(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】原稿読取装置及びこれを備えた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20250109BHJP
H04N 1/10 20060101ALI20250109BHJP
G03B 27/62 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H04N1/00 567Q
H04N1/10
H04N1/00 L
G03B27/62
(21)【出願番号】P 2020194577
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】万代 英伸
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-020740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
H04N 1/10
G03B 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿が載置される透明な原稿載置部、及び、前記原稿載置部に載置された原稿を読み取る原稿読取部を有する原稿載置台と、
回動支軸を中心に、前記原稿載置部を覆う閉位置と開放する開位置とに回動可能に前記原稿載置台に支持される原稿カバーとを備えた原稿読取装置であって、
前記原稿カバーは、
前記原稿載置部と対応する位置に配置された所定の厚さを有する弾性部材と、
前記弾性部材の配置位置とは異なる位置に配置され、前記原稿載置台側に突出する突出部とを有し、
前記弾性部材は、前記原稿カバーが前記閉位置のとき、前記突出部が前記原稿載置台に当接することによって、前記弾性部材の前記突出部の配置位置側が前記原稿載置部から浮き上がる方向に移動した状態で前記原稿載置部上に配置され
、
前記突出部は、移動機構によって前記原稿載置台側に移動可能に前記原稿カバーに支持されており、
前記移動機構は、
前記突出部を、前記原稿載置台と当接しない第1位置と、前記原稿載置台と当接する第2位置とに移動させる
ことを特徴とする原稿読取装置。
【請求項2】
前記弾性部材における前記突出部の配置位置側は、前記突出部が前記原稿載置台に当接することによって、前記原稿載置部と前記弾性部材との間に隙間が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の原稿読取装置。
【請求項3】
前記突出部は、前記原稿カバーにおける前記回動支軸側に配置されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の原稿読取装置。
【請求項4】
前記移動機構を制御する制御部と、
操作者による前記原稿読取部の原稿読取動作の指示を受け付ける操作部と、を有し、
前記制御部は、
前記操作部が受け付けた原稿読取動作の内容に応じて前記突出部を移動させるように前記移動機構を制御する、
ことを特徴とする請求項
1~3に記載の原稿読取装置。
【請求項5】
前記操作部は、操作者が原稿の種別を選択する原稿種別選択部を有し、
前記制御部は、
前記原稿種別選択部によって、予め定めた特定の種別の原稿が選択された場合に、前記突出部を前記第2位置に移動させるように前記移動機構を制御する
ことを特徴とする請求項
4に記載の原稿読取装置。
【請求項6】
前記予め定めた特定の種別の原稿は、写真原稿又は光沢性を有する原稿である
ことを特徴とする請求項
5に記載の原稿読取装置。
【請求項7】
前記操作部は、前記原稿読取部の原稿読取動作によって得られた読取画像を表示する確認画面と、該確認画面に表示された読取画像を調整する調整操作ボタンとを有し、
前記制御部は、
前記確認画面での読取画像の表示時に前記調整操作ボタンの操作に応じて、前記弾性部材と前記原稿載置部との間の隙間を調整するように、前記移動機構を制御する
ことを特徴とする請求項
4~
6の何れか1項に記載の原稿読取装置。
【請求項8】
前記請求項1~
7の何れか1項に記載の原稿読取装置を備えた
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機や複合機等の画像形成装置に備えられる原稿読取装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イメージスキャナ等の原稿読取装置においては、一般に、原稿載置台と、この原稿載置台の上方に配置される原稿カバーとが備えられる。原稿載置台には、原稿が載置される透明ガラス板(原稿載置部)と、この透明ガラス板に載置された原稿を読み取る原稿読取部とが設けられている。一方、原稿カバーは、例えばその後端部が原稿載置台に回動自在に支持され、その後端部を回動支軸として回動させて、透明ガラス板を覆う閉位置と、開放する開位置との2位置に位置付け可能に設けられている。
【0003】
このような原稿読取装置では、原稿カバーには、前記透明ガラス板に対応した大きさで所定の厚さを有する弾性部材が備えられていて、原稿が透明ガラス板に載置された状態で原稿カバーを前記閉位置に位置付けて、前記弾性部材を透明ガラス板に均一に密着させることにより、原稿読取部が原稿から良好な画質の画像を読み取りできるように構成している。
【0004】
しかしながら、前記従来の原稿読取装置では、原稿のうちでも、特に写真原稿や光沢性を有する原稿の画像を読み取った際には、その読み取った画像データにシミのようなムラ、いわゆる原稿反射光による干渉縞(ニュートンリング)が発生する場合があった。
【0005】
そこで、従来、例えば特許文献1では、原稿の読み取り部分に、すりガラス状に加工したコンタクトガラスであるすりガラス部を設けると共に、このすりガラス部に原稿を押し当てる原稿付圧手段を設ける構成を採用している。この構成では、原稿読取時には、原稿読取部の照射光がすりガラス部で散乱して、原稿反射光による干渉縞の発生を抑制しながら、原稿を原稿付圧手段によってすりガラス部(コンタクトガラス)に確実に押し当てて、原稿の画像を正確に読み取るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1記載の技術は、原稿読取部の照射光をすりガラス部によって散乱させて、原稿反射光による干渉縞の発生を抑制するものである。
【0008】
本願発明者等は、写真原稿や光沢性を有する原稿の場合には、画像の読取時に、原稿カバーの弾性部材が原稿の背面を均一圧で透明ガラス板側に押圧するため、原稿の表面の全面が透明ガラス板に密着して、読取画像に干渉縞が発生し易くなることを知悉した。
【0009】
この観点から、本発明は、原稿読取装置において、前記特許文献1の原稿読取部の照射光を散乱させる構成とは異なり、写真原稿や光沢性を有する原稿の場合には、その写真原稿等の表面の全面を弾性部材で透明ガラス板(画像載置部)に密着させない構成を採用することにより、干渉縞の発生を有効に抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
具体的に、本発明に係る原稿読取装置は、原稿が載置される透明な原稿載置部、及び、前記原稿載置部に載置された原稿を読み取る原稿読取部を有する原稿載置台と、回動支軸を中心に、前記原稿載置部を覆う閉位置と開放する開位置とに回動可能に前記原稿載置台に支持される原稿カバーとを備えた原稿読取装置であって、前記原稿カバーは、前記原稿載置部と対応する位置に配置された所定の厚さを有する弾性部材と、前記弾性部材の配置位置とは異なる位置に配置され、前記原稿載置台側に突出する突出部とを有し、前記弾性部材は、前記原稿カバーが前記閉位置のとき、前記突出部が前記原稿載置台に当接することによって、前記弾性部材の前記突出部の配置位置側が前記原稿載置部から浮き上がる方向に移動した状態で前記原稿載置部上に配置され、前記突出部は、移動機構によって前記原稿載置台側に移動可能に前記原稿カバーに支持されており、前記移動機構は、前記突出部を、前記原稿載置台と当接しない第1位置と、前記原稿載置台と当接する第2位置とに移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原稿カバーに突出部が配置され、この突出部が原稿載置台側に突出することによって、原稿カバーが前記閉位置のときには、弾性部材は、その前記突出部の配置位置側が原稿載置部から浮き上がる方向に移動した状態で原稿載置部上に配置されており、これにより、写真原稿等の原稿読取時には、その写真原稿等の表面の全面が原稿載置部に密着することが制限されるので、読取画像に干渉縞が発生することが有効に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1の原稿読取装置を備えた画像形成装置と情報端末とから成る画像処理装置を示す斜視図である。
【
図2】原稿読取装置の原稿カバーを開位置に位置付けた状態の要部を示す分解斜視図である。
【
図3】原稿読取装置の原稿載置台から原稿カバーを上方に取り外した状態の要部を示す分解斜視図である。
【
図4】同原稿載置台から原稿カバーを取り外した状態を示す上面図である。
【
図5】原稿読取装置の内部構成を示す側断面図である。
【
図6】原稿読取装置の内部の要部構成を示し、突出部が離間位置にある状態を示す要部拡大断面図である。
【
図7】原稿読取装置の内部の要部構成を示し、突出部が当接位置にある状態を示す要部拡大断面図である。
【
図8】弾性部材とコンタクトガラスとの間に形成される隙間の様子を示す概略説明図である。
【
図9】画像処理装置の制御系の要部を示すブロック図である。
【
図10】端末装置に備える第2操作部の表示画面の表示内容を示す図である。
【
図11】同表示画面の「いろいろなコピー」操作ボタンをタッチ操作した際に表示画面に表示される操作メニューを示す図である。
【
図12】同表示画面の「写真をコピー」操作ボタンをタッチ操作した際に表示画面に表示される原稿サイズの選択画面を示す図である。
【
図13】同表示画面を確認画面として表示された読取画像の一例及び画像調整ボタンを示す図である。
【
図14】実施形態2の原稿読取装置の原稿カバーに突出部を取り付ける様子を示す要部の斜視図である。
【
図15】同原稿カバーの要部の内部構成を示す側断面図である。
【
図16】同原稿カバーに備える突出部の形状を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る原稿読取装置を備えた画像処理装置を示す斜視図である。
【0015】
同図において、画像処理装置1は、複写機能、ファクシミリ機能、プリンタ機能等を有する複合機(MFP:Multifunction Peripheral)であって、2つの筐体を備えており、横に並べて配置された画像形成装置2と情報端末3とで構成されている。画像形成装置2は、原稿の画像を読み取る原稿読取装置5と、原稿読取装置5により読み取られた原稿の画像又は外部から受信した画像をカラー又は単色で記録用紙に記録形成する画像形成装置本体6とを備えている。原稿読取装置5は、画像形成装置本体6の上面に装着されている。画像形成装置本体6は、原稿読取装置5で読み取られた原稿の画像を記録用紙や光沢紙に印刷する印刷部7と、複数の給紙カセット8等を備えており、印刷部7で印刷された記録用紙は、筐体の中ほどに設けられた排紙トレイ9に排出される。また、原稿読取装置5には、原稿載置台13と、その上方に位置する原稿カバー15とが備えられている。
【0016】
一方、情報端末3は、記録媒体から読み取った画像を記録用紙や光沢紙に印刷し、筐体の下部に設けられた用紙排出口3aに記録用紙や光沢紙を排出する。画像形成装置2と情報端末3とは、互いに接続されてデータ通信を行っており、画像形成装置2と情報端末3とが連係動作する。この連係動作は、例えば、原稿読取装置5により読み取られた写真原稿の原稿データを情報端末3に送信し、その原稿データを情報端末3で光沢紙や印画紙等を用いて印刷し、写真として用紙排出口3aに排出する動作である。
【0017】
原稿読取装置5において、画像載置台13部には、その前端側に、例えばタッチパネルより成る第1操作部11が配置され、情報端末3の上部にも、その前端側に同様の第2操作部18が配置されている。この2つの操作部11、18は、ユーザ等(操作者)の操作入力を受け付ける操作入力部であり、また画像を表示する表示画面11a、18aを有している。
【0018】
<原稿読取装置>
図2~
図5は原稿読取装置5を示し、
図2は原稿カバー15を開位置に位置付けた状態の要部を示す斜視図、
図3は原稿載置台13から原稿カバー15を上方に取り外した状態の要部を示す分解斜視図、
図4は同原稿カバー15を取り外した状態の原稿載置台13を示す上面図、
図5は原稿読取装置5の内部構成を示す側断面図であり、
図4のV-V線断面図である。以下、これらの図において、各部材等の説明については、画像処理装置1の前方に立った操作者が画像処理装置1側を見て、紙面後方側を後側、紙面前方側を前側、紙面左方側を左側、紙面右方側を右側と称する。
【0019】
原稿読取装置5は、光学系タイプの原稿読取装置とされており、原稿固定方式により原稿G(例えば、一般的な通常用紙に印刷された通常原稿や、写真原稿又は光沢性を有する原稿)を固定して、この原稿Gの画像を読み取るように構成されている。
【0020】
原稿読取装置5は、読取装置本体としての原稿載置台13と、該原稿載置台13の上方に配置される原稿カバー15とを備えている。原稿載置台13は、各種サイズの原稿Gが載置される原稿載置部20と、該原稿載置部20に載置された原稿を読み取る原稿読取部22(
図5参照)とを有している。原稿載置部20は、ガラス板等の透明薄平板であるコンタクトガラスにより構成されている。以下、この原稿載置部20をコンタクトガラス20と称する。コンタクトガラス20は、平面視で四角形状に形成されて、原稿載置台13の上端部に配置されている。このコンタクトガラス20の上面には、図中左側部及び後側部において、各々、長方形状の樹脂カバー24、25が配置されている。コンタクトガラス20の上面には、A3、B4、A4、B5サイズや、写真で用いられるL判サイズ、2L判サイズの原稿G(
図2及び
図4に示す原稿G)を載置可能である。その際には、コンタクトガラス20の上面において、前記樹脂カバー24、25が位置しない領域(以下、透明領域という)の左後角部、すなわち操作者から見て左上角部を配置基準位置Pとして、この配置基準位置Pに原稿Gの左上角部を合わせて、原稿Gの表面を下方に向けて載置する設定である。
【0021】
原稿読取部22は、原稿載置台13の内部に配置され、詳示しないが、例えば、原稿Gへ向けて光を照射する光源ユニットや、これを副走査方向(
図5中で紙面垂直方向)に移動させる光学系駆動部、更には集光レンズや、この集光レンズからの光(原稿画像光)を繰り返し主走査方向(
図5中で左右方向)に走査して、原稿画像を読み取る光電変換素子等を備えている。
【0022】
一方、原稿カバー15は、コンタクトガラス20上面に載置された原稿Gの背面を上方から押さえるものであり、平面視で四角形状に形成されている。該原稿カバー15には、後端部において、2個の開閉ヒンジ28が取り付けられている。これらの開閉ヒンジ28は、原稿カバー15の左端部の位置、及び、その右端部よりも若干左右方向の中央部側の位置に設けられている。各開閉ヒンジ28の下端には、四角柱形状の本体挿入部29が接続されている。一方、原稿載置台13には、コンタクトガラス20よりも後方の位置に、前記2つの本体挿入部29の相互間隔と同一間隔を隔てて配置された四角柱形状の凹部よりなる取付部31が形成されている。前記各本体挿入部29は、対応する取付部31に上方から抜き差し可能に挿入されていて、原稿カバー15はこれらの本体挿入部29によって原稿載置台13に支持される構成となっている。
【0023】
従って、この原稿カバー15は、各開閉ヒンジ28のヒンジ軸28aを回動支軸fとし、この回動支軸fを中心としてコンタクトガラス20側に回動して、コンタクトガラス20を覆う閉位置と、この閉位置から上方に回動して、コンタクトガラス20を開放する開位置とに位置付けられる。また、原稿カバー15は、厚みのある本等の原稿Gがコンタクトガラス20に載置された状態で閉位置に位置付けられた際には、本体挿入部29の上端部が原稿載置台13の取付部31から若干上方に抜け出て、原稿カバー15を水平状態として、本等の原稿Gを良好に覆うことが可能である。
【0024】
前記原稿カバー15には、その下面に弾性部材35が配置されている。弾性部材35は、前記コンタクトガラス20の透明領域と同一広さの四角形状に形成され、且つコンタクトガラス20の透明領域の上方において該コンタクトガラス20と対応する位置に配置されている。すなわち、弾性部材35は、原稿カバー15が閉位置に位置付けられた際には、その4つの角部の位置がコンタクトガラス20の透明領域の対応する角部と一致して、コンタクトガラス20の上面に精度良く対峙する。弾性部材35は、所定の厚さを有する弾性体により形成され、その下面には白色の薄シート(図示せず)が貼り付けられている。原稿カバー15の下面には、その後端部に開閉ヒンジ28の取付用領域35aが存在するため、弾性部材35は、この取付用領域35aよりも前方側に位置している。弾性部材35は、原稿カバー15が前記閉位置に位置付けられた状態では、その弾性力によってコンタクトガラス20上面の原稿Gを一様に下方に押し付ける機能を有する。
【0025】
前記弾性部材35は、
図5に示したように、その背面(上面)側が原稿カバー15の本体枠16に固定されている。この本体枠16は、前後方向の略中央部位で2分割された前側枠体16aと後側枠体16bとを備えている。この前側枠体16aと後側枠体16bとは、中折れ用ヒンジ17にて連結されていて、原稿カバー15の開位置時には中折れ用ヒンジ17のヒンジ軸17aを中心に、前側枠体16aとその下方に位置する弾性部材35の前部側部分とが
図5中で反時計方向に回動して、原稿カバー15を中折れ状態にすることが可能である。
【0026】
そして、前記原稿カバー15の下面には、原稿載置台13側に突出する2つの突出部40L、40Rが配置されている。これらの突出部40L、40Rは、弾性部材35とは異なる位置、具体的には弾性部材35の後方に配置、すなわち原稿カバー15の回動支軸f(開閉ヒンジ28のヒンジ軸28a)側に配置されている。原稿カバー15が前記閉位置に位置付けられた状態では、これらの突出部40L、40Rは、原稿載置台13上において、
図4に破線二重丸印で示した位置に位置付けられる。具体的に説明すると、左側の突出部40Lは、同図において、前後方向に延びる樹脂カバー25の後端部の位置、すなわち、コンタクトガラス20上の原稿Gの配置基準位置Pの近傍に配置される。一方、右側の突出部40Rは、左右方向に延びる樹脂カバー24の左右方向の略中央部位の位置に配置される。この右側の突出部40Rの配置位置は、例えば、同図に示したように、原稿Gの配置基準位置Pからの距離が、2L判サイズ(127×178mm)の写真原稿Gを横配置(長辺を左右方向にした配置)で、その長辺(178mm)を若干越える長さ(例えばA3サイズ(297×420mm)の長辺の1/2値の210mm)の位置である。
【0027】
前記2つの突出部40L、40R周りの構成は、同一構成である。以下、右側の突出部40R周りの構成について説明する。
図6は、
図5に示した原稿読取装置5の側断面図において右側の突出部40R周りを拡大した図である。
図5及び
図6において、突出部40Rは、円板状の水平板42と、該水平板42の中心に位置して上下方向に延びる軸部43とから成っており、軸部43は、原稿カバー15の本体枠16を下方(原稿載置台13側)に凸状に切り欠いた切欠部19に臨み、水平板42は該切欠部19の下方に位置して、原稿載置台13の樹脂カバー24の上面に対峙している。2つの突出部40L、40Rは、各々、移動機構47によってコンタクトガラス20側に移動可能である。
【0028】
移動機構47は、
図6に拡大して詳示するように、偏心カム48と、バネ49と、抜け止め板50とを備え、抜け止め板50は突出部40Rの軸部43の上端部に固定されている。また、バネ49は抜け止め板50と切欠部19周辺との間に縮装されると共に、その内部には水平板42の軸部43が挿入されていて、その付勢力によって突出部40Rを上方に移動させて、水平板42を切欠部19の周辺に位置付けている。偏心カム48は、原稿カバー15の本体枠16の後側枠体16bの上方に配置され、抜け止め板50を介して水平板42の軸部43上面に当接している。そして、
図7に示すように、偏心カム48がそのカム軸48aを中心に回動することにより、突出部40Rを下方(原稿載置台13側)に移動させる機能を有している。具体的に、移動機構47は、
図6に示すように、偏心カム48がその短径部分を水平板42の軸部43上面に当接させた場合には、突出部40Rはバネ49の付勢力によって上方に位置付けられて、水平板42が原稿載置台13の樹脂カバー24から離間し、原稿載置台13と当接しない離間位置(第1位置)に位置付けられる。
【0029】
一方、移動機構47において、
図7に示したように、偏心カム48がその長径部分を水平板42の軸部43上面に当接させた場合には、突出部40Rはバネ49の付勢力に抗して下方に移動して、水平板42が原稿載置台13の樹脂カバー24に当接して、突出部40Rが原稿載置台13に当接する当接位置(第2位置)に位置付けられる。この当接位置では、原稿カバー15の弾性部材35は、突出部40Rの配置位置近傍の部位が、コンタクトガラス20から上方に浮き上がることになる。この弾性部材35が浮き上がる動作の詳細は次の通りである。すなわち、突出部40Rの水平板42が原稿載置台13の樹脂カバー24と当接すると、原稿カバー15の本体枠16の後側枠体16bが若干上方に浮き上がる。この時、本体枠16の後側枠体16bが中折れ用ヒンジ17のヒンジ軸17aを中心に
図7中において矢印dで示す時計方向に回動し、上昇する。そのため、原稿カバー15の開閉ヒンジ28の本体挿入部29が矢印eで示すように上方向に上昇し、原稿載置台13の取付部31から抜け出る。その結果、原稿カバー15の弾性部材35は、突出部40Rの配置位置近傍がコンタクトガラス20から上方に浮き上がり、原稿カバー15の弾性部材35とコンタクトガラス20との間が拡大して、隙間Δtが形成された状態でコンタクトガラス20上に配置されることになる。
【0030】
前記隙間Δtは、例えば所定の長さΔt1(例えば、最大値で1mm以下、望ましくは0.2~0.3mm程度)に設定される。この長さΔt1は、
図8に示したように、原稿Gの前後方向の後端位置、すなわち原稿Gの配置基準位置Pの位置にて前記最大値を有し、次第に前方に向かって狭くなり、例えば2L判サイズ(127×178mm)の写真原稿Gを横配置した場合の短辺(127mm)を若干越える長さの位置で長さΔt1が写真原稿Gの厚さ以下になる程度が好ましい。
【0031】
尚、原稿カバー15の閉位置時には、前記突出部40Rが当接位置に位置付けられることによって、突出部40Rの配置位置近傍において弾性部材35とコンタクトガラス20との間に隙間Δtを形成したが、この隙間Δtは必ずしも形成する必要はなく、弾性部材35とコンタクトガラス20との間が微視的に拡大してコンタクトガラス20から浮き上がる方向に移動した状態、例えば、弾性部材35がその弾性力でコンタクトガラス20と密着していず、弾性部材35がコンタクトガラス20の上面に単に接している状態(換言すれば、弾性力がコンタクトガラス20に作用していない状態)であってもよい。
【0032】
前記隙間Δtの長さΔt1は、後述する制御部60によって偏心カム48を微細に回動させることにより、細かく調整することが可能である。以下、この構成について説明する。
【0033】
図9は、画像処理装置1の制御系の要部の概略を示すブロック図である。同図において、画像処理装置1の制御系には、制御部60が備えられる。該制御部60には、画像処理装置1の操作者による原稿読取部22の原稿読取動作の指示を受け付ける第1操作部11及び第2操作部18からの操作信号が入力されている。制御部60は、これらの操作部11、18からの操作信号に基づいて原稿読取部22の原稿読取動作を制御すると共に、前記原稿カバー15に設けた移動機構47の偏心カム48の回動動作を行うモータ63を制御する。以下、具体的に説明する。
【0034】
図10は、前記第2操作部18の表示画面18aの具体例を示す。同図において、第2操作部18は、表示画面18aにおいて、「片面コピー」、「スマホでプリント・スキャン」、「いろいろなコピー」、「ネットワークプリント」、「写真・文書プリント」、「ファクス」、「スキャン」、及び「行政サービス」の各種操作ボタン65を有している。例えば、「いろいろなコピー」の操作ボタン65をタッチ操作した場合には、表示画面18aが切り換わって、
図11に示すように、操作者が原稿の種別を選択する原稿種別選択画面(原稿種別選択部)67が表示される。この原稿種別選択画面67では、各種のコピーメニューとして、「片面にコピー」、「両面にコピー」、「拡大/縮小する」、「はがきにコピー」、「写真をコピー」の各種操作ボタン66が表示される。「写真をコピー」の操作ボタン66は、写真原稿Gの他、光沢紙に各種印刷が施された光沢性を有する原稿(以下、光沢性原稿という)Gをコピーする際にも操作される。以下、写真原稿Gと言うときは、光沢性原稿Gを含むものとする。
【0035】
そして、「写真をコピー」の操作ボタン66がタッチ操作された場合には、更に表示画面18aが切り換わって、
図12に示すように、写真原稿Gのサイズの指定ボタン68がL判指定と、2L判指定の2種類表示される。制御部60は、そのL判又は2L判サイズを指定した操作信号を受けて、突出部40L、40Rを前記当接位置に位置付けるように、偏心カム48回動用のモータ63を駆動すると共に、このモータ63の駆動後において、L判又は2L判の写真原稿Gを読み取るように原稿読取部22を制御する。すなわち、制御部60は、予め定めた特定の種別の原稿として、L判又は2L判の写真原稿G(光沢性原稿Gを含む)が選択、指示された場合に、突出部40L、40Rを当接位置に位置付けるように、モータ63により移動機構47の偏心カム48の回動動作を制御する。
【0036】
一方、
図11の原稿種別選択画面67において、「写真をコピー」以外、すなわち「片面にコピー」、「両面にコピー」、「拡大/縮小する」、「はがきにコピー」の各種操作ボタン66がタッチ操作された場合には、通常用紙やはがきを原稿Gとするコピー操作であるので、制御部60は、突出部40L、40Rを離間位置に位置付けるように、偏心カム48回動用のモータ63を駆動する。
【0037】
このように、制御部60は、第2操作部18が受け付けた原稿読取動作の内容に応じて、L判又は2L判の写真原稿Gの読取動作時には、突出部40L、40Rを当接位置に移動させるように移動機構47の偏心カム48の回動動作を制御する一方、それらの写真原稿G以外の通常用紙等に印刷された文書等の原稿Gの原稿読取時には、突出部40L、40Rを離間位置に移動させるように移動機構47の偏心カム48の回動動作を制御する。
【0038】
また、制御部60は、原稿読取部22によりL判又は2L判サイズの写真原稿Gを読み取った後、
図13に示すように、第2操作部18の表示画面18aを確認画面69として、原稿読取動作によって得られた読取画像を確認画面69に表示する。同図では、確認画面69に、写真原稿Gの読取画像(山の画像)が表示され、この読取画像に干渉縞mが発生している一例である。この確認画面69には、画像調整用の操作ボタン(調整操作ボタン)70も表示される。画像処理装置1の操作者は、この確認画面69の画像(確認画像)を確認し、この確認画像に干渉縞mの発生がある場合には、干渉縞mを無くすように画像調整用(きれい度調整用)の操作ボタン70をタッチ操作することが可能である。制御部60は、この画像調整用の操作ボタン70の操作信号を受け、その操作信号に応じて偏心カム48回動用のモータ63を動作させて、突出部40L、40Rの突出量を調整することにより、弾性部材35とコンタクトガラス20との間の隙間Δtの長さΔt1を調整する。
【0039】
従って、本実施形態では、操作者がコンタクトガラス20の上面に写真原稿Gの左上角部を配置基準位置Pに合わせて載置して、「写真をコピー」の操作ボタン66をタッチ操作した場合には、制御部60がモータ63を制御し、移動機構47の偏心カム48を回動させて、突出部40L、40Rをコンタクトガラス20側に突出させて当接位置に移動させる。これにより、原稿カバー15の弾性部材35は、突出部40L、40Rの配置位置の近傍、すなわち写真原稿Gの配置領域が上方に浮き上がり、弾性部材35とコンタクトガラス20との間が拡大して、隙間Δtが形成された状態でコンタクトガラス20上に配置される。この隙間Δtの長さΔt1は、コンタクトガラス20の後端位置(配置基準位置Pの位置側)で大きく、前方に向かって次第に減少するので、写真原稿Gはその背面全体が弾性部材35の弾性力で均一に押圧されない状態となっていて、写真原稿Gの表面は、その全面がコンタクトガラス20とは均一に密着しない状態となる。その結果、原稿読取部22による写真原稿Gの原稿読取動作時には、写真原稿Gの表面とコンタクトガラス20とが均一圧で全面密着することに起因する干渉縞mの発生が有効に抑制されることになる。
【0040】
ここで、突出部40L、40Rは、原稿カバー15の前後方向のうち、後端部側、すなわち原稿カバー15の回動支点(開閉ヒンジ28のヒンジ軸28a)側に配置されている。この回動支軸f側は、弾性部材35の後方側に開閉ヒンジ28の取付用領域35aが存在するため、
図6に示したように、弾性部材35の後端位置Eから原稿カバー15の後端位置Cまでの距離kが長い。一方、弾性部材35の前端位置には、前記開閉ヒンジ28の取付用領域35a等がないため、
図5に示したように弾性部材35の前端位置と原稿カバー15の前端位置との距離rが前記距離kよりも短い(r<k)。従って、原稿カバー15の閉位置時に、突出部40L、40Rの位置近傍で弾性部材35とコンタクトガラス20との間に隙間Δtが存在していても、外部光はその突出部40L、40Rの位置まで届き難いので、外部光が隙間Δtを経てコンタクトガラス20に入り込むことを十分に抑制でき、写真原稿Gの読取画像にノイズが入ることをより確実に防止することが可能である。
【0041】
しかも、コンタクトガラス20に載置される原稿Gが写真原稿G以外の原稿G、例えば干渉縞mの生じ難い通常用紙等に印刷された原稿G(通常原稿G)等の場合には、制御部60は、移動機構47により突出部40L、40Rを離間位置に位置付けていて、弾性部材35とコンタクトガラス20との間の隙間Δtは無くなっている。従って、コンタクトガラス20上面の通常原稿Gは、その背面が弾性部材35の弾性力でもってコンタクトガラス20側に押圧されて、通常原稿Gの表面は、その全面がコンタクトガラス20に均一に押圧される。従って、たとえこの通常原稿Gに折り曲げ跡がある場合であっても、通常原稿Gの浮きの発生が抑制されて、通常原稿Gに印刷された文字の滲みや掠れが少なく、折り曲げ跡も筋として読み取られることが十分に抑制される。
【0042】
また、写真原稿Gが原稿読取部22により読み取られた際には、その読取画像は確認画面69に表示されるので、操作者は、その読取画像に干渉縞mが発生している場合には、画像のきれい度調整用の操作ボタン70を操作できる。このとき、制御部60は、この操作ボタン70の操作に応じて移動機構47のモータ63を制御することにより、突出部40L、40Rの突出量を調整して、弾性部材35とコンタクトガラス20との間の隙間Δtの長さΔt1を微調整する。従って、写真原稿Gの原稿読取時に、当初は読取画像に干渉縞mが発生していても、最終的には干渉縞mの発生のない良好な読取画像を得ることが可能である。
【0043】
(実施形態2)
図14は本発明の実施形態2の原稿読取装置5の原稿カバー15の要部を示す斜視図、
図15は同原稿読取装置5の要部の側断面図である。
【0044】
前記実施形態1では、移動機構47を設けて、突出部40L、40Rを当接位置と離間位置とに位置変更可能な構成としたが、本実施形態では突出部40L、40Rのみを配置して、移動機構47は設けない構成としている。
【0045】
具体的に、
図14及び
図15において、原稿カバー15の下面には、実施形態1と同様に回動支軸fの近傍に2つの突出部40L、40R(左側の突出部40Lのみを図示している)が配置されている。この突出部40L、40Rは、原稿カバー15の本体枠16の切欠部19に挿入される。この突出部40L、40Rは、
図16にも示すように、水平板42と軸部43とを有し、軸部43には、その周辺を切り欠いて形成した係止部44が形成されていて、この係止部44が本体枠16の切欠部19の周辺に係止して、突出部40L、40Rが本体枠16に取り付けられている。
【0046】
前記突出部40L、40Rは、水平板42が原稿カバー15の本体枠16からコンタクトガラス20側に突出していて、原稿カバー15の閉位置時には、水平板42が原稿載置台13の樹脂カバー24上面に当接して、弾性部材35とコンタクトガラス20との間に、突出部40L、40Rの位置近傍において隙間Δtが形成される。この隙間Δtの長さΔt2は、前記実施形態1での隙間Δtの長さΔt1よりも小値(Δt2<Δt1)に設定される。すなわち、本実施形態では、前記実施形態1での移動機構47を備えない関係上、隙間Δtの長さΔt2は、写真原稿Gの原稿読取時には干渉縞mの発生がなく、しかも通常原稿Gの原稿読取時には印刷文字の滲みや掠れがない程度の長さに設定される。
【0047】
従って、本実施形態では、突出部40L、40Rのみを設けることによって、通常原稿Gの画像読み取りを良好に維持しつつ、写真原稿Gの原稿読取時には、干渉縞mの発生が抑制されたきれいな読取画像を得ることができる。しかも、実施形態1のように移動機構47を備えないので、構成を簡易にできる。
【0048】
本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他の種々な形で実施することができる。そのため、上述の実施形態は例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0049】
例えば、実施形態1及び2では、2つの突出部40L、40Rを設けたが、その個数は2個に限定されない。また、突出部40L、40Rによって弾性部材35とコンタクトガラス20との間に形成する隙間Δtの範囲は、2L判の写真原稿Gの全面よりも多少広い範囲を例示したが、この範囲に限定されるものではない。
【0050】
また、2つの突出部40L、40Rを原稿カバー15の回動支軸f側に配置したが、原稿カバー15の前後方向に複数個(例えば2個)配置してもよい。例えば、原稿カバー15の閉位置時にコンタクトガラス20の左端部、すなわち前後方向に延びる樹脂カバー25上に位置付けられるように突出部40L、40Rを原稿カバー15に配置してもよい。
【0051】
更に、実施形態1の移動機構47は、偏心カム48を備えた構成を例示したが、その他、直線運動をする山形状の直動カムを備えて突出部40L、40Rを移動させる機構等を採用したり、電磁ソレノイドを用いて突出部40L、40Rを電磁力で移動させる構成を採用してもよい。また、偏心カム48を手動で移動させる機構を採用してもよい。この手動式の移動機構を採用した場合には、原稿カバー15の位置変更があったことを例えば第2操作部18の表示画面18aに表示したり、報知してもよい。加えて、原稿カバー15は中折れ用ヒンジ17を備えた構成を採用したが、中折れ機能を有しない通常の平板状の原稿カバーであってもよい。
【0052】
また、実施形態1では、第2操作部18の表示画面18aを用いて原稿Gの画像読取動作の指示や、読取画像の表示を行ったが、これらの指示や表示は第1操作部11の表示画面11aを用いて行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、写真原稿又は光沢性を有する原稿であっても、その原稿読取時には干渉縞の発生が十分に抑制された読取画像を得ることができるので、原稿読取装置に適用して、有用である。
【符号の説明】
【0054】
1 画像処理装置
2 画像形成装置
5 原稿読取装置
13 原稿載置台
15 原稿カバー
18 第2操作部
18a 表示画面
G 原稿
20 コンタクトガラス(原稿載置部)
22 原稿読取部
28 開閉ヒンジ
f 回動支軸
35 弾性部材
40L、40R 突出部
47 移動機構
48 偏心カム
Δt1 隙間の長さ
60 制御部
63 モータ
67 原稿種別選択画面(原稿種別選択部)
69 確認画面
70 画像調整用の操作ボタン(調整操作ボタン)
m 干渉縞