(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
B41J2/17 103
(21)【出願番号】P 2021056743
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2024-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2020145578
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 衛
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-028132(JP,A)
【文献】特開2010-240877(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0173010(US,A1)
【文献】特開2010-284892(JP,A)
【文献】特開2013-056490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送部と、
前記媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドよりも前記媒体の搬送方向における下流側に配置され、インクのミストを回収するためのダクトと、
前記ダクトにおける前記搬送方向の下流側端部に、前記搬送方向の上流側へ向かう気流を生じさせる気流発生手段と
を備え、
前記気流発生手段は、前記ダクトにおける前記搬送方向の前記下流側端部との間に、前記搬送方向の上流側へ向かう気流の流路を隔てて配置された回転体であり、
前記回転体の少なくとも一部は、前記媒体の厚さ方向において、前記ダクトの前記下流側端部と前記媒体との間に配置され、
前記ダクトは、前記下流側端部を含む前記搬送方向の下流側の一部の開口部分が切り欠かれた切り欠きが形成され、
前記回転体は、前記ダクトの前記切り欠きを貫通するように配置されている
ことを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記回転体は、前記媒体に接触しながら回転するガイドローラである
ことを特徴とする請求項
1記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記ダクトを通してエアを吸引する吸引部を備え、
前記回転体は、前記媒体との間に隙間を隔てて配置され、
前記吸引部は、前記回転体と前記媒体との隙間に前記搬送方向の上流側へ向かう気流が生じる吸引力でエアを吸引する
ことを特徴とする請求項
1記載のインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクのミストを回収するためのダクトを備えるインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット印刷装置において、印刷中に発生するミストが装置内を浮遊し、用紙の印刷面や装置内部品を汚すことがある。
【0003】
そのため、印刷直後の印刷面付近に存在するミストを回収するためのミスト回収装置を用いるインクジェット印刷装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、搬送面に近い場所に上述のダクトを配置してミストを回収する場合、ダクトにミストが付着し堆積していくことで液だれとなることによって、或いはインクで汚れたダクトの吸引口に用紙等の媒体が接触することによって、媒体の印刷面を汚す場合がある。特に、ミストは、媒体の搬送による慣性力を伴って浮遊するため、ダクトにおける媒体の搬送方向の下流側端部の内壁に付着することが多い。
【0006】
本発明の目的は、インクのミストを回収するためのダクトへのミストの付着を抑制することができるインクジェット印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、インクジェット印刷装置は、媒体を搬送する搬送部と、前記媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドよりも前記媒体の搬送方向における下流側に配置され、インクのミストを回収するためのダクトと、前記ダクトにおける前記搬送方向の下流側端部に、前記搬送方向の上流側へ向かう気流を生じさせる気流発生手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
前記態様によれば、インクのミストを回収するためのダクトへのミストの付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施の形態に係るインクジェット印刷装置の内部構造を示す正面図である。
【
図2】一実施の形態に係るインクジェット印刷装置の制御構成を示す図である。
【
図3】一実施の形態におけるミスト回収機構の内部構造を示す正面図である。
【
図4】一実施の形態におけるミスト回収機構の内部構造を示す右側面図である。
【
図5】一実施の形態におけるミストの流れ及び気流を説明するための断面図である。
【
図6】一実施の形態の変形例におけるミスト回収機構の内部構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、一実施の形態に係るインクジェット印刷装置1の内部構造を示す図である。
【0012】
図2は、インクジェット印刷装置1の制御構成を示す図である。
【0013】
なお、
図1及び後述する
図3~
図6に示す上下、左右、及び前後の各方向は、例えば、上下方向が鉛直方向であり、左右方向及び前後方向が水平方向である。
【0014】
図1に示すように、インクジェット印刷装置1は、インクジェットヘッド10と、搬送部20と、媒体供給部30と、媒体排出部40と、ミスト回収機構50と、複数の搬送ローラ対61と、切替機構62と、スイッチバックローラ対63とを備える。また、
図2に示すように、インクジェット印刷装置1は、制御部71と、記憶部72と、操作パネル部73と、インターフェース部74とを備える。
【0015】
図1に示すインクジェットヘッド10は、例えば用紙である媒体SにインクIK(
図3参照)を吐出する。インクジェットヘッド10がインクIKを吐出する際には、媒体Sに付着せずに浮遊するミストM(
図3参照)が放出されてしまう。
【0016】
インクジェットヘッド10は、印刷に用いられる各色分のラインヘッド型のインクジェットヘッドとして複数配置されているとよいが、単一のインクジェットヘッド10のみが配置されていてもよい。また、インクジェットヘッド10は、千鳥状に配列された複数のヘッドモジュールを有するとよい。
【0017】
搬送部20は、搬送ベルト21と、駆動ローラ22と、従動ローラ23~25と、プラテン26とを有する。搬送部20は、インクジェットヘッド10に対向して配置され、媒体Sを搬送方向(
図1における右方向)に搬送する。搬送部20は、例えば、エアの吸着によって、或いは静電吸着によって、媒体Sを吸着しながら搬送するとよい。
【0018】
搬送ベルト21は、例えば、駆動ローラ22及び従動ローラ23~25に掛け渡された無端帯状のベルトであり、回転しながら媒体Sを搬送する。なお、エアの吸引によって媒体Sが搬送ベルト21に吸着される態様では、搬送ベルト21には、吸引ファンによって吸引されるエアを通すための図示しない貫通孔が複数形成される。
【0019】
駆動ローラ22は、図示しない搬送駆動部の一例であるモータ(アクチュエータ)から動力を伝達されることによって回転する。
【0020】
従動ローラ23~25は、駆動ローラ22の回転によって、搬送ベルト21とともに回転する。
【0021】
プラテン26は、搬送ベルト21に囲まれた領域において、搬送ベルト21の上部底面に接触するように配置されている。プラテン26は、例えば樹脂製である。プラテン26は、少なくともインクジェットヘッド10に対向する領域が平板状を呈することが望ましい。一例ではあるが、プラテン26は、図示しないプラテン支持部材に載せられている。このプラテン支持部材は、搬送ベルト21を挟んだ媒体Sの幅方向(前後方向)の両端においてワイヤによって吊り下げられている。このワイヤの巻き取り又は巻き出しが行われることによって、プラテン26が上下動する。このプラテン26の上下動によって、インクジェットヘッド10と搬送路R1(搬送ベルト21,媒体S)とのギャップが変動するが、このギャップはワイヤが巻き取られた状態で規定のギャップとなる。但し、インクジェットヘッド10自体が上下動可能に配置されている場合には、インクジェットヘッド10の上下動によって、インクジェットヘッド10と搬送ベルト21(搬送路R1,媒体S)とのギャップが変動する。なお、エアの吸引によって媒体Sが搬送ベルト21に吸着される態様では、プラテン26及びプラテン支持部材には、搬送ベルト21と同様に、吸引ファンによって吸引されるエアを通すための図示しない貫通孔が複数形成される。
【0022】
媒体供給部30は、供給台31と、スクレーパローラ32と、ピックアップローラ33とを有する。
【0023】
供給台31には、印刷前の媒体Sが積載される。
【0024】
スクレーパローラ32は、供給台31に積載された媒体Sのうち最上位に位置する媒体Sを繰り出して搬送する。
【0025】
ピックアップローラ33は、スクレーパローラ32によって繰り出された媒体Sを搬送路R1へ搬送する。
【0026】
スクレーパローラ32及びピックアップローラ33は、媒体Sを繰り出す繰り出し部材の一例である。
【0027】
媒体排出部40は、排出台41と、排出ローラ対42とを有する。
【0028】
排出台41には、インクジェット印刷装置1の内部(搬送路R1)から排出された印刷済みの媒体Sが積載される。
【0029】
排出ローラ対42は、インクジェット印刷装置1の内部から排出台41へ媒体Sを排出する一対のローラである。
【0030】
ミスト回収機構50については後述するが、ミスト回収機構50は、インクジェットヘッド10がインクIKを吐出する際に放出され、媒体Sに付着せずに浮遊するミストMを回収する。
【0031】
搬送ローラ対61は、インクジェット印刷装置1内の搬送路R1に複数対配置され、媒体Sを搬送する。
【0032】
切替機構62は、印刷部10を通過した搬送路R1内の媒体Sの搬送経路を、両面印刷が行われる場合に媒体Sを印刷部10へ再搬送するための循環搬送路R2側と、排出台41側とに切り替える。
【0033】
スイッチバックローラ対63は、循環搬送路R2に配置され、媒体Sの表裏を反転させる。
【0034】
制御部71は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する演算処理装置として機能するプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit)を有する。
【0035】
記憶部72は、例えば、所定の制御プログラムが予め記録されている読み出し専用半導体メモリであるROM(Read Only Memory)、プロセッサが各種の制御プログラムを実行する際に必要に応じて作業用記憶領域として使用される随時書き込み読み出し可能な半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)、ハードディスク装置などである。
【0036】
操作パネル部73は、各種操作を行うための操作キー、各種情報を表示する表示部などを有することでインクジェット印刷装置1の入力部及び表示部の一例として機能する。
【0037】
インターフェース部74は、ネットワークを介して無線で又は有線で接続されるパーソナルコンピュータなどの各種機器との間での各種情報の授受を行う。例えば、インターフェース部74は、パーソナルコンピュータなどの外部機器から画像データを含む印刷ジョブを受信可能である。
【0038】
図3は、ミスト回収機構50の内部構造を示す正面図である。
【0039】
図4は、ミスト回収機構50の内部構造を示す右側面図である。
【0040】
図5は、ミストMの流れ及び気流A1,A2を説明するための断面図である。
【0041】
図3及び
図4に示すように、ミスト回収機構50は、ダクト51と、吸引部52と、回転体53と、ミスト捕集フィルタ54とを有する。
【0042】
図3に示すように、ダクト51は、インクジェットヘッド10よりも媒体Sの搬送方向Dにおける下流側に配置され、インクのミストMを回収するためのダクトである。なお、複数のインクジェットヘッド10の間にダクト51が配置されていてもよい。
【0043】
吸引部52は、ダクト51を通してエアを吸引する。吸引部52は、例えばファンである。なお、
図4に示すように、ダクト51は、開口部分である下端が媒体Sの上方において、媒体Sの幅方向(前後方向)の全体を覆うように配置されるため、容積が大きくなる。また、吸引部52及びミスト捕集フィルタ54は、ダクト51にミストが付着し堆積することに起因する液だれを防止するために、媒体Sの印面外(例えば媒体Sの後方)に配置されるとよい。なお、ダクト51は、吸引部52側の一部が水平に延び、媒体S側の一部が媒体Sに向かって拡がるように設けられているが、吸引部52及びミスト捕集フィルタ54が媒体Sの印面外に配置されているため、吸引部52やミスト捕集フィルタ54からダクト51の水平部分を伝う距離が長くなり、媒体Sへの液だれが生じにくい。
【0044】
図5に示すように、回転体53は、ダクト51における搬送方向Dの下流側端部51aとの間に、搬送方向Dの上流側へ向かう気流A2の流路を隔てて配置されている。なお、ダクト51には、下流側端部51aを含む下流側の一部の下端が切り欠かれた切り欠き51cが形成されている。
【0045】
回転体53の少なくとも一部は、媒体Sの厚さ方向(インクジェットヘッド10のインク吐出方向である上下方向)において、ダクト51の下流側端部51aと媒体Sとの間に配置されている。但し、回転体53は、ダクト51の下流側端部51aよりも搬送方向Dの下流側に配置されていてもよい。また、回転体53は、ダクト51の切り欠き51cを貫通するように配置されているとよい。
【0046】
回転体53は、上述の搬送部20によって媒体Sが搬送されることに伴って回転する従動ガイドローラであるが、搬送駆動部(例えば、モータ等のアクチュエータ)の駆動によって回転することで搬送部20とともに媒体を搬送する駆動ガイドローラであってもよい。いずれにせよ、回転体53は、媒体Sに接触しながら回転するガイドローラである。
【0047】
ここで、回転体53は、ダクト51における搬送方向Dの下流側端部51aに、搬送方向Dの上流側へ向かう気流A2を生じさせる気流発生手段の一例である。
【0048】
図4に示すミスト捕集フィルタ54は、ダクト51の内部において、ミストMを捕集する。これにより、ミスト捕集フィルタ54は、ミストMの気液分離部分として機能する。
【0049】
上述のミスト回収機構50において、
図5に示すように、吸引部52のエアの吸引力によって、媒体Sの搬送による慣性力を伴ったミストMを含む気流A1が搬送方向Dの上流側からダクト51に流入する。
【0050】
また、吸引部52のエアの吸引力によって、ダクト51の下流側端部51aと回転体53との間から、搬送方向Dの上流側へ向かう(すなわち、気流A1に対向する)気流A2がダクト51内に流入する。そして、回転体53は、回転している。
【0051】
そのため、気流A1に含まれるミストMは、回転体53の回転に伴う図示しない気流によって回転体53に付着せず、また、気流A2によって押し返される。これにより、ミストMは、ダクト51の下流側端部51aの内壁51bに付着せず、吸引部52に向かってエアとともに吸引される。
【0052】
次に、本実施の形態の変形例について、
図6を参照しながら説明する。なお、上述の説明と重複する事項については説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0053】
図6は、変形例におけるミスト回収機構80の内部構造を示す正面図である。
【0054】
図6に示すように、ミスト回収機構80は、ダクト81と、吸引部82と、回転体83,84とを有する。なお、図示はしないが、ミスト回収機構80は、
図4に示すミスト捕集フィルタ54を有するとよい。
【0055】
ダクト81は、上述のダクト51と同様に、インクジェットヘッド10よりも媒体Sの搬送方向Dにおける下流側に配置され、インクのミストMを回収するためのダクトである。
【0056】
吸引部82は、上述の吸引部52と同様に、ダクト81を通してエアを吸引する。吸引部82は、例えばファンである。
【0057】
一方の回転体83は、上述の回転体53と同様に、ダクト81における搬送方向Dの下流側端部との間に、搬送方向Dの上流側へ向かう気流A12の流路を隔てて配置されている。そして、回転体83は、回転体53と同様に、ダクト81における搬送方向Dの下流側端部に、搬送方向Dの上流側へ向かう気流A12を生じさせる気流発生手段の一例である。また、回転体83の少なくとも一部は、媒体Sの厚さ方向(インクジェットヘッド10のインク吐出方向である上下方向)において、ダクト81の下流側端部と媒体Sとの間に配置されている。
【0058】
但し、本変形例の回転体83は、媒体Sとの間に隙間(気流A14の流路)を隔てて配置されている。そのため、回転体83は、図示しない駆動部(例えば、モータ等のアクチュエータ)の駆動によって回転する。回転体83の回転方向は、回転体53と同様に
図6における反時計回りであるが、その逆の時計回りであってもよい。なお、吸引部82は、媒体Sの搬送時においても、搬送方向Dの上流側へ向かう気流A14が生じる吸引力でエアを吸引するとよい。また、吸引部82の吸引力は、気流A14の流速(平均流速)がインクジェット印刷装置1の設定上で最速となる媒体Sの搬送速度よりも速くなるように予め設定されるとよい。
【0059】
他方の回転体84は、ダクト81における搬送方向Dの上流側端部との間に、ダクト81に流入する気流A13の流路を隔てて配置されている。回転体84の少なくとも一部は、媒体Sの厚さ方向(インクジェットヘッド10のインク吐出方向である上下方向)において、ダクト81の下流側端部と媒体Sとの間に配置されている。また、回転体84は、媒体Sとの間に隙間(気流A11の流路)を隔てて配置されている。そのため、回転体84も、回転体83と同様に、図示しない駆動部(例えば、モータ等のアクチュエータ)の駆動によって回転する。なお、回転体84は、媒体Sに接触しながら回転する駆動ガイドローラ又は従動ガイドローラであってもよい。また、回転体84の回転によってミストMがダクト81の搬送方向Dにおける上流側で上方に跳ね上げられてダクト81に流入しなくなる事態が懸念される。この事態が生じるのを抑制するために、回転体84は、媒体Sの幅方向(前後方向)に複数に分離して櫛歯状に配置されていてもよい。これにより、複数に分離した回転体84の隙間からミストMがダクト81に流入しやすくなる。なお、回転体84が上述のように媒体Sに接触しながら回転する駆動ガイドローラ又は従動ガイドローラである場合よりも、回転体84が媒体Sとの間に隙間を隔てて配置され、且つ、この隙間に媒体Sの搬送方向Dの下流側に向かう気流A11が生じている場合に、ミストMがダクト81に流入しやすくなる。
【0060】
上述のミスト回収機構80において、吸引部82のエアの吸引力によって、ダクト81の上流側端部と回転体84との間及び回転体84と媒体Sとの間において、媒体Sの搬送による慣性力を伴ったミストMを含む気流A11,A13が搬送方向Dの上流側からダクト81に流入する。
【0061】
また、吸引部82のエアの吸引力によって、ダクト81の下流側端部と回転体83との間及び回転体83と媒体Sとの間から、搬送方向Dの上流側へ向かう(すなわち、気流A11,A13に対向する)気流A12,A14がダクト81内に流入する。そして、回転体83及び回転体84は、回転している。
【0062】
そのため、気流A11に含まれるミストMは、回転体83,84の回転に伴う図示しない気流によって回転体83,84に付着せず、また、気流A12,A14によって押し返される。これにより、ミストMは、ダクト81の下流側端部及び上流側端部の内壁に付着せず、吸引部82に向かってエアとともに吸引される。
【0063】
以上説明した本実施の形態及び変形例では、インクジェット印刷装置1は、媒体Sを搬送する搬送部20と、媒体SにインクIKを吐出するインクジェットヘッド10と、このインクジェットヘッド10よりも媒体Sの搬送方向Dにおける下流側に配置され、インクIKのミストMを回収するためのダクト51,81と、このダクト51,81における搬送方向Dの下流側端部51aに、搬送方向Dの上流側へ向かう気流A2,A12を生じさせる気流発生手段の一例である回転体53,83とを備える。
【0064】
これにより、ダクト51,81における下流側端部51aと回転体53,83との間から、搬送方向Dの上流側へ向かう気流A2,A12がダクト51,81に流入することによって、媒体Mの搬送による慣性力を伴って搬送方向Dの下流側に向かって浮遊するミストMの気流A1,A11,A13が気流A2,A12によって押し返される。そのため、ミストMがダクト51,81の下流側端部51aの内壁51bに付着するのを抑制することができる。
【0065】
以上のとおり、本実施の形態及び変形例によれば、インクIKのミストMを回収するためのダクト51,81へのミストMの付着を抑制することができる。したがって、ダクト51,81の下流側端部51aの内壁51bへのミストMの付着に起因する液だれを抑制することができ、ひいては、媒体Mの印刷面やインクジェット印刷装置1の内部を汚すのを抑制することができる。
【0066】
また、本実施の形態では、気流発生手段は、ダクト51,81における搬送方向Dの下流側端部51aとの間に、搬送方向Dの上流側へ向かう気流A2,A12の流路を隔てて配置された回転体53,83である。
【0067】
これにより、回転体53,83の回転によって、媒体Mの搬送による慣性力を伴って搬送方向Dの下流側に向かって浮遊するミストMの気流A1,A11,A13を押し返すことができる。したがって、簡素な構成で、ミストMがダクト51,81の下流側端部51aの内壁51bに付着するのを抑制することができる。また、回転体53,83が回転するため、回転体53,83へのミストMの付着や、それに伴う回転体53,83からの液だれを防止することもできる。
【0068】
また、本実施の形態及び変形例では、回転体53,83の少なくとも一部は、媒体Sの厚さ方向において、ダクト51,81の下流側端部51aと媒体Sとの間に配置されている。
【0069】
そのため、ダクト51,81の下流側端部51aの下方の流路の気流A2,A12が、搬送方向Dの上流側に向きやすいため、搬送方向Dに向かって浮遊するミストMの気流A1,A11,A13を、より確実に押し返すことができる。したがって、ダクト51,81の下流側端部51aの内壁51bへのミストMの付着をより一層抑制することができる。
【0070】
また、本実施の形態では、回転体53は、媒体Sに接触しながら回転するガイドローラである。
【0071】
そのため、媒体Sの搬送をガイドするローラを用いた簡素な構成によって、上述のように、ダクト51の下流側端部51aの内壁51bへのミストMの付着を抑制することができる。
【0072】
また、本実施の形態の変形例では、インクジェット印刷装置1は、ダクト81を通してエアを吸引する吸引部82を備え、回転体83は、媒体Sとの間に隙間(気流A14)を隔てて配置され、吸引部82は、回転体83と媒体Sとの隙間に搬送方向Dの上流側へ向かう気流A14が生じる吸引力でエアを吸引する。
【0073】
そのため、回転体83と媒体Sとの間からダクト81に流入する気流A14が、回転体83とダクト81との間からダクト81に流入する気流A12とともに、媒体Sの搬送による慣性力を伴ってダクト81と媒体Sとの間から流入する気流A11,A13を押し返すことができる。したがって、ダクト81の下流側端部の内壁へのミストMの付着をより一層抑制することができる。なお、気流A14の流速が媒体Sの搬送速度よりも速くなる吸引力で吸引部82がエアを吸引する場合には、ダクト81と媒体Sとの間から流入する気流A11,A13を、より確実に押し返すことができる。
【0074】
上述の実施の形態及びその変形例においては、ミストMを回収するダクト51,81における搬送方向Dの下流側端部51aに、搬送方向Dの上流側へ向かう気流A2,A12を生じさせる気流発生手段として回転体53,83を用いているが、送風手段(例えば、ファン)を設け、この送風手段からの送風によってミストMを回収するダクト51,81における搬送方向Dの下流側端部51aに搬送方向Dの上流側に向かう気流A2,A12を生じさせるようにしてもよい。上記送風手段には、ミストMが付着しにくい対策を行うことが好ましい。このような送風手段を設ける構成とすれば、気流A2,A12の強さの調整が容易となり、媒体Sの搬送速度の変化等に迅速に対応することが可能となる。
【0075】
なお、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0076】
[付記1]
媒体を搬送する搬送部と、
前記媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドよりも前記媒体の搬送方向における下流側に配置され、インクのミストを回収するためのダクトと、
前記ダクトにおける前記搬送方向の下流側端部に、前記搬送方向の上流側へ向かう気流を生じさせる気流発生手段と
を備えることを特徴とするインクジェット印刷装置。
[付記2]
前記気流発生手段は、前記ダクトにおける前記搬送方向の前記下流側端部との間に、前記搬送方向の上流側へ向かう気流の流路を隔てて配置された回転体である
ことを特徴とする付記1記載のインクジェット印刷装置。
[付記3]
前記回転体の少なくとも一部は、前記媒体の厚さ方向において、前記ダクトの前記下流側端部と前記媒体との間に配置されている
ことを特徴とする付記2記載のインクジェット印刷装置。
[付記4]
前記回転体は、前記媒体に接触しながら回転するガイドローラである
ことを特徴とする付記2又は3記載のインクジェット印刷装置。
[付記5]
前記ダクトを通してエアを吸引する吸引部を備え、
前記回転体は、前記媒体との間に隙間を隔てて配置され、
前記吸引部は、前記回転体と前記媒体との隙間に前記搬送方向の上流側へ向かう気流が生じる吸引力でエアを吸引する
ことを特徴とする付記2又は3記載のインクジェット印刷装置。
【符号の説明】
【0077】
1 インクジェット印刷装置
10 インクジェットヘッド
20 搬送部
21 搬送ベルト
22 駆動ローラ
23~25 従動ローラ
26 プラテン
30 媒体供給部
31 供給台
32 スクレーパローラ
33 ピックアップローラ
40 媒体排出部
41 排出台
42 排出ローラ対
50 ミスト回収機構
51 ダクト
51a 下流側端部
51b 内壁
51c 切り欠き
52 吸引部
53 回転体
54 ミスト捕集フィルタ
61 搬送ローラ対
62 切替機構
63 スイッチバックローラ対
71 制御部
72 記憶部
73 操作パネル部
74 インターフェース部
80 ミスト回収機構
81 ダクト
82 吸引部
83,84 回転体
A1,A2,A11~A14 気流
D 搬送方向
IK インク
M ミスト
R1 搬送路
R2 循環搬送路
S 媒体