(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/08 20060101AFI20250109BHJP
B60K 5/12 20060101ALI20250109BHJP
F16F 1/38 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
F16F15/08 K
B60K5/12 F
F16F15/08 W
F16F1/38 S
(21)【出願番号】P 2021081279
(22)【出願日】2021-05-12
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】安 之旭
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-169289(JP,A)
【文献】特開2014-173692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/08
B60K 5/12
F16F 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生部及び振動受部のいずれか一方に固定可能な固定部と、前記固定部とともに開口を形成している掛け渡し部とを有している、ブラケットと、
振動発生部及び振動受部の他方に取付可能であるとともに前記ブラケットに形成された前記開口に取り付けられている取付部材と、
前記取付部材に取り付けられているとともに前記開口の内側で軸線方向に延びている弾性軸部と、を備え、
前記取付部材は、前記弾性軸部を周方向に取り囲む周壁部を有しており、
前記周壁部は、周方向の少なくとも一か所に、軸線方向に延びている凹部を有している、防振装置であり、
前記防振装置はさらに、前記弾性軸部が一体に形成されている弾性体を備えており、
前記ブラケットと前記取付部材とは、前記弾性体が前記ブラケットの前記開口内に圧入されていることによって、前記弾性体を介して互いに嵌合しており、
前記凹部は、前記周壁部が周方向に連なるように形成されており、前記周壁部は、周方向において、前記凹部が形成されている部分と、当該凹部が形成されてない部分とを有しており、また、
前記凹部は、前記ブラケットの前記固定部の延在方向において前記弾性軸部を挟んで互いに対向する2か所の位置に配置されている、第1凹部と、前記ブラケットの前記固定部に対して前記弾性軸部を挟んで対向する位置に配置されている、第2凹部と、を含んでおり、
前記第1凹部の底面と、前記第2凹部の底面とは、それぞれ、前記周壁部の先端であり、
前記周壁部のうちの、前記凹部が形成されていない部分の当該周壁部の先端を基準としたときに、前記第1凹部の軸線方向の当該第1凹部の前記底面までの長さと、前記第2凹部の軸線方向の当該第2凹部の前記底面までの長さとは、互いに異なっている、防振装置。
【請求項2】
前記凹部は、前記周壁部が周方向で分断されるように形成されている、請求項1に記載された防振装置。
【請求項3】
前記第1凹部の軸線方向の長さは、前記第2凹部の軸線方向の長さより長い、請求項1
又は2に記載された防振装置。
【請求項4】
前記弾性体は、前記周壁部及び前記凹部を覆っている、請求項1から
3のいずれか1項に記載された防振装置。
【請求項5】
前記弾性体は、軸線方向に直交する方向において前記固定部側に延びる、2つの脚部を有しており、
前記ブラケットと前記取付部材とは、前記弾性体の前記2つの脚部が前記ブラケットの前記開口内に圧入されていることによって、前記弾性体を介して互いに嵌合している、請求項1から
4のいずれか1項に記載された防振装置。
【請求項6】
前記弾性軸部の軸線方向の先端には、連結部が設けられており、
前記ブラケットの軸線方向の先端には、連結用孔が設けられており、
前記ブラケットと前記取付部材とは、前記連結用孔に前記連結部をねじ結合することによって、連結されている、請求項1から
5のいずれか1項に記載された防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の防振装置には、ブラケットに形成された開口に弾性体を介して取付部材を圧入し、当該取付部材と前記ブラケットとの間を弾性軸部によって連結させたものがある(例えば、特許文献1参照。)。これによって、前記取付部材の圧入方向(開口の延在方向)に対する、ばね特性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の防振装置において、前記弾性軸部は、前記取付部材に形成した凹部に設けられている。このため、上記従来の防振装置は、例えば、前記弾性軸部の断面積を大きく確保することによって、圧入方向に対するばね特性を向上させようとした場合、例えば、車両の走行時などの、ブラケットと取付部材とが相対運動を伴うとき、前記凹部の内壁面に接触し易くなるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、弾性軸部と取付部材との接触を回避しつつ、当該弾性軸部の断面積を大きく確保することができる、防振装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る防振装置は、振動発生部及び振動受部のいずれか一方に固定可能な固定部と、前記固定部とともに開口を形成している掛け渡し部とを有している、ブラケットと、 振動発生部及び振動受部の他方に取付可能であるとともに前記ブラケットに形成された前記開口に取り付けられている取付部材と、前記取付部材に取り付けられているとともに前記開口の内側で軸線方向に延びている弾性軸部と、を備え、前記取付部材は、前記弾性軸部を周方向に取り囲む周壁部を有しており、前記周壁部は、周方向の少なくとも一か所に、軸線方向に延びている凹部を有している。本発明に係る防振装置は、弾性軸部と取付部材との接触を回避しつつ、当該弾性軸部の断面積を大きく確保することができる。
【0007】
本発明に係る防振装置において、前記凹部は、前記周壁部が周方向で分断されるように形成されているものとすることができる。この場合、弾性軸部と取付部材の周壁部との接触を、より有効に回避することができる。
【0008】
本発明に係る防振装置において、前記凹部は、前記周壁部が周方向に連なるように形成されているものとすることができる。この場合、弾性軸部と取付部材の周壁部との接触を回避しつつ、前記凹部の軸線方向の長さを調整することによって前記周壁部の剛性を調整することができる。
【0009】
本発明に係る防振装置において、前記凹部は、前記ブラケットの前記固定部の延在方向において前記弾性軸部を挟んで互いに対向する2か所の位置に配置されている。この場合、ブラケットの取付部の延在方向において弾性軸部と取付部材の周壁部との接触を回避することができる。
【0010】
本発明に係る防振装置において、前記凹部は、前記ブラケットの前記固定部に対して前記弾性軸部を挟んで対向する位置に配置されているものとすることができる。この場合、前記ブラケットの前記取付部に対して前記弾性軸部を挟んで対向する位置において弾性軸部と取付部材の周壁部との接触を回避することができる。
【0011】
本発明に係る防振装置において、前記防振装置はさらに、前記弾性軸部が一体に形成されているとともに前記周壁部及び凹部を覆う弾性体を備えており、前記ブラケットと前記取付部材とは、前記弾性体を介して互いに嵌合していることが好ましい。この場合、防振装置全体の構成の簡素化を図りつつ、例えば過大な荷重が入力した際に、弾性軸部と取付部材の周壁部とが接触したときも、当該接触時の衝撃を緩和させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、弾性軸部と取付部材との接触を回避しつつ、当該弾性軸部の断面積を大きく確保することができる、防振装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本発明の第1実施形態に係る防振装置を概略的に示す斜視図である。
【
図1B】
図1の防振装置を、ブラケットと、弾性体付き取付部材とに分解した状態で示す斜視図である。
【
図2A】本発明の第2実施形態に係る防振装置の、弾性体付き取付部材を概略的に示す斜視図である。
【
図2D】
図2Aの弾性体付き取付部材を概略的に示す側面図である。
【
図3A】本発明の第3実施形態に係る防振装置の、弾性体付き取付部材を概略的に示す斜視図である。
【
図3D】
図3Aの弾性体付き取付部材を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の様々な実施形態に係る防振装置について、説明をする。
【0015】
本実施形態において、防振装置1は、ブラケット2を備えている。ブラケット2は、振動発生部及び振動受部のいずれか一方に固定可能な固定部21と、前記固定部21とともに開口Aを形成している掛け渡し部22とを有している。また、防振装置1は、取付部材3を備えている。取付部材3は、振動発生部及び振動受部の他方に取付可能であるとともにブラケット2に形成された開口Aに取り付けられている。さらに、防振装置1は、弾性軸部41を備えている。弾性軸部41は、取付部材3に取り付けられているとともに開口Aの内側で軸線方向に延びている。即ち、防振装置1は、基本的に、ブラケット2、取付部材3及び弾性軸部41を備えている。さらに、防振装置1において、取付部材3は、弾性軸部41を周方向に取り囲む周壁部31を有している。周壁部31は、周方向の少なくとも一か所に、軸線方向に延びている凹部32を有している。
【0016】
本実施形態において、防振装置1は、エンジン(図示省略)と車体との間に配置される、エンジンマウントである。本実施形態において、エンジンは、振動発生部及び振動受部のいずれか一方に相当する。また、本実施形態において、車体は、振動発生部及び振動受部の他方に相当する。
【0017】
以下の説明において、「軸線方向」とは、ブラケット2に形成された開口Aの延在方向をいう。本実施形態において、防振装置1の中心軸線Оは、ブラケット2に形成された開口Aを通り、当該開口Aは、中心軸線Оに対して平行に延びている。即ち、本実施形態において、「軸線方向」は、中心軸線Оに対して平行に延びている。
【0018】
本実施形態において、防振装置1は、車両取付時において、中心軸線Оが車両左右方向に対して平行となるように配置される。したがって、以下の説明において、軸線方向は、車両取付時左右方向ともいう。
【0019】
また、本実施形態において、ブラケット2の固定部21は、平面視において、矩形形状に形作られている。固定部21は、長手方向に延びている。したがって、固定部21の延在方向(以下、「固定部延在方向」)は、固定部21の長手方向である。さらに、本実施形態において、防振装置1は、車両取付時において、ブラケット2の固定部21が車両前後方向に延在するように配置される。したがって、以下の説明において、固定部延在方向は、車両取付時前後方向ともいう。
【0020】
さらに、本実施形態において、防振装置1は、ブラケット2の固定部21を下側(ブラケット2の掛け渡し部22を上側)にするように配置される。したがって、以下の説明において、軸線方向及び固定部延在方向に対して直交する方向は、車両取付時上下方向ともいう。
【0021】
図1A中、符号1Aは、本発明の第1実施形態に係る、防振装置である。
図1Aを参照すれば、防振装置1Aは、弾性体4を備えている。弾性体4は、例えば、ゴムによって形成されており、取付部材3に設けられている。弾性体4は、例えば、取付部材3をインサート品として、当該取付部材3に対して射出成型することができる。弾性体4は、ブラケット2に形成された開口Aに配置されている。本実施形態において、ブラケット2と取付部材3とは、弾性体4を介して互いに嵌合している。
【0022】
また、本実施形態において、ブラケット2と取付部材3とは、弾性軸部41を介して連結されている。本実施形態において、弾性軸部41は、弾性体4と一体に形成されている。本実施形態において、弾性軸部41は、弾性体4の一部として取付部材3に連結されている。
【0023】
また、
図1Bを参照すれば、弾性軸部41の先端には、連結部8が設けられている。本実施形態において、連結部8は、板状の固定部8aと、固定部8aと一体に形成された連結部本体8bとを有している。本実施形態において、連結部本体8bは、ねじによって構成されている。連結部8は、例えば、弾性体4が連結部8に対して射出成型されるすることによって、一体に形成することができる。
【0024】
一方、ブラケット2は、例えば、樹脂(例えば、繊維強化プラスチック)、金属などによって形成することができる。
図1Bを参照すれば、ブラケット2の開口Aは、固定部21と掛け渡し部22とによって形成されている。本実施形態において、固定部21は、掛け渡し部22とともに開口Aを区画する底部21aと、底部21aよりも外側に延びている、2つのフランジ部21bとを有している。本実施形態において、フランジ部21bには、固定用孔21cが形成されている。
【0025】
また、本実施形態において、ブラケット2は、2つの側壁部23を有している。2つの側壁部23は、軸線方向に間隔を置いて配置されている。側壁部23はそれぞれ、固定部21及び掛け渡し部22に固定されている。本実施形態において、側壁部23には、窓23aが形成されている。本実施形態では、窓23aは、開口Aよりも断面積が小さい。また、側壁部23には、連結部本体8bを通すための連結用孔23bが形成されている。
【0026】
取付部材3は、例えば、金属(アルミニウム合金)などによって形成することができる。翻って
図1Aを参照すれば、本実施形態において、取付部材3は、弾性軸部41に設けた連結部8を連結用孔23bに通し、連結部材9を用いることによって、ブラケット2に連結している。本実施形態において、連結部材9は、フランジ付きナットである。この場合、取付部材3は、連結用孔23bに通した連結部本体8bに連結部材9をねじ付けることによって、ブラケット2に連結させることができる。これによって、防振装置1Aによれば、車両取付時左右方向のばね特性を向上させることができる。本実施形態において、連結用孔23bは、長孔であるが、丸穴とすることができる。
【0027】
さらに、本実施形態において、弾性体4は、2つの脚部44を有している。本実施形態において、2つの脚部44は、車両取付時上下方向に延びている。
図1Aに示すように、2つの脚部44は、それぞれ、弾性体4がブラケット2の開口A内に配置されているとき、側壁部23に接触している。したがって、弾性体4の脚部44もまた、車両取付時左右方向のばね特性を保証している。
【0028】
一方、
図1Bを参照すれば、取付部材3は、弾性軸部41を周方向に取り囲む周壁部31を有している。本実施形態において、周壁部31は、取付部材3の軸線側平面部33と連なる基端31aを有している。周壁部31は、当該周壁部31の基端31aから、軸線方向のブラケット側に延びている。
【0029】
さらに、本実施形態において、周壁部31は、弾性体4によって被覆されている。本実施形態において、弾性体4は、周壁部31を被覆する周壁被覆部42を有している。本実施形態において、脚部44は、周壁被覆部42と一体に形成されている。本実施形態において、周壁被覆部42の上面42fは、弾性体4をブラケット2の開口A内に配置したとき、ブラケット2の掛け渡し部22の内面を押圧する。また、本実施形態において、脚部44の下面44fは、弾性体4をブラケット2の開口A内に配置したとき、ブラケット2の固定部21の底部21aを押圧する。即ち、弾性体4は、ブラケット2の開口A内に圧入された状態で配置されている。これによって、防振装置1Aによれば、車両取付時上下方向のばね特性を向上させることができる。
【0030】
さらに本実施形態において、取付部材3の周壁部31は、周方向の少なくとも一か所に、軸線方向に延びている凹部32を有している。この場合、車両の走行時などにおいて、ブラケット2と取付部材3とが互いに相対運動したとき、凹部32が形成された部分では、弾性軸部41と周壁部31との接触を回避することができる。
【0031】
例えば、弾性軸部41の、軸直方向断面積を大きく確保することによって軸線方向のばね特性を向上させようとする場合、弾性軸部41の断面積が大きくなる分、弾性軸部41と周壁部31との間の隙間は小さくなる。この場合、弾性軸部41と周壁部31との接触の可能性は高まることとなる。弾性軸部41と周壁部31との接触は、ばね特性を変化させてしまうため、回避されることが好ましい。
【0032】
これに対し、本実施形態のように、取付部材3の周壁部31の少なくとも一か所に、軸線方向に延びている凹部32を形成すれば、弾性軸部41と取付部材3の周壁部31との接触を回避しつつ、当該弾性軸部41の断面積を大きく確保することができる。したがって、本実施形態によれば、弾性軸部41の断面積を大きく確保することによって軸線方向のばね特性を向上させつつ、弾性軸部41の動きを大きく確保しながら、取付部材との接触を回避することができる。
【0033】
本実施形態において、凹部32は、周壁部31が周方向に連なるように形成されている。この場合、弾性軸部41と取付部材3の周壁部31との接触を回避しつつ、凹部32の軸線方向の長さL32を調整することによって周壁部31の剛性を調整することができる。
【0034】
本実施形態では、周壁部31は、周方向において、凹部32が形成されている部分と、当該凹部32が形成されてない部分とを有している。本実施形態において、周壁部31の先端(軸線方向ブラケット側端)のうち、凹部32が形成されてない部分の、周壁部31の先端31bは、軸線方向において、凹部32が形成されている部分の、周壁部31の先端(凹部32の底面)31cよりも、ブラケット側に位置している。言い換えれば、本実施形態において、周壁部31の、基端31aと先端31bとの間の軸線方向の長さLbは、当該周壁部31の、基端31aと先端31cとの間の軸線方向の長さLcよりも長い。この場合、弾性軸部41と取付部材3の周壁部31との接触を回避しつつ、凹部32の軸線方向の長さL32を調整することによって周壁部31の剛性を調整することができる。
【0035】
また、本実施形態において、凹部32は、ブラケット2の固定部21に対して弾性軸部41を挟んで対向する位置に配置されている。この場合、ブラケット2の固定部21に対して弾性軸部41を挟んで対向する位置において弾性軸部41と取付部材3の周壁部31との接触を回避することができる。本実施形態において、防振装置1Aが車両に取り付けられたとき、凹部32は、車両取付時上方向の位置に配置されている。したがって、本実施形態の場合、車両取付時上方向の位置において弾性軸部41と取付部材3の周壁部31との接触を回避することができる。
【0036】
また、本実施形態において、防振装置1Aはさらに、弾性体4を有している。本実施形態において、弾性軸部41は、弾性体4に一体に形成されている。また、弾性体4は、取付部材3の周壁部31及び凹部32を覆っている。また、本実施形態において、ブラケット2と取付部材3とは、弾性体4を介して互いに嵌合している。この場合、弾性軸部41は、ブラケット2と取付部材3との間に嵌合させた弾性体4に形成されるため、防振装置1A全体の構成の簡素化させることができる。また、この場合、取付部材3の周壁部31及び凹部32が弾性体4によって被覆されるため、弾性軸部41と取付部材3の周壁部31とが接触したときも、当該接触時の衝撃を緩和させることができる。したがって、この場合、防振装置1A全体の構成の簡素化を図りつつ、例えば過大な荷重が入力した際に、弾性軸部41と取付部材3の周壁部31とが接触したときも、当該接触時の衝撃を緩和させることができる。
【0037】
本実施形態において、取付部材3の周壁部31及び凹部32は、弾性体4の周壁被覆部42によって被覆されている。また、本実施形態において、取付部材3の軸線側平面部33は、弾性体4の軸線側平面被覆部43によって被覆されている。さらに、本実施形態において、周壁被覆部42は、軸線側平面被覆部43を介して弾性軸部41と一体に形成されている。また、本実施形態において、周壁被覆部42は、脚部44と一体に形成されている。また、本実施形態において、ブラケット2と取付部材3とは、弾性体4がブラケット2の開口A内に圧入されることによって、当該弾性体4を介して強固に嵌合されている。
【0038】
図2Aは、本発明の第2実施形態に係る防振装置1Bの、弾性体付き取付部材3を概略的に示す斜視図である。以下の説明において、ブラケット2は、省略されている。本実施形態に係るブラケット2としては、防振装置1Aと同様のブラケットを用いることができる。
【0039】
図2Aには、弾性体4が一体に形成された取付部材3を示す。本実施形態において、弾性体4は、防振装置1Aと同様に、取付部材3に対して一体に形成することができる。あるいは、取付部材3と弾性体4を別体に形成し、互いに組み付けることができる。
図2Bは、本実施形態に係る弾性体4を示す。
図2Cは、本実施形態に係る取付部材3を示す。
【0040】
本実施形態において、凹部32は、防振装置1Aと同様、ブラケット2の固定部21に対して弾性軸部41を挟んで対向する位置に配置されている。即ち、本実施形態もまた、防振装置1Aと同様、車両取付時上方向の位置において弾性軸部41と取付部材3の周壁部との接触を回避することができる。
【0041】
さらに、本実施形態に係る、取付部材3において、凹部32は、周壁部31が周方向で分断されるように形成されている。この場合、弾性軸部41と取付部材3の周壁部31との接触を、より有効に回避することができる。
【0042】
図2Cを参照すれば、取付部材3において、凹部32の底面31cは、軸線側平面部33と一致している。この場合、軸線側平面部33から延びている、周壁部31は、凹部32の部分で完全に分断されている。この場合、弾性軸部41と取付部材3の周壁部31との接触を、より有効に回避することができる。
【0043】
【0044】
図2Eを参照すれば、弾性軸部41が防振装置1Bの固定部延在方向において取付部材3を起点に動いた(傾斜した)とき、周壁部31は、弾性軸部41の動きに対するストッパ機能を維持することができる。本実施形態において、周壁部31は、防振装置1Bを車両に取り付けたとき、車両取付時前後方向に対する、弾性軸部41のストッパとして機能させることができる。
【0045】
一方、
図2Fを参照すれば、弾性軸部41が防振装置1Bの軸線方向及び固定部延在方向に対して直交する方向において取付部材3を起点に一方側に動いた(傾斜した)とき、周壁部31は、弾性軸部41の動きに対するストッパ機能を維持することができる。本実施形態において、周壁部31は、防振装置1Bを車両に取り付けたとき、車両取付時下方向に対する、弾性軸部41のストッパとして機能させることができる。
【0046】
これに対し、
図2Fを参照すれば、弾性軸部41が防振装置1Bの軸線方向及び固定部延在方向に対して直交する方向において取付部材3を起点に他方側に動いた(傾斜した)とき、凹部32は、弾性軸部41の動きを妨げることがない。本実施形態において、凹部32は、防振装置1Bを車両に取り付けたとき、車両取付時上方向に位置している。これによって、弾性軸部41は、防振装置1Bを車両に取り付けたとき、車両取付時上方向に対して、周壁部31に干渉されることなく動くことができる。
【0047】
したがって、防振装置1Bによれば、防振装置1Aと同様、弾性軸部41と取付部材3との接触を回避しつつ、当該弾性軸部41の断面積を大きく確保することができる。特に、本実施形態によれば、凹部32は、周壁部31が周方向で分断されるように形成されている。この場合、弾性軸部41と取付部材3の周壁部31との接触を、より有効に回避することができる。
【0048】
なお、本実施形態において、取付部材3の軸線側平面部33は、軸線方向に突出する突出部33pを有している。弾性軸部41は、突出部33p上に配置されている。ただし、軸線側平面部33は、平面で構成することができる。また、本実施形態において、弾性軸部41は、その先端(連結部8側)が車両取付時上方向に向かって傾斜するように形成されている。ただし、弾性軸部41の傾斜の向きは、例えば、防振装置1Bを車両に組付けたときに、エンジンから受ける静荷重に応じて、決定することができる。また、弾性軸部41は、軸線方向に平行に配置することができる。また、周壁被覆部42は、
図2Fに示すように、局所的に間欠させることができる。
【0049】
図3Aは、本発明の第3実施形態に係る防振装置1Cの、弾性体付き取付部材3を概略的に示す斜視図である。以下の説明においてもまた、防振装置1Bと同様、ブラケット2は、省略されている。
【0050】
図3Aには、弾性体4が一体に形成された取付部材3を示す。本実施形態において、弾性体4は、防振装置1Aと同様に、取付部材3に対して一体に形成することができる。あるいは、取付部材3と弾性体4を別体に形成し、互いに組み付けることができる。
図3Bは、本実施形態に係る弾性体4を示す。
図3Cは、本実施形態に係る取付部材3を示す。
【0051】
本実施形態において、凹部32は、防振装置1Aと同様、周壁部31が周方向に連なるように形成されている。即ち、本実施形態において、周壁部31は、防振装置1Aと同様、周方向に全周にわたって環状に形成されている。
【0052】
本実施形態において、凹部32は、防振装置1Aと同様、ブラケット2の固定部21に対して弾性軸部41を挟んで対向する位置に配置されている。即ち、本実施形態もまた、防振装置1Aと同様、車両取付時上方向の位置において弾性軸部41と取付部材3の周壁部31との接触を回避することができる。
【0053】
さらに、
図3Aを参照すれば、本実施形態において、凹部32は、ブラケット2の固定部延在方向において弾性軸部41を挟んで互いに対向する2か所の位置に配置されている。この場合、ブラケット2の取付部延在方向において弾性軸部41と取付部材3の周壁部31との接触を回避することができる。本実施形態において、防振装置1Cが車両に取り付けられたとき、凹部32は、車両取付時上方向の位置に加えて、車両取付時前後方向のそれぞれの位置に配置されている。したがって、本実施形態の場合、車両取付時前後方向の位置においても弾性軸部41と取付部材3の周壁部31との接触を回避することができる。
【0054】
【0055】
図3Eを参照すれば、弾性軸部41が防振装置1Cの固定部延在方向において取付部材3を起点に動いた(傾斜した)とき、凹部32は、弾性軸部41の動きを妨げることがない。本実施形態において、弾性軸部41は、防振装置1Cを車両に取り付けたとき、車両取付時上方向に対して、周壁部31に干渉されることなく動くことができる。
【0056】
また、
図3Fを参照すれば、弾性軸部41が防振装置1Cの軸線方向及び固定部延在方向に対して直交する方向において取付部材3を起点に一方側に動いた(傾斜した)ときもまた、凹部32は、弾性軸部41の動きを妨げることがない。本実施形態において、弾性軸部41は、防振装置1Cを車両に取り付けたとき、車両取付時上方向に対して、周壁部31に干渉されることなく動くことができる。
【0057】
これに対し、凹部32が存在しない個所(例えば、防振装置1Cの軸線方向及び固定部延在方向に対して直交する方向のうちの他方側の箇所)では、周壁部31は、弾性軸部41の動きに対するストッパ機能を維持することができる。本実施形態において、弾性軸部41の動きは、防振装置1Cを車両に取り付けたとき、車両取付時下方向において規制される。
【0058】
したがって、防振装置1Bによれば、防振装置1Aと同様、弾性軸部41と取付部材3との接触を回避しつつ、当該弾性軸部41の断面積を大きく確保することができる。
【0059】
なお、
図3Eを参照すれば、本実施形態において、車両取付時前後方向の、周壁部31の先端(凹部32の底面)31cは、符号31c2で示されている。また、
図3Fを参照すれば、本実施形態において、車両取付時上方向の、周壁部31の先端(凹部32の底面)31cは、符号31c1で示されている。
図3E及び
図3Fを比較すれば、本実施形態において、車両取付時前後方向の凹部32の長さL32は、車両取付時上方向の凹部32の長さL32よりも長い。これは、車両前後方向の動き(例えば、急発進、急減速)を優先しての構成である。ただし、凹部32が複数である場合、凹部32の長さL32の大小関係は適宜設定することができる。また、凹部32が複数である場合、凹部32の長さL32は、同じであってもよい。即ち、凹部32が複数である場合、それぞれの凹部32の長さL32は、適宜設定することができる。また、取付部材3の軸線側平面部33は、平面で構成されているが、防振装置1Bのように、軸線側平面部33に突出部33pを形成することができる。
【0060】
上述のとおり、本発明の、各実施形態によれば、弾性軸部41と取付部材3との接触を回避しつつ、当該弾性軸部41の断面積を大きく確保することができる、防振装置を提供することができる。
【0061】
上述したところは、本発明の一実施形態を例示したにすぎず、特許請求の範囲に従えば、様々な変更が可能となる。例えば、上述の各実施形態は、車両取付時下方向の周壁部31を基点に凹部32を設定している。これは、上述の各実施形態において、取付部材3は、弾性体4の脚部44を介して支持されているためである。ただし、本発明によれば、凹部32は、車両取付時下方向の周壁部31に形成することができる。また、凹部32は、車両取付時前後方向及び左右方向のうちの、4方向のいずれか1方向の位置に形成することができる。さらに、凹部32は、上記4方向のいずれか1方向以外の方向の位置に形成することができる。また、本発明によれば、凹部32が複数である場合、凹部32の少なくとも1つを、周壁部31が周方向で分断されるように形成し、その他の凹部32の少なくとも1つを、周壁部31が周方向に連なるように形成することができる。また、上述の各実施形態は、周壁部31及び凹部32は、弾性体4によって被覆されている例で説明したが、周壁部31及び凹部32は、弾性体4によって被覆されてなくてもよい。また、本発明において、周壁部31には、弾性軸部41を周方向に全周にわたって取り囲む環状の周壁部と、弾性軸部41を周方向に断続的に取り囲む複数の(周)壁部と、が含まれる。ここで、複数の(周)壁部は、周方向に間隔を置いて配置されている。さらに、上述した各実施形態に採用された様々な構成は、適宜、相互に置き換えることができ、又は、組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0062】
1A~1C:防振装置, 2:ブラケット, 21:固定部, 22:掛け渡し部, 3:取付部材, 31:周壁部, 31a:周壁部の先端, 31b:周壁部の基端, 32: 凹部, 33:軸線側平面部, 4:弾性体, 41:弾性軸部, 42:周壁被覆部, 43:軸線側平面被覆部, 44:脚部, A:開口, О:開口の延在方向軸線,