(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】作動シリンダ
(51)【国際特許分類】
F15B 15/14 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
F15B15/14 370
(21)【出願番号】P 2022526483
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(86)【国際出願番号】 DE2020000269
(87)【国際公開番号】W WO2021089071
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-10-04
(31)【優先権主張番号】202019004569.4
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522178522
【氏名又は名称】ビューマッハ エンジニアリング インターナショナル ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビューター、ヨーゼフ
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-041908(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0143953(US,A1)
【文献】特表2018-501111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動シリンダ(1)であって、
シリンダ・チューブ(2)と、第1のクロージャ部品(3)と、第2のクロージャ部品(4)と、ピストン・ユニット(5)とを備え、
前記シリンダ・チューブ(2)は、第1のシリンダ・チューブ端(6)及び第2のシリンダ・チューブ端(7)を有し、
前記第1のクロージャ部品(3)は、前記第1のシリンダ・チューブ端(6)に配置され、
前記第2のクロージャ部品(4)は、前記第2のシリンダ・チューブ端(7)に配置され、
前記シリンダ・チューブ(2)及び前記クロージャ部品(3、4)は、シリンダ内部(8)を形成し、
前記ピストン・ユニット(5)は、前記シリンダ内部(8)に少なくとも1つの作動チャンバを形成し、
前記ピストン・ユニット(5)は、前記第1のクロージャ部品(3)を摺動可能に通り、
前記第1のクロージャ部品(3)が、第1の周方向レーザ・リング溶接シーム(9)によってポジティブ・ロック式に前記シリンダ・チューブ(2)に接合され、前記第2のクロージャ部品(4)が、第2の周方向レーザ・リング溶接シーム(10)によってポジティブ・ロック式に前記シリンダ・チューブ(2)に接合され、
前記レーザ・リング溶接シーム(9、10)のそれぞれが、流体密シーリング面(10)を形成
し、
第1の周方向シーリング・リング(21)が、前記シリンダ内部(8)において、前記第1のクロージャ部品(3)と、前記シリンダ・チューブ(2)の、その第1のシリンダ・チューブ端(6)におけるシリンダ・チューブ内壁との間に、前記第1のレーザ・リング溶接シーム(9)から軸方向に離れて配置され、前記シーリング・リングが、前記第1の周方向シーリング・リング(21)と前記第1のレーザ・リング溶接シーム(9)との間に配置される第1の圧力分離された環状部分(22)を形成
し、及び/又は、第2の周方向シーリング・リングが、前記シリンダ内部(8)において、前記第2のクロージャ部品(4)と、前記シリンダ・チューブ(2)の、その第2のシリンダ・チューブ端(7)におけるシリンダ・チューブ内壁との間に、前記第2のレーザ・リング溶接シーム(10)から或る軸方向距離のところに配置され、前記第2の周方向シーリング・リングが、前記第2の周方向シーリング・リングと前記第2のレーザ・リング溶接シーム(10)との間に配置される第2の圧力分離された環状部分を形成
し、
前記レーザ・リング溶接シーム(9、10)のそれぞれが、リング溶接シーム中心軸(13)を有し、
前記リング溶接シーム中心軸(13)と、前記シリンダ・チューブの長手方向主軸(14)とが、リング溶接シーム傾斜角度アルファ(2)を有し、
少なくとも一方のクロージャ部品(3、4)が、前記シリンダ・チューブが係合する、軸方向に開口した周方向凹状受容輪郭を有し、前記受容輪郭が、前記シリンダ・チューブと半径方向に重なること、及び、前記リング溶接シーム傾斜角度アルファが、110度~160度であることを特徴とする、作動シリンダ(1)。
【請求項2】
前記作動シリンダ(1)が、複動式であり、差動作動シリンダとして設計され、
前記第1のクロージャ部品(3)が、案内クロージャ部品として設計され、前記第2のクロージャ部品(4)が、基底クロージャ部品として設計され、
前記第1のシリンダ・チューブ端(6)が、案内側シリンダ・チューブ端であり、前記第2のシリンダ・チューブ端(7)が、基底側シリンダ・チューブ端であり、
前記ピストン・ユニット(5)が、ピストン(5a)及びピストン・ロッド(5b)を含み、
前記ピストン(5a)が、前記シリンダ内部(8)に配置され、前記シリンダ内部(8)をピストン・クラウン作動チャンバ(8a)とピストン・ロッド作動チャンバ(8b)とに分離し、前記ピストン・ロッド(5b)が、前記案内クロージャ部品(3)を摺動可能に通ることを特徴とする、請求項1に記載の作動シリンダ(1)。
【請求項3】
前記作動シリンダ(1)が、複動式であり、同期シリンダとして設計され、
前記第1のクロージャ部品(3)が、案内クロージャ部品として設計され、前記第2のクロージャ部品(4)が、さらなる案内クロージャ部品として設計され、
前記ピストン・ユニット(5)が、ピストン(5a)及びピストン・ロッド(5b)を含み、
前記ピストン(5a)が、前記シリンダ内部(8)に配置され、前記シリンダ内部(8)を第1のピストン・ロッド作動チャンバと第2のピストン・ロッド作動チャンバとに分離し、前記ピストン・ロッド(5b)が、前記案内クロージャ部品及び前記さらなる案内クロージャ部品を摺動可能に通ることを特徴とする、請求項1に記載の作動シリンダ(1)。
【請求項4】
前記作動シリンダ(1)が、単動式であり、プランジャ・シリンダとして設計され、
前記第1のクロージャ部品(3)が、案内クロージャ部品として設計され、前記第2のクロージャ部品(4)が、基底クロージャ部品として設計され、
前記第1のシリンダ・チューブ端(6)が、案内側シリンダ・チューブ端であり、前記第2のシリンダ・チューブ端(7)が、基底側シリンダ・チューブ端であり、
前記ピストン・ユニット(5)が、プランジャ・ピストンによって形成され、
前記プランジャが、前記シリンダ内部(8)に配置され、前記シリンダ内部(8)に作動チャンバを形成し、前記プランジャが、前記案内クロージャ部品(3)を摺動可能に通ることを特徴とする、請求項1に記載の作動シリンダ(1)。
【請求項5】
前記レーザ・リング溶接シームのそれぞれが、リング溶接シーム深さ(11)を有し、前記リング溶接シーム深さ(11)が、シリンダ・チューブ肉厚(12)に対して1.1~2.5の比を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の作動シリンダ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接される作動シリンダ及びその製造のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作動シリンダはそれ自体、種々の異なる設計において現行の技術水準から既知である。
【0003】
かかる全ての作動シリンダは、シリンダ・チューブと、クロージャ部品とを備える。現行の技術水準によれば、かかる作動シリンダは通常、クロージャ部品をシリンダ・チューブにねじ固定することによって製造される。したがって、これら作動シリンダは、従来技術においてねじシリンダとも称される。
【0004】
さらに、MAG溶接によって基底クロージャ部品をシリンダ・チューブに結合し、次いで、案内クロージャ部品のみをねじ固定することが、現行の技術水準から既知である。
【0005】
シリンダ・チューブ及びクロージャ部品のねじ山は通常、機械加工プロセスによって製造される。
【0006】
ねじシリンダと、一方のクロージャ部品のみがねじ結合であり、他方のクロージャ部品がMAG溶接であるシリンダとは双方とも、現行の技術水準に従って高品質で提供され、最高級且つ信頼性の高い製品であることが証明されている。
【0007】
製造の観点から、ねじ山が必然的にシリンダ・チューブを弱化させるため、特にシリンダ・チューブについて、ねじ山が減算的に製造されるように、材料の厚さすなわちチューブ肉厚の取り代(allowance)を設けなくてはならないことが留意されねばならない。しかしながら、この取り代の結果、作動中の力、特に流体の作動圧力によって引き起こされる力の吸収に対し、かなり過剰に寸法決めされるチューブ肉厚がもたらされる。これにより、不都合なことに、材料消費が増すとともに差動作動シリンダの最終重量が増す。
【0008】
不都合点として、ねじ山を製造する機械加工プロセスはさらに高精度を必要とし、したがって、製造が非常に厳しい。
その上、シリンダの気密性を達成するために、シリンダ・チューブと各クロージャ部品との間に追加的なシールを定期的に挿入せねばならない。
さらに、最終組み立ては、多くの時間及び熟練労働を要する。
【0009】
ねじ結合が緩むことを回避するために、追加的な手段が提供されねばならないこともまた、不都合点である。最後に、作動圧力を変えることの結果として、ねじ山がその耐用年数を制限する動的荷重を受けることが不都合である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、特に高品質であるとともに、材料節減的で、単純な、したがって、費用効果の高いやり方で製造されることができる作動シリンダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
課題は、請求項1に示された特徴部によって解決される。さらに好ましい実施例は、従属請求項による。
【0012】
本発明によれば、作動シリンダは、シリンダ・チューブと、第1のクロージャ部品及び第2のクロージャ部品と、ピストン・ユニットとを備える。第1のクロージャ部品及び第2のクロージャ部品は以下、まとめてクロージャ部品とも称される。
【0013】
これら基本構成部材から製造される、本発明による作動シリンダは、種々の異なる設計で提供されることができる。特に、作動シリンダは、差動作動シリンダ、プランジャ・シリンダ、同期シリンダ、伸縮シリンダ、牽引シリンダ或いはまた空気圧作動シリンダであるものとすることができる。作動シリンダは、同期シリンダとして設計される場合、以下、ステアリング・シリンダとも称される。本発明の意味における作動シリンダはさらに、特に貯蔵シリンダ、ガス・スプリング・シリンダ及び油圧ショック・アブソーバであることが理解される。
【0014】
本発明による作動シリンダは、単動式又は複動式であるように設計されることができる。
例えば差動作動シリンダは、2つの作動チャンバを備えた複動式油圧作動シリンダであり、このシリンダでは、2つの作動チャンバにおいて、有効ピストン面は種々の異なるサイズを有する。したがって、種々の異なる大きさの力が、2つの作動方向に同じ作動圧力でピストンに作用する。差動作動シリンダとは対照的に、同期シリンダのピストン・ロッドは、両側に配置された案内クロージャ部品によって案内され、そのため、ピストンの有効面は同じサイズを有し、したがって、同じ大きさの力が、双方の作動方向に同じ作動圧力で作用し、そのため、同期シリンダは、特にステアリング・シリンダとして用いられる。これに対し、プランジャ・シリンダは、単動式作動シリンダであり、このシリンダでは、圧力媒体が固体としてピストンを変位させ、したがって、ピストンを外側へ移動させる。同じことが伸縮シリンダに当てはまり、このシリンダでは、複数のシリンダ・チューブが互いに挿入され、したがって、特に長い作動移動が可能となる。
【0015】
シリンダ・チューブは、本質的に既知のように中空円筒形設計を有し、本発明によれば、第1のシリンダ・チューブ端及び第2のシリンダ・チューブ端を有する。組み立て後、第1のクロージャ部品は、第1のシリンダ・チューブ端に配置され、第2のクロージャ部品は、第2のシリンダ・チューブ端に配置される。好ましくは、シリンダ・チューブ端は双方とも、同じようにして製造される。したがって、2つのシリンダ・チューブ端は好ましくは、面取りされた軸方向前面部を有し、斜面が同じ角度を有する。したがって、軸方向前面部は好ましくは、同じ横断面積を有する。
しかしながら、異なるやり方で設計されるシリンダ・チューブ端を製造することも可能である。
【0016】
本発明によれば、第1のクロージャ部品は、第1のシリンダ・チューブ端に配置される。好ましくは、第1のクロージャ部品は、案内クロージャ部品である。案内クロージャ部品は、ピストン・ユニットを摺動及び密封式に受け入れるクロージャ部品であるものと理解される。差動作動シリンダでは、例えば、ピストン・ユニットは、ピストン及びピストン・ロッドから成ることができ、ピストン・ロッドは、案内クロージャ部品によって受け入れられる。プランジャ・シリンダでは、ピストン・ユニットは、案内クロージャ部品によって受け入れられる、プランジャ・ピストンとも称される容積形成ピストンとして設計される。
第1のクロージャ部品は、接触面を有するように設計され、この接触面は、第1のシリンダ・チューブ端に取り付けられると、第1のシリンダ・チューブ端の対応するさらなる接触面に当接する。これら接触面は好ましくは、第1のクロージャ部品及びシリンダ・チューブを完全に囲む。これにより、第1のシリンダ・チューブ端における第1のクロージャ部品が当接する連続した環状面がもたらされる。環状面は、傾斜している場合、幾何学的観点から円錐台側面である。簡潔のため、幾何学的設計に関係なく、この面は以下、単に環状面と称される。
【0017】
本発明によれば、第2のクロージャ部品は、第2のシリンダ・チューブ端に配置される。第1のクロージャ部品と第1のシリンダ・チューブ端との関係に関する記載内容が、第2のクロージャ部品と第2のシリンダ・チューブ端との関係に同様に当てはまる。接触面に関して、第2のクロージャ部品は、第1のクロージャ部品と類似に設計される。好ましくは、第2のクロージャ部品は、基底クロージャ部品であり、次にピストン・ユニットのピストンと軸方向に対向するとともに本発明による作動シリンダの少なくとも一方の作動チャンバを軸方向に画定する。
【0018】
本発明による作動シリンダはさらに、ピストン・ユニットを備える。作動シリンダのタイプに応じて、ピストン・ユニットは、ピストン及びピストン・ロッドから成ることができ、これには、例えば、差動作動シリンダ又は同期シリンダが当てはまり、或いは、ピストンのみから成ることができ、これには、例えば、プランジャ・シリンダが当てはまり、或いは、他の設計を有することができる。ピストン・ユニットが、ピストン及びピストン・ロッドを含む場合、ピストン及びピストン・ロッドは、互いに対して固定位置関係を有する。好ましくは、ピストン及びピストン・ロッドは、互いにしっかりと結合される。そのような設計では、ピストン及びピストン・ロッドは好ましくは、溶接によって材料結合(一体結合)式に結合される。ピストン及びピストン・ロッドはまた、取り外し可能に結合されるものとすることができる。しかしながら、特別な場合、ピストン・ユニットが単品ユニットとして設計され、したがって、ピストン及びピストン・ロッドが単一の構成部材の部分であることも可能である。
【0019】
組み立てられた状態において、シリンダ・チューブ及びクロージャ部品は、本発明によるシリンダ内部を形成する。シリンダ・チューブ及びクロージャ部品がともに連結されると、それらの内側面部分がシリンダ内部を画定する。また、シリンダ内部は、各レーザ・リング溶接シームに及ぶ。
【0020】
さらに、本発明による作動シリンダにおいて、ピストン・ユニットは、少なくとも1つの作動チャンバをシリンダ内部に形成する。このチャンバは、シリンダ・チューブと、クロージャ部品と、ピストン・ユニットとによって画定される。ピストン・ユニットは、ピストン・ユニットが軸方向に変位されることができるように配置され、シリンダ・チューブの長手方向主軸とピストン・ユニットの軸方向の移動方向とが一致する。この設計では、ピストン・ユニットは好ましくは、少なくとも部分が、第1のクロージャ部品を摺動及び密封式に通る。圧力媒体接続部が作動シリンダに割り当てられ、この圧力媒体接続部を介して、圧力媒体が作動チャンバに入ることができるか又は作動チャンバから導かれることができ、したがって、作動チャンバは加圧されることができる。圧力媒体は、油圧媒体又は空気圧媒体であるものとすることができる。
【0021】
本発明による作動シリンダが例えば、差動作動シリンダとして設計される場合、さらに以下のことが当てはまる。
ピストン・ユニットのピストンは、シリンダ内部に配置され、シリンダ内部を、以下、ピストン・クラウン・チャンバとも略される、ピストン・クラウン作動チャンバと、ピストン・ロッド作動チャンバとに分離する。ピストン・クラウン・チャンバは、ピストンと、ここでは基底クロージャ部品として設計される第2のクロージャ部品との間に位置付けられる。ピストン・ロッド作動チャンバは、ピストン・ロッド側に、ピストンと、ここでは案内クロージャ部品として設計される第1のクロージャ部品との間に位置付けられる。したがって、少なくとも一方の作動チャンバは、ピストン・ロッド作動チャンバである。さらに、ピストン・クラウン作動チャンバは、さらなる作動チャンバを形成する。
ピストンは、ピストンの長手方向主軸及びシリンダ・チューブが互いに重なるようにシリンダ内部において軸方向に変位及び配置されることができる。
圧力媒体接続部は、作動圧力がピストン・クラウン作動チャンバ及びピストン・ロッド作動チャンバに印加されることができるようにシリンダに設けられる。
ピストンはさらに、種々のガイド、シーリング又はピストン・リングを有してもよい。作動シリンダのためのピストンの種々の実施例は、現行の技術水準からそれ自体既知である。
【0022】
本発明による作動シリンダは特に、クロージャ部品が双方とも、すなわち、例えば、差動作動シリンダの場合では案内クロージャ部品及び基底クロージャ部品が双方とも、シリンダ・チューブに溶接されることを特徴とする。
【0023】
この場合、第1のクロージャ部品は、第1の周方向レーザ・リング溶接シームによってシリンダ・チューブに接合され、第2のクロージャ部品は、第2の周方向レーザ・リング溶接シームによってシリンダ・チューブに接合される。以下、互いに結合される構成部材は、まとめて結合相手とも称される。
2つのクロージャ部品は、レーザ溶接によってシリンダ・チューブに接合される。レーザ・リング溶接シームは、溶加材を加えることなく生成される融接接合部である。
【0024】
好都合には、レーザ溶接は、非常に狭いテーパ状の溶接シームを形成する。略V字状のレーザ溶接シームの側方側面によって形成される鋭角は好ましくは、15度未満、特に好ましい設計では10度未満である。
【0025】
2つのレーザ・リング溶接シームのそれぞれは、流体密シーリング面を形成する。これは、圧力媒体がシリンダ・チューブと第1のクロージャ部品との間の結合点を通ることを第1のレーザ・リング溶接シームが防ぐとともに、シリンダ・チューブと第2のクロージャ部品との間に圧力媒体が通ることを第2のリング溶接シームが防ぐことを意味し、これは全て、シーリング・リングのようなさらなるシーリング手段の必要性がない。
【0026】
シリンダ・チューブ及びクロージャ部品並びに好ましくはピストン・ユニットもそれぞれ、金属合金、特に好ましくは鋼合金から作製される。しかしながら、個々の構成部材の材料組成は若干異なり得る。好ましくは、シリンダの金属合金の構成部材の質量比率は、クロージャ部品の質量比率と10重量パーセント未満だけ異なる。したがって、クロージャ部品及びシリンダ・チューブは、同様の物理的特性を有しており、特に十分にともに溶接されることができる。
好ましくは用いられる鋼合金は、0.5重量パーセント未満の炭素含量を有する。合金成分であるバナジウム、クロム及びマンガンは好ましくは、0.01重量パーセント~2重量パーセントの比率で、別個に又は併せて含まれる。
【0027】
作動シリンダはさらに、第1の周方向シーリング・リングが、シリンダ内部において、第1のクロージャ部品と、シリンダ・チューブの、その第1のシリンダ・チューブ端におけるシリンダ・チューブ内壁との間に、第1のレーザ・リング溶接シームから或る軸方向距離のところに配置され、上記第1の周方向シーリング・リングが、第1の圧力分離された環状部分を形成し、この環状部分が、第1の周方向シーリング・リングと第1のレーザ・リング溶接シームとの間に配置されること、及び/又は、第2の周方向シーリング・リングが、シリンダ内部において、第2のクロージャ部品と、シリンダ・チューブの、その第2のシリンダ・チューブ端におけるシリンダ・チューブ内壁との間に、第2のレーザ・リング溶接シームから或る軸方向距離のところに配置され、上記第2の周方向シーリング・リングが、第2の圧力分離された環状部分を形成し、この環状部分が、第2の周方向シーリング・リングと第2のレーザ・リング溶接シームとの間に配置されることを特徴とする。
【0028】
そのことは、このさらなる展開によれば、周方向シーリング・リングが、少なくとも一方のレーザ・リング溶接シームの上流に組み入れられることを意味する。好ましくは、周方向シーリング・リングは、双方のレーザ・リング溶接シームの上流に配置される。以下、周方向シーリング・リングは、Oリングとも称される。
【0029】
シリンダ内部において、Oリングは、各レーザ・リング溶接シームの前における環状部分をシリンダ内部の残りの部分から圧密に分離する。驚くことに、レーザ・リング溶接シームの形成によって、単位長さ当たりのエネルギー入力は、感熱性Oリングがレーザ・リング溶接シームのすぐ近くであっても損傷を受けないほど低く設定されることができることが見い出された。すぐ近くとは、レーザ・リング溶接シームとOリングとの間の、シリンダ・チューブ内径よりも小さい、特に好ましい設計ではシリンダ・チューブ肉厚の多くとも4倍の軸方向距離であるものと理解される。
【0030】
Oリングは、圧力媒体の作動圧力からの環状部分の分離を生じさせる。したがって、環状部分は、シリンダ・チューブの、内側から圧力媒体の作動圧力を受けないレーザ・リング溶接シームのすぐ前且つレーザ・リング溶接シームにおける軸方向部分であり、したがって、座屈荷重を受けない。このように、他の場合では生じるであろう、レーザ・リング溶接シームにかかる半径方向荷重が、非常に単純な手段によって好都合なやり方で同時に回避される。代わりに、軸方向荷重のみがかけられる。軸方向荷重は、各クロージャ部品の基部領域に作用する圧力媒体の作動圧力に基づいている。したがって、好都合には、レーザ・リング溶接シームにかかる多軸方向荷重、したがって、多軸方向材料応力が回避される。
【0031】
同時に、上流Oリングが、少なくとも一方の作動チャンバ、又は、両側にOリングを備えた作動シリンダのタイプに応じて、双方の作動チャンバを、汚染から保護する。レーザ溶接中に生じるいかなる排出物、又は、レーザ溶接シームの領域において結合相手から分離する可能性がある粒子が、作動チャンバに入る前にOリングによって各環状部分内に保持される。
【0032】
本発明による溶接される作動シリンダは、従来技術の作動シリンダに比して数多くのかなりの利点を有する。
【0033】
第1の著しい利点は、特にシリンダ・チューブが、所定の長さに切削することを除いて機械加工をほとんど又は全く必要としないということである。特に、ねじ山が切削される必要がないか、又は溝が旋削される必要がない。溶接されるピストン・ユニットの場合、この利点はピストン・ロッドにも当てはまる。
【0034】
これは、他の場合では機械加工のために必要な時間量、加工機械、工具費及びエネルギーが節減されることができるという直接的な利益を有する。
【0035】
さらに、シリンダ・チューブが、ねじ込まれる差動作動シリンダの約半分のチューブ肉厚しか有する必要がないため、劇的な材料節減、したがって、原材料資源の保存という利点がある。
例えば、切削されるねじ山についての材料除去を埋め合わせするために、チューブ肉厚において、取り代が省かれることができる。
【0036】
シリンダ・チューブ、好ましくはピストン・ロッドも機械加工することを省くことによって、品質もまた著しく高まる。機械加工に起因する力入力が省かれることの結果、軸同心度がもはや損なわれない。むしろ、シリンダ・チューブについての出発物の軸方向同心度、該当の場合には、ピストン・ロッドの軸方向同心度も、完全に維持される。したがって、本発明による作動シリンダは、より高い精度を有する。したがって、軸方向のピストン・ロッド移動もまた、従来技術において既知である、エンドストップにおいてピストン・ロッドが座屈するという問題なく、行われることができる。同時に、これにより、案内クロージャ部品におけるシリンダ・ガイドの摩耗が低減する。シリンダ・チューブ、該当の場合にはピストン・ロッドを機械加工することを省くことによって、ノッチ効果に起因する荷重能力の低下もまた回避される。
【0037】
別の利点は、シリンダ・チューブとクロージャ部品との間の結合点における差動作動シリンダの絶対的な気密性である。この点に関して、他の場合では現行の技術水準によれば必要とされるシールを用いることなく気密性が達成されることができることがさらに好都合である。老朽化する傾向があるこれら構成部材の考えられ得る省略により、費用節減だけでなく、品質の向上及び耐用年数の増加ももたらされる。さらに、老朽化シールに起因する汚染が排除される。
【0038】
さらなる利点は、動作安全性の向上である。荷重変更時のシリンダ・チューブとクロージャ部品との間の軸方向の遊びと、ねじ山に当てはまる場合の緩みとが排除される。さらに、好都合には、他の場合では必要な固定要素を省くことによる節減が達成される。最後に、取り外し可能な結合部に必要とされる実際の固定要素の、他の場合では必要な固定もまた、省かれる。従来技術によれば、かかる固定は例えば、固定要素を接着することによって得られる。接着を省くことにより、さらに重要な利点がもたらされる。第1に、非常に高価なねじロック接着剤についての費用が排除される。第2に、ねじロック接着剤に対するその接着を確実にするために表面をクリーニングする必要がなく、現行の技術水準によれば、このクリーニングには多くの場合、健康に有害な洗浄化学物質が必要とされる。これにより、健康保護及び環境保護を保証する特別な措置の必要性が排除される。第3に、ねじロック接着剤によって固定された場合であっても、取り外し可能な結合部が衝撃荷重下で緩むリスクを被る可能性があるという問題が克服される。
【0039】
動作安全性の向上の別の態様は、耐取り扱い性の向上である。シリンダ内部における非破壊干渉が排除される。不慣れな人員が差動作動シリンダを不適切に開くこと又は不適切に組み立て直すことに関連する考えられ得る損傷原因が排除される。
【0040】
さらに、本発明による作動シリンダは、製造に関する利点を有する。特に、現行の技術水準に比して、溶接後に、シリンダ内部へのアクセスがもはやいっさい必要とされないため、双方のクロージャ部品を溶接することが可能である。このことは、レーザ溶接プロセスがもっぱら、レーザ・リング溶接シームの領域内における材料の局限化された加熱をもたらすことに起因する。これは、他の溶接方法によって損傷を受けるであろう、特にシールのような感熱性材料を有する構成部材が依然として、計画された溶接シームにほんの数ミリメートルの距離のところで溶接されることができることを意味する。さらに、他の場合では現行の技術水準によれば多大な労力で取り除かねばならないであろう、特に溶接シーム付近における、シリンダ・チューブ及びクロージャ部品の内側面部分におけるスケール形成が、回避される。第2に、このことは、レーザ・リング溶接シームの領域からのいかなる材料排出物も、環状領域において上流Oリングによって保持されることに起因する。
【0041】
好ましくは、本発明による作動シリンダはまた、1つの作業ステップにおいて双方のクロージャ部品を溶接することを可能にする。
【0042】
別の利点は、溶接される接合部の結合相手における熱応力の低減であるが、その理由は、レーザ溶接の場合では、単位長さ当たりの比較的少量のエネルギー入力(溶接シームの長さに関連するエネルギー量)が供給されればよいからである。
【0043】
別の利点は、レーザ・リング溶接シームの輪郭、溶接シーム深さ及び角度が、製造されるべき作動シリンダに対するレーザ・ビームの移動、単位長さ当たりのエネルギー入力及び角度によって大部分が決定されることができることである。したがって、輪郭及び角度は具体的には、結合相手に対してレーザの位置を変えることによって調整されることができる。
【0044】
さらに、特定の利点は、上流Oリングが主として、圧力媒体の可変作動圧力に起因する動的な半径方向荷重から、したがって、多軸方向応力から、レーザ・リング溶接シームを保護するため、極めて長い耐用年数である。同じ寸法決めの状況下で、好都合にもっぱら軸方向荷重により、著しくより高い量の荷重変化、したがって、著しくより長い耐用年数が可能となる。
【0045】
本発明による作動シリンダの第1の特に好ましい実施例において、作動シリンダは、複動式作動シリンダとして提供され、差動作動シリンダとして設計される。
この実施例において、第1のクロージャ部品は、案内クロージャ部品として設計され、第2のクロージャ部品は、基底クロージャ部品として設計される。そのため、本明細書中、第1のシリンダ・チューブ端は、案内側シリンダ・チューブ端と称され、第2のシリンダ・チューブ端は、基底側シリンダ・チューブ端と称される。したがって、第1のレーザ・リング溶接シームは、案内クロージャ部品と案内側シリンダ・チューブ端との間に配置され、第2のレーザ・リング溶接シームは、基底クロージャ部品と基底側シリンダ・チューブ端との間に配置される。
【0046】
差動作動シリンダでは、ピストン・ユニットは、ピストン及びピストン・ロッドを含む。このように設計されたピストン・ユニットの構造に関して、作動シリンダの記載の上記内容を参照する。
【0047】
ピストン・ユニットのピストンは、シリンダ内部に配置され、したがって、シリンダ内部を、以下、ピストン・クラウン・チャンバとも略される、ピストン・クラウン作動チャンバと、ピストン・ロッド・チャンバとも略される、ピストン・ロッド作動チャンバとに分離する。ピストン・クラウン・チャンバ内におけるピストンの有効面積は、ピストンのピストン・クラウン側がピストンのピストン・ロッド・チャンバ側よりも大きい。したがって、圧力媒体の同じ圧力では、ピストン・ロッド側よりも大きな力がピストン・クラウン側のピストンに作用する。ピストンに作用する力は、ピストン・ロッドによってシリンダ内部から外側へ伝達され、このため、ピストン・ロッドは、案内クロージャ部品を摺動可能に通る。
【0048】
本発明による作動シリンダの第2の特に好ましい実施例において、作動シリンダは同様に、複動式作動シリンダとして提供されるが、この実施例では、作動シリンダは同期シリンダとして設計される。
【0049】
この好都合なさらなる展開による同期シリンダでは、差動作動シリンダの場合のように、第1のクロージャ部品は、案内クロージャ部品として設計される。さらに、特別な特徴部として、第2のクロージャ部品もまた、さらなる案内クロージャ部品として設計される。案内クロージャ部品及びさらなる案内クロージャ部品は以下、まとめて案内クロージャ部品とも称される。したがって、第1のレーザ・リング溶接シームは、案内クロージャ部品と第1のシリンダ・チューブ端との間に配置され、第2のレーザ・リング溶接シームは、さらなる案内クロージャ部品と第2のシリンダ・チューブ端との間に配置される。
【0050】
この設計において、ピストン・ユニットは同様に、ピストン及びピストン・ロッドを含む。ピストンは、シリンダ内部に配置され、シリンダ内部を第1のピストン・ロッド作動チャンバと第2のピストン・ロッド作動チャンバとに分離する。このため、ピストン・ロッドは、ピストンにわたって両側が軸方向に突出し、ここでは双方とも案内クロージャ部品として提供されるクロージャ部品を通って両側がピストン内部から案内される。したがって、ピストン・ロッドは、双方の案内クロージャ部品を摺動可能に通る。
【0051】
ピストン・ロッド作動チャンバは双方とも、同じ横断面を有し、したがって、ピストンは、両側で圧力媒体について同じサイズの有効面を有する。ピストンに作用する力と、ピストンによって行われる作動ストロークの長さとは、圧力及び体積の観点から同一である、圧力媒体の或る特定の圧力流が、第1のピストン・ロッド作動チャンバに作用するのか、第2のピストン・ロッド作動チャンバに作用するのかにかかわらず、各場合に同じである。双方の作動方向におけるこの同一の挙動に起因して、同期シリンダは多くの場合、ステアリング・シリンダとしても用いられ、そのため、ステアリング・シリンダとも称される。
【0052】
別のさらなる展開によれば、作動シリンダは、プランジャ・シリンダとして設計される。これは、単動式作動シリンダである。
【0053】
このさらなる展開によれば、第1のクロージャ部品は、案内クロージャ部品として設計され、第2のクロージャ部品は、基底クロージャ部品として設計される。第1のシリンダ・チューブ端は、案内側シリンダ・チューブ端であり、第2のシリンダ・チューブ端は、基底側シリンダ・チューブ端である。したがって、差動作動シリンダに当てはまる場合のように、第1のレーザ・リング溶接シームは、案内クロージャ部品と案内側シリンダ・チューブ端との間に配置され、したがって、第2のレーザ・リング溶接シームは、基底クロージャ部品と基底側シリンダ・チューブ端との間に配置される。
【0054】
プランジャ・シリンダのピストン・ユニットは、プランジャ・ピストンによって形成される。プランジャが、シリンダ内部に配置される。作動チャンバは1つだけシリンダ内部に形成される。プランジャ・ピストンは、案内クロージャ部品を摺動可能に通る。圧力媒体の圧力流が作動チャンバに加えられると、プランジャは、圧力流の導入量に対応して軸方向に変位し、外側への移動を行う。内側への移動は、反対方向に外側から作用する力によって引き起こされる。
【0055】
別の好都合なさらなる展開によれば、レーザ・リング溶接シームは、シリンダ・チューブ肉厚に対して1.1~2.5の比を有するレーザ・リング溶接シーム深さを有する。
【0056】
レーザ・リング溶接がシリンダ・チューブ壁を垂直に通らない場合、レーザ・リング溶接シーム深さは、シリンダ・チューブ壁の厚さを上回る。したがって、溶接シームにおける力伝達がより大きな面積にわたって分布され、それゆえ、最適化されるため、クロージャ部品間の結合は、特に好都合なより高い安定性を有する。
この結果、シリンダ・チューブのチューブ肉厚が特別な用途のためにより低減されることさえできるというさらなる利点がもたらされる。
【0057】
さらに、この好都合なさらなる展開によれば、シリンダ・チューブ厚さよりも深くクロージャ部品内にレーザ・リング溶接シームを導入することによって、溶接シームの略垂直な位置合わせであっても、レーザ・リング溶接シーム深さを、シリンダ・チューブ肉厚を上回るものにさせることも可能である。この結果、より深い溶接シーム・ルートがもたらされる。好ましくは、レーザ・リング溶接深さは、シリンダ・チューブ厚さの少なくとも1.2倍である。驚くことに、このように引き起こされる、クロージャ部品における構造変化は、リング溶接シームの耐荷重能力を増大させることが見い出された。
【0058】
さらに好都合なさらなる展開によれば、レーザ・リング溶接シームは、傾斜したレーザ・リング溶接シーム中心軸を有する。
【0059】
同じ好都合なさらなる実施例によれば、レーザ・リング溶接シーム中心軸と、シリンダ・チューブの長手方向主軸とが、レーザ・リング溶接傾斜角度アルファを有し、アルファは、20度~70度である。
【0060】
レーザ・リング溶接シーム中心軸は、レーザ・リング溶接シームを中央に延び、その横断面が等分に分割される。レーザ・リング溶接シーム中心軸が、シリンダ・チューブを中央に、シリンダ・チューブに沿って通るシリンダ・チューブ長手方向主軸まで延びる場合、レーザ・リング溶接シーム中心軸と長手方向主軸とは、或る角度を形成する。この角度は、レーザ・リング溶接シーム傾斜角度アルファである。
【0061】
レーザ・リング溶接シーム傾斜角度アルファは、20度~70度であり、そのため、シリンダ・チューブ肉厚に対する比が1.1~2.5であるレーザ・リング溶接シーム深さが生成される。
より深いレーザ・リング溶接シーム深さ及び傾斜したリング溶接シーム中心軸により、アタック力の角度及び印加面積に起因して荷重時に力がより良好に分布される。
【0062】
別の好都合なさらなる展開によれば、レーザ・リング溶接シームのうちの少なくとも一方は、前面側部に軸方向に配置され、リング溶接シーム傾斜角度アルファは、180度である。
【0063】
したがって、レーザ・リング溶接シームは、円筒形状を有し、ひいては、シリンダ・チューブと各クロージャ部品との間に半径方向に配置される。
【0064】
このさらなる展開は、シリンダ・チューブの環状前面部が、いかなる特別な機械加工も必要としないという特定の利点を有する。むしろ、シリンダ・チューブの内側側方面の縁のみが、各クロージャ部品に対する接触面、したがって、レーザ・リング溶接シームについて溶接されるべき面を形成する。さらに、各クロージャ部品は好都合には、半径方向の段なしに形成されることができる。クロージャ部品の外径はシリンダ・チューブの内径に対応しさえすればよく、その結果、かなりの材料節減がもたらされる。さらに、2つのクロージャ部品間の正確な距離が接合時に正確に調整されることができるため、シリンダ・チューブの長さを規定する際に精度はほとんど必要とされない。
【0065】
別の好都合なさらなる展開によれば、リング溶接シームの傾斜の角度は90度である。製造の観点から、このさらなる展開は、シリンダ・チューブの長さをカットすることによって形成される環状前面部が、いかなるさらなる作業ステップもなしに、各クロージャ部品に対する接触面として早くも用いられることができるという利点を有する。
【0066】
概して、レーザ・リング溶接シームの形成の種々の好都合なさらなる展開は、特定のシリンダ・タイプに限定されない。さらに、レーザ・リング溶接シームの種々の異なる設計が、1つの及び同じ作動シリンダについて組み合わせられることもできる。
【0067】
本発明は、例示的な実施例として添付の図面によってより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図2】シーリング・リング及び環状部分の描写を伴う、案内側シリンダ・チューブ端における拡大詳細部の図である。
【
図3】リング溶接シーム傾斜角度の描写を伴う、基底側シリンダ・チューブ端における拡大詳細部の図である。
【
図4】横断面及びリング溶接シーム角度ベータを示すためのレーザ溶接シームの拡大図である。
【
図5】90度溶接シーム及び上流Oリングを有するプランジャ・シリンダの図である。
【
図6】Oリング及び環状部分を示すための、
図5の拡大詳細部の図である。
【
図7】0度溶接シームを有する基底クロージャ部品の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図1は、差動作動シリンダとして設計される作動シリンダ1の一実施例の概観を示す。差動作動シリンダ1は、シリンダ・チューブ2と、ここでは案内クロージャ部品として設計される第1のクロージャ部品3と、ここでは基底クロージャ部品として設計される第2のクロージャ部品4と、ピストン・ユニット5とを備える。ピストン・ユニットは、ピストン5a及びピストン・ロッド5bから成る。
この実施例において、ピストン・ロッド側締結モジュール15が、ピストン・ロッド5bに配置され、基底側締結モジュール17が、基底クロージャ部品として設計される第2のクロージャ部品4に配置される。締結ボルト15a、17aが、2つの締結モジュール15、17のそれぞれに割り当てられる。締結ボルト15、17は、本発明の要素ではなく、単に明確のために示されている。
ピストン・ユニット5は、シリンダ内部8に、ピストン5aに対し、ピストン・ロッド5bの部分が配置され、ピストン・ロッド5bは、案内クロージャ部品として設計される第1のクロージャ部品3を摺動可能に通る。
案内クロージャ部品として設計される第1のクロージャ部品3は、ここでは案内側シリンダ・チューブ端である第1のシリンダ・チューブ端6においてシリンダ・チューブ2を閉鎖し、基底クロージャ部品として設計される第2のクロージャ部品4は、ここでは基底側シリンダ・チューブ端である第2のシリンダ・チューブ端7を閉鎖する。
この実施例において、2つのクロージャ部品3、4は、シリンダ・チューブに部分的に、正確に嵌まり込むかたちで突出する円筒部分を有するように、設計される。レーザ・リング溶接シーム9、10が、接触面に沿って延び、第1のレーザ・リング溶接シーム9は、第1のクロージャ部品3を第1のシリンダ・チューブ端6に結合し、第2のレーザ・リング溶接シーム10は、第2のクロージャ部品4を第2のシリンダ・チューブ端7に結合する。レーザ・リング溶接シーム9、10のそれぞれは、流体密シーリング面を形成する。さらに、周方向シーリング・リング21が、第1のクロージャ部品3の環状溝(参照符号はない)内にシリンダ中心の方向において第1のレーザ・リング溶接シーム9の前に軸方向に配置される。軸方向の観点から、ここでは第1の環状部分である、環状部分22が、シーリング・リング21とレーザ・リング溶接シーム9との間に位置付けられる。
シリンダ・チューブ2の長手方向主軸14が、作動シリンダ1を中央且つ長手方向に延びる。
【0070】
図2は、第1のレーザ・リング溶接シーム9の領域の拡大詳細部を示す。ここでは、周方向シーリング・リング21は、特に、シリンダ・チューブ2と、第1のクロージャ部品3と、第1のレーザ・リング溶接シーム9とのその位置関係で示されている。周方向シーリング・リング21は、第1のクロージャ部品3の周方向外側リング溝に挿入される。周方向シーリング・リングは、シリンダ内部8の残りの部分に対して第1のレーザ・リング溶接シーム9まで領域を圧密式にシールする。垂直に描かれた矢印は、シリンダ・チューブ2に内側から半径方向に作用する圧力媒体の力を象徴し、環状部分22は、周方向シーリング・リング21によってもたらされる圧密分離によりこの半径方向の力作用から除外される。
【0071】
図3は、第1のシリンダ・チューブ端6の領域の拡大を示す。
図2におけるように、これは、案内側シリンダ・チューブ端である。ここでは、第1の周方向レーザ・リング溶接シーム9の幾何学的関係が特に示されている。溶接時、第1の周方向レーザ・リング溶接シーム9は、リング溶接シーム中心軸13に沿ってレーザによって生成される。この第1の溶接シームは、第1のシリンダ・チューブ端6と第1のクロージャ部品3との間の接触面に沿って延びる。このため、シリンダ・チューブ2と、第1のクロージャ部品3と、第2のクロージャ部品4と、ピストン・ユニット5と、2つの締結モジュール15、17とから成る、予め組み立てられて一時的に固定された事前組立体群が好ましくは、シリンダ・チューブ14の長手方向主軸の周りに、リング溶接シーム傾斜角度アルファで傾斜したレーザの前で回転される。
リング溶接シーム中心軸13は、第1の周方向レーザ・リング溶接シーム9を中央に延び、その延長部において、シリンダ・チューブ14の長手方向主軸とともに、リング溶接シーム傾斜角度アルファを含む。リング溶接シーム深さ11は、実際のレーザ・リング溶接シーム9内に延びるリング溶接シーム中心軸13の長さである。角形成により、リング溶接シーム深さ11は、シリンダ・チューブ肉厚12を上回る。リング溶接シーム深さは、リング溶接シームと、シリンダ・チューブ肉厚12と、垂線とによって形成された直角三角形の斜辺に対応する。
この図はまた、ピストン・ロッド側締結モジュール15とピストン・ロッド5bとの間の第1の締結モジュール溶接シーム16も示す。この溶接シームは、第1の周方向レーザ・リング溶接シーム9について適用される同じレーザ溶接方法によって生成される。
さらに、案内クロージャ部品として設計される第1のクロージャ部品3におけるピストン・ロッド5bの滑り軸受もまたガイド20及びシール19とともに示されている。
【0072】
図4は、拡大されたレーザ溶接シームを表す。ここに示された、第1のシリンダ・チューブ端2と第1のクロージャ部品3との間の第1のレーザ溶接シーム9は、本発明による例示的なレーザ溶接シームである。
この第1のレーザ溶接シーム9は、リング溶接シーム深さ11及びリング溶接シーム中心軸13を有する。この実施例において、リング溶接シーム深さ11は、シリンダ・チューブ肉厚12を上回る。
レーザ溶接シームは、僅かに円錐度を有する。2つの接線がレーザ溶接シームの縁輪郭に描かれると、これら接線は交わり、リング溶接シーム角度ベータを形成する。リング溶接シーム中心軸13は同時に、リング溶接シーム角度ベータの二等分線であり、長手方向主軸14とともに、リング溶接シーム傾斜角度アルファを含む。さらに、リング溶接シーム中心軸13は、第1のシリンダ・チューブ端6と第1のクロージャ部品3との接触面に沿って延びる。この実施例において、リング溶接シーム傾斜角度アルファは、90度である。
【0073】
図5は、プランジャ作動シリンダとして設計される作動シリンダの一実施例を示す。ここでは、プランジャ・ピストンとして設計されるピストン・ユニット5が、シリンダ・チューブ2内に案内される。さらに、ピストン・ユニット5は、案内クロージャ部品として設計される第1のクロージャ部品3内に案内される。プランジャ・シリンダにはこのため、ガイド20が備わっている。案内クロージャ部品は、第1のレーザ・リング溶接シーム9によって、シリンダ・チューブ2にその第1のシリンダ・チューブ端6において結合される。案内クロージャ部品と対向して、ここでは基底クロージャ部品として設計される第2のクロージャ部品4は、第2のレーザ・リング溶接シーム10によって、シリンダ・チューブ2に第2のシリンダ・チューブ端7において結合される。この実施例において、2つのレーザ・リング溶接シーム9、10は、90度のリング溶接シーム傾斜角度を有する。
差動作動シリンダについて
図1に示した参照符号及び記載内容がさらに当てはまる。
【0074】
図5による実施例におけるプランジャ作動シリンダもまた、第1のクロージャ部品3において、さらなる第1の周方向シーリング・リング21を備える。このさらなるシーリング・リング21は、Oリングとも称され、シリンダ・チューブ2と第1のクロージャ部品3との間に半径方向に配置され、圧密シールを提供し、この圧密シールは、第2の周方向レーザ・リング溶接シーム10を圧力媒体から圧密に分離する。
【0075】
図6は、
図5の第1のクロージャ部品3におけるシーリング・リング21(Oリング)の領域を、拡大図で示す。シーリング・リング21(Oリング)は、ここではより詳細に示されており、第1の周方向レーザ・リング溶接シーム9の空間的に近くに位置付けられている。この実施例において、シーリング・リング21(Oリング)は、弾性ポリマーから作製される。レーザ溶接時の熱入力は、シーリング・リング21(Oリング)が第1のレーザ・リング溶接シーム9のすぐ近くにあるにもかかわらず、このシーリング・リングの損傷を回避するほど十分に低いままである。軸の観点から、シーリング・リング21(Oリング)と第1のレーザ・リング溶接シーム9との間に、圧力分離された環状部分22がある。この圧力分離された環状部分22において、圧力媒体の作動圧力は、シリンダ・チューブの内側には印加されず、そのため、この領域において、圧力媒体の力は、シリンダ・チューブ2に半径方向に作用しない。したがって、シリンダ・チューブ2は、この領域において座屈力を受けず、第1のレーザ・リング溶接シーム9は解放される。
この設計において、リング溶接シーム中心軸13は、作動シリンダ1の長手方向主軸14に対して垂直に延びる。
【0076】
図7は、第2の周方向レーザ・リング溶接シーム10が長手方向主軸に対して平行に延びる実施例の詳細部の概略図である。
ここでは、基底クロージャ部品として設計される第2のクロージャ部品4は、第2のシリンダ・チューブ2によって半径方向に囲まれている。この実施例において、第2のクロージャ部品4とシリンダ・チューブ2の環状面とが、共通の前面部を形成する。しかしながら、結合相手のうちの一方が、軸方向に突出するか、又は、他方の結合相手に対して後退させられることも可能である。
リング溶接シーム中心軸13は、長手方向主軸14と交わらない。リング溶接シーム傾斜角度アルファは、0度である。第2の周方向シーリング・リング23は、第2のレーザ・リング溶接シーム10の溶接ルートまで軸方向部分を形成し、この軸方向部分は、第2の圧力分離された環状部分24である。第2の周方向シーリング・リング23及び第2の圧力分離された環状部分24は、第1の周方向シーリング・リング21及び第1の圧力分離された環状部分22と同じように形成され、そのため、その記載内容がここでも同様に当てはまる。
【符号の説明】
【0077】
1 作動シリンダ
2 シリンダ・チューブ
2a さらなるシリンダ・チューブ
3 第1のクロージャ部品
3a さらなるクロージャ部品
4 第2のクロージャ部品
5 ピストン・ユニット
5a ピストン
5b ピストン・ロッド
6 第1のシリンダ・チューブ端
7 第2のシリンダ・チューブ端
8 シリンダ内部
8a ピストン・クラウン作動チャンバ
8b ピストン・ロッド作動チャンバ
9 第1の周方向レーザ溶接シーム
10 第2の周方向レーザ溶接シーム
11 リング溶接シーム深さ
12 シリンダ・チューブ肉厚
13 リング溶接シーム中心軸
14 長手方向主軸
15 ピストン・ロッド側締結モジュール
15a ピストン・ロッド側締結モジュールの締結ボルト
16 第1の締結モジュール溶接シーム
17 基底側締結モジュール
17a des基底側締結モジュールの締結ボルト
18 第2の締結モジュール溶接シーム
19 シール
20 ガイド
21 第1の周方向シーリング・リング
22 第1の圧力分離された環状部分
23 第2の周方向シーリング・リング
24 第2の圧力分離された環状部分
α リング溶接シーム傾斜角度アルファ
β リング溶接シーム角度ベータ