化を介してアポトーシスによる細胞死を誘導する。Kym-1細胞を段階希釈および精製されたscTNF
R2の存在下で24時間培養し、次いでクリスタルバイオレット染色を用いて細胞生存率を測定した。さらに、scTNF
R2変異体とともにインキュベートする前に、Kym-1細胞上のTNF受容体2分子を80M2抗体(1μg/ml)で架橋した(n=1)。
【0026】
【
図6】scTNF
R2-Fc(Δab)複合体のTNF-R2への結合。scTNF
R2-Fc(Δab)複合体のTNF-R2-Fc(エタネルセプト)への結合をELISAで試験した。比較のために、最先端の分子であるscTNF
R2-Fc(Δab)745の結合曲線を、本発明のタンパク質であるscTNF
R2-Fc(Δab)742、743および744と組み合わせて個々の図にプロットした(平均値±S.D.、n=3)。
【0027】
【
図7】MEF-TNF-R2に対するscTNF
R2-Fc(Δab)複合体のTNF-R2選択的な結合。ヒトTNF-R2(MEF-TNF-R2)またはヒトTNF-R1(MEF-TNF-R1)のいずれかを安定に遺伝子導入したマウス胎仔線維芽細胞を、scTNF
R2-Fc(Δab)複合体の結合についてフローサイトメトリーによって試験した。scTNF
R2-Fc(Δab)複合体はMEF-TNF-R2に選択的に結合し、MEF-TNF-R1への結合は検出できなかった(n=1)。
【0028】
【
図8】Kym-1細胞に対するscTNF
R2-Fc(Δab)複合体のインビトロでの生理活性。scTNF
R2-Fc(Δab)複合体のインビトロでの生理活性を、Kym-1細胞に対して分析した。細胞を段階希釈および精製されたscTNF
R2-Fc(Δab)複合体の存在下で24時間培養し、次いでクリスタルバイオレット染色を用いて細胞生存率を測定した(平均値±S.D.、n=3)。
【0029】
【
図9】scTNF
R2-Fc(Δab)複合体によるNF-κBの活性化。scTNF
R2-Fc(Δab)複合体によるインビトロでのNF-κB活性化を、ヒトTNF受容体2を安定に遺伝子導入したHeLa細胞(HeLa-TNF-R2)においてルシフェラーゼレポーターアッセイを用いて分析した。実験および対照のレポータープラスミドでの遺伝子導入の16時間後に、連続的に滴定したscTNF
R2-Fc(Δab)複合体を用いて細胞を6時間刺激し、次いで細胞を溶解してルシフェラーゼ活性を測定した(平均値±S.D.、n=4)。
【0030】
【
図10】ヒト血漿中におけるscTNF
R2-Fc(Δab)複合体の安定性。37℃の50%ヒト血漿中での0日間(対照)、3日間または8日間のインキュベーション後のscTNF
R2-Fc(Δab)複合体の完全性を、フローサイトメトリーにおいてHeLa-TNF-R2細胞に結合する能力によって試験した。無傷のタンパク質の割合(平均値±S.D.、n=4)を、インキュベートしていない対照(100%)に正規化したEC
50値の逆数から算出した。統計解析を、二元配置分散分析およびダネットの事後検定によって行った。結果を、****p<0.0001;***p<0.001;**p<0.01;*p<0.05;n.s.=有意差なしとしてまとめた。
【0031】
【
図11】実施例11のscTNF
R2バリアントの比較SDS-PAGE分析。融合タンパク質をHEK293-6E細胞において産生させ、アフィニティークロマトグラフィーによって精製した。ScTNF
R2変異体を非還元条件下(B)および還元条件下(A)において10%SDS-PAGEで分離し、クーマシーで染色した。M、分子量マーカー。
【0032】
【
図12】実施例11のscTNF
R2-Fcタンパク質の比較SDS-PAGE分析。融合タンパク質をHEK293-6E細胞において産生させ、アフィニティークロマトグラフィーによって精製した。ScTNF
R2-Fc変異体を非還元条件下および還元条件下において10%SDS-PAGEで分離し、クーマシーで染色した。M、分子量マーカー。
【0033】
【
図13】実施例11のscTNF
R2-Fcタンパク質の天然構造。タンパク質を、SuperSW mAb HR、7.8×300mmカラム(Tosoh Bioscience)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。使用した標準タンパク質の位置を図に示す。
【0034】
【
図14】実施例11のscTNF
R2バリアントの熱安定性。タンパク質を、動的光散乱法によってその変性温度について分析した。検出された融点(凝集点)を点線で示す(n=2)。
【0035】
【
図15】実施例11の二量体scTNF
R2-Fcタンパク質の熱安定性。タンパク質を、動的光散乱法によってその変性温度について分析した。検出された融点(凝集点)を点線で示す(n=1)。
【0036】
【
図16】実施例11のscTNF
R2バリアントのTNF-R2への結合。scTNF
R2変異体タンパク質のTNF-R2-Fc(エタネルセプト)への結合をELISAで試験した(平均値±技術的重複の範囲、n=1)。
【0037】
【
図17】実施例11のscTNF
R2-Fcタンパク質のTNF-R2への結合。scTNF
R2-Fc変異体タンパク質のTNF-R2-Fc(エタネルセプト)への結合をELISAで試験した(平均値±技術的重複の範囲、n=1-2)。
【0038】
【
図18】Kym-1細胞に対する実施例11のscTNF
R2バリアントのインビトロでの生理活性。scTNF
R2変異体を、Kym-1細胞に対する生理活性について細胞死誘導に関して分析した。機構的には、scTNF
R2変異体によるTNFR2の活性化(これは抗体80M2によるTNFR2の架橋を必要とする)は三量体TNFの発現をもたらし、これは次にTNFR1の活性化を介してアポトーシスによる細胞死を誘導する。Kym-1細胞を段階希釈および精製されたscTNF
R2の存在下で24時間培養し、次いでクリスタルバイオレット染色を用いて細胞生存率を測定した。さらに、scTNF
R2変異体とともにインキュベートする前に、Kym-1細胞上のTNF受容体2分子を80M2抗体(1μg/ml)で架橋した(n=3-8±SD)。
【0039】
【
図19】Kym-1細胞に対する実施例11の二量体scTNF
R2-Fcタンパク質のインビトロでの生理活性。scTNF
R2Fc変異体を、Kym-1細胞に対する生理活性について細胞死誘導に関して分析した。機構的には、scTNF
R2-Fc変異体によるTNFR2の活性化は三量体TNFの発現をもたらし、これは次にTNFR1の活性化を介してアポトーシスによる細胞死を誘導する。Kym-1細胞を段階希釈および精製されたscTNF
R2の存在下で24時間培養し、次いでクリスタルバイオレット染色を用いて細胞生存率を測定した。さらに、scTNF
R2変異体とともにインキュベートする前に、Kym-1細胞上のTNF受容体2分子を80M2抗体(1μg/ml)で架橋した(n=3-4±SD)。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明を以下で詳細に説明する前に、本発明は本明細書に記載の特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されるものではなく、これらは様々であり得ることが理解されるはずである。また、本明細書において使用される用語は特定の実施態様のみを説明するためのものであり、本発明の範囲を限定することは意図されておらず、これは添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが理解されるはずである。特に定義されていない限り、本明細書において使用されるあらゆる技術用語および科学用語は、当業者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。
【0041】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)", Leuenberger, H.G.W, Nagel, B. and Klbl, H. eds. (1995), Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerlandに記載されているように定義される。
【0042】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲のあらゆる箇所において、文脈が他を必要としない限り、単語「含む」および「含んでいる」などの変化形は、記載された整数もしくは工程または整数もしくは工程の群の包含を意味するが、あらゆる他の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群の除外を意味しないことが理解される。以下の章では、本発明の種々の態様がより詳細に規定されている。このように規定された各態様は、明確に反対に示されていない限り、あらゆる他の態様と組み合わされ得る。特に、任意である、好ましい、または有利であると示されている特徴は、任意である、好ましい、または有利であると示されているあらゆる他の特徴と組み合わされ得る。
【0043】
いくつかの文書が、本明細書の文章のあらゆる箇所で引用されている。本明細書で引用されている各文書(あらゆる特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、説明書などを含む)は、上記または下記にかかわらず、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる記載も、本発明が先行発明によるこのような開示に先行する権利を有しないことを承認するものと解釈されるべきではない。本明細書で引用されている文書のいくつかは、「参照によって組み込まれる」として特徴付けられている。そのような組み込まれた参考文献の定義または教示と、本明細書に記載の定義または教示との間で矛盾がある場合には、本明細書の文章が優先される。
【0044】
以下では、本発明の要素が説明されている。これらの要素は、具体的な実施態様とともに記載されている;しかし、これらはさらなる実施態様を作成するために任意の様式および任意の数で組み合わされ得ることが理解されるはずである。様々に記載された実施例および好ましい実施態様は、本発明を明示的に記載された実施態様のみに限定するように解釈されるべきではない。この記載は、明示的に記載された実施態様に任意の数の開示された要素および/または好ましい要素を組み合わせた実施態様を支持および包含するように理解されるべきである。さらに、本願の記載されたあらゆる要素の任意の順列および組合せが、文脈が他を示していない限り、本願の記載によって開示されているとみなされるべきである。
【0045】
定義
以下では、本明細書で頻繁に使用される用語のいくつかの定義を示す。これらの用語は、その使用の各場合において、本明細書の残りの部分ではそれぞれ定義された意味および好ましい意味を有する。
【0046】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が明らかに他を指示していない限り、複数の指示対象を含む。
【0047】
数値に関連して使用される場合、用語「約」は、示された数値よりも5%小さい下限を有し、示された数値よりも5%大きい上限を有する範囲内の数値を包含することを意味する。
【0048】
本発明の文脈において、用語「ペプチド」は、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸の短いポリマーを指す。ペプチドはタンパク質と同一の化学(ペプチド)結合を有するが、一般に長さがより短い。最も短いペプチドは、ペプチド結合によって結合した2つのアミノ酸からなるジペプチドである。トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチドなども存在し得る。ペプチドは環状ペプチドでない限り、アミノ末端およびカルボキシ末端を有する。本発明で使用可能なペプチド(ペプチド誘導体、ペプチドバリアント、ペプチドフラグメント、ペプチドセグメント、ペプチドエピトープ、およびペプチドドメインを含む)は、化学修飾によってさらに修飾され得る。これは、そのような化学修飾されたペプチドが、天然に存在する20種のタンパク質を構成するアミノ酸以外の他の化学基を含み得ることを意味する。そのような他の化学基の例として、限定されないが、グリコシル化されたアミノ酸およびリン酸化されたアミノ酸が含まれる。ペプチドの化学修飾は、親ペプチドと比較して有利な特性(例えば、安定性の増強、生物学的半減期の上昇、または溶解性の上昇のうち1つ以上)を与え得る。
【0049】
用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合で連結したアミノ酸の任意のポリマーを指す。ポリペプチドは単一鎖であり得、または共有結合(例えばジスルフィド結合)および/または非共有結合によって結合している2以上の鎖で構成され得る。得られる化学物質(例えば、成分Bに連結させた成分A)の活性が完全に失われない限り、ペプチド結合または側鎖残基の修飾が可能である。この用語は、ポリペプチドの長さを限定するものとして解釈されない。
【0050】
本明細書の文脈で使用される用語「タンパク質」は、二次構造および三次構造をとる1以上のポリペプチドを含む分子を指し、さらに、いくつかのポリペプチド(すなわちいくつかのサブユニット)から構成され、四次構造を形成するタンパク質を指す。タンパク質は非ペプチド性の基が結合している場合があり、これは補欠分子族または補因子と呼ばれ得る。
【0051】
本発明の文脈中で記載される用語「C末端」(カルボキシル末端、カルボキシ末端、C末端鎖、C末端またはCOOH末端としても知られている)は、遊離のカルボキシ基(-COOH)によって終結しているアミノ酸鎖(タンパク質またはポリペプチド)の末端である。タンパク質がメッセンジャーRNAから翻訳される場合、N末端からC末端に作成される。用語「N末端」(アミノ末端、NH2末端、N末端またはアミン末端としても知られている)は、遊離のアミン基(-NH2)を有するアミノ酸によって終結しているタンパク質またはポリペプチドの開始点を指す。ペプチド配列を記載するための慣例は、N末端を左に配置し、N末端からC末端に配列を記載することである。
【0052】
本明細書における用語「TNFリガンドファミリーメンバータンパク質のTNFホモロジードメイン」(THD)は、すべての腫瘍壊死因子(TNF、以前はTNFαまたはTNFアルファとして知られていた)リガンドファミリーメンバーによって共有されるタンパク質ドメインを指す。相同性は、共通の祖先からの進化系統を意味する。ホモロジードメインは、タンパク質鎖の他の部分とは独立に進化、機能および存在し得る所定のタンパク質の配列および(三次)構造の保存された部分である。これは、特定のタンパク質ファミリーのすべてのメンバーによって共有される構造的特徴である。各ドメインは小型の三次元構造を形成し、多くの場合、独立して安定であり得、フォールドし得、生物活性に重要であり得る。本発明の意味におけるTHDのC末端はC末端コンセンサス配列:V-F/Y-F-G-A/I-X1(配列番号1)によって規定され、N末端はN末端コンセンサス配列:P-V/A-A-H-V/L(配列番号2)によって規定され、ここでX1は非極性/疎水性または極性/中性アミノ酸であり、好ましくはFおよびIからなる群から選択される。所定のTNFリガンドファミリーメンバータンパク質の配列に基づいて、上記で規定されたC末端およびN末端ホモロジー配列を用いて、当業者は所定のTNFリガンドファミリーメンバータンパク質についてTHDを決定し得る。TNFファミリーのメンバーの間で個々のTHDの位置および長さは大幅に異なるが、適切なソフトウェアツールを用いた多重配列アラインメントによって同定される保存されたアミノ酸残基の存在によって規定され得る(Bodmer et al., 2002)。さらに重要なことに、結晶構造は(例えばTNFファミリーリガンドのホモ三量体化に関与する)アミノ酸残基間の別個の相互作用を明らかにし得る。このような種類の情報は、Bodmer et al., 2002に記載されているTNFスーパーファミリーの所定のメンバーのTHDを改善するのに有用であり得る。さらに、設計されたタンパク質バリアントのタンパク質溶解性または生理活性(受容体の結合および活性化など)などの機能的な側面は、個々のTHDの重要なアミノ酸残基または最小の長さに関する重要なヒントを提供し得る。THDという用語は、天然に存在するTNFリガンドファミリーメンバータンパク質の配列に基づくポリペプチドおよび各TNFリガンドファミリーメンバーの受容体に特異的に結合する能力を保持するそのバリアントを含む。好ましくは、そのようなTHDバリアントは野生型THDの少なくとも50%の親和性を有し、より好ましくは少なくとも60%、70%、80%、90%、および最も好ましくは少なくとも99%の親和性を有する。
【0053】
TNFリガンドファミリーメンバータンパク質は、(例えば、プログラム細胞死(アポトーシス)、分化、細胞生存および免疫制御を引き起こし得る)一群の多機能性サイトカインを含む。TNFは特定の受容体によって認識され、腫瘍退縮、敗血症性ショックおよび悪液質に関連づけられる単球由来のサイトカインである。TNFリガンドファミリーの一部として、配列、機能および構造の類似性に基づいて19種のタンパク質が同定されている。これらのサイトカインはすべて、特定の受容体によって認識されるホモ三量体(またはLTアルファ/ベータの場合にはヘテロ三量体)複合体を形成するようである。以下のタンパク質はTNFリガンドファミリーのメンバーである:アポトーシスを誘導するサイトカインであるTNF関連アポトーシス誘発リガンド(TRAIL;TNFSF10);B細胞の発生および活性化に重要であると考えられているサイトカインであるCD40L(TNFSF5=腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー5);共刺激されたT細胞の増殖を誘導し、細胞溶解性T細胞の生成を増強するT細胞活性化において役割を果たすサイトカインであるCD27L(TNFSF7);T細胞の増殖を誘導するサイトカインであるCD30L(TNFSF8);細胞死に関与する細胞表面タンパク質であるFasL(TNFSF6);T細胞の刺激に寄与する誘導性T細胞表面分子である4-1BBL(TNFSF9);T細胞増殖およびサイトカイン産生を共刺激する細胞表面タンパク質であるOX40L(TNFSF4);抗増殖活性を有し、免疫制御に重要な役割を果たすタンパク質であるLTA(TNFSF1)。TNFリガンドファミリーメンバーのさらなるメンバーには、EDA;LTB(TNFSF3);CD153(TNFSF8);RANKL(TNFSF11);TWEAK(TNFSF12);APRIL(TNFSF13);BAFF(TNFSF13B);LIGHT(TNFSF14);VEGI(TNFSF15);GITRL(TNFSF18)が含まれる。TNFリガンドファミリーメンバーの配列に関するさらなる情報は、例えばGenbankなどの公的にアクセス可能なデータベースから取得され得る。TNFリガンドファミリーメンバーは同族の受容体と相互作用する(例えば、TNFとTNFR1およびTNFR2、TRAILとTRAILR1(DR4)、TRAILR2(DR5)、TRAILR3(DcR1)、TRAILR4(DcR2)およびOPG)。リガンドは、各受容体のオリゴマー化および活性化を媒介する。TNF受容体ファミリーのメンバーとそのリガンドとの相互作用は、TNFおよびTNFリガンドファミリーの他のメンバーの生物学的活性型であるTNFリガンドファミリーメンバータンパク質ホモ三量体の3つのTNFリガンドファミリーメンバータンパク質単量体のうち2つの間の空間における受容体の結合によって特徴付けられる。
【0054】
本明細書中で使用される用語「コンセンサス配列」は、2以上の配列間の配列アラインメントにおいて各位置に見出される(ヌクレオチドまたはアミノ酸のいずれかの)最も頻度の高い残基の計算された順序を指す。これは、関連する配列を互いに比較し、類似の配列モチーフを計算する多重配列アラインメントの結果を表す。保存された配列モチーフはコンセンサス配列として示され、これは同一のアミノ酸(すなわち、比較された配列間で同一のアミノ酸)、保存されたアミノ酸(すなわち、比較されたアミノ酸配列間で変動しているが、すべてのアミノ酸が特定の機能的または構造的なアミノ酸の群(例えば極性または中性)に属しているアミノ酸)、および可変アミノ酸(すなわち、比較された配列間で明らかな関連性を示さないアミノ酸)を示している。
【0055】
THDのC末端およびN末端のコンセンサス配列は、それぞれTNFリガンドファミリーメンバーの配列内に位置し、TNFリガンドファミリーメンバー間で特に保存されている配列である。これらの配列は、三量体化に関与するTNFリガンドファミリーメンバーの部分を表している。したがって、2つのコンセンサス配列は、他のTNFリガンドファミリーメンバーには存在しない場合がある追加のN末端またはC末端アミノ酸を含み得る所定のTNFリガンドファミリーメンバー内のC末端およびN末端の基準点として役立つ。したがって、コンセンサス配列の使用は、本発明のポリペプチドに存在するTNFリガンドファミリーメンバーのフラグメントのN末端およびC末端として特定の位置を参照することなく、種々のTNFリガンドファミリーメンバーの同一の領域を参照することを可能にする。
【0056】
本明細書における用語「多量体化ドメイン」は、本発明の少なくとも2つの同一または異なるタンパク質またはポリペプチド分子(単量体)間の近接近を媒介し、したがって非共有結合または共有結合によって結合した構造的に類似または異なる複数の単量体の多量化を可能にするタンパク質-タンパク質相互作用を可能にするタンパク質またはポリペプチド、タンパク質またはポリペプチドのフラグメントまたは一部を指す。多量体化は、共有結合または非共有結合している複数の高分子(タンパク質など)によって形成された高分子複合体の形成をもたらす。本発明の2つ、3つまたは4つのポリペプチド分子の多量体化を可能にする多量体化ドメインは、それぞれ二量体化、三量体化または四量体化ドメインと呼ばれる。
【0057】
本発明の文脈における「アミノ酸リンカー」は、複合体の2つの部分または成分(例えばポリペプチドおよび多量体化ドメイン)を立体的に分離するアミノ酸配列を指す。通常、このようなリンカーは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30アミノ酸の最小長を有し、少なくとも100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、または15アミノ酸またはそれ以下の最大長を有する1~100アミノ酸からなる。本発明におけるペプチドリンカーの示されている好ましい最小長および最大長は、そのような組合せが数学的に意味をなす場合に組み合わされ得、例えばそのようなリンカーは1~15、1~30、1~60、6~30、7~15、12~40または25~75または1~100アミノ酸からなり得る。アミノ酸リンカーはまた、連結している2つのタンパク質間に柔軟性を与え得る。このような柔軟性は一般にアミノ酸が小さい場合に増大する。したがって、柔軟なアミノ酸リンカーは、小型のアミノ酸(特にグリシンおよび/またはアラニン)および/または親水性アミノ酸(セリン、スレオニン、アスパラギンおよびグルタミンなど)の含有量の増加を含む。好ましくは、ペプチドリンカーのアミノ酸の20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれ以上が小型のアミノ酸である。アミノ酸リンカーはまた、Nグリコシル化コンセンサス配列を含み得る。アミノ酸リンカーのグリコシル化は、そのリンカーの安定性を上昇させることが知られている(Imperialia and O’Connor, Curr Opin Chem Biol. 1999 Dec;3(6):643-9)。好ましくは、コンセンサス配列はAsn-X-Ser/ThrまたはAsn-X-Cysであり、ここでXはいずれの場合においてもProを除く任意のアミノ酸であり、より好ましくはコンセンサス配列はAsn-X-Ser/Thrである。本発明のポリペプチド多量体に使用され得るさらなるアミノ酸リンカーが当分野で公知である。そのような適切なリンカーは、Chen et al(Adv Drug Deliv Rev. 2013 Oct; 65(10):1357-69)およびKlein et al(Protein Eng Des Sel. 2014 Oct;27(10):325-30)において見出され得る。
【0058】
本発明の文脈において、用語「半減期延長ドメイン」は、薬学的に活性な部分の血清/血漿半減期を延長する結合部分を指す(すなわち、半減期延長ドメインの一部である場合、薬学的に活性な部分は延長された血清/血漿半減期を示す)。結合部分は、限定されないが、ポリペプチドまたはタンパク質であり得る。
【0059】
本発明における用語「標的」または「標的分子」は、他の分子が特定の結合親和性を有するか、または他の分子が特異的に結合する天然に存在する細胞構造または分子構造を指す。「特異的に結合する」とは、結合部分(例えば、本発明のポリペプチドもしくはポリペプチド多量体、または抗体)が、第2の標的の解離定数(Kd)よりも低い解離定数で第1の標的に結合する場合に、別の標的との結合と比較して特異的であるように標的(受容体またはエピトープなど)により強く結合することを意味する。標的はその標的に特定の親和性で結合するリガンドによって認識され得、したがって各標的に結合するリガンドが生物学的効果をもたらす。好ましくは、結合部分が特異的に結合する標的の解離定数(Kd)は、結合部分が特異的に結合しない標的の解離定数(Kd)よりも10倍を超えて、好ましくは20倍を超えて、より好ましくは50倍を超えて、さらにより好ましくは100倍、200倍、500倍、1000倍、5000倍または10.000倍を超えて低い。
【0060】
本明細書において、(「M」と省略されることがある「mol/L」において測定される)用語「Kd」は、結合部分(例えば本発明のポリペプチドまたはポリペプチド多量体)と標的分子(例えば受容体)との間の特定の相互作用の解離平衡定数を指すことが意図される。そのような親和性は好ましくは37℃で測定される。適切なアッセイには、表面プラズモン共鳴測定(例えばBiacore)、水晶振動子マイクロバランス測定(例えばAttana)、バイオレイヤー干渉法(例えばOctet)および競合アッセイが含まれる。
【0061】
本明細書において、用語「バリアント」は、その長さまたは配列における1以上の変化によって、由来するペプチドまたはタンパク質と比較して異なるペプチドまたはタンパク質として理解されるべきである。タンパク質バリアントが由来するポリペプチドは、親ポリペプチドとしても知られる。用語「バリアント」は、親分子の「フラグメント」または「誘導体」を含む。通常、「フラグメント」は親分子よりも長さまたはサイズが小さく、「誘導体」は親分子と比較して配列において1以上の差異を示す。また、親タンパク質の翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、ビオチン化、リン酸化、ユビキチン化、パルミトイル化、またはタンパク質分解)も包含される。通常、バリアントは人工的に(好ましくは遺伝子技術の手段によって)作成されるが、親ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは野生型タンパク質またはポリヌクレオチドである。しかし、天然に存在するバリアントもまた、本明細書における用語「バリアント」に包含されることが理解されるはずである。さらに、本発明において使用可能なバリアントは、バリアントが親分子の少なくとも1つの生物活性を示す(すなわち機能的に活性である)場合、親分子のホモログ、オルソログもしくはパラログ、または人工的に作製されたバリアントに由来し得る。
【0062】
通常、用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリンスーパーファミリーに属する糖タンパク質、またはその抗原結合部分を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHまたはVHと略される)および重鎖定常領域(本明細書ではCHまたはCHと略される)から構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2およびCH3(またはCH1、CH2およびCH3)と呼ばれる3つの部分にさらに細分され得る。Fc(フラグメント結晶化可能)領域は2つの重鎖定常領域を含み、Fab(フラグメント、抗原結合)領域は抗体の各重鎖および軽鎖から1つの定常ドメインおよび1つの可変ドメインを含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLまたはVLと略される)および軽鎖定常領域(本明細書ではCLまたはCLと略される)から構成される。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存されている領域が散在している相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分され得る。各VHおよびVLは3つのCDRおよび4つのFRから構成され、これらはアミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの宿主組織または因子(免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(C1q)を含む)への結合を媒介し得る。
【0063】
本明細書における用語「抗体フラグメント」は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上のフラグメントを指す。用語「抗体フラグメント」に包含される結合フラグメントの例には、抗原結合フラグメント(Fab)フラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、重鎖抗体、単一ドメイン抗体(sdAb)、単鎖可変フラグメント(scFv)、可変フラグメント(Fv)、VHドメイン、VLドメイン、単一ドメイン抗体、ナノボディ、IgNAR(免疫グロブリン新規抗原受容体)、di-scFv、二重特異性T細胞誘導抗体(BITE)、二重親和性再標的(DART)分子、トリプルボディ、代替スキャフォールドタンパク質、およびそれらの融合タンパク質が含まれる。
【0064】
用語「VL領域」および「VH領域」は、抗体のVL領域およびVH領域(すなわち、それぞれ免疫グロブリンの軽鎖のN末端可変領域および免疫グロブリンの重鎖のN末端可変領域)を指す。個々のVL領域およびVH領域は、3つの超可変領域(相補的決定領域(CDR)1、CDR2およびCDR3)および4つのフレームワーク領域(フレームワーク(FR)領域1、FR2、FR3、FR4)からそれぞれ構成されている。所定の配列内の各サブ領域を特定することは当分野で通例であり、例えばNCBIのIgBlastによって達成され得る。重鎖および軽鎖の可変領域は、共に抗体の結合領域を形成する。免疫グロブリンではVL領域およびVH領域は異なるポリペプチド鎖上に位置しているが、組換え抗体誘導体では同じ鎖上に位置し得る。VL領域とVH領域の相互作用は、本発明のポリペプチドが各標的抗原と相互作用することを可能にする。
【0065】
本明細書中で使用される用語「二重特異性抗体」は、異なる抗原に結合し得る融合タンパク質または二価抗体を指す。二重特異性抗体は、抗体のフラグメント(すなわち可変フラグメント)を含む2つの単一のタンパク質鎖から構成される。二重特異性抗体は、同じポリペプチド鎖上の軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH-VLまたはVL-VH)。2つの可変ドメインを連結する短いペプチドを使用することによって、ドメインは別の鎖の相補的なドメインと対形成せざるを得ず、したがって2つの抗原結合部位を作成する。二重特異性抗体は、同一の抗原(単一特異性)または異なる抗原(二重特異性)を標的とし得る。
【0066】
本明細書中で使用される用語「核酸」は、あらゆる公知の形態の生命に重要なポリマーもしくはオリゴマー高分子または巨大な生体分子を含む。DNA(デオキシリボ核酸)およびRNA(リボ核酸)を含む核酸は、ヌクレオチドとして知られる単量体から作られる。天然に存在するDNA分子のほとんどは、二重らせんを形成するように互いに巻き付いている2つの相補的なバイオポリマー鎖からなる。DNA鎖は、ヌクレオチドからなるポリヌクレオチドとしても知られている。各ヌクレオチドは、窒素を含む核酸塩基ならびにデオキシリボースまたはリボースと呼ばれる単糖およびリン酸基から構成される。天然に存在する核酸塩基には、グアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)、ウラシル(U)、またはシトシン(C)が含まれる。ヌクレオチドは、あるヌクレオチドの糖と次のヌクレオチドのリン酸との間の共有結合により鎖内で互いに結合しており、これは交互に繰り返される糖-リン酸骨格をもたらす。糖がデオキシリボースである場合、ポリマーはDNAである。糖がリボースである場合、ポリマーはRNAである。通常、ポリヌクレオチドは、個々のヌクレオチド単量体間のホスホジエステル結合によって形成される。本発明の文脈において、用語「核酸」は、限定されないが、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、およびそれらの混合物(例えば、(1つの鎖内における)RNA-DNAハイブリッドなど)、ならびにcDNA、ゲノムDNA、組換えDNA、cRNAおよびmRNAを含む。核酸は遺伝子全体またはその一部からなり得、核酸はmiRNA、siRNAまたはpiRNAであり得る。
【0067】
本明細書中で使用される用語「ベクター」は発現コンストラクトとも呼ばれ、通常、細胞中でのタンパク質発現のために設計されたプラスミドまたはウイルスである。ベクターは特定の遺伝子を標的細胞に導入するために使用され、その遺伝子によってコードされるタンパク質を産生するためにタンパク質合成のための細胞の機構を使用し得る。発現ベクターは、エンハンサー領域およびプロモーター領域として機能し、発現ベクター上に保有された遺伝子の効率的な転写をもたらす制御配列を含むように設計される。うまく設計された発現ベクターの目的は、相当量の安定なメッセンジャーRNAおよびタンパク質の産生である。適切なベクターの例には、限定されないが、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルスまたは人工染色体が含まれる。
【0068】
本明細書において、用語「医薬組成物」は、組織の状態または疾患の同定、予防または処置のために使用される物質および/または物質の組合せを指す。医薬組成物は、疾患を予防および/または処置するために患者への投与に適切であるように製剤化される。さらに、医薬組成物は、治療用途に適した組成物を作成する活性物質と不活性または活性な担体との組合せを指す。医薬組成物は、その化学的および物理的特性に応じて、経口、非経口、局所、吸入、直腸、舌下、経皮、皮下または膣の適用経路のために製剤化され得る。医薬組成物には、固体、半固体、液体、経皮治療システム(TTS)が含まれる。固体組成物は、錠剤、コーティングされた錠剤、粉末、顆粒、ペレット、カプセル、発泡性錠剤または経皮治療システムからなる群から選択される。また、溶液、シロップ、輸液、抽出液、静脈内投与用溶液、注入用溶液、または本発明のキャリアシステムの溶液からなる群から選択される液体組成物も含まれる。本発明の文脈において使用され得る半固体組成物には、エマルジョン、懸濁液、クリーム、ローション、ゲル、グロビュール、バッカル錠および坐剤が含まれる。
【0069】
用語「活性物質」は、生物学的に活性な(すなわち、医薬的価値を与える)医薬組成物または製剤中の物質を指す。医薬組成物は、互いに組み合わせて、または独立に作用し得る1以上の活性物質を含み得る。活性物質は、中性または塩の形態として製剤化され得る。薬学的に許容され得る塩には、遊離アミノ基で形成される塩(塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸および酒石酸などに由来する塩など)および遊離カルボキシ基で形成される塩(限定されないが、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジンおよびプロカインなどに由来する塩など)が含まれる。
【0070】
用語「疾患」および「障害」は本明細書において互換的に使用され、異常状態(特に病気または傷害などの異常な病状)を指し、細胞、組織、臓器または個体はもはやその機能を効率的に果たすことができない。通常、必ずではないが、疾患は、そのような疾患の存在を示す特定の症状または徴候に関連している。したがって、そのような症状または徴候の存在は、疾患に罹患した細胞、組織、臓器または個体を示し得る。これらの症状または徴候の変化は、そのような疾患の進行を示し得る。疾患の進行は通常、疾患の「悪化」または「改善」を示し得るそのような症状または徴候の増加または減少によって特徴付けられる。疾患の「悪化」は、細胞、組織、臓器または個体/患者がその機能を効率的に果たす能力の減少によって特徴付けられ、疾患の「改善」は、細胞、組織、臓器または個体/患者がその機能を効率的に果たす能力の増加によって通常特徴付けられる。
【0071】
本願における用語「過剰増殖性障害」は、細胞の細胞分裂が正常組織と比較して増加している障害を指す。このような障害は、細胞の異常増殖(産生)(すなわち過剰産生)によって特徴付けられる。増殖性障害は腫瘍性疾患を含む。腫瘍性疾患は良性または悪性の腫瘍を含み得、悪性の腫瘍性疾患はがんと呼ばれる。過剰増殖性障害という用語には、がんおよび前がん性障害が含まれる。がんは、間葉系由来(すなわち結合組織(肉腫))および上皮組織(がん)の増殖性障害を含む。肉腫の一般的な例は、骨肉腫、軟骨肉腫、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、血管肉腫および線維肉腫、ならびに消化管の肉腫(GIST)である。がんの例は、皮膚、精巣、肝臓、消化管(食道、胃、膵臓および大腸など)、上咽頭、膀胱、子宮頸部、卵巣、尿道および膀胱のがん;前立腺および他の泌尿生殖器がん、肺、腎臓、内分泌系組織(甲状腺および下垂体など)、奇形がん、ならびに脳のがんである。血液系の悪性腫瘍は、リンパ腫または白血病に分類される。炎症は腫瘍周辺の微小環境を調整し、がん細胞の増殖、生存および移動に寄与し、悪性疾患を促進する可能性がある。
【0072】
炎症は原理的に、免疫細胞、血管および多数の分子メディエーターに関与する保護的な免疫血管反応である。炎症の目的は、細胞傷害の最初の原因を排除し、壊死細胞および元の傷害および炎症プロセスから損傷した組織を除去し、組織修復を開始することである。本発明の文脈において使用される用語「炎症性障害」は、生理的な炎症反応が身体に潜在的に有害な効果に変化している状況を指す。正常組織に損傷を引き起こす炎症性障害は、限定されないが、自己免疫障害および神経変性疾患を含む。
【0073】
本明細書中で使用される用語「代謝性障害」は、身体が生理機能を実行するために必要な物質を処理(すなわち代謝)する方法に影響を与える疾患または障害を指す。代謝性障害の例には、限定されないが、糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム、および循環器疾患が含まれる。
【0074】
本明細書で互換的に使用される用語「糖尿病」または「真性糖尿病」は、血液中の糖(グルコース)のレベルの上昇によって特徴付けられる疾患を指す。糖尿病は、インスリン(血糖を調節するために膵臓によって産生される化学物質)が少なすぎること、インスリンに対する抵抗性、またはその両方によって引き起こされ得る。好ましい実施態様において、糖尿病は2型糖尿病(すなわち、インスリンに対する抵抗性)である。
【0075】
本明細書中で使用される用語「肥満」は、対象が除脂肪体重に対して過剰な体脂肪を有する状態を指す。好ましい実施態様において、肥満は、30kg/m2を超えるBMI(肥満度指数)として定義される。
【0076】
本明細書中で使用される用語「メタボリックシンドローム」は、WHOによると、耐糖能異常、耐糖能障害(IGT)もしくは糖尿病(DM)、および/またはインスリン抵抗性を、以下に列挙される要素のうち2つ以上とともに有する個人において生じる:
1.動脈圧の上昇、すなわち≧140/90mmのHg
2.血漿トリグリセリドの上昇(≧150mg/dl)および/または低いHDL-C(男性では<35mg/dl、および女性では<39mg/dl)
3.中心性肥満(すなわち、ウエスト/ヒップ比(WHR)が男性では>0.9、および女性では>0.85)および/または肥満度指数(BMI)>30kg/m2
4.微量アルブミン尿、すなわち、尿中アルブミン排泄速度≧20μgm/分またはアルブミン/クレアチン比≧30μgm/mg。
【0077】
用語「循環器障害」、「循環器疾患」および/または「心血管疾患」は本明細書で互換的に使用され、本明細書で定義されるように、全身性(または本態性)高血圧、肺高血圧(例えば、肺動脈高血圧、新生児の肺高血圧)、うっ血性心不全、冠動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、血栓症、血管開存性が低下した状態(例えば、経皮経管冠動脈形成術後)、末梢血管疾患、(特に糖尿病とともに生じる)腎疾患、狭心症(安定狭心症、不安定狭心症、および異型(プリンツメタル)狭心症を含む)、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、混合型脂質異常症、および血流の改善が末端器官の機能の改善をもたらすあらゆる状態を含む。
【0078】
用語「神経変性疾患」は本明細書で互換的に使用され、本明細書で定義されるように、アルツハイマー病、HIV関連認知症、片頭痛、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、タウオパチー、ピック病、パーキンソン病、神経障害、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、ハンチントン病、球脊髄性筋萎縮症、フリートライヒ運動失調症、脊髄小脳失調症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群、致死性家族性不眠症、クールー、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、およびバッテン病、脊髄損傷、外傷性脳損傷、神経障害性疼痛、多発性硬化症、急性散在性脳脊髄炎、バロー病、シャルコー・マリー・トゥース病、ギラン・バレー症候群、HTLV-I関連脊髄症、視神経脊髄炎、視神経萎縮、非動脈炎性前部虚血性視神経症、シルダー病、横断性脊髄炎、横断性脊髄炎、脳卒中、てんかん、糖尿病性神経障害を含む。
【0079】
「EC50」値は、物質の50%効果濃度(half maximal effective concentration)を指し、したがって、ベースラインと特定の曝露時間後の最大値の中間の反応を誘導する前記物質の濃度の尺度である。したがって、段階的用量反応曲線のEC50は、最大効果の50%が観察される物質の濃度を表す。通常、本発明のポリペプチドおよびポリペプチド多量体は、50nM~1pM、より好ましくは10nM~10pM、さらにより好ましくは1nM~50pM(すなわち、50nM、10nM、1nM、900pM、800pM、700pM、600pM、500pM、400pM、300pM、200pM、100pM、50pM、または1pM)のTNFR2受容体への結合のEC50値を示す。
【0080】
「薬学的に許容され得る」とは、連邦政府もしくは州政府の監督官庁によって承認されていること、または米国薬局方、欧州薬局方(Ph.Eur.)もしくは動物(特にヒト)における使用のための一般的に認められた他の薬局方に記載されていることを意味する。
【0081】
本明細書における用語「担体」は、治療物質とともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤または溶剤を指す。このような医薬担体は、水および油(ピーナッツ油、大豆油、鉱物油およびゴマ油などの石油起源、動物起源、植物起源または合成起源の油を含む)中の生理食塩水などの滅菌液であり得る。生理食塩水は、医薬組成物を静脈内投与する場合に好ましい担体である。生理食塩水、水性デキストロースおよびグリセロール溶液もまた、(特に注射用溶液のために)液体担体として利用され得る。適切な医薬賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脂肪粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、およびエタノールなどが含まれる。必要に応じて、組成物は、少量の湿潤剤もしくは乳化剤またはpH緩衝剤を含み得る。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル、粉末、および徐放性製剤などの形態をとり得る。組成物は、従来の結合剤および担体(トリグリセリドなど)とともに坐剤として製剤化され得る。本発明の化合物は、中性または塩の形態として製剤化され得る。薬学的に許容され得る塩には、遊離アミノ基で形成される塩(塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸および酒石酸などに由来する塩など)および遊離カルボキシ基で形成される塩(ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジンおよびプロカインなどに由来する塩など)が含まれる。適切な医薬担体の例は、E. W. Martin による"Remington's Pharmaceutical Sciences"に記載されている。患者への適切な投与のための形態を提供するために、このような組成物は(好ましくは精製された形態の)治療有効量の化合物を適切な量の担体とともに含む。製剤は投与方法に適合させるべきである。
【0082】
実施態様
以下の章では、本発明の種々の態様がより詳細に規定されている。このように規定された各態様は、明確に反対に示されていない限り、あらゆる他の態様と組み合わされ得る。特に、好ましいか、または有利であると示されているあらゆる特徴は、好ましいか、または有利であると示されているあらゆる他の特徴と組み合わされ得る。
【0083】
第1の態様において、本発明は、TNFR2の細胞外部分に特異的に結合するTNFリガンドファミリーメンバータンパク質の3つのペプチドTNFホモロジードメイン(THD)からなる結合ドメインを含むポリペプチドを提供し、ここで、第1および第2のTHDのC末端(これは、それぞれの場合においてC末端コンセンサス配列V-F/Y-F-G-A/I-X1(配列番号1)によって規定される)は、第2および第3のTHDのN末端(これは、それぞれの場合においてN末端コンセンサス配列P-V/A-A-H-V/L(配列番号2)によって規定される)にペプチドXa(これは、それぞれの場合において独立して選択され、9~12アミノ酸、好ましくは9~11、より好ましくは9~10の長さを有する)を介してそれぞれ連結しており、好ましくはXaはアミノ酸配列S-S-R-T-P-S-D-K(配列番号10)を含まず;X1は非極性/疎水性または極性/中性アミノ酸であり、好ましくはFおよびIからなる群から選択される。
【0084】
本発明をもたらした研究において、連結ペプチドXaの短縮は熱安定性を著しく向上させたが、同時に生物活性を著しく低下させたことが示された。驚くべきことに、本発明者らは、生物活性(各受容体、好ましくはTNFR2への結合など)を維持しつつ、著しく向上した安定性をもたらすペプチドXaのサイズの狭い範囲を特定した。
【0085】
したがって、本発明のポリペプチドは、本明細書で開示される動的光散乱法によって測定される少なくとも63℃、少なくとも64℃、少なくとも65℃、少なくとも66℃、少なくとも67℃、より好ましくは少なくとも65℃、少なくとも66℃、最も好ましくは少なくとも66℃の熱安定性を有することが好ましい。
【0086】
本発明のポリペプチドは、TNFR2受容体の活性化に関して特定の生理活性を有することがさらに好ましい。この生理活性の好ましい例は、実施例5に記載されるようにKym-1細胞上のTNFR2受容体の活性化である。好ましくは、本発明のポリペプチドは、好ましくは抗体80M2を用いたTNFR2架橋を伴うKym-1細胞上でのTNFR2受容体の活性化のEC50値が、400pM未満、350pM未満、300pM未満、250pM未満、より好ましくは300pM未満である。
【0087】
C末端およびN末端コンセンサス配列は、本発明のポリペプチドに必然的に含まれるTNFファミリーメンバーのTHDの領域の末端の基準点を与えるという目的を果たす。これは、TNFファミリーメンバーTNFアルファおよびLTアルファの好ましい例によって例示される。配列番号5において、ヒトTNFアルファの配列が開示されている。C末端配列は配列番号5のアミノ酸226~231に対応するVYFGII(配列番号3)であり、N末端配列は配列番号5のアミノ酸88~92に対応するPVAHV(配列番号4)である。配列番号55において、ヒトLTアルファの配列が開示されている。C末端配列は配列番号55のアミノ酸198~203に対応するVFFGAF(配列番号56)であり、N末端配列は配列番号55のアミノ酸63~67に対応するPAAHL(配列番号57)である。
【0088】
本発明の第1の態様の好ましい実施態様において、ペプチドXaはXC-XL-XNからなり、ここで
XCは、A、A-L、L、好ましくはAおよびA-L、より好ましくはA-Lからなる群から選択される;
XLは存在しないか、または1~11アミノ酸、好ましくは1~10アミノ酸、より好ましくは1~9アミノ酸、最も好ましくは4~8アミノ酸からなるアミノ酸リンカーである;
XNは存在しないか、またはK、D-K、S-D-K、P-S-D-K(配列番号6)、T-P-S-D-K(配列番号7)、R-T-P-S-D-K(配列番号8)、S-R-T-P-S-D-K(配列番号9)、S-S-R-T-P-S-D-K(配列番号10)、T-K、S-T-K、H-S-T-K(配列番号11)、A-H-S-T-K(配列番号12)、L-A-H-S-T-K(配列番号13)、H-L-A-H-S-T-K(配列番号14)、L-H-L-A-H-S-T-K(配列番号15)、好ましくはS-S-R-T-P-S-D-K(配列番号10)、S-D-Kからなる群から選択される。
【0089】
本発明の第1の態様のより好ましい実施態様において、ペプチドXaはXC-XL-XNからなり、ここで
XCは、A、A-L、L、好ましくはAおよびA-L、より好ましくはA-Lからなる群から選択される;
XLは存在しないか、または1~11アミノ酸、好ましくは1~10アミノ酸、より好ましくは1~9アミノ酸、最も好ましくは4~8アミノ酸からなるアミノ酸リンカーである;
XNは存在しないか、またはK、D-K、S-D-K、P-S-D-K(配列番号6)、T-P-S-D-K(配列番号7)、R-T-P-S-D-K(配列番号8)、S-R-T-P-S-D-K(配列番号9)、T-K、S-T-K、H-S-T-K(配列番号11)、A-H-S-T-K(配列番号12)、L-A-H-S-T-K(配列番号13)、H-L-A-H-S-T-K(配列番号14)、L-H-L-A-H-S-T-K(配列番号15)、好ましくはS-R-T-P-S-D-K(配列番号9)、R-T-P-S-D-K(配列番号8)、T-P-S-D-K(配列番号7)、P-S-D-K(配列番号6)、S-D-K、より好ましくはR-T-P-S-D-K(配列番号8)およびS-R-T-P-S-D-K(配列番号9)からなる群から選択される。
【0090】
ペプチドXaは3つの成分XC、XLおよびXNからなるが、成分XLおよびXNのうち少なくとも1つが存在するという条件で、XLおよびXNは存在してもしなくてもよい。XCは、TNFリガンドファミリーメンバーのC末端に由来するアミノ酸を含む。XLは、アミノ酸リンカーである。好ましくは、アミノ酸リンカーは、グリシン-セリンリンカーである。XNは、TNFリガンドファミリーメンバーのTHDのN末端に由来するアミノ酸を含み、好ましくは、XNはアミノ酸配列S-S-R-T-P-S-D-K(配列番号10)を含まない。
【0091】
本発明の第1の態様の好ましい実施態様において、本発明のポリペプチドの3つのTHDは、そのアミノ酸配列が同一である。
【0092】
本発明の第1の態様の好ましい実施態様において、第1および第2のTHDのC末端は、それぞれの場合においてC末端配列V-Y-F-G-I-I(配列番号3)によって規定され、第2および第3のTHDのN末端は、それぞれの場合においてN末端配列P-V-A-H-V(配列番号4)によって規定される。これらのC末端およびN末端配列は、ヒトTNFアルファに由来する。
【0093】
本発明の第1の態様の好ましい実施態様において、THDは、配列番号5のアミノ酸88~231からなる連続したアミノ酸配列を含み、これは任意で、以下からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む:D143Y、D143F、D143E、D143N、D143T、D143S、E146Q、E146H、E146K、A145R/S147T、Q88N/T89S/A145S/E146A/S147D、Q88N/A145I/E146G/S147D、A145H/E146S/S147D、A145H/S147D、L29V/A145D/E146D/S147D、A145N/E146D/S147D、A145T/E146S/S147D、A145Q/E146D/S147D、A145T/E146D/S147D、A145D/E146G/S147D、A145D/S147D、A145K/E146D/S147T、A145R/E146T/S147D、A145R/S147T、E146D/S147D、E146N/S147、S95C/G148C、K65A、K65W、Q67K、Q67T、Q67Y、L75H、L75W、D143W、D143V、D143V/F144L/A145S、D143N/A145R、D143V/A145S、L29V、L29T、L29S、L29A、L29G、R31H、R31I、R31L、R32G、R32E、S147L、S147R、S147P、S147T、S147A、Q149E、Q149N、E146D、E146N、E146S、E146G、A145R、A145S、A145T、A145H、A145K、A145F、A145D、A145G、A145N、A145P、A145Q、A145Y、A145V、およびA145W、好ましくはD143NおよびA145Rから選択される。
【0094】
上記に開示された変異は、TNFR2の細胞外部分への結合の特異性を上昇させる。好ましくは、変異は、TNFR1に対する結合親和性を低下させるが、TNFR2に対する親和性を本質的に維持し、それによりTNFR2に対する特異性を上昇させる(すなわち、TNFR2への結合のKdは、TNFR1への結合のKdよりも少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも1.000倍、好ましくは少なくとも5.000倍高い)。
【0095】
これらの変異は当分野で公知であり、Loetscher et al (JBC, vol 268, no 35, pp. 26350-26357, 1993; 表1参照)、Abe et al (Biomaterials 32 (2011) 5498-5504; 表1参照)、Ando et al (Biochemistry and Biophysics Reports, 7; 2016; 309-315; 表2参照)、およびBan et al (Molecular and Cellular Therapies (2015) 3:7)に開示されている。好ましくは、ポリペプチドは、これらの変異のうち5、4、3、2または1個、より好ましくは2または1個、最も好ましくは1個を含んでいる。
【0096】
本発明の第1の態様の好ましい実施態様において、
XCは、AまたはA-Lから選択され、
XLは存在しないか、または1~11アミノ酸、好ましくは1~10アミノ酸、より好ましくは1~9アミノ酸、最も好ましくは4~8アミノ酸の長さを有するグリシンおよび/またはセリンリンカーであり、
XNは存在しないか、またはK、D-K、S-D-K、P-S-D-K(配列番号6)、T-P-S-D-K(配列番号7)、R-T-P-S-D-K(配列番号8)、S-R-T-P-S-D-K(配列番号9)、およびS-S-R-T-P-S-D-K(配列番号10)から選択され;より好ましくは、K、D-K、S-D-K、P-S-D-K(配列番号6)、T-P-S-D-K(配列番号7)、R-T-P-S-D-K(配列番号8)、およびS-R-T-P-S-D-K(配列番号9)から選択される。
【0097】
本発明の第1の態様の好ましい実施態様において、
XCは、AまたはA-Lから選択され、
XLは、G、S、G-G、S-G、G-S、G-G-G、S-G-G、G-S-G、G-G-S、G-G-G-G(配列番号16)、G-G-G-S(配列番号17)、G-G-S-G(配列番号18)、G-S-G-G(配列番号19)、S-G-G-G(配列番号20)、G-G-G-G-G(配列番号21)、S-G-G-G-G(配列番号22)、G-S-G-G-G(配列番号23)、G-G-S-G-G(配列番号24)、G-G-G-S-G(配列番号25)、G-G-G-G-S(配列番号26)、G-G-G-G-G-G(配列番号27)、S-G-G-G-G-G(配列番号28)、G-S-G-G-G-G(配列番号29)、G-G-S-G-G-G(配列番号30)、G-G-G-S-G-G(配列番号31)、G-G-G-G-S-G(配列番号32)、G-G-G-G-G-S(配列番号33)、G-G-G-S-G-G-G-S(配列番号34)、S-G-G-G-S-G-G-G(配列番号35)、G-G-G-G-G-G-G-G(配列番号36)、G-S-G-G-G-S-G-G(配列番号37)、G-G-S-G-G-G-S-G(配列番号38)、S-G-G-G-S-G-G-G-S(配列番号39)、G-S-G-G-G-S-G-G-G(配列番号40)、G-G-S-G-G-G-S-G-G(配列番号41)、G-G-G-S-G-G-G-S-G(配列番号42)、S-G-G-G-S-G-G-G-S-G(配列番号43)、G-S-G-G-G-S-G-G-G-S(配列番号44)、G-G-S-G-G-G-S-G-G-G(配列番号45)、G-G-G-S-G-G-G-S-G-G(配列番号46)、S-G-G-G-S-G-G-G-S-G-G(配列番号47)、G-S-G-G-G-S-G-G-G-S-G(配列番号48)、G-G-S-G-G-G-S-G-G-G-S(配列番号49)、およびG-G-G-S-G-G-G-S-G-G-G(配列番号50)、好ましくは、G-G-G-G(配列番号16)、G-G-G-G-S(配列番号26)、およびG-G-G-S-G-G-G-S(配列番号34)、より好ましくは、G-G-G-G(配列番号16)およびG-G-G-S-G-G-G-S(配列番号34)から選択され;
XNは存在しないか、またはK、D-K、S-D-K、P-S-D-K(配列番号6)、T-P-S-D-K(配列番号7)、R-T-P-S-D-K(配列番号8)、S-R-T-P-S-D-K(配列番号9)、およびS-S-R-T-P-S-D-K(配列番号10)から選択され;より好ましくは、K、D-K、S-D-K、P-S-D-K(配列番号6)、T-P-S-D-K(配列番号7)、R-T-P-S-D-K(配列番号8)、およびS-R-T-P-S-D-K(配列番号9)から選択される。
【0098】
好ましい実施態様において、XLは、1~11アミノ酸、好ましくは1~10アミノ酸、より好ましくは1~9アミノ酸、最も好ましくは4~8アミノ酸の長さを有し、グリシンとセリンの含有量が3:1であるグリシン/セリンリンカーである。言い換えれば、3つのグリシンにつき、1つのセリンが存在する。好ましくは、各セリンは3つのグリシンによって別のセリンから分離されている。
【0099】
本発明の第1の態様の好ましい実施態様において、
XCはA-Lであり、XLは存在せず、XNはS-R-T-P-S-D-K(配列番号9)、S-S-R-T-P-S-D-K(配列番号10)、S-S-S-R-T-P-S-D-K(配列番号51)、およびR-S-S-S-R-T-P-S-D-K(配列番号52)、好ましくはS-R-T-P-S-D-K(配列番号9)およびS-S-R-T-P-S-D-K(配列番号10)から選択され;より好ましくは、S-R-T-P-S-D-K(配列番号9)から選択される。
【0100】
本発明の第1の態様の好ましい実施態様において、
XCはA-Lであり、XLはG-G-G-G(配列番号16)であり、XNはS-D-K、P-S-D-K(配列番号6)、T-P-S-D-K(配列番号7)、R-T-P-S-D-K(配列番号8)から選択される。
【0101】
本発明の第1の態様の好ましい実施態様において、
XCはA-Lであり、XLはG-G-G-S-G-G-G-S(配列番号34)であり、XNはKおよびD-Kから選択される。
【0102】
本発明の第1の態様の好ましい実施態様において、
XCはA-Lであり、XLはGであり、XNはR-T-P-S-D-K(配列番号8)、S-R-T-P-S-D-K(配列番号9)、好ましくはS-R-T-P-S-D-K(配列番号9)から選択される。
【0103】
本発明の第1の態様の好ましい実施態様において、
XCはA-Lであり、XLはG-Gであり、XNはT-P-S-D-K(配列番号7)、R-T-P-S-D-K(配列番号8)、S-R-T-P-S-D-K(配列番号9)、好ましくはR-T-P-S-D-K(配列番号8)から選択される。
【0104】
本発明の第1の態様の好ましい実施態様において、
XCはA-Lであり、XLはG-G-Gであり、XNはP-S-D-K(配列番号6)、T-P-S-D-K(配列番号7)、R-T-P-S-D-K(配列番号8)、S-R-T-P-S-D-K(配列番号9)、好ましくはT-P-S-D-K(配列番号7)から選択される。
【0105】
本発明の第1の態様の好ましい実施態様において、
XCはA-Lであり、XLはG-G-G-G(配列番号16)であり、XNはS-D-K、P-S-D-K(配列番号6)、T-P-S-D-K(配列番号7)、R-T-P-S-D-K(配列番号8)、好ましくはP-S-D-K(配列番号6)から選択される。
【0106】
本発明の第1の態様の好ましい実施態様において、ポリペプチドは、動的光散乱法によって決定される、62℃よりも高い、63℃よりも高い、64℃よりも高い、65℃よりも高い、66℃よりも高い、67℃よりも高い、68℃よりも高い、好ましくは65℃よりも高い、66℃よりも高い、または67℃よりも高い、最も好ましくは66℃よりも高い、または67℃よりも高い凝集開始温度(Tm)を有する。凝集開始温度(Tm)は、好ましくは本明細書の実施例4に開示されているように動的光散乱法によって決定される。温度上昇に応じた凝集の開始は、タンパク質の変性の指標である。タンパク質(本発明のポリペプチドなど)の凝集開始温度が高いほど、タンパク質はより熱的に安定である。用語「変性温度」および「凝集温度」は、本明細書において同義的に使用される。
【0107】
第2の態様において、本発明は、以下である本発明の第1の態様に記載の少なくとも2つのポリペプチドを含むポリペプチド多量体を提供する、
(a)ともに連結されており、1~30アミノ酸、好ましくは7~15アミノ酸の長さを有するアミノ酸リンカーによって好ましくはともに連結されているか;または
(b)(好ましくは、多量体化ドメイン、血清タンパク質、サイトカイン、ターゲティング部分または毒素からなる群から選択される)タンパク質、好ましくは多量体化ドメインに連結されている;
ここで任意で、前記ポリペプチドは、1~30アミノ酸、好ましくは7~15アミノ酸の長さを有するアミノ酸リンカーによって前記タンパク質に連結されている。
【0108】
本発明の第2の態様の好ましい実施態様において、本発明の第1の態様のポリペプチドは互いに連結されて鎖状構造を形成しており、ここでポリペプチドはそのアミノ末端またはカルボキシ末端によって互いに直接連結されている。アミノ酸リンカーが存在する場合、リンカーはポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端に結合している。好ましい実施態様において、鎖状構造は、本発明の第1の態様の少なくとも1つのポリペプチドに結合したタンパク質をさらに含む。そのようなタンパク質の好ましい例は、多量体化ドメイン、血清タンパク質、サイトカイン、ターゲティング部分または毒素である。
【0109】
本発明のポリペプチド多量体は、本発明のポリペプチドと同様に、生物活性を保持しつつ、安定性(特に熱安定性)が向上している。リンカーが存在しない場合、本発明の第1の態様のポリペプチドは、多量体化ドメインに直接連結されている。
【0110】
したがって、本発明のポリペプチド多量体は、本明細書で開示されるように動的光散乱法によって測定される、71℃よりも高い、少なくとも72℃、少なくとも73℃、少なくとも74℃、好ましくは少なくとも72℃、少なくとも73℃、少なくとも74℃、少なくとも75℃、少なくとも76℃、少なくとも77℃、または少なくとも78℃、より好ましくは少なくとも74℃の熱安定性(Tm)(すなわち凝集開始温度)を有することが好ましい。凝集開始温度が高いほど、ポリペプチド多量体はより熱的に安定である。
【0111】
本発明のポリペプチド多量体の安定性の別の好ましい例は、実施例10に開示されているように、37℃のヒト血漿中での3日間のインキュベーション後の安定性である。好ましくは、37℃のヒト血漿中での3日間のインキュベーション後の、実施例10におけるHeLa-TNF-R2細胞中のTNFR2への結合についての本発明のポリペプチド多量体のEC50は、ヒト血漿中でのインキュベーション前のEC50と比較して15%、12%、10%、好ましくは10%よりも大きく減少していない。
【0112】
本発明のポリペプチド多量体の安定性の別の好ましい例は、実施例10に開示されているように、37℃のヒト血漿中での8日間のインキュベーション後の安定性である。好ましくは、37℃のヒト血漿中での3日間のインキュベーション後の、実施例10におけるHeLa-TNF-R2細胞中のTNFR2への結合についての本発明のポリペプチド多量体のEC50は、ヒト血漿中でのインキュベーション前のEC50と比較して15%、12%、10%、好ましくは10%よりも大きく減少していない。
【0113】
本発明のポリペプチド多量体は、TNFR2受容体の活性化に関して特定の生理活性を有することがさらに好ましい。
【0114】
したがって、本発明のポリペプチド多量体は、実施例7に開示されているように、マウス胎仔線維芽細胞(MEF)上に発現したTNFR2への結合によって評価される、100pM未満、好ましくは80pM未満、より好ましくは70pM未満のEC50の生理活性を有することが好ましい。好ましくは、本発明のポリペプチド多量体は、実施例7の条件下でTNFR1に結合しない。
【0115】
この生理活性の別の好ましい例は、実施例8に開示されているように、Kym-1細胞上のTNFR2への結合であり、ここでEC50は200pM未満、150pM未満、100pM未満、75pM未満、好ましくは100pM未満または75pM未満、より好ましくは75pM未満である。
【0116】
この生理活性の別の好ましい例は、実施例9に開示されているように、HeLa-TNF-R2細胞におけるNF-κBの活性化であり、ここでEC50は30pM未満、20pM未満、10pM未満、5pM未満、好ましくは10pM未満または5pM未満、より好ましくは5pM未満である。
【0117】
本発明の第2の態様の好ましい実施態様において、ポリペプチドをタンパク質(好ましくは多量体化ドメイン)に連結するアミノ酸リンカーは、5~50、5~45、7~40、7~35、7~30、7~25、7~20、7~15、7~12、9~11アミノ酸、好ましくは7~15、7~12、9~11、より好ましくは7~12または9~11、最も好ましくは9~11アミノ酸の長さを有する。
【0118】
本発明の第2の態様の好ましい実施態様において、本発明のポリペプチドをタンパク質(好ましくは多量体化ドメイン)に連結するアミノ酸リンカーは、グリシン-セリンリンカーである。
【0119】
本発明の第2の態様の好ましい実施態様において、本発明のポリペプチドをタンパク質(好ましくは多量体化ドメイン)に連結するアミノ酸リンカーは、GGSGGGGSGG(配列番号5)である。
【0120】
本発明の第2の態様の好ましい実施態様において、本発明のポリペプチドをタンパク質(好ましくは多量体化ドメイン)に連結するアミノ酸リンカーは、Nグリコシル化のためのコンセンサス配列を含む。
【0121】
好ましい実施態様において、本発明のポリペプチドは、タンパク質(好ましくは多量体化ドメイン)のN末端に(任意で本発明の第2の態様のアミノ酸リンカーによって)連結されている。
【0122】
好ましい実施態様において、本発明のポリペプチドは、タンパク質(好ましくは多量体化ドメイン)のC末端に(任意で本発明の第2の態様のアミノ酸リンカーによって)連結されている。
【0123】
好ましい実施態様において、本発明の少なくとも1つのポリペプチドはタンパク質(好ましくは多量体化ドメイン)のN末端に連結されており、少なくとも1つのポリペプチドはタンパク質(好ましくは多量体化ドメイン)のC末端に連結されており、任意でこれらの各連結は本発明の第2の態様のアミノ酸リンカーを互いに別々に含む。
【0124】
本発明の第2の態様の好ましい実施態様において、多量体化ドメインは二量体化ドメインである。
【0125】
好ましい二量体化ドメインは、(限定されないが、抗体、抗体重鎖、Fc領域、IgMの重鎖ドメイン2(CH2)(MHD2)、IgEの重鎖ドメイン2(CH2)(EHD2)、IgGの重鎖ドメイン3(CH3)、IgAの重鎖ドメイン3(CH3)、IgDの重鎖ドメイン3(CH3)、IgMの重鎖ドメイン4(CH4)、IgEの重鎖ドメイン4(CH4)、Fab、Fab2、ならびにCH1およびCLドメインを含む)抗体由来の二量体化ドメインである。抗体由来の好ましい二量体化ドメインは、Fc領域、そのバリアントまたはフラグメントである。二量体化ドメインとして使用可能なFc領域は、好ましくは以下のアイソタイプIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMに由来する。
【0126】
さらに好ましい二量体化ドメインは、FcRおよび/またはC1q結合を有しない免疫グロブリンFc領域変異体である。FcRおよび/またはC1q結合を有しない免疫グロブリンFc領域変異体の好ましい例は、FcΔab、LALA、LALA-GP、IgG2、IgG2σ、アグリコシル化IgG1、IgG1(L234F/L235E/LP331S)、IgG2m4、およびIgG4 ProAlaAlaである。Fc領域変異体のさらにより好ましい例は、Fcγ受容体I結合およびC1q結合を持たないFcΔabである(Armour et al; Eur. J. Immunol. 1999, 29:2613-2624)。
【0127】
他の二量体化または多量体化ドメインには、barnase-barstar、C4bp、CD59、コラーゲン由来のペプチド、ロイシンジッパーモチーフ、ミニ抗体およびZIPミニ抗体、GST、不活性ヒト絨毛性ゴナドトロピンのαおよびβサブユニット、マルトース結合タンパク質(MBP)、p53およびそのフラグメント、ホスファターゼ、ストレプトアビジン、サーファクタントタンパク質D、テネイシン、テトラネクチン、ドックアンドロック(DNL)モチーフ、ならびにウテログロビンが含まれる。
【0128】
本発明の第2の態様の好ましい実施態様において、多量体化ドメインは三量体化ドメインである。
【0129】
好ましい三量体化ドメインは、テネイシンC(TNC)、コラーゲンXVIIIのC末端非コラーゲン性ドメイン(NC1)の三量体化領域、Fab3様分子、およびTriBiミニボディ、より好ましくはTNCである。
【0130】
本発明の第2の態様の好ましい実施態様において、多量体化ドメインは四量体化ドメインである。
【0131】
好ましい四量体化ドメインは、p53の四量体化ドメイン、general control protein 4(GCN4)の四量体化ドメイン、VASP(血管拡張因子刺激リン酸化タンパク質)の四量体化ドメイン、タンデム二重特異性抗体、およびジダイアボディ(di-diabody)である。
【0132】
本発明の第2の態様の好ましい実施態様において、ポリペプチドが連結するタンパク質は、組織、臓器または細胞型に特異的なリガンドである。好ましくは、リガンドは、臓器、組織または細胞型に特異的なターゲティング部分である。より好ましくは、ターゲティング部分は、免疫系の細胞(例えば、制御性T細胞(Treg);共刺激リガンド)、中枢神経系の細胞(例えばミクログリア細胞)、心筋(心臓前駆細胞を含む)、大腸、皮膚、炎症組織、または膵臓細胞に特異的である。
【0133】
本発明の第2の態様の好ましい実施態様において、ポリペプチド多量体は、組織、臓器または細胞型に特異的なリガンドをさらに含む。好ましくは、リガンドは、臓器、組織または細胞型に特異的なターゲティング部分である。より好ましくは、ターゲティング部分は、免疫系の細胞(例えば、制御性T細胞(Treg);共刺激リガンド)、中枢神経系の細胞(例えばミクログリア細胞)、心筋(心臓前駆細胞を含む)、大腸、皮膚、炎症組織、または膵臓細胞に特異的である。好ましくは、ターゲティング部分は、ポリペプチドが連結するタンパク質に加えて、ポリペプチド多量体に存在する。
【0134】
本発明の第2の態様の好ましい実施態様において、ターゲティング部分は、トランスフェリン受容体、CD98、IGF1R、LRP1、インスリン受容体、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)、ジフテリア毒素受容体、排出ポンプ、CD25、CD28、GLUT1、LAT1、TMEM119、PDGFR、VEGFR1、VEGFR3、およびRVG-29の受容体から選択される標的に結合している。
【0135】
本発明の第2の態様の好ましい実施態様において、ポリペプチドが連結するタンパク質は、サイトカイン(好ましくは、IL-2またはTGFβ)、または半減期延長ドメイン(好ましくは、アルブミン結合部分、免疫グロブリン結合部分、PEG模倣ポリペプチド、PEG化またはHES化(HESylation))である。
【0136】
本発明の第2の態様の好ましい実施態様において、ポリペプチド多量体は、サイトカイン(好ましくは、IL-2またはTGFβ)、または半減期延長ドメイン(好ましくは、アルブミン結合部分、免疫グロブリン結合部分、PEG模倣ポリペプチド、PEG化またはHES化)をさらに含む。好ましくは、サイトカイン、半減期延長ドメインまたは免疫グロブリン結合部分は、ポリペプチドが連結するタンパク質に加えて、ポリペプチド多量体に存在する。
【0137】
第3の態様において、本発明は、本発明の第1の態様に記載のポリペプチドまたは本発明の第2の態様に記載のポリペプチド多量体をコードする核酸分子を提供する。核酸は、RNAもしくはDNAまたはそれらのハイブリッドであり得る。好ましくは、核酸はまた、適切な発現系において本発明の第1の態様および第2の態様に記載のポリペプチドの発現を可能にする配列を含む。核酸は、各発現系についてコドン最適化され得る。
【0138】
第4の態様において、本発明は、本発明の第3の態様に記載の核酸分子をコードするベクターを提供する。本発明のポリペプチドまたはポリペプチド多量体は、本発明の第3の態様に記載の導入された核酸分子によってコードされ、ベクターの導入により細胞内に発現されることが好ましい。好ましくは、ベクターは、適切な宿主細胞系において核酸によってコードされたポリペプチドの転写および発現を与える。好ましくは、発現ベクターは、細菌、酵母、バキュロウイルス、植物、ウイルスおよび哺乳類の発現ベクターからなる群から選択され、より好ましくは、発現ベクターは細菌発現ベクターまたは無細胞発現ベクターである。
【0139】
第5の態様において、本発明は、医薬としての使用のための、本発明の第1の態様に記載のポリペプチド、本発明の第2の態様に記載のポリペプチド多量体、本発明の第3の態様に記載の核酸、または本発明の第4の態様に記載のベクターを提供する。
【0140】
第6の態様において、本発明は、本発明の第1の態様に記載のポリペプチド、本発明の第2の態様に記載のポリペプチド多量体、本発明の第3の態様に記載の核酸、または本発明の第4の態様に記載のベクターを活性物質として含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、好ましくは、薬学的に許容され得る担体および/または適切な賦形剤をさらに含む。医薬組成物は、固体、液体、半固体または経皮治療システムからなる群から選択される。本発明の医薬組成物は、本発明の第1の態様のポリペプチドおよび/または第2の態様のポリペプチド多量体を1つ以上含むことが想定される。
【0141】
第7の態様において、本発明は、過剰増殖性障害、炎症性障害、自己免疫障害および代謝性疾患、循環器疾患、神経障害性疾患、ならびに神経傷害の予防または処置における使用のための、本発明の第1の態様に記載のポリペプチド、本発明の第2の態様に記載のポリペプチド多量体、本発明の第3の態様に記載の核酸、本発明の第4の態様に記載のベクター、または本発明の第5の態様に記載の医薬組成物を提供する。
【0142】
好ましい過剰増殖性障害は、がんまたは血液系の悪性腫瘍である。
【0143】
本発明のポリペプチドまたはポリペプチド多量体によって予防または処置される特に好ましいがんは、消化管、肝臓、腎臓、膀胱、前立腺、子宮内膜、卵巣、精巣、皮膚のがん、浸潤性口腔がん、小細胞および非小細胞肺がん、ホルモン依存性乳がん、ホルモン非依存性乳がん、移行上皮がん、扁平上皮がん、神経性悪性腫瘍(神経芽細胞腫、神経膠腫を含む)、星状細胞腫、骨肉腫、軟部組織肉腫、血管腫、内分泌性腫瘍(endocrinological tumor)、血液腫瘍(白血病、リンパ腫、ならびに他の骨髄増殖性疾患およびリンパ増殖性疾患を含む)、上皮内がん、過形成病変、腺腫、線維腫、組織球増殖症、慢性炎症性増殖性疾患、血管増殖性疾患およびウイルス誘発性増殖性疾患、ケラチノサイトおよび/またはT細胞の過剰増殖によって特徴付けられる皮膚疾患である。本発明の化合物で処置され得る特に好ましい疾患は、固形腫瘍(特に、肺、乳房、膵臓、結腸直腸、卵巣、前立腺、および胃のがんおよび腺がん)である。
【0144】
本発明のポリペプチドまたはポリペプチド多量体によって予防または処置される好ましい炎症性疾患には、限定されないが、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症(また、ルー・ゲーリック病;運動ニューロン疾患)、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、抗合成酵素症候群、アトピー性アレルギー、アトピー性皮膚炎、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性膵炎、自己免疫性末梢神経障害、自己免疫性多内分泌腺症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性ぶどう膜炎、バロー病/バロー同心性硬化症、ベーチェット病、ベルジェ病、ビッカースタッフ脳炎、ブラウ症候群、水疱性類天疱瘡、がん、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性閉塞性肺疾患、慢性再発性多発性骨髄炎、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、補体成分2欠損症、接触性皮膚炎、頭部動脈炎、CREST症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚白血球破壊性血管炎、デゴス病、ダーカム病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、びまん性皮膚全身性硬化症、円板状エリテマトーデス、ドレスラー症候群、薬剤誘発性ループス、湿疹、子宮内膜症、腱付着部炎関連関節炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性肺炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、胎児赤芽球症、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、進行性骨化性線維異形成症、線維性肺胞炎(または特発性肺線維症)、胃炎、胃腸類天疱瘡(Gastrointestinal pemphigoid)、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、バセドウ病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本脳症、橋本甲状腺炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹(妊娠性類天疱瘡としても知られる)、汗腺膿瘍、Hughes-Stovin症候群、低ガンマグロブリン血症、特発性炎症性脱髄性疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(自己免疫性血小板減少性紫斑病を参照)、IgA腎症、封入体筋炎、間質性膀胱炎、若年性特発性関節炎(若年性関節リウマチとしても知られる)、川崎病、ランバート・イートン筋無力症候群、白血球破壊性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA病(LAD)、ルポイド肝炎(自己免疫性肝炎としても知られる)、エリテマトーデス、マジード症候群、顕微鏡的大腸炎、顕微鏡的多発血管炎、ミラー・フィッシャー症候群、混合性結合組織病、モルフェア、ムッハ・ハーベルマン病(急性痘瘡状苔癬状粃糠疹としても知られる)、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、メニエール病、ナルコレプシー、視神経脊髄炎(また、デビック病)、神経性筋強直症、眼部瘢痕性類天疱瘡、オプソクローヌス、ミオクローヌス(yoclonus)症候群、オード(Ord's)甲状腺炎、回帰性リウマチ、PANDAS(連鎖球菌関連性小児自己免疫性神経精神疾患)、傍腫瘍性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、Parry Romberg症候群、毛様体扁平部炎、パーソネージ・ターナー症候群、尋常性天疱瘡、静脈周囲性脳脊髄炎(Perivenous encephalomyelitis)、悪性貧血、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症性神経障害、乾癬、乾癬性関節炎、赤芽球癆、壊疽性膿皮症、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、ライター症候群、再発性多発性軟骨炎、下肢静止不能症候群、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、統合失調症、APSの別の形態であるシュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、血清病、シェーグレン症候群、脊椎関節症、全身硬直症候群、スチル病(若年性関節リウマチを参照)、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、スイート症候群、シデナム舞踏病、交感性眼炎、全身性エリテマトーデス(エリテマトーデスを参照)、高安動脈炎、側頭動脈炎(「巨細胞性動脈炎」としても知られる)、血小板減少症、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎(特発性炎症性腸疾患「IBD」の2つの種類のうちの1つ)、混合性結合組織病とは異なる未分化結合組織病、未分化脊椎関節症、蕁麻疹様血管炎、血管炎、白斑、およびウェゲナー肉芽腫症が含まれる。過敏症には、限定されないが、アレルギー(喘息、アナフィラキシーまたはアトピーなど);細胞傷害抗体依存性疾患(自己免疫性溶血性貧血、血小板減少症、リウマチ性心疾患、胎児赤芽球症、グッドパスチャー症候群、膜性腎症、バセドウ病、重症筋無力症など);免疫複合体病(血清病、アルサス反応、関節リウマチ、連鎖球菌感染後糸球体腎炎、ループス腎炎、全身性エリテマトーデス、外因性アレルギー性肺胞炎(過敏性肺炎)など)、接触性皮膚炎などの細胞免疫応答、ツベルクリン反応、慢性移植片拒絶、および多発性硬化症が含まれる。
【0145】
本発明のポリペプチドまたはポリペプチド多量体によって予防または処置される特に好ましい神経変性疾患には、アルツハイマー病、HIV関連認知症、片頭痛、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、タウオパチー、ピック病、パーキンソン病、神経障害、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、ハンチントン病、球脊髄性筋萎縮症、フリートライヒ運動失調症、脊髄小脳失調症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群、致死性家族性不眠症、クールー、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、およびバッテン病、脊髄損傷、外傷性脳損傷、神経障害性疼痛、多発性硬化症、急性散在性脳脊髄炎、バロー病、シャルコー・マリー・トゥース病、ギラン・バレー症候群、HTLV-I関連脊髄症、視神経脊髄炎、視神経萎縮、非動脈炎性前部虚血性視神経症、シルダー病、横断性脊髄炎、横断性脊髄炎、脳卒中、てんかん、糖尿病性神経障害が含まれる。
【0146】
本発明のポリペプチドまたはポリペプチド多量体によって予防または処置される特に好ましい循環器疾患には、限定されないが、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、混合型脂質異常症、冠動脈心疾患、アテローム性動脈硬化症、末梢血管疾患、心筋症、血管炎、炎症性心疾患、虚血性心疾患、うっ血性心不全、心臓弁膜症、高血圧、心筋梗塞、糖尿病性心疾患、塞栓症、動脈瘤、高血圧性心疾患、仮性動脈瘤、脳卒中、および不整脈が含まれる。
【0147】
本発明のポリペプチドまたはポリペプチド多量体によって予防または処置される特に好ましい代謝性疾患には、限定されないが、糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム、およびインスリン抵抗性が含まれる。
【実施例】
【0148】
実施例1:本発明のタンパク質の遺伝子工学
ヒトTNFR2選択的TNF(TNF
R2)変異体ドメインを、TNFR2に対して排他的な特異性を示すため、分子の生物活性をTNF受容体2に制限する変異D143N/A145Rを含むヒトTNFの外部ドメインから設計した(Loetscher et al., 1993, J. Biol. Chem. 268, 26350-26357)。scTNF誘導体を生成するために使用されるTNFR2選択的TNF(TNF
R2)変異体ドメインは、可変のN末端開始位置に起因する種々の長さによって特徴付けられる。詳細には、本発明のタンパク質は、aa残基80、82、84、85、86および88にそれぞれN末端開始位置を有し、aa233(C末端)で終了するヒトTNF
R2変異体ドメインを含む(表1を参照;UniPRotKBエントリーP01375に由来するヒトTNF配列)。これらのドメインの一本鎖誘導体(scTNF
R2)を、3つのTNF
R2変異体ドメインを1つのポリペプチド鎖に融合させることによって作製した。この遺伝子融合物は、2つのペプチドリンカーを用いて3つのTNFドメインを連結するか、またはペプチドリンカーを用いずにTNFドメインを直接融合するかのいずれかによって達成された。参照分子118に存在するように、5aa残基からなるグリシン-セリンペプチドリンカーL1(GGGGS)(配列番号26)と組み合わせた、aa位置80におけるTNF
R2変異体のN末端開始位置を、最先端であるとみなした(Fischer et al., 2011, PLoS One, e27621)。詳細には、scTNF
R2変異体のTNFドメインを、GGGGS(配列番号26)(TNFのaa80から始まる、バリアント118[配列番号65])、GGGG(配列番号16)(TNFのaa85から始まる、バリアント139[配列番号68])、またはGGGSGGGS(配列番号34)(TNFのaa88から始まる、バリアント138[配列番号69])からなるペプチドリンカーL1と融合させた。対照的に、scTNF
R2変異体127[配列番号66]、130[配列番号70]、129[配列番号67]および131[配列番号71]において、種々の長さの3つのTNFR2特異的TNFドメイン(表1、
図1を参照)を、連結ペプチドリンカーを伴わずに直接融合させた(TNFのaa80から始まるバリアント127、TNFのaa82から始まるバリアント130、TNFのaa84から始まるバリアント129、TNFのaa86から始まるバリアント131)。TNF-R2選択的なヒトscTNF
R2変異体は、3つのTNF THDの三価の配置を示す(すなわち、3つのTNFR2結合部位を形成している)。
【0149】
最先端のscTNF
R2変異体バリアント118および選択されたscTNF
R2変異体バリアント(127、129、139)を、GGSGGGGSGG(配列番号5)からなるペプチドリンカーL2を介してFc(Δab)二量体化領域のN末端に連結した(このFc領域は、Fcエフェクター機能(Fcγ受容体および補体成分C1への結合など)の欠失のための変異を含む;Armour et al., 1999, Eur. J. Immunol. 29, 2613-2624)。これらの六価の融合タンパク質(すなわち、6つのTNFR2結合部位を示すタンパク質)を、scTNF
R2(118)-Fc(Δab)(745)[配列番号72]、scTNF
R2(127)-Fc(Δab)(742)[配列番号73]、scTNF
R2(129)-Fc(Δab)(743)[配列番号74]、およびscTNF
R2(139)-Fc(Δab)(744)[配列番号75]と表す(表2、
図1を参照)。
【0150】
scTNF
R2およびすべての複合体の全体的なコドン使用頻度を、哺乳類細胞における発現に適応させた。上清へのタンパク質の分泌を促進するために、Igκリーダー配列をコンストラクトのN末端に融合させた。タンパク質の精製を容易にするために、scTNF
R2変異体においてN末端にHisタグを導入したが、scTNF
R2-Fc(Δab)複合体では省略した。詳細には、scTNF
R2変異体およびscTNF
R2-Fc(Δab)変異体のコーディングDNA配列を哺乳類発現ベクターにクローニングし、単独の6×Hisタグ付き一本鎖タンパク質6×His-scTNF
R2(pTT5ベクター)または非タグ付きFc融合タンパク質scTNF
R2-Fc(Δab)(pSecTagベクター)としての組換え産生を可能にした。
表1:最先端の分子scTNF
R2118および本発明のscTNF
R2タンパク質。
【表1】
表2:参照scTNFモジュール(#118)を含むscTNF-Fc(Δab)融合タンパク質および本発明のscTNF
R2-Fc分子の命名法。
【表2】
【0151】
実施例2:本発明のタンパク質の産生および精製
すべてのタンパク質(実施例1参照)を、F17培地(Life Technologies)中で37℃および5%CO2において振盪条件下で増殖させたHEK293-6E細胞(NRC-BRI)中に産生させ、この細胞にはポリエチレンイミン(Polysciences)を用いてプラスミドDNAを一過性に遺伝子導入した。翌日に0.5%トリプトンN1(Organotechnie)を細胞培養物に添加し、細胞をさらに5日間培養した。次いで上清を回収し、セルフリーで遠心分離し、そこから組換えタンパク質を単離した。
【0152】
6×His-scTNFR2変異体を、固定化金属イオンクロマトグラフィー(IMAC)により精製した。簡潔に述べると、上清をNi-NTAアガロース(Macherey-Nagel)とともにローラーミキサー上において4℃で16時間バッチインキュベートした後、クロマトグラフィーカラムに回収した。結合していないタンパク質を、IMAC洗浄緩衝液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.5)を用いて除去した。結合したタンパク質をIMAC溶出緩衝液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液、250mMイミダゾール、pH7.5)を用いて溶出し、PBS緩衝液(pH7.4)に対して4℃で一晩透析した(メンブレンカットオフ14kDa、Roth)。
【0153】
ScTNFR2-Fc(Δab)複合体をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。上清をProtein A Sepharose 4 Fast Flow(GE Healthcare)またはToyopearl AF-rProtein A-650F(Tosoh)ととともにローラーミキサー上において4℃で16時間バッチインキュベートし、クロマトグラフィーカラムに回収した。結合していないタンパク質を、PBS、pH7.4を用いて除去した。結合したタンパク質をプロテインA溶出緩衝液(100mM グリシン-HCl、pH3.5)を用いて溶出し、1M Tris-HCl、pH9.0を添加することによって直ちに中和し、PBS緩衝液(pH7.4)に対して4℃で一晩透析した(メンブレンカットオフ14kDa、Roth)。表3は、アフィニティークロマトグラフィー工程後に得られた実施例1に記載のタンパク質のタンパク質量の例を示す。
【0154】
透析したタンパク質をゲルろ過(サイズ排除クロマトグラフィー)によってさらに精製した。タンパク質調製物をAKTA FPLC装置(GE Healthcare)を用いてSuperdex 200 10/300 GLカラム(GE Healthcare)上で分離し、PBS、pH7.4を用いて溶出した。タンパク質濃度を280nmでの分光測定により決定し、個々の吸光係数を用いて算出した。
【0155】
タンパク質調製物をSDS-PAGEおよびそれに続くクーマシー染色によって分析した(
図2)。実施例1における精製したタンパク質5μgまたは3μgを、Laemmli緩衝液(50mM Tris pH6.8、4M尿素、1%SDS、15%グリセロール、0.01%ブロモフェノールブルー)中で還元条件下(5%2-メルカプトエタノール存在下)および非還元条件下(2-メルカプトエタノール非存在下)において変性させ、10%または12%SDS-PAGEによって分離した。タンパク質の可視化のために、SDS-PAGEゲルをInstantBlueステイン(Expedion)中でインキュベートした。
表3:組換え発現およびアフィニティー精製後のscTNF
R2変異体およびscTNF
R2-Fc(Δab)分子の収量。
【表3】
1)Ni-NTA IMAC後
2)プロテインAアフィニティークロマトグラフィー後
【0156】
実施例3:天然条件下での本発明のタンパク質の分子完全性および純度
実施例1におけるタンパク質の純度およびオリゴマー化状態を、HPLCサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によってさらに特徴付けた。約20μgのタンパク質を、SEC緩衝液(0.1M Na
2HPO
4/NaH
2PO
4、0.1M Na
2SO
4、pH6.7)で平衡化したSuperSW mAb HR、7.8×300mmカラム(Tosoh Bioscience)に適用し、0.5ml/分の流速で溶出した。ScTNF
R2および複合体は予想されるサイズにおいて単一の主要なピークとして溶出し、これはタンパク質の正確な構築および高い純度を示していた(
図3を参照)。
【0157】
実施例4:本発明のタンパク質の熱安定性
実施例1におけるタンパク質の熱安定性を、Malvern Zetasizer装置を用いた動的光散乱法によって分析した。タンパク質をPBSで150μg/mlに希釈し(総量1.1ml)、石英キュベットに移した。以前に報告された参照バリアントscTNF
R2118は、62℃の変性(凝集の開始)温度を示した(
図4、表4を参照)。さらに、このタンパク質の最初の部分的な変性は、49℃の温度で既に観察されていた。対照的に、改変されたscTNF
R2変異体127、129および139は、それぞれ67℃(127、139)および72℃(129)の大幅に上昇した融点を示した。scTNF
R2変異体138の融点は参照バリアントと比較して変化しないままであり(62℃)、scTNF
R2変異体130および131はわずかに低下した熱安定性を示した。
【0158】
scTNF
R2バリアントをFc(Δab)領域と融合させた後、参照scTNF
R2変異体118を含むバリアント745は71℃の融点を示した(
図4、表5)。注目すべきことに、熱安定性が向上したscTNF
R2変異体(127、129および139)を含むscTNF
R2-Fc(Δab)複合体742、743および744は、バリアント745と比較して明らかに高い融点を示した。例えば、scTNF
R2バリアント127を含むscTNF
R2-Fc(Δab)バリアント742およびscTNF
R2バリアント139を含むscTNF
R2-Fc(Δab)バリアント744はともに74℃の融点を示した。要約すると、特定のscTNF
R2変異体(例えば、バリアント127および139)のより高い熱安定性は、scTNF
R2-Fc(Δab)複合体の全体的なより高い熱安定性をもたらした。
【0159】
タンパク質:
scTNFR2分子118、127、129、130、131、138および139をNi-NTA-IMACおよびゲル濾過によって精製し、1xPBS緩衝液(8mM Na2HPO4、1.8mM KH2PO4、2.7mM KCl、137mM NaCl、pH7.4)中に溶出した。タンパク質は1xPBS中に以下の濃度で存在していた:230μg/ml(118)、300μg/ml(127)、480μg/ml(129)、230μg/ml(130)、260μg/ml(131)、110μg/ml(138)、および450μg/ml(139)。
【0160】
scTNFR2-Fc(Δab)融合タンパク質745、742、743および744をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーおよびゲル濾過によって精製し、1xPBS緩衝液中に溶出した。タンパク質は1xPBS中に以下の濃度で存在していた:800μg/ml(745)、1200μg/ml(742)、320μg/ml(743)、および1700μg/ml(744)。
【0161】
DLS測定:
動的光散乱法による凝集温度の分析のために、タンパク質を150μg/mlの濃度にカルシウムおよびマグネシウムを含まないDPBS(Gibco、カタログ番号14190144;8.06mM Na2HPO4x7H2O、1.47mM KH2PO4、2.67mM KCl、137.9mM NaCl、pH7.0~7.3)で希釈した。タンパク質138を希釈せずに分析した。1.1mlの希釈したタンパク質溶液を、あらかじめ5x1ml DPBSで平衡化したAcrodisc13mmシリンジフィルター、0.2μm(Pall Corporation, part number 4602)により粒子を含まないように濾過し、あらかじめ1M NaOHで洗浄し、かつ脱イオン水およびDPBSで十分に洗浄した円形の開口部を有するPCS8501ガラスキュベット(Malvern Panalytical)に移した。次いで、キュベットを、Dispersion Technologyソフトウェア5.00によって制御された、予熱されたZetasizer Nano-ZS ZEN3600、シリアル番号MAL501015(Malvern Panalytical)の測定チャンバー内に設置した。測定をマニュアルモードにおいて以下のソフトウェア設定で行った:
・物質:タンパク質、RI 1.45;吸収、0.00
・分散剤:ICN PBSタブレット;温度、25℃;粘度、0.8882cP;RI、1.33
・セルの種類:PCS8501
・トレンドシーケンス(Trend sequence):開始温度、25℃;終了温度、85℃;温度間隔、1.0℃;融点のチェックなし
・サイズ測定:平衡化時間、2分;測定回数、2;測定間の遅延、0秒;測定設定の最適化なし;測定時間、自動;高度な位置決め方法自動減衰選択(Advanced, Positioning method automatic attenuation selection);データ処理、分析モデルの複数の限定的なモード(Analysis model multiple narrow modes)(高解像度)。
【0162】
各温度で測定した2つのkcps値の平均値を算出し、GraphPad Prism4.0(GraphPad Software Inc.)を用いて温度に対してプロットした。凝集温度を、商kcps
T/kcps
(T-5)が少なくとも係数2.0に達する温度Tと定義した。
表4:動的光散乱法によって決定したscTNF
R2変異体の変性温度。
【表4】
表5:動的光散乱法によって決定したscTNF
R2-Fc(Δab)複合体の変性温度。
【表5】
表6:6xHis-scTNF
R2118のDLS測定
【表6】
表7:6xHis-scTNF
R2127のDLS測定
【表7】
表8:6xHis-scTNF
R2129のDLS測定
【表8】
表9:6xHis-scTNF
R2130のDLS測定
【表9】
表10:6xHis-scTNF
R2131のDLS測定
【表10】
表11:6xHis-scTNF
R2138のDLS測定
【表11】
表12:6xHis-scTNF
R2139のDLS測定
【表12】
表13:scTNF
R2-Fc(Δab)745のDLS測定
【表13】
表14:scTNF
R2-Fc(Δab)742のDLS測定
【表14】
表15:scTNF
R2-Fc(Δab)743のDLS測定
【表15】
表16:scTNF
R2-Fc(Δab)744のDLS測定
【表16】
【0163】
実施例5:80M2抗体を用いたTNF-R2共活性化を伴う、および伴わないKym-1細胞に対するscTNF
R2変異体のインビトロでの生理活性
scTNF
R2変異体の基本的な生理活性を、Kym-1細胞を用いたインビトロでのアッセイにおいて分析した。Kym-1上のTNFR2の刺激は内在性TNFの発現をもたらし、これはTNFR1を介したシグナル伝達の活性化により細胞のアポトーシスを誘導する。注目すべきことに、純粋な三価scTNF
R2はTNFR2の活性化に関してほとんど不活性であることが示されており、生理活性のために(例えば、自身は非アゴニストである抗TNFR2抗体80M2を用いることによる)TNFR2架橋をさらに必要とする。実験のために、15,000Kym-1細胞/ウェルを96ウェルプレートに播種し、37℃および5%CO
2で24時間培養し、段階希釈したタンパク質とともに3通りでさらに24時間インキュベートした。TNFR2架橋の条件下において、2通りで滴定したタンパク質を添加する30分前に、1μg/ml 80M2抗体(Hycult Biotech)を細胞に添加した。細胞生存率をクリスタルバイオレット染色によって決定した。データを、処理していない対照および陽性対照(1%TritonX-100)に対して正規化した。80M2と組み合わせて、すべてのscTNF
R2バリアントはKym-1細胞の細胞死を誘導した。しかしながら、いくつかの変異体(例えば129)は、参照scTNF
R2118と比較して低下した活性を示した(
図5、表17)。
表17:抗体80M2によるTNF-R2架橋と組み合わせたscTNF
R2変異体のKym-1細胞に対する生理活性のEC
50値。
【表17】
【0164】
実施例6:scTNF
R2-Fc(Δab)複合体の固定化されたTNF-R2への結合
scTNF
R2-Fc(Δab)複合体のTNFR2-Fc(エタネルセプト)への結合をELISAによって分析した。96ウェルELISAプレートを200ng/ウェルのエタネルセプトでコーティング緩衝液(0.1M炭酸ナトリウム、pH9.5)中において4℃で一晩コーティングし、PBS(MPBS)中の2%スキムミルクでブロックし、洗浄緩衝液PBST(PBS、0.05%Tween20)で洗浄した。ScTNF
R2-Fc(Δab)複合体を2通りで滴定し、プレート上で室温において2時間インキュベートした後、PBSTで洗浄した。受容体に結合した複合体をマウス抗huTNFα F6C5(Novus、1μg/ml)およびヤギ抗マウスIgG(Fc)-HRP(Sigma-Aldrich、1:10,000)で検出した後、それぞれPBSTで広範に洗浄した。scTNF
R2-Fc(Δab)複合体は、サブナノモル濃度範囲のEC
50値を伴ってTNF-R2-Fcへの用量依存的な結合を示した(
図6、表18)。ScTNF
R2-Fc(Δab)742、743および744は、最先端のscTNF
R2分子118を含むscTNF
R2-Fc(Δab)745バリアントと同等の結合挙動を示した。
表18:scTNF
R2-Fc(Δab)複合体のTNF-R2-Fcへの結合のEC
50値(平均値±S.D、n=3)。
【表18】
【0165】
実施例7:細胞上のscTNF
R2-Fc(Δab)複合体のTNF-R2選択的結合
scTNF
R2-Fc(Δab)複合体の、ヒトTNFR1(MEF-TNFR1)またはヒトTNFR2(MEF-TNFR2)を安定に遺伝子導入したマウス胎仔線維芽細胞(MEF)への結合をフローサイトメトリーによって分析した(Krippner-Heidenreich et al., 2002, J. Biol. Chem. 277, 44155-44163)。そのために、細胞をトリプシン処理し、氷冷したFACS緩衝液(PBS、2%FBS、0.05%アジ化ナトリウム)で1回洗浄した。試料毎に200,000個の細胞を、段階希釈したscTNF
R2-Fc(Δab)複合体とともに100μl FACS緩衝液中で4℃において2時間インキュベートした。次に、結合していないタンパク質をFACS緩衝液での2回の洗浄工程によって除去した後、抗ヒトIgG(γ鎖特異的)-R-フィコエリスリン抗体(Sigma-Aldrich、1:500)で4℃において1時間検出した。FACS緩衝液での2回の最終的な洗浄工程の後、細胞を585/40nmフィルターを備えたMACSQuant(登録商標) Analyzer 10により分析した。すべてのscTNF
R2-Fc(Δab)分子(745、742、743および744)は、MEF-TNFR2への用量依存的な結合を示した(
図7、表19)。しかしながら、scTNF
R2-Fc(Δab)複合体742および744は、(約60pMのEC
50値を有する)最先端のscTNF
R2分子118を含むscTNF
R2-Fc(Δab)745バリアントと同じEC
50値を示し、分子scTNF
R2-Fc(Δab)743はMEF-TNFR2への(約2.8倍低下した)より弱い結合を示した(168pMのEC
50値)。さらに、MEF-TNFR1に対してscTNF
R2-Fc(Δab)複合体の結合は検出できず、これは分子のTNFR2に対する選択性を示していた。
表19:scTNF
R2-Fc(Δab)複合体のMEF-TNFR2-Fcへの結合のEC
50値。
【表19】
【0166】
実施例8:Kym-1細胞に対するscTNF
R2-Fc(Δab)複合体のインビトロでの生理活性
scTNF
R2-Fc(Δab)複合体のインビトロでの生理活性を、抗体80M2の添加によるTNFR2架橋を省略したことを除いて実施例5に記載の実験設定と同様の実験設定においてKym-1細胞に対して分析した(六価のscTNF
R2-Fc(Δab)タンパク質はTNFR2架橋を必要としない)(
図8、表20)。Kym-1細胞に対して、scTNF
R2-Fc(Δab)742は、最先端のscTNF
R2バリアント118を含む参照分子scTNF
R2-Fc(Δab)745と同等の生理活性を示した。ScTNF
R2-Fc(Δab)744は、(約4倍)低下した生理活性を示した。しかしながら、scTNF
R2-Fc(Δab)743の生理活性は、scTNF
R2-Fc(Δab)745と比較して大きく(約228倍)低下していた。これらの知見は、短すぎるペプチドリンカーによる構造特性が、タンパク質フォールディングおよび受容体の活性化に負の影響を与えることを示している。
表20:Kym-1細胞に対するscTNF
R2-Fc(Δab)複合体の生理活性のEC
50値(平均値±S.D.、n=3)。
【表20】
【0167】
実施例9:HeLa-TNF-R2細胞におけるscTNF
R2-Fc(Δab)複合体によるNF-κB活性化
scTNF
R2-Fc(Δab)複合体によるインビトロでのNF-κB活性化を、ヒトTNF受容体2を安定に遺伝子導入したHeLa細胞(HeLa-TNF-R2)においてルシフェラーゼレポーターアッセイを用いて分析した。このために、96ウェル毎に15,000個の細胞を播種し、37℃および5%CO
2で培養した。24時間後に培地(RPMI/10%FBS、PenStrep)を交換し、細胞にリポフェクタミン2000(Thermo、4μl/1μgのDNA)を用いてpNF-κB Lucホタルルシフェラーゼ実験レポータープラスミド(66ng/ウェル)(Agilent Technologies)およびpRL-TKウミシイタケルシフェラーゼ対照プラスミド(33ng/well)(Promega)を一過性に遺伝子導入した。16時間培養した後、遺伝子導入した細胞を2通りで滴定したscTNF
R2-Fc(Δab)タンパク質で刺激した。6時間刺激した後、培地をフェノールレッドを含まないRPMI/5%FBS(35μl/ウェル)に交換し、Spark(登録商標)マイクロプレートリーダー(Tecan)を用いた発光検出と組み合わせてDual-Glo(登録商標)ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega)によりルシフェラーゼ活性を測定した。pNF-κBにより制御されるホタルルシフェラーゼ活性を、個々のウェルにおいて対照のウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して正規化した。HeLa-TNF-R2細胞におけるNF-κB活性は、scTNF
R2-Fc(Δab)複合体の濃度に依存してS字形の用量反応を示した(
図9)。scTNF
R2-Fc(Δab)複合体の生理活性を反映する4回の独立した実験から算出されたEC
50値(表21)は、タンパク質745、742および744について統計的に有意な差を示さなかった(P>0.05、テューキーの事後検定を伴う一元配置分散分析)。しかしながら、scTNF
R2-Fc(Δab)743は、NF-κB活性化に関して最先端のタンパク質745と比較して統計的に有意な(p<0.01)より低い(約95倍低下した)生理活性を示した。
表21:scTNF
R2-Fc(Δab)複合体のHeLa-TNF-R2細胞に対するNF-κB活性化のEC
50値(平均値±S.D.、n=3)。
【表21】
【0168】
実施例10:ヒト血漿中のscTNFR2-Fc(Δab)タンパク質の安定性
37℃での3日および8日のインキュベーション期間後におけるヒト血漿中のscTNFR2-Fc(Δab)タンパク質の安定性を、タンパク質試料のTNF-R2を安定に過剰発現するHeLa細胞(HeLa-TNF-R2、Richter et al., 2012, Mol. Cell Biol. 32, 2515-2529)への結合によって評価した。詳細には、1xPBS(8mM Na2HPO4、1.8mM KH2PO4、2.7mM KCl、137mM NaCl、pH7.4)中の5.17μM(745)、8.05μM(742)、2.11μM(743)および11.25μM(744)の保存濃度のタンパク質を、PBSで400nMの濃度に希釈し、50%ヒト血漿(最終タンパク質濃度200nM)中で37℃において0日間(対照)、3日間または8日間インキュベートした。インキュベーション後、試料を-80℃で保存し、フローサイトメトリーにおいてHeLa-TNF-R2への結合によってタンパク質の完全性を試験する前に解凍した。このために、50~70%の培養密度を有するHeLa-TNF-R2細胞をトリプシン処理し、氷冷したFACS緩衝液(1xPBS、2%FBS、0.05%アジ化ナトリウム)で1回洗浄した。試料毎に150,000個の細胞を、30nMから開始してFACS緩衝液と1:3で段階希釈したscTNFR2-Fc(Δab)タンパク質とともに100μl FACS緩衝液中でV底96ウェルプレートにおいて4℃で1.5時間インキュベートした。次に、結合していないタンパク質をFACS緩衝液での2回の洗浄工程によって除去した。そこで、V底96ウェルプレートを500×gで遠心分離し、ウェル内の液体を吸引装置で除去した。ウェルあたり180μlのFACS緩衝液を添加し、穏やかに上下にピペッティングして細胞ペレットを再懸濁した。結合したタンパク質を、ヤギ抗ヒトIgG Fcγフラグメント特異的-R-フィコエリスリン抗体(Jackson ImmunoResearch、1:500)により4℃で1時間検出した。FACS緩衝液での2回の最終的な洗浄工程の後、細胞をフィコエリスリンの検出のために586/15nmフィルターを備えたMACSQuant(登録商標)VYBフローサイトメーターで分析した。GraphPad Prismを用いて結合曲線をフィットし、4回の独立した実験から結合のEC50値を算出した。インキュベートしていない対照に対するEC50値の正規化によって得られた値の逆数から、単一の各実験について無傷のタンパク質の割合を算出した。
【0169】
scTNF
R2-Fc(Δab)タンパク質742および744について無傷のタンパク質の量の低下は観察されなかったが、タンパク質scTNF
R2-Fc(Δab)タンパク質745は3日後および8日後において約80%の残存活性へのわずかな低下を示した。対照的に、scTNF
R2-Fc(Δab)743は、8日後の約40%の残存を伴う無傷のタンパク質の時間に依存した大きな低下を示した。これらのデータは、バリアント742および744が、親のバージョン745および改変されたバージョン743と比較して、生理的条件下で統計的に有意に改善された安定性を示すことを確認している。
表22:50%ヒト血漿中でインキュベートしたscTNF
R2-Fc(Δab)タンパク質のHeLa-TNF-R2細胞への結合のEC
50値(pM)。
【表22】
【0170】
実施例11:本発明のタンパク質のさらなるバリアント
可変のN末端開始位置(XN)およびリンカーXLの長さによる種々のリンカー組成によって特徴付けられるTNFR2に選択的なさらなるヒトscTNF誘導体を作製した。詳細には、タンパク質は、aa残基81、82、83および84にそれぞれN末端開始位置を有し、aa233(C末端)で終了するヒトTNFR2変異体ドメインを含む(表1および2を参照;UniPRotKBエントリーP01375に由来するヒトTNF配列)。これらのドメインの一本鎖誘導体(scTNFR2)を、3つのTNFR2変異体ドメインを1つのポリペプチド鎖に融合させることによって作製した。この遺伝子融合物は、2つのペプチドリンカーを用いて3つのTNFドメインを連結するか、またはペプチドリンカーを用いずにTNFドメインを直接融合するかのいずれかによって達成された。詳細には、scTNFR2変異体のTNFドメインを、それぞれ直接融合させるか(バリアント140、配列番号76)、または1つのグリシンからなるペプチドリンカー(バリアント141、配列番号77;バリアント142、配列番号78)、2つのグリシン(バリアント144、配列番号80 バリアント145、配列番号81)、3つのグリシン(バリアント143、配列番号79;バリアント146、配列番号82)、もしくは4つのグリシン(バリアント147、配列番号83)とともに融合させた(表23)。TNF-R2選択的なヒトscTNFR2変異体は、3つのTNF THDの三価の配置を示す(すなわち、3つのTNFR2結合部位を形成している)。
【0171】
さらに、scTNFR2変異体バリアントを、GGSGGGGSGG(配列番号92)からなるペプチドリンカーL2を介してFc(Δab)二量体化領域のN末端に連結し、六価のscTNFR2-Fc融合タンパク質を作製した(このFc領域は、Fcエフェクター機能(Fcγ受容体および補体成分C1への結合など)の欠失のための変異を含む;Armour et al., 1999, Eur. J. Immunol. 29, 2613-2624)。これらの六価の融合タンパク質(すなわち、6つのTNFR2結合部位を示すタンパク質)を、scTNFR2(140)-Fc(Δab)(タンパク質148、配列番号84)、scTNFR2(141)-Fc(Δab)(タンパク質149、配列番号85)、scTNFR2(143)-Fc(Δab)(タンパク質151、配列番号87)、scTNFR2(144)-Fc(Δab)(タンパク質152、配列番号88)、およびscTNFR2(145)-Fc(Δab)(タンパク質153、配列番号89)と表す(表24)。
【0172】
scTNF
R2およびすべてのFc融合タンパク質の全体的なコドン使用頻度を、哺乳類細胞における発現に適応させた。上清へのタンパク質の分泌を促進するために、Igκリーダー配列をコンストラクトのN末端に融合させた。タンパク質の精製を容易にするために、scTNF
R2変異体においてN末端にHisタグを導入したが、scTNF
R2-Fc(Δab)融合タンパク質では省略した。詳細には、scTNF
R2変異体およびscTNF
R2-Fc(Δab)変異体のコーディングDNA配列を哺乳類発現ベクターにクローニングし、単独の6×Hisタグ付き一本鎖タンパク質6×His-scTNF
R2(pTT5ベクター)または非タグ付きFc融合タンパク質scTNF
R2-Fc(Δab)(pSecTagベクター)としての組換え産生を可能にした。
表23:実施例11のscTNF
R2バリアント。
【表23】
表24:実施例11のscTNF
R2-Fcバリアント
【表24】
【0173】
実施例12:実施例11のタンパク質の産生および精製
実施例11のすべてのタンパク質を、F17培地(Life Technologies)中で37℃および5%CO2において振盪条件下で増殖させたHEK293-6E細胞(NRC-BRI)中に産生させ、この細胞にはポリエチレンイミン(Polysciences)を用いてプラスミドDNAを一過性に遺伝子導入した。翌日に0.5%トリプトンN1(Organotechnie)を細胞培養物に添加し、細胞をさらに5日間培養した。次いで上清を回収し、セルフリーで遠心分離し、そこから組換えタンパク質を単離した。
【0174】
6×His-scTNFR2変異体を、固定化金属イオンクロマトグラフィー(IMAC)により精製した。簡潔に述べると、上清をNi-NTAアガロース(Macherey-Nagel)とともにローラーミキサー上において4℃で16時間バッチインキュベートした後、クロマトグラフィーカラムに回収した。結合していないタンパク質を、IMAC洗浄緩衝液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.5)を用いて除去した。結合したタンパク質をIMAC溶出緩衝液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液、250mMイミダゾール、pH7.5)を用いて溶出し、PBS緩衝液(pH7.4)に対して4℃で一晩透析した(メンブレンカットオフ14kDa、Roth)。
【0175】
ScTNFR2-Fc(Δab)融合タンパク質をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。上清をProtein A Sepharose 4 Fast Flow(GE Healthcare)またはToyopearl AF-rProtein A-650F(Tosoh)ととともにローラーミキサー上において4℃で16時間バッチインキュベートし、クロマトグラフィーカラムに回収した。結合していないタンパク質を、PBS、pH7.4を用いて除去した。結合したタンパク質をプロテインA溶出緩衝液(100mM グリシン-HCl、pH3.5)を用いて溶出し、1M Tris-HCl、pH9.0を添加することによって直ちに中和し、PBS緩衝液(pH7.4)に対して4℃で一晩透析した(メンブレンカットオフ14kDa、Roth)。
【0176】
透析したタンパク質を調製用のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によってさらに精製した。タンパク質調製物をAKTA FPLC装置(GE Healthcare)を用いてSuperdex 200 10/300 GLカラム(GE Healthcare)上で分離し、PBS、pH7.4を用いて溶出した。タンパク質濃度を280nmでの分光測定により決定し、個々の吸光係数を用いて算出した。
【0177】
タンパク質調製物をSDS-PAGEおよびそれに続くクーマシー染色によって分析した(
図11および12)。実施例11における精製したタンパク質2.5μgを、Laemmli緩衝液(50mM Tris pH6.8、4M尿素、1%SDS、15%グリセロール、0.01%ブロモフェノールブルー)中で還元条件下(5%2-メルカプトエタノール存在下)および非還元条件下(2-メルカプトエタノール非存在下)において変性させ、10%または12%SDS-PAGEによって分離した。タンパク質の可視化のために、SDS-PAGEゲルをInstantBlueステイン(Expedion)中でインキュベートした。
【0178】
実施例13:天然条件下での実施例11のタンパク質の分子完全性および純度
実施例11におけるscTNF
R2-Fc(Δab)融合タンパク質の純度およびオリゴマー化状態を、分析用HPLCサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によってさらに特徴付けた。約20μgのタンパク質を、SEC緩衝液(0.1M Na
2HPO
4/NaH
2PO
4、0.1M Na
2SO
4、pH6.7)で平衡化したSuperSW mAb HR、7.8×300mmカラム(Tosoh Bioscience)に適用し、0.5ml/分の流速で溶出した。融合タンパク質は(約160kDaの見かけの分子量を伴って)予想されるサイズにおいて単一のピークとして溶出し、これはタンパク質の正確な構築および高い純度を示していた(
図13を参照)。
【0179】
実施例14:実施例11のタンパク質の熱安定性
実施例11におけるタンパク質の熱安定性を、Malvern Zetasizer装置を用いた動的光散乱法によって分析した。
【0180】
scTNFR2分子140、141、142、143、144、145、146、および147は1xPBS(8mM Na2HPO4、1.8mM KH2PO4、2.7mM KCl、137mM NaCl、pH7.4)中に以下の濃度で存在していた:370μg/ml(140)、350μg/ml(141)、450μg/ml(142)、1.1mg/ml(143)、430μg/ml(144)、170μg/ml(145)、350μg/ml(146)、および470μg/ml(147)。ScTNFR2-Fc(Δab)融合タンパク質148、149、150、151、152、153、154、および155は1xPBS中に以下の濃度で存在していた:1.59mg/ml(148)、2.35mg/ml(149)、1.59mg/ml(151)、1.59mg/ml(152)、および220μg/ml(153)。
【0181】
タンパク質を、カルシウムおよびマグネシウムを含まないDPBS(Gibco、カタログ番号14190144;8.06mM Na2HPO4x7H2O、1.47mM KH2PO4、2.67mM KCl、137.9mM NaCl、pH7.0~7.3)で総量1.1mlにおいて100μg/mlに希釈し、石英キュベットに移し、以下のように動的光散乱法(DLS)によって分析した:1.1mlの希釈したタンパク質溶液を、あらかじめ5x1ml DPBSで平衡化したAcrodisc13mmシリンジフィルター、0.2μm(Pall Corporation, part number 4602)により粒子を含まないように濾過し、あらかじめ1M NaOHで洗浄し、かつ脱イオン水およびDPBSで十分に洗浄した円形の開口部を有するPCS8501ガラスキュベット(Malvern Panalytical)に移した。次いで、キュベットを、Dispersion Technologyソフトウェア5.00によって制御された、予熱されたZetasizer Nano-ZS ZEN3600、シリアル番号MAL501015(Malvern Panalytical)の測定チャンバー内に設置した。測定をマニュアルモードにおいて以下のソフトウェア設定で行った:
・物質:タンパク質、RI 1.45;吸収、0.00
・分散剤:ICN PBSタブレット;温度、25℃;粘度、0.8882cP;RI、1.33
・セルの種類:PCS8501
・トレンドシーケンス:開始温度、25℃;終了温度、85℃;温度間隔、1.0℃;融点のチェックなし
・サイズ測定:平衡化時間、2分;測定回数、2;測定間の遅延、0秒;測定設定の最適化なし;測定時間、自動;高度な位置決め方法自動減衰選択;データ処理、分析モデルの複数の限定的なモード(高解像度)。
【0182】
各温度で測定した2つのkcps値の平均値を算出し、GraphPad Prism8(GraphPad Software Inc.)を用いて温度に対してプロットした。凝集温度を、商kcpsT/kcps(T-5)が少なくとも係数2.0に達する温度Tと定義した。
【0183】
元のバリアント118(
図1を参照)と比較して、改変されたscTNF
R2変異体140、141、142、143、144、145、146および147は、それぞれ67℃(バリアント145、146)、68℃(バリアント141、143、144、147)、および69℃(バリアント140、142)の大幅に上昇した融点を示した(
図14、表25~33参照)。
【0184】
Xaの長さが10aaであるscTNF
R2-Fcバリアントは、バリアント742(
図1を参照)と同等の74℃(バリアント149、152)および75℃(バリアント154)の融点を示した(
図15、表34~41)。注目すべきことに、Xaの長さが9aaであるscTNF
R2-Fc(Δab)融合タンパク質は、78℃(バリアント148、153)、76℃(バリアント151)および75℃(バリアント150)の上昇した熱安定性を示した。要約すると、実施例11のすべてのscTNF
R2バリアントは、バリアント118(
図1)に対して上昇した熱安定性を示した。対応するscTNF
R2-Fcバリアントの熱安定性はバリアント745(
図1)と比較して有意に上昇しており、9aaのXaリンカー長を含むバリアントは10aaのXaリンカー長を含むバリアントよりも安定していた。
表25:動的光散乱法によって決定したscTNF
R2変異体の変性温度。
【表25】
表26:6xHis-scTNF
R2140のDLS測定
【表26-1】
【表26-2】
表27:6xHis-scTNF
R2141のDLS測定
【表27-1】
【表27-2】
表28:6xHis-scTNF
R2142のDLS測定
【表28-1】
【表28-2】
表29:6xHis-scTNF
R2143のDLS測定
【表29-1】
【表29-2】
表30:6xHis-scTNF
R2144のDLS測定
【表30-1】
【表30-2】
表31:6xHis-scTNF
R2145のDLS測定
【表31-1】
【表31-2】
表32:6xHis-scTNF
R2146のDLS測定
【表32-1】
【表32-2】
表33:6xHis-scTNF
R2147のDLS測定
【表33-1】
【表33-2】
表34:動的光散乱法によって決定したscTNF
R2-Fcタンパク質の変性温度。
【表34】
表35:scTNF
R2-Fc148のDLS測定
【表35-1】
【表35-2】
表36:scTNF
R2-Fc149のDLS測定
【表36-1】
【表36-2】
表37:scTNF
R2-Fc150のDLS測定
【表37-1】
【表37-2】
表38:scTNF
R2-Fc151のDLS測定
【表38-1】
【表38-2】
表39:scTNF
R2-Fc152のDLS測定
【表39-1】
【表39-2】
表40:scTNF
R2-Fc153のDLS測定
【表40-1】
【表40-2】
表41:scTNF
R2-Fc154のDLS測定
【表41-1】
【表41-2】
【0185】
実施例15:scTNFR2およびscTNFR2-Fc(Δab)タンパク質の固定化されたTNF-R2への結合
scTNFR2およびscTNFR2-Fc(Δab)タンパク質のヒトTNFR2-Fc(エタネルセプト)への結合をELISAによって分析した。96ウェルELISAプレートを200ng/ウェルのエタネルセプトでコーティング緩衝液(0.1M炭酸ナトリウム、pH9.5)中において4℃で一晩コーティングし、PBS(MPBS)中の2%スキムミルクでブロックし、洗浄緩衝液PBST(PBS、0.05%Tween20)で洗浄した。ScTNFR2およびscTNFR2-Fc(Δab)タンパク質を2通りで滴定し、プレート上で室温において2時間インキュベートした後、PBSTで洗浄した。受容体に結合した複合体をマウス抗huTNFα F6C5(Novus、1μg/ml)およびヤギ抗マウスIgG(Fc)-HRP(Sigma-Aldrich、1:10,000)で検出した後、HRP基質とともにインキュベートする前にそれぞれPBSTで広範に洗浄した。
【0186】
scTNF
R2バリアントは、低いナノモル濃度範囲のEC
50値を伴ってTNF
R2-Fcへの類似の用量依存的な結合を示した(
図16、表42)。scTNF
R2-Fc(Δab)融合タンパク質は、サブナノモル濃度範囲のより低いEC
50値を示し(
図17、表43)、これは結合活性効果による六価のFc融合タンパク質の結合の増加を示していた。
表42:scTNF
R2バリアントのヒトTNFR2-Fcへの結合のEC
50値
【表42】
表43:scTNF
R2-Fc融合タンパク質バリアントのTNFR2-Fcへの結合のEC
50値
【表43】
【0187】
実施例16:80M2抗体を用いたTNF-R2共活性化を伴うKym-1細胞に対する実施例11のscTNF
R2バリアントのインビトロでの生理活性
実施例11のscTNF
R2バリアントの基本的な生理活性を、Kym-1細胞を用いたインビトロでのアッセイにおいて分析した。Kym-1上のTNFR2の刺激は内在性TNFの発現をもたらし、これはTNFR1を介したシグナル伝達の活性化により細胞のアポトーシスを誘導する。注目すべきことに、純粋な三価scTNF
R2はTNFR2の活性化に関してほとんど不活性であることが示されており、生理活性のために(例えば、自身は非アゴニストである抗TNFR2抗体80M2を用いることによる)TNFR2架橋をさらに必要とする。実験のために、10,000Kym-1細胞/ウェルを96ウェルプレートに播種し、37℃および5%CO
2で24時間培養し、段階希釈したタンパク質とともに3通りでさらに24時間インキュベートした。TNFR2架橋のために、3通りで滴定したタンパク質を添加する30分前に、1μg/ml 80M2抗体(Hycult Biotech)を細胞に添加した。細胞生存率をクリスタルバイオレット染色によって決定した。データを、処理していない対照および陽性対照(1%TritonX-100)に対して正規化した。80M2と組み合わせて、すべてのscTNF
R2バリアントはサブナノモル濃度範囲においてKym-1細胞の細胞死を誘導した(
図18、表44)。
表44:scTNF
R2バリアントのKym-1に対する生理活性のEC
50値。
【表44】
【0188】
実施例17:Kym-1細胞に対する実施例11のscTNF
R2-Fc(Δab)タンパク質のインビトロでの生理活性
実施例11のscTNF
R2-Fc(Δab)タンパク質のインビトロでの生理活性を、抗体80M2の添加によるTNFR2架橋を省略したことを除いて実施例16に記載の実験設定と同様の実験設定においてKym-1細胞に対して分析した(六価のscTNF
R2-Fc(Δab)タンパク質はTNFR2架橋を必要としない)(
図19、表45)。Kym-1細胞を用いて、scTNF
R2-Fc(Δab)バリアント148、149、150、151、152、153および154は、参照分子scTNF
R2-Fc(Δab)742単独またはTNFR2架橋抗体80M2の存在下におけるscTNF
R2140に類似した生理活性を示した。
表45:Kym-1に対するscTNF
R2-Fc変異体の生理活性のEC
50値
【表45】
【0189】
本発明はまた、以下の項目に関する:
1.TNFR2の細胞外部分に特異的に結合するTNFリガンドファミリーメンバータンパク質の3つのペプチドTNFホモロジードメイン(THD)からなる結合ドメインを含むポリペプチド、ここで、第1および第2のTHDのC末端(これは、それぞれの場合においてC末端コンセンサス配列V-F/Y-F-G-A/I-X1(配列番号1)によって規定される)は、第2および第3のTHDのN末端(これは、それぞれの場合においてN末端コンセンサス配列P-V/A-A-H-V/L(配列番号2)によって規定される)にペプチドXa(これは、それぞれの場合において独立して選択され、9~12アミノ酸、好ましくは9~11、より好ましくは9~10の長さを有する)を介してそれぞれ連結しており、Xaはアミノ酸配列S-S-R-T-P-S-D-K(配列番号10)を含まず、X1は非極性/疎水性または極性/中性アミノ酸であり、好ましくはFおよびIからなる群から選択される。
【0190】
2.ペプチドXaがXC-XL-XNからなる、項目1記載のポリペプチド、ここで
XCは、A、A-L、L、好ましくはAおよびA-Lからなる群から選択される;
XLは存在しないか、または1~11、好ましくは1~10、より好ましくは1~9アミノ酸からなるアミノ酸リンカーである;
XNは存在しないか、またはK、D-K、S-D-K、P-S-D-K(配列番号6)、T-P-S-D-K(配列番号7)、R-T-P-S-D-K(配列番号8)、S-R-T-P-S-D-K(配列番号9)、T-K、S-T-K、H-S-T-K(配列番号11)、A-H-S-T-K(配列番号12)、L-A-H-S-T-K(配列番号13)、H-L-A-H-S-T-K(配列番号14)、L-H-L-A-H-S-T-K(配列番号15)からなる群から選択される。
【0191】
3.3つのTHDが同一である、先行項目のいずれかに記載のポリペプチド。
【0192】
4.第1および第2のTHDのC末端が、それぞれの場合においてC末端配列V-Y-F-G-I-I(配列番号3)によって規定され、第2および第3のTHDのN末端が、それぞれの場合においてN末端配列P-V-A-H-V(配列番号4)によって規定される、先行項目のいずれかに記載のポリペプチド。
【0193】
5.THDが配列番号5のアミノ酸88~231からなる連続したアミノ酸配列を含み、これが任意で以下からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む、先行項目のいずれかに記載のポリペプチド:D143Y、D143F、D143E、D143N、D143T、D143S、E146Q、E146H、E146K、A145R/S147T、Q88N/T89S/A145S/E146A/S147D、Q88N/A145I/E146G/S147D、A145H/E146S/S147D、A145H/S147D、L29V/A145D/E146D/S147D、A145N/E146D/S147D、A145T/E146S/S147D、A145Q/E146D/S147D、A145T/E146D/S147D、A145D/E146G/S147D、A145D/S147D、A145K/E146D/S147T、A145R/E146T/S147D、A145R/S147T、E146D/S147D、E146N/S147、S95C/G148C、K65A、K65W、Q67K、Q67T、Q67Y、L75H、L75W、D143W、D143V、D143V/F144L/A145S、D143N/A145R、D143V/A145S、L29V、L29T、L29S、L29A、L29G、R31H、R31I、R31L、R32G、R32E、S147L、S147R、S147P、S147T、S147A、Q149E、Q149N、E146D、E146N、E146S、E146G、A145R、A145S、A145T、A145H、A145K、A145F、A145D、A145G、A145N、A145P、A145Q、A145Y、A145V、およびA145W(好ましくはD143NおよびA145Rから選択される)。
【0194】
6.XCが、AまたはA-Lから選択され、
XLが存在しないか、または1~11アミノ酸の長さを有するグリシンおよび/またはセリンリンカーであり、好ましくはG、S、G-G、S-G、G-S、G-G-G、S-G-G、G-S-G、G-G-S、G-G-G-G(配列番号16)、G-G-G-S(配列番号17)、G-G-S-G(配列番号18)、G-S-G-G(配列番号19)、S-G-G-G(配列番号20)、G-G-G-G-G(配列番号21)、S-G-G-G-G(配列番号22)、G-S-G-G-G(配列番号23)、G-G-S-G-G(配列番号24)、G-G-G-S-G(配列番号25)、G-G-G-G-S(配列番号26)、G-G-G-G-G-G(配列番号27)、S-G-G-G-G-G(配列番号28)、G-S-G-G-G-G(配列番号29)、G-G-S-G-G-G(配列番号30)、G-G-G-S-G-G(配列番号31)、G-G-G-G-S-G(配列番号32)、G-G-G-G-G-S(配列番号33)、G-G-G-S-G-G-G-S(配列番号34)、S-G-G-G-S-G-G-G(配列番号35)、G-G-G-G-G-G-G-G(配列番号36)、G-S-G-G-G-S-G-G(配列番号37)、G-G-S-G-G-G-S-G(配列番号38)、S-G-G-G-S-G-G-G-S(配列番号39)、G-S-G-G-G-S-G-G-G(配列番号40)、G-G-S-G-G-G-S-G-G(配列番号41)、G-G-G-S-G-G-G-S-G(配列番号42)、S-G-G-G-S-G-G-G-S-G(配列番号43)、G-S-G-G-G-S-G-G-G-S(配列番号44)、G-G-S-G-G-G-S-G-G-G(配列番号45)、G-G-G-S-G-G-G-S-G-G(配列番号46)、S-G-G-G-S-G-G-G-S-G-G(配列番号47)、G-S-G-G-G-S-G-G-G-S-G(配列番号48)、G-G-S-G-G-G-S-G-G-G-S(配列番号49)、およびG-G-G-S-G-G-G-S-G-G-G(配列番号50)、より好ましくはG-G-G-G(配列番号16)、G-G-G-G-S(配列番号26)、およびG-G-G-S-G-G-G-S(配列番号34)から選択され;
XNが存在しないか、またはK、D-K、S-D-K、P-S-D-K(配列番号6)、T-P-S-D-K(配列番号7)、R-T-P-S-D-K(配列番号8)、およびS-R-T-P-S-D-K(配列番号9)から選択される、先行項目のいずれかに記載のポリペプチド。
【0195】
7.(i)XCがA-Lであり、XLが存在せず、XNがS-R-T-P-S-D-K(配列番号9)から選択される;
(ii)XCがA-Lであり、XLがG-G-G-G(配列番号16)であり、XNがS-D-K、P-S-D-K(配列番号6)、T-P-S-D-K(配列番号7)、R-T-P-S-D-K(配列番号8)、好ましくはP-S-D-K(配列番号6)から選択される;
(iii)XCがA-Lであり、XLがG-G-G-S-G-G-G-S(配列番号34)であり、XNがKおよびD-Kから選択される;
(iv)XCがA-Lであり、XLがGであり、XNがR-T-P-S-D-K(配列番号8)、S-R-T-P-S-D-K(配列番号9)、好ましくはS-R-T-P-S-D-K(配列番号9)から選択される;
(v)XCがA-Lであり、XLがG-Gであり、XNがT-P-S-D-K(配列番号7)、R-T-P-S-D-K(配列番号8)、S-R-T-P-S-D-K(配列番号9)、好ましくはR-T-P-S-D-K(配列番号8)から選択される;または
(vi)XCがA-Lであり、XLがG-G-Gであり、XNがP-S-D-K(配列番号6)、T-P-S-D-K(配列番号7)、R-T-P-S-D-K(配列番号8)、S-R-T-P-S-D-K(配列番号9)、好ましくはT-P-S-D-K(配列番号7)から選択される、先行項目のいずれかに記載のポリペプチド。
【0196】
8.動的光散乱法によって決定される62℃よりも高い凝集開始温度(Tm)を有する、先行項目のいずれかに記載のポリペプチド。
【0197】
9.以下である先行項目のいずれかに記載の少なくとも2つのポリペプチドを含むポリペプチド多量体、
(a)ともに連結されており、1~30アミノ酸、好ましくは7~15アミノ酸の長さを有するアミノ酸リンカーによって好ましくはともに連結されているか;または
(b)(好ましくは、多量体化ドメイン、血清タンパク質、サイトカイン、ターゲティング部分または毒素からなる群から選択される)タンパク質に連結されており、任意で前記ポリペプチドは、1~30アミノ酸、好ましくは7~15アミノ酸の長さを有するアミノ酸リンカーによって前記タンパク質に連結されている。
【0198】
10.A.ポリペプチド多量体が以下の特性のうち少なくとも1つを有する:
少なくとも72℃、好ましくは少なくとも74℃の凝集開始温度(Tm);
37℃のヒト血漿中での8日間のインキュベーション後において、15%、12%、10%、好ましくは10%よりも大きく減少していないHeLa-TNF-R2細胞中のTNFR2への結合のEC50;
100pM未満、好ましくは80pM未満のMEF上に発現したTNFR2への結合のEC50;
200pM未満、好ましくは100pM未満のKym-1細胞上のTNFR2への結合のEC50;
30pM未満、好ましくは10pM未満のHeLa-TNF-R2細胞におけるNF-κBの活性化のEC50;
および/または
B.多量体化ドメインが、二量体化ドメイン、三量体化ドメインまたは四量体化ドメインであり、好ましくは以下である
(i)二量体化ドメインが、抗体、抗体重鎖、免疫グロブリンFc領域、IgMの重鎖ドメイン2(CH2)(MHD2)、IgEの重鎖ドメイン2(CH2)(EHD2)、IgGの重鎖ドメイン3(CH3)、IgAの重鎖ドメイン3(CH3)、IgDの重鎖ドメイン3(CH3)、IgMの重鎖ドメイン4(CH4)、IgEの重鎖ドメイン4(CH4)、Fab、Fab2、ロイシンジッパーモチーフ、barnase-barstar二量体、ミニ抗体およびZIPミニ抗体、好ましくはFcRおよび/またはC1q結合を有しない免疫グロブリンFc領域変異体、より好ましくはFcΔab、LALA、LALA-GP、IgG2、IgG2σ、アグリコシル化IgG1、IgG1(L234F/L235E/LP331S)、IgG2m4、IgG4 ProAlaAla、最も好ましくはFcΔabからなる群から選択される;
(ii)三量体化ドメインが、テネイシンC(TNC)、コラーゲンXVIIIのC末端非コラーゲン性ドメイン(NC1)の三量体化領域、Fab3様分子、およびTriBiミニボディからなる群から選択される;または
(iii)四量体化ドメインが、p53の四量体化ドメイン、general control protein 4(GCN4)の四量体化ドメイン、VASP(血管拡張因子刺激リン酸化タンパク質)の四量体化ドメイン、タンデム二重特異性抗体、およびジダイアボディ(di-diabody)からなる群から選択される;
および/または
C.ポリペプチド多量体が、臓器、組織または細胞型に特異的なリガンド、より好ましくはトランスフェリン受容体、インスリン受容体、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)、ジフテリア毒素受容体、排出ポンプ、CD25、CD28、GLUT1、LAT1、TMEM119、PDGFR、VEGFR1、VEGFR3、およびRVG-29の受容体から選択される標的に結合しているターゲティング部分をさらに含む、項目9記載のポリペプチド多量体。
【0199】
11.項目1~8のいずれかに記載のポリペプチドまたは項目9または10に記載のポリペプチド多量体をコードする核酸分子。
【0200】
12.項目11記載の核酸分子をコードするベクター。
【0201】
13.医薬としての使用のための、項目1~8のいずれかに記載のポリペプチド、項目9または10に記載のポリペプチド多量体、項目11記載の核酸、または項目12記載のベクター。
【0202】
14.項目1~8のいずれかに記載のポリペプチド、項目9または10に記載のポリペプチド多量体、項目11記載の核酸、または項目12記載のベクターを活性物質として含む医薬組成物。
【0203】
15.過剰増殖性障害、炎症性障害、神経変性疾患または代謝性障害(好ましくは、がんまたは血液系の悪性腫瘍)、自己免疫障害、メタボリックシンドローム、循環器疾患、神経障害性疾患、および神経傷害の診断、予防または処置における使用のための、項目1~8のいずれかに記載のポリペプチド、項目9または10に記載のポリペプチド多量体、項目11記載の核酸、項目12記載のベクター、または項目14記載の医薬組成物。
【配列表】