(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ビームスプリッタを有する光学デバイスを備えるレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/352 20140101AFI20250109BHJP
B23K 26/067 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B23K26/352
B23K26/067
(21)【出願番号】P 2021573835
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2020067141
(87)【国際公開番号】W WO2021013447
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】102019119790.2
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521227779
【氏名又は名称】4ジェット マイクロテック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディック、トビアス
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-110587(JP,A)
【文献】特開2008-012546(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0311531(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011101585(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/352
B23K 26/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学デバイ
スを備えるレーザ加工装
置において、
前記光学デバイ
スは、レーザビー
ムを受け入れるための入
口を有し、
前記入口は、前記レーザビー
ムを少なくとも二つの部分ビー
ムに分割するビームスプリッ
タを含み、
前記光学デバイ
スは、レーザスポッ
ト内に干渉パター
ンを生成するために、再び前記
少なくとも二つの部分ビー
ムを一つのレーザスポッ
トにまとめ、
前記入口における前記レーザビームの第一の状態は、前記レーザスポットの中心の第一の位置P1と、第一の干渉パターンとを規定し、
前記入口における前記レーザビームの第二の状態は、前記レーザスポットの中心の第二の位置P2と、第二の干渉パターンとを規定し、
前記第一の状態から前記第二の状態への変化は、前記入
口での前記レーザビームの位置の変化および/または前記入
口に対する前記レーザビー
ムの入射角の変化
を含み、
前記第一の状態から前記第二の状態への前記変化は、距離の変化DP及び位置の変化DSのうちの少なくとも1つを引き起こし、
(i)
前記距離の変化DPは、第一の距離及び第二の距離の差であり、前記第一の距離は、前記第一の位置P1と前記第一の干渉パターンの干渉線に対して交差する第一の方向で前記第一の干渉パターンの前記第一の位置P1に対し最も近くにある干渉極大との間の距離であり、前記第二の距離は、前記第二の位置P2と前記第一の方向で前記第二の干渉パターンの前記第二の位置P2に対し最も近くにある干渉極大との間の距離であり、
(ii)
前記位置の変化DSは、前記第一の位置P1及び前記第二の位置P2の間の差であり、
前記光学デバイ
スは、条件
|DS|+|DP|=n*L
に当てはまるように、前記第一の状態から前記第二の状態への変化の間に連続的
に位置の変化DS
を変化させるように構成されて
おり、
nは、自然数であり、
Lは
、前記
第一の方
向での前記
第一の干渉パターン
または前記第二の干渉パターンの隣接する二つの干渉極
大の間の
距離であり
、±5%の許容誤差範囲を含む、
レーザ加工装
置。
【請求項2】
前記少なくとも二つの部分ビームは二つの部分ビームを含み、
前
記二つの部分ビー
ムは、前記第一の状態で、
前記ビームスプリッタから前記レーザスポットまで至るまでに第一の光学経路長差DI_Aを有し、
前記
二つの部分ビー
ムは、前記第二の状態で、
前記ビームスプリッタから前記レーザスポットまで至るまでに第二の光学経路長差DI_Bを有し、
前記光学デバイ
スは、前記
位置の変化DS(DS=P1-P2
、ここでP1は前記第一の位置であり、P2は前記第二の位置である)
に対し、前記第一の光学経路長差と前記第二の光学経路長差との間の差DI_AB=DI_A-DI_Bを提供し、前記差は、
前記距離の変化DPを引き起こすので、前記第二の干渉パター
ンは、前記第一の干渉パター
ンを同相で継続する、
請求項1に記載のレーザ加工装
置。
【請求項3】
Lが±5%の許容誤差範囲を含む場合に、|DS|+|DP|=n*Lに当てはまるという前記条件は少なくとも、
連続的に前記位置の変化DSを前記レーザスポッ
トの直径に等しい
範囲まで変化させた場合に満たされる、
請求項1または2に記載のレーザ加工装
置。
【請求項4】
前記入
口は、第一の領
域と第二の領
域とを含み、
前記第一の領
域内への前記レーザビームの位置決め及び前記第二の領
域内への前記レーザビー
ムの位置決めのために
前記入口に対する前記レーザビームの前記入射角を変化させる少なくとも1つの可動ミラーを駆動させるアクチュエータデバイ
スを有する、
請求項1から3までのいずれか一項に記載のレーザ加工装
置。
【請求項5】
前記光学デバイ
スは、
前記二つの部分ビームのうち少なくとも一つを透過
させる少なくとも一つの
透過素
子を有し、
前記二つの部分ビームのうち前記少なくとも一つの放射経路が前記
透過素子を通過するように延び
る放射経路の経路長部
分の、前記
透過素
子内での変化は、±5%未
満であり、前記経路長部
分の前記変化は、前記入
口での前記レーザビー
ムの状態の変化により引き起こされる、
請求項1から4までのいずれか一項に記載のレーザ加工装
置。
【請求項6】
前記光学デバイスの
前記ビームスプリッタ以外の全ての光学素子
は、反
射素子である、請求項1から4までのいずれか一項に記載のレーザ加工装
置。
【請求項7】
前記ビームスプリッ
タは、半透過性ミラーである、請求項1から6までのいずれか一項に記載のレーザ加工装
置。
【請求項8】
前記ビームスプリッ
タの後段の前記光学デバイスの各透過性の光学素子のうち、前記
二つの部分ビー
ムの少なくとも一つの放射経
路内に存在する
透過素子における対向する透過面は、最大で10度の角
度をなす、請求項1から5および7のいずれか一項に記載のレーザ加工装
置。
【請求項9】
前記ビームスプリッ
タの後段の前記光学デバイ
スは、プリズムを有していない、請求項1から8までのいずれか一項に記載のレーザ加工装
置。
【請求項10】
前記レーザビー
ムは、CO2レーザビー
ムである、請求項1から9までのいずれか一項に記載のレーザ加工装
置。
【請求項11】
前記レーザ加工装
置が塗料表面を構造化する、請求項1から10までのいずれか一項に記載のレーザ加工装
置。
【請求項12】
表面を干渉構造化する方法において、前記方法は、
前記表面上に第一の干渉パター
ンを生成するステップと、
前記表面上に第二の干渉パター
ンを生成するステップとを含み、前記第一の干渉パターンの生成と前記第二の干渉パター
ンの生成は、
レーザビームを少なくとも二つの部分ビームに分割するビームスプリッタを含む入
口を有す
る光学デバイ
スにより行われ、
前記二つの部分ビームを再びまとめたレーザスポットの中心の第一の位置P1と前記第一の干渉パター
ンとは、
第一の状態にある前記レーザビームにより生成され、前記二つの部分ビームを再びまとめた前記レーザスポットの中心の第二の位置P2と前記第二の干渉パターンとは、第二の状態にある前記レーザビームにより生成され、前記第一の状態から前記第二の状態への変化は、前記入
口でのレーザビームの位置
を変化させること、および/または前記入
口に対する前記レーザビー
ムの入射角を変化させることにより
実行され、これにより、距離の変化DP及び位置の変化DSのうち少なくとも一方を引き起こし、
(i)
前記距離の変化DPは、第一の距離及び第二の距離との間の差であり、前記第一の距離は、前記第一の位置P1及び前記第一の干渉パターンの干渉線に対して交差する第一の方向で前記第一の干渉パターンの前記第一の位置P1に対し最も近くにある干渉極大の間の距離であり、前記第二の距離は、前記第二の位置P2及び前記第一の方向で前記第二の干渉パターンの前記第二の位置P2に対し最も近くにある干渉極大の間の距離であり、
(ii)
前記位置の変化DSは、前記第一の位置P1及び前記第二の位置P2の間の差であり、
前記位置の変化DSは、前記光学デバイス
により、条件
|DS|+|DP|=n*L
に当てはまるように、前記第一の状態から前記第二の状態への変化の間に連続的に変化させられ、
nは、自然数であり、
Lは、前記第一の方向での前記第一の干渉パターンまたは前記第二の干渉パターンの隣接する二つの干渉極大の間の距離であり、±5%の許容誤差範囲を含む、
表面を干渉構造化する方法。
【請求項13】
レーザビームを物の表面に照射することにより生成される干渉構造化された前記表面を含む前記物を製造する製造方法であって、
前記製造方法は、
前記レーザビームを少なくとも二つの部分ビームに分割するビームスプリッタを含む光学デバイスの入
口での
前記レーザビームの位置の変化および/または前記入
口に対する前記レーザビー
ムの入射角の変化により、
前記二つの部分ビームを再びまとめたレーザスポットの中心の第一の位置P1と第一の干渉パター
ンを規定する第一の状態と、前記二つの部分ビームを再びまとめた前記レーザスポットの中心の第二の位置P2と第二の干渉パターン
とを規定する第二の状態とを生成し、
前記第一の状態から前記第二の状態への変化は、距離の変化DP及び位置の変化DSのうちの少なくとも1つを引き起こし、
(i)前記距離の変化DPは、第一の距離及び第二の距離の間の差であり、前記第一の距離は、前記第一の位置P1及び前記第一の干渉パターンの干渉線に対して交差する第一の方向で前記第一の干渉パターンの前記第一の位置P1に対し最も近くにある干渉極大の間の距離であり、前記第二の距離は、前記第二の位置P2及び前記第一の方向で前記第二の干渉パターンの前記第二の位置P2に対し最も近くにある干渉極大の間の距離であり、
(ii)前記位置の変化DSは、前記第一の位置P1及び前記第二の位置P2の間の差であり、
前記位置の変化DSは、前記光学デバイスにより、条件|DS|+|DP|=n*L
に当てはまるように、前記第一の状態から前記第二の状態への変化の間に連続的に変化させられ、
nは、自然数であり、
Lは、前記第一の方向での前記第一の干渉パターンまたは前記第二の干渉パターンの隣接する二つの干渉極大の間の距離であり、±5%の許容誤差範囲を含む、
方法。
【請求項14】
光学デバイ
スを備えるレーザ加工装
置において、
前記光学デバイ
スは、レーザビー
ムを受け入れるための入
口を有し、
前記入口は、前記レーザビー
ムを少なくとも二つの部分ビー
ムに分割するビームスプリッ
タを含み、
前記光学デバイ
スは、レーザスポッ
ト内に干渉パタ
ーンを生成するために、再び前記
二つの部分ビー
ムを一つのレーザスポッ
トにまとめ、
前記入
口での前記レーザビー
ムの位置の変化および/または前記入口に対する前記レーザビームの入射角の変化が、前記レーザスポットの中心の第一の位置P1と第一の干渉パターンとを規定する第一の状態と、前記レーザスポットの中心の第二の位置P2と第二の干渉パターンとを規定する第二の状態とを生成し
、
前記光学デバイ
スは、前記第二の干渉パターンが前記第一の干渉パターンを同相で継続するように構成されて
おり、
(i)前記第一の状態における前記レーザスポットの中心の前記第一の位置P1と前記第一の干渉パターンの干渉線に対して交差する第一の方向で前記第一の位置P1に対し最も近くにある干渉極大との間の第一の距離と、前記第二の状態における前記レーザスポットの中心の前記第二の位置P2と前記第一の方向で前記第二の位置P2に対し最も近くにある干渉極大との間の第二の距離とに対し、距離の変化DPは、前記第一の距離及び前記第二の距離の間の差として規定され、
(ii)位置の変化DSは、前記第一の位置P1及び前記第二の位置P2の間の差として規定され、
前記光学デバイスは、条件
|DS|+|DP|=n*L
に当てはまるように、前記第一の状態から前記第二の状態への変化の間に連続的に前記位置の変化DSを変化させるように構成されており、
nは自然数であり
Lは、前記第一の方向での前記第一の干渉パターンまたは前記第二の干渉パターンの隣接する二つの干渉極大の間の間隔であり、±5%の許容誤差範囲を含む、
レーザ加工装
置。
【請求項15】
光学デバイ
スを備えるレーザ加工装
置において、
前記光学デバイ
スは、レーザビー
ムを受け入れるための入
口を有し、
前記入口は、前記レーザビー
ムを少なくとも二つの部分ビー
ムに分割するビームスプリッ
タを有し、
前記光学デバイ
スは、レーザスポッ
ト内に干渉パター
ンを生成するために、再び前記
少なくとも二つの部分ビー
ムを一つのレーザスポッ
トにまとめ、
前記入
口でのレーザビー
ムの位置の変化および/または前記入口に対する前記レーザビームの入射角の変化が、前記レーザスポットの中心の第一の位置P1と第一の干渉パターンとを規定する第一の状態
と、前記レーザスポットの中心の第二の位置P2と第二の干渉パターン
とを規定する第二の状態とを生成し
、
前記第一の位置P1と前記第二の位置P2とは、前記レーザスポッ
トの少なくとも一倍の直
径に相当する間隔を有し、
前記第一の状態から前記第二の状態への状態変化に基づく前記部分ビー
ムの各々の放射経路の経路長の変化は、前記ビームスプリッ
タから前記レーザスポッ
トまでの前記放射経路の全体の経路長の±5%未
満であ
り、
(i)前記第一の状態における前記レーザスポットの中心の前記第一の位置P1と前記第一の干渉パターンの干渉線に対して交差する第一の方向で第一の位置P1に対し最も近くにある干渉極大との間の第一の距離と、前記第二の状態における前記レーザスポットの中心の前記第二の位置P2と前記第一の方向で第二の位置P2に対し最も近くにある干渉極大との間の第二の距離とに対し、距離の変化DPは、前記第一の距離及び前記第二の距離の間の差として規定され、
(ii)位置の変化DSは、前記第一の位置P1及び前記第二の位置P2の間の差として規定され、
前記光学デバイスは、条件
|DS|+|DP|=n*L
に当てはまるように、前記第一の状態から前記第二の状態への変化の間に連続的に前記位置の変化DSを変化させるように構成されており、
nは自然数であり
Lは、前記第一の方向での前記第一の干渉パターンまたは前記第二の干渉パターンの隣接する二つの干渉極大の間の間隔であり、±5%の許容誤差範囲を含む、
レーザ加工装
置。
【請求項16】
前記表面は、請求項12に記載の方法により干渉構造化され、
表面構
造は、前記表面構
造の包絡線である周囲
線を規定し、前記周囲
線は、周囲線部
分において少なくとも区分ごとに、基本要
素を周期的に繰り返す形状を有し、前記表面構
造の周期性は、前記周囲線部
分の周期性とは異なる、周期的な表面構
造を有する表
面を備えた物体
を製造する方法。
【請求項17】
前記表面構
造は、以下の特徴
-前記表面構
造は、多数の平行の
溝を有すること、
-前記基本要素は、少なくとも一つの弧状の部分を有すること、
の特徴の少なくとも一つを有し、
前記周囲線部分は、第一の周囲線部
分であり、前記基本要素は、第一の基本
要素であり、前記周囲
線は、前記第一の周囲線部
分に向かい合う第二の周囲線部
分を有する、
請求項16に記載の
方法。
【請求項18】
前記表面は、請求項12に記載の方法により干渉構造化され、
前記表
面は、
厚みを有する層であり、前記表面は、前記層が深さ方向に構造化された表面構
造を有し、
前記表面構
造の最大の深さは、
前記表面の厚みより浅く、
前記表面構造の深さがゼロである前記表面構造の縁部と、前記最大の深さに対して80%の深さを有する部分との間の距離は、100μm
以上である、
表面を備える物体
を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示された主題は、レーザ加工装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ放射を用いた表面および部材の加工は、多様な用途、例えば表面の構造化を有する。例えば、国際公開第2018/197555号は、リブレット(つまりリブ)を製造する方法および装置を開示しており、このリブレットは、レーザ干渉構造化(DLIP-直接レーザ干渉パターニング)により、表面内へ、特に既に塗装されかつ硬化された表面内へ導入される。この様式で製造されたリブレットを備える部材は、航空機、船舶および風力発電装置を比較的低い流動抵抗で運転することを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の状況の観点から、改善された特性を有する表面の構造化を許容にする技術についての必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この必要性は、独立請求項の主題により考慮される。好ましい実施形態は、従属請求項に示されている。
【0006】
本明細書に開示された主題の第一の態様によると、装置、特にレーザ加工装置が開示される。
【0007】
第一の態様の実施形態によると、レーザ加工装置が開示され、このレーザ加工装置は、光学デバイスを備え、この光学デバイスは、レーザビームを受け入れるための入口を有し、この光学デバイスは、レーザビームを少なくとも二つの部分ビームに分割するビームスプリッタを有し、この光学デバイスは、レーザスポット内に干渉パターンを生成するために、再びこの部分ビームを一つのレーザスポットにまとめ、入口でのレーザビームの位置の変化および/または入口に対するレーザビームの入射角の変化が、次の、(i)レーザスポットの中心と干渉パターンの予定方向で最も近くにある干渉極大との間の間隔の間隔変化DP、(ii)レーザスポットの中心の位置の位置変化DSの少なくとも一方を引き起こし、この光学デバイスは、条件
|DS|+|DP|=n*L (等式1)
が、連続的な位置変化DSに当てはまるように構成されていて、nは、自然数であり、Lは、±5%の許容範囲を含む、予定方向での干渉パターンの隣接する二つの干渉極大の間の間隔であり、間隔変化DPは、第一の間隔と第二の間隔との間の差により規定され、第一の間隔と第二の間隔との各々は、予定方向で規定されている。
【0008】
本明細書に開示された主題の第二の態様によると、方法が開示される。
【0009】
第二の態様の実施形態によると、表面を干渉構造化する方法が開示され、この方法は、表面上に第一の干渉パターンを生成するステップと、表面上に第二の干渉パターンを生成するステップとを含み、第一の干渉パターンの生成と第二の干渉パターンの生成は、入口を有する唯一の光学デバイスにより行われ、第一の干渉パターンと第二の干渉パターンとは、光学デバイスにより、入口でのレーザビームの位置および/または入口に対するレーザビームの入射角を変化させることにより生成され、それにより、(i)レーザスポットの中心と干渉パターンの予定方向で最も近くにある干渉極大との間の間隔の間隔変化DPが行われ、および/または(ii)レーザスポットの中心の位置の位置変化DSが行われ、この光学デバイスは、条件
|DS|+|DP|=n*L (等式1)
が、連続的な位置変化DSにとって満たされるように構成されていて、nは、自然数であり、Lは、±5%の許容範囲を含む、第一の干渉パターンの隣接する二つの干渉極大の間の間隔であり、間隔変化DPは、第一の間隔と第二の間隔との間の差により規定され、第一の間隔と第二の間隔との各々は、予定方向で規定されている。
【0010】
第三の態様の実施形態によると、用途が開示される。
【0011】
第三の態様の実施形態によると、入口でのレーザビームの位置の変化および/または入口に対するレーザビームの入射角の変化により、第一の干渉パターンと第二の干渉パターンとを生成し、それにより、(i)レーザスポットの中心と干渉パターンの予定方向で最も近くにある干渉極大との間の間隔の間隔変化DP、(ii)レーザスポットの中心の位置の位置変化DSの少なくとも一方を引き起こすための光学デバイスの使用を開示し、この光学デバイスは、条件
|DS|+|DP|=n*L (等式1)
が、連続的な位置変化DSに当てはまるように構成されていて、nは、自然数であり、Lは、±5%の許容範囲を含む、干渉パターンの隣接する二つの干渉極大の間の間隔であり、間隔変化DPは、第一の間隔と第二の間隔との間の差により規定され、第一の間隔と第二の間隔との各々は、予定方向で規定されている。
【0012】
本明細書に開示された主題の第四の態様によると、レーザ加工装置が開示される。
【0013】
第四の態様の実施形態によると、レーザ加工装置が開示され、このレーザ加工装置は、光学デバイスを有し、この光学デバイスは、レーザビームを受け入れるための入口を有し、この光学デバイスは、レーザビームを少なくとも二つの部分ビームに分割するビームスプリッタを有し、この光学デバイスは、レーザスポット内に干渉パターンを生成するために、再びこの部分ビームを一つのレーザスポットにまとめ、入口でのレーザビームの第一の状態は、第一の干渉パターンを生成し、レーザビームの第二の状態は、第二の干渉パターンを生成し、第一の状態と第二の状態とは、(i)入口でのレーザビームの位置と、(ii)入口に対するレーザビームの入射角との少なくとも一方が異なり、この光学デバイスは、第二の干渉パターンが第一の干渉パターンに、同相で継続するように構成されている。
【0014】
本明細書に開示された主題の第五の態様によると、方法が開示される。
【0015】
第五の態様の実施形態によると、方法が開示され、この方法は、レーザビームを少なくとも二つの部分ビームに分割するビームスプリッタを有する光学デバイスを準備するステップと、レーザビームを光学デバイスの入口に向けるステップとを含み、光学デバイスは、部分ビームを再び一つのレーザスポットにまとめ、入口でのレーザビームの第一の状態は、第一の位置P1でのレーザスポットを生成し、このレーザスポットは、第一の干渉パターンを有し、入口でのレーザビームの第二の状態は、第二の位置P2でのレーザスポットを生成し、このレーザスポットは、第二の干渉パターンを有し、第一の状態と第二の状態とは、(i)入口でのレーザビームの位置と、(ii)入口に対するレーザビームの入射角との少なくとも一方が異なり、光学デバイスは、位置変化DS=P1-P2のために、第一の光学経路長差DI_Aと第二の光学経路長差DI_Bとの間の差DI_AB=DI_A-DI_Bを提供し、この差は、レーザスポットの中心と干渉パターンの予定方向での最も近くにある干渉極大との間の間隔変化DPを引き起こすので、第二の干渉パターンは、第一の干渉パターンを同相で継続する。
【0016】
本明細書に開示された主題の第六の態様によると、レーザ加工装置が開示される。
【0017】
第六の態様の実施形態によると、光学デバイスを備えるレーザ加工装置が開示され、この光学デバイスは、レーザビームを受け入れるための入口を有し、この光学デバイスは、レーザビームを少なくとも二つの部分ビームに分割するビームスプリッタを有し、この光学デバイスは、レーザスポット内に干渉パターンを生成するために、再びこの部分ビームを一つのレーザスポットにまとめ、入口でのレーザビームの第一の状態は、第一の干渉パターンを生成し、レーザビームの第二の状態は、第二の干渉パターンを生成し、第一の状態と第二の状態とは、(i)入口でのレーザビームの位置と、(ii)入口に対するレーザビームの入射角との少なくとも一方が異なり、第一の干渉パターンの中心と第二の干渉パターンの中心とは、レーザスポットの少なくとも一倍の直径、特にレーザスポットの少なくとも五倍の直径、さらに特にレーザスポットの少なくとも十倍の直径、さらに特にレーザスポットの少なくとも二十倍の直径に相当する間隔を有し、第一の状態から第二の状態への状態変化に基づく部分ビームの各々の放射経路の経路長の変化は、ビームスプリッタからレーザスポットまでの放射経路の全体の経路長の±5%未満、特に±1%未満、さらに特に±0.5%未満である。
【0018】
本明細書に開示された主題の第七の態様によると、物体が開示される。
【0019】
第七の態様の実施形態によると、周期的な表面構造を有する表面を備えた物体が開示され、この表面構造は、周囲線により区切られていて、この周囲線は、周囲線部分において少なくとも区分ごとに、基本要素を周期的に繰り返す形状を有し、表面構造の周期性は、周囲線部分の周期性とは相違する。
【0020】
本明細書に開示された主題の第八の態様によると、物体が開示される。
【0021】
第八の態様の実施形態によると、表面構造を有する表面を備える物体が開示され、表面構造は、表面に対して最大の深さの伸びを有し、表面構造の縁部での第一の位置から第二の位置までの表面構造の深さの伸びは、最大の深さの伸びの80%に増大し、第一の位置と第二の位置との間の間隔は、少なくとも100μmである。
【0022】
本明細書に開示された主題の異なる態様および実施形態は、一つのレーザスポットの干渉パターンが、このレーザスポットを越えて同相で継続するという思想に基づく。これは、例えば、位相の適切な調整によって、例えば、第一の状態の光学経路長差と第二の状態の光学経路長差との間の適切な差DI_ABの提供により行うことができる。さらに、本発明者は、関連する当業者グループの見解に反して、少なくとも所定の光学デバイスにとって、レーザスポットの空間的な拡がりを越えて干渉パターンの「自動的な」、単に光学デバイスの構造による位相が揃った継続が可能であることを突き止めた。いずれにせよ、周期的パターンを有する大面積の加工が有利である用途において、位相が揃った継続によりレーザ加工装置は極度に効率的に構成することができる。
【0023】
第一の態様の実施形態によると、レーザ加工装置は、本明細書に開示された実施形態の一つまたはいくつかの機能性を提供するようにおよび/または本明細書に開示された実施形態、特に第一、第二、第三、第四、第五、第六、第七および/または第八の態様の実施形態の一つまたはいくつかのために必要な機能性を提供するように構成されている。
【0024】
第二の態様の実施形態によると、方法は、本明細書に開示された実施形態の一つまたはいくつかの機能性を提供するようにおよび/または本明細書に開示された実施形態、特に第一、第二、第三、第四、第五、第六、第七および/または第八の態様の実施形態の一つまたはいくつかのために必要な機能性を提供するように構成されている。
【0025】
第三の態様の実施形態によると、使用は、本明細書に開示された実施形態の一つまたはいくつかの機能性を提供するようにおよび/または本明細書に開示された実施形態、特に第一、第二、第三、第四、第五、第六、第七および/または第八の態様の実施形態の一つまたはいくつかのために必要な機能性を提供するように構成されている。
【0026】
第四の態様の実施形態によると、レーザ加工装置は、本明細書に開示された実施形態の一つまたはいくつかの機能性を提供するようにおよび/または本明細書に開示された実施形態、特に第一、第二、第三、第四、第五、第六、第七および/または第八の態様の実施形態の一つまたはいくつかのために必要な機能性を提供するように構成されている。
【0027】
第五の態様の実施形態によると、方法は、本明細書に開示された実施形態の一つまたはいくつかの機能性を提供するようにおよび/または本明細書に開示された実施形態、特に第一、第二、第三、第四、第五、第六、第七および/または第八の態様の実施形態の一つまたはいくつかのために必要な機能性を提供するように構成されている。
【0028】
第六の態様の実施形態によると、レーザ加工装置は、本明細書に開示された実施形態の一つまたはいくつかの機能性を提供するようにおよび/または本明細書に開示された実施形態、特に第一、第二、第三、第四、第五、第六、第七および/または第八の態様の実施形態の一つまたはいくつかのために必要な機能性を提供するように構成されている。
【0029】
第七の態様の実施形態によると、物体は、本明細書に開示された実施形態の一つまたはいくつかの機能性を提供するようにおよび/または本明細書に開示された実施形態、特に第一、第二、第三、第四、第五、第六、第七および/または第八の態様の実施形態の一つまたはいくつかのために必要な機能性を提供するように構成されている。
【0030】
第八の態様の実施形態によると、物体は、本明細書に開示された実施形態の一つまたはいくつかの機能性を提供するようにおよび/または本明細書に開示された実施形態、特に第一、第二、第三、第四、第五、第六、第七および/または第八の態様の実施形態の一つまたはいくつかのために必要な機能性を提供するように構成されている。
【0031】
本明細書に開示された主題の更なる利点および特徴は、目下の好ましい実施形態の以下の例示的な説明から明らかになるが、本開示は、この好ましい実施形態に限定されるものではない。本出願の図面の個々の図は、概略的に示されているだけであり、必ずしも縮尺どおりで示されていない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本明細書に開示された主題の実施形態による光学デバイスの機能原理を概略的に示す。
【
図2】本明細書に開示された主題の実施形態によるレーザ加工装置を示す。
【
図3】本明細書に開示された主題の実施形態によるレーザ加工装置の一部を示す。
【
図4】本明細書に開示された主題の実施形態によるレーザ加工装置の一部を示す。
【
図5】本明細書に開示された主題の実施態様によるレーザ加工装置により生成することができる第一の干渉パターンと第二の干渉パターンとを示す。
【
図6】本明細書に開示された主題の実施形態によるレーザ加工装置の光学デバイスの一部の断面図を示す。
【
図7】本明細書に開示された主題の実施形態による物体の一部を示す。
【
図8】本明細書に開示された主題の実施形態による物体の一部を示す。
【
図9】本明細書に開示された主題の実施形態による物体の一部を示す。
【
図10】
図9における切断線X-Xに沿った
図9からの表面構造の一部の断面図を示す。
【
図11】本明細書に開示された主題の実施形態による表面構造の一部の平面図を示す。
【
図13】
図11における切断線XIII-XIIIに沿った
図11からの表面構造の断面図を示す。
【
図14】本明細書に開示された主題の実施形態によるレーザ加工装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本明細書に開示された主題の例示的な実施形態を説明し、この場合、例えば、レーザ加工装置、方法、使用および物体が参照される。もちろん、多様な態様、実施形態および例の特徴の各々の組合せが可能であることが強調されるべきである。特に、いくつかの実施形態は、方法または使用を参照して説明され、他の実施形態は、装置、特にレーザ加工装置または物体を参照して説明される。しかしながら、当業者は、上述および後述の説明、特許請求の範囲および図面から、他に明記されていない限り、異なる態様、実施形態および例の特徴が組み合わせ可能であり、このような特徴の組合せは、本出願により開示されていると見なされることを推知する。例えば、方法または使用に関連する特徴でさえ、装置(例えばレーザ加工装置または物体)に関連する特徴と組合せ可能であり、またその逆も同様である。さらに、装置に関連する実施形態の特徴は、方法または使用に関連する相応する特徴と組合せ可能である。さらに、方法、方法の実施形態または機能の開示により、一つまたはいくつかのアクチュエータならびにこのアクチュエータと相互作用する、方法もしくは機能の実施のために形成されている制御装置の機能性が開示されているものと見なされる。さらに、装置の機能の開示によって、装置の特徴なしで機能を規定する相応する方法が開示されているものと見なされる。さらに、干渉パターンの特徴は、表面構造または加工スポット(干渉パターンを有するレーザスポットにより加工される表面領域)の類似の特徴を規定する。
【0034】
方法は、例えばJAVA(登録商標)、C#等のような任意の適切なプログラム言語の使用によりコンピュータ可読性の命令コードとして実装されていてよく、コンピュータ可読性の媒体(リムーバブルディスク、揮発性または不揮発性メモリ、組込型メモリ/プロセッサなど)に記憶されていてよい。命令コードは、コンピュータまたは任意の他のプログラミング可能なプロセッサ装置のプログラミングにより意図的な機能を実行するように動作可能である。命令コードは、ネットワーク、例えばダウンロードすることができるワールドワイドウェブから入手可能であってよい。
【0035】
本明細書に開示された主題は、プログラム要素またはソフトウェアにより実現することができる。しかしながら、本明細書に開示された主題は、一つまたはいくつかの特別な電子回路またはハードウェアによって実現することもできる。さらに、本明細書に開示された主題は、ハイブリッド形式、つまりソフトウェアモジュールとハードウェアモジュールとの組合せで実現することもできる。
【0036】
他に明記されていない限り、数値は、±5%の拡張範囲を含むものと理解すべきであり、すなわち例えば、10mmの長さの表示は、一実施形態によると、(10mm±5%)=[9.95mm、10.05mm]の区間の間の長さを含み、50%のパーセンテージは、一実施形態によると、50%±5%=[47.5%、52.5%]の区間の間のパーセンテージを含む。別の実施形態によると、数値は、±10%の拡張範囲を含むものと理解すべきである。
【0037】
一実施形態によると、装置が開示される。別の実施形態によると、装置は、レーザ加工装置である。別の実施形態によると、装置は、光学デバイスを備え、光学デバイスは、レーザビームを受け入れるための入口を有する。別の実施形態によると、光学デバイスは、レーザビームを二つまたはより多くの部分ビームに分割するビームスプリッタを有し、この光学デバイスは、レーザスポット内に干渉パターンを生成するために、再びこの部分ビームを一つのレーザスポットにまとめる。別の実施形態によると、入口でのレーザビームの位置の変化および/または入口に対するレーザビームの入射角の変化が、次の、(i)レーザスポットの中心と干渉パターンの予定方向で最も近くにある干渉極大との間の間隔の間隔変化DPと、(ii)レーザスポットの中心の位置の位置変化DSとの少なくとも一方を引き起こす。一実施形態によると、光学デバイスは、以下の等式1における条件
|DS|+|DP|=n*L (等式1)
が、連続的な位置変化DSに当てはまるように構成されていて、nは、自然数である。Lは、±5%の許容範囲を含む、予定方向での干渉パターンの隣接する二つの干渉極大の間の間隔である。換言すると、この条件は、一実施形態によると、正確に満たされる必要はなく、正確な値n*Lから±5%のオーダーでの逸脱が同様に許容可能であり、すなわち、この条件は、許容範囲内にある逸脱についても満たされていると見なされる。一般に、別の実施形態によると、許容範囲は、±3%であり、またはさらに別の実施形態によると、±1%である。さらに別の実施形態によると、等式1は、正確に満たされている(許容範囲0%)。さらに、間隔変化DPは、第一の間隔と第二の間隔との間の差により規定され、第一の間隔と第二の間隔との各々は、予定方向で規定されている。したがって、第一の間隔と第二の間隔とは、関連するレーザスポットの中心と関連するレーザスポットの干渉パターンの予定方向で最も近くにある干渉極大との間の間隔を示す。||は、本明細書では、既知の絶対値関数であり、すなわち、x≧0では、|x|=xであり、x<0では、|x|=-xである。
【0038】
相応して、一実施形態によると、方法は、以下の実施形態の一つまたはいくつかを有する。一実施形態によると、表面を干渉構造化するための方法は、以下の、表面上に第一の干渉パターンを生成するステップ、表面上に第二の干渉パターンを生成するステップの特徴の一つまたはいくつかを有し、第一の干渉パターンの生成と第二の干渉パターンの生成とは、入口を有する唯一の光学デバイスによって行われる。一実施形態によると、第一の干渉パターンと第二の干渉パターンとは、入口でのレーザビームの位置および/または入口に対するレーザビームの入射角を変化させることによって光学デバイスにより生成され、それにより、(i)レーザスポットの中心と干渉パターンの予定方向で最も近くにある干渉極大との間の間隔の間隔変化DPが行われ、および/または(ii)レーザスポットの中心の位置の位置変化DSが行われる。
【0039】
別の実施形態によると、方法は、以下の、レーザビームを少なくとも二つの部分ビームに分割するビームスプリッタを有する光学デバイスを準備するステップ、ここで、光学デバイスは、部分ビームを再び一つのレーザスポットにまとめる、レーザビームを光学デバイスの入口に向けるステップの特徴の一つまたはいくつかを有し、入口でのレーザビームの第一の状態は、第一の位置P1でのレーザスポットを生成し、このレーザスポットは、第一の干渉パターンを有し、入口でのレーザビームの第二の状態は、第二の位置P2でのレーザスポットを生成し、このレーザスポットは、第二の干渉パターンを有し、第一の状態と第二の状態とは、(i)入口でのレーザビームの位置と、(ii)入口に対するレーザビームの入射角の少なくとも一方が異なり、光学デバイス(または、別の実施形態によると、方法)は、位置変化DS=P1-P2のために、第一の光学経路長差DI_Aと第二の光学経路長差DI_Bとの間の差DI_AB=DI_A-DI_Bを提供し、この差は、レーザスポットの中心と干渉パターンの予定方向での最も近くにある干渉極大との間の間隔変化DPを引き起こすので、第二の干渉パターンは、第一の干渉パターンを同相で継続する。
【0040】
光学デバイスは、一実施形態によると、等式1による条件が、連続的な位置変化DSを満たしているように構成される。
【0041】
入口でのレーザビームの位置および/または入口に対するレーザビームの入射角の変化は、一般に、入口でのレーザビームの状態として説明することもできる。一実施形態によると、光学デバイスの入口は、ビームスプリッタにより形成されている。これは、もちろん、ビームスプリッタの前方に、この意味ではもちろん光学デバイスには所属していない光学素子が配置されていることを排除するものではない。
【0042】
この意味で、一実施形態によると、入口でのレーザビームの第一の状態は、レーザスポット内で(第一のレーザスポット内で、この場合、第一のレーザスポットは、第一の位置P1での中心を有する)の第一の干渉パターンを生成し、入口でのレーザビームの第二の状態は、レーザスポット内で(第二のレーザスポット内で、この場合、第二のレーザスポットは第二の位置P2での中心を有する)の第二の干渉パターンを生成し、第一の状態と第二の状態とは、(i)入口でのレーザビームの位置と、(ii)入口に対するレーザビームの入射角との少なくとも一方が異なる。
【0043】
上述の態様に相応して、一実施形態によると、入口でのレーザビームの位置の変化および/または入口に対するレーザビームの入射角の変化により、第一の干渉パターンと第二の干渉パターンとを生成し、それにより、(i)レーザスポットの中心と干渉パターンの予定方向で最も近くにある干渉極大との間の間隔の間隔変化DPと、(ii)レーザスポットの中心の位置の位置変化DSとの少なくとも一方を引き起こすための光学デバイスの使用を有し、ここで、光学デバイスは、等式1による条件を満たすように構成されている。
【0044】
さらに別の実施形態によると、レーザ加工装置は、次の光学デバイスの特徴の一つまたはいくつかを有し、この光学デバイスは、レーザビームを受け入れるための入口を有し、この光学デバイスは、レーザビームを少なくとも二つの部分ビームに分割するビームスプリッタを有し、この光学デバイスは、レーザスポット内に干渉パターンを生成するために、再びこの部分ビームを一つのレーザスポットにまとめ、入口でのレーザビームの第一の状態は、第一の干渉パターンを生成し、入口でのレーザビームの第二の状態は、第二の干渉パターンを生成し、第一の状態と第二の状態とは、(i)入口でのレーザビームの位置と、(ii)入口に対するレーザビームの入射角の少なくとも一方が異なり、この光学デバイスは、第二の干渉パターンが第一の干渉パターンを同相で継続するように構成されている。
【0045】
入口でのレーザビームの状態の変化、特に入口でのレーザビームの位置の変化および/または入口に対するレーザビームの入射角の変化は、比較的大きな表面領域を構造化するために、光学デバイスと表面とを互いに相対的に移動することも排除するものではない。例えば、2本ビーム干渉(これは、多数の平行線を有する干渉パターンを引き起こす)の場合、大面積の表面構造化を達成するために、光学デバイスは、線の縦方向の拡がりの方向に移動することができ、これは、例えば、干渉パターンにより生成される表面構造が、いわゆる流動要素、例えば航空機部材上でのリブレットを形成するような用途において望ましい。
【0046】
一実施形態によると、光学デバイスは、第二の干渉パターンが第一の干渉パターンを同相で継続するように構成されている。
【0047】
例えば、一実施形態によると、光学デバイスの相応する構成は、例えば、間隔変化DPが、例えばミラーデバイスまたは光学媒体に作用する適切なアクチュエータデバイスにより調節されることにより、能動的であってよい。例えば、このために、楔形の光学素子が使用されてよく、この楔形の光学素子は、さらに、部分ビーム内に挿入されるかまたはこの部分ビームから取り外され、それにより、楔形の光学素子内の部分ビームの経路長は増減し、ひいては位相状態(ひいてはDP)を変化させることができる。アクチュエータデバイスのための制御信号は、例えば、レーザビームの状態の調査から参照テーブルを用いて、または例えば適切に訓練された人工知能によっても生成することができる。
【0048】
さらに、一実施形態によると、第一の干渉パターンの同相での継続のための光学デバイスの構成は、例えば、光学デバイスの個々の素子ならびに個々の光学素子の相互作用が、いずれにせよ所定の有効範囲内で、例えばレーザビームの状態についての有効範囲内で(例えば、入口でのレーザビームの位置についておよび/または入口に対するレーザビームの入射角についての所定の有効範囲内で)、または位置変化DSについての有効範囲内で、光学デバイスの(静的な)構築に基づくだけで第一の干渉パターンの位相が揃った継続を行うように構築されている場合、受動的な構造を有していてよい。一般に、一実施形態によると、等式1は、少なくとも有効範囲内で満たされている。
【0049】
一実施形態によると、入口でのレーザビームの第一の状態は、レーザスポットの中心の第一の位置P1と第一の干渉パターンとを規定し、入口でのレーザビームの第二の状態は、レーザスポットの中心の第二の位置P2と第二の干渉パターンとを規定し、第一の状態での少なくとも二つの部分ビームの部分ビームペアは、第一の光学経路長差DI_Aを有し、第二の状態での部分ビームペアは、第二の光学経路長差DI_Bを有し、光学デバイスは、位置変化DS=P1-P2にとって、第一の光学経路長差DI_Aと第二の光学経路長差DI_Bとの間の差DI_AB=DI_A-DI_Bを提供し、この差は、間隔変化DPを引き起こすので、第二の干渉パターンは、第一の干渉パターンを同相で継続する。
【0050】
一実施形態によると、第一の間隔も第二の間隔も規定している予定方向は、レーザスポットの中心から、この方向で最も近くにある干渉極大(例えば、第一の干渉パターンの干渉極大、すなわち一実施形態によると第一の干渉パターンが第一の方向を規定する)までを指す方向である。例えば、干渉パターンが多数の平行な干渉線を有する限り(例えば、この平行な干渉線は、例えば二本ビーム干渉により生じる)、一実施形態によると、予定方向は、干渉線に対して垂直の方向である。例えば、この場合、予定方向は、干渉線に対して垂直の、レーザスポットの中心から右を指す方向として規定されていてよい。
【0051】
当業者に公知なように、三つまたはそれより多くの部分ビームの干渉の場合、例えば三つの部分ビーム(三本ビーム干渉)の場合、干渉パターンは、例えばドットパターンである。一実施形態によると、二つの互いに線状に独立する予定方向が存在し、この予定方向に沿って干渉パターンは、同相で継続可能であり、これは、特に三本ビーム干渉の場合に有利である。
【0052】
いくつかの実施形態において、個々の異なる間隔について、例えば第一の間隔と第二の間隔とについて参照されるにもかかわらず、関連する実施形態は、等式1の示された条件が満たされる限り、全ての間隔について当てはまることは自明である。
【0053】
一実施形態によると、等式1に示された条件は、予定の有効範囲(例えば、光学デバイスにより定義された有効範囲)において当てはまる。一実施形態によると、等式1における条件は、少なくとも、レーザスポットの直径と同じ位置変化値まで当てはまる。別の実施形態によると、等式1における条件は、開始位置(位置変化がゼロに等しい)から位置変化値までの連続的位置変化DSについて当てはまる。別の実施形態によると、位置変化値は、レーザスポットの二倍、さらに別の実施形態によると、五倍、十倍または二十倍の直径に等しい。
【0054】
一実施形態によると、入口は、第一の領域と第二の領域とを含み、レーザ加工装置は、第一の領域内でおよび引き続き第二の領域内でのレーザビームの位置決めのためにアクチュエータデバイスを有する。
【0055】
例えば、一実施形態によると、アクチュエータデバイスは、レーザスキャナのアクチュエータデバイスであり、このアクチュエータデバイスにより、レーザビームは、入口上を、特に入口の第一の領域上と第二の領域上とを走査可能である。この様式で、レーザスポットの干渉パターンの連続的でかつ位相が揃った継続が可能である。
【0056】
先に挙げた実施形態の意味で、例えば第一の状態は、第一の領域に入射するレーザビームに相当することができ、第二の状態は、第二の領域に入射するレーザビームに相当することができる。
【0057】
一実施形態によると、第一の干渉パターンと第二の干渉パターンとは重複する。例えば、一実施形態によると、第一の干渉パターンと第二の干渉パターンとは、縦方向に連続して配置されている多数の強度極大と強度極小とを有する。一実施形態によると、第二の干渉パターンは、第一の干渉パターンに対して縦方向(または縦方向に対して平行方向)にずらされている。さらに、一実施形態によると、縦方向は、予定方向に相当する。
【0058】
少なくとも二つの線形に独立した縦方向が存在する場合(例えば、一実施形態によると、3本ビーム干渉の場合)、第一の間隔と第二の間隔とが定義されている予定方向は、縦方向の少なくとも一方に対して平行である。
【0059】
一実施態様によると、光学デバイスは、透過型で動作する少なくとも一つの光学素子を有する(換言すると、この少なくとも一つの光学素子は、透過性光学素子である)。一実施形態によると、透過性光学素子内での部分ビームの各々(すなわち、放射経路が透過性光学素子を通過して延びる部分ビームの各々)の放射経路の経路長部分の変化は、±5%未満、特に±1%未満、さらに特に±0.5%未満であり、経路長部分の変化は、入口でのレーザビームの状態変化により引き起こされている。一実施形態によると(すなわち、任意であるが必須ではない)、(レーザビームからビームスプリッタにより生成される)少なくとも二つの部分ビームの全ての部分ビームは、透過性光学素子を通過する。
【0060】
一実施形態によると、透過性光学素子に関する上述の実施形態は、光学デバイスの各々の透過性光学素子に当てはまる。
【0061】
一実施形態によると、このビームスプリッタの後方の光学デバイスの各透過性の光学素子のうち、これらの部分ビームの少なくとも一つの放射経路内に存在する各々の透過された平面ペアは、最大で10度の角度、特に最大で5度の角度をなす。実験において、比較的小さな角度は、干渉パターンの同相での継続を促進することができることが見出された。
【0062】
一実施形態によると、少なくとも二つの部分ビームの少なくとも一つの部分ビーム用の光学デバイスは、放射経路を規定し、この放射経路には、放射経路が、レーザスポットの第一の位置について、放射経路の光学経路長と放射経路の幾何学経路長との間の第一の経路差を規定することと、放射経路が、レーザスポットの第二の位置について、放射経路の光学経路長と放射経路の幾何学経路長との間の第二の経路差を規定することと、条件の有効範囲内で、次の、(i)第一の経路差と第二の経路差との間の相違は、この条件が満たされる程度に小さく、(ii)第一の経路差と第二の経路差との相違は、レーザビームの波長の二十倍よりも小さく、特に十倍よりも小さく、(iii)第一の経路差も、第二の経路差も、10mmより小さく、特に5mmより小さいことの少なくとも一つが当てはまることとが当てはまる。
【0063】
一実施形態によると、ビームスプリッタの後方の光学デバイスは、プリズムを有していない。
【0064】
この考察を理論に限定することはしないが、本発明者の現時点の理解によると、放射経路の光学経路と放射経路の幾何学経路との間の経路長差の著しい相違は、レーザビームの状態の変化もしくはレーザスポットの位置の変化の際に、有効範囲に不利に作用するか、それどころか、レーザスポットの干渉パターンの同相での継続を妨げる。
【0065】
上述の意味において、一実施形態によると、第一の経路長差と第二の経路長差との間の相違は、この相違がレーザビームの波長の10%未満である場合、またはこの相違が、理想位相から、二つの隣接する干渉極大の予定方向での間隔Lの5%未満の干渉パターンのずれを引き起こす場合に、十分に小さい。
【0066】
一実施形態によると、光学デバイスの全ての光学素子は、反射において動作し、特に一実施形態によると、光学デバイスの全ての光学素子は、もっぱら反射において動作する。換言すると、光学デバイスの全ての光学素子は、別の実施形態によると、ビームスプリッタを除いて、反射性素子である。
【0067】
本出願において、一実施態様によると、「反射において動作する」の概念は、関連する光学素子が、入射する電磁放射線の反射に基づく光学機能を有し、この光学機能と共に光学デバイスの全体の機能に寄与することを意味する。この意味で、半透過性ミラーも反射において動作する。
【0068】
一実施形態によると、ビームスプリッタは、半透過性ミラーである。一実施形態によると、半透過性ミラーは、平坦な表面を有する光透過性の媒体であり、平坦な表面の一方(入射側)に、少なくとも一つの層、特に誘電性積層体が適用されているので、入射するレーザ強度の所定の部分は(意図的に)反射され、他の部分は(意図的に)透過される。入射するレーザ強度の反射される部分は、本明細書では反射レーザビームと言われる。入射するレーザ強度の透過する部分は、本明細書では透過レーザビームと言われる。入射するレーザ強度は、本明細書では、レーザビームの強度とも言われる。光透過性媒体の出射側に、一実施形態によると任意に、同様に、反射防止作用を有する誘電性積層体が適用されているので、媒体内に入り込む強度を、僅かな損失で再び放出することができる。一実施形態によると、透過ビームおよび反射ビームは、類似の(またはそれどころか同じ)ビーム形状および/または類似の(またはそれどころか同じ)ビームプロファイルを有する。さらに、一実施形態によると、透過ビームと反射ビームとは、同じ偏光を有する。これは、この偏光を、後にビームの一方において再び適合させる必要がないという利点を有する。良好な干渉を得るために、両方の部分ビームは、一実施形態によると、同じ偏光を必要とする。
【0069】
一実施形態によると、半透過性ミラーは、入射レーザ強度のかなりの部分(10%より多く)を反射し、入射レーザ強度のかなりの部分(10%より多く)を透過するように構成されている。好ましくは、光透過性媒体は、レーザビームに対して僅かな吸収を有する。
【0070】
一実施形態によると、ビームスプリッタは、反射レーザ放射の強度と、透過レーザ放射の強度とが同じ大きさになるように構成されている。この種のビームスプリッタは、50:50ビームスプリッタと言われる。別の実施形態によると、ビームスプリッタは非偏光50:50ビームスプリッタである。
【0071】
一実施形態によると、ビームスプリッタは、レーザビームが(入口の)第一の領域に入射する際に、少なくとも二つの部分ビームの下で第一の強度分布を生成し、(入口の)第二の領域に入射する際に、少なくとも二つの部分ビームの下で第二の強度分布を生成するように設定および配置されている。一実施形態によると、第一の強度分布と第二の強度分布とは、互いに10%未満しか相違しない。換言すると、一実施形態によると、少なくとも二つの部分ビームにおける強度分布は、レーザビームの状態とは無関係に、10%の許容範囲の範囲内にある。
【0072】
一実施形態によると、本明細書に記載されたようなレーザ加工装置を用いたまたは本明細書に記載されているような方法を用いた物体の加工は、物体に本明細書に開示された主題の実施形態による表面構造を付与するように行われる。
【0073】
一実施形態によると、物体は、周期的な表面構造を有する表面を有し、表面構造は、表面構造の包絡線である周囲線を規定し、この周囲線は、周囲線部分において少なくとも区分ごとに、基本要素を周期的に繰り返す形状を有し、表面構造の周期性は、周囲線部分の周期性とは異なる。
【0074】
特に、表面構造の縁部領域は、レーザスポット(またはそのレーザスポットにより生成される加工スポット)の断面形状を反映することができる。
【0075】
一実施形態によると、表面構造は、以下の、(i)表面構造は、多数の平行の溝を有すること、(ii)基本要素は、少なくとも一つの弧状部分(例えば、唯一のまたは二つのまたはそれより多くの弧状部分)を有すること、(iii)周囲線部分は、第一の周囲線部分であり、基本要素は、第一の基本要素であり、周囲線は、第二の周囲線部分を有し、この第二の周囲線部分は、第一の周囲線部分と向かい合い、第二の基本要素の周期的な繰り返しであり、表面構造の周期性は、第二の周囲線部分の周期性とは異なることの特徴の少なくとも一つを有する。
【0076】
別の実施形態によると、物体は、表面構造を有する表面を備え、表面構造は、表面に対して最大の深さの伸びを有し、表面構造の深さの伸びは、表面構造の縁部での第一の位置から第二の位置まで、最大の深さの伸びの80%に増大し、第一の位置と第二の位置との間の間隔は、100μmである。換言すると、表面構造の深さの伸びは、表面構造の縁部での第一の位置から第二の位置まで、最大の深さの最大80%に増大し、第一の位置と第二の位置との間の間隔は、100μmである。
【0077】
表面構造の縁部から出発する表面構造の深さの伸びの緩慢な増大(最大の深さの伸びの80%は、100μmまたはそれ以上で初めて達成される)は、特に表面構造がリブレット構造、特に本明細書に記載されているようなリブレット構造である場合に、流動工学上で有利であってよい。一実施形態によると、本明細書に記載されているような深さの伸びの緩慢な増大は、少なくとも、例えば表面構造に流れるべき流動方向に対して平行の方向で行われる。
【実施例】
【0078】
以下に、本明細書に開示された主題の例示的な実施形態を、図面を参照して説明する。異なる図において、類似のまたは同一の素子または構成要素は、部分的に同じ符号が付けられているか、または最初の桁だけが異なる符号が付けられていることに留意されたい。別の図における対応する特徴もしくは構成要素と同じであるかまたは少なくとも機能的に同じである特徴もしくは構成要素は、以下の本文中に最初に出現する場合にだけ詳細に説明され、この説明は、これらの特徴および構成要素(もしくは相応する符号)が後に出現する際には繰り返されない。上述の規定は、一実施形態によると、以下の実施形態についても当てはまり、その逆も同様である。さらに、上述で説明された特徴および実施形態は、以下に説明された特徴および実施形態と組み合わせることが可能である。
【0079】
図1は、本明細書に開示された主題の実施形態による光学デバイス100の機能原理を概略的に示す。
【0080】
一実施形態によると、光学デバイス100は、レーザビーム102を受け入れるための入口101を有する。一実施形態によると、光学デバイス100は、レーザビーム102を少なくとも二つ(例えば二つ)の部分ビーム104,204に分割し、この部分ビーム104,204を、レーザスポット106内に干渉パターンを生成するために、再び一つのレーザスポット106にまとめるように構成されている。一実施形態によると、部分ビームの放射経路は、同じ長さまたはほぼ同じ長さ、例えば、±5%の許容範囲内で同じ長さである。有限のビーム直径を有する実際の構造の場合、干渉は、特に部分ビームの間の角度により生じる。
【0081】
一実施形態によると、両方の部分ビームの第一の部分ビーム104は、第一の光学経路長I1を有し、部分ビームの第二の部分ビーム204は、第二の光学経路長I2を有する。それにより、部分ビームの経路長差DI=I2-I1が生じる。この経路長差DIの変化は、本明細書に記載されているような間隔変化DPを引き起こす。一実施形態によると、レーザスポット106は、表面107に向けられる。
【0082】
図2は、本発明に開示された主題の実施形態によるレーザ加工装置108を示す。
【0083】
一実施形態によると、レーザ加工装置108は、光学デバイス200を備える。一実施形態によると、光学デバイス200は、レーザビーム102を二つの部分ビーム104,204に分割するビームスプリッタ110を有する。一実施形態によると、ビームスプリッタ110は、例えば
図2に示されるように、半透過性ミラーである。一実施形態によると、光学デバイス200の入口101は、ビームスプリッタ110により形成されている。別の実施形態によると、光学デバイス200は、部分ビーム104,204の各々について、一つの放射経路112,212を規定する。一実施形態によると、少なくとも二つの放射経路は、第一の放射経路112と第二の放射経路212を有する。別の実施形態によると、放射経路の少なくとも一方(例えば各放射経路112,212)は、少なくとも一つの光学素子、例えば少なくとも一つのミラー114,214を有する。一実施形態によると、例えば
図2に示されるように、三つのミラー114,214が設けられていてよい。一実施形態によると、少なくとも一つのミラー114,214は、光学デバイス200を通過する関連する放射経路112,212の経過を規定する。一実施形態によると、光学デバイス200は、(例えば、少なくとも一つの光学素子の配置および/または配向により)部分ビーム112,212を、一つのレーザスポット106にまとめるように構成されている。一実施形態によると、例えば、
図2に示されるように、適切な光学素子、例えばミラー214により、部分ビームをまとめることが行われる。
【0084】
一実施形態によると、光学デバイス200は、物体の表面107に対して位置決めされるので、干渉パターンによる表面107の加工のために、レーザスポット106と干渉パターンとが表面107上に生成される。例えば、干渉パターンによって表面107の構造化が行われる。これは、直接干渉構造化とも言われる。
【0085】
一実施形態によると、レーザ加工装置は、レーザビーム102の生成のためにレーザ源116を備える。別の実施形態によると、レーザ源116は、レーザ加工装置の外部に配置され、レーザ加工装置と連結可能である。
【0086】
一実施形態によると、レーザビームは、CO2レーザビーム、特に少なくとも800W(800ワット)の出力を有するCO2レーザビームである。相応して、一実施形態によると、レーザ源は、CO2レーザ源である。一実施形態によると、CO2レーザ源は、連続波でまたは<1ms(1ミリ秒未満)のバルス時間で動作されるように構成されている。
【0087】
一実施形態によると、レーザ加工装置は、塗料表面、特に硬化した塗料表面を構造化するために設置されている。
【0088】
別の実施形態によると、レーザ加工装置は、少なくとも一つの可動ミラー314と、少なくとも一つの可動ミラー314の制御のためのアクチュエータデバイス118とを備える。一実施形態によると、入口101でのレーザビームの状態を変化させるため、例えば入口101でのレーザビームの位置および/または入口101に対するレーザビーム102の入射角を変化させるために、少なくとも一つの可動ミラー314が配置されている。例えば、少なくとも一つの可動ミラー314の旋回により、例えば
図2において入口でのレーザビームの第一の状態(102において実線)と入口でのレーザビームの第二の状態(102において破線)とにより示すようにレーザビーム102の位置と入口に対する入射角とが変化可能であってよい。この場合、レーザビーム102は、第一の状態では、半透過性ミラー110(この半透過性ミラーは、一実施形態によると、光学デバイスの入口と見なされる)の第一の領域119内に位置決めされていて、第二の状態では、半透過性ミラー110の第二の領域121内に位置決めされている。
【0089】
一実施形態によると、光学デバイス200は、第一の状態が第一の干渉パターンを生成し、第二の状態が第二の干渉パターンを生成するように構成されていて、第二の干渉パターンは、第一の干渉パターンを同相で継続する。一実施形態によると、(第一の)干渉パターンのこの同相での継続は、入口101でのレーザビームの状態の連続的な変化の際でさえ行われ、それにより、拡大された干渉パターンにおける干渉極大と干渉極小との規定された位相関係を同時に達成する際に、寸法において拡大された、結果として生じる干渉パターンが効果的に達成可能である。唯一のレーザスポットの展開と比べて、干渉パターンの同相での継続により、より均質な加工が達成される、というのも、唯一のレーザスポットは、典型的にはガウス形のビームプロファイルを有するためである。一実施形態によると、表面の均質な加工は、単位面積当たりの均一な統合された全体の強度によって達成され、生成された強度極大は、同相である(位相が揃う)。
【0090】
結果として生じる干渉パターンは、例えば、入口101上でのレーザビーム102の旋回により、すなわち、一実施形態によると、ビームスプリッタ110上でのレーザビーム102の旋回により生成されてよい。
【0091】
一実施形態によると、光学素子128、特にレーザビームをフォーカスするための光学素子は、例えば光学デバイスの一部としてまたはレーザ加工装置の一部として設けられている。一実施形態によると、レーザビームをフォーカスするための光学素子は、レンズ、例えば
図2に示されているように、例えば、少なくとも一つの可動ミラー314とビームスプリッタ110との間に配置されているレンズである。別の実施形態によると、光学素子128は、焦点移動装置である。別の実施形態によると、(例えば、光学素子128とは別にまたはそれに対して付加的に)レーザ源と少なくとも一つの可動ミラー314との間に、例えば二つの破線で示されるような光学素子228、特にレーザビームをフォー化するための光学素子が配置されていてよい。
【0092】
別の実施形態によると、レーザ加工装置108は、レーザ加工装置の構成要素(例えばアクチュエータデバイス118および、存在する場合に、レーザ源116)を制御信号122により制御するために制御装置120を備える。一実施形態によると、制御装置は、本明細書に開示された主題の実施形態の機能を実現するために、演算装置124と、この演算装置124で実行可能なコンピュータプログラミングを記憶するための記憶装置126とを有する。
【0093】
別の実施形態によると、光学デバイス200と表面107とを互いに相対的に位置決めするために、別のアクチュエータデバイス130が設けられている。これは、例えば、結果として生じる干渉パターンを表面107上で動かす大面積のレーザ加工の場合に有利であることができる。一実施形態によると、別のアクチュエータデバイス130は、レーザ加工装置の制御装置120によって、制御信号122を介して制御されていてよく、またはそれとは別に、外部制御装置(
図2では示されていない)により制御されていてよい。(別の)アクチュエータデバイス130は、この図面では、特に位置に関して、単に例示的に示されているだけであることを理解されたい。例えば、光学デバイスと、場合によりレーザ加工装置の別の構成要素、例えば少なくとも一つの可動ミラー314、アクチュエータデバイス118、光学系128または光学系228は、レーザ源116と表面107に対してスライド可能であることが予定されていてよい。例えば、光学デバイス100(および任意に光学系228)は、表面107上でのこれらの構成要素の位置決め(および場合による移動)のために、ロボットアームに取り付けられていてよい。ロボットアームは、この場合、アクチュエータデバイス130またはアクチュエータデバイス130の一部を形成する。
【0094】
図3は、本明細書に開示された主題の実施形態によるレーザ加工装置208の一部を示す。
【0095】
レーザ加工装置208は、
図3に関連する特徴が示されていない場合であっても、
図2からのレーザ加工装置108との関連で記載された一つまたはいくつかの特徴を有してよい。
【0096】
一実施形態によると、レーザ加工装置208は、光学デバイス300を備える。
図2との関連で記載された光学デバイス200とは異なり、光学デバイス300は、放射経路112,212の各々において、二つのミラー114,214を有する。さらに、一実施形態によると、レーザビーム102をフォーカスするための光学素子228は、ビーム方向で、少なくとも一つの可動ミラー314の前方に配置されている。さらに、一実施形態によると、少なくとも一つの可動ミラー314と、ビームスプリッタ110(このビームスプリッタは、例えば
図3において示されているように半透過性ミラーにより実現されていてよい)との間に、光学素子は配置されていない。
【0097】
図4は、本明細書に開示された主題の実施形態によるレーザ加工装置308の一部を示す。
【0098】
レーザ加工装置308は、
図4に関連する特徴が示されていない場合であっても、
図2からのレーザ加工装置108との関連で記載された一つまたはいくつかの特徴を有してよい。
【0099】
一実施形態によると、レーザ加工装置308は、光学デバイス400を備える。一実施形態によると、光学デバイスのビームスプリッタ110は、レーザビーム102を少なくとも二つの部分ビーム104,204に分割する回折光学素子(DOE)により形成されている。
【0100】
一実施形態によると、回折光学素子は、例えば
図4に示されるように、この回折光学素子から放出される少なくとも二つの部分ビーム104,204が鋭角をなすように構成されている。
【0101】
一実施形態によると、少なくとも二つの部分ビーム104,204の放射経路112,212の各々は、唯一の光学素子、例えば唯一のミラー214を有する。
【0102】
図3および
図4との関連で記載された光学デバイス300,400は、最後のミラー214に対して極めて浅い入射角のために、放射経路112,212内に比較的僅かな光学素子だけが存在する必要があるが、それにより、関連する部分ビーム104,204の歪みが生じることがある。
【0103】
図5は、本明細書に開示された主題の実施態様によるレーザ加工装置により生成することができる第一の干渉パターン108と第二の干渉パターン208とを示す。
【0104】
一実施形態によると、第一の干渉パターン108は、レーザスポット106により生成され、そのレーザスポットの中心132は、第一の位置134にあり、第二の干渉パターン208は、レーザスポット106により生成され、その中心132は、第二の位置136に存在する。「レーザスポット106の中心132は、所定の位置(例えば第一の位置134)にある」の記述は、本明細書において「レーザスポット106は、所定の位置にある」の記述に省略されてもいる。したがって、両方の表現は、同等と見なすことができる。一実施形態によると、第一の位置134と第二の位置136とのレーザスポット106は、第一の位置134について、光学デバイスの入口でのレーザビームにとって(一実施形態によると、レーザビームの位置と入射角とに関して)第一の状態が生じ、レーザスポット106の第二の位置136について、光学デバイスの入口でのレーザビームにとって第二の状態が生じたことにより生成された。
【0105】
したがって、レーザビームの状態変化(例えば位置および入射角の変化)は、レーザスポット106の中心132の位置の位置変化142(本明細書ではDSとも言われる)を生じさせる。
【0106】
一実施形態によると、レーザスポット106を生成する光学デバイスは、第二の干渉パターン208が、例えば
図5に示されるように、第一の干渉パターン108を同相で継続するように構成される。干渉パターンの同相での継続は、二本ビーム干渉の場合に、例えば、隣接する二つの干渉極大の間の一定の間隔138(本明細書ではLとも言われる)において、「個々のレーザスポットの境界を越える」とも述べられる。
【0107】
したがって、第二の干渉パターン208の干渉極大140の位相位置は、第一の干渉パターン108の干渉極大140の位相位置と一致している。換言すると、光学デバイスにより、レーザスポット106の中心132と第一の位置134での予定方向144で最も近くにある干渉極大240との間の第一の間隔141から、レーザスポット106の中心132と第二の位置136での予定方向144で最も近くにある干渉極大240との間の第二の間隔241への変化が行われる。この場合、第一の間隔141と第二の間隔241との差は、間隔変化DPに相当する。
【0108】
一実施形態によると、光学デバイスは、(いずれにせよ、有効範囲内での、例えば位置変化についての有効範囲内での)連続的な位置変化についての第一の干渉パターンの同相での継続を保証する。この様式で、レーザスポット106の第一の位置134から第二の位置136までの中心132の連続的な位置変化の際に、第一の干渉パターン108と第二の干渉パターン208との間の平面の連続的な塗りつぶしが生じる。各々の位置で位相の揃いが保証されるため、第一の位置と第二の位置との間でも、第一の干渉パターン108の干渉極大140と第二の干渉パターン208の干渉極大140と同じ位相関係を有する(
図5で破線で示される)干渉極大340が生じる。換言すると、例えば
図5で示されるように、第一の位置134と第二の位置136との間の連続的な位置変化により生じる全ての干渉極大140,240,340は、同相である。
【0109】
図6は、本明細書に開示された主題の実施形態によるレーザ加工装置の光学デバイス100の一部の断面図を示す。
【0110】
一実施形態によると、光学デバイス100は、少なくとも一つの透過性光学素子150を有し、この透過性光学素子は、部分ビームの少なくとも一つ、例えば
図1からの部分ビーム104の放射経路112内にある。一実施形態によると、透過性光学素子150は、第一の平面154と第二の平面156とを含む透過された平面ペアを有する。別の実施形態によると、平面ペア154,156は、一実施形態によると、最大で10度の角度158をなす。
【0111】
図7は、本明細書に開示された主題の実施形態による物体160の一部を示す。
【0112】
一実施形態によると、物体は、周期的な表面構造162を有する表面107を有する。一実施形態によると、表面構造162は、多数の平行の溝を有し、この溝は、
図7において、多数の平行な線164により説明されている。線164は、表面構造162の溝の寸法を表しておらず、単に周期性を説明しているにすぎないことを指摘する。実際に、一実施形態によると、例えばリブレット用途において、この溝は、溝の間に残るリブよりも幅広である。この意味で、一実施形態によると、この線164は、例えば、溝の中心線(または重心線)を表してよい。一実施形態によると、表面構造は、国際公開第2018/197555号に記載されているような多数のリブレットを有するリブレット構造であり、すなわち、平滑な表面と比べて表面の流動抵抗を低減する表面構造である。特に、リブレットの用途、機能、形状、寸法、特性などに関して、国際公開第2018/197555号を明確に参照し、その全体の開示、特にリブレットの寸法および用途は、参照により本明細書に含まれる。
【0113】
リブレットにとって通常であるように、一実施形態では、溝は、それぞれの壁を有する。したがって、それぞれ二つの互いに隣り合う溝の隣接する壁は、これらの二つの溝の間のリブの互いに反対側の二つの側面を形成する。換言すると、一実施形態によると、多数の溝により、表面上に多数のリブが生成され、このリブは、例えば先に引用された国際公開第2018/197555号に記載されているような適切な寸法の場合にリブレットとして作用する(すなわち、表面上での流動抵抗を低減する)。一実施形態によると、リブの側面は鋭角をなしている。特に、リブは、一実施形態によると、先細りに構成されている。
【0114】
一実施形態によると、リブは、実質的に互いに平行に、特に表面上で期待される流動の流動方向に対して平行に延びる。
【0115】
一実施形態によると、周期的表面構造162は、レーザスポットによる照射によって生成され、このレーザスポットは、
図7において、第一の位置で、106での破線により説明されている。一実施形態によると、表面構造162は、表面107上での多様な位置でのレーザスポット106の生成により生成される。一実施形態によると、レーザスポットは、各々の位置で、干渉パターンを有し、この干渉パターンは、例えば
図7に示すように、第一の位置でのレーザスポットの干渉パターンを同相で継続する。一実施形態によると、各々の干渉パターンにより、表面107は加工され、各々の干渉パターンは、表面107内の加工スポット169を生成する。干渉パターンまたは加工スポット169の相互の繋ぎ合わせにより、一実施形態によると、表面構造162が生じる。レーザ源が、パルスレーザ源である場合、光学デバイス(
図7に示されていない)の入口上でレーザビームが連続的に移動する際に、不連続な加工スポット169が生じ、この不連続な加工スポットは、例えば、レーザのパルス周波数および光学デバイスの入口上でのレーザビームの移動速度の適切な選択の際に、例えば
図7に示されるように、重複しかつ互いに区別可能である。
【0116】
一実施形態によると、加工スポット169は、直線に沿って、例えば、
図7に示されるように表面107上で一つの方向167で生成されていてよい。
【0117】
結果として、重複する加工スポット169は、周囲線168を規定し、この周囲線は、表面構造の包絡線であり、一実施形態によると、少なくとも周囲線部分内で、例えば、
図7で説明されている周囲線部分170内で、
図7においていくつかが符号171で表される基本要素の周期的な繰り返しの形状を有する。一実施形態によると、基本要素は少なくとも区分ごとに弧状であり、例えば
図7に示されるように円弧状である。別の実施形態によると、基本要素は、楕円のセグメントであるかまたは他の形状の基本要素であってよい。一実施形態によると、例えば表面構造162が流れに曝される場合、弧状の基本要素または基本要素の弧状の部分は、流れが直線に沿い、したがって表面構造内の極めて狭い入口領域内に生じるのではなく、流動方向に拡張されている入口領域全体にわたり生じることを引き起こすことができる。これは、流動工学的に有利であることがある。
【0118】
一実施形態によると、周期的な表面構造162の周期性は、例えば、
図7に示されるような周囲線部分170の周期性とは異なる。一実施形態によると、したがって、表面構造162の周期性と周囲線部分170の周期性との差は、表面構造162の周期性が、少なくとも二つの部分ビームの干渉によって規定されているが、それに対して、周囲線部分170の周期性は、レーザスポットの寸法およびそれにより生じる加工スポット169の重複により規定されていることに基づく。
【0119】
図8は、本明細書に開示された主題の実施形態による別の物体260の一部を示す。
【0120】
一実施形態によると、物体260の表面107は、レーザスポット106が二つの互いに線状の独立した方向に移動することにより生成された周期的表面構造162を有する。例えば、レーザ加工装置は、例えば、
図8に示されているように、レーザスポット106がメアンダ状の経路172に沿って移動するように構成されていてよい。レーザスポット106が二つの互いに線状の独立した方向に移動することは、例えば、第一の方向167に対して平行で第一の経路部分174に沿ってレーザスポットを位置決めすることにより実現され、第一の経路部分174に対して傾斜して(例えば垂直に)延びる第二の経路部分176に沿ってレーザスポットを位置決めすることにより実現されてよい。
【0121】
さらに、レーザスポット106が二つの互いに線状の独立した方向に移動することは、二つの平行の経路部分、例えば、
図8に示されるような二つの平行な経路部分174,178を有することが予定されていてよい。一実施形態によると、両方の平行な経路部分で反対方向への移動が行われ、
図8では182で示され、それにより、例えば、
図8に示されるように、例えばメアンダ状の経路が実現可能である。一実施形態によると、レーザスポットの平行の経路部分で常に同じ方向への移動を行うことができる(
図8には示されていない)。平行の経路部分上でのレーザスポットの重複のために、後退移動(第二の経路部分に沿う、
図8には示されていない)が必要であり、その間では、一実施形態によると、レーザビームはスイッチオフされるので、後退移動の間にレーザスポットは生成されない。さらに、一実施形態によると、第二の経路部分176に沿ってレーザビームはスイッチオフされるので、第二の経路部分に沿ってレーザスポットは生成されないことも予定されていてよい。例えば、経路部分の、例えば第二の経路部分176の端点においてのみ、レーザビームはスイッチオンされ、それにより、例えば
図8に示されているように、レーザスポットは、端点において生成されることが予定されていてよい。
【0122】
一実施形態によると、平行な経路部分に沿った、例えば平行な経路部分174,178に沿ったレーザスポットの位置決めは、光学デバイスの入口上でのレーザビームの移動によって生成され、平行な経路部分に対して傾斜する、例えば、経路部分176,180に沿った移動は、基準点184に対する表面107の移動により行われる。これは、大きな表面を加工することができるという利点を有する。光学デバイスに対する表面107の移動は、例えば連続的に行うことができ、一実施形態によると、予定の経路(例えば、
図8に示されているようなメアンダ状の経路)の実現のために、レーザ加工装置は、基準点184に対する光学デバイスの移動による補正移動を実施し、それにより予定の経路に沿ってレーザスポットを位置決めするように構成されている。別の実施形態によると、基準点184に対する表面107の移動の代わりに、レーザ加工装置は、平行な経路部分に対して傾斜する(例えば平行な経路部分に対して垂直の)移動も、光学デバイスの入口上でのレーザビームの移動により生成されるように構成されていてよい。一般に、例えばアクチュエータデバイス118と少なくとも一つの可動ミラー314とは、レーザビーム102の移動が二つの互いに線状の独立した方向で可能となるように構成されていてよい。一実施形態によると、アクチュエータデバイス118と少なくとも一つの可動ミラー314とは、自体公知のガルバノメータスキャナにより形成されていてよい。
【0123】
一実施形態によると、表面構造162は、導入する周囲線の第一の周囲線部分170を規定し、この周囲線部分170は、基本要素171を周期的に繰り返す形状を有する。別の実施形態によると、表面構造162は、基本要素171を周期的に繰り返す形状を有する第二の周囲線部分172を有し、第二の周囲線部分172は、例えば
図8に示されるように、第一の周囲線部分170に向かい合う。一実施形態によると、第二の周囲線部分172は、例えば
図8に示されるように、第一の周囲線部分170の鏡像である。
【0124】
所定の条件下で、周囲線部分は、例えばレーザビームがレーザスポット106の位置決めの間に第一の経路部分174に沿って連続的に(パルスされずに)放射される場合、または個々のパルスの干渉パターンの重複が極めて高い場合に、基本要素を(認識可能に)周期的に繰り返す形状を有していないことは自明である。しかしながら、このような場合に、別の周囲線部分185,186は、例えば、この別の周囲線部分185,186の方向188に位置決めする際に、連続的なレーザビームがスイッチオフされる場合、十分に基本要素を周期的に繰り返す形状を有することができる。
【0125】
図9は、本明細書に開示された主題の実施形態による物体360の一部を示す。
【0126】
図8と同様に、
図9もまた、表面構造162の包絡線である周囲線168を規定する、周期的な表面構造162を有する表面107を有する物体360を示す。一実施形態によると、周囲線168は、基本要素171を周期的に繰り返す第一の周囲線部分170と第二の周囲線部分172とを有し、基本要素171は、一実施形態によると、例えば
図9に示されるように唯一の弧状の部分からなる。別の実施形態によると、周囲線168は、基本要素183を周期的に繰り返す第三の周囲線部分185を有し、この第三の周囲線部分は、例えば
図9に示されるように、二つの弧状の部分からなる。別の実施形態によると、周囲線168は、別の基本要素187を周期的に繰り返す第四の周囲線部分186を有し、この第四の周囲線部分は、例えば
図9に示されるように、二つの弧状の部分からなる。
【0127】
図10は、
図9における切断線X-Xに沿った
図9からの表面構造162の一部の断面図を示す。
【0128】
一実施形態によると、表面107は、塗料層109により形成されていて、この塗料層は、物体360の本体(この本体は、
図10には示されていない)上に形成されている。一実施形態によると、塗料層109は、硬化された塗料層、例えば航空機の塗料層である。一実施形態によると、表面構造162は、多数の溝189を有し、この溝の一つが、
図10に、例示的に断面図で示されている。一実施形態によると、表面構造、ひいては溝189の少なくとも一つは、最大の深さの伸び(または深さ)190を有し、この深さの伸びは、一実施形態によると、塗料層109の厚み191よりも小さい。
【0129】
一実施形態によると、表面構造162の縁部での第一の位置198から最も近くにある第二の位置199までの表面構造162の深さの伸びは、最大の深さの伸びの80%まで増大する。「最も近くにある」は、この意味で、深さの伸びが最大の深さの伸びの80%であるいくつかの第二の位置が存在する場合、第一の位置198に対して最も短い間隔を有するものが選択されることを意味する。別の実施形態によると、第一の位置198と第二の位置199との間の間隔163は、少なくとも100μm、例えば少なくとも300μmまたは少なくとも500μmである。
【0130】
例えば、一実施形態によると、深さ190は、溝189の縁部領域192において減少し、連続的にゼロになる、すなわち、例えば
図10に示されるように、表面107のレベルになる。縁部領域192における表面構造162の態様は、一実施形態によると、レーザの射し込み挙動に起因し、それにより、縁部領域192内で、レーザスポットによる除去は、比較的小さくなる、それというのも、レーザスポットは、その縁部領域では、典型的には、レーザスポットの中心よりも小さい強度を有するためである(レーザスポットの干渉パターンに関する平均)。本明細書に記載された特徴を有する射し込み挙動は、例えば、表面が塗料層により形成されていて、CO2レーザを用いて加工が行われることにより達成可能である。
【0131】
一実施形態によると、塗料表面は、国際公開第2018/197555号に記載されているような塗料表面である。特に、この塗料表面は、ポリマーを基礎とする、特にポリウレタンまたはアクリルまたはエポキシを基礎とする塗料により形成されていてよい。一実施形態によると、塗料は、透明塗料または上塗塗料である。一実施形態によると、塗料の吸収スペクトルは、CO2レーザの発光スペクトルとの重複を有する。一実施形態によると、CO2レーザは、9μm~11μmの範囲内の波長で動作可能である。
【0132】
一実施形態によると、塗料は、塗料の着色に影響を及ぼす顔料を含有する。典型的には、上塗塗料は、このような顔料を含有する。別の実施形態によると、顔料は、レーザビームに対する塗料の吸収挙動を変化させる。一実施形態によると、レーザの射し込み挙動は、顔料の種類および濃度により影響を受けることができてよい。
【0133】
一実施形態によると、塗料は、第二の塗料上に配置されている第一の塗料である。それゆえ、第一の塗料の層は、上塗塗料層とも言われ、第二の塗料の層は、したがって、下塗塗料層とも言われる。一実施形態によると、上塗塗料層は、透明塗料層であるか、または特にポリウレタンを基礎とする上塗塗料層である。別の実施形態によると、下塗塗料層は、エポキシ系(例えば硬化されたエポキシ樹脂)または一般にプラスチックにより形成されている。
【0134】
図11は、本明細書に開示された主題の実施形態による表面構造162の一部の平面図を示す。
【0135】
既に先に説明したように、表面構造162は、包絡線を規定し、この包絡線は、本明細書では周囲線168とも言われる。既に上述に説明された図と同様に、表面構造162は単に、
図11では多数の平行の線により概略的に示されているだけで、この線の各々は、表面(
図11には示されていない)内の溝189を表す。
【0136】
図12および
図13は、
図11における切断線XII-XIIまたはXIII-XIIIに沿った
図11からの表面構造162の断面図を示す。
図13から
図12までの対応する切断線の割り当ては、さらに矢印193により表されている。
【0137】
一実施形態によると、平行の溝189は、縁部領域192(
図11では射線により示される)内では、例えば
図11と
図12~
図13との関連から明らかなように、比較的浅い深さを有する。
【0138】
表面構造の縁部から増大する深さの伸びは、
図12と
図13とにおいても明白である。最大の深さの伸びの80%のパーセンテージで、表面構造は、凹部を有していない限り、最大の深さの伸びの80%に相当する第二の位置199は、内挿または外挿によっても測定することができると解釈されるべきである。一実施形態によると、例えば、第一の位置から出発して、第二の位置は、表面構造の深さの伸びの最大の勾配に沿った方向で決定されることが予定されていてよい。
【0139】
図14は、本発明に開示された主題の実施形態によるレーザ加工装置408を示す。
【0140】
一実施形態によると、レーザ加工装置408は、本明細書に開示された実施形態の一つまたはいくつかにより形成されている光学デバイス500を備える。
【0141】
別の実施形態によると、レーザ加工装置408は、例えば、本明細書に開示された主題の実施形態によると、アクチュエータデバイスと少なくとも一つの可動ミラーを有することができるスキャン装置194を備える。一実施形態によると、スキャン装置194は、ガルバノメータスキャナにより形成されている。一実施形態によると、スキャン装置194は、レーザビーム102を光学デバイス500の入口101に向け、レーザビーム102を光学デバイス500の入口101上で移動させるように設定されている。
【0142】
別の実施形態によると、レーザ加工装置408は、レーザ源116と連結可能なレーザ入口195を備える。一実施形態によると、レーザ入口195は、例えば
図14に示されるように、スキャン装置194により形成されている。一実施形態によると、レーザ源116は、レーザ加工装置408の外部にある。例えば、レーザ加工装置408がロボットアームに取り付けられている場合、レーザ源116は、ロボットアームの隣の床上に位置決めされ、レーザ入口195と光学的に連結されていてよい。別の実施形態によると(
図14には示されていない)、レーザ源116は、レーザ加工装置408の一部である。
【0143】
一実施形態によると、光学デバイスは、レーザビーム102から、少なくとも二つの部分ビーム112,212を生成し、この少なくとも二つの部分ビームは、レーザスポット106中に干渉パターンを生成する。
【0144】
一実施形態によると、物体160は、光学デバイス500に対して、レーザスポット106が物体160の表面107上に位置決めされるように位置決めされている。
【0145】
一実施形態によると、レーザ加工装置に、別のアクチュエータデバイス130が取り付けられ、この別のアクチュエータデバイスを用いて、例えば、光学デバイス500の入口101上でのレーザビーム102の移動によるだけではてカバーすることができない物体160の表面部分を構造化するために、光学デバイス500と物体160とは、互いに相対的に移動可能である。
【0146】
一実施形態によると、別のアクチュエータデバイス130は、少なくとも一つの第一のアクチュエータ196を有し、この第一のアクチュエータを用いて、物体160は、基準点184に対して移動可能である。一実施形態によると、別のアクチュエータデバイス130はさらに、少なくとも一つの別のアクチュエータ197を有し、この第二のアクチュエータを用いて、レーザ加工装置408は、基準点184に対して移動可能である。一実施形態によると、少なくとも一つの第二のアクチュエータ197は、ロボットアームにより形成されている。
【0147】
本明細書に開示された構成要素(例えば、装置、特徴、方法ステップ、制御装置、アクチュエータデバイス、光学デバイス、アクチュエータ、光学素子など)は、いくつかの実施形態において説明されているような決定的な構成要素に限定されるものではないことに留意すべきである。むしろ、本明細書に開示された主題は、開示された特別な機能性を相変わらず提供しつつ、多様な様式で実施することができる。
【0148】
特に、本明細書で説明された主題は、示された機能を相変わらず提供しつつ、多様な様式で、装置レベル、または方法レベル、またはソフトウェアレベルでの多様な細分性で提供されてよい。さらに、実施形態によると、本明細書に開示された機能の各々に対して個別の構成要素を提供されてよいことも留意すべきである。別の実施形態によると、本明細書に説明されている二つまたはそれ以上の機能を提供するように、一つの構成要素が構築されていてよい。例えば、一実施形態による
図2における両方のミラー214の機能は、唯一のルーフエッジミラーにより実現されていてよい。さらに別の実施形態によると、本明細書に説明されている一つの機能を一緒に供給するように、二つまたはそれ以上の構成要素が構築されていてよい。
【0149】
本明細書に説明された図面における具現化は、本明細書に開示された主題の可能な実施バリエーションに関する限定的な選択であるにすぎないことが指摘される。したがって、個々の実施形態の特徴を、適切な様式で、互いに組み合わせ、その結果、当業者にとって、本明細書で明示的な実施バリエーションによって、多数の異なる実施形態が開示されていると見なすことが可能である。さらに、「ein(一つ)」または「eines(一つ)」のような概念は、複数を除外するものでないことに言及するべきである。「含む(enthaltend)」または「有する(aufweisend)」のような概念は、別の特徴または方法ステップを除外するものではない。「有する(aufweisend)」または「含む(enthaltend)」または「包含する(umfassend)」の概念は、それぞれ、「とりわけ含む」および「からなる」の両方の意味を包含する。
【0150】
さらに、図面における例示的な主題および要素(例えば、レーザ加工装置、光学デバイスなど)は、本明細書に開示された主題のいくつかの実施形態の所定の組合せを示し、実施形態の各々の別の組合せも同様に可能であり、この出願により開示されていると見なされることに留意すべきである。
【0151】
本明細書に開示された主題の実施形態の有利な組合せを、以下にまとめることができる。
レーザ加工装置は、光学デバイスを備え、この光学デバイスは、レーザビームを受け入れるための入口を有し、この光学デバイスは、レーザビームを少なくとも二つの部分ビームに分割するビームスプリッタを有し、この光学デバイスは、レーザスポット内に干渉パターンを生成するために、再びこの部分ビームを一つのレーザスポットにまとめ、入口でのレーザビームの第一の状態は、第一の干渉パターンを生成し、レーザビームの第二の状態は、第二の干渉パターンを生成し、第一の状態と第二の状態とは、(i)入口でのレーザビームの位置と、(ii)入口に対するレーザビームの入射角の少なくとも一方が異なり、この光学デバイスは、第二の干渉パターンが第一の干渉パターンを同相で継続するように構成されている。