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特許7617056組織治療のための低温療法および低温アブレーションシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】組織治療のための低温療法および低温アブレーションシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/02 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
A61B18/02
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022084261
(22)【出願日】2022-05-24
(62)【分割の表示】P 2019531565の分割
【原出願日】2017-08-29
(65)【公開番号】P2022126649
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】62/381,231
(32)【優先日】2016-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン リチャード ロックス
(72)【発明者】
【氏名】ガリビアン リリト
(72)【発明者】
【氏名】ジャヴォルスキ エミリア
(72)【発明者】
【氏名】ファリネッリ ウィリアム
【審査官】佐々木 訓
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-545462(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0125722(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0036295(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0184695(US,A1)
【文献】特表2013-539387(JP,A)
【文献】特表2008-523925(JP,A)
【文献】特表2014-514079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00-18/00
A61F 2/01
A61F 7/00
A61N 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において血管新生を引き起こすのに使用するための冷却治療システムであって、
冷却装置によって冷却され、患者の所望の組織領域を-20℃から5℃の間の温度範囲にさらすように構成された、送達装置を含み、送達装置が、分割スラリー注入を前記所望の組織領域に送達するように構成されており、
脈管構造の増加を誘導することによって組織のリモデリングを促進するために、割冷却を提供するように構成されている、冷却治療システム。
【請求項2】
対象において血管新生を引き起こすのに使用するための冷却治療システムであって、
冷却装置によって冷却され、患者の所望の組織領域を-20℃から5℃の間の温度範囲にさらすように構成された、送達装置を含み、送達装置が、単一スラリー注入を前記所望の組織領域に送達するように構成されており、
脈管構造の増加を誘導することによって組織のリモデリングを促進するために、バルク冷却を提供するように構成されている、冷却治療システム。
【請求項3】
対象においてコラーゲンリモデリングを引き起こすのに使用するための冷却治療システムであって、
冷却装置によって冷却され、患者の所望の組織領域を-20℃から5℃の間の温度範囲にさらすように構成された、送達装置を含み、送達装置が、分割スラリー注入を前記所望の組織領域に送達するように構成されており、
新しいコラーゲンの形成を誘導することによって組織のリモデリングを促進するために、割冷却を提供するように構成されている、冷却治療システム。
【請求項4】
対象においてコラーゲンリモデリングを引き起こすのに使用するための冷却治療システムであって、
冷却装置によって冷却され、患者の所望の組織領域を-20℃から5℃の間の温度範囲にさらすように構成された、送達装置を含み、送達装置が、単一スラリー注入を前記所望の組織領域に送達するように構成されており、
新しいコラーゲンの形成を誘導することによって組織のリモデリングを促進するために、バルク冷却を提供するように構成されている、冷却治療システム。
【請求項5】
前記所望の組織領域が、対象の虚血性臓器もしくは組織、弛緩を起こしている組織、舌、または気道の軟組織のうちの一つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための冷却治療システム。
【請求項6】
前記虚血性臓器または組織が、熱傷性瘢痕、瘢痕、ケロイド、老化皮膚、糖尿病性ニューロパシーの影響を受けた組織、脂肪腫、セルライト、虚血損傷組織、慢性創傷、男性型脱毛症の影響を受けた組織、心臓、肝臓、または腎臓のうちの1つを含む、請求項に記載の使用のための冷却治療システム。
【請求項7】
前記バルク冷却または分割冷却が、膣の若返り治療処理、皮膚の若返り治療処理、または爪真菌症治療処理の一部である、請求項1~のいずれか一項に記載の使用のための冷却治療システム。
【請求項8】
前記バルク冷却または分割冷却が、閉塞性睡眠時無呼吸の改善処理の一部である、請求項1~のいずれか一項に記載の使用のための冷却治療システム。
【請求項9】
前記対象においてコラーゲンリモデリングまたは低温脂肪分解反応を誘発することをさらに含む、請求項1~2または~8のいずれか一項に記載の使用のための冷却治療システム。
【請求項10】
前記対象において血管新生または低温脂肪分解反応を誘発することをさらに含む、請求項~8のいずれか一項に記載の使用のための冷却治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年8月30日出願の、「組織治療のための低温療法および低温アブレーションシステムおよび方法」と題する米国仮特許出願第62/381,231号明細書に基づき、これに対する優先権を主張し、かつ参照によりこれを全体として本明細書に組み入れるものである。
【0002】
連邦政府により資金援助された研究に関する陳述
適用されない。
【背景技術】
【0003】
本開示は、一般に、冷却の治療的使用に関し、より具体的には、組織の治療のための低温療法および低温アブレーションシステムおよび方法に関する。
【0004】
皮膚組織などの生物学的組織の制御された冷却および/または加熱は、様々な治療効果を生み出すことができる。例えば、加熱は、皮膚への熱損傷を誘発する電磁放射線の適用によって、皮膚の欠陥を改善することが示されている。熱損傷は皮膚の複雑な創傷治癒反応をもたらし、それは損傷した皮膚の生物学的修復をもたらし得、かつ他の望ましい効果を伴い得る。
【0005】
皮膚組織冷却は、色素沈着減少および組織再形成用途において実施されてきた。従来の低温プローブなどのある種の組織冷却手順および装置は、組織に低温傷害または創傷を引き起こし、細胞損傷を生じ得る(すなわち、低温アブレーション)。熱損傷と同様に、低温傷害は複雑な創傷治癒過程を引き起こし、それが皮膚の生物学的修復につながることがある。他の組織冷却技術は、低温傷害を誘発しない温度を実施することもあるが、それでもなお低温への曝露の結果として治療効果を促進する(すなわち、低温療法)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、生物学的組織における脈管構造(vasculature)の増加および/または新しいコラーゲンの発生などの望ましい効果を引き起こすための冷却の使用のためのシステムおよび方法を提供する。特に、システムおよび方法は、脈管構造の増加および/または新しいコラーゲンの形成を誘導することによって組織のリモデリングを促進するために、アブレーション温度または中間のリモデリング温度でバルク冷却または分割冷却(fractionated cooling)を提供するように構成された冷却治療システムを提供する。
【0007】
一態様では、本開示は、対象において血管新生を引き起こすための方法を提供する。この方法は、冷却装置によって提供される所望の温度に冷却装置を使用して冷却することを含む治療を受けるための、対象の所望の組織領域に対する治療パラメータを特定することを含む。治療パラメータは、所望の治療組織領域または治療の少なくとも一方に部分的に基づく。この方法は、治療パラメータを使用して治療を施すこと、および治療に対する所望の治療組織の血管新生反応を誘発することをさらに含む。
【0008】
別の態様では、本開示は、対象においてコラーゲンリモデリングを引き起こすための方法を提供する。この方法は、冷却装置によって提供される所望の温度に冷却装置を使用して冷却することを含む治療を受けるための、対象の所望の組織領域に対する治療パラメータを特定することを含む。治療パラメータは、所望の治療組織領域または治療の少なくとも一方に部分的に基づく。この方法は、治療パラメータを使用して治療を施すこと、および治療に対する所望の治療組織のコラーゲンリモデリング応答を引き起こすことをさらに含む。
【0009】
また別の態様では、本開示は、対象において低温脂肪分解を引き起こすための方法を提供する。この方法は、冷却装置によって提供される所望の温度に冷却装置を使用して冷却することを含む治療を受けるための、対象の所望の組織領域に対する治療パラメータを特定することを含む。治療パラメータは、所望の治療組織領域または治療の少なくとも一方に部分的に基づき、所望の温度は、約マイナス200℃から約30℃の間である。この方法は、治療パラメータを使用して治療を施すこと、および治療に対する所望の治療組織の低温脂肪分解反応を引き起こすことをさらに含む。
【0010】
さらに別の態様では、本発明は、患者の所望の組織領域に冷却療法を施すための冷却治療システムを提供する。冷却治療システムは、冷却装置と、冷却装置によって冷却されかつ所望の組織領域を冷却装置によって提供される所望の温度にさらすように構成された送達装置(delivery device)とを含む。所望の温度は、約マイナス200℃から約30℃の間である。
【0011】
[本発明1001]
患者の所望の組織領域に冷却療法を適用するための冷却治療システムであって、
冷却装置と、
前記冷却装置によって冷却され、所望の組織領域を前記冷却装置によって提供される所望の温度にさらすように構成された送達装置と、を備え、
前記所望の温度が、約マイナス200℃から約30℃の間である、冷却治療システム。
[本発明1002]
前記送達装置が、前記所望の組織領域と係合するように構成された1つ以上の突起を備える、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1003]
前記1つ以上の突起が、前記冷却装置に伝導的に連結された針を備える、本発明1002の冷却治療システム。
[本発明1004]
前記1つ以上の突起が、前記冷却装置に伝導的に連結された針アレイを備える、本発明1002の冷却治療システム。
[本発明1005]
前記1つ以上の突起がそれぞれ、軸方向に巻き付けられた断熱材を含む針を備え、
前記針の針先が断熱されていない、本発明1002の冷却治療システム。
[本発明1006]
前記1つ以上の突起が、スラリーを注入するように構成された針を備える、本発明1002の冷却治療システム。
[本発明1007]
前記1つ以上の突起が、スラリーを注入するように構成された針アレイを備える、本発明1002の冷却治療システム。
[本発明1008]
前記1つ以上の突起がそれぞれ、内部に配置された入口通路および出口通路を含む針を備え、
前記入口通路および出口通路が、前記針を能動的に冷却するために流体の流れを受容するように構成されている、本発明1002の冷却治療システム。
[本発明1009]
前記1つ以上の突起が、スラリーを局所的に適用するように構成されたアレイを備える、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1010]
前記送達装置が、膨張位置と収縮位置との間で膨張可能なバルーンを含む膨張可能な針を備える、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1011]
加温装置をさらに備える、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1012]
前記加温装置が、前記所望の組織領域の表面を加熱するために、前記1つ以上の突起の近位端に隣接する前記送達装置の基部に連結されている、本発明1011の冷却治療システム。
[本発明1013]
前記加温装置が、高周波加温装置および赤外線レーザーのうちの少なくとも1つを備える、本発明1011の冷却治療システム。
[本発明1014]
前記所望の組織領域内で前記送達装置の深度をモニターするように構成された深度画像化装置をさらに備える、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1015]
所望の組織領域の温度をモニターするように構成された熱画像化装置をさらに備える、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1016]
前記送達装置および/または前記所望の組織領域の温度をモニターするように構成された1つまたは複数の温度センサをさらに備える、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1017]
前記所望の温度が、約マイナス180℃から約30℃の間である、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1018]
前記所望の温度が、約マイナス160℃から約30℃の間である、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1019]
前記所望の温度が、約マイナス140℃から約30℃の間である、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1020]
前記所望の温度が、約マイナス120℃から約30℃の間である、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1021]
前記所望の温度が、約マイナス100℃から約30℃の間である、本発明1026の冷却治療システム。
[本発明1022]
前記所望の温度が、約マイナス80℃から約30℃の間である、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1023]
前記所望の温度が、約マイナス70℃から約30℃の間である、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1024]
前記所望の温度が、約マイナス60℃から約30℃の間である、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1025]
前記所望の温度が、約マイナス50℃から約30℃の間である、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1026]
前記所望の温度が、約マイナス40℃から約30℃の間である、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1027]
前記所望の温度が、約マイナス30℃から約30℃の間である、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1028]
前記所望の温度が、約マイナス20℃から約30℃の間である、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1029]
前記所望の温度が、約マイナス20℃から約20℃の間である、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1030]
前記所望の温度が、約マイナス20℃から約20℃の間である、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1031]
前記所望の温度が、約マイナス20℃から約10℃の間である、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1032]
前記所望の温度が、約マイナス20℃から約5℃の間である、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1033]
前記送達装置が、1つ以上の針と取り外し可能に連結されるように構成されたマニホールドをさらに備える、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1034]
前記マニホールドが、スラリー注入装置と取り外し可能に連結されるように構成された入口ポートを備える、本発明1033の冷却治療システム。
[本発明1035]
前記マニホールドが、前記入口ポートとそれに連結された前記1つ以上の針との間に流体連通を提供するように構成されている、本発明1034の冷却治療システム。
[本発明1036]
患者において血管新生、低温脂肪分解、またはコラーゲンリモデリング反応を誘発するようにさらに構成されている、本発明1001の冷却治療システム。
[本発明1037]
対象において血管新生を引き起こすための方法であって、
冷却装置によって提供される前記冷却装置を使用して所望の温度に冷却することを含む治療を受けるための、前記対象の所望の組織領域に対する治療パラメータを特定するステップであって、前記治療パラメータが、前記所望の治療組織領域または前記治療の少なくとも一方に部分的に基づく、ステップと、
前記治療パラメータを使用して治療を施すステップと、
前記治療に対する所望の治療組織の血管新生応答を引き起こすステップと、を備える方法。
[本発明1038]
前記治療が分割冷却処理を含む、本発明1037の方法。
[本発明1039]
前記分割冷却処理が、分割スラリー注入である、本発明1038の方法。
[本発明1040]
前記分割冷却処理が、分割針アレイを介した伝導冷却である、本発明1038の方法。
[本発明1041]
前記治療がアブレーション低温療法を含む、本発明1037の方法。
[本発明1042]
前記治療がバルク冷却処理を含む、本発明1037の方法。
[本発明1043]
前記所望の治療組織が虚血性臓器または組織を含む、本発明1037の方法。
[本発明1044]
前記虚血性臓器または組織が、熱傷性瘢痕、瘢痕、ケロイド、老化皮膚、糖尿病性ニューロパシーの影響を受けた組織、脂肪腫、セルライト、虚血損傷組織、慢性創傷、男性型脱毛症の影響を受けた組織、心臓、肝臓、または腎臓のうちの1つを含む、本発明1043の方法。
[本発明1045]
前記治療が、膣の若返り治療処理、皮膚の若返り治療処理、または爪真菌症治療処理の一部である、本発明1037の方法。
[本発明1046]
前記対象においてコラーゲンリモデリングまたは低温脂肪分解反応を誘発するステップをさらに備える、本発明1037の方法。
[本発明1047]
前記冷却装置が本発明1001のシステムを備える、本発明1037の方法。
[本発明1048]
対象においてコラーゲンリモデリングを引き起こすための方法であって、
冷却装置によって提供される前記冷却装置を使用して所望の温度に冷却することを含む治療を受けるための、前記対象の所望の組織領域に対する治療パラメータを特定するステップであって、前記治療パラメータが、前記所望の治療組織領域または前記治療の少なくとも一方に部分的に基づく、ステップと、
前記治療パラメータを使用して治療を施すステップと、
前記治療に対する前記所望の治療組織のコラーゲンリモデリング応答を引き起こすステップと、を備える方法。
[本発明1049]
前記治療が分割冷却処理を含む、本発明1048の方法。
[本発明1050]
前記治療がアブレーション低温療法を含む、本発明1048の方法。
[本発明1051]
前記治療がバルク冷却処理を含む、本発明1048の方法。
[本発明1052]
前記所望の治療組織が、弛緩を起こしている組織を含む、本発明1048の方法。
[本発明1053]
前記所望の治療組織が、熱傷瘢痕、瘢痕、ケロイド、老化皮膚、セルライトまたは慢性創傷のうちの1つを含む、本発明1052の方法。
[本発明1054]
前記治療が、膣若返り治療処理または皮膚若返り治療処理の一部である、本発明1048の方法。
[本発明1055]
前記所望の治療組織が、前記対象の気道の軟組織を含む、本発明1048の方法。
[本発明1056]
前記治療が、閉塞性睡眠時無呼吸の改善処理の一部である、本発明1055の方法。
[本発明1057]
前記対象において血管新生または低温脂肪分解反応を誘発するステップをさらに備える、本発明1048の方法。
[本発明1058]
前記冷却装置が本発明1001のシステムを備える、本発明1048の方法。
[本発明1059]
対象において低温脂肪分解を引き起こすための方法であって、
冷却装置によって提供される前記冷却装置を使用して所望の温度に冷却することを含む治療を受けるための、前記対象の所望の組織領域に対する治療パラメータを特定するステップであって、前記治療パラメータが、前記所望の治療組織領域または前記治療の少なくとも一方に部分的に基づき、前記所望の温度が、約マイナス200℃から約30℃の間である、ステップと、
前記治療パラメータを使用して治療を施すステップと、
前記治療に対する所望の治療組織の低温脂肪分解反応を引き起こすステップと、を備える方法。
[本発明1060]
前記治療が分割冷却処理を含む、本発明1059の方法。
[本発明1061]
前記治療がアブレーション低温療法を含む、本発明1059の方法。
[本発明1062]
前記治療がバルク冷却処理を含む、本発明1059の方法。
[本発明1063]
前記所望の治療組織が、前記対象の舌または気道内の組織の一方を含む、本発明1059の方法。
[本発明1064]
前記治療が、閉塞性睡眠時無呼吸の改善処理の一部である、本発明1059の方法。
[本発明1065]
前記対象において血管新生またはコラーゲンリモデリング応答を引き起こすステップをさらに備える、本発明1059の方法。
[本発明1066]
前記冷却装置が本発明1001のシステムを備える、本発明1059の方法。
本発明の前述および他の態様および利点は以下の説明から明らかになるであろう。本説明においては、本明細書の一部を構成する添付の図面を参照し、図面には本発明の好ましい実施形態を例として示す。そのような実施形態は必ずしも本発明の全範囲を表すものではなく、したがって本発明の範囲を解釈するために特許請求の範囲および本明細書を参照する。
【0012】
本発明は、以下の詳細な説明を考慮すると、よりよく理解され、上記以外の特徴、態様および利点が明らかになるであろう。そのような詳細な説明は、以下の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の一態様による冷却治療システムを示す。
図2図1の冷却治療システムの概略図である。
図3】本開示の別の態様による加温ユニット、熱画像化、および深度画像化を含む図1の冷却治療システムを示す。
図4図3の冷却治療システムの概略図である。
図5】本開示の一態様による、図1の冷却治療システムのインターフェースおよび送達装置を示し、ここで当該送達装置はより短い突起を含む。
図6】本開示の一態様による、図1の冷却治療システムのインターフェースおよび送達装置を示し、ここで当該送達装置はより長い突起を含む。
図7】本開示の一態様による、図1の冷却治療システムのインターフェースおよび送達装置を示し、当該送達装置はより広い領域を画定し、より短い突起を含む。
図8】本開示の一態様による、図1の冷却治療システムのインターフェースおよび送達装置を示し、ここで当該送達装置はより広い領域を画定し、より長い突起を含む。
図9】本開示の一態様による、図1の冷却治療システムのインターフェースおよび送達装置を示し、ここで当該送達装置は弓形形状を画定する。
図10A】本開示の一態様による、図1の冷却治療システムの送達装置を示し、ここで当該送達装置は、ロッドの円周の略半分から延びる突起を有するロッド形状を画定する。
図10B図10Aの送達装置の上面図である。
図11A】本開示の一態様による、図1の冷却治療システムの送達装置を示し、ここで当該送達装置は、ロッドの周りに円周方向に延びる突起を有するロッド形状を画定する。
図11B図11Aの送達装置の上面図である。
図12】本開示の一態様による、伝導によって冷却されるように構成された図1の冷却治療システムの突起を示す。
図13】本開示の一態様による、断熱ジャケットを有する図1の冷却治療システムの突起を示す。
図14】本開示の一態様による、循環する寒剤を介して能動的に冷却するように構成された図1の冷却治療システムの突起を示す。
図15】本開示の一態様による、図1の冷却治療システムの突起を示し、ここで当該突起の近位端は能動的に断熱/加温される。
図16A】本開示の一態様による、スラリーを注入するように構成された複数の針の形態をした、図1の冷却治療システムの複数の突起を示す。
図16B】本開示の一態様による、マニホールドに連結され、スラリーを注入するように構成された複数の針の形態をした、図1の冷却治療システムの複数の突起を示す。
図17】本開示の一態様による、バルク冷却パターンでスラリーを注入するように構成された針の形態をした、図1の冷却治療システムの突起を示す。
図18】本開示の一態様による、収縮状態の冷却装置を有する針の形態をした、図1の冷却治療システムの突起を示す。
図19】本開示の一態様による、冷却装置が拡張状態にある、図18の突起を示す。
図20】本発明の一態様による、分割冷却パターン(fractional cooling pattern)を付与するように構成された複数の先端を有する針の形態をした、図1の冷却治療システムの突起を示す。
図21】本発明の一態様による、分割冷却パターンを付与するように構成された半径方向に延びる複数の先端を有する針の形態をした、図1の冷却治療システムの突起を示す。
図22図1の冷却治療システムによって達成可能な1つの非限定的な分割冷却パターンを示す。
図23図1の冷却治療システムによって達成可能なアレイバルク冷却パターンの非限定的な一例を示す。
図24図1の冷却治療システムにより突起を使用して達成可能な、バルク冷却パターンの1つの非限定的な一例を示す。
図25図1の冷却治療システムにより針を通じた扇状注入の後に達成可能な、バルク冷却パターンの非限定的な一例を示す図である。
図26】本開示の一態様による、低温療法および/または低温アブレーションを実施するために冷却治療システムを操作するためのステップを概説するフローチャートである。
図27】ラットに皮下注入された低温スラリーについて、スラリー注入後の時間の関数としての熱的境界を示すグラフである。
図28】10%の氷含有量を有するスラリーおよび50%の氷含有量を有するスラリーについて、スラリー注入後の時間の関数としての表皮温度を示すグラフである。
図29】スラリー注入後の最初の60秒間について、注入後時間の関数として温度を適合させるために使用した多項式回帰モデルを示すグラフである。
図30】スラリー注入冷却およびその後の復温について、注入後時間の関数として温度を適合させるために使用した二次回帰モデルを示すグラフである。
図31】冷却針アレイの注入後の冷却後時間の関数としての皮膚表面温度を示すグラフである。
図32】-10℃に冷却した分割針アレイ(fractional needle array)を用いた、エクスビボのマウス皮膚上の温度分布のコンター図である。
図33】分割針アレイ内の針に隣接する位置およびその周囲の組織における、エクスビボのマウス皮膚の温度を時間の関数として示すグラフである。
図34】ヒト腹部形成術後組織への単一バルクスラリー注入のための実験設定を示す。
図35】ヒト腹部形成術後組織への分割スラリー注入(fractional slurry injection)のための実験設定を示す。
図36】単一バルクスラリー注入について、注入部位から横方向に2つの位置で測定された、時間の関数としてのヒトの腹部形成術後組織の温度を示すグラフである。
図37】分割スラリー注入について、注入部位から横方向に2つの位置で測定された、時間の関数としてのヒト腹部形成術後組織の温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
最近の証拠は、生物学的組織(例えば、ヒトの皮膚)への損傷によって引き起こされる創傷治癒過程が、熱傷と低温傷害とで明らかに異なることを示唆している。例えば、皮膚病変は、制御された低温傷害後、瘢痕化が最小限ないしは全く起こらずに良好に治癒する傾向がある。熱傷も凍結も同様の組織破壊を引き起こすが、コラーゲン、線維芽細胞、および結合組織マトリックスの凍結に対する抵抗性が好ましい治癒の基礎である。組織は凍結によって失活するが、マトリックスは通常ほとんど変化せず、この構造が保存されることは修復に重要である。
【0015】
創傷治癒は、病変の境界における炎症反応から始まる活発な過程である。凍結傷害の後には常に非常に活発な炎症反応が観察される。これは、適切な治癒過程を開始し、傷害に関連する感染を予防するのに役立つと考えられている。炎症性細胞浸潤はまた、アポトーシスの発生および組織破壊に寄与する。肉芽組織が形成されると、線維芽細胞は筋線維芽細胞に分化し、損傷を受けたコラーゲンは新しいコラーゲンに置き換えられる。細胞浸潤は新しい脈管構造を確立するのを助け、それは失活した組織の関係に重要な役割を果たす。
【0016】
本明細書に記載のシステムおよび方法は、冷却を利用して、生物学的組織における脈管構造の増加および/または新しいコラーゲンの発生という望ましい効果を引き起こす。特に、本システムおよび方法は、非常に低温のアブレーション温度または中間のリモデリング温度のいずれかで精密に制御された方法でバルク冷却または分割冷却を提供し、脈管構造の増加および新しいコラーゲンの形成を誘導することによって組織リモデリングを促進するように構成された、冷却治療システムを提供する。そのような冷却治療システムは、脈管構造の減少および/またはコラーゲンの減少から生じる多種多様な、満たされていない臨床的ニーズの治療のための装置ベースのアプローチを提供することができる。さらに、冷却治療システムは安全な非薬理学的治療アプローチを提供することができ、システムによって提供される組織リモデリングは長期にわたる効果をもたらすことができる。さらに、冷却の使用は、広範囲の医療施設に提供可能な、および現在のエネルギーベースの(例えば、レーザー)治療が高価で手が出せなかったかもしれない医師によって提供可能な、費用対効果の高い解決策を提供することができる。
【0017】
図1および図2は、本開示の非限定的な一例による冷却治療システム100を示す。冷却治療システム100は、冷却装置102、インターフェース104、および送達装置106を含む。冷却装置102は、インターフェース104を介して送達装置106を冷却するように構成されている。いくつかの非限定的な例では、冷却装置102は、いくつか例を挙げると、熱電冷却器、極低温ガス、液体窒素、液体アルゴン、冷却液体、ジュールトムソン冷凍機、亜酸化窒素、および二酸化炭素の形態であり得る。
【0018】
インターフェース104は、冷却装置102と送達装置106との間の効率的な熱伝達を容易にするために高い熱伝導率を有する材料から製造されてもよい。インターフェース104は、(例えば、接着剤または機械的連結機構を介して)冷却装置102に連結されてもよく、送達装置106に取り外し可能に連結されてもよい。インターフェース104は、1つまたは複数の温度センサ108とコントローラ110とを含み得る。温度センサ108は、送達装置106上の1つ以上の位置で温度を測定し、測定した温度をコントローラ110に通信するように構成されている。コントローラ110は、冷却装置102と連絡しており、冷却装置102によって出力される温度を制御し、それによって送達装置106の温度を制御するように構成することができる。1つの非限定的な例では、送達装置106の所望の温度がコントローラ110に入力されてもよく、コントローラ110は冷却装置102を制御して、温度センサ108によって測定される送達装置106の所望の温度を達成するように構成されてもよい。いくつかの非限定的な例では、コントローラ110は、ディスプレイ112と連絡しており、例えば送達装置106の温度、送達装置106を施す時間、送達装置106の深度、および/または所望の組織領域の表面の温度を表示するようディスプレイ112に指示するように構成される。
【0019】
送達装置106は、基部114と、基部114から延びる複数の突起116とを含む。いくつかの非限定的な例では、複数の突起116は、患者の組織領域内の所望の深さまで貫入するように構成された針アレイの形態であり得る。以下に記載されるように、これらの非限定的な例において、針アレイは、スラリー(すなわち、液体と氷の結晶の混合物)の注入を可能にするように構成され得る。他の非限定的な例では、複数の突起116は、局所冷却を提供するために患者の組織領域の表面と係合するように構成された複数の伝導性ポストまたはピンの形態であり得る。当然のことながら、図示の送達装置106は複数の突起116を含むが、他の非限定的な例では、送達装置106は1つ以上の突起116を含み得る。
【0020】
複数の突起116の隣接する対の間に画定された距離Dは、分割冷却パターンが所望の組織領域内または上に確実に達成され得るような寸法にされ得る。すなわち、距離Dは、送達装置106を施したときに個別の冷却ゾーンが達成されるような寸法にすることができる。複数の突起116の間隔の取り方と共に、送達装置106が所望の組織領域と係合している時間もまた、後述するように、結果として生じる冷却パターンを規定し得る。
【0021】
図3および図4は、本開示による冷却治療システム100の別の非限定的な例を示している。図3および図4に示すように、冷却治療システム100は、それぞれコントローラ110と連絡している加温ユニット300、深度画像化装置302、および熱画像化装置304を含むことができる。加温ユニット300は、例えば複数の突起116の近位端に選択的に制御された加温を提供するように構成されてもよい。複数の突起116の近位端を選択的に加温することは、複数の突起116の遠位端または先端のみが所望の組織領域に冷却を提供することを可能にし得る。あるいは又はさらに、加温ユニット300は、組織表面(例えば、表皮)に選択的加温を提供するように構成されてもよく、かつ/又は高周波(RF)加熱またはレーザー加熱によって組織表面下のより深い組織(例えば皮下脂肪)に選択的加温を提供するように構成されてもよい。
【0022】
深度画像化装置302は、複数の突起116が所望の組織領域に貫入する深度を測定して画像化するように構成されてもよい。深度画像化装置302は、複数の突起116の測定された深度をコントローラ110に提供するように構成されてもよい。あるいは又はさらに、コントローラ110は、冷却治療システム100の使用者に能動的なフィードバックを提供するために、所望の組織領域内に貫入する複数の突起116の画像をディスプレイ112に中継することができる。いくつかの非限定的な例では、深度画像化装置302は、OCT画像装置、磁気共鳴画像(MRI)装置、超音波装置、またはX線装置の形態であり得る。
【0023】
熱画像化装置304は、所望の組織領域の表面における温度を測定し画像化するように構成されてもよい。すなわち、複数の突起116が所望の組織領域の上または中で冷却を適用しているとき、熱画像化装置304は、使用者が所望の組織領域の表面の温度を視覚的に検査することを可能にし得る。これにより、使用者は、所望の冷却パターン形成(すなわち、分割冷却対バルク冷却)が確実に達成されるようにすること、および/または所望の組織領域に所望の温度(すなわち、アブレーション温度対低温刺激/低温療法温度)が適用されていることを検証することが可能となり得る。いくつかの非限定的な例では、熱画像化装置304は、冷却治療システム100に一体化されてもよく、コントローラ110と連絡していてもよい。コントローラは、熱画像化装置304によって取得された熱画像をディスプレイ112に中継して、冷却治療システム100の使用者に能動的なフィードバックを提供することができる。いくつかの非限定的な例では、熱画像化装置304は、所望の組織領域の上または中で冷却を提供しながら冷却治療システム100の使用者によって使用されるかまたは着用される別個の構成要素であり得る。いくつかの非限定的な例では、熱画像化装置304は、赤外線カメラ、熱画像化眼鏡、または熱画像化アドオンを備えたモバイルデバイスの形態であり得る。他の非限定的な例では、熱画像化装置304は、1つ以上の熱電対(または他の熱センサ)、または赤外線温度感知装置を含み得る。
【0024】
当然のことながら、送達装置106およびその上に配置された複数の突起116は、所与の組織適用のための代替の形状およびサイズを規定し得る。たとえば、図5図8に示されるように、送達装置106および対応するインターフェース104は、異なる治療領域および/または異なる治療深度を画定し得る。いくつかの非限定的な例では、送達装置106の基部114および対応するインターフェース104は、幅Wを画定し得る。他の非限定的な例では、送達装置106の基部114および対応するインターフェース104は幅Wを画定することができ、ここでWはWより大きい。いくつかの非限定的な例では、複数の突起116はそれぞれ長さLを画定し得る。他の非限定的な例では、複数の突起116はそれぞれ長さLを画定してもよく、ここでLはLよりも大きい。また当然のことながら、密度(すなわち、送達装置106から延在する複数の突起116の数)は、例えば、隣接する複数の突起116の対の間の距離Dを変更し、それに応じて送達装置106への突起を追加するまたは差し引くことによって変えることができる。これらの代替の幾何学的構成は、冷却治療システム100の所与の用途に対して所望の治療パラメータを提供するように調整することができる。
【0025】
図1、3、および5~8の送達装置106の図示された基部114は、概して平坦なプロファイルを画定し、それによって、概して平坦な治療プロファイルを画定する複数の突起がもたらされる。他の非限定的な例では、図9図11に示すように、送達装置106は、患者の様々な解剖学的位置に適応するように代替の形状およびプロファイルを画定することができる。図9に示すように、いくつかの非限定的な例では、送達装置106の基部114は概して弓形の形状を画定することができ、それにより複数の突起116を対応する弓形の治療プロファイルに配置する。
【0026】
図10A図11Bを見ると、いくつかの非限定的な例では、送達装置106は、その遠位端から延びる複数の突起116を有する棒(wand)、またはロッドの形状であり得る。図10Aおよび図10Bに示すように、非限定的な一例では、複数の突起116は、送達装置106の遠位端から半径方向外向きに延びてもよい。複数の突起116は、送達装置106の周囲に部分的に円周方向に配置されてもよい。すなわち、複数の突起116は、送達装置106の約半分(例えば、0度から180度の間)の周りに円周方向に配置することができる。図11Aおよび図11Bに示すように、1つの非限定的な例において、複数の突起116は、送達装置106の遠位端から半径方向に延びてもよく、かつ送達装置106の周囲全体にほぼ等しい増分で円周方向に配置されてもよい。あるいはまたはさらに、複数の突起116は、送達装置106の周囲に円周方向に等しくない増分で配置されてもよい。図10A図11Bの非限定的な例では、複数の突起116は、送達装置106内に格納可能に収容されてもよい。例えば、送達装置106は、複数の突起106が送達装置106内に格納された状態で標的組織内に挿入されてもよく、次いで複数の突起106が標的組織内で送達装置106から展開されてもよい。
【0027】
図12は、本開示の一態様による複数の突起116のうちの1つの非限定的な一例を示す。図示された突起116は、その遠位端に配置された針先1202を含む針1200の形をしている。針1200は金属材料から製造することができ、針1200の軸方向全長は冷却装置102からの伝導を介して冷却することができる。針1200は、約15ゲージから約35ゲージの間またはそれ以下の大きさにすることができる。いくつかの非限定的な例では、図13に示されるように、針1200は、針1200の所望の軸方向長さの周りに巻き付けられた断熱材1300を含み得る。すなわち、絶縁体1300は、針1200の針先1202を絶縁しないまま針1200に沿って軸方向に延びることができる。これは、針1200によって画定される軸方向長さと共に、冷却が適用される所望の組織領域内の深さを制御することができる。さらに、針先1202のみに冷却を提供することで、針先1202で適用される冷却によって健康な組織が損傷を受けるのを防ぐことができる。他の非限定的な例では、断熱材1300は、針1200の周りに巻き付けられた能動的加温ユニットによって置き換えられてもよい。断熱材1300と同様に、能動的加温ユニットは、針先1202の周囲には配置されず、針1200の軸方向長さによって画定される目標深度で所望の組織領域に冷却を適用することを可能にし得る。
【0028】
いくつかの非限定的な例では、図14に示されるように、針1200の軸方向全長を循環寒剤によって能動的に冷却することができる。図示の針1200は、針1200内に配置され針1200に沿って軸方向に延びる入口通路1400および出口通路1402を含むことができる。寒剤は、入口通路1400内へ、そして出口通路1402から外へと循環させられて、針1200の軸方向全長を能動的に冷却することができる。
【0029】
いくつかの非限定的な例では、図15に示すように、加温ユニット1500を針1200の近位端に隣接して配置することができる。加温ユニット1500は、所望の組織領域の表面(例えば、表皮)を加温するように構成されてもよい。これは、針1200によって加えられる冷却によって健康な組織が損傷を受けることを防ぐことができる。
【0030】
上記のように、いくつかの非限定的な例では、複数の突起116は、低温療法または低温アブレーションを適用するために所望の組織領域に所望の量のスラリーを注入するように構成され得る。図16Aは、スラリー1602を所望の組織領域に注入するように構成された針アレイ1600の形態の複数の突起116の非限定的な一例を示す。針アレイ1600の針は、約15ゲージ~約30ゲージの間になるようにサイズ決めされてもよい。スラリー1602はカートリッジ1604内に配置することができ、カートリッジ1604は送達装置106に取り外し可能に連結することができる。後述するように、スラリー1602は、所望の冷却温度を達成し、針アレイ1600を通る流体の流れを確実にするために適切なサイズの氷晶を含むように調製することができる。さらに、注入されるスラリーの量および/または針1600の隣接する対の間の距離Dは、所望の冷却パターンが達成されることを確実にするように設計され得る(すなわち、分割冷却対バルク冷却)。
【0031】
別の非限定的な例では、図16Bに示されるように、針アレイ1600はマニホールド1610に取り外し可能に連結されてもよい。針アレイ1600の各針は、例えば、ねじ係合、クイックディスコネクトフィッティング、またはプッシュオンフィッティングによって、取り外し可能にマニホールド1610に連結されてもよい。マニホールド1610への針アレイ1600の取り外し可能な連結は、針アレイ1600内の針の数および/または配置を所望に応じて使用者が変更することを可能にする。あるいは又はさらに、同じマニホールド1610を使用して、様々なサイズの針を用いて注入を実施することができる(例えば、15ゲージ針アレイ対30ゲージ針アレイ)。あるいはまたはさらに、針アレイ1600内の隣接する針の間の間隔は、マニホールド1610に連結されている針の数および/または向きによって制御することができる。
【0032】
図示された非限定的な例では、マニホールド1610は4本の針を含む針アレイ1600に連結されている。他の非限定的な例では、マニホールド1610は、所望に応じて任意のパターンで配置された4本より多いまたは少ない針を含む針アレイ1600に連結されてもよい。
【0033】
マニホールド1610は、スラリー注入装置(図示せず)に取り外し可能に連結されるように構成されている入口ポート1612を含む。マニホールド1610は、入口ポート1612と針アレイ1600内の各針との間に流体連通をもたらす内部通路を含み得る。スラリー注入装置は、例えば、所望の組織領域に注入されるべき所望の量のスラリーを含むシリンジ型装置の形態であり得る。いくつかの非限定的な例では、シリンジ型装置は、スラリーの注入を容易にするために手動で作動可能であり得る。いくつかの非限定的な例では、シリンジ型装置は、所定の流体流速でのスラリーの注入を容易にするために(例えば、シリンジポンプのように)電子的に制御されてもよい。
【0034】
操作の際、例えば、使用者はマニホールド1610上に所望のサイズおよび配置の針アレイを設置し、その後、所望の容量のスラリーで充填されたスラリー注入装置を入口ポート1612に連結することができる。送達装置102を組み立てた状態で、使用者は針アレイ1600を所望の組織領域内の所望の深さまで所望の組織領域に注入し、そしてスラリーを注入して所望の組織領域内に分割冷却パターンを達成することができる。
【0035】
いくつかの非限定的な用途では、図16Aおよび図16Bの送達装置102の分割スラリー注入能力は、同等のスラリー体積の単一注入と比較した場合、より広い領域の標的組織を対象範囲とすることができる可能性がある。例えば、分割スラリー注入装置は、単一注入によるバルク冷却と比較した場合、単一スラリー注入により標的組織の約2倍の面積を対象範囲とすることができる可能性がある。送達装置102の分割スラリー注入能力は、同等のスラリー体積の単一バルク注入と比較した場合、他のいくつかの操作上および機能上の利点を提供することができる。例えば、スラリーを標的組織に送達するのに必要な注入力の減少、スラリーを標的組織に送達するのに必要な時間の短縮(例えば、単一注入と比較した場合の時間の約半分)、標的組織へのスラリーのより均一な広がり、および血管や疼痛に影響を及ぼす可能性の減少。いくつかの非限定的な用途では、標的組織内へのスラリーのより均一な広がりは、標的組織内の脂肪のより均一な減少につながり、それによって標的組織に窪みまたはへこみを形成するという望ましくない副作用を回避し得る。場合によっては、大量のスラリーの単一注入は、標的組織内に膨らみ/膨潤および張力を生じさせる可能性があり、これは血管の破裂および挫傷を招く可能性がある。大量の単一注入はまた、皮下神経を伸ばし痛みを引き起こす可能性がある。単一注入のこれらの望ましくない特性は、例えば送達装置102を介して、より少量の分割量(aliquots)でスラリーのより均一な分布を標的組織に送達することができる分割スラリー注入の使用によって回避することができる。
【0036】
非限定的な一例では、針アレイ1600とは対照的に、冷却治療システム100は、図17に示すように単一の針1700を実装することができる。針1700は、約15ゲージから約35ゲージの間、またはそれ以下の大きさにすることができる。この非限定的な例では、冷却治療システム100は、所望の組織領域にバルク冷却を提供するように構成することができる。
【0037】
いくつかの非限定的な例では、図18および図19に示すように、送達装置106は、複数の突起116とは反対に、またはそれに加えて、拡張可能な針1800を含み得る。拡張可能な針1800は、冷却装置102によって冷却され、続いて冷却治療システム100の使用者によって所望の組織領域(例えば、患者の舌/気道内の脂質に富む組織)まで進められてもよい。拡張可能な針1800が所望の組織領域に達すると、使用者は拡張可能な針1800に取り付けられたバルーン1802を拡張することができる。次いで、所望の温度のスラリーを拡張可能な針1800を通してバルーン1802に送達して所望の組織領域を冷却することができる。当然のことながら、バルーン1802は、スラリーの注入前に膨張させる必要がない場合がある。むしろ、スラリーの注入がバルーン1802を膨張させ得る。所望の組織領域に所望の冷却治療が施されたら、バルーン1802を収縮状態に格納してもよい(図18)。
【0038】
図20および図21は、複数の突起116とは対照的に、またはそれと併せて、送達装置106内に実装され得る分割送達アレイ2000および2100の2つの非限定的な例を示す。分割送達アレイ2000は、冷却治療システム100の使用者によって所望の組織領域(例えば、患者の舌/気道内の脂質に富む組織)まで進められ得る。分割送達アレイ2000が所望の組織領域に進められると、スラリーが、複数の針2002を介して分割パターン(fractional pattern)で所望の組織領域に送達され得る。複数の針2002は、アレイチューブ2004の遠位端から外向きに延びることができる。図20および図21に示すように、複数の針2002は、所望に応じて代替の分割冷却パターンを画定するために代替のパターンで配置されてもよい。
【0039】
上述のように、冷却治療システム100は所望の冷却パターンを提供するように設計されてもよい。すなわち、非限定的な一例では、冷却治療システム100は、所望の組織領域に分割冷却パターンを提供するように設計されてもよい。図22は、送達装置106を参照して上述したように、スラリーの注入、局所冷却、または能動的に冷却された針の注入を介して達成され得る分割冷却パターン2200の非限定的な一例を示す。図22に示されるように、分割冷却パターン2200においては、個別の冷却ゾーン2202が、隣接する冷却ゾーン間に配置された未処理の組織の領域と共に存在する。当然のことながら、図22に示される個別の冷却ゾーン2202の数は説明の目的のためのものであり、決して限定的なものではない。いくつかの非限定的な例では、冷却治療システム100は、約-180℃~約-20℃の間の温度でアブレーション冷却療法(すなわち低温アブレーション)を分割パターンで提供するように構成されてもよい。いくつかの非限定的な例では、冷却治療システム100は、約-20℃~5℃の間の温度で非アブレーション冷却療法(すなわち低温療法)を分割パターンで提供するように構成されてもよい。
【0040】
図23は、本開示の1つの非限定的な例による冷却治療システム100によって達成可能なアレイバルク冷却パターン2300を示す。図示されたアレイバルク冷却パターン2300は、冷却アレイ(例えば、複数の突起116、針アレイ1600、複数の針2002など)を適用することによって形成することができ、送達装置106を参照して上述したように、スラリーの注入、局所冷却、または能動的に冷却された針の注入を介して達成され得る。図23に示すように、アレイバルク冷却パターン2300は、所望の組織領域にわたって実質的に均一な冷却プロファイルを画定する。いくつかの非限定的な例では、冷却治療システム100は、約-20℃~5℃の間の温度で、アレイバルク冷却パターンで非アブレーション冷却療法(すなわち低温療法)を提供するように構成されてもよい。
【0041】
図24は、本開示の1つの非限定的な例による冷却治療システム100によって達成可能なデポ(depot)バルク冷却パターン2400を示す。図示されたデポバルク冷却パターン2400は、単一の注入(例えば、単一の針1700)からのスラリーの注入を介して形成することができる。デポバルク冷却パターン2400は、デポバルク冷却パターン2400の中心から半径方向外向きに延びるにつれて温度が低下する同心円状の冷却ゾーンを画定する。当然のことながら、代替のバルク冷却パターンが冷却治療システム100によって達成可能である。例えば、図25に示されるように、単一の針1700は、スラリーを所望の組織領域に注入するときに扇形のバルク冷却パターン2500を提供するように構成されてもよい。
【0042】
冷却治療システム100の操作および適用を、図1図26を参照して説明する。適用において、冷却治療システムは、非常に低温のアブレーション温度または中間のリモデリング温度のいずれかでバルクまたは分割冷却を提供して、脈管構造の増加(すなわち血管新生)および新しいコラーゲンの形成(すなわちコラーゲンリモデリング)を誘導することによって組織リモデリングを促進するように構成される。後述するように、血流および/またはコラーゲン形成の欠如がある種の疾患を引き起こし得る様々な医学的実例がある。したがって、冷却治療システム100は、コラーゲンの形成および血管新生を誘導し、それによって特定の疾患の治癒または治療を促進するように実施することができる。いくつかの非限定的な例では、冷却治療システム100は、対象の所望の組織領域を約-200℃から約30℃の間の温度にさらすように構成されてもよい。いくつかの非限定的な例では、冷却治療システム100は、対象の所望の組織領域を約-180℃から約30℃の間の温度にさらすように構成されてもよい。いくつかの非限定的な例では、冷却治療システム100は、対象の所望の組織領域を約-160℃から約30℃の間の温度にさらすように構成されてもよい。いくつかの非限定的な例では、冷却治療システム100は、対象の所望の組織領域を約-140℃から約30℃の間の温度にさらすように構成されてもよい。いくつかの非限定的な例では、冷却治療システム100は、対象の所望の組織領域を約-120℃から約30℃の間の温度にさらすように構成されてもよい。いくつかの非限定的な例では、冷却治療システム100は、対象の所望の組織領域を約-100℃から約30℃の間の温度にさらすように構成されてもよい。いくつかの非限定的な例では、冷却治療システム100は、対象の所望の組織領域を約-80℃から約30℃の間の温度にさらすように構成されてもよい。いくつかの非限定的な例では、冷却治療システム100は、対象の所望の組織領域を約-70℃から約30℃の間の温度にさらすように構成されてもよい。いくつかの非限定的な例では、冷却治療システム100は、対象の所望の組織領域を約-60℃から約30℃の間の温度にさらすように構成されてもよい。いくつかの非限定的な例では、冷却治療システム100は、対象の所望の組織領域を約-50℃から約30℃の間の温度にさらすように構成されてもよい。いくつかの非限定的な例では、冷却治療システム100は、対象の所望の組織領域を約-40℃から約30℃の間の温度にさらすように構成されてもよい。いくつかの非限定的な例では、冷却治療システム100は、対象の所望の組織領域を約-30℃から約30℃の間の温度にさらすように構成されてもよい。いくつかの非限定的な例では、冷却治療システム100は、対象の所望の組織領域を約-20℃から約30℃の間の温度にさらすように構成されてもよい。いくつかの非限定的な例では、冷却治療システム100は、対象の所望の組織領域を約-20℃から約20℃の間の温度にさらすように構成されてもよい。いくつかの非限定的な例では、冷却治療システム100は、対象の所望の組織領域を約-20℃から約10℃の間の温度にさらすように構成されてもよい。いくつかの非限定的な例では、冷却治療システム100は、対象の所望の組織領域を約-20℃から約5℃の間の温度にさらすように構成されてもよい。
【0043】
非限定的な一例では、血管新生およびコラーゲンリモデリングを誘導する目的で、冷却治療システム100によってバルク冷却を適用してもよい。これは、局所冷却(例えば、複数の突起116を用いる)、スラリー注入(例えば、複数の突起116、針アレイ1600、または単一の針1700を用いる)、または低温針(cryoneedles)(例えば、複数の突起116を用いる)によって達成され得る。あるいは、血管新生および/またはコラーゲンリモデリングを誘導する目的で、冷却治療システム100によって分割冷却を適用してもよい。冷却治療システム100の適用によって提供される誘導されたコラーゲンリモデリングおよび血管新生は、任意の虚血性臓器もしくは組織および/または弛緩を起こしている組織に適用してもよい。これらの組織/臓器への冷却治療システム100の適用は、糖尿病性末梢神経障害、男性型禿頭症、創傷治癒、皮膚老化、膣若返り、爪真菌症、瘢痕リモデリング、虚血組織/臓器(すなわち、神経、筋肉、皮膚、肝臓、腎臓、心臓など)の血管再生、脂肪腫およびセルライトの治療などの様々な虚血性疾患の治療に使用することができる。あるいは、当然のことながら、いくつかの用途では、冷却治療システム100によって提供される治療は、血液の供給を増加させるかまたはコラーゲンのリモデリングを改善する伝統的な薬理学的薬剤と組み合わせてもよい。
【0044】
いくつかの用途では、患者の舌または気道内の脂質に富む組織を選択的に標的にして、低温脂肪分解(選択的冷傷による脂肪の破壊)を誘導するために冷却治療システム100を使用してもよい。冷却治療システム100のこの用法は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)を治療するために使用してもよく、それは患者の舌/気道における過剰な脂肪が冷却の選択的な適用によって(例えば拡張可能な針1800、または分割送達アレイ2000および2100のうちのいずれか1つの適用によって)低減され得るからである。あるいは又はさらに、舌/気道への冷却の選択的な適用は、OSAに関連する気道の弛緩を改善し得る気道内でのコラーゲンリモデリングを惹起し得る。
【0045】
図26は、冷却治療システム100を操作するためのステップの非限定的な一例を示す。図26に示すように、最初に、ステップ2600で、冷却治療を施すことが望まれる所望の組織領域に隣接して送達装置を配置することができる。送達装置は、上記の送達装置、例えば、複数の突起116(針1200、針アレイ1600、または単一の針1700などの形態)、拡張可能な針1800、または分割送達アレイ2000や2100のいずれであってもよい。送達装置がステップ2600で配置されると、ステップ2602で送達装置を所望の組織領域と係合させることができる。ステップ2602の係合は、上述の様々な送達装置のいずれかを使用した局所的な係合、または針の注入であり得る。ステップ2602で針が注入される場合、上述のように、注入の深さは、例えば、深度画像化装置302を使用して針をモニターすることによって、注入した針を針の先端を除いて断熱することによって、または能動的に組織を温めることによって制御できる。
【0046】
ステップ2602で送達装置が所望の組織領域と係合すると、ステップ2604で冷却治療システム100は所望の組織領域に冷却を適用することができる。ステップ2604で適用される冷却は、上述のように、低温アブレーション温度または非アブレーション低温刺激温度のいずれでもよい。さらに、ステップ2604で適用される冷却は、上述の送達装置のいずれかを利用した、伝導冷却を介して、1つ以上の伝導的に冷却された針の注入を介して、または1つ以上の針からの低温スラリーの注入を介して、局所的に適用され得る。さらに、ステップ2604で適用される冷却は、所望に応じて、バルク冷却パターンまたは分割冷却パターンであってもよい。
【0047】
冷却がステップ2604で適用されている間、使用者(通常、訓練を受けた医療専門家)はステップ2606で適用されている冷却療法をモニターすることができる。使用者は、例えば上述の熱画像化装置304を使用して冷却療法をモニターすることができる。使用者は、所望の冷却パターンが達成されていることを確実にするために冷却療法をモニターすることができる。あるいは又はさらに、使用者は、所望の温度が所望の組織領域に適用されていることを確実にするため、及び/又は損傷を与え得る温度に周囲の健康な組織がさらされていないことを確実にするために、冷却療法をモニターすることができる。
【0048】
使用者は、所望の治療効果が誘導されたと判断するまで、冷却療法2606をモニターすることができる。その後、ステップ2608で、使用者は送達装置を取り外すことができる。当然のことながら、冷却療法は、特定のサイクル間時間間隔で多数のサイクルで適用することができる。これらの例では、所望の治療効果が誘導されるまで、2602~2608のステップを1回以上繰り返すことができる。
【0049】
実施例
以下の実施例は、冷却治療システム100が使用または実施され得る方法を詳細に記載し、当業者がその原理をより容易に理解することを可能にするであろう。以下の実施例は例示のために提示され、決して限定することを意味しない。
【0050】
以下のデータはインビボで行われたラット実験に関する。全ての温度測定値は、FLIR ONE非接触熱画像化装置を用いて得られた。
【0051】
低温スラリーの皮下注入
10%(体積比)のグリセロールと混合した生理食塩水のスラリー組成物を調製し、ラットに皮下注入した。調製したスラリーの温度範囲は、-3.5℃~-2.5℃であり、注入容量は10ミリリットル(mL)であった。スラリー注入によって生じた熱的境界を注入後の時間の関数として測定した。図27は、注入後の時間の関数としての熱的境界の大きさを示す。図27に示すように、熱的境界の大きさは注入後の時間に応じてほぼ直線的に変化する。図27のデータから、冷却面積が概算できる。この相関関係は、約14℃(脂質の結晶化点)を超える温度が冷却の治療効果の終了を意味するという事実と併せて、冷却面積および分割冷却パターンを維持するための最小注入間距離を概算するために使用することができる。
【0052】
以下の表1は、50%の氷含有量(体積比)の-2.8℃スラリーの10mL注入についての実験結果に基づく概算データを例示する。
【0053】
【表1】
【0054】
スラリー注入後の推定皮膚温度
表1のデータを用いて、-2.8℃で50%の氷含有量(体積比)で10mLのスラリーを注入した場合の、スラリー注入後の皮膚温度を推定した。上記のように、脂質の結晶化温度は約14℃であり、それ故、冷却を用いて組織を選択的に標的とする治療域はこの温度以下である。表2のデータに基づくと、推定スラリー注入は約315秒間治療効果をもたらすことができた。
【0055】
【表2】
【0056】
冷却能力における氷含有量の重要な決定要因
温度と組成は同じだが氷の含有量が異なるスラリーは、冷却能力が劇的に異なる。図28のグラフは、-2.8℃および50%氷含有量と比較した、-2.5℃および約10%氷含有量での10%グリセロール含有生理食塩水スラリーの注入後の表面皮膚温度を示す。図28に示すように、10%氷含有量のスラリーと比較して、50%氷含有量のスラリーを注入した場合、皮膚温度は注入後に大幅により低い温度(すなわち、約-3℃対約12℃)に達した。
【0057】
モデリングに使用した実験データ
図29に示すように、スラリー注入の最初の60秒間の冷却特性をモデル化するために、最適多項式回帰を実施した。図30に示されるように、スラリー注入の冷却特性およびその後の復温をモデル化するために、最適二次回帰モデルが実施された。
【0058】
(分割冷却実験)
2mmの針間(直径約0.5mm)で5mmの深さで、分割パターンで針を注入しながら伝導冷却した後、急速な復温が観察された。針は、皮膚への挿入時には約-20℃の温度であった。約1分の冷却後、14℃未満の冷却面積は約0.301cm であった。図31は、分割針試験についての注入後時間の関数としての表面皮膚温度を示す。
【0059】
スラリー注入を用いて行われた実験に基づいて、14℃未満の5分間の冷却が、脂質に富む組織の選択的破壊を達成するのに十分であり得ることを決定することができる。それ故、伝導性冷却の送達はこの範囲内にあるべきである。分割パターンを維持するために、複数の短い冷却サイクルを実施することができる。
【0060】
以下の表3は、血管刺激および新コラーゲン形成のためのバルク冷却パラメータを示す。注目すべきこととして、スラリー温度は4℃を超えることはできないので、より高い温度で標的組織を冷却する能力は、主に注入量、氷の粒径、氷の含有量などを調整することによって制御される。
【0061】
【表3】
【0062】
(低温スラリーを用いた血管刺激と新コラーゲン形成のための分割冷却パラメータ)
表4は、50%氷含有量を使用して目標5分の処理時間で、10mLの低温スラリー注入での最大熱半径を決定するための実験データを示す。注目すべきこととして、スラリーは、異なる組織タイプでは異なって広がる可能性があり、かつ氷含有量に基づいて異なる冷却能力を有する可能性があり、これは1つの非限定的な例にすぎない。試験した組織タイプはラットモデルにおける皮下注入であった。また、注入は、単一注入による注入量により治療領域においてより均一なバルク冷却を達成するために、概説されたパラメータよりも近くに配置されてもよい。
【0063】
【表4】
【0064】
(貫入針アレイまたは局所分割冷却針アレイを用いた血管刺激および新コラーゲン形成のための冷却時間および温度)
表5に示されるように、冷却が真皮深部および表層脂肪の標的部位へと拡散するにはより長くかかるので、局所適用の場合にはサイクル時間はより長くなる。より長いサイクルは、分割パターンを維持しバルク組織効果を防ぐのを助けるための能動的復温によって可能にされる。急速な復温を示す上記のデータを考えると、サイクルの間に最低5秒があるべきである。
【0065】
【表5】
【0066】
(マウス皮膚の分割冷却実験)
エクスビボのマウス皮膚を試験して、本開示による分割冷却パターンを達成するように構成された冷却治療システムの冷却温度および効率をモニターした。プレートから延びる複数の銅針を有する送達装置を含む冷却治療システムを組み立てた。試験のために、送達装置は、3-2-3-2-3アレイパターンに配置された13本の針を含んでいた。針は互いに4mm~7mmの間隔で配置され、針の直径は1mm~1.3mmの間であった。ペルチェ冷却器を複数の銅針に熱的に連結して、組み立てた冷却治療システムによって提供される冷却量を制御した。試験のために、ペルチェ冷却器は冷却治療システムを約-10℃に維持するように構成された。
【0067】
マウスの皮膚を銅針アレイの上に置き、前方監視型赤外線(FLIR)カメラを使用して上から温度をモニターした。図32に示されるように、冷却治療システムは、マウス皮膚上で、より高温の組織の領域によって囲まれた個別の冷却区域を有する分割冷却パターンを達成した(図32におけるより濃い陰影はより低い温度の区域を示す)。FLIRカメラによってモニターされたマウスの皮膚温度を用いて、銅針部位および周囲組織の温度を時間の関数として計算した。図33に示されるように、針の周囲の組織の温度は、時間の関数として針の温度プロファイルを模倣し、その温度は継続的に針の温度に近づいた。周囲組織のこの温度応答は、皮膚およびその下の組織を冷却するために分割冷却を使用することの実現可能性および効率を実証する。
【0068】
(ヒト腹部形成術後標本に対する分割スラリー注入実験)
ヒトの腹部形成術後組織を試験して、単一スラリー注入と分割スラリー注入の冷却治療を比較した。単一スラリー注入試験のために、60mLのスラリーをヒト腹部形成術後組織の皮下脂肪に注入した。スラリー温度は約-4.8℃であり、生理食塩水および10%グリセロールから構成されていた。図34に示すように、第1の熱電対(T1)を注入部位から横方向に1センチメートル(cm)離して皮膚の表面から2cm下に配置し、第2の熱電対(T2)を注入部位から横方向に2cm離して(T1と同じ方向に)皮膚の表面から2cm下に配置した。分割スラリー注入試験のために、図16Bの送達装置102と同様の装置を用いて60mLのスラリーをヒト腹部形成組織の皮下脂肪に注入した。スラリー温度は約-4.8℃であり、生理食塩水および10%グリセロールから構成されていた。図35に示すように、第1の熱電対(T1)と第2の熱電対(T2)を互いに1cm離してかつ皮膚の表面の2cm下に隣接して配置した。
【0069】
両方の試験において、スラリーの全量を絶えず皮下脂肪に注入しそしてT1およびT2の温度をモニターし、記録した。図36に示されるように、単一スラリー注入では、T2によって測定された温度はT1によって測定された温度よりも一貫して高い。これは、単一バルク注入によりもたらされる冷却均一性が低いためである。図37を参照すると、分割スラリー注入では、注入プロセスの間、T1とT2の両方がほぼ同じ温度を測定した。これは、分割スラリー注入が冷却の均一性を高め、より大きな組織領域を対象範囲とすることを示唆している。さらに、単一バルク注入を完了するのに必要な時間は、同じ容量のスラリーを分割注入するのに必要な時間の約2倍の長さであった。
【0070】
このように、本発明を特定の実施形態および実施例に関連して上述したが、本発明は必ずしもそのように限定されない。そして、多数の他の実施形態、実施例、使用、修正、ならびに当該実施形態、実施例および使用からの逸脱は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。本明細書中に引用された各特許および刊行物の全開示は、あたかもそのような各特許または刊行物が個別に参照により本明細書中に組み入れられるかのように、参照により組み入れられる。
図1
図2
図3
図4
図5
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図10A
図10B
図11A
図11B
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図16B
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