(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ボールマーキングを使用したスピン測定を決定するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A63B 43/00 20060101AFI20250109BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20250109BHJP
G01S 13/58 20060101ALI20250109BHJP
A63B 69/36 20060101ALI20250109BHJP
A63B 45/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A63B43/00 E
G01S7/03 200
G01S13/58
A63B69/36 504G
A63B45/02
(21)【出願番号】P 2022501351
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(86)【国際出願番号】 IB2020056530
(87)【国際公開番号】W WO2021005577
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-01-11
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507002457
【氏名又は名称】トラックマン・アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】TRACKMAN A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】フレドリク トゥクセン
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ ピーター ヘルメンセン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ハリース ヘッセルベルヒ
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-068139(JP,A)
【文献】国際公開第2011/074247(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00-47/04
A63B 69/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポーツボールのスピンの検出に使用されるレーダによるスピン特性の検出を強化するように構成されたスポーツボールであって、
前記レーダによって生成された放射線に対し第1の反射率を有
する球状体であって、前記レーダによって生成された前記放射線に対して半透明である外面を有する球状体と、
複数のマーカであって、各マーカは、前記スポーツボールのスピンの検出に使用される前記レーダによって生成される放射線に対し第2の反射率を有し、前記第2の反射率は前記第1の反射率とは異なり、少なくとも1つの前記マーカは前記スポーツボールの前記外面の下に埋め込まれ、前記レーダによって生成された放射線は、前記スポーツボールの半透明の前記外面を貫通して、前記スポーツボールの前記外面の下に埋め込まれている少なくとも1つの前記マーカに到達可能である、複数のマーカと、
を備え、
前記マーカは、前記スポーツボールの前記外面の周りに延びるすべての大円が、少なくとも1つのマーカの前記スポーツボールの外面への投影から距離d以内にあるように、前記スポーツボールに配置されており、
前記距離dは、前記スポーツボールの半径よりも小さいことを特徴とするスポーツボール。
【請求項2】
請求項1に記載のスポーツボールであって、前記マーカは円形であり、各マーカの前記スポーツボールの前記外面への投影が、前記スポーツボールの中心から前記マーカを囲む前記スポーツボールの前記外面まで延びる円錐で構成されていることを特徴とするスポーツボール。
【請求項3】
請求項2に記載のスポーツボールであって、前記マーカの少なくとも1つが、前記スポーツボール内に埋め込まれた平面の円板であることを特徴とするスポーツボール。
【請求項4】
請求項2記載のスポーツボールにおいて、前記マーカの少なくとも1つは、円で囲まれた前記スポーツボール内の球面の一部であり、前記球面は前記スポーツボールと同じ中心を持つことを特徴とするスポーツボール。
【請求項5】
請求項2に記載のスポーツボールにおいて、前記マーカは矩形であり、各マーカの前記スポーツボールの前記外面への投影が、前記スポーツボールの中心から前記マーカを囲む前記スポーツボールの前記外面まで延びる角錐で構成されていることを特徴とするスポーツボール。
【請求項6】
請求項5に記載のスポーツボールであって、前記マーカの少なくとも1つが、前記スポーツボール内に埋め込まれた平面の矩形であることを特徴とするスポーツボール。
【請求項7】
請求項5に記載のスポーツボールであって、前記マーカの少なくとも1つが、前記スポーツボールの中心から前記スポーツボールの前記外面まで延びる角錐に外接する前記スポーツボール内の球面の一部であることを特徴とするスポーツボール。
【請求項8】
請求項1に記載のスポーツボールであって、複数のマーカが大円の距離d以内にある場合、これらのすべてのマーカの前記スポーツボールの前記外面への投影が、前記大円に関して等角度で離れていないことを特徴とするスポーツボール。
【請求項9】
請求項8に記載のスポーツボールであって、前記大円の第1のものの距離d以内に2つのみマーカがあり、これらのマーカは互いに径方向に対向していないことを特徴とするスポーツボール。
【請求項10】
請求項9に記載のスポーツボールであって、前記2つのマーカのそれぞれは、他のマーカに対して、径方向に対向する位置から所定距離以内にないことを特徴とするスポーツボール。
【請求項11】
請求項8に記載のスポーツボールであって、前記大円の距離d以内にある前記マーカのそれぞれは、前記大円に関して等角度離れた位置から距離m以内にないことを特徴とするスポーツボール。
【請求項12】
請求項9に記載のスポーツボールであって、各マーカの径方向に対向する位置は、前記スポーツボールの前記外面へのマーカの投影と径方向に対向する前記スポーツボールの外面の一部であり、各マーカの径方向に対向する位置は、対応するマーカの前記スポーツボールの前記外面への投影と同じ大きさと形状を有していることを特徴とするスポーツボール。
【請求項13】
請求項1に記載のスポーツボールであって、各前記マーカの少なくとも一部は、前記スポーツボールの片側の半球内に延びていることを特徴とするスポーツボール。
【請求項14】
スポーツボールのスピンの検出に使用されるレーダによるスピン特性の検出を強化するように構成されたスポーツボールであって、
前記レーダによって生成される放射線に対して第1の反射率を有す
る球状体であって、前記レーダによって生成された放射線に対して半透明である外面を備える球状体と、
前記スポーツボールのスピンを検出するために使用される前記レーダによって生成される放射線に対して第2の反射率を有する材料の前記スポーツボール内の球状の層であって、前記第2の反射率は前記第1の反射率とは異なり、前記層の材料が存在しない層内に複数のマーカが、前記マーカが前記第1の反射率を有するように形成され、少なくとも1つの前記マーカは、前記スポーツボールの前記外面の下に前記スポーツボール内に埋め込まれており、前記スポーツボールの前記外面の周りを延びるすべての大円が、前記マーカの少なくとも1つの前記スポーツボールの前記外面への投影の距離d以内にあるように、前記マーカは配置されており、前記距離dは前記スポーツボールの半径未満である球状の層と、
を備えることを特徴とするスポーツボール。
【請求項15】
スポーツボールのスピンの検出に使用されるレーダによるスピン特性の検出を強化するように構成されたスポーツボールの製造方法であって、
前記レーダによって生成される放射線に対して第1の反射率を有
する球状体であって、前記レーダによって生成された放射線に対して半透明である外面を有する球状体を形成することと、
前記スポーツボールに複数のマーカを形成することであって、各前記マーカは、前記スポーツボールのスピンの検出に使用される前記レーダによって生成された放射線に対する第2の反射率を有し、前記第2の反射率は前記第1の反射率とは異なり、少なくとも1つのマーカは、前記スポーツボールの前記外面の下に前記スポーツボール内に埋め込まれており、前記マーカは、前記スポーツボールの外面の周りに延びるすべての大円が、前記マーカの少なくとも1つの前記スポーツボールの前記外面への投影から距離d以内にあるように前記スポーツボールに配置されており、前記距離dは前記スポーツボールの半径未満であることと、
を備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2019年7月11日に出願された米国仮特許出願62/873,105、2019年10月10日に出願された米国仮特許出願62/913,523、及び2020年2月5日に出願された米国仮特許出願62/970,394に基づく優先権を主張するものである。前記出願の明細書は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、反射性マーキングを有するスポーツボールのスピン特性を決定するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
スポーツボールのスピンレートやスピン軸の向きなどのスピンパラメータは、スポーツボールを追跡するためにも、スポーツボールの飛行をシミュレートするためにも、また、スポーツボール、クラブ、アイアン、ラケット、バットなど、スポーツボールを打ち出すために使用されるスポーツ用具を開発するためにも、非常に有用である。このような決定は、回転するボールに対応するレーダデータにおけるシグネチャに基づいて行われてもよい。
【0004】
米国特許第8845442号は、飛行中の回転するボールのドップラーレーダ信号の変調を分析することにより、スポーツボールのスピンレートを決定する方法を開示している。しかし、この方法による変調信号は、比較的弱いものである。屋内ゴルフ設備などのように、非常に短いボール飛行のデータしか得られない状況では、マークされていないボールの変調信号が弱すぎて、スピンレートの測定に役立たないことが多い。
【0005】
このような状況で変調信号を増幅してスピン検出を可能にするために、ボールに反射性マーカを配置することがある。しかし、以前のシステムでは、有用なデータを生成するために、ボールを発射する前に反射性マーカの向きを正確に方向付ける必要がある場合が多く、また、多くの場合、システムはマーキングパターンに関する正確な先験的知識を有している必要がある。例えば、マーカは飛行中レーダ装置と直接面する必要があることがある。このようなボールの向きの制限は、システムの操作性を阻害する可能性があり、また、ボールが意図したものとは異なる形で発射された場合には、ボールの軌道について有用なデータが生成されない可能性がある。
【0006】
本実施形態では、スピン軸の向きやレーダアンテナの位置に関係なく、ボールの向きに関係なく、またコントラスト領域の特定の位置決め幾何学に関する知識を必要とせずに、受信したレーダ信号の変調からスピン特性を決定することができるような方法で、特定の位置決め要件でボールにコントラスト領域を適用することにより、スピンレートやスピン軸の向きなど、ボールのスピン特性を決定する方法及び装置について説明する。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、レーダによるスピン特性の検出を強化するように構成されたスポーツボールに関する。ボールは、ボールのスピンを検出するときに使用されるレーダによって生成される放射線に対する第1の反射率を有する球体と、複数のマーカとを含み、各マーカは、ボールのスピンを検出するときに使用されるレーダによって生成される放射線に対する第2の反射率を有し、前記第2の反射率は前記第1の反射率とは異なる。前記マーカは、ボールの外面の周りに延びるすべての大円が、少なくとも1つのマーカのボールの外面への投影の距離d以内にあるように、ボールに配置される。前記距離dは、ボールの半径よりも小さい。
【0008】
一実施形態では、前記マーカは円形であり、各マーカのボールの外面への投影は、ボールの中心からマーカに外接するボールの外面まで延びる円錐を含む。
【0009】
一実施形態では、前記マーカの少なくとも1つは、スポーツボール内に埋め込まれた平面の円板である。
【0010】
一実施形態では、前記マーカの少なくとも1つは、円によって外接されるボール内の球面の一部であり、前記球面はボールと同じ中心を有する。
【0011】
一実施形態では、前記マーカは矩形であり、各マーカのボールの外面への投影は、ボールの中心からマーカに外接するボールの外面まで延びる角錐を含む。
【0012】
一実施形態では、前記マーカの少なくとも1つは、スポーツボール内に埋め込まれた平面の矩形である。
【0013】
一実施形態では、前記マーカの少なくとも1つは、ボールの中心からボールの外面まで延びる角錐によって外接されるボール内の球面の一部である。
【0014】
一実施形態では、複数のマーカが大円の距離d以内にある場合、これらのマーカのすべてのボール外面への投影は、大円の周りに不均等に配置される。
【0015】
一実施形態では、大円のうちの第1のものの距離d以内に2つのみマーカがあり、これらのマーカは互いに径方向に対向していない。
【0016】
一実施形態では、前記2つのマーカは、所定の許容範囲内で互いに径方向に対向していない。
【0017】
一実施形態では、大円の距離d以内のマーカは、大円の周りに均等に分布する位置から、その投影が大円の距離d以内にある他のすべてのマーカのボールの外面への投影から少なくとも距離mだけ離れている。
【0018】
一実施形態では、各マーカの径方向に対向する位置は、ボールの外面のマーカの投影に径方向に対向するボールの外面の一部であって、各マーカの径方向に対向する位置は、ボールの外面の対応するマーカの投影と同じサイズ及び形状を有する。
【0019】
一実施形態では、各マーカの少なくとも一部は、ボールの片側の半球内に延びる。
【0020】
また、本開示は、レーダによるスピン特性の検出を強化するように構成されたスポーツボールに関するものである。前記ボールは、ボールのスピンを検出するときに使用されるレーダによって生成される放射線に対する第1の反射率を有する球体と、ボールのスピンを検出するときに使用されるレーダによって生成される放射線に対する第2の反射率を有する材料のボール内の球状の層であって、前記第2の反射率は前記第1の反射率とは異なる層と、マーカが第1の反射率を有するように、層の材料が存在しない層内に形成された複数のマーカと、を含む。前記マーカは、ボールの外面の周りに延びるすべての大円が、少なくとも1つのマーカのボールの外面への投影の距離d以内にあるように、ボールに配置されている。前記距離dは、ボールの半径よりも小さい。
【0021】
更に、本開示は、レーダによるスピン特性の検出を強化するように構成されたスポーツボールの製造方法に関するものである。前記方法は、ボールのスピンを検出するときに使用されるレーダによって生成された放射線に対する第1の反射率を有する球体を形成することと、スポーツボールに複数のマーカを形成することとを含み、各前記マーカは、ボールのスピンを検出するときに使用されるレーダによって生成された放射線に対する第2の反射率を有し、前記第2の反射率は前記第1の反射率とは異なる。前記マーカは、ボールの外面の周りに延びるすべての大円が、少なくとも1つのマーカのボールの外面への投影から距離d以内にあるように、ボールに配置されている。前記距離dは、ボールの半径よりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1a】位置決め要件を満たす、幅2dの帯で囲まれた大円の描かれた第1のマーク付きボールを示す図。
【
図1b】位置決め要件を満たさない、幅2dの帯で囲まれた大円の描かれた第2のマーク付きボールを示す図。
【
図1c】複数のマーカが同じ大円を囲む幅2dの帯に接触し、任意の追加位置決め制約を満たす第3のマーク付きボールの上面図。
【
図1d】複数のマーカが同じ大円を囲む幅2dの帯に接触し、任意の追加位置決め制約を満たさない第4のマーク付きボールの上面図。
【
図2a】本開示の一実施形態による、第1のマーキングパターンを有するマーク付きボールを示す図。
【
図2b】本開示の一実施形態による、第1のマーキングパターンを有するマーク付きボールを示す図。
【
図3a】本開示の一実施形態による、第2のマーキングパターンを有するマーク付きボールを示す図。
【
図3b】本開示の一実施形態による、第2のマーキングパターンを有するマーク付きボールを示す図。
【
図4】本発明の例示的な実施形態による、スポーツボールのスピン軸を決定するためのシステムを示す図。
【
図5】本発明の例示的な実施形態による、回転するゴルフボールのスピン軸を決定するための例示的な方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
例示的な実施形態は、以下の説明及び関連する添付の図面を参照して更に理解することができ、同様の要素は同じ参照符号が与えられる。例示的な実施形態は、スポーツボールのスピン特性をレーダに基づいて決定するためのシステム及び方法に関し、例示的なスポーツボールは、ボールの他の領域とは異なる電気反射率を有するマーカを組み込むことによって変更される。反射マーカは、レーダデータで検出され得るコントラスト領域をボールの表面(又は表面に近い部分)に提供する。例えば、マーカは、レーダによって送信されるマイクロ波放射線が、ボールの他の部分に与える放射とは異なる形でマーカによって反射及び受信されるように、飛行軌道測定システムで使用されているレーダの周波数領域において導電性であってもよい。レーダに対してボールが回転している軸の向きに関係なく、マーカを検出できるように、マーカの具体的な位置決め制約を以下に説明する。
【0024】
本明細書で詳述する例示的な実施形態では、これらのマーキングを有するゴルフボール又は野球ボールについて説明しているが、当業者であれば、あらゆるスポーツボール又は非スポーツ関連の物体であっても、同様の方法でマーキングし、スピン特性を決定することができることを理解できるであろう。例示的な実施形態は、任意の球形又は実質的に球形のボールに適用することができる。例えば、ゴルフボールは概して球形であってよいが、ボールの外面には小さなくぼみ、1つ以上の縫い目又は他の表面不規則性が含まれていてもよく、野球ボールは盛り上がった縫い目を有していてもよい。しかし、本目的では、これらのボールは概して球形であると仮定することができる。
【0025】
ボールの一部にわたり配置されたマーキングは、場合によってはボールの特性(例えば、クラブでボールに衝撃が加わったときの反応)を変化させ、変更されていないゴルフボールに対して、変更されたボールの飛行特性を変化させる可能性があるが、本明細書に記載されているマーカの影響は、マーカがボールに比べて非常に薄く軽量に作られているため、最小限に抑えられる。また、これらの例示的な変更されたボールが意図される多くの用途では、これらの影響は事実上取るに足らないか、又は、必要であれば、当業者に理解されるように、ボールの飛行をモデル化する過程で補正される。例えば、屋内ゴルフ設備では、打たれたボールがスクリーンに当たるまでの距離が短い(例えば、3~4メートル)ことがある。その短い距離内でのボールの発射特性や飛行への影響は最小限であり、室内ゴルフシステムは、理想的なゴルフボールの特性とその発射特性とを組み合わせて計算し、ボールの経路を投影してもよい。別の例では、ボールは野球ボールであってもよく、野球ボールのスピン特性は、投球又はバッティング施設のシナリオで決定されてもよい。
【0026】
例示的な実施形態によると、球状のボールは、以下に詳述する位置決め要件を満たすようにマークされる。更に使用を改善するために、任意の追加位置決め制約も記載されている。要件と任意の制約は、例えば、マークされているボールの種類に合わせた多くの異なるマーカ配置によって満たすことができる。例えば、ゴルフボールの場合、マーカは、ボールの周囲に比較的均等に配置された複数の円形マーカを含んでいてもよく、野球ボールの場合、マーカは、野球ボールの縫い目又はその一部と同一に広がって配置されてもよい。マーカの形状はどのようなものでもよいが、円形や矩形のマーカの方が、レーダデータの信号がより鮮明になる場合がある。例えば、ゴルフボールの典型的なマーカは、直径2~8mmの円形であり、マーカの主要寸法(例えば、直径又は最大幅)は、典型的には、レーダで使用される波長の0.25~0.5倍になるように選択される。なお、本明細書で円形と記載されるマーカは、必ずしも2次元の円ではなく、円で囲まれた球体の表面の一部(例えば、ボールの外表面や内側の球体面)に対応する3次元の形状であることに留意されたい。
【0027】
同様に、矩形と記載されるマーカは、2次元の矩形であってもよいが、球体の中心に頂点を有する角錐の球体との交点で囲まれた球体の一部として形成された3次元形状であってもよい。当業者であれば理解できるだろうが、これはボールの内部の構造に依存する場合がある。球状の内層を有するボールは、これらの球状の層の一部にマーカが形成されていてもよく、一方、単一のコア又は単一の部材を含むコアを有するボールは、円形又は他の形状の平面マーカがその中に埋め込まれていてもよい。以下では、マーカの正確な形状は、ボールの表面に配置されるパターンほど重要ではないので、これらのマーキングは、それらが近似する2次元形状と呼ばれることがある。円形/矩形のマーカの典型的な数は、5~20個である。ボールの外表面へのマーカの投影は、概して、ボールの表面積の2~25%をカバーする。これにより、マーカは、受信したドップラー信号にスピンによる変調信号の望ましい増幅を生成させる。位置決め制約を満たすように、任意の数のマーカを使用することができる。更に、すべての円形マーカを含む実施形態、又はすべての矩形マーカを含む実施形態が記載されているが、当業者であれば、ボールには様々な形状のマーカが混在している可能性があることを理解できるだろう。
【0028】
マーカの位置決め要件は、ボールの周りのすべての大円から最も近いマーカの1つまでの距離が、あらかじめ定義された最小距離d以下でなければならないというものである。当業者は、dは通常正の値であるが、負の値もあり得ることに留意されたい。dが負である場合、ボールの周りの任意の大円は、大円がマーカと交差する大円に垂直な方向に、非マーカ領域までの距離dで、少なくとも1つのマーカを通過する。大円(Great Circle:GC)とは、球の中心点を通る平面と球の外側、つまり球の赤道との交点で定義される道である。
【0029】
球体は、無限の数の大円の向きを有し、それぞれが球体と同じ直径を持っている。従って、ボールがどのような軸で回転していても、ボールの大円の1つが、ボールが回転している平面を定義することになる。本発明によるボールは、すべての大円の定義された最小距離内に少なくとも1つのマーカがあることを確実にすることで、ボールの回転軸の向きに関わらず、少なくとも1つのマーカによって生成された変動信号が、反射されたレーダ信号の中で検出されることが確実になる。従って、位置決め要件によれば、マーカは、少なくとも1つのマーカの距離d以内にない大円がボールに投影されないように、位置決めされなければならない。いくつかの実施形態では、距離dはゼロ又は負の値であってもよく、即ち、あらゆる可能な大円が少なくとも1つのマーカに当たることになる。dがゼロ又は負の値であると、一般に、ボールのスピンによるドップラー信号の変調が強くなる。これは、ボールの飛行時間が非常に短い場合、例えば、シミュレータ環境でネットやスクリーンに打ち込まれたゴルフボールのような場合に有利である。ただし、距離dは、ボールによって異なる場合がある。
【0030】
典型的には、距離dはボールの直径よりもかなり小さく、例えばボールの直径の0~1/5ほどである。別の考え方をすれば、球の外側を一周する幅dの帯で、その中心に大円を有するもの(即ち、帯を二分するもの)は、ボール上の大円の配置にかかわらず、少なくとも1つのマーカに接していなければならない。以下では、この帯を幅dの大円と呼ぶ。距離dは、大円から最も近いマーカの最も近い部分までの最大距離と定義する。
【0031】
図1aは、マーカ102が位置決め要件を満たす大円GCの周りに広がる幅2dの帯104を有する第1のマークされたボール100を示しており、すなわち、ボールのどの大円GCも少なくとも1つのマーカ102の距離d以内を通過しないように、マーカ102がボール100上に配置されている。この図示の例では、マークされたボール100は、その球面に6つのマーカ102を有している。
図1aに示されていないボール100の反対側に、他のマーカ102を使用してもよい。上述したように、マーカ102のそれぞれは、ボールの残りの部分とは異なる反射率を有する。
【0032】
当業者であれば理解できるように、これは、ボール自体の反射率よりも高い(レーダ信号に対する)反射率を有する材料でマーカを形成することによって、又は、この高反射性材料を含まない、又は、この高反射性材料を除去した島として形成されたマーカで高反射材料の層を形成することによって達成され得る。図示されているように、大円GCを囲む帯104は、少なくとも1つのマーカ102に接しており、ボール100の幾何学的形状とマーカ102の配置及びサイズの分析から推測できるように、これは、ボール100に描かれ得る任意の大円に当てはまる。この条件を確実に満たすために、マーカ102は必要である。
【0033】
図1bは、位置決めの条件を満たさない幅2dの大円GCが描かれたその上に、それを囲む帯104がある第2のマークされたボール110の図である。
図1bでは、4つのマーカ102が第2のボール110の球面上に示されており、他のマーカ102は、
図1bに示されていないボール110の反対側に含まれていてもよいが、何れも帯104に接さないように配置されている。図示されているように、GCを囲むバンド104は、マーカ102の何れにも接していない。この図示の例では、また、バンド104はボール110の反対側のマーカ102の何れにも接していないと仮定している。このように、ボール110に対するマーカ位置決めは、位置決め要件を満たしておらず、スピンパラメータを決定するための有用なデータを一貫して生成するためには受け入れがたい。例えば、ボール110は、ボール110の最大スピン領域にマーカ102が存在しないような方法で回転する可能性がある。
【0034】
任意の追加マーカ位置決め制約は、複数のマーカが大円を囲む幅2dの帯に接する場合、本実施形態におけるこのマーカ群は、mの許容範囲内でこの大円の周りに対称的に配置されていない可能性があり、又は、結果として生じる変調により、互いに整数倍である選択肢の間でスピンレートを決定することが困難になる可能性、すなわち同じデータが1000、2000、又は3000rpmなどを表す可能性がある。つまり、幅2dの帯に2つ以上のマーカが接している大円の場合、これらのマーカは大円について互いに等角度に離れていてはならない。大円の帯に2つのマーカが接している場合、幅2dの帯に接している第1のマーカ102は、帯に接している第2のマーカ102’と径方向に対向する位置DPの最も近い部分から、少なくとも距離mだけ離れていなければならない。
【0035】
3つのマーカが大円の帯に接している場合は、マーカは大円上のマーカの完全な120度分布から距離mだけ離れている必要があり、大円の帯に接しているマーカの数が3つ以上の場合にも同様の制約が適用される。距離mはボールによって異なり得るが、典型的にはこの距離mはボールの直径よりもかなり小さい(例えば、典型的にはボールの直径の1/10以下)。mの値がゼロに近づくと、マーカ102と、第2のマーカ102’の投影DPとの間の距離は、マーカ102が投影DPに隣接するまで減少する。
【0036】
図1cは、第3のマークされたボール120をボールの回転軸に沿って見た図である(即ち、ボール120の最大回転速度の経路を定義する大円GCを含むようなボール120の断面が示されている)。ボール120は、大円GCを囲む幅2dの帯に接する複数のマーカ102,102’を有しており、これは後述する追加的な位置決め制約を満たすものである。この図の例では、2つのマーカ102、102’が示されており、それぞれが対応する径方向に(大円GCに対して)反対側の投影(それぞれDP、DP’)を有している。マーカ102と、マーカ102’の投影DP’との間の距離124は、距離mよりも大きいものとして示されている。当業者は、マーカ102’とマーカ102の投影DPとの間の距離が、距離124に等しいことが幾何学的に規定されていることを認識するであろう。従って、この特定の大円104に対するマーカの位置決めは、上述した追加位置決め制約を満たす。
【0037】
図1dは、
図1cと同様に、ボール130の回転軸に沿って見た第4のマークされたボール130を示す。ボール130は、大円GCを囲む幅2dの帯に接する第1のマーカ102と、同じくGCを囲む帯に接触する第2のマーカ102’とを含む。しかし、
図1dに見られるように、マーカ102’の投影DP’は、マーカ102からmよりも小さい距離134だけ離れており、この図の例では、マーカ102とDP’は実際に重なっている。言い換えれば、マーカ102はDP’から明らかにmより小さい負の距離だけ離れている。このように、マーカ102と投影132との間の距離の取り方は、追加位置決め制約に違反している。言い換えれば、マーカ102は、大円104の周りに対称的に配されすぎている。マーカが大円の周りに対称的に配置されすぎると、受信したドップラー信号は、例えば米国特許第8845442号に記載されている方法を適用した場合に、実際のスピンレートよりも正確にN倍高いスピンレートが計算されるリスクを高める特性を有する可能性があり、ここでNは大円に接しているマーカの数である。任意の追加位置決め制約は、このリスクを排除する。しかし、当業者であれば理解できるように、計算されたスピンレートが実際には正しいスピンレートのN倍であるかどうかを検出し、このエラーを修正するための適切なステップを取るために、他の方法が使用されてもよい。
【0038】
上述したように、2つの要件を満たすために、様々なマーカ配置を使用することができる。典型的には、不均一な数のマーカを使用することができ、各マーカは隣接するマーカから最小距離だけ離れており、球上の任意の他のマーカに対して非対称である。以下で更に詳しく記載するが、ボールのマーキングは、ボールの表面にあってもよいし、表面より下のボールの層にあってもよい。マーキングがボールの外表面の下にある場合、外表面に使用されるカバー材料は、レーダによって使用される放射線(例えば、マイクロ波放射線)に対して実質的に半透明であることが好ましい。マーキングがボールの外表面の下にある場合、外表面に使用されるカバー材料は、レーダによって用いられる放射線(例えば、マイクロ波放射線)に対して実質的に半透明であることが好ましく、これにより、この放射線はボールを貫通してマーカに到達し、そこから反射される(又は、同じ内部層、ボールの表面上、又は別の層に埋め込まれているかどうかにかかわらず、ボールの他の部分から異なる形で反射される)。ゴルフボールのマーキングが外表面にある場合、マーキングは、使用中に剥がれたり、及び/又はゴルフシミュレーターの打席スクリーンを汚さないように、高い耐久性を持つことが望ましい。また、ゴルフボールの焼印に見られるような、通常の摩耗も想定される。
【0039】
上述したように、マーカは、ボールの他の領域とは異なる電気反射率(より正確には、レーダーシステムによって生成及び収集された放射線に対する反射率)を有していなければならず、ボールの表面の周りに配置された異なるポイントにコントラスト領域を形成する。例えば、マーカは、使用されているレーダの周波数領域において導電性であってもよく、従ってスピンしているボールに対する反射されたレーダ信号の変調信号を増幅することができる。ボールの飛行時間が非常に短い場合でも、スピン変調信号を用いてボールのスピン率及びスピン軸を決定することができる。
【0040】
例示的な球形ボールは、ボールの最外層(即ち、外面)以外の層にマーキングされてもよい。球状ボールの層とは、ボールの中心を中心とした、ボール上又はボール内の球状の面を指す。これらの層は、実質的に単一のコアを抽象的に幾何分割したものであってもよいし、ボールを形成するために互いに重なり合った別々の材料の層によって定義されてもよい。
【0041】
実施形態によると、ボールは、典型的なボール材料(例えば、ゴルフボール用のプラスチック又はゴムなど)で構成された1つ又は複数の第1領域と、マイクロ波反射係数Γ2を有する材料の複数の第2領域(マーカ)とを有する。当業者であれば、マイクロ波の反射係数は、マイクロ波が通過する空気とボールのある所定の領域の特定の材料との間の波動インピーダンスの差を表していることが理解できるだろう。ボールからレーダに反射される正確な波動の形状を決定する事象は複雑であるが、スピン特性を正確に測定するためには、測定可能な変調を発生させるために、マイクロ波反射率の値が異なる材料を選択することが最も効果的であることを理解すれば十分である。第2領域は、一層から多層のボールのどの層にあってもよい。ボールは更に、第2領域と同じ層に、Γ2とは異なるマイクロ波反射係数Γ1を有する材料の1つ以上の第1領域を有する。上述したように、第2領域は、円形、矩形、又は囲まれた形状を有する他の形状等、任意の形状のマーカであってもよい。また、ある所定のボールの第2領域は、それぞれ同じ層に配置されていてもよいし、異なる層に配置されていてもよい。あるいは、第2領域は、典型的なボールの材料、例えば、ゴルフボールの場合はプラスチックやゴムで構成されていてもよいし、一方、この層の第1領域は反射性材料で形成されていてもよい。
【0042】
別の実施形態によれば、ボールは、上述したように第1領域及び第2領域を有しており、第1領域及び第2領域の両方が、上述したように異なるマイクロ波反射特性を有する非導電性の材料で形成されているという追加の制限がある。更に別の実施形態によれば、第2領域のみが非導電性の材料で形成され、第1領域は導電性の材料で形成されている。第1領域は、材料の任意の混合物である可能性もある。典型的には、スポーツボールでは、ボール構造の材料は、ボールのどの球状の層も実質的に同じであるが、これは必須要件ではない。重要なのは、第2領域のマイクロ波反射率が第1領域のマイクロ波反射率とは明らかに異なることであり、それによって受信したドップラー信号のスピンにより生成される変調が増幅される。
【0043】
第2領域は、上述のマーカを形成していると考えられ得る。マーカは、ボールの外表面へのマーカの投影が、上述の第1位置決め制限及び、任意で、第2位置決め制限に従って外表面上に配置される限り、ボール内の様々な深さに配置することができる。マーカは、任意の近似した形状を有し、同一である必要はない。すべてのマーカを合わせた総面積は、概して、ボールの表面積の1~50%をカバーする。マーカが最外層よりも下にあるボールの層に配置されると、その領域はボールの中心から外面に投影され、この投影されたマーカ領域は、第1マーカ位置決め要件が満たされているかどうかの判定に使用される。
【0044】
ある媒体から別の媒体への移行時のマイクロ波反射係数Γは、誘電率ε、透磁率μ、導電率σの何れかのパラメータに対する媒体間の相対的相違に依存する。これら3つのパラメータのうち1つ以上が異なる場合、マイクロ波は、2つの媒体間の境界領域で反射されるその電磁場の一部を有することになる。
【0045】
2つの媒体間のマイクロ波反射係数Γは以下の式で表される:Γ=(Z1-Z2)/(Z1+Z2)。ここでZ1は媒体1の波動インピーダンス、Z2は媒体2の波動インピーダンスである。反射係数は複素数であってもよく、即ち、大きさ|Γ|と位相(Γ)を有する数とすることができる。
【0046】
第2領域には、異なる材料を用いてもよい。しかし、アルミニウム、銅、銀等の導電性の材料は、良好な結果をもたらす。特に、銀を含むインクは、第2領域に特に適していることが示されている。
【0047】
別の実施形態では、上述の位置決め要件のうち1つだけを満たすよう、球状のボールにマーカを付ける。この実施形態では、マーカの位置決め要件は、球状のボールの周りの任意の大円が、マーカのうち最も近いものから最大で所定の距離dだけ離れていることであり、距離dは最大でボールの直径の1/5である。
【0048】
上記と同様に、マーキングは、典型的な多層のボールのいかなる層にも適用することができる。ゴルフボールの場合、ボールのマーキングはカバーの上に施すこともできるが、より耐久性のあるマーキングのためには、ボールの内側の1つ以上の層上にマーキングを施すことが好ましい。ボール内でマーキングが深ければ深いところにあるほど、つまりマーキングをされている層が低ければ低いほど、レーダが「透視する」層が多くなることに留意されたい。マイクロ波放射線がマーカに到達するために貫通しなければならないボールの素材が多ければ多いほど、信号はより減衰し、有用なデータを提供するためのマーキングの効果は低くなる。典型的には、マークを外部コーティングの下に配置し、ボールのマントル(又はコア)の上にあるカバーの上に配置することで、妥協することができる。あるいは、マーキングをカバーの直下に配置してもよい。上記と同様に、マーキングは、ボールの異なる層で適用されてもよい。
【0049】
位置決めの要件を満たすために、多くの異なるパターンのボールマーキングが行われてもよい。しかし、製造上の制限により、実現可能なパターンが制限される場合がある。例えば、生産設備に基づいて、ボールのマーキングが除外される領域があるかもしれない。上記と同様に、マーキングパターンは、円形状のマーキングを含んでいてもよい。しかし、マーキングの形状は、矩形、五角形、六角形、星形等、どのような形状でも実現可能である。生産設定によっては、第2領域は、例えば、導電性のインクで第2領域に刻印することによって適用される。この作業をコスト効率よく行うためには、ボールに一度だけ刻印する必要があり得る。加工機械の構造によっては、この1回の刻印で、主にボールの片側の半球にインクの塗布を限定し、ボールのこの半分だけ、あるいはわずかに小さい領域に第2領域へ含むことができるよう残してもよい。このような製造設定では、インクを複数回塗布する場合に必要となる余分な硬化時間(1回目の塗布と2回目の塗布の間の硬化時間等)や、ボールを再配置して2回目のインク塗布を行うのに必要な時間が不要になる。
【0050】
実施形態では、マーキングパターンは、野球の縫い目のように、ボールの周りを走る縫い目と同じであってもよいし、縫い目と同じ位置になくても、そのような縫い目に類似した経路をたどってもよい。位置決め要件を満たすために、マーキングパターンは縫い目全体を覆う必要はなく、即ち、破線のマーキングパターンであってもよい。当業者であれば理解できるように、野球ボールの縫い目は、一般的に、2つのカバーピースが互いに結合される連続的な曲線を形成している。2つのカバーピースのそれぞれは、一般的に、中央の狭い部分によって互いに結合された2つの丸い端部を有する平面形状として形成される。従って、これらの2つのカバーピースが球状のコアに張られると、ボールの周りのすべての大円に交差する連続的な曲線経路(
図3の302参照)に沿って出会うことになる。
【0051】
他のマーキングパターンは、テニスボール、サッカーボール、バスケットボール、バレーボール、又はその他の任意のスポーツボールに見られる縫い目パターンに類似していてもよく、特にこれらの縫い目タイプのパターンは、ボールの周りのすべての大円に交差する。当業者であれば、何れの縫い目形状マーキング方式も、野球ボールやその他の縫い目のあるボールにのみ適用されるものではなく、縫い目があるかどうかにかかわらず、ゴルフボール等のあらゆるスポーツボールに適用され得ることを理解するであろう。また、これらの縫い目状マーキングパターンは、位置決め要件を満たした状態で、破線であってもよい。他の実施形態では、マーキングは、例えばボールの視覚的ブランディングのために使用されるボール上のテキストパターンと併存してもよい。一部のボールでは、これらの視覚的なテキストパターンは、通常、コーティングの下のボールのカバー上に適用されている。上述したように、マーキングは、可視層と非可視層を含む任意の層に適用することができる。マーキングを破線にすることは、マーキングに必要な材料の量を減らすための1つの方法であり、また、第2領域に対する接着性を悪化させるリスクを減少させることができる。
【0052】
マーキングが縫い目状に配置されている場合、追加要件が課せられる。具体的には、縫い目状のマーキングの幅は、レーダで使用される放射線の波長の1/20~1/2であることが求められる。例えば、直径42.7mmのゴルフボールと10-24GHz(波長10-30mmに相当)のレーダを使用する場合、マーキングに適切な幅は約1-10mmである。しかし、異なるマイクロ波周波数スペクトル、例えば1-125GHzのどこかで動作する他のレーダを使用してもよい。更に、レーダ信号の波長が同じであっても、より大きなボールにはより大きなマーカを使用することが望ましい場合もある。
【0053】
実現可能な縫い目パターンのいくつかの例が、以下の2-3の図に示される。そのうちの1つは、ボールの視覚的ブランディングを意図した任意のテキストパターンである。テキストは、異なる反射率を有するマーク領域である必要はないが、あってもよい。視覚的なテキストパターンは、通常、コーティングの下のカバーに適用されるが、ボールマーキングのための縫い目パターンは、ボール上の可視又は非可視の任意の層に適用することができる。
【0054】
図2a-bは、本開示の一実施形態による第1のマーキングパターンを有するマークされたボール200を示す。ボール200は、ボール上の4つのマーキングギャップ204を結ぶように配置された6つの縞(線)202でマークされている。ボール200は、すべてのマーキング202を表せるように透明に示されている。図示されているように、縞202は完全には接続されておらず、縞202が交差するであろう点を囲むマーキングギャップ204を残している。他の実施形態では、縞
202は、完全な直線でなくてもよく、また、等しい幅でなくてもよい。例えば、縞
202は、必要に応じて、先細りであってもよい。概して、マーキングは、第1領域及び第2領域の両方が、ボールのスピンによる顕著なレーダ変調を生成するように、あらゆる大円に対してボールの表面上に配置する必要がある。
【0055】
これは、レーダに対するボールとスピン軸の向きに関わらず、スピン変調を発生させるために、大円に接する第2領域の各マーカの長さが波長に比べて十分であり、マーカ間の第1領域の面積の長さも波長に比べて十分であることを確実にすることで達成できる。波長に比べて十分な長さとは、典型的には波長の1/20よりも長いことを意味するが、より好ましくは第2領域に対する波長の0.2倍の長さに近いことが望ましい。第2領域の適用におけるコストを節約するために、第2領域は、任意の大円に沿った累積距離の最大25%であることが望ましい。これは、例えばボールの周りに赤道全体のように第2領域が形成されていると、この赤道と一致する大円は、大円に沿って100%の第2領域を有することになり、その結果、この特定のスピン軸では非常に弱いスピン変調しか生成されないため、望ましくないということである。
【0056】
図3a-bは、本開示の一実施形態による第2のマーキングパターンを有するマークされたボール300を示す。ボール300は、ボール300の残りの部分とは異なる反射特性を有する材料の野球の縫い目型パターン302でマークされている。縫い目は、連続的である必要はなく、破線であってもよい。また、ボール300には、企業がボールにブランドをマーキングするためのブランド領域304が含まれる。上述したように、ブランド領域は、必要に応じて、反射マーキングにも使用されてもよい。
【0057】
図4は、例示的な実施形態による、スポーツボールのスピン軸を決定するためのシステム400を示す。システム400は、スポーツボールがその飛行の少なくとも一部の間に通過することになるターゲット領域に向けられたレーダ装置402を含む。例示的なシステム400では、スポーツボールは、上述したスポーツボール200である。しかしながら、スポーツボール200は、上述したマーカ位置決め要件に従ってマークされた任意のスポーツボールを表してもよい。レーダ402は、本実施形態では、送信機404と、少なくとも3つの受信機406とを備える。受信機406は、本実施形態では、受信機406A及び406Bが互いに垂直方向に整列し、受信機
406B及び406Cが互いに水平方向に整列するように配置される。
【0058】
しかしながら、レーダ装置402が、受信機アンテナのうちの最低3つが互いに同一直線上にない3つ以上の受信機アンテナを含む限り、受信機406は、垂直又は水平に整列する必要がないことは、当業者によって理解されるであろう。当業者には、受信機対が互いに直交している必要がないことが理解されるであろう。当業者には理解されるであろうが、分離された受信機406A、406B、406Cの幾何学的配置は、1つ以上の時点でのボールのスピン軸(ボールが回転している軸)の向きを導出するための、スポーツボールから受信機406A、406B、406Cに反射されたレーダ信号の分析を可能にする。
【0059】
レーダ402は、例えば、Xバンド周波数(10GHz)のマイクロ波を、最大500ミリワットEIRP(等価等方性放射電力:Equivalent Isotropic Radiated Power)のパワーで放射する連続波ドップラーレーダであってもよく、従って、短距離国際放射体に関するFCC(Federal Communication Commission)及びCE規制に準拠している。しかし、他の管轄区では、地域の規制に準拠して他の電力レベルや周波数を使用してもよい。例示的な実施形態では、マイクロ波は、例えば、5-125GHzの間のより高い周波数で放出される。より低い物体速度でより正確な測定を行うために、20GHz以上の周波数を使用してもよい。位相変調又は周波数変調されたCW(Continuous Wave)レーダ、多周波CWレーダ、又は単一周波数CWレーダを含む、任意のタイプの連続波(CW)ドップラーレーダを使用してもよい。
【0060】
ライダー(LIDAR:Light Detection and Ranging)等の他の追跡装置は、可視又は非可視周波数領域の何れかの放射を使用してもよいことは理解されるであろう。現在のパルスレーダシステムは、レーダ装置の近くにある物体を追跡する能力に限界がある。しかし、これらのパルスレーダシステムから対象物が離れなければならない距離は、時間の経過とともに減少しており、今後も減少すると予想される。従って、これらのタイプのレーダは、すぐにこれらの操作に有効になる可能性があり、以下に説明する本発明のシステムでの使用が企図される。本願を通して、物体の追跡は、ドップラー周波数スペクトルの使用に基づいて説明されている。理解されるように、これらのドップラー周波数スペクトルは、使用される任意のタイプのレーダ又はライダーからのドップラースペクトルを指す。
【0061】
システム400は、当業者に理解されるように、例えば有線又は無線接続を介してレーダ装置402(又は複数のレーダ装置)と通信する1つ又は複数のプロセッサを含むことができる処理ユニット408を更に含む。一実施形態では、処理ユニット408は、レーダ装置402に関連するコンピュータを含む。
【0062】
図4の実施形態で、システム400は、所定の発射位置からターゲット領域内又はターゲット領域に向けて発射されたボール、例えばボール200のスピン軸を決定するためのシステムであり、前記ターゲット領域は、レーダ402の視野内にある。当業者であれば理解できるように、ターゲットエリアは、特別に作成されたエリアである必要はなく、発射位置は、レーダ402の視野内又は外の任意の位置であってもよい。ボール200は、ターゲットエリアに発射されると、スピン軸を中心にスピン方向に回転しながら、飛行経路に沿って移動する。ゴルフボール200のスピンは、ゴルフクラブでゴルフボール200を打つことによって生じるが、任意の打撃器具(例えば、野球のバットなど)で打たれたか、投げられたか、蹴られたか、ヘディングされたか、叩かれたかにかかわらず、任意のスポーツボールに同じ分析を適用することができることを理解するだろう。
【0063】
レーダ402は、ゴルフボール200が発射場所から発射されたとき(発射場所がレーダ402の視野内にある場合)、又はゴルフボール200がレーダ402の視野内に入り、飛行経路に沿って移動したときに、ゴルフボール200を追跡する。ゴルフボール200が移動すると、レーダ402によって生成されたレーダ信号は、ゴルフボール200によって反射され、その後、レーダ受信機406によって受信される。その後、スピンパラメータは、送信された信号に対する受信された信号のドップラーシフトに基づいて決定されてもよい。スピンパラメータを決定するための例示的な計算は、米国特許公開第2019/0282881号に記載されており、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
図5は、回転するボールのスピン軸を決定するための例示的な方法500を示す。この実施形態では、平面に取り付けられた3つの受信機アンテナ406A、406B、406Cを含むマルチ受信機レーダ環境が利用される。任意で、決定された位置の精度を高め、3次元(3D)スピン軸を導出するために、追加の受信アンテナを使用してもよい。回転するボールには、上述したマーカ位置決め要件に従って、反射材でマークが付けられる。
【0065】
505において、レーダ402は、ターゲット領域に送信され、回転するゴルフボールからの反射後に受信機406A、406B、406Cによって受信される信号を作り、ドップラー周波数スペクトルを示す対応する信号を生成する。ボールは、静止していても、レーダ402に対して任意の方向に動いていてもよいことが理解されるであろう。ボールの回転運動により、受信されたドップラー信号は、レーダ402に対するボールの並進運動に関連するドップラーシフトの値付近で幅が広がる。即ち、反射信号は、ボールが回転しながらレーダ402に対して相対的に動いているときの、ボールのさまざまな部分の相対的な速度の範囲を反映した、さまざまな周波数に広がることになる。ボールのマークされた領域、即ち、ボールの残りの部分とは異なる反射率を有するボールの領域からの反射信号は、強化された反射率の領域とボール200の残りの部分との間のコントラストが増加するために増幅される。
【0066】
510では、反射信号から3次元のスピンパラメータが決定される。スピンパラメータは、少なくともスピンレートと、回転するボールのスピン軸の向きとを含む。
【0067】
当業者であれば、その発明的概念を逸脱することなく、上述した実施形態に変更を加えることができることを理解できるだろう。更に、ある実施形態に関連する構造的特徴及び方法は、他の実施形態に組み込むことができることも理解されよう。従って、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、むしろ変更も添付の請求項によって定義される本発明の範囲内に含まれることが理解される。