(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】高い酸素および水蒸気バリア特性を有する熱架橋ポリ(グルクロン酸)-キトサンフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20250109BHJP
C08G 81/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C08J5/18 CEZ
C08G81/00
(21)【出願番号】P 2022544631
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 US2020053432
(87)【国際公開番号】W WO2021067372
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-08-15
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519326839
【氏名又は名称】ジョージア テック リサーチ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メレディス・ザ・サード,ジェームズ・カーソン
(72)【発明者】
【氏名】サタム,チンメイ
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-099107(JP,A)
【文献】特表2013-510920(JP,A)
【文献】国際公開第2013/077354(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/22
C08G 81/00-85/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(アルキレングリコール)-キトサン-ポリ(グルクロン酸)フィルムを作製する方法であって、
セルロースをNaOHおよびポリ(アルキレングリコール)と接触させて、ポリ(
アルキレングリコール)、NaOH、およびセルロースを含む溶液を形成することと、
ポリ(アルキレングリコール)およびセルロースを含む前記溶液を2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカルおよび酸化剤と接触させて、ポリ(グルクロン酸)およびポリ(アルキレングリコール)を含む溶液を形成することと、
2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル、酸化剤、およびセルロースをポリ(グルクロン酸)およびポリ(アルキレングリコール)を含む前記溶液から分離することと、
ポリ(グルクロン酸)およびポリ(アルキレングリコール)を含む前記溶液をキトサンの酸性溶液と接触させて、キトサン、ポリ(グルクロン酸)、およびポリ(
アルキレングリコール)を含む溶液を形成することと、
キトサン、ポリ(グルクロン酸)、およびポリ(アルキレングリコール)を含む前記溶液をフィルムにキャストまたはコーティングすることと、
前記フィルムを加熱して、前記ポリ(グルクロン酸)を前記キトサンと架橋させ、ポリ(アルキレングリコール)-キトサン-ポリ(グルクロン酸)フィルムを得ることと、を含む、方法。
【請求項2】
キトサン-ポリ(グルクロン酸)フィルムを作製する方法であって、
セルロースをNaOHおよびポリ(アルキレングリコール)と接触させて、ポリ(アルキレングリコール)、NaOH、およびセルロースを含む溶液を形成することと、
ポリ(アルキレングリコール)およびセルロースを含む前記溶液を2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカルおよび酸化剤と接触させて、ポリ(グルクロン酸)およびポリ(
アルキレングリコール)を含む溶液を形成することと、
ポリ(グルクロン酸)を含む前記溶液から、ポリ(アルキレングリコール)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル、酸化剤、セルロース、およびポリ(アルキレングリコール)から、ポリ(グルクロン酸)を単離することと、
ポリ(グルクロン酸)をキトサンの酸性溶液と接触させて、キトサンおよびポリ(グルクロン酸)を含む溶液を形成することと、
キトサンおよびポリ(グルクロン酸)を含む前記溶液をフィルムにキャストまたはコーティングすることと、
前記フィルムを加熱して、前記ポリ(グルクロン酸)を前記キトサンと架橋させ、キトサン-ポリ(グルクロン酸)フィルムを得ることと、を含む、方法。
【請求項3】
ポリ(アルキレングリコール)-キチン-ポリ(グルクロン酸)フィルムを作製する方法であって、
セルロースをNaOHおよびポリ(アルキレングリコール)と接触させて、ポリ(
アルキレングリコール)、NaOH、およびセルロースを含む溶液を形成することと、
ポリ(アルキレングリコール)およびセルロースを含む前記溶液を2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカルおよび酸化剤と接触させて、ポリ(グルクロン酸)およびポリ(アルキレングリコール)を含む溶液を形成することと、
2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル、酸化剤、およびセルロースをポリ(グルクロン酸)およびポリ(アルキレングリコール)を含む前記溶液から分離することと、
ポリ(グルクロン酸)およびポリ(アルキレングリコール)を含む前記溶液をキチンの酸性溶液と接触させて、キチン、ポリ(グルクロン酸)、およびポリ(
アルキレングリコール)を含む溶液を形成することと、
キチン、ポリ(グルクロン酸)、およびポリ(アルキレングリコール)を含む前記溶液をフィルムにキャストまたはコーティングすることと、
前記フィルムを加熱して、前記ポリ(グルクロン酸)を前記キチンと架橋させ、ポリ(アルキレングリコール)-キチン-ポリ(グルクロン酸)フィルムを得ることと、を含む、方法。
【請求項4】
キチン-ポリ(グルクロン酸)フィルムを作製する方法であって、
セルロースをNaOHおよびポリ(アルキレングリコール)と接触させて、ポリ(アルキレングリコール)、NaOH、およびセルロースを含む溶液を形成することと、
ポリ(アルキレングリコール)およびセルロースを含む前記溶液を2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカルおよび酸化剤と接触させて、ポリ(グルクロン酸)およびポリ(
アルキレングリコール)を含む溶液を形成することと、
ポリ(グルクロン酸)を含む前記溶液から、ポリ(アルキレングリコール)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル、酸化剤、セルロース、およびポリ(アルキレングリコール)から、ポリ(グルクロン酸)を単離することと、
ポリ(グルクロン酸)をキチンの酸性溶液と接触させて、キチンおよびポリ(グルクロン酸)を含む溶液を形成することと、
キチンおよびポリ(グルクロン酸)を含む前記溶液をフィルムにキャストまたはコーティングすることと、
前記フィルムを加熱して、前記ポリ(グルクロン酸)を前記キチンと架橋させ、キチン-ポリ(グルクロン酸)フィルムを得ることと、を含む、方法。
【請求項5】
ポリ(アルキレングリコール)およびセルロースを含む前記溶液が、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカルおよび前記酸化剤と接触させられる前に凍結され、次いで解凍される場合の
、請求項
1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化剤が、2,2,5,5-テトラメチルピロリン-N-オキシル、4,4-ジメチルオキサゾリジン-N-オキシル、次亜塩素酸ナトリウム、二酸化窒素および過ヨウ素酸塩、メタ過ヨウ素酸塩および二クロム酸、またはシュウ酸中の二クロム酸塩である
、請求項
1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル、酸化剤、およびセルロースが、水に対して透析することにより、ポリ(グルクロン酸)およびポリ(アルキレングリコール)を含む前記溶液から分離される
、請求項
1又は3に記載の方法。
【請求項8】
キトサンまたはキチンの前記酸性溶液が
、2~4のpHを有する
、請求項
1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリ(アルキレングリコール)が、ポリ(エチレングリコール)である
、請求項
1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ポリ(グルクロン酸)およびポリ(アルキレングリコール)を含む前記溶液が、沈殿剤と混合されて、それにより、ポリ(グルクロン酸)を沈殿させる
、請求項
1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記フィルムが、70~200℃に加熱される
、請求項
1~4のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月30日に出願された米国仮出願第62/908,009号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
現在、再生可能な資源から包装用プラスチックを生成することに極めて大きい関心が向けられている。特に、食品を酸素および水から保護するために使用される可撓性プラスチックは、一般的に、再生可能な資源から生成されておらず、リサイクルすることが困難である。許容できるほど低い酸素および水蒸気透過率、ならびに好適な機械的特性を達成するために、従来の包装では、多数の層が一緒に生成される。これらの層は、使用後に分離してリサイクルすることが困難である。バイオマス由来の材料から層を誘導することにより、堆肥化可能またはリサイクル可能である可撓性フィルムを実現することができる。セルロースおよびキチンは、自然発生する1番目および2番目に最も豊富なポリ(サッカライド)であり、各々が様々な手段を通して生分解可能および堆肥化可能である。食品包装に好適な酸素透過性特性を有するセルロースおよびキチン系フィルムが研究されてきたが、一般的に、これらは、酸素バリア特性に悪影響を及ぼす高い吸水率に悩まされている。加えて、材料の多くは、許容できないほど脆性であり、寸法変更可能に製造するのが困難である。したがって、セルロースもしくはキチン、または天然もしくは農業において見出される他のポリ(サッカライド)から誘導されるが、酸素および水蒸気バリア特性を組み合わせ、寸法変更可能に製造することができる食品包装に好適なプラスチックフィルムの開発に関心が向けられている。本明細書に開示される組成物および方法は、これらのおよび他の必要性に対処するものである。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に具現化され広く説明されるように、開示された材料および方法の目的に従って、開示された主題は、一態様では、化合物、組成物、ならびに化合物および組成物を作製および使用する方法に関する。特定の態様では、開示された主題は、ポリ(アルキレングリコール)-キトサン-ポリ(グルクロン酸)およびキトサン-ポリ(グルクロン酸)を含むフィルムならびに材料に関する。特にポリ(グルクロン酸)をキトサンで熱架橋することを伴う、そのようなフィルムを作製する方法が本明細書に開示される。
【0004】
追加の利点は、以下の説明に一部示され、一部は説明から明らかであるか、または以下に説明される態様の実践によって学習することができる。以下に説明される利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される要素および組み合わせによって実現され、成し遂げられるであろう。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、例示的かつ説明的なものにすぎず、限定するものではないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本明細書に組み込まれてその一部を構成する添付の図面は、以下に説明されるいくつかの態様を例示する。
【0006】
【
図1】本明細書に開示される様々なフィルムの水蒸気透過性のグラフである。熱処理を追加することによるWVTRの低下に対するプラスの効果を示す。
【
図2】4つの試料のFTIRスペクトルを含む。これらは、熱処理(HT)前(Ch-PG)および熱処理後(Ch-PG(HT))のCh-PGフィルム、ならびに熱処理前(PEG-Ch-PG)および熱処理後(PEG-Ch-PG(HT))のPEG-Ch-PGフィルムである。追加のアミド結合の出現に対する熱処理(HT)の効果が示されている。(キトサンには、すでにいくつかのアミド結合が存在している。)
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に説明される材料、化合物、組成物、および方法は、開示された主題の特定の態様の以下の詳細な説明およびそれに含まれる実施例を参照することによってより容易に理解され得る。
【0008】
本発明の材料、化合物、組成物、および方法が開示されて説明される前に、以下に説明される態様は、特定の合成方法または特定の試薬に限定されず、したがって、当然変動し得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は特定の態様を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されるべきである。
【0009】
また、本明細書を通して、様々な刊行物が参照されている。開示された事項が関連する技術水準をより完全に説明するために、これらの刊行物の開示内容全体が参照により本出願に組み込まれる。開示された参考文献はまた、その参考文献が依拠している文中で考察されている、その中に含まれる材料について、参照により個別かつ具体的に本明細書に組み込まれる。
【0010】
一般的な定義
本明細書および添付の特許請求の範囲では、以下の意味を有するように定義される幾つかの用語に言及する。
【0011】
明細書および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」という単語ならびに「含む(comprising)」および「含む(comprises)」などの他の形態の単語は、例えば、他の添加剤、成分、またはステップを含むがこれらに限定せず、それらを除外することを意図しないことを意味する。
【0012】
説明および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「組成物」についての言及は、2つ以上のそのような組成物の混合物を含み、「抑制剤」についての言及は、2つ以上のそのような抑制剤の混合物などを含む。
【0013】
「任意選択の」または「任意選択に」とは、後で説明する事象または状況が発生し得る、または発生し得ないことを意味し、該説明には、事象または状況が発生する場合および発生しない場合が含まれる。
【0014】
本開示の広い範囲を示す数範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、具体例に示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、それらのそれぞれの試験測定値で見出された標準偏差に必然的に起因する一定の誤差を本質的に含有している。その上、種々の範囲の数範囲が本明細書に示されている場合、列挙された値を含めたこれらの値の任意の組み合わせが使用され得ることが企図される。さらに、本明細書では、範囲は、「約」を用いた一方の特定の値から、および/または「約」を用いた他方の特定の値までを表すことができる。そのような範囲が表される場合、別の実施形態には、一方の特定の値から、および/または他方の特定の値までが含まれる。同様に、先行する「約」を使用することにより値が近似値として表される場合、その特定の値は別の態様を成すことが理解されよう。さらに、範囲の各々の端点は、他の端点と関連している場合も、他の端点とは独立している場合でも、有意であることが理解されるであろう。特に記述されていない限り、「約」という用語は、「約」という用語によって修正された特定の値の5%以内(例えば、2%または1%以内)を意味する。
【0015】
本明細書を通して、識別子「第1」および「第2」は、開示された主題の様々な構成要素およびステップを区別する際に役立つようにもっぱら使用されることを理解されたい。識別子「第1」および「第2」は、これらの用語によって修正された構成要素またはステップに対して、いかなる特定の順序、量、好み、または重要性を暗示することを意図するものではない。
【0016】
本明細書で使用されるとき、「組成物」という用語は、指定された量の指定された成分を含む生成物、ならびに指定された量の指定された成分の組み合わせから直接的または間接的に得られる任意の生成物を包含することを意図している。
【0017】
組成物中の特定の要素または構成成分の重量部に対する本明細書および結びの特許請求の範囲における参照は、重量部が表される組成物または物品中の要素または構成成分と任意の他の要素または構成成分との間の重量関係を示す。したがって、2重量部の構成成分Xおよび5重量部の構成成分Yを含有する混合物において、XおよびYは、2:5の重量比で存在し、追加の構成成分が混合物中に含有されているかどうかに関わらず、そのような比で存在する。
【0018】
構成成分の重量パーセント(重量%)は、具体的に相反する記述がない限り、構成成分が含まれる配合物または組成物の総重量に基づく。
【0019】
ここで、開示された材料、化合物、組成物、物品、および方法の特定の態様を詳細に参照し、これらの例を添付の実施例および図に例示する。
【0020】
組成物および方法
本明細書には、ポリ(アルキレングリコール)または類似のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー(例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG))の存在の有無にかかわらず、キトサン-ポリ(グルクロン酸)フィルムまたは膜が開示される。キトサンおよびポリ(グルクロン酸)上のアミン基ならびに酸基が反応して、架橋ネットワークポリマーを形成する。架橋ネットワークは、製造中の固化を加速し(高い分子質量の生成物の沈殿を通して)、使用中の水蒸気による材料の膨潤を制限することができる可能性が高い。開示された材料は、低い酸素透過率および良好な水蒸気透過率を有することができるので、包装におけるバリア用途に使用することができる。これらの材料は、持続可能なものに由来する食品、飲料、および医薬品の包装に使用することができる。
【0021】
ポリ(グルクロン酸)
ポリ(グルクロン酸)は、グルクロン酸のホモポリマーである。それらは、天然に見出すことができるか、またはセルロースなどの天然グルカンの位置選択的酸化によって合成的に生成することができる。Isogaiらは、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル(TEMPO)を使用した再生セルロースのC6一級ヒドロキシルの位置選択的酸化により、水溶性β-(1,4)-D-ポリ(グルクロン酸)(セロウロン酸と呼ばれる)を生成した(Isogai,A.,et al.,Preparation of Polyuronic Acid from Cellulose by TEMPO-mediated Oxidation.Cellulose,1998,5(3):153-164)。天然水溶性β-(1,4)-D-ポリ(グルクロン酸)のいくつかの供給源も確認されており、そのうちの1つはアルファルファ根粒菌によって排出されたエキソポリサッカライドである。
【0022】
開示された組成物中のポリ(グルクロン酸)の量は、少なくとも約5重量%、例えば、少なくとも約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%、約90重量%、または約95重量%であり得る。他の例では、開示された組成物中のポリ(グルクロン酸)の量は、約95重量%未満、例えば、約90重量%、約85重量%、約80重量%、約75重量%、約70重量%、約65重量%、約60重量%、約55重量%、約50重量%、約45重量%、約40重量%、約35重量%、約30重量%、約25重量%、約20重量%、約15重量%、約10重量%、または約5重量%未満であり得る。なお他の例では、開示された組成物中のポリ(グルクロン酸)の量は、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%、約90重量%、または約95重量%であり得、記述された値のいずれかが範囲の上限または下限の端点を成してもよい。例えば、開示された組成物中のポリ(グルクロン酸)の量は、約5重量%~約95重量%、約25重量%~約75重量%、約30重量%~約50重量%、または約50重量%~約70重量%であり得る。具体例では、開示された組成物中のポリ(グルクロン酸)の量は、約33重量%または約50重量%であり得る。
【0023】
キトサン
キトサンは、天然生成量がセルロースと同じ桁である別の豊富に入手可能なバイオポリマーであるキチンから誘導される(Barikani,M.,et al.,Preparation and application of chitin and its derivatives:a review.Iranian Polymer J.,2014,23(4):307-326)。キトサンは線状ポリサッカライド、およびD-グルコサミンのホモポリマーであり、キチンの脱アセチル化によって生成される(Hamed,I.,et al.,Industrial applications of crustacean by-products(chitin,chitosan,and chitooligosaccharides):A review.Trends Food Sci.Tech.,2016,48:40-50)。二級アミノ基の存在によって、キトサンは、酢酸、ギ酸、コハク酸などのような希酸中に可溶性である。キチンおよびキトサンは、同じ材料と考えることができるが、異なる脱アセチル化度、およびそれに対応して異なる二級(-NH2)アミン基の含有量を有する。キトサンは、50モル%未満のアセチル化度を有するキチンである。自然発生するキチンは、鎖に沿ってコモノマーとして分布するキトサンのいくつかの断片を含有し、その親源(甲殻類の外骨格など)からキチンを抽出するプロセスは、いくらかの脱アセチル化につながり、これを極端に実施して、キトサンを生成することができる。キトサンは希薄な酸性水溶液に可溶性であるが、キチンは不溶性であり、固体繊維形態のままである。固体繊維は、大きい凝集体として存在するか、または均質化などの加工を通して、ナノ結晶もしくはナノ繊維へと縮小することができる。本明細書で提供される主な例はキトサンを用いたものであるが、本発明の原理は、それらの表面上にいくらかの量の二級アミンを含有するナノ繊維およびナノ結晶を含む他の形態のキチンに適用可能である。したがって、開示された方法および組成物は、キトサンをキチンと置き換えることができることが明示的に企図される。
【0024】
開示された組成物中のキトサンの量は、少なくとも約5重量%、例えば、少なくとも約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%、約90重量%、または約95重量%であり得る。他の例では、開示された組成物中のキトサンの量は、約95重量%未満、例えば、約90重量%、約85重量%、約80重量%、約75重量%、約70重量%、約65重量%、約60重量%、約55重量%、約50重量%、約45重量%、約40重量%、約35重量%、約30重量%、約25重量%、約20重量%、約15重量%、約10重量%、または約5重量%未満であり得る。なお他の例では、開示された組成物中のキトサンの量は、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%、約90重量%、または約95重量%であり得、記述された値のいずれかが範囲の上限または下限の端点を成してもよい。例えば、開示された組成物中のキトサンの量は、約5重量%~約95重量%、約25重量%~約75重量%、約30重量%~約50重量%、または約50重量%~約70重量%であり得る。具体例では、開示された組成物中のキトサンの量は、約33重量%または約50重量%であり得る。
【0025】
ポリ(アルキレングリコール)
開示された組成物は、ポリ(アルキレングリコール)または類似のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーを含有することができる。そのようなポリマーの例としては、ポリ(エチレングリコール)およびポリ(プロピレングリコール)が挙げられるが、これらに限定されない。存在する場合、ポリ(アルキレングリコール)または類似のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、例えばポリ(エチレングリコール)は、1,000~約10,000g/モル、例えば、約2,000g/モル~約8,000g/モル、約4,000g/モル~約6,000g/モル、約1,000g/モル~約7,000g/モル、または約3,000g/モル~5,000g/モルの分子量を有し得る。開示された組成物中のポリ(アルキレングリコール)または類似のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの量は、約0.1%~約40重量%、例えば、約0.5重量%、約1重量%、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、または約40重量%であり得、記述された値のいずれかが範囲の上限または下限の端点を成してもよい。さらなる例では、ポリ(アルキレングリコール)または類似のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの量は、約0.1重量%~約35重量%、約5重量%~約30重量%、約10重量%~約25重量%、約15重量%~約40重量%、約20重量%~約35重量%、または約33重量%であり得る。他の例では、本組成物は、ポリ(アルキレングリコール)または類似のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーを含有していない。
【0026】
架橋
開示された組成物において、キトサンは、ポリ(グルクロン酸)と架橋される。キトサンを架橋する方法はいくつかある。キトサン自体(Harish Prashanth,K.V.,et al.,Tharanathan,Crosslinked chitosan-preparation and characterization.Carbohydrate Res.,2006,341(1):169-173)、またはo-フタルジアルデヒドのような他の試薬(Rinaudo,M.,New way to crosslink chitosan in aqueous solution.Eur.Polymer J.,2010,46(7):1537-1544)、グルタルアルデヒド(Monteiro,O.A.C.,et al.,Some studies of crosslinking chitosan-glutaraldehyde interaction in a homogeneous system.Intl.J.Biol.Macromol.,1999,26(2):119-128)、バニリン(Zou,Q.,et al.,Preparation and characterization of vanillin-crosslinked chitosan therapeutic bioactive microcarriers.Intl.J.Biol.Macromol.,2015,79:736-747)、および他の多くを用いたキトサンの架橋がすでに研究されている。同様に、セルロースおよびキトサンは、抗細菌複合材料を生成するために使用されており(Yang,J.,et al.,Cellulose-Chitosan Antibacterial Composite Films Prepared from LiBr Solution.Polymers,2018,10(10):1058)、これらの2つのポリマーブレンドは、Isogaiによって研究されてきた(Isogai,A.,et al.,Preparation of cellulose-chitosan polymer blends.Carbohydrate Polymers,1992,19(1):25-28)。AlamおよびChristopherは、部分的に酸化されたセルロースアルデヒドをカルボキシメチル化キトサンで架橋することにより、架橋セルロース-キトサン架橋超吸収性ヒドロゲルを生成した(Alam,M.N.,et al.,Natural Cellulose-Chitosan Cross-Linked Superabsorbent Hydrogels with Superior Swelling Properties.ACS Sustainable Chem.Eng.,2018,6(7):8736-8742)。
【0027】
Tangらは、キトサンおよびTEMPO酸化セルロースナノ小繊維化セルロースを、それらの間の室温での静電引力を利用し、次いで、加熱して、共有アミド連結を生成することにより、結合することができた(Tang,R.,et al.,Coupling chitosan and TEMPO-oxidized nanofibrilliated cellulose by electrostatic attraction and chemical reaction.Carbohydrate Polymers,2018,202:84-90)。とりわけ、Tangらに使用されたセルロースは、セルロースの固体ナノ繊維であり、この表面は軽く酸化されて、表面だけが酸基で改質された。Soniらは、TEMPO酸化セルロースナノ繊維およびキトサンを使用して透明なガスバリアフィルムを生成した。彼らは、フィルムがキトサンフィルムよりも良好な酸素ガスバリア特性を有し、キトサンフィルムよりも良好な熱的および機械的安定性を有することを見出した(Soni,B.,et al.,Transparent bionanocomposite films based on chitosan and TEMPO-oxidized cellulose nanofibers with enhanced mechanical and barrier properties.Carbohydrate Polymers,2016,151:779-789)。Chooらは、ポリビニルアルコール-キトサン複合材料フィルムを生成し、TEMPO酸化セルロースナノ繊維でそれらを強化した(Choo,K.,et al.,Preparation and Characterization of Polyvinyl Alcohol-Chitosan Composite Films Reinforced with Cellulose Nanofiber.Materials,2016,9(8):644)。Yanらは、β-1,3-ポリ(グルクロン酸)構造を持つ負に帯電したカルボン酸カードラン(Cc)、および正に帯電したキトサンを利用することにより、高分子電解質錯体を調製した(Yan,J.-K.,et al.,Formation and characterization of polyelectrolyte complex synthesized by chitosan and carboxylic curdlan for 5-fluorouracil delivery.Intl.J.Biol.Macromol.,2018,107:397-405)。
【0028】
Sanninoら(米国特許第8,658,147号)は、架橋剤としてポリカルボン酸(ポリ(グルクロン酸)を含む)を使用して、ポリマーヒドロゲルを調製するための方法について説明している。Valentova(米国公開第2010-0260809号)は、創傷治癒用途のためのキトサン-グルカン錯体について説明している。Buchananら(米国特許第8,816,066号)は、キトサンにも適用することができるTEMPOを使用したセルロースエステルインターポリマーの酸化方法について説明している。彼らはまた、アニオン性セルロースエステルインターポリマーを使用した逆に帯電した高分子と、治療薬の溶解度調整剤用のキトサンとの間の錯体形成について説明している。
【0029】
本明細書に開示されるように、架橋反応は、キトサンとポリ(グルクロン酸)との間であり、熱的に開始される。
【0030】
具体例
本明細書に開示される組成物の具体例を表1に提供する。
【表1】
【0031】
方法
本明細書には、開示されたポリ(アルキレングリコール)-キトサン-ポリ(グルクロン酸)およびキトサン-ポリ(グルクロン酸)を作製するための方法が開示される。一態様では、本明細書には、ポリ(アルキレングリコール)-キトサン-ポリ(グルクロン酸)フィルムを作製する方法であって、セルロースをNaOHおよびポリ(アルキレングリコール)、例えばポリ(エチレングリコール)と接触させて、ポリ(アルキレングリコール)、NaOH、およびセルロースを含む溶液を形成することと、ポリ(アルキレングリコール)、NaOH、およびセルロースを含む溶液を2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカルおよび酸化剤と接触させて、ポリ(グルクロン酸)およびポリ(アルキレングリコール)を含む溶液を形成することと、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル、酸化剤、およびセルロースをポリ(グルクロン酸)およびポリ(アルキレングリコール)を含む溶液から分離することと、ポリ(グルクロン酸)およびポリ(アルキレングリコール)を含む溶液をキトサンの酸性溶液と接触させて、キトサン、ポリ(グルクロン酸)、およびポリ(アルキレングリコール)を含む溶液を形成することと、キトサン、ポリ(グルクロン酸)、およびポリ(アルキレングリコール)を含む溶液をフィルムにキャストすることと、フィルムを加熱して、ポリ(グルクロン酸)をキトサンと架橋させ、ポリ(アルキレングリコール)-キトサン-ポリ(グルクロン酸)フィルムを得ることと、を含む、方法が開示される。特定の実施形態では、セルロースおよびキトサン構成成分は、それらが熱処理およびアミド反応を受ける場合、完全に可溶性である。
【0032】
別の態様では、本明細書には、キトサン-ポリ(グルクロン酸)フィルムを作製する方法であって、セルロースをNaOHおよびポリ(アルキレングリコール)、例えばポリ(エチレングリコール)と接触させて、ポリ(アルキレングリコール)およびセルロースを含む溶液を形成することと、ポリ(アルキレングリコール)およびセルロースを含む溶液を2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカルおよび酸化剤と接触させて、ポリ(グルクロン酸)およびポリ(アルキレングリコール)を含む溶液を形成することと、ポリ(グルクロン酸)を含む溶液から、ポリ(アルキレングリコール)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル、酸化剤、セルロース、およびポリ(アルキレングリコール)から、ポリ(グルクロン酸)を単離することと、ポリ(グルクロン酸)をキトサンの酸性溶液と接触させて、キトサンおよびポリ(グルクロン酸)を含む溶液を形成することと、キトサンおよびポリ(グルクロン酸)を含む溶液をフィルムにキャストすることと、フィルムを加熱して、ポリ(グルクロン酸)をキトサンと架橋させ、キトサン-ポリ(グルクロン酸)フィルムを得ることと、を含む、方法が開示される。
【0033】
セルロースをNaOHおよびポリ(アルキレングリコール)と接触させて、ポリ(アルキレングリコール)およびセルロースを含む溶液を形成することは、セルロースを1重量%のポリ(エチレングリコール)(PEG)/9重量%のNaOH溶液中に溶解することについて説明しているYanおよびGaoに開示されているように実行することができる(Yan,L.,et al.,Dissolving of cellulose in PEG/NaOH aqueous solution.Cellulose,2008,15(6):789、セルロースの溶解に対するその教示のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。彼らは、セルロースをPEG/NaOH溶液中で混合し、混合物を-15℃で12時間凍結し、次いで、激しい撹拌下で混合物を解凍して、均質なセルロース溶液を生成することにより、1~11.5重量%のセルロースのセルロース溶液を生成することができた。本明細書で使用されるとき、NaOHおよびポリ(アルキレングリコール)を使用するセルロースの溶解は、任意のセルロース源で実行することができる。例えば、セルロースは、微結晶セルロース、ナノ結晶セルロース、セルロース系バイオマス、例えば、綿、木材パルプ、麻、またはリンターであり得る。NaOHは、ポリ(アルキレングリコール)が添加される溶液として提供することができるか、またはポリ(アルキレングリコール)の溶液に添加することができる。代替的に、セルロースは、NaOHを有するか、または次いでNaOHを添加するポリ(アルキレングリコール)に添加することができる。なおさらに、ポリ(アルキレングリコール)は、NaOHを有するか、または次いでNaOHを添加するセルロースに添加することができる。ポリ(アルキレングリコール)は、約1,000g/モル~約10,000g/モル、例えば、約2,000g/モル~約8,000g/モル、約4,000g/モル~約6,000g/モル、約1,000g/モル~約7,000g/モル、または約3,000g/モル~約5,000g/モルの平均MWを有し得る。ある特定の例では、溶液を、例えば液体窒素で凍結し、次いで撹拌しながら解凍して、ポリ(アルキレングリコール)を有する澄明なセルロース溶液を得る。得られる溶液は、溶液の、約1重量%~約12重量%、例えば、約1重量%~約11重量%、約1重量%~約10重量%、約1重量%~約9重量%、約1重量%~約8重量%、約1重量%~約7重量%、約1重量%~約6重量%、約5重量%~約12重量%、約5重量%~約11重量%、約5重量%~約10重量%、または約10重量%~約12重量%のセルロースを含み得る。
【0034】
理論に束縛されることを望むものではないが、CNCはすでに化学的に処理されており、スルホン酸基が容易に外れて、ポリ(グルクロン酸)生成物中にカルボン酸基を形成するため、NaCNCから始めるとより簡単な処理につながると考えられている。しかしながら、NaCNCを単離するために使用される加工を回避するために、パルプから始める方が安価である場合がある。
【0035】
ポリ(アルキレングリコール)およびセルロースを含む溶液を2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)ラジカルおよび酸化剤と接触させて、ポリ(グルクロン酸)およびポリ(アルキレングリコール)を含む溶液を形成することができる。TEMPOの代替物として、2,2,5,5-テトラメチルピロリン-N-オキシルおよび4,4-ジメチルオキサゾリジン-N-オキシルを使用することができる。酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウム、二酸化窒素および過ヨウ素酸塩、メタ過ヨウ素酸塩および二クロム酸、またはシュウ酸中の二クロム酸塩を含み得る。追加の水溶性アルカリ塩も含まれ得る:臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、または水酸化ナトリウムなど、ナトリウムまたはカリウムの水溶性塩。Tangらは、セルロースを尿素/NaOH溶液中に溶解することにより、水溶性TEMPO酸化セルロースを生成することについて説明している(Tang,Z.,et al.,TEMPO-Oxidized Cellulose with High Degree of Oxidation.Polymers,2017,9(9):421)。セルロースを、激しい撹拌下で、7:12:81のNaOH:尿素:水溶液中に-12℃で混合した。溶液を8000rpmで15分間遠心分離して、不溶性不純物を除去し、溶液を40Lの水で希釈した。次いで、懸濁液を濾過し、pHが中性に近づくまで脱イオン水で洗浄した。次いで、懸濁液を液体窒素中で30分間冷却し、-50℃で3日間凍結乾燥して、TEMPO-臭化ナトリウム-次亜塩素酸ナトリウムを利用して酸化されたNaOH/尿素処理セルロースを与えて、水溶性ポリ(グルクロン酸)を得た。Tangらのプロセスとは異なり、本明細書のセルロース溶液は、ポリ(アルキレングリコール)およびNaOHを含む。
【0036】
2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル、酸化剤、およびセルロースは、ポリ(グルクロン酸)およびポリ(アルキレングリコール)または類似のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーを含む溶液から分離することができる。これは、水に対して溶液を遠心分離または透析することによって遂行することができる。透析ステップは、複数回実行することができる。いくつかの実施形態では、ポリ(グルクロン酸)は、ポリ(グルクロン酸)を沈殿させ、次いで単離することにより、ポリ(アルキレングリコール)または類似のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーから分離することができる。エタノールまたはプロパノールなどの沈殿試薬を添加することにより、沈殿を誘発することができる。
【0037】
次に、ポリ(グルクロン酸)および(任意選択で)ポリ(アルキレングリコール)または類似のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーを含む溶液をキトサンの酸性溶液と接触させて、キトサン、ポリ(グルクロン酸)、および(任意選択で)ポリ(アルキレングリコール)または類似のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーを含む溶液を形成することができる。キトサンの酸性溶液は、2~4、例えば、2.5~3.5、または3のpHであり得る。
【0038】
次いで、キトサン、ポリ(グルクロン酸)、および(任意選択で)ポリ(アルキレングリコール)または同様のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーを含む溶液をフィルムにキャストすることができる。キャストは、溶液を型の中、基材上に注ぐこと、溶液を基材上で回転させること、基材上にスプレーコーティングすること、基材上にディップコーティングすることによって、またはドクターブレード、ナイフエッジ、スロットダイ、フレキソ、またはグラビアコーティング法を含む連続コーティングによって実行することができる。次いで、得られた湿潤フィルムを高温で乾燥させる。次いで、得られたものを乾燥させる。
【0039】
最終ステップは、フィルムを加熱して、ポリ(グルクロン酸)をキトサンと架橋させ、ポリ(アルキレングリコール)または類似のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの有無にかかわらず、キトサン-ポリ(グルクロン酸)フィルムを得る。加熱は、35~250℃、例えば、50~225℃、70~200℃、90~175℃、110~150℃、75~250℃、100~200℃、35~100℃、または150~250℃で実行することができる。
【0040】
得られた組成物は、次いで、フィルム、包装紙、梱包材料、包装用フィルム、包帯、衣類、および他の有用な物品を形成するために使用することができる。
【実施例】
【0041】
以下の実施例は、開示された主題にかかる方法および結果を例示するために以下に示される。これらの実施例は、本明細書に開示されている主題の全ての態様を含むことを意図するものではなく、むしろ代表的な方法および結果を説明することを意図している。これらの実施例は、当業者にとって明らかな本発明の均等物および変形を除外することを意図するものではない。
【0042】
ACSグレードの水酸化ナトリウムペレットおよびACSグレードの結晶性臭化ナトリウムは、VWR(Radnor,PA)から入手した。固体ポリ(エチレングリコール)2000は、Fluka Biochemika(Steinheim,Germany)から入手した。TEMPOフリーラジカルは、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から入手した。脱イオン(D.I.)水は、Thermo scientific GenPure UV/UF xCAD plus water purification systemから入手した。凍結乾燥セルロースナノ結晶(CNC)は、Forest Products lab(Madison,WI))から入手した。氷酢酸は、Sigma Aldrich(St.Louis,MO)から購入した。キトサン粉末(最小で90%の脱アセチル化)は、Spectrum Chemicals(Gardena,CA)から入手した。次亜塩素酸ナトリウムは、Publix(Lakeland,FL)から6%の溶液として入手した。
【0043】
実施例1:PEG-キトサン-ポリ(グルクロン酸)フィルム
9gのNaOHペレットおよび1gのPEG2000を90mLの脱イオン水中に溶解した。それに1gの凍結乾燥したCNCを添加した。液体窒素を使用して溶液固体を凍結し、凍結溶液を0℃の冷蔵庫内に24時間保持した。凍結溶液を激しい撹拌下で解凍して、澄明なセルロース溶液を得た。それに12.7gの臭化ナトリウムおよび0.16gのTEMPOを添加した。完全に溶解した後、114mLの6%次亜塩素酸ナトリウムを10分かけて溶液に添加し、溶液を6時間反応させた。5mLのエタノールで反応を停止させた。得られた溶液を、pHが7になるまで500容量の脱イオン水に対して透析して、TEMPO、臭化ナトリウム、および水酸化ナトリウムを除去した。
【0044】
十分な氷酢酸を水中に溶解して、pH3の溶液を得た。キトサンをこのpH3の酸性水中に1%溶液として溶解した。26mLの透析したセルロース-PEG溶液を24mLのキトサン溶液と混合した。溶液を200RPMで10分間撹拌し、次いで、プラスチック(ポリエチレン)ボート内で溶液をキャストした。フィルムを14日間にわたって空気乾燥させ、自立型フィルムを得た。
【0045】
次いで、PEG-キトサン-ポリ(グルクロン酸)フィルム(PEG-Ch-PG)を150℃の真空オーブン内で3時間加熱して、熱処理フィルム(PEG-Ch-PG(HT))を得た。熱処理中、キトサンおよびグルクロン酸が反応して、アミド結合連結を形成すると予想される。これらの条件は、Sharmaらから取得している(Sharma,S.,et al.,Thermally enhanced high performance cellulose nano fibril barrier membranes.RSC Advances,2014,4(85):45136-45142)。
【0046】
実施例2:キトサン-ポリ(グルクロン酸)フィルム
透析したセルロース溶液をエタノールと混合して、ポリ(グルクロン酸)を沈殿させた。懸濁液を3000RPMで10分間遠心分離することにより、沈殿物を分離した。沈殿物をエタノールで洗浄し、懸濁液を再び同じ条件で遠心分離した。本手順を3回繰り返して、純粋なポリ(グルクロン酸)を得た。ポリ(グルクロン酸)を1重量%溶液として水中に溶解した。26mLのこの溶液を前述のキトサン溶液24mLと混合した。次いで、得られたポリ(グルクロン酸)およびキトサン溶液を、前述のように溶液キャストして、自立型フィルムを得た。
【0047】
次いで、キトサン-ポリ(グルクロン酸)(Ch-PG)フィルムを150℃の真空オーブン内で3時間加熱して、熱処理フィルム(Ch-PG(HT))を得た。上記で示すように、熱処理中、キトサンおよびグルクロン酸が反応して、アミド結合連結を形成すると予想される。これらの条件は、Sharmaらから取得している(Sharma,S.,et al.,Thermally enhanced high performance cellulose nano fibril barrier membranes.RSC Advances,2014,4(85):45136-45142)。
【0048】
実施例3:浸透性アッセイ
自立型フィルムの酸素ガス浸透性は、MOCON OXTRANの機器MOCON OXTRAN1/50を使用して50%相対湿度(RH)および23℃で測定し、一方、自立型フィルムの水蒸気透過性は、MOCON PERMATRAN-W1/50機器を使用して30~60%RH、23℃で取得した。自立型フィルムの厚さは、マイクロメーターを使用して測定した。
【0049】
上記の手順で形成された固体フィルムを酸素および水蒸気透過率について試験した。表2は、厚さおよび酸素圧力差について正規化する浸透性の形態での酸素透過率の結果を提示する。PEG-Ch-PG(HT)およびCh-PG(HT)についてのそれぞれ0.20および0.76の値は、商業的に適切であり、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(塩化ビニリデン)、およびポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)のような従来のバリア包装フィルムに匹敵する。PEG-Ch-PG(HT)の1ミル(25mm)厚のフィルムは、100kPaの酸素圧力差で、通常は、23℃および50%相対湿度での高バリア材料(1cm
3/m
2/日)と見なされる限度内の、0.62cm
3/m
2/日の酸素透過率を有する。
【表2】
【0050】
図1は、フィルム厚さに対して正規化された水蒸気透過率(WVTR)を提示する。最大50%RHのCh-PG(HT)フィルムは、3~5g mm/m
2/日のWVTRを有し、これは、PETプラスチックと同様である。Ch-PG(HT)フィルムは、熱処理されていないCh-PHフィルムよりも湿度が高くなるため、かなり低いWVTRを有する。PEG-Ch-PG(HT)材料は、40%RHを下回る湿度で同様のWVTRを有するが、RHが上がると、Ch-PHよりも性能が損なわれる(より高いWVTR)。
【0051】
実施例4:フーリエ変換赤外分光法(FTIR)。
図2は、4つの試料について取得したFTIRスペクトルを示す。これらは、熱処理(HT)前(Ch-PG)および熱処理後(Ch-PG(HT))のCh-PGフィルム、ならびに熱処理前(PEG-Ch-PG)および熱処理後(PEG-Ch-PG(HT))のPEG-Ch-PGフィルムである。熱処理されたPEG-Ch-PG(HT)フィルムについては、FTIRスペクトルは、スペクトル間の定量的比較を可能にするために、1150cm
-1でのC-O-Cブリッジ振動を使用して正規化した。PEG-Ch-PG(HT)フィルムについてのヒドロキシルピークは、熱処理されていないPEG-Ch-PGフィルムと比較して、水素結合した-OHのより大きい割合を示しており、弱い水素結合に対応する3450cm
-1での小さいピークの再出現に付随する。1500~1700cm
-1のアミドに関連するバンドの強度は、アミド結合形成の増加を指すアミドIIIの1320cm
-1のC-N伸縮でのピークの強度の増加とともに増加する。
【0052】
Ch-PGフィルムのFTIRスペクトルは、3450cm-1を超える波数で伸縮する遊離水素結合が顕著に存在しないPEG-Ch-PGフィルムと同様である。アミドに対応するバンドは、PEG-Ch-PGフィルムと同様に1500~1700cm-1の範囲内で出現する。Ch-PG(HT)およびCh-PGフィルムについてのFTIRデータは、定量的比較を可能にするために、C-O-Cブリッジ振動の強度が同じになるように正規化する。Ch-PG(HT)の熱処理では、水素結合ヒドロキシルのピーク強度が増加するが、弱い水素結合に関連するピークは、熱処理されたPEG-Ch-PG(HT)で見られるほど明確ではない。同様に、アミドに関連するピークも、PEG-Ch-PG(HT)対PEG-Ch-PGで観察したように、Ch-PGと比較してCh-PG(HT)での熱処理で増加する。
【0053】
上記に開示された変形形態、ならびに他の特徴および機能、またはそれらの代替形態は、多くの他の異なるシステムまたは用途に組み合わせることができると理解されよう。その中の様々な現在予見または予期しない代替形態、修正形態、変形形態、または改善形態は、その後当業者によって行われてもよく、これも以下の特許請求の範囲に包含されることを意図している。