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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】噴霧ノズル
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/00 20060101AFI20250109BHJP
   B05B 15/00 20180101ALI20250109BHJP
【FI】
B05B1/00 Z
B05B15/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022091490
(22)【出願日】2022-06-06
(65)【公開番号】P2023178674
(43)【公開日】2023-12-18
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】397002360
【氏名又は名称】ヤマホ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】今川 良成
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/047227(WO,A1)
【文献】特開平02-205566(JP,A)
【文献】特公昭49-022173(JP,B1)
【文献】特開2001-270538(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0110439(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00
B05B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心部に液体通路が貫通形成され、先端部の外周に雄ねじが形成された筒状のノズル本体と、前記ノズル本体の液体通路に供給された液体を噴出する噴口があけられたノズル先端部材と、前記ノズル本体の先端部にねじ結合し、前記ノズル先端部材を前記噴口が露出する状態で前記ノズル本体の先端に固定するキャップとを備えた噴霧ノズルにおいて、
前記キャップは、前記ノズル本体の雄ねじとねじ結合する雌ねじよりもねじ込み先端側の内周に、周方向両側に傾斜面を有する山形の突起が周方向に連続する係合部が設けられており、
前記ノズル本体は、前記雄ねじよりも軸方向中央側の外周に、前記キャップの係合部と係合する係合片が弾性変形によって径方向内側へ変位可能に設けられていることを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項2】
前記係合片は、前記ノズル本体の外周から径方向に対して斜めに延び出す支持部と、前記支持部の先端側に連続し、前記キャップの周方向で隣り合う前記突起どうしの間の谷部に入り込む凸部とからなるものであることを特徴とする請求項1に記載の噴霧ノズル。
【請求項3】
前記係合片は、前記ノズル本体の周方向に等間隔で複数設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の噴霧ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬や水等の液体の散布に用いられる噴霧ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
農薬や水等の液体の散布に用いられる噴霧ノズルには、軸心部に液体通路が貫通形成され、先端部の外周に雄ねじが形成された筒状のノズル本体と、ノズル本体の液体通路に供給された液体を霧粒として噴出する噴口があけられた噴板やノズルチップ等のノズル先端部材と、ノズル本体の先端部にねじ結合し、ノズル先端部材をその噴口が露出する状態でノズル本体の先端に固定するキャップとを備えたものが多い(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-51427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような噴霧ノズルでは、使用中の振動等によってキャップのノズル本体に対する締め付けが徐々に緩んでいき、その緩みによって噴板やノズルチップ等のノズル先端部材が回転してしまうことがある。ノズル先端部材の周方向位置が変化すると、その噴口から噴出される霧粒が意図しない方向に向くようになって、対象物への液体の散布が効率よく行われなくなるおそれがある。
【0005】
これに対しては、定期的にキャップを締め直すようにすればよいが、大型の噴霧器(例えば、長尺のブームの長手方向に所定間隔で多数の噴霧ノズルを取り付けたブームスプレイヤー)等では、キャップの締め直し作業が煩雑なものとなる。
【0006】
そこで、本発明は、噴霧ノズルのノズル本体にねじ結合してノズル先端部材を固定するキャップを、簡単な構造で安定して緩み止めできるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、軸心部に液体通路が貫通形成され、先端部の外周に雄ねじが形成された筒状のノズル本体と、前記ノズル本体の液体通路に供給された液体を噴出する噴口があけられたノズル先端部材と、前記ノズル本体の先端部にねじ結合し、前記ノズル先端部材を前記噴口が露出する状態で前記ノズル本体の先端に固定するキャップとを備えた噴霧ノズルにおいて、前記キャップは、前記ノズル本体の雄ねじとねじ結合する雌ねじよりもねじ込み先端側の内周に、周方向両側に傾斜面を有する山形の突起が周方向に連続する係合部が設けられており、前記ノズル本体は、前記雄ねじよりも軸方向中央側の外周に、前記キャップの係合部と係合する係合片が弾性変形によって径方向内側へ変位可能に設けられている構成を採用した。
【0008】
上記の構成では、ノズル本体へノズル先端部材を固定する際に、キャップをノズル本体の先端部にねじ結合させていくと、キャップの係合部がノズル本体の係合片に当接するようになるが、キャップを回転操作する力をある程度大きくすれば、係合部の突起が係合片を弾性変形により径方向内側へ変位させて係合片を乗り越えるので、キャップをスムーズに締め付けていくことができる。そして、その締め付けが完了して係合部と係合片が係合した状態では、振動等によりキャップを緩める方向に力を受けても、その力が係合部の突起に係合片を乗り越えさせるほどの大きさにならない限り、キャップを安定して緩み止めすることができる。
【0009】
また、このようにしてキャップを緩み止めする機構は、キャップのねじ込み先端側の内周に形成される複数の山形の突起からなる係合部と、ノズル本体の外周に径方向内側へ変位可能に設けられる係合片とだけで構成されるので、構造が簡単で、噴霧ノズル全体の部品点数を増加させることもない。
【0010】
ここで、前記係合片としては、前記ノズル本体の外周から径方向に対して斜めに延び出す支持部と、前記支持部の先端側に連続し、前記キャップの周方向で隣り合う前記突起どうしの間の谷部に入り込む凸部とからなるものを採用することができる。この係合片を採用すれば、キャップの緩みに対する抵抗力(着脱しやすさ)の設計を容易に調整できるものとなる。
【0011】
また、前記係合片が、前記ノズル本体の周方向に等間隔で複数設けられている構成とすれば、キャップを回転させる力がキャップにバランスよく加わるようになって好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の噴霧ノズルは、上述したように、キャップをノズル本体にねじ結合させていくと、キャップのねじ込み先端側の内周に形成した複数の山形の突起からなる係合部と、ノズル本体の外周に径方向内側へ変位可能に設けた係合片とが係合するようにしたものであるから、簡単な構造で安定してキャップを緩み止めすることができる。したがって、使用中の振動等によるノズル先端部材の回転を防止でき、定期的なキャップの締め直しを行わなくても、対象物への液体の散布を常に的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態の噴霧ノズルの外観斜視図
図2図1の噴霧ノズルの要部の分解斜視図
図3図1の噴霧ノズルの縦断正面図
図4図3のIV-IV線に沿った断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1乃至図4に基づき本発明の実施形態を説明する。この噴霧ノズルは、図1乃至図3に示すように、軸心部に液体通路1aが貫通形成され、先端部の外周に雄ねじ1bが形成された筒状のノズル本体1と、ノズル本体1の先端部にねじ結合するキャップ2と、キャップ2によってノズル本体1に取り付けられる円盤状の噴板(ノズル先端部材)3と、噴板3とノズル本体1の間をシールする環状のシール部材4と、ノズル本体1の先端面と噴板3との間に配される中子5と、ノズル本体1の後端近傍の液体通路1aに配されるオリフィス板6と、ノズル本体1の後端面と密着する円筒状のパッキン7と、パッキン7の内側に配されるフィルタ8と、ノズル本体1の後端部を保持するホルダ9と、ホルダ9をノズル本体1に接続するユニオンナット10と、ユニオンナット10を緩み止めするロックナット11とを備えている。そして、ノズル本体1とキャップ2との間には、キャップ2をノズル本体1に対して緩み止めする機構(以下、「緩み止め機構」と称する。)12が設けられている。
【0015】
ノズル本体1は、液体通路1aの先端大径部の内周に、一対の円弧状の中子受け1cがノズル本体1の先端面から僅かに突出する状態で設けられ、液体通路1aの先端大径部の底となる段差面には一対のピン穴1dが設けられている。また、長手方向中央部に外周面から液体通路1aに貫通する空気導入孔1eが設けられ、後端部の外周にはユニオンナット10を係止するためのフランジ1fが設けられている。
【0016】
キャップ2は、その内周にノズル本体1の雄ねじ1bとねじ結合する雌ねじ2aが形成されており、先端に内フランジ2bを有している。そして、ノズル本体1の先端面にシール部材4を介して噴板3を押し付けた状態で、ノズル本体1とねじ結合することにより、噴板3の外周縁部を内フランジ2bで締め付けて、噴板3をシール部材4および中子5とともにノズル本体1に固定するようになっている。
【0017】
噴板3は、径方向に沿って延びる断面U字状の膨出部3aが形成されており、その膨出部3aの長手方向中央に、ノズル本体1の液体通路1aに供給された液体を噴出する噴口3bがあけられている。そして、キャップ2により噴口3bが露出する状態でノズル本体1の先端に固定されている。
【0018】
シール部材4は、汎用のOリングが用いられており、キャップ2の締め付けにより噴板3とノズル本体1の先端面との間で圧縮されて、噴板3とノズル本体1との間を液密に封止するようになっている。
【0019】
中子5は、ノズル本体1の空気導入孔1eから吸い込まれた空気と混合されて液体通路1aを通ってきた液体の流れを整えるもので、その液体を噴板3に向けて流す流路5aが2つ設けられている。また、背面(ノズル本体1側の面)には一対の位置決めピン5bが設けられ、前面(噴板3側の面)の周縁部には一対の突起5cが設けられている。そして、各位置決めピン5bがノズル本体1のピン穴1dに挿入され、背面の周縁部の一部がノズル本体1の中子受け1cに当接する状態で組み込まれている。この組み込みの際には、中子5の各突起5cが噴板3の膨出部3aの背面(中子5側の面)の溝に嵌まり込み、これによって中子5と噴板3とが周方向に位置決めされるようになっている。
【0020】
ホルダ9は、パッキン7の内側空間を介してノズル本体1の液体通路1aに連通する液体導入路9aを有し、先端部がノズル本体1の後端部およびパッキン7の外周を保持する状態で、外部の導液管等の液体供給源(図示省略)に接続される部材である。
【0021】
ユニオンナット10は、先端に内フランジ10aを有しており、ホルダ9の先端部とねじ結合することにより、内フランジ10aでノズル本体1のフランジ1fを締め付けてノズル本体1をホルダ9に接続し、その状態でロックナット11によって緩み止めされるようになっている。
【0022】
ここで、上述した各部材のうち、噴板3、オリフィス板6およびフィルタ8はステンレス鋼で形成されており、シール部材4およびパッキン7はゴム製、それ以外の部材は樹脂製である。樹脂製とした部材の材質は散布する液体に対して耐性のある他の材質に代えることもできるが、ノズル本体1については後述するように樹脂製とすることが好ましい。
【0023】
キャップ2をノズル本体1に対して緩み止めする緩み止め機構12は、図3および図4に示すように、キャップ2の雌ねじ2aよりもねじ込み先端側の内周に、周方向両側に傾斜面を有する山形の突起13aが周方向に連続する係合部13を設けるとともに、図2乃至図4に示すように、ノズル本体1の雄ねじ1bよりも軸方向中央側の外周の中心対称位置に、キャップ2の係合部13と係合する一対の係合片14を設けたものである。
【0024】
ノズル本体1の各係合片14は、ノズル本体1の外周から径方向に対して斜めに延び出す支持部14aと、支持部14aの先端側に連続し、キャップ2の周方向で隣り合う突起13aどうしの間の谷部に入り込む凸部14bとからなり、支持部14aのたわみ変形によってノズル本体1の径方向内側へ変位可能な状態で設けられている。ここで、各係合片14はノズル本体1と一体に樹脂で形成され、支持部14aのたわみ変形により適度な変位量が生じるように設計されている。
【0025】
上記の緩み止め機構12の採用により、ノズル本体1へ噴板3をシール部材4および中子5とともに固定する際に、キャップ2をノズル本体1の先端部にねじ結合させていくと、キャップ2の係合部13がノズル本体1の各係合片14の凸部14bに当接するようになる。しかし、このときにキャップ2を回転操作する力をある程度大きくすれば、係合部13の突起13aが係合片14の支持部14aをたわませて径方向内側へ変位させながら係合片14の凸部14bを乗り越えるので、キャップ2をスムーズに締め付けていくことができる。そして、キャップ2を十分に締め付けた後、キャップ2の周方向で隣り合う突起13aどうしの間の谷部に係合片14の凸部14bが入り込んだ係合状態として、締め付けを完了することができる。
【0026】
このようにキャップ2の締め付けが完了して、ノズル本体1の係合片14がキャップ2の係合部13に係合した状態では、振動等によりキャップ2を緩める方向に力を受けても、その力が係合部13の突起13aに係合片14の凸部14bを乗り越えさせるほどの大きさにならない限り、キャップ2を安定して緩み止めすることができる。
【0027】
一方、噴板3の交換等の際には、ある程度の力でキャップ2を締め付け時と逆の方向に回転操作するだけで、係合部13の突起13aが係合片14の凸部14bを乗り越えていくので、キャップ2をスムーズに緩めてノズル本体1から取り外すことができる。
【0028】
この噴霧ノズルは、上記の構成であり、外部の液体供給源からホルダ9の液体導入路9aに供給された液体が、パッキン7の内側のフィルタ8を通ってノズル本体1の液体通路1aに流れ込み、オリフィス板6を通過して空気導入孔1eから導入される空気と混合された後、中子5の流路5aを通る際に整流されて、噴板3の噴口3bから霧粒の状態で噴射される。
【0029】
ここで、噴板3をノズル本体1に固定するキャップ2は、緩み止め機構12によってノズル本体1に対して緩み止めされ、使用中の振動等では容易に回転しないようになっている。したがって、定期的なキャップ2の締め直しを行わなくても、対象物への液体の散布を常に的確に行うことができ、従来の煩雑なキャップ締め直し作業をなくすことができる。
【0030】
また、緩み止め機構12は、キャップ2の内周に形成される複数の山形の突起13aからなる係合部13と、ノズル本体1の外周に設けられる係合片14とだけで構成されるので、構造が簡単で、噴霧ノズル全体の部品点数を増加させることもない。
【0031】
さらに、ノズル本体1の係合片14は、ノズル本体1の外周から径方向に対して斜めに延び出す支持部14aを有するものであるから、その支持部14aの長さや断面積の変更により、キャップ2の緩みに対する抵抗力(着脱しやすさ)の設計を容易に調整することができる。
【0032】
なお、係合片は、ノズル本体の外周に少なくとも一つ設けられていればよいが、この実施形態のようにノズル本体の周方向に等間隔で複数設けられている構成とすれば、キャップを回転させる力がキャップにバランスよく加わるようになって好ましい。
【0033】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0034】
例えば、係合片は、実施形態のものに限らず、弾性変形によってノズル本体の径方向内側へ変位可能に設けられるものであればよい。
【0035】
また、本発明は、実施形態のような噴板以外のノズル先端部材(例えば、ノズルチップ等)を組み込んだ噴霧ノズルにももちろん適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 ノズル本体
1a 液体通路
1b 雄ねじ
2 キャップ
2a 雌ねじ
3 噴板(ノズル先端部材)
3b 噴口
12 緩み止め機構
13 係合部
13a 突起
14 係合片
14a 支持部
14b 凸部
図1
図2
図3
図4