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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】光導光部材
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/04 20060101AFI20250109BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20250109BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G02B5/04 A
G02B5/18
G02B5/32
G02B5/04 F
G02B5/04 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021118058
(22)【出願日】2021-07-16
(65)【公開番号】P2023013693
(43)【公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】安藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】武田 広大
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-163252(JP,A)
【文献】特表2018-535506(JP,A)
【文献】特開2001-056451(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0293434(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00 - 5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1辺(10a)と前記第1辺に対向する第2辺(10b)とを有し、外景からの外光が入射するように構成された入射部(10,11)と、
前記入射部に対して傾斜するように前記第1辺に接しており、入射した前記外光の一部を透過し、入射した前記外光の別の一部を反射するように構成された射出部(21,22)と、
前記射出部から離間して前記射出部に平行に配置され、入射した前記外光を反射するように構成された反射部(30)と、
前記第2辺と、前記反射部の入射部側の辺とを接続する傾斜部(40)と、を備え、
前記反射部及び前記射出部の内側における内部反射角(φ)であって、導光断面において前記射出部の第1法線(l1)を基準線とする角度である内部反射角は、前記導光断面における前記外光の入射角(θ)よりも大きく構成されており、前記導光断面は、前記第1法線と前記入射部の第2法線(l2)とで定義される面に相当し、
前記入射部の傾斜角である第1傾斜角(ψ)は、前記導光断面における前記第1法線を基準とする角度であり、前記内部反射角よりも小さく構成されており、
前記第1法線の方向における前記射出部から前記第2辺までの高さ(Td)は、前記射出部と前記反射部との間隔(T)よりも大きく構成されており、
前記傾斜部の傾斜角である第2傾斜角(ξ)は、前記導光断面における前記第1法線を基準とする角度であり、前記内部反射角以下に構成されている、
光導光部材。
【請求項2】
前記高さは、前記間隔の2倍以下に構成されている、
請求項1に記載の光導光部材。
【請求項3】
前記第1傾斜角(ψ)と前記内部反射角(φ)との和は、π/2よりも小さい、
請求項1又は2に記載の光導光部材。
【請求項4】
前記射出部(22)は、第1周期構造により構成されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の光導光部材。
【請求項5】
前記入射部(11)は、前記第1周期構造により構成されている、
請求項4に記載の光導光部材。
【請求項6】
前記第1周期構造は、回折格子又はホログラムを含む、
請求項4又は5に記載の光導光部材。
【請求項7】
前記射出部(21)は、反射透過部(210)と第2周期構造(211)との2重構造により構成されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の光導光部材。
【請求項8】
前記入射部(11)は、前記第2周期構造により構成されている、
請求項7に記載の光導光部材。
【請求項9】
前記第2周期構造は、前記導光断面に沿って複数のプリズム(211a)が配列されたプリズムアレイ又はプリズムシートを含む、
請求項8に記載の光導光部材。
【請求項10】
前記射出部の各プリズムは、前記外光を射出するように構成された射出側面(211b)と、前記射出側面に対向する射出対向面(211c)とを含み、
前記入射部の各プリズムは、前記外光が入射するように構成された入射側面(111b)と、前記入射側面に対向する入射対向面(111c)とを含み、
前記射出側面は前記入射側面と平行に構成されている、
請求項9に記載の光導光部材。
【請求項11】
前記射出対向面は前記入射対向面と平行に構成されている、
請求項10に記載の光導光部材。
【請求項12】
前記内部反射角は、全反射角度である、
請求項1~11のいずれか1項に記載の光導光部材。
【請求項13】
前記傾斜部は、光吸収部材を有する、
請求項1~12のいずれか1項に記載の光導光部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外景からの光を導光する光導光部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の死角補助装置は、半透過ミラーと、反射ミラーとを備える。上記死角補助装置は、死角領域からの光を、半透過ミラーと反射ミラーとの間で反射往復させて使用者の方へ射出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-143087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記死角補助装置は、半透過ミラーと反射ミラーとの間隔を狭くすると、反射回数の増加による画質の低下や、視認像の不連続性の増加が生じる。そのため、上記死角補助装置は薄型化することが困難である。
本開示の1つの局面は、反射回数の増加及び視認像の不連続性の増加を回避するとともに、薄型化可能な光導光部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1つの局面の光導光部材は、入射部(10,11)と、射出部(21,22)と、反射部(30)と、傾斜部(40)と、を備える。入射部は、第1辺(10a)と第1辺に対向する第2辺(10b)とを有し、外景からの外光が入射するように構成される。射出部は、入射部に対して傾斜するように第1辺に接しており、入射した外光の一部を透過し、別の一部を反射するように構成される。反射部は、射出部から離間して射出部に平行に配置され、入射した外光を反射するように構成される。傾斜部は、第2辺と反射部の入射部側の辺とを接続する。反射部及び射出部の内側における内部反射角(φ)は、導光断面における外光の入射角(θ)よりも大きく構成される。導光断面は、射出部の第1法線(l1)と入射部の第2法線(l2)とで定義される面に相当する。第1法線に対する入射部の傾斜角である第1傾斜角(ψ)は、内部反射角よりも小さく構成される。第1法線の方向における射出部から第2辺までの高さ(Td)は、射出部と反射部との間隔(T)よりも大きく構成される。第1法線に対する傾斜部の傾斜角である第2傾斜角は、内部反射角よりも小さく構成される。
【0006】
本開示の1つの局面の光導光部材は、内部反射角が外景光の入射角よりも大きいため、内部での反射回数を抑制しつつ薄型化することができる。また、第1傾斜角及び第2傾斜角が内部反射角よりも小さく、且つ、射出部から第2辺までの高さが射出部と反射部との間隔よりも大きいため、視認像の連続性を確保できる。したがって、視認像の不連続性及び反射回数の増加を回避するとともに、薄型化可能な光導光部材を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る光導光部材の構成を示す導光断面図である。
図2】第1実施形態に係る光導光部材の射出部の構成を示す図である。
図3】参考例に係る光導光部材における中心画角の外景光線の導光を示す図である。
図4】参考例に係る光導光部材における中心画角よりも小さい画角の外景光線の導光を示す図である。
図5】入射角と内部反射角とが等しい場合における光導光部材の厚さを示す図である。
図6】入射角よりも内部反射角が大きい場合における光導光部材の厚さを示す図である。
図7】参考例に係る光導光部材における入射角と第1傾斜角と入射角と内部反射角とを示す図である。
図8】参考例に係る光導光部材の第2傾斜角と視認像の連続性との関係を示す図である。
図9】参考例に係る光導光部材における最大入射角での導光を示す図である。
図10】第2実施形態に係る光導光部材の構成を示す導光断面図である。
図11】第2実施形態に係る射出部の構成を示す図である。
図12】第3実施形態に係る光導光部材の構成を示す導光断面図である。
図13】第3実施形態に係る入射部及び射出部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本開示の例示的な実施形態を説明する。
(1.第1実施形態)
<1-1.構成>
本実施形態に係る光導光部材101の構成について、図1及び図2を参照して説明する。光導光部材101は、入射部10と、射出部21と、反射部30と、傾斜部40と、終端部50と、透光性部材60と、を備える。入射部10、射出部21、反射部30、傾斜部40、終端部50及び透光性部材60は、透光性の樹脂材料により形成されている。
【0009】
入射部10は、第1辺10aと、第2辺10bとを備える面であり、外景からの光Lが入射角θで入射する。射出部21は、入射部10に対して傾斜するように第1辺10aに接している。射出部21は、射出部21に入射した光Lの一部を透過し、別の一部を内部反射角φで反射する。ここでは、射出部21の法線(以下、第1法線)l1と、入射部10の法線(以下、第2法線)l2とで定義される面を導光断面と称する。図1は、光導光部材101の導光断面を示す。
【0010】
入射部10は、第1法線l1に対して第1傾斜角ψ傾斜している。第1辺10a及び第2辺10bは、導光断面に垂直な辺である。第2辺10bは、射出部21から高さTd離れている。
【0011】
反射部30は、射出部21から離間して射出部21に平行に配置されている面である。反射部30は、射出部21から導光幅T離れている。反射部30は、反射部30に入射した光Lを全反射する。したがって、内部反射角φは、透光性部材60の屈折率をnとして、φ>sin-1(1/n)の条件を満たすように構成されている。
【0012】
傾斜部40は、第2辺10bと反射部30の入射部10側の辺とを接続する面である。傾斜部40は、第1法線l1に対して第2傾斜角ξ傾斜している。傾斜部40には、光吸収膜が配置されている。光吸収膜は、傾斜部40に到達した光Lの反射を抑制する。
【0013】
傾斜部40に配置された光吸収膜は、図1で入射部10に入射する光線の内、射出部21に到達しない光線(すなわち、Paを通過する上側点線の入射光線より上の白い部分に入射する光線)が傾斜部40に直接到達した場合の反射を抑制し、ゴースト像の発生が抑制される。
【0014】
終端部50は、射出部21と反射部30とを接続する面である。透光性部材60は、射出部21と、反射部30と、傾斜部40と、終端部50と囲まれた内部を埋めている。すなわち、光導光部材101は、中実構造を有する。
【0015】
射出部21は、透過反射面210とプリズムアレイ211とを含む。透過反射面210は、透光性部材60に接して、反射部30に平行に設けられている。透過反射面210は、透過反射面210に入射した光Lの一部を反射し、別の一部を透過する。
【0016】
プリズムアレイ211は、透過反射面210の外側の面上に設けられており、配列された複数のプリズム211aを備える。プリズムアレイ211は、透過反射面210を透過した光Lの角度を屈折作用により変換して射出する。詳しくは、プリズムアレイ211は、屈折作用により、入射角φを射出角θに変換する。これにより、射出部21から射出される光Lの角度は、光導光部材101への光Lの入射角θと等しくなる。したがって、外景が実在する方向に、外景の視認像が表示される。なお、プリズムアレイ211は、複数のプリズム211aが配列されたプリズムシートに変更してもよいし、他の周期構造に変更してもよい。
【0017】
各プリズム211aは、射出側面211bと、射出側面211bに対向する射出対向面211cとを含む。プリズムアレイ211へ入射した光Lは、射出側面211bから射出され、射出対向面211cからは射出されない。
【0018】
射出側面211bは、第1法線l1に対して第3傾斜角ψ傾斜している。第3傾斜角ψは第1傾斜角ψと等しい。すなわち、射出側面211bは、入射部10と平行である。射出対向面211cには、光吸収膜が配置されている。これにより、射出部21の外側から射出部21へ到達する外光が、射出対向面211cから入射したり、射出対向面211cで反射したりすることを抑制できる。ひいては、外景からの光Lにノイズ光が混入することを抑制できる。さらには、プリズムの内側から射出対向面211cに到達した射出光線の反射によるノイズ光が混入することを抑制できる。
【0019】
光導光部材101は、入射角θ、内部反射角φ、第1傾斜角ψ、第2傾斜角ξ、導光幅T、高さTdが所定の条件を満たすように構成されている。所定の条件は、光導光部材101の内部での反射回数及び視認像の不連続性の増加を抑制し、ゴースト像を抑制し、光導光部材101を薄型化する関係である。以下に、所定の条件について説明する。
【0020】
外光からの光Lの入射角θがθ1-θ2~θ1+θ2の範囲を持つ場合がある。図3は、入射角θ1-θ2~θ1+θ2のうちの中心画角θ1の光線の導光を示す。一方、図4は、入射角θ1-θ2~θ1+θ2のうちの最小の画角θ1-θ2の光線の導光を示す。図4に示すように、画角θ1-θ2の光線が参考例に係る光導光部材300へ入射した場合、透過反射面120に入射した光線は、透過反射面120に到達して内部反射角φ1-φ2で反射する。この時入射面110の傾斜角ψが、ψ>φ1-φ2の関係にあると、透過反射面120に近い端部に入射した光線は、透過反射面120で反射した後、反射面130に到達する前に、入射面110に到達して、入射面110で全反射する。よって、入射面110への入射位置に応じて、往復反射の光路が変化する。その結果、正規の内部反射角φ1-φ2の光線に加えて、内部反射角φ1+φ2の光線が生じる。内部反射角φ1+φ2の光線は、画角θ1+θ2からの光線と同じ内部反射角を持つため、内部反射角φ1+φ2の光線は、画角が反転した位置に見えるゴースト像(すなわち反転像)として視認されることになる。そのため、ψ≦φ1-φ2<φ1(=φ)とすることで、入射光線が透過反射面120で反射後に入射面110に到達してゴースト像を生じることを抑制する。
【0021】
図5に示す参考例に係る光導光部材310は、入射面110と、透過反射面120と、反射面130とを備え、中空構造を有する。入射面110には、光路幅Dの入射光が入射する。透過反射面120は、入射した光の一部を内部反射角θで反射して、別の一部を透過する。光導光部材310の内部へ入射した光は、N回反射往復し、透過反射面120から表示視域Sへ射出される。表示視域Sの幅は、透過反射面120から射出される光の幅に相当する。表示視域Sが広いほど、使用者は広い範囲で外景を視認できる。
【0022】
内部反射角φは入射角θと等しいため、導光幅T=D/(2sinθ)、N+1=S/Dが成り立つ。よって、T=S/(2(N+1)sinθ)が成り立つ。したがって、反射往復回数Nを増加させることにより、導光幅Tを縮小して薄型化することができる。
【0023】
しかしながら、反射往復回数Nを増加させると、射出される光の輝度のばらつきが増加する。また、反射往復回数Nを増加させると、透過反射面120からの射出光の光路の境界が増加する。その結果、表示視域Sにおける視認像の不連続性が増加する。
【0024】
そこで、図6に示す参考例に係る光導光部材320は、透過反射面120と反射面130との間を屈折率nの透過部材で繋いで一体化した中実構造を有する。光導光部材320の内部における内部反射角φは、入射角θよりも大きい。そのため、T=S/(2(N+1)sinφ)<S/(2(N+1)sinθ)が成り立ち、導光幅Tは、内部反射角φが入射角θと等しい場合よりも、小さくなる。
【0025】
しかしながら、入射角θ<内部反射角φにして、光導光部材320の内部での光路を圧縮しようとすると、入射面110の第1傾斜角ψを大きくすることができない。その結果、図7に示すように、表示視域Sにおいて、表示の抜けが生じ、視認像が不連続になる。そのため、不連続を回避するためには第1傾斜角ψを内部反射角φに近づけることが必要となる。
【0026】
一方で、薄型化するためには、第1角度αと第2角度βの差分を大きくすることが必要である。すなわち、薄型化するためには、第1角度αを大きくすることが必要である。α=π/2-(θ+ψ)、β=π/2-(φ+ψ)である。また、薄型化するためには、θ<φの条件を満たすことが必要であり、θ<φの条件を満たすためには、α>0の条件を満たすことが必要である。さらに、θ+α=φ+β=π/2-ψであるから、ψとφが略一致する場合、θ+ψ<φ+ψ<π/2の条件を満たす必要がある。すなわち、薄型化し且つ視認像の不連続を回避するためには、θ<π/4でなければならない。つまり、入射角θがπ/4よりも大きい外景光に対しては、不連続性の回避と薄型化を両立することは不可能となる。
【0027】
そこで、入射角θがπ/4を超えても薄型化を実現しながら視認像の不連続を回避するために、ψ<π/4<φとしながら、高さTdを導光幅Tよりも大きくして、第2傾斜角ξを内部反射角φよりも小さくする必要がある。
図8は、第2傾斜角ξが内部反射角φよりも大きくなるように構成された光導光部材340を示す。ξ>φの場合、入射面110に入射した光Lのうちの最上端の光線LAは、端部Paを通らない。そのため、光線LAと光線LBとの間に光路の抜けが生じ、表示視域Sにおける視認像が不連続になる。光線LBは、入射面110から入射して透過反射面120で反射し、端部Paに到達する光線である。端部Paは、傾斜面140と接続する反射面130の端部である。一方、ξ<φの場合、光線LAは端部Paを通るため、光線LAと光線LBとの間に光路の抜けが生じず、表示視域Sにおける視認像の連続性が確保される。
【0028】
よって、薄型化を実現し、ゴースト像を抑制し、反復回数及び視認像の不連続性の増加を抑制する所定の条件は、(i)入射角θ<内部反射角φ、(ii)第1傾斜角ψ<内部反射角φ、(iii)高さTd<導光幅T、(iv)第2傾斜角ξ<内部反射角φとなる。高さTdを所望の入射角θに対しTd>Tとなる範囲で調整することにより、(i)、(ii)、(iv)の条件も満たす光導光部材101を実現できる。
【0029】
また、高さTdは、傾斜面140に入射する光線が傾斜面140と平行になるときに最小になる。これよりも高さTdが小さいと、入射する光線が傾斜面140に干渉する。すなわち、最上端の光線LAと最下端の光線LBとの交点と透過反射面120との距離が、導光幅Tと一致するときに、高さTdは最小になるこの関係は、Td≧2T×tanφ/(tanφ+tanψ)となる。ψ<φ<π/2である場合、必ずTd>Tとなる。また、Tdの高さとして必要な値が最大(すなわち、必要最小限の高さ)となるのは、入射部の角度ψが小さく、かつ傾斜面140の傾斜角ξが小さくなる場合である。傾斜角ξを最小にする条件は、入射角θが0となることである。第1傾斜角ψが正の値である場合のみ、θ=0の光線を入射させることのできるので、第1傾斜角ψの最小値は0となる。第1傾斜角ψ=0である場合の入射部高さTdは、前述の式よりTd=2Tとなる。導光部材を薄型化に対して、入射部の高さもできる限り小さくすることが望ましいことから、無駄な高さを使用せずに広い範囲の入射角に対応できるTdの最大値は2Tとなる。
【0030】
また、外光からの光Lの入射角θがθ1-θ2~θ1+θ2の範囲を持つ場合、最大入射角θ1+θ2の光線が、端部Paを通らないと、光路に抜けが生じて、視認像が不連続になる。よって、図9に示すように、最大入射角θ1+θ2の光線が端部Paを通るように、内部反射角φは、入射角θが最大入射角θ1+θ2であるときの反射角とする。
【0031】
また、入射角θの範囲をθ1-θ2~θ1+θ2、内部反射角φの範囲が、φ1-φ2~φ1+φ2である場合、視認像の連続性を確保するため、ξ<φ1-φ2の条件を満たすように、光導光部材101は構成されている。
【0032】
<1-2.効果>
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)内部反射角φが入射角θよりも大きいため、内部での反射回数を抑制しつつ光導光部材101を薄型化することができる。また、第1傾斜角ψ及び第2傾斜角ξが内部反射角φよりも小さく、高さTdが導光幅Tよりも大きいため、表示視域Sにおける視認像の連続性を確保できる。さらに、高さTdが導光幅Tの2倍以下のため、入射部の高さは一定以下に制限できる。したがって、視認像の不連続性及び反射回数の増加を回避するとともに、薄型化可能な光導光部材を実現できる。
【0033】
(2)射出部21が透過反射面210とプリズムアレイ211の2重構造により構成されていることにより、射出部21に入射した光Lの一部を反射するとともに、別の一部を入射角θと同じ角度で射出することができる。
【0034】
(3)傾斜部40に光吸収部材が設けられていることにより、光導光部材101の内部から傾斜部40へ到達した光Lの反射を抑制することができる。ひいては、表示視域Sにおけるゴースト像の発生を抑制することができる。
【0035】
(2.第2実施形態)
<2-1.第1実施形態との相違点>
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0036】
第1実施形態に係る光導光部材101は、射出部21を備えていた。これに対して、図10に示すように、第2実施形態に係る光導光部材102は、射出部21の代わりに射出部22を備える点で、第1実施形態と異なる。
【0037】
図11に、射出部22の一部を拡大して示す。射出部22は、透過型のホログラムにより構成されている。射出部22は、透過回折により、角度φを角度θ´に変換する。すなわち、射出部22は、角度φで入射した光線を、角度θ´の光線に変換する。
【0038】
ここで、sinθ´=sinθ/nの条件を満たすようにθ´を設定することにより、角度θ´の光線は、射出部22から角度θで射出される。よって、射出部22から射出される光Lの角度は、光導光部材102への光Lの入射角θと等しくなる。
【0039】
また、ホログラムでの回折効率を適切に調整することで、ホログラムで回折する光線(すなわち角度θ´の光線)と、ホログラムを透過して、空気との界面で反射して導光する光線LCとに分割することができる。なお、射出部22は、回折機能を有する部材であればよく、ホログラム以外に、回折格子などの回折光学部材でもよい。
【0040】
<2-2.効果>
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1)及び(3)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0041】
(4)射出部22がホログラムにより構成されていることにより、回折効率を適切に調整することにより、射出部22に入射した光Lの一部を反射するとともに、別の一部を入射角θと同じ角度で射出することができる。
【0042】
(3.第3実施形態)
<3-1.第1実施形態との相違点>
第3実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0043】
第1実施形態に係る光導光部材101は、入射部10を備えていた。これに対して、図12に示すように、第3実施形態に係る光導光部材103は、入射部10の代わりに入射部11を備える点で、第1実施形態と異なる。
【0044】
図13に示すように、入射部11は、複数のプリズム111aが配列されたプリズムアレイで構成されている。入射部11をプリズムアレイで構成することにより、第1傾斜角ψを維持しつつ、プリズムアレイの段差を利用して、高さTdを第1及び第2実施形態よりも小さくすることができる。
【0045】
各プリズム111aは、入射側面111bと、入射側面111bに対向する入射対向面111cとを含む。入射側面111bは、第1法線l1に対して第1傾斜角ψ傾斜している。すなわち、入射側面111bと射出側面211bは平行になっている。外景からの光Lは、入射側面111bから入射し、射出側面211bから射出される。入射側面111bと射出側面211bとが平行になっていることにより、入射時の光Lの色分散が、射出時に相殺される。
【0046】
入射対向面111cには、光吸収膜が配置されている。また、入射対向面111cは、射出対向面211cと平行になっている。さらに、入射対向面111c及び射出対向面211cは、第1法線l1に対して所定角度傾斜している。この所定角度は、入射角θに近い値である。そして、第1法線l1に対する第3法線l3の傾斜角度δは、第2法線l2の傾斜角度と等しく、傾斜角度δと第1傾斜角ψの関係は、δ+ψ=π/2になっている。上述したように、薄型化のために、θ+ψ<φ+ψ<π/2の条件を満たしている。よって、φ<δを満たしており、傾斜角度δは、内部反射角φよりも大きくなっている。第3法線l3は、入射側面111bの法線である。これにより、光路の抜けが抑制されるとともに、使用者からプリズム斜面が見えることが抑制される。
【0047】
なお、入射部11は、複数のプリズム111aが配列されたプリズムシートに変更してもよいし、他の周期構造に変更してもよい。
<3-2.効果>
以上詳述した第3実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1)及び(3)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0048】
(5)入射部11がプリズムアレイで構成されていることにより、入射部11が平滑面である場合と比べて、第1傾斜角ξを維持しつつ、高さTdを小さくすることができる。
(6)射出側面211bと入射側面111bが平行に構成されていることにより、入射時の光Lの色分散を、射出時に相殺することができる。
【0049】
(7)入射対向面111cと射出対向面211cが平行に構成されていることにより、使用者からプリズム斜面が見えることが抑制される。
(4.他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0050】
(a)第2実施形態に係る光導光部材102は、入射部10を備えていたが、入射部10の代わりに、回折格子又はホログラム等の回折光学部材で構成された入射部を備えていてもよい。
【0051】
(b)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10,11…入射部、10a…第1辺、10b…第2辺、21,22…射出部、30…反射部、40…傾斜部、50…終端部、60…透光性部材、101,102,103…光導光部材、111a,211a…プリズム、111b…入射側面、111c…入射対向面、210…透過反射面、211…プリズムアレイ、211b…射出側面、211c…射出対向面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13