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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】水性組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20250109BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20250109BHJP
   A61J 1/10 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K9/08
A61P27/02
A61P43/00 111
A61K47/02
A61J1/10 331A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021567692
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048835
(87)【国際公開番号】W WO2021132598
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2019239599
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100135242
【弁理士】
【氏名又は名称】江守 英太
(72)【発明者】
【氏名】西本 明功
(72)【発明者】
【氏名】喜多 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】林 紗衣子
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/060208(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/013785(WO,A1)
【文献】特開2009-046470(JP,A)
【文献】特開2012-062326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/71
A61K 47/00-47/69
A61P 27/00-27/16
A61P 43/00
A61J 1/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デルゴシチニブ又はその塩を含有する眼科用水性組成物であって、pHが4.0~6.5である眼科用水性組成物。
【請求項2】
眼科用水性組成物と接する部分の一部又は全部がポリオレフィン系樹脂で形成された容器に収容してなる、請求項1に記載の眼科用水性組成物。
【請求項3】
デルゴシチニブ又はその塩の含有量が、眼科用水性組成物の総量を基準として、0.001質量%~5質量%である、請求項1又は2に記載の眼科用水性組成物。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレンである、請求項2又は3に記載の眼科用水性組成物。
【請求項5】
緩衝剤を更に含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の眼科用水性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヤヌスキナーゼ(JAK)は、細胞内の免疫活性化シグナル伝達に重要な役割を果たす非受容体型チロシンキナーゼであり、ヤヌスキナーゼ阻害活性を有する薬剤は免疫反応の過剰な活性化を抑制することで、自己免疫疾患やアレルギー性疾患を改善することが期待されている。ここで、ヤヌスキナーゼの阻害作用を有する化合物の一つとして、3-[(3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル]-3-オキソプロパンニトリル(一般名:デルゴシチニブ)が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/006968号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デルゴシチニブを眼科領域における疾患の治療薬として用いる場合、デルゴシチニブを含有する眼科製剤には一定の安定性を有していることが求められる。
【0005】
本発明は、安定性に優れた、デルゴシチニブ又はその塩を有効成分として含有する水性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、デルゴシチニブを含有する水性組成物を特定範囲のpHとすることで、当該水性組成物の安定性が顕著に向上することを見出した。本発明は、この知見に基づくものであり、以下の各発明を提供するものである。
【0007】
[1]
デルゴシチニブ又はその塩を含有する水性組成物であって、pHが4.0~6.5である水性組成物。
[2]
水性組成物と接する部分の一部又は全部がポリオレフィン系樹脂で形成された容器に収容してなる、[1]に記載の水性組成物。
[3]
デルゴシチニブ又はその塩の含有量が、水性組成物の総量を基準として、0.001質量%~5質量%である、[1]又は[2]に記載の水性組成物。
[4]
前記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレンである、[2]又は[3]に記載の水性組成物。
[5]
緩衝剤を更に含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の水性組成物。
[6]
眼科用である、[1]~[5]のいずれかに記載の水性組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安定性に優れた、デルゴシチニブ又はその塩を有効成分として含有する水性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本実施形態に係る水性組成物は、デルゴシチニブ又はその塩を含有する。
【0011】
デルゴシチニブは、3-[(3S,4R)-3-メチル-6-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-1-イル]-3-オキソプロパンニトリルとも称され、以下の式:
【化1】
で表される公知の化合物である。デルゴシチニブ又はその塩は、例えば国際公開第2017/006968号、国際公開第2018/117151号に記載の方法により製造することができる。
【0012】
デルゴシチニブの塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような塩として具体的には、無機酸との塩、有機酸との塩、無機塩基との塩、有機塩基との塩、酸性アミノ酸との塩、塩基性アミノ酸との塩などが挙げられる。
【0013】
無機酸との塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などとの塩が挙げられる。有機酸との塩は、例えば、酢酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ステアリン酸、安息香酸、メタンスルホン酸(メシル酸)、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などとの塩が挙げられる。無機塩基との塩は、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。有機塩基との塩は、例えば、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、メグルミン、N,N-ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられる。酸性アミノ酸との塩は、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩は、例えば、アルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩が挙げられる。
【0014】
本実施形態に係る水性組成物は、デルゴシチニブ又はその塩を有効成分として含有しており、例えば、ドライアイ(眼球乾燥症候群)、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群等の内因性疾患に起因する角結膜上皮障害、又は術後、薬剤性、外傷、コンタクトレンズ装用等による外因性疾患に起因する角結膜上皮障害の治療のために用いることができる。
【0015】
また、本実施形態に係る水性組成物は、デルゴシチニブ又はその塩を含有することにより涙液の分泌を促進させることから、ドライアイの改善のために用いることもできる。ドライアイは、シェーグレン症候群等の自己免疫疾患に起因するドライアイであってもよく、自己免疫疾患以外の要因に起因するドライアイであってもよい。
【0016】
本実施形態に係る水性組成物におけるデルゴシチニブ又はその塩の含有量は特に限定されず、他の配合成分の種類及び含有量、製剤形態等に応じて適宜設定される。デルゴシチニブ又はその塩の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る水性組成物の総量を基準として、デルゴシチニブ又はその塩の総含有量が、0.001質量%~5質量%であることが好ましく、0.003質量%~3質量%であることがより好ましく、0.005質量%~1質量%であることがさらに好ましく、0.01質量%~0.5質量%であることがさらにより好ましく、0.015質量%~0.4質量%であることが特に好ましく、0.02質量%~0.3質量%であることが特により好ましい。
【0017】
〔緩衝剤〕
本実施形態に係る水性組成物は、緩衝剤を更に含有してもよい。水性組成物が緩衝剤を更に含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。緩衝剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0018】
緩衝剤としては、例えば、ホウ酸緩衝剤(例えば、ホウ酸、ホウ酸とホウ砂の組み合わせ等)が挙げられる。緩衝剤は、市販されているものを使用してもよい。緩衝剤は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。緩衝剤としてはホウ酸が好ましい。
【0019】
本実施形態に係る水性組成物における緩衝剤の含有量は特に限定されず、緩衝剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、水性組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。緩衝剤の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、水性組成物の総量を基準として、緩衝剤の総含有量が、0.01質量%~10質量%であることが好ましく、0.05質量%~5質量%であることがより好ましく、0.1質量%~3質量%であることがさらに好ましい。
【0020】
本実施形態に係る水性組成物における、デルゴシチニブ又はその塩に対する緩衝剤の含有比率は特に限定されず、緩衝剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、水性組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。デルゴシチニブ又はその塩に対する緩衝剤の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る水性組成物に含まれるデルゴシチニブ又はその塩の総含有量1質量部に対して、緩衝剤の総含有量が、0.03質量部~500質量部であることが好ましく、0.1質量部~250質量部であることがより好ましく、0.3質量部~150質量部であることがさらに好ましい。
【0021】
〔無機塩類〕
本実施形態に係る水性組成物は、無機塩類を更に含有してもよい。水性組成物が無機塩類を更に含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。無機塩類は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0022】
無機塩類としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の塩化物塩が挙げられる。無機塩類は、市販されているものを使用してもよい。無機塩類は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。無機塩類としては、塩化ナトリウム、塩化カリウムが好ましい。
【0023】
本実施形態に係る水性組成物における無機塩類の含有量は特に限定されず、無機塩類の種類、他の配合成分の種類及び含有量、水性組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。無機塩類の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、水性組成物の総量を基準として、無機塩類の総含有量が、0.00001質量%~3質量%であることが好ましく、0.0001質量%~2質量%であることがより好ましく、0.001質量%~1.5質量%であることがさらに好ましい。
【0024】
本実施形態に係る水性組成物のpHは、4.0~6.5である。水性組成物のpHをこの範囲とすることにより、デルゴシチニブ又はその塩を有効成分として含有する水性組成物の安定性が顕著に向上する。水性組成物の安定性がより一層顕著に向上する観点から、水性組成物のpHは4.5~6.5、4.5~6.0又は5.0~6.5であることが好ましく、5.0~6.0であることがより好ましい。
【0025】
本実施形態に係る水性組成物は、必要に応じて、生体に許容される範囲内の浸透圧比に調節することができる。適切な浸透圧比は、水性組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定され得るが、例えば、0.4~5.0とすることができ、0.6~3.0とすることが好ましく、0.8~2.2とすることがより好ましく、0.8~2.0とすることが更に好ましい。浸透圧比は、第十七改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(凝固点降下法)を参考にして測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500~650℃で40~50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いることができる。
【0026】
本実施形態に係る水性組成物の粘度は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば、特に限定されるものではない。本実施形態に係る水性組成物の粘度としては、例えば、回転粘度計(RE550型粘度計、東機産業社製、ローター;1°34’×R24)で測定した20℃における粘度が0.5~10mPa・sであることが好ましく、1~5mPa・sであることがより好ましく、1~3mPa・sであることが更に好ましい。
【0027】
本実施形態に係る水性組成物は、例えば、デルゴシチニブ又はその塩、及び必要に応じて他の含有成分を所望の含有量となるように添加及び混和することにより調製することができる。具体的には、例えば、精製水で上記成分を溶解又は懸濁させ、濾過滅菌等により滅菌処理することで調製できる。
【0028】
本実施形態に係る水性組成物は、目的に応じて種々の剤型をとることができ、例えば、液剤、ゲル剤、半固形剤(軟膏等)等が挙げられる。
【0029】
本実施形態に係る水性組成物は、眼科用として用いることができる。また、本実施形態に係る水性組成物は、例えば、点眼剤(点眼液又は点眼薬ともいう。また、点眼剤には人工涙液、コンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む。)として用いることができる。
【0030】
本実施形態に係る水性組成物が点眼剤である場合、その用法・用量としては、効果を奏し、副作用の少ない用法・用量であれば特に限定されないが、例えば成人(15歳以上)及び7歳以上の小児の場合、1回1滴又は1~2滴を1日4回点眼して用いる方法、1回1滴又は1~2滴を1日5~6回点眼して用いる方法を例示できる。
【0031】
(ポリオレフィン系樹脂容器)
本実施形態に係る水性組成物は、該水性組成物と接する部分の一部又は全部がポリオレフィン系樹脂で形成された容器(単に「ポリオレフィン系樹脂容器」とも表記する。)に収容して提供されることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂容器は、水性組成物と接触する部分を有する包装体であればよく、例えば、水性組成物を収容する容器本体部分、容器の吐出部を含む部分(例えば、ノズル、中栓)、吸い上げチューブ、キャップ等で構成されていてもよい。
【0032】
ポリオレフィン系樹脂は、1種単独のオレフィンを重合させたポリマー、2種以上のオレフィンを共重合させたポリマーのいずれであってもよい。これらのポリマーには、構成成分として重合可能な他のモノマーが含まれていてもよい。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等を含む。)、ポリプロピレン(アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンを含む。)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン及びポリプロピレンが好ましく、ポリエチレンがより好ましい。
【0033】
水性組成物を収容するポリオレフィン系樹脂容器としては、眼科分野で一般的に使用されている容器であってよく、具体的には、例えば、点眼容器、洗眼液容器であってよい。容器の種類は、点眼容器であることが好ましい。
【0034】
本実施形態に係るポリオレフィン系樹脂容器は、水性組成物と接する部分の一部又は全部がポリオレフィン系樹脂で形成されている。ここで、水性組成物を収容するポリオレフィン系樹脂容器のうち水性組成物と接する部分は、例えば、収容部分(容器が複数の層からなる構造の場合、最も内側の層)、中栓、穴あき中栓が挙げられる。例えば、ポリオレフィン系樹脂容器が穴あき中栓(ノズル)を有する容器の場合、穴あき中栓以外の水性組成物の収容部分等がポリオレフィン系樹脂で形成されていてもよく、容器全体がポリオレフィン系樹脂で形成されていてもよい。本実施形態に係るポリオレフィン系樹脂容器は、水性組成物と接する部分の一部がポリオレフィン系樹脂で形成されていればよいが、本発明による効果をより一層顕著に奏するという観点から、収容部分がポリオレフィン系樹脂で形成されていることが好ましい。
【0035】
本実施形態に係るポリオレフィン系樹脂容器の形状及び容量は特に限定されず、用途に応じて適宜設定すればよい。例えば、ポリオレフィン系樹脂容器が、点眼剤を収容する容器の場合、例えば、容量が0.3mL以上25mL以下であってよく、1mL以上10mL以下であることが好ましく、2mL以上7mL以下であることがより好ましい。
【0036】
本実施形態に係るポリオレフィン系樹脂容器は、複数回の使用量が収容されるマルチドーズ型であってもよく、単回の使用量が収容されるユニットドーズ型であってもよい。ポリエチレン系樹脂容器がユニットドーズ型である場合、例えば、容量が0.1mL以上1mL以下であってよく、0.2mL以上0.5mL以下であることが好ましい。
【実施例
【0037】
以下、試験例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、特に記載がない限り、表中の各成分の単位はw/v%である。
【0038】
〔試験例1:安定性試験(1)〕
表1に示す組成で、常法に従い水性組成物を調製した。調製した各水性組成物を、0.2μmメンブランフィルターでろ過し滅菌した。その後、水性組成物を点眼瓶(材質:ポリエチレン、容量:5mL)に充填し、遮光条件下にて50℃で2か月間保管した。調製直後の製剤と保管後の製剤の中に含まれるデルゴシチニブの含有量をHPLC法(測定条件は下記に記載、測定条件1又は2のいずれかを使用)によって定量し、下記(式1)に従いデルゴシチニブ残存率として算出した。結果を表1に示す。
(式1)デルゴシチニブ残存率(%)=(50℃で2か月保管後のデルゴシチニブの含有量/調製直後のデルゴシチニブ含有量×100)-透湿率
なお、上記(式1)における「透湿率」は、下記(式2)に従って算出した。
(式2)透湿率(%)=(調製直後の充填品重量-50℃で2か月保管後の充填品重量)/(調製直後の充填品重量-点眼瓶の空重量)×100
(HPLCの測定条件1)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:254nm)
カラム:Inertsil ODS-2(内径4.6mm、長さ150mm、粒子径5μm)
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相:ラウリル硫酸ナトリウム1.50gをアセトニトリル/薄めた酢酸(100)(1→60)混液(7:3)1000mLに溶かした溶液
流速:0.9mL/min
(HPLCの測定条件2)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:283nm)
カラム:Inertsil Ph-3(内径4.6mm、長さ150mm、粒子径5μm)
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相:酢酸アンモニウム3.9g及び酢酸(100)12.5mLを加え、水で1000mLとした液/アセトニトリル混液(4:1)
流速:約0.8mL/min
【0039】
【表1】
【0040】
〔試験例2:安定性試験(2)〕
表2に示す組成で、常法に従い水性組成物を調製した。調製した各水性組成物を、0.2μmメンブランフィルターでろ過し滅菌した。その後、水性組成物を点眼瓶(材質:ポリエチレン、容量:5mL)に充填し、遮光条件下にて40℃で5か月間保管した。調製直後の製剤と保管後の製剤の中に含まれるデルゴシチニブの含有量をHPLC法(測定条件は試験例1と同じ)によって定量し、下記(式3)に従いデルゴシチニブ残存率として算出した。結果を表2に示す。
(式3)デルゴシチニブ残存率(%)=(40℃で5か月保管後のデルゴシチニブの含有量/調製直後のデルゴシチニブ含有量×100)-透湿率
なお、上記(式3)における「透湿率」は、下記(式4)に従って算出した。
(式4)透湿率(%)=(調製直後の充填品重量-40℃で5か月保管後の充填品重量)/(調製直後の充填品重量-点眼瓶の空重量)×100
【0041】
【表2】
【0042】
〔試験例3:安定性試験(3)〕
表3に示す組成で、常法に従い水性組成物を調製した。調製した各水性組成物を、0.2μmメンブランフィルターでろ過し滅菌した。その後、水性組成物を遠沈管(材質:ポリプロピレン、容量:15mL)に5mL注入し、遮光条件下にて50℃で1か月間保管した。調製直後の製剤と保管後の製剤の中に含まれるデルゴシチニブの含有量をHPLC法(測定条件は試験例1と同じ)によって定量し、下記(式5)に従いデルゴシチニブ残存率として算出した。結果を表3に示す。
(式5)デルゴシチニブ残存率(%)=(50℃で1か月保管後のデルゴシチニブの含有量/調製直後のデルゴシチニブ含有量×100)-透湿率
なお、上記(式5)における「透湿率」は、下記(式6)に従って算出した。
(式6)透湿率(%)=(調製直後の充填品重量-50℃で1か月保管後の充填品重量)/(調製直後の充填品重量-点眼瓶の空重量)×100
【0043】
【表3】