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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】高漆黒性カーボンブラック組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20250109BHJP
   C09C 1/48 20060101ALI20250109BHJP
   C09C 1/50 20060101ALI20250109BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20250109BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20250109BHJP
   C08L 91/06 20060101ALI20250109BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20250109BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C09D17/00
C09C1/48
C09C1/50
C08K3/04
C08K5/20
C08L91/06
C08L77/00
C08J3/22 CER
C08J3/22 CEZ
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021563219
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-22
(86)【国際出願番号】 US2020029636
(87)【国際公開番号】W WO2020219761
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】62/837,276
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506093430
【氏名又は名称】ビルラ カーボン ユー.エス.エー.,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】タンドン ディーパック
(72)【発明者】
【氏名】ティアン ジュン
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0018137(US,A1)
【文献】特開平09-235504(JP,A)
【文献】特開2007-231219(JP,A)
【文献】特表平10-505368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/00 - 3/12
C09D 15/00 - 17/00
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C08J 3/00 - 3/28
C08J 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0質量%~0質量%のカーボンブラックと、アミドを含む離型を含む添加剤0質量%~0質量%とを含むマスタービーズ組成物。
【請求項2】
前記カーボンブラックが、該組成物の少なくとも0質量%を構成する、請求項1に記載のマスタービーズ組成物。
【請求項3】
前記カーボンブラックが、該組成物の少なくとも0質量%を構成する、請求項1に記載のマスタービーズ組成物。
【請求項4】
前記カーボンブラックが、該組成物の少なくとも5質量%を構成する、請求項1に記載のマスタービーズ組成物。
【請求項5】
前記カーボンブラックが、ファーネスカーボンブラックを含む、請求項に記載のマスタービーズ組成物。
【請求項6】
前記カーボンブラックが、酸化されている、請求項に記載のマスタービーズ組成物。
【請求項7】
前記カーボンブラックが、ピアノブラックを含む、請求項に記載のマスタービーズ組成物。
【請求項8】
前記アミドを含む離型剤が、N,N’-エチレンビス(ステアラミド)を含む、請求項1に記載のマスタービーズ組成物。
【請求項9】
前記添加剤が、ワックスを更に含む、請求項1に記載のマスタービーズ組成物。
【請求項10】
前記組成物が、ワックスを含まない、請求項1に記載のマスタービーズ組成物。
【請求項11】
前記組成物が、樹脂を含まない、請求項1に記載のマスタービーズ組成物。
【請求項12】
本質的に前記カーボンブラックと前記アミドを含む離型剤からなる、請求項1に記載のマスタービーズ組成物。
【請求項13】
樹脂中の.5質量%~.0質量%のカーボンブラック充填量に低減させた場合、.5未満の漆黒度(L値)を有する、請求項1に記載のマスタービーズ組成物。
【請求項14】
前記樹脂が、ポリアミド樹脂を含む、請求項13に記載のマスタービーズ組成物。
【請求項15】
未満の漆黒度(L値)を有する、請求項13に記載のマスタービーズ組成物。
【請求項16】
マスタービーズ組成物を調製するための方法であって、0質量%~0質量%のカーボンブラックと、アミドを含む離型を含む添加剤0質量%~0質量%とを接触させて、複数の微粒子を有するマスタービーズを形成することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
技術分野
本開示は、カーボンブラックおよび高漆黒性を必要とする用途において有用であり得るカーボンブラックを含む組成物に関する。本開示は、高漆黒性用途において有用な組成物ならびにその調製のための方法および使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
技術的背景
カーボンブラックは、色を与える様々な用途に用いることができる。カーボンブラック材料またはそのようなカーボンブラック材料を含む組成物の光を吸収する能力は、漆黒性と呼ばれる。しばしば、漆黒性は、唯一の顔料としてカーボンブラックを含有する材料の色を指し、一方、色合いは顔料のブレンドを使用することにより発色した色を指すことになる。より高い漆黒性のカーボンブラックは、低漆黒性カーボンブラック材料よりも暗い組成物をもたらすことができる。分光写真は、サンプルの漆黒性を評価するために使用できる。
高漆黒性カーボンブラックはまた、いくつかの系に分散させることが困難であり得る。従って、改善された高漆黒性カーボンブラックおよびそのような高漆黒性カーボンブラックを含む組成物が必要とされている。これらの必要性および他の必要性は、本開示の組成物および方法によって満たされる。
【発明の概要】
【0003】
概要
本発明の目的に従って、本明細書において具体化し、広く説明したように、本開示は、一態様において、高漆黒性カーボンブラック材料、そのような高漆黒性カーボンブラック材料を含む組成物、ならびにその調製のための方法および使用に関する。
一態様において、本開示は、約50質量%~約80質量%のカーボンナノ材料と、約20質量%~約50質量%の次の1種もしくは複数種を含む添加剤:離型組成物、UV安定剤、熱安定剤および/または酸化防止剤、および難燃剤と、を含むマスタービーズ組成物を提供する。
【0004】
別の態様において、本開示は、約50質量%~約80質量%のカーボンブラックと、約20質量%~約50質量%の次の1種もしくは複数種を含む添加剤:離型組成物、UV安定剤、熱安定剤および/または酸化防止剤、および難燃剤と、を含むマスタービーズ組成物を提供する。
別の態様において、本開示は、約50質量%~約80質量%のピアノブラックと、約20質量%~約50質量%の次の1種もしくは複数種を含む添加剤:離型組成物、UV安定剤、熱安定剤および/または酸化防止剤、および難燃剤と、を含むマスタービーズ組成物を提供する。
別の態様において、本開示は、約50質量%~約80質量%のカーボンナノ材料と、約20質量%~約50質量%の離型組成物を含む添加剤と、を含むマスタービーズ組成物を提供する。
別の態様において、本開示は、約50質量%~約80質量%のカーボンナノ材料と、約20質量%~約50質量%のアミドを含む添加剤と、を含むマスタービーズ組成物を提供する。
別の態様において、本開示は、約50質量%~約80質量%のカーボンナノ材料と、約20質量%~約50質量%のN,N’-エチレンビス(ステアラミド)を含む添加剤と、を含むマスタービーズ組成物を提供する。
【0005】
一態様において、本開示は、約50質量%~約80質量%のカーボンナノ材料と、約20質量%~約50質量%の次の1種もしくは複数種を含む添加剤:離型組成物、UV安定剤、熱安定剤および/または酸化防止剤、および難燃剤と、を含むマスタービーズ組成物であって、樹脂中の約0.5質量%~約1.0質量%のカーボンブラック充填量に低減させた場合、約3.5未満の漆黒度(L値)を有するマスタービーズ組成物を提供する。
別の態様において、本開示は、マスタービーズ組成物を調製するための方法であって、約50質量%~約80質量%のカーボンナノ材料と、約20質量%~約50質量%の次の1種もしくは複数種を含む添加剤:離型組成物、UV安定剤、熱安定剤および/または酸化防止剤、および難燃剤とを接触させて、複数の微粒子を有するマスタービーズを形成することを含む方法を提供する。
【0006】
本明細書の一部に組み込まれ、それを構成する添付の図面は、いくつかの態様を示し、説明と共に本発明の原理を説明するのに役に立つ。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】本開示の様々な態様に従って、ポリアミド6樹脂中の30質量%Raven 2500 Ultraカーボンブラックを使用して調製したマスターバッチ押出物の断面の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
図1B】本開示の様々な態様に従って、ポリアミド6樹脂中の20質量%Raven 5100 Ultraカーボンブラックを使用して調製したマスターバッチ押出物の断面のSEM画像である。
図1C】本開示の様々な態様に従って、ポリアミド6樹脂中の20質量%Raven 5100 Ultraカーボンブラックと10質量%N,N’-エチレンビス(ステアラミド)(EBS)を使用して調製したマスターバッチ押出物の断面のSEM画像である。
図2A】本開示の様々な態様に従って、ポリアミド6を使用して0.5質量%のカーボンブラック充填量に低減させた、Raven 2500 UltraカーボンブラックおよびEBSのマスタービーズ組成物から調製した、射出成形カラーチップの一部の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
図2B】本開示の様々な態様に従って、ポリアミド6を使用して0.5質量%のカーボンブラック充填量に低減させた、Raven 3000 UltraカーボンブラックおよびEBSのマスタービーズ組成物から調製した、射出成形カラーチップの一部のTEM画像である。
図2C】本開示の様々な態様に従って、ポリアミド6を使用して0.5質量%のカーボンブラック充填量に低減させた、Raven 5100 UltraカーボンブラックおよびEBSのマスタービーズ組成物から調製した、射出成形カラーチップの一部のTEM画像である。
図3】本開示の様々な態様に従って、低減させたカーボンブラックマスターバッチ組成物のカラー性能を示すグラフである。
図4】本開示の様々な態様に従って、添加剤を含むカーボンブラック含有マスタービーズ組成物のカラー性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の追加の態様は、以下の説明に部分的に記載され、部分的には説明から明らかになるか、あるいは本発明の実施によって知ることができる。本発明の利点は、添付の特許請求の範囲にとりわけ指摘された要素と組合せによって実現され、達成されるであろう。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は共に例示的で説明的なものであり、特許請求したように、本発明を限定するものではないことは理解されるべきである。
【0009】
詳細な説明
本発明は、以下の本発明の詳細な説明および本明細書に含まれる実施例を参照することにより、より容易に理解できる。
本化合物、組成物、物品、システム、装置、および/または方法が開示され、説明される前に、これらは特に明記しない限り具体的な合成方法に限定されず、特に明記しない限り特定の試薬に限定されないが、勿論、そのようなものとして変形し得ることは理解されるべきである。本明細書に使用される用語は、特定の態様のみを記載するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。本明細書に記載したものと類似または同等のいかなる方法および材料も、本発明の実施または試験に使用できるが、実施例の方法および材料を以下に記載する。
本明細書に述べた全ての刊行物は、それらの刊行物が引用していることに関連する方法および/または材料を開示し、説明するために参照によって本明細書に組み込まれる。
特に限定されない限り、本明細書に使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当該技術の当業者によって、一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載したものと類似または同等のいかなる方法および材料も、本発明の実施または試験に使用できるが、実施例の方法および材料をここに記載する。
【0010】
本明細書に使用されているように、特に断りのない限り、単数形「1つの」(「a」、「an」および「the」)には、文脈が明らかにそうでないことを示していない限り、複数の対象も含まれる。従って、例えば、「1つの充填剤」または「1つの溶媒」について述べることには、それぞれ、2つまたはそれ以上の充填剤、または溶媒の混合物が含まれる。
範囲は、「約」ある1つの特定の値から、および/または「約」もう1つの特定の値までとして本明細書において表され得る。そのような範囲が表される場合、別の態様には、その1つの特定の値からおよび/またはその他の特定の値までが含まれる。同様に、値が近似として表される場合、先行詞「約」を使用することにより、特定の値が別の態様をなすことが理解されるであろう。各範囲の終点は、他の終点との関係においても、他の終点とは独立しても、重要であることがさらに理解されるであろう。本明細書に多くの値が開示されており、また、各値は、値自体に加え、「約」その特定の値として開示されていることもまた理解されたい。例えば、「10」の値が開示される場合には、「約10」もまた開示される。2つの特定のユニット間の各ユニットも開示されていることも理解されたい。例えば、10と15が開示される場合には、11、12、13、および14もまた開示される。
本明細書に使用したように、「任意(optional)」または「任意に(optionally)」という用語は、後に記載される現象または状況が、起こり得るまたは起こらなくてもよいことを意味し、説明には、上記現象または状況が起こる場合および起こらない場合とが含まれる。
【0011】
開示されているのは、本発明の組成物を調製するために使用される成分も本明細書に開示した方法の範囲内で使用される組成物自体もである。これらのおよび他の材料は、本明細書に開示されており、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、基などが開示された場合、これらの化合物の各種の個々のおよび集合的な組合せおよび置換の具体的な参照が明示的に開示され得ないが、各々が明確に意図され、本明細書に記載されていることは理解されたい。例えば、特定の化合物が開示され、議論され、化合物を含む多数の分子に対してなされ得る多くの修飾が議論される場合には、明確に意図されているのは、化合物の各々およびあらゆる組合せおよび置換ならびに特に断りのない限り可能な修飾である。従って、分子A、B、およびCのクラスも開示され、分子D、E、およびFのクラス、および組合せ分子の一例、A-Dも開示されている場合には、各々が個々に列挙されていなくても、各々は個々におよび集合的に意図され、組合せを意味し、A-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、およびC-Fが開示されていると考えられる。同様に、これらのいずれのサブセットまたは組合せも開示されている。従って、例えば、A-E、B-F、およびC-Eのサブグループが開示されていると考えられる。この概念は、本発明の組成物を製造し、使用する方法におけるステップを含むが、これらに限定されないこの適用の全ての態様にあてはまる。従って、実施され得る様々な追加のステップが存在する場合には、これらの追加のステップの各々は、本発明の方法のいずれの具体的な実施形態または実施形態の組合せでも実施され得ることは理解されたい。
【0012】
本明細書に開示した材料の各々は、商業的に入手できかつ/またはその製造のための方法が当業者に知られている。
本明細書に開示した組成物がある種の機能を有することは理解されたい。本明細書に開示されているのは、開示された機能を実施するためのある種の構造的要件であり、開示された構造に関連する同じ機能を実施できる様々な構造があり、これらの構造が典型的には同じ結果を達成することは理解されたい。
特に明記しない限り、部は質量部であり、温度は℃であるかあるいは周囲温度であり、圧力は大気圧あるいはその近くである。
【0013】
簡単に上述したように、本開示は、高漆黒性カーボンブラックおよびそのような高漆黒性カーボンブラックを含む組成物を、それを調製するための方法および使用と共に提供する。
高漆黒性エンジニアリングプラスチック組成物、とりわけ繊維および自動車用途の市場需要が高まっており、これは高表面積カーボンブラックで満たすことができる。これらのカーボンブラックは、当該技術においてピアノブラックとも呼ばれ得る。これらのカーボンブラックは、得られる組成物に優れた漆黒特性を与えることができるが、固有の粒子サイズ(すなわち、微粉性)および高表面積は、それらを分散させることが非常に困難であり得る。一態様において、カーボンブラック凝集体間の高いファンデルワールス相互作用およびカーボンブラックと従来のポリマー樹脂との間の限定された親和性は、ポリマー系内で良好な分散性を達成するために高エネルギー入力を必要とし得る。良好な分散性は、これらの用途に重要であるが、通常の配合法を使用する場合には困難であり得る。
【0014】
カーボンブラック充填エンジニアリング樹脂を用いる用途は、典型的には、樹脂組成物中にカーボンブラックを分散し、処理する際の課題を克服すると共に具体的な用途に対してそれらの性能を最適化するために添加剤のパッケージを必要とする。この具体的な添加剤または添加剤の組合せは、使用される1つの樹脂もしくは複数の樹脂および具体的な用途に応じて変化し得るが、これらの添加剤組成物は、最終樹脂/カーボンブラック組成物に与える機能または特性に基づいて特徴づけることができる。様々な従来の系において、次の添加剤の1種もしくは複数種を使用できる:(1)押出または成形プロセスにおいて、仕上げ部品の金属表面への付着を防止するために使用できる離型組成物、(2)プラスチック部品の屋外寿命を延長するために使用されるUV安定剤、(3)処理中の熱および酸化劣化から樹脂を保護するために使用される熱安定剤および/または酸化防止剤、および(4)火災を防止しあるいはそれらの拡散を遅くするために使用される難燃剤。他の態様において、他の添加剤を上記のもののいずれかに加えてまたはその代わりに使用することができる。さらに他の態様において、単一タイプの複数の添加剤または様々なタイプの複数の添加剤を組成物中に使用できる。
【0015】
カーボンブラック材料は、それらの微粉性と発塵性のために、もともと取扱いが困難であり得る。また、プラスチック中に分散させることは困難であり得る。ほとんどの樹脂系における良好なカーボンブラック分散性を達成するには、典型的には、高エネルギー混合が必要である。カーボンブラック材料の多くの使用者は、これらの樹脂系にカーボンブラックを効率的に分散させるために高価な設備および/または専門知識を欠いている。その結果、一部の使用者はマスターバッチ組成物を使用することを選択し、ここでカーボンブラックは最終製品の製造に使用するのに必要な濃度よりも高い濃度で樹脂系中に分散される。これらの濃縮物は、カーボンブラック材料を効率的に分散させるための設備と知識を有する会社によって調製できる。一旦カーボンブラックが十分に分散されると、高濃度でも、追加の樹脂を添加してカーボンブラック濃度を希釈できる。最終使用者は、カーボンブラックマスターバッチ組成物を購入し、次いで、追加の樹脂を添加することによりその組成物を希釈するか、または低減させることができる。その追加の樹脂を組み込み、前分散したカーボンブラックを残りの樹脂に分散させるのに必要なエネルギーは、マスターバッチを形成するのに必要なエネルギーよりも著しく少ない。マスターバッチ材料はまた、カーボンブラックが樹脂マトリックス中に組み込まれるので、取り扱いが容易で、発塵性が低いという追加された利点も有する。本開示は、従来のマスターバッチ技術に代わるものであるが、樹脂を含有しない前分散カーボンブラックを提供し、それは同様に取り扱いが容易であり、最終使用者によって樹脂系へ容易に分散させることができる。
【0016】
一態様において、本開示は、カーボンブラックと、1種もしくは複数種の添加剤と、任意の樹脂またはプラスチック材料の組合せを提供する。このような態様において、この1種もしくは複数種の添加剤は、樹脂中のカーボンブラックの分散性を改善することを意図している。別の態様において、この組成物は、樹脂を含まず、1種もしくは複数種のカーボンブラックと1種もしくは複数種の添加剤のみを含む。いくつかの態様において、これらの添加剤の1種もしくは複数種は、上記の目的の1つまたは複数に使用される従来の添加剤であってもよい。このような態様において、本発明は、通常の方法および用途よりも高い濃度で、そしてカーボンブラックの担体として、単に離型剤、UV安定剤、熱安定剤、および/または難燃剤としてでなく、このような1種の添加剤もしくは複数種の添加剤の使用を意図している。従って、いくつかの態様において、いずれか1種の添加剤の濃度も複数種の添加剤の組合せの濃度も、それらの通常の目的のための当該技術において使用されるものよりも高いことを意図している。
【0017】
一態様において、1つの添加剤または添加剤の混合物は、カーボンブラックおよび樹脂と共に用いて、配合段階での分散性を改善できる。別の態様において、樹脂と接触させる前に、カーボンブラックを1つの添加剤または添加剤の混合物と予め接触させることができる。このような添加剤を予め接触させたカーボンブラックは、様々な態様において、マスタービーズと呼ぶことができる。このような態様において、処理されたカーボンブラックをパッケージにしかつ/または販売して、その後、樹脂と混合できる。さらに別の態様において、このカーボンブラック、樹脂および1つの添加剤もしくは複数の添加剤を含有するマスターバッチ(すなわち、濃縮物)を調製することができ、ここで、カーボンブラックはマスターバッチ組成物中に十分に分散されている。このような態様において、最終使用者は、マスターバッチ組成物中の濃縮カーボンブラックおよび/または添加剤(1つもしくは複数)を希釈するようにマスターバッチ組成物を追加の樹脂と接触させることによりマスターバッチを低減させることができる。
【0018】
理論に縛られることを望まないが、本明細書に記載したようにカーボンブラックおよび添加剤の使用は、樹脂系におけるカーボンブラックの混和性を改善できると考えられる。別の態様において、本明細書に記載のカーボンブラックと添加剤の組成物は、共連続形態を含むことができると考えられる。
本発明のカーボンブラックは、高漆黒性を必要とする用途において使用するのに適したいかなるカーボンブラックも含むことができる。一態様において、このカーボンブラックはファーネスカーボンブラックである。一態様において、単一の高漆黒性カーボンブラックを用いることができる。他の態様において、カーボンブラックの少なくとも1種が高漆黒性カーボンブラックである2種またはそれ以上のカーボンブラックを用いることができる。さらに他の態様において、2種もしくはそれ以上の高漆黒性カーボンブラックを用いることができる。さらに別の態様において、この高漆黒性カーボンブラックは、組成物中の従来のカーボンブラックの他の全部または一部および/または他の顔料または染料と置き換えることができる。
【0019】
一態様において、本発明は、ピアノブラックを含む。様々な態様において、ピアノブラックは、例えば、少なくとも約175m2/g、少なくとも約200m2/g、少なくとも約225m2/g、少なくとも約250m2/g、少なくとも約300m2/g、少なくとも約350m2/g、少なくとも約400m2/g、少なくとも約450m2/g、少なくとも約500m2/g、またはそれ以上の窒素表面積(NSA)を有する、高表面積カーボンブラックを含む。別の態様において、このピアノブラックは、約175~約700m2/g、約200~約600m2/g、約250~約550m2/g、約300~約600m2/g、約350~約600m2/g、約400~約650m2/g、約450~約575m2/g、または約500~約650m2/gのNSAを有するカーボンブラックを含む。他の態様において、ピアノブラックは、約150~約400m2/g、または約200~約350m2/gの統計的厚さ表面積(STSA)を有するカーボンブラックを含むことができる。さらに別の態様において、ピアノブラックは、約60~約120ml/100g、または約65~約105ml/100g、または約80~約105ml/100gのオイル吸収量(OAN)を有することができる。他の態様において、ピアノブラックは、本明細書に挙げた範囲外でNSA、STSA、および/またはOANを有することができる。他の態様において、ピアノブラックは、未改質の表面を有することができる。さらに他の態様において、ピアノブラックは、例えばオゾン、酸または過酸化水素を介して酸化されるか、または他の基(例えば、アミン、カルボン酸など)で官能化された、改質表面を有することができる。カーボンブラック表面改質の多数の例が文献にあり、各々が本発明で意図される。本発明に使用するためのもののようなカーボンブラックは、例えば、Birla Carbon U.S.A.社、米国、ジョージア州マリエッタから商業的に入手できる。
【0020】
NSAは、ASTM D6556に従って測定できる窒素表面積を意味し、B.E.T.理論に基づく多孔度を含む、窒素に接近できるカーボンブラックサンプルの全表面積の尺度である。STSAは、プラスチックまたは他の媒体に接近できるカーボンブラックサンプルの統計的厚さ表面積または外部表面積を意味し、ASTM D6556に従って測定できる。OANは、オイル吸収量を意味し、カーボンブラックグレードの構造、または凝集体サイズの表示を提供することを意図している。OANは、ASTM D2414に従って測定できる。
他の態様において、本発明のカーボンブラックの全部または一部を、例えば単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、炭素繊維およびグラフェンのような1種もしくは複数種の他のカーボンナノ材料と置き換えることができる。従って、一態様において、この組成物は、カーボンナノ材料と1種もしくは複数種の添加剤とを含むことができる。
【0021】
一態様において、本発明はまた、通常の離型添加剤またはその類似体もしくは誘導体を含む。様々な態様において、このような離型剤は、第一級、第二級、および/または第三級アミドのようなアミド、またはアミンを含むことができる。一態様において、この添加剤は、エチレンビスステアラミド(EBS)(化合物(I)として下記を参照されたい)を含むことができる。別の態様において、この添加剤は、例えばポリエチレンワックスのようなワックスを含むことができる。さらに他の態様において、この添加剤は、1種もしくは複数種の他の通常の離型剤を含むことができる。他の態様において、本明細書中に挙げたあるいは意図した個々の添加剤のいずれか1つもしくは複数を組み合わせて、添加剤を形成できる。一態様において、複数の離型剤または他の添加剤を一緒に用いることができる。離型剤は、典型的には、樹脂マトリックスと化学的に相溶性であり、樹脂化合物よりも低い分子量をしばしば有する。
【化1】
【0022】
別の態様において、本発明は、UV安定剤添加剤またはその類似体もしくは誘導体を含む。様々な態様において、このようなUV安定剤添加剤は、ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、および/または他の通常のUV安定剤添加剤を含むことができる。一態様において、複数のUV安定剤添加剤または他の添加剤を一緒に用いることができる。
別の態様において、本発明は、難燃性添加剤またはその類似体もしくは誘導体を含む。様々な態様において、難燃性添加剤は、単独でまたは他の難燃性添加剤または他の添加剤と組み合わせて使用できる。
別の態様において、本発明は、本明細書に挙げたまたはピアノブラックを含む材料の処理に一般的に使用される添加剤のいずれか2つもしくはそれ以上のタイプの混合物を含む。様々な態様において、この組成物は、添加剤材料のいずれの混合物も含むことができる。別の態様において、本明細書に挙げた添加剤または添加剤のタイプのいずれか1つもしくは複数が、組成物から明確に排除され得る。
これらの添加剤は、通常のカーボンブラック含有樹脂材料の処理に使用してもよいが、典型的には、例えば、約1,000ppm未満または約500ppm未満のような低レベルで使用される。これらの添加剤材料は、典型的には、それらが混合される樹脂よりも低い分子量を有し、典型的には、その樹脂に溶解性でありかつ/または相溶性であるので、本発明は、マスタービーズまたはマスターバッチ材料を調製するための担体として、または湿潤性および分散性を容易にしかつ改善するカーボンブラックのための表面改質剤としてのそれらの使用を意図している。
【0023】
マスタービーズ組成物
様々な態様において、カーボンブラックのいずれかの個々の添加剤または添加剤の組合せに対する質量比は、複数の添加剤が存在する場合には、約95:5(カーボンブラック:添加剤)~約50:50、例えば、約95:5、90:10、85:15、80:20、75:25、70:30、65:35、60:40、55:45、または50:50であり得る。他の態様において、カーボンブラックのいずれかの個々の添加剤または組合せに対する質量比は、約90:10~約50:50、約85:15~約40:60、約75:25~約50:50、約70:30~約45:55、約60:40~約40:60、約80:20~約30:70、または約75:25~約60:40であり得る。他の態様において、カーボンブラックのいずれかの個々の添加剤または添加剤の組合せに対する質量比は、本明細書に挙げたいずれの値または範囲より高くても低くてもよい。別の態様において、カーボンブラックの添加剤に対する比は、約5:1、4.5:1、4:1、3.5:1、3:1、2.5:1、2:1、1.5:1、1:1、1:1.2、1:1.4、1:1.6、1:1.8、1:2、1:2.1、1:2.2、1:2.3、1:2.4、1:2.5、1:2.6、1:2.7、1:2.8、1:2.9、1:3、1:3.2、1:3.4、1:3.6:1:3.8、1:4、1:4.2、1:4.4、1:4.6、1:4.8、または1:5であり得る。他の態様において、カーボンブラックの添加剤または添加剤の組合せに対する比は、本明細書に挙げたいずれの特定の値または範囲より高くても低くてもよい。一態様において、上記の質量比は、カーボンブラックと1種もしくは複数種の添加剤とを含むマスタービーズ組成物を指すことができる。別の態様において、カーボンブラックの上記の添加剤に対する質量比は、1種もしくは複数種の樹脂材料も含むマスターバッチ組成物を指すことができる。
【0024】
一態様において、1つの添加剤または添加剤の混合物は、最終組成物中に少なくとも約5,000ppm、少なくとも約6,000ppm、少なくとも約7,000ppm、少なくとも約8,000ppm、少なくとも約9,000ppm、少なくとも約10,000ppm、またはそれ以上の濃度で存在できる。別の態様において、1つの添加剤または添加剤の混合物は、上記の下限値のいずれからも約10,000ppm、20,000ppm、30,000ppm、40,000ppm、50,000ppm、75,000ppm、100,000ppm、150,000ppm、200,000ppm、250,000ppm、300,000ppm、350,000ppm、400,000ppm、450,000ppm、500,000ppm、またはそれ以上までの範囲で存在できる。
【0025】
一態様において、上記1種もしくは複数種の添加剤とピアノブラックを本明細書に記載したように使用する場合、カーボンブラックの充填量は、少なくとも約40質量%、少なくとも約50質量%、少なくとも約55質量%、少なくとも約60質量%、少なくとも約65質量%、少なくとも約70質量%、少なくとも約75質量%、少なくとも約80質量%、少なくとも約85質量%、またはそれ以上に増加させることができる。別の態様において、カーボンブラックの充填量は、約40質量%~約75質量%、約40質量%~約80質量%、約40質量%~約85質量%、約50質量%~約85質量%、約50質量%~約75質量%、約55質量%~約75質量%、約55質量%~約80質量%、約60質量%~約80質量%、約60質量%~約85質量%、約60質量%~約75質量%、約65質量%~約85質量%、約65質量%~約80質量%、または約65~約75質量%のレベルに増加させることができる。他の態様において、マスタービーズ組成物中のカーボンブラックの量は、約60質量%~約80質量%であり得、添加剤の量は、約20質量%~約40質量%であり得る。他の態様において、このカーボンブラックおよび/または添加剤充填量は、本明細書に挙げたいずれの具体的な値または範囲より高くても低くてもよい。別の態様において、本明細書に挙げたように、カーボンブラックの高充填量の使用は、優れた分散性を維持したまま使用できる。
【0026】
マスターバッチ組成物
上で言及したように、カーボンブラックと、本明細書に記載したように1種もしくは複数種の添加剤と、1種もしくは複数種の樹脂材料とを含むマスターバッチ組成物を調製できる。一態様において、マスターバッチは、上述したように、1種もしくは複数種の樹脂材料とマスタービーズとを接触させることにより調製できる。別の態様において、マスターバッチ組成物は、カーボンブラックと、本明細書に記載したように1種もしくは複数種の添加剤と、1種もしくは複数種の樹脂材料とを接触させることにより調製できる。様々な態様において、マスターバッチ組成物の樹脂材料、またはマスターバッチ組成物として低減させるために使用される樹脂材料は、例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル、スチレン-アクリロニトリルのようなコポリマー、およびアクリロニトリルブタジエンスチレンのようなターポリマーを含むいかなる通常の樹脂材料も含むことができる。他の態様において、本明細書に明確に挙げられていない他の樹脂材料は、本明細書に挙げたいずれかの樹脂材料に加えてあるいはその代わりに用いることができる。一態様において、カーボンブラックおよび/または1つの添加剤は、特定の樹脂系とのそれらの相溶性および/または混和性に基づいて選択できる。例えば、Ravn 3500 Ultraは、その表面上に酸素含有官能基を有するオゾン化カーボンブラックである。オゾン化は、ポリアミドのようなある種の樹脂とのカーボンブラックの化学的適合性を改善することができ、従って、カーボンブラックの樹脂中での改善された分散性を可能にする。
【0027】
様々な態様において、マスターバッチ組成物中のカーボンブラックのいずれか1つもしくは複数の添加剤に対する比は、上述したように、カーボンブラックと1種もしくは複数種の添加剤とを含むマスタービーズ組成物と同じであり得る。他の態様において、カーボンブラックとこの1種もしくは複数種の添加剤の濃度は、樹脂材料が組成物に添加されるにつれて比例して低下させることができる。例えば、70質量%のカーボンブラックと30質量%の添加剤とを含むマスタービーズ組成物は、50質量%の樹脂と、35質量%のカーボンブラックと、15質量%の添加剤とを含む組成物を提供するように、樹脂材料の一部と接触させることができる。様々な態様において、マスターバッチ組成物中のカーボンブラックは、組成物の約20質量%~約50質量%、約20質量%~約40質量%、約25質量%~約60質量%、約30質量%~約40質量%、または約20質量%~約35質量%を含むことができる。他の態様において、このカーボンブラックは、本明細書に記載した値または範囲よりも高い濃度でも低い濃度でも存在できる。別の態様において、マスターバッチ組成物中の1つの添加剤または添加剤の混合物は、約5質量%~約35質量%、約5質量%~約10質量%、約5質量%~約20質量%、約10質量%~約35質量%、約10質量%~約25質量%、約10質量%~約20質量%、約15%~約25質量%、約15質量%~約30質量%、約20質量%~約35質量%、または約25質量%~約35質量%の濃度で存在できる。別の態様において、マスターバッチ組成物中の1つの添加剤または添加剤の混合物は、本明細書に挙げたいずれの特定の値または範囲より高い濃度でも低い濃度でも存在できる。さらに他の態様において、マスターバッチ組成物中の1つの樹脂または樹脂の混合物は、マスターバッチ組成物の約40質量%~約90質量%、約50質量%~約80質量%、約50質量%~約70質量%、約45質量%~約75質量%、約55質量%~約85質量%、約50質量%~約60質量%、約60質量%~約75質量%、または約65質量%~約80質量%を含むことができる。さらに他の態様において、マスターバッチ組成物中の1つの樹脂または樹脂の混合物は、本明細書に挙げたいずれの特定の値または範囲より高い濃度でも低い濃度でも存在できる。
【0028】
様々な態様において、マスターバッチまたはマスタービーズを樹脂と接触させて最終目標樹脂濃度を達成しているマスターバッチ組成物および/または最終組成物は、例えば、二軸スクリュー押出機、および/または例えば、ファレル連続ミキサーまたはバンバリーミキサーのような高トルク配合機を含む1つもしくは複数の通常の混合技術を使用して調製できる。異なる混合および/または配合装置は、材料の異なる体積と濃度を取り扱うことができ、本開示を所有している当業者は、特定の材料のための適切な混合および/または配合技術および/または装置を容易に選択し得ることは理解されたい。例えば、バンバリー型ミキサーを使用して、二軸スクリュー押出機または連続ミキサーによるよりも高いカーボンブラック充填量を得ることが可能であり得る。
【0029】
最終組成物
上で言及したように、最終組成物は、目標の最終樹脂濃度を達成するように調製でき、本明細書に記載したように、1種もしくは複数種の樹脂がカーボンブラックと1種もしくは複数種の添加剤の混合物に添加されている。このような態様において、1つの添加剤または添加剤の混合物は、最終組成物(例えば、低減された組成物)中に約2,000ppm~約10,000ppm、約6,000ppm~約10,000ppm、約7,000ppm~約15,000ppm、約5,000ppm~約9,000ppm、約8,000ppm~約12,000、または約10,000ppm~約50,000ppmの濃度で存在できる。別の態様において、このような最終組成物は、約0.5質量%、0.6質量%、約0.7質量%、約0.8質量%、約0.9質量%、約1質量%、約1.1質量%、約1.2質量%、約1.3質量%、約1.4質量%、約1.5質量%、約1.6質量%、約1.7質量%、約1.8質量%、約1.9質量%、約2質量%、約2.1質量%、約2.2質量%、約2.3質量%、約2.4質量%、約2.5質量%、またはそれ以上のカーボンブラック濃度を有することができる。他の態様において、カーボンブラックおよび/または1つの添加剤または添加剤の混合物の濃度は、本明細書に挙げたいずれの特定の値または範囲より高くても低くてもよい。
【0030】
一態様において、本発明に従って調製されたマスターバッチサンプルの低減は、最終用途において、約1質量%のカーボンブラックおよび約5,000ppm未満の添加剤、例えばEBSを含むことができる。別の態様において、このような組成物は、良好な離型性を示すことができ、優れたカーボンブラック分散性を示すことができ、かつ得られる用途に高い漆黒性を与えることができる。
さらに別の態様において、本明細書に記載した1つの添加剤または添加剤の組合せは、ビーズプロセスにおいて配合前の混合物に組み込む代わりにまたは組み込むのに加えて用いることができる。このような態様において、1つの添加剤または添加剤パッケージをカーボンブラックと予め混合して、意図した樹脂または用途のための容易に分散可能なカーボンブラックを提供できる。
一態様において、本明細書に記載される1つの添加剤または添加剤の組合せの使用は、良好なマストーンおよび/またはアンダートーン特性を維持しながら、樹脂材料中のカーボンブラックの分散性を改善できる。他の態様において、本発明のマスタービーズは、得られる材料中の分散性も改善しながら、改善されたハンドリング性を示すことができる。このような態様において、マスタービーズは、取り扱われあるいは運搬されたときに、減少した発塵および/または微粉を示し、通常のカーボンブラック材料と比較して、改善された環境条件および削減された製品損失をもたらす。
【0031】
カラー特性
カーボンブラックは、それらが混合されている材料に様々なカラー特性を与えることができる。例えば、カーボンブラックをプラスチックに添加してブラックカラー(「漆黒」)を与えることがしばしばである。より高い漆黒性を有するカーボンブラックは、より低い漆黒特性を有するカーボンブラックよりも黒く見える。カーボンブラックは、従来黒色と考えられているが、様々な材料に配合された場合、アンダートーンと呼ばれるブルーブラックからブラウンブラックまでの範囲の色を与えることができる。
これらのカラー特性は、特定のカーボンブラックの一次粒子サイズ、表面積、および凝集体サイズによって影響を受けることができる。最終的に、樹脂または他のマトリックスにおけるカーボンブラックの分散性は、得られる組成物に与えられたカラー特性に大きく影響を及ぼすことができる。カラー特性は、様々な機器方法を使用して定量的に測定できる。0/45°の形状で鏡面反射排除モードでのHunter Lab Compuscan反射分光計のようなHunterカラーアナライザーは、3次元空間を用いてカラー特性を規定する。第1軸に沿って、L値は0(漆黒)から100(白)までの範囲であり、色密度を示し;第2軸に沿って、「a」値は、-a(緑)から+a(赤)までの範囲であり;第3軸に沿って、「b」値は-b(青)から+b(黄)までの範囲である。カーボンブラックにおいて、アンダートーンは、典型的には、コントロールサンプルと比較して、ブルーまたはブラウンと呼ばれる。
【0032】
様々な態様において、本明細書に記載したマスタービーズまたはマスターバッチ組成物の使用は、改善された漆黒性のように、樹脂系内のカーボンブラックの改善された分散性および/または改善されたカラー性能を提供できる。様々な態様において、1種もしくは複数種の添加剤を含むカーボンブラック充填樹脂系は、本明細書に記載したように、0.5質量%~1.0質量%のカーボンブラック濃度に低減させた場合、約5未満、約4.5未満、約4未満、約4未満、約3.8未満、約3.6未満、約3.4未満、約3.4未満、約3.2未満、約3.0未満、約2.9未満、約2.8未満、約2.7未満、約2.6未満、または約2.5未満のL値(漆黒度)を示すことができる。他の態様において、このような組成物は、約2.5~約5、約2.5~約4.5、約2.5~約4、約2.5~約3.8、約2.5~約3.6、約2.5~約3.4、約2.5~約3.2、約2.5~約3、2.5~約2.9、2.5~約2.8、約2.5~約2.7、または約2.5~約2.6のL値を示すことができる。一態様において、このような系は、ポリアミド6のようなポリアミド樹脂を含むことができる。他の態様において、このような系は、1種もしくは複数種の他の樹脂材料を含むことができる。
従って、様々な態様において、本開示のマスタービーズ技術は、樹脂系における改善された分散性、改善された漆黒性、低減された発塵性、およびカーボンブラックに対して改善されたハンドリング特性の1つもしくは複数を提供できる。
【実施例
【0033】
本発明の様々な例示的な実施形態を以下に詳細に述べる。これらの実施形態は、例示的なものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。以下の実施例の各々について、反対に示さない限り、以下の方法、装置、および条件を用いた。ポリアミド6樹脂(AdvanSix社、Aegis、H82O2NLB、96%SAV=2.61)中で260℃に設定したPRISM二軸スクリュー押出機(16mm、25:1)で配合を実施した直後にペレット化した。配合の前に、カーボンブラックとPA6樹脂をオーブン中で160℃で一晩および真空オーブン中で80℃で3日間までそれぞれ乾燥して、水分含有量を最小にした。
【0034】
実施例1-マスターバッチ組成物およびSEMによる分析
30質量%のRaven 2500 Ultraカーボンブラックを使用して、上述したように、二軸スクリュー押出機およびポリアミド6樹脂を使用して第1のマスターバッチ(「A」)を調製した。このマスターバッチ押出物をレーザーブレードで切断し、走査電子顕微鏡(SEM)を使用して断面を調べて、カーボンブラック分散性を評価した。検査された押出物は、図1Aに示すように、高表面積のカーボンブラックを含む樹脂系に共通し得る、不十分に分散したカーボンブラックのいくつかの領域を含んでいた。
ポリアミド6樹脂中に20質量%のRaven 5100 Ultraカーボンブラックを使用した以外は、上述したように、第2のマスターバッチ(「B」)を調製した。二軸スクリュー押出機からのマスターバッチ押出物を調べ、この押出物は同様に、図1Bに示すように、不十分に分散したカーボンブラックのいくつかの領域を有していた。
ポリアミド6樹脂中に20質量%のRaven 5100 Ultraカーボンブラックと10質量%のN,N’-エチレンビス(ステアラミド)(EBS、Sigma Aldrich社から入手できる)を使用する以外は、上述したように、第3のマスターバッチ(「C」)を調製した。二軸スクリュー押出機からのマスターバッチ押出物を調べ、カーボンブラック分散性がEBSを含有しないマスターバッチBよりも著しく改善されていることが認められた。
【0035】
実施例2-TEMによるマスターバッチ分析
カーボンブラックマスタービーズ組成物は、Raven 2500 Ultraカーボンブラック、Raven 3000 Ultraカーボンブラック、およびRaven 5100 Ultraカーボンブラックを使用し、各々約55質量%~約65質量%のカーボンブラックを含み、残りはN,N’-エチレンビス(ステアラミド)を含む。各マスタービーズ組成物を、引き続き、ポリアミド6樹脂を使用して0.5質量%のカーボンブラック充填量に低減させ、次いで、260℃でカラーチップに射出成形した。得られるチップのスライスを調製し、透過型電子顕微鏡(TEM)によって分析して、カーボンブラック分散性を評価した。
図2A図2Bおよび図2Cにそれぞれ示したように、低減させた組成物の各々はカーボンブラックの優れた分散性を示し、カーボンブラック分散性を改善する際に添加剤とマスタービーズ技術の利点を示した。
【0036】
実施例3-カラー性能
3種のマスターバッチ組成物を、実施例1のように、3種のピアノブラック(Raven 3500 Ultra、Raven 5100 Ultra、およびRaven 5100とESB)を使用して、各々ポリアミド6中で調製した。各マスターバッチ組成物中のカーボンブラック充填量は20質量%であり、第3のマスターバッチ組成物中のESB濃度は10質量%であった。次いで、この3種のマスターバッチ組成物の各々を1.0質量%のカーボンブラック充填量に低減させ、本明細書に記載したように、Hunterカラーアナライザーを使用して分析した。この3種の組成物についてのL値は5.6(Raven 3500 Ultra)、3.3(Raven 5100 Ultra)、および3.1(Raven 5100 UltraとEBS)であった。図3に示すように、ピアノブラックは全て優れた漆黒性およびブルーアンダートーンのカラー性能を示し、それらの表面積と一致した。Raven 5100 Ultraは、Raven 5100 Ultraがはるかに高い表面積を有するので、Raven 3500 Ultraよりも著しく漆黒性であった。SEMによるマスターバッチ組成物の分析は、EBSの存在が、マスターバッチ中のカーボンブラック凝集物が少ないRaven 5100 Ultraカーボンブラックの巨視的分散性を改善することを示している。この改善された分散性および凝集物の欠如は、ある種の自動車用途において重要であり得る。
【0037】
実施例4-カラー性能
実施例2で調製した3種のカラーチップは、各々0.5質量%のカーボンブラック濃度を有し、カーボンブラックとEBSを含有するマスタービーズから調製されたものであり、本明細書に記載したように、Hunterカラーアナライザーを使用して分析した。3種の組成物についてのL値は、4.7(Raven 2500 UltraとEBS)、4.5(Raven 3000 UltraとEBS)、および2.9(Raven 5100 UltraとEBS)であった。実施例3のように、これらの高カラーカーボンブラックの各々は、優れた漆黒性およびアンダートーンのカラー性能を与えた。Raven 2500 UltraからRaven 3000 UltraまでRaven 5100 Ultraまで表面積を増加させることにより、カーボンブラックは改善された漆黒性を示した。図2A図2CのTEM顕微鏡写真に示されているように、EBSの添加に起因する優れた分散性によって、この漆黒性が達成された。
【0038】
当業者には、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明において、様々な変更および変形を行うことができることは明らかであろう。本発明の他の実施形態も、本明細書に開示した本発明の明細書と実施を考慮して当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は、例示に過ぎず、本発明の真の範囲および精神は、下記の特許請求の範囲によって示されることを意図している。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕約50質量%~約80質量%のカーボンナノ材料と、離型組成物、UV安定剤、熱安定剤および/または酸化防止剤、および難燃剤のうちの1種または複数種を含む添加剤約20質量%~約50質量%とを含むマスタービーズ組成物。
〔2〕前記カーボンナノ材料が、該組成物の少なくとも約60質量%を構成する、前記〔1〕に記載のマスタービーズ組成物。
〔3〕前記カーボンナノ材料が、該組成物の少なくとも約70質量%を構成する、前記〔1〕に記載のマスタービーズ組成物。
〔4〕前記カーボンナノ材料が、該組成物の少なくとも約75質量%を構成する、前記〔1〕に記載のマスタービーズ組成物。
〔5〕前記カーボンナノ材料が、カーボンブラックを含む、前記〔1〕に記載のマスタービーズ組成物
〔6〕前記カーボンブラックが、ファーネスカーボンブラックを含む、前記〔5〕に記載のマスタービーズ組成物。
〔7〕前記カーボンブラックが、酸化されている、前記〔5〕に記載のマスタービーズ組成物。
〔8〕前記カーボンブラックが、ピアノブラックを含む、前記〔5〕に記載のマスタービーズ組成物。
〔9〕前記カーボンナノ材料が、カーボンナノチューブを含む、前記〔1〕に記載のマスタービーズ組成物。
〔10〕前記添加剤が、アミドを含む、前記〔1〕に記載のマスタービーズ組成物。
〔11〕前記添加剤が、N,N’-エチレンビス(ステアラミド)を含む、前記〔1〕に記載のマスタービーズ組成物。
〔12〕前記添加剤が、ワックスを含む、前記〔1〕に記載のマスタービーズ組成物。
〔13〕前記組成物が、ワックスを含まない、前記〔1〕に記載のマスタービーズ組成物。
〔14〕前記組成物が、樹脂を含まない、前記〔1〕に記載のマスタービーズ組成物。
〔15〕本質的にカーボンブラックとアミドからなる、前記〔1〕に記載のマスタービーズ組成物。
〔16〕樹脂中の約0.5質量%~約1.0質量%のカーボンブラック充填量に低減させた場合、約3.5未満の漆黒度(L値)を有する、前記〔1〕に記載のマスタービーズ組成物。
〔17〕前記樹脂が、ポリアミド樹脂を含む、前記〔16〕に記載のマスタービーズ組成物。
〔18〕約3未満の漆黒度(L値)を有する、前記〔16〕に記載のマスタービーズ組成物。
〔19〕マスタービーズ組成物を調製するための方法であって、約50質量%~約80質量%のカーボンナノ材料と、離型組成物、UV安定剤、熱安定剤および/または酸化防止剤、および難燃剤のうちの1種もしくは複数種を含む添加剤約20質量%~約50質量%とを接触させて、複数の微粒子を有するマスタービーズを形成することを含む方法。
〔20〕前記カーボンナノ材料が、カーボンブラックを含む、前記〔16〕に記載の方法。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3
図4