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特許7616817養子免疫療法における免疫細胞調節のための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】養子免疫療法における免疫細胞調節のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20250101AFI20250109BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250109BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20250109BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
A61K35/17
A61K45/00
A61P31/12
A61P31/18
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/06
A61P43/00 121
C12N5/0783
C12N15/09 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018537761
(86)(22)【出願日】2017-01-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-31
(86)【国際出願番号】 US2017014408
(87)【国際公開番号】W WO2017127729
(87)【国際公開日】2017-07-27
【審査請求日】2020-01-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】62/281,064
(32)【優先日】2016-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/336,339
(32)【優先日】2016-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】312000284
【氏名又は名称】フェイト セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローゼン,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】レズナー,ベッツィ
(72)【発明者】
【氏名】バラマール,バーラム
(72)【発明者】
【氏名】ビョーダール,リャン
(72)【発明者】
【氏名】ペラルタ,アイゲン
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】松波 由美子
【審判官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/188119(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/155738(WO,A1)
【文献】J.Immunol.,2005年4月15日,Vol.174,No.8,p4551-4558
【文献】Nature Communications,2016,Vol.7:11154, p.1-11
【文献】BMC Cell Biology,2007,Vol.18:34,p.1-17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫細胞の集団を、GSK3阻害剤を含む少なくとも1つの薬剤と、調節されていない免疫細胞と比較し、改善された治療可能性を有する調節された免疫細胞の集団を得るのに十分な時間、接触させることと:
前記調節された免疫細胞を含む集団を医薬組成物に製剤することを含み;
調節される前の免疫細胞の集団がNK細胞を含み、
調節された免疫細胞の集団がNK細胞を含み、前記改善された治療可能性は、CD56+CD57+の養子NK細胞の割合が高まることを含む、調節された免疫細胞の集団を含む医薬組成物の製造方法。
【請求項2】
(a)前記免疫細胞が、少なくとも一つの薬剤と接触する前に、少なくとも一つの以下の特徴を有する:
(i)
(1)CD57-NK細胞;又は
(2)CD57-NKG2C+NK細胞;
を含む、
(ii)末梢血、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染の部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、若しくは腫瘍から単離されるか、又はそれに含まれる;
(iii)
(1)健常対象;
(2)自己免疫疾患、造血器悪性腫瘍、ウイルス感染症若しくは固形腫瘍を有する対象;
(3)遺伝子的に修飾された免疫細胞を既に投与された対象;又は
(4)CMV血清陽性である対象
から単離される、又は
(iv)ゲノム的に操作され、挿入、欠失、若しくは核酸置換を含む
(v)幹細胞、造血幹細胞若しくは造血前駆細胞、又は前駆細胞から試験管内で分化する;又は
(vi)造血系又は非造血系の非多能性細胞から試験管内で分化転換する;
)一つ又は複数の添加剤を更に含む前記少なくとも一つの薬剤を含む前記組成物;及び/又は

(i)十分な量の調節のための組成物と接触させる段階の前に、前記免疫細胞を活性化させること;及び選択的に、活性化段階の前であること、
(ii)活性化及び調節のために前記免疫細胞をCD3及びCD19細胞から枯渇させること、
を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
以下の特徴の少なくとも一つを有する、請求項2の方法であって:
(a)前記幹細胞が、誘導された多能性幹細胞(iPSC)又は胚性幹細胞(ESC)を含む;
(b)前記前駆細胞が、CD34+造血性内皮細胞、多能性前駆細胞、又はNK前駆細胞である;
(c)前記幹細胞、造血幹細胞若しくは造血前駆細胞、又は前駆細胞が、ゲノム的に操作され、挿入、欠失、若しくは核酸置換を含む
(d)前記免疫細胞が
(i)欠失若しくは低減した発現のB2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、CIITA、RFX5、又はRFXAP、及び染色体6p21領域中の任意の遺伝子;ならびに
(ii)誘導された若しくは増大した発現のHLA-E、HLA-G、HACD16、hnCD16、41BBL、CD3、CD4、CD8、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、Fc受容体、あるいは二重若しくは多特異性又は普遍的エンゲイジャーとのカップリングのための表面トリガー受容体の1つあるいは複数を含む、
)前記一つ又は複数の添加剤が:(i)ペプチド、抗体、抗体フラグメント、サイトカイン、マイトジェン、成長因子、スモールRNA、dsRNA、単核血液細胞、フィーダー細胞、フィーダー細胞成分若しくは置換因子、対象となる1つ若しくは複数のポリ核酸を含むベクター、化学療法剤若しくは放射性部分、及び免疫調節薬(IMiD)の少なくとも一つ;(ii)IL2、IL15、IL12、IL18及びIL21を含む刺激性サイトカインの少なくとも1つ、又は(iii)MEK阻害剤、ラパマイシン、及びSTINGアゴニストの1つ又は複数を含む、又は
)前記組成物が:
(i)TGFβ受容体阻害剤、ROCK阻害剤、MEK阻害剤、PDK1アゴニスト、及びラパマイシンの1つ又は複数;
(ii)IL15;
(iii)IL15及びSTINGアゴニスト;又は
iv)ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルアセトアミド、エタノール及びその組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの有機溶媒をさらに含む、
)前記調節された免疫細胞の養子NK細胞は:
(A)ならびにNKG2C+、低PLZF、低SYK、低FcεRγ、低EAT-2、低TIGIT、低PD1、低CD7、低CD161、高LILRB1、高CD45RO、及び低CD45RAの少なくとも1つを含む養子NK細胞;
(B)hnCD16を発現するNK細胞;又
(h)前記方法は調節された免疫細胞から養子NK細胞を単離することをさらに含み、
)前記十分な時間が、16時間以上である;
)前記免疫細胞が、フィーダーフリーな環境にある;
)前記調節されたNK細胞が
(i)拡大を少なくとも2倍増大する;及び/又は
(ii)改善されたサイトカイン応答が、増大した産生の、IFNγ及び/若しくはTNFαを含む1つ又は複数のサイトカインを含む、方法。
【請求項4】
NK細胞の集団を含む医薬組成物の製造方法であって:
(a)免疫細胞の集団を
(i)健常対象;
(ii)自己免疫疾患、造血器悪性腫瘍、ウイルス感染若しくは固形腫瘍を有する対象;
(iii)遺伝子的に修飾された免疫細胞を既に投与された対象;又は
(iv)CMV血清陽性である対象;から提供すること、
(b)CD3及びCD19細胞を、免疫細胞の前記集団から枯渇させること、及び
(c)工程(b)からもたらされた免疫細胞の前記集団を、GSK3阻害剤を含む十分量の組成物と、調節されていないNK細胞と比較し、養子細胞療法の改善された治療可能性を有する調節されたNK細胞の集団を得るのに十分な時間、接触させること、を含む、NK細胞の集団を調節する方法であって、
CD3及びCD19細胞を枯渇させるのに先立ち、免疫細胞の前記集団が、サイトカイン又はGSK3阻害剤と共に培養されない、及び
調節されたNK細胞は、NK細胞の拡大を少なくとも2倍増大する、及び/又は;改善されたサイトカイン応答が、増大した産生の、IFNγ及び/若しくはTNFαを含む1つ又は複数のサイトカインを含み、
前記改善された治療可能性は、CD56+CD57+の養子NK細胞の割合が高まることを含む、方法。
【請求項5】
免疫細胞の集団、ならびにGSK3阻害剤を含む1つ又は複数の薬剤を含む医薬組成物であって、
(i)前記免疫細胞の集団は、調節されたNK細胞を含む調節された免疫細胞を含み、
(ii)前記調節された免疫細胞は、GSK3阻害剤を含む1つ又は複数の薬剤により調節され、かつGSK3阻害剤を含む前記1つ又は複数の薬剤によって調節されていない免疫細胞と比較し、改善された治療可能性を有し、
(iii)前記改善された治療可能性は、CD56+CD57+の養子NK細胞の割合が高まることを含み、かつ
(iv)前記医薬組成物は、養子NK細胞を含む、医薬組成物。
【請求項6】
請求項5の組成物であって
(a)前記免疫細胞が以下の特徴の少なくとも一つを有する:
(i)
(1)CD57-NK細胞;又は
(2)CD57-NKG2C+NK細胞を含む免疫細胞集団から調製される、
(ii)末梢血、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染の部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、若しくは腫瘍から単離されるか、又はそれに含まれる;
(iii)
(1)健常対象;
(2)自己免疫疾患、造血器悪性腫瘍、ウイルス感染症若しくは固形腫瘍を有する対象;
(3)遺伝子的に修飾された免疫細胞を既に投与された対象;又は
(4)CMV血清陽性である対象
から単離される、
(iv)ゲノム的に操作され、挿入、欠失、若しくは核酸置換を含む;
)幹細胞、造血幹細胞、又は造血前駆細胞、若しくは前駆細胞から試験管内で分化する;又は
vi)造血系又は非造血系の非多能性細胞から試験管内で分化転換する、又は
)前記組成物が1つ又は複数の添加剤を更に含む、
組成物。
【請求項7】
(a)前記調節された免疫細胞の養子NK細胞が:
(i)CD57+、ならびにNKG2C+、低PLZF、低SYK、低FcεRγ、低EAT-2、低TIGIT、低PD1、低CD7、低CD161、高LILRB1、高CD45RO、及び低CD45RAの少なくとも1つを含む、養子NK細胞;
(ii)hnCD16を発現するCD57+NK細胞
(b)前記幹細胞が、誘導された多能性幹細胞(iPSC)又は胚性幹細胞(ESC)を含む;
(c)前記前駆細胞が、CD34+造血性内皮細胞、多能性前駆細胞、又はNK前駆細胞である;
(d)前記幹細胞、造血幹細胞若しくは造血前駆細胞、又は前駆細胞が、ゲノム的に操作され、挿入、欠失、若しくは核酸置換を含み、
)前記免疫細胞が、
(i)欠失若しくは低減した発現のB2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、CIITA、RFX5、又はRFXAP、及び染色体6p21領域中の任意の遺伝子;ならびに
(ii)誘導された若しくは増大した発現のHLA-E、HLA-G、HACD16、hnCD16、41BBL、CD3、CD4、CD8、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、Fc受容体、あるいは二重若しくは多特異性又は普遍的エンゲイジャーとのカップリングのための表面トリガー受容体の1つあるいは複数を含む;
)前記1つ又は複数の添加剤が:
(i)ペプチド、抗体、抗体フラグメント、サイトカイン、マイトジェン、成長因子、スモールRNA、dsRNA、単核血液細胞、フィーダー細胞、フィーダー細胞成分若しくは置換因子、対象となる1つ若しくは複数のポリ核酸を含むベクター、化学療法剤若しくは放射性部分、及び免疫調節薬(IMiD)の少なくとも一つ;
(ii)IL2、IL15、IL12、IL18及びIL21を含む刺激性サイトカインの少なくとも1つ;
(iii)MEK阻害剤、ラパマイシン、及びSTINGアゴニストの一つ又は複数;又は
(h)前記組成物が:
(i)TGFβ受容体阻害剤、ROCK阻害剤、MEK阻害剤、PDK1アゴニスト、及びラパマイシンの1つ又は複数;
(ii)IL15;
(iii)IL15、及びSTINGアゴニスト;又は
(iv)ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルアセトアミド、エタノール及びその組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの有機溶媒を含む、
請求項6の組成物。
【請求項8】
前記NK細胞が遺伝的に修飾されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか1項により製造された、調節されたNK細胞の集団を含む医薬組成物
【請求項10】
調節されたNK細胞集団が遺伝的に修飾されたNK細胞を含む、請求項9記載の医薬組成物
【請求項11】
請求項9又は0に記載の医薬組成物であって;選択的にペプチド、サイトカイン、マイトジェン、成長因子、スモールRNA、dsRNA(2本鎖RNA)、単核血液細胞、フィーダー細胞、フィーダー細胞成分若しくは置換因子、対象となる1つ若しくは複数のポリ核酸を含むベクター、抗体、化学療法剤若しくは放射性部分、及び免疫調節薬(IMiD)からなる群から選択される1つ又は複数の追加の添加剤をさらに含む、医薬組成物
【請求項12】
養子細胞療法用組成物であって、前記養子細胞療法が、自家又は同種であり;養子細胞療法の対象が、自己免疫異常、血液系腫瘍、固形腫瘍、癌、又はHIV、RSV、EBV、CMV、アデノウイルス、若しくはBKポリオーマウイルスと関連する感染症を有する、請求項1記載の医薬組成物
【請求項13】
医学で使用するための請求項12記載の医薬組成物であって、前記使用が治療上十分量の組成物を抗体、化学療法剤、又は放射性処置と組み合わせて投与することを含む、前記抗体、化学療法剤、又は放射性処置が、前記組成物の投与に先立ち、最中、又は後である、医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年1月20日に出願された米国仮出願第62/281,064号、および2016年5月13日に出願された米国仮出願第62/336,339号の優先権を主張し、その開示は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、養子細胞免疫療法の分野と広く関係する。より具体的には、本開示は、養子細胞療法に適した免疫細胞を調節するための小分子の使用と関係する。
【背景技術】
【0003】
養子免疫療法は、癌、腫瘍、または感染症を有する患者への免疫細胞の投与を含み、これにより、投与された免疫細胞が、患者に治療効果をもたらす。一般的に言うと、免疫療法に適した免疫細胞は、B細胞、樹状細胞(DC)、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT(ナチュラルキラーT)細胞、および造血幹細胞または造血前駆細胞を含むが、これらに限定されない。患者において完全かつ永続的な疾患応答を仲介することは、これらの細胞ベースの免疫療法の中心となる目標である。
【0004】
CAR-T細胞、TCR-T細胞、ウイルス特異的T細胞(VST)および腫瘍浸潤T細胞(TIL)を含むが、これらに限定されない、養子T細胞療法の有効性の背景にある生物学的機序の我々の理解の進歩は、導入されたT細胞と関連するある種の特性の重要性を明確に示し、宿主、および癌の処置の成功のため克服されることを必要とする腫瘍細胞により引き起こされる阻害バリアの複雑さを明らかにした。T細胞因子の中で、T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)の結合活性、増殖および生存能力、腫瘍部位への遊走、ならびに腫瘍内でエフェクター機能を持続する能力は、相関研究において、悪性細胞の根絶の引き金を引くための重大な決定要因であることが示された。しかしながら、別の階層の複雑さに加えて、これらの望ましい特性のいくつかは認識されたが、これらの特性をもたらす経路またはプレーヤーはまだ不明確であり、それが、人の、介入する能力、ならびにそれらの治療上の使用のため所望される量および質を有する細胞を得る能力を制限する。
【0005】
CAR-T細胞療法を例として使用すると、療法は、CAR-T能力および持続性、腫瘍への遊走、免疫抑制腫瘍微小環境、腫瘍不均一性、および患者の安全性を含む複数の課題を克服しなければならない。これらの課題を克服するために、複数のアプローチが適用されている。例えば、特異的T細胞サブセットを、治療上の使用のため選択し、CARのさらなる操作を使用して、腫瘍ターゲティング、CAR能力、および的中した/腫瘍を離れた安全性の問題が改善されてもよい。しかしながら、CAR-T持続性および遊走を含む、CAR-T治療能力の改善は、解消されるべきままである。T細胞療法の生体内有効性は、プロセスまたは原料に入れるT細胞の開始集団と、利用される生体外拡大および活性化方法の両方に依存性である製造プロセスにより、強く影響され得ることが示されている。投与されたT細胞の分化状態は、生体内持続性および抗腫瘍活性に有意に影響し得ることが示されている。Tヘルパー(CD4+T細胞)ならびに細胞傷害性T細胞(CD8+)、具体的には、CCR7およびCD62Lマーカーの発現により特徴付けられる、ナイーブ(Tn)、幹細胞メモリー(Tscm)ならびにセントラルメモリー(Tcm)T細胞は、マウスモデルにおいて(Sommermeyer et al.2015)、と非ヒト霊長類モデルにおいて(Berger et al.2008)の両方で優れた抗腫瘍活性を仲介する。
【0006】
製造プロセス中に、治療細胞(または細胞集団)は、典型的には活性化され、拡大される。このプロセスは、一般的に、細胞の分化をもたらし、より分化した状態にある細胞の割合の増大につながり、T細胞の場合、より分化した細胞は、エフェクターメモリーまたはエフェクターT細胞として表現型の上で特徴付けられる。患者に注入されると、これらのより分化した細胞は、より少なく分化した状態にある細胞と比較して、より低い増殖する能力、およびより低い、長期間生存するかまたは持続する集団として持続する能力を有する。したがって、所望される免疫細胞サブセットを維持し、拡大するのに有用な組成物および方法だけでなく、拡大中に細胞分化を低減し、細胞をより少なく分化した細胞に脱分化させ、これにより、様々な養子免疫療法の有効性を改善するために、より高い増殖し、持続する能力を有し、持続する所望される免疫細胞サブセットを得ることも、当該技術分野において、急ぎ必要である。
【0007】
同様の有効性の問題は、NK細胞ベースの療法において同じく存在する。ナチュラルキラー細胞は、比較的短期間生存するとして特徴付けられ、刺激への二次的曝露に応答して最小の変化を提示し、すなわち、制限された標的メモリー応答を提示する固有の免疫細胞として伝統的に分類された。しかしながら、近年の研究が、自己寛容および持続するNK細胞活性を含む重要な役割を果たす活性化するNK細胞受容体と阻害性NK細胞受容体の両方についての情報を明らかにした。データは、周辺環境に容易に順応し、同じ抗原への二次的曝露に応答するための基本である抗原特異的免疫記憶を編成する、NK細胞の能力を示した。現在養子NK細胞またはメモリーNK細胞と呼ばれる、NK細胞の亜集団が、幾つかのグループにより同定された。これらの細胞は、より長期間生存すること、および初回曝露後に刺激への増強された応答を有することを含む、CD8+T細胞に類似する多くの機能的特徴を有する。これらの特性は、基準のNK細胞と比較して、より有効な細胞療法ストラテジーをもたらし得る。生体内での永続的な抗原特異的認識を仲介する養子/メモリーNK細胞の拡大および維持は、NK細胞ベースの養子免疫療法の改善の鍵となるだろう。
【0008】
さらに、TおよびNK細胞の様に、改善された細胞療法を生じるための調節の標的とされ得る、自然免疫系と養子免疫系の両方において役割を果たすCD1d拘束性T細胞の一種である、より有効なNKT細胞を単離するための改善が成され得ることが考えられる。
【0009】
患者に入れられる細胞の最終的な状態、または具体的には、細胞サブタイプは、製造プロセスにより大部分において規定され得るので、そのプロセスの重要性を誇張し過ぎることはない。細胞培養および拡大中に、所望される分化状態、ならびに/もしくは養子免疫細胞特徴を有する細胞亜集団を優先的に維持または拡大することは、細胞ベースの療法の有効性を増強するのに極めて有益であり得る。したがって、所望されるT、NKまたはNKT細胞サブセットを量と質の両方で増強することができる製造アプローチは、それらの治療有効性の有意な強化をもたらし得る。
【0010】
当該技術分野において、改善された治療有効性を有する免疫細胞サブセットが実質的に必要である。しかしながら、治療免疫細胞のある種の望ましい特性が公知である一方、これらの特性を達成するのに関与する経路および/またはプレーヤーは、多くが未知である。本発明の方法および組成物は、免疫細胞療法の分野において、これらの要求に対処し、他の関連する利点をもたらす。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、免疫細胞の1つもしくは複数の集団または亜集団を、養子免疫療法のそれらの治療可能性を改善するために調節するための組成物および方法を提供する。例えば、より良好な免疫療法結果をもたらすことが予想される以下の性質:遊走、ホーミング、細胞毒性、維持、拡大、持続性、寿命延長、所望される状態の分化の少なくとも1つにおける改善を提示する細胞の亜集団の数もしくは割合を増大させることにより、治療免疫細胞の増殖、持続性、細胞毒性、および/または細胞リコール/メモリーを改善するための単独あるいは組み合わせのいずれかで、1つあるいは複数の化合物を提供することが、本発明の目的である。
【0012】
本発明の1つの態様は、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の治療可能性を改善するための組成物を提供し、組成物は、表1において挙げられる化合物:ドルソモルフィン;ヘプテリジン酸;1-ピロリジンカルボジチオ酸、アンモニウム塩;2-デオキシグルコース(2-DG);GSK3阻害剤;Rhoキナーゼ阻害剤;MEK阻害剤;PDK1アゴニスト;TGFβ阻害剤;6-メルカプトプリン;AC-93253ヨウ化物;チラトリコール;PI-103;フルベストラント;タプシガルジン;SU4312;テルミサルタン;サイクロスポリンA;1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-4-プロピル-1H-ピラゾール;BAY61-3606;プロトポルフィリンIX二ナトリウム;ラパマイシン;HS173;LY294002;ピクチリシブ;5-アザシチジン;フルダラビン;ロスコビチン、(S)-異性体;PAC-1、8-キノリノール、5,7-ジクロロ-;ニトロフラントイン;8-キノリノール、5-クロロ-7-ヨード-;2-ナフタセンカルボキサミド,7-クロロ-4-(ジメチルアミノ)-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒ;ニフロキサジド;トスフロキサシン塩酸塩;セルトラリン;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ペンタナトリウム;塩化エドロホニウム;BIX01294;テルフェナジン;およびdmPGEからなる群から選択される1つまたは複数の薬剤を含む。表1において挙げられる化合物からなる群から選択される1つまたは複数の薬剤は、当該1つもしくは複数の薬剤を使用した免疫細胞の調節を介して、免疫細胞あるいはその1つまたは複数の亜集団の治療可能性を改善する。幾つかの実施形態において、免疫細胞の調節は生体外でである。
【0013】
幾つかの実施形態において、表1において挙げられる化合物の1つまたは複数は、細胞拡大、維持、および/または分化を調節し、これにより、免疫細胞、またはその1つもしくは複数の亜集団の増殖、細胞毒性、サイトカイン応答および分泌、細胞リコール、ならびに/あるいは持続性を改善する。
【0014】
1つの実施形態において、表1において挙げられる化合物の1つまたは複数は、生体外と生体内の両方で、免疫細胞、またはその1つもしくは複数の亜集団の細胞生存率を改善する。
【0015】
1つの実施形態において、表1において挙げられる化合物の1つまたは複数は、免疫細胞の1つまたは複数の所望される細胞亜集団の割合を増大する。
【0016】
幾つかの実施形態において、本発明は、T、NKおよびNKT細胞を含むが、これらに限定されない、免疫細胞の集団もしくは亜集団の治療効果を改善するための1つまたは複数の選択された薬剤を本明細書において提供する。幾つかの実施形態において、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞免疫細胞は、T細胞、NKT細胞、またはNK細胞を含む。幾つかの実施形態において、処置の対象となる免疫細胞はT細胞を含み、したがって、1つまたは複数の所望される細胞亜集団は、ナイーブT細胞、幹細胞メモリーT細胞、および/またはセントラルメモリーT細胞を含む増大した割合を有する。幾つかの実施形態において、薬剤を使用した処理の対象となる免疫細胞は、NKT細胞を含み、したがって、1つまたは複数の所望される細胞亜集団は、タイプI NKT細胞を含む増大した割合を有する。幾つかの他の実施形態において、薬剤を使用した処理の対象となる免疫細胞は、NK細胞を含み、ここで、1つまたは複数の所望される細胞亜集団は、養子NK細胞を含む増大した割合を有する。
【0017】
幾つかの実施形態において、組成物は、表1において挙げられる、化合物、またはその誘導体、類似体もしくは医薬的に許容される塩からなる群から選択される1つあるいは複数の薬物を含む。化合物、またはその誘導体、類似体もしくは医薬的に許容される塩は、表1の化合物のエステル、エーテル、溶媒和物、水和物、立体異性体、およびプロドラッグをさらに含む。
【0018】
幾つかの実施形態において、免疫細胞の治療可能性を改善するための組成物は、群Iから選択される少なくとも1つの薬剤、ならびに群II、群III、群IV、および/もしくは群Vから選択される1つまたは複数の薬剤を含む。
【0019】
群Iは、ドルソモルフィン、ヘプテリジン酸、1-ピロリジンカルボジチオ酸、および2-DGを含む。理論に制限されるものではないが、群Iの薬剤は、他の可能性のある役割の中でも、細胞代謝および栄養素センシングに影響を及ぼす。
【0020】
群IIは、GSK3阻害剤、ROCK阻害剤、TGFβ受容体阻害剤、MEK阻害剤、PDK1アゴニスト、6-メルカプトプリン、AC-93253ヨウ化物、チラトリコール、PI-103、フルベストラント、タプシガルジン、SU4312、U0126、テルミサルタン、サイクロスポリンA、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-4-プロピル-1H-ピラゾール、BAY61-3606、プロトポルフィリンIX二ナトリウム、ラパマイシン、TWS119、HS173、LY294002、およびピクチリシブを含む。理論に制限されるものではないが、群IIの薬剤は、他の可能性のある役割の中でも、様々な機能的経路におけるシグナル伝達に影響を及ぼす。
【0021】
群IIIは、5-アザシチジン、フルダラビン、ロスコビチン、およびPAC-1を含む。理論に制限されるものではないが、群IIIの薬剤は、他の可能性のある役割の中でも、細胞増殖およびアポトーシスに影響を及ぼす。
【0022】
群IVは、5,7-ジクロロ-8-キノリノール、2-ナフタセンカルボキサミド,7-クロロ-4-(ジメチルアミノ)-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒ、ニフロキサジド、およびトスフロキサシン塩酸塩を含む。理論に制限されるものではないが、群IVの薬剤は、他の可能性のある役割の中でも、感染過程に関連する細胞特性に影響を及ぼし得る。
【0023】
群Vは、セルトラリン、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、塩化エドロホニウム、BIX01294、テルフェナジン、およびdmPGEを含む。理論に制限されるものではないが、群Vの薬剤は、他の可能性のある役割の中でも、拡大、維持、分化、脱分化、生存率、増殖、細胞毒性、細胞リコール、および/または持続性に関連する他の細胞特性に一般的に影響を及ぼす。
【0024】
幾つかの他の実施形態において、免疫細胞の治療可能性を改善するための組成物は、群IIから選択される少なくとも1つの薬剤、ならびに群I、群III、群IV、および/もしくは群Vから選択される1つまたは複数の薬剤を含む。
【0025】
なお他の実施形態において、免疫細胞の治療可能性を改善するための組成物は、群IIIから選択される少なくとも1つの薬剤、ならびに群I、群II、群IV、および/もしくは群Vから選択される1つまたは複数の薬剤を含む。
【0026】
さらに他の実施形態において、免疫細胞の治療可能性を改善するための組成物は、群IVから選択される少なくとも1つの薬剤、ならびに群I、群II、群III、および/もしくは群Vから選択される1つまたは複数の薬剤を含む。
【0027】
なお幾つかの他の実施形態において、免疫細胞の治療可能性を改善するための組成物は、群Vから選択される少なくとも1つの薬剤、ならびに群I、群II、群III、および/もしくは群IVから選択される1つまたは複数の薬剤を含む。
【0028】
幾つかの実施形態において、免疫細胞の治療可能性を改善するための組成物は、TWS119、HS173、LY294002、ピクチリシブ、および2-DGからなる群から選択される少なくとも1つの薬剤と、表1において挙げられる化合物からなる群から選択される1つまたは複数の追加薬剤の組み合わせを含む。幾つかの特定の実施形態において、組成物は、TWS119、HS173、LY294002、ピクチリシブ、および2-DGからなる群から選択される2つまたはそれ以上の薬剤の相乗的組み合わせを含む。
【0029】
幾つかの実施形態において、表1において挙げられる化合物からなる群から選択される1つまたは複数の薬剤を含む組成物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルアセトアミド、エタノールおよびその組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの有機溶媒をさらに含む。
【0030】
本発明の別の態様は、免疫細胞の集団または亜集団、ならびに表1において挙げられる化合物、ならびにその誘導体および類似体からなる群から選択される1つまたは複数の薬剤を含む組成物を提供する。幾つかの実施形態において、免疫細胞を1つまたは複数の薬剤と接触させて、かかる処理をしない免疫細胞と比較し、養子細胞療法の免疫細胞の治療可能性が改善される。幾つかの実施形態において、免疫細胞を1つまたは複数の薬剤と接触させて、同じ処理をしない免疫細胞と比較し、細胞拡大、維持、分化、脱分化、および/または生存率が改善される。さらに幾つかの他の実施形態において、免疫細胞を1つまたは複数の薬剤と接触させて、同じ処理をしない免疫細胞と比較し、細胞増殖、細胞毒性、持続性、および/またはリコールが改善される。
【0031】
幾つかの実施形態において、1つまたは複数の薬剤と接触させた免疫細胞は、同じ処理をしない免疫細胞と比較し、増大した数または割合の、免疫細胞の所望される亜集団を有する。幾つかの実施形態において、免疫細胞は、T、NKまたはNKT細胞を含む。1つの実施形態において、組成物はT細胞の集団を含み、したがって、薬剤と接触させた後の免疫細胞の所望される亜集団は、ナイーブT細胞、幹細胞メモリーT細胞、および/またはセントラルメモリーT細胞を含む。幾つかの実施形態において、組成物はNKT細胞の集団を含み、したがって、薬剤と接触させた後の免疫細胞の所望される亜集団は、タイプI NKT細胞を含む。さらに幾つかの他の実施形態において、免疫細胞は、NK細胞の集団を含む。幾つかの他の実施形態において、NK細胞は、CD57-NK細胞またはCD57-NKG2C+NK細胞を含む。したがって、薬剤と接触させた後の免疫細胞の所望される亜集団は、CD57+NK細胞を含む。幾つかの実施形態において、CD57+NK細胞は、養子NK細胞を含む。他の実施形態において、養子NK細胞は、CD57、ならびにNKG2C、低PLZF、低SYK、低FcεRγ、低EAT-2、低TIGIT、低PD1、低CD7、低CD161、高LILRB1、高CD45RO、および低CD45RAの少なくとも1つを含む。
【0032】
幾つかの実施形態において、組成物の免疫細胞の集団または亜集団は、対象の末梢血、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染の部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、もしくは腫瘍から単離されるか、またはそれに含まれる。対象は、健常であってもよく、自己免疫疾患、造血器悪性腫瘍、ウイルス感染症もしくは固形腫瘍を有していてもよいか、または遺伝子的に修飾された免疫細胞を既に投与されていてもよい。幾つかの実施形態において、対象は、CMV血清陽性であってもよい。幾つかの他の実施形態において、調節のための単離された免疫細胞は、遺伝子的に修飾される(遺伝子的に操作されるか、または再編成、変異、遺伝子インプリンティングおよび/もしくはエピジェネティック修飾から天然にもたらされる)。幾つかの実施形態において、調節のための単離された免疫細胞は、少なくとも1つの遺伝子的に修飾されたモダリティを含む。幾つかの実施形態において、免疫細胞の単離された集団は、ゲノム的に操作され、挿入、欠失、および/または核酸置換を含む。幾つかの特定の実施形態において、免疫細胞は、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、および/または過剰発現のCD16もしくはそのバリアントをコードする外来核酸を含む。したがって、遺伝子的に修飾された免疫細胞は、開示される本組成物および方法を使用した生体外での調節のため単離される。幾つかの実施形態において、調節後、対象から単離された、遺伝子的に修飾された免疫細胞は、同じドナーまたは異なる患者に投与されてもよい。
【0033】
さらに別の実施形態において、免疫細胞は、幹細胞、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、または前駆細胞から試験管内で分化するか、あるいは造血系または非造血系の非多能性細胞から試験管内で分化転換する。幾つかの特定の実施形態において、組成物の免疫細胞は、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、および/または過剰発現のCD16もしくはそのバリアントをコードする外来核酸を含む。1つの実施形態において、CD16は、hnCD16(高親和性の切断不可能なCD16)である。
【0034】
なお幾つかの他の実施形態において、組成物の免疫細胞は、幹細胞、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、または前駆細胞から試験管内で分化する。1つの実施形態において、幹細胞は、誘導された多能性幹細胞(iPSC)または胚性幹細胞(ESC)である。1つの実施形態において、前駆細胞は、CD34+造血性内皮細胞、多能性前駆細胞、T細胞前駆細胞、NK前駆細胞、またはNKT前駆細胞である。幾つかの実施形態において、幹細胞、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、または前駆細胞は、ゲノム的に操作され、挿入、欠失、もしくは核酸置換を含むか、または少なくとも1つの遺伝子的に修飾されたモダリティを含む。1つの特定の実施形態において、幹細胞、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、または前駆細胞は、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、および/または過剰発現のCD16をコードする外来核酸を含む。幾つかの他の実施形態において、組成物の免疫細胞は、造血系または非造血系の非多能性細胞から試験管内で分化転換する。幾つかの実施形態において、調節後の免疫細胞の所望される細胞亜集団は、少なくとも1つの遺伝子的に修飾されたモダリティを有する免疫細胞を含む。1つの実施形態において、免疫細胞の所望される細胞亜集団は、少なくとも1つの遺伝子的に修飾されたモダリティを有するCD57+NK細胞を含む。幾つかの実施形態において、遺伝子的に修飾されたモダリティは、セーフティスイッチタンパク質、ターゲティングモダリティ、受容体、シグナル伝達分子、転写因子、医薬的に有効なタンパク質およびペプチド、薬物標的候補;または免疫細胞の生着、輸送、ホーミング、バイアビリティー、自己再生、持続性、免疫応答制御および調節、ならびに/もしくは生存を促進するタンパク質の少なくとも1つを含む。幾つかの他の実施形態において、遺伝子的に修飾されたモダリティは、(i)欠失もしくは低減した発現のB2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、CIITA、RFX5、またはRFXAP、および染色体6p21領域中の任意の遺伝子;ならびに(ii)誘導されたもしくは増大した発現のHLA-E、HLA-G、HACD16、hnCD16、41BBL、CD3、CD4、CD8、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、Fc受容体、あるいは二重もしくは多特異性または普遍的エンゲイジャーとのカップリングのための表面トリガー受容体の1つあるいは複数を含む。1つの特定の実施形態において、CD57NK細胞は、hnCD16の発現を含む。さらに別の実施形態において、hnCD16の発現を含むCD57NK細胞は、養子NK細胞である。別の実施形態において、hnCD16の発現を含むCD57NK細胞は、NKG2C、低PLZF、低SYK、低FcεRγ、低EAT-2、低TIGIT、低PD1、低CD7、低CD161、高LILRB1、高CD45RO、および低CD45RAの少なくとも1つをさらに含む。
【0035】
幾つかの実施形態において、組成物は、GSK3阻害剤、TGFβ受容体阻害剤、ROCK阻害剤、MEK阻害剤、PDK1アゴニスト、およびラパマイシンの1つまたは複数を含む。幾つかの実施形態において、組成物は、GSK3阻害剤を含む。幾つかの実施形態において、免疫細胞、および表1において挙げられる化合物からなる群から選択される1つまたは複数の薬剤を含む組成物は、ペプチド、サイトカイン、マイトジェン、成長因子、スモールRNA、dsRNA(2本鎖RNA)、単核血液細胞、フィーダー細胞、フィーダー細胞成分もしくは置換因子、対象となる1つもしくは複数のポリ核酸を含むベクター;抗体、もしくは抗体フラグメント;および化学療法剤、放射性部分、もしくは免疫調節薬(IMiD)からなる群から選択される1つまたは複数の追加の添加剤をさらに含む。これらの実施形態の幾つかにおいて、抗体、または抗体フラグメントは、ウイルス抗原に特異的に結合する。他の実施形態において、抗体、または抗体フラグメントは、腫瘍抗原に特異的に結合する。幾つかの実施形態において、追加の添加剤は含む。化学療法剤は、細胞毒性抗腫瘍薬、すなわち、腫瘍細胞を優先的に殺傷するか、もしくは迅速に増殖する細胞の細胞サイクルを妨害する化学薬剤、または癌幹細胞を根絶することが見出されている化学薬剤、および腫瘍細胞の成長を妨げるかまたは低減するために治療上使用される化学薬剤を指す。化学療法剤はまた、ときに、抗腫瘍または細胞毒性薬もしくは薬剤としても言及され、当該技術分野において周知である。
【0036】
1つの特定の実施形態において、組成物は、免疫細胞の集団または亜集団と、GSK3阻害剤、TGFβ受容体阻害剤、ROCK阻害剤、MEK阻害剤、PDK1アゴニスト、およびmTOR阻害剤の1つまたは複数の混合物を含み、ここで、免疫細胞はNK細胞を含む。幾つかの実施形態において、mTOR阻害剤は、ラパマイシン、およびその類似体または誘導体から選択される。幾つかの実施形態において、mTOR阻害剤は、ラパマイシン、ならびにシロリムス、シロリムス誘導体、テムシロリムス、40-O-(2-ヒドロキシ)エチル-ラパマイシン(エベロリムス)、40-O-(3-ヒドロキシ)プロピル-ラパマイシン、40-O-[2-(2-ヒドロキシ)エトキシ]エチル-ラパマイシン、40-O-テトラゾール-ラパマイシン、および他のO-アルキル化もしくはO-メチル化ラパマイシン誘導体を含む、その類似体または誘導体から選択される。1つの実施形態において、組成物は、GSK3阻害剤を含む。別の実施形態において、組成物は、GSK3阻害剤、MEK阻害剤およびラパマイシンを含む。さらに別の実施形態において、組成物は、GSK3阻害剤を含む。1つの実施形態において、GSK3阻害剤を含む組成物は、IL2、IL15、IL12、IL18およびIL21を含む刺激性サイトカインの少なくとも1つをさらに含む。1つの実施形態において、GSK3阻害剤を含む組成物は、1つまたはそれ以上のMEK阻害剤、ラパマイシン、およびSTINGアゴニストをさらに含む。幾つかの実施形態において、STINGアゴニストは、環状ジヌクレオチド(CDN)、もしくはキサンテノン、またはその類似体もしくは誘導体を含む。幾つかの実施形態において、CDNは、合成であるか、または原核生物の細胞もしくは哺乳類細胞に由来してもよい。幾つかの他の実施形態において、STINGアゴニストは、cGAMP、c-ジ-GMP、c-ジ-AMP、c-ジ-IMP、c-ジ-UMP、cAMP-GMP、R,Rジチオ-修飾CDA化合物(ML RR-S2 CDAおよびRR-S2 CDA)、ML RR-S2 cGAMP、DMXAA(5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸)、ならびにその類似体および誘導体からなる群から選択される少なくとも1つの分子を含む。
【0037】
本発明の1つの態様は、表1において挙げられる化合物、ならびにその誘導体および類似体からなる群から選択される1つまたは複数の薬剤を含む、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の治療可能性を改善するための組成物であって、1つまたは複数の薬剤が、免疫細胞の調節を介してその免疫細胞の治療可能性を改善する、組成物を提供する。当該組成物の幾つかの実施形態において、薬剤は、細胞拡大、維持および/もしくは分化を調節する能力;細胞増殖、細胞毒性、サイトカイン応答および分泌、リコール、ならびに/もしくは持続性を改善する能力;細胞生存率を改善する能力;ならびに/または免疫細胞の1つもしくは複数の所望される細胞亜集団の割合を増大する能力がある。幾つかの実施形態において、誘導体および類似体は、表1の薬剤の塩、エステル、エーテル、溶媒和物、水和物、立体異性体、およびプロドラッグを含む。
【0038】
幾つかの実施形態において、当該薬剤による調節に適した免疫細胞は、T細胞、NKT細胞、および/またはNK細胞を含む。幾つかの実施形態において、調節のためのNK細胞は、CD57-NK細胞、および/またはCD57-NKG2C+NK細胞を含む。幾つかの実施形態において、調節された免疫細胞は、増大した割合を有する1つまたは複数の所望される細胞亜集団を含み、亜集団は、ナイーブT細胞、幹細胞メ`モリーT細胞、および/もしくはセントラルメモリーT細胞;タイプI NKT細胞;またはCD57+NK細胞であってもよい。幾つかの実施形態において、CD57+NK細胞は、養子NK細胞を含む。幾つかの実施形態において、当該養子NK細胞は、CD57、ならびにNKG2C、低PLZF、低SYK、低FcεRγ、低EAT-2、低TIGIT、低PD1、低CD7、低CD161、高LILRB1、高CD45RO、および低CD45RAの少なくとも1つとして特徴付けられる。幾つかの実施形態において、養子NK細胞は、CD57NKG2Cとして特徴付けられる。
【0039】
幾つかの実施形態において、当該薬剤による調節に適した免疫細胞は、末梢血、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染の部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、もしくは腫瘍から単離されるか、またはそれに含まれる。1つの実施形態において、免疫細胞は、健常対象;自己免疫疾患、造血器悪性腫瘍、ウイルス感染症もしくは固形腫瘍を有する対象;遺伝子的に修飾された免疫細胞を既に投与された対象;またはCMV血清陽性である対象から単離される。幾つかの他の実施形態において、調節のための単離された免疫細胞は、遺伝子的に修飾される(遺伝子的に操作されるか、または再編成、変異、遺伝子インプリンティングおよび/もしくはエピジェネティック修飾から天然にもたらされる)。幾つかの実施形態において、調節のための単離された免疫細胞は、少なくとも1つの遺伝子的に修飾されたモダリティを含む。幾つかの実施形態において、免疫細胞の単離された集団は、ゲノム的に操作され、挿入、欠失、および/または核酸置換を含む。幾つかの特定の実施形態において、免疫細胞は、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、および/または過剰発現のCD16もしくはそのバリアントをコードする外来核酸を含む。したがって、遺伝子的に修飾された免疫細胞は、開示される本組成物および方法を使用した生体外での調節のため単離される。幾つかの実施形態において、調節後、対象から単離された、遺伝子的に修飾された免疫細胞は、同じドナーまたは異なる患者に投与されてもよい。
【0040】
幾つかの他の実施形態において、当該薬剤による調節に適した免疫細胞は、幹細胞、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、または前駆細胞から試験管内で分化するか、あるいは造血系または非造血系の非多能性細胞から試験管内で分化転換する。幾つかの実施形態において、当該幹細胞は、誘導された多能性幹細胞(iPSC)または胚性幹細胞(ESC)を含む。他の実施形態において、前駆細胞は、CD34造血性内皮細胞、多能性前駆細胞、T細胞前駆細胞、NK前駆細胞、またはNKT前駆細胞である。
【0041】
幾つかの実施形態において、T、NK、NKT細胞を含む様々な免疫細胞に分化させるための幹細胞、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、または前駆細胞は、ゲノム的に操作され、挿入、欠失、もしくは核酸置換を含むか、または少なくとも1つの遺伝子的に修飾されたモダリティを含む。したがって、幹細胞、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、または前駆細胞からもたらされる調節された免疫細胞の所望される亜集団はまた、少なくとも1つの遺伝子的に修飾されたモダリティを含む。1つの特定の実施形態において、免疫細胞の所望される細胞亜集団は、少なくとも1つの遺伝子的に修飾されたモダリティを有するCD57NK細胞を含む。幾つかの実施形態において、遺伝子的に修飾されたモダリティは、セーフティスイッチタンパク質、ターゲティングモダリティ、受容体、シグナル分子、転写因子、医薬的に有効なタンパク質およびペプチド、薬物標的候補;または免疫細胞の生着、輸送、ホーミング、バイアビリティー、自己再生、持続性、免疫応答制御および調節、ならびに/もしくは生存を促進するタンパク質の少なくとも1つを含む。幾つかの他の実施形態において、遺伝子的に修飾されたモダリティは、欠失もしくは低減した発現のB2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、CIITA、RFX5、またはRFXAP、および染色体6p21領域中の任意の遺伝子の1つまたは複数を含む。幾つかの実施形態において、遺伝子的に修飾されたモダリティは、1つまたは複数の誘導されたもしくは増大した発現のHLA-E、HLA-G、HACD16、hnCD16、41BBL、CD3、CD4、CD8、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、Fc受容体、あるいは二重もしくは多特異性または普遍的エンゲイジャーとのカップリングのための表面トリガー受容体を含む。1つの特定の実施形態において、免疫細胞調節から得られた所望される亜集団において含まれるCD57NK細胞は、hnCD16の発現を含む。別の実施形態において、hnCD16を発現するCD57NK細胞は、NKG2C、低PLZF、低SYK、低FcεRγ、低EAT-2、低TIGIT、低PD1、低CD7、低CD161、高LILRB1、高CD45RO、および低CD45RAの少なくとも1つをさらに含む。
【0042】
幾つかの実施形態において、免疫細胞は、GSK3阻害剤を含む組成物により調節される。幾つかの実施形態において、GSK3阻害剤を含む組成物は、IL2、IL15、IL12、IL18およびIL21を含む刺激性サイトカインの少なくとも1つをさらに含む。幾つかの実施形態において、GSK3阻害剤を含む組成物は、1つまたは複数のMEK阻害剤、ラパマイシン、およびSTINGアゴニストをさらに含む。したがって、幾つかの実施形態において、組成物は、NK細胞の集団、およびGSK3阻害剤を含む。幾つかの実施形態において、組成物は、NK細胞の集団、GSK3阻害剤、およびIL15を含む。幾つかの実施形態において、組成物は、NK細胞の集団、GSK3阻害剤、IL15、およびSTINGアゴニストを含む。幾つかの実施形態において、免疫細胞は、モジュレーター、ならびにジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルアセトアミド、エタノールおよびその組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの有機溶媒を含む組成物により調節される。
【0043】
本発明のなお別の態様は、表1において挙げられる1つもしくは複数の薬剤、またはその誘導体もしくは類似体を含む組成物と接触させたか、あるいは調節された免疫細胞の単離された集団を含む組成物を提供する。幾つかの実施形態において、提供される組成物は、T、NKおよびNKT細胞を含むが、これらに限定されない、免疫細胞の処理された単離された集団または亜集団を有する治療組成物である。治療組成物は、調節薬剤を実質的に含まない緩衝液で洗浄することができる。
【0044】
幾つかの実施形態において、調節された細胞集団は、調節されていない細胞集団と比較し、養子細胞療法の改善された治療可能性を有する免疫細胞を含む。幾つかの実施形態において、免疫細胞の単離された集団は、1つまたは複数の薬剤による処理をしない免疫細胞と比較し、改善された細胞拡大、維持、分化、脱分化、および/または生存率を有する。幾つかの実施形態において、免疫細胞の単離された集団は、1つまたは複数の薬剤による処理をしない免疫細胞と比較し、改善された細胞増殖、細胞毒性、サイトカイン応答および分泌、細胞リコール、ならびに持続性を有する。幾つかの他の実施形態において、免疫細胞の単離された集団は、同じ処理をしない免疫細胞と比較し、増大した数もしくは割合の、免疫細胞の1つまたは複数の所望される亜集団を有する。
【0045】
幾つかの実施形態において、表1において挙げられる化合物からなる群から選択される1つまたは複数の薬剤で処理された免疫細胞の単離された集団は、T細胞を含み、したがって、免疫細胞の得られた1つまたは複数の所望される亜集団は、ナイーブT細胞、幹細胞メモリーT細胞、および/またはセントラルメモリーT細胞を含む。幾つかの実施形態において、1つまたは複数の薬剤で処理された免疫細胞の単離された集団は、NKT細胞を含み、したがって、免疫細胞の得られた1つまたは複数の所望される亜集団は、タイプI NKT細胞を含む。さらに幾つかの他の実施形態において、1つまたは複数の薬剤で処理された免疫細胞の単離された集団は、NK細胞を含み、したがって、免疫細胞の1つまたは複数の所望される亜集団は、養子NK細胞を含む。
【0046】
提供される組成物の幾つかの実施形態において、免疫細胞の単離された集団は、対象の末梢血、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染症の部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、または腫瘍から単離されてもよい。対象は、健常であってもよく、自己免疫疾患、造血器悪性腫瘍、ウイルス感染症もしくは固形腫瘍を有していてもよいか、または遺伝子的に修飾された免疫細胞を既に投与されていてもよい。幾つかの実施形態において、対象は、CMV血清陽性であってもよい。幾つかの他の実施形態において、調節のための単離された免疫細胞は、遺伝子的に修飾される(遺伝子的に操作されるか、または再編成、変異、遺伝子インプリンティングおよび/もしくはエピジェネティック修飾から天然にもたらされる)。幾つかの実施形態において、調節のための単離された免疫細胞は、少なくとも1つの遺伝子的に修飾されたモダリティを含む。幾つかの実施形態において、免疫細胞の単離された集団は、ゲノム的に操作され、挿入、欠失、および/または核酸置換を含む。幾つかの特定の実施形態において、免疫細胞は、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、および/または過剰発現のCD16もしくはそのバリアントをコードする外来核酸を含む。したがって、遺伝子的に修飾された免疫細胞は、開示される本組成物および方法を使用した生体外での調節のため単離される。幾つかの実施形態において、調節後、対象から単離された、遺伝子的に修飾された免疫細胞は、同じドナーまたは異なる患者に投与されてもよい。
【0047】
提供される組成物の幾つかの実施形態において、免疫細胞の単離された集団は、幹細胞、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、または前駆細胞から分化してもよい。幾つかの実施形態において、免疫細胞の単離された集団は、薬剤での処理に先立ち、または処理中に、幹細胞、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、または前駆細胞から分化してもよい。幾つかの実施形態において、幹細胞は、誘導された多能性幹細胞(iPSC)または胚性幹細胞(ESC)である。幾つかの実施形態において、前駆細胞は、CD34造血性内皮細胞、多能性前駆細胞、T細胞前駆細胞、NK前駆細胞、またはNKT前駆細胞である。幾つかのさらなる実施形態において、幹細胞、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、前駆細胞、調節のためもたらされた免疫細胞、または調節された、もたらされた免疫細胞は、ゲノム的に操作され、例えば、挿入、欠失、および/または核酸置換を含む。1つの特定の実施形態において、幹細胞、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、または前駆細胞は、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、および/または過剰発現のCD16をコードする外来核酸を含む。
【0048】
提供される組成物の幾つかの他の実施形態において、免疫細胞の単離された集団は、造血系または非造血系の非多能性細胞から分化転換してもよい。幾つかの実施形態において、免疫細胞の単離された集団は、薬剤による処理に先立ち、もしくは処理中に、造血系または非造血系の非多能性細胞から分化転換してもよい。
【0049】
本発明の別の態様は、免疫細胞を、表1において挙げられる化合物、ならびにその誘導体および類似体からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤を含む、十分量の組成物と、調節されていない免疫細胞と比較し、養子細胞療法の改善された治療可能性を有する調節された免疫細胞の集団を得るのに十分な時間、接触させることを含む、免疫細胞を調節する方法を提供する。幾つかの実施形態において、誘導体および類似体は、表1の薬剤の塩、エステル、エーテル、溶媒和物、水和物、立体異性体、およびプロドラッグを含む。
【0050】
当該方法の幾つかの実施形態において、調節された免疫細胞は、表1の1つまたは複数の薬剤と接触させていない免疫細胞と比較し、改善された増殖、細胞毒性、サイトカイン応答、サイトカイン放出、細胞リコール、および/または持続性;改善された細胞拡大、維持、分化、脱分化、および/または生存率;ならびに/あるいは増大した数もしくは割合の、免疫細胞の1つまたは複数の所望される亜集団を有する細胞を含む。当該方法の幾つかの実施形態において、方法は、1つまたは複数の所望される亜集団を調節された免疫細胞から単離することをさらに含む。1つの実施形態において、調節のための免疫細胞は、T細胞、NKT細胞、またはNK細胞を含む。別の実施形態において、調節のためのNK細胞は、CD57NK細胞、またはCD57NKG2CNK細胞を含む。当該方法を使用した免疫細胞調節後、1つの実施形態において、調節された免疫細胞における1つまたは複数の所望される亜集団は、ナイーブT細胞、幹細胞メモリーT細胞、および/もしくはセントラルメモリーT細胞;タイプI NKT細胞;またはCD57+NK細胞を含み得る。1つの実施形態において、調節後に得られたCD57NK細胞は、養子NK細胞を含む。幾つかの実施形態において、養子NK細胞は、CD57、ならびにNKG2C、低PLZF、低SYK、低FcεRγ、低EAT-2、低TIGIT、低PD1、低CD7、低CD161、高LILRB1、高CD45RO、および低CD45RAの少なくとも1つにより特徴付けられる。
【0051】
当該一般的な方法の幾つかの実施形態において、調節のための免疫細胞は、末梢血、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染の部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、もしくは腫瘍から単離されるか、またはそれに含まれる。幾つかの実施形態において、調節のための免疫細胞は、健常対象;自己免疫疾患、造血器悪性腫瘍、ウイルス感染症もしくは固形腫瘍を有する対象;遺伝子的に修飾された免疫細胞を既に投与された対象;またはCMV血清陽性である対象から単離される。幾つかの他の実施形態において、調節のための単離された免疫細胞は、遺伝子的に修飾される(遺伝子的に操作されるか、または再編成、変異、遺伝子インプリンティングおよび/もしくはエピジェネティック修飾から天然にもたらされる)。幾つかの実施形態において、調節のための単離された免疫細胞は、少なくとも1つの遺伝子的に修飾されたモダリティを含む。幾つかの実施形態において、免疫細胞の単離された集団は、ゲノム的に操作され、挿入、欠失、および/または核酸置換を含む。幾つかの特定の実施形態において、免疫細胞は、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、および/または過剰発現のCD16もしくはそのバリアントをコードする外来核酸を含む。したがって、ゲノム的に修飾された免疫細胞は、開示される本組成物および方法を使用した生体外での調節のため単離される。幾つかの実施形態において、調節後、対象から単離された、ゲノム的に修飾された免疫細胞は、同じドナーまたは異なる患者に投与されてもよい。
【0052】
幾つかの実施形態において、調節のための免疫細胞は、幹細胞、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、または前駆細胞から試験管内で分化する。幾つかの実施形態において、調節のための免疫細胞は、造血系または非造血系の非多能性細胞から試験管内で分化転換する。幾つかの実施形態において、当該幹細胞は、誘導された多能性幹細胞(iPSC)または胚性幹細胞(ESC)を含む。幾つかの実施形態において、当該前駆細胞は、CD34造血性内皮細胞、多能性前駆細胞、T細胞前駆細胞、NK前駆細胞、またはNKT前駆細胞である。さらに幾つかの他の実施形態において、幹細胞、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、または前駆細胞は、ゲノム的に操作され、挿入、欠失、もしくは核酸置換を含む、および/または少なくとも1つの遺伝子的に修飾されたモダリティを含む。したがって、それからもたらされた調節された免疫細胞の所望される細胞亜集団は、少なくとも1つの遺伝子的に修飾されたモダリティを有する免疫細胞を含む。1つの実施形態において、免疫細胞の所望される亜集団は、少なくとも1つの遺伝子的に修飾されたモダリティを有するCD57NK細胞を含む。
【0053】
幾つかの実施形態において、当該遺伝子的に修飾されたモダリティは、セーフティスイッチタンパク質、ターゲティングモダリティ、受容体、シグナル伝達分子、転写因子、医薬的に有効なタンパク質およびペプチド、薬物標的候補;または免疫細胞の生着、輸送、ホーミング、バイアビリティー、自己再生、持続性、免疫応答制御および調節、ならびに/もしくは生存を促進するタンパク質の少なくとも1つを含む。幾つかの他の実施形態において、遺伝子的に修飾されたモダリティは、1つまたは複数の欠失もしくは低減した発現のB2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、CIITA、RFX5、あるいはRFXAP、および染色体6p21領域中の任意の遺伝子を含む。幾つかの他の実施形態において、遺伝子的に修飾されたモダリティは、1つもしくは複数の誘導されたまたは増大した発現のHLA-E、HLA-G、HACD16、hnCD16、41BBL、CD3、CD4、CD8、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、Fc受容体、あるいは二重もしくは多特異性または普遍的エンゲイジャーとのカップリングのための表面トリガー受容体を含む。1つの実施形態において、調節された免疫細胞の所望される亜集団において含まれるCD57NK細胞は、hnCD16の発現を含む。別の実施形態において、hnCD16を発現するCD57NK細胞は、NKG2C、低PLZF、低SYK、低FcεRγ、低EAT-2、低TIGIT、低PD1、低CD7、低CD161、高LILRB1、高CD45RO、および低CD45RAの少なくとも1つをさらに含む。
【0054】
免疫細胞を調節する当該方法の幾つかの実施形態において、組成物は、GSK3阻害剤をモジュレーターとして含む。幾つかの実施形態において、組成物は、IL2、IL15、IL12、IL18およびIL21を含む刺激性サイトカインの少なくとも1つをさらに含む。幾つかの実施形態において、GSK3阻害剤を含む組成物は、1つまたは複数のMEK阻害剤、ラパマイシン、およびSTINGアゴニストをさらに含む。幾つかの実施形態において、モジュレーターを含む組成物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルアセトアミド、エタノールおよびその組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの有機溶媒をさらに含む。
【0055】
免疫細胞を調節する方法の幾つかの実施形態において、当該「十分な時間」または「十分な長さの時間」は、16時間以上、14時間以上、12時間以上、10時間以上、8時間以上、6時間以上、4時間以上、2時間以上、または間の任意の長さの時間以上である。したがって、当該十分な長さの時間は、例えば、15時間以上、13時間以上、11時間以上、9時間以上、7時間以上、5時間以上、3時間以上、または1時間以上である。方法の幾つかの他の実施形態において、当該十分な長さの時間は、24時間以上、36時間以上、48時間以上、60時間以上、72時間以上、または間の任意の長さの時間以上である。したがって、当該十分な長さの時間は、例えば、30時間以上、42時間以上、54時間以上、66時間以上、78時間以上、90時間以上である。
【0056】
当該方法の幾つかの実施形態において、免疫細胞は、調節中および/または後、フィーダーフリーな環境にある。フィーダーフリーな条件は、フィーダー細胞フリー、およびフィーダー馴化培地フリーを含む。当該方法の幾つかの実施形態において、免疫細胞は、調節中、フィーダー細胞と共培養される。
【0057】
本発明の別の態様は、免疫細胞を、GSK3阻害剤を含む、十分量の組成物と、調節されていない免疫細胞と比較し、養子細胞療法の改善された治療可能性を有する調節された免疫細胞の集団を得るのに十分な時間接触させることを含む、免疫細胞を調節する方法を提供する。
【0058】
本発明のさらなる態様は、NK細胞を、GSK3阻害剤を含む十分量の組成物と、調節されていないNK細胞と比較し、養子細胞療法の改善された治療可能性を有する調節されたNK細胞の集団を得るのに十分な時間接触させることを含む、NK細胞を調節する方法を提供する。当該一般的な方法の幾つかの実施形態において、調節されたNK細胞は、改善された増殖、細胞毒性、サイトカイン応答、サイトカイン放出、細胞リコール、および/または持続性を有する。幾つかの実施形態において、調節されたNK細胞は、改善された細胞拡大、維持、分化、脱分化、および/または生存率を有する。幾つかの実施形態において、調節されたNK細胞は、GSK3阻害剤を含む組成物と接触させていないNK細胞と比較し、増大した数または割合の、NK細胞の1つまたは複数の所望される亜集団を有する。幾つかの実施形態において、調節されたNK細胞の改善された特性は、試験管内でである。幾つかの実施形態において、調節されたNK細胞の改善された特性は、生体内でである。幾つかの実施形態において、調節のためのNK細胞は、CD57NK細胞を含む。幾つかの実施形態において、調節のためのNK細胞は、CD57NKG2CNK細胞を含む。
【0059】
NK細胞をGSK3阻害剤で調節する方法の1つの実施形態において、方法は、1つまたは複数の所望される亜集団を調節されたNK細胞から単離することをさらに含む。幾つかの実施形態において、NK細胞の1つまたは複数の所望される亜集団は、CD57NK細胞を含む。幾つかの実施形態において、CD57NK細胞は、養子NK細胞を含む。幾つかの実施形態において、養子NK細胞は、CD57、ならびにNKG2C、低PLZF、低SYK、低FcεRγ、低EAT-2、低TIGIT、低PD1、低CD7、低CD161、高LILRB1、高CD45RO、および低CD45RAの少なくとも1つを含む。
【0060】
NK細胞を調節する当該方法の幾つかの実施形態において、調節のためのNK細胞は、末梢血、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染の部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、もしくは腫瘍から単離されるか、またはそれに含まれる。1つの実施形態において、NK細胞は、健常対象から単離される。別の実施形態において、NK細胞は、自己免疫疾患、造血器悪性腫瘍、ウイルス感染症または固形腫瘍を有している対象から単離される。1つの実施形態において、NK細胞は、遺伝子的に修飾された免疫細胞を既に投与された対象から単離され;さらに別の実施形態において、調節のためのNK細胞は、CMV血清陽性である対象から単離される。幾つかの他の実施形態において、調節のための単離された免疫細胞は、遺伝子的に修飾される(遺伝子的に操作されるか、または再編成、変異、遺伝子インプリンティングおよび/もしくはエピジェネティック修飾から天然にもたらされる)。幾つかの実施形態において、調節のための単離された免疫細胞は、少なくとも1つの遺伝子的に修飾されたモダリティを含む。幾つかの実施形態において、免疫細胞の単離された集団は、ゲノム的に操作され、挿入、欠失、および/または核酸置換を含む。幾つかの特定の実施形態において、免疫細胞は、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、および/または過剰発現のCD16もしくはそのバリアントをコードする外来核酸を含む。したがって、遺伝子的に修飾された免疫細胞は、開示される本組成物および方法を使用した生体外での調節のため単離される。幾つかの実施形態において、調節後、対象から単離された、遺伝子的に修飾された免疫細胞は、同じドナーまたは異なる患者に投与されてもよい。
【0061】
幾つかの他の実施形態において、調節のためのNK細胞は、ゲノム的に操作され、挿入、欠失、または核酸置換を含む。1つの実施形態において、調節のためのNK細胞は、少なくとも1つの遺伝子的に修飾されたモダリティを含む。別の実施形態において、調節のためのNK細胞は、幹細胞、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、または前駆細胞から試験管内で分化するか、あるいは造血系または非造血系の非多能性細胞から試験管内で分化転換する。幾つかの実施形態において、上記当該幹細胞は、誘導された多能性幹細胞(iPSC)または胚性幹細胞(ESC)を含む。幾つかの実施形態において、当該前駆細胞は、CD34造血性内皮細胞、多能性前駆細胞、またはNK前駆細胞である。幾つかの特定の実施形態において、上記当該幹細胞、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、または前駆細胞は、ゲノム的に操作され、挿入、欠失、または核酸置換を含む。1つの実施形態において、上記当該幹細胞、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、または前駆細胞は、少なくとも1つの遺伝子的に修飾されたモダリティを含む。少なくとも1つの遺伝子的に修飾されたモダリティを含む当該幹細胞、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、または前駆細胞を使用して、NK細胞を含む分化した免疫細胞がもたらされてもよい。
【0062】
1つの実施形態において、調節され、もたらされたNK細胞の所望される亜集団は、少なくとも1つの遺伝子的に修飾されたモダリティを有するNK細胞を含む。1つの実施形態において、調節されたNK細胞の所望される亜集団は、少なくとも1つの遺伝子的に修飾されたモダリティを有するCD57NK細胞を含む。幾つかの実施形態において、遺伝子的に修飾されたモダリティは、セーフティスイッチタンパク質、ターゲティングモダリティ、受容体、シグナル分子、転写因子、医薬的に有効なタンパク質およびペプチド、薬物標的候補;または免疫細胞の生着、輸送、ホーミング、バイアビリティー、自己再生、持続性、免疫応答制御および調節、ならびに/もしくは生存を促進するタンパク質の少なくとも1つを含む。幾つかの他の実施形態において、遺伝子的に修飾されたモダリティは、(i)欠失もしくは低減した発現のB2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、CIITA、RFX5、またはRFXAP、および染色体6p21領域中の任意の遺伝子;ならびに(ii)誘導されたまたは増大した発現のHLA-E、HLA-G、HACD16、hnCD16、41BBL、CD3、CD4、CD8、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、Fc受容体、あるいは二重もしくは多特異性または普遍的エンゲイジャーとのカップリングのための表面トリガー受容体の1つあるいは複数を含む。1つの特定の実施形態において、CD57NK細胞は、hnCD16の発現を含む。別の実施形態において、hnCD16を発現するCD57NK細胞は、NKG2C、低PLZF、低SYK、低FcεRγ、低EAT-2、低TIGIT、低PD1、低CD7、低CD161、高LILRB1、高CD45RO、および低CD45RAの少なくとも1つをさらに含む。
【0063】
方法の幾つかの実施形態において、GSK3阻害剤を含む組成物は、IL2、IL15、IL12、IL18およびIL21を含む刺激性サイトカインの少なくとも1つをさらに含む。1つの実施形態において、GSK3阻害剤を含む組成物は、1つまたは複数のMEK阻害剤、ラパマイシン、およびSTINGアゴニストをさらに含む。方法の幾つかの実施形態において、GSK3阻害剤を含む組成物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルアセトアミド、エタノールおよびその組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの有機溶媒をさらに含む。
【0064】
幾つかの実施形態において、GSK3阻害剤は、CHIR99021、BIO、TWS119、またはケンパウロンである。1つの実施形態において、GSK3阻害剤は、CHIR99021である。幾つかの実施形態において、GSK3阻害剤調節に十分な時間は、16時間以上である。幾つかの実施形態において、調節されたNK細胞は、少なくとも2倍増大した拡大を有する。幾つかの他の実施形態において、調節されたNK細胞は、IFNγおよび/もしくはTNFαを含む1つまたは複数の増大した産生を有する。さらに幾つかの他の実施形態において、増大した数もしくは割合を有するNK細胞の1つまたは複数の亜集団は、養子NK細胞;CD57を発現するNK細胞;またはCD57およびNKG2Cを発現する細胞を含む。1つの実施形態において、この方法は、フィーダーフリーな環境において実行される。当該方法の幾つかの実施形態において、免疫細胞は、調節中、フィーダー細胞と共培養される。
【0065】
集団をGSK3阻害剤を含む組成物と接触させて、集団において選択的に拡大されたNK細胞を得ることを含む、免疫細胞の集団を培養する方法も提供される。方法は、免疫細胞をGSK3阻害剤を含む組成物と接触させるのに先立ち、免疫細胞の集団を対象から得ること、ここで、免疫細胞は、末梢血単核細胞を含む、ならびにCD3およびCD19細胞を、末梢血単核細胞の集団から枯渇させることをさらに含む。
幾つかの実施形態において、対象は、健常であり、自己免疫疾患、造血器悪性腫瘍、ウイルス感染症もしくは固形腫瘍を有する対象であるか、またはCMV血清陽性である対象であるか、または遺伝子的に修飾された免疫細胞を既に投与されていてもよい。幾つかの実施形態において、拡大されたNK細胞は、GSK3阻害剤を含む組成物と接触されていないNK細胞と比較したとき、改善された細胞毒性、ならびにサイトカイン応答および分泌を有し;改善された増殖、細胞リコール、および/または持続性を有し;改善された細胞拡大、および/または維持を有し;成熟に関して増大したサブタイプ偏向を有し;細胞集団において増大した数もしくは割合の1つまたは複数の亜集団を有し;ならびに/あるいは養子/メモリー細胞様状態を維持する。幾つかの実施形態において、調節されたNK細胞は、少なくとも2倍増大した拡大を有する。幾つかの他の実施形態において、調節されたNK細胞は、IFNγおよび/もしくはTNFαを含む1つまたは複数のサイトカインの増大した産生を有する。さらに幾つかの他の実施形態において、増大した数もしくは割合を有するNK細胞の1つまたは複数の亜集団は、養子NK細胞;CD57を発現するNK細胞;またはCD57およびNKG2Cを発現する細胞を含む。1つの実施形態において、この方法は、フィーダーフリーな環境において実行される。幾つかの実施形態において、フィーダー細胞と共培養することを含む方法が実行される。幾つかの他の実施形態において、GSK3阻害剤を含む組成物は、1つまたは複数のIL15、IL12、IL18、MEK阻害剤、およびラパマイシンをさらに含む。1つの実施形態において、GSK3阻害剤は、CHIR999021である。
【0066】
免疫細胞の集団を含む組成物、およびGSK3阻害剤を含む組成物がさらに提供され、ここで、集団は、集団をGSK3阻害剤を含む組成物で調節する際に、養子細胞療法の免疫細胞の改善された治療可能性を有する免疫細胞を含む。
【0067】
出願のさらに別の態様は、養子NK細胞を含む免疫細胞の集団を、GSK3阻害剤を含む十分量の組成物と、調節された養子NK細胞の集団を得るのに十分な時間接触させることを含む、養子NK細胞を調節する方法を提供する。当該方法は、免疫細胞の集団を対象から得ること、ならびに免疫細胞をGSK3阻害剤を含む組成物と接触させるのに先立ち、CD3および/またはCD19細胞を免疫細胞の得られた集団から枯渇させることをさらに含んでもよい。幾つかの実施形態において、方法は、免疫細胞をGSK3阻害剤を含む組成物と接触させる工程の前または中に、免疫細胞の集団を活性化することをさらに含む。幾つかの実施形態において、調節された養子NK細胞は、GSK3阻害剤を含む組成物と接触させていない養子NK細胞と比較し、改善された細胞毒性、ならびにサイトカイン応答および分泌;改善された増殖、細胞リコール、および/もしくは持続性;ならびに/または改善された細胞拡大、および/もしくは維持を有する。幾つかの実施形態において、免疫細胞の集団において含まれる調節された養子NK細胞は、GSK3阻害剤を含む組成物と接触させた後、少なくとも2倍増大した拡大を有する。1つの実施形態において、この方法は、フィーダーフリーな環境において実行される。1つの実施形態において、この方法は、フィーダー細胞と共に実行される。幾つかの他の実施形態において、GSK3阻害剤を含む組成物は、IL15、IL12、IL18、IL21、MEK阻害剤、ラパマイシン、およびSTINGアゴニストの1つまたは複数をさらに含む。1つの実施形態において、GSK3阻害剤は、CHIR999021である。調節されていないNK細胞と比較し、1つまたは複数のCD107a、NKG2C、NKG2D、CD16、KIR、CD2、NKp30、NKp44およびNKp46における増大した発現を有する調節されたNK細胞の集団であって、その発現が、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上増大される、集団も提供される。
【0068】
本発明のさらなる態様は、細胞療法のための調節された免疫細胞を含む治療組成物を作製する上記免疫細胞調節方法の使用を提供する。幾つかの実施形態において、調節された免疫細胞は、T、NK/またはNKT細胞を含む。幾つかの実施形態において、調節されたNK細胞は、養子NK細胞を含む。本発明の追加の態様は、本明細書において提供される方法により作製される選択的に拡大されたNK細胞を含む調節された免疫細胞の集団を提供する。
【0069】
本発明のまだ別の態様は、本明細書において開示される方法および組成物を使用して得られる調節された細胞、ならびに治療上許容される培地を含む治療組成物を提供する。治療組成物の幾つかの実施形態において、組成物は、ペプチド、サイトカイン、マイトジェン、成長因子、スモールRNA、dsRNA(2本鎖RNA)、単核血液細胞、フィーダー細胞、フィーダー細胞成分もしくは置換因子、対象となる1つもしくは複数のポリ核酸を含むベクター、抗体、化学療法剤もしくは放射性部分、および免疫調節薬(IMiD)からなる群から選択される1つまたは複数の追加の添加剤をさらに含む。
【0070】
治療上十分量の上記当該治療組成物を養子細胞療法を必要とする対象に投与することにより、対象を処置する方法がさらに提供される。幾つかの実施形態において、細胞療法は自家性である。幾つかの他の実施形態において、細胞療法は同種である。幾つかの実施形態において、療法を必要とする対象は、自己免疫異常、血液系腫瘍、固形腫瘍、癌、またはHIV、RSV、EBV、CMV、アデノウイルス、もしくはBKポリオーマウイルスと関連する感染症を有する。幾つかの実施形態において、調節された免疫細胞を使用した対象を処置する方法は、抗体、化学療法処置、または放射性処置と組み合わせて当該治療組成物を投与することにより、実行され、ここで、抗体、化学療法処置、または放射性処置は、治療組成物の投与に先立ち、投与中、または投与後である。
【0071】
本発明のまだ別の態様は、本明細書において提供される方法による細胞療法のための治療組成物の製造のための混合物の使用を提供し、製造のための混合物は、免疫細胞の単離された集団、およびGSK3阻害剤を含む免疫細胞調節のための組成物を含む。
【0072】
この使用の様々な目的および利点は、説明および例示の目的で、本発明のある種の実施形態を説明する添付の図面と併せて以下の説明から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1図1は、(A)生存CD8+細胞集団および(B)生存CD4+細胞集団における、CCR7とCD62Lの両方を共発現する細胞のパーセンテージ、ならびにナイーブ、幹細胞メモリー、またはセントラルメモリーT細胞の絶対数の相対的測定のz値のグラフ表現である。
【0074】
図2図2は、複数日間の培養プロセスが、PBMC由来のNK細胞を選択的に拡大し、T細胞を拡大しないことを示すグラフ表現である。枯渇前(左)および枯渇後(中央)、ならびにIL-15(10ng/mL)プラス5μM CHIR99021(右)と7日間の培養後の、アフェレーシス産物由来のCD56+およびCD3+細胞のパーセンテージが示された。
【0075】
図3図3は、複数日間のGSK3i培養プロセスが、現行のプロセスと比べ、トータルのNK細胞の純度、数、および養子NK細胞の数を増大することを示すグラフ表現である。
【0076】
図4図4は、GSK阻害が、養子(NKG2C+/CD57+)およびトータルのCD57+サブセットに関して集団を偏向させる、NK細胞拡大を効率的に増加させる7日間の培養において鍵となる試薬であることを示すグラフ表現である。A.細胞数における増加倍数。B.細胞のパーセンテージ。
【0077】
図5図5は、GSK3阻害が、未成熟NK細胞の成熟をもたらすことを示すグラフ表現である。A.7日間のGSK3i培養期間後のゲーティング方法および細胞四分割。B.それぞれの細胞四分割における細胞増殖および細胞表面マーカー発現。
【0078】
図6AB図6は、GSK3阻害が、細胞傷害活性を増強することを示すグラフ表現である。A.K562細胞特異的殺傷。B.ラージ細胞特異的殺傷。C.およびD.GSK3阻害剤と共に培養されたNK細胞は、SKOV-3細胞の殺傷動態を増大した。E.GSK阻害が、Her2 ADCCとさらに協同したSKOV3の養子NKの増強された殺傷を拡大した。F.およびG.7日間のGSK3阻害剤処理が、A549細胞のADCCにより仲介される殺傷を増強する。
図6CD】同上。
図6E】同上。
図6F】同上。
図6G】同上。
【0079】
図7図7は、GSK3阻害が、NK細胞サイトカイン応答を増強することを示すグラフ表現である。A.IFNγ。B.TNFα。
【0080】
図8図8は、GSK3阻害および組み合わせGSK3i/MEKi/ラパマイシンが、K562フィーダー細胞の存在下で、NK増殖を増強し、NKサブタイプ偏向を増加させることを示すグラフ表現である。A.NK細胞の総数。B.CD57NK細胞の総数。C.NKG2CNK細胞の総数。
【0081】
図9図9は、GSK3iと共に7日間試験管内で培養されたNK細胞が、導入された後、小分子の存在なしで、少なくとも1週間、生体内でそれらの表現型の変化を維持することを示すグラフ表現である。A.CD57細胞の集団パーセンテージ。B.NK細胞サブセットの集団パーセンテージ。
【0082】
図10図10は、GSK3阻害剤と培養されたNK細胞の生体内での腫瘍クリアランス能を示すグラフ表現である。
【0083】
図11図11は、GSK3阻害剤処理が、短期間でCD56CD57細胞のより高い出現頻度につながらないことを示す。A.GSK3阻害剤とおよびなしでの16時間培養物におけるCD57+NK分画。B.GSK3阻害剤とおよびなしでの0~7日間の培養物におけるCD57+NK分画。
【0084】
図12A図12は、複数日間GSK3阻害剤で処理されたNK細胞が、SKOV-3細胞に対して生体内で高度に有効であることを示す。A.ハーセプチンのみ、ハーセプチンで一晩初回刺激したNK細胞、ハーセプチンと共に7日間ビヒクルで処理されたNK細胞、またはハーセプチンと共に7日間GSK3阻害剤で処理されたNK細胞を使用した、NK細胞ADCC殺傷アッセイ。B.異なる処理下の細胞を使用したADCC殺傷効果の比較。
図12B】同上。
【0085】
図13図13は、初代AML芽細胞に対する、複数日間GSK3阻害剤で処理されたNK細胞対一晩初回刺激したNK細胞の細胞毒性を示す:A.AMLドナー1;B.AMLドナー2;C.AMLドナー3。
【0086】
図14図14は、K562腫瘍細胞がPBMCと混合される二重標的細胞毒性アッセイにおける、同種PBMCではないが悪性細胞に対するGSK3iで調節されたNK細胞の細胞毒性を示す:A.PBMCドナー1;B.PBMCドナー2;C.PBMCドナー3;D.PBMCドナー4。
【0087】
図15図15は、STINGアゴニストML RR-S2 CDAが、(A)総CD57+NK数、および(B)CD57+NKG2C+NK表現型に対する制限された効果を有することを示す。
【0088】
図16図16は、GSK3iと組み合わせたSTINGアゴニストの添加が、IL-12+IL-18またはK562細胞を使用した4時間刺激についてA.IFNγ;およびB.TNFαのNK細胞産生を増強することを示す。GSK3iと組み合わせたSTINGアゴニストはまた、刺激後にCD107a+NK細胞の出現頻度を増大する(C)。
【0089】
図17図17は、STINGアゴニストの添加が、A.K562、B.Nalm6、およびC.KG-1を標的細胞として使用した直接殺傷アッセイにおいてGSK3阻害剤で処理されたNKの細胞毒性を増強したことを示す。
【0090】
図18A図18は、STINGアゴニストが、GSK3阻害剤と協同して、標的細胞の殺傷を増強することを示す。GSK3阻害剤とSTINGアゴニストの組み合わせは、抗Her2抗体を用いたADCCアッセイにおいて、A.A549およびB.SKOV-3標的細胞に対するNK細胞の細胞毒性を増強する。
図18B】同上。
【0091】
図19図19は、GSK3阻害剤とSTINGアゴニストの組み合わせが、NK細胞上のNKp30発現を増強することを示す。発明を実施するための形態
【0092】
本発明は、養子免疫療法の改善された治療可能性を得るために免疫細胞集団または亜集団を調節するための組成物および方法を提供する。本発明はまた、改善された治療可能性を有する調節された免疫細胞を使用する方法を提供する。一般に、改善された治療可能性を有する免疫細胞は、以下の:改善された増殖、持続性、細胞毒性、および/または細胞リコール/メモリーの少なくとも1つを提示する。本発明は、免疫細胞の性質に対する改善を介して免疫細胞の治療可能性を改善する方法を提供し、例えば、以下の性質:同じ細胞の遊走、ホーミング、細胞毒性、維持、拡大、持続性、寿命、分化、および/もしくは脱分化の少なくとも1つにおいて改善を提示する細胞の亜集団の数または割合における増大が、より良好な免疫療法の結果をもたらすことが予想されるだろう。
【0093】
定義
【0094】
本明細書において特に定義されない限り、本出願と関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者により一般に理解される意味を有するだろう。さらに、文脈が特に必要としない限り、単数の用語は複数を含むだろうし、複数の用語は単数を含むだろう。
【0095】
本発明は、本明細書において記載される特定の方法論、プロトコール、および試薬などに制限されず、したがって、変動してもよいことは、理解されなければならない。本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態を記載することのみの目的であり、請求項により単に定義される本発明の範囲を制限することは意図されない。
【0096】
本明細書において使用される、冠詞「a」、「an」、および「the」は、冠詞の文法上の対象の1つまたは、1つより多くを指す。例示の目的で、T細胞は、1つのT細胞、または1つより多くのT細胞を意味する。
【0097】
本明細書において使用される、用語「Tリンパ球」および「T細胞」は、互換的に使用され、胸腺において成熟を完了し、身体における特異的な外来抗原の同定、ならびに他の免疫細胞の活性化および不活性化を含む免疫系における様々な役割を有する主要なタイプの白血球を指す。T細胞は、培養されたT細胞のような任意のT細胞、例えば、初代T細胞、または培養されたT細胞株、例えば、ジャーカット、SupT1など由来のT細胞、または哺乳類から得られたT細胞のような任意のT細胞であり得る。T細胞は、CD3細胞であり得る。T細胞は、任意のタイプのT細胞であり得、CD4+/CD8+二重陽性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞(例えば、Th1およびTh2細胞)、CD8+T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、末梢血単核細胞(PBMC)、末梢血白血球(PBL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、メモリーT細胞、ナイーブT細胞、制御性T細胞、ガンマデルタT細胞(γδT細胞)などを含むが、これらに限定されない、任意の発生ステージのものであり得る。追加のタイプのヘルパーT細胞は、Th3、Th17、Th9、またはTfh細胞のような細胞を含む。追加のタイプのメモリーT細胞は、セントラルメモリーT細胞(Tcm細胞)、エフェクターメモリーT細胞(Tem細胞およびTEMRA細胞)のような細胞を含む。T細胞はまた、T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)を発現するよう修飾されたT細胞のような、遺伝子的に操作されたT細胞を指すことができる。T細胞はまた、幹細胞または前駆細胞から分化することができる。
【0098】
本明細書において使用される、用語「ナイーブT細胞」またはTnは、活性化された、またはメモリーT細胞と異なり、末梢内でそれらの同族抗原と遭遇していない、成熟T細胞を指す。ナイーブT細胞は、L-セレクチン(CD62L)の表面発現;活性化マーカーCD25、CD44またはCD69の不在;およびメモリーCD45ROアイソフォームの不在により一般に特徴付けられる。それらはまた、サブユニットIL-7受容体-α、CD127、および共通のγ鎖、CD132からなる、機能的IL-7受容体を発現する。ナイーブ状態において、T細胞は、恒常的生存機序のため共通のガンマ鎖サイトカインIL-7およびIL-15を必要とする、静止状態であり、分裂していないと考えられている。
【0099】
本明細書において使用される、用語「セントラルメモリーT細胞」またはTcmは、エフェクターメモリーT細胞、もしくはTemと比較し、より低い発現またはアポトーシス促進性シグナル伝達遺伝子、例えば、Bid、Bnip3およびBadを有し、遺伝子がCD62L、CXCR3、CCR7を含む、二次リンパ器官への輸送と関連する、より高発現の遺伝子を有するT細胞の亜群あるいは亜集団を指す。
【0100】
本明細書において使用される、用語「幹メモリーT細胞」、または「幹細胞メモリーT細胞」、またはTscmは、自己再生し、Tcm、TemおよびTeff(エフェクターT細胞)を生み出す能力があり、CD27、ならびに長期免疫を仲介するのに重要な特性であるCCR7およびCD62Lのようなリンパ球系ホーミング分子を発現するT細胞の亜群または亜集団を指す。
【0101】
本明細書において使用される、用語「NK細胞」または「ナチュラルキラー細胞」は、CD56またはCD16の発現、およびT細胞受容体(CD3)の不在により定義される末梢血リンパ球のサブセットを指す。本明細書において使用される、用語「養子NK細胞」および「メモリーNK細胞」は、互換可能であり、表現型の上でCD3-かつCD56+であり、CD57+、NKG2C+、低PLZF、低SYK、低FcεRγ、低EAT-2、低TIGIT、低PD1、低CD7、低CD161、高LILRB1、高CD45RO、および低CD45RAの少なくとも1つを有するNK細胞のサブセットを指す。幾つかの実施形態において、CD56NK細胞の単離された亜集団は、NKG2CおよびCD57の発現を含む。幾つかの他の実施形態において、CD56+NK細胞の単離された亜集団は、CD57、CD16、NKG2C、CD57、NKG2D、NCRリガンド、NKp30、NKp40、NKp46、活性化するおよび阻害性KIR、NKG2A、ならびに/またはDNAM-1の発現を含む。CD56は、弱い発現または完全な発現であり得る。
【0102】
本明細書において使用される、用語「NKT細胞」または「ナチュラルキラーT細胞」は、T細胞受容体(TCR)を発現する、CD1d拘束T細胞を指す。従来の主要組織適合性(MHC)分子により提示されるペプチド抗原を検出する従来のT細胞と異なり、NKT細胞は、CD1d、非古典的MHC分子により提示される脂質抗原を認識する。2つのタイプのNKT細胞が、現在認められている。インバリアントまたはタイプI NKT細胞は、非常に制限されたTCRレパートリー、β鎖の制限されたスペクトル(ヒトにおいてVβ11)と関連する古典的α-鎖(ヒトにおいてVα24-Jα18)を発現する。非古典的または非インバリアントなタイプII NKT細胞と呼ばれる、NKT細胞の第2の集団は、より不均一なTCRαβ使用を提示する。タイプI NKT細胞は、現在、免疫療法に適していると考えられている。養子またはインバリアントな(タイプI)NKT細胞は、以下のマーカー、TCR Va24-Ja18、Vb11、CD1d、CD3、CD4、CD8、aGalCer、CD161およびCD56の少なくとも1つまたは複数の発現で同定することができる。
【0103】
本明細書において使用される、用語「単離された」などは、その本来の環境から分けられた細胞、または細胞の集団を指し、すなわち、単離された細胞の環境は、「単離されていない」参照細胞が存在する環境において見られる少なくとも1つの成分を実質的に含まない。用語は、その天然の環境、例えば、組織、生検において見られる幾つかまたは全ての成分から取り出された細胞を含む。用語はまた、細胞が天然に存在しない環境、例えば、培養液、細胞懸濁液において見られる、少なくとも1つ、幾つか、または全ての成分から取り出された細胞を含む。それ故、単離された細胞は、天然で見られるか、または天然に存在しない環境において成長するか、保存されるか、もしくは存在する、他の物質、細胞あるいは細胞集団を含む、少なくとも1つの成分から部分的あるいは完全に分けられる。単離された細胞の具体的な例は、部分的に純粋な細胞、実質的に純粋な細胞、および天然に存在しない培地において培養された細胞を含む。単離された細胞は、所望される細胞、またはその集団を環境内の他の物質または細胞から分けることから、あるいは環境から1つもしくは複数の他の細胞集団または亜集団を取り出すことから、得られてもよい。本明細書において使用される、用語「精製する」などは、純度を増大させることを指す。例えば、純度は、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%まで増大され得る。
【0104】
本明細書において使用される、用語「集団」は、T、NKまたはNKT細胞に関して使用されるとき、それぞれ、2つもしくはそれ以上のT、NK、またはNKT細胞を含む細胞の群を指す。T細胞を例として使用すると、T細胞の単離された、または濃縮された集団は、唯一1つのタイプのT細胞を含み得るか、または2つもしくはそれ以上のタイプのT細胞の混合物を含み得る。T細胞の単離された集団は、1つのタイプのT細胞の均一な集団、または2つもしくはそれ以上のタイプのT細胞の不均一な集団であり得る。T細胞の単離された集団はまた、T細胞、および少なくともT細胞以外の細胞、例えば、B細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋細胞、脳細胞などを有する不均一な集団であり得る。不均一な集団は、0.01%~約100%のT細胞を有し得る。したがって、T細胞の単離された集団は、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、または99%のT細胞を有し得る。T細胞の単離された集団は、本明細書において開示されるものを含むが、これらに限定されない、1つもしくは複数、または全ての異なるタイプのT細胞を含み得る。1つより多くのタイプのT細胞を含むT細胞の単離された集団において、それぞれのタイプのT細胞の割合は、0.01%~99.99%の範囲にあり得る。単離された集団はまた、T細胞のクローナルな集団であり得、ここで、集団の全てのT細胞は、単一のT細胞のクローンである。
【0105】
T、NKまたはNKT細胞の単離された集団は、ヒト末梢血または臍帯血のような天然供給源から得られてもよい。細胞を組織または細胞混合物から分離して様々な細胞タイプを分ける様々な方法が、当該技術分野において開発された。幾つかの場合において、これらの操作は、細胞の比較的均一な集団をもたらす。T細胞は、本明細書において記載されるソーティングもしくはセレクションプロセスにより、または当該技術分野において公知の他の方法により単離することができる。単離された集団におけるT細胞の割合は、天然の供給源におけるT細胞の割合より、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、または約95%高くなり得る。単離された集団のT細胞は、一般的なT細胞、または1つもしくは複数の特異的なタイプのT細胞であり得る。
【0106】
本明細書において使用される、用語「亜集団」は、T、NKまたはNKT細胞に関して使用されるとき、天然で見られる、決して全てではないタイプのT、NK、もしくはNKT細胞をそれぞれ含むT、NKまたはNKT細胞の集団を指す。
【0107】
本明細書において使用される、用語「多能性」は、身体または体細胞(すなわち、胚本体)の全ての系列を形成する細胞の能力を指す。例えば、胚性幹細胞は、3種の胚葉、外胚葉、中胚葉、および内胚葉のそれぞれから細胞を形成することができる、多能性幹細胞の一種である。多能性は、完全な生物を生じることができない不完全または部分的に多能性の細胞(例えば、エピブラスト幹細胞もしくはEpiSC)から、完全な生物を生じることができるより原始的な、より多能性の細胞(例えば、胚性幹細胞)までの範囲にある一連の発生能力である。
【0108】
本明細書において使用される、用語「誘導多能性幹細胞」または「iPSC」は、全3種の胚もしくは胚葉:中胚葉、内胚葉、および外胚葉の組織に分化する能力がある細胞に誘導されたか、または変化させた(すなわち、リプログラミングされた)、分化した成熟細胞から生み出された幹細胞を指す。
【0109】
本明細書において使用される、用語「胚性幹細胞」は、胚胎盤の内部細胞塊の天然に存在する多能性幹細胞を指す。胚性幹細胞は、多能性であり、3種の原始胚葉:外胚葉、内胚葉および中胚葉の全ての派生物への発生中に生じる。それらは、胚体外膜または胎盤には関与せず、全能性ではない。
【0110】
本明細書において使用される、用語「前駆細胞」は、より高い発生ポテンシャル、すなわち、それが分化により生じ得る細胞と比べ、より原始的である(例えば、発生経路または進行に沿った初期の段階にある)細胞の表現型を有する細胞を指す。しばしば、前駆細胞は、有意または非常に高い増殖ポテンシャルを有する。前駆細胞は、より低い発生ポテンシャルを有する複数の別々の細胞、すなわち、分化した細胞タイプ、または発生経路、および細胞が発生し、分化する環境に依存し、単一の分化した細胞タイプを生じることができる。
【0111】
本明細書において使用される、用語「リプログラミング」または「脱分化」または「細胞能力を増大すること」または「発生能力を増大すること」は、細胞の能力を増大させる方法、または細胞をより少なく分化した状態に脱分化させる方法を指す。例えば、増大した細胞能力を有する細胞は、リプログラミングされていない状態にある同じ細胞と比較して、より発生的柔軟性を有する(すなわち、より多くの細胞タイプに分化することができる)。言い換えると、リプログラミングされた細胞は、リプログラミングされていない状態にある同じ細胞より少なく分化した状態にあるものである。
【0112】
本明細書において使用される、用語「分化」は、特化されていない(「確約されていない」)またはより少なく特化された細胞が、例えば、血液細胞または筋細胞のような、特化された細胞の特性を取得するプロセスである。分化したまたは分化を誘導された細胞は、細胞の系列内のより特化された(「確約された」)位置を得たものである。用語「確約された」は、分化のプロセスに適用されるとき、分化の経路において、通常の状況下で、それらが、特定の細胞タイプまたは細胞タイプのサブセットに継続して分化するであろうポイント、および通常の状況下で、異なる細胞タイプに分化することができないか、またはより少なく分化した細胞タイプに戻ることができないポイントに進んだ細胞を指す。
【0113】
本明細書において使用される、用語「コードする」は、遺伝子、cDNA、またはmRNAのような、ポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特具体的な配列の、所定の配列のヌクレオチド(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)または所定の配列のアミノ酸およびそれから生じる生物学的特性のいずれかを有する、生物学的プロセスにおいて他のポリマーならびに高分子の合成の鋳型として機能を果たす、固有の特性を指す。したがって、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が、細胞または他の生物学的システムにおいてタンパク質を産生するなら、タンパク質をコードする。mRNA配列と同一であり、配列表において通常提供されるもののヌクレオチド配列であるコード鎖と、遺伝子またはcDNAの転写の鋳型として使用される非コード鎖の両方が、その遺伝子もしくはcDNAのタンパク質または他の産物をコードするとして言及され得る。
【0114】
本明細書において使用される、用語「外来」は、言及される分子または言及される活性が、宿主細胞に導入されることを意味することが意図される。分子は、例えば、宿主染色体への組込みにより、またはプラスミドのような非染色体遺伝子物質としてのような、コード核酸の宿主遺伝子物質への導入により、導入することができる。それ故、コード核酸の発現に関して使用される用語は、発現可能な形態のコード核酸の細胞への導入を指す。用語「内在性」は、宿主細胞に存在する言及された分子または活性を指す。同様に、用語は、コード核酸の発現に関して使用されるとき、細胞内に含まれ、外来で導入されないコード核酸の発現を指す。
【0115】
本明細書において使用される、用語「ポリヌクレオチド」は、任意の長さのヌクレオチドの重合形態、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれか、またはその類似体を指す。ポリヌクレオチドの配列は、4種のヌクレオチド塩基:アデニン(A);シトシン(C);グアニン(G);チミン(T);およびポリヌクレオチドがRNAであるとき、チミンの代わりにウラシル(U)からなる。ポリヌクレオチドは、遺伝子または遺伝子フラグメント(例えば、プローブ、プライマー、ESTもしくはSAGEタグ)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマーを含み得る。ポリヌクレオチドはまた、2本鎖分子と1本鎖分子の両方を指す。
【0116】
本明細書において使用される、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」は、互換的に使用され、ペプチド結合により共有結合したアミノ酸残基を有する分子を指す。ポリペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含まなければならず、ポリペプチドのアミノ酸の最大数に制限は設けられない。本明細書において使用される、用語は、ペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーなどとして当該技術分野において一般にまた言及される短鎖と、ポリペプチドまたはタンパク質として当該技術分野において一般的に言及されるより長い鎖の両方を指す。「ポリペプチド」は、数ある中でも、例えば、生物学的に活性なフラグメント、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドのバリアント、修飾されたポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質を含む。ポリペプチドは、天然のポリペプチド、組換えポリペプチド、合成ポリペプチド、またはその組み合わせを含む。
【0117】
本明細書において使用される、用語「生体外で」は、生物、好ましくは、天然の状態の最小の変化を有する生物の外側の人工的な環境内の生きている組織内もしくは組織上で行われる実験または測定のような、生物の外側で生じる活動を指す。「生体外での」手法は、生物から採取され、実験装置において、通常無菌条件下で、典型的には数時間もしくは最大約24時間だが、状況に依存して、最大2~28日間を含む間、培養された生きている細胞または組織を含み得る。かかる組織または細胞はまた、収集され、凍結され、生体外での処理のため後に融解され得る。生きている細胞もしくは組織を使用した数日より長く続く組織培養実験または手法は、典型的には、「試験管内」であるとみなされるが、ある種の実施形態において、この用語は、生体外と互換的に使用することができる。一方で、細胞生着、細胞ホーミング、細胞の自己再生、および細胞の拡大のような「生体内」活動は、生物の内部で生じる。
【0118】
本明細書において使用される、用語「試験管内」は、試験管内、培養皿内、または生きている生物の外側のどこかで行われるか、または生じる活動を指す。
【0119】
本明細書において使用される、用語「薬剤」、「調節薬剤」、および「モジュレーター」は、本明細書において互換的に使用され、免疫細胞を含む細胞の遺伝子発現特性もしくは生物学的特性を修飾する能力がある化合物または分子を指す。薬剤は、単一の化合物もしくは分子、または1つより多くの化合物もしくは分子の組み合わせであり得る。
【0120】
本明細書において使用される、用語「接触する」、「処理する」、または「調節する」は、免疫細胞に関して使用されるとき、本明細書において互換的に使用され、免疫細胞を本明細書において開示される薬剤の1つまたは複数と共に培養すること、インキュベーションすること、または曝露することを指す。
【0121】
本明細書において使用される、「接触されていない」または「処理されていない」細胞は、対照薬剤以外の薬剤で処理されていない、例えば、培養されていない、接触されていない、またはインキュベーションされていない細胞である。DMSOのような対照薬剤と接触させた、または別のビヒクルと接触させた細胞は、接触させていない細胞の例である。
【0122】
本明細書において使用される、「フィーダー細胞」または「フィーダー」は、フィーダー細胞が、もう一つの細胞タイプのサポートのための刺激、成長因子および栄養をもたらすので、もう一つのタイプの細胞が成長することができる環境をもたらすために、もう一つのタイプの細胞と共培養される片方のタイプの細胞を記載する用語である。フィーダー細胞は、場合により、それらがサポートする細胞と異なる種由来である。例えば、幹細胞を含む、ある種のタイプのヒト細胞は、マウス胚線維芽細胞、または不死化マウス胚線維芽細胞の初代培養物により、サポートされ得る。別の例では、末梢血由来細胞または形質転換された白血病細胞が、ナチュラルキラー細胞の拡大および成熟をサポートする。フィーダー細胞は、典型的には、他の細胞と共培養されるとき、それらがサポートする細胞をそれらが成長させ過ぎるのを防ぐために照射またはマイトマイシンのような抗有糸分裂剤での処理により不活化され得る。フィーダー細胞は、内皮細胞、ストロマ細胞(例えば、上皮細胞または線維芽細胞)、および白血病細胞を含み得る。前述のものに限定されることなく、1つの具体的なフィーダー細胞タイプは、ヒト皮膚線維芽細胞のような、ヒトフィーダーであり得る。別のフィーダー細胞タイプは、マウス胚線維芽細胞(MEF)であり得る。一般に、様々なフィーダー細胞を部分的に使用して、多能性を維持し、ある種の系列への分化を指示し、増殖能力を増強し、エフェクター細胞のような、固有の細胞タイプへの成熟を促進することができる。
【0123】
本明細書において使用される、「フィーダーフリー」(FF)な環境は、フィーダーもしくはストロマ細胞を本質的に含まず、および/またはフィーダー細胞の培養により事前に馴化させていない培養条件、細胞培養あるいは培地のような環境を指す。「予め条件付けられた」培地は、フィーダー細胞が、培地内で少なくとも1日間のような期間培養された後に回収された培地を指す。事前に馴化させた培地は、培地において培養されたフィーダー細胞により分泌された成長因子およびサイトカインを含む、多くのメディエーター物質を含有する。幾つかの実施形態において、フィーダーフリーな環境は、フィーダーまたはストロマ細胞の両方を含まず、またフィーダー細胞の培養により事前に馴化させていない。
【0124】
本明細書において使用される、用語「類似体」は、それが、親化学物質と同じ化学骨格および機能を保持するなら、1つの単一エレメントもしくは基、または1つより多くの基(例えば、2、3、もしくは4つの基)で構造上異なる、構造および機能において別の化学物質に類似する化学分子を指す。かかる修飾は、当業者にとって日常的なことであり、例えば、酸のエステルもしくはアミド、アルコールもしくはチオールについてのベンジル基のような保護基、およびアミンについてのtert-ブトキシルカルボニル基のような、追加または置換された化学物質部分を含む。アルキル置換(例えば、メチル、ジメチル、エチルなど)のようなアルキル側鎖に対する修飾、側鎖の飽和または不飽和のレベルに対する修飾、ならびに置換されたフェニルおよびフェノキシのような修飾された基の付加もまた、含まれる。類似体はまた、ビオチンまたはアビジン部分のような抱合体、西洋ワサビペルオキシダーゼなどのような酵素を含み得、放射標識された部分、生物発光部分、化学発光部分、または蛍光部分を含む。また、部分を、本明細書において記載される薬剤に加えて、他の望ましい特性の中でも、生体内もしくは生体外で半減期を増大すること、またはそれらの細胞侵入特性を増大することのような、それらの薬物動態特性を変更することができる。医薬の多数の望ましい性質(例えば、溶解性、バイオアベイラビリティ、製造など)を増強することが知られているプロドラッグも含まれる。
【0125】
本明細書において使用される、用語「増大」は、ビヒクルもしくは対照分子/組成物のいずれかにより引き起こされる応答と比較して、細胞においてより大きな生理的応答(すなわち、下流の効果)を生み出すか、または引き起こす薬剤の能力を指し、例えば、インターロイキン4またはインターロイキン10の産生は、T細胞の単離された集団により増大される。増大は、ある種の細胞シグナル伝達経路を介したシグナル伝達経路の増加の結果としての遺伝子発現における増大であり得る。「増大した」量は、典型的には、統計上有意な量であり、ビヒクル(薬剤の不在)もしくは対照組成物により生み出される応答と比較して、1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30またはそれ以上の倍数(例えば、500、1000倍)(1の間かつ1より上の全ての整数および小数点、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8など)である増大を含み得る。
【0126】
本明細書において使用される、用語「低下」は、ビヒクルもしくは対照分子/組成物のいずれかにより引き起こされる応答と比較して、細胞においてより小さい生理的応答(すなわち、下流の効果)を生み出すか、または引き起こす薬剤の能力を指す。低下は、遺伝子発現における低下、細胞シグナル伝達における低下、または細胞増殖における低下であり得る。「低下した」量は、典型的には、「統計上有意な」量であり、ビヒクル(薬剤の不在)もしくは対照組成物により生み出される応答の、1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30またはそれ以上の倍数(例えば、500、1000倍)(1の間かつ1より上の全ての整数および小数点、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8など)である低下を含み得る。
【0127】
本明細書において使用される、用語「相乗効果」または「相乗的」は、2つもしくはそれ以上の実体が一緒に働くことが、組み合わせにおける2つまたはそれ以上の実体が、それぞれ他の効果を弱めるか、または中和するとき使用される「拮抗的」と比較して、および組み合わせにおける2つまたはそれ以上の実体が、それらの個々の効果の合計とほぼ等しい効果を生じるとき使用される「相加的」と比較して、それらの個々の効果の合計より大きな効果を生じるような、増強された効果についての2つまたはそれ以上の実体の組み合わせを指す。
【0128】
本明細書において使用される、用語「実質的に含まない」は、細胞集団または培地のような組成物を記載するために使用されるとき、特定の物質の95%フリー、96%フリー、97%フリー、98%フリー、99%フリー、または従来の手段により測定され、検出可能でない特定の物質のような、任意の供給源の特定の物質を含まない組成物を指す。組成物の特定の物質または成分の不在に言及する場合、同様の意味が、用語「の不在」に適用され得る。
【0129】
本明細書において使用される、用語「約」または「およそ」は、参照の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重さもしくは長さに対して15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%と同じくらいで変動する、量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重さあるいは長さを指す。量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重さまたは長さの範囲は、±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、もしくは±1%のおよそ参照の量、レベル、値、数、出現頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重さまたは長さであり得る。
【0130】
本明細書において使用される、用語「対象」は、哺乳類を指す。対象は、ヒト、またはイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、マウス、ラット、ウサギ、もしくはその遺伝子導入種のような非ヒトであり得る。
【0131】
本明細書において使用される、用語「処置する」などは、対象に関して使用されるとき、疾患の症状の改善または除去を達成することを含むが、これらに制限されることなく、所望される薬理的および/または生理的効果を得ることを指す。効果は、疾患もしくはその症状を完全または部分的に妨げるという観点で、予防的であり得、ならびに/あるいは症状の改善または除去を達成するか、あるいは疾患および/もしくは疾患に起因する副作用の部分的または完全な治癒をもたらすという観点で治療的であり得る。用語「処置」は、哺乳類における、特に、ヒトにおける疾患の任意の処置を含み、(a)疾患の素因があり得るが、まだそれを有すると診断されていない対象において疾患が生じるのを妨げること;(b)疾患を阻害すること、またはその発症を止めること;(c)疾患を軽減すること、または疾患の退縮を引き起こすこと、または疾患の症状を完全もしくは部分的に除去すること;および(d)造血系を元に戻すことのような、個体を前疾患状態に回復させることを含む。
【0132】
本明細書において使用される、「遺伝子修飾」は、(1)再編成、変異、遺伝子インプリンティングおよび/もしくはエピジェネティック修飾から天然にもたらされるもの、または(2)細胞のゲノムにおける挿入、欠失もしくは置換を介したゲノム操作を介して得られるものを含む、遺伝子編集を指す。本明細書において使用される、遺伝子修飾はまた、ドナー、疾患、もしくは処置応答に特異的である、供給源特異的免疫細胞の1つまたは複数の保持可能な治療特質を含む。
【0133】
本明細書において使用される、用語「遺伝子インプリント」は、供給源細胞における優先的な治療特質に関与する遺伝子またはエピジェネティック情報を指す。具体的に選択されたドナー、疾患または処置状況から得られる供給源細胞の態様において、優先的な治療特性に関与する遺伝子インプリントは、同定されるかもしくはされない基本的な分子現象に関わりない、保存可能な表現型、すなわち、優先的な治療特性を明らかにする任意の状況特異的遺伝子またはエピジェネティック修飾を含んでもよい。ドナー、疾患、または処理応答に特異的な供給源細胞は、iPSCおよびもたらされた造血系細胞において保持可能である遺伝子インプリントを含んでもよく、遺伝子インプリントは、例えば、ウイルス特異的T細胞またはインバリアントなナチュラルキラーT(iNKT)細胞由来の事前に決められた単一特異的TCR;例えば、選択されたドナーにおいて高親和性CD16受容体をコードする点変異についてホモ接合性である、トラッキング可能かつ望ましい遺伝子多型;ならびに事前に決定されたHLA要求、すなわち、増大した集団を伴って表現型を提示する、選択されたHLA一致ドナー細胞を含むが、これらに限定されない。本明細書において使用される、優先的な治療特性は、もたらされた細胞の改善された生着、輸送、ホーミング、バイアビリティー、自己再生、持続性、免疫応答制御および調節、生存、ならびに細胞毒性を含む。優先的な治療特性はまた、抗原ターゲティング受容体発現;HLA提示またはその欠如;腫瘍微小環境に対する抵抗性;バイスタンダー免疫細胞の導入および免疫調節;腫瘍を離れた効果の低減を伴った改善された的中した特異性;化学療法のような処置に対する抵抗性に関するものであってもよい。
【0134】
本明細書において使用される、用語「セーフティスイッチタンパク質」は、細胞療法の可能性のある毒性またはそうでなければ副作用を妨げるよう設計された操作されたタンパク質を指す。ある場合において、セーフティスイッチタンパク質発現は、セーフティスイッチタンパク質をコードする遺伝子をそのゲノムに持続的に取り込んだ移植された操作された細胞についての安全性の関心に対処するよう条件付きで調節される。この条件付き制御は、可変であり得、小分子により仲介される翻訳後活性化ならびに組織特異的および/または一時的な転写制御を介した調節を含んでもよい。セーフティスイッチは、アポトーシスの誘導、タンパク質合成の阻害、DNA複製、成長停止、転写および転写後遺伝子制御、ならびに/または抗体により仲介される枯渇を仲介することができる。ある場合において、セーフティスイッチタンパク質は、活性化されたとき、治療細胞のアポトーシスおよび/または細胞死の引き金を引く、外来分子、例えば、プロドラッグにより活性化される。セーフティスイッチタンパク質の例は、カスパーゼ9(またはカスパーゼ3もしくは7)、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、B-細胞CD20、修飾されたEGFR、およびその任意の組み合わせのような、自殺遺伝子を含むが、これらに限定されない。このストラテジーにおいて、有害現象の場合に投与されるプロドラッグは、自殺遺伝子産生により活性化され、導入された細胞を殺傷する。
【0135】
本明細書において使用される、「治療上十分量」は、その意味において、所望される治療効果をもたらすことが言及されている特定の治療および/もしくは医薬組成物の非毒性だが、十分量ならびに/または有効量を含む。要求される正確な量は、患者の一般的な健康状態、患者の年齢、ならびに状態のステージおよび重症度のような要因に依存して、対象から対象で変動するだろう。特定の実施形態において、治療上十分量は、処置されている対象の疾患または状態と関連する少なくとも1つの症状を向上させる、低減する、および/もしくは改善するのに十分ならびに/または有効である。
【0136】
I.細胞ベースの養子免疫療法の有効性を改善するための薬剤
本発明は、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の治療可能性を改善するための1つまたは複数の薬剤を十分量で含む組成物を提供する。改善された治療可能性を有する免疫細胞は、改善された増殖、持続性、細胞毒性、および/または細胞リコール/メモリーを提示する。免疫細胞は、特異的に改善された生体内増殖、生体内持続性、生体内細胞毒性、および/または生体内細胞リコール/メモリーを有してもよい。免疫細胞を改善するために、治療可能性は、T細胞集団におけるより良好な性質の免疫細胞を一般的に必要とし、例えば、ナイーブT細胞、幹細胞メモリーT細胞、ならびに/またはセントラルメモリーT細胞の、その維持、拡大、分化、および/もしくは脱分化を介した数あるいは割合の増大は、改善された生体内養子治療可能性についての、T細胞のより良好な性質の指標である。NK細胞集団において、例えば、その維持、サブタイプ偏向、拡大、分化、および/もしくは脱分化を介した養子NK細胞の数または割合の増大は、改善された生体内養子治療可能性についての、NK細胞のより良好な性質の指標である。NKT細胞集団に関して、例えば、その維持、サブタイプスイッチング、拡大、分化、および/もしくは脱分化を介したタイプI NKT細胞の数または割合の増大は、改善された生体内養子治療可能性についての、NKT細胞のより良好な性質の指標である。
【0137】
養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞は、表1において含まれる1つまたは複数の薬剤と接触させられるか、それで処理されるか、または調節される。薬剤での処理は、細胞拡大、維持、分化、脱分化、および/もしくは生存率を調節することによる、ならびに/または増殖、細胞毒性、持続性、および/もしくは細胞リコール/メモリー、そしてこれにより、処理された細胞の治療可能を増大させることによる、を含む、細胞、あるいは細胞の亜集団の生物学的特性を修飾することができる。例えば、処理は、試験管内と生体内の両方で治療免疫細胞の生存率を改善することができる。さらに、処理は、処理された細胞集団の異なる亜集団の割合を変化させることができる。例えば、1つの実施形態において、ナイーブT細胞、幹細胞メモリーT細胞、および/またはセントラルメモリーT細胞の数ならびに割合は、表1から選択される1つまたは複数の薬剤を使用した処理の際、単離されたT細胞集団において増大する。別の実施形態において、表1から選択される1つまたは複数の薬剤を使用したNK細胞集団の処理の際、養子NK細胞の数およびパーセンテージは、集団において増大される。
【0138】
【表1-1】
【0139】
【表1-2】
【0140】
理論により制限されるものではないが、表1の薬剤は、細胞代謝、栄養素センシング、増殖、アポトーシス、シグナル伝達、感染過程に関与する特性、および/もしくは他の態様の細胞機能の制御を介して細胞拡大、代謝、ならびに/または細胞分化を調節することにより、養子療法の免疫細胞の治療可能性を改善する。当業者により理解される通り、本発明の範囲はまた、表1において挙げられた薬剤の塩、エステル、エーテル、溶媒和物、水和物、立体異性体もしくはプロドラッグを含むが、これらに限定されない、類似体または誘導体を含む。例えば、表1の薬剤dmPGE(16,16-ジメチルプロスタグランジンE2)の類似体および誘導体の説明としての例は、PGE、16,16-ジメチルPGEp-(p-アセタミドベンザミド)フェニルエステル、11-デオキシ-16,16-ジメチルPGE、9-デオキシ-9-メチレン-16,16-ジメチルPGE、9-デオキシ-9-メチレンPGE、9-ケトフルプロステノール、5-トランスPGE、17-フェニル-オメガ-トリノルPGE、PGEセリノールアミド、PGEメチルエステル、16-フェニルテトラノルPGE、15(S)-15-メチルPGE、15(R)-15-メチルPGE、8-イソ-15-ケトPGE、8-イソPGEイソプロピルエステル、8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGE、20-ヒドロキシPGE、20-エチルPGE、11-デオキシPGEi、ノクロプロスト、スルプロストン、ブタプロスト、15-ケトPGE、および19(R)ヒドロキシPGEを含むが、これらに限定されない。9位においてハロゲンで置換されているPGE(例えば、国際公開第2001/12596号を参照、その開示は参照により全体が本明細書に取り込まれる)、ならびに米国公開第2006/0247214号(その開示は参照により全体が本明細書に取り込まれる)において記載されるもののような2-デカルボキシ-2-ホスフィニコプロスタグランジン誘導体に類似する構造を有するPG類似体または誘導体もまた含まれる。
【0141】
GSK3(グリコーゲン合成酵素キナーゼ3)阻害剤は、GSK3を標的にするsiRNA、microRNA、アンチセンス核酸、および他のポリヌクレオチドのドミナントネガティブバリアントに結合する抗体を含み得る。本明細書において考慮される組成物における使用に適したGSK3阻害剤(GSK3i)は、ケンパウロン、l-アザケンパウロン、CHIR99021、CHIR98014、AR-A014418、CT99021、CT20026、SB216763、AR-A014418、リチウム、TDZD-8、BIO、BIO-アセトキシム、(5-メチル-lH-ピラゾール-3-イル)-(2-フェニルキナゾリン-4-イル)アミン、ピリドカルバゾール-シクロペナジエニルルテニウム錯体、TDZD-8 4-ベンジル-2-メチル-l,2,4-チアジアゾリジン-3,5-ジオン、2-チオ(3-ヨードベンジル)-5-(l-ピリジル)-[l,3,4]-オキサジアゾール、OTDZT、アルファ-4-ジブロモアセトフェノン、AR-AO144-18,3-(l-(3-ヒドロキシプロピル)-lH-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-4-ピラジン-2-イル-ピロール-2,5-ジオン;TWS119、L803H-KEAPPAPPQSpP-NH2またはそのミリストイル化形態;2-クロロ-l-(4,5-ジブロモ-チオフェン-2-イル)-エタノン;GF109203X;RO318220;TDZD-8;TIBPO;およびOTDZTを含むが、これらに限定されない。1つの実施形態において、GSK-3阻害剤は、CHIR99021、BIO、TWS119、またはケンパウロンである。1つの実施形態において、GSK3阻害剤は、TWS119である。別の実施形態において、GSK-3阻害剤は、CHIR99021である。まだ別の実施形態において、GSK3阻害剤は、BIOである。
0140
MEK/ERK経路阻害剤は、Raf/MEK/ERK経路の一部であるMEKまたはERKセリン/スレオニンキナーゼいずれかの阻害剤を指す。本明細書において考慮される組成物における使用に適したERK/MEK阻害剤は、PD0325901、PD98059、UO126、SL327、ARRY-162、PD184161、PD184352、スニチニブ、ソラフェニブ、バンデタニブ、パゾパニブ、アキシチニブ、GSKl 120212、ARRY-438162、RO5126766、XL518、AZD8330、RDEAl 19、AZD6244、FR180204、PTK787、6-(4-ブロモ-2-クロロ-フェニルアミノ)-7-フルオロ-3-メチル-3H-ベンゾイミダゾール-e-5-カルボン酸(2,3-ジヒドロキシ-プロポキシ)-アミド;6-(4-ブロモ-2-クロロ-フェニルアミノ)-7-フルオロ-3-(テトラヒドロ-ピラン-2-イルm- エチル)-3H-ベンゾイミダゾール-5-カルボン酸(2-ヒドロキシ-エトキシ)-アミド、1-[6-(4-ブロモ-2-クロロ-フェニルアミノ)-7-フルオロ-3-メチル-3H-ベンゾイミダ-ゾール-5-イル]-2-ヒドロキシ-エタノン、6-(4-ブロモ-2-クロロ-フェニルアミノ)-7-フルオロ-3-メチル-3H-ベンゾイミダゾール-e-5-カルボン酸(2-ヒドロキシ-1、1-ジメチル-エトキシ)-アミド、6-(4-ブロモ-2-クロロ-フェニルアミノ)-7-フルオロ-3-(テトラヒドロ-フラン-2-イルm-エチル)-3H-ベンゾイミダゾール-5-カルボン酸(2-ヒドロキシ-エトキシ)-アミド、6-(4-ブロモ-2-フルオロ-フェニルアミノ)-7-フルオロ-3-メチル-3H-ベンゾイミダゾール- e-5-カルボン酸(2-ヒドロキシ-エトキシ)-アミド、6-(2,4-ジクロロ-フェニルアミノ)-7-フルオロ-3-メチル-3H-ベンゾイミダゾール-5-カルボン酸(2-ヒドロキシ-エトキシ)-アミド、6-(4-ブロモ-2-クロロ-フェニルアミノ)-7-フルオロ-3-メチル-3H-ベンゾイミダゾール-e-5-カルボン酸(2-ヒドロキシ-エトキシ)-アミド、2-[(2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ]-N-(2-ヒドロキシエトキシ)-1、5-ジメチル-6- -オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;本明細書において以下でMEK阻害剤2として言及される;および4-(4-ブロモ-2-フルオロフェニルアミノ)-N-(2-ヒドロキシエトキシ)-1,5-ジメチル-6-- オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-カルボキサミド、またはその医薬的に許容される塩を含むが、これらに限定されない。さらなる説明としてのMEK/ERK阻害剤は、国際公開第99/01426号、第02/06213号、第03/077914号、第05/051301号および第2007/044084号において開示されるそれらの化合物を含む。1つの実施形態において、MEK阻害剤は、PD0325901である。別の実施形態において、MEK阻害剤は、U0126である。
0141
ROCK(Rho関連キナーゼ)阻害剤は、Rho-GTPase/ROCK経路の阻害剤を指す。経路は、ROCKのさらに下流である(Rho-ROCK-ミオシンIIが経路/系を形成する)、下流タンパク質ミオシンIIを含む。したがって、人は、本明細書において記載される効果を達成するためのRho GTPase阻害剤、ROCK阻害剤、もしくはミオシンII阻害剤のいずれかまたは全てを使用することができる。本明細書において考慮される組成物における使用に適したROCK阻害剤は、チアゾビビン、Y27632、ファスジル、AR122-86、Y27632 H-1152、Y-30141、Wf-536、HA-1077、ヒドロキシル-HA-1077、GSK269962A、SB-772077-B、N-(4-ピリジル)-N’-(2,4,6-トリクロロフェニル)ウレア、3-(4-ピリジル)-1H-インドール、(R)-(+)-トランス-N-(4-ピリジル)-4-(1-アミノエチル)-シクロヘキサンカルボキサミド、および米国特許第8,044,201号(参照により全体が本明細書に取り込まれる)において開示されるROCK阻害剤を含むが、これらに限定されない。1つの実施形態において、ROCK阻害剤は、チアゾビビン、Y27632、またはピリンテグリンである。1つの実施形態において、ROCK阻害剤は、チアゾビビンである。
【0142】
アクチビン受容体様キナーゼ5(ALK5)は、TGFβsに対する細胞応答を仲介する主なTGFβ受容体である。リガンド結合の際、恒常的に活性なTβRIIキナーゼが、ALK5をリン酸化し、消化管において、下流のシグナル伝達カスケードを活性化する。TGFβ受容体/ALK5阻害剤は、TGFβ/ALK5受容体に対する抗体、TGFβ/ALK5受容体のドミナントネガティブバリアント、およびsiRNA、microRNA、アンチセンス核酸、ならびにTGFβ/ALK5受容体の発現を抑制する他のポリヌクレオチドを含み得る。本明細書において考慮される組成物における使用に適したTGFβ受容体/ALK5阻害剤は、SB431542;A-83-01(3-(6-メチル-2-ピリジニル)-N-フェニル-4-(4-キノリニル)-1H-ピラゾール-1-カルボチオアミド;2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,5-ナフチリジン、Wnt3a/BIO、GW788388(-{4-[3-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]ピリジン-2-イル}-N-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ベンズアミド)、SM16、IN-1130(3-((5-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノキサリン-6-イル)-1H-イミダゾール-2-イル)メチル)ベンズアミド)、GW6604(2-フェニル-4-(3-ピリジン-2-イル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジン)、SB-505124(2-(5-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-2-tert-ブチル-3H-イミダゾール-4-イル)-6-メチルピリジンヒドロクロリド);SU5416;2-(5-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-2-tert-ブチル-3H-イミダゾール-4-イル)-6-メチルピリジンヒドロクロリド(SB-505124);レルデリムマブ(lerdelimumb)(CAT-152);メテリムマブ(CAT-192);GC-1008;ID11;AP-12009;AP-11014;LY550410;LY580276;LY364947;LY2109761;SD-208;SM16;NPC-30345;Ki26894;SB-203580;SD-093;グリベック;3,5,7,2’,4’-ペンタヒドロキシフラボン(モリン);アクチビン-M108A;P144;溶解性TBR2-Fc;およびピリミジン誘導体(例えば、参照により本明細書に取り込まれる、Stiefl等の国際公開第2008/006583号において挙げられるもの)を含むが、これらに限定されない。さらに、「ALK5阻害剤」は、非特異的なキナーゼ阻害剤を包含することは意図されていないが、「ALK5阻害剤」は、例えば、SB-431542(例えば、Inman,et al.,J,Mol.Pharmacol.62(1):65-74(2002)を参照)のような、ALK5に加えてALK4および/またはALK7を阻害する阻害剤を包含することは理解されるべきである。TGFβ/アクチビン経路の阻害は、ALK5を阻害する同様の効果を有するであろうことはさらに確信される。したがって、TGFβ/アクチビン経路の任意の阻害剤(例えば、上流もしくは下流)は、本明細書におけるそれぞれの段落において記載されるALK5阻害剤と組み合わせて、または代わりに使用することができる。典型的なTGFβ/アクチビン経路阻害剤は、TGFβ受容体阻害剤、SMAD2/3リン酸化の阻害剤、SMAD2/3とSMAD4の相互作用の阻害剤、およびSMAD6およびSMAD7の活性化因子/アゴニストを含むが、これらに限定されない。さらに、本明細書において記載される分類は、単に、組織的な目的のために過ぎず、当業者は、化合物が経路内の1つまたは複数のポイントに影響することができ、これにより、化合物が定義された分類の1つより多くにおいて機能し得ることを知っているだろう。1つの実施形態において、TGFβ受容体阻害剤は、SB431542を含む。
【0143】
PDK1または3’-ホスホイノシチド依存性キナーゼ-1は、AKT/PKBおよびPKC、S6K、SGKを含む多くの他のAGCキナーゼの活性化と関連する優れたキナーゼである。PDK1の重要な役割は、幾つかの成長因子およびインスリンシグナル伝達を含むホルモンにより活性化されるシグナル伝達経路におけるものである。典型的なPDKlアゴニストは、スフィンゴシンを含む(King et al,Journal of Biological Chemistry,275:18108-18113,2000)。PDKlの典型的なアロステリック活性化因子は、PS48((Z)-5-(4-クロロフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸)、PS08((Z)-5-(4-ブロモ-2-フルオロフェニル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸)、1-(2-(3-(4-クロロフェニル)-3-オキソ-l-フェニルプロピルチオ)酢酸;化合物12Z(2-(3-(4-クロロフェニル)-3-オキソ-l-フェニルプロピルチオ)酢酸、(Z)-5-(ナフタレン(Napthalen)-2-イル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸)、および化合物13Z((Z)-5-(lH-インドール-3-イル)-3-フェニルペンタ-2-エン酸)のような3,5-ジフェニルペンタ-2-エン酸を含む。1つの実施形態において、PDK1アゴニストは、PS48を含む。
【0144】
ラパマイシン(mTOR)阻害剤の哺乳類標的は、ラパマイシンの哺乳類標的の活性をブロックする。mTORは、細胞成長および血管新生を刺激する成長因子を制御する、タンパク質キナーゼである。本発明の組成物および方法に適したmTOR阻害剤は、ラパマイシン、ならびにシロリムス、シロリムス誘導体、テムシロリムス、40-O-(2-ヒドロキシ)エチル-ラパマイシン(エベロリムス)、40-O-(3-ヒドロキシ)プロピル-ラパマイシン、40-O-[2-(2-ヒドロキシ)エトキシ]エチル-ラパマイシン、40-O-テトラゾール-ラパマイシン、ならびに他のO-アルキル化またはO-メチル化ラパマイシン誘導体を含むその類似体および誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0145】
幾つかの実施形態において、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の治療可能性を改善するための組成物は、表1から選択される少なくとも1つの薬剤を含む。1つの実施形態において、免疫細胞の治療可能性を改善するための組成物は、表1から選択される薬剤の少なくとも2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つ、または任意の数の組み合わせを含む。
【0146】
1つの実施形態において、表1から選択される少なくとも1つの薬剤を含む組成物は、有機溶媒をさらに含む。ある種の実施形態において、有機溶媒は、酢酸メチルを実質的に含まない。ある種の実施形態において、有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルアセトアミド、エタノール、およびその組み合わせからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、有機溶媒はDMSOである。幾つかの実施形態において、有機溶媒はエタノールである。幾つかの他の実施形態において、有機溶媒は、DMSOとエタノールの混合物である。
【0147】
幾つかの実施形態において、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の治療可能性を改善するための組成物は、群I:ドルソモルフィン、ヘプテリジン酸、1-ピロリジンカルボジチオ酸、および2-DGから選択される少なくとも1つの薬剤を含む。理論に制限されるものではないが、群Iの薬剤は、他の可能性のある役割の中でも、細胞代謝および栄養素センシングに影響を及ぼし得る。
【0148】
幾つかの実施形態において、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の治療可能性を改善するための組成物は、群II:GSK3阻害剤、ROCK阻害剤、TGFβ受容体阻害剤、MEK阻害剤、PDK1アゴニスト、6-メルカプトプリン、AC-93253ヨウ化物、チラトリコール、PI-103、フルベストラント、タプシガルジン、SU4312、U0126、テルミサルタン、サイクロスポリンA、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-4-プロピル-1H-ピラゾール、BAY61-3606、プロトポルフィリンIX二ナトリウム、mTOR阻害剤、TWS119、HS173、LY294002、およびピクチリシブから選択される少なくとも1つの薬剤を含む。理論に制限されるものではないが、群IIの薬剤は、他の可能性のある役割の中でも、様々な機能的経路におけるシグナル伝達に影響を及ぼし得る。
【0149】
幾つかの実施形態において、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の治療可能性を改善するための組成物は、群III:5-アザシチジン、フルダラビン、ロスコビチン、およびPAC-1から選択される少なくとも1つの薬剤を含む。理論に制限されるものではないが、群IIIの薬剤は、他の可能性のある役割の中でも、細胞増殖およびアポトーシスに影響を及ぼし得る。
【0150】
幾つかの実施形態において、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の治療可能性を改善するための組成物は、群IV:5,7-ジクロロ-8-キノリノール、2-ナフタセンカルボキサミド,7-クロロ-4-(ジメチルアミノ)-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒ、ニフロキサジド、およびトスフロキサシン塩酸塩から選択される少なくとも1つの薬剤を含む。理論に制限されるものではないが、群IVの薬剤は、他の可能性のある役割の中でも、感染過程に関連する細胞特性に影響を及ぼし得る。
【0151】
幾つかの実施形態において、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の治療可能性を改善するための組成物は、群V:セルトラリン、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、塩化エドロホニウム、BIX01294、テルフェナジン、およびdmPGEから選択される少なくとも1つの薬剤を含む。理論に制限されるものではないが、群Vの薬剤は、他の可能性のある役割の中でも、拡大、維持、分化、脱分化、生存率、増殖、細胞毒性、細胞リコール、および/または持続性に関連する他の細胞特性に一般的に影響を及ぼし得る。
【0152】
さらに幾つかの他の実施形態において、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の治療可能性を改善するための組成物は、群Iから選択される少なくとも1つの薬剤、ならびに群II、群III、群IV、および/または群Vから選択される1つまたは複数の薬剤を含む。
【0153】
幾つかの他の実施形態において、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の治療可能性を改善するための組成物は、群IIから選択される少なくとも1つの薬剤、ならびに群I、群III、群IV、および/もしくは群Vから選択される1つまたは複数の薬剤を含む。
【0154】
さらに幾つかの他の実施形態において、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の治療可能性を改善するための組成物は、群IIIから選択される少なくとも1つの薬剤、ならびに群I、群II、群IV、および/または群Vから選択される1つまたは複数の薬剤を含む。
【0155】
さらに幾つかの他の実施形態において、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の治療可能性を改善するための組成物は、群IVから選択される少なくとも1つの薬剤、ならびに群I、群II、群III、および/もしくは群Vから選択される1つまたは複数の薬剤を含む。
【0156】
さらに幾つかの他の実施形態において、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の治療可能性を改善するための組成物は、群IVから選択される少なくとも1つの薬剤、ならびに群I、群II、群III、および/もしくは群IVから選択される1つまたは複数の薬剤を含む。
【0157】
幾つかの実施形態において、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の治療可能性を改善するための組成物は、GSK3阻害剤、MEK阻害剤、ROCK阻害剤、TGFβ阻害剤、PDK1アゴニスト、およびmTOR阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤を含む。
【0158】
幾つかの実施形態において、組成物は、表1から選択される2つまたはそれ以上の薬剤の組み合わせであって、薬剤が組み合わせにおいて相加効果を有する、組み合わせを含む。定義される、「相加的」は、組み合わせにおける2つまたはそれ以上の薬剤が、個々の効果の合計とほぼ等しい効果を生み出すときを指す。幾つかの実施形態において、組み合わせにおける1つまたは複数の薬剤は、同じ群:群I、II、III、IV、またはVに由来する。幾つかの実施形態において、組み合わせにおける1つまたは複数の薬剤は、異なる群に由来する。
【0159】
幾つかの実施形態において、組成物は、表1から選択される2つまたはそれ以上の薬剤の相乗的な組み合わせを含む。定義される、「相乗効果」は、それらの個々の効果の合計より高い効果を生み出すように2つもしくはそれ以上の薬剤が一緒に働くことのような、増強された効果である。1つの実施形態において、相乗的な組み合わせを含む組成物は、TWS119、HS173、LY294002、ピクチリシブ、および2-DGからなる群から選択される少なくとも1つの薬剤を含む。1つの実施形態において、組成物は、TWS119、HS173、LY294002、ピクチリシブ、および2-DGからなる群から選択される少なくとも1つの薬剤、ならびに表1において挙げられる化合物から選択される1つまたは複数の追加薬剤を含む組み合わせを含む。1つの実施形態において、TWS119を含む組成物は、表1から選択される2つまたはそれ以上の追加薬剤をさらに含む。1つの実施形態において、HS173を含む組成物は、表1から選択される2つまたはそれ以上の追加薬剤をさらに含む。1つの実施形態において、LY294002を含む組成物は、表1から選択される2つまたはそれ以上の追加薬剤をさらに含む。1つの実施形態において、ピクチリシブを含む組成物は、表1から選択される2つまたはそれ以上の追加薬剤をさらに含む。1つの実施形態において、2-DGを含む組成物は、表1から選択される2つまたはそれ以上の追加薬剤をさらに含む。
【0160】
幾つかの実施形態において、表1において挙げられる化合物からなる群から選択される1つまたは複数の薬剤を含む組成物は、ペプチド、サイトカイン、マイトジェン、成長因子、スモールRNA、dsRNA(2本鎖RNA)、単核血液細胞、フィーダー細胞、フィーダー細胞成分もしくは置換因子、対象となる1つもしくは複数のポリ核酸を含むベクター、抗体およびその抗体フラグメント、ならびに/または化学療法剤もしくは放射性部分からなる群から選択されるさらなる追加の添加剤の1つをさらに含む。幾つかの実施形態において、追加の添加剤は、抗体、または抗体フラグメントを含む。これらの実施形態の幾つかにおいて、抗体、または抗体フラグメントは、ウイルス抗原に特異的に結合する。他の実施形態において、抗体、または抗体フラグメントは、腫瘍抗原に特異的に結合する。
【0161】
幾つかの実施形態において、サイトカインおよび成長因子は、以下のサイトカインまたは成長因子:上皮成長因子(EGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、白血病抑制因子(LIF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子1(IGF-1)、インスリン様成長因子2(IGF-2)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、神経成長因子(NGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)トランスフェリン、様々なインターロイキン(例えば、IL-1~IL-18)、様々なコロニー刺激因子(例えば、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF))、様々なインターフェロン(例えば、IFN-γ)、幹細胞因子(SCF)およびエリスロポエチン(Epo)の1つまたは複数を含む。幾つかの実施形態において、サイトカインは、少なくともインターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-15、インターロイキン18(IL-18)、インターロイキン21(IL-21)、またはその任意の組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、組成物の成長因子は、線維芽細胞増殖因子を含む。これらのサイトカインは、市販で、例えば、R&D Systems(ミネアポリス、ミネアポリス)から得られてもよく、天然または組換えのいずれかであってもよい。特定の実施形態において、成長因子およびサイトカインは、本明細書において考慮される濃度にて加えられてもよい。ある種の実施形態において、成長因子およびサイトカインは、実験的に決定される、または確立されたサイトカインの技術分野により導かれる濃度にて加えられてもよい。
【0162】
幾つかの実施形態において、組成物のマイトジェンは、コンカナバリンAを含む。幾つかの他の実施形態において、フィーダー細胞は、遺伝子的に修飾される。幾つかの実施形態において、フィーダー細胞は、以下:単核血液細胞、胸腺上皮性細網細胞、内皮細胞、線維芽細胞、白血病細胞K562、ラージ細胞、またはフィーダー細胞成分もしくはその置換因子の1つあるいは複数を含む。
【0163】
幾つかの実施形態において、1つまたは複数のスモールRNAは、siRNA、shRNA、miRNAおよびアンチセンス核酸を含む。幾つかの他の実施形態において、スモールRNAは、以下:miR-362-5p、miR-483-3p、miR-210およびmiR-598の1つまたは複数を含む。
【0164】
幾つかの実施形態において、対象となる1つまたは複数のポリ核酸を含むベクターは、組み込みまたは非組み込みである。幾つかの実施形態において、対象となる1つまたは複数のポリ核酸を含むベクターは、アデノウイルスベクター、プラスミドベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、センダイウイルスベクター、エピソームベクターなどの骨格をさらに含む。幾つかの実施形態において、動物細胞における発現のためのプラスミドベクターは、例えば、pAl-11、pXTl、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどを含む。幾つかの実施形態において、ベクターにおいて含まれる1つまたは複数のポリ核酸は、1つまたは複数のタンパク質もしくはポリペプチドをコードする。幾つかの実施形態において、1つまたは複数のポリ核酸は、デルタ様1(DLL1)、デルタ様3(DLL3)、デルタ様4(DLL4)、Jagged1(Jag1)、またはJagged2をコードする。幾つかの実施形態において、1つまたは複数のポリ核酸は、Jagged1をコードする。
II.養子細胞療法のための免疫細胞
【0165】
本発明は、表1から選択される1つもしくは複数の薬剤と接触させた免疫細胞の単離された集団または亜集団を含む組成物を提供する。1つの実施形態において、免疫細胞の単離された集団または亜集団は、表1から選択される1つまたは複数の薬剤と免疫細胞の治療可能性を改善するのに十分な量で接触された。幾つかの実施形態において、処理された免疫細胞は、細胞ベースの養子療法において使用される。本発明は、免疫細胞の集団または亜集団、および表1において挙げられる薬剤から選択される1つまたは複数の薬剤をさらに提供し、ここで、表1において挙げられる薬剤から選択される1つもしくは複数の薬剤を使用した免疫細胞の集団または亜集団の処理が、養子療法の免疫細胞の治療可能性を改善する。処理は、細胞増殖、細胞毒性、および持続性を改善する、ならびに/または細胞療法の再発率を低減する免疫細胞の生物学的な特性を修飾することができる。
【0166】
幾つかの実施形態において、免疫細胞の集団は、T細胞を含む。幾つかの実施形態において、免疫細胞の集団は、NK細胞を含む。幾つかの実施形態において、免疫細胞の集団は、NKT細胞を含む。
【0167】
幾つかの実施形態において、表1から選択される1つもしくは複数の薬剤と接触させたT細胞の集団または亜集団は、同じ処理をしていないT細胞と比較し、増大した数もしくは割合のナイーブT細胞(Tn)、幹細胞メモリーT細胞(Tscm)、および/またはセントラルメモリーT細胞(Tcm)、ならびに/あるいは改善された細胞増殖、細胞毒性、細胞リコール、および/または持続性を含む。幾つかの実施形態において、Tn、Tscm、および/またはTcmの数は、表1から選択される1つもしくは複数の薬剤での同じ処理をしていない細胞集団におけるTn、Tscm、および/またはTcmの数と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%増大されるか、あるいは少なくとも5、10、15、あるいは20倍増大される。
【0168】
幾つかの実施形態において、表1から選択される1つまたは複数の薬剤と接触させたNK細胞の集団または亜集団は、同じ処理をしていないNK細胞と比較し、増大した数もしくは割合の養子(もしくはメモリー)NK細胞、ならびに/または改善された細胞増殖、細胞毒性、細胞リコール、および/もしくは持続性を含む。幾つかの実施形態において、養子NK細胞の数は、表1から選択される1つもしくは複数の薬剤での同じ処理をしていない細胞集団における養子NK細胞の数と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%増大されるか、あるいは少なくとも5、10、15、または20倍増大される。1つの実施形態において、GSK3阻害剤、MEK阻害剤、ROCK阻害剤、TGFβ阻害剤、PDK1アゴニスト、および/もしくはラパマイシンと接触させたNK細胞の集団または亜集団は、増大した数または割合の養子NK細胞を含む。1つの実施形態において、養子NK細胞は、CD3およびCD56、ならびにCD57、NKG2C、低PLZF、低SYK、低FcεRγ、低EAT-2、低TIGIT、低PD1、低CD7、低CD161、高LILRB1、高CD45RO、および低CD45RAの少なくとも1つにより特徴付けられる。幾つかの実施形態において、養子NK細胞は、CD57、NKG2C、低PLZF、低SYK、低FcεRγ、低EAT-2、低TIGIT、低PD1、低CD7、低CD161、高LILRB1、高CD45RO、および低CD45RAの少なくとも2つである。例えば、養子NK細胞は、CD57かつNKG2Cであり得る。幾つかの実施形態において、養子NK細胞は、CD57、NKG2C、低PLZF、低SYK、低FcεRγ、低EAT-2、低TIGIT、低PD1、低CD7、低CD161、高LILRB1、高CD45RO、および低CD45RAの少なくとも3つである。例えば、養子NK細胞は、SYK-、FcεRγ-、かつEAT-2であることができる。1つの実施形態において、GSK-3β阻害剤は、CHIR99021、BIO、TWS119、またはケンパウロンである。1つの実施形態において、GSK-3β阻害剤は、TWS119である。別の実施形態において、GSK-3β阻害剤は、CHIR99021である。まだ別の実施形態において、GSK-3β阻害剤は、BIOである。
【0169】
幾つかの他の実施形態において、表1から選択される1つもしくは複数の薬剤と接触させたNKT細胞の集団または亜集団は、表1から選択される1つもしくは複数の薬剤での処理をしていないNKT細胞の単離された集団または亜集団と比較し、タイプI NKT細胞の増大した数あるいはタイプIIに対するタイプI NKT細胞の増大した割合、ならびに/あるいは改善された細胞増殖、細胞毒性、細胞リコール、および/または持続性を含む。幾つかの実施形態において、タイプI NKT細胞の数は、表1から選択される1つもしくは複数の薬剤での同じ処理をしていない細胞集団におけるタイプI NKT細胞の数と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%増大されるか、あるいは少なくとも5、10、15、または20倍増大される。
【0170】
幾つかの実施形態において、増大した数もしくは割合のナイーブT細胞(Tn)、幹細胞メモリーT細胞(Tscm)、セントラルメモリーT細胞(Tcm)、養子NK細胞、および/またはタイプI NKT細胞は、これらの細胞タイプの改善された維持および拡大、ならびに/またはより成熟な細胞サブタイプから所望される分化状態にある細胞サブタイプまでの増大した細胞脱分化/リプログラミングに起因するものである。
【0171】
幾つかの実施形態において、免疫細胞の集団を、表1において含まれる薬剤の1つまたは複数と接触させた後、集団におけるナイーブT細胞(Tn)、幹細胞メモリーT細胞(Tscm)、セントラルメモリーT細胞(Tcm)の数は、処理されていない免疫細胞集団と比較し、増大され、ここで、Tn、TscmおよびTcmは、CCR7および/またはCD62Lの共発現により特徴付けられる。
【0172】
幾つかの実施形態において、免疫細胞の集団を表1において含まれる薬剤の1つまたは複数と接触させた後、集団における養子NK細胞の数は、処理されていない免疫細胞集団と比較し、増大され、ここで、タイプI 養子NK細胞は、CD3-、CD56+、CD16+、NKG2C+、およびCD57+により特徴付けられる。幾つかの他の実施形態において、養子NK細胞は、CD3、CD56、ならびにCD57、NKG2C、低PLZF、低SYK、低FcεRγ、低EAT-2、低TIGIT、低PD1、低CD7、低CD161、高LILRB1、高CD45RO、および低CD45RAの少なくとも1つ、2つまたは3つにより特徴付けられる。
【0173】
幾つかの実施形態において、免疫細胞の集団を表1において含まれる薬剤の1つまたは複数と接触させた後、集団におけるタイプI 養子NKT細胞の数は、処理されていない免疫細胞集団と比較し、増大され、ここで、養子NKT細胞は、CD3+、CD56+、TCR Vα24+、およびTCR Vβ11+により特徴付けられる。
【0174】
幾つかの実施形態において、本明細書において開示される薬剤による処理のためのT、NKもしくはNKT細胞の集団または亜集団は、ヒトまたは非ヒト哺乳類から単離することができる。かかる非ヒト哺乳類の例は、ウサギ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびその遺伝子導入種を含むが、これらに限定されない。
【0175】
T細胞の集団または亜集団は、末梢血、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、および感染の部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、ならびに腫瘍を含むが、これらに限定されない、多数の供給源から得られるか、または単離され得る。骨髄は、大腿骨、腸骨稜、臀部、肋骨、および他の骨から得ることができる。加えて、ジャーカット、SupT1、および他のもののような、当該技術分野において入手可能なT細胞株をまた使用することができる。
【0176】
NK細胞の集団または亜集団は、末梢血、臍帯血、および腫瘍を含むが、これらに限定されない、多数の供給源から得られるか、または濃縮することができる。
【0177】
完全に成熟なNKT細胞は、骨髄、リンパ節組織および臍帯血、胸腺組織に潜在的にみられる成熟NKT細胞のより小さな集団を含む末梢血から得られるか、または濃縮することができる。
【0178】
本発明のある種の実施形態において、T、NK、NKT細胞の単離された、もしくは濃縮された集団または亜集団は、Ficoll(商標)分離のような、任意の数の当業者に公知の技術を使用して、血液ユニットから得ることができる。1つの実施形態において、個体の循環血液由来のT、NKまたはNKT細胞は、アフェレーシスにより得られる。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、NK細胞、NKT細胞、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含む、細胞を含有する。1つの実施形態において、アフェレーシスにより集められた細胞を洗浄して、血漿分画を取り除き、細胞を、続くプロセッシング工程のため適当な緩衝液または培地に置くことができる。本発明の1つの実施形態において、細胞は、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄される。代わりの実施形態において、洗浄溶液は、カルシウムを欠き、マグネシウムを欠き得るか、または全部ではないが多くの2価カチオンを欠き得る。当業者は容易に理解するであろうが、洗浄工程は、製造元の指示に従い、半自動「フロースルー」遠心分離機(例えば、Cobe 2991 cell processor、Baxter CytoMate、またはHaemonetics Cell Saver 5)を使用することによるような、当業者に公知の方法により、達成され得る。洗浄後、細胞は、例えば、Caフリー、MgフリーなPBS、PlasmaLyte A、または他の食塩水溶液を含むかもしくは含まない緩衝液のような様々な生体適合性緩衝液に再懸濁することができる。あるいは、アフェレーシス試料の望ましくない成分が取り除かれ、細胞は培地に直接再懸濁される。
【0179】
別の実施形態において、T、NKもしくはNKT細胞の集団または亜集団は、赤血球を溶解し、例えば、PERCOLL(商標)勾配を介した遠心分離により、もしくは向流遠心水簸により、単球を枯渇させることにより、末梢血リンパ球から単離されるか、または濃縮される。
【0180】
1つの実施形態において、T細胞の特異的な亜集団は、CD3、CD28、CD4、CD8、CD45RA、CD45RO、CD62L、CCR7、CD27、および/もしくはCD122抗体のようなポジティブまたはネガティブセレクションにより、さらに単離されるか、あるいは濃縮され得る。例えば、1つの実施形態において、T細胞の単離された、もしくは濃縮された集団または亜集団は、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 Tのような、抗CD3/抗CD28(すなわち、3×28)抱合ビーズと、所望されるT細胞のポジティブセレクションに十分な期間インキュベーションすることにより、拡大され、活性化される。1つの実施形態において、期間は、約30分間である。さらなる実施形態において、期間は、30分間から72時間またはそれより長いおよびその間の全ての整数値までの範囲にある。さらなる実施形態において、期間は、少なくとも1、2、3、4、5、または6時間である。さらに別の好ましい実施形態において、期間は、10~72時間である。1つの好ましい実施形態において、インキュベーション期間は、24時間である。白血病を有する患者からT細胞を単離するため、24時間のような、より長いインキュベーション時間の使用は、細胞収量を増大することができる。より長いインキュベーション時間を使用して、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を腫瘍組織から、または免疫不全状態の個体から単離する際のような、他の細胞タイプと比較して、T細胞があまり存在しないいずれかの状況においてT細胞を単離することができる。さらに、より長いインキュベーション時間を使用して、CD8T細胞の補足の効率を増大することができる。したがって、時間を単に短縮するか、もしくは延長することにより、T細胞を、CD3/CD28ビーズに結合させ、および/あるいはT細胞に対するビーズの割合(本明細書においてさらに記載される)を増やすか、もしくは減らすことにより、T細胞の特異的な集団または亜集団は、培養開始時に、またはプロセスの間の他の時間ポイントにてそれについて、またはそれに対してさらに選択され得る。加えて、ビーズまたは他の表面上の抗CD3および/もしくは抗CD28抗体の割合を増やすこと、または減らすことにより、T細胞の特異的な集団あるいは亜集団は、培養開始時に、または他の所望される時間ポイントにてそれについて、またはそれに対して優先的に選択され得る。当業者は、複数ラウンドのセレクションがまた、本発明の状況において使用され得ることを認識するだろう。ある種の実施形態において、セレクション手法を行うこと、ならびに活性化および拡大プロセスにおいて「選択されない」細胞を使用することが望ましくあり得る。「選択されていない」細胞はまた、さらなるラウンドのセレクションの対象にすることができる。
【0181】
ネガティブセレクションによる、T、NKもしくはNKT細胞の集団または亜集団の単離あるいは濃縮は、ネガティブセレクションされた細胞に固有の表面マーカーに対する抗体の組み合わせで達成され得る。1つの方法は、ネガティブセレクションされた細胞に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用するネガティブ磁気免疫結合または蛍光活性化細胞ソーティングを介した細胞ソーティングおよび/またはセレクションである。例えば、ネガティブセレクションにより、CD3細胞について濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、およびHLA-DRに対する抗体を含む。ある種の実施形態において、典型的には、CD4+、CD25+、CD62Lhi、GITR+、およびFoxP3+を発現する制御性T細胞について濃縮するか、またはポジティブセレクションすることが望ましくあり得る。あるいは、ある種の実施形態において、T制御性細胞は、抗CD25抱合ビーズまたはセレクションの他の同様の方法により、枯渇される。幾つかの実施形態において、免疫療法のため所望されるT細胞亜集団は、CCR7およびCD62Lにより、T細胞を含む調節された免疫細胞から濃縮されるか、または選択される。あるいは、対象となる細胞は、サイズ、密度、粒度、変形能、抵抗性または容量の差異を含む物理的パラメーターに従い、選択されてもよい。
【0182】
1つの実施形態において、養子NK細胞の集団または亜集団は、NK細胞を含む調節された免疫細胞内で、それらの表現型の上でのCD3-およびCD56+について、CD16、NKG2C、およびCD57の陽性発現を含むような、識別子を使用して、セレクションすることにより、濃縮される。さらに、養子亜集団のネガティブセレクションは、NKG2Cおよび/またはCD57の発現の欠如、加えて、以下の:低PLZF、低SYK、低FcεRγ、低EAT-2、低TIGIT、低PD1、低CD7、低CD161、高LILRB1、高CD45RO、および低CD45RAの1つまたは複数の発現の欠如に基づき得る。
【0183】
1つの実施形態において、NKT細胞の集団または亜集団は、NK細胞の集団内で、インバリアントなTCRα鎖を表現型の上で発現するもの、具体的には、以下のマーカー:CD3+、CD56+、TCR Vα24+、および/またはTCR Vβ11+の組み合わせについてセレクションすることにより、濃縮される。あるいは、NKT細胞は、インバリアントなTCRα鎖の発現と合わせた表現型の組み合わせに基づき選択することができる。
【0184】
対象由来の血液試料またはアフェレーシス産物は、本明細書において記載される免疫細胞が単離されるときに先立つ期間にて、集めることができる。したがって、調節されるべき細胞の供給源は、必須の任意の時間ポイントにて集められ、T細胞、NK細胞およびNKT細胞のような所望される細胞が、単離され、本明細書において記載されるもののような、かかる細胞療法から恩恵を受ける、任意の数の疾患または状態のための細胞ベースの免疫療法において後に使用するため、凍結され得る。1つの実施形態において、血液試料またはアフェレーシス産物は、一般的な健常対象から集められる。ある種の実施形態において、血液またはアフェレーシス産物は、疾患を発症するリスクがあるが、まだ疾患を発症していない一般的な健常対象から集められ、対象となる細胞が、単離され、後の使用のため凍結される。他の実施形態において、血液試料またはアフェレーシス産物は、遺伝子的に修飾された免疫細胞(遺伝子的に操作された、または再編成、変異、遺伝子インプリンティングおよび/もしくはエピジェネティック修飾から天然にもたらされる)を既に投与された対象から集められる。ある種の実施形態において、T、NK、NKTまたは他の免疫細胞は、拡大され、凍結され、そして後に処理され、使用され得る。ある種の実施形態において、試料は、本明細書において記載される特定の疾患の診断の直後だが、任意の処置に先立ち、患者から集められる。幾つかの実施形態において、細胞は、CMV(サイトメガロウイルス)血清陽性を提示する対象から単離される。さらなる実施形態において、細胞は、ナタリズマブ、エファリズマブ、抗ウイルス薬、化学療法、放射線、サイクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸塩、およびFK506のような免疫抑制薬、抗体、またはCAMPATH、抗CD3抗体、シトキサン、フルダラビン、サイクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、および照射のような他の免疫除去剤のような薬剤での処置を含むが、これらに限定されない、任意の数の関連する処置モダリティに先立ち、対象由来の血液またはアフェレーシス産物から単離される。さらなる実施形態において、細胞は、患者から単離され、フルダラビンのような化学療法薬、外照射療法(XRT)、シクロホスファミド、またはOKT3もしくはCAMPATHのような抗体のいずれかを使用した骨髄または幹細胞移植、T細胞除去療法と併せた(例えば、前、同時、または後)後の使用のため、凍結される。別の実施形態において、細胞は、処置に先立ち単離され、CD20と反応する薬剤、例えば、リツキサンのようなB細胞除去療法後の処置の後の使用のため凍結され得る。
【0185】
幾つかの実施形態において、T、NKもしくはNKT細胞の集団または亜集団は、ゲノム的に操作され、挿入、欠失、または核酸置換を含む。修飾された免疫細胞は、サイトカイン導入遺伝子、発現抑制された阻害性受容体を発現するか;または活性化受容体、もしくは免疫細胞を再ターゲティングするためのCARを過剰発現してもよい。幾つかの実施形態において、対象、もしくはドナーから調節のため単離されるか、または対象/ドナーの末梢血、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染の部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、腫瘍から単離されるか、もしくはそこに含まれる免疫細胞の集団は、遺伝子的に修飾されていてもよい。幾つかの実施形態において、免疫細胞の単離された集団は、ゲノム的に操作され、挿入、欠失、および/または核酸置換を含む。幾つかの特定の実施形態において、免疫細胞は、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、および/または過剰発現のCD16もしくはそのバリアントをコードする外来核酸を含む。
【0186】
ゲノム的に操作された免疫細胞は、セーフティスイッチタンパク質、ターゲティングモダリティ、受容体、シグナル伝達分子、転写因子、医薬的に有効なタンパク質およびペプチド、薬物標的候補;免疫細胞の生着、輸送、ホーミング、バイアビリティー、自己再生、持続性、免疫応答制御および調節、および/もしくは生存を促進するタンパク質の1つまたは複数を含む、遺伝子的に修飾されたモダリティを含む。幾つかの他の実施形態において、遺伝子的に修飾されたモダリティは、(i)欠失もしくは低減した発現のB2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、CIITA、RFX5、またはRFXAP、および染色体6p21領域中の任意の遺伝子;(ii)誘導されたまたは増大した発現のHLA-E、HLA-G、HACD16、hnCD16、41BBL、CD3、CD4、CD8、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、Fc受容体、あるいは二重もしくは多特異性または普遍的エンゲイジャーとのカップリングのための表面トリガー受容体の1つあるいは複数を含む。幾つかの実施形態において、T、NKまたはNKT細胞は、外来核酸を含む。幾つかの実施形態において、外来核酸は、細胞の直接ゲノム編集を介して免疫細胞に導入される。幾つかの他の実施形態において、外来核酸は、分化を通じて免疫細胞を生じる、ゲノム的に操作された造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、またはiPSCから同じものを保持することを介して免疫細胞に導入される。幾つかの実施形態において、T細胞についての外来核酸は、TCR(T細胞受容体)、CAR(キメラ抗原受容体)、二重特異性T細胞エンゲイジャー(BiTE)、三重特異性T細胞エンゲイジャー、多特異性T細胞エンゲイジャー、または複数の免疫細胞タイプと適合する普遍的エンゲイジャーをコードすることができる。幾つかの実施形態において、NK細胞についての外来核酸は、TCR、CAR、CD16もしくはそのバリアント、NY-ESO、二重特異性キラー細胞エンゲイジャー(BiKE)、三重特異性キラー細胞エンゲイジャー(TriKE)、多特異性キラー細胞エンゲイジャー、または複数の免疫細胞タイプと適合する普遍的エンゲイジャーをコードすることができる。幾つかの実施形態において、NKT細胞についての外来核酸は、変更されたTCRまたはCARであり得る。幾つかの実施形態において、外来核酸はCAR19をコードする。幾つかの実施形態において、CD16バリアントは、高親和性CD16(HACD16)、切断不可能なCD16、および高親和性切断不可能なCD16(hnCD16)を含む。したがって、GSK3iを使用して免疫細胞を調節するための方法および組成物を考慮して、本発明の幾つかの態様は、GSK3iにより調節された遺伝子的に操作されたT、NK、またはNKT細胞を提供する。本発明の1つの態様は、hnCD16を含む、GSK3iにより調節されたNK細胞を提供する。本発明の別の態様は、修飾されたHLAクラスIおよび/またはIIを有する、GSK3iにより調節された免疫細胞を提供する。幾つかの実施形態において、修飾されたHLAクラスIおよび/またはIIを有する、GSK3iにより調節された免疫細胞は、B2M、HLA-E/G、PDL1、A2AR、CD47、LAG3、TIM3、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、RFKANK、CIITA、RFX5、およびRFXAPの少なくとも1つの無発現または低発現を含む。
【0187】
幾つかの実施形態において、調節のための免疫細胞の集団または亜集団は、幹細胞または前駆細胞から試験管内で分化する。幾つかの実施形態において、T、NKもしくはNKT細胞の単離された集団または亜集団は、幹細胞、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞(HSC)、または前駆細胞から分化することができる。前駆細胞は、CD34+造血性内皮細胞、多能性前駆細胞、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、またはNKT細胞前駆細胞であり得る。幹細胞は、誘導された多能性幹細胞(iPSC)および胚性幹細胞(ESC)のような多能性幹細胞であり得る。iPSCは、天然に存在しないリプログラミングされた多能性細胞である。対象の細胞が、多能性状態にリプログラミングされると、次に、細胞は、T、NK、もしくはNKT細胞のような所望される細胞タイプまたはサブタイプにプログラムされるか、あるいは分化し得る。幾つかの実施形態において、iPSCは、発症の様々なステージ由来の細胞が、中胚葉幹細胞から完全に分化したT、NKまたはNKT細胞の範囲に渡る造血表現型を想定して誘導され得る、複数のステージの分化プラットフォームにより、T、NKまたはNKT細胞に分化し得る(例えば、米国特許出願第62/107,517号および第62/251,016号を参照、その開示は、全体が本明細書に取り込まれる)。
【0188】
幾つかの実施形態において、T、NKもしくはNKT細胞分化のためのiPSC、HSC、または前駆細胞は、ゲノム的に操作され、挿入、欠失、または核酸置換を含む。幾つかの実施形態において、ゲノム的に操作されるiPSC、HSCまたは造血前駆細胞は、セーフティスイッチタンパク質、ターゲティングモダリティ、受容体、シグナル伝達分子、転写因子、医薬的に有効なタンパク質およびペプチド、薬物標的候補;あるいはiPSC、HSC、前駆細胞、もしくはそれらのもたらされた細胞の生着、輸送、ホーミング、バイアビリティー、自己再生、持続性、免疫応答制御および調節、および/または生存を促進するタンパク質の1つあるいは複数を含む、遺伝子的に修飾されたモダリティを含む。幾つかの他の実施形態において、遺伝子的に修飾されたモダリティは、(i)欠失もしくは低減した発現のB2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、CIITA、RFX5、またはRFXAP、および染色体6p21領域中の任意の遺伝子;(ii)誘導されたまたは増大した発現のHLA-E、HLA-G、HACD16、hnCD16、41BBL、CD3、CD4、CD8、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、Fc受容体、二重もしくは多特異性または普遍的エンゲイジャーとのカップリングのための表面トリガー受容体、TCR(T細胞受容体)、あるいはCAR(キメラ抗原受容体)の1つあるいは複数を含む。幾つかの実施形態において、T、NKもしくはNKT細胞分化のためのiPSC、HSC、または前駆細胞は、修飾されたHLAクラスIおよび/またはIIを含む。幾つかの実施形態において、修飾されたHLAクラスIおよび/もしくはIIを有するT、NKまたはNKT細胞分化のためのiPSC、HSC、あるいは前駆細胞は、B2M、HLA-E/G、PDL1、A2AR、CD47、LAG3、TIM3、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、RFKANK、CIITA、RFX5、およびRFXAPの少なくとも1つの無発現または低発現を含む。幾つかの実施形態において、T、NKもしくはNKT細胞分化のためのiPSC、HSC、または前駆細胞は、外来核酸を有する。幾つかの実施形態において、外来核酸は、二重特異性T細胞エンゲイジャー(BiTE)、三重特異性T細胞エンゲイジャー、多特異性T細胞エンゲイジャー、CD16もしくはそのバリアント、NY-ESO、二重特異性キラー細胞エンゲイジャー(BiKE)、三重特異性キラー細胞エンゲイジャー(TriKE)、多特異性キラー細胞エンゲイジャー、または複数の免疫細胞タイプと適合する普遍的エンゲイジャーをコードすることができる。幾つかの実施形態において、外来核酸は、T、NKもしくはNKT細胞分化のためiPSC、HSC、または前駆細胞においてhnCD16をコードする。幾つかの実施形態において、外来核酸は、T、NKもしくはNKT細胞分化のためiPSC、HSC、または前駆細胞においてCAR19をコードする。
【0189】
幾つかの実施形態において、免疫細胞の集団または亜集団は、T、NK、もしくはNKT前駆細胞、またはT、NK、もしくはNKT細胞のような完全に分化した特異的なタイプの免疫細胞であり得る、非造血運命の非多能性細胞から造血系細胞に、または第一の造血細胞タイプの非多能性細胞から異なる造血細胞タイプに試験管内で分化転換する(例えば、米国特許第9,376,664号および米国特許出願第15/072,769号を参照、その開示は、全体が本明細書に取り込まれる)。幾つかの実施形態において、非造血運命の非多能性細胞は、皮膚線維芽細胞、脂肪組織由来の細胞およびヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)のような体細胞である。分化転換に有用な体細胞は、不死化体細胞であってもよい。
【0190】
様々なストラテジーを追及して、細胞において多能性を誘導するか、または能力を増大させる(Takahashi,K.,and Yamanaka,S.,Cell 126,663-676(2006);Takahashi et al.,Cell 131,861-872(2007);Yu et al.,Science 318,1917-1920(2007);Zhou et al.,Cell Stem Cell 4,381-384(2009);Kim et al.,Cell Stem Cell 4,472-476(2009);Yamanaka et al.,2009;Saha,K.,Jaenisch,R.,Cell Stem Cell 5,584-595(2009))、ならびにリプログラミングの効率を改善する(Shi et al.,Cell Stem Cell 2,525-528(2008a);Shi et al.,Cell Stem Cell 3,568-574(2008b);Huangfu et al.,Nat Biotechnol 26,795-797(2008a);Huangfu et al.,Nat Biotechnol 26,1269-1275(2008b);Silva et al.,Plos Bio 6,e253.Doi:10.1371/journal.Pbio.0060253(2008);Lyssiotis et al.,PNAS 106,8912-8917(2009);Ichida et al.,Cell Stem Cell 5,491-503(2009);Maherali,N.,Hochedlinger,K.,Curr Biol 19,1718-1723(2009b);Esteban et al.,Cell Stem Cell 6,71-79(2010);およびFeng et al.,Cell Stem Cell 4,301-312(2009))、その開示は、参照により全体が本明細書に取り込まれる。
III.養子療法のため免疫細胞を調節する方法
【0191】
本発明は、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の集団または亜集団を調節する方法を提供し、方法は、免疫細胞を表1から選択される少なくとも1つの薬剤を含む組成物と接触させることを含む。
【0192】
1つの実施形態において、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の集団または亜集団を調節する方法は、免疫細胞を表1から選択される少なくとも1つの薬剤を含む組成物と接触させることを含み、ここで、接触された免疫細胞は、表1の薬剤と接触させていない免疫細胞と比較し、増大した細胞拡大、増大した数もしくは割合の1つまたは複数の所望される細胞亜集団、ならびに/あるいは改善された増殖、細胞毒性、細胞リコール、および/または持続性を有する。
【0193】
幾つかの実施形態において、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の集団または亜集団を調節する方法は、免疫細胞を表1から選択される少なくとも1つの薬剤を含む組成物と接触させることを含み、ここで、細胞の1つまたは複数の所望される亜集団の維持および拡大は、表1の薬剤と接触させていない免疫細胞と比較し、改善される。
【0194】
幾つかの実施形態において、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の集団または亜集団を調節する方法は、免疫細胞を表1から選択される少なくとも1つの薬剤を含む組成物と接触させることを含み、ここで、分化の所望される状態にリプログラミングされた集団における免疫細胞の数または割合は、表1の薬剤と接触させていない免疫細胞と比較し、増大される。
【0195】
幾つかの実施形態において、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の集団または亜集団を調節する方法は、免疫細胞を表1から選択される少なくとも1つの薬剤を含む組成物と、表1の薬剤と接触させていない免疫細胞と比較し、細胞拡大を増大させる、1つもしくは複数の所望される免疫細胞亜集団の数または割合を増大させる、ならびに/あるいは免疫細胞の増殖、細胞毒性、細胞リコール、および/または持続性を改善するのに十分な量で、接触させることを含む。1つの実施形態において、免疫細胞処置のための薬剤は、約0.1nM~約50μMである。1つの実施形態において、免疫細胞処置のための薬剤は、約0.1nM、0.5nM、1nM、5nM、10nM、50nM、100nM、500nM、1μΜ、5μΜ、10μΜ、20μΜ、もしくは25μΜ、または間の任意の濃度である。1つの実施形態において、免疫細胞処置のための薬剤は、約0.1nM~約5nMであり、約1nM~約100nMであり、約50nM~約250nMであり、約100nM~約500nMであり、約250nM~約1μΜであり、約500nM~約5μΜであり、約3μΜ~約10μΜであり、約5μΜ~約15μΜであり、約12μΜ~約20μΜであるか、または約18μΜ~約25μΜである。
【0196】
幾つかの実施形態において、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の集団または亜集団を調節する方法は、免疫細胞を表1から選択される少なくとも1つの薬剤を含む組成物と、表1の薬剤と接触させていない免疫細胞と比較し、細胞拡大を増大させる、1つもしくは複数の所望される免疫細胞亜集団の数または割合を増大させる、ならびに/あるいは免疫細胞の増殖、細胞毒性、細胞リコール、および/または持続性を改善するのに十分な時間、接触させることを含む。1つの実施形態において、免疫細胞は、表1の1つまたは複数の薬剤と、少なくとも30分間、1時間、2時間、5時間、12時間、16時間、18時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、10日間、15日間、20日間、25日間、30日間、または間の任意の長さの期間、接触される。1つの実施形態において、免疫細胞は、表1の1つまたは複数の薬剤と、約0.5時間~約2時間、約1時間~約12時間、約10時間~約2日間、約1日~約3日間、約2日~約5日間、約3日~約6日間、約5日~約8日間、約7日~約14日間、約12日~約22日間、約14日~約25日間、約20日~約30日間、接触される。幾つかの実施形態において、免疫細胞は、表1の1つまたは複数の薬剤と、16時間以上、14時間以上、12時間以上、10時間以上、8時間以上、6時間以上、4時間以上、2時間以上、または間の任意の長さの時間、接触される。したがって、当該十分な長さの時間は、例えば、15時間以上、13時間以上、11時間以上、9時間以上、7時間以上、5時間以上、3時間以上、または1時間以上である。方法の幾つかの他の実施形態において、当該十分な長さの時間は、24時間以上、36時間以上、48時間以上、60時間以上、72時間以上、または間の任意の長さの時間以上である。したがって、当該十分な長さの時間は、例えば、30時間以上、42時間以上、54時間以上、66時間以上、78時間以上、90時間以上である。
【0197】
免疫細胞を表1から選択される少なくとも1つの薬剤を含む組成物と接触させることを含む、養子細胞ベースの療法に適した免疫細胞の集団または亜集団を調節する方法は、接触後、1つもしくは複数の所望される亜集団を免疫細胞から濃縮するか、または単離することをさらに含み、ここで、1つまたは複数の所望される亜集団は、ナイーブT細胞、幹細胞メモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、養子NK細胞、およびタイプI NKT細胞からなる群から選択される。養子NK細胞は、CD57+NKG2C+の表現型、またはCD57+のさらに成熟した集団を有し得る。幾つかの実施形態において、GSK3阻害剤、ならびにIL2、IL15、IL12、IL18およびIL21を含む刺激性サイトカインの少なくとも1つ、またはMEK阻害剤、ラパマイシン、およびSTINGアゴニストの1つまたは複数を含む、十分量の組成物が、処理/調節のため使用されいてもよい。幾つかの実施形態において、GSK3阻害剤を含む組成物は、ペプチド、サイトカイン、マイトジェン、成長因子、スモールRNA、dsRNA(2本鎖RNA)、単核血液細胞、フィーダー細胞、フィーダー細胞成分もしくは置換因子、対象となる1つもしくは複数のポリ核酸を含むベクター、およびその抗体もしくはフラグメントからなる群から選択される1つまたは複数の追加の添加剤をさらに含んでもよい。幾つかの実施形態において、GSK3阻害剤は、CHIR99021である。幾つかの実施形態において、追加の添加剤は、抗体、または抗体フラグメントを含む。これらの実施形態の幾つかにおいて、抗体、または抗体フラグメントは、ウイルス抗原に特異的に結合する。他の実施形態において、抗体、または抗体フラグメントは、腫瘍抗原に特異的に結合する。
【0198】
処理されるべき、または調節されるべき免疫細胞の集団は、対象、もしくはドナーから単離されるか、あるいは対象/ドナーの末梢血、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染の部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、腫瘍から単離されるか、またはそこに含まれ得る。対象は、健常であってもよいか、または自己免疫疾患、造血器悪性腫瘍、ウイルス感染症もしくは固形腫瘍を有していてもよい。幾つかの実施形態において、対象は、CMV血清陽性であるか、または遺伝子的に修飾された免疫細胞を既に投与されていてもよい。幾つかの実施形態において、対象は、CMV血清陽性であってもよい。幾つかの他の実施形態において、調節のため単離された免疫細胞は、遺伝子的に修飾される(遺伝子的に操作されるか、または再編成、変異、遺伝子インプリンティングおよび/もしくはエピジェネティック修飾から天然にもたらされる)。幾つかの実施形態において、調節のため単離された免疫細胞は、少なくとも1つの遺伝子的に修飾されたモダリティを含む。幾つかの実施形態において、免疫細胞の単離された集団は、ゲノム的に操作され、挿入、欠失、および/または核酸置換を含む。幾つかの特定の実施形態において、免疫細胞は、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、および/または過剰発現のCD16もしくはそのバリアントをコードする外来核酸を含む。したがって、遺伝子的に修飾された免疫細胞は、開示される本組成物および方法を使用した生体外での調節のため単離される。幾つかの実施形態において、調節後、対象から単離された、遺伝子的に修飾された免疫細胞は、同じドナーまたは異なる患者に投与されてもよい。
【0199】
あるいは、調節のための免疫細胞の集団は、幹細胞、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、または前駆細胞から試験管内で分化するか;あるいは造血系または非造血系の非多能性細胞から分化転換してもよい。幾つかの実施形態において、調節のための免疫細胞をもたらす、幹細胞、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、前駆細胞、または非多能性細胞は、ゲノム操作され、挿入、欠失、および/または核酸置換を含み、したがって、調節のためもたらされた免疫細胞は、供給源細胞においてゲノム操作することにより導入された同じ遺伝子モダリティを含む。
【0200】
GSK3阻害剤を使用したNK細胞の集団を調節する方法において、NK細胞の集団は、GSK3阻害剤を含む、十分量の組成物と、養子細胞療法のNK細胞の治療可能性を改善するのに十分な時間培養される。調節のためのNK細胞の集団を得るために、末梢血単核細胞(PBMC)が、対象から単離されてもよい。PBMCは、リンパ球(T細胞、およそ30%~70%;B細胞、およそ10%~20%;NK細胞、およそ5%~20%)および単球からなる。対象は、健常であってもよく、自己免疫疾患、造血器悪性腫瘍、ウイルス感染症もしくは固形腫瘍を有していてもよいか、またはCMV血清陽性であってもよいか、または遺伝子的に修飾された免疫細胞を既に投与されていてもよい。
【0201】
方法の幾つかの実施形態において、単離されたPBMCは、例えば、CD3およびCD19抗体、または当該技術分野において公知の他のソーティング方法を使用して、T細胞およびB細胞を枯渇させてもよい。幾つかの実施形態において、単離されたPBMCは、延長された培養もしくは拡大を有しなくても、または最小の事前枯渇培養もしくは拡大を有してもよい。「延長された培養もしくは拡大を有しなくても、または最小の事前枯渇培養もしくは拡大」により、それは、PBMCの事前枯渇培養が、48時間未満、36時間未満、24時間未満、12時間未満、8時間未満、6時間未満、または2時間未満であることを意味する。幾つかの実施形態において、PBMCの事前枯渇培養は、2時間以下、4時間以下、6時間以下、8時間以下、10時間以下、12時間以下、24時間以下、48時間以下である。1つの実施形態において、PBMCの事前枯渇培養は、一晩以下である。幾つかの実施形態において、PBMCは、枯渇に先立ち全く培養されない。「事前枯渇培養」により、それは、本明細書において開示される小分子なしではあるが、PBMCを、T細胞およびB細胞の枯渇に先立ち、サイトカイン、フィーダー細胞と培養し、抗体、組換え活性性リガンド、および/もしくは自家白血球をブロッキングするか、または活性化して、PBMCを維持するか、あるいは拡大することを意味する。典型的なサイトカイン培養条件下で、TおよびB細胞は、NK細胞、特に、CD57+およびCD57+NKG2C+NK細胞を含むが、これに限定されない、幾つかのNK細胞サブセットのような、他の亜集団より迅速に拡大し得る。これは、TおよびB細胞が、これらの培養条件下でより容易に成長し得るか、より速い成長速度を有し得るか、開始細胞集団においてより大きなパーセンテージを有し得るためであり、および/または条件が、これらのNK細胞サブセットが成長および拡大するのに適していないためであり得る。それ故、これらのNK細胞サブセットを過剰成長させるので、拡大された事前枯渇培養は、培養された細胞集団におけるより小さなパーセンテージのNK細胞サブセットをもたらし得る。CD57+細胞および養子NK細胞は、従来のサイトカイン培養下でTおよびB細胞からの成長圧力/競合なしでさえ、他のNK亜集団より少ない増殖性であることが示された。したがって、TおよびB細胞枯渇と共に、なしで開始するための約0.1%、約1%、約5%未満、もしくは約10%未満のCD57+または養子NK細胞を有するPBMCの培養は、CD57+およびCD57+NKG2C+NKサブセットを、PBMC集団から減少させるか、または排除させするだろう。
【0202】
したがって、本発明の1つの態様は、PBMCを含む試料をGSK3iと複数日間培養して、PBMC試料においてNKサブセットを選択的に拡大することを提供する。幾つかの実施形態において、PBMCは、T細胞およびB細胞を枯渇させた。幾つかの実施形態において、PBMCは、GSK3阻害剤との培養に先立ち、事前枯渇培養を経験していない。他の実施形態において、事前枯渇培養は、最小であり、24時間未満、16時間未満、8時間未満もしくは2時間未満、または間の任意の長さの時間である。1つの実施形態において、GSK3阻害剤の存在下での複数日の培養は、フィーダーフリーな条件下である。1つの実施形態において、GSK3阻害剤の存在下での複数日間の培養は、フィーダー細胞と共にである。
【0203】
本開示によると、1つの実施形態において、細胞集団は、延長された事前枯渇培養を経験しておらず、T細胞およびB細胞の枯渇後、当該細胞集団は、CD57-、CD57-NKG2C+、CD57+および/またはCD57+NKG2C+NK細胞を含む。幾つかの実施形態において、枯渇後だが、事前枯渇培養をしない、集団におけるNK細胞のパーセンテージは、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、または約30%である。幾つかの実施形態において、枯渇後だが、事前枯渇培養をしない、集団におけるNK細胞のパーセンテージは、多くても約10%、多くても約20%、多くても約30%、多くても約40%、多くても約40%、多くても約50%、多くても約60%、または多くても約70%である。幾つかの実施形態において、枯渇後だが、事前枯渇培養をしない、集団におけるCD57+NK細胞またはCD57+NKG2C+細胞のパーセンテージは、約0.1%、約0.5%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、30%、35%、40%、45%、50%、およびその間の任意のパーセンテージである。
【0204】
TおよびB細胞を枯渇させ、「一晩刺激された」NK細胞として言及される、最小の事前枯渇培養を経験したか、または経験していないPBMCから単離された、上記NK細胞集団は、次に、NK細胞およびその亜集団の表現型および機能性を調節するために十分な時間、本明細書において提供される小分子の存在下での調節の対象にされる。幾つかの実施形態において、NK細胞の調節は、NK細胞を成熟に偏向させることを含む。1つの実施形態において、NK細胞の調節は、CD57-NK細胞をCD57+NK細胞に偏向させて、NK細胞成熟をもたらすことを含む。幾つかの実施形態において、NK細胞の調節は、CD57-NKG2C+NK細胞をCD57+NKG2C+NK細胞に偏向させることを含む。幾つかの実施形態において、NK細胞の調節は、NK細胞の細胞毒性を増大させること、および/またはサイトカイン応答を改善すること含む。幾つかの実施形態において、NK細胞の調節は、CD57-NK細胞をCD57+NK細胞に偏向させて、NK細胞成熟をもたらすこと、細胞毒性を増大させること、およびサイトカイン応答を改善することを含む。幾つかの他の実施形態において、NK細胞の調節は、CD107a、NKG2C、NKG2D、CD16、KIR、CD2、および天然の細胞毒性受容体(NCR)の1つまたは複数の細胞発現を増大することを含む。NCRは、NKp30、NKp44およびNKp46を含む。幾つかの他の実施形態において、NK細胞の調節は、NKp30発現を増大させることを含む。幾つかの他の実施形態において、NK細胞の調節は、CD107aを増大させることを含む。したがって、本発明はまた、調節されていないNK細胞と比較し、CD107a、NKG2C、NKG2D、CD16、KIR、CD2、NKp30、NKp44およびNKp46の1つまたは複数における増大した発現を有する調節されたNK細胞の集団を提供し、ここで、その発現は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上、増大される。さらに幾つかの他の実施形態において、NK細胞の調節は、NK細胞もしくはその亜集団の増殖、サイトカイン放出、細胞リコール、および/または持続性を改善することを含む。さらに幾つかの他の実施形態において、NK細胞の調節は、NK細胞もしくはその亜集団の細胞拡大、維持、分化、脱分化、および/または生存率を改善することを含む。
【0205】
NK細胞の表現型および/または機能性を調節するのに十分な時間は、例えば、少なくとも0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日間、21日間、28日間、または間の任意の長さの時間を含み得る。幾つかの実施形態において、本発明の方法において得られるNK細胞は、GSK3阻害剤の存在下で、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日間、21日間、28日間、または間の任意の長さの時間、調節される。幾つかの実施形態において、NK細胞を調節するために十分な時間は、12時間以上、16時間以上、24時間以上、48時間以上、3日間以上、4日間以上、5日間以上、6日間以上、または7日間以上である。幾つかの実施形態において、本発明の方法において得られるNK細胞は、GSK3阻害剤の存在下で、24時間以上、48時間以上、3日間以上、4日間以上、5日間以上、6日間以上、または7日間以上、調節される。幾つかの実施形態において、NK細胞を調節するのに十分な時間は、1~28日間、1~21日間、1~14日間、1~7日間、2~12日間、3~11日間、4~10日間、5~9日間、6~8日間、7~14日間、14~21日間、21~28日間、またはそれに含まれる任意の範囲である。幾つかの実施形態において、本発明の方法において得られるNK細胞は、GSK3iの存在下で、1~28日間、1~21日間、1~14日間、1~7日間、2~12日間、3~11日間、4~10日間、5~9日間、6~8日間、7~14日間、14~21日間、21~28日間、またはそれに含まれる任意の範囲の間、調節される。幾つかの実施形態において、NK細胞を調節するのに十分な時間は、約3日、約5日、約7日、または約9日である。幾つかの実施形態において、本発明の方法において得られるNK細胞は、GSK3iの存在下で、約3日間、5日間、約7日間、または約9日間、調節される。
【0206】
幾つかの実施形態において、十分な時間の免疫細胞の調節は、30μM未満、25μM未満、20μM未満、15μM未満、10μM未満、または1μM未満にある小分子の存在下でである。幾つかの実施形態において、十分な時間免疫細胞を調節する際に使用される小分子は、25μM未満、20μM未満、15μM未満、10μM未満、5μM未満、または1μM未満である。幾つかの実施形態において、GSK3阻害剤の存在下で十分な時間調節されたNK細胞の集団は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10倍、数またはパーセンテージにおいて増大されたNK細胞拡大を有する。幾つかの実施形態において、GSK3阻害剤の存在下で調節されたNK細胞の集団は、少なくとも約80%、85%、90%、95%、または少なくとも約99%のNK細胞純度を有する。幾つかの実施形態において、GSK3阻害剤の存在下で調節されたNK細胞の集団は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10倍、数においてまたはパーセンテージにおいて増大したCD57+NK細胞拡大を有する。幾つかの実施形態において、調節後の集団におけるCD57+NK細胞またはCD57+NKG2C+細胞のパーセンテージは、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%または80%、およびその間の任意のパーセンテージである。幾つかの実施形態において、GSK3阻害剤の存在下で調節されたNK細胞の集団は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10倍、数においてまたはパーセンテージにおいて増大したCD57+NKG2C+NK細胞拡大を有する。
【0207】
本明細書において開示されるプロセスの後、GSK3阻害剤を使用してNK細胞の集団を調節する方法は、増大した数または割合の、CD57+NK細胞、およびCD57+NKG2C+NK細胞のようなNK亜集団を有する細胞療法のための調節されたNK細胞;改善された細胞拡大、維持および成熟;改善された増殖、細胞リコール、および/または持続性につながるNK細胞サブセットの増強された養子/メモリー様状態;ならびに改善された細胞毒性ならびにサイトカイン応答および分泌をもたらす。したがって、本発明の異なる態様は、事前枯渇培養をしないで枯渇させたPBMC試料を、調節のため、十分量のGSK3阻害剤を含む組成物と、細胞療法の改善された可能性を有する調節された細胞を得るのに十分な時間、接触させることを含む、NK細胞およびその亜集団を選択的に拡大する方法;養子NK細胞を拡大し、調節する方法;NK細胞拡大、維持または成熟を改善する方法;NK細胞の養子/メモリー様状態を増強する方法;細胞増殖、細胞リコール、および細胞持続性を含むが、これらに限定されない、NK細胞の治療可能性を改善する方法;NK細胞の細胞毒性を改善する方法;ならびにNK細胞サイトカイン分泌および応答を増大させる方法をさらに提供する。
【0208】
別の実施形態において、上記方法は、PBMCの試料を対象から得ること;例えば、CD3およびCD19を含む抗体を使用して、試料の事前枯渇培養をしないでPBMC試料を枯渇させること;ならびに枯渇させたPBMC試料を、十分量のGSK3iを含む組成物と、細胞療法の改善された可能性を有する調節された細胞を得るのに十分な時間接触させることを含む。
【0209】
さらに別の実施形態において、上記方法は、PBMCの試料を対象から得ること;CD3およびCD19または他の非NK特異的なマーカーを含む抗体を使用して、事前枯渇培養をしないで、PBMC試料を枯渇させること;枯渇させたPBMC試料を、調節のため、十分量のGSK3iを含む組成物と、調節された細胞を得るのに十分な時間、接触させること;ならびにCD57+NK細胞を調節された細胞から単離することを含む。
【0210】
上記方法の幾つかの実施形態において、方法は、NK細胞をGSK3阻害剤を含む組成物と接触させる工程の前または工程中に、NK細胞の集団を活性化することをさらに含んでもよい。
【0211】
上記方法の幾つかの実施形態において、十分量のGSK3iを含む組成物と十分な時間接触させることは、フィーダーフリーな条件、すなわち、フィーダー細胞またはその成分を含まず、かつフィーダー細胞馴化培地を含まない条件において行われてもよい。
【0212】
上記方法の幾つかの実施形態において、十分量のGSK3iを含む組成物を十分な時間接触させることは、フィーダー細胞の存在下で行われてもよい。幾つかの実施形態において、フィーダー細胞は、外来表面タンパク質を発現させるためのゲノム編集により、修飾される。
IV.処理された免疫細胞、免疫細胞集団または亜集団の治療上の使用
【0213】
本発明は、細胞ベースの養子療法において使用されるとき、免疫細胞の治療可能性を改善するのに十分な量で、表1から選択される1つもしくは複数の薬剤と接触させた免疫細胞の単離された集団または亜集団を含む組成物を提供する。1つの実施形態において、処理された免疫細胞の単離された集団または亜集団は、増大した数もしくは割合のナイーブT細胞、幹細胞メモリーT細胞、および/またはセントラルメモリーT細胞を含む。1つの実施形態において、接触された免疫細胞の単離された集団または亜集団は、増大した数または割合のタイプI NKT細胞を含む。別の実施形態において、接触された免疫細胞の単離された集団または亜集団は、増大した数または割合の養子NK細胞を含む。腫瘍細胞を標的にするか、またはNK細胞の細胞毒性活性調節する他の薬剤と一緒にNK細胞療法製品を使用する併用治療が、本明細書において考慮される。組成物の幾つかの実施形態において、組成物は、ペプチド、サイトカイン、マイトジェン、成長因子、スモールRNA、dsRNA(2本鎖RNA)、単核血液細胞、フィーダー細胞、フィーダー細胞成分もしくは置換因子、対象となる1つもしくは複数のポリ核酸を含むベクター、抗体、化学療法剤もしくは放射性部分、および免疫調節薬(IMiD)からなる群から選択される1つまたは複数の追加の添加剤をさらに含む。
【0214】
本発明はまた、表1において挙げられる化合物、および追加の治療薬剤を含む1つまたは複数の薬剤で調節された免疫細胞を含む併用治療の組成物ならびに方法を提供する。幾つかの実施形態において、追加の治療薬剤は、抗体、または抗体フラグメントを含む。幾つかの実施形態において、抗体は、ヒト化抗体、ヒト化モノクローナル抗体、キメラ抗体であってもよい。幾つかの実施形態において、抗体、または抗体フラグメントは、ウイルス抗原に特異的に結合する。他の実施形態において、抗体、または抗体フラグメントは、腫瘍抗原に特異的に結合する。幾つかの実施形態において、腫瘍またはウイルス特異的抗原は、調節されたNK細胞を活性化して、抗体依存性細胞障害(ADCC)を使用し、標的細胞を溶解する。モノクローナル抗体(mAb)は、標的細胞プラスNK細胞および他の細胞タイプ上の動員CD16に結合し、これにより、生体内と試験管内の両方でADCCによる腫瘍細胞の殺傷をもたらす。mAbはまた、NK細胞阻害をブロッキングすることにより、ADCCを増強し、NK細胞を刺激することができる。幾つかの実施形態において、NK細胞により仲介されるADCCは、調節されたNK細胞により、発現されたCD16および遺伝子的に操作されたそのバリアントを介してである。Cd16の遺伝子的に操作されたバリアントは、切断不可能なCD16、高親和性CD16(haCD16)、および高親和性切断不可能なCD16(hnCD16)を含むが、これらに限定されない。したがって、本発明の上記態様は、抗体併用癌治療においてADCCを果たす能力があるGSK3iにより調節されたNK細胞を提供する。幾つかの実施形態において、本明細書において提供される抗癌NK細胞での併用処置に適した抗体は、抗CD20(リツキシマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、オビヌツズマブ)、抗Her2(トラスツズマブ)、抗CD52(アレムツズマブ)、抗EGFR(セルツキシマブ)、および抗CD38(ダラツムマブ)、ならびにそれらのヒト化およびFc修飾されたバリアントを含むが、これらに限定されない。加えて、NK細胞上のCD16を認識する別のFab領域と組み合わせた、抗CD19、CD20、およびCD33抗原のような腫瘍細胞抗原を標的にする抗体のFab領域を融合する、二重ならびに三重特異性抗体の設計は、NK細胞の刺激、その後の腫瘍殺傷につながる。
【0215】
幾つかの実施形態において、追加の治療薬剤は、1つもしくは複数の化学療法剤または放射性部分を含む。化学療法剤は、細胞毒性抗腫瘍薬、すなわち、腫瘍細胞を優先的に殺傷するか、もしくは迅速に増殖する細胞の細胞サイクルを妨害する化学薬剤、または癌幹細胞を根絶することが見出されている化学薬剤、および腫瘍細胞の成長を妨げるかまたは低減するために治療上使用される化学薬剤を指す。化学療法剤はまた、抗腫瘍または細胞毒性薬もしくは薬剤としてもときに言及され、当該技術分野において周知である。
【0216】
幾つかの実施形態において、化学療法剤は、アントラサイクリン、アルキル化剤、スルホン酸アルキル、アジリジン、エチレンイミン、メチルメラミン、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、抗生物質、代謝拮抗物質、葉酸類似体、プリン類似体、ピリミジン類似体、酵素、ポドフィロトキシン、白金含有薬剤、インターフェロン、およびインターロイキンを含む。典型的な化学療法剤は、アルキル化剤(シクロホスファミド、メクロレタミン、メファリン(mephalin)、クロラムブチル、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン)、代謝拮抗物質(メトトレキサート、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン)、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン)、エピポドフィロトキシン(エトポシド、エトポシドオルトキノン、およびテニポシド)、抗生物質(ダウノルビシン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ビスアンスレン、アクチノマイシンD、プリカマイシン、ピューロマイシン、およびグラミシジンD)、パクリタキセル、コルヒチン、サイトカラシンB、エメチン、メイタンシン、ならびにアムサクリンを含むが、これらに限定されない。追加の薬剤は、アミノグルテチミド、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、アルトレタミン、シクロホスファミド、ロムスチン(CCNU)、カルムスチン(BCNU)、イリノテカン(CPT-11)、アレムツザマブ、アルトレタミン、アナストロゾール、L-アスパラギナーゼ、アザシチジン、ベバシズマブ、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルステロン、カペシタビン、セレコキシブ、セツキシマブ、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、ダカルバジン、デニロイキンジフチトクス、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドロモスタノロン、エピルビシン、エルロチニブ、エストラムスチン、エトポシド、エチニルエストラジオール、エキセメスタン、フロクスウリジン、5-フルオロウラシル、フルダラビン、フルタミド、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゴセレリン、ヒドロキシウレア、イブリツモマブ、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロンアルファ(2a、2b)、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、レバミソール、メクロレタミン、メゲストロール、メルファリン、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトキサレン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロン、ノフェツモマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペメトレキセド、ペガデマーゼ、ペグアスパラガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポリフェプロザン、ポルフィマー、プロカルバジン、キナクリン、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、トペテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビノレルビン、およびゾレドロネートを含む。他の適当な薬剤は、化学療法剤または放射線療法剤として承認されるもの、および当該技術分野において公知のものを含む、ヒト使用を承認されたものである。かかる薬剤は、共に時々アップデートされる、多数の標準的な医師および腫瘍学者の参考文献(例えば、Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,Ninth Edition,McGraw-Hill,N.Y.,1995)のいずれかを通じて、または国立がん研究所のウェブサイト(fda.gov/cder/cancer/druglistfrarne.htm)を通じて参照することができる。
【0217】
サリドマイド、レナリドミド、およびポマリドミドのような免疫調節薬(IMiD)は、NK細胞とT細胞の両方を刺激する。本明細書において提供される通り、IMiDは、癌処置のため調節された治療免疫細胞と共に使用されててもよい。
【0218】
様々な疾患は、本発明の細胞を養子細胞療法に適した対象に導入することにより、改善され得る。疾患の例は、円形脱毛症、自己免疫溶血性貧血、自己免疫性肝炎筋炎、糖尿病(1型)、幾つかの形態の若年性特発性関節炎、糸球体腎炎、グレーヴス病、ギランバレー症候群、特発性血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、幾つかの形態の心筋炎、多発性硬化症、天疱瘡/類天疱瘡、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、関節リウマチ、強皮症/全身性硬化症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、幾つかの形態の甲状腺炎、幾つかの形態のぶどう膜炎、白斑、多発性血管炎を伴う肉芽腫症(ウェゲナーの)を含むが、これらに限定されない様々な自己免疫異常;急性および慢性白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫および骨髄異形成症候群を含むが、これらに限定されない造血器腫瘍;脳、前立腺、乳房、肺、結腸、子宮、皮膚、肝臓、骨、膵臓、卵巣、精巣、膀胱、腎臓、頭部、頸部、胃、子宮頸部、直腸、咽頭、または食道の腫瘍を含むが、これらに限定されない固形腫瘍;およびHIV-(ヒト免疫不全ウイルス)、RSV-(呼吸器多核体ウイルス)、EBV-(エプスタイン・バーウイルス)、CMV-(サイトメガロウイルス)、アデノウイルス-およびBKポリオーマウイルス-関連異常を含むが、これらに限定されない感染症を含む。
実施例
【0219】
以下の実施例は、説明の目的だが、制限の目的ではなく、与えられる。
【0220】
実施例1-方法および材料
試験管内細胞培養。フレッシュleukopak(AllCells、アラメダ、カリフォルニア州)を健常ドナーから得て、それから、EasySep Human T cell Enrichment Kit(ステムセルテクノロジーズ、バンクーバー、カナダ)を使用して、T細胞をネガティブセレクションした。新たに単離したT細胞を等分し、凍結保存した。新たに単離したT細胞を等分し、凍結保存した。スクリーニングを開始した日に、T細胞を解凍し、5%ヒトAB血清、IL-2、ペニシリン/ストレプトマイシン、およびさらに上清を含むX-Vivo 15に注いだ。細胞を、平底384ウェルプレートに、5×10細胞/mlにて、ビーズ対細胞比3:1の抗CD3/抗CD28dynabead(サーモフィッシャー、ウォルサム、マサチューセッツ州)と共に分注した。各プレートのカラム3からカラム22までの各ウェルに、終濃度10μMにて、個々の化合物を加えた。陽性および陰性対照をさらなるウェルに加えた。細胞を、約6日間、37℃にて、5%CO2でインキュベーションした。
【0221】
フローサイトメトリー。培養6日目に、細胞を、固定可能なバイアビリティーマーカーならびにフルオロフォア抱合抗体:CD3、CD4、CD8、CD45RA、CD45RO、CD62L、CCR7、CD27、およびCD122(ベクトン・デッキンソンバイオサイエンス、サンノゼ、カリフォルニア州;およびBioLegend、サンディエゴ、カリフォルニア州)で染色した。取得の直前に、Fluorescent absolute counting bead(Spherotech、レークフォレスト、イリノイ州)を加えた。BD Fortessa X-20(ベクトン・デッキンソンバイオサイエンス)にて、データ取得を行い、Treestar software(FlowJo、アシュランド、オレゴン州)およびSpotfire(Tibco、ボストン、マサチューセッツ州)を使用して、データを解析した。
【0222】
NK細胞単離。健常成人ドナー血液を、市販の供給源から、またはScripps Research Institute、ラホヤ、カリフォルニア州のGCRC core laboratoryから得た。末梢血単核細胞(PBMC)を、Ficoll-Paque PLUS(GEヘルスケア:ライフサイエンス)を使用した密度勾配遠心分離により単離し、次に、製造元の指示に従い、CD19 Microbead(Miltenyi Biotec、番号130-050-301)およびCD3 Microbead(Miltenyi Biotec、番号130-050-101)を使用して24~36時間以内PBMCを培養することなく、BおよびT細胞を枯渇させた。
【0223】
NK細胞培養:CD3/CD19を枯渇させたPBMC(0.5~1×10E6/mL)を、B0培地(DMEMの2:1混合物、(Corning Cell-Gro、番号10-017-CV)、ならびに10%ヒトAB血清(Valley Biomedical、番号HP1022)、100U/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシン(Corning、30-002-CI)、20μM2-メルカプトエタノール(シグマ、M3148)、50μMエタノールアミン(シグマ、E0135)、10μg/mLアスコルビン酸(シグマ、A4544)、および1.6ng/mLセレン酸ナトリウム(シグマ、S5261)を含むHam’s F12(Corning Cell-Gro、番号10-080-C)において培養した。細胞を、10ng/mL組換えヒトIL-15(ライフテクノロジーズ、PHC9154)を含有する培地において、GSK3阻害剤CHIR99021(BioVision、番号1677-5)、ヒストンリジンメチルトランスフェラーゼ阻害剤BIX01294(Tocri、3364)、TGF-β1受容体阻害剤SB-431542(BioVison、1674-5)、もしくはヒトインターフェロンアルファ(R&D System、11200-1)と共に、またはなしで、7~8日間(最大4週間)培養した。培養後、トリパンブルーを使用して、またはCellometer(Nexcelom)により、細胞をカウントし、フローサイトメトリーおよび機能的アッセイのため使用した。BD LSRFortessa上で、フローサイトメトリーを行い、結果を、FlowJo softwareにより解析した。フローサイトメトリーのため、以下の表面マーカー:CD3、CD14、CD16、CD19、CD56、CD57およびNKG2Cに対する市販の抗体(ベクトン・デッキンソンバイオサイエンス、Biolegend、またはR&D Systems)を使用した。指した場所で、K562フィーダー細胞を使用した。指した場所で、他のモジュレーターおよび培養試薬を加えた。
【0224】
NK細胞ソーティング:CD3/CD19を枯渇させたPBMCを、10μM e450proliferation dye(eBioscience)で標識し、FITC抱合抗CD57、PE抱合抗NKG2C、APC抱合抗CD56、ならびにPercp-Cy5.5抱合抗CD3抗体(ベクトン・デッキンソンバイオサイエンス、およびR&D Systems)で染色した。CD57およびNKG2Cの発現;CD57+NKG2C-、CD57+NKG2C+、CD57-NKG2C+、およびCD57-NKG2C-により、CD3-CD56+NK細胞の4つの集団をソーティングした。ソーティングしたNK細胞集団を、10ng/ml IL-15およびCHIR99021またはビヒクル対照を含むB0培地において、NK:単球の比2:1にて培養した。染色されたが、ソーティングしていない細胞を、対照として並行して培養した。
【0225】
NK細胞の細胞毒性アッセイ:既に公開された方法(Kim,et al.J Immunol Methods.2007 Aug 31;325(1-2):51-66)に基づくフローサイトメトリーベースの方法を使用して、細胞毒性を決定した。NK細胞を、e450-proliferation dye標識した標的と共に4時間共培養した。CellEvent(商標)Caspase-3/7 Green Flow Cytometry Assay Kit(ライフテクノロジーズ)を使用して、標的細胞の間で細胞死についてアッセイし、試料を、BD LSRFortessa cytometerにて読み取った。Incucyte Zoom装置を使用して、SKOV-3標的の殺傷を定量した。NucLight-Red BacMam reagent(Essen Biosciences)で、SKOV-3細胞を一過性に形質導入し、2時間の間隔で画像を取得しながら、指したNK細胞集団と共に74時間共培養した。CellEvent(商標)Caspase-3/7 Green Detection Reagent使用して、カスパーゼ3/7活性をモニターし、アポトーシスを経験した標的細胞を示した。標的細胞数を、単独で培養したSKOV-3細胞に対して正規化し、アポトーシスを経験した標的を、カスパーゼ3/7活性に基づき定量した。
【0226】
NK細胞の細胞内サイトカイン染色:CD3/CD9を枯渇させたPBMCを、10ng/ml IL-15および5μM CHIR99021またはビヒクル対照と共に7日間培養した。培養7日目に、細胞を洗浄し、IL-12およびIL-18(それぞれ、10ng/mlおよび50ng/ml)(ライフテクノロジーズ)と共に、または比1:1にてK562細胞と共に別々に培養した。Golgistop(ベクトン・デッキンソンバイオサイエンス)を培地に含めて、サイトカインの細胞内検出を促した。4時間の培養期間後、細胞を、細胞表面抗原について染色し、IFN-ガンマおよびTNF-アルファに対する抗体(ベクトン・デッキンソンバイオサイエンス)での細胞内染色に先立ち、固定した。製造元の指示に従い、BD Cytofix/Cytoperm(商標)Kitを使用して、染色を行った。
【0227】
NK細胞調節化合物のスクリーニング:CD3/CD19を枯渇させたPBMCを、フィーダー細胞と共に、またはなしで、7日間、10ng/ml IL-15および5μM CHIR99021と共に培養した。様々な小分子および/またはサイトカインを、複数回に分けて0日目に加えて、増殖および表現型に対するそれらの効果を評価した。培養物を、7日の期間中ずっと、培地の酸性化または細胞の過成長についてモニターした。培培養後、細胞を回収し、フローサイトメトリーによる表現型解析のため染色した。増殖およびマーカー発現における変化について、データを解析した。BD LSRFortessa上で、フローサイトメトリーを行い、結果を、FlowJo softwareにより解析した。フローサイトメトリーのため、以下の表面マーカー:CD3、CD14、CD16、CD19、CD56、CD57およびNKG2Cに対する市販の抗体(ベクトン・デッキンソンバイオサイエンス、Biolegend、またはR&D Systems)を使用した。
【0228】
調節したNK細胞を使用した生体内腫瘍排除:2×10ルシフェラーゼ発現SKOV-3細胞の腹腔内移植の1日前に、NSGマウスに300ラド照射した。卵巣癌細胞の移植の5日後、マウスを無処置のままか、ハーセプチンのみで処置か、またはハーセプチン、IL-15、ならびにIL-15およびCHIR99021と7日間培養したNK細胞で処置した。ルシフェラーゼ発現SKOV-3細胞を、21日目にIVIS画像化システムを使用して画像化した。
【0229】
実施例2-免疫細胞調節のための薬剤
データを解析して、より高い割合もしくはより大きい絶対数のいずれかの、表現型の上で同定したナイーブ、幹細胞メモリー、またはセントラルメモリーT細胞を生じた化合物を同定した。これらの細胞を、CCR7およびCD62Lの発現により特徴付ける。それ故、これらの同定マーカーの両方を共発現する細胞を評価した。生CD4+集団および生CD8+集団内で、CCR7およびCD62Lを共発現する細胞のパーセントを決定した。所望されるT細胞サブセットの指標として、T細胞上でのCD62LまたはCCR7のいずれかの発現を、CAR-T細胞療法、および可能性のある他の養子T細胞療法の好ましい機能的特徴を有すると記載した。ドルソモルフィン、ヘプテリジン酸、GSK3阻害剤、6-メルカプトプリン、AC-93253ヨウ化物、チラトリコール、PI-103、5-アザシチジン、5,7-ジクロロ-8-キノリノール、ニトロフラントイン、5-クロロ-7-ヨード-8-キノリノール、またはジエチレントリアミンペンタ酢酸の処理の下で、CCR7およびCD62Lを共発現する細胞の数または割合は、生存CD4+集団と生存CD8+集団の両方において増大した(表2)。フルベストラント、タプシガルジン、SU4312、フルダラビン、2-ナフタセンカルボキサミド、7-クロロ-4-(ジメチルアミノ)-1,4,4a,5,5a,6,11,12a-オクタヒ、ニフロキサジド、塩化エドロホニウムの処理の下で、CCR7およびCD62Lを共発現する細胞の数または割合は、少なくとも生存CD8+集団において増大した(表2)。1-ピロリジンカルボジチオ酸、アンモニウム塩、U0126、テルミサルタン、サイクロスポリンA、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-4-プロピル-1H-ピラゾール、BAY61-3606、プロトポルフィリンIX二ナトリウム、ラパマイシン、ロスコビチン、PAC-1、トスフロキサシン塩酸塩、BIX01294、およびテルフェナジンの処理の下で、CCR7およびCD62Lを共発現する細胞の数または割合は、少なくとも生存CD8+集団において増大した(表2)。
【0230】
加えて、GSK3(グリコーゲン合成酵素キナーゼ3)阻害剤は、CD3-CD19-CD56+NK細胞を保存することを示し、CD57+およびNKG2C+発現を含むが、これらに限定されない、観察に基づき、細胞成熟およびサブタイプ偏向に影響することにより、養子NK細胞亜集団を増大した。
【0231】
各試料中のビーズのカウントの絶対数に相関するこれらのゲートのそれぞれにおける現象の数を計算し、CD4+および/もしくはCD8+集団内でのナイーブ、幹細胞メモリー、またはセントラルメモリーT細胞の絶対数の相対的測定を定義する。各384ウェルプレート内の第2の化合物試料に相関するz値を、これらの4種の値:1)CD4+におけるパーセントCCR7+CD62L+、2)CD8+におけるパーセントCCR7+CD62L+、3)CD4+におけるCCR7+CD62L+の絶対相対数、および4)CD8+におけるCCR7+CD62L+の絶対相対数のそれぞれについて計算した(図1Aおよび1B)。各試料内の全ての細胞のパーセントバイアビリティー、および各試料内の細胞の相対絶対数について、Zスコアを計算した。「Zスコア」は、スコアの群における平均とのスコアの関連の統計的測定値である。Z値0は、スコアが、平均と同じであることを意味する。Zスコアはまた、それが、平均より上かもしくは下であるかどうかを、かつどれだけ多くの標準偏差かにより示す、正または負であり得る。
【0232】
T細胞増殖またはバイアビリティーに対する有害な影響を有する化合物の排除は、最も恐らくT細胞製造方法に適している化合物に対する成果に焦点を当てたものである。以下の基準:-1より大きい「パーセントバイアビリティー」Z-スコア、-1より大きい細胞のZ-スコアの「相対絶対数」、および+2より大きい4つの値の1つのZ-スコアにより、第一のヒット化合物を選択した。ずっと高いZ-スコアを有し、かつ4つの第一の値の1つより多くについて上記基準を満たすという点で、34種の化合物(表2)を選択した。さらに5種の化合物をまた、T細胞を調節するそれらの能力の点で含める(表3)。
【0233】
【表2-1】
【0234】
【表2-2】
【0235】
【表2-3】
【0236】
【表3】
【0237】
実施例3-選択した化合物の試験管内トリアージ実験
試験管内実験を行い、T細胞機能に対して決定的な影響を有する化合物曝露およびトリアージ化合物の方法を最適化する。第一の試験が、既に観察したナイーブ、幹細胞メモリー、およびセントラルメモリーT細胞に対する影響が、さらなるドナーにおいて繰り返されるかどうかを評価しながら、個々の化合物の最適な用量を決定する。T細胞に対する可能性のある決定的な機能的影響を有する化合物をトリアージするために、増殖能力、Th1およびTh17に二極化させる能力、凍結保存/解凍サイクルを通じた生存、伝達効率、ならびにCARにより伝達されたT細胞の殺腫瘍活性についての試験管内評価を行う。T細胞機能に対して有意な負の影響を伴わないで、拡大中にナイーブ、幹細胞メモリー、もしくはセントラルメモリーT細胞の割合または数を再生可能な方法で改善する化合物を、組み合わせで試験し、相加または相乗効果について評価する。これらの評価を通じて、有力候補または組み合わせを、生体内での追加試験に優先させる。
【0238】
実施例4-選択した化合物を使用した養子細胞療法の生体内モデル
生体内スクリーニングおよび追跡試験管内トリアージ実験の結果を説明するために、選択した化合物の有力候補を、養子細胞療法の生体内モデルに適用する。具体的には、生着、殺腫瘍活性、2次的な殺腫瘍応答、遊走、細胞持続性、および移植片対宿主疾患に関して、養子細胞療法に対する小分子調節の影響を調べる。臨床において有効な応答と相関することが見い出された永続的養子細胞療法の特徴である他の読み取り情報もまた、調べる。
【0239】
これらの実験を、ヒト細胞を、ヒト腫瘍を生じる免疫不全NSGマウスに養子性に移植するヒト化システムにおいて、または免疫コンピテント動物が、同系腫瘍を生じ、同系細胞療法で処置される代替マウスモデルにおいてのいずれかで、行う。
【0240】
代替またはヒト化モデルシステムのいずれかにおいて、マウスに対象となるルシフェラーゼ標識リンパ腫または他の腫瘍を注入する。その後すぐに、本発明において開示されるビヒクルまたは調節化合物によって前処理された養子細胞療法を行う。細胞療法と腫瘍の両方の用量を、化合物処理の正または有害な効果を観察するウインドウを可能にするように最適化する。動物の重さ、血漿サイトカイン濃度、腫瘍の量、および末梢血、二次リンパ器官および腫瘍塊における養子細胞療法;全身腫瘍組織量、腫瘍転移、および細胞療法の表現型を、実験の持続のためモニターする。
【0241】
生体内での1つまたは多数の腫瘍関連パラメーターを向上させることができる化合物は、有効な腫瘍クリアランスに必要な細胞療法の用量を低下させること、末梢血において養子細胞療法の持続性を増大させること、腫瘍部位への遊走を増強させること、および/または高腫瘍用量での負荷に対する増大した生存を含むが、これらに限定されない予想される効果を有する。
【0242】
実施例5-GSK3阻害剤を使用したNK細胞およびその亜集団の選択的拡大
本発明の1つの態様は、養子細胞療法のためNK細胞を培養し、拡大し、および/または調節する方法ならびにシステムを提供することである。幾つかの実施形態において、NK細胞を培養し、拡大し、および/または調節する方法およびシステムは、フィーダー細胞、またはフィーダー細胞馴化培地を使用しない。末梢血単核細胞(PBMC)を、健常成人ドナーから単離した。単離したアフェレーシス産物(0日、事前枯渇;図2A)は、事前枯渇培養をしていない抗CD19およびCD3抗体を使用して枯渇させたTおよびB細胞であった(0日目、枯渇後;図2B)。次に、枯渇後細胞集団を、フィーダーフリーな条件において、組換えヒトIL-15(10ng/mL)および5μM CHIR99021、GSK3阻害剤の存在下で約3~7日間培養した。示す通り、IL-15およびGSK3阻害剤との培養は、培養7日目において約20%(図2B)から約99%(図2C)までのNK細胞(CD56+CD3-)拡大を選択的かつ有意にもたらすように思われる。対照的に、枯渇後集団(約1%;図2B)における残りのT細胞(CD56-CD3+)は拡大されず、これにより、集団において低減したパーセンテージをもたらす(0.25%まで;図2C)。
【0243】
枯渇および一晩培養後(0日目、枯渇後;IL15のみと一晩培養;「初回刺激」としても言及する)、細胞集団は、およそ10~40%(ドナー変異性に起因する)NK細胞を含有する。サイトカインおよびGSK3阻害剤との7日間の培養後のNK細胞の選択的かつ有意な拡大は、約80%から約99%より高い高度に改善されたNK細胞純度をもたらし(図3A)、これは、平均約8倍のNK細胞数の増大を表し(図3B)、約18倍のより大きな増大を有する幾つかの試料も伴った。ドナーのバリエーションおよびプロセスのバリエーションは、変異性に寄与し得ることに注意されたい。
【0244】
一晩初回刺激した細胞集団におけるNK細胞亜集団、および7日目のGSK3iと培養した細胞集団におけるNK細胞亜集団をさらに解析し、比較した。これらの解析は、CD57+NKG2C+およびCD57+NKサブセットの細胞数が、GSK3阻害剤と培養後、平均約5~6倍増大したことを説明する(図3Cおよび3D)。典型的には、CD57+およびCD57+NKG2C+NKサブセットは、ドナー由来細胞において比較的小数で存在する。さらに、CD57+およびCD57+NKG2C+NKサブセットは、サイトカインのみの下で培養したとき(GSK3iなしで7日間の培養;図4A)、十分に維持されず、これは、NK集団における低減したパーセンテージのCD57+NK細胞によりさらに表された(図4B)。比較では、GSK3阻害剤と培養したとき、CD57+およびCD57+NKG2C+NK細胞数は、GSK3iなしで培養したときのその細胞数と比較し、平均7~8倍で有意に増大した(図4A)。さらに、GSK3iとの7日間の培養はまた、GSK3iなしでの7日間の培養と比較し、トータルのNK集団において増大したパーセンテージのCD57+細胞をもたらした(図4B)。本明細書におけるデータは、NK細胞集団の伝統的な培養プロセス(すなわち、GSK3阻害剤を含まないサイトカインを使用する)は、特に、NK細胞が、Tおよび/またはB細胞枯渇をしないドナー由来PBMC集団において含まれるとき、CD57+およびCD57+NKG2C+NKサブセットを集団から減少させるか、または除去さえするであろうことを示した。
【0245】
実施例6-GSK3阻害はNK細胞の成熟をもたらす
CD3/CD19を枯渇させたPBMCを、e450 proliferation dyeで標識し、CD56+CD3-NK細胞をバルクでソーティングするか、またはCD57の発現およびNKG2C発現に基づき4つの集団にソーティングした(図5A)。トータルの分画化していないNK細胞を、CD57+NKG2C-(Q1)、CD57+NKG2C+(Q2)、CD57-NKG2C+(Q3)、CD57-NKG2C-(Q4)ソーティングしたNK細胞と並行して、比1:1のNK細胞:単球の自家CD14+単球と共に、(1)サイトカイン(10ng/ml IL15)および5μM CHIR99021、または(2)ビヒクル対照(例えば、DMSOのみ)を含むサイトカインのみのいずれかで培養した(図5B)。7日間の培養期間後、各ソーティングした集団の培養物を、フローサイトメトリーのため染色し、増殖および細胞表面マーカー発現について解析した。GSK3阻害剤との7日間の培養後、トータルのNK細胞においてCD57発現の有意な増大が存在したことが示された(図5B、ソーティングしていないより下のパネル)。各細胞四分割を解析するとき、増大したCD57発現は、CD57+細胞の増殖の観察した増強により、単に占められないことが明らかであった(図5B、Q1およびQ2)。GSK3阻害剤との培養前にCD57-であった、Q3およびQ4のソーティングした細胞におけるCD57の上方制御された発現は、成熟を経験し、増大したCD57レベルに大きく関与することがさらに見出された(図5B、Q3およびQ4)。それ故、GSK3阻害剤は、CD57-細胞におけるCD57発現の上方制御により示されるNK細胞成熟をもたらし、また、GSK3iで調節した集団における有意に増大したパーセンテージのCD57+およびCD57+NKG2C+NK細胞に関与すると結論付けた。
【0246】
同じCD3/CD19を枯渇させたPBMC試料は、GSK3阻害剤での短期間、例えば、16時間の期間の処理を経験したとき、GSK3阻害剤は、培養物においてCD57+細胞のより高い出現頻度を生じず(図11A)、それは、ビヒクル処理と適合することをさらに観察した。GSK3iと共にまたはなしでの培養物におけるCD57+NK細胞分画の定量を、図11Bにおいてさらに示し、ここで、GSK3iは、NK細胞集団をGSK3iで16時間より長い十分な時間処理したとき、より高い出現頻度のCD57+分画を伴い調節されたNK細胞集団の創出をもたらすことを示した。
【0247】
CD57の高度に安定な発現は、おそらく、NK細胞成熟における後期ステージである。CD57細胞と比較して、CD57NK細胞は、IL-2およびIL-15に応答して潜在的にあまり増殖せず、IL-12およびIL-18に応答してほとんどIFN-γを産生しないと考えられている。それ故、GSK3阻害剤を含む組成物を使用した十分な長さの時間のNK細胞の調節が、CD57+に対してCD57-偏向をもたらし、一方、CD57+NK細胞の数と割合の両方が、調節後改善し、それは、以下でさらに記載する、NK細胞傷害活性およびサイトカイン応答の増強を伴うことを見出したことは驚くべきことである。
【0248】
実施例7-GSK3阻害はNK細胞傷害活性およびサイトカイン応答を増強する
ドナーから直接単離したNK細胞の細胞毒性を増強するGSK3阻害の能力を、試験管内殺傷アッセイを使用して評価した。C3/C19を枯渇させたPBMC集団を、10ng/mL IL-15のみ(初回刺激)、または10ng/mL IL-15および5μM CHIR99021の7日間の併用培養で一晩処理した。殺傷アッセイの標的細胞は、K562細胞、CD20+ラージ細胞、HER2+SKOV3細胞およびHER2+A549細胞を含むものであった。各アッセイに適用したE:T(エフェクター:ターゲット)比は、0.1、0.5、1、5~10の範囲であった。標的細胞を、異なる処理をしたNK細胞と共に4時間インキュベーションした後、特異的殺傷(標的細胞溶解)のそれぞれのパーセンテージを計算した。K562殺傷アッセイにおいて、IL15のみで処理したNK細胞についてのE:T50(標的細胞溶解の50%が存在するときのE:T比)は約10であり、一方、GSK3iおよびIL15で処理したNK細胞についてのE:T50は、約1まで低減し、それは、大いに改善された細胞毒性活性を表している(図6A)。ラージ細胞は、NKにより仲介される細胞毒性の傾向があまりない。図6Bは、ラージ細胞が、NK細胞をIL15でGSK3iの存在下で7日間処理した後、100とほぼ同じ高さのE:T50で、一晩IL-15で処理したNK細胞に対してまだ相当抵抗性である一方、E:T50は、しかしながら、1~2に劇的に低減し、これは、抵抗性の細胞を殺傷しさえする増大するNK細胞の細胞毒性におけるIL15とGSK3阻害剤の組み合わせの有意な効果を示している。
【0249】
同様の様式で、SKOV3細胞を、IL15との一晩の培養、IL15との7日間の培養、ならびにIL15およびGSK3iとの7日間の培養からもたらされたNK細胞で処理した。データは、SKOV3細胞の除去(図6C)、およびカスパーゼ3/7現象(アポトーシス)の最初の最大ピーク(図6D)により示される細胞殺傷に基づき、GSK3iで処理したNK細胞が、SKOV3細胞の殺傷において、殺傷率と殺傷効率の両方に関して最も有効であることを示す。
【0250】
抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)はまた、HER2抗体(ハーセプチン)を使用して、SKOV3の殺傷を仲介したとき、IL15との一晩の培養、およびIL15との7日間の培養からもたらされたNKを使用したADCC殺傷と比較し、IL15およびGSK3iと7日間培養したNK細胞で増強されることを示した(図6E)。さらなる証明のため、ADCCにより仲介される殺傷を試験するために、ハーセプチン抗体により標的化され得る、高発現のHER2抗原を有するA549細胞株(小細胞肺癌株)を、NK細胞殺傷の試験に適用した。GSK3iと7日間培養したNK細胞による、同様に増強されたADCCにより仲介される細胞殺傷を、A549細胞殺傷の殺傷率(図6F)と効率(図6G)の両方において観察した。併せて、データは、IL15+GSK3iにおいて複数日間のNK培養を調節することにより、養子およびCD57+成熟細胞が、維持され、拡大され、これが、NK細胞の細胞毒性効果における有意な増大をもたらすことを示す。
【0251】
NK細胞サイトカイン応答に対するGSK3阻害剤の効果も解析した。ドナーから直接得たPBMCを、CD3/CD9枯渇後、7日間、10ng/ml IL-15および5μM CHIR99021と、またはIL15のみと培養した。7日目に、細胞を洗浄し、刺激のため、IL-12(10ng/ml)およびIL-18(50ng/ml)と、または比1:1のK562細胞と共に別々に培養した。4時間の培養期間後、細胞を、細胞表面抗原について染色し、それぞれ、IFNγおよびTNFαに対する抗体での細胞内染色に先立ち、固定した。図7は、GSK3iおよびIL15で処理したNK細胞におけるIFNγならびにTNFα産生が、初回刺激(枯渇させ、IL15と一晩培養)または7日間IL15のみ処理した試料と比較し、IL12+IL18とK562刺激の下の両方で増強されたことを示す。GSK3iおよびIL15で処理したNK細胞における増強されたサイトカイン産生は、対照NK細胞(IL15と一晩)、およびIL15と7日間培養したNK細胞と比較し、図7A(IFNγ)および7B(TNFα)において示される有意なパーセンテージ増大により示される。さらに、IL-12およびIL-18に対する応答は、典型的には、未成熟NK細胞と関連するので、上で観察した増強されたIFNγおよびTNFα応答は、本明細書において開示する組成物および方法が、ドナーから直接得たCD3/19を枯渇させたPBMCにおいて成熟NK(細胞毒性)と未成熟NK(サイトカイン応答性)の両方と関連する増強された機能につながることを支持する。
【0252】
実施例8-GSK3阻害剤は修飾されたK562フィーダー細胞の存在下でNK増殖およびサブタイプ偏向に効果をもたらす
本明細書において開示するプロセスを使用した、NK細胞のK562フィーダー細胞との共培養、すなわち、0日目にPBMCを枯渇させ、次に、NK細胞をGSK3iの存在下で複数日間培養することにより、フィーダーフリーの培養より増強された機能性を伴った、選択的NK細胞サブセットの拡大における有意な増大を可能にすることを観察した。未修飾および修飾されたK562細胞(例えば、ある種のタンパク質の導入遺伝子により仲介される表面発現を有する)を試験し、事前枯渇培養、続いて複数日間のGSK3i培養をしないで、ドナー試料の即時枯渇による選択的NK増殖およびサブタイプ偏向において同様の結果を示した。
【0253】
CD3/19を枯渇させたPBMCを、7日間、修飾されたK562フィーダー細胞と共に、DMSO(ビヒクル)、0.1μM GSK3i CHIR99021単独(C)、または0.1μM GSK3i CHIR99021、40nM MEKi PD0325901、および1nMラパマイシンの組み合わせ(CPR)の存在下で培養した。図8Aは、小分子(CまたはCPR)の添加が、IL21および41BBLを発現するよう修飾されたK562株と共にのみの培養と比較して、活性化されたNK細胞の増殖を全体的に増大したことを示した。比較では、CD57+NK細胞の数における増大は、GSK3iによって最大であり、一方、CPRは、ビヒクル対照より少ない数のCD57+NK細胞をもたらした(図8B)。しかしながら、NKG2C+NK細胞の数は、NK細胞を修飾されたK562フィーダー細胞と共に培養したとき、CPRを使用した処置で増大した(図8C)。
【0254】
データは、フィーダー細胞の存在、小分子の固有の組み合わせを、ここで開示するプロセスに従い適用するとき、CD57+集団における増大により示される、成熟状態への偏向、またはNKG2C+集団における増大により示される養子状態への偏向を含む、拡大するNK集団の様々な特性を増加させることができることを示す。
【0255】
実施例9-生体内での調節したNK細胞表現型の維持
一晩IL15と共に培養したNK細胞、7日間IL15およびビヒクルと共に培養したNK細胞、ならびに7日間IL15およびGSK3iと共に培養したNK細胞を、それぞれ、NSGマウスに移植した。7日後、マウスの末梢血由来のNK細胞を、表現型について解析した(1群当たりn=3)。マウスはIL-15のみを受け取り、GSK3iを受け取っていなかった。GSK3iと7日間試験管内で培養したNK細胞が、移植後、小分子の存在なしで少なくとも1週間、生体内でそれらの表現型の変化を維持することが示された。CD57は高いままであり、それは、細胞をGSK3iなしで培養したときのケースではない、NK細胞の成熟度を表す(図9Aおよび9B)。さらに、抗体依存性殺傷能力についてのマーカーであるCD16、およびNKG2C+/CD57+が、生体内で維持された(図9B)。
【0256】
さらに、本明細書において提供するプロセスを使用して、GSK3iと培養したNK細胞の生体内腫瘍クリアランス能力も試験した。ルシフェラーゼ発現SKOV-3細胞の腹腔内移植の1日前に、NSGマウスに300ラド照射した。卵巣癌細胞移植の5日後に、マウスを無処置のままにするか、ハーセプチンのみで処置するか、またはハーセプチン、IL-15、ならびにIL-15およびCHIR99021と7日間培養したNK細胞で処置するかのいずれであった。IVIS画像化システムを使用して、移植の21日後(または処置の16日後)に、ルシフェラーゼ発現SKOV-3細胞を画像化した。図10は、GSK3iで処理したNK細胞の添加が、ハーセプチン抗体処置の腫瘍抑制効果を増強することを示し、これは、GSK3iで処理したNK細胞が、抗体依存性細胞傷害活性を生体内で仲介する能力があることを示唆する。これらのデータは、IL-15およびGSK3iとの複数日の培養の効果は、長続きし、小分子、CHIR99021の中止後少なくとも1週間、NK細胞上でインプリントされたままであることを示唆する。
【0257】
次に、本明細書において提供するプロセスを使用した、GSK3iと培養したNK細胞の生体内腫瘍クリアランス能力を、一晩初回刺激をしたCD3/CD19を枯渇させたPBMC、ならびに7日間IL-15およびDMSOと培養した、CD3/CD19を枯渇させたPBMCと比較した。ルシフェラーゼを発現するSKOV-3細胞を、NSGマウスに腹腔内注入した。5日間後、マウスを、ハーセプチン抗体100μg、ならびに一晩初回刺激したCD3/CD19を枯渇させた細胞、7日間IL-15およびDMSO(ビヒクル)と培養したCD3/CD19を枯渇させたPBMC、または7日間IL-15およびGSK3iと培養したCD3/CD19を枯渇させたPBMC(GSK3iで調節したNK細胞)のいずれか由来の2.5×10細胞で処置した。IVIS画像化システムを使用して、ルシフェラーゼ活性を測定することにより、ルシフェラーゼ発現SKOV-3細胞を定量した。図12Aは、IL-15およびGSK3iと複数日間培養したNK細胞が、SKOV-3細胞に対して生体内で高度かつ一貫して有効であることを示した。図12Bは、異なった処理をしたNK細胞による生体内SKOV-3 ADCC殺傷効果の定量的比較を示し、それは、図12A下の観察をさらに確認した。
【0258】
初代AML芽細胞に対する、一晩初回刺激したNK細胞対、複数日間IL-15およびGSK3iと培養したCD3/CD19を枯渇させたPBMC(GSK3iで調節したNK細胞)の細胞毒性も比較した。複数の患者由来の初代AML芽細胞のパーセント特異的殺傷を、フローサイトメトリーベースの細胞毒性アッセイにより測定した。図13は、IL-15およびGSK3iと複数日間培養したNK細胞が、AML芽細胞に対して高度かつ一貫して有効であることを示した。
【0259】
二重標的細胞毒性アッセイにおいて、同種PBMCに対するGSK3iで調節したNK細胞の細胞毒性を、K562腫瘍細胞との比較で評価した。PBMC+K562+一晩初回刺激したNK細胞、またはPBMC+K562+GSK3iで調節したNK細胞におけるパーセント特異的殺傷を測定した。1人の健常PBMC標的ドナー当たり4人(図14A~C)または3人(図14D)のNK細胞ドナーの平均±SEMを表すデータは、悪性細胞に対して区別し、それらの細胞を正常細胞の中で選択的に標的化するGSK3iで調節したNK細胞の能力を示している。
【0260】
実施例10-STINGアゴニストはGSK3iで調節したNK細胞サイトカイン産生および細胞毒性を増強する
STING(インターフェロン遺伝子の刺激物質)複合体は、腫瘍細胞の存在の検出、および身体の自然免疫系による攻撃的な抗腫瘍応答の促進において重要な役割を果たす。STING複合体は、直接的な細胞質DNAセンサー(CDS)と、異なる分子機序を介したタイプIインターフェロンシグナル伝達におけるアダプタータンパク質の両方として働く。STINGは、Tリンパ球、NK細胞、骨髄細胞および単球を含む、末梢リンパ組織中の造血細胞において発現する。細胞質DNAの検出は、STING経路活性化につながる一連の相互作用を開始する。経路の活性化は、インターフェロンβおよびインターフェロンαの産生の引き金を引く。STINGアゴニストは、STING経路を活性化する。STINGアゴニストは、STINGに結合し、活性化するSTINGリガンドを含む。公知のSTINGアゴニストは、環状ジヌクレオチド(CDN)およびキサンテノン、ならびにその類似体および誘導体を含む。CDNは、合成であるか、または原核生物の細胞もしくは哺乳類細胞に由来してもよい。典型的なSTINGアゴニストは、cGAMP、c-ジ-GMP、c-ジ-AMP、c-ジ-IMP、c-ジ-UMP、cAMP-GMP、R,Rジチオ-修飾CDA化合物(ML RR-S2 CDAおよびRR-S2 CDA)、ML RR-S2cGAMP、DMXAA(5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸)を含むが、これらに限定されない。さらなるCDN類似体、誘導体、および細菌CDN産物が、STINGリガンドと同定され続けるだろう。
【0261】
CD3/CD19を枯渇させたPBMCを、7日間、10ng/ml IL15および(1)DMSO(ビヒクル);(2)5μM GSK3i(CHIR99021);(3)1μM STINGアゴニスト(ML RR-S2 CDA);または(4)5μM GSK3i+1μMSTINGアゴニストの存在下で培養した。7日目に、NK細胞機能および表現型を、細胞内サイトカイン染色、細胞毒性アッセイ、およびフローサイトメトリーにより評価した。STINGアゴニストML RR-S2 CDAは、養子NK表現型およびトータルのNK数に対する効果を制限することが示された。図15は、IL-15+GSK3i培養の間若干増大しながら、STINGアゴニストのGSK3i+IL-15 NK細胞培養物への添加が、CD57+分画の継続した維持をもたらすことを示した。しかしながら、図16において示す通り、GSK3iと組み合わせたSTINGアゴニストの添加は、IL-12+IL-18で、または等しい数のK562細胞のいずれかで4時間の刺激について、IFNγ(図16A)およびTNFα(図16B)のNK細胞産生を増強する。K562細胞とのインキュベーション後のCD107a+NK細胞の出現頻度は、IL-15+GSK3iのみと培養した細胞と比較して、7日間IL-15+GSK3i+STINGアゴニストと培養した細胞について増大した(図16C)。増大した細胞表面CD107a発現は、GSK3iと比較し、STINGアゴニストの存在下でNK細胞の増強した脱顆粒および細胞毒性の可能性と関連する。
【0262】
試験管内殺傷アッセイを使用して、GSK3iで複数日調節したNK細胞の細胞毒性を増強するSTINGアゴニストの能力を評価した。CD3/C19を枯渇させたPBMC集団を、10ng/mL IL-15のみで一晩(初回刺激)、10ng/mL IL-15のみとの7日間の培養、10ng/mL IL-15と5μM CHIR99021の組み合わせとの7日間の培養、または10ng/mL IL-15、5μM CHIR99021と1μM STINGアゴニストの組み合わせと7日間の培養で処理した。殺傷アッセイの標的細胞は、K562細胞、Nalm6細胞、およびKG-1細胞を含むものであった。各アッセイに適用したE:T(エフェクター:ターゲット)比は、0.1、0.3、1、3~10の範囲であった。標的細胞を、異なる処理をしたNK細胞と4時間インキュベーションした後、特異的殺傷(標的細胞溶解)のそれぞれのパーセンテージを計算し、図17において示した。全てのアッセイにおいて、STINGアゴニストの添加が、GSK3iで調節したNK細胞の細胞毒性を、異なる程度までだが、増強した。
【0263】
抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)はまた、GSK3iとの7日間の培養由来のNKを使用したADCC殺傷と比較し、ハーセプチンを使用して、SKOV3またはA549の殺傷を仲介したときのSTINGアンタゴニストおよびGSK3iと7日間培養したNK細胞で増強されることが示された。比3:1で、NK細胞を標的に加えた。図18は、複数日の培養におけるGSK3iとSTINGアゴニストの組み合わせが、抗Her2抗体を用いたADCCアッセイにおいて、A549(図18A)およびSKOV-3(図18B)標的細胞に対するNK細胞の細胞毒性を増強することを示した。図18Bはまた、STINGアゴニストとGSK3iの組み合わせが、単独で使用したいずれかのモジュレーターよりNK細胞の細胞毒性の増強においてより有効であることを示す。
【0264】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、抗体に依存した方法で、腫瘍およびウイルスに感染した細胞を認識し、破壊する。NK細胞の制御は、NK細胞表面上の受容体を活性化し、阻害することにより、仲介される。受容体を活性化する1つの重要なファミリーは、NKp30、NKp44およびNKp46を含む、天然の細胞毒性受容体(NCR)である。NCRは、癌細胞上のそれらの特異的なリガンドの認識による腫瘍ターゲティングを開始する。図19において示す通り、GSK3iとSTINGアゴニストの組み合わせは、STINGアゴニストまたはGSK3i単独により調節したNK細胞と比較し、調節したNK細胞上でのNKp30発現を相乗的に増強し、他の機序の中でも、増強したNK細胞機能に関与し得る。
【0265】
当業者は、本明細書において記載される方法、組成物、および製品が、典型的な実施形態の代表であり、本発明の範囲に対する制限として意図されないことを容易に理解するだろう。様々な置換および修飾が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本明細書において開示される本開示に成され得ることは、当業者に容易に明らかであるだろう。
【0266】
本明細書において述べられたすべての特許および刊行物は、本開示が関係する当業者のレベルの指標である。全ての特許および刊行物は、それぞれの個々の刊行物が、参照により組み込まれる具体的かつ個別に示されたかのように、同じ程度まで本明細書において参照により取り込まれる。
【0267】
本明細書において説明として適切に記載される本開示は、本明細書において具体的に開示されていない任意の構成要件または複数の構成要件、限定または複数の限定の不在下で、実施され得る。したがって、例えば、本明細書における各場合において、用語「含むこと」、「本質的にからなる」、および「からなる」は、他の2つの用語のいずれかで置き換えられ得る。利用されきた用語および表現は、説明の用語として使用され、制限の用語として使用されず、示され、記載される特性、またはその一部の任意の均等物を除外するというかかる用語および表現の使用において、制限は存在しないが、様々な修飾が、請求される本開示の範囲内で可能であることが、認められる。したがって、本開示は、好ましい実施形態により具体的に開示されているが、本明細書において開示される概念の場合による特性、修飾、およびバリエーションが、当業者により再分類され得ること、ならびにかかる修飾およびバリエーションが、添付の請求の範囲により定義される本発明の範囲内であるとみなされることは、理解されるべきである。
図1
図2
図3
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図5
図6AB
図6CD
図6E
図6F
図6G
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図12A
図12B
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図18B
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