(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】精製ガスの製造方法及び精製ガス製造装置
(51)【国際特許分類】
C10K 1/10 20060101AFI20250109BHJP
C10K 1/16 20060101ALI20250109BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20250109BHJP
B01D 53/18 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C10K1/10
C10K1/16
B01D53/14 210
B01D53/18 150
(21)【出願番号】P 2021526952
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2020024262
(87)【国際公開番号】W WO2020256147
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2019115645
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】濱地 心
(72)【発明者】
【氏名】夏山 和都
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-104433(JP,A)
【文献】特開2018-058042(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108148635(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10K 1/10
C10K 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性不純物及び油溶性不純物を含む、廃棄物由来の粗ガスから、スクラバを用いて、前記水溶性不純物および油溶性不純物の少なくとも一部を除去して、精製ガスを製造する精製ガスの製造方法であって、
前記スクラバにおいて、水および油性物質を含む洗浄液を前記粗ガスに接触させ、前記水溶性不純物および油溶性不純物の少なくとも一部を前記粗ガスから除去し、前記スクラバから調整機構に前記洗浄液の一部が送られ、前記調整機構において水と油性物質に分離され、分離された水及び油性物質の少なくとも一方が、前記スクラバに戻され、かつ
前記スクラバにおいて前記洗浄液における前記油性物質の割合が、5体積%以上95体積%以下である、精製ガスの製造方法。
【請求項2】
前記洗浄液における前記油性物質の割合を調整する、請求項1に記載の精製ガスの製造方法。
【請求項3】
前記油性物質が、前記粗ガスから除去されて前記洗浄液に混入された油溶性不純物を含む、請求項1又は2に記載の精製ガスの製造方法。
【請求項4】
前記粗ガスが、前記水溶性不純物及び前記油溶性不純物を含む合成ガスである請求項1~3のいずれか1項に記載の精製ガスの製造方法。
【請求項5】
前記スクラバが、前記水および前記油性物質を貯留する貯留部を備え、
前記貯留部より、前記水および油性物質を洗浄液として、前記粗ガスに接触させるように供給する、請求項1~4のいずれか1項に精製ガスの製造方法。
【請求項6】
前記スクラバが、前記水および前記油性物質を貯留する貯留部を備え、
前記貯留部から前記水および油性物質それぞれを独立に回収し、かつ回収された前記水および油性物質を混合させて前記洗浄液として前記粗ガスに接触させる、請求項1~5のいずれか1項に記載の精製ガスの製造方法。
【請求項7】
前記スクラバが、前記水および油性物質を含む洗浄液を貯留する貯留部を備え、
前記粗ガスを前記貯留部に貯留された前記洗浄液を通過させることで、前記粗ガスを前記洗浄液に接触させる請求項1~4のいずれか1項に記載の精製ガスの製造方法。
【請求項8】
前記貯留部に貯留される水又は油性物質の一部を除去して、前記洗浄液における前記油性物質の割合を調整する請求項5~7のいずれか1項に記載の精製ガスの製造方法。
【請求項9】
水溶性不純物及び油溶性不純物を含む粗ガスから、スクラバを用いて、前記水溶性不純物および油溶性不純物の少なくとも一部を除去して、精製ガスを製造する精製ガスの製造方法であって、
前記スクラバにおいて、水および油性物質を含む洗浄液を前記粗ガスに接触させ、前記水溶性不純物および油溶性不純物の少なくとも一部を前記粗ガスから除去し、かつ
前記スクラバから調整機構に洗浄液の一部が送られ、前記調整機構において水と油性物質に分離され、分離された水及び油性物質の少なくとも一方が、前記スクラバに戻されることで、前記洗浄液における前記油性物質の割合を調整する、精製ガスの製造方法。
【請求項10】
水溶性不純物及び油溶性不純物を含む粗ガスから、前記水溶性不純物及び油溶性不純物の少なくとも一部を除去して、精製ガスを製造する精製ガス製造装置であって、
水及び油性物質を含む洗浄液を前記粗ガスに接触させ、前記水溶性不純物及び油溶性不純物の少なくとも一部を前記粗ガスから除去するスクラバと、
前記洗浄液における前記油性物質の割合を調整可能な調整機構と、
を備え、
前記スクラバから前記調整機構に洗浄液の一部が送られ、前記調整機構において水と油性物質に分離され、分離された水及び油性物質の少なくとも一方が、前記スクラバに戻されることで、前記洗浄液における前記油性物質の割合が調整される、精製ガス製造装置。
【請求項11】
前記洗浄液における前記油性物質の割合が、5体積%以上95体積%以下である、請求項10に記載の精製ガス製造装置。
【請求項12】
前記スクラバが、前記水および前記油性物質を貯留する貯留部を有し、かつ
前記貯留部より、前記水および油性物質を前記洗浄液として前記粗ガスに接触させるように供給する供給路を備える請求項10又は11に記載の精製ガス製造装置。
【請求項13】
前記スクラバが、前記水および前記油性物質を貯留する貯留部を有し、かつ
前記調整機構が第1及び第2の回収路を備え、
前記第1及び第2の回収路それぞれが、前記貯留部において前記水及び油性物質それぞれを独立に回収し、かつ回収した前記水および油性物質を混合させて前記洗浄液として、前記粗ガスに接触させる、請求項10又は11に記載の精製ガス製造装置。
【請求項14】
前記スクラバが、前記水および前記油性物質を含む洗浄液を貯留する貯留部を有し、
前記貯留部に貯留された前記洗浄液に対して前記粗ガスを導入する導入路を備える請求項10又は11に記載の精製ガス製造装置。
【請求項15】
前記調整機構が、前記貯留部に貯留される水又は油性物質の一部を除去する除去装置である、請求項
12~14のいずれか1項に記載の精製ガス製造装置。
【請求項16】
水溶性不純物及び油溶性不純物を含む粗ガスから、前記水溶性不純物及び油溶性不純物の少なくとも一部を除去して、精製ガスを製造する精製ガス製造装置であって、
水及び油性物質を含む洗浄液を前記粗ガスに接触させ、前記水溶性不純物及び油溶性不純物の少なくとも一部を前記粗ガスから除去するスクラバと、調整機構を備え、
前記スクラバから前記調整機構に前記洗浄液の一部が送られ、前記調整機構において水と油性物質に分離され、分離された水及び油性物質の少なくとも一方が、前記スクラバに戻され、
前記スクラバにおいて前記洗浄液における前記油性物質の割合が、5体積%以上95体積%以下である、精製ガス製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物に由来する粗ガスを精製して得られる精製ガスの製造方法及び精製ガス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物、一般廃棄物などの各種廃棄物は、熱分解により、ガス化する技術が知られている(特許文献1等参照)。この方法によれば、廃棄物を熱分解することで、一酸化炭素と水素を多く含む合成ガスなどが得られる。合成ガスなどの廃棄物由来のガスは、種々の用途に利用可能であり、例えば、微生物触媒、金属触媒などを用いて、エタノールなどの有価物に変換することが試みられている。
【0003】
廃棄物には雑多な成分が含まれ、廃棄物から得られるガスにも、数多くの不純物が含まれる。そのため、廃棄物由来のガスは、不純物を取り除いて精製する必要がある。不純物を取り除く方法としては、スクラバを使用する方法が広く知られている。ここで、廃棄物由来のガスに含まれる不純物には、塩化水素、硫化水素などの水溶性不純物、BTEXなどの油溶性不純物がある。スクラバを用いてこれらを取り除く方法としては、例えば、特許文献1に開示されるように、プレクーラにおいて水噴霧によりガスを水洗浄することにより水溶性不純物を除去するとともに、軽油スクラバにおいて洗浄油の噴霧により油溶性不純物を取り除く方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される方法によれば、水溶性不純物及び油溶性不純物それぞれが別の洗浄塔にて除去されており大掛かりな設備が必要となる。
【0006】
そこで、本発明は、設備を簡便にしつつも、水溶性不純物と油溶性不純物をスクラバによって効率的に除去することが可能な精製ガス製造装置、及び精製ガス製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]水溶性不純物及び油溶性不純物を含む、廃棄物由来の粗ガスから、スクラバを用いて、前記水溶性不純物および油溶性不純物の少なくとも一部を除去して、精製ガスを製造する精製ガスの製造方法であって、
前記スクラバにおいて、水および油性物質を含む洗浄液を前記粗ガスに接触させ、前記水溶性不純物および油溶性不純物の少なくとも一部を前記粗ガスから除去し、かつ
前記洗浄液における前記油性物質の割合が、5体積%以上95体積%以下である、精製ガスの製造方法。
[2]前記洗浄液における前記油性物質の割合を調整する、上記[1]に記載の精製ガスの製造方法。
[3]前記油性物質が、前記粗ガスから除去されて前記洗浄液に混入された油溶性不純物を含む、上記[1]又は[2]に記載の精製ガスの製造方法。
[4]前記粗ガスが、前記水溶性不純物及び前記油溶性不純物を含む合成ガスである上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の精製ガスの製造方法。
[5]前記スクラバが、前記水および前記油性物質を貯留する貯留部を備え、
前記貯留部より、前記水および油性物質を洗浄液として、前記粗ガスに接触させるように供給する、上記[1]~[4]のいずれか1項に精製ガスの製造方法。
[6]前記スクラバが、前記水および前記油性物質を貯留する貯留部を備え、
前記貯留部から前記水および油性物質それぞれを独立に回収し、かつ回収された前記水および油性物質を混合させて前記洗浄液として前記粗ガスに接触させる、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の精製ガスの製造方法。
[7]前記スクラバが、前記水および油性物質を含む洗浄液を貯留する貯留部を備え、
前記粗ガスを前記貯留部に貯留された前記洗浄液を通過させることで、前記粗ガスを前記洗浄液に接触させる上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の精製ガスの製造方法。
[8]前記貯留部に貯留される水又は油性物質の一部を除去して、前記洗浄液における前記油性物質の割合を調整する上記[5]~[7]のいずれか1項に記載の精製ガスの製造方法。
[9]水溶性不純物及び油溶性不純物を含む粗ガスから、スクラバを用いて、前記水溶性不純物および油溶性不純物の少なくとも一部を除去して、精製ガスを製造する精製ガスの製造方法であって、
前記スクラバにおいて、水および油性物質を含む洗浄液を前記粗ガスに接触させ、前記水溶性不純物および油溶性不純物の少なくとも一部を前記粗ガスから除去し、かつ
前記洗浄液における前記油性物質の割合を調整する、精製ガスの製造方法。
[10]水溶性不純物及び油溶性不純物を含む粗ガスから、前記水溶性不純物及び油溶性不純物の少なくとも一部を除去して、精製ガスを製造する精製ガス製造装置であって、
水及び油性物質を含む洗浄液を前記粗ガスに接触させ、前記水溶性不純物及び油溶性不純物の少なくとも一部を前記粗ガスから除去するスクラバと、
前記洗浄液における前記油性物質の割合を調整可能な調整機構と、
を備える精製ガス製造装置。
[11]前記洗浄液における前記油性物質の割合が、5体積%以上95体積%以下である、上記[10]に記載の精製ガス製造装置。
[12]前記スクラバが、前記水および前記油性物質を貯留する貯留部を有し、かつ
前記貯留部より、前記水および油性物質を前記洗浄液として前記粗ガスに接触させるように供給する供給路を備える上記[10]又は[11]に記載の精製ガス製造装置。
[13]前記スクラバが、前記水および前記油性物質を貯留する貯留部を有し、かつ
前記調整機構が第1及び第2の回収路を備え、
前記第1及び第2の回収路それぞれが、前記貯留部において前記水及び油性物質それぞれを独立に回収し、かつ回収した前記水および油性物質を混合させて前記洗浄液として、前記粗ガスに接触させる、上記[10]又は[11]に記載の精製ガス製造装置。
[14]前記スクラバが、前記水および前記油性物質を含む洗浄液を貯留する貯留部を有し、
前記貯留部に貯留された前記洗浄液に対して前記粗ガスを導入する導入路を備える上記[10]又は[11]に記載の精製ガス製造装置。
[15]前記調整機構が、前記貯留部に貯留される水又は油性物質の一部を除去する除去装置である、上記[10]~[14]のいずれか1項に記載の精製ガス製造装置。
[16]水溶性不純物及び油溶性不純物を含む粗ガスから、前記水溶性不純物及び油溶性不純物の少なくとも一部を除去して、精製ガスを製造する精製ガス製造装置であって、
水及び油性物質を含む洗浄液を前記粗ガスに接触させ、前記水溶性不純物及び油溶性不純物の少なくとも一部を前記粗ガスから除去するスクラバを備え、
前記洗浄液における前記油性物質の割合が、5体積%以上95体積%以下である、精製ガス製造装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、設備を簡便にしつつも、水溶性不純物と油溶性不純物をスクラバによって効率的に除去することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の精製ガス製造装置の全体構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る精製ガス製造装置の詳細を示す模式図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る精製ガス製造装置の詳細を示す模式図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態に係る精製ガス製造装置の詳細を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明について実施形態を用いて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る精製ガス製造装置を示す。精製ガス製造装置10は、粗ガス生成設備11と、スクラバ12を備える。粗ガス生成設備11は、廃棄物由来ガスである粗ガスG1を生成する設備である。粗ガス生成設備11で生成された粗ガスG1は、スクラバ12に導入される。スクラバ12は、導入された粗ガスG1を精製し、精製ガスG2を得る。
【0011】
粗ガス生成設備11は、廃棄物を燃焼、熱分解する装置を備え、例えば、燃焼炉、熱分解炉、改質炉、加熱炉などを1つ又は2つ以上備える。廃棄物としては、産業廃棄物でもよいし、家庭ごみなどの一般廃棄物でもよく、例えば、タイヤ、バイオマス、木質チップ、プラスチック、紙類、食料廃棄物など、可燃性物質であれば特に限定されない。粗ガスG1は、粗ガス生成設備11において廃棄物を燃焼、熱分解などさせることで得られる廃棄物由来ガスである。
【0012】
粗ガスG1は、少なくとも一酸化炭素及び二酸化炭素のいずれかを含み、好ましくは合成ガスである。なお、粗ガスG1を構成する合成ガスは、後述するように水溶性不純物及び油溶性不純物などの不純物を含むので、ここでは、「粗合成ガス」という。粗合成ガスは、廃棄物が例えば熱分解炉において熱分解されることが得られてもよいし、熱分解炉におい熱分解された後に改質炉においてさらに低炭素化されるなどで得られてもよい。また、熱分解炉にて熱分解する前に加熱炉などにおいて脱ガス処理などがされてもよい。
粗合成ガスは、一酸化炭素及び水素を含み、通常はさらに二酸化炭素も含む。粗合成ガスは、一般的には、ガス成分として、窒素、酸素、及び水もさらに含む。具体的には、粗合成ガスは、一酸化炭素を15~45体積%、水素を10~50体積%、二酸化炭素を2~30体積%を含み、また、さらに窒素を25~67体積%、酸素を0.5~20体積%、水を5~40体積%程度含んでもよい。
【0013】
粗ガスG1は、上記ガス成分以外にも、水溶性不純物及び油溶性不純物を含む。水溶性不純物は、洗浄液に含まれる水に対して溶解性を有する物質であり、例えば硫化水素、塩化水素、青酸などの酸性ガス、アンモニアなどの塩基性ガス、NOx、SOxなどの酸化物が挙げられる。したがって、これら水溶性不純物は、後述するように、洗浄水に接触することで溶解する。ただし、水溶性不純物は、後述する油性物質に溶解することもある。
【0014】
油溶性不純物は、有機物からなり、後述する油性物質に溶解することが可能な物質である。油溶性不純物としては、BTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン)、ナフタレン、1-ナフトール、2-ナフトール、インデン、ベンゾニトリル、アセナフチレン、2’-アセトナフトン、1-(2-ナフチル)エタノール、1-アセナフテノール、1,2-アセナフチレンジオン、ベンゾ[de]イソクロメン-1(3H)-オン、1,8-ナフタル酸無水物など含芳香族環有機物質、4-ホルミルモルホリンなど脂肪族有機物質などが挙げられる。また、粗ガスには、スス、タールなどの水及び後述する油性物質に溶解しない固体不純物などが含まれていてもよい。
【0015】
スクラバ12では、洗浄液を粗ガスG1に接触させ、水溶性不純物および油溶性不純物の少なくとも一部が粗ガスG1から除去され、精製ガスG2が得られる。ここで、洗浄液としては、水および油性物質を含む洗浄液を使用する。洗浄液は、水および油性物質を含むことで、粗ガスに含まれる水溶性不純物及び油溶性不純物それぞれを水及び油性物質それぞれに溶解させ、水溶性不純物及び油溶性不純物の両方を効率的に粗ガスから取り除くことができる。
油性物質は、洗浄液が排ガスG1と接触する際に、洗浄液において液体となっている有機物質である。また、後述するように好ましくは油溶性不純物が油性物質として使用される。したがって、油性物質としては、上記した油溶性不純物と同様のものが挙げられるが、好ましくは、BTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン)、ナフタレン、1-ナフトール、2-ナフトール、インデン、ベンゾニトリル、アセナフチレン、2’-アセトナフトン、1-(2-ナフチル)エタノール、1-アセナフテノール、1,2-アセナフチレンジオン、ベンゾ[de]イソクロメン-1(3H)-オン、1,8-ナフタル酸無水物などの含芳香族環有機物質、4-ホルミルモルホリンなど脂肪族有機物質などである。
【0016】
洗浄液における油性物質の割合は、5体積%以上95体積%以下である。油性物質の割合を5体積%未満とすると、油溶性不純物を粗ガスから十分に除去できない。一方で、95体積%を超えると、洗浄液における水の割合が少なくなり、水溶性不純物を十分に除去できないことがある。また、95体積%を超えると、油性物質が洗浄液において必要以上に多くなり、さらには、油性物質の多くを又は全てを不純物由来とすることも難しくなる。
油溶性不純物及び水溶性不純物をバランスよく除去する観点から、洗浄液における油性物質の割合は、25体積%以上75体積%以下が好ましい。また、該割合は、油溶性不純物除去の観点から、30体積%以上がより好ましく、油性物質を必要以上に使用しない観点からは、50体積%以下がより好ましい。
【0017】
粗ガスに接触する洗浄液は、おおむね水と油性物質からなるものであり、洗浄液における水の割合は、例えば5体積%以上95体積%以上となるとよい。洗浄液における水の割合を5体積%以上とすると、水溶性不純物を粗ガスから適切に除去できる。また、水の割合を95体積%以下とすることで、洗浄液に十分な量の油性物質を含有させることが可能になる。油溶性不純物及び水溶性不純物をバランスよく除去する観点から、洗浄液における水の割合は、25体積%以上75体積%以下が好ましく、油溶性不純物除去の観点から、70体積%以下がより好ましく、油性物質を必要以上に使用しない観点からは、50体積%以上がより好ましい。
【0018】
ここで、洗浄液における油性物質の割合は、洗浄液を採取して、その採取した洗浄液を、その温度を維持したまま、油水に相分離させて、洗浄液の全体積に対する、油分の体積の割合を測定するとよい。したがって、油性物質の割合は、油分に不純物などが溶解される場合には、その不純物なども含めた体積である。油水が分離しない場合には、遠心分離装置などの油水分離装置などにより分離させるとよい。また、洗浄液における水の割合は、蒸留などにより水を分離して水の重量を測定して、その重量から体積を求めるとよい。
洗浄液における油性物質及び水の割合は、粗ガスG1に接触する際の洗浄液における油性物質及び水の割合を測定すればよい。したがって、油性物質の割合を測定する際、後述する本実施形態のスクラバのように、洗浄液を循環させて排ガスG1に接触させる態様においては、排ガスG1に接触する直前、すなわち、ノズル15から噴霧された洗浄水を採取して、その洗浄水における油性物質の割合を測定すればよい。また、洗浄液が、後述する第3の実施形態のように貯留された状態で排ガスG1に接触させる態様においては、貯留される洗浄液を採取して、油性物質の割合を測定すればよい。
サンプルは、複数点から液を採取するとよい。例えば、各点での液の採取量はプロセス中の洗浄液の0.25体積%以上であることが望ましい。また、貯留される洗浄液をサンプルとして採取する場合、洗浄液を十分攪拌した後、互いにできるだけ離れた複数点から採取するとよい。そして、採取した液を混合したのち、体積をメスシリンダやメスフラスコなどを用いて確認し、洗浄液に対する体積%での割合を算出する。また、上記のとおり、油水が分離しない場合には、遠心機で遠心をして、合計採取量からの油分の体積を同様の方法で再度確認するとよい。この際、遠心機は5000rpm以上を1分以上かけるようにする。
【0019】
洗浄液は、水溶性不純物および油溶性不純物を、それぞれ洗浄液に含まれる水及び油性物質中に溶解などさせて除去するものであり、粗ガスに接触した後の洗浄液は、除去された水溶性不純物および油溶性不純物を含有する。一方で、洗浄液は、例えば本実施形態では、スクラバ内部を循環させられており、粗ガスに接触した後も継続的に洗浄液として使用される。また、油溶性不純物は、多くの種類の物質が含まれるが、油溶性不純物に対して、高い溶解性を示す物質も含まれ、そのような物質は洗浄液の油性物質として有益に使用できる。
【0020】
そのため、本発明では、粗ガスから除去され、洗浄液に混入された油溶性不純物は、そのまま油性物質として引き続き洗浄液に含有させ使用することが好ましい。このように、粗ガスから除去された油溶性不純物を洗浄液の油性物質として使用すると、洗浄液に油性物質を必要以上に投入することなく、水溶性不純物と油溶性不純物をスクラバによって効率的に除去できる。
【0021】
油性物質は、粗ガスG1から得られる油溶性不純物単独で構成されてもよいが、粗ガスG1から得られる油溶性不純物以外にも、油性物質が洗浄液に別途添加されてもよい。例えば、スクラバ12の運転開始時には、油溶性不純物が洗浄液に十分に蓄積されず、上記した洗浄液における油性物質の割合が下限値以上に達しないことが考えられる。したがって、そのような場合には、油性物質を洗浄液に添加してもよい。
【0022】
精製ガス製造装置10は、スクラバ12で使用される洗浄液における油性物質の割合を調整する調整機構を備えるとよい。上記のとおり、粗ガスに接触させる洗浄液の油性物質の割合を一定の範囲内とすることで、油溶性不純物を効率的に除去することができる。そのため、調整機構により、洗浄液における油性物質の割合を適宜調整することで、油溶性不純物をより効率的に除去できる。また、調整機構は、通常、洗浄液における油性物質の割合とともに、洗浄液における水の割合も調整する。調整機構の詳細については後述する。
【0023】
スクラバ12で生成された精製ガスG2は、例えば少なくとも一酸化炭素及び二酸化炭素のいずれかを含み、図示しない反応器などにてエタノールなどの有機化合物に変換される。また、精製ガスG2は、好ましくは合成ガスであり、ガス資化性微生物又は金属触媒のいずれかにより、エタノールなどの有機化合物に変換されることがより好ましく、ガス資化性微生物によりエタノールなどの有機化合物に変換されることがさらに好ましい。本発明では、水溶性不純物及び油溶性不純物が適切に除去されることで、精製ガスG2によってガス資化性微生物及び金属触媒が失活されにくくなる。
精製ガスG2は、反応器にて有機化合物に変換される前に、バグフィルタなどの煤塵除去装置、活性炭フィルタなどの各種吸着フィルタ、脱硝反応塔、脱硫反応塔などの各種清浄装置にてさらに浄化された後、反応器(図示しない)に送られてもよい。
【0024】
以下、本実施形態について
図2を用いてより詳細に説明する。
図2に示すように、スクラバ12は、粗ガスG1を洗浄するための洗浄塔であり、その底部に貯留部14が設けられるとともに、その上部にノズル15が設けられる。また、スクラバ12には、導入路13、供給路16、排出路19などが接続される。
【0025】
貯留部14には、水WT及び油性物質OLが貯留されている。貯留部14には、攪拌翼などの攪拌手段(図示しない)によって、貯留部14に貯留された水WT及び油性物質OLが混合される。貯留部14に貯留された水WT及び油性物質OLは洗浄液を構成する。貯留部14に貯留される洗浄液は、通常、水WT及び油性物質OL以外にも、粗ガスG1由来の不純物が含まれる。
貯留部14に貯留される油性物質OLは、上記したように、粗ガスG1由来の油溶性不純物により構成されればよいが、運転開始時などにおいては、適宜油性物質を別途添加してもよい。また、水WTは、運転開始時から貯留部14に一定量貯留しておけばよい。ノズル15は、後述する通りスクラバ12の内部に洗浄液を噴霧する。
【0026】
導入路13は、スクラバ12に粗ガスG1を導入するための経路であり、導入路13の導入口13Aは、例えば、スクラバ12の内部に貯留された水WT及び油性物質OL(洗浄液)の液面よりも上方に設けられる。
供給路16は、スクラバ12において洗浄液を循環させて、粗ガスG1に接触させるように洗浄液を供給する。具体的には、供給路16は、貯留部14に貯留された水WT及び油性物質OLを洗浄液としてノズル15からスクラバ12の内部において下方に向けて噴霧させ、粗ガスG1に接触させる。なお、貯留部14に貯留された水WTと油性物質OL(洗浄液)は、上記のとおり混合されており、混合された状態で、ノズル15から噴霧される。また、供給路16には、例えばポンプ18が設けられ、洗浄液は、ポンプ18によってノズル15に圧送される。そして、洗浄液WSは、スクラバ12の内部において、ノズル15から下方に向けて噴霧される。排出路19は、スクラバ12の上部に設けられて精製ガスG2を排出する。
【0027】
スクラバ12内部に導入口13Aから導入された粗ガスG1は、ノズル15から噴霧された洗浄液WSに接触しつつ上昇する。粗ガスG1は、水WT及び油性物質OLを含有する洗浄液WSに接触させることで、粗ガスG1に含まれる水溶性不純物、及び油溶性不純物の少なくとも一部が除去される。これら不純物が除去されたガスは、排出路19から精製ガスG2として排出される。また、上記のとおり、洗浄液WSにおける油性物質の割合は、所定の範囲内であり、そのため、水溶性不純物、及び油溶性不純物は、効率的に粗ガスG1から除去される。
スクラバ12内部において、貯留部14に貯留される水WTと油性物質OLの混合物(洗浄液)とノズル15の間は、ノズル15から噴霧された洗浄液WSと粗ガスG1とが接触する接触領域Aとなる。接触領域Aには、洗浄液WSと粗ガスG1との接触面積を増大させるために多孔質体(図示しない)などが配置されてもよい。
【0028】
ノズル15から噴霧された洗浄液WSは、粗ガスG1と接触しながら、貯留部14まで落下し、貯留部14に貯留され、再度、洗浄液として使用される。また、粗ガスG1から除去された油溶性不純物及び水溶性不純物は、洗浄液WS(水又は油性物質)に溶解などして、洗浄液とともに、貯留部14まで落下して、貯留部14に貯留される。ここで、上記のとおり、油溶性不純物は、少なくとも一部が洗浄液においてそのまま油性物質を構成するとよい。
さらに、粗ガスG1には、油溶性不純物及び水溶性不純物以外の不純物(例えば、ススなどの固形不純物)も含まれるが、その不純物もノズル15から噴霧された洗浄液WSに接触されることで、粗ガスG1から除去され、貯留部14に落下する。そのため、貯留部14には、上記のように、油性物質、水、水溶性不純物以外にも、固形不純物IPなども貯留されるとよい。
【0029】
上記の通り、貯留部14に貯留された洗浄液は、油性物質OLと水WTが混合され均一化された状態でノズル15に送られる。そのため、貯留部14に貯留された洗浄液における油性物質OLの割合は、ノズル15から噴霧される洗浄液WSにおける油性物質の割合と同一になる。したがって、本実施形態では、調整機構によって、貯留部14に貯留される洗浄液における油性物質OLの割合を調整することで、ノズル15から噴霧される洗浄液WS(すなわち、粗ガスG1と接触する洗浄液WS)における油性物質の割合が調整できる。同様に、ノズル15から噴霧される洗浄液WSにおける水の割合も調整できる。
【0030】
スクラバ12における洗浄液WSの温度は、特に限定されないが、例えば0~80℃程度であればよい。温度調整が不要である点、及び洗浄液WSによる除去効率の観点から、スクラバ12における洗浄液の温度は、常温付近が好ましく、具体的には10~50℃程度が好ましい。なお、本明細書において洗浄液WSの温度とは、本実施形態のように、洗浄液を循環させて排ガスG1に接触させる場合には、接触する直前、すなわち、ノズル15から噴霧された洗浄水WSの温度を測定すればよい。また、洗浄液WSが、後述する第3の実施形態のように貯留された状態で排ガスG1に接触する場合には、貯留部に貯留された洗浄液の温度を測定すればよい。
洗浄液WSの温度は、温度制御装置により制御されてもよい。温度制御装置は、例えば供給路16に取り付けられ、供給路16内部を通る洗浄液の温度を調整するとよいし、また、スクラバの外周に設けられて、スクラバの貯留部14に貯留された洗浄液の温度を調整してもよい。
【0031】
スクラバ12に導入される粗ガスG1の温度は、特に限定されないが、例えば0~400℃である。粗ガスG1は、粗ガス生成設備11(
図1参照)において、熱分解、燃焼などされることで高温に加熱される。したがって、粗ガス生成設備11で生成された粗ガスが、十分に冷却されずにスクラバ12に送られると、高温のままスクラバ12に導入される。一方で、粗ガス生成設備11にて予め冷却されていると、常温付近でスクラバ12に導入されることもある。したがって、粗ガスG1の温度範囲は、上記の通りであるとよい。なお、スクラバ12に導入される粗ガスG1の温度が、洗浄液の温度よりも高い場合には、スクラバ12において洗浄液に接触されることで、粗ガスG1は冷却される。
粗ガスG1の温度は、洗浄液がスクラバ12において蒸発などすることを防ぐ観点から、好ましくは0~100℃、より好ましくは20~80℃である。なお、粗ガスG1の温度とは、洗浄液に接触される直前の粗ガスG1の温度を意味し、導入路13Aの導入口13Aにおける温度を測定すればよい。
【0032】
本実施形態では、調整機構として、循環路21を介してスクラバ12に接続された除去装置20が設けられる。除去装置20は、貯留部14に貯留された洗浄液から、水WT又は油性物質OLの一部を分離して除去する装置であるが、油性物質OLの一部を分離して除去することが好ましい。本実施形態では、粗ガスG1の洗浄を継続して行うことで、油溶性不純物由来の油性物質OLが貯留部14に蓄積される。したがって、油性物質OLの一部を分離して除去することで、油性物質OLが必要以上に洗浄液に含有されることが防止される。
【0033】
除去装置20には、循環路21を介して、貯留部14内部の洗浄液の一部が送られる。なお、貯留部14内部の洗浄液(すなわち、除去装置20に送られる洗浄液)は、上記のとおり水WT及び油性物質OLの混合物であり、その混合物には、水溶性不純物、固形不純物などの不純物が含まれていてもよい。
【0034】
除去装置20は、貯留部14より送られた洗浄液を、公知の手段により水と油性物質に分離するとともに、分離された水及び油性物質の一方を、循環路21を介して貯留部14に戻すとよい。これにより、水WT及び油性物質OLの一方は、貯留部14から一部が除去されることになり、貯留部14における油性物質OLの割合が調整され、さらには、水WTの割合も調整され、上記した所定の割合にされるとよい。これにより、除去装置20は、上記した調整機構として使用される。
【0035】
除去装置20としては、例えば公知の油水分離装置を使用すればよい。油水分離装置としては、特に限定されないが、透過膜方式、遠心分離方式などが使用できる。また、除去装置20は、蒸留方式などにより水と油性物質を分離してもよく、例えば水を留去して、その留去した水を、循環路21を介してスクラバ12に戻すとよい。また、CDドライヤなどの乾燥機を使用して、水又は油性物質を留去してもよい。
【0036】
さらに、貯留部14から除去装置20に送られる洗浄液は、上記の通り、水溶性不純物、固形不純物IPなどの不純物が含まれるが、除去装置20において不純物も除去するとよい。不純物の除去は、特に限定されないが、例えば、上記のように水を留去して分離することで、各種不純物を油性物質OLとともに水から分離して除去してもよいし、油水分離装置などにより各種不純物を油性物質とともに水から分離して除去してもよい。
【0037】
また、例えば油水分離装置の前段に、ろ過装置を設けてもよい。ろ過装置としては、固形不純物を取り除くろ過装置、イオン性吸着剤などを備え、水溶性不純物を取り除くろ過装置などが挙げられる。除去装置20によって固形不純物、水溶性不純物などの不純物を除去すると、洗浄液に不純物が蓄積することが防止できるので、長期間にわたってスクラバ12を連続的に運転することができる。また、除去装置20では、相分離を利用した分離装置であってもよいし、固形不純物はデカンテーションを利用して分離でもよい。
なお、除去装置20において、水と油性物質は、厳密に分離する必要はなく、例えば、分離した水をスクラバ12に戻す場合には、分離前に比べて分離後の水の割合が増えるように、油性物質を除去すればよく、分離後の水に油性物質などが含まれていてもよい。
【0038】
貯留部14に貯留された洗浄液、又はノズルから噴霧される洗浄液は、洗浄液における油性物質の割合、又は油性物質及び水の割合が適宜検出されて、その検出結果に応じて、除去装置20(調整機構)により、洗浄液における油性物質の割合、又は油性物質及び水の割合が調整されるとよい。ただし、油性物質の割合、又は油性物質及び水の割合の調整は、除去装置20(調整機構)に限定されず、貯留部14に水又は油性物質が添加されることなどで行われてもよい。
油性物質の割合、又は油性物質及び水の割合は、例えば、所定時間ごとに貯留部14に貯留された洗浄液又はノズルから噴霧される洗浄液が採取されて検出されるとよい。油性物質の割合は、上記したとおりに油液分離により油性物質の体積を検出してもよいし、FT-IR、ガスクロマトグラフィーなどにより検出してもよい。ガスクロマトグラフィーにより検出する場合には、予め同定された代表物質の検量線などに基づき検出するとよい。また、水の割合は、洗浄液より水を分離して体積を測定するとよい。
【0039】
また、精製ガス製造装置は、洗浄液における油性物質の割合、又は油性物質及び水の割合を検出する検出装置(図示しない)と、検出装置と除去装置を制御する制御部(図示しない)を備えてもよい。検出装置と制御部を有する場合、検出装置によって検出された検出結果は、制御部に送信され、その検出結果に応じて、除去装置20(調整機構)は、制御部によって、洗浄液における油性物質の割合、又は油性物質及び水の割合を上記所定の範囲内となるように制御されるとよい。
【0040】
以上のように、本実施形態によれば、洗浄液に、水のみならず油性物質を含有させ、かつ油性物質の含有割合を所定範囲内に調整することで、1つのスクラバにおいて粗ガスG1から水溶性不純物及び油溶性不純物の両方を適切に除去できる。また、調整機構により、油性物質の含有割合を所定範囲内に調整できる。そのため、簡便な設備で、水溶性不純物と油溶性不純物の両方を効率的に除去できる。
さらに、除去した油溶性不純物は、そのまま油性物質として使用できるので、洗浄における有機化合物の投入量を最小限に抑え、環境負荷の低いガス精製を実現できる。
【0041】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。以下では、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。上記した第1の実施形態では、貯留部に貯留された水及び油性物質は混合された状態で循環され洗浄液として使用されたが、本実施形態では、貯留部において水と油性物質は相分離され、それら相分離された水および油性物質それぞれが独立に回収され、回収後に混合されて洗浄液として使用される。
【0042】
具体的には、
図3に示すように、本実施形態におけるスクラバ32には、貯留部34から粗ガスG1に接触させるために洗浄液を供給する、供給路として第1及び第2回収路36A,36Bが設けられる。また、スクラバ32内部の貯留部34において、水WT及び油性物質OLは、例えば静置されることで相分離されている。第1及び第2回収路36A,36Bそれぞれの送入口36C,36Dは、相分離された水WT及び油性物質OLに面するように配置されるとともに、送出側で合流されてノズル35に接続される。
したがって、水WT及び油性物質OLは、それぞれ第1及び第2回収路36A,36Bを介して独立に回収され、これらは混合されて洗浄液WSとしてノズル35から噴霧され、接触領域Aにおいて、導入路33から導入された粗ガスG1に接触する。これにより、粗ガスG1は精製されて、精製ガスG2が排出ガス39から排出される。一方で、洗浄液WSは、粗ガスG1に含まれていた水溶性不純物及び油溶性不純物が混入されたうえで、貯留部34に貯められる。そのうち、油溶性不純物は、少なくとも一部が油性物質OLとしてそのまま洗浄液において使用される。
なお、第1及び第2回収路36A,36Bそれぞれには、ポンプ38A,38Bが取り付けられ、水WT及び油性物質OLそれぞれは、ポンプ38A,38Bそれぞれによって圧送されるとよい。
【0043】
このように本実施形態では、水WT及び油性物質OLそれぞれが別々の回収路36A,36Bを介して回収されることで、回収量を各々独立に調整できる。したがって、水WT及び油性物質OLの回収量を適宜調整することで、粗ガスG1に接触する洗浄液WSにおける油性物質OLの割合、さらには洗浄液WSにおける水WTの量を調整できる。すなわち、本実施形態では、第1及び第2回収路36A、36Bが、洗浄液における油性物質OLの割合、さらには、水WTの割合も調整する調整機構として機能する。
【0044】
貯留部34において、水WT及び油性物質OLそれぞれは、通常、
図3に示すように、水層34A及び油性物質層34Bをそれぞれ構成し、油性物質層34Bが水層34Aの上に配置される。そして、貯留部34における水及び油性物質の貯留量が変化すると油性物質層34Bの高さ位置も変化する。そのため、油性物質を回収するための第2回収路36Bの送入口36Dは、油性物質層34Bの高さ位置に合わせて高さ位置が変更できるように設計されていてもよい。もちろん、水を回収するための回収路36Aの送入口36Cの高さ位置も変更できるように設計されていてもよい。
また、第1及び第2回収路36A,36Bそれぞれは、水WT、及び油性物質OLそれぞれを厳密に単独で回収する必要はなく、第1及び第2回収路36A,36Bそれぞれにおける回収量を調整することで、洗浄液WSにおける、油性物質の割合、又は油性物質及び水の割合を変更できる限り、他の成分が含有されていてもよい。
【0045】
また、本実施形態においても、除去装置40が設けられるとよい。ただし、上記の通り、本実施形態では、回収路36A,36Bにより、洗浄液における油性物質の割合、さらには水の割合が調整できるので、除去装置40を用いて、洗浄液における油性物質及び水の割合を調整する必要はない。一方で、貯留部34に貯留される洗浄液(水WTと油性物質OL)は、固形不純物、水溶性不純物などの不純物が含まれるので、それら不純物は取り除くことが好ましい。
したがって、貯留部34に貯留される水WTは、循環路41を介して除去装置40に送られ、除去装置40にて固形不純物、水溶性不純物などが取り除かれた後に、循環路41を介して貯留部34に戻されるとよい。このような構成によれば、貯留部34にて不純物が蓄積され、洗浄液における不純物量が増加することを防止できる。なお、除去装置40にて不純物を取り除くための構成は、上記第1の実施形態で説明したとおりである。
【0046】
本実施形態において、除去装置40に水WTを送るための循環路41の排出口41Aは、
図3に示すように貯留部34の底面、又は底面近傍に配置されるとよい。貯留部34では、貯留部34の底面に固形不純物IPが堆積されやすい。したがって、排出口41Aが底面又は底面近傍に配置されることで、固形不純物IPが、排出口41Aを介して効率的に除去されることになる。
【0047】
また、以上の説明では、水WTは、除去装置40において不純物を取り除いた後、循環路41を介して貯留部34に戻される態様を説明したが、水WTは、貯留部34に戻されずにそのまま除去されてもよい。例えば、排出口41Aが底面又は底面近傍に設けられると、排出口41Aからは、固形分不純物IPの割合が比較的高い水が排出されることになるので、そのまま除去しても、貯留部34における水の量が著しく少なくなることが防止できる。また、水の量が少なくなっても、貯留部34に水を適宜添加するとよい。
【0048】
さらに、以上の説明では排出口41Aから水WTが除去装置40に送られる構成を示したが、水WTに限定されず、排出口41Aから油性物質OLが送られてもよいし、油性物質OLと水WTの混合物が送られてもよい。この場合、循環路41の排出口41Aの位置は、適宜変更されるとよい。また、排出口41Aから排出された、油性物質OL、又は油性物質OLと水WTの混合物は、除去装置40にて適宜不純物が除去されて貯留部34に戻されてもよいし、貯留部34に油性物質OLの量が多くなりすぎることを防止するために貯留部34に戻されずに除去されてもよい。
また、排出口41Aは2つ以上設けられて、水WT、油性物質OLは別々に貯留部34から排出されてもよい。この場合も、排出された水WT又は油性物質OLは、上記のとおり、除去装置40により不純物が取り除かれた後に、貯留部34に戻されてもよいし、そのまま排出されてもよい。
【0049】
また、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、除去装置40によって、貯留部34に貯留される洗浄液から水WT又は油性物質OLの一部が除去されて、貯留部34に貯留される洗浄液に対する油性物質OLの割合、更には、水WTの割合が適宜調整されてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、相分離を利用して水及び油性物質が選択的に回収されたが、水及び油性物質は相分離を利用して回収しなくてもよい。例えば、油水分離装置を設けて、油水分離装置で水と油性物質を分離して、それぞれを第1及び第2の回収路にて回収させた後、混合して洗浄液として粗ガスに接触させてもよい。これにより、貯留部において水と油性物質が相分離しない場合でも、水と油性物質それぞれを選択的に回収できる。
また、供給路は2つ(第1及び第2の回収路)設ける必要もなく、例えば、油水分離装置を適宜組み合わせるなどして、水と油性物質それぞれの量を調整し、洗浄液における油性物質の割合、又は洗浄液における油性物質及び水の割合を所定の範囲としたうえで、第1の実施形態と同様に1つの供給路により洗浄液を供給してもよい。
【0051】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。以下では、第3の実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。上記した第1の実施形態のスクラバ12では、貯留部12に貯留される洗浄液は循環されてスクラバ12上部のノズル15から噴霧されたが、本実施形態のスクラバ52では、ノズルが省略され、貯留部54に貯留される水WT及び油性物質OLを含む洗浄液WSは、循環されずに貯留部54で貯留されたままである。そして、導入路53の導入口53Aは、貯留部54に貯留された洗浄液WSの液面よりも下方に配置される。
【0052】
したがって、導入路53から導入された粗ガスG1は、貯留部54に貯留された洗浄液WSに対して導入される。これにより、粗ガスG1は、貯留部54に貯留された洗浄液WSを通過することで、粗ガスG1が洗浄液WSに接触する。粗ガスG1は、貯留部54にて洗浄液WSに接触することで、粗ガスG1に含有される水溶性不純物及び油溶性不純物の少なくとも一部が除去される。水溶性不純物及び油溶性不純物が除去されたガスは、精製ガスG2として、スクラバ12の上部に設けられた排出口59から排出される。
さらに、本実施形態でも、上記第1の実施形態と同様に、洗浄液WSにおける油性物質OLの割合、さらには水WTと油性物質OLの割合が上記で説明したとおりの範囲内に設定される。そのため、水溶性不純物及び油溶性不純物は、効率的に排ガスG1から除去される。
【0053】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、貯留部54に貯留された洗浄液WSは、攪拌翼などの攪拌手段により混合されている。また、本実施形態でも、調整機構としての除去装置60が設けられる。除去装置60は、循環路61を介してスクラバ52に接続される。除去装置60、循環路61の構成は、第1の実施形態の除去装置20、循環路21と同様であり、その説明は省略する。
【0054】
ただし、貯留部54に貯留された洗浄液WSは、必ずしも攪拌翼などにより混合される必要はなく、静置などされて水WTと油性物質OLは相分離していてもよい。相分離する場合、貯留部54には、第2の実施形態(
図3参照)で示したように、一般的に水層と油性物質層が下から順に形成される。そのため、粗ガスG1は、水及び油性物質に順次接触することで、水溶性不純物及び油溶性不純物が除去される。また、貯留部54に貯留された洗浄液における油性物質の割合、さらには水の割合が上記した所定の範囲内となることで、水溶性不純物及び油溶性不純物は、効率的に排ガスG1から除去される。
また、第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、検出装置と制御部が設けられ、その検出装置に検出された検出結果により、除去装置60(調整機構)が制御部により制御されて、洗浄液における油性物質の割合、又は油性物質及び水の割合が調整されてもよい。
【実施例】
【0055】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0056】
[試験1]
(ブランク)
内容物が入っていない容量15mlの有底円筒状の容器(バイアル瓶)をゴム栓により密閉した。その後、密閉された容器内に含硫化水素(H2S)ガスを表1に記載の注入量でシリンジにより注入した。含硫化水素(H2S)ガスとしては、硫化水素ガスを1体積%含み、残り(99体積%)が窒素(N2)である希釈ガスを使用した。その後、容器を100回振り混ぜた。次いで、気相のガス0.1mlをGC/MSに導入し、硫化水素由来のピークの面積を求め、そのピーク面積を基準にして、後述する実施例1~5、比較例1、2において、気相中の硫化水素濃度を求めた。
【0057】
実施例1~5において、ブランクで使用したものと同じ容器に、水及びインデンを表1に示す投入量で投入して、ゴム栓により密閉した。比較例1,2ではブランクで使用したものと同じ容器に、水又はインデンを表1に示す投入量で投入して、ゴム栓により密閉した。その後、各実施例、比較例において、密閉容器内に含硫化水素ガスを表1に記載の量でシリンジにより注入した。含硫化水素ガスは、上記ブランクと同じものを使用した。次に、水及びインデンとガスが混合するように、容器を100回振り混ぜた。その後、気相のガス0.1mlをGC/MSに導入し、ピーク面積を求め、気相中の硫化水素濃度を求めた。結果を表1に示す。なお、試験は、室温(25℃)環境下で行った。
【0058】
[試験2]
密閉容器に注入するガスを、含硫化水素ガス単独の代わりに、含硫化水素ガスと含ベンゼンガスに変更したうえでこれらの注入量を表2に示す通りとし、GC/MSでは、硫化水素及びベンゼン由来のピークそれぞれの面積を求めて、その他の条件は試験1と同様にして、実施例1~5、比較例1、2において、気相中の硫化水素濃度、及びベンゼン濃度を求めた。試験2の結果を表2に示す。
なお、含硫化水素ガスは試験1と同様のものを使用し、含ベンゼンガスはベンゼンガスを5体積%含み、残り(95体積%)が窒素(N2)である希釈ガスであった。
【0059】
(GC/MSの測定条件)
試験1、2におけるGC/MSの測定条件の測定条件は、以下の通りであった。
測定装置:島津製作所社製、GC/MS-QP2020
カラム:DB-5MS(AgilentJ&W)
カラム温度:40℃ → 280℃
イオン化法:EI
TIC質量範囲:m/z29~600
【0060】
【0061】
【0062】
表1の結果から明らかなように、注入ガスが硫化水素ガス(水溶性不純物)のみの試験1においては、洗浄液(液相)におけるインデンの体積割合が高くなることに伴い、気相中の硫化水素濃度が低くなった。この結果は、硫化水素のインデンに対する溶解性が水よりも高いことによりもたらされたと考えられる。
また、試験2のように注入ガスが硫化水素ガス(水溶性不純物)及びベンゼンガス(油溶性不純物)の両方を含む場合には、気相中の硫化水素ガスは、試験1と同様に、インデンの体積割合が高くなることに伴い低くなった。一方で、気相中のベンゼンガスは、インデンの体積割合が5体積%であっても十分に取り除かれて濃度が低くなり、また、30体積%以上ではよりさらに濃度が低くなった。このことから、油溶性不純物の除去には洗浄液に5体積%以上の油性物質を含有させることが効果的であり、また、さらに油性物質の割会を高くするとより効果的であることが理解できる。
【符号の説明】
【0063】
10 精製ガス製造装置
11 粗ガス生成設備
12、32、52 スクラバ
13 導入路
13A 導入口
14、34、54 貯留部
15、35 ノズル
16 供給路
19、39、59 排出路
20、40、60 除去装置(調整機構)
21、41、61 循環路
36A,36B 第1及び第2の回収路(調整機構)
A 接触領域
G1 粗ガス
G2 精製ガス
IP 固形不純物
OL 油性物質
WT 水