(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】双方向トレンチパワースイッチ向けのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H10D 10/00 20250101AFI20250109BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01L29/72 Z
H01L21/265 R
(21)【出願番号】P 2024508549
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 US2022039915
(87)【国際公開番号】W WO2023018769
(87)【国際公開日】2023-02-16
【審査請求日】2024-02-09
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515358931
【氏名又は名称】アイディール パワー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】ブ,ジェンカン
(72)【発明者】
【氏名】ブルシア,コンスタンティン
(72)【発明者】
【氏名】モハブ,アリレザ
(72)【発明者】
【氏名】ナップ,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ブルダール,ロバート ダニエル
【審査官】戸川 匠
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-509141(JP,A)
【文献】特表2018-533205(JP,A)
【文献】特表2019-512885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/331
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体材料の基板の第1の面に関連付けられた上部ベース領域と、
前記第1の面に画成された上部CEトレンチであり、前記第1の面にある近位開口部と、前記基板内の遠位端と、を画成する上部CEトレンチと、
前記上部CEトレンチの前記遠位端に配置された上部コレクタ-エミッタ領域と、
前記基板の第2の面に関連付けられた下部ベース領域と、
前記第2の面に関連付けられた下部コレクタ-エミッタ領域と、
を有する半導体デバイス。
【請求項2】
前記上部CEトレンチは、10ミクロン以上且つ50ミクロン以下の深さを画成する、請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項3】
前記第1の面に画成された上部ベーストレンチであり、前記第1の面にある近位開口部と、前記基板内の遠位端と、を画成する上部ベーストレンチ、
を更に有し、
前記上部ベース領域は、前記上部ベーストレンチの前記遠位端に配置されている、
請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項4】
前記上部ベーストレンチは第1の深さを画成し、前記上部CEトレンチは第2の深さを画成し、前記第1の深さは前記第2の深さよりも大きい、請求項3に記載の半導体デバイス。
【請求項5】
前記第2の面に画成された下部CEトレンチであり、前記第2の面にある近位開口部と、前記基板内の遠位端と、を画成する下部CEトレンチ、
を更に有し、
前記下部コレクタ-エミッタ領域は、前記下部CEトレンチの前記遠位端に配置されている、
請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項6】
前記上部CEトレンチは長円形を画成し、前記下部CEトレンチは長円形を画成する、請求項5に記載の半導体デバイス。
【請求項7】
前記上部CEトレンチと前記下部CEトレンチは
、形状及び大きさに関して製造公差内で一致している、請求項6に記載の半導体デバイス。
【請求項8】
前記第1の面に画成された上部ベーストレンチであり、当該上部ベーストレンチは、前記第1の面にある近位開口部と、前記基板内の遠位端とを画成し、前記上部ベース領域が当該上部ベーストレンチの前記遠位端に配置されている、上部ベーストレンチと、
前記第2の面に画成された下部ベーストレンチであり、当該下部ベーストレンチは、前記第2の面にある近位開口部と、前記基板内の遠位端とを画成し、前記下部ベース領域が当該下部ベーストレンチの前記遠位端に配置されている、下部ベーストレンチと、
を更に有する請求項5に記載の半導体デバイス。
【請求項9】
前記上部ベーストレンチは第1の深さを画成し、前記上部CEトレンチは第2の深さを画成し、前記第1の深さは前記第2の深さよりも大きく、
前記下部ベーストレンチは第3の深さを画成し、前記下部CEトレンチは第4の深さを画成し、前記第3の深さは前記第4の深さよりも大きい、
請求項8に記載の半導体デバイス。
【請求項10】
前記上部CEトレンチの側壁上に配置された酸化物の層、を更に有する請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項11】
半導体デバイスを製造する方法であって、
ドーピングして、半導体材料の基板の第1の面に関連付けられた上部ベース領域を作り出し、
前記第1の面をエッチングして上部CEトレンチを作り出し、該上部CEトレンチは、前記第1の面にある近位開口部と、前記基板内の遠位端とを画成し、
前記上部CEトレンチの前記遠位端を通じてドーピングして上部コレクタ-エミッタ領域を作り出し、
ドーピングして、前記基板の第2の面に関連付けられた下部ベース領域を作り出し、
ドーピングして、前記第2の面に関連付けられた下部コレクタ-エミッタ領域を作り出す、
ことを有する方法。
【請求項12】
ドーピングして前記上部ベース領域を作り出すことに先立って、前記第1の面をエッチングして上部ベーストレンチを作り出し、該上部ベーストレンチは、前記第1の面にある近位開口部と、半導体材料の前記基板内の遠位端とを画成する、
ことを更に有し、
ドーピングして前記上部ベース領域を作り出すことは更に、前記上部ベーストレンチの前記遠位端を通じてドーピングすることを有する、
請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、“System and Method for Bi-Directional Trench Power Switches”と題されて2021年8月10日に出願された米国仮出願第63/231,351号の優先権を主張する。この仮出願を、あたかも以下に完全に複製されているかのように、ここに援用する。
【背景技術】
【0002】
双方向バイポーラ接合トランジスタ(以下、B-TRAN)は、半導体材料の第1の側のベース及びコレクタ-エミッタと、第1の側とは反対側の半導体材料の第2の側の別個の隔てられたベース及びコレクタ-エミッタと、を備えて構築される接合トランジスタである。外部ドライバによって適切に設定されるとき、電流が選択的にいずれかの方向にB-TRANを通って流れることができ、故に、B-TRANデバイスは双方向デバイスとみなされる。コレクタ-エミッタがコレクタ(例えば、電流がB-TRANに流れ込む)とみなされるのか、それともエミッタ(例えば、電流がB-TRANから流れ出る)とみなされるのかは、印加される外部電圧、及び故に、B-TRANを通る電流の方向に依存する。
【0003】
コレクタ-エミッタを通して電流を流すとき、B-TRANデバイスは、VCEONと呼ばれるコレクタ-エミッタ間の電圧降下を示す。B-TRANデバイスは、電力スイッチとして何度も使用されるので、VCEONを低減させるシステム又は方法が、全体的な電力損失を低減させ、ひいては、効率を高める。
【発明の概要】
【0004】
双方向パワースイッチを提供する。少なくとも1つの例は、半導体材料の基板の第1の面に関連付けられた上部ベース領域と、第1の面に画成された上部CEトレンチであり、第1の面にある近位開口部と、基板内の遠位端と、を画成する上部CEトレンチと、上部CEトレンチの遠位端に配置された上部コレクタ-エミッタ領域と、基板の第2の面に関連付けられた下部ベース領域と、第2の面に関連付けられた下部コレクタ-エミッタ領域と、を有する半導体デバイスである。
【0005】
当該半導体デバイス例において、上部CEトレンチは、10ミクロン以上且つ50ミクロン以下の深さを画成し得る。
【0006】
当該半導体デバイス例は更に、第1の面に画成された上部ベーストレンチであり、第1の面にある近位開口部と、基板内の遠位端と、を画成する上部ベーストレンチ、を有することができ、上部ベース領域は、上部ベーストレンチの遠位端に配置される。上部ベーストレンチは第1の深さを画成し、上部CEトレンチは第2の深さを画成し、第1の深さは第2の深さよりも大きくし得る。
【0007】
当該半導体デバイス例は更に、第2の面に画成された下部CEトレンチであり、第2の面にある近位開口部と、基板内の遠位端と、を画成する下部CEトレンチ、を有することができ、下部コレクタ-エミッタ領域は、下部CEトレンチの遠位端に配置される。上部CEトレンチは更に長円形を有することができ、下部CEトレンチは更に長円形を有することができる。上部CEトレンチと下部CEトレンチは製造公差内で一致し得る。当該半導体デバイス例は更に、第1の面に画成された上部ベーストレンチであり、当該上部ベーストレンチは、第1の面にある近位開口部と、基板内の遠位端とを画成し、上部ベース領域が当該上部ベーストレンチの遠位端に配置されている、上部ベーストレンチと、第2の面に画成された下部ベーストレンチであり、当該下部ベーストレンチは、第2の面にある近位開口部と、基板内の遠位端とを画成し、下部ベース領域が当該下部ベーストレンチの遠位端に配置されている、下部ベーストレンチと、を有し得る。上部ベーストレンチは第1の深さを画成し、上部CEトレンチは第2の深さを画成し、第1の深さは第2の深さよりも大きくすることができ、下部ベーストレンチは第3の深さを画成し、下部CEトレンチは第4の深さを画成し、第3の深さは第4の深さよりも大きくすることができる。
【0008】
当該半導体デバイス例は更に、上部CEトレンチの側壁上に配置された酸化物の層を有し得る。
【0009】
当該半導体デバイス例は更に、上部ベース領域はP型であり、上部コレクタ-エミッタ領域はN型であることを有し得る。
【0010】
更なる他の一例は、半導体デバイスを製造する方法であり、当該方法は、ドーピングして、半導体材料の基板の第1の面に関連付けられた上部ベース領域を作り出し、第1の面をエッチングして上部CEトレンチを作り出し、該上部CEトレンチは、第1の面にある近位開口部と、基板内の遠位端とを画成し、上部CEトレンチの遠位端を通じてドーピングして上部コレクタ-エミッタ領域を作り出し、ドーピングして、基板の第2の面に関連付けられた下部ベース領域を作り出し、ドーピングして、第2の面に関連付けられた下部コレクタ-エミッタ領域を作り出す、ことを有する。
【0011】
当該方法例において、エッチングして上部CEトレンチを作り出すことは更に、10ミクロン以上且つ75ミクロン以下の深さを上部CEトレンチが画成するようにエッチングすることを有し得る。
【0012】
当該方法例は更に、ドーピングして上部ベース領域を作り出すことに先立って、第1の面をエッチングして上部ベーストレンチを作り出し、該上部ベーストレンチは、第1の面にある近位開口部と、半導体材料の基板内の遠位端とを画成する、ことを有することができ、ドーピングして上部ベース領域を作り出すことは更に、上部ベーストレンチの遠位端を通じてドーピングすることを有することができる。上部ベーストレンチは第1の深さを画成し、上部CEトレンチは第2の深さを画成し、第1の深さは第2の深さよりも大きくし得る。
【0013】
当該方法例は更に、ドーピングして下部コレクタ-エミッタ領域を作り出すことに先立って、基板の第2の面をエッチングして下部CEトレンチを作り出し、該下部CEトレンチは、第2の面にある近位開口部と、半導体材料の基板内の遠位端とを画成する、ことを有することができ、ドーピングして下部コレクタ-エミッタ領域を作り出すことは更に、下部CEトレンチの遠位端を通じてドーピングすることを有することができる。当該方法例は更に、ドーピングして上部ベース領域を作り出すことに先立って、第1の面をエッチングして上部ベーストレンチを作り出し、該上部ベーストレンチは、第1の面にある近位開口部と、半導体材料の基板内の遠位端とを画成する、ことを有することができ、ドーピングして上部ベース領域を作り出すことは更に、上部ベーストレンチの遠位端を通じてドーピングすることを有することができ、当該方法例は更に、ドーピングして下部ベース領域を作り出すことに先立って、第2の面をエッチングして下部ベーストレンチを作り出し、該下部ベーストレンチは、第2の面にある近位開口部と、半導体材料の基板内の遠位端とを画成する、ことを有することができ、ドーピングして下部ベース領域を作り出すことは更に、下部ベーストレンチの遠位端を通じてドーピングすることを有することができる。上部ベーストレンチは第1の深さを画成し、上部CEトレンチは第2の深さを画成し、第1の深さは第2の深さよりも大きくすることができ、下部ベーストレンチは第3の深さを画成し、下部CEトレンチは第4の深さを画成し、第3の深さは第4の深さよりも大きくすることができる。
【0014】
当該方法例は更に、上部CEトレンチの側壁上に第1の酸化物層を配置し、上部ベーストレンチの側壁上に第2の酸化物層を配置し、下部CEトレンチの側壁上に第3の酸化物層を配置し、下部ベーストレンチの側壁上に第4の酸化物層を配置する、ことを有し得る。
【0015】
当該方法例において、ドーピングして上部ベース領域を作り出すことは更に、注入してP型上部ベース領域を作り出すことを有することができ、ドーピングして上部コレクタ-エミッタ領域を作り出すことは更に、注入してP型コレクタ-エミッタ領域を作り出すことを有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
実施形態例の詳細な説明のため、以下、添付の図面(必ずしも一定の縮尺ではない)を参照する。
【
図2】B-TRANの構築の中間段階における
図1の半導体材料の基板の上側の上面図を示している。
【
図3】少なくとも一部の実施形態に従ったB-TRANの一部の断面図を示している。
【
図4】少なくとも一部の実施形態に従ったB-TRANの一部の、部分的に電気回路図の、部分断面図を示している。
【
図5】少なくとも一部の実施形態に従った、B-TRANの構築の中間段階における
図1の半導体材料の基板の上側の上面図を示している。
【
図6】少なくとも一部の実施形態に従ったB-TRANの一部の断面図を示している。
【
図7】少なくとも一部の実施形態に従った、B-TRANの構築の中間段階における
図1の半導体材料の基板の上側の上面図を示している。
【
図8】少なくとも一部の実施形態に従った方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
特定のシステムコンポーネントを参照するために様々な用語が使用されている。異なる会社は異なる名前でコンポーネントを参照することあり、この文書は、名前は異なるが機能は異ならないコンポーネントを区別することを意図していない。以下の説明及び請求項において、用語“含む”及び“有する”は、オープンエンド的に使用され、従って、“含むが、それに限られない”を意味すると解釈されるべきである。また、用語“結合する”は、間接的な接続又は直接的な接続のどちらも意味することを意図している。従って、第1のデバイスが第2のデバイスに結合する場合、その接続は、直接接続によってでもよいし、又は他のデバイス及び接続を介した間接接続によってでもよい。
【0018】
記載パラメータを参照しての“約”は、記載パラメータ、プラス/マイナス、記載パラメータの10%(+/-10%)を意味する。
【0019】
“双方向ダブルベースバイポーラ接合トランジスタ”は、半導体材料の基板の第1の面又は第1の側にベース及びコレクタ-エミッタを持つとともに、該基板の第2の面又は第2の側にベース及びコレクタ-エミッタを持つ接合トランジスタを意味する。第1の側のベース及びコレクタ-エミッタは、第2の側のベース及びコレクタ-エミッタとは別個である。第1の面に垂直な外向きポインティングベクトルは、第2の面に垂直な外向きポインティングベクトルと反対方向を指す。
【0020】
“上側”は、物体又は領域が半導体デバイスの基板の第1の面に関連付けられることを意味し、重力に対する位置を意味するように読まれるべきでない。
【0021】
“下側”は、物体又は領域が、第1の面とは反対側の半導体デバイスの基板の第2の面に関連付けられることを意味し、重力に対する位置を意味するように読まれるべきでない。
【0022】
“ベース”は、双方向ダブルベースバイポーラ接合トランジスタのベースを意味する。
【0023】
“コレクタ-エミッタ”は、双方向ダブルベースバイポーラ接合トランジスタのコレクタ-エミッタを意味する。コレクタ-エミッタがコレクタとして動作するのか、エミッタとして動作するのかは、双方向ダブルベースバイポーラ接合トランジスタに印加される電圧の極性によって制御される。
【0024】
“オーミックコンタクト”は、2つの材料(例えば、金属と半導体)間の非整流電気接合を意味する。
【0025】
半導体材料の“基板”は、その上及び/又はその中にトランジスタが製造される半導体材料を意味する。トランジスタの特定の部分(例えば、コレクタ-エミッタ領域、ベース領域)が基板内に存在し得るということは、基板としての半導体材料の状態を排除しない。
【0026】
詳細説明
以下の説明は、本発明の様々な実施形態に向けられる。これらの実施形態のうちの1つ以上が好適であることがあるが、開示される実施形態は、請求項を含む本開示の範囲を限定するものとして解釈されたり、その他の方法で使用されたりすべきでない。さらに、当業者が理解することには、以下の説明は広範な応用を有し、いずれの実施形態の説明も、単にその実施形態を例示しようとするものであり、請求項を含む本開示の範囲がその実施形態に限定されることを暗に示す意図はない。
【0027】
様々な例が、半導体材料の基板の少なくとも一方側のコレクタ-エミッタがトレンチ先端ドーピングによって作り出されることで、コレクタ-エミッタ領域が表面より下で基板内に存在するようにされる双方向ダブルベースバイポーラ接合トランジスタ(以下、B-TRAN)に向けられる。一部のケースでは、基板の両側のコレクタ-エミッタがトレンチ先端ドーピングによって作り出される。斯くして、コレクタ-エミッタ領域間の有効距離が互いに接近し、それが、導通期間中のVCEONを低下させ得るとともに、非導通期間中のコレクタ-エミッタ領域と関連するベース領域との間のリーク電流を低下させ得る。より更なる例において、基板の片側又は両側のベース領域がトレンチ先端ドーピングによって作り出され、故に、該ベース領域は、表面より下で基板内に存在する。ベース領域のこの配置は、導通期間中のベース電流の流れの望ましくないピンチオフを抑制し得る。本明細書は、最初に、読者を方向付けるためにB-TRANデバイスの例を参照する。
【0028】
図1は、B-TRANの一部の部分断面図を示している。特に、
図1は、上面又は上側102と下面又は下側104とを有するB-TRAN100を示している。“上”及び“下”という指定は、恣意的なものであり、単に説明の便宜のために使用される。上側102は、下側104とは反対方向に向く。
【0029】
上側102は、ドリフト又はバルク領域108と接合(ジャンクション)を形成するコレクタ-エミッタ領域106を含む。上面102は更に、コレクタ-エミッタ領域106に関連して配置されたベース領域110を画成する。コレクタ-エミッタ領域106は、例えば、上側102を覆う絶縁材料(特に図示されていない)内の窓を通して適用された金属材料などの、コレクタ-エミッタコンタクト112に電気的に結合される。上側102は更に、バルク領域108とジャンクションを形成するベース領域110を含む。ベース領域110は、例えば金属材料などのベースコンタクト114に電気的に結合される。
図1に示したところでは、2つのコレクタ-エミッタコンタクト112及び関連する領域が示され、1つのみのベースコンタクト114及び関連する領域が示されているが、システム例では、2つ以上のコレクタ-エミッタコンタクト及び関連する領域が実装されることができ、2つ以上のベースコンタクト及び関連する領域が実装されることができる。コレクタ-エミッタコンタクトは共に結合されて上部コレクタ-エミッタ116を形成する。複数のベースコンタクトが共に結合されて上部ベース118を形成する。
【0030】
同様に、下側104は、バルク領域108とジャンクションを形成するコレクタ-エミッタ領域120と、コレクタ-エミッタ領域120に電気的に結合されたコレクタ-エミッタコンタクト122とを含む。下側104は、ベース領域126と、ベース領域126に電気的に結合されたベースコンタクト128とを含む。
図1に示したところでは、2つのコレクタ-エミッタコンタクト122及び関連する領域が示され、1つのみのベースコンタクト128及び関連する領域が示されているが、システム例では、2つ以上のコレクタ-エミッタコンタクト及び関連する領域が実装されることができ、2つ以上のベースコンタクト及び関連する領域が実装されることができる。下側104のコレクタ-エミッタコンタクトは共に結合されて下部コレクタ-エミッタ124を形成する。下側104の複数のベースコンタクトが共に結合されて下部ベース130を形成する。
【0031】
例示のB-TRAN100はNPN構造であり、これは、コレクタ-エミッタ領域106及び120がN型であり、ベース領域110及び126がP型であり、バルク領域108がP型であることを意味する。しかし、説明を過度に長くしないように図示していないが、PNP型B-TRANデバイスも企図される。
【0032】
図2は、
図1のB-TRAN100の構築の中間段階における基板の上側102の上面図を示している。特に、
図2にはコレクタ-エミッタ領域200が見えている。コレクタ-エミッタ領域200は、例えば内部領域202、204、及び206などの、ドープされていない幾つかの内部領域を画成する。例示の内部領域206内にベース領域208が画成されている。一例として、ベース領域208がP+領域であり、コレクタ-エミッタ領域200がN+領域であると考えると、
図1の断面図は、
図2の線1-1に沿って取られたとみなすことができるが、留意されたいことには、
図2は、例示のコレクタ-エミッタコンタクト112(
図1)及びベースコンタクト114(
図1)を作り出す金属堆積の前の半導体基板の上側102を示している。
【0033】
図1に戻るに、例示のB-TRAN100において、基板の厚さTは、250マイクロメートル(以下、単にミクロン)から300ミクロンのオーダーであり得る。上側102の例示のコレクタ-エミッタ領域106は、上側102の表面に衝突し、基板内への拡散深さD
Dを持つドーパント原子を注入されたドープ領域である。同様に、下側104の例示のコレクタ-エミッタ領域120は、下側104の表面に衝突し、基板内への拡散深さD
Dを持つドーパント原子を注入されたドープ領域である。コレクタ-エミッタ領域の拡散深さは、コレクタ-エミッタ領域間の隔たり又は間隔S
CEをもたらす。
【0034】
B-TRAN100が、上側102のコレクタ-エミッタ116に下側104のコレクタ-エミッタ124よりも高い電圧を持たせて、外部印加される電圧を持つ状況を考える。B-TRAN100が完全に導通するとき、電流は、コレクタとして機能するコレクタ-エミッタ領域106から、バルク領域108を通って、エミッタとして機能する下側104のコレクタ-エミッタ領域120へ流れる。例示のB-TRAN100が完全に飽和しているときであっても、B-TRAN100を通る電流が、コレクタからエミッタへの電圧降下VCEON(例えば、1.0Vから0.2V)を生じさせ、その大部分は、バルク領域108を通る電流に伴う電圧降下に起因する。さらに、ベース領域及びコレクタ-エミッタ領域がそれぞれの表面に近接していることが、B-TRAN100が非導通であるときに、これらの領域間のリーク電流をもたらし得る。
【0035】
様々な例は、コレクタ-エミッタ領域を基板の表面から隔てる又は遠ざけることによって、電圧降下VCEONを低下させ、同様に、コレクタ-エミッタ領域から関連するベース領域へのリーク電流を低減させ得る。より具体的には、B-TRANの例において、基板の少なくとも一方側のコレクタ-エミッタ領域が、該コレクタ-エミッタ領域が基板の表面より下で基板内に存在するように、トレンチを通してドーパント材料を配置又は注入することによって作り出される。一部のケースでは、半導体材料のスラブの両側のコレクタ-エミッタ領域が、それぞれのトレンチを通しての注入によって作り出される。斯くして、コレクタ-エミッタ領域同士の間の隔たりが小さくなり、それが、導通期間中のVCEONを低下させるとともに、非導通期間中のコレクタ-エミッタ領域と関連するベース領域との間のリーク電流を低下させ得る。
【0036】
図3は、一例のB-TRAN300の一部の断面図を示している。特に、
図3は、上面又は上側304と、下面又は下側306とを持つ半導体材料の基板302を有するB-TRAN300を示している。前述のように、“上側”及び“下側”という指定は、恣意的なものであり、単に説明の便宜のために使用される。上側304は下側306と反対方向を向く。言い換えると、上側304の平均高さに垂直な外向きポインティングベクトル(このベクトルは特に図示されていない)は、下側306の平均高さに垂直な外向きポインティングベクトル(このベクトルは特に図示されていない)に対して反対方向を指す。
【0037】
上側304は、上部コレクタ-エミッタトレンチ308(以下、上部CEトレンチ308)を含む。例示の上部CEトレンチ308は、開放端又は近位開口部310と、底又は遠位端312とを画成し、遠位端312は基板302内に配置される。上部CEトレンチ308は、例えばプラズマエッチングなどの任意の好適技術を用いて基板内に作り出され得る。上部CEトレンチ308は、上面304から遠位端312までで測定される深さDTを画成する。また、上部CEトレンチ308は幅WTを画成する。ケース例において、トレンチの幅に対するトレンチの深さの比は5:1以下(例えば、4:1、2:1)とし得る。例えば、10ミクロンの深さDTを持つトレンチでは、幅WTは少なくとも2ミクロンとし得る。約600Vと1200Vとの間のデバイス電圧定格、及び250ミクロンのウエハ厚さに対して、例示の上部CEトレンチ308は、10ミクロン以上且つ50ミクロン以下の深さDTを持つことができ、故に、それぞれ、少なくとも2ミクロン、少なくとも10ミクロンの幅WTを持つことができる。約600Vと1200Vとの間のデバイス電圧定格、及び300ミクロンのウエハ厚さに対して、例示の上部CEトレンチ308は、35ミクロン以上且つ75ミクロン以下の深さDTを持つことができ、故に、それぞれ、少なくとも6ミクロン、少なくとも15ミクロンの幅WTを持つことができる。
【0038】
なおも
図3を参照するに、例示の上部CEトレンチ308に酸化物層314が付随している。特に、製造プロセスの一部として、酸化物層314は、例示の上部CEトレンチ308の少なくとも側壁上に成長され又は他の方法で作り出される。実際には、酸化物層314は、当初、上側304の全ての表面を覆い得るが、その後、例えば、以下で更に説明する上部CEトレンチ308の遠位端312における開口部及び上部ベース領域を露出させるベース開口部316などの、様々な開口部を作り出すためにエッチング(例えば、プラズマエッチング、ウェットエッチング)され得る。例示の酸化物層314は幾つかの目的を果たし得る。酸化物層314は、上部コレクタ-エミッタ領域(以下で更に説明する)の作成中にバリアとして機能し得る。さらに、酸化物層314は、上部コレクタ-エミッタ領域に関連する電気的接続(例えば、金属、図示せず)を、上部CEトレンチ308の周りのドープされた及びドープされていない半導体材料から電気的に絶縁するように作用し得る。
【0039】
例示のB-TRAN300は、上側304に関連付けられた、バルク又はドリフト領域322とジャンクションを形成する上部コレクタ-エミッタ領域320を有する。
図1のB-TRAN100のコレクタ-エミッタ領域106とは異なり、上部コレクタ-エミッタ領域320は、上部CEトレンチ308の遠位端312を通じてドーパント材料を配置することによって作り出され得る。すなわち、例えば、注入中にドーパントが上面304に衝突するのではなく、ドーパントは、上部CEトレンチ308に沿って進んで、上部CEトレンチ308の遠位端312に露出した半導体材料に衝突する。このような注入は、トレンチ先端注入として参照され得る。他のケースでは、少数キャリア寿命を改善するために、上部CEトレンチ308を介した塩化ホスホリル(POCL3)拡散プロセスが使用されてもよい。使用される方法にかかわらず、トレンチ先端ドーピング及び拡散深さD
Dの結果は、ドーパントを上面に直接衝突させることによる注入(例えば、
図1)と比較して、上部コレクタ-エミッタ領域320が上面304より下で、基板302内のいっそう深くに存在するというものである。言い換えると、一例において、上部コレクタ-エミッタ領域320を形成するドーパントは、上面304と交わったり、上面304に存在したりはしない。
【0040】
上側304に更に、コレクタ-エミッタ領域320に関連して配置されるベース領域323が関連付けられる。
図3の例において、ベース領域323は、注入中に上面304に衝突するドーパントによって作り出される。他のケースでは、少数キャリア寿命を改善するために、三臭化ホウ素(BBr3)拡散プロセスが使用されてもよい。ベース領域323を形成するドーパントは、上面304と交わり又は上面304に存在し、ある拡散深さ(特に図示されていない)まで基板302内に延在することになる。ベース領域323及びC-E領域320のジャンクション深さは、BTRANの電気的性能に基づいて設計され、例えば、より高いブレイクダウン電圧は、通常、より深いジャンクション深さを必要とする。
【0041】
同様に、下側306は、下部コレクタ-エミッタトレンチ324(以下、下部CEトレンチ324)を含む。例示の下部CEトレンチ324は、開放端又は近位開口部326と、底又は遠位端328とを画成し、遠位端328は基板302内に配置される。下部CEトレンチ324は、例えばプラズマエッチングなどの任意の好適技術を用いて基板内に作り出され得る。下部CEトレンチ324は、下面306から遠位端328までで測定される深さDTを画成する。また、下部CEトレンチ324は幅WTを画成する。上部CEトレンチと同様に、下部CEトレンチ324の深さの該トレンチの幅に対する比は5:1以下(例えば、4:1、2:1)とし得る。例示の下部CEトレンチ324は、10ミクロン以上且つ50ミクロン以下の深さDTを持つことができ、故に、それぞれ、少なくとも2ミクロン、少なくとも10ミクロンの幅WTを持つことができる。
【0042】
なおも
図3を参照するに、例示の下部CEトレンチ324に酸化物層330が付随している。特に、製造プロセスの一部として、酸化物層330は、例示の下部CEトレンチ324の少なくとも側壁上に成長され又は他の方法で作り出される。実際には、酸化物層330は、当初、下側306の全ての表面を覆い得るが、その後、例えば、以下で更に説明する下部CEトレンチ324の遠位端328における開口部及び下部ベース領域を露出させるベース開口部332などの、様々な開口部を作り出すためにエッチング(例えば、プラズマエッチング、ウェットエッチング)され得る。前述同様に、例示の酸化物層330は幾つかの目的を果たし得る。酸化物層330は、下部コレクタ-エミッタ領域(以下で更に説明する)の作成中にバリアとして機能し得る。さらに、酸化物層330は、下部コレクタ-エミッタ領域に関連する電気的接続(例えば、金属、図示せず)を、下部CEトレンチ324の周りのドープされた及びドープされていない半導体材料から電気的に絶縁するように作用し得る。
【0043】
例示のB-TRAN300は、下側306に関連付けられた、ドリフト領域322とジャンクションを形成する下部コレクタ-エミッタ領域334を有する。ケース例において、下部コレクタ-エミッタ領域334は、下部CEトレンチ324の遠位端328を通じてドーパント材料を配置することによって作り出される。すなわち、例えば、注入中にドーパントが下面306に衝突するのではなく、ドーパントは、下部CEトレンチ324に沿って進んで、下部CEトレンチ324の遠位端328に露出した半導体材料に衝突する。他のケースでは、ここでもキャリア寿命を改善するために、下部CEトレンチ324を介したPOCL3拡散プロセスが使用されてもよい。使用される方法にかかわらず、トレンチ先端ドーピング及び拡散深さD
Dの結果は、ドーパントを下面に直接衝突させることによる注入(例えば、
図1)と比較して、下部コレクタ-エミッタ領域334が下面306より下で、基板302内のいっそう深くに存在するというものである。言い換えると、一例において、下部コレクタ-エミッタ領域334を形成するドーパントは、下面306と交わったり、下面306に存在したりはしない。
【0044】
下側306に更に、コレクタ-エミッタ領域334に関連して配置されるベース領域336が関連付けられる。
図3の例において、ベース領域336は、注入中に下面306に衝突するドーパントによって作り出される。他のケースでは、少数キャリア寿命を改善するために、BBr3拡散プロセスが使用されてもよい。ベース領域336を形成するドーパントは、下面306と交わり又は下面306に存在し、ある拡散深さ(特に図示されていない)まで半導体材料のスラブ内に延在することになる。ベース領域336及びC-E領域334のジャンクション深さは、BTRANの電気的性能に基づいて設計され、例えば、より高いブレイクダウン電圧は、通常、より深いジャンクション深さを必要とする。
【0045】
上側304に関連する様々な構造及びドーピングを、下側306に関連する様々な構造及びドーピングの鏡像である又は一致するとしている。しかしながら、一部のケースにおいて、上側304の様々な構造及びドーピングは、下側306の様々な構造及びドーピングとは異なる時に構築され、従って、これら2つの側の間で、構造及びドーピングに僅かな違いが存在し得る。それらの違いは製造公差内のバラつきに起因し得るということになるが、そのようなものは、双方向ダブルベースバイポーラ接合トランジスタとしてのデバイスの動作に悪影響を及ぼすものではない。
【0046】
なおも
図3を参照するに、例示のB-TRAN300において、半導体材料のスラブの厚さTは、250ミクロンから300ミクロンのオーダーとし得る。上部CEトレンチ308及び下部CEトレンチ324の深さD
T、並びに上部コレクタ-エミッタ領域320及び下部コレクタ-エミッタ領域334の拡散深さD
Dを考慮に入れると、結果としてコレクタ-エミッタ領域同士の間に得られる間隔S
CEは、
図1のB-TRAN100と比較して著しく減少され、一部のケースにおいて約100ミクロン減少される。上側304のコレクタ-エミッタ領域と下側306のコレクタ-エミッタ領域との間の間隔が短いほど、Vceonが低くなる。さらに、ベース領域とコレクタ-エミッタ領域との間の追加の距離が、B-TRAN300が非導通であるときに、より低いリーク電流をもたらし得る。上部コレクタ-エミッタ領域と下部コレクタ-エミッタ領域との間の間隔は、ドリフト領域幅としても参照され、高電圧(HV)デバイスの電圧定格によっても決定される。例えば、1200VのHVデバイスは、90ミクロンから160ミクロンの間のドリフト領域幅を持つことができ、600VのHVは、45ミクロンから75ミクロンのドリフト領域を持つことができる。
【0047】
図4は、一例のB-TRAN300の一部の、部分的に電気回路図の、部分断面図を示している。特に、
図4は、上部ベース領域323と、上部CEトレンチ308の遠位端の周りに配置された上部コレクタ-エミッタ領域320と、下部ベース領域336と、下部CEトレンチ324の遠位端の周りに配置された下部コレクタ-エミッタ領域334とを含むB-TRAN300を示している。システム例において、上部コレクタ-エミッタ領域320は、例えば酸化物層314内の窓を通して適用される金属材料などの、コレクタ-エミッタコンタクト400に電気的に結合される。同様に、ベース領域323は、例えば酸化物層314の窓を通して適用される金属材料などの、ベースコンタクト402に電気的に結合される。様々な例において、コレクタ-エミッタコンタクト400及びベースコンタクト402の材料は、下に位置する半導体領域とオーミックコンタクトを形成するように選択されて適用される(例えば、サリサイドプロセス)。言い換えると、B-TRAN300が双方向デバイスであることを意図していることを所与として、コンタクト400及び402は、ショットキーバリアを形成しないか、非常に弱いショットキーバリアしか形成しないかである。
図4に示したところでは、2つのコレクタ-エミッタコンタクト400が示され、1つのみのベースコンタクト402が示されているが、システム例では、2つ以上のコレクタ-エミッタコンタクトが実装されることができ、2つ以上のベースコンタクトが実装されることができる。コレクタ-エミッタコンタクトは共に結合されて上部コレクタ-エミッタ404を形成する。複数のベースコンタクトが共に結合されて上部ベース406を形成する。
【0048】
同様に、下部コレクタ-エミッタ領域334は、例えば酸化物層330内の窓を通して適用される金属材料などの、コレクタ-エミッタコンタクト408に電気的に結合される。同様に、ベース領域336は、例えば酸化物層3304の窓を通して適用される金属材料などの、ベースコンタクト410に電気的に結合される。様々な例において、コレクタ-エミッタコンタクト408及びベースコンタクト410の材料は、下に位置する半導体領域とオーミックコンタクトを形成するように選択されて適用される。
図4に示したところでは、2つのコレクタ-エミッタコンタクト408が示され、1つのみのベースコンタクト410が示されているが、システム例では、2つ以上のコレクタ-エミッタコンタクトが実装されることができ、2つ以上のベースコンタクトが実装されることができる。コレクタ-エミッタコンタクトは共に結合されて下部コレクタ-エミッタ412を形成する。複数のベースコンタクトが共に結合されて下部ベース414を形成する。
【0049】
例示のB-TRAN300はNPN構造として示されており、これは、コレクタ-エミッタ領域320及び334がN型であり、ベース領域323及び336がP型であり、バルク基板がP型であることを意味する。留意されたいことには、説明を過度に長くしないように図示していないが、PNP型B-TRANデバイスも企図される。
【0050】
図5は、
図3のB-TRAN300の構築の中間段階における基板の上側304の上面図を示している。特に、
図5には、3つの例示の上部CEトレンチ500、502、及び504が見えている。上部CEトレンチ500、502、及び504に関連するコレクタ-エミッタ領域は、これらのコレクタ-エミッタ領域が表面の下に、従って基板内に配置されることを所与として
図5では見えていない。各上部CEトレンチの内部境界内に、例えば領域506などのベース領域が画成される。文脈上、
図4の断面図は、
図5の線4-4に沿って取られたとみなすことができるが、留意されたいことには、
図5は、例示のコレクタ-エミッタコンタクト400(
図4)及びベースコンタクト402(
図4)を作り出す金属堆積の前の基板の上側304を示している。
【0051】
ケース例において、図示のように、各上部CEトレンチ500、502、及び504が、レーストラックパターン又は長円形(obround)を画成する。代表として上部CEトレンチ504を考えると、代表の上部CEトレンチ504の近位開口部は、第2の直線状の辺510に平行であり且つそれからオフセットされた第1の直線状の辺508を画成する。代表の上部CEトレンチ504の近位開口部は更に、半円状の端部512と、該第1の半円状の端部512とは反対側の第2の半円状の端部514とを画成する。
【0052】
図4及び
図5を同時に検討すると、
図4に示される上部CEトレンチ308の2つの部分は、実際には、上側304に作り出された連続したトレンチである。上部CEトレンチ308は、開いた頂部(上面304で開く)と、遠位端312を画成する閉じた底部とを画成する。上部CEトレンチ308の一貫した造形が、上から見たときにその形状を画成し、この例では長円形であるが、任意の好適形状が使用され得る。同様に、
図4に示される上部コレクタ-エミッタ領域320の2つの部分は、実際には、上部CEトレンチ308を通してドープされ、その下に存在する連続したコレクタ-エミッタ領域320である。上部コレクタ-エミッタ領域320は上部CEトレンチ308を通して注入されるので、ドーパントの等方的な拡散を考慮に入れると、上部コレクタ-エミッタ領域320は上から見たときに同様の形状を持つ。従って、上部CEトレンチ308が長円形を画成する場合、上部コレクタ-エミッタ領域320もそうである。同様の説明が下部CEトレンチ324及び下部コレクタ-エミッタ領域334に適用可能であるが、明細書を過度に長くしないよう、そのような説明は再び繰り返すことはしない。
【0053】
B-TRAN300の動作のシミュレーションは、
図1のB-TRAN100と比較して低下したV
CEONを示している。例えば、5ミクロンの深さD
Tを持つ上部CEトレンチ308とし、それ以外は同様のコレクタ-エミッタ領域及びベース領域注入密度、拡散深さ、印加電圧、及びコレクタ-ベース駆動電流とした、シミュレーションしたシステムでは、B-TRAN300は、電圧降下V
CEONの約20%の減少(例えば、約0.95Vから約0.75Vへ)を示した。コレクタ-エミッタ電流に関して言うと、B-TRAN300は、他の点では同一の電圧降下V
CEONで約2アンペア(A)の電流の増加を示した(例えば、同等の印加電圧及びベース駆動電流で18Aから20Aへの増加)。
【0054】
専ら
図4を再び参照する。上部コレクタ-エミッタ404を正側(すなわち、正端子)にして上部コレクタ-エミッタ404と下部コレクタ-エミッタ412との間に外部電圧(例えば、1200V)が印加される状況を考える。“オフ”状態又は非導通モードでは、下部ベース414は下部コレクタ-エミッタ412に短絡され、上部ベース406が電気的にフローティングにされる。オフ状態では、下部コレクタ-エミッタ領域334を取り囲む空乏領域が拡大して、B-TRAN300を通る電流の流れを防止する。“オン”状態又は導通モードでは、下部ベース414が電気的にフローティングにされ、駆動電圧が上部コレクタ-エミッタ404から上部ベース406に印加され、電流が上部コレクタ-エミッタ404(コレクタとして作用する)から下部コレクタ-エミッタ412(エミッタとして作用する)に流れる。
【0055】
オン状態では、上部コレクタ-エミッタ領域の周りに空乏領域が形成し、該空乏領域の大きさは、上部コレクタ-エミッタ404から上部ベース406に印加される電圧に基づく。一般に、上部コレクタ-エミッタ404に対して上部ベース406に印加される電圧を増加させることは、ベース406の駆動電流を増加させる。ベース406の増加した駆動電流は、コレクタからエミッタへの電流の流れの増加をもたらす。しかしながら、あるポイントで、上部コレクタ-エミッタ404に対する上部ベース406の電圧の増加は、上部ベース領域323からドリフト領域322に供給される駆動電流をピンチオフさせ始めるのに十分なほど、上部コレクタ-エミッタ領域320の周りの空乏領域の大きさを増加させる。その電圧から上方に、上部コレクタ-エミッタ404に対する上部ベース406の電圧を増加させることは、ベース406の駆動電流を減少させる。ベース406の減少した駆動電流は、コレクタからエミッタへの電流の流れの減少をもたらす。一方での上部ベース406における電圧と、他方でのコレクタ-エミッタ電流との間の関係が反転するポイントは、変曲点として参照され得る。言い換えると、例示の上部コレクタ-エミッタ領域320は例示のベース領域323とドリフト領域322との間に存在するので、上部コレクタ-エミッタ領域320の周りの空乏領域が、ベース406に供給される駆動電流をピンチオフさせるように作用し得る。下部コレクタ-エミッタ412が正端子であるような外部電圧であるときには、下部コレクタ-エミッタ領域334及び下部ベース領域336に関して同じ状況が生じ得る。
【0056】
変曲点以下での電流の流れに対して設計されるB-TRANでは、ベース駆動電流ピンチオフは特に問題を提しない。しかしながら、よりハイパワー及びより高電流のデバイスのために、やはりトレンチ及びトレンチ先端注入を用いて、ベース領域の位置を改良することができる。構造の一例を
図6に示す。
【0057】
図6は、一例のB-TRAN600の一部の断面図を示している。特に、
図6は、上面又は上側604と、下面又は下側606とを持つ半導体材料の基板602を有するB-TRAN600を示している。前述のように、“上側”及び“下側”という指定は、恣意的なものであり、単に説明の便宜のために使用される。上側604は、上部CEトレンチ308及び付随する酸化物層314を含む。さらに、上側604は、関連付けられた上部コレクタ-エミッタ領域320を有する。上部コレクタ-エミッタ領域320には同様にコレクタ-エミッタコンタクト400(
図4)が付随するが、この図を更に複雑にしないよう、それらのコンタクトは含めていない。同様に、下側606は、下部CEトレンチ324及び付随する酸化物層330を含む。さらに、下側606は、関連付けられた下部コレクタ-エミッタ領域334を有する。下部コレクタ-エミッタ領域334には同様にコレクタ-エミッタコンタクト408(
図4)が付随するが、この図を更に複雑にしないよう、それらのコンタクトは含めていない。
【0058】
図6の例示のB-TRAN600は上部ベーストレンチ620を含む。例示の上部ベーストレンチ620は、開放端又は近位開口部622と、底又は遠位端624とを画成し、遠位端624は基板602内に配置される。上部ベーストレンチ620は、例えばプラズマエッチングなどの任意の好適技術を用いて基板602内に作り出され得る。上部ベーストレンチ620は、上面604から遠位端624までで測定される深さD
BTを画成する。また、上部ベーストレンチ620は幅W
BTを画成する。ケース例において、トレンチの幅に対するトレンチの深さの比は5:1以下(例えば、4:1、2:1)とし得る。例示の上部ベーストレンチ620は、10ミクロン以上且つ50ミクロン以下の深さD
BTを持つことができ、故に、それぞれ、少なくとも2ミクロン、少なくとも10ミクロンの幅W
BTを持つことができる。ケース例において、図示のように、上部ベーストレンチ620は、上部CEトレンチ308の深さD
Tよりも大きい深さD
BTを持つことができる。
【0059】
なおも
図6を参照するに、例示の上部ベーストレンチ620に酸化物層が付随している。図示した例では、上部CEトレンチ308に付随する酸化物層314が同様に上部ベーストレンチ620に付随し得る。特に、製造プロセスの一部として、酸化物層314は、例示の上部ベーストレンチ620の少なくとも側壁上に成長され又は他の方法で作り出される。実際には、酸化物層314は、当初、上側604の全ての表面を覆い得るが、その後、例えば上部ベーストレンチ620の遠位端624における開口部などの様々な開口部を作り出すためにエッチング(例えば、プラズマエッチング、ウェットエッチング)され得る。前述同様に、例示の酸化物層314は幾つかの目的を果たし得る。酸化物層314は、上部ベース領域(以下で更に説明する)の作成中に注入バリアとして機能し得る。さらに、酸化物層314は、上部ベース領域に関連する電気的接続(例えば、金属、図示せず)を、上部ベーストレンチ620の周りのドープされた及びドープされていない半導体材料から電気的に絶縁するように作用し得る。
【0060】
図1のB-TRAN100の上部ベース領域110とは異なり、上部ベーストレンチ620の遠位端624を通じてドーピングすることによって(例えば、注入プロセス又はBBr3拡散プロセス)、上部ベース領域626が作り出される。トレンチ先端ドーピングと、より少ない程度のベース領域ドーピングの拡散深さ(拡散深さは特に図示されていない)との結果は、ドーパントを上面604に直接衝突させることによる注入と比較して、上部ベース領域626が上面604より下で、基板602内のいっそう深くに存在するというものである。言い換えると、上部ベース領域626を形成するドーパントは、上面604と交わったり、上面604に存在したりはしない。さらに、例示の上部ベース領域626は、上部CEトレンチ308の遠位端312よりも下に存在し、一部のケースでは、破線628によって示されるように、上部ベース領域626の深い方の又は下側の境界が、上部コレクタ-エミッタ領域320の深い方の又は下側の境界とほぼ同じ深さを持つ。
【0061】
図6の例示のB-TRAN600は下部ベーストレンチ630を含む。例示の下部ベーストレンチ630は、開放端又は近位開口部632と、底又は遠位端634とを画成し、遠位端634は基板602内に配置される。下部ベーストレンチ630は、例えばプラズマエッチングなどの任意の好適技術を用いて基板602内に作り出され得る。下部ベーストレンチ630は、下面606から遠位端634までで測定される深さD
BTを画成する。また、下部ベーストレンチ630は幅W
BTを画成する。ケース例において、トレンチの幅に対するトレンチの深さの比は5:1以下(例えば、4:1、2:1)とし得る。例示の下部ベーストレンチ630は、10ミクロン以上且つ50ミクロン以下の深さD
BTを持つことができ、故に、それぞれ、少なくとも2ミクロン、少なくとも10ミクロンの幅W
BTを持つことができる。ケース例において、下部ベーストレンチ630は、下部CEトレンチ324の深さよりも大きい深さD
BTを持つことができる。
図6の例では、下部ベーストレンチ630と上部ベーストレンチ620の深さD
BTがほぼ同じであるように示されている。しかしながら、他の一致しない深さも企図される。
【0062】
なおも
図6を参照するに、例示の下部ベーストレンチ630に酸化物層が付随している。図示した例では、下部CEトレンチ324に付随する酸化物層330が同様に下部ベーストレンチ630に付随し得る。特に、製造プロセスの一部として、酸化物層330は、例示の下部ベーストレンチ630の少なくとも側壁上に成長され又は他の方法で作り出される。実際には、酸化物層330は、当初、下側606の全ての表面を覆い得るが、その後、例えば下部ベーストレンチ630の遠位端634における開口部などの様々な開口部を作り出すためにエッチング(例えば、プラズマエッチング、ウェットエッチング)され得る。前述同様に、例示の酸化物層330は幾つかの目的を果たし得る。酸化物層330は、下部ベース領域(以下で更に説明する)の作成中に注入バリアとして機能し得る。さらに、酸化物層330は、下部ベース領域に関連する電気的接続(例えば、金属、図示せず)を、下部ベーストレンチ630の周りのドープされた及びドープされていない半導体材料から電気的に絶縁するように作用し得る。
【0063】
図1のB-TRAN100の下部ベース領域126とは異なり、下部ベーストレンチ630の遠位端634を通じてドーピングすることによって(例えば、注入プロセス又はBBr3拡散プロセス)、下部ベース領域636が作り出される。トレンチ先端ドーピングと、より少ない程度のベース領域注入の拡散深さ(拡散深さは特に図示されていない)との結果は、ドーパントを下面606に直接衝突させることによる注入と比較して、下部ベース領域636が下面606より下で、基板602内のいっそう深くに存在するというものである。言い換えると、下部ベース領域636を形成するドーパントは、下面606と交わったり、下面606に存在したりはしない。さらに、例示の下部ベース領域636は、下部CEトレンチ324の遠位端328よりも下に存在し、一部のケースでは、下部ベース領域636の深い方の又は下側の境界が、下部コレクタ-エミッタ領域334の深い方の又は下側の境界とほぼ同じ深さを持つ。
【0064】
図7は、
図6のB-TRAN600の構築の中間段階における基板の上側604の上面図を示している。特に、
図7には、3つの例示の上部CEトレンチ500、502、及び504が見えている。上部CEトレンチ500、502、及び504に関連するコレクタ-エミッタ領域は、これらのコレクタ-エミッタ領域が表面の下に、従って基板内に配置されることを所与として
図7では見えていない。各上部CEトレンチの内部境界内に、例えば上部ベーストレンチ700、702、及び704などのベーストレンチが画成される。上部ベーストレンチ700、702、及び704に付随するベース領域は、これらのベース領域が表面の下に、従って基板内に配置されることを所与として
図7では見えていない。文脈上、
図6の断面図は、
図7の線6-6に沿って取られたとみなすことができるが、留意されたいことには、
図7は、例示のコレクタ-エミッタコンタクト及びベースコンタクトを作り出す金属堆積の前の基板の上側604を示している。
【0065】
ケース例において、図示のように、各上部CEトレンチ500、502、及び504が、レーストラックパターン又は長円形を画成する。代表として上部CEトレンチ504を考えると、前述同様に、代表の上部CEトレンチ504の近位開口部は、第1の直線状の辺508及び第2の直線状の辺510を画成する。代表の上部CEトレンチ504の近位開口部は更に、半円状の端部512及び514を画成する。上部ベーストレンチ700、702、及び704は、それらそれぞれの上部CEトレンチ内に存在し、それぞれの上部CEトレンチに対して平行である。
【0066】
図3に戻る。
図3の例示のB-TRANは、トレンチ先端ドーピングによって作り出されたコレクタ-エミッタ領域320及び334を示しており、ベース領域は、それらそれぞれの側の表面に存在する。しかしながら、より更なるケースにおいて、コレクタ-エミッタ領域を作り出すためのトレンチ先端ドーピングは、片側のみ(例えば、上側304のみ)で実施されてもよい。そのようなケースでは、反対側のコレクタ-エミッタ領域及びベース領域は、
図1の片側の構成(すなわち、表面を通じてのドーパント注入によって作り出された領域)に類似することになり、そのようなシステムもなお、
図1の関連技術のB-TRANと比較して低下した電圧降下V
CEONを持ち得る。例えば、基板の厚さTが減少されることがあり、減少された厚さでは、両側にコレクタ-エミッタトレンチを持つことをサポートできないことがある(すなわち、対向する両側のコレクタ-エミッタトレンチの遠位端同士の間の有効厚さが薄すぎて処理に耐えられないことがある)。
【0067】
図6に戻る。
図6の例示のB-TRANは、トレンチ先端ドーピング(例えば、注入、又はPOCL3拡散)によって作り出されたコレクタ-エミッタ領域320及び334と、トレンチ先端ドーピングによって作り出されたベース領域626及び636とを示している。しかしながら、より更なるケースにおいて、コレクタ-エミッタ領域及びベース領域を作り出すためのトレンチ先端注入は、片側のみ(例えば、上側304のみ)で実施されてもよい。そのようなケースにおいて、反対側のコレクタ-エミッタ領域及びベース領域は、
図1の片側の構成(すなわち、表面を通じてのドーピングによって作り出された領域)に類似し得る。他の一ケースにおいて、反対側のコレクタ-エミッタ領域及びベース領域は、
図3の片側の構成に類似してもよい(すなわち、上側は
図6の上側のように実装され、下側は
図3の下側のように実装される)。全てのこのような組み合わせが、
図1の関連技術のB-TRANと比較して低下した電圧降下V
CEONを持ち得る。例えば、基板の厚さTが減少されることがあり、減少された厚さでは、より深いベーストレンチを両側に持つことをサポートできないことがある(すなわち、対向する両側のコレクタ-エミッタトレンチの遠位端同士の間の有効厚さが薄すぎて処理に耐えられないことがある)。従って、上側は、上部CEトレンチ及び上部ベーストレンチ、並びに対応する領域を実装することができ、下側は、トレンチを有しない(例えば、
図1の下側)か、下部CEトレンチのみを有する(例えば、
図3の下側)かであることができる。
【0068】
図8は、少なくとも一部の実施形態に従った方法を示している。当該方法例は、開始し(ブロック800)、ドーピングして、半導体材料の基板の第1の面に関連付けられた上部ベース領域を作り出し(ブロック802)、第1の面をエッチングして上部CEトレンチを作り出し(ブロック804)、該上部CEトレンチは、第1の面にある近位開口部と、基板内の遠位端とを画成し、上部CEトレンチの遠位端を通じてドーピングして上部コレクタ-エミッタ領域を作り出し(ブロック806)、ドーピングして、基板の第2の面に関連付けられた下部ベース領域を作り出し(ブロック808)、そして、注入して、第2の面に関連付けられた下部コレクタ-エミッタ領域を作り出す(ブロック810)、ことを有する。その後、当該方法は終了する(ブロック812)。
【0069】
上の説明は、本発明の原理及び様々な実施形態の例示であることを意図している。上の開示が十分に理解されることで、当業者には数多く変形及び変更が明らかになる。例えば、様々な構造が、インターデジテイト構造を有する任意の半導体デバイスに実装され得る。そのような全ての変形及び変更を包含するように以下の請求項が解釈されることが意図される。