(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10D 30/01 20250101AFI20250109BHJP
H10D 30/66 20250101ALI20250109BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01L29/78 658A
H01L29/78 652T
H01L21/265 601A
(21)【出願番号】P 2021041327
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健太
(72)【発明者】
【氏名】大川 峰司
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-246033(JP,A)
【文献】特開2014-078659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体装置(1)の製造方法であって、
一方の主面側にイオン注入領域(24A)と非イオン注入領域(23A)を有する窒化物半導体層(20)の
前記一方の主面上に前記窒化物半導体層よりも融点が高い保護膜(62)を成膜する保護膜成膜工程と、
前記保護膜を介して前記イオン注入領域に不純物をイオン注入するイオン注入工程と、
前記
保護膜上の一部に光吸収膜(
66)を成膜する光吸収膜成膜工程であって、前記光吸収膜が前記窒化物半導体層の前記イオン注入領域の上方に選択的に成膜される、光吸収膜成膜工程と、
前記光吸収膜に光を照射する光照射工程であって、前記光のエネルギーが前記光吸収膜のバンドギャップのエネルギーよりも大きい、光照射工程と、を備
え、
前記光照射工程で照射される前記光のエネルギーは、前記窒化物半導体層のバンドギャップのエネルギーよりも小さく、
前記光照射工程で照射される前記光のエネルギーは、前記保護膜のバンドギャップのエネルギーよりも小さい、窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記イオン注入工程でイオン注入される前記不純物がマグネシウムである、請求項
1に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、窒化物半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体装置の開発が進められている。この種の窒化物半導体装置を製造するためには、窒化物半導体層内に不純物をイオン注入し、イオン注入した不純物を活性化してn型又はp型の拡散領域を形成する技術が必要である。
【0003】
窒化物半導体層内にイオン注入された不純物を活性化させるためには、高温のアニール処理が必要とされている。例えばp型不純物のマグネシウムは、約1400℃以上のアニール処理が必要とされている。しかしながら、このような高温のアニール処理を実施すると、窒化物半導体層が分解し、窒化物半導体層の表層部にピットが形成されることが知られている。特に、拡散領域を貫通するような大きなピットが形成されると、リーク電流が流れる原因となる。
【0004】
特許文献1は、窒化物半導体の飽和蒸気圧以上の気圧下で高温のアニール処理を実施し、ピットの形成を抑える技術を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書は、電気特性に影響を与えるようなピットの形成を抑えながら窒化物半導体層内にイオン注入された不純物を活性化させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示する窒化物半導体装置の製造方法は、イオン注入工程と、光吸収膜成膜工程と、光照射工程と、を備えることができる。前記イオン注入工程では、一方の主面側にイオン注入領域(24A)と非イオン注入領域(23A)を有する窒化物半導体層(20)の前記イオン注入領域に不純物をイオン注入する。前記光吸収膜成膜工程では、前記窒化物半導体層の前記一方の主面の上方の一部に光吸収膜(44、54、66)を成膜する。前記光吸収膜成膜工程ではさらに、前記光吸収膜が前記窒化物半導体層の前記イオン注入領域の前記一方の主面の上方に選択的に成膜される。前記光照射工程では、光を前記光吸収膜に照射する。前記光のエネルギーが前記光吸収膜のバンドギャップのエネルギーよりも大きい。
【0008】
この製造方法によると、前記光照射工程で前記光を吸収した前記光吸収膜の熱によって前記窒化物半導体層の前記一方の主面側が加熱される。このため、前記窒化物半導体層の全体が加熱されず、前記窒化物半導体層の前記一方の主面側が加熱される。さらに、前記光吸収膜は、前記窒化物半導体層の前記イオン注入領域の上方に選択的に設けられている。このため、前記窒化物半導体層の前記イオン注入領域を効率的に加熱することができる。これにより、前記イオン注入領域を貫通するような大きなピットの形成を抑えながら前記イオン注入領域にイオン注入された不純物を活性化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】窒化物半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
【
図2】窒化物半導体装置の第1の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図3】窒化物半導体装置の第1の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図4】窒化物半導体装置の第1の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図5】窒化物半導体装置の第1の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図6】窒化物半導体装置の第1の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図7】窒化物半導体装置の第1の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図8】窒化物半導体装置の第2の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図9】窒化物半導体装置の第2の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図10】窒化物半導体装置の第2の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図11】窒化物半導体装置の第3の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図12】窒化物半導体装置の第3の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図13】窒化物半導体装置の第3の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図14】窒化物半導体装置の第3の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図15】窒化物半導体装置の第3の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図16】窒化物半導体装置の第3の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すように、窒化物半導体装置1は、窒化物半導体層20、窒化物半導体層20の裏面を被覆するように設けられているドレイン電極32、窒化物半導体層20の表面の一部を被覆するように設けられているソース電極34、及び、窒化物半導体層20の表面の一部に設けられているプレーナー型の絶縁ゲート部36を備えている。窒化物半導体層20は、n型のドレイン領域21、n型のドリフト領域22、n型のJFET領域23、p型のボディ領域24、及び、n型のソース領域25を有している。
【0011】
ドレイン領域21は、窒化物半導体層20の下面に露出する位置に設けられており、ドレイン電極32にオーミック接触している。ドレイン領域21は、例えばn型不純物を含む窒化ガリウム(GaN)である。
【0012】
ドリフト領域22は、ドレイン領域21上に設けられており、ドレイン領域21とJFET領域23の間、且つ、ドレイン領域21とボディ領域24の間に配置されている。ドリフト領域22は、例えばn型不純物を含む窒化ガリウム(GaN)である。
【0013】
JFET領域23は、ドリフト領域22上に設けられており、窒化物半導体層20の表面に露出する位置に設けられており、ドリフト領域22の表面から窒化物半導体層20の表面まで厚み方向に延びており、ドリフト領域22の表面から突出した形態を有している。換言すると、JFET領域23は、窒化物半導体層20の表面からボディ領域24を貫通してドリフト領域22まで延びている。JFET領域23は、例えばn型不純物を含む窒化ガリウム(GaN)である。この例では、JFET領域23の不純物濃度は、ドリフト領域22の不純物濃度と等しく、ドリフト領域22の一部と言うことができる。
【0014】
ボディ領域24は、ドリフト領域22上に設けられており、JFET領域23の側面に隣接している。ボディ領域24は、例えばp型不純物を含む窒化ガリウム(GaN)である。
【0015】
ソース領域25は、ボディ領域24上に設けられており、窒化物半導体層20の表面に露出する位置に設けられており、ボディ領域24によってドリフト領域22及びJFET領域23から隔てられている。ソース領域25は、例えばn型不純物を含む窒化ガリウム(GaN)である。ソース領域25は、ソース電極34にオーミック接触している。
【0016】
絶縁ゲート部36は、窒化物半導体層20の表面の一部に設けられており、酸化シリコンのゲート絶縁膜36a及びポリシリコンのゲート電極36bを有している。ゲート電極36bは、JFET領域23とソース領域25を隔てる部分のボディ領域24のチャネル領域CH、及び、JFET領域23にゲート絶縁膜36aを介して対向している。
【0017】
次に、窒化物半導体装置1の動作を説明する。使用時には、ドレイン電極32に正電圧が印加され、ソース電極34が接地される。ゲート電極36bにゲート閾値電圧よりも高い正電圧が印加されると、JFET領域23とソース領域25の間のチャネル領域CHに反転層が形成され、その反転層を介してソース領域25からJFET領域23に電子が流入する。JFET領域23に流入した電子は、そのJFET領域23を縦方向に流れてドレイン電極32に向かう。これにより、ドレイン電極32とソース電極34が導通し、窒化物半導体装置1がターンオンする。ゲート電極36bが接地されると、反転層が消失し、窒化物半導体装置1がターンオフする。このように、窒化物半導体装置1は、ゲート電極36bに印加する電圧に基づいてドレイン電極32とソース電極34の間のオンとオフを切り換えるスイッチング動作を実行することができる。
【0018】
(窒化物半導体装置1の第1の製造方法)
まず、
図2に示されるように、エピタキシャル成長技術を利用して、GaN基板であるドレイン領域21の表面からn型GaNのドリフト領域22をエピタキシャル成長させ、窒化物半導体層20を形成する。
【0019】
次に、
図3に示されるように、フォトリソグラフィー技術を利用して、窒化物半導体層20の表面の一部を被覆するマスク42を成膜する。マスク42は、JFET領域23(
図1参照)が形成される領域23Aに対応して窒化物半導体層20の表面上に選択的に成膜されている。換言すると、マスク42は、ボディ領域24(
図1参照)が形成される領域24Aに対応して開口が形成されている。JFET領域23(
図1参照)が形成される領域23Aが非イオン注入領域の一例であり、ボディ領域24(
図1参照)が形成される領域24Aがイオン注入領域の一例である。
【0020】
次に、
図4に示されるように、イオン注入技術を利用して、窒化物半導体層20の表層部のイオン注入領域24Aにp型不純物としてマグネシウムをイオン注入する(イオン注入工程)。マグネシウムは、注入エネルギーを変えて窒化物半導体層20のイオン注入領域24Aに多段で注入されてもよい。
【0021】
次に、
図5に示されるように、蒸着技術を利用して、窒化物半導体層20の表面を被覆するように、光吸収膜44を成膜する。光吸収膜44は、マスク42が残存した状態で窒化物半導体層20の表面上に成膜されるので、マスク42の頂面上にも成膜される。次に、
図6に示されるように、ウェットエッチング技術を利用して、マスク42を選択的に除去する。これにより、マスク42の頂面上に成膜された光吸収膜44が除去される。この結果、光吸収膜44は、窒化物半導体層20のイオン注入領域24Aの表面上に選択的に成膜される(光吸収膜成膜工程)。
【0022】
光吸収膜44の材料には、そのバンドギャップのエネルギーが窒化物半導体層20のバンドギャップのエネルギー、即ち、窒化ガリウム(GaN)のバンドギャップのエネルギーよりも小さい材料が用いられている。さらに、光吸収膜44の材料には、その融点が窒化物半導体層20の融点、即ち、窒化ガリウム(GaN)の融点よりも高い材料が用いられている。この例では、光吸収膜44の材料には、これら要件を満たす材料として例えば炭素(C)、アルミニウムガリウムヒ素(AlGaAs)が用いられている。なお、炭素を材料とする光吸収膜44は、炭素状態図における準安定黒鉛、又は、黒鉛を含む構造であってもよい。このような光吸収膜44は、例えばCVD技術又はスパッタ技術を利用して成膜することができる。
【0023】
次に、
図7に示されるように、フラッシュランプアニール技術を利用して、窒化物半導体層20の表面に向けて光を照射する(光照射工程)。この光照射工程は、常圧下で実施される。照射される光の波長は、その光のエネルギーが窒化物半導体層20のバンドギャップのエネルギー、即ち、窒化ガリウム(GaN)のバンドギャップのエネルギーよりも小さい波長域から選択されている。このため、照射される光は、窒化物半導体層20では吸収されない。一方、照射される光の波長は、その光のエネルギーが光吸収膜44のバンドギャップのエネルギーよりも大きい波長域から選択されている。このため、照射される光は、光吸収膜44で吸収される。照射される光は、特に限定されるものではないが、例えば赤外線である。
【0024】
光照射工程で光吸収膜44が光を吸収すると、光吸収膜44の温度が上昇する。光吸収膜44の熱は窒化物半導体層20の表面側に熱伝導し、窒化物半導体層20の表面側が加熱され、イオン注入領域24Aにイオン注入されたマグネシウムが活性化してボディ領域24が形成される。同時に、ドリフト領域22の一部であった非イオン注入領域23AがJFET領域23となる。
【0025】
この光照射工程では、窒化物半導体層20の全体が加熱されず、窒化物半導体層20の表面側が加熱される。例えば、この光照射工程では、窒化物半導体層20の厚み方向の温度プロファイルが、窒化物半導体層20の表面で1400℃以上の温度であり、ドリフト領域22とボディ領域24の接合面で800℃以下となるように制御される。1400℃の温度は、イオン注入されたp型不純物のマグネシウムが活性化される温度である。800℃の温度は、窒化ガリウム(GaN)の常圧での分解温度である。このような温度プロファイルとなるように温度制御が行われることにより、窒化物半導体層20の表面側のマグネシウムを活性化しながら、ドリフト領域22での窒化ガリウム(GaN)の分解を抑えることができる。したがって、
図7に示されるように、窒化物半導体層20の表層部に形成されるピット10は、ボディ領域24を貫通するような大きな形状となることが抑えられる。この結果、製造される窒化物半導体装置1では、ドレイン・ソース間のリーク電流の増大が抑えられる。
【0026】
さらに、光吸収膜44は、窒化物半導体層20のイオン注入領域24Aの上方に選択的に設けられている。このため、窒化物半導体層20のイオン注入領域24Aを効率的に加熱することができる。これにより、非イオン注入領域23Aに対する加熱を抑えることができるので、JFET領域23にピットが形成されることを抑えることができる。JFET領域23に形成されるピットは、その上の絶縁ゲート部36の電界集中を引き起こし、ゲートリーク電流の増大の原因となる。上記の製造方法は、このようなゲートリーク電流の増大も抑えることができる。
【0027】
次に、既知の製造技術を利用して、ソース領域25、ゲート絶縁膜36a、ゲート電極36b、ドレイン電極32及びソース電極34を形成することで、
図1に示す窒化物半導体装置1を製造することができる。
【0028】
(窒化物半導体装置1の第2の製造方法)
第2の製造方法において、
図3に示す工程までは第1の製造方法と同様である。ただし、第2の製造方法では、マスク42を除去して次の工程に進む。
【0029】
図8に示されるように、蒸着技術を利用して、窒化物半導体層20の表面を被覆するように、保護膜52を成膜する(保護膜成膜工程)。保護膜52は、窒化物半導体層20の非イオン注入領域23Aとイオン注入領域24Aのいずれの表面にも成膜される。保護膜52の材料には、その融点が窒化物半導体層20の融点、即ち、窒化ガリウム(GaN)の融点よりも高い材料が用いられている。さらに、保護膜52の材料には、後述の光照射工程で照射される光のエネルギーよりも大きいバンドギャップの材料が用いられる。この例では、保護膜52の材料には、これら要件を満たす材料として例えば窒化アルミニウム(AlN)が用いられている。
【0030】
次に、
図9に示されるように、フォトリソグラフィー技術及び蒸着技術を利用して、保護膜52の表面を被覆するように、光吸収膜54を成膜する。光吸収膜54は、窒化物半導体層20のイオン注入領域24Aの上方に選択的に成膜される(光吸収膜成膜工程)。光吸収膜54の材料は、第1の製造方法の光吸収膜44と同一とすることができる。
【0031】
次に、
図10に示されるように、フラッシュランプアニール技術を利用して、窒化物半導体層20の表面に向けて光を照射する(光照射工程)。この光照射工程は、常圧下で実施される。光照射工程で光吸収膜54が光を吸収すると、光吸収膜54の温度が上昇する。光吸収膜54の熱は保護膜52を介して窒化物半導体層20の表面側に熱伝導し、窒化物半導体層20の表面側が加熱され、イオン注入領域24Aにイオン注入されたマグネシウムが活性化してボディ領域24が形成される。第2の製造方法は、第1の製造方法と同様に、ボディ領域24を貫通するような大きなピット10の形成を抑えながら、イオン注入領域24Aにイオン注入されたマグネシウムを活性化し、ボディ領域24を形成することができる。
【0032】
さらに、第2の製造方法では、窒化物半導体層20の表面に保護膜52が成膜されている。保護膜52の材料には、その融点が窒化物半導体層20の融点よりも高い材料が用いられている。このような高融点の保護膜52で被覆されていることにより、窒化物半導体層20の分解が抑えられ、ピット10の形成がさらに抑えられる。特に、第2の製造方法では、JFET領域23の表面上に保護膜52が成膜されているので、JFET領域23の表面上に何も成膜されてない第1の製造方法に比して、JFET領域23にピット10が形成されるのを効果的に抑えることができる。
【0033】
次に、既知の製造技術を利用して、ソース領域25、ゲート絶縁膜36a、ゲート電極36b、ドレイン電極32及びソース電極34を形成することで、
図1に示す窒化物半導体装置1を製造することができる。
【0034】
(窒化物半導体装置1の第3の製造方法)
第3の製造方法において、
図2に示す工程までは第1の製造方法と同様である。
【0035】
図11に示されるように、蒸着技術を利用して、窒化物半導体層20の表面を被覆するように、保護膜62を成膜する(保護膜成膜工程)。保護膜62の材料は、第2の製造方法の保護膜52と同一とすることができる。
【0036】
次に、
図12に示されるように、フォトリソグラフィー技術を利用して、保護膜62の表面の一部を被覆するマスク64を成膜する。マスク64は、非イオン注入領域23Aに対応して窒化物半導体層20の上方に選択的に成膜されている。換言すると、マスク64は、イオン注入領域24Aに対応して開口が形成されている。
【0037】
次に、
図13に示されるように、イオン注入技術を利用して、窒化物半導体層20の表層部のイオン注入領域24Aにp型不純物としてマグネシウムをイオン注入する(イオン注入工程)。マグネシウムは、注入エネルギーを変えて窒化物半導体層20のイオン注入領域24Aに多段で注入されてもよい。このように、保護膜62は、イオン注入時のスルー膜としても機能し、イオン注入されるマグネシウムの注入量及び注入深さを調整することができる。
【0038】
図14に示されるように、保護膜62の表面を被覆するように、光吸収膜66を成膜する。光吸収膜66の材料は、第1の製造方法の光吸収膜44と同一とすることができる。光吸収膜66は、マスク64が残存した状態で保護膜62の表面上に成膜されるので、マスク64の頂面上にも成膜される。次に、
図15に示されるように、ウェットエッチング技術を利用して、マスク64を選択的に除去する。これにより、マスク64の頂面上に成膜された光吸収膜66が除去される。この結果、光吸収膜66は、窒化物半導体層20のイオン注入領域24Aの上方に選択的に成膜される(光吸収膜成膜工程)。
【0039】
次に、
図16に示されるように、フラッシュランプアニール技術を利用して、窒化物半導体層20の表面に向けて光を照射する(光照射工程)。この光照射工程は、常圧下で実施される。光照射工程で光吸収膜66が光を吸収すると、光吸収膜66の温度が上昇する。光吸収膜66の熱は保護膜62を介して窒化物半導体層20の表面側に熱伝導し、窒化物半導体層20の表面側が加熱され、イオン注入領域24Aにイオン注入されたマグネシウムが活性化してボディ領域24が形成される。第3の製造方法は、第1の製造方法と同様に、ボディ領域24を貫通するような大きなピット10の形成を抑えながら、イオン注入領域24Aにイオン注入されたマグネシウムを活性化し、ボディ領域24を形成することができる。さらに、第3の製造方法は、第2の製造方法と同様に、JFET領域23の表面に保護膜62が成膜されているので、JFET領域23にピット10が形成されるのを効果的に抑えることができる。
【0040】
次に、既知の製造技術を利用して、ソース領域25、ゲート絶縁膜36a、ゲート電極36b、ドレイン電極32及びソース電極34を形成することで、
図1に示す窒化物半導体装置1を製造することができる。
【0041】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0042】
本明細書が開示する窒化物半導体装置の製造方法は、一方の主面側にイオン注入領域と非イオン注入領域を有する窒化物半導体層の前記イオン注入領域に不純物をイオン注入するイオン注入工程と、前記窒化物半導体層の前記一方の主面の上方の一部に光吸収膜を成膜する光吸収膜成膜工程であって、前記光吸収膜が前記窒化物半導体層の前記イオン注入領域の上方に選択的に成膜される、光吸収膜成膜工程と、前記光吸収膜に光を照射する光照射工程であって、前記光のエネルギーが前記光吸収膜のバンドギャップのエネルギーよりも大きい、光照射工程と、を備えることができる。イオン注入される不純物は、特に限定されるものではないが、例えばp型不純物のマグネシウムであってもよい。マグネシウムは、良好に活性化させるために高い温度が必要である。このため、本明細書が開示する製造方法は、このような高温のアニール処理が必要なマグネシウムの活性化に特に有用である。前記光吸収膜は、前記窒化物半導体層の前記一方の主面上に直接的に成膜されてもよく、他の層を介して成膜されてもよい。
【0043】
上記製造方法では、前記光照射工程で照射される前記光のエネルギーが、前記窒化物半導体層のバンドギャップのエネルギーよりも小さくてもよい。特に限定されるものではないが、前記光照射工程で照射される前記光として例えば赤外線を採用することができる。赤外線のエネルギーは、前記窒化物半導体層のバンドギャップよりも小さい。このような条件の前記光が用いられると、前記光照射工程では、前記光が前記窒化物半導体層で吸収されないので、前記窒化物半導体層の全体が加熱されることが抑えられる。
【0044】
上記製造方法はさらに、前記窒化物半導体層の前記一方の主面上の一部に前記窒化物半導体層よりも融点が高い保護膜を成膜する保護膜成膜工程であって、前記保護膜が前記窒化物半導体層の少なくとも前記非イオン注入領域の前記一方の主面上に成膜される、保護膜成膜工程、をさらに備えていてもよい。この場合、前記光照射工程で照射される前記光のエネルギーは、前記保護膜のバンドギャップのエネルギーよりも小さくてもよい。このような前記保護膜が成膜されることにより、前記非イオン注入領域にピットが形成されるのを抑えることができる。
【0045】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0046】
1:窒化物半導体装置、 20:窒化物半導体層、 21:ドレイン領域、 22:ドリフト領域、 23:JFET領域、 23A:非イオン注入領域、 24:ボディ領域、 24A:イオン注入領域、 25:ソース領域、 32:ドレイン電極、 34:ソース電極、 36:絶縁ゲート部、 36a:ゲート絶縁膜、 36b:ゲート電極、 44、54、66:光吸収膜、 52、62:保護膜