(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】インプラント、インプラントを挿入するための挿入装置、インプラントおよび挿入装置のシステム、インプラントに接続するためのプレートアセンブリ、インプラントおよびプレートアセンブリのシステム、ならびにそれらを備えたキット
(51)【国際特許分類】
A61F 2/46 20060101AFI20250109BHJP
A61F 2/44 20060101ALI20250109BHJP
A61B 17/88 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A61F2/46
A61F2/44
A61B17/88
(21)【出願番号】P 2021152391
(22)【出願日】2021-09-17
【審査請求日】2023-11-27
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511211737
【氏名又は名称】ビーダーマン・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN TECHNOLOGIES GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティモ・ビーダーマン
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・ヘーグレ
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0101960(US,A1)
【文献】特開2017-042619(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0056194(US,A1)
【文献】特表2013-509940(JP,A)
【文献】国際公開第2011/056172(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44,46
A61B 17/70,17/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラン
トであって、
2つの骨部分または椎骨の間のスペースに挿入可能な本体を備え、前記本体は、第1面(5a)と、前記第1面に接続され前記第1面の反対側にある第2面(5b)とを含み、
前記本体は、前記インプラントのための挿入装置(100,200)のまたはプレート部材(310)のような二次装置の保持部材(110,210,330)に、前記インプラント(1,1’,1’’)を接続するための、少なくとも1つの接続部分(10,10’,30,30’)を含み、
前記接続部分(10,10’,30,30’)は、前記本体の前記第1面と前記第2面との間に画定され前記保持部材の係合部分(118,118’;218;338)を収容するように構成された中空スペースを含み、前記中空スペースは、前記第1面と前記第2面との間に形成された開口部(11,31)を通して前記本体の外部からアクセス可能であり、
前記開口部(11,31)は、前記保持部材の前記係合部分が第1の向きであるときは前記係合部分を前記開口部を通して前記中空スペースに挿入できるようにし前記係合部分が第2の向きであるときは前記係合部分が前記中空スペースから取り外されないようにする、細長い開口部であり、
前記接続部分(10,10’,30,30’)は、前記インプラントの中または上に位置し、少なくとも2つの異なる保持部材(110,210,330)を前記インプラントに選択的に接続することを可能にするように構成されている、インプラント。
【請求項2】
前記中空スペースは球状部分(12)を含み、前記第1面(5a)と前記第2面(5b)との間に、前記球状部分の中心を通って回転軸(R)が延びて
いる、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記開口部(11)は、前記回転軸(R)の周りに延在し、第1の輪郭を有し、前記第1の輪郭は、前記保持部材の前記係合部分(218;338)が前記中空スペースの中にあるときに、前
記インプラント(1,1’,1’’)が前記回転軸を中心として前記保持部材(110,210,330)に対して第1の角度位置に旋回することおよび第2の角度位置に旋回することを容易にするように構成されている、請求項2に記載のインプラント。
【請求項4】
前記少なくとも2つの異なる保持部材は、少なくとも2つの異なる挿入装置とプレートアセンブリとを含む群のうちの少なくとも2つに関連付けられている、請求項3に記載のインプラント。
【請求項5】
前記第1面と前記第2面との間に延びる側壁(2,2a)は2つのコーナーを有し、前記2つのコーナーの各々は前記側壁の長さ部分の端部に位置し、前記接続部分(10,10’)は前記コーナーのうちの一方のコーナーに位置する、請求項2~4のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項6】
前記接続部分は第1の接続部分(10)であり、前記コーナーのうちの他方のコーナーに第2の接続部分(10’)が設けられ
ている、請求項5に記載のインプラント。
【請求項7】
前記第1の接続部分および前記第2の接続部分(10,10’)はそれぞれ2つの保持部材(118,118’)と係合するように構成され、前記2つの保持部材は、前記インプラントを挿入するための挿入装置の実質的にフォーク形状の保持部分(110)を形成する、請求項6に記載のインプラント。
【請求項8】
挿入装置のまたはプレートアセンブリのようなさらに他の装置の保持部分(210,330)の係合部分(218,338)と係合するように構成された少なくとも1つの第3の接続部分(30,30’)をさらに含み、前記第3の接続部分は、前記保持部分と前記インプラントとがその間に1つの角度だけを形成できるように係合するように構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項9】
前記インプラントは脊椎インプラントである、請求項1~8のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項10】
前記インプラントは、椎間インプラント、または、椎骨または椎骨の一部のためのプレースホルダである、請求項9に記載のインプラント。
【請求項11】
前記回転軸は、前記第1面と前記第2面との間に延びる側壁(2)に対して実質的に平行である、請求項2に記載のインプラント。
【請求項12】
前記2つのコーナーの間の前記側壁の中心を通り前記側壁(2,2a)の前記長さ部分に対して実質的に垂直である平面(S)を中心として、前記第2の接続部分は前記第1の接続部分に対して実質的にミラー対称である、請求項6に記載のインプラント。
【請求項13】
請求項6~8
および12のいずれか1項に記載のインプラントを挿入するための挿入装置であって、前記挿入装置(100)は、2つの保持部材(111,111’)を備え、前記2つの保持部材の各々は係合部分(118,118’)を有し、前記2つの保持部材は実質的にフォーク形状の保持部分を形成し、前記係合部分はそれぞれのコーナーにある接続部分と係合するように構成され、前記保持部材(111,111’)は、それぞれの前記係合部分の間の距離が第1の距離である第1の構成から、前記係合部分の間の距離が第2の距離である第2の構成に移動するように構成され、前記第2の距離は前記第1の距離よりも小さい、挿入装置。
【請求項14】
前記保持部材(111,111’)の周りにスリーブ(120)が設けられ、前記スリーブは、前記保持部材を前記第1の構成から前記第2の構成に移動させるように、前記保持部材に対して変位可能である、請求項
13に記載の挿入装置。
【請求項15】
請求項
6~8
および12のいずれか1項に記載のインプラント
と、請求項
13または
14に記載の挿入装置
と、を備えるシステムであって、前記保持部材(111,111’)は、前記第1の構成において、前記インプラントをクランプ締めせずに前記接続部分(10,10’)と係合するように構成され、前記保持部材は、前記第2の構成において、前記接続部分と係合し前記インプラントをクランプ締めするように構成されている、システム。
【請求項16】
請求項1~
12のいずれか1項に記載のインプラントに接続するためのプレートアセンブリであって、前記プレートアセンブリは、プレート部材(310)と、前記プレート部材に接続可能な保持部材(330)とを備え、前記保持部材は、前記接続部分とねじ山なしで係合するように構成された係合部分(338)を含む、プレートアセンブリ。
【請求項17】
前記インプラントの前記接続部分(10,10’,30,30’)において前記保持部材(330)の前記係合部分(338)をロックするように構成されたロック部材(350)をさらに備える、請求項
16に記載のプレートアセンブリ。
【請求項18】
請求項1~
12のいずれか1項に記載のインプラント
と、請求項
16または
17に記載のプレートアセンブリ
と、を備えるシステムであって、前記第2の
向きにおいて前記係合部分が前記中空スペースの中にあるときにおいて、ロックする前に、前記係合部分(338)が旋回して前記第2の
向きから前記第1の
向きになるのを阻止する旋回阻止構造(335a,341)をさらに含む、システム。
【請求項19】
請求項1~
12のいずれか1項に記載のインプラントと、請求項
13または
14に記載の挿入装置(100)、1つの保持部材のみを有する挿入装置(200)、および請求項
16または
17に記載のプレートアセンブリ(300)を含むグループのうちの少なくとも2つとを備える、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプラントに関し、特に、脊椎インプラント、このようなインプラントのための挿入装置、およびプレートアセンブリに関する。このインプラントは、たとえば、椎間板が損傷を受けた場合に椎間板と置換するための椎間インプラント、または、脊椎切除術によって切除された椎骨のスペースを架橋するためのプレースホルダであってもよい。
【背景技術】
【0002】
椎間板が損傷を受けた場合の、腰部または胸部椎体間固定手術は、最も一般的に行われる器具を用いた脊椎固定手術のうちの1つである。とりわけ、腰椎の椎体間固定のための周知の外科的なアプローチは、腰椎後方椎体間固定術(posterior lumbar interbody fusion)(PLIF)、腰椎経椎間孔椎体間固定術(transforaminal lumbar interbody fusion)(TLIF)、腰椎前方椎体間固定術(anterior lumbar interbody fusion)(ALIF)、前側方ALIFおよび側方椎体間固定術、ならびに斜め側方椎体間固定術を含む。
【0003】
たとえばTLIFに適した椎間インプラントおよび椎間インプラントを挿入するための装置は、US2017/0056194A1に記載されている。この椎間インプラントは、上面と、底面と、上面と底面との間に延びる側壁と、椎間インプラント内に形成され、側壁の凹部を貫通する細長い開口部を通してアクセス可能な中空スペースとを含む。中空スペースは、挿入具の駆動シャフトの係合部分を収容する形状を有する。椎間インプラントは少なくとも2つのガイド面を含み、これらのガイド面は、向かい合い、駆動シャフトを移動可能に保持する挿入具のスリーブの一部と摺動係合するように構成されている。
【0004】
US2016/0235546A1には一時固定部を備えたスペーサが記載されており、これは、スペーサと、プレートと、装着部材と、一時固定ねじとを含む。スペーサの一時固定部は、スペーサの挿入後に患者を回転させている間にスペーサが移動するのを防止するために、側方脊椎処置に適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】US2017/0056194A1
【文献】US2016/0235546A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の基礎となる目的は、改善されたまたは代替のインプラント、そのための挿入装置、および固定装置、ならびに、インプラントと挿入装置またはプレートアセンブリ等の固定装置とを含むシステムを提供することであり、これらは、用途が広くかつ使用が簡単であり、拡大された応用分野を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載のインプラント、請求項9に記載の挿入装置、請求項12に記載のプレートアセンブリ、および、請求項11または14に記載のシステムによって達成される。さらに他の発展形態は従属請求項に記載されている。特定の独立請求項の従属請求項に記載されたさらに他の発展形態は、特に明記されていなくても、他の独立請求項にも適用可能である。
【0008】
ある実施形態に従うと、椎骨のための、インプラント、特に脊椎インプラント、たとえば椎間インプラントまたはプレースホルダは、2つの骨または骨部分の間の、より具体的には2つの椎骨の間のスペースに挿入可能な本体を備え、この本体は、第1面と、第1面に接続され第1面の反対側にある第2面とを含み、本体は、インプラントのための挿入装置のまたはプレート部材のような二次装置の保持部材に、脊椎インプラントを接続するための、少なくとも1つの接続部分を含む。接続部分は、本体の第1面と第2面との間に画定され保持部材の係合部分を収容するように構成された中空スペースを含み、中空スペースは、第1面と第2面との間に形成された開口部を通して本体の外部からアクセス可能である。開口部は、保持部材の係合部分が第1の向きであるときは係合部分を開口部を通して中空スペースに挿入できるようにし係合部分が第2の向きであるときは係合部分が中空スペースから取り外されないようにする、少なくとも一部において長さが幅よりも大きい細長い開口部である。接続部分は、インプラントに位置し、少なくとも2つの異なる保持部材をインプラントに選択的に接続することを可能にするように構成されている。
【0009】
上記インプラント、特に脊椎インプラントの接続部分は、多機能である。この接続部分は、当該接続部分と協働するようにされた、挿入機器またはプレート部材のようなさらに他の装置の保持部分を、挿入して傾斜させ、傾斜後に保持部分が外れないようにできるように設計されている。加えて、異なる外科的挿入アプローチに適した異なる挿入装置のようなその他の機器を、この接続部分を異なるやり方で用いて、インプラントに接続することができる。
【0010】
この接続にはねじ山がないので、強固であり、接続、切り離し、および再接続し易い。
上記インプラント、特に脊椎インプラントは、椎間板交換のための椎間インプラント、または、1つ以上の椎骨またはその一部を除去した場合の隙間を架橋するためのプレースホルダであってもよい。
【0011】
このインプラントは、機能性が増しているので、特に、脊椎に対する前方および側方からのアプローチならびに再置換手術といった難しい解剖学的状況の場合に有用となり得る。
【0012】
他の実施形態に従うと、上記インプラントを挿入するための挿入装置は、2つの保持部材を備え、2つの保持部材の各々は係合部分を有し、2つの保持部材は、挿入装置のフォーク形状の保持部分を形成し、係合部分はそれぞれ、インプラントの両端のコーナーに設けられた接続部分と係合するように構成されている。保持部材は、それぞれの係合部分の間の距離が第1の距離である第1の構成から、係合部分の間の距離が第2の距離である第2の構成に移動するように構成され、第2の距離は前記第1の距離よりも小さい。保持部材の周りにスリーブが設けられてもよく、スリーブは、保持部材を第1の構成から第2の構成に移動させるように、保持部材に対して変位可能である。
【0013】
このような挿入装置に、インプラント、特に脊椎インプラント、最も好適には椎間インプラントを、クランプ方式で係合し、機器によって固定することができる。その後、このインプラントを、たとえば前方からのアプローチによって挿入することができる。
【0014】
さらに他の実施形態に従うと、プレートアセンブリは、プレート部材と、プレート部材に接続可能な保持部材とを備え、保持部材は、脊椎インプラントの接続部分とねじ山なしで係合するように構成された係合部分を含む。特に、プレート部材は、インプラントを含む脊椎領域に対して一時的な安定をもたらすことができる一時固定プレートとして使用されてもよい。
【0015】
ねじ山のない接続は、プレート部材が、インプラント、特に脊椎インプラントに対してさまざまな角度位置をとることも可能にする。
【0016】
さらに他の実施形態に従うと、インプラント、特に脊椎インプラントは、開口部を有し除去された1つ以上の椎骨またはその一部のためのプレースホルダを形成することを意図した管部材を含む。接続部分の中空スペースはこの管の内部に形成されている。
【0017】
さらに他の実施形態に従うと、キットは、上記インプラント、特に脊椎インプラントと、以下で説明する少なくとも2つの異なる挿入装置およびプレートアセンブリを含む群のうちの少なくとも2つの装置とからなる。
【0018】
さらに他の特徴および利点は、添付の図面による実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】特にALIF処置および/または前側方ALIF処置のための、椎間インプラントの形態の脊椎インプラント、ならびにそのための第1の挿入装置の第1の実施形態の斜視図を示す。
【
図2】
図1の椎間インプラントの上からの斜視図を示す。
【
図3】
図1および
図2の椎間インプラントの下からの斜視図を示す。
【
図6】
図1の挿入装置の保持部分の上からの斜視図を示す。
【
図9】
図1~
図8の挿入装置と椎間インプラントとを接続するためにこれらの相対的な向きを定めるステップの斜視図を示す。
【
図10】
図9の椎間インプラントを挿入装置と係合させるステップの斜視図を示す。
【
図11a】上記図面に係る椎間インプラントを挿入装置と係合させ椎間インプラントを挿入装置に対してロックするステップの断面図を示す。
【
図11b】上記図面に係る椎間インプラントを挿入装置と係合させ椎間インプラントを挿入装置に対してロックするステップの断面図を示す。
【
図11c】上記図面に係る椎間インプラントを挿入装置と係合させ椎間インプラントを挿入装置に対してロックするステップの断面図を示す。
【
図11d】上記図面に係る椎間インプラントを挿入装置と係合させ椎間インプラントを挿入装置に対してロックするステップの断面図を示す。
【
図12】
図1~
図11dに示される椎間インプラントを、第1の接続モードの挿入装置の第2の実施形態とともに示す。
【
図13】第2の接続モードの
図12の挿入装置および椎間インプラントの斜視図を示す。
【
図20】
図12~
図19の挿入装置および椎間インプラントの相対的な向きを定めるステップの斜視図を示す。
【
図21】椎間インプラントを
図12の挿入装置と係合させる第2のステップを示す図である。
【
図22a】第1の接続モードにおける
図12に示される椎間インプラントと
図12に示される挿入装置との係合の断面図であり、挿入装置に対する椎間インプラントのさまざまな旋回位置のうちの1つを示す。
【
図22b】第1の接続モードにおける
図12に示される椎間インプラントと
図12に示される挿入装置との係合の断面図であり、挿入装置に対する椎間インプラントのさまざまな旋回位置のうちの1つを示す。
【
図22c】第1の接続モードにおける
図12に示される椎間インプラントと
図12に示される挿入装置との係合の断面図であり、挿入装置に対する椎間インプラントのさまざまな旋回位置のうちの1つを示す。
【
図22d】第1の接続モードにおける
図12に示される椎間インプラントと
図12に示される挿入装置との係合の断面図であり、挿入装置に対する椎間インプラントのさまざまな旋回位置のうちの1つを示す。
【
図22e】第2の接続モードにおける
図13に示される椎間インプラントと
図13に示される挿入装置との係合の断面図を示す。
【
図23】
図1~
図22dの椎間インプラントおよびプレートアセンブリの分解斜視図を示す。
【
図24】
図23の椎間インプラントおよびプレートアセンブリの組み立てられた構成を示す図である。
【
図38】
図23および
図24のプレートアセンブリならびに別の椎間インプラントの形態の脊椎インプラントの他の実施形態の斜視図を示す。
【
図39】脊椎インプラントおよび挿入装置のさらに他の実施形態の斜視図を示し、このインプラントは、たとえば脊椎切除術に続いて使用されるプレースホルダである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、椎間インプラント1の形態の脊椎インプラント、および椎間インプラント1を椎間スペースに挿入するための挿入装置100の斜視図を示す。図面に示される椎間インプラント1は、特に、腰椎前方椎体間固定術(ALIF)に使用することができる。しかしながら、本実施形態はこの種の椎間インプラントに限定される訳ではない。加えて、さらに詳しくは
図2~
図5を参照すると、椎間インプラント1は、実質的に上下方向の側壁2を含む本体を有する。側壁2は、内側中実部分3と一体的に形成され、1つ以上の内側中空スペース4を取囲んでいる。中空スペース4は、椎間インプラント1の上面5aおよび下面5bに向かって開いている。
【0021】
さらに詳しくは、側壁2は、前壁2aと、反対側の後壁2bと、右側壁2cと、左側壁2dとで形成され、これらの壁は一体的に形成され、右側壁および左側壁が前壁2aと後壁2bとを相互に接続している。前壁2aは椎間インプラント1の前方壁を表し、後壁2bはその後方壁を表す。前壁2aおよび後壁2bを右側壁2cおよび左側壁2dよりも長くして、椎間インプラント1が細長い輪郭を有するようにしてもよい。図示の実施形態において、前壁2aおよび後壁2bは、実質的に互いに平行であり、椎間インプラントの長手方向中心軸LIを画定する。加えて、前壁2aおよび後壁2bの高さを異なるようにして上面5aと下面5bとがある角度を形成し、結果として椎間インプラント1が楔形状を有するようにしてもよい。たとえば、脊柱前弯症の矯正のために前壁2aの高さを後壁2bの高さよりも大きくしてもよい。
【0022】
任意で、内壁6a、6bが、前壁2aから後壁2bまで延びていてもよく、この内壁により、中空スペース4は互いに分離される。示されている実施形態において、このような中空スペース4は3つ設けられているが、椎間インプラントの設計はこの数に限定される訳ではない。内壁6a、6bは、前壁2aおよび後壁2bの中心を通り上下方向に延びる矢状面Sを中心として対称であってもよい。中実部分3は、前壁2aから、後壁2bからある距離をおいた場所まで延び、以下でより詳細に説明するリセスの形態の接続部分を挿入装置100と係合するのに十分な深さで中実部分3に形成できるようにする、前壁から後壁への方向の長さを有する。中空スペース4は、骨移植材料または生物由来物質(biologics)で充填されるように構成されている。さらに、係合部分、たとえば歯(図示せず)を椎間インプラント1の上面5aおよび下面5bに設けて、隣接する椎骨の終板に挿入し易くしてもよい。
【0023】
前壁2aから左側壁2bおよび右側壁2cに移行する部分に形成されるコーナーのそれぞれに、リセス10、10’が設けられ、各リセスは側壁2に細長い開口部11を形成する。各リセス10、10’は、挿入装置またはプレート部材の保持部分と接続するための接続部分を画定する。
【0024】
2つのリセス10、10’は矢状面Sを中心としてミラー対称であり、そのため、以下ではリセス10のみをより詳細に説明するが、本実施形態においてリセス10’は反対側のコーナーにありミラー対称の設計である。リセス10は、椎間インプラント1内において、挿入装置の一部を収容するための中空スペースを画定する。リセス10は、中実部分3の中に向かって延び、90°よりもわずかに大きい角度のコーナーを形成する。よって、リセス10の左および右の境界壁10a、10bは、90°をわずかに上回る、たとえば最大約100°の角度を形成する。リセス10および開口部11は、側壁2の中央において高さ方向に設けられてもよい。この角度は約100°または正確に100°であってもよいことを理解されたい。
【0025】
高さ方向におけるリセス10の幅は、挿入装置100の係合部分を、ある向きでは導入できるが傾斜した向きでは導入できない幅である。リセス10の上壁および下壁は、平坦であってもよく、互いに実質的に平行かつ側壁2に対して実質的に垂直に延びていてもよい。開口部11は、前壁2aから、前壁2aと右側壁2cとの間のコーナーにわたって周方向に右側壁に延びている。
【0026】
リセス10の内部のコーナーには、挿入装置100の係合部分を収容するように構成された球状リセス12が形成されている。
図11cおよび
図11dにより詳細に示されるように、球状リセス12の半径は、挿入装置の係合部分の外面の半径と一致する。球状リセス12の中心を通って側壁2に平行に延びる軸Rは、回転軸を形成し、より具体的には、以下でより詳細に説明するように、椎間インプラント1と挿入装置またはプレート部材の係合部分との間の旋回運動を可能にする旋回軸を形成する。開口部11の周方向端部において、リセス10の境界を定める境界壁10a、10bは、係合部分との係合を案内するのに適した輪郭を有し得る。これはたとえば実質的に円筒形であってもよい。境界壁10bは、右側壁2dに対して実質的に垂直であり、境界壁10aは、球状リセス12と境界壁10aとの間に拡大部分10cが形成されるように、前壁2aに対してわずかな角度をなして延びている。これにより、挿入装置の係合部分を挿入し易くすることができる。
【0027】
加えて、側壁2は、細長い開口部11の領域において、挿入装置に対してフォームフィット(form-fit)係合を実現する当接面を提供するように、および/または挿入装置の旋回運動のためのガイド面を提供するように成形された外面を有していてもよい。
図5により詳細に示されるように、第1の当接面21が、右側壁2cに延在する細長い開口部の横方向端部の周囲に設けられる。リセス10’の場合、第1の当接面21は左側壁2dにある。第1の当接面21は、回転軸Rに対して実質的に平行な円筒軸を有する実質的に円筒の形状であってもよい。第2の実質的に平坦な当接面22が、反対側の、前壁2aに延在する細長い開口部11の横方向端部の周囲に設けられる。最後に、第3の実質的に平坦な当接面23が、開口部11の実質的に中心の周囲に延びていてもよく、これは、第2の当接面22との間に実質的に45°の角度を形成する。
【0028】
任意で、椎間インプラント1は、側壁2にさらに他の接続部分を含み得る。示されている実施形態において、椎間インプラントは、右側壁2cおよび左側壁2dにそれぞれ追加のリセス30および30’を有する。各リセス30、30’は、細長い開口部31を画定し、内部球状リセス32を含み、その中に挿入された係合部分の回転を可能にする。リセス30、30’の各々は、挿入装置またはプレート部材の保持部材の係合部分を、ある向きでは挿入できるが傾斜した向きでは挿入できないように、構成されている。接続部分30、30’が許容する、インプラントと装着する装置の保持部分との間の角度は、1つのみである。接続部分30、30’を、挿入装置とインプラントとの間の角度の変化を許容するように設計することもできることに注意されたい。
【0029】
任意で、1つ以上の追加の孔40を前壁2aに設けてもよい。この追加の孔にねじ山を形成し、隣接する椎体に対する椎間インプラント1の追加の固定用の固定ねじ(図示せず)を収容するようにしてもよい。追加の孔40の軸を、上面5aおよび下面5bに対して傾斜させて、中で延びる固定ねじが、椎体のそれぞれの終板と係合するように構成されるようにしてもよい。
【0030】
リセスおよび孔の数と位置は、本実施形態に示される数と位置に限定されるものではなく、それよりも多いまたは少ないリセスおよび孔が設けられてもよく、その位置が変わってもよいことに、注意されたい。
【0031】
次に
図1および
図6~
図8を参照して、挿入装置100について説明する。挿入装置100は、保持部分110と、保持部分110の周りにおいて延びるように構成されたスリーブ120と、保持部分に接続されたハンドル130とを含む。スリーブ120は、挿入装置100の長手方向軸を画定する。保持部分110は、2つの保持部材111、111’を含み、その前部分112、112’が、椎間インプラント1と係合するように構成されたフォークの形状のクランプを形成する。保持部材111、111’はそれぞれ長手方向のバー113、113’を含み、バー113、113’はこれらの後端114で接続されている。後端114から、ねじ山を有する端部116を備えたポスト115が延びている。前部分112、112’はそれぞれ、長手方向軸を横切って外方向に延びるクロスバー117、117’を含む。クロスバー117、117’のそれぞれの外側端部から、係合部分118、118’が、長手方向軸Lに対して実質的に平行な方向に延びている。クロスバー117、117’は、実質的に矩形の断面を有していてもよく、その高さは、好ましくは前壁2aの高さよりも小さい。クロスバー117、117’の長さは、係合部分118、118’をリセス10、10’に挿入できる長さである。
【0032】
係合部分118、118’は、実質的に球体の一部の形状の端部分119、119’を有し、その上面および下面は、実質的に平坦でありかつ互いに平行である。この平坦面に対して垂直な軸Fは、長手方向軸Lに対して実質的に垂直である。球体の一部の形状の部分119、119’の外面、小さな円筒部分119bを有していてもよい。このように、係合部分118、118’、特に球体の一部の形状の端部分119、119’は、平坦な形状を有し、その厚さを細長い開口部11の上下方向の高さよりもわずかに小さくすることで、係合部分をリセス10、10’に挿入することができる。球体の一部の形状の端部分119、119’とクロスバー117、117’との間において、係合部分118、118’は、幅が狭くなる部分119a、119a’を含むことにより、フックのような形状を提供する。拡大部分10cは、係合部分とリセス10、10’それぞれとの係合を容易にすることができるが、その理由は、リセスに入れるのに必要な係合部分の広がりを小さくできるからである。
【0033】
保持部材111,111’は、端部114に隣接する拡幅部111bを有し得るスロット111aによって分離される。スロット111aは、保持部材111、111’を、互いに向かうようにかつ互いから離れるように弾性的に偏向可能にする。クロスバー117、117’に隣接する、保持部材111、111’の外面部分111cは、クロスバー117、117’に向かって広がる方向にテーパ形状をなしていてもよい。スリーブ120がクロスバー117、117’に向かって移動すると、保持部材111、111’が互いに向かって圧縮され、スロット111aが狭くなり、係合部分118、118’が互いに向かってより近づく。
【0034】
スリーブ120は、保持部分の棒状の長手方向部分113、113’の周りにおいて延びるように構成されている。スリーブは、前端120aと、グリップ部分121および内ねじ(図示せず)を有する後端とを含み、内ねじは、たとえば保持部分110のねじ切りされた端部116と協働するように構成されたグリップ部分121の領域にある。したがって、スリーブ120は、保持部分110に対して回転することにより、長手方向において前後に移動するように構成されている。スリーブが後退位置にあるとき、その前端120aは、テーパ部分111cが少なくとも部分的に露出するように、保持部材110のクロスバー117、117’からある距離をおいた場所にある。スリーブ120の前部分120aに隣接する内壁120cは、外側に向かってわずかにテーパ状である(
図11a~
図11d)。これにより、スリーブをテーパ部分111cの上で摺動させることができる。加えて、重量を軽くするおよび/またはクリーニングを容易にするのに役立ち得る長手方向孔122をスリーブに設けてもよい。変形例において、スリーブ120を保持部分110に対して押すことによって前後に移動させてもよい。
【0035】
挿入装置は、係合部分118、118’が第1の距離だけ互いに離間した第1の構成と、係合部分118、118’が第1の距離よりも小さい第2の距離だけ互いに離間した第2の構成とを有するように構成される。第1の構成において、スリーブは後退位置にある。長手方向軸Lに沿ってスリーブを変位させることにより、スロット111aは狭くなり係合部分118、118’は互いに向かって移動する。
【0036】
椎間インプラントおよび挿入装置の部品および部分は、任意の材料からなるものであってもよいが、好ましくは、チタンもしくはステンレス鋼またはその他の任意の生体適合性金属もしくは合金、またはプラスチック材料等の、生体適合性材料からなるものであってもよい。生体適合性合金として、NiTi合金、たとえばニチノールを使用してもよい。その他の材料として、マグネシウムまたはマグネシウム合金を挙げることができ、使用される生体適合性プラスチック材料は、たとえば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)またはポリL乳酸(PLLA)であってもよい。上記部品は、同一のまたは互いに異なる材料で作ることができる。
【0037】
次に、椎間インプラント1および挿入装置の動作について説明する。
図9に示されるように、椎間インプラントの、挿入装置に対する向きは、挿入装置の前部分が椎間インプラント1の前壁2aに面するように、定められる。スリーブ120は、後退位置にあり、この位置において、保持部分110のテーパ部分111cは実質的に拘束されていない。
【0038】
図10は、係合部分118、118’がリセス10、10’の内側の球状リセス12と係合している接続構成を示す。この構成において、スリーブ120は、クロスバー117、117’に向かって、テーパ部分111cの少なくとも一部または大部分にわたって移動しており、2つの係合部分118、118’は互いに向かって押圧されている。
【0039】
図11a~
図11dを参照すると、椎間インプラントと挿入装置との係合ステップがより詳細に示されている。
図11aにおいて、挿入装置は、スリーブ120が後退位置にある状態で、前壁2aに向かって動かされる。
図11bにおいて、係合部分118、118’の外側の球体の一部の形状の端部分119、119’は、それぞれ、開口部11を通ってリセス10、10’の中に移動する。これらが傾斜した境界壁10aに沿って摺動すると、保持部材111、111’はわずかに離れるように広がる。
図11cに示されるように、係合部分118、118’の外側の端部分119、119’は、球状リセス12の中に入っており、それらの間でインプラントをクランプ締めする。最後に、
図11dに示されるように、スリーブ120をクロスバー117、117’に向かって移動させる。スリーブはテーパ部分111cに沿って摺動するので、保持部材111、111’は互いに向かって押圧され、係合部分118、118’の外側の端部119、119’はリセス12の壁にしっかりと押し付けられる。これにより、接続が固定される。
【0040】
臨床使用において、このタイプの椎間インプラントは、前側から挿入されてもよい。椎間インプラントが挿入装置100によって2つの椎体間に配置されると、挿入装置は取り外される。これは、ハンドル130で保持部分110を保持してスリーブ120を後退させることによって行われる。これにより、係合部分118、118’のクランプを緩めて係合部分をインプラントから取り外すことができる。
【0041】
挿入装置の前部分112、112’の高さは、椎間インプラント1の前壁2aの高さよりも小さいので、挿入プロセス中の椎間インプラントの視認性を改善することができる。また、挿入装置の幅は、インプラントの幅よりも小さく、このことは、インプラントの挿入および解放に役立ち得る。
【0042】
図12および
図13を参照して、椎間インプラント1が、挿入装置の別の実施形態とともに示されている。ALIFケージの形態の椎間インプラント1は、リセス10、10’、30、30’の形態の接続部分により、機能性が増している。挿入装置200は、前側方または側方から椎骨間に挿入され場合によっては挿入の軌道に沿って挿入装置と椎間インプラントとの間の特定の角度またはその角度の変化を必要とするインプラントに対して通常は使用することができる、挿入装置である。
図12は、椎間インプラントのコーナーにおいてリセス10、10’のうちの一方と係合する挿入装置200を示す。
図13は、椎間インプラントの左側壁または右側壁においてリセス30、30’の一方と係合する挿入装置200を示す。
【0043】
次に、
図14~
図19をさらに参照して、挿入装置200についてより詳細に説明する。挿入装置200は、保持部分210と、保持部分210を収容するガイドスリーブ220と、ハンドル230と、回転始動部材(図示せず)と、軸方向位置調整装置240とを含む。保持部材210は、ガイドスリーブ220の中で移動可能に案内され、軸方向位置調整装置240を作動させることにより、ガイドスリーブ220に対して前進または後退させることができる。さらに、保持部材210は、回転始動部材を作動させることによって回転させることができる。保持部材210の軸方向の変位および保持部材210の回転はその他さまざまやり方で実現できることに注意されたい。
【0044】
保持部材210は、挿入装置の長手方向軸Lを画定し、
図14~
図16により詳細に示される前部分を有する。前部分は、球体の一部の形状である球面219を有する係合部分218を含む。球面219は、球体の対向する部分を取り除いて対向する平坦面219aを作ることによって形成されてもよい。したがって、係合部分218は、細長い開口部11の上下方向の高さおよび任意のリセス30、30’の開口部31の高さよりもわずかに小さい平坦面219aの間の厚さを有する平坦形状である。こうすることで、係合部分218を、椎間インプラント1のリセス10、10’の中に、および任意でリセス30、30’の中に、平坦面219aを側壁2の高さ方向に対して垂直に延びる向きにして、挿入することが可能になる。
【0045】
平坦面219aのうちの少なくとも一方、好ましくは両方に、挿入装置200の長手方向軸Lに対して平行に延びる長手方向の位置決めマーク219bを設けてもよい。
【0046】
係合部分218は、ネック部分212を介して本体部分211に接続されている。ネック部分212の外径は、係合部分218の球面部分219の最大径よりも小さい。本体部分211の直径は、ネック部分212よりも大きくてもよい。係合部分218の球体の一部の形状の部分219のサイズは、係合部分218がリセス10、10’に挿入されて内部の球状リセス12と係合するかまたはリセス30、30’のうちの一方に挿入されて内部の球状リセス32と係合すると、保持部材210を90°傾けて、係合部分218を球状リセス12または球状リセス32のうちの一方の中で保持しつつその中で旋回させることができる、サイズである。
【0047】
ガイドスリーブ220の前部分が、
図17~
図19により詳細に示される。保持部材210をガイドスリーブ220の中に配置したとき、係合部分218はガイドスリーブ220の前部分から突出している。2つの対向する円筒状突起222は、ガイドスリーブ220の最外端部を形成する。円筒状突起222は、リセス10、10’、30、30’の各々に挿入可能な大きさである。管状ガイドスリーブ220の端面は、平坦面223および凹部を含み、より具体的には、2つの突起222間に位置し長手方向軸Lに対して垂直な円筒軸を有する円筒面224を含む。したがって、平坦面223は、ガイドスリーブ220が側壁2に押し付けられたときに椎間インプラント1の側壁2の第2の当接面22または第3の当接面23に当接する当接面を、各突起222の隣に形成する。円筒面224は、椎間インプラント1の側壁2のガイド面24と協働して、椎間インプラントが挿入装置に対してある角度範囲で案内されて回転運動することを可能にするように構成された、小さなガイド面を形成する。したがって、円筒状ガイド面224の半径は、椎間インプラント1の左側壁2d上の円筒状案内面24の半径に対応する。
【0048】
ガイドスリーブ220の外壁に、長手方向において円筒状突起222と隣接する、対向する2つの位置決め平坦面225が設けられてもよい。位置決め平坦面225は、円筒状突起222の位置を示し、椎間インプラント1との接続中に挿入装置200を正確に方向付けるのに役立ち得る。加えて、ガイドスリーブ220の前部分の外側に、位置決め平坦面225から90°オフセットされ突起222の位置を示す、長手方向に延びる少なくとも1つの位置決めマーク226をさらに設けてもよい。
【0049】
保持部材210がガイドスリーブ220に挿入され係合部分218がガイドスリーブ220の前部分から突出しているときに、保持部材210を、軸方向位置調整装置240を作動させることによって前方および後方に押すことができる。突起222のサイズは、係合部分218を90°の直立位置にした状態で突起222の間に後退させることのみが可能なサイズである。
【0050】
椎間インプラント1および挿入装置は、椎間インプラント1と挿入装置100との組み合わせに関して先に述べたように、同一材料から製造されてもよい。
【0051】
次に、
図20~
図22dを参照して、椎間インプラント1および挿入装置200の動作について説明する。リセス10、10’、30、30’が提供する接続のさまざまな可能性は、椎間インプラント1の挿入のための外科的アプローチの可能性を増加させる。先ず、
図20~
図22dを参照して、椎間インプラント1と挿入装置200とをインプラントのコーナーのリセス10または10’を介して接続する、角度を付けた接続について説明する。この接続は、椎間インプラント1と挿入装置200との間の角度位置を調整することを可能にする。
【0052】
図20に示されるように、椎間インプラント1および挿入装置200は、係合部分218が前壁2aと左側壁2cとの間のコーナーのリセス10’の方向を向くように、互いに向かって方向付けられる。係合部分218は、平坦な頂面および底面219aが椎間インプラント1の回転軸Rに対して実質的に垂直になるように方向付けられる。マーキング219bは、係合部分218を適切に方向付けることを容易にする開口部11の上側の縁に面している。
図21に示されるように、この向きで、係合部分218を、係合部分218が球状リセス12の内壁に当接するまで、開口部11を通してリセス10’に挿入することができる。次に、係合部分218を、平坦面219aが回転軸Rに対して平行または実質的に平行に延びる状態まで、回転させる。この構成で、係合部分218が開口部11を通して外されないようにする。接続をロックするために、ガイドスリーブを、円筒状突起222が開口部11を通ってリセス10’の中に延在するように前進させる。
図21において、ガイドスリーブ220の平坦な当接面223は、たとえば
図2および
図3に示される、開口部を囲む平坦な当接面23に当接し、挿入装置200の長手方向軸Lと椎間インプラント1との間の角度は約45°となる。保持部材220を後方に引っ張り、後方に引っ張った位置で固定することにより、部品を一緒にロックする。接続を、ガイドスリーブ220をこの位置で保持するロック機構を作動させることによってロックしてもよい。
【0053】
図22aおよび
図22bは、挿入および固定ステップ中の椎間インプラント1と挿入装置200の相互の関係を断面図で示す。したがって、
図22aは、係合部分218をリセス10’に挿入する前の適切な向きを示し、
図22bは、係合部分がリセス12の中で90°回転した位置に対応する。
図22cにおいて、接続部分218を、球状リセス12内で、平坦面219aのうちの一方がリセス10’の境界壁10bに当接するまで回転させ、挿入装置200が椎間インプラントの左側壁2cから遠ざかるように延びるようにしている。この構成において、挿入装置および椎間インプラントは実質的に0°の角度を形成する。
図22dにおいて、係合部分280を、球状リセス12内で、平坦面219aのうちの他方がリセス10’の境界壁10aに当接するまで回転させ、挿入装置が椎間インプラント1の前壁2aから延びるようにしている。この構成において、椎間インプラント1と挿入装置との間の角度は、境界壁10aが前壁2aに対して傾斜しているので、90°よりも若干大きい。
【0054】
図22eは、左側壁2dの追加のリセス30’を通した椎間インプラントの係合を示す。この構成において、インプラントおよび挿入装置を、一つの位置で一緒にロックすることができる。
【0055】
一般的に、使用の際、係合部分218が90°傾斜した直立位置にあるとき、係合部分218を回転軸Rを中心として自由に旋回させることができ、そうすることで、椎間インプラントに対する挿入装置200の複数の角度位置を調整できる。係合部分218が直立位置にある状態で保持部材210を後退させると、係合部分218がリセス10または10’の壁を内側から押圧し、挿入装置とインプラントとが一緒に引っ張られる。これにより、さまざまな角度位置を固定することができる。当接面を用いて、具体例としての実施形態に示されるように、0°、90°、または45°等の予め定められた角度位置をフォームフィット方式で固定することができる。中間の角度位置を、ガイド面24、224およびフォースフィット(force-fit)接続を用いて実現してもよい。固定を緩めることにより、挿入装置をインプラントから切り離すことなく、椎間インプラントと挿入装置との間の相対位置を調整することができる。これは、椎間スペースに対する側方または前方からのアプローチに特に役立ち得る。
【0056】
上記ステップを用い、椎間インプラントと適切な挿入装置とを適切に組み合わせることにより、単一種類の椎間インプラントを用いて、椎間スペースへのさまざまなアクセス経路を実現することができる。特に、ALIF椎間インプラントを、ある状況では挿入装置100を前側にして挿入することができ、他の状況では挿入装置200を使用して横から挿入することができる。
【0057】
ほんの一例として、外科的方法では、損傷した椎間板にアクセスし、この椎間板を除去し、骨移植片で充填された椎間インプラントを挿入する。次に、脊椎セグメントを、たとえば椎弓根ねじおよびロッドを使用して安定化させる。本発明の実施形態に係る椎間インプラントおよび挿入装置は、椎間インプラントと係合し椎間インプラントを椎間スペースに挿入する、さまざまな可能性を切り開く。最後に椎間インプラントが椎間スペースに埋め込まれると、挿入装置は取り外される。
【0058】
図23~
図37を参照して、椎間インプラントおよびプレートアセンブリの実施形態について説明する。この実施形態の椎間インプラント1は、上述の実施形態のものと同一である。プレートアセンブリ300は、保持部材330を介して接続可能なプレート部材310と、スリーブ340と、椎間インプラント1へのロック部材350とを含む。プレートアセンブリ300は、隣接する椎骨と係合するように構成された骨ねじの形態の骨固定部材360をさらに含み、これらの隣接する椎骨と椎骨との間に椎間インプラント1が挟まれる。骨固定部材360の各々は、ロック部材370を用いて裏打ちに固定されてもよい。
【0059】
さらに
図25~
図28を参照して、プレート部材310についてより詳細に説明する。プレート部材310は、上面310aとその反対側の底面310bとを有する細長い形状である。プレート部材は任意の形状を有することができるが、細長い形状は脊柱に沿って適用するのに好都合であることに注意されたい。プレート部材の端部分310c、310dは丸くてもよく、より具体的には、実質的に円筒形の外形を有していてもよい。加えて、プレート部材310は、接続状態において椎間インプラントから遠ざかる方向にわずかに凸状となるように、その長さに沿って浅い湾曲を有していてもよい。端部分310c、310dからある距離をおいた場所に、2つの孔311が設けられており、これらの孔は、それぞれ固定部材360を中に通して案内する役割を果たす。孔311の各々は、底面310bの隣において、固定部材360の軸361のねじ山と協働するように構成されたねじ切りされた部分311aを有する。ねじ切りされた部分311aの各々の側方に、外側端部310c、310dに向かう方向の側方リセス311bが設けられている。側方リセス311bは、固定部材360の軸361を、隣接する椎骨の一部に挿入できるよう、外側に向かって傾斜する向きにすることを可能にする。孔311の各々は、上面310aの隣において、ねじ切りされた部分311aよりも大きな直径を有するリセス311cを含み、このリセスはそれぞれ、固定部材360の頭部362を収容しかつロック部材370を収容する役割を果たす。リセス311cは、その少なくとも一部に、ロック部材370の外ねじと協働する内ねじを有していてもよい。
【0060】
孔311と孔311の間には、長手方向においてプレート部材310の実質的に中間に位置する中央孔312が設けられている。中央孔312の領域において、底面310bは、スリーブ340に対する当接部の役割を果たし得る実質的に平坦な部分313を含む。この当接部の隣に、中央孔312の第1のねじ切りされていない部分312aが形成され、このねじ切りされていない部分は、実質的に円筒形であり、その内径は、保持部材330の一部を中に通すことができる内径である。反対側において、実質的に円筒形のねじ切りされていないリセス312bが、孔312の一部を形成しており、ねじ切りされていない部分312aよりも大きな直径を有する。ねじ切りされていないリセス312bは、ロック部材350の少なくとも一部を収容する役割を果たす。
【0061】
さらに
図29~
図31を参照して、保持部材330について詳細に説明する。保持部材330は係合部分338を含み、この係合部分は、実質的に球体の一部の形状を有する、すなわち、球状の外面339と平坦な上面および底面339aとを有する。係合部分338の形状は、
図12~
図19に係る挿入装置の係合部分218の形状と非常によく似ている。したがって、係合部分338は、挿入装置200の係合部分と同じようにリセス10、10’または30、30’と係合するように構成されている。係合部分338の平坦な上面および底面339aのうちの少なくとも一方に、マーキング339bが設けられてもよい。保持部材330の向きが、リセス10の開口部11の上側の縁にマーキング339bが面する向きである場合、保持部材330は正しい挿入の向きである。係合部材338は、ロッドまたはバー331に、たとえば一体的に接続される。バー331は、係合部材338の反対側においてねじ切りされた端部分332を有する。係合部分338とねじ切りされた端部分332との間に、スリーブ340がその上に配置されるねじ山のない部分333が設けられている。保持部材330の係合部分338とねじ山のない部分333との間に、ねじ山のない部分333の外径よりもわずかに大きな外径を有する肉厚部分334が設けられてもよい。肉厚部分334はエッジ335を有し、このエッジから、スリーブ340の2つの突起の間に入るように構成され180°オフセットされた2つの突起335aが延びている。保持部材330の棒状部分331の長さは、スリーブ340がその上に装着されているときに、ねじ切りされた端部分332が、ロック部材350と係合するために、プレート部材310の中央孔312の第1のねじ切りされていない部分312aを通ってリセス312bの中に延在する長さである。保持部材のねじ切りされた端部分332に、好ましくは内ねじを有する同軸孔336が、ねじ切りされたロッド(図示せず)のような挿入装置を中に接続するために、設けられている。
【0062】
ロック部材350は、保持部材のねじ切りされた端部分332をねじ込むことができる中央のねじ切りされた孔351を含むナット状部材である。中央のねじ切りされた孔351の周りに円筒縁部352が形成されており、この円筒縁部のサイズは、プレート部材310に設けられた中央孔312のリセス312bの中に嵌合するサイズである。加えて、周方向に配置された複数の細長いポケット353が設けられており、これらのポケットは、円筒縁部352を貫通して延在し、駆動ツールと係合する役割を果たす。円筒縁部352の下側352aの反対側において、ナット状部材は、外径がより小さい円筒部分354を含む。この円筒部分の長さは、ロック部材350が中央孔312のリセス312bに入ると、円筒部分354はプレート部材の上面310aから外に延び、ツールを用いて簡単に検出できる、長さである。
【0063】
図34~
図37を参照して、スリーブ部材340について説明する。スリーブ部材は、保持部材330のねじ切りされていない部分333の上に配置されるように構成されている。スリーブ部材340の後端340aは、実質的に平坦であり、プレート部材310の平坦面部分313に当接するように構成されている。スリーブ部材の前部分は、実質的に円筒形の2つの突起341を含み、これらの突起は、180°オフセットされ、椎間インプラント1の開口部11を通ってのリセス10、10’または30、30’の中に延在するように構成されている。突起341と突起341の間には、椎間インプラントの当接面と協働しかつ、たとえば椎間インプラントのコーナーにおける当接面23と協働するように構成された当接面342が形成されている。スリーブ340の外形は、丸みを帯びた縁を有する実質的に正方形の形状であってもよい。任意の他の外形、たとえば円筒形状も可能である。保持部材330の突起335aは、スリーブ部材340の突起341の間に嵌合するように構成されている。スリーブおよびプレート部材は一体であってもよいことに注意されたい。
【0064】
組み付けられた状態において、スリーブ340は、棒状部分331の上に、具体的には保持部材330のねじのない部分333の上に装着され、ねじ切りされた端部分332は、プレート部材310の中央孔312を通り、リセス312bの中に突出するまで案内される。次に、ロック部材350が、ねじ切りされた端部332の上にねじ込まれて保持部材330をプレート部材310に接続する。インプラントが椎間スペースに挿入された後にプレートアセンブリを椎間インプラントに接続するために、係合部分338を、平坦面319aが球状リセス12の回転軸に対して実質的に垂直に延びるように方向付ける。係合部分318が開口部11または31を通してリセス10、10’または30、30’に導入されると、係合部分338を、開口部11または31を通して取り外すことができないように、90°傾斜させる。加えて、係合部分338がリセス10、10’、31、31’の内壁に当接するように、保持部材330を後方に移動させる。突起335aは、スリーブ部材340の突起341の間に入り、係合部338の回転を規制する。その後、
図24に示されるように、スリーブ340の当接面340aがプレート部材の平坦面313にしっかりと押し付けられ、かつその当接面342が椎間インプラントの当接面23にしっかりと押し付けられるように、ロック部材350を保持部材330に対して締める。リセス10への挿入および回転といった保持部材330の操作のために、比較的薄い少なくとも部分的にねじ切りされたロッドが、ロック部材350を通して案内され保持部材330のねじ穴336に挿入されてもよい。
【0065】
ねじ山のない接続により、プレート部材310を椎間インプラント1に容易に素早く接続することができる。加えて、上記実施形態と同様、リセス10、10’、30、または30’の選択に応じて、保持部材330と椎間インプラント1との間でさまざまな角度を調整することができる。このようにして、椎間インプラントに対するプレートの向きをさまざまな向きにすることができ、このことは一時的な安定化の可能性を高める。孔311に挿入され椎骨の一部にねじ込まれる骨固定部材360を用いてプレート部材310をさらに固定してもよい。固定部材360の頭部362を上から押すためにロック部材370を用いてもよい。
【0066】
ある使用方法において、プレート部材310は埋め込まれたままである。プレート部材310は、一時固定の役割を果たすこともでき、後で取り外すことができる。骨固定部材360が取り外された後に、係合部分338を少し押し込み、傾けて、リセス10、10’または30、30’から引き抜くことにより、椎間インプラント1に対する保持部材330のロックを簡単に解除することができる。
【0067】
図38は、椎間インプラントのさらに他の実施形態をプレートアセンブリ300とともに示す。この場合の椎間インプラント1’は、細長い横方向ケージであり、この細長いインプラントの短辺のうちの一方のみに、挿入装置および/またはプレートと接続するためのリセス10、10’を有する。たとえば、インプラントの長辺と短辺の間のコーナーに単一のリセス10を設けてもよく、図示の実施形態で使用されるプレート部材310との接続のために、短辺に単一のリセス30を設けてもよい。
【0068】
図39~
図41は、椎骨または椎骨の一部のためのプレースホルダ1’’の形態の脊椎インプラントのさらに他の実施形態を示す。プレースホルダは、管軸Tを有し壁に開口部1aを有する円筒管を含む。尖った突起1bを両端に形成し、その間にプレースホルダ1’’を配置する椎体の終板と係合させてもよい。
【0069】
プレースホルダ1’’の壁に、周方向に細長い開口部11がある。開口部11の後方の管の内側は、挿入装置またはプレートアセンブリの係合部分を収容するための中空スペースを提供する。
【0070】
図39および
図40に示されるように、プレースホルダ1’’は、
図12~
図19に係る挿入装置200とともに使用することができる。係合部分218を、平坦面219aがこの管の円筒軸に対して垂直になる向きにして挿入する。挿入後、係合部分を90°傾けて、開口部11から外れないようにする。次に、スリーブ220を前進させてこの管の外壁を押圧しその位置で固定する。その後、2つの椎骨の間にプレースホルダ1’’を挿入することができる。
【0071】
図41は、プレート部材310’とプレースホルダ1’’との接続を示す。接続の原理は、プレースホルダ1’’と挿入装置との接続について説明したものと同じである。臨床状況に応じて、より短い保持部材330’を使用してもよく、プレート部材310’は直線状、すなわち湾曲のないものであってもよい。
【0072】
本発明の範囲から逸脱することなく、スペーサおよび/または挿入装置および/またはプレートアセンブリのその他各種の修正を行うことができる。
【0073】
上述の実施形態に示される脊椎インプラントは、一例にすぎない。インプラントの輪郭および形状は、特定の臨床要件に応じて異なっていてもよい。たとえば、インプラントは、たとえば3Dプリント技術によって製造可能な3次元網目または格子構造の形態であってもよい。さらに他の修正実施形態において、インプラントは、体内に残っているインプラントの挿入前の椎間板スペースを開くためのトライアル処置に使用されるダミーインプラントまたは試験用インプラントであってもよい。
【0074】
インプラントのリセスが提供する接続部分の数は、異なっていてもよい。たとえば、第1の実施形態の場合、リセスのうちの1つだけが、他の挿入装置を追加で装着できるようにする特定の内部形状を有していれば十分である。リセスのうちの他の1つのリセスが、挿入装置の係合部分に対する当接部を提供するためだけに成形されてもよい。
【0075】
数、向き、および/または当接面は異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、細長い開口部は、エッジ以外の別の位置にあってもよい。またさらに、細長い開口部は、上下方向にまたは傾斜して延びていてもよい。このような場合、保持部分を、直立する向きでまたは傾斜した向きで挿入してもよくその後傾けてもよい。3つ以上の細長い開口部が設けられてもよい。また、挿入装置を収容するための追加のリセスは、上記実施形態に示される数より多くても少なくてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 インプラント、2 側壁、5a 第1面、5b 第2面、10 接続部分、11,31 開口部、12 球状部分、100 挿入装置、110 保持部材、118 係合部分、310 プレート部材。