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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】医療用保持装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20250109BHJP
   B25J 3/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A61B34/30
B25J3/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020507407
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(86)【国際出願番号】 JP2019003748
(87)【国際公開番号】W WO2019181239
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-01-27
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2018054142
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313009556
【氏名又は名称】ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 祥行
【合議体】
【審判長】平瀬 知明
【審判官】小河 了一
【審判官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/169649(WO,A1)
【文献】特開2017-177290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30, B25J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリンクが関節部によって互いに連結されて構成され、回転軸における回転動作により少なくとも6の自由度を有すると共に、カウンターウエイトによりバランスアームとして機能し、観察対象を撮像する撮像デバイスを支持するアームと、
前記アームの動作を制御するアーム制御部と、
を備え、
前記アームの少なくとも3つの前記関節部には、前記回転軸の回転角度を検出する角度センサと、前記回転動作を補助する補助力を前記関節部に与えるアクチュエータとが設けられ、
前記アームにおいて前記角度センサと前記アクチュエータとが設けられる前記関節部は、前記アームにおいて前記撮像デバイスが支持される側から数えて1番目の回転軸、2番目の回転軸、および3番目の回転軸に対応する、3つの前記関節部であり、
前記アーム制御部は、前記角度センサそれぞれの検出結果に基づいて、前記アームにより支持されている前記撮像デバイスを操作者が移動させるときに要する操作力量が所定の範囲に含まれるように、前記アクチュエータそれぞれの前記補助力を制御し、さらに、前記操作力量が、制御が行われない場合に要する操作力量よりも大きな値に設定されるように、前記アクチュエータそれぞれの前記補助力を制御すると共に、前記撮像デバイスの視野が所定の範囲から外れることに連動して動作時の前記操作力量が増加するように、前記アクチュエータそれぞれの前記補助力を制御する、医療用保持装置。
【請求項2】
複数のリンクが関節部によって互いに連結されて構成され、回転軸における回転動作により少なくとも6の自由度を有すると共に、カウンターウエイトによりバランスアームとして機能し、観察対象を撮像する撮像デバイスを支持するアームと、
前記アームの動作を制御するアーム制御部と、
を備え、
前記アームの少なくとも3つの前記関節部には、前記回転軸の回転角度を検出する角度センサと、前記回転動作を補助する補助力を前記関節部に与えるアクチュエータとが設けられ、
前記アームにおいて前記角度センサと前記アクチュエータとが設けられる前記関節部は、前記アームにおいて前記撮像デバイスが支持される側の反対側から数えて1番目の回転軸、2番目の回転軸、および3番目の回転軸に対応する、3つの前記関節部であり、
前記アーム制御部は、前記角度センサそれぞれの検出結果に基づいて、前記アームにより支持されている前記撮像デバイスを操作者が移動させるときに要する操作力量が所定の範囲に含まれるように、前記アクチュエータそれぞれの前記補助力を制御し、さらに、前記操作力量が、制御が行われない場合に要する操作力量よりも小さな値に設定されるように、前記アクチュエータそれぞれの前記補助力を制御すると共に、前記撮像デバイスの視野が所定の範囲から外れることに連動して動作時の前記操作力量が増加するように、前記アクチュエータそれぞれの前記補助力を制御する、医療用保持装置。
【請求項3】
前記アーム制御部は、前記操作力量が設定されている設定値を含む許容範囲に含まれるように、前記アクチュエータそれぞれの前記補助力を制御する、請求項1または2に記載の医療用保持装置。
【請求項4】
前記アームにより支持される前記撮像デバイスをさらに備える、請求項1~3のいずれか1つに記載の医療用保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療現場においては、例えば、脳神経外科手術などの微細手術(マイクロサージャリ)をサポートするためや、内視鏡手術を行うために、患部などの観察対象を拡大観察することが可能な医療用観察装置が用いられる場合がある。医療用観察装置としては、例えば、光学式の顕微鏡を備える医療用観察装置と、電子撮像式の顕微鏡として機能する撮像デバイスを備える医療用観察装置とが挙げられる。以下では、上記光学式の顕微鏡を備える医療用観察装置を「光学式の医療用観察装置」と示す。また、以下では、上記撮像デバイスを備える医療用観察装置を、「電子撮像式の医療用観察装置」と示す。また、以下では、電子撮像式の医療用観察装置が備える撮像デバイスにより観察対象が撮像された撮像画像(動画像または静止画像)を「医療用撮像画像」と示す。
【0003】
光学式の医療用観察装置や電子撮像式の医療用観察装置などの医療用観察装置では、光学式の顕微鏡または撮像デバイスが、所定の自由度を有するアームにより支持される。そして、術者や術者の助手などの医療用観察装置を操作する操作者は、光学式の顕微鏡または撮像デバイスを、自由度に応じたアームの可動範囲内で自由に移動させることが可能である。
【0004】
このような中、医療用観察装置を操作する操作者の操作性の向上を図る技術が開発されている。顕微鏡の観察者へのアームの干渉を防止して、操作性の向上を図る手術用顕微鏡(光学式の医療用観察装置に該当する。)に関する技術としては、例えば下記の特許文献1に記載の技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-329762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば“医療用観察装置を操作する操作者が、アームにより支持されている光学式の顕微鏡または撮像デバイスを移動させようとするとき”に要する操作力量がアームの姿勢によって大きく異なる場合には、操作する上での操作者の疲労につながる可能性がある。ここで、操作が操作者の疲労につながる可能性を低減する一の方法としては、上記操作力量の均一化を図ることが考えられる。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術のような既存の技術では、上記操作力量の均一化を図ることについて何らの考慮もなされておらず、当該既存の技術を用いたとしても、上記操作力量の均一化を図ることができない。
【0008】
また、例えば内視鏡ホルダのような、医療用機器を支持するアームを有する既存の装置においても、同様に、上記操作力量の均一化を図ることができない。以下では、“光学式の医療用観察装置や電子撮像式の医療用観察装置などの医療用観察装置”や、内視鏡ホルダのような、医療用機器を支持するアームを有する装置を、「医療用保持装置」と示す。
【0009】
つまり、既存の医療用保持装置では、上記操作力量の均一化を図ることができないことから、医療用保持装置を操作する操作者(例えば、術者や術者の助手などの医療従事者。以下、単に「操作者」と示す場合がある。)が操作を行うことにより疲労を感じる可能性が、ある。
【0010】
本開示では、操作者の操作性の向上を図ることが可能な、新規かつ改良された医療用保持装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示によれば、複数のリンクが関節部によって互いに連結されて構成され、回転軸における回転動作により少なくとも6以上の自由度を有すると共に、カウンターウエイトによりバランスアームとして機能し、医療用機器を支持するアームと、上記アームの動作を制御するアーム制御部と、を備え、上記アームの少なくとも3つ以上の上記関節部には、上記回転軸の回転角度を検出する角度センサと、上記回転動作を補助する補助力を上記関節部に与えるアクチュエータとが設けられ、上記アーム制御部は、上記角度センサそれぞれの検出結果に基づいて、上記アームにより支持されている上記医療用機器を操作者が移動させるときに要する操作力量が所定の範囲に含まれるように、上記アクチュエータそれぞれの上記補助力を制御する、医療用保持装置が、提供される。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、操作者の操作性の向上を図ることができる。
【0013】
なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果、または本明細書から把握されうる他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る医療用保持装置の構成の一例を示す説明図である。
図2】本実施形態に係る医療用保持装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図3】医療用保持装置において操作力量が異なる第1のケースを説明するための説明図である。
図4】医療用保持装置において操作力量が異なる第2のケースを説明するための説明図である。
図5】医療用保持装置において操作力量が異なる第3のケースを説明するための説明図である。
図6】本実施形態に係る制御方法に係る処理の一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
また、以下では、下記に示す順序で説明を行う。
1.本実施形態に係る医療用保持装置の構成、および本実施形態に係る制御方法
[1]本実施形態に係る医療用保持装置の構成
[2]本実施形態に係る制御方法
[3]本実施形態に係る医療用保持装置が用いられることにより奏される効果の一例
2.本実施形態に係るプログラム
【0017】
(本実施形態に係る医療用観察システム、および本実施形態に係る制御方法)
以下、本実施形態に係る医療用保持装置の一例を説明しつつ、本実施形態に係る制御方法について説明する。
【0018】
以下では、本実施形態に係る医療用保持装置が、電子撮像式の医療用観察装置である場合、すなわち、撮像デバイス(医療用機器の一例)を支持するアームを有する医療用観察装置である場合を、例に挙げる。なお、本実施形態に係る医療用保持装置は、電子撮像式の医療用観察装置に限られない。例えば、本実施形態に係る医療用保持装置は、光学式の医療用観察装置や、内視鏡ホルダなどの、医療用機器を支持するアームを有する任意の医療用装置に、適用することができる。
【0019】
[1]本実施形態に係る医療用保持装置の構成
図1は、本実施形態に係る医療用保持装置100の構成の一例を示す説明図であり、医療用保持装置100が電子撮像式の医療用観察装置として機能する場合の構成の一例を示している。図1では、医療用保持装置100の操作者Uを併せて示している。
【0020】
例えば手術時に医療用保持装置100が用いられる場合、術者(医療用保持装置100の操作者の一例)は、医療用保持装置100により撮像されて、任意の表示装置の表示画面に表示された医療用撮像画像を参照しながら術部(患部)を観察し、当該術部に対して、術式に応じた手技などの各種処置を行う。
【0021】
医療用保持装置100は、例えば、ベース102と、アーム104と、撮像デバイス106とを備える。
【0022】
また、図1では示していないが、医療用保持装置100は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)などの演算回路で構成される、1または2以上のプロセッサ(図示せず)と、ROM(Read Only Memory。図示せず)と、RAM(Random Access Memory。図示せず)と、記録媒体(図示せず)と、通信デバイス(図示せず)とを、備えていてもよい。医療用保持装置100は、例えば、医療用保持装置100が備えているバッテリなどの内部電源から供給される電力、または、接続されている外部電源から供給される電力などによって、駆動する。
【0023】
プロセッサ(図示せず)は、医療用保持装置100における制御部(後述する)として機能する。ROM(図示せず)は、プロセッサ(図示せず)が使用するプログラムや演算パラメータなどの制御用データを記憶する。RAM(図示せず)は、プロセッサ(図示せず)により実行されるプログラムなどを一時的に記憶する。
【0024】
記録媒体(図示せず)は、医療用保持装置100における記憶部(図示せず)として機能する。記録媒体(図示せず)には、例えば、設定値(後述する)などの本実施形態に係る制御方法に係るデータや、各種アプリケーションなどの、様々なデータが記憶される。ここで、記録媒体(図示せず)としては、例えば、ハードディスクなどの磁気記録媒体や、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリなどが挙げられる。また、記録媒体(図示せず)は、医療用保持装置100から着脱可能であってもよい。
【0025】
通信デバイス(図示せず)は、医療用保持装置100が備える通信手段であり、表示装置などの外部装置と、無線または有線で通信を行う役目を果たす。ここで、通信デバイス(図示せず)としては、例えば、IEEE802.15.1ポートおよび送受信回路(無線通信)や、IEEE802.11ポートおよび送受信回路(無線通信)、通信アンテナおよびRF(Radio Frequency)回路(無線通信)、あるいはLAN(Local Area Network)端子および送受信回路(有線通信)などが挙げられる。
【0026】
[1-2-1]ベース102
ベース102は、医療用保持装置100の基台であり、アーム104の一端が接続されて、アーム104と撮像デバイス106とを支持する。
【0027】
また、ベース102には例えばキャスタが設けられ、医療用保持装置100は、キャスタを介して床面と接地する。キャスタが設けられることにより、医療用保持装置100は、キャスタによって床面上を容易に移動することが可能である。
【0028】
[1-2-2]アーム104
アーム104は、複数のリンクが関節部によって互いに連結されて構成される。アーム104は、後述する回転軸における回転動作により少なくとも6以上の自由度を有する。図1に示す例は、後述するように6自由度を有する構成の一例である。
【0029】
また、アーム104は、撮像デバイス106(医療用機器の一例)を支持する。アーム104により支持された撮像デバイス106は3次元的に移動可能であり、移動後の撮像デバイス106は、アーム104によって、位置および姿勢が保持される。
【0030】
より具体的には、アーム104は、例えば、複数の関節部110a、110b、110c、110d、110e、110fと、関節部110a、110b、110c、110d、110e、110fによって連結される複数のリンク112a、112b、112c、112d、112e、112fとを有する。関節部110a、110b、110c、110d、110e、110fそれぞれの回転可能範囲は、アーム104の所望の動きが実現されるように、設計段階や製造段階などにおいて任意に設定される。
【0031】
つまり、図1に示す医療用保持装置100では、アーム104を構成する6つの関節部110a、110b、110c、110d、110e、110fに対応する6つの回転軸(第1軸O1、第2軸O2、第3軸O3、第4軸O4、第5軸O5、および第6軸O6)によって、撮像デバイス106の移動に関して6自由度が実現されている。より具体的には、図1に示す医療用保持装置100では、並進3自由度、および回転3自由度の6自由度の動きが実現される。
【0032】
第1軸O1は、アーム104において撮像デバイス106が支持される側(アームにおいて医療用機器が支持される側。以下、同様とする。)から数えて1番目の回転軸である。第2軸O2は、アーム104において撮像デバイス106が支持される側から数えて2番目の回転軸である。第3軸O3は、アーム104において撮像デバイス106が支持される側から数えて3番目の回転軸である。第4軸O4は、アーム104において撮像デバイス106が支持される側から数えて4番目の回転軸である。第5軸O5は、アーム104において撮像デバイス106が支持される側から数えて5番目の回転軸である。第6軸O6は、アーム104において撮像デバイス106が支持される側から数えて6番目の回転軸である。
【0033】
他の表現で表すと、第6軸O6は、アーム104において撮像デバイス106が支持される側の反対側(アームにおいて医療用機器が支持される側の反対側。以下、同様とする。)から数えて1番目の回転軸である。第5軸O5は、アーム104において撮像デバイス106が支持される側の反対側から数えて2番目の回転軸である。第4軸O4は、アーム104において撮像デバイス106が支持される側の反対側から数えて3番目の回転軸である。第3軸O3は、アーム104において撮像デバイス106が支持される側の反対側から数えて4番目の回転軸である。第2軸O2は、アーム104において撮像デバイス106が支持される側の反対側から数えて5番目の回転軸である。第1軸O1は、アーム104において撮像デバイス106が支持される側の反対側から数えて6番目の回転軸である。
【0034】
アーム104が有する関節部110a、110b、110c、110d、110e、110fのうちの3つ以上の関節部には、アクチュエータ(図示せず)と角度センサ(図示せず)が設けられる。
【0035】
アクチュエータ(図示せず)は、回転動作を補助する補助力を関節部に与える役目を果たす。アクチュエータ(図示せず)が設けられる関節部は、アクチュエータ(図示せず)の駆動により与えられる補助力によって、対応する回転軸で回転する。アクチュエータ(図示せず)の駆動は、例えば、後述する制御部として機能するプロセッサ、または、外部の医療用制御装置(図示せず)によって制御される。
【0036】
角度センサ(図示せず)は、回転軸の回転角度を検出する役目を果たす。本実施形態に係る角度センサとしては、例えば、ロータリエンコーダや角速度センサなどの、回転軸における回転角度を得ることが可能な任意のセンサが、挙げられる。なお、角度センサ(図示せず)とアクチュエータ(図示せず)とは、一体のデバイスであってもよいし、別体のデバイスであってもよい。
【0037】
アクチュエータ(図示せず)および角度センサ(図示せず)が設けられる、3つ以上の関節部の例、すなわち、アクチュエータ(図示せず)および角度センサ(図示せず)の配置の例としては、例えば下記に示す例が挙げられる。なお、アクチュエータ(図示せず)および角度センサ(図示せず)の配置の例が、下記に示す例に限られないことは、言うまでもない。一例を挙げると、角度センサ(図示せず)が全ての関節部に配置されているときに、アクチュエータ(図示せず)が3つ以上の一部の関節部に配置されていてもよい。
・第1の配置例:関節部110a、110b、110c(アーム104において撮像デバイス106が支持される側から数えて1番目の回転軸、2番目の回転軸、および3番目の回転軸に対応する、3つの関節部。以下、同様とする。)
・第2の配置例:関節部110、110e、110(アーム104において撮像デバイス106が支持される側の反対側から数えて1番目の回転軸、2番目の回転軸、および3番目の回転軸に対応する、3つの関節部。以下、同様とする。)
・第3の配置例:関節部110a、110b、110c、110d、110e、110f(全ての関節部)
【0038】
例えば、関節部110a、110b、110c、110d、110e、110fそれぞれが対応する回転軸で回転することによって、例えばアーム104を伸ばす、縮める(折り畳む)などの、様々なアーム104の動作が、実現される。各関節部に対応する回転軸は、例えば、操作者による操作(例えば、撮像デバイス106を移動させようとする操作)に応じた力が加えられることと、設けられているアクチュエータ(図示せず)の駆動に応じた補助力が加えられることとの、一方または双方によって、回転する。
【0039】
関節部110aは、関節部110aの先端部分(図1における下端部分)で、撮像デバイス106(図1における撮像デバイス106の上端部分)を、撮像デバイス106の中心軸と平行な回転軸(第1軸O1)まわりに回動可能なように支持する。ここで、図1に示す医療用保持装置100では、第1軸O1が撮像デバイス106における光軸と一致するように構成されている。換言すると、第1軸O1は、撮像デバイス106の光軸と同軸である。つまり、図1に示す第1軸O1まわりに撮像デバイス106を回動させることによって、撮像デバイス106により撮像された医療用撮像画像は、視野が回転するように変更される画像となる。なお、医療用保持装置100の構成が、第1軸O1が撮像デバイス106の光軸と同軸である構成に限られないことは、言うまでもない。
【0040】
リンク112aは、関節部110aを固定的に支持する。リンク112aは、例えば、第1軸O1と略直交する方向に延伸され、関節部110bに接続される。
【0041】
関節部110bは、リンク112aを、第1軸O1と直交する回転軸(第2軸O2)まわりに回動可能なように支持する。また、関節部110bには、リンク112bが接続される。
【0042】
リンク112bは、関節部110bを固定的に支持する。また、リンク112bには、関節部110cが接続される。
【0043】
関節部110cは、リンク112bを、少なくとも第2軸O2と互いに直交する回転軸(第3軸O3)まわりに回動可能なように支持する。また、関節部110cには、リンク112cの一端が接続される。
【0044】
ここで、第2軸O2および第3軸O3まわりにアーム104の先端側(撮像デバイス106が設けられる側)が回動することによって、撮像デバイス106が回転するように撮像デバイス106を移動させることができる。なお、第2軸O2および第3軸O3まわりの回動が微小な場合には、医療用撮像画像の視野が平面内で移動しているようにみえる。また、上述したように、医療用保持装置100では、第1軸O1まわりに撮像デバイス106が回動することによって、医療用撮像画像の視野が回転する。
【0045】
よって、医療用保持装置100において、第1軸O1、第2軸O2、および第3軸O3(アーム104において撮像デバイス106が支持される側から数えて1番目の回転軸、2番目の回転軸、および3番目の回転軸)は、撮像デバイス106のチルト動作に関する回転軸であるといえる。また、第1軸O1に対応する関節部110a、第2軸O2に対応する関節部110b、および第3軸O3に対応する関節部110cそれぞれに接続される、リンク112a、112b、および112cは、アーム104において水平アームの役目を果たす。
【0046】
リンク112cは、関節部110cを介してリンク112bと接続され、関節部110dを介してリンク112dと接続される。
【0047】
関節部110dは、リンク112cを、第3軸O3と直交する回転軸(第4軸O4)まわりに回動可能なように支持する。関節部110dには、リンク112dが接続される。
【0048】
リンク112dは、関節部110dを介してリンク112cと接続され、関節部110eを介してリンク112eと接続される。
【0049】
また、リンク112dには、カウンターウエイト114が設けられる。カウンターウエイト114は、カウンターウエイト114よりもアーム104の先端側(撮像デバイス106が設けられる側)に設けられる各構成要素の質量によって、第4軸O4まわりに発生する回転モーメントおよび第5軸O5まわりに発生する回転モーメントを相殺可能なように、質量および配置位置が調整される。
【0050】
関節部110eは、リンク112dの一端を、第4軸O4と平行な回転軸(第5軸O5)まわりに回動可能なように支持する。また、関節部110eには、リンク112eの一端が接続される。
【0051】
ここで、第4軸O4および第5軸O5は、撮像デバイス106を垂直方向と水平方向との一方または双方に移動させうる回転軸である。第4軸O4および第5軸O5まわりにアーム104の先端側(撮像デバイス106が設けられる側)が回動することによって、水平アームの垂直方向の位置と水平方向の位置とをそれぞれ変えることが可能であるので、アーム104により支持されている撮像デバイス106の垂直方向の位置および水平方向の位置もそれぞれ変わりうる。よって、第4軸O4および第5軸O5まわりにアーム104の先端側(撮像デバイス106が設けられる側)が回動することによって、撮像デバイス106と、患者の術部などの観察対象との距離を変えることが、可能となる。
【0052】
リンク112eの一端には、関節部110eが接続され、他端には、関節部110fが接続される。
【0053】
関節部110fには、リンク112eとリンク112fとが接続される。関節部110fは、リンク112fを、鉛直方向と平行な回転軸(第6軸O6)まわりに回動可能なように支持する。
【0054】
ここで、第6軸O6まわりにリンク112fが回動することによって、アーム104全体が回動する。また、上述したように、第4軸O4および第5軸O5まわりにアーム104の先端側(撮像デバイス106が設けられる側)が回動することによって、水平アームの垂直方向の位置と水平方向との一方または双方が変わる。
【0055】
よって、医療用保持装置100において、第6軸O6、第5軸O5、および第4軸O4(アーム104において撮像デバイス106が支持される側の反対側から数えて1番目の回転軸、2番目の回転軸、および3番目の回転軸)は、水平アームの位置を大きく動かす役目を果たす。
【0056】
アーム104が上記に示す構成を有することによって、医療用保持装置100は、撮像デバイス106の移動に関して6自由度を有すると共に、カウンターウエイト114によりバランスアームとして機能する。
【0057】
なお、アーム104の構成は、上記に示す例に限られない。
【0058】
例えば、アーム104の関節部110a、110b、110c、110d、110e、110fそれぞれには、関節部110a、110b、110c、110d、110e、110fそれぞれにおける回転を規制するブレーキが設けられていてもよい。本実施形態に係るブレーキとしては、例えば、機械的に駆動するブレーキや、電気的に駆動する電磁ブレーキなど、任意の方式のブレーキが挙げられる。
【0059】
上記ブレーキの駆動は、例えば、後述する制御部として機能するプロセッサ、または、外部の医療用制御装置(図示せず)によって制御される。上記ブレーキの駆動が制御されることにより、医療用保持装置100では、アーム104の動作モードが設定される。アーム104の動作モードとしては、例えば、固定モードとフリーモードとが挙げられる。
【0060】
ここで、本実施形態に係る固定モードとは、例えば、アーム104に設けられる各回転軸における回転がブレーキにより規制されることにより、撮像デバイス106の位置および姿勢が固定される動作モードである。アーム104が固定モードとなることによって、医療用保持装置100の動作状態は、撮像デバイス106の位置および姿勢が固定される固定状態となる。
【0061】
また、本実施形態に係るフリーモードとは、上記ブレーキが解除されることにより、アーム104に設けられる各回転軸が自由に回転可能となる動作モードである。例えば、フリーモードでは、術者(操作者の一例)による直接的な操作によって撮像デバイス106の位置および姿勢を調整することが可能となる。ここで、本実施形態に係る直接的な操作とは、例えば、術者が手で撮像デバイス106を把持し、当該撮像デバイス106を直接移動させる操作のことを意味する。
【0062】
[1-2-3]撮像デバイス106
撮像デバイス106は、アーム104により支持され、例えば患者の術部などの観察対象を撮像する。
【0063】
撮像デバイス106は、例えば電子撮像式の顕微鏡に対応する構成を有する。
【0064】
一例を挙げると、撮像デバイス106は、例えば、光学系と、イメージセンサとを有する。光学系は、例えば、対物レンズ、ズームレンズおよびフォーカスレンズなどの1または2以上のレンズとミラーなどの光学素子で構成される。イメージセンサとしては、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子を複数用いたイメージセンサが、挙げられる。
【0065】
撮像デバイス106は、例えば、ガリレオ式光学系またはグリノー式光学系の光学系と、複数のイメージセンサとを有することなどによって、いわゆるステレオカメラとして機能してもよい。
【0066】
撮像デバイス106には、ズーム機能(光学ズーム機能と電子ズーム機能との一方または双方)、AF(Auto Focus)機能などの、一般的に電子撮像式の顕微鏡部に備えられる1または2以上の機能が搭載される。
【0067】
また、撮像デバイス106は、例えば4K、8Kなどの、いわゆる高解像度での撮像が可能な構成であってもよい。撮像デバイス106が高解像度での撮像が可能に構成されることにより、所定の解像度(例えば、Full HD画質など)を確保しつつ、例えば50インチ以上などの大画面の表示画面を有する表示装置に画像を表示させることが可能となるので、当該表示画面を見る術者の視認性が向上する。また、撮像デバイス106が高解像度での撮像が可能に構成されることにより、撮像画像が電子ズーム機能によって拡大されて表示装置の表示画面に表示されたとしても、所定の解像度を確保することが可能となる。さらに、電子ズーム機能を用いて所定の解像度が確保される場合には、撮像デバイス106における光学ズーム機能の性能を抑えることが可能となるので、撮像デバイス106の光学系をより簡易にすることができ、撮像デバイス106をより小型に構成することができる。
【0068】
また、撮像デバイス106には、例えば、撮像デバイス106の動作を制御するための各種の操作デバイスが設けられていてもよい。撮像デバイス106に設けられる操作デバイスとしては、例えば、ズームスイッチ、フォーカススイッチ、および動作モード設定スイッチの一部または全部が挙げられる。
【0069】
ズームスイッチとフォーカススイッチとは、撮像デバイス106における撮像条件を調整するための操作デバイスの一例である。
【0070】
ズームスイッチは、例えば、ズーム倍率(拡大率)を大きくするズームインスイッチと、ズーム倍率を小さくするズームアウトスイッチとで構成される。ズームスイッチに対する操作が行われることによりズーム倍率が調整されて、ズームが調整される。
【0071】
フォーカススイッチは、例えば、観察対象(被写体)までの焦点距離を遠くする遠景フォーカススイッチと、観察対象までの焦点距離を近くする近景フォーカススイッチとで構成される。フォーカススイッチに対する操作が行われることにより焦点距離が調整されて、フォーカスが調整される。
【0072】
動作モード変更スイッチは、撮像デバイス106におけるアーム104の動作モードを変更するための操作デバイスの一例である。動作モード変更スイッチに対する操作が行われることにより、アーム104の動作モードが変更される。アーム104の動作モードとしては、例えば上述したように、固定モードとフリーモードとが挙げられる。
【0073】
動作モード変更スイッチに対する操作の一例としては、動作モード変更スイッチを押下する操作が、挙げられる。例えば、術者が動作モード変更スイッチを押下している間、アーム104の動作モードがフリーモードとなり、術者が動作モード変更スイッチを押下していないときには、アーム104の動作モードが固定モードとなる。
【0074】
撮像デバイス106における撮像により生成された画像信号(画像データ)は、例えば後述する制御部として機能するプロセッサにおいて、画像処理が行われる。本実施形態に係る画像処理としては、例えば、ガンマ補正、ホワイトバランスの調整、電子ズーム機能に係る画像の拡大または縮小、または、画素間補正などの各種処理のうちの、1または2以上の処理が、挙げられる。なお、本実施形態に係る画像処理は、外部の医療用制御装置(図示せず)において行われてもよい。
【0075】
医療用保持装置100は、例えば、表示制御信号と、上記のような画像処理が行われた画像信号とを、外部の表示装置に送信する。
【0076】
表示制御信号と画像信号とが表示装置に送信されることによって、表示装置の表示画面には、観察対象が撮像された医療用撮像画像(例えば、術部が撮像された撮像画像)が、光学ズーム機能と電子ズーム機能との一方または双方によって所望の倍率に拡大または縮小されて表示される。
【0077】
医療用保持装置100は、例えば図1を参照して示したハードウェア構成を有する。
【0078】
なお、本実施形態に係る医療用保持装置のハードウェア構成は、図1を参照して示した構成に限られない。
【0079】
例えば、本実施形態に係る医療用保持装置は、ベース102を備えず、手術室などの天井や壁面などにアーム104が直接取り付けられる構成であってもよい。例えば、天井にアーム104が取り付けられる場合には、本実施形態に係る医療用保持装置は、アーム104が天井から吊り下げられる構成となる。
【0080】
また、図1では、アーム104が、撮像デバイス106の移動に関して6自由度が実現されるように構成されている例を示しているが、アーム104の構成は、撮像デバイス106の移動に関する自由度が6自由度となる構成に限られない。例えば、アーム104は、上述したように、6以上の自由度を有していればよく、関節部およびリンクの数や配置、関節部の駆動軸の方向などは、アーム104が6以上の自由度を有するように適宜設定することが可能である。
【0081】
また、上記では、撮像デバイス106の動作を制御するための各種の操作デバイスが、撮像デバイス106に設けられる例を説明したが、当該操作デバイスのうちの一部または全部は、撮像デバイス106に設けられなくてもよい。一例を挙げると、撮像デバイス106の動作を制御するための各種の操作デバイスは、本実施形態に係る医療用保持装置を構成する撮像デバイス106以外の他の部位に設けられていてもよい。また、他の例を挙げると、撮像デバイス106の動作を制御するための各種の操作デバイスは、フットスイッチや、リモートコントローラなどの、任意の外部の操作デバイスであってもよい。
【0082】
また、撮像デバイス106は、複数の観察モードを切り替えることが可能な構成であってもよい。本実施形態に係る観察モードとしては、例えば、自然光で撮像を行う観察モード、特殊光で撮像を行う観察モード、NBI(Narrow Band Imaging)などの画像強調観察技術を利用して撮像を行う観察モードなどが、挙げられる。本実施形態に係る特殊光とは、例えば、近赤外線の波長帯域の光や、5-ALA(5-Aminolevulinic Acid)を用いた蛍光観察の蛍光波長帯域の光など、特定の波長帯域の光である。
【0083】
複数の観察モードを切り替えることが可能な撮像デバイス106の構成の一例としては、例えば、“特定の波長帯域の光を透過させ、他の波長帯域の光を透過させないフィルタと、当該フィルタを光路上に選択的に配置する移動機構と、を備える構成”が、挙げられる。本実施形態に係るフィルタが透過させる特定の波長帯域としては、例えば、近赤外線の波長帯域(例えば、約0.7[マイクロメートル]~2.5[マイクロメートル]の波長帯域)や、5-ALAを用いた蛍光観察による蛍光波長帯域(例えば、約0.6[マイクロメートル]~0.65[マイクロメートル]の波長帯域)、ICG(Indocyanine Green)の蛍光波長帯域(例えば、約0.82[マイクロメートル]~0.85[マイクロメートル]の波長帯域)などが、挙げられる。
【0084】
なお、撮像デバイス106には、透過させる波長帯域が異なる複数のフィルタが設けられていてもよい。また、上記では、フィルタが光路上に配置されることにより、特定の波長帯域の光で撮像が行われる例を示したが、特定の波長帯域の光で撮像を行うための撮像デバイス106の構成が、上記に示す例に限られないことは、言うまでもない。
【0085】
さらに、本実施形態に係る医療用保持装置は、適用例に応じたハードウェア構成を有していてもよい。
【0086】
次に、図1に示す医療用保持装置100を、機能ブロックを用いて説明する。図2は、本実施形態に係る医療用保持装置100の構成の一例を示す機能ブロック図であり、電子撮像式の医療用観察装置として機能する医療用保持装置100の機能ブロックの一例を示している。
【0087】
医療用保持装置100は、例えば、アーム部152と、撮像部154と、通信部156と、制御部158とを備える。
【0088】
アーム部152は、アーム104で構成され、撮像部154を構成する撮像デバイス106を支持する。
【0089】
撮像部154は、撮像デバイス106で構成され、観察対象を撮像する。撮像部154における撮像は、例えば制御部158によって制御される。
【0090】
通信部156は、医療用保持装置100が備える通信手段であり、表示装置などの外部装置と無線または有線で通信を行う役目を果たす。通信部156は、例えば上述した通信デバイス(図示せず)で構成される。通信部156における通信は、例えば制御部158によって制御される。
【0091】
制御部158は、例えば上述したプロセッサ(図示せず)で構成され、医療用保持装置100全体を制御する役目を果たす。また、制御部158は、後述する制御方法に係る処理を主導的に行う役目を果たす。なお、制御部158における制御方法に係る処理は、複数の処理回路(例えば、複数のプロセッサなど)で分散して行われてもよい。
【0092】
より具体的には、制御部158は、例えば、撮像制御部160と、アーム制御部162と、表示制御部164とを有する。
【0093】
撮像制御部160は、撮像部154を構成する撮像デバイス106を制御する。撮像デバイス106の制御としては、例えば、少なくともズーム機能(光学ズーム機能および電子ズーム機能)を含む、AF機能の制御などの一般的に電子撮像式の顕微鏡部に備えられる1または2以上の機能の制御が、挙げられる。
【0094】
アーム制御部162は、後述する制御方法に係る処理を行う役目を果たし、アーム部152を構成するアーム104の動作を制御する。アーム制御部162は、例えば“アクチュエータ(図示せず)が設けられている少なくとも3つ以上の関節部に対して、駆動を制御する制御信号を印加すること”によって、アーム104の動作を制御する。本実施形態に係る制御方法に係る処理の一例については、後述する。
【0095】
表示制御部164は、例えば、表示制御信号と画像信号とを通信部156を構成する通信デバイス(図示せず)に伝達し、表示制御信号と画像信号とを表示装置に対して送信させることによって、表示装置における表示を制御する。なお、通信部156における通信の制御は、制御部158を構成する通信制御部(図示せず)により行われてもよい。
【0096】
制御部158は、例えば、アーム制御部162を有することにより、本実施形態に係る制御方法に係る処理を主導的に行う役目を果たす。また、制御部158は、例えば、撮像制御部160、アーム制御部162、および表示制御部164を有することによって、電子撮像式の医療用観察装置として機能する医療用保持装置100全体を制御する役目を果たす。
【0097】
なお、制御部158の機能構成は、図2に示す例に限られない。
【0098】
例えば、制御部158は、本実施形態に係る制御方法に係る処理の切り分け方に応じた構成など、医療用保持装置100が有する機能の切り分け方に応じた、任意の構成を有することが可能である。
【0099】
医療用保持装置100は、例えば図2に示す構成によって、後述する本実施形態に係る制御方法に係る処理を行う。
【0100】
なお、本実施形態に係る医療用保持装置の機能構成は、図2に示す構成に限られない。
【0101】
例えば、本実施形態に係る医療用保持装置は、図2に示す撮像制御部160、アーム制御部162、および表示制御部164のうちの一部または全部を、制御部158とは個別に備える(例えば、別の処理回路で実現する)ことができる。
【0102】
また、本実施形態に係る医療用保持装置において本実施形態に係る制御方法に係る処理を実現するための機能構成は、図2に示す構成に限られず、例えば、本実施形態に係る医療用保持装置は、本実施形態に係る制御方法に係る処理の切り分け方に応じた機能構成をとることが可能である。
【0103】
また、例えば、通信部156と同様の機能、構成を有する外部の通信デバイスを介して外部装置と通信を行う場合には、本実施形態に係る医療用保持装置は、通信部156を備えていなくてもよい。
【0104】
また、本実施形態に係る医療用保持装置は、適用例に応じた機能構成を有していてもよい。一例を挙げると、本実施形態に係る医療用保持装置が、光学式の医療用観察装置または内視鏡ホルダである場合、本実施形態に係る医療用保持装置は、図2に示す撮像部154と撮像制御部160とを備えていなくてもよい。
【0105】
[2]本実施形態に係る制御方法
次に、本実施形態に係る制御方法について、説明する。以下では、本実施形態に係る制御方法に係る処理を医療用保持装置100(より具体的には、例えば医療用保持装置100を構成する制御部158のアーム制御部162)が行う場合を例に挙げる。
【0106】
[2-1]本実施形態に係る制御方法の概要
上述したように、“操作者がアームにより支持されている医療用機器を操作者が移動させるとき”に要する操作力量(以下、単に「操作力量」と示す。)がアームの姿勢によって大きく異なる場合には、操作する上での操作者の疲労につながる可能性がある。
【0107】
操作力量は、アームが有する各回転軸の力量と、アームが有する回転軸のうちのどの回転軸が動くかによって定まる。アームが有する各回転軸の力量は、例えば下記の数式1により表される。また、操作力量は、例えば下記の数式2により表される。以下では、下記の数式1に示す“アームの先端側から回転軸までの慣性力”を、単に「回転軸までの慣性力」と示す。
【0108】
各回転軸個別の操作力量={関節部に対応する回転軸における回転重さ+アームの先端側(医療機器が支持される側)から当該回転軸までの慣性力(総重量)}×操作位置から当該回転軸までの直線距離
・・・(数式1)
【0109】
全体の操作力量=操作に連動して動く回転軸の操作力量の合算値
・・・(数式2)
【0110】
ここで、アームが有する回転軸のうち、操作者の操作により動く回転軸は、アームの姿勢と操作者が医療用機器を動かす向きとによって定まる。医療用保持装置では、操作者による医療用機器の動かし方によって操作に連動して動く回転軸の数が異なるので、操作力量は一定とはならず、不均一となる。
【0111】
しかしながら、既存の医療用保持装置では、操作力量の均一化を図ることについて何らの考慮もなされておらず、操作力量の均一化を図ることができない。そのため、既存の医療用保持装置を使用する操作者は、操作する上で疲労を感じる可能性がある。
【0112】
以下、医療用保持装置において操作力量が異なるケースについて、図1を参照して説明した医療用保持装置100の構成を例に挙げて、説明する。
【0113】
図3は、医療用保持装置において操作力量が異なる第1のケースを説明するための説明図である。図3のA、図3のBそれぞれは、操作に連動して動く回転軸が、回転軸O2、O3であるケースの例を示している。図3に示す“M1”、“M2”、“M3”は、アーム104により支持されている撮像デバイス106を操作者が移動させるときの動きを、それぞれ示している。
【0114】
例えば図3のM1に示すように撮像デバイス106を移動させる場合、回転軸O2のみが回動する。よって、図3のM1に示すように撮像デバイス106を移動させる場合には、上記数式1、および上記数式2より“回転軸O2の力量+回転軸O2までの慣性力”が、操作者が操作する上での重さ、すなわち、操作力量となる。
【0115】
また、例えば図3のM2に示すように撮像デバイス106を移動させる場合、回転軸O3のみが回動する。よって、図3のM2に示すように撮像デバイス106を移動させる場合には、上記数式1、および上記数式2より“回転軸O3の力量+回転軸O3までの慣性力”が、操作力量となる。
【0116】
ここで、回転軸O2のみが回動する場合または回転軸O3のみが回動する場合には、回転軸O2の力量と、回転軸O3の力量とが同一となるように、アーム104を設計することは可能である。
【0117】
しかしながら、例えば図3のM3に示すように撮像デバイス106を移動させる場合、回転軸O2および回転軸O3の双方が回動する。よって、図3のM3に示すように撮像デバイス106を移動させる場合には、上記数式1、および上記数式2より“回転軸O2の力量+回転軸O3の力量+回転軸O3までの慣性力”が、操作力量となる。
【0118】
ここで、図3のM3に示すように撮像デバイス106を移動させる場合には、回転軸O2の力量および回転軸O3の力量がかかるため、回転軸O2、回転軸O3の一方のみが回動する場合の動きと力量をそろえることは、物理的にできない。
【0119】
図4は、医療用保持装置において操作力量が異なる第2のケースを説明するための説明図である。図4のA、図4のBは、“アーム104の姿勢が異なるときに、操作に連動して動く回転軸が回転軸O4、O5である場合”のケースの例を示している。図4に示す“P1”、“P2”は、操作力量の大きさをベクトル表示したものである。
【0120】
回転軸O4が動くのに必要な慣性モーメントは同一であるので、図4のベクトルpで表される力(当該慣性モーメントを発生させるための撮像デバイス106への力)は、一定となる。しかしながら、図4のP1、P2に示すように、アーム104の姿勢が異なる場合には、ベクトルpで表される力を発生させるために要する操作力量が異なる。つまり、図4のP1、P2に示すように、撮像デバイス106を、同じ高さから同じだけ同じ方向に移動させようとしても、アーム104の姿勢によって操作力量が異なる。図4の例では、同じように撮像デバイス106を移動させる場合であっても、図4のAに示すアーム104の姿勢のときよりも図4のBに示すアーム104の姿勢のときの方が、より大きい力が必要となる。
【0121】
図5は、医療用保持装置において操作力量が異なる第3のケースを説明するための説明図である。図5のA、図5のB、図5のCは、“アーム104の姿勢が異なるときに、操作に連動して動く回転軸が回転軸O3である場合”のケースの例を示している。図5に示す“d1”、“d2”は、回転軸O3と撮像デバイス106の操作位置との距離を示している。
【0122】
上記数式1、および上記数式2より、回転軸O3と撮像デバイス106の操作位置との距離が異なる場合には、操作力量が異なることとなる。
【0123】
図3図5を参照して示したケースに示すように、医療用保持装置において操作力量が異なる様々なケースが存在する。なお、医療用保持装置において操作力量が異なるケースが、図3図5を参照して示したケースに限られないことは、言うまでもない。
【0124】
そこで、医療用保持装置100は、アーム104により支持されている撮像デバイス106(医療用機器の一例。以下、同様とする。)を操作者が移動させるときに要する操作力量が所定の範囲に含まれるように、アーム104の動作を制御する。
【0125】
ここで、各回転軸間のピッチ、すなわち、各リンクの長さを既知とすると、各回転軸の角度が分かればそのときのアーム104の姿勢を特定すること(またはアーム104の姿勢を推定すること)ができる。なお、アーム104の姿勢の特定方法(またはアーム104の姿勢の推定方法)は、上記に示す例に限られず、医療用保持装置100は、アーム104の姿勢を特定することが可能な任意の方法により、アーム104の姿勢を特定してもよい。
【0126】
また、アーム104の少なくとも3つ以上の関節部に設けられている角度センサ(図示せず)により検出される回転軸の回転角度に基づいて、操作者がどの向きに撮像デバイス106を動かしたいのかを特定することができる。
【0127】
よって、上記数式1および上記数式2より、操作者が撮像デバイス106を移動させるときに要する操作力量を算出することが可能である。
【0128】
医療用保持装置100は、操作力量が所定の範囲に含まれるように、アーム104の少なくとも3つ以上の関節部に設けられているアクチュエータ(図示せず)それぞれの補助力を制御する。操作力量が所定の範囲に含まれるようにアクチュエータ(図示せず)それぞれの補助力が制御されることによって、操作力量が当該補助力により調整され、その結果、操作力量の均一化を図ることができる。
【0129】
より具体的には、医療用保持装置100は、例えば、操作力量が設定されている設定値を含む許容範囲に含まれるように、アクチュエータ(図示せず)それぞれの補助力を制御する。
【0130】
設定値を含む許容範囲としては、例えば、下限値が“設定値-設定値×X[%]”(Xは、0以上の整数)であり、上限値が“設定値+設定値×Y[%]”(Yは、0以上の整数)である範囲が、挙げられる。つまり、本実施形態に係る所定の範囲は、例えば、設定値、下限値、および上限値によって規定される。本実施形態に係る許容範囲には、上限値および下限値が含まれていてもよいし、上限値と下限値との一方または双方が含まれていなくてもよい。
【0131】
上限値および下限値それぞれは、例えば、医療用保持装置100の設計段階や初期設定段階などの任意の段階において、制御方法に係る制御の精度に応じて固定値に設定される。一例を挙げると、より高い制御の精度が求められる場合には、XおよびYの値は、例えば20[%]以下に設定される。また、他の例を挙げると、使用者の疲労を低減して操作性の向上を図る上では、XおよびYの値は、例えば40[%]以下に設定されることが望ましい。なお、本実施形態に係る許容範囲を規定する上限値、下限値の例が、上記に示す例に限られないことは、言うまでもない。
【0132】
なお、上限値および下限値それぞれは、固定値に限られない。例えば、上限値および下限値それぞれは、後述する設定値と同様に、操作者などの操作に基づいて手動で変更されてもよいし、アーム104により支持される医療機器の動作に応じて自動的に変更されてもよい。
【0133】
また、上限値および下限値それぞれが、上記に示す例のように百分率表記で規定されることに限られないことは、言うまでもない。
【0134】
設定値が大きくなればなる程、撮像デバイス106の移動により大きな操作力量を要するので、例えば撮像デバイス106を微小に動かす用途に向く。また、設定値が小さくなればなる程、撮像デバイス106の移動により小さな操作力量で済むので、例えば撮像デバイス106を大きく動かす用途に向く。
【0135】
ここで、本実施形態に係る設定値としては、予め設定されている固定値が挙げられる。
【0136】
また、本実施形態に係る設定値は、変更可能な可変値であってもよい。設定値は、例えば、操作者などの操作に基づいて手動で変更されてもよいし、アーム104により支持される医療機器の動作に応じて自動的に変更されてもよい。
【0137】
操作に基づいて設定値が手動で変更される場合の一例を挙げると、術者が好みの設定値を選択することにより設定値が設定される例(設定値が直接的に設定される例)や、術者が手技を選択することにより当該手技に対応する設定値が設定される例(設定値が間接的に設定される例)が、挙げられる。
【0138】
また、医療機器の動作に応じて設定値が自動的に変更される場合の一例を挙げると、撮像デバイス106のズーム/フォーカスの値と連動して、当該ズーム/フォーカスの値に対応する設定値が設定される例や、撮像デバイス106の視野が所定の範囲を外れた場合(例えば、医療用撮像画像に術部が含れなくなった場合など)により設定値が変更される例などが、挙げられる。例えば、撮像デバイス106が拡大視の状態である場合には、設定値が大きく設定され、撮像デバイス106を微小に動かす操作を可能とする。また、例えば、撮像デバイス106が広域視の状態である場合には、設定値が小さく設定され、より小さな操作力量で撮像デバイス106を大きく動かす操作を、可能とする。また、例えば、撮像デバイス106の視野が所定の範囲を外れた場合により大きな設定値が設定されることによって、術中の視野とびの軽減を図ることができる。
【0139】
例えば上記のように、医療用保持装置100が、操作力量が所定の範囲に含まれるようにアーム104の動作を制御することによって、操作者は、撮像デバイス106の動かし方によらず、均一な力で撮像デバイス106を動かすことができる。
【0140】
よって、操作が操作者の疲労につながる可能性が低減されるので、医療用保持装置100は、操作者の操作性の向上を図ることができる。
【0141】
[2-2]本実施形態に係る制御方法に係る処理
次に、本実施形態に係る制御方法に係る処理について、より具体的に説明する。
【0142】
上述したように、医療用保持装置100は、例えば操作力量が設定値となるように、3つ以上の関節部に設けられるアクチュエータ(図示せず)それぞれの補助力を制御することによって、操作力量を均一化する。
【0143】
例えば、アクチュエータ(図示せず)が関節部110a、110b、110c(上記第1の配置例)に設けられる場合、関節部110a、110b、110cそれぞれに対応する回転軸O1、O2、O3は、撮像デバイス106のチルト動作に関する回転軸である。また、関節部110a、110b、110cそれぞれに接続される、リンク112a、112b、および112cは、アーム104において水平アームの役目を果たす。撮像デバイス106のチルト動作に関する回転軸が回動する場合、動かすものが小さいため慣性モーメントが小さくなる。
【0144】
よって、アクチュエータ(図示せず)が関節部110a、110b、110c(上記第1の配置例)に設けられる場合、医療用保持装置100は、操作力量が、制御が行われない場合よりも大きくなるように、アクチュエータ(図示せず)それぞれの補助力を制御する。
【0145】
つまり、アクチュエータ(図示せず)が関節部110a、110b、110c(上記第1の配置例)に設けられる場合、設定値は、制御が行われない場合に要する操作力量よりも大きな値に設定される。設定値の具体例を挙げると、アクチュエータ(図示せず)が関節部110a、110b、110c(上記第1の配置例)に設けられる場合、設定値は、関節部110d、110e、110fそれぞれに対応する回転軸O4、O5、O6を回動させる場合に要する操作力量と一致するように、設定される。なお、アクチュエータ(図示せず)が関節部110a、110b、110c(上記第1の配置例)に設けられる場合における設定値の例が、上記に示す例に限られないことは、言うまでもない。
【0146】
また、例えば、アクチュエータ(図示せず)が関節部110d、110e、110f(上記第2の配置例)に設けられる場合、関節部110d、110e、110fそれぞれに対応する回転軸O4、O5、O6は、水平アームの位置を大きく動かす役目を果たす。水平アームの位置を大きく動かすための回転軸が回動する場合、動かすものが大きいため慣性モーメントが大きくなる。
【0147】
よって、アクチュエータ(図示せず)が関節部110d、110e、110f(上記第2の配置例)に設けられる場合、医療用保持装置100は、操作力量が、制御が行われない場合よりも小さくなるように、アクチュエータ(図示せず)それぞれの補助力を制御する。
【0148】
つまり、アクチュエータ(図示せず)が関節部110d、110e、110f(上記第2の配置例)に設けられる場合、設定値は、制御が行われない場合に要する操作力量よりも小さな値に設定される。設定値の具体例を挙げると、アクチュエータ(図示せず)が関節部110d、110e、110f(上記第2の配置例)に設けられる場合、設定値は、関節部110a、110b、110cそれぞれに対応する回転軸O1、O2、O3を回動させる場合に要する操作力量と一致するように、設定される。なお、アクチュエータ(図示せず)が関節部110d、110e、110f(上記第2の配置例)に設けられる場合における設定値の例が、上記に示す例に限られないことは、言うまでもない。
【0149】
例えば、アクチュエータ(図示せず)が関節部110a、110b、110c、110d、110e、110f(上記第3の配置例)に設けられる場合には、関節部110a、110b、110c、110d、110e、110fそれぞれに対応する回転軸O1、O2、O3、O4、O5、O6のうちの任意の回転軸が回動する場合においても操作力量が所定の範囲に含まれるように、アクチュエータ(図示せず)それぞれの補助力を制御する。
【0150】
以下、図3を参照して示した“操作に連動して動く回転軸が回転軸O、Oであるケース”を例示して、本実施形態に係る制御方法に係る処理の一例を説明する。なお、図4図5を参照して例示した他のケースを含め、任意のケースにおいても、下記に例示する制御方法に係る処理の一例と同様に、アクチュエータ(図示せず)それぞれの補助力を求めることが可能である。
【0151】
図6は、本実施形態に係る制御方法に係る処理の一例を説明するための説明図である。図6に示す“P”は、撮像デバイス106の中心位置を示しており、当該中心位置が、撮像デバイス106の操作位置に該当する。図6に示す“L1”は、回転軸Oと撮像デバイス106の操作位置との距離を示しており、図6に示す“L2”は、回転軸Oと撮像デバイス106の操作位置との距離を示している。図6に示す“K”は、操作力量の大きさをベクトル表示したものである。図6に示す“a”は、操作の方向に対応する角度を示している。
【0152】
操作力量Kは、設定値を含む許容範囲に対応する値であり、角度aの値に依存しない。また、図6に示す例において操作力量Kの成分を分解すると、下記の数式3に示すように、回転軸Oを回転させる成分(“K×sin a”)と、回転軸Oを回転させる成分(“K×cos a”)とに分解される。ここで、下記の数式3は、分力の式であり、操作力量Kの値は、設定値に対応する値であり、既知である。
【0153】
【数1】
【0154】
また、回転軸Oを回転させる成分は、下記の数式4で表される。下記の数式4に示す“T2”は、回転軸Oのモーメントであり、下記の数式4に示す“t2”は、回転軸Oに設けられているアクチュエータ(図示せず)が回転軸Oに与える補助力である。つまり、下記の数式4は、モーメントの式である。
【0155】
【数2】
【0156】
また、回転軸Oを回転させる成分は、下記の数式5で表される。下記の数式5に示す“T1”は、回転軸Oのモーメントであり、下記の数式5に示す“t1”は、回転軸Oに設けられているアクチュエータ(図示せず)が回転軸Oに与える補助力である。つまり、下記の数式5は、モーメントの式である。
【0157】
【数3】
【0158】
上記数式4および上記数式5を、上記数式に代入すると、回転軸Oに設けられているアクチュエータ(図示せず)の補助力t1と、回転軸Oに設けられているアクチュエータ(図示せず)の補助力t2との関係は、下記の数式6で表される。
【0159】
【数4】
【0160】
ここで、操作力量Kの値は、設定値を含む許容範囲に対応する既知の値である。よって、医療用保持装置100は、上記数式6より、操作力量Kが所定の範囲に含まれるような、回転軸Oに設けられているアクチュエータ(図示せず)の補助力t1、および回転軸Oに設けられているアクチュエータ(図示せず)の補助力t2を、求めることができる。
【0161】
医療用保持装置100は、求められた補助力t1が回転軸Oに加わるように、回転軸Oに設けられているアクチュエータ(図示せず)を動作させ、求められた補助力t2が回転軸Oに加わるように、回転軸Oに設けられているアクチュエータ(図示せず)を動作させる。上記のように医療用保持装置100がアクチュエータ(図示せず)それぞれの補助力を制御することによって、操作力量は所定の範囲に含まれるように調整されるので、操作者は、あらゆる方向に向けて略均一な操作力で操作することができる。
【0162】
したがって、医療用保持装置100は、操作者の操作性の向上を図ることができる。
【0163】
[3]本実施形態に係る医療用保持装置が用いられることにより奏される効果の一例
本実施形態に係る医療用保持装置が用いられることによって、例えば下記に示す効果が奏される。なお、本実施形態に係る医療用保持装置が用いられることにより奏される効果が、下記に示す例に限られないことは、言うまでもない。
・操作者の操作に対して操作力量を略均一化することが可能であるので、操作に対する疲労を低減させることができる。
・撮像デバイス106のズーム/フォーカスの値と連動した設定値を設定するなど、アームで支持されている医療機器の動作と操作力量を連動させることによって、医療機器の動作に応じて操作力量を動的に変えることができる。
・術者の好みや手技に応じて、手動による操作力量の変更が可能である。
・撮像デバイス106の視野が所定の範囲を外れたことと連動して、操作力量を大きくすることにより、術中の視野とびの軽減を図ることができる。
・上記第1の配置例や上記第2の配置例のように、アームを構成する一部の関節部にアクチュエータ(図示せず)が配置される場合においても、全ての関節部にアクチュエータ(図示せず)が配置される場合と近似的に、同様の効果が奏される。
【0164】
(本実施形態に係るプログラム)
コンピュータシステムを、本実施形態に係る医療用保持装置(または、本実施形態に係る制御装置)として機能させるためのプログラム(例えば、本実施形態に係る制御方法に係る処理を実行することが可能なプログラム)が、コンピュータシステムにおいてプロセッサなどにより実行されることによって、操作者の操作性の向上を図ることができる。ここで、本実施形態に係るコンピュータシステムとしては、単体のコンピュータ、または、複数のコンピュータが挙げられる。本実施形態に係るコンピュータシステムによって、本実施形態に係る制御方法に係る一連の処理が行われる。
【0165】
また、コンピュータシステムを、本実施形態に係る医療用保持装置(または、本実施形態に係る制御装置)として機能させるためのプログラムが、コンピュータシステムにおいてプロセッサなどにより実行されることによって、上述した本実施形態に係る制御方法に係る処理によって実現される表示によって奏される効果を、奏することができる。
【0166】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0167】
例えば、上記では、コンピュータシステムを、本実施形態に係る医療用保持装置として機能させるためのプログラム(コンピュータプログラム)が提供されることを示したが、本実施形態は、さらに、上記プログラムを記憶させた記録媒体も、併せて提供することができる。
【0168】
上述した構成は、本実施形態の一例を示すものであり、当然に、本開示の技術的範囲に属するものである。
【0169】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0170】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
複数のリンクが関節部によって互いに連結されて構成され、回転軸における回転動作により少なくとも6以上の自由度を有すると共に、カウンターウエイトによりバランスアームとして機能し、医療用機器を支持するアームと、
前記アームの動作を制御するアーム制御部と、
を備え、
前記アームの少なくとも3つ以上の前記関節部には、前記回転軸の回転角度を検出する角度センサと、前記回転動作を補助する補助力を前記関節部に与えるアクチュエータとが設けられ、
前記アーム制御部は、前記角度センサそれぞれの検出結果に基づいて、前記アームにより支持されている前記医療用機器を操作者が移動させるときに要する操作力量が所定の範囲に含まれるように、前記アクチュエータそれぞれの前記補助力を制御する、医療用保持装置。
(2)
前記アーム制御部は、前記操作力量が設定されている設定値を含む許容範囲に含まれるように、前記アクチュエータそれぞれの前記補助力を制御する、(1)に記載の医療用保持装置。
(3)
前記アームにおいて前記角度センサと前記アクチュエータとが設けられる前記関節部は、前記アームにおいて前記医療用機器が支持される側から数えて1番目の回転軸、2番目の回転軸、および3番目の回転軸に対応する、3つの前記関節部である、(1)または(2)に記載の医療用保持装置。
(4)
前記アーム制御部は、前記操作力量が、制御が行われない場合よりも大きくなるように、前記アクチュエータそれぞれの前記補助力を制御する、(3)に記載の医療用保持装置。
(5)
前記アームにおいて前記角度センサと前記アクチュエータとが設けられる前記関節部は、前記アームにおいて前記医療用機器が支持される側の反対側から数えて1番目の回転軸、2番目の回転軸、および3番目の回転軸に対応する、3つの前記関節部である、(1)または(2)に記載の医療用保持装置。
(6)
前記アーム制御部は、前記操作力量が、制御が行われない場合よりも小さくなるように、前記アクチュエータそれぞれの前記補助力を制御する、(5)に記載の医療用保持装置。
(7)
前記アームにおいて前記角度センサと前記アクチュエータとが設けられる前記関節部は、全ての前記関節部である、(1)または(2)に記載の医療用保持装置。
(8)
前記アームにより支持される前記医療用機器をさらに備える、(1)~(7)のいずれか1つに記載の医療用保持装置。
(9)
前記医療用機器は、観察対象を撮像する撮像デバイスである、(8)に記載の医療用保持装置。
【符号の説明】
【0171】
100 医療用保持装置
102 ベース
104 アーム
106 撮像デバイス
110a、110b、110c、110d、110e、110f 関節部
112a、112b、112c、112d、112e、112f リンク
114 カウンターウエイト
152 アーム部
154 撮像部
156 通信部
158 制御部
160 撮像制御部
162 アーム制御部
164 表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6