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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ゲートドライバ
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/06 20060101AFI20250109BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20250109BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20250109BHJP
   H03K 19/094 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
H03K17/06 063
H03K17/687 F
H02M3/155
H03K19/094 210
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022501616
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2020034942
(87)【国際公開番号】W WO2021166303
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2020025856
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今田 壮彦
【審査官】間宮 嘉誉
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-259548(JP,A)
【文献】特開2018-133916(JP,A)
【文献】特開2019-198134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/06
H03K 17/687
H02M 3/155
H03K 19/094
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧の印加端とスイッチ電圧の印加端との間に接続された上側のNチャネル型のトランジスタと、前記スイッチ電圧の印加端と接地端との間に接続された下側の整流素子からなるハーフブリッジ回路のうち、前記上側のNチャネル型のトランジスタを駆動するゲートドライバであって、
前記スイッチ電圧よりもブートキャパシタの両端間電圧だけ高いブート電圧の印加端と前記スイッチ電圧の印加端との間に接続されたキャパシタ回路と、
前記トランジスタのオン遷移時に前記入力電圧で前記トランジスタの入力ゲート容量をプリチャージしてから前記ブート電圧で前記入力ゲート容量をチャージし、前記トランジスタのオン遷移後に前記キャパシタ回路の容量値を引き下げるタイミング制御回路と、
を有し、
前記キャパシタ回路の容量値を引き下げることにより、前記ブート電圧を持ち上げる、ゲートドライバ。
【請求項2】
前記入力電圧の印加端と前記トランジスタのゲートとの間に接続された第1内部スイッチと、前記トランジスタのゲートと前記スイッチ電圧の印加端との間に接続された第2内部スイッチと、前記ブート電圧の印加端と前記トランジスタのゲートとの間に接続された第3内部スイッチと、をさらに有し、
前記タイミング制御回路は、前記第1内部スイッチ、前記第2内部スイッチ及び前記第3内部スイッチの切替タイミングを制御する、請求項1に記載のゲートドライバ。
【請求項3】
前記キャパシタ回路は、第1端が前記ブート電圧の印加端に接続された第1キャパシタと、第1端が前記スイッチ電圧の印加端に接続された第2キャパシタと、前記第1キャパシタの第2端と前記スイッチ電圧の印加端との間に接続された第4内部スイッチと、前記第1キャパシタの第2端と前記第2キャパシタの第2端との間に接続された第5内部スイッチと、前記ブート電圧の印加端と前記第2キャパシタの第2端との間に接続された第6内部スイッチと、を含み、
前記タイミング制御回路は、前記第4内部スイッチ、前記第5内部スイッチ及び前記第6内部スイッチの切替タイミングを制御する、請求項2に記載のゲートドライバ。
【請求項4】
前記タイミング制御回路は、
前記第1内部スイッチ、前記第3内部スイッチ及び前記第5内部スイッチをオフして、前記第2内部スイッチ、前記第4内部スイッチ及び前記第6内部スイッチをオンする第1駆動フェイズと、
前記第2内部スイッチ、前記第3内部スイッチ及び前記第5内部スイッチをオフして、前記第1内部スイッチ、前記第4内部スイッチ及び前記第6内部スイッチをオンする第2駆動フェイズと、
前記第1内部スイッチ、前記第2内部スイッチ及び前記第5内部スイッチをオフして、前記第3内部スイッチ、前記第4内部スイッチ及び前記第6内部スイッチをオンする第3駆動フェイズと、
前記第1内部スイッチ、前記第2内部スイッチ、前記第4内部スイッチ及び前記第6内部スイッチをオフして、前記第3内部スイッチ及び前記第5内部スイッチをオンする第4駆動フェイズと、
を順次切り替える、請求項3に記載のゲートドライバ。
【請求項5】
前記第1内部スイッチは、
ドレインが前記入力電圧の印加端に接続されたNDMOSFETと、
ソースが前記NDMOSFETのソースに接続されてドレインが前記トランジスタのゲートに接続されたNMOSFETと、
を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載のゲートドライバ。
【請求項6】
前記タイミング制御回路は、前記NDMOSFETをオンする前に前記NMOSFETをオンし、前記第3内部スイッチをオンする前に前記NMOSFETをオフする、請求項5に記載のゲートドライバ。
【請求項7】
前記第3内部スイッチは、PDMOSFETである、請求項2~6のいずれか一項に記載のゲートドライバ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のゲートドライバを集積化して成る、半導体装置。
【請求項9】
前記ブート電圧の印加端と前記スイッチ電圧の印加端との間に接続されたブートキャパシタをさらに集積化して成る、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記入力電圧の印加端と前記スイッチ電圧の印加端との間に接続された前記上側のNチャネル型のトランジスタをさらに集積化して成る、請求項8又は9に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、ゲートドライバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブートストラップ回路からブート電圧の供給を受けて、Nチャネル型のトランジスタ(例えば、MOSFET[metal oxide semiconductor field effect transistor]やIGBT[insulated gate bipolar transistor])を駆動するゲートドライバが広く一般に用いられている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-304527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ブートキャパシタが小容量である場合には、ブート電圧を所望値に維持することが難しくなり、トランジスタのゲート駆動に支障を生じるおそれがあった。
【0005】
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者により見出された上記課題に鑑み、ブートキャパシタが小容量であってもトランジスタのゲート駆動に支障を生じにくいゲートドライバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例えば、本明細書中に開示されているゲートドライバは、入力電圧の印加端とスイッチ電圧の印加端との間に接続されたNチャネル型のトランジスタを駆動するゲートドライバであって、前記スイッチ電圧よりもブートキャパシタの両端間電圧だけ高いブート電圧の印加端と前記スイッチ電圧の印加端との間に接続されたキャパシタ回路と、前記トランジスタのオン遷移時に前記入力電圧で前記トランジスタの入力ゲート容量をプリチャージしてから前記ブート電圧で前記入力ゲート容量をチャージし、前記トランジスタのオン遷移後に前記キャパシタ回路の容量値を引き下げるタイミング制御回路と、を有する構成(第1の構成)とされている。
【0007】
なお、上記第1の構成から成るゲートドライバは、前記入力電圧の印加端と前記トランジスタのゲートとの間に接続された第1内部スイッチと、前記トランジスタのゲートと前記スイッチ電圧の印加端との間に接続された第2内部スイッチと、前記ブート電圧の印加端と前記トランジスタのゲートとの間に接続された第3内部スイッチと、をさらに有し、前記タイミング制御回路は、前記第1内部スイッチ、前記第2内部スイッチ及び前記第3内部スイッチの切替タイミングを制御する構成(第2の構成)にしてもよい。
【0008】
また、上記第2の構成から成るゲートドライバにおいて、前記キャパシタ回路は、第1端が前記ブート電圧の印加端に接続された第1キャパシタと、第1端が前記スイッチ電圧の印加端に接続された第2キャパシタと、前記第1キャパシタの第2端と前記スイッチ電圧の印加端との間に接続された第4内部スイッチと、前記第1キャパシタの第2端と前記第2キャパシタの第2端との間に接続された第5内部スイッチと、前記ブート電圧の印加端と前記第2キャパシタの第2端との間に接続された第6内部スイッチと、を含み、前記タイミング制御回路は、前記第4内部スイッチ、前記第5内部スイッチ及び前記第6内部スイッチの切替タイミングを制御する構成(第3の構成)にしてもよい。
【0009】
また、上記第3の構成から成るゲートドライバにおいて、前記タイミング制御回路は、前記第1内部スイッチ、前記第3内部スイッチ及び前記第5内部スイッチをオフして、前記第2内部スイッチ、前記第4内部スイッチ及び前記第6内部スイッチをオンする第1駆動フェイズと、前記第2内部スイッチ、前記第3内部スイッチ及び前記第5内部スイッチをオフして、前記第1内部スイッチ、前記第4内部スイッチ及び前記第6内部スイッチをオンする第2駆動フェイズと、前記第1内部スイッチ、前記第2内部スイッチ及び前記第5内部スイッチをオフして、前記第3内部スイッチ、前記第4内部スイッチ及び前記第6内部スイッチをオンする第3駆動フェイズと、前記第1内部スイッチ、前記第2内部スイッチ、前記第4内部スイッチ及び前記第6内部スイッチをオフして、前記第3内部スイッチ及び前記第5内部スイッチをオンする第4駆動フェイズと、を順次切り替える構成(第4の構成)にしてもよい。
【0010】
また、上記第2~第4いずれかの構成から成るゲートドライバにおいて、前記第1内部スイッチは、ドレインが前記入力電圧の印加端に接続されたNDMOSFETと、ソースが前記NDMOSFETのソースに接続されてドレインが前記トランジスタのゲートに接続されたNMOSFETと、を含む、構成(第5の構成)にしてもよい。
【0011】
また、上記第5の構成から成るゲートドライバにおいて、前記タイミング制御回路は、前記NDMOSFETをオンする前に前記NMOSFETをオンし、前記第3内部スイッチをオンする前に前記NMOSFETをオフする構成(第6の構成)にしてもよい。
【0012】
また、上記第2~第6いずれかの構成から成るゲートドライバにおいて、前記第3内部スイッチは、PDMOSFETである構成(第7の構成)にしてもよい。
【0013】
また、例えば、本明細書中に開示されている半導体装置は、上記第1~第7いずれかの構成から成るゲートドライバを集積化して成る構成(第8の構成)にしてもよい。
【0014】
また、上記第8の構成から成る半導体装置は、前記ブート電圧の印加端と前記スイッチ電圧の印加端との間に接続されたブートキャパシタをさらに集積化して成る構成(第9の構成)にしてもよい。
【0015】
また、上記第8又は第9の構成から成る半導体装置は、前記入力電圧の印加端と前記スイッチ電圧の印加端との間に接続されたNチャネル型のトランジスタをさらに集積化して成る構成(第10の構成)にしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本明細書中に開示されている発明によれば、ブートキャパシタが小容量であってもトランジスタのゲート駆動に支障を生じにくいゲートドライバを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】スイッチング電源の全体構成を示す図
図2】上側ドライバの一構成例を示す図
図3】キャパシタ回路の一構成例を示す図
図4】駆動フェイズの一例を示す図
図5】駆動フェイズ毎のスイッチ切替状態を示す図
図6】スイッチ電圧及びブート電圧それぞれの立ち上がり挙動を示す図
図7】内部スイッチ及びタイミング制御回路の一構成例を示す図
図8】NMOSFETの縦断面を示す図
図9】タイミング制御回路の一動作例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<スイッチング電源>
図1は、スイッチング電源の全体構成を示す図である。本構成例のスイッチング電源1は、入力電圧Viを降圧して所望の出力電圧Voを生成する降圧型DC/DCコンバータであり、半導体装置100と、これに外付けされるディスクリート部品(本図ではインダクタL及びキャパシタCを例示)と、を有する。
【0019】
半導体装置100は、スイッチング電源1の動作を統括的に制御する主体(いわゆる電源制御IC)であり、装置外部との電気的接続を確立する手段として、複数本の外部端子(本図ではPVINピン、SWピン、及び、GNDピンを例示)を有する。
【0020】
PVINピン(電源端子)は、入力電圧Viの印加端に接続されている。SWピン(スイッチ端子)は、インダクタLの第1端に接続されている。インダクタLの第2端とキャパシタCの第1端は、出力電圧Voの印加端に接続されている。GNDピン(接地端子)とキャパシタCの第2端は、接地端に接続されている。このように接続されたインダクタL及びキャパシタCは、SWピンに現れる矩形波状のスイッチ電圧Vswを整流及び平滑して出力電圧Voを生成する整流平滑回路として機能する。
【0021】
<半導体装置>
引き続き、図1を参照しながら、半導体装置100の内部構成について説明する。本構成例の半導体装置100は、上側トランジスタ10H及び下側トランジスタ10Lと、上側ドライバ20H及び下側ドライバ20Lと、上側レベルシフタ30H及び下側レベルシフタ30Lと、ロジック回路40と、ブートキャパシタCbと、内部スイッチSW0と、を集積化して成る。
【0022】
上側トランジスタ10Hは、PVINピンとGNDピンとの間に接続されたハーフブリッジ出力段の上側スイッチ(出力トランジスタ)として機能する半導体素子であり、本図ではNMOSFETが用いられている。接続関係を具体的に述べると、上側トランジスタ10Hのドレインは、PVINピンに接続されている。上側トランジスタ10Hのソースは、SWピンに接続されている。上側トランジスタ10Hのゲートは、上側ドライバ20Hの出力端(=上側ゲート駆動信号HGの印加端)に接続されている。
【0023】
上側トランジスタ10Hは、上側ゲート駆動信号HGがハイレベル(=Vb)であるときにオンして上側ゲート駆動信号HGがローレベル(=Vsw)であるときにオフする。
【0024】
なお、上側トランジスタ10Hには、ゲート・ドレイン間寄生容量Cgd、ゲート・ソース間寄生容量Cgs、及び、ドレイン・ソース間寄生容量Cdsが付随する。ここで、ゲート・ドレイン間寄生容量Cgdとゲート・ソース間寄生容量Cgsとの和は、上側トランジスタ10Hの入力ゲート容量Ciss(=Cgd+Cgs)に相当する。一方、ドレイン・ソース間寄生容量Cdsとゲート・ドレイン間寄生容量Cgdとの和は、上側トランジスタ10Hの出力ゲート容量Coss(=Cds+Cgd)に相当する。また、ゲート・ドレイン間寄生容量Cgdは、上側トランジスタ10Hの帰還ゲート容量Crss(=Cgd)に相当する。
【0025】
下側トランジスタ10Lは、上記したハーフブリッジ出力段の下側スイッチ(同期整流トランジスタ)として機能する半導体素子であり、本図ではNMOSFETが用いられている。接続関係を具体的に述べると、下側トランジスタ10Lのドレインは、SWピンに接続されている。下側トランジスタ10Lのソースは、GNDピンに接続されている。下側トランジスタ10Lのゲートは、下側ゲートドライバ20Lの出力端(=下側ゲート駆動信号LGの印加端)に接続されている。
【0026】
下側トランジスタ10Lは、下側ゲート駆動信号LGがハイレベル(=Vi)であるときにオンして下側ゲート駆動信号LGがローレベル(=GND)であるときにオフする。
【0027】
ただし、スイッチング電源1の整流方式は、必ずしも同期整流方式に限定されるものではなく、ダイオード整流方式を採用してもよい。その場合には、下側トランジスタ10Lに代えて、カソードがSWピンに接続されてアノードがGNDピンに接続されたダイオードを内蔵又は外付けすればよい。
【0028】
上側ドライバ20Hは、上側ゲート制御信号HSの入力を受けて上側ゲート駆動信号HGを出力する。なお、上側ドライバ20Hは、基本的に、上側ゲート制御信号HSがハイレベル(=Vb)であるときに上側ゲート駆動信号HGをハイレベル(=Vb)とし、上側ゲート制御信号HSがローレベル(=Vsw)であるときに上側ゲート駆動信号HGをローレベル(=Vsw)とする。
【0029】
また、上側ドライバ20Hについては、ブートキャパシタCbが小容量であっても上側トランジスタ10Hのゲート駆動に支障を生じにくいように、種々の工夫(入力電圧Viを用いたプリジャージ機能、並びに、キャパシタ回路を用いたブート電圧維持機能など、詳細は後述)が凝らされている。
【0030】
下側ドライバ20Lは、下側ゲート制御信号LSの入力を受けて下側ゲート駆動信号LGを出力する。下側ドライバ20Lは、基本的に、下側ゲート制御信号LSがハイレベル(=Vi)であるときに下側ゲート駆動信号LGをハイレベル(=Vi)とし、下側ゲート制御信号LSがローレベル(=GND)であるときに下側ゲート駆動信号LGをローレベル(=GND)とする。
【0031】
上側レベルシフタ30Hは、上側ロジック信号HS0(例えばLV-GND)をレベルシフトして上側ゲート制御信号HS(例えばVb-Vsw)を生成する。
【0032】
下側レベルシフタ30Lは、下側ロジック信号LS0(例えばLV-GND)をレベルシフトして下側ゲート制御信号LS(例えばVi-GND)を生成する。
【0033】
ロジック回路40は、入力電圧Viから所望の出力電圧Voが生成されるように、上側ロジック信号HS0及び下側ロジック信号LS0をそれぞれ生成する。なお、出力電圧Voの帰還制御方式については、任意の周知技術(電圧モード制御、電流モード制御、ヒステリシス制御(リップル制御)など)を適用すればよいので、詳細な説明は省略する。
【0034】
ブートキャパシタCbは、ブート電圧Vbの印加端とSWピン(=スイッチ電圧Vswの印加端)との間に接続されている。
【0035】
内部スイッチSW0は、ブート電圧Vbの印加端とPVINピン(=入力電圧Viの印加端)との間に接続されている。内部スイッチSW0は、例えば、下側トランジスタ10Lのオン期間(=スイッチ電圧Vswのローレベル期間)にオンして、上側トランジスタ10Hのオン期間(=スイッチ電圧Vswのハイレベル期間)にオフする。なお、内部スイッチSW0は、ブート電圧Vbの印加端と内部電源電圧VREF(例えば5V)の印加端との間に接続してもよい。
【0036】
このように接続されたブートキャパシタCb及び内部スイッチSW0は、スイッチ電圧VswよりもブートキャパシタCbの両端間電圧だけ高いブート電圧Vbを生成するブートストラップ回路を形成している。
【0037】
ところで、本図で示したように、ブートキャパシタCbを半導体装置100に内蔵すれば、外付けのディスクリート部品を削減することが可能となる。しかしながら、IC内蔵型のブートキャパシタCbは、その容量値を十分に確保することが難しい(例えば、上側トランジスタ10Hに付随する入力ゲート容量Cissの5倍程度を想定)。
【0038】
そのため、上側ドライバ10Hに何の工夫もしていなければ、上側トランジスタ10Hのオン遷移に伴い、ブートキャパシタCbに蓄えられた電荷が入力ゲート容量Cissのチャージで吸い取られてしまい、ブート電圧Vbが低下して上側トランジスタ10Hのゲート駆動に支障を生じるおそれがある。
【0039】
このような考察に鑑み、上側ドライバ10Hについては、ブートキャパシタCbが小容量であっても上側トランジスタ10Hのゲート駆動に支障を生じにくいように、種々の工夫が凝らされている。そこで、以下では、上側ドライバ20Hについて詳細に説明する。
【0040】
<上側ドライバ>
図2は、上側ドライバ20Hの一構成例を示す図である。本構成例の上側ドライバ20Hは、内部スイッチSW1~SW3と、キャパシタ回路21と、タイミング制御回路22と、を含む。
【0041】
内部スイッチSW1は、入力電圧Viの印加端と上側ゲート駆動信号HGの印加端(=上側トランジスタ10Hのゲート)との間に接続されており、スイッチ制御信号S1に応じてオン/オフされる。
【0042】
内部スイッチSW2は、上側ゲート駆動信号HGの印加端とスイッチ電圧Vswの印加端との間に接続されており、スイッチ制御信号S2に応じてオン/オフされる。
【0043】
内部スイッチSW3は、ブート電圧Vbの印加端と上側ゲート駆動信号HGの印加端との間に接続されており、スイッチ制御信号S3に応じてオン/オフされる。
【0044】
キャパシタ回路21は、ブート電圧Vbの印加端とスイッチ電圧Vswの印加端との間に接続されており、スイッチ制御信号S4に応じてその容量値C21が切り替えられる。なお、キャパシタ回路21は、複数のキャパシタと内部スイッチ(いずれも不図示)を含んでいるが、その内部構成については後述する。
【0045】
タイミング制御回路22は、上側ゲート制御信号HSの入力を受けてスイッチ制御信号S1~S4をそれぞれ生成することにより、内部スイッチSW1~SW3それぞれのオン/オフ切替タイミング、及び、キャパシタ回路22の容量値切替タイミングを制御する。
【0046】
例えば、タイミング制御回路22は、上側トランジスタ10Hのオン遷移時に入力電圧Viで上側トランジスタ10Hの入力ゲート容量Cissをプリチャージ(SW1オン、SW2オフ、SW3オフ)してからブート電圧Vbで入力ゲート容量Cissをチャージ(SW1オフ、SW2オフ、SW3オン)し、上側トランジスタ10Hのオン遷移後にキャパシタ回路21の容量値C21を引き下げるように、スイッチ制御信号S1~S4をそれぞれ生成するとよい。
【0047】
このような内部スイッチ制御によれば、ブートキャパシタCbが小容量であっても、上側トランジスタ10Hのオン遷移に伴うブート電圧Vbの低下を抑制することができるので、上側トランジスタ10Hのゲート駆動に支障を生じにくくなる(詳細は後述)。
【0048】
<キャパシタ回路>
図3は、キャパシタ回路21の一構成例を示す図である。本構成例のキャパシタ回路21は、いわゆるダブラーキャパシタ(電圧ダブラー)であって、キャパシタC1及びC2と、遅延段DLYと、内部スイッチSW4~SW6と、を含む。
【0049】
キャパシタC1は、第1端がブート電圧Vbの印加端に接続されている。
【0050】
キャパシタC2は、第1端がスイッチ電圧Vswの印加端に接続されている。
【0051】
遅延段DLYは、スイッチ制御信号S4に適切な遅延を与えることにより、スイッチ制御信号S44、S45及びS46を生成する。また、遅延段DLYでは、必要に応じて、スイッチ制御信号S4の論理レベルを反転させてもよい。例えば、遅延段DLYとして複数のインバータを縦列接続したインバータ段を用い、上記複数のインバータのうち、スイッチ制御信号S44、S45及びS46それぞれを出力するインバータの出力端を内部スイッチSW4、SW5及びSW6の制御端(ゲート)にそれぞれ接続しておけばよい。
【0052】
内部スイッチSW4(例えばNMOSFET)は、キャパシタC1の第2端とスイッチ電圧Vswの印加端との間に接続されており、スイッチ制御信号S44(例えば、スイッチ制御信号S4を遅延させた信号)に応じてオン/オフされる。内部スイッチSW4は、例えば、スイッチ制御信号S44がハイレベルであるときにオンして、スイッチ制御信号S44がローレベルであるときにオフする。
【0053】
内部スイッチSW5(例えばNMOSFET)は、キャパシタC1の第2端とキャパシタC2の第2端との間に接続されており、スイッチ制御信号S45(例えば、スイッチ制御信号S44をさらに遅延させた信号)に応じてオン/オフされる。内部スイッチSW5は、例えば、スイッチ制御信号S45がハイレベルであるときにオンして、スイッチ制御信号S45がローレベルであるときにオフする。
【0054】
内部スイッチSW6(例えばPDMOSFET)は、ブート電圧Vbの印加端とキャパシタC2の第2端との間に接続されており、スイッチ制御信号S46(例えば、スイッチ制御信号S4を遅延及び論理反転させた信号)に応じてオン/オフされる。内部スイッチSW6は、例えば、スイッチ制御信号S46がハイレベルであるときにオフして、スイッチ制御信号S46がローレベルであるときにオンする。
【0055】
このように、内部スイッチSW4~SW6それぞれのオン/オフ切替タイミングは、タイミング制御回路22から入力されるスイッチ制御信号S4に応じて制御される。
【0056】
特に、本構成例のキャパシタ回路21は、その動作状態として、内部スイッチSW4及びSW6がオンして内部スイッチSW5がオフした第1動作状態と、これとは逆に、内部スイッチSW4及びSW6がオフして内部スイッチSW5がオンした第2動作状態を取り得る。以下、それぞれの動作状態について詳述する。
【0057】
まず、内部スイッチSW4及びSW6がオンして内部スイッチSW5がオフした第1動作状態を考える。この場合、キャパシタC1及びC2は、ブート電圧Vbの印加端とスイッチ電圧Vswの印加端との間に並列接続された形となる。従って、キャパシタ回路21の容量値C21は、C21=C1+C2となる。なお、上記の第1動作状態では、キャパシタC1及びC2それぞれが並列に充電される。
【0058】
次に、上記の第1動作状態から、内部スイッチSW4及びSW6がオフして内部スイッチSW5がオンした第2動作状態に遷移した場合を考える。この場合、キャパシタC1及びC2は、ブート電圧Vbの印加端とスイッチ電圧Vswの印加端との間に直列接続された形となる。従って、キャパシタ回路21の容量値C21は、C21=(C1・C2)/(C1+C2)に引き下げられる。
【0059】
このとき、キャパシタC1及びC2には、それぞれ、上記の第1動作状態で蓄えられた電荷が保持されている。従って、第2動作状態への遷移直前におけるキャパシタC1及びC2それぞれの両端間電圧をVCとすると、第1動作状態から第2動作状態への遷移直後には、ブート電圧Vbが(VC+Vsw)から(2VC+Vsw)まで持ち上げられる。すなわち、両端間電圧VCの2倍昇圧が実現される。
【0060】
なお、キャパシタC1及びC2それぞれの容量値を増やすほど、ブート電圧Vbをより高く持ち上げることができる反面、半導体装置100のチップに占めるレイアウト面積が大きくなる。そのため、両者のトレードオフを考慮し、例えば、第2動作状態(=キャパシタC1及びC2の直列接続状態)におけるキャパシタ回路21の容量値C21(=(C1・C2)/(C1+C2))が入力ゲート容量Cissの1/2程度となるように、キャパシタC1及びC2それぞれの容量値を設定することが望ましい。
【0061】
もちろん、キャパシタ回路21の構成については、必ずしも上記に限定されるものではなく、両端間電圧VCのm倍昇圧(ただしm>1)を実現し得る構成であればよい。
【0062】
<内部スイッチ制御>
次に、タイミング制御回路22による内部スイッチS1~S6のオン/オフ切替制御について、図面を参照しながら詳述する。
【0063】
図4は、内部スイッチ制御における駆動フェイズの一例を示す図であり、スイッチ電圧Vswと駆動フェイズ(1)~(4)との関係が描写されている。本図において、時刻t1~t2における駆動フェイズ(1)は、スイッチ電圧Vswのローレベル期間に相当する。時刻t3~t4における駆動フェイズ(2)は、スイッチ電圧Vswの立ち上げ期間(前半)に相当する。時刻t4~t5における駆動フェイズ(3)は、スイッチ電圧Vswの立ち上げ期間(後半)に相当する。時刻t5~t6における駆動フェイズ(4)は、スイッチ電圧Vswのハイレベル期間に相当する。
【0064】
図5は、上記の駆動フェイズ(1)~(4)における内部スイッチSW0~SW6それぞれのオン/オフ切替状態を示す図である。なお、内部スイッチSW0は、必ずしもタイミング制御回路22によりオン/オフ制御されるものではないが、説明の便宜上、本図では内部スイッチSW1~SW6と同列に取り扱う。
【0065】
まず、スイッチ電圧Vswのローレベル期間に相当する駆動フェイズ(1)(=時刻t1~t2)では、内部スイッチSW0がオンされて、ブート電圧Vbの印加端とPVINピン(=入力電圧Viの印加端)との間が導通される。その結果、ブートキャパシタCbは、その両端間電圧が入力電圧Viとほぼ一致するまで充電される。
【0066】
また、駆動フェイズ(1)において、タイミング制御回路22は、内部スイッチSW1及びSW3をオフして、内部スイッチSW2をオンする。従って、上側ゲート駆動信号HGがローレベル(=Vsw)となるので、上側トランジスタ10Hがフルオフされる。
【0067】
また、駆動フェイズ(1)において、タイミング制御回路22は、内部スイッチSW5をオフして、内部スイッチSW4及びSW6をオンする。従って、キャパシタC1及びC2が並列接続状態となるので、キャパシタ回路21の容量値C21は、C21=(C1+C2)となる。
【0068】
次に、スイッチ電圧Vswの立ち上げ期間(前半)に相当する駆動フェイズ(2)(=時刻t3~t4)では、内部スイッチSW0がオフされて、ブート電圧Vbの印加端とPVINピンとの間が遮断される。このとき、ブートキャパシタCbには、先出の駆動フェイズ(1)で蓄えられた電荷が保持されている。その結果、ブート電圧Vbは、スイッチ電圧Vswの立ち上がりに伴い、スイッチ電圧VswよりもブートキャパシタCbの両端間電圧(≒Vi)だけ高い電圧値(≒Vsw+Vin)として上昇していく。
【0069】
また、駆動フェイズ(2)において、タイミング制御回路22は、内部スイッチSW2及びSW3をオフして、内部スイッチSW1をオンする。従って、入力電圧Viの印加端と上側ゲート駆動信号HGの印加端との間が導通されるので、上側トランジスタ10Hの入力ゲート容量Cissが入力電圧Viを用いてプリチャージされる。
【0070】
また、駆動フェイズ(2)において、タイミング制御回路22は、先出の駆動フェイズ(1)に引き続き、内部スイッチSW5をオフして、内部スイッチSW4及びSW6をオンしたままとなる。従って、キャパシタC1及びC2が並列接続状態に維持される。
【0071】
次に、スイッチ電圧Vswの立ち上げ期間(後半)に相当する駆動フェイズ(3)(=時刻t4~t5)では、先出の駆動フェイズ(2)に引き続き、内部スイッチSW0がオフされたままとなる。
【0072】
また、駆動フェイズ(3)において、タイミング制御回路22は、内部スイッチSW1及びSW2をオフして、内部スイッチSW3をオンする。従って、ブート電圧Vbの印加端と上側ゲート駆動信号HGの印加端との間が導通されるので、上側トランジスタ10Hの入力ゲート容量Cissがブート電圧Vbを用いてチャージされる。
【0073】
なお、駆動フェイズ(3)において、タイミング制御回路22は、先出の駆動フェイズ(1)及び(2)と同様、内部スイッチSW5をオフして内部スイッチSW4及びSW6をオンしたままとなる。従って、キャパシタC1及びC2が並列接続状態に維持される。
【0074】
次に、スイッチ電圧Vswのハイレベル期間に相当する駆動フェイズ(4)(=時刻t5~t6)では、先出の駆動フェイズ(2)及び(3)に引き続き、内部スイッチSW0がオフされたままとなる。
【0075】
また、駆動フェイズ(4)において、タイミング制御回路22は、先出の駆動フェイズ(3)と同様、内部スイッチSW1及びSW2をオフして、内部スイッチSW3をオンしたままとなる。従って、上側ゲート駆動信号HGがハイレベル(=Vb)となるので、上側トランジスタ10Hがフルオンされる。
【0076】
また、駆動フェイズ(4)において、タイミング制御回路22は、内部スイッチSW4及びSW6をオフして内部スイッチSW5をオンする。従って、キャパシタC1及びC2が直列接続状態となるので、キャパシタ回路21の容量値C21は、C21=(C1・C2)/(C1+C2)に引き下げられる。その結果、入力ゲート容量Cissのチャージに伴うブート電圧Vbの低下を抑制することが可能となる。
【0077】
図6は、スイッチ電圧Vsw及びブート電圧Vbそれぞれの立ち上がり挙動を示す図である。なお、本図中における時刻t3~t5は、先述の時刻t3~t5に相当する。
【0078】
先にも説明した通り、時刻t3~t4におけるスイッチ電圧Vswの立ち上げ期間(前半)では、入力電圧Viを用いて入力ゲート容量Cissのプリチャージが行われる。その後、時刻t4~t5におけるスイッチ電圧Vswの立ち上げ期間(後半)では、ブート電圧Vbを用いて入力ゲート容量Cissの残りがチャージされる。なお、時刻t3~t4及び時刻t4~t5におけるスイッチ電圧Vsw及びブート電圧Vbそれぞれの上昇傾きは、内部スイッチSW3及びSW4それぞれのオン抵抗により変化する。
【0079】
また、時刻t5以降におけるスイッチ電圧Vswのハイレベル期間では、キャパシタ回路21の容量値C21を引き下げることにより、入力ゲート容量Cissのチャージに伴うブート電圧Vbの低下が抑制されている(ブート電圧Vbの実線と破線を比較参照)。
【0080】
このように、本構成例の上側ドライバ20Hであれば、ブートキャパシタCbが小容量であっても、ブート電圧Vbの低下を抑えて上側トランジスタ10Hのゲート・ソース間電圧Vgsを確保することができる。従って、上側トランジスタ10Hを確実にフルオンすることができるので、上側トランジスタ10Hのオン抵抗値を引き下げて効率の向上に寄与することが可能となる。
【0081】
<内部スイッチ及びタイミング制御回路>
図7は、内部スイッチSW1~SW3、並びに、タイミング制御回路22の一構成例を示す図である。
【0082】
内部スイッチSW1は、Nチャネル型二重拡散MOS電界効果トランジスタN1(NDMOSFET[double-diffused MOSFET])と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタN2(NMOSFET)と、を含む。また、内部スイッチSW2及びSW3としては、それぞれ、NMOSFET及びPDMOSFETが用いられている。
【0083】
トランジスタN1のドレインは、入力電圧Viの印加端に接続されている。トランジスタN1及びN2それぞれのソースは、互いに接続されている。トランジスタN2のドレインは、上側ゲート駆動信号HGの印加端(=上側トランジスタ10Hのゲート)に接続されている。トランジスタN1及びN2それぞれのゲートは、スイッチ制御信号S11及びS12(先出のスイッチ制御信号S1に相当)の印加端に接続されている。
【0084】
トランジスタN1は、スイッチ制御信号S11がハイレベル(=Vb)であるときにオンし、スイッチ制御信号S11がローレベル(=Vsw)であるときにオフする。また、トランジスタN2は、スイッチ制御信号S12がハイレベル(=Vb)であるときにオンし、スイッチ制御信号S12がローレベル(=Vsw)であるときにオフする。
【0085】
なお、トランジスタN1及びN2には、それぞれのドレインをカソードとしてそれぞれのソースをアノードとするボディダイオードBD1及びBD2が付随している。
【0086】
一般に、DMOSFETは、MOSFETと比べて高耐圧化、低オン抵抗化、大電流化及び高速化などの面で有利である。そのため、内部スイッチSW1としては、NDMOSFETであるトランジスタN1を用いることが望ましい。
【0087】
ただし、内部スイッチSW1としてトランジスタN1を単独で用いると、トランジスタN1への逆バイアス印加時(=SW3オン時)に、上側ゲート駆動電圧HGの印加端から入力電圧Viの印加端に向けてボディダイオードBD1に電流が流れ、その一部がサブリーク電流としてp型基板に流れ込むので、基板電位が浮き上がってしまう。
【0088】
そこで、内部スイッチSW1は、トランジスタN1(NDMOSFET)のほかに、トランジスタN1と直列かつ逆向きに接続されたトランジスタN2(NMOSFET)を含む。このような構成であれば、トランジスタN2のボディダイオードBD2により、逆バイアス印加時のサブリーク電流を遮断することができるので、基板電位の浮き上がりを抑制することが可能となる。
【0089】
図8は、トランジスタN2として用いられるNMOSFETの縦断面を示す図である。NMOSFET300は、p型基板301と、n型ウェル302と、n+型半導体領域303と、p型ウェル304と、n+型半導体領域305と、n+型半導体領域306と、p+型半導体領域307と、n-型半導体領域308及び309と、ゲート酸化膜310と、ゲート電極311と、を有する。
【0090】
n型ウェル302は、p型基板301に形成されている。n型ウェル302には、n+型半導体領域303を介してブート電圧Vbが印加されている。従って、n型ウェル302は、p型基板301とp型ウェル304との間を電気的に分離するための埋設層BLとして機能する。
【0091】
n+型半導体領域303は、n型ウェル302の表面(外周縁)に形成されており、ブート電圧Vbを印加するためのコンタクトとして機能する。
【0092】
p型ウェル304は、n型ウェル302の表面(n+型半導体領域303にその周囲を取り囲まれた領域内)に形成されており、NMOSFET300のバックゲート(BG)として機能する。
【0093】
n+型半導体領域305は、p型ウェル304の表面に形成されており、NMOSFET300のドレイン(D)として機能する。
【0094】
n+型半導体領域306は、p型ウェル304の表面において、n+型半導体領域305から所定の距離を隔てた位置に形成されており、NMOSFET300のソース(S)として機能する。
【0095】
p+型半導体領域307は、p型ウェル304の表面(外周縁)に形成されており、バックゲート(BG)のコンタクトとして機能する。
【0096】
n-型半導体領域308は、p型ウェル304の表面において、n+型半導体領域305に隣接する位置からゲート酸化膜310の外縁直下に至る位置まで形成されている。
【0097】
n-型半導体領域309は、p型ウェル304の表面において、n+型半導体領域306に隣接する位置からゲート酸化膜310の外縁直下に至る位置まで形成されている。
【0098】
ゲート酸化膜310は、p型ウェル304の表面上に形成されている。
【0099】
ゲート電極311は、ゲート酸化膜310の表面上に形成されている。
【0100】
なお、NMOSFET300には、その各部に寄生キャパシタp1~p7及び寄生ダイオードp8~p10が付随している。
【0101】
より具体的に述べると、ゲート酸化膜310とn+型半導体領域305との間、ゲート酸化膜310とn+型半導体領域306との間、及び、ゲート酸化膜310とp型ウェル304との間には、それぞれ、寄生キャパシタp1~p3が付随している。また、p型ウェル304とn+型半導体領域305との間、及び、p型ウェル304とn+型半導体領域306との間には、それぞれ、寄生キャパシタp4及びp5が付随している。さらに、n型ウェル302とp型ウェル304との間、及び、n型ウェル302とp型基板301との間には、それぞれ、寄生キャパシタp6及びp7が付随している。
【0102】
一方、n+型半導体領域305とp型ウェル304との間には、寄生ダイオードp8が付随している。寄生ダイオードp8は、n+型半導体領域305をカソードとしてp型ウェル304をアノードとする。また、n型ウェル302とp型ウェル304との間には、寄生ダイオードp9が付随している。寄生ダイオードp9は、n型ウェル302をカソードとしてp型ウェル304をアノードとする。さらに、n型ウェル302とp型基板301との間には、寄生ダイオードp10が付随している。寄生ダイオードp10は、n型ウェル302をカソードとしてp型基板301をアノードとする。
【0103】
なお、内部スイッチSW1のトランジスタN2として、NMOSFET300を用いる場合には、本図の寄生ダイオードp8が先出のボディダイオードBD2に相当する。
【0104】
図7に戻り、タイミング制御回路22の内部構成について説明を続ける。タイミング制御回路22は、ANDゲート220及び221と、NANDゲート222と、遅延段223~229を含む。なお、遅延段223~229としては、例えば、単一のインバータ、若しくは、複数のインバータを縦列接続したインバータ段を用いるとよい。
【0105】
ANDゲート220は、反転下側ゲート駆動信号XLG_LVS(=下側ゲート駆動信号LGを論理反転及びレベルシフトさせた信号)と上側ゲート制御信号HSとの論理積信号A0を生成し、これを内部入力信号HGINとして出力する。従って、内部入力信号HGINは、反転下側ゲート駆動信号XLG_LVS及び上側ゲート制御信号HSの双方がハイレベルであるときにハイレベルとなり、反転下側ゲート駆動信号XLG_LVS及び上側ゲート制御信号HSの少なくとも一方がローレベルであるときにローレベルとなる。
【0106】
なお、反転下側ゲート駆動信号XLG_LVSは、下側トランジスタ10Lがオフされたことをタイミング制御回路22で認識するために入力されている。より具体的に述べると、反転下側ゲート駆動信号XLG_LVSがハイレベルに立ち上がってから上側トランジスタ10Hをオンすることにより、上側トランジスタ10Hと下側トランジスタ10Lの同時オンを回避して過大な貫通電流を抑制することが可能となる。
【0107】
ANDゲート221は、ノード信号n11(=ノード信号n2aの論理反転信号)と上側ゲート制御信号HSとの論理積信号A1を生成し、これをスイッチ制御信号S12として出力する。従って、スイッチ制御信号S12は、ノード信号n11及び上側ゲート制御信号HSの双方がハイレベルであるときにハイレベルとなり、ノード信号n11及び上側ゲート制御信号HSの少なくとも一方がローレベルであるときにローレベルとなる。
【0108】
NANDゲート222は、ノード信号ndelay(=ノード信号n11を遅延及び論理反転させた信号)と上側ゲート制御信号HSとの否定論理積信号A2を生成する。従って、否定論理積信号A2は、ノード信号ndelay及び上側ゲート制御信号HSの双方がハイレベルであるときにローレベルとなり、ノード信号ndelay及び上側ゲート制御信号HSの少なくとも一方がローレベルであるときにハイレベルとなる。
【0109】
遅延段223は、内部入力信号HGINに適切な遅延を与えることにより、ノード信号n2aを生成する。
【0110】
遅延段224は、ノード信号n2aに適切な遅延を与えた上でその論理レベルを反転させることにより、ノード信号n11を生成する。なお、ノード信号n2aに遅延を与える必要がない場合には、遅延段224として単一のインバータを用いればよい。
【0111】
遅延段225は、ノード信号n11に適切な遅延を与えた上でその論理レベルを反転させることにより、ノード信号ndelayを生成する。
【0112】
遅延段226は、ノード信号n2aに適切な遅延を与えることにより、スイッチ制御信号S11を生成する。
【0113】
遅延段227は、内部入力信号HGINに適切な遅延を与えた上でその論理レベルを反転させることにより、スイッチ制御信号S2を生成する。
【0114】
遅延段228は、否定論理積信号A2に適切な遅延を与えることにより、スイッチ制御信号S3を生成する。
【0115】
遅延段229は、スイッチ制御信号S3に適切な遅延を与えることにより、スイッチ制御信号S4を生成する。
【0116】
図9は、タイミング制御回路22の一動作例を示す図であり、上から順に、上側ゲート制御信号HS、反転下側ゲート駆動信号XLG_LVS、内部入力信号HGIN、スイッチ制御信号S1~S4、内部スイッチSW1~SW3のオン/オフ状態、及び、キャパシタ回路21の容量値C21がそれぞれ描写されている。
【0117】
時刻t11以前には、上側ゲート制御信号HSがローレベルなので、内部入力信号HGINもローレベルである。このとき、スイッチ制御信号S11及びS12がいずれもローレベルなので、トランジスタN1及びN2がいずれもオフされている。すなわち、内部スイッチSW1がオフされている。一方、スイッチ制御信号S2及びS3がいずれもハイレベルなので、内部スイッチSW2がオンされて内部スイッチS3がオフされている。従って、上側ゲート駆動信号HGがローレベルに引き下げられているので、上側トランジスタ10Hがフルオフされている。また、スイッチ制御信号S4がハイレベルなので、キャパシタ回路21の容量値C21は、C21=C1+C2(並列合成値)とされている。
【0118】
時刻t11では、上側ゲート制御信号HSがハイレベルに立ち上がっている。この時点では、ノード信号n11(不図示)がハイレベルなので、論理積信号A1(不図示)がハイレベルに立ち上がり、延いては、スイッチ制御信号S12がハイレベルに立ち上がる。一方、この時点では、反転下側ゲート駆動信号XLG_LVSがローレベルなので、内部入力信号HGINもローレベルであり、スイッチ制御信号S11がローレベルに維持されている。その結果、トランジスタN1がオフされたままトランジスタN2がオンされる。
【0119】
このように、タイミング制御回路22は、トランジスタN1(NDMOSFET)をオンする前にトランジスタN2(NMOSFET)をオンする。すなわち、内部スイッチSW1全体としてはオフ状態を維持したまま、トランジスタN2だけをオンする。このタイミング制御によれば、トランジスタN1よりも高速性に劣るトランジスタN2を早めにオンして、そのオン抵抗を予め引き下げておくことができる。
【0120】
時刻t12において、反転下側ゲート駆動信号XLG_LVSがハイレベルに立ち上がると、内部入力信号HGINがハイレベルに立ち上がる。ただし、この時点では、スイッチ制御信号S1~S4の論理レベルに変化が生じないので、内部スイッチSW1~SW3のオン/オフ状態、及び、キャパシタ回路21の容量値C21は、いずれも不変である。
【0121】
時刻t13において、内部入力信号HGINを遅延及び論理反転させたスイッチ制御信号S2がローレベルに立ち下がると、内部スイッチSW2がオフされる。従って、内部スイッチSW1~SW3が全てオフされた状態となり、上側ゲート駆動信号HGの印加端が一旦ハイインピーダンス状態となる。
【0122】
時刻t14において、内部入力信号HGINを遅延させたスイッチ制御信号S11がハイレベルに立ち上がると、トランジスタN1がオンされる。この時点で、トランジスタN1及びN2がいずれもオンされた状態となるので、内部スイッチSW1がオンして、入力電圧Viによる入力ゲート容量Cissのプリチャージが開始される。
【0123】
時刻t15において、内部入力信号HGINを遅延及び論理反転させたノード信号n11(不図示)がローレベルに立ち下がると、論理積信号A1(不図示)がローレベルに立ち下がり、延いては、スイッチ制御信号S12がローレベルに立ち下がる。その結果、トランジスタN2がオフされる。一方、この時点では、ノード信号ndelay(不図示)がローレベルなので、否定論理積信号A2(不図示)がハイレベルであり、スイッチ制御信号S3がハイレベルに維持されている。すなわち、内部スイッチSW3はオフである。
【0124】
このように、タイミング制御回路22は、内部スイッチSW3をオンしてブート電圧Vbによるチャージを開始する前に、トランジスタN2(延いては内部スイッチSW1)をオフする。このタイミング制御によれば、逆バイアス印加時におけるトランジスタN1のサブリーク電流を確実に遮断することが可能となる。
【0125】
なお、上記のタイミングでトランジスタN2がオフしても、入力電圧Viと上側ゲート駆動信号HGとの電位差がボディダイオードBD2の順方向降下電圧Vfを下回るまではボディダイオードBD2が順バイアスとなるので、入力電圧Viによる入力ゲート容量Cissのプリチャージが継続される。
【0126】
また、トランジスタN2は、NDMOSFETではなくNMOSFETなので、ボディダイオードBD2に電流が流れてもp型基板へのサブリーク電流は生じない。
【0127】
時刻t16では、ノード信号ndelay(不図示)のハイレベル遷移、及び、否定論理積信号A2(不図示)のローレベル遷移に引き続いて、否定論理積信号A2を遅延させたスイッチ信号S3がローレベルに立ち下がる。その結果、内部スイッチSW3がオンして、ブート電圧Vbによる入力ゲート容量Cissのチャージが開始される。
【0128】
時刻t17では、スイッチ制御信号S3を遅延させたスイッチ制御信号S4がローレベルに立ち下がる。このとき、キャパシタ回路21の容量値C21は、C21=(C1・C2)/(C1+C2)(直列合成値)に引き下げられる。その結果、入力ゲート容量Cissのチャージに伴うブート電圧Vbの低下を抑制することが可能となる。
【0129】
時刻t18において、上側ゲート制御信号HSがローレベルに立ち下がると、内部入力信号HGINがローレベルに立ち下がる。ただし、この時点では、スイッチ制御信号S1~S4の論理レベルに変化が生じないので、内部スイッチSW1~SW3のオン/オフ状態、及び、キャパシタ回路21の容量値C21は、いずれも不変である。
【0130】
時刻t19では、否定論理積信号A2(不図示)のハイレベル遷移に引き続いて、否定論理積信号A2を遅延させたスイッチ信号S3がハイレベルに立ち上がるので、内部スイッチSW3がオフされる。従って、内部スイッチSW1~SW3が全てオフされた状態となり、上側ゲート駆動信号HGの印加端が一旦ハイインピーダンス状態となる。
【0131】
時刻t20において、内部入力信号HGINを遅延及び論理反転させたスイッチ制御信号S2がハイレベルに立ち上がると、内部スイッチSW2がオンされる。従って、上側ゲート駆動信号HGがローレベルに引き下げられるので、上側トランジスタ10Hがフルオフ状態となる。
【0132】
時刻t21では、スイッチ制御信号S3を遅延させたスイッチ制御信号S4がハイレベルに立ち上がる。その結果、キャパシタ回路21の容量値C21は、C21=C1+C2(並列合成値)に引き上げられる。また、内部入力信号HGINを遅延させたスイッチ制御信号S11がローレベルに立ち下がるので、トランジスタN1がオフされる。
【0133】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、本明細書中に開示されているゲートドライバは、IGBTを駆動対象としてもよい。このように、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本明細書中に開示されているゲートドライバは、例えば、ハーフブリッジ出力段の上側トランジスタ(NMOSFETなど)を駆動する手段として利用することが可能である。
【符号の説明】
【0135】
1 スイッチング電源
10H 上側トランジスタ(NMOSFET)
10L 下側トランジスタ(NMOSFET)
20H 上側ドライバ
20L 下側ドライバ
21 キャパシタ回路
22 タイミング制御回路
220、221 ANDゲート
222 NANDゲート
223~229 遅延段
30H 上側レベルシフタ
30L 下側レベルシフタ
40 ロジック回路
100 半導体装置(電源制御IC)
300 NMOSFET
301 p型基板
302 n型ウェル
303 n+型半導体領域(コンタクト)
304 p型ウェル
305 n+型半導体領域(ドレイン)
306 n+型半導体領域(ソース)
307 p+型半導体領域(コンタクト)
308、309 n-型半導体領域
310 ゲート酸化膜
311 ゲート電極
BD1、BD2 ボディダイオード
C、C1、C2 キャパシタ
Cb ブートキャパシタ
DLY 遅延段
L インダクタ
N1 NDMOSFET
N2 NMOSFET
p1~p7 寄生キャパシタ
p8~p10 寄生ダイオード
SW0~SW6 内部スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9