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特許7617115ナビゲーション支援手術中にオフセットをモニタするシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-08
(45)【発行日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ナビゲーション支援手術中にオフセットをモニタするシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20250109BHJP
   A61B 17/15 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B17/15
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022542906
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 US2021013206
(87)【国際公開番号】W WO2021146261
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2024-01-12
(31)【優先権主張番号】63/054,811
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/960,218
(32)【優先日】2020-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506410062
【氏名又は名称】ストライカー・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】ワレン,ジェームス,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ボルトハウス,ザッカリー
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-158104(JP,A)
【文献】特開2021-087665(JP,A)
【文献】特表2015-528713(JP,A)
【文献】特表2016-501103(JP,A)
【文献】特表2022-542752(JP,A)
【文献】特表2023-532194(JP,A)
【文献】特許第7133733(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0263725(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/20
A61B 17/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変速モータ及び工具先端部を有する外科用器具と、
前記外科用器具に電力を提供し、前記器具のモータの動作をモニタし、プロセッサと、前記器具のモータの動作を表す情報を含む情報を記憶するメモリとを備えるコントローラと、
前記器具に接続される器具トラッカと、
骨に接続される患者トラッカと、
ローカライザを有するナビゲーションシステムと
を備え、
前記ナビゲーションシステムは、仮想空間において前記外科用器具を表す情報と前記骨を表す情報とを記憶し、
前記ローカライザは、前記器具トラッカの位置と前記患者トラッカの位置とをローカライザ座標系に対して合わせ、前記器具トラッカ及び前記患者トラッカとともに前記器具及び前記骨の位置に関する情報をそれぞれ収集し、
前記ナビゲーションシステムは、前記ローカライザにより収集された情報に基づいて、前記仮想空間における前記器具の位置及び前記骨の位置を追跡し、
前記コントローラ及び前記ナビゲーションシステムは、電子的に通信し、ともに、
前記モータの動作の変化に基づいて、前記工具先端部と前記骨との接触時間を求めるステップと、
前記接触時間において、前記工具先端部の追跡された位置と前記骨の追跡された位置との距離である工具・骨間オフセットを求めるステップと
を行う、
外科用システム。
【請求項2】
前記モータの動作をモニタすることは、電力レベルと、電圧レベルと、電流レベルと、それらの組み合わせとのいずれかをモニタすることを含み、
前記モータの動作は、前記工具先端部が骨と接触していない間に動作したときの第1のモータの動作と、前記第1のモータの動作とは異なり、前記工具先端部が骨と接触している間に動作したときの第2のモータの動作とを含む、
請求項1に記載の外科用システム。
【請求項3】
アラートデバイスを更に備え、前記コントローラ及び前記ナビゲーションシステムは更に、前記工具・骨間オフセットが所定の大きさを上回る場合にアクションをトリガする、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項4】
前記アラートデバイスがフットスイッチであり、前記フットスイッチは振動を生成するように構成され、前記アクションが前記フットスイッチの振動である、請求項に記載の外科用システム。
【請求項5】
前記アクションは、可聴アラートを鳴らすことと、可視アラートを表示することと、触覚アラートを起動することと、前記外科用器具への電力を遮断することと、それらの組み合わせとのいずれかを含む、請求項に記載の外科用システム。
【請求項6】
前記アクションに、前記コントローラから前記外科用器具への電力が止められている際に前記骨の切除面に前記工具先端部を接触させることで前記骨のモデルを更新するようユーザに促すことが含まれる、請求項に記載の外科用システム。
【請求項7】
前記所定の大きさが0.5ミリメートルである、請求項3~6のいずれか一項に記載の外科用システム。
【請求項8】
記コントローラ及び前記ナビゲーションシステムは、前記工具・骨間オフセットが第1の所定の大きさに達するか又は該大きさを上回る場合に第1のアクションをトリガし、前記工具・骨間オフセットが前記第1の所定の大きさとは異なる第2の所定の大きさに達するか又は該大きさを上回る場合に前記第1のアクションとは異なる第2のアクションをトリガする、
請求項1~のいずれか一項に記載の外科用システム。
【請求項9】
前記コントローラ及び前記ナビゲーションシステムはともに、
医療処置中にモータの動作における変化の各々の発生を判定するステップと、
前記モータの動作の変化の各々の発生につき、前記工具先端部と前記骨との接触時間をそれぞれ求めるステップと、
各接触時間につき工具・骨間オフセットを求めるステップと、
求められた一連の工具・骨間オフセットを記録するステップと
を行う、請求項1~のいずれか一項に記載の外科用システム。
【請求項10】
前記コントローラと、前記ナビゲーションシステムと、前記コントローラ及び前記ナビゲーションシステムの組み合わせとのいずれかは、求められた一連の前記工具・骨間オフセットを逐次的な更新値としてディスプレイデバイスに表示させるように更に構成されている、請求項に記載の外科用システム。
【請求項11】
前記コントローラと前記ナビゲーションシステムと前記コントローラ及び前記ナビゲーションシステムの組み合わせとのいずれかと電子的に通信するディスプレイデバイスを更に備え、
前記コントローラと、前記ナビゲーションシステムと、又は前記コントローラ及び前記ナビゲーションシステムの組み合わせとのいずれかは、求められた前記工具・骨間オフセットを前記ディスプレイデバイスに表示させるように更に構成されている、
請求項1~6のいずれか一項に記載の外科用システム。
【請求項12】
前記工具・骨間オフセットは、前記工具・骨間オフセット所定の大きさを下回る場合に第1の色で表示され、前記工具・骨間オフセットが前記所定の大きさを上回る場合に前記第1の色とは異なる第2の色で表示される、請求項11に記載の外科用システム。
【請求項13】
アクチュエータ及び工具先端部を有する外科用器具と、
前記外科用器具に電力を提供し、前記器具のアクチュエータの動作をモニタし、プロセッサと、前記器具のアクチュエータの動作を表す情報を含む情報を記憶するメモリとを備えるコントローラと、
前記器具に接続される器具トラッカと、
組織に接続される患者トラッカと、
ローカライザを有するナビゲーションシステムと
を備え、
前記ナビゲーションシステムは、仮想空間において前記外科用器具を表す情報と前記組織を表す情報とを記憶し、
前記ローカライザは、前記器具トラッカの位置と前記患者トラッカの位置とをローカライザ座標系に対して合わせ、前記器具トラッカ及び前記患者トラッカとともに前記器具及び前記組織の位置に関する情報をそれぞれ収集し、
前記ナビゲーションシステムは、前記ローカライザにより収集された情報に基づいて、前記仮想空間における前記器具の位置及び前記組織の位置を術中に追跡し、
前記コントローラ及び前記ナビゲーションシステムは、電子的に通信し、ともに、
前記アクチュエータの動作の変化に基づいて、前記工具先端部と前記組織との接触時間を求めるステップと、
前記接触時間において、前記工具先端部の追跡された位置と前記組織の追跡された位置との距離である工具・骨間オフセットを求めるステップと
を行う、
外科用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概してコンピュータ支援手術に関する。より具体的には、患者に対する外科用デバイスのモニタ位置のオフセットを判定するシステム及び技術が開示される。本技術は、方法として、コンピュータプログラムの非一時的な媒体として、コンピューティングデバイスとして、及びコンピュータ支援手術のシステムとして実装することができる。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年7月22日に出願された米国仮特許出願第63/054,811号及び2020年1月13日に出願された米国仮特許出願第62/960,218号の優先権及び全ての利益を主張するものであり、これらの出願の全ての内容は引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0003】
ナビゲーション支援手術は、多くの場合、磁気共鳴撮像(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)、X線、又は他の撮像技術のうちの1つ以上を利用して、術前に撮像された患者の生体構造(anatomy)に基づいて行われる。これらの技術を通じて生成されるデータは、非常に正確であり、ナビゲーションシステム内のメモリ又はナビゲーションシステムと通信して記憶された対象の生体構造の仮想3次元(3D)モデルを生成するための基礎を提供することができる。ナビゲーション支援手術中、患者トラッカを患者の生体構造に関連付けることができ、工具トラッカを外科用工具に関連付けることができる。ナビゲーションシステムは、当該ナビゲーションシステムの仮想空間内の関連するトラッカに基づいて生体構造及び外科用工具の位置を特定し、追跡して、手術中に外科医又は他の医療専門家に重要な情報を提供することができる。
【0004】
外科用ナビゲーションシステムは、産業用途、航空宇宙用途、及び医療用途において、空間及び向きにおいて物理的な物体の位置を正確に特定し追跡するために使用される。特に医療分野では、ナビゲーションシステムは、外科医又は他の医療専門家が、例えば外科手術中に患者の標的部位に対して外科用器具を正確に配置することを支援することができる。標的部位は、通常、組織除去等の何らかの形態の療法又は治療を必要とする。従来のナビゲーションシステムはローカライザを採用しており、該ローカライザは1つ以上のセンサを含み、該1つ以上のセンサは、トラッカと協働して、外科手術情報及び標的部位、例えば、治療を必要とする組織の容積に関連付けられた位置及び/又は向きのデータを提供する。これらのトラッカにより、外科医は、患者の術前撮像又は術中撮像に基づく工具及び生体構造の仮想表現と併せて、モニタ上にオーバーレイされた外科用工具の位置及び/又は向きを確認することが可能となる。また、これらのトラッカにより、ナビゲーションシステムが工具と生体構造との相対的な位置決めをモニタして、工具が生体構造に対して望ましくない位置に接近又は進入した場合にユーザに警告することが可能となる。例えば、工具による接触が意図されていない患者組織に工具が接近又は接触していることをユーザに警告することが可能となる。
【0005】
ローカライザは、通常、トラッカの視野を有するものとなるように配置される。すなわち、ローカライザは、患者の標的部位がローカライザの標的空間内にあるものとなるように位置決めされる。トラッカは、基準(fiducial)又はマーカの識別可能なアレイを含み、これらは、外科用器具又は患者の少なくとも一方に固定され、それぞれ外科用器具又は患者とともに移動する。外科用ナビゲーションシステムは、トラッカの検出位置から、外科用器具又は患者の位置及び向きを求め、求められた位置及び向きの経時的な変化をモニタすることができる。位置という用語は、外科用ナビゲーションシステムによって使用される基準座標系に対する物体の座標系の3D座標値を指す。向きという用語は、基準座標系に対する物体の座標系のピッチ、ロール及びヨーを指す。位置並びに所与の向きの特定のピッチ、ロール、及びヨーの値は、まとめて、基準座標系における物体の姿勢と呼ぶことができる。位置及び向きの両方(すなわち姿勢)が定められると、物体は、外科用ナビゲーションシステムにより認識され、外科用ナビゲーションシステムによって追跡可能となる(すなわち、外科用ナビゲーションシステムによって登録(記録、位置合わせ)される)。
【0006】
患者に取り付けられたトラッカ及び工具に取り付けられたトラッカは、骨及び治療を適用する工具に堅固に固定され、それにより、骨又は工具の剛性、トラッカの剛性構造、及びそれらの間の固定によって、標的部位及び工具に対して固定された関係が維持される。当技術分野で既知の別の形態では、トラッカは、変形可能であり皮膚等の柔らかい組織に取り付けることできる。トラッカは、剛性トラッカと同様の情報を提供する既知の変形に従って、マーキング、マーカ、又は基準のパターン若しくは配列から構成される。外科用工具及び患者に別々のトラッカを使用することにより、外科用器具の治療用の端部は、ナビゲーションシステムにより支援された外科医によって標的部位に正確に位置決めすることができる。
【0007】
手術の初期段階の間、物体は、それが外科用工具であるか又は患者の生体構造であるかに関わらず、外科用ナビゲーションシステムに対して較正又は登録を行う必要がある。較正又は登録のプロセスとは、物理的な物体とそのトラッカとの間の関係を、外科用ナビゲーションシステム内のデータとしての物体及びトラッカの仮想表現として定めること、すなわち、仮想物体データ及び仮想トラッカデータとしてそれぞれ定めることを指す。仮想データは、物体又はトラッカのいずれの場合でも、物体のモデルであってもなくてもよい。むしろ、仮想データは、特定の関心点を識別又は指定するのに十分な情報を含んでいてもよく、物体の寸法特性に関する他の情報を更に含んでいてもよい。仮想データは、術前又は術中に確立することができる。仮想データは、既存のモデリング又は物体仕様データに基づいてもよく、又は、その場(in situ)での物体の撮像に基づいてもよい。仮想データは、セグメンテーションのプロセスを通して撮像データから生成することができる。例えば、患者の生体構造の術前撮像を用いて、外科用ナビゲーションシステムのメモリ及び仮想環境内の仮想物体データとして、その生体構造の3Dモデルを生成することができる。同様に、外科用工具は、既知の幾何学形状及び構造に従って製造することができる。この幾何形状及び構造は、外科用ナビゲーションシステムのメモリ及び仮想環境における仮想物体データとして、その工具の3Dモデルにおいて表すことができる。較正を実行するために、追加のトラッカ基準アレイを有する追加の基準ポインタ又はフレームが、位置合わせシステム又は較正システムに従って基準点をタッチオフするために必要となり得る。あるいは、較正は、光学プロセスを用いて、投影された光パターン、光学認識、又は他の従来の方法を使用して確立される場合がある。
【0008】
ローカライザは、典型的には、特定の手術の態様における有益な使用のために様々に適合した複数のセンシング技術を備えている。一例では、ローカライザは、ナビゲーション用に適した1つ以上のセンサを備え得る。1つ以上のナビゲーションセンサは、高周波数のセンシングサイクルを動作させ、微小な時間増分にわたる微小な移動を正確に追跡することによって、すなわち、高分解能の追跡データを提供することによって、ナビゲーション用に適合させることができる。
【0009】
ローカライザは、マシンビジョン又は手術に有益な他の用途に適したセンサを更に備え得る。例えば、ローカライザは、外科手術のビデオ記録を提供するために1つ以上の光学カメラを備えてもよい。ローカライザは、様々な機能を実行する、すなわち、様々な物理的特性又は光、電磁エネルギー、又は他の特性をセンシングする、複数組の個別センサを含み得る。ローカライザのセンサ出力を表すデータを処理し、ローカライザの視野又は範囲内の手術部位に関する重要な情報を得ることができる。
【0010】
従来の外科用ナビゲーションシステムは、医療手術中に使用される外科用工具を支持するロボットアーム又はマニピュレータとともに使用するように適合している場合がある。ロボットアームマニピュレータをナビゲーションシステムに組み込むことで、更に高度な制御が提供され、外科用工具の動きがロボットアームによって、又はロボットアームの支援により実現し、生体構造に対する工具の適切な配置ができるようになる。ジョイントエンコーダ又は他のセンシング技術をロボットアームに組み込んで追加のデータを提供し、工具がナビゲーションシステムにより追跡されている間に工具の位置を求めることができる。この情報を比較し、不一致が生じた場合には、オペレータに警告して、エラーが診断され修正され得るまで外科手術を停止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ロボットマニピュレータの支援なく使用するように適合した外科用ナビゲーションシステムを改善することが求められている。ロボットシステムから提供されるデータの閉ループを除外することは、更なる不確実性をもたらし、ナビゲーションシステムが工具トラッカ又は生体構造トラッカに対する較正又は位置合わせを失うというリスクを、かかる較正又は位置合わせの損失を検出する能力及びユーザに警告することなく放置することになる。これは、手術中に生体構造に対する工具の不適切な配置を引き起こす可能性がある。したがって、従来のナビゲーションシステムの欠点に対処し、ナビゲーション支援手術中にオフセットをモニタする効率的な技術を提供するシステム及び方法が、当技術分野において求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
可変速モータを有する外科用器具を骨に対してナビゲートする方法が提供される。本方法は、ローカライザ座標系を有するローカライザを含むナビゲーションシステムを使用することを含む。器具トラッカは、外科用器具に結合されている。患者トラッカは、骨に結合されている。コントローラは、ナビゲーションシステムと通信する。コントローラは、外科用器具を制御する。
【0013】
本方法は、ローカライザを用いて、患者トラッカをローカライザ座標系に位置合わせすることを含み、この位置合わせにより、ローカライザ座標系に対する骨の場所が定義される。本方法は、ローカライザを用いて、器具トラッカをローカライザ座標系に位置合わせすることを含み、この位置合わせにより、ローカライザ座標系に対する器具工具先端部の場所が定義される。
【0014】
本方法は、器具工具先端部が骨と接触していない場合の器具のモータ動作を定義することを含む。本方法は、コントローラを用いて、医療処置中に器具のモータ動作をモニタすることと、ナビゲーションシステムを用いて、骨に対する器具工具先端部の位置をモニタして、器具工具先端部がローカライザ座標系において骨と接触したときを判定することとを含む。
【0015】
本方法は、モータ動作を器具工具先端部のモニタされた位置と比較することと、器具工具先端部のモニタされた位置がローカライザ座標系において骨と接触しており、モニタされたモータ動作が、器具工具先端部が骨と接触していない場合の器具の定義されたモータ動作に等しいときに、エラー状態を判定することとを含む。本方法は、エラー状態が判定されたときにアクションをトリガすることを含む。
【0016】
本方法において、工具先端部が骨と接触していない場合の器具のモータ動作を定義するステップは、器具工具先端部が骨と接触していない間に器具モータが動作するときに、電力、電圧、電流、又はそれらの組み合わせの閾値を定義することを含み得る。モータ動作を定義するステップは、コントローラ、ナビゲーションシステム、外科用器具、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上のメモリにモータ動作を表すデータを記憶することを含み得る。
【0017】
本方法はまた、器具工具先端部が骨と接触している場合の器具の第2のモータ動作を定義するステップを含み得る。第2のモータ動作を定義し、本方法は、器具工具先端部のモニタされた位置がローカライザ座標系において骨と接触しておらず、モニタされたモータ動作が、器具工具先端部が骨と接触している場合の器具の第2の定義されたモータ動作に等しいときに、第2のエラー状態を判定することを更に含み得る。本方法はまた、第2のエラー状態が判定されたときに第2のアクションをトリガすることを含み得る。
【0018】
本方法において、アクション又は第2のアクションのうちの1つをトリガするステップは、可聴アラートを鳴らすこと、視覚アラートを表示すること、触覚アラートを起動すること、外科用器具への電力を遮断すること、又はそれらの組み合わせのうちの1つを含む。
【0019】
骨に対して可変速モータを有する外科用器具をナビゲートし、工具・骨間(tool-to-bone)オフセットをモニタする方法が提供される。本方法は、ローカライザ座標系を有するローカライザを含むナビゲーションシステムを使用することを含む。器具トラッカは、外科用器具に結合されている。患者トラッカは、骨に結合されている。コントローラは、ナビゲーションシステムと通信し、外科用器具を制御する。
【0020】
本方法は、ローカライザを用いて、患者トラッカをローカライザ座標系に位置合わせすることを含み、この位置合わせにより、ローカライザ座標系に対する骨の場所が定義される。本方法は、ローカライザを用いて、器具トラッカをローカライザ座標系に位置合わせすることを含み、この位置合わせにより、ローカライザ座標系に対する器具工具先端部の場所が定義される。
【0021】
本方法は、骨と接触していない間に動作する外科用器具の第1のモータ動作を定義することを含む。本方法は、コントローラを用いて、医療処置中に外科用器具のモータ動作をモニタすることと、ナビゲーションシステムを用いて、ローカライザ座標系における骨に対する器具工具先端部の位置をモニタすることとを含む。
【0022】
本方法は、モニタされたモータ動作を定義されたモータ動作と比較することと、モニタされたモータ動作が定義された第1のモータ動作から逸脱した場合に器具工具先端部と骨との間の接触時間(あるいは接触時点)を決定することとを含む。本方法は、接触時点において、ナビゲーションシステムを用いて、ローカライザ座標系における器具工具先端部と骨の表面との間の距離として工具・骨間オフセットを決定することを含む。本明細書では工具・骨間オフセットとして記載されているが、「骨」への言及は限定を意図するものではなく、かかる「骨」の使用は、外科手術が行われる任意のタイプの生体構造として理解することができ、皮膚、筋肉、結合組織、神経組織等の非骨タイプの組織を含むことを理解されたい。本方法は、工具・骨間オフセットが所定の大きさを超えた場合にアクションをトリガすることを含む。
【0023】
本方法において、アクションをトリガするステップは、可聴アラートを鳴らすこと、視覚アラートを表示すること、触覚アラートを起動すること、外科用器具への電力を遮断すること、又はそれらの組み合わせのうちの1つを含み得る。本方法において、所定の大きさは0.5ミリメートルに等しくてもよい。アクションをトリガするステップは、骨のモデルを更新するようにユーザに促すことを含み得るとともに、本方法は、骨のモデルを更新するステップを含み得る。モデルを更新するステップは、コントローラから外科用器具への電力が無効にされている間に、骨の切除面を器具工具先端部と接触させることを含む。
【0024】
本方法は、ディスプレイデバイス上に、決定された工具・骨間オフセットを表示することを更に含み得る。本方法は、経時的なオフセット値のチャートとして、一連の工具・骨間オフセットを表示することを含み得る。
【0025】
本方法において、骨に対する器具工具先端部の位置をモニタするステップは、医療処置中に器具工具先端部の場所及び骨の場所を追跡することを含み得るとともに、ナビゲーションシステムを用いて、骨の表面と接触している器具工具先端部のモニタされた場所の動作中の各発生を検出することと、各発生時に医療処置中に決定された一連の工具・骨間オフセット値を記録することとを更に含み得る。本方法は、ディスプレイデバイス上に、一連の工具・骨間オフセットを連続更新値として表示することを更に含み得る。
【0026】
本方法は、第1のレベルの大きさ及び第2のレベルの大きさを定義することを更に含み得る。本方法において、決定された工具・骨間オフセットを表示するステップは、オフセットが第1のレベルの大きさよりも小さい場合にオフセットを第1の色で表示することと、オフセットが第1のレベルと第2のレベルの大きさとの間にある場合にオフセットを第1の色とは異なる第2の色で表示することと、オフセットが第2のレベルの大きさよりも大きい場合にオフセットを第1の色及び第2の色とは異なる第3の色で表示することとを含み得る。アクションをトリガするための所定の大きさは、第2のレベルの大きさに等しくてもよい。アクションをトリガするための所定の大きさは、第2のレベルの大きさよりも大きくてもよい。本方法は、第3のレベルの大きさを定義することを更に含み得て、本方法はまた、工具・骨間オフセットが第3のレベルの大きさよりも大きい場合にコントローラから外科用器具への電力を無効にすることを含む。本方法は、所定の大きさ、第1のレベルの大きさ、第2のレベルの大きさ、第3のレベルの大きさ、又はそれらの組み合わせの値を入力するようにユーザに促すことを含み得る。本方法は、工具・骨間オフセットが所定の値よりも大きい場合にコントローラから外科用器具への電力を無効にすることを含み得る。
【0027】
外科用システムが提供される。外科用システムは、可変速モータ又はアクチュエータと、工具先端部とを有する外科用器具を備える。外科用システムは、外科用器具に電力を提供するコントローラを備え、コントローラは、器具のモータ又はアクチュエータ動作をモニタするように動作可能であり、コントローラは、プロセッサとメモリとを備え、メモリは、器具の動作を表す情報を含む情報を記憶するように動作可能である。本システムは、器具に結合された器具トラッカと、骨に結合される患者トラッカとを備える。
【0028】
本システムは、ローカライザを備えるナビゲーションシステムを備える。ナビゲーションシステムは、仮想空間において外科用器具を表す情報と骨を表す情報とを記憶するように動作可能である。ナビゲーションシステムは、ローカライザによって収集された情報に基づいて、動作中に仮想空間内の器具及び骨の場所を追跡するように動作可能である。ローカライザは、ローカライザ座標系に対する器具トラッカの場所と患者トラッカの場所とを位置合わせし、器具トラッカ及び患者トラッカとそれぞれ協働して器具及び骨の場所に関する情報を収集するように動作可能である。コントローラ及びナビゲーションシステムは、電子通信状態にあり、協働するように構成される。コントローラ及びナビゲーションシステムは、動作の変化に基づいて、工具先端部と骨との間の接触時点を決定する。コントローラ及びナビゲーションシステムは、接触時点において、工具先端部の追跡された場所と骨の追跡された場所との間の距離として工具・骨間オフセットを決定する。システムはまた、アラートデバイスを含み、コントローラ及びナビゲーションシステムは、工具・骨間オフセットが所定の大きさよりも大きい場合にアクションをトリガするように更に構成されている。
【0029】
追跡位置合わせを検証するために外科手術中に外科用ナビゲーションシステムを動作させる方法が提供される。外科用ナビゲーションシステムは、ローカライザ座標系を有するローカライザを含む。器具トラッカは、外科用器具に結合されている。外科用器具は、工具先端部を含む。患者トラッカは、患者の生体構造に結合されている。制御コンソールは、ローカライザと通信する。制御コンソールは、外科用器具を表すデータ及び患者の生体構造を表すデータと通信する。
【0030】
本方法は、ナビゲーションシステムを用いて外科用器具及び生体構造を追跡することと、制御コンソールを用いて、共通座標系において追跡された外科用器具を表す第1のデータ及び追跡された生体構造を表す第2のデータを記憶することとを含む。本方法は、追跡された外科用器具及び追跡された生体構造に基づいて、工具先端部が追跡された生体構造に対して所定の近接範囲内にあると判定することを含む。本方法は、工具先端部が所定の持続時間にわたって所定の大きさを超えて所定の近接範囲から離れていないと判定することを含む。本方法は、追跡された外科用器具を表す第1のデータ及び追跡された生体構造を表す第2のデータに基づいてオフセット距離を決定することを含む。本方法は、オフセット距離を所定の閾値と比較することと、オフセット距離が所定の閾値よりも大きい場合にナビゲーションシステムのアクションをトリガすることとを含む。
【0031】
任意選択で、本方法は、ディスプレイ上にプロンプトを表示すること、可聴アラートを鳴らすこと、触覚感覚を生成すること、又はそれらの組み合わせのうちの1つによって、追跡位置合わせを検証するようにユーザに促すことを含む。
【0032】
本方法において、工具先端部が生体構造に対して所定の近接範囲内にあると判定するステップは、切除されない生体構造の表面領域を画定することと、工具先端部が画定された表面領域に対して所定の近接範囲内にあると判定することとを含み得る。
【0033】
本方法において、オフセット距離は、共通座標系における工具先端部と追跡された生体構造との間の最小分離の大きさとして、又は共通座標系における工具先端部と追跡された生体構造との間の最大重複の大きさとして定義され得る。
【0034】
本方法において、工具先端部が追跡された生体構造に対して所定の近接範囲内にあると判定することは、外科用器具が追跡された生体構造に対して第1の姿勢に位置決めされることを含み得るとともに、外科用器具は、工具先端部の第1の近位点を画定し得て、オフセット距離を決定することは、第1のオフセット距離を決定することを含み得る。本方法は、工具先端部が追跡された生体構造に対して所定の近接範囲内にあると判定することを更に含み、外科用器具が追跡された生体構造に対して第2の姿勢に位置決めされることを含み、外科用器具は、工具先端部の第2の近位点を画定し得て、オフセット距離を決定することは、第2のオフセット距離を決定することを含み得る。
【0035】
オフセット距離を所定の閾値と比較するステップは、第1のオフセット距離を所定の閾値と比較することと、第2のオフセット距離を所定の閾値と比較することとを含み得る。このため、アクションを開始するステップは、第1のオフセット距離、第2のオフセット距離、又は第1のオフセット距離及び第2のオフセット距離の両方が所定の閾値よりも大きい場合にアクションを開始することを含み得る。
【0036】
外科用器具は、工具先端部で終端する細長い面を含み得て、細長い面は、細長い面に実質的に平行に延在する長手方向軸を画定し、第2の近位点は、中心線の周りの回転に対して第1の近位点から少なくとも90度にある。外科用器具は、中心点を画定する球状の面を有する工具先端部を含み得て、第2の近位点は、中心点の周りの回転に対して第1の近位点から少なくとも90度離れている。
【0037】
工具先端部が追跡された生体構造に対して所定の近接範囲内にあると判定するステップは、外科用器具が追跡された生体構造に対して第3の姿勢に位置決めされることを含み得る。外科用器具は、第3の近位点を画定し得て、第3の近位点は、第1の近位点及び第2の近位点とは異なる。オフセット距離を決定するステップは、第3のオフセット距離を決定することを含み得る。
【0038】
オフセット距離を所定の閾値と比較するステップは、第1のオフセット距離を所定の閾値と比較することと、第2のオフセット距離を所定の閾値と比較することと、第3のオフセット距離を所定の閾値と比較することとを含み得る。アクションを開始するステップは、第1のオフセット距離、第2のオフセット距離、第3のオフセット距離、又はそれらの組み合わせが所定の閾値よりも大きい場合にアクションを開始することを含み得る。
【0039】
アクションをトリガするステップは、可聴アラートを鳴らすこと、視覚アラートを表示すること、触覚アラートを起動すること、外科用器具への電力を遮断すること、又はそれらの組み合わせのうちの1つを含み得る。
【0040】
所定の閾値は、第1の所定の閾値及び第2の所定の閾値を含み得る。ナビゲーションシステムのアクションをトリガするステップは、オフセット距離が第1の所定の閾値よりも大きいが第2の所定の閾値よりも小さい場合に第1のアクションをトリガすることと、オフセット距離が第2の所定の閾値よりも大きい場合に第2のアクションをトリガすることとを含み得る。アクションは、可聴アラートを鳴らすこと、視覚アラートを表示すること、触覚アラートを起動すること、外科用器具への電力を遮断すること、又はそれらの組み合わせのうちの1つを含み得る。
【0041】
制御コンソール及びローカライザを備えるナビゲーションシステムを備える外科用システムが提供される。ナビゲーションシステムは、外科用器具を表す第1のデータ及び患者の生体構造を表す第2のデータと通信する。外科用器具は、工具先端部を含む。
【0042】
ナビゲーションシステムは、外科用器具に結合された器具トラッカ及び生体構造に結合された患者トラッカからローカライザによって収集された情報に基づいて、動作中に仮想空間内で外科用器具及び生体構造を追跡するように動作可能である。ナビゲーションシステムは、外科用器具及び生体構造を追跡し、追跡された外科用器具の姿勢及び生体構造の姿勢を共通座標系において表すデータを記憶するように構成される。
【0043】
ナビゲーションシステムは、追跡された外科用器具の姿勢及び追跡された生体構造の姿勢に基づいて、工具先端部が生体構造に対して所定の近接範囲内にあると判定するように構成される。ナビゲーションシステムは、工具先端部が所定の持続時間にわたって所定の大きさを超えて所定の近接範囲から離れていないと判定するように更に構成される。ナビゲーションシステムは、共通座標系における追跡された外科用器具及び追跡された生体構造に基づいてオフセット距離を決定するように更に構成される。ナビゲーションシステムは、オフセット距離を所定の閾値と比較するように更に構成される。
【0044】
ナビゲーションシステムは、アラートデバイスを備え得るとともに、ナビゲーションシステムは、オフセット距離が所定の閾値よりも大きい場合にアクションをトリガするように更に構成され得る。アラートデバイスはフットスイッチであり得て、フットスイッチは振動を生成するように動作可能である。
【0045】
外科処置のためのナビゲーションガイダンスを提供する方法が提供される。本方法は、患者の生体構造を共通座標系に位置合わせすることを含む。患者の生体構造は、少なくとも第1の骨及び第2の骨を含む。本方法は、外科用器具を共通座標系に位置合わせすることを含む。本方法は、患者の生体構造の第1の骨上での外科用器具の動作中に、ナビゲーションシステムを用いて患者の生体構造及び外科用器具を追跡することを含む。本方法は、第2の骨に対して本明細書に開示の方法に係るオフセット距離を決定することと、患者の生体構造の第2の骨上での外科用器具の動作中に、ナビゲーションシステムを用いて患者の生体構造及び外科用器具を追跡することとを含む。
【0046】
外科手術を行う方法が提供される。本方法は、患者トラッカを患者の生体構造に結合することと、器具トラッカを外科用器具に結合することとを含み、外科用器具は工具先端部を含む。本方法は、ナビゲーションシステムを動作させて、器具トラッカ及び患者トラッカを共通座標系に位置合わせし、外科用器具及び患者の生体構造を追跡することを含む。本方法は、所定の持続時間の間、患者の生体構造と接触している工具先端部を休止させて、位置合わせ検証を開始することを含む。ナビゲーションシステムは、追跡された外科用器具及び追跡された患者の生体構造に基づいてオフセット距離を決定するように構成される。本方法は、所定の閾値に対してオフセット距離を評価することを含む。
【0047】
ナビゲーションシステムは、オフセット距離の評価の結果により、オフセット距離が所定の閾値よりも大きいと判定された場合にアクションをトリガするように構成され得て、アクションは、可聴アラートを鳴らすこと、視覚アラートを表示すること、触覚アラートを起動すること、外科用器具への電力を遮断すること、又はそれらの組み合わせのうちの1つを含み得る。本方法はまた、ナビゲーションシステムに入力を提供して、トリガされたアクションを終了させることを含み得る。
【0048】
工具先端部を生体構造と接触させて休止させるステップは、第1の時点で第1の生体構造接触点と接触している工具先端部を休止させることを含み得る。外科用器具は、第1の時点で、第1の姿勢にあり得るとともに、工具先端部の第1の近位点が第1の生体構造接触点と接触し得る。本方法は、第2の時点で第2の生体構造接触点と接触している工具先端部を休止させることを更に含み得る。外科用器具は、第2の時点で、第2の姿勢にあり得るとともに、工具先端部の第2の近位点が第1の生体構造接触点と接触し得る。ナビゲーションシステムは、第1の生体構造接触点と第1の近位点とに基づいて第1のオフセット距離を決定し、第2の生体構造接触点と第2の近位点とに基づいて第2のオフセット距離を決定するように構成され得る。
【0049】
オフセット距離を評価するステップは、所定の閾値に対して第1のオフセット距離を評価すること、所定の閾値に対して第2のオフセット距離を評価すること、又はそれらの組み合わせのうちの1つを含み得る。
【0050】
患者の生体構造は、第1の骨及び第2の骨を含み得るとともに、本方法は、外科用器具を第1の骨に適用して動作させることと、外科用器具を第2の骨に適用して動作させることとを更に含み得る。工具を休止させて位置合わせ検証を開始するステップは、第1の骨に適用して外科用器具を動作させた後、かつ第2の骨に適用して外科用器具を動作させる前に、第2の骨と接触して行われ得る。
【0051】
本開示の他の目的、特徴及び利点は、添付図面に関連して後続する説明を読んだ後により十分に理解されることになるため、容易に認識されよう。
【0052】
他の利点は、添付の図面に関連して考慮されるとき、以下の詳細な説明を参照することによってより良く理解されるように、容易に認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】ナビゲーション支援手術を行う際に使用するための一連の外科用工具を備える外科用システムの説明図である。
図2】ナビゲーション支援手術を行う際に外科用工具とともに使用されるナビゲーションシステムの斜視図である。
図3】ローカライザ座標系及び外科用器具に接続されたトラッカのトラッカ座標系を示す図である。
図4A】第1の関係にある外科用器具及び骨を示す図である。
図4B】第1のエラー状態での図4Aに示される関係についてのナビゲーションディスプレイの表現を示す図である。
図5A】第2の関係にある外科用器具及び骨を示す図である。
図5B】第2のエラー状態での図5Aに示される関係についてのナビゲーションディスプレイの表現を示す図である。
図6】切断動作に関する経時的なアクチュエータ動作のチャートを示す図である。
図7】骨に対して外科用器具をナビゲートする第1の方法を示すフローチャートである。
図8】骨に対して外科用器具をナビゲートし、工具・骨間のオフセットを決定する第2の方法を示すフローチャートである。
図9】追跡位置合わせ検証を実行する方法を示すフローチャートである。
図10】追跡位置合わせ検証を実行する第2の方法を示すフローチャートである。
図11】追跡位置合わせ検証を実行するための追加のステップを示すフローチャートである。
図12】骨と接触する細長い面を有する外科用器具を示す図である。
図13】骨と接触する球状の面を有する外科用器具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1に、患者に対してナビゲーション支援手術を行う際に使用するための一連の外科用工具を備える外科用システム10を示す。図1に示すバージョンは、外科用ナビゲーションシステム20を含む。外科用ナビゲーションシステム20は、手術室内の種々の物体の動きを追跡するように構成されている。斯かる物体には、例えば、外科用工具及び患者の生体構造が含まれる。外科用ナビゲーションシステム20は、これらの物体の相対的な位置及び向きを外科医に示す目的で、また一部の場合では、外科用工具の動作に関連する或る特定の事象又は発生を外科医に警告する目的で、これらの物体を追跡する。例えば、仮想的な切断境界を患者の生体構造に関連付けることができ、システム10は、外科用工具が切断境界に接近したときに外科医に警告してもよく、又は外科用工具が切断境界を超えた場合に工具を停止させてもよい。
【0055】
ナビゲーションシステム20は、ナビゲーションコンピュータ26を収容するコンピュータカートアセンブリ24を含み得る。ナビゲーションインターフェースは、ナビゲーションコンピュータ26と動作可能に通信する。ナビゲーションインターフェースは、外科手術の滅菌野の外側に位置する第1のディスプレイ28を含み、また、滅菌野の内側に位置する第2のディスプレイ29を含み得る。ディスプレイ28、29は、コンピュータカートアセンブリ24に調整可能に取り付けられている。ナビゲーションコンピュータ26に情報を入力するために、或いはナビゲーションコンピュータ26の動作の或る特定の態様を選択又は制御するために、キーボード、マウス、トラックボール等の1つ以上の入力デバイス(不図示)を設けることもできる。さらに、入力の代替形態を容易にするために他のハードウェアが提供されてもよい。例えば、ジェスチャ制御による入力を可能にするために1つ以上のディスプレイにセンサが設けられてもよく、又は音声コマンド制御のためにマイクロフォンが設けられてもよい。
【0056】
ローカライザ34は、ナビゲーションコンピュータ26と通信する。図示の例では、ローカライザ34は光学ローカライザであり、カメラユニット36を含む。カメラユニット36は、1つ以上の光学センサ40を収容する外側ケーシング38を有する。複数の光学センサ40は、共通の支持構造に堅固に取り付けることができる。外側ケーシングは、複数の光学センサ40のための共通の支持構造を提供することができる。あるいは、複数の光学センサに共通の剛性支持構造は、それとは別個の外側ケーシング38によって覆われていてもよい。図1に示すように、複数の光学センサ40は、細長いカメラユニット36の両端に配置され、その結果、光学センサ40は、手術部位に対して立体視的に配置される。
【0057】
可視スペクトル又は近可視スペクトル内の電磁エネルギーのセンシングに基づいて物体を位置特定及び追跡するためのカメラ技術を含む光学ローカライザに関連して説明するが、他の位置特定及び追跡の技術を使用してもよい。例えば、マイクロ波又は電波スペクトルの電磁エネルギーを代わりに、又は加えて使用してもよい。同様に、音波エネルギー又は超音波エネルギーを、物体を位置特定及び追跡するための別の代替技術としてもよい。物体の追跡及び位置特定に有用なこれらの技術の共通の特徴は、ナビゲーションシステムにより、追跡及びセンシングされる物体においてエネルギーを生成又は反射して、物体の位置を決定できることである。
【0058】
図1に示すような一部の代替形態では、2つの光学センサ40が採用される。他の代替形態では、手術部位及びその中に存在するトラッカの視野を遮らないようにするために、光学センサ40の第1のセットとは更に別の、追加の光学センサが設けられてもよい。光学センサ40は、放射エネルギー、例えば光を、電流の小さなバーストとしての信号に可変減衰することができ、該電流は電子デバイス間で情報として伝達することができる。
【0059】
カメラユニット36は、さらに、又は代替的に、ビデオカメラ41又は他の追加のセンシングデバイス(不図示)を含み得る。ビデオカメラ41には、光学センサ40に採用されるものと同様の又は異なる光センシング技術が含まれ得る。例えば、光学センサ40は、赤外線スペクトル又は近赤外線スペクトル内のエネルギーをセンシングするように構成されてもよく、ビデオカメラ41は、可視スペクトル内の光を送信するように構成されてもよい。
【0060】
光学センサ40は、別個の電荷結合素子(CCD)であり得る。一部の代替形態では、2つの2次元CCDが採用される。一部の場合では、光学センサ40は、立体視動作のために配置される。他の代替形態では、光学センサ40は、深度センサ、レーザ測距器等と組み合わされた単一カメラであり得る。他の代替形態では、それぞれが別個のCCD又は2つ以上のCCDを有する複数の別個のカメラユニット36が手術室の周りに配置され得ることを理解されたい。追加の光学センサは、ナビゲーションシステム20が、外科手術全体を通して、光学センサ40のうちの1つ以上を介して手術部位の視野を遮らないように維持することを確実にするのに役立つ。光学センサ40は、赤外線(IR)放射エネルギーを検出することができるCCDを含み得る。光学センサには、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)アクティブピクセルセンサ等を含むが、それらに限定されない、他のセンシング技術を採用してもよい。
【0061】
カメラユニット36は、カートアセンブリ24の調整可能アーム又は他の関節式支持構造上に取り付けることができ、これにより、ローカライザ34を、(以下で説明されるように)患者の生体構造及びトラッカが位置決めされることになる手術部位を含む標的空間の、好ましくは遮られていない視野を用いて、選択的に位置決めすることができる。一部の場合では、カメラユニット36は、回転ジョイントの周りに回転することによって少なくとも1つの自由度で調整可能である。他の代替形態では、カメラユニット36は、2つ以上の自由度について調整可能である。複数のカメラユニット36が採用される場合、その各々は、手術環境の周りに選択的に位置決めするために個々に取り付けられ得る。或いは、カート構造24は、複数の調整可能アームを支持して、複数のカメラユニット36を支持してもよい。
【0062】
カメラユニット36は、光学センサ40と通信して光学センサ40から信号を受信するカメラコントローラ42を更に含む。カメラコントローラ42は、有線接続又は無線接続(不図示)のいずれかを通じてナビゲーションコンピュータ26と通信する。かかる接続の1つは、IEEE1394インターフェースとすることができ、これは、高速通信及び等時性リアルタイムデータ転送のためのシリアルバスインターフェース規格である。他の適切な接続タイプとして、イーサネット、サンダーボルト、USBインターフェース、PCIエクスプレス、DisplayPort等が挙げられる。この接続は、企業特有のプロトコル又は独自プロトコルを使用することもできる。他の代替形態では、ナビゲーションコンピュータがカメラコントローラ42の機能を組み込み、したがってカメラコントローラ42として動作するように、光学センサはナビゲーションコンピュータ26と直接通信することができる。光学センサからの信号の処理は、カメラコントローラ42で行われ得る。代替的に、カメラコントローラ42は、処理のために信号をナビゲーションコンピュータ26に通信し得る。処理のためにナビゲーションコンピュータ26に信号を通信する際に、カメラコントローラ42は、何らかの前処理調整、再フォーマット、変換等を実行することができる。
【0063】
ナビゲーションコンピュータ26は、パーソナルコンピュータ又はラップトップコンピュータであり得る。ナビゲーションコンピュータ26は、ディスプレイ28、29と通信し、中央処理装置(CPU)、他のプロセッサ、メモリユニット、データ記憶ユニット、及びそれらの組み合わせを有する。ナビゲーションコンピュータは以下に説明するようなソフトウェアを備えている。ソフトウェアは、カメラユニット36、カメラコントローラ42又は光学センサ40から受信した信号を、追跡されている物体の位置及び向きを表すデータに変換する。位置信号及び向き信号、又はそれらの信号から導出されたデータは、物体を追跡する目的でナビゲーションコンピュータ26によって使用される。カートアセンブリ24、ディスプレイ28、及びカメラユニット36は、2010年5月25日に発行されたMalackowskiらの「Surgery System」と題する米国特許第7,725,162号(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に説明されたものと同様のものとすることができる。
【0064】
ナビゲーションシステム20を含む外科用システム10は、種々の外科用工具システムとともに動作するように構成することができる。図1は、代表的な利用可能な工具システムを示しているが、本開示の範囲から逸脱することなく、他の選択肢が利用可能であるか、又は将来利用可能になる可能性があることを理解されたい。
【0065】
外科用システム10は、コードレス電動工具に接続して使用することができる。コードレス電動工具は、矢状鋸、往復鋸、回転ドリル、胸骨鋸等を含み得る。図1の例では、コードレス電動工具はコードレス電動ドライバ60として示されている。コード付き電動工具も使用可能であることを理解されたい。かかるコードレス電動ドライバ60の工具の一例は、Stryker社によって販売されているSystem 8 Cordless Driverである。ドライバ60は、ドライバ60に電力を供給するバッテリユニット61を含む。バッテリユニット61は、充電可能なバッテリパックを含み得る。バッテリユニット61は、スマートバッテリパックであり得て、該スマートバッテリパックは、ドライバ60とナビゲーションコンピュータ26との間の通信を容易にするための電子機器及びプログラミングを有するデータモジュール62を含む。
【0066】
ドライバ60は、データモジュール62と動作可能に通信するドライバコントローラ64を含み得る。或いは、ドライバコントローラ64及びデータモジュール62の両方の機能を提供する単一のコンピュータモジュールが提供されてもよい。ドライバコントローラ64は、ドライバ60の動作を制御し、トリガ63、65、ドライバモータ68、及びドライバ60内に含まれる他のセンサ又は器具類等の入力制御と通信する。一例では、温度センサが含まれ、ドライバモータ68の過熱を検出して、ドライバコントローラ64によってドライバ60の動作を無効にすることができる。
【0067】
ドライバ60には、トラッカ70が設けられている。トラッカ70は、アクティブ型トラッカ又はパッシブ型トラッカであり得る。アクティブ型トラッカは、電源を必要とするものであり、光学センサ40によって検出可能な波長の放射線をアクティブに生成及び放出するマーカ72(追跡要素又は基準とも称される)のアレイを有する。アクティブ型トラッカのマーカ72は、例えば赤外線LEDを含む発光ダイオード(LED)であってもよい。アクティブマーカのアレイは、「常時オン」状態であってもよく、又は、外科用ナビゲーションシステム20からのコマンドに応じて選択的に発射(すなわち、放射線を放出)するように動作可能に「オン」状態となってもよい。かかる選択的発射アクティブトラッカでは、トラッカは、外科用ナビゲーションシステム20のナビゲーションコンピュータ26と有線接続又は無線接続によって通信することができる。アクティブトラッカは、内部バッテリで電力供給されてもよく、又は外部接続された電源から電力を受け取るリード線を有してもよい。
【0068】
或いは、トラッカ70はパッシブ型トラッカであり得る。すなわち、マーカ72のアレイは、周囲放射エネルギー又はターゲット空間に放出された放射エネルギーを反射することができる。例えば、カメラユニット36は、1つ以上の赤外線LEDを備え、マーカ72によって反射され、その後、光学センサ40によってセンシングされる赤外線エネルギーを放出してもよい。パッシブトラッカは、通常、電源を必要としない。
【0069】
光反射マーカ又は発光マーカを含む光学技術を参照して説明されているが、ローカライザのセンシング技術と一致する他のトラッカが使用されてもよい。例えば、ローカライザは電磁場発生器を含んでもよく、トラッカには、コイル又はコイルアレイを採用してもよい。この技術の使用例は、「Coil Arrangement for Electromagnetic Tracking Method and System」と題する米国特許第8,249,689号の開示から理解することができ、その全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0070】
外科用システム10はまた、汎用統合コンソール又は器具プラットフォームとともに使用することができる。汎用プラットフォーム80は、コンソール82と、フットスイッチ4と、電動外科用器具86とを備える。コンソール82は、接続済みの器具86を制御し、それに電力を供給する。器具86は、小型骨整形外科用鋸又はドリル、高速ドリル(例えば、神経用途又は脊椎用途)、ENTシェーバ、関節シェーバ、骨ミル等であり得る。かかる汎用プラットフォームの一例は、Stryker社によって販売され、「System And Method For Driving An Ultrasonic Handpiece As A Function Of The Mechanical Impedance Of The Handpiece」と題する国際出願公開第2015/021216号に説明される、Core 2 Console電動器具ドライバ、及び関連する工具であり、その全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする。コンソール82は、コンソールとナビゲーションコンピュータ26との間の通信を容易にするデータモジュール88を含む。
【0071】
上述したドライバ60と同様に、器具86にはトラッカ90が設けられている。器具トラッカ90は、ドライバトラッカ70と同様であり、マーカ72の配列を含む。マーカ72は、アクティブ型又はパッシブ型とすることができ、カメラユニット36によってセンシングされて、器具86の位置及び向きを追跡及びモニタする。
【0072】
外科用システム10はまた、超音波吸引器システム100とともに使用され得る。超音波吸引器システム100は、コンソール102、フットスイッチ104、及び吸引器工具106を備える。コンソール102は、接続済みの吸引器工具106を制御し、それに電力を供給する。かかる超音波吸引器システムの一例は、Stryker社によって販売されているSONOPET iO Ultrasonic Aspiratorである。コンソール102は、コンソールとナビゲーションコンピュータ26との間の通信を容易にするデータモジュール108を含む。
【0073】
工具106には、器具トラッカ90及びドライバトラッカ70と同様のトラッカ110が設けられている。工具トラッカ110は、工具106の位置及び向きを追跡及びモニタするためにカメラユニット36によってセンシングされる、上述のようにアクティブ又はパッシブであり得るマーカ72の配列を含む。図1から分かるように、ドライバトラッカ70、器具トラッカ90、及び工具トラッカ110は、マーカ72の配列に基づいて区別可能である。本明細書で提供される説明、及び「工具トラッカ」又は「器具トラッカ」等の名称は、限定することを意図するものではなく、単に、本開示とともに使用するために利用可能な外科用物品を区別するために使用される。トラッカは、2010年5月25日に発行されたMalackowskiらの「Surgery System」と題する米国特許第7,725,162号に示されている方法で取り付けることができ、その開示内容は引用することにより本明細書の一部をなすものとする。或いは、トラッカは、2017年2月14日に発行されたMalackowskiらの「Navigation Systems and Method for Indicating and Reducing Line-of-Sight Errors」と題する米国特許第9,566,120号に示されているように取り付けることができ、その開示内容は引用することにより本明細書の一部をなすものとする。更に別の代替形態では、トラッカは、当技術分野で従来通りの他の方法で取り付けられてもよい。
【0074】
外科用物品上に取り付けられ、そこから延在する別個の構造として示されているが、トラッカは、代替的に、物品自体の構造に一体化されてもよい。例えば、マーカ72は、追跡される工具又は器具の構造内部に直接形成されてもよい。更に別の代替形態では、物品自体の構造又は特徴をトラッカとして使用して、専用マーカを省略することができる。かかる場合、物品の表面又は縁部は、ナビゲーションシステムに認識可能となり、物品の位置及び向きを追跡するために使用され得る。さらに、マーキング又はパターンが物品の表面上に含まれて、トラッカとして使用されてもよい。例えば、線形バーコード、又は2Dバーコード(QRコード(登録商標)としても知られる)は、物品を追跡するために、手術を通してカメラユニット36に可視のままである物品の表面上に特徴付けることができる。
【0075】
続いて図2に、外科用システム10を、コンソール82、フットスイッチ84及び器具86を含む汎用工具プラットフォーム80とともに使用するための例示的な手術環境において示す。手術部位には、患者の生体構造の術中撮像を提供するためのCアームコンピュータ断層撮影(CT)システム120も設けられる。CTシステム120とともに図示されているが、MRI、X線、又はビデオ撮影を含む他の撮像技術が術中撮像に採用されてもよい。概して、選択された技術にかかわらず、イメージャはナビゲーションコンピュータ26と通信する。イメージャからの情報は、手術において治療される組織の3Dモデル等の患者の生体構造の仮想表現を準備するために使用される。仮想表現を準備するプロセスは、画像データのセグメント化を通じて行うことができる。セグメント化は、例えば機械学習による自動化プロセスであってもよい。例示的なプロセスは、2019年2月5日に発行された「Image Analysis」と題する米国特許第1,0198,662号、及び2014年10月21日に発行された「Image Processing Method」と題する米国特許第8,867,809号に開示されている。イメージャからの情報を使用し、治療すべき組織上に更なるトラッカ、患者トラッカ130を固定することにより、組織のモデルをナビゲーションシステム20内に表示し、外科手術の過程で追跡することができる。
【0076】
最初に、手術中に位置特定及び追跡の対象となる物体が、光学センサによって観察され識別される。追跡される物体を選択し、ナビゲーションコンピュータ26に接続済みの入力デバイスを使用することによって、物体を識別することができる。ナビゲーションコンピュータ26は、ナビゲーションコンピュータ26上のメモリ又はデータストレージに多数の物体に関する詳細な情報を記憶することができ、ユーザは、物体のデータベースから、追跡される物体を手動で選択することができる。
【0077】
加えて、又は代替的に、ナビゲーションコンピュータ26は、術前の手術計画に基づいて追跡される物体を識別してもよい。この場合、ナビゲーションコンピュータ26は、予め記述された手術ワークフローにおいて使用され得るワークフロー物体のプリセットリストを有し得る。ナビゲーションコンピュータ26は、ソフトウェアを使用してワークフロー物体をアクティブに検索し、位置を特定することができる。例えば、種々の物体の異なるサイズ及び形状に関連する画素群が、ナビゲーションコンピュータ26に記憶されてもよい。位置特定及び追跡される物体を選択又は識別することによって、ソフトウェアは、対応する画素群を識別し、次いでソフトウェアは、従来のパターン認識技術を使用して同様の画素群を検出するように動作する。
【0078】
それに加えて、又は代替的に、位置特定及び追跡される物体は、ユーザのうちの1人が1つ以上のディスプレイ28、29上で追跡される物体の輪郭を描くか、又は選択するインターフェースを使用することで、識別することができる。例えば、光学センサ40又はビデオカメラ41によって撮影された手術部位の画像は、ディスプレイ28、29のうちの1つ以上に表示されてもよい。次いで、ユーザは、マウス、デジタルペン等を使用して、ディスプレイ28又は29上で位置特定又は追跡される物体をトレースする。ソフトウェアは、トレースされた物体に関連する画素をそのメモリに記憶する。ユーザは、ソフトウェアを使用して物体に名前を付ける等、一意の識別子によって各物体を識別することができ、それにより、保存された画素群を一意の識別子に関連付けることができる。このようにして複数の物体を記憶することができる。ナビゲーションコンピュータ26は、従来のパターン認識及び関連するソフトウェアを利用して、これらの物体を後で検出する。ナビゲーションシステム20は、連続的に画像を撮影し、画像をレビューし、物体に関連する画素群の移動を検出することによって、これらの物体の移動を検出することができる。
【0079】
従来の外科用ナビゲーションシステムでは、追跡される物体は、最初にナビゲーションポインタPを使用して位置合わせされる。例えば、ナビゲーションポインタPは、一体化されたトラッカPTを有してもよい。ナビゲーションコンピュータ26は、ポインタトラッカPTに対するポインタPの先端部の場所に対応する初期データを記憶することができ、それにより、ナビゲーションシステム20は、ローカライザ座標系LCLZにおいてポインタPの先端部の位置を特定して追跡することができる。したがって、外科処置の開始前に、全ての物体がそれらの所望の場所に位置すると、ユーザのうちの1人は、上述の入力デバイスのうちの1つを使用してナビゲーションシステム20内の物体を識別しながら、ポインタPを用いて全ての物体に触れることができる。したがって、例えば、ユーザがポインタPの先端部で器具86に触れた場合、ユーザは、(フットペダル等の別の入力デバイスを介して)ローカライザ座標系LCLZにおけるその点の収集を同時にトリガすることができる。点が収集されると、ユーザは、(タイピング、物体のリストからのプルダウン選択等を介して)物体の識別情報をナビゲーションソフトウェアに入力することもできる。
【0080】
図示しているように、カメラユニット36は、トラッカ70、90、110のマーカ72から光信号を受信し、ローカライザ34に対するトラッカの位置に関する信号をナビゲーションコンピュータ26に出力する。受信した信号に基づいて、ナビゲーションコンピュータ26は、ローカライザ34に対するトラッカ70、90、110の相対的な位置及び向きを示すデータを生成する。
【0081】
外科処置の開始前に、追加のデータがナビゲーションコンピュータ26にロードされる。トラッカ70、90、110の位置及び向きと、トラッカが取り付けられる物体の幾何形状を表す仮想物体データ等の過去にロードされたデータとに基づいて、ナビゲーションコンピュータ26は、外科用物品(例えば、ドリルポイント、吸引器先端部等)の作業端の位置と、作業端が当てられる組織に対する物品の向きとを決定する。
【0082】
ナビゲーションコンピュータはまた、組織に対する外科用器具の作業端の相対位置を示す情報を生成する。この情報は、有用な画像にレンダリングされ、ディスプレイ28、29に適用することができる。表示に基づいて、ユーザは、手術部位における組織に対する外科用器具の作業端の相対位置を見ることができる。ディスプレイ28、29は、上述したように、コマンドの入力を可能にするタッチスクリーン30又は他の入出力デバイスを含み得る。
【0083】
次に図3に示すように、手術部位における物体の追跡は、概して、ローカライザ座標系LCLZを参照して行われる。ローカライザ座標系は、原点と、相対的なx軸、y軸、及びz軸を定めた向きとを有する。外科手術中、ローカライザを静止位置に維持することが好ましい。カメラユニットに搭載された加速度計(不図示)は、カメラユニット36が手術担当者によって不注意にしたときに起こり得るような、ローカライザ座標系LCLZの突然の又は予期せぬ移動を追跡するために使用することができる。
【0084】
外科用物品又は患者の生体構造に関連付けられた各トラッカ70、90、110は、ローカライザ座標系LCLZとは別の、それ自体の座標系を有する。図3に示すように、工具トラッカ90に関連付けられた座標系は、それ自体の原点と、相対的なx軸、y軸、及びz軸を定めた向きとを有する。ナビゲーションシステム20は、ローカライザ34を通じて、ローカライザ座標系に対するトラッカの原点及び向きの相対的な変化を算出することにより、外科用物品及び患者の生体構造の位置及び向きをモニタする。
【0085】
外科処置の初期段階の間、トラッカは、物品(製造時に提供されない場合)及び追跡される生体構造に固定される。かかる各品目の姿勢は、その品目に対するトラッカの座標系にマッピングする必要がある。この位置合わせ又は較正ステップにより、追跡対象物品の幾何形状の仮想表現と、関連付けられたトラッカの座標系との間の固定された関係が生成される。このようにして、トラッカのセンシングされた移動は、例えばローカライザLCLZの共通座標系における他の追跡対象物品に対するナビゲーションコンピュータ26による追跡対象物品の対応する移動を用いて、仮想的に表すことができる。
【0086】
ナビゲーションシステムは、ロボット制御外科用システムとともに使用されているが、電動外科用工具を使用する手動手術のためのナビゲーションガイダンスを提供するための改善された方法が必要とされている。本開示によれば、患者の生体構造に対する器具工具先端部の位置を検証するために、外科用器具をナビゲートする改善された方法が提供される。
【0087】
第1の例示的な場合では、外科用器具は、ドライバモータ68等の可変速モータを含む。可変速モータはコントローラによって制御される。例えば、可変速モータは、電動ドライバ60の場合、ドライバコントローラ64から制御信号を受信してもよい。別の例では、汎用工具プラットフォーム80の場合、器具86内の可変速モータを制御する制御信号は、汎用コンソール82から受信してもよい。以下の説明は、特定の工具又は工具タイプの文脈で説明することができる。これは、限定することを意図するものではなく、方法及びシステムは、他の現在知られている又は将来開発される外科用工具、工具システム等を用いて実践されてもよい。さらに、1つの方法のステップは、任意の他の方法の文脈において実践されてもよく、1つの開示されたシステムの特徴は、本開示の範囲から逸脱することなく、任意の他の特徴とともに実践されてもよい。
【0088】
可変速モータのための制御信号に関して前の段落で説明したが、これは限定ではなく、他の代替アクチュエータが本開示の範囲内で企図される。例えば、超音波吸引器の場合、可変速モータは採用されず、むしろ吸引器コンソール102からの制御信号が吸引器工具106の動作を制御してもよい。吸引器工具106は、例えば、工具のアクチュエータとしての圧電変換器によって駆動される、その軸に沿って長手方向に振動する中空の先端部を含む。振動は、超音波に対応する周波数で生じる。先端部の長手方向の振動は、そのハンマリング効果によって細胞膜を破壊する。高周波振動により熱が生じるため、保護シースが流体を運び、先端部に灌注する。灌注強度は、先端部から組織への熱の印加を調節するために必要に応じて変更することができる。灌注が小さい場合、超音波吸引によって生じた熱を切断又は凝固の目的で使用することができる。吸引器工具106を介して吸引を行い、断片化された組織を除去するとともに、先端部を通じて灌注を行うこともできる。制御信号の動作特性をモニタすることによって、システムは、工具先端部が自由空間内で動作しているとき、又は組織と接触して動作しているときを検出することができる。
【0089】
外科用物品の種類にかかわらず、物品が自由空間内にある間に物品を動作させることは、物品が骨又は皮膚等の軟組織を含む患者の生体構造と接触している間に物品を動作させることとは異なる特徴を有する場合がある。電動ドライバ60、又は可変速モータを有する他の物品の場合、モータに供給される電力は、自由空間で動作するときに或る特定の回転速度をもたらす。ドリル、バー、又は他の工具タイプが、材料除去のために組織と接触しているとき等、モータの回転に対して印加される抵抗が存在する場合、モータに供給される電力が調整されない限り、回転速度が減少する場合がある。例えば、工具がいかなる組織とも接触していない場合に対し、一定の回転速度を維持するために、電流又は電圧を切断中に増加させてもよい。同様に、他のアクチュエータを採用しモータによって駆動されない工具は、組織と接触していない場合に第1の条件下で動作してもよく、組織と接触している場合に第1の条件とは異なる第2の条件下で動作してもよい。かかる非モータ駆動の工具は、同様に、本明細書に開示される説明される方法及びシステムとともに実践されることが企図される。
【0090】
外科用物品を駆動するコントローラは、物品上のセンサと通信して、物品を動作させるための制御信号を提供し、また、動作状態をモニタする。例えば、電動ドライバ60において、ドライバコントローラ64は、ドライバモータ68の瞬時回転速度、印加電力、電圧、電流、温度等を示す信号を受信してもよい。この信号は、毎秒数回の頻度でコントローラによって受信することができる。例えば、その頻度は、約60Hz、約100Hz、約1000Hz、又は他の好適な周波数であってもよい。超音波吸引器システム100等、モータを採用しない他の例では、コントローラ、この場合、吸引器コンソール102、は、物品、すなわち、吸引器工具106の動作状態を示す1つ以上の信号を受信してもよい。具体的には、吸引器コンソール102は、工具先端部における温度、工具先端部を通る灌注の流量、吸引に適用される真空等をモニタすることができる。
【0091】
コントローラは、メモリ若しくはデータストレージを備えてもよく、又はメモリ若しくはデータストレージと通信してもよく、それにより、動作状態を記録時間に対して記録することができる。コントローラは、外科用物品が動作を開始するときに動作状態の記録を開始してもよく、動作の持続時間全体を通してそれを継続してもよい。コントローラは、モニタされた動作状態を分析して、外科用物品が患者の生体構造と接触せずに動作している場合の第1の特性動作状態を定めることができ、外科用物品が患者の生体構造と接触しながら動作している場合の第2の特性動作状態を更に定めることができる。モニタされた動作状態は、特定の工具に従って定めることができる。モータ駆動工具の場合、動作状態は、印加電力、電流、電圧、回転速度等であってもよい。
【0092】
上述したように、ナビゲーションシステム20は、外科手術を通じて外科用物品及び患者の生体構造の位置を追跡及びモニタする。ナビゲーションシステム20は、ナビゲーションコンピュータ26を通じ、外科手術で採用される外科用物品を制御する1つ以上のコントローラと通信する。外科用物品のモニタされた動作状態を利用して、外科用物品の追跡位置を検証することができ、必要であれば、エラー状態を判定することができる。
【0093】
ナビゲーションシステム20は、外科用物品及び患者の生体構造の仮想表現を維持して、それらの相対位置をディスプレイ28、29上に図示し、視覚的にレンダリングする。しかしながら、手術中に、トラッカが変位する場合がある。工具の摩耗又は患者からの組織除去により、仮想モデルの、物理的な対応物に対する忠実度が変化する場合がある。したがって、ナビゲーションシステム20における仮想表現の外科手術に対する精度及び信頼性が悪影響を受ける可能性がある。ナビゲーションシステム20における仮想表現を動作状態と比較することにより、システム精度の重要な検証を提供することができる。具体的には、ナビゲーションシステム20が、外科用物品の仮想モデルが患者の生体構造と接触していることを示すが、動作状態が、物品と生体構造との間に接触がないことを示した場合、エラー状態と判定され、適切な修正アクションを行うことができる。
【0094】
図4Aに、外科用物品と生体構造との間に接触がない第1の関係にある外科用物品及び患者の生体構造を示す。図示の例では、外科用物品は器具86であり、具体的には、工具先端部87を含む器具86の部分である。外科手術の標的となる、図4Aに示す患者の生体構造は、骨(椎骨V)である。器具86は、汎用コンソール82によって通電することができ、該汎用コンソール82は、器具86の電力、電圧、電流、及び/又は回転速度を含む器具86の動作のパラメータを同様にモニタする。図4に示すように、器具86は第1の動作を有し、該第1の動作は、自由空間、すなわち、骨(椎骨V)と接触していない空間内での動作のためのモニタされたパラメータに従って、コンソール82によって特徴付けられ得る。
【0095】
図6に、経時的なモータ動作の例示的なグラフ160を示す。第1のフェーズ162では、器具は給電されておらず、したがってモータ動作は最低レベルにあり、静止している。その後の或る時点Tで、器具に電源が投入され、器具は第1の動作状態164となるように回転し、その後、Tで患者の生体構造と接触する。外科処置中に患者の生体構造と接触している間、モータ動作は、より高いレベル166となる。器具は、処置後に生体構造との接触から解かれ(168)、次いで、非給電状態に戻ることができる(170)。
【0096】
図4Bに、ナビゲーションシステム20によって表示される例示的なユーザインターフェース140を示す。ナビゲーションシステム20は、器具86と、接触対象の骨(椎骨V)との間の関係を判定する。ユーザインターフェース140は、ディスプレイ上でいくつかのセクションに分けられており、セクション毎に異なる情報を表示することができる。ユーザインターフェース140の第1のセクション142にて、外科用物品及び患者の生体構造の仮想表現は、(1)ナビゲーションシステム26のメモリに記憶され得るそれらの品目のモデルと、(2)器具トラッカ90及び患者トラッカ130を読み取る光学センサ40により検出されたデータに基づいて判定される外科用物品及び患者の生体構造の関連する位置と、に基づいて示される。
【0097】
ナビゲーションシステム20は、患者の生体構造に対する外科用物品が接触しているか又は接触していないとして判定された関係を、モニタされた動作パラメータと比較して、ナビゲーションガイダンスの精度を検証することができる。図4A及び図4Bに図示した例では、エラー状態が存在しており、ナビゲーションシステム20は、器具86の工具先端部87と椎骨Vとが接触していると判定しているものの、モニタされた動作パラメータは、器具86が工具先端部87と椎骨Vとの間に接触がない図4Aに示すような関係にあることに対応している。
【0098】
ナビゲーションシステム20又はコンソール82は、エラー状態の判定に応じてアクションをトリガすることができる。例えば、ユーザインターフェース140のツールバー領域146内で視覚アラート144を起動してもよい。視覚アラート144は、ディスプレイ28、29上の閃光又は点滅インジケータライトであってもよい。他の視覚アラートは、代替として、又は組み合わせて、コンソール82上、コンピュータカートアセンブリ24上、カメラユニット36上、又は他の場所に、インジケータライトを含んでもよい。他の視覚アラートは、ユーザアクションのためのプロンプト、情報表示、又は他の形状、形態、写真等の形態をとってもよい。
【0099】
エラー状態の判定に応じて、他のアクションをトリガすることもできる。トリガされるアクションには、エラー状態に関する特定の情報を表示すること、エラー状態を修正するための是正アクションを提案すること、又はそれらの組み合わせが含まれ得る。図4Bにおいて、エラー情報148は、ユーザインターフェース140の、第1のセクション142とは別の領域に表示することができる。エラー情報148は、エラーが検出されたことを示すことができる。エラー情報148は、エラーの性質を示すことができ、この場合、ナビゲーションシステム20は、器具86が骨すなわち椎骨Vと接触していると判定しているものの、モータの動作は、工具と骨との間に接触がないことを示している。エラー情報148は、代替として、又は組み合わせて、是正アクションが推奨されること、さらに、特定の状態に対して好ましい是正アクションに何が含まれ得るかを示すことができる。ナビゲーションシステムにより骨と工具との間に接触があると判定されたが、モータ動作が接触したことを示していない場合、是正アクションとして、組織が骨から除去され、実際の骨表面がもはや仮想モデルに反映されていないことを反映できるように骨モデルを更新することを必要とする場合がある。
【0100】
エラー状態の検出時にトリガされるアクションは、視覚アラートに加えて、又は代替的に、他のアクションを含み得る。トリガされるアクションには、可聴アラートを鳴らすこと、触覚アラートを起動すること、外科用器具への電力を遮断すること、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上が含まれ得る。可聴アラートを鳴らすことは、任意の種類の音声アラーム、ビープ音、ブザー等を含み得る。視覚アラートを表示することは、判定されたエラー状態の性質を示すプロンプトをナビゲーションシステム20のディスプレイ28、29のうちの1つ以上に表示することを含み得る。触覚アラートを起動することは、器具若しくはフットスイッチの振動機能部、又はその両方の振動機能部に通電することを含み得る。振動は、ユーザが振動のタイプのみに基づいて異なるタイプのエラーを区別することができるように、エラーのタイプに関連付けられた振動のパターンとして特徴付けられてもよい。
【0101】
図5A及び図5Bに別の状況を示す。図5Aにおいて、器具86の工具先端部87は、骨(椎骨V)と接触している。この状況において、モータ動作は、図6に示されるモニタされたモータ動作のより高いレベル166にある。時点Tにおいて、コンソール82は、モータ動作が、自由空間における動作、すなわち、器具86の工具先端部87が骨と接触していないことに対応する第1の動作状態164ではなくなったことを記録する。コンソールは、ナビゲーションコンピュータ26と通信し、工具トラッカ90及び患者トラッカ130に対応する光学センサデータに基づいて、工具先端部及び骨の判定された位置を評価して、工具・骨間オフセットDを求めることができる。時点Tにおいて、ナビゲーションシステムは、器具86の長さに沿った長手方向に、工具先端部87の判定された位置と、骨(椎骨V)の最も近い表面との間の距離Dを測定する。この距離が工具・骨間オフセット値である。この値は、ディスプレイ28、29の領域に数値測定値150として表示することができる。システムは、モニタされたモータ動作が、自由空間における器具、すなわち、骨と接触していない器具の動作に対応する第1のレベルの大きさではなくなるたびに、工具・骨間オフセットを測定するように動作してもよい。これには、例えば、図6の時点Tに示すように、例えば、工具が骨と接触している間に毎回、モータ動作が第1のレベルの大きさからモータ動作に対応する第2のレベルの大きさに変わることが含まれてもよい。
【0102】
工具・骨間オフセットの値は、外科処置が進むにつれて経時的に変化し得るので、数値測定値150は、工具・骨間オフセットの最新の評価に基づいて変化する連続的な更新値であり得る。加えて、履歴データを記録及び表示することで、ユーザは、工具・骨間オフセットの傾向を追跡及びモニタし、その大きさが、ナビゲーションガイダンスが高い精度で信頼できないレベルまで増加すると、是正のアクションが必要となり得ることを認識することができる。例えば、図5Bに示すように、ユーザインターフェース140の一部は、経時的に変化する値を追跡して表示する工具・骨間オフセット値のグラフ152を含む。グラフ152は、グラフの右側に現在の値を示し、過去の値のトレンドライン154は、ディスプレイの左側に向かってスクロールしている。図示は、限定されることを意図するものではなく、本開示の範囲から逸脱することなく、他のグラフィック形式も考えられる。
【0103】
工具・骨間オフセットをモニタ及び表示することで、システムのステータスをユーザに伝える種々の方法を提示することができる。例えば、数値測定値150は、大きさに応じて異なる色で表示できる。視覚アラート144は、ユーザに状態の変化を警告するために、異なる色で点灯するか、又は異なる頻度で点滅することができる。システムは、異なるタイプのアクションをトリガするために、工具・骨間オフセットの閾値を入力するようにプログラムされてもよく、又はユーザに促してもよい。
【0104】
一例では、工具・骨間オフセットは、0.50ミリメートル未満に維持されてもよく、或いは器具の電力を切るような応答アクションをトリガしてもよい。状態の変化がその閾値に達する前に、状態の変化をユーザに警告することが望ましい場合がある。数値測定値150は、0.00ミリメートル~0.25ミリメートルの値について第1の色で表示され得る。数値測定値150は、0.25ミリメートル~0.4ミリメートルまでの値について、第1の色とは異なる第2の色で表示され得る。数値測定値150は、0.4ミリメートルよりも大きい値について、第1の色又は第2の色とは異なる第3の色で表示され得る。同様に、トレンドラインは、値が変化するにつれて異なる色で表示され得る。第1の色は緑色であり、第2の色は黄色であり、第3の色は赤色であり得る。これらの例示は、例として提供されており、限定を意図したものではない。
【0105】
図4A及び図4B又は図5A及び図5Bのいずれの状態においても、システムは、ユーザにエラー状態を警告し、潜在的な是正アクションについてアドバイスすることができる。好ましい是正アクションは、遭遇した特定のエラーに依存する場合がある。一例では、破損又は摩耗した工具によりエラー状態が生じた場合、是正アクションは、工具の交換となる。別の例では、エラー状態が、関連する追跡対象物体との関係からトラッカが変位したことから生じた場合、又はナビゲーションカートアセンブリが揺れたりぶつかったりした場合、ローカライザ座標系における物体に対してトラッカを再位置合わせすることが適切な是正アクションとなり得る。これらの例示は、例に過ぎず、限定することを意図するものではない。
【0106】
図7に、可変速モータを有する外科用器具を骨に対してナビゲートする第1の方法400を示す。本方法は、ナビゲーションシステム20を使用することを含み、該ナビゲーションシステム20は、上述したように、ローカライザ座標系を有するローカライザと、外科用器具に接続された器具トラッカと、骨に接続された患者トラッカとを含む。本方法は、ナビゲーションシステムと通信し外科用器具を制御するコントローラを使用する。
【0107】
図4に示す方法400の第1のステップ402において、ユーザは、患者トラッカを骨に位置合わせする。患者トラッカを位置合わせすることで、患者トラッカ座標系がローカライザ座標系に関連付けられる。このステップはまた、患者トラッカに対する骨の場所及び向きを定め、それにより、ナビゲーションシステムは、患者トラッカの検出された動きに基づいて骨の位置及び向きを追跡及びモニタし、ナビゲーションシステムにおける骨の仮想表現を更新することができる。
【0108】
第2のステップ404において、ユーザは、器具トラッカを外科用器具に位置合わせする。器具トラッカを位置合わせすることで、器具トラッカ座標系がローカライザ座標系に関連付けられる。このステップはまた、器具トラッカに対する器具工具先端部の場所及び向きを定め、それにより、ナビゲーションシステムは、器具トラッカの検出された動きに基づいて器具工具先端部の位置及び向きを追跡及びモニタし、ナビゲーションシステム内の器具の仮想表現を更新することができる。
【0109】
本方法は、ステップ406にて、工具先端部が骨と接触していない場合の外科用器具又は物品のモータの動作を定めることを含む。この定義ステップは、モータの動作を特徴付ける電力、電圧、電流、回転速度、若しくは他の動作パラメータ、又はパラメータの組み合わせのうちの少なくとも1つを評価することを含み得る。動作パラメータを表すデータは、外科用器具の動作を制御するコントローラのメモリに記憶することができる。代替的に又は加えて、データは、コントローラからナビゲーションシステムに送ることができる。更なる代替又は追加として、データは、外科用器具自体に組み込まれたメモリ、又は器具若しくはコンソールと通信する別のデバイスに記憶することができる。
【0110】
外科手術中であり、かつ動作パラメータが自由空間におけるモータ動作を定めるために分析された後、本方法は、ステップ408において、コントローラが器具のモータ動作をモニタすることを含む。このモニタは、モータ動作を示す信号を周期的に受信することと、信号が受信されたときのモータ動作を表すデータとしてその信号を記録することとを含み得る。このようにして、コントローラは、外科手術中の経時的なモータ動作の記録を作成することができる。
【0111】
モータ動作のモニタと同時に、本方法は、ステップ410において、ナビゲーションシステムを用いて患者の骨に対する器具の工具先端部の位置をモニタすることを含む。器具及び骨にそれぞれ取り付けられたトラッカは、ナビゲーションシステムによってセンシングされ、先の位置合わせに基づいて、工具先端部及び骨の相対位置をナビゲーションシステムによって求めることができ、必要に応じて、ディスプレイ上に仮想的に表すことができる。工具先端部及び骨の位置をモニタすることの一部として、ナビゲーションシステムは、ローカライザ座標系において器具と骨との間の接触がなされたときを判定することができる。
【0112】
器具と骨との間の接触がなされたと判定されると、本方法は、ステップ412において、モータ動作を器具の工具先端部のモニタ位置と比較することを含む。器具コントローラと通信するナビゲーションシステムは、器具のモータ動作を評価することができる。この評価には、モータ動作が、器具の工具先端部が骨と接触していない場合の器具の定められたモータ動作と一致するかどうかが考慮される。
【0113】
ナビゲーションシステムが、追跡位置に基づいて器具が骨と接触していると判定したものの、モータ動作が、器具がその時点で骨と接触していないことを示した場合、本方法はステップ414においてエラー状態を判定することを含む。この判定は、何らかの外乱又は異常がシステムに入り込んだことを反映している。ナビゲーションシステムにおける追跡された位置が器具又は骨の真の物理的位置を反映していない場合、ナビゲーションシステムの精度及び信頼性を信頼することはできない。
【0114】
エラー状態と判定されると、本方法は、ステップ416において、エラー状態の判定に応じてアクションをトリガし、適切な是正アクションが行われ得るようにすることを含む。
【0115】
一代替形態では、本方法は、必要に応じて、器具の工具先端部が骨と接触している場合の器具の第2のモータ動作を定義することを含む。器具の工具先端部が骨と接触していない場合の器具の第1のモータ動作と同様に、第2のモータ動作の動作パラメータを表すデータは、骨と接触している間のモータの動作を特徴付ける、電力、電圧、電流、回転速度、若しくは他の動作パラメータ、又はパラメータの組み合わせのうちの少なくとも1つを含み得る。第2のモータ動作を表すこのデータは、外科用器具の動作を制御するコントローラのメモリに記憶することができる。代替的に又は加えて、データは、コントローラによってナビゲーションシステムに通信され得る。更なる代替又は追加として、データは、外科用器具自体に組み込まれたメモリに記憶され得る。
【0116】
外科用器具が骨と接触している場合の第2のモータ動作を定義すると、本方法は、器具の工具先端部のモニタ位置がローカライザ座標系において骨と接触していないものの、モータ動作が、器具の工具先端部が骨と接触している場合のモータ動作である第2の定義されたモータ動作に等しいときに、第2のエラー状態を判定することを含むことができる。第2のエラー状態が存在していると判定されると、本方法は、第2のアクションをトリガし、適切な修正アクションを行うことができるようにすることを含み得る。
【0117】
上述のいずれかのエラー状態に関して、結果として生じるアクションは、可聴アラートを鳴らすこと、視覚アラートを表示すること、触覚アラートを起動すること、外科用器具への電力を遮断すること、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得る。可聴アラートを鳴らすことは、任意の種類の音声アラーム、ビープ音、ブザー等を含み得る。視覚アラートを表示することは、判定されたエラー状態の性質を示すプロンプトをナビゲーションシステムのディスプレイのうちの1つ以上に表示することを含み得る。視覚アラートはまた、外科用器具自体のLED光等の光を照明することを含み得る。視覚アラートは、エラー状態が判定されたという任意の他の視覚タイプの指示を含み得る。触覚アラートを起動することは、器具又はフットスイッチの振動機能部に通電することを含み得る。振動は、ユーザが振動のタイプのみに基づいて異なるタイプのエラーを区別することができるように、エラーのタイプに関連付けられた振動のパターンとして特徴付けられてもよい。
【0118】
図5に、可変速モータを有する外科用器具を骨に対してナビゲートし、工具・骨間オフセットを決定する第2の方法500を示す。第2の方法500は、上述の第1の方法400と一部の点で類似している。第2の方法500のステップは、かかる類似性が存在する第1の方法400のステップに関連して定めることができる。具体的には、第2の方法500は、方法400と同様のナビゲーションシステム、外科用器具、器具トラッカ、及び患者トラッカを採用する。同様に、コントローラは、ナビゲーションシステムと通信し、外科用器具に電力を供給する。
【0119】
第2の方法500は、ステップ402及び404と同様に、患者トラッカを骨に位置合わせするステップ502、器具トラッカを外科用器具に位置合わせするステップ504から開始する。第2の方法500はまた、器具が骨と接触していない間の外科用器具の第1のモータ動作を定義するステップ506を含んでおり、これは上述のステップ406と同じである。第1の方法400と更に同様に、第2の方法500は、ステップ408及び410におけるように、コントローラを用いてモータ動作をモニタするステップ508、及びナビゲーションシステムを用いて骨に対する器具の工具先端部の位置をモニタするステップ510を含む。
【0120】
第1の方法400とは異なり、第2の方法500は、ステップ512において、モニタされたモータ動作を、定められた第1のモータ動作と比較することを含む。この比較は、手術中に一定の頻度で、連続サイクルで経時的に繰り返し行うことができる。第2の方法500はまた、ステップ514において、ステップ512における比較の結果として、モニタされたモータ動作が定められた第1のモータ動作ではなくなった場合の器具の工具先端部と骨との間の接触時間(あるいは接触時点)を求めることを含む。モータ動作の連続的にモニタされた特性が、器具が骨と接触していない場合のモータ動作を表す、定められた第1のモータ動作から変化した場合、器具と骨との間の接触時点を決定することができる。
【0121】
ステップ514において器具と骨との間の接触時点が決定されると、第2の方法500は、ステップ516において、ナビゲーションシステムを用いて、接触時点において、器具の工具先端部とローカライザ座標系における骨の表面との間の距離として、工具・骨間オフセットを求めることを含む。器具の工具先端部及び骨の位置をモニタするナビゲーションシステムは、モニタされたモータ動作が、器具が骨と接触していないときに定義された第1のモータ動作ではなくなったというコントローラによる判定に基づいて、工具先端部と骨との間の接触を示す信号を器具コントローラから受信することができる。
【0122】
接触時点が与えられると、ナビゲーションシステムは、工具先端部及び骨の追跡位置を評価し、ナビゲーションシステムが、工具先端部が骨から離れたと判定すると、ローカライザ座標系における工具先端部の最も近い点と骨の表面との間の距離を算出する。別の場合では、ナビゲーションシステムは、定義されたモータ動作からの逸脱をコントローラが判定したことに基づいて、接触時点を前提として、工具先端部が一定の距離だけ骨の中に入っていると判定することができる。この場合、ナビゲーションシステムは、工具先端部の任意の点の最大侵入深さの骨の表面に対する垂直距離を算出する。いずれの場合も、算出された距離は、工具・骨間オフセットとなる。換言すれば、工具・骨間オフセットとは、骨に対する工具の真の物理的位置と、骨に対する工具の位置の仮想表現との間の精度のマージンの尺度である。
【0123】
上述したように、工具・骨間オフセットをもたらし又は増加させ得る複数の要因が存在する。トラッカが位置合わせされた後に変位又は変形した場合、ナビゲーション精度の低下につながる可能性がある。同様に、ナビゲーションカートアセンブリが手術中に揺れたりぶつかったりしてカメラユニットがシフトした場合、これもナビゲーション精度の低下につながる可能性がある。他の要因には、工具の摩耗、工具の変形、又は骨から組織を全体的に除去したことが含まれ得る。一貫した非常に正確なナビゲーションを維持するには、工具・骨間オフセットを小さく維持することが好ましい。
【0124】
工具・骨間オフセットが大きくなりすぎると、ナビゲーションガイダンスの精度が損なわれ、是正アクションが必要になる可能性がある。そのため、第2の方法500は、工具・骨間オフセットが所定の大きさを超えた場合にアクションをトリガするステップ518を含む。一例では、所定の大きさは0.5ミリメートルである。すなわち、コントローラによってモニタされるモータ動作の変化によって器具が骨に接触したと判定された場合、ナビゲーションシステムは、工具先端部が骨の表面から0.5ミリメートルにあると判定する。特定の大きさを参照して説明したが、これは限定することを意図するものではなく、他の限定も考えられる。さらに、異なる限定が異なる工具又は同じ工具の異なる用途に適用可能であり得る。アクションをトリガするこのステップ518は、エラー状態の判定に応じてアクションをトリガするステップ416と同様である。結果として生じるアクションは、上述したように、可聴アラートを鳴らすこと、視覚アラートを表示すること、触覚アラートを起動すること、外科用器具への電力を遮断すること、又はそれらの組み合わせのうちのうちの1つ以上を含み得る。
【0125】
ユーザに情報を提供するために、第2の方法500は、工具・骨間オフセットの値をナビゲーションシステムのディスプレイ上に表示するステップを更に含み得る。これにより、ユーザは、ナビゲーションシステムによって提供されているナビゲーションガイダンスの精度を追跡し、モニタすることができる。外科手術においてこの方法を実施する際、工具・骨間オフセットの値を求めるステップは、処置を通して複数回繰り返されてもよく、例えば、コントローラが、モータ動作における変化に基づいて器具と骨との間の接触時点を決定するたびに繰り返されてもよい。したがって、工具・骨間オフセットの表示は、判定が実行されるたびに連続的に更新される値であってもよい。工具・骨間オフセットの値の数値的提示に加えて、この情報は、経時的な値のチャート、又は線グラフとして表示されてもよい。
【0126】
ユーザを更に支援するために、工具・骨間オフセットの値は、その大きさに基づいて異なるように表示することができる。例えば、その大きさが小さい(工具・骨間オフセットが小さく、ナビゲーションガイダンスの精度が高いことを示す)場合は、第1の色で表示されてもよく、大きい場合は、第1の色とは異なる第2の色で表示されてもよい。更に大きい場合は、第1の色及び第2の色とは異なる第3の色で表示されてもよい。他の色の組み合わせ又は視覚的表現も、同様に採用することができる。
【0127】
工具・骨間オフセット値のこの動的表示を容易にするために、第2の方法500は、第1のレベルの大きさ及び第2のレベルの大きさを定義するステップを含み得る。これらの第1のレベルの大きさ及び第2のレベルの大きさは、デフォルト値としてシステム内で事前に定めることができる。或いは、第1のレベルの大きさ及び第2のレベルの大きさは、動作の開始時又はシステムのセットアップ動作中にユーザによって入力されてもよい。一例では、第1のレベルの大きさは0.25ミリメートルであってもよく、第2のレベルの大きさは0.4ミリメートルであってもよい。
【0128】
一例では、工具・骨間オフセットが第1のレベルの大きさ未満であると判定された場合、表示値は緑色で提示することができる。工具・骨間オフセットが第2のレベルの大きさ未満であると判定された場合、表示値は黄色で提示することができる。工具・骨間オフセットが第2のレベルの大きさよりも大きい場合、表示値は赤色で提示することができる。これらの色の指定は、限定することを意図するものではなく、単に一例を示すことを意図するものである。別の場合では、工具・骨間オフセットの動的表示は、表示値の色を変更する代わりに、又はそれに加えて、可変のサイズを利用することができる。
【0129】
工具・骨間オフセット値の第1のレベルの大きさ及び第2のレベルの大きさはまた、第2の方法500のステップ518におけるアクションのうちの1つ以上をトリガするために利用することができる。例えば、工具・骨間オフセットが第1のレベルの大きさに達するか又はそれを超えると、視覚アラートがトリガされてもよく、工具・骨間オフセットが第2のレベルの大きさに達するか又はそれを超えると、視覚アラートと可聴アラートとの組み合わせがトリガされてもよい。
【0130】
加えて、第3のレベルの大きさもまた、第1のレベルの大きさ及び第2のレベルの大きさと同じ又は異なる方法で定義することができる。第3のレベルの大きさは、システムがコントローラから外科用器具への電力を無効にすることを決定する工具・骨間オフセットの値を表すことができる。工具・骨間オフセットが第3のレベルの大きさに達すると、ナビゲーションシステムの精度が損なわれ、危害のリスクが生じる可能性があるため、是正アクションが行われるまで外科用器具を使用不能にする必要がある。
【0131】
上述したように、ナビゲーションシステムは、或る特定のエラー又は工具・骨間オフセットの決定された値に応じて、ナビゲーションガイダンスの精度を改善するために是正アクションが必要な状態をユーザに警告することができる。複数の異なる是正アクションが可能なため、遭遇する特定のエラーに依存して、適切な修正が異なる場合がある。一例では、破損又は摩耗した工具からエラー状態が生じた場合、是正アクションは、工具を交換することとなる。別の例では、エラー状態が、関連する追跡対象物体との関係からトラッカを変位させることから生じた場合、又はナビゲーションカートアセンブリが揺れたりぶつかったりした場合、ローカライザ座標系における物体に対してトラッカを再位置合わせすることが適切な是正アクションとなり得る。
【0132】
別の例において、大量の組織が除去される外科手術では、生体構造の仮想表現は、もはや患者の実際の生体構造を表さない。この状況を改善するためには、生体構造の仮想表現内の組織表面の場所を再定義するために、追加の撮像、モデリング、及び位置合わせが必要となる場合がある。一例では、外科用器具は電力供給されず、外科用器具を、生体構造の切除面上の複数のポイントをタッチオフするためのポインタとして使用し、ナビゲーションシステムのための新しい点群を作成して、骨の仮想表現の表面を再定義することができる。
【0133】
開示される方法は、図1及び図2に示され、種々の構成で上記に説明されるように、改良された外科用システムを用いて実践することができる。外科用システムは、可変速モータ及び工具先端部を有する外科用器具を備える。外科用器具は、外科用器具に電力を提供するコントローラと動作可能に通信している。コントローラは、器具のモータ動作をモニタするように更に動作可能であり、プロセッサと、モニタされたモータ動作を表す情報を含む情報を記憶するように動作可能なメモリとを備える。システムはまた、器具に接続された器具トラッカと、患者の生体構造に接続される患者トラッカとを備える。
【0134】
外科用システムはまた、ナビゲーションシステムを備える。ナビゲーションシステムは、ローカライザとナビゲーションコンピュータとを含む。ナビゲーションコンピュータは、プロセッサと、メモリとを含み、該メモリは、仮想空間において、仮想空間内のローカライザ座標系に対する外科用器具を表す情報と患者の生体構造を表す情報とを含む情報を記憶する。ナビゲーションシステムは、ローカライザにより収集された情報に基づいて、手術中に仮想空間内の器具及び骨の位置を追跡するように動作可能である。ローカライザは、ローカライザ座標系に対する器具トラッカの位置と患者トラッカの位置とを位置合わせし、器具トラッカ及び患者トラッカとそれぞれ協働して器具及び骨の位置に関する情報を収集するように動作可能である。
【0135】
コントローラ及びナビゲーションシステムは、電子通信状態にあり、互いに協働するように構成される。手術中、コントローラ及びナビゲーションシステムは、器具のモータ動作の変化に基づいて、工具先端部と骨との間の接触時点を判定する。コントローラ及びナビゲーションシステムはまた、接触時点において、工具上部の追跡された位置と骨の追跡された位置との間の距離として工具・骨間オフセットを求める。
【0136】
外科用システムは、アラートデバイスを更に備え得る。コントローラ及びナビゲーションシステムは、アラートデバイスと更に通信し、工具・骨間オフセットが所定の大きさよりも大きい場合にアクションをトリガするように動作する。アラートデバイスは、コンソール82上、コンピュータカートアセンブリ24上、カメラユニット36上、又は動作環境内の他の場所のライト又はディスプレイ等の視覚アラートデバイスを含み得る。他の視覚アラートは、ユーザアクションのためのプロンプト、情報表示、又は他の形状、形態、写真等の形態をとってもよい。アラートデバイスは、スピーカ、ベル、ホーン、ブザー等の可聴アラートデバイスを含み得る。他の可聴アラートは、トーン、アラーム、事前に記録されたメッセージ等を含み得る。アラートデバイスは、振動等によってユーザに知覚可能な触覚アラートを生成し得る触覚アラートデバイスを含み得る。
【0137】
トラッカが外科用器具及び患者の生体構造に対して適切に位置合わせされる構成では、ユーザは、外科用器具の非給電の工具先端部を患者の生体構造と接触させて配置することができ、ナビゲーションシステムは、工具先端部が共通座標系において間隙又は重複なく患者の生体構造と接触していることを正確に判定する。しかし、トラッカ、外科用器具、又は生体構造が偏向若しくは変形し、又はナビゲーションシステムのカメラユニットが妨害されて、位置合わせが不正確になる場合がある。したがって、工具に電力供給する必要がなく、したがって、自由空間において、又は患者の生体構造と接触して動作する工具のいかなるパラメータにも依存しない位置合わせ検証の動作をナビゲーションシステムが実行する方法を提供することが望ましい。ユーザは、生体構造が工具によって影響を受けないように、外科用器具の工具先端部を非給電状態で患者の生体構造と静的に接触させて配置し、その位置を保持して、ナビゲーションシステムが位置合わせの検証を行えるようにトリガすることができる。
【0138】
図9に示すように、追跡位置合わせを検証するために外科手術中に外科ナビゲーションシステムを動作させる方法600が提供される。方法600において、外科用ナビゲーションシステムは、上述したように、ローカライザ座標系を有するローカライザと、外科用器具に結合された器具トラッカと、患者の生体構造、例えば、椎骨、他の骨、又は軟組織に結合された患者トラッカとを含む。患者の生体構造、特定の骨、又は骨全般への言及は、軟組織及び他の非骨用途を含むように広く解釈されるべきである。方法600は、ナビゲーションシステムと通信し、外科用器具を制御するコントローラを使用する。
【0139】
方法600の第1のステップ602において、ユーザは、患者トラッカを骨に位置合わせする。患者トラッカを位置合わせすることで、患者トラッカ座標系がローカライザ座標系又は他の共通座標系に関連付けられる。このステップはまた、患者トラッカに対する骨の場所及び向きを定め、それにより、ナビゲーションシステムは、患者トラッカの検出された動きに基づいて骨の位置及び向き、すなわち姿勢を追跡及びモニタし、ナビゲーションシステムにおける生体構造の仮想表現を更新することができる。
【0140】
方法600の第2のステップ604において、ユーザは、器具トラッカを外科用器具に位置合わせする。器具トラッカを位置合わせすることで、器具トラッカ座標系がローカライザ座標系又は他の共通座標系に関連付けられる。このステップ604はまた、器具トラッカに対する器具工具先端部の位置及び向きを定義し、それにより、ナビゲーションシステムは、器具トラッカの検出された動きに基づいて器具工具先端部の位置及び向き、すなわち姿勢を追跡及びモニタし、ナビゲーションシステム内の器具の仮想表現を更新することができる。
【0141】
方法600は、ナビゲーションシステムを用いて、生体構造の姿勢及び外科用器具の場所を経時的にモニタし、ユーザに表示され得る仮想表現を用いて生体構造及び器具の姿勢を追跡するステップ606、608を含む。患者の生体構造及び外科用器具の場所をモニタすることは、追跡対象物体の位置及び向きの両方をモニタすることを含む。位置及び向きは、手術中に一定の頻度で、連続サイクルで経時的にモニタされる。この情報を用いて、ナビゲーションシステムは、速度、加速度、及び共通座標系における運動の大きさ及び方向を含む他の量を、他の追跡対象物体に対して決定することができる。
【0142】
方法600は、外科用器具の工具先端部が患者の生体構造に対して所定の近接範囲内に静的に配置されていることを判定するステップを含む。このステップでは、ナビゲーションシステムは、工具先端部及び生体構造の位置をモニタすることに加えて、生体構造に対する工具先端部の速度をモニタする。手術中、ユーザは、工具に電力が供給されていない間に、工具先端部を骨と接触させて配置して、ナビゲーションシステムに外科用器具及び患者の生体構造上のトラッカの位置合わせを検証するように促す。
【0143】
位置合わせはエラーの影響を受けやすいため、ナビゲーションシステムによって工具先端部が患者の生体構造との所定の近接範囲内で静止していると判定された場合、ナビゲーションシステムは、位置合わせ検証を評価することができる。ナビゲーションシステムは、追跡位置が所定の期間にわたって変化しないときに、工具先端部が静止していると判定することができる。所定の期間は、例えば、3秒、5秒、又は他の持続時間であるように、ナビゲーションシステムに予めプログラムすることができる。所定の近接範囲は、例えば、約3ミリメートル、約1ミリメートル、又は約0.5ミリメートルであってもよい。所定の近接範囲は、ナビゲーションシステムによって測定可能な精度レベルに適した他の何らかの距離値であってもよい。ナビゲーションシステムの構成中、例えば外科手術の前の起動中に、ユーザは、オプションのリストから所定の期間の持続時間又は所定の近接範囲の距離を選択するように促されてもよく、或いは、タッチパッド、ボタン選択、タッチスクリーン、又は他の入力を介して持続時間又は距離を入力するように促されてもよい。
【0144】
ナビゲーションシステムは、工具先端部の追跡位置及び追跡向きが静的であり、所定の期間中に変化しないときに、工具先端部が静止していると判定することができる。或いは、位置及び向きが特定の大きさを超えて変化しないときに、その位置が静止していると判定してもよい。更に代替的に、位置及び向きが変化しないとき、又は特定の方向が生体構造に向かう方向である場合等、特定の方向において特定の大きさを超えて変化しないときに、位置が静止していると判定してもよい。
【0145】
工具先端部が骨に近接して静的な位置及び向きで静止しているとナビゲーションシステムが判定すると、方法600は、オフセット距離を判定するステップ612を含む。このオフセット距離は、システムにおける不正確性の尺度である。ナビゲーションシステムは、工具先端部が生体構造と静的に接触していることを示す入力をユーザから受信し、器具工具先端部及び患者の生体構造の追跡位置を評価する。追跡位置に基づくこの評価の結果により、外科用器具及び患者の生体構造の仮想表現の追跡位置及び追跡向きに基づいて、工具先端部が骨から或る距離だけ離れていると判定することができる、又は工具先端部が骨に或る距離だけ貫入していると判定することができる。判定された距離の大きさは、工具・骨間オフセットを定めるものであり、生体構造に対する工具先端部の真の物理的位置と、ナビゲーションシステムにおける生体構造に対する工具先端部の仮想表現との間の精度のマージンを示している。
【0146】
オフセット距離を算出する際に、ナビゲーションシステムは、外科用器具の仮想表現上の第1の点を識別する。該第1の点は、患者の生体構造の仮想表現に最も近い近位点であるか、又は患者の生体構造の仮想表現への外科用器具の仮想表現の最も深い侵入点又は重複点である。器具の第1の識別点が生体構造の外側にある場合、オフセット距離は、第1の識別点と生体構造の仮想表現の表面上のある点との間の最短距離であり、オフセット距離は、表面に対して垂直かつ外向きとなる。器具の第1の識別点が生体構造の仮想表現の内部にある場合、オフセット距離は、第1の識別点と生体構造の仮想表現の表面上の或る点との間の最大距離であり、オフセット距離は、表面に対して垂直かつ内向きとなる。
【0147】
オフセット距離が求められると、方法600のナビゲーションシステムは、ステップ614において、算出されたオフセット距離を、システム不正確性についての許容可能な所定の閾値と比較する。オフセット距離が所定の閾値よりも大きく、所望よりも低いレベルの精度を示す場合、ナビゲーションシステムは、それに応じてアクションをトリガするように構成することができる。一例では、所定の閾値は0.5ミリメートルである。すなわち、ナビゲーションシステムが追跡位置に基づいて工具先端部が生体構造と静的に接触していると判定した場合、ナビゲーションシステムは、工具先端部の仮想表現が生体構造の仮想表現から0.5ミリメートルにあると算出する。特定の大きさを参照して説明したが、これは限定することを意図するものではなく、他の制限も考えられる。さらに、異なる制限が異なる工具又は同じ工具の異なる用途に適用可能であり得る。トリガされたアクションは、上述したように、可聴アラートを鳴らすこと、視覚アラートを表示すること、触覚アラートを起動すること、外科用器具への電力を無効にすること、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得る。
【0148】
所定の閾値は、異なるレベルの精度を示す複数の値を含むことができ、オフセット距離と複数の値との比較に応じて別々のアクションがトリガされる。例えば、所定の閾値は、第1の所定の閾値及び第2の所定の閾値を含んでもよい。アクションをトリガすることは、オフセット距離が第1の所定の閾値よりも大きい場合に第1のアクションをトリガすることと、オフセット距離が第2の所定の閾値よりも大きい場合に第2のアクションをトリガすることとを含み得る。アクションは、可聴アラート、視覚アラート、触覚アラート、又はそれらの種々の組み合わせを含むように、上記で説明されるような任意のアクションを含んでもよい。
【0149】
図9に示した方法600は、図10に方法620として示されるように拡張することができる。1つの拡張形態では、ナビゲーションシステムは、ステップ622において、上記の方法600で詳述したような位置合わせ検証サイクルを開始するようにユーザに促すことができる。この促しは、ディスプレイ上にメッセージを示すこと等によって、視覚的プロンプトとしてユーザに提示され得る。代替的に、視覚的プロンプトは、閃光等を含み得る。プロンプトは、トーン、ビープ音、予め記録されたメッセージ等による可聴プロンプトとしてユーザに提示されてもよい。プロンプトは、所定の一連の振動又は一連の振動等によって、触覚プロンプトとして提示されてもよい。プロンプトは、視覚的、聴覚的、又は触覚的プロンプトの組み合わせとしてユーザに提示されてもよい。
【0150】
方法620は、外科用器具が第1の姿勢にある状態で第1のオフセットを決定するステップ624を含む。このステップは、図9に示した方法600のステップと合うように行われ、工具先端部の静的な位置は、外科用器具の第1の姿勢(位置及び向き)を含む。方法620は、第2の姿勢における第2のオフセットを決定するステップ626を含む。これには、外科用器具の位置、向き、又はその両方を変更し、工具先端部を生体構造と第2回目に静的に接触させて配置する必要がある。工具先端部が第2の姿勢で生体構造と静的に接触している状態で、ナビゲーションシステムは第2のオフセット値を決定する。したがって、ナビゲーションシステムは、このようにして2つ以上の角度から工具・骨間オフセットを評価し、複数の角度におけるシステムの精度を保証することができる。
【0151】
ステップ624、626において第1の姿勢及び第2の姿勢からそれぞれ第1のオフセット及び第2のオフセットを決定した後、ナビゲーションシステムは、ステップ628において、第1のオフセット及び第2のオフセットを許容閾値と比較する。このステップでは、ナビゲーションシステムは、独立して、第1のオフセットを許容閾値と比較し、第2のオフセットを許容閾値と比較することができ、第1のオフセット及び第2のオフセットの一方又は他方が許容閾値を超えている場合にアクションをトリガすることができる。アクションをトリガするステップ630は、アクションをトリガするステップ616と同様であり得る。
【0152】
オフセットが許容閾値を超えているとナビゲーションシステムが判定したことに応じてアクションがトリガされると、ユーザは、入力を行い、トラッカを外科用器具又は患者の生体構造に再位置合わせする等の他の修正アクションを行うことなくシステム動作を維持する機会を有することができる。ナビゲーションシステムは、ステップ631において、オフセットが許容閾値よりも大きいことによってトリガされたアクションを上書き又はキャンセルするための入力を受けることができる。ナビゲーションシステムは、音声コマンド、ジェスチャ入力、又はキーパッド、タッチスクリーン等を介した他の入力等の入力を受けることができる。トリガされたアクションを上書き又はキャンセルする入力を受けると、ナビゲーションシステム及び外科用器具は、通常動作に戻ることができる。
【0153】
図11に、第1のオフセット及び第2のオフセットを許容閾値と比較する方法620のステップ628に対する代替又は追加として、方法632を示す。ナビゲーションシステムが、ステップ634のように、第1の姿勢及び第2の姿勢における第1のオフセット及び第2のオフセットを決定すると、ナビゲーションシステムは、第1のオフセット及び第2のオフセットと、第1の姿勢と第2の姿勢との幾何学的関係とに基づいて、又はより具体的には、第1の姿勢及び第2の姿勢において生体構造と静的接触して適用される工具先端部の表面上の特定の接触点間の幾何学的関係とに基づいて、3次元オフセットを算出することができる。3次元オフセット値が決定されると、ナビゲーションシステムは、3次元オフセットを許容閾値と比較することができる。許容閾値は、第1のオフセット又は第2のオフセットを比較する際の許容閾値と比べ、大きさが同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0154】
更なる代替として、方法620及び632は、第3の姿勢における第3のオフセットを決定することを更に含み得る。方法620のステップ628において、第1のオフセット及び第2のオフセットを許容閾値と比較することは、第3のオフセットを許容閾値と比較することを含み得る。同様に、方法632では、ステップ634は、第1の姿勢及び第2の姿勢における第1のオフセット及び第2のオフセットを決定することに加えて、第3の姿勢における第3のオフセットを決定することを含み得る。さらに、ステップ636において、ナビゲーションシステムは、第1のオフセット、第2のオフセット、及び第3のオフセット、並びに第1の姿勢、第2の姿勢、及び第3の姿勢間の幾何学的関係、又は第1、第2、及び第3の姿勢における工具先端部と生体構造との間の第1の接触点、第2の接触点、及び第3の接触点に基づいて、3次元オフセットを算出することができる。
【0155】
3次元オフセットの算出は、工具先端部の幾何形状に依存する。第1の例では、図12に示すように、工具先端部180は、ドリルビット又はルータのように、実質的に円筒形、テーパ形状、丸みを帯びた円錐形、又は細長い面182を含み得る。工具先端部180の細長い面182は、中心を通って延び、細長い面182と平行な長手方向軸Lを画定することができる。位置合わせを検証し、オフセット値を決定するために、椎骨V等の生体構造と静的に接触して配置させる場合、工具先端部180と生体構造Vとの間の接触点184は、例えば、細長い面の半径に等しい長手方向軸からの距離にある細長い面182の端部の周縁186に沿うようにする。
【0156】
別の例では、図13に示すように、工具先端部190は、丸いバー等を有する実質的に球状の面192を含み得る。工具先端部190の球状の面192は、球状の面の中心に中心点194を画定することができる。位置合わせを検証し、オフセット値を決定するために、椎骨V等の生体構造と静的に接触して配置させる場合、工具先端部190と生体構造Vとの間の接触点196は、例えば、球状の面192の半径に等しい中心点194からの距離にある球状の面192の表面上にある。
【0157】
図11に示した方法632のステップ636等において3次元オフセットを決定することには、生体構造に対する第1の姿勢における外科用器具による第1のオフセット、第2の姿勢における第2のオフセット、及び任意選択的に、第3の姿勢における第3のオフセットを決定することが必要となる。外科用器具を複数の異なる姿勢で配置することにより、外科用器具トラッカの様々なビューがローカライザのカメラユニットに提示される。複数のビューにより、任意の位置合わせエラーがナビゲーションシステムによって識別することができ、器具の特定のビューによって隠されないようにすることができる。
【0158】
ナビゲーションシステムによる外科用器具のビューにおける十分な区別を確実にするために、1つの姿勢から次の姿勢へ外科用器具を十分回転させることが必要である。例えば、第1の姿勢において第1のオフセット距離を確立すると、外科用器具は、工具先端部上の接触点が、第1の姿勢における工具先端部上の接触点から第2の姿勢において約90度離れるように回転されてもよい。図12に示すように、工具先端部180が細長い面182を有する場合、第2の接触点188は、工具先端部180の長手方向軸Lの周りの回転により第1の接触点184から約90度にあってもよい。図13に示すように、工具先端部190が球状の面192を有する場合、第2の接触点198は、任意の平面内の中心点194の周りの回転にいより第1の接触点196から約90度にあってもよい。第3のオフセット距離が決定される場合、第3の姿勢における第3の接触点189、199は、それぞれ、第1の姿勢及び第2の姿勢における第1の接触点184、196及び第2の接触点188、198から約90度離れていてもよい。
【0159】
外科手術の過程で、外科用器具は、脊椎に沿った複数の椎骨等、2つ以上の骨と接触して適用することができる。外科手術の初期段階では、手術によって影響を受ける個々の骨のそれぞれにトラッカを位置合わせすることができる。1つの骨に対する手術から第2の骨に対する手術に移行する場合、ユーザは、第1の骨に対する外科的介入の完了に続いて、第2の骨のトラッカの位置合わせを検証することができる。ユーザは、工具先端部を第2の骨と静的に接触させて位置決めすることによって、ナビゲーションシステムをトリガして追跡位置合わせプロセスを検証することができる。代替的に、ナビゲーションシステムは、第1の骨に適用される手術計画の段階が完了すると、第2の骨の手術計画に従って外科的介入を開始する前に位置合わせを検証するようにユーザに促すことができる。
【0160】
ナビゲーションシステムは、位置合わせ検証のために工具先端部と接触する骨の部分を指定することができる。位置合わせ検証のために指定された骨の部分は、それにもかかわらず、外科手術計画に従って切除の標的とされない骨の露出部分であってもよい。外科的介入の標的とされない部分を選択することで、骨表面が患者の生体構造の仮想表現に一致する可能性が高まり、トラッカ位置合わせを検証するための正確な基礎が提供される。ナビゲーションシステムは、ユーザに対して生体構造の部分を識別するために、特定の部分が強調表示され、フラグ付けされ、矢印、輪郭、又は他の記号で示された患者の生体構造のグラフィック表現を表示することができる。
【0161】
上記の説明は、例示として提供されたものである。使用された用語は、限定ではなく説明のための文言の性質を有することが意図されていることを理解されたい。上記の教示に照らし、多くの修正及び変形が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、特徴又は実装形態は、具体的に説明されたもの以外でも実施することができる。
【0162】
項目
I.可変速モータを有する外科用器具を骨に対してナビゲートする方法であって、前記方法は、ローカライザ座標系を有するローカライザと、前記外科用器具に結合された器具トラッカと、骨に結合された患者トラッカと、ナビゲーションシステムと通信するコントローラとを含む前記ナビゲーションシステムを使用することを含み、前記コントローラは、前記外科用器具を制御し、前記方法は、
前記ローカライザを用いて、前記患者トラッカを前記ローカライザ座標系に位置合わせし、前記ローカライザ座標系に対する前記骨の骨場所を定義することと、
前記ローカライザを用いて、前記器具トラッカを前記ローカライザ座標系に位置合わせし、前記ローカライザ座標系に対する器具工具先端部の器具場所を定義することと、
前記器具工具先端部が前記骨と接触していない場合の前記器具のモータ動作を定義することと、
前記コントローラを用いて、医療処置中に前記器具のモータ動作をモニタすることと、
前記ナビゲーションシステムを用いて、前記骨に対する前記器具工具先端部の位置をモニタして、前記器具工具先端部が前記ローカライザ座標系において前記骨と接触したときを判定することと、
前記モータ動作を前記器具工具先端部の前記モニタされた位置と比較することと、
前記器具工具先端部の前記モニタされた位置が前記ローカライザ座標系において前記骨と接触しており、前記モニタされたモータ動作が、前記器具工具先端部が前記骨と接触していない場合の前記器具の前記定義されたモータ動作に等しいときに、エラー状態を判定することと、
エラー状態が判定されたときにアクションをトリガすることと、
を含む、方法。
II.前記工具先端部が前記骨と接触していない場合の前記器具の前記モータ動作を定義することは、前記器具工具先端部が骨と接触していない間に前記モータが動作するときに、電力、電圧、電流、又はそれらの組み合わせの閾値を定義することを含む、項目Iに記載の方法。
III.前記モータ動作を定義することは、前記コントローラ、前記ナビゲーションシステム、前記外科用器具、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上のメモリに前記モータ動作を表すデータを記憶することを含む、項目I又はIIに記載の方法。
IV.前記器具工具先端部が前記骨と接触している場合の前記器具の第2のモータ動作を定義することを更に含む、項目I~IIIのいずれか一項に記載の方法。
V.前記器具工具先端部の前記モニタされた位置が前記ローカライザ座標系において前記骨と接触しておらず、前記モニタされたモータ動作が、前記器具工具先端部が前記骨と接触している場合の前記器具の前記第2の定義されたモータ動作に等しいときに、第2のエラー状態を判定することと、前記第2のエラー状態が判定されたときに第2のアクションをトリガすることとを更に含む、項目IVに記載の方法。
VI.アクション又は第2のアクションのうちの1つをトリガすることは、可聴アラートを鳴らすこと、視覚アラートを表示すること、触覚アラートを起動すること、前記外科用器具への電力を遮断すること、又はそれらの組み合わせのうちの1つを含む、項目I~Vのいずれか一項に記載の方法。
VII.ローカライザ座標系を有するローカライザと、外科用器具に結合された器具トラッカと、骨に結合された患者トラッカと、ナビゲーションシステムと通信し、前記外科用器具に電力を供給するコントローラとを含む前記ナビゲーションシステムを使用して、可変速モータを有する前記外科用器具をナビゲートする方法であって、前記方法は、
前記ローカライザを用いて、前記患者トラッカを前記ローカライザ座標系に位置合わせし、前記ローカライザ座標系に対する前記骨の骨場所を定義することと、
前記ローカライザを用いて、前記器具トラッカを前記ローカライザ座標系に位置合わせし、前記ローカライザ座標系に対する器具工具先端部の器具場所を定義することと、
前記骨と接触していない間に動作する前記外科用器具の第1のモータ動作を定義することと、
前記コントローラを用いて、医療処置中に前記外科用器具のモータ動作をモニタすることと、
前記ナビゲーションシステムを用いて、前記ローカライザ座標系における前記骨に対する前記器具工具先端部の位置をモニタすることと、
前記モニタされたモータ動作を前記定義されたモータ動作と比較することと、
前記モニタされたモータ動作が前記定義された第1のモータ動作から逸脱した場合に前記器具工具先端部と前記骨との間の接触時点を決定することと、
前記接触時点において、前記ナビゲーションシステムを用いて、前記ローカライザ座標系における前記器具工具先端部と前記骨の表面との間の距離として工具・骨間オフセットを決定することと、
前記工具・骨間オフセットが所定の大きさを超えた場合にアクションをトリガすることと、
を含む、方法。
VIII.アクションをトリガすることは、可聴アラートを鳴らすこと、視覚アラートを表示すること、触覚アラートを起動すること、前記外科用器具への電力を遮断すること、又はそれらの組み合わせのうちの1つを含む、項目VIIに記載の方法。
IX.前記所定の大きさは、0.5ミリメートルである、項目VIIに記載の方法。
X.ディスプレイデバイス上に、前記決定された工具・骨間オフセットを表示することを更に含む、項目VIIに記載の方法。
XI.前記骨に対する前記器具工具先端部の前記位置をモニタすることは、前記医療処置中に前記器具工具先端部の前記器具場所及び前記骨の前記骨場所を追跡することを含み、前記方法は、前記ナビゲーションシステムを用いて、前記骨の前記表面と接触している前記器具工具先端部の前記モニタされた位置の前記動作中の各発生を検出することと、各発生時に前記医療処置中に決定された一連の工具・骨間オフセット値を記録することと、を更に含む、項目VIIIに記載の方法。
XII.ディスプレイデバイス上に、一連の工具・骨間オフセットを逐次更新値として表示することを更に含む、項目VIIに記載の方法。
XIII.第1のレベルの大きさ及び第2のレベルの大きさを定義することを更に含み、前記決定された工具・骨間オフセットを表示するステップは、前記オフセットが前記第1のレベルの大きさよりも小さい場合に前記オフセットを第1の色で表示することと、前記オフセットが前記第1のレベルと前記第2のレベルの大きさとの間にある場合に前記オフセットを前記第1の色とは異なる第2の色で表示することと、前記オフセットが前記第2のレベルの大きさよりも大きい場合に前記オフセットを前記第1の色及び前記第2の色とは異なる第3の色で表示することとを含む、項目XIIに記載の方法。
XIV.アクションをトリガするための前記所定の大きさは、前記第2のレベルの大きさに等しい、項目XIIIに記載の方法。
XV.アクションをトリガするための前記所定の大きさは、前記第2のレベルの大きさよりも大きい、項目XIIIに記載の方法。
XVI.第3のレベルの大きさを定義することを更に含み、前記方法は、前記工具・骨間オフセットが前記第3のレベルの大きさよりも大きい場合に前記コントローラから前記外科用器具への電力を無効にすることを更に含む、項目XIIIに記載の方法。
XVII.前記所定の大きさの値を入力するようにユーザに促すことを更に含む、項目VIIに記載の方法。
XVIII.前記工具・骨間オフセットが前記所定の値よりも大きい場合に前記コントローラから前記外科用器具への電力を無効にすることを更に含む、項目XVIIに記載の方法。
XIX.経時的なオフセット値のチャートとして、前記一連の工具・骨間オフセットを表示することを更に含む、項目XIIに記載の方法。
XX.アクションをトリガすることは、前記骨のモデルを更新するようにユーザに促すことを含む、項目VIIに記載の方法。
XXI.前記骨の前記モデルを更新することは、前記コントローラから前記外科用器具への電力が無効にされている間に、前記骨の切除面を前記器具工具先端部と接触させることを含む、項目XXに記載の方法。
XXII.追跡位置合わせを検証するために外科手術中に外科用システムを動作させる方法であって、前記外科用システムは、ローカライザ座標系を有するローカライザを含むナビゲーションシステムと、外科用器具に結合された器具トラッカであって、前記外科用器具は、工具先端部を含む、器具トラッカと、患者の生体構造に結合された患者トラッカと、前記ローカライザと通信する制御コンソールであって、前記制御コンソールは、前記外科用器具を表すデータ及び前記患者の生体構造を表すデータと通信する、制御コンソールとを含み、前記方法は、
前記ナビゲーションシステムを用いて、前記外科用器具及び前記生体構造を追跡し、前記制御コンソールを用いて、共通座標系において前記追跡された外科用器具を表す第1のデータ及び前記追跡された生体構造を表す第2のデータを記憶することと、
前記追跡された外科用器具を表す前記第1のデータ及び前記追跡された生体構造を表す第2のデータに基づいて、前記工具先端部が前記追跡された生体構造に対して所定の近接範囲内にあると判定することと、
前記工具先端部が、所定の持続時間にわたって所定の大きさを超えて前記所定の近接範囲から離れていないと判定することと、
前記追跡された外科用器具を表す前記第1のデータ及び前記追跡された生体構造を表す前記第2のデータに基づいてオフセット距離を決定することと、
前記オフセット距離を所定の閾値と比較することと、
前記オフセット距離が前記所定の閾値よりも大きい場合にアクションをトリガすることと、
を含む、方法。
XXIII.ディスプレイ上にプロンプトを表示すること、可聴アラートを鳴らすこと、触覚感覚を生成すること、又はそれらの組み合わせのうちの1つによって、追跡位置合わせを検証するようにユーザに促すことを更に含む、項目XXIIに記載の方法。
XXIV.前記工具先端部が前記生体構造に対して所定の近接範囲内にあると判定することは、切除されない前記生体構造の表面領域を画定することと、前記工具先端部が前記画定された表面領域に対して所定の近接範囲内にあると判定することとを含む、項目XXIIに記載の方法。
XXV.前記オフセット距離は、前記共通座標系における前記工具先端部と前記追跡された生体構造との間の最小分離の大きさとして、又は前記共通座標系における前記工具先端部と前記追跡された生体構造との間の最大重複の大きさとして定義される、項目XXIIに記載の方法。
XXVI.前記工具先端部が前記追跡された生体構造に対して所定の近接範囲内にあると判定することは、前記外科用器具が前記追跡された生体構造に対して第1の姿勢に位置決めされることを含み、前記外科用器具は、前記工具先端部の第1の近位点を画定し、前記オフセット距離を決定することは、第1のオフセット距離を決定することを含み、
前記方法は、前記外科用器具が前記追跡された生体構造に対して第2の姿勢に位置決めされることを含む、前記工具先端部が前記追跡された生体構造に対して所定の近接範囲内にあると判定することを更に含み、前記外科用器具は、前記工具先端部の第2の近位点を画定し、前記オフセット距離を決定することは、第2のオフセット距離を決定することを含む、項目XXIIに記載の方法。
XXVII.前記オフセット距離を所定の閾値と比較することは、前記第1のオフセット距離を前記所定の閾値と比較することと、前記第2のオフセット距離を前記所定の閾値と比較することとを含み、アクションを開始することは、前記第1のオフセット距離、前記第2のオフセット距離、又は前記第1のオフセット距離及び第2のオフセット距離の両方が前記所定の閾値よりも大きい場合にアクションを開始することを含む、項目XXVIに記載の方法。
XXVIII.前記外科用器具は、前記工具先端部で終端する細長い面を含み、前記細長い面は、前記細長い面に実質的に平行に延在する長手方向軸を画定し、前記第2の近位点は、中心線の周りの回転に対して前記第1の近位点から少なくとも90度にある、項目XXVIに記載の方法。
XXIX.前記外科用器具は、中心点を画定する球状の面を有する前記工具先端部を含み、前記第2の近位点は、前記中心点の周りの回転に対して前記第1の近位点から少なくとも90度離れている、項目XXVIに記載の方法。
XXX.前記工具先端部が前記追跡された生体構造に対して所定の近接範囲内にあると判定することは、前記外科用器具が前記追跡された生体構造に対して第3の姿勢に位置決めされることを含み、前記外科用器具は、第3の近位点を画定し、前記第3の近位点は、前記第1の近位点及び前記第2の近位点とは異なり、前記オフセット距離を決定することは、第3のオフセット距離を決定することを更に含む、項目XXVIに記載の方法。
XXXI.前記オフセット距離を所定の閾値と比較することは、前記第1のオフセット距離を前記所定の閾値と比較することと、前記第2のオフセット距離を前記所定の閾値と比較することと、前記第3のオフセット距離を前記所定の閾値と比較することとを含み、アクションを開始することは、前記第1のオフセット距離、前記第2のオフセット距離、前記第3のオフセット距離、又はそれらの組み合わせが前記所定の閾値よりも大きい場合にアクションを開始することを含む、項目XXXに記載の方法。
XXXII.前記外科用器具は、前記工具先端部で終端する細長い面を含み、前記細長い面は、前記細長い面に実質的に平行に延在する長手方向軸を画定し、前記第2の近位点は、前記長手方向軸の周りの回転に対して前記第1の近位点から少なくとも90度にあり、前記第3の近位点は、前記長手方向軸の周りの回転に対して前記第1の近位点及び前記第2の近位点から少なくとも90度離れている、項目XXXに記載の方法。
XXXIII.前記外科用器具は、中心点を画定する球状の面を有する前記工具上部を含み、前記第2の近位点は、前記中心点の周りの回転に対して前記第1の近位点から少なくとも90度離れており、前記第3の近位点は、前記中心点の周りの回転に対して前記第1の近位点及び前記第2の近位点から少なくとも90度離れている、項目XXXに記載の方法。
XXXIV.アクションをトリガすることは、可聴アラートを鳴らすこと、視覚アラートを表示すること、触覚アラートを起動すること、前記外科用器具への電力を遮断すること、又はそれらの組み合わせのうちの1つを含む、前述の項目XXII~XXXIIIのいずれか一項に記載の方法。
XXXV.前記所定の閾値は、第1の所定の閾値及び第2の所定の閾値を含み、前記ナビゲーションシステムのアクションをトリガすることは、前記オフセット距離が前記第1の所定の閾値よりも大きいが前記第2の所定の閾値よりも小さい場合に第1のアクションをトリガすることと、前記オフセット距離が前記第2の所定の閾値よりも大きい場合に第2のアクションをトリガすることとを含み、前記第1のアクションは、第1の可聴アラートを鳴らすこと、第1の視覚アラートを表示すること、第1の触覚アラートを起動すること、又はそれらの組み合わせのうちの1つを含み、前記第2のアクションは、第2の可聴アラートを鳴らすこと、第2の視覚アラートを表示すること、第2の触覚アラートを起動すること、又はそれらの組み合わせのうちの1つを含む、前述の項目XXII~XXXIVのいずれか一項に記載の方法。
XXXVI.外科処置のためのナビゲーションガイダンスを提供する方法であって、前記方法は、
患者の生体構造を共通座標系に位置合わせすることであって、前記患者の生体構造は、少なくとも第1の骨及び第2の骨を含むことと、
外科用器具を前記共通座標系に位置合わせすることと、
前記患者の生体構造の前記第1の骨上での前記外科用器具の動作中に、前記ナビゲーションシステムを用いて前記患者の生体構造及び前記外科用器具を追跡することと、
前記第2の骨に対して請求項1に記載のオフセット距離を決定することと、
前記患者の生体構造の前記第2の骨上での前記外科用器具の動作中に、前記ナビゲーションシステムを用いて前記患者の生体構造及び前記外科用器具を追跡することと、
を含む、方法。
XXXVII.外科手術を行う方法であって、前記方法は、
患者トラッカを患者の生体構造に結合することと、
器具トラッカを外科用器具に結合することであって、前記外科用器具は、工具先端部を含むことと、
ナビゲーションシステムを動作させて、前記器具トラッカ及び前記患者トラッカを共通座標系に位置合わせし、前記外科用器具及び前記患者の生体構造を追跡することと、
所定の持続時間の間、前記生体構造と接触している前記工具先端部を休止させて、位置合わせ検証を開始することであって、
前記ナビゲーションシステムは、前記追跡された外科用器具及び前記追跡された患者の生体構造に基づいてオフセット距離を決定するように構成されることと、
前記オフセット距離を所定の閾値に対して評価することと、
を含む、方法。
XXXVIII.前記ナビゲーションシステムは、前記オフセット距離が前記所定の閾値よりも大きい場合にアクションをトリガするように構成され、前記アクションは、可聴アラートを鳴らすこと、視覚アラートを表示すること、触覚アラートを起動すること、前記外科用器具への電力を遮断すること、又はそれらの組み合わせのうちの1つを含む、項目XXXVIIに記載の方法。
XXXIX.前記ナビゲーションシステムに入力を提供して、前記トリガされたアクションを終了させることを更に含む、項目XXXVIIIに記載の方法。
XXXX.前記工具先端部を前記生体構造と接触させて休止させることは、第1の時点で第1の生体構造接触点と接触している前記工具先端部を休止させることを含み、前記外科用器具は、第1の姿勢にあり、前記工具先端部の第1の近位点が、前記第1の生体構造接触点と接触しており、前記方法は、第2の時点で第2の生体構造接触点と接触している前記工具先端部を休止させることを更に含み、前記外科用器具は、第2の姿勢にあり、前記工具先端部の第2の近位点が、前記第1の生体構造接触点と接触しており、
前記ナビゲーションシステムは、前記第1の生体構造接触点と前記第1の近位点とに基づいて第1のオフセット距離を決定し、前記第2の生体構造接触点と前記第2の近位点とに基づいて第2のオフセット距離を決定するように構成されている、項目XXXVIIに記載の方法。
XXXXI.前記オフセット距離を評価することは、前記所定の閾値に対して前記第1のオフセット距離を評価すること、前記所定の閾値に対して前記第2のオフセット距離を評価すること、又はそれらの組み合わせのうちの1つを含む、項目XXXXに記載の方法。
XXXXII.前記第1のオフセット距離及び前記第2のオフセット距離と、前記工具先端部上の前記第1の近位点と前記第2の近位点との間の幾何学的関係とに基づいて、3次元オフセット値を算出することを更に含み、前記オフセット距離を評価することは、前記3次元オフセット値を所定の3次元オフセット閾値と比較することを含む、項目XXXXに記載の方法。
XXXXIII.前記患者の生体構造は、第1の骨及び第2の骨を含み、前記方法は、
前記外科用器具を前記第1の骨に適用して動作させることと、
前記外科用器具を前記第2の骨に適用して動作させることと、
を更に含み、
前記工具を休止させて位置合わせ検証を開始することは、前記第1の骨に適用して前記外科用器具を動作させた後、かつ前記第2の骨に適用して前記外科用器具を動作させる前に、前記第2の骨と接触して行われる、項目XXXVIIに記載の方法。
図1
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図4B
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図10
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図13